(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】音響装置付きヘルメット、ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置の組合せ及びヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せ
(51)【国際特許分類】
A42B 3/30 20060101AFI20250114BHJP
A42B 3/06 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
A42B3/30
A42B3/06
(21)【出願番号】P 2021069996
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】518041755
【氏名又は名称】株式会社あおごち
(73)【特許権者】
【識別番号】000126517
【氏名又は名称】株式会社アサヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100163706
【氏名又は名称】釜谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 斉
(72)【発明者】
【氏名】山川 哲也
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-258955(JP,A)
【文献】特開2006-42021(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3298919(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに音響装置が装着された音響装置付きヘルメットであって、
前記音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、前記音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、前記駆動信号に応じて動作され、前記ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、
前記ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、前記帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、
前記加振型音響ユニットは、第1の主面と前記第1の主面に対向する第2の主面と前記第1の主面と前記第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、前記第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、
前記加振型音響ユニットは、前記第1の主面の外面が前記衝撃吸収ライナーの内面に固定され、前記エキサイターが前記第1の主面を介して前記衝撃吸収ライナーを加振させることにより、前記衝撃吸収ライナー及び前記帽体が振動し、音響を発生させるように構成されている
ことを特徴とする音響装置付きヘルメット。
【請求項2】
前記加振型音響ユニットは、前記第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにして前記ヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有する
ことを特徴とする請求項1記載の音響装置付きヘルメット。
【請求項3】
前記第2の主面の外面の前記パッシブラジエータの周囲には、前記パッシブラジエータを保護するための突起を有する
ことを特徴とする
請求項2記載の音響装置付きヘルメット。
【請求項4】
前記音響装置は、使用者の音声を捉えることができるマイクを有するとともに、前記音響装置本体は携帯端末と無線通信可能に構成され、
前記使用者は前記携帯端末を介して、前記
音響装置を用いて通話が可能になるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の
音響装置付きヘルメット。
【請求項5】
前記加振型音響ユニットは、前記使用者が前記音響装置付きヘルメットを装着した状態において、前記使用者の両耳の後ろ側の位置にそれぞれ1個ずつ配置されるように構成されている
ことを特徴とする
請求項4記載の
音響装置付きヘルメット。
【請求項6】
前記衝撃吸収材は発泡スチロール材である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の音響装置付きヘルメット。
【請求項7】
前記音響装置本体は、前記ヘルメットの前頭部外面、前頭部内面、後頭部外面または後頭部内面に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のヘルメット用音響装置。
【請求項8】
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置
の組合せであって、
前記音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、前記音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、前記駆動信号に応じて動作され、前記ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、
前記ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、前記帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、
前記加振型音響ユニットは、第1の主面と前記第1の主面に対向する第2の主面と前記第1の主面と前記第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、前記第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、
前記加振型音響ユニットは、前記第1の主面の外面が前記衝撃吸収ライナーの内面に固定され、前記エキサイターが前記第1の主面を介して前記衝撃吸収ライナーを加振させることにより、前記衝撃吸収ライナー及び前記帽体が振動し、音響を発生させるように構成されている
ことを特徴とする
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置の
組合せ。
【請求項9】
前記加振型音響ユニットは、前記第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにして前記ヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有する
ことを特徴とする請求項8記載の
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置の
組合せ。
【請求項10】
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニット
の組合せであって、
前記音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、前記音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、前記駆動信号に応じて動作され、前記ヘルメットを振動させる前記加振型音響ユニットを有し、
前記ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、前記帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、
前記加振型音響ユニットは、第1の主面と前記第1の主面に対向する第2の主面と前記第1の主面と前記第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、前記第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、
前記加振型音響ユニットは、前記第1の主面の外面が前記衝撃吸収ライナーの内面に固定され、前記エキサイターが前記第1の主面を介して前記衝撃吸収ライナーを加振させることにより、前記衝撃吸収ライナー及び前記帽体が振動し、音響を発生させるように構成されている
ことを特徴とする
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニット
の組合せ。
【請求項11】
前記加振型音響ユニットは、前記第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにして前記ヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有する
ことを特徴とする請求項10記載の
ヘルメットと前記ヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニット
の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響装置付きヘルメット、ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せ及びヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せに関する。より詳細には、ヘルメットに取り付けられて音響を発生する音響装置付きヘルメット、ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せ及びヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘルメットをしたままで、音楽を楽しんだり、通話をしたりする装置が求められている。
【0003】
このような装置として、特許文献1にて開示されたヘルメット用ヘッドセットがある。この装置はヘルメットの内側に装着されるものであって、ヘッドセット本体に設置されたマイク及び2つのスピーカーを有し、ヘッドセット本体にはジョグダイヤルが設けられている。この2つのスピーカーは、使用者がヘルメットを着用した状態で、使用者の両耳に位置するように、ヘルメットの内側面に両面テープ等で付着されている。そして、ヘッドセット本体は外部の機器とBluetooth(登録商標)接続して無線通信可能に構成され、使用者はハンドフリー通話や音楽鑑賞をすることができる。
【0004】
また、このような装置として、特許文献2にて開示された加振型音響発生器がある。この装置は、ヘルメットに搭載したとしても、フルレンジスピーカとして代用可能なものであって、ドライバーユニットとこれを収納するケースを備えている。ドライバーユニットはヨーク及び永久磁石を含む磁気回路と、磁気回路に形成された磁気空間内に形成されたボイスコイルを含んでいる。
【0005】
そして、ヨーク側ケース及びボイスコイル側ケースは、磁気回路またはボイスコイルが接触する領域と、それよりも外側の領域が弾性部材を介して分割されている。ブラケットを用いて、ヘルメットの外側の背面中央下部に1個、または両側面下部に1個ずつ、ボイスコイル側の面を取り付けると、振動がヘルメットに伝達され、音響が再生される構成となっている。このようにして、振動を抑えられにくくすることにより、音圧を改善し、フルレンジスピーカとして代用可能な加振型音響発生器が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5390569号公報
【文献】特開2010-258955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スピーカーが使用者の両耳に位置するように取り付けられているため、外部からの音が聞きにくくなってしまっていた。すなわち、音響装置が装着されたヘルメットでは安全性等の観点から、外部からの音も聞けるようにする必要性が求められるが、耳の近くのスピーカーの音により、外部の音が聞き取りにくくなるという不都合があった。また、ヘルメット内部に取り付けるために、スピーカーとして小型のものを用いることになるため、得られる音質もそれなりのものとなるという不都合があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、加振型音響発生器はヘルメットの外側の面に取り付けるため、大きくヘルメットを振動させる必要があり、ドライバーユニットに出力の大きなものを用いることになり、装置が大きくなるという不都合があった。また、ヨーク側ケース及びボイスコイル側ケースは、磁気回路またはボイスコイルが接触する領域と、それよりも外側の領域が弾性部材を介して分割されているため、ケースを例えば二色成形方法で形成するなどの、ケースの構造が複雑になってしまうという不都合があった。
【0009】
本発明の目的は、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質の得られるヘルメット用音響装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0011】
本発明は、ヘルメットに音響装置が装着された音響装置付きヘルメットに関する。
そして、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有することを特徴とする。
【0013】
また、第2の主面の外面のパッシブラジエータの周囲には、パッシブラジエータを保護するための突起を有することを特徴とする。
【0014】
また、音響装置は、使用者の音声を捉えることができるマイクを有するとともに、音響装置本体は携帯端末と無線通信可能に構成され、使用者は携帯端末を介して、音響装置を用いて通話が可能になるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、加振型音響ユニットは、使用者が音響装置付きヘルメットを装着した状態において、使用者の両耳の後ろ側の位置にそれぞれ1個ずつ配置されるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、衝撃吸収材は発泡スチロール材であることを特徴とする。
【0017】
また、音響装置本体は、ヘルメットの前頭部外面、前頭部内面、後頭部外面または後頭部内面に設けられていることを特徴とする。
【0018】
ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せであって、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有することを特徴とする。
【0020】
また、ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せであって、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
そして、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0023】
ヘルメットに音響装置が装着された音響装置付きヘルメットであって、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されているので、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質のヘルメット用音響装置を得ることができる。
【0024】
また、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有するので、より良い音質のヘルメット用音響装置を得ることができる。
【0025】
また、第2の主面の外面のパッシブラジエータの周囲には、パッシブラジエータを保護するための突起を有するので、ヘルメット内でパッシブラジエータの振動面の動きが妨げられることを防止することが可能となる。
【0026】
また、音響装置は、使用者の音声を捉えることができるマイクを有するとともに、音響装置本体は携帯端末と無線通信可能に構成され、使用者は携帯端末を介して、音響装置を用いて通話が可能になるように構成されているので、使用者はマイクを用いた通話等を楽しむことが可能となる。
【0027】
また、加振型音響ユニットは、使用者が音響装置付きヘルメットを装着した状態において、使用者の両耳の後ろ側の位置にそれぞれ1個ずつ配置されるように構成されているので、加振型音響ユニットが使用者の耳に触れるのを防止することができる。
【0028】
また、衝撃吸収材は発泡スチロール材であるので、加振型音響ユニットにより、効果的に振動させることが可能となる。
【0029】
また、音響装置本体は、ヘルメットの前頭部外面、前頭部内面、後頭部外面または後頭部内面に設けられているので、ヘルメットを装着したとき、使用者の邪魔にならないところに、音響装置本体を収納させることができる。
【0030】
また、ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せであって、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されているので、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質のヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せを得ることができる。
【0031】
また、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有するので、より良い音質のヘルメットとヘルメットに装着される音響装置の組合せを得ることができる。
【0032】
また、ヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せであって、音響装置は、駆動信号を発生する音響装置本体と、音響装置本体と伝達ケーブルで接続され、駆動信号に応じて動作され、ヘルメットを振動させる加振型音響ユニットを有し、ヘルメットは強化樹脂材からなる帽体と、帽体の内面に設けられた衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナーを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面と第1の主面に対向する第2の主面と第1の主面と第2の主面を結ぶ側面を有する扁平で密閉された筐体と、第1の主面の内面に固定されたエキサイターを有し、加振型音響ユニットは、第1の主面の外面が衝撃吸収ライナーの内面に固定され、エキサイターが第1の主面を介して衝撃吸収ライナーを加振させることにより、衝撃吸収ライナー及び帽体が振動し、音響を発生させるように構成されているので、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質のヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せを得ることができる。
【0033】
そして、加振型音響ユニットは、第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにしてヘルメットの内面方向に向いて固定されたパッシブラジエータを有するので、より良い音質のヘルメットとヘルメットに装着される音響装置に用いられる加振型音響ユニットの組合せを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの構成を示す分解図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの使用例を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの要部の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの要部の構成を示す分解図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットにおける周波数特性を示すグラフである。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの構成と使用例を示す模式図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの構成を示す模式図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る音響装置が装着されたヘルメットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、音響装置が装着されたヘルメット(音響装置付きヘルメット)を使用者が頭部に付けた状態での、使用者側から見た状態での前後方向、上下方向、左右方向を示し、使用者の顔のある方向を前(前面)方向、その反対の方向を後(背面)方向と呼ぶこととする。
但し、以下に示す前後、上下、左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本技術はこれらの方向に限定して適用されることはない。
【0036】
(第1の実施形態)
図1乃至
図7を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、
図1乃至
図4を用いて、音響装置付きヘルメット1の構成とその使用例について、説明する。
図1は音響装置付きヘルメット1の構成を示す前方から見た斜視図、
図2はその分解図、
図3は音響装置付きヘルメット1に装着されている音響装置2の構成、
図4は音響装置付きヘルメット1の使用例を示している。
【0037】
図1に示すように、音響装置付きヘルメット1は、ヘルメット本体10の内部に音響装置2が搭載されたものである。音響装置2は、駆動信号を生じる音響装置本体3と駆動信号によって駆動される左右1個ずつの加振型音響ユニット4、4と使用者の音声を捉えるマイク5を有している。加振型音響ユニット4、4とマイク5は信号伝達可能な信号伝達ケーブル6、6により、音響装置本体3と結線されている。
【0038】
図2は、ヘルメット本体10の構成と、ヘルメット本体10に音響装置2がどのように取り付けられているかについて示す前方から見た分解斜視図である。
図2に示すように、ヘルメット本体10は、強化樹脂材からなる帽体11、衝撃吸収材からなる衝撃吸収ライナー12、布地からなる頭頂カバー13と頭側カバー14、帽体11の両頬部に脱着可能に装着される頬パッド15、15を有している。
【0039】
図2に示すように、衝撃吸収ライナー12は、発泡スチロール材または発泡スチロール材と同等の衝撃吸収性能を有する素材を成型されて形成されており、その頂部の面が帽体11内部に、接着剤等で固定されている。また、頭頂カバー13は中央部がジャージ地131、両側部がメッシュ地132、132からなり、ジャージ地からなる頭側カバー14とともに、衝撃吸収ライナー12の内面と下端部、外面側部を、着脱可能にすっぽりと覆うように構成されている。なお、頭側カバー14の前部下面には、音響装置本体3の下面をカバーする柔らかい樹脂からなる音響装置本体下面カバー16が設けられている。
【0040】
図2に示すように、衝撃吸収ライナー12の外面の前頭部下端近傍には凹部を有し、この衝撃吸収ライナー12の凹部と帽体11内面との間に、音響装置本体3が固定される。また、衝撃吸収ライナー12の内面の、使用者の両耳の後ろ側のところに相当する部分にも凹部を有し、この凹部に加振型音響ユニット4、4が固定される。マイク5は頬パッド15と帽体11との間に固定される。なお、この図では図示されていない信号伝達ケーブル6は、帽体11と衝撃吸収ライナー12の間に、挟み込まれるようにして固定される構成となっている。
【0041】
図1及び
図2に示すように、本実施形態で用いられているヘルメット本体10は、オープンフェイスヘルメット型またはジェットヘルメット型と呼ばれるタイプのものである。オープンフェイスヘルメット型のヘルメットは、頭から耳、頬までを守るヘルメットのことをいい、フルフェイス型のヘルメットと異なり、顎部の部分は有していない。
なお、オープンフェイスヘルメット型のヘルメットでは、通常、ヘルメットを頭部に固定するための顎紐を有しているが、ここでは、図示及び説明を省略している。
【0042】
次に、音響装置2の構成について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、音響装置2は、前述したとおり音響装置本体3、加振型音響ユニット4、4、マイク5及び信号伝達ケーブル6、6を備えているが、これらはそれぞれ防水構造を有している。使用者の汗による蒸れや、例えば自動二輪等で雨天走行中等に音響装置付きヘルメット1内に侵入した雨滴に備えるためである。なお、信号伝達ケーブル6、6は、コネクター61、61により途中で分離可能に構成されているが、このコネクター61、61にも防水構造を有した防水コネクターを用いている。
【0043】
図3に示すように、音響装置本体3は扁平な矩形形状をしており、前面が略大きな球面の一部のような曲面となっている。帽体11と衝撃吸収ライナー12との間の凹部に、すっぽりと収納させるためである。下面には防水処理された電源ボタン31と充電用のUSBコネクター32を有しており、左右の側面には防水ブッシュ33、33に保持されて信号伝達ケーブル6、6が突出している。
【0044】
図3に示すように、加振型音響ユニット4、4は扁平な形状をしており、衝撃吸収ライナー12の内面に形成された凹部に外面側の面が固定される構成となっているが、その詳細は後述する。
【0045】
図3に示すように、マイク5は、マイクユニット51とこれを保持するマイク保持具52を有し、マイク保持具52の一面にはマイク保持面ファスナー53が貼付されている。帽体11のマイク保持具52に対応する位置には、マイク保持面ファスナー53と係合する図示されない面ファスナーが貼付されており、面ファスナー同士を係合させることにより、マイク保持具52は頬パッド15と帽体11の間に、しっかりと保持される構成となっている。
【0046】
図4は、音響装置付きヘルメット1を頭部に装着した使用者Uが、音響装置2を用いて、再生される音楽や通話等を楽しんでいる状況を示すものである。
図4に示すように、音響装置本体3はスマートフォン等の携帯端末SとBluetooth等の無線通信接続が可能に構成されている。携帯端末Sにより音声信号を音響装置本体3に送出すれば、音響装置本体3から送られた駆動信号により加振型音響ユニット4が作動し、使用者Uは音楽等を楽しむことができる。このように、携帯端末Sからの音声信号は音として使用者Uに伝達され、同様にマイク5からの音声信号は携帯端末Sに伝達されるので、使用者Uは音響装置2を介して、携帯端末Sによっての通話が可能となる。
【0047】
ここで、音響装置付きヘルメット1の操作は、ヘルメット本体10を軽く叩くようにタップすることにより、行うことができる。すなわち、音響装置本体3には加速度センサーを収納しておりタップされたことを検知するので、例えば、音楽の再生・停止を、タップすることで行える。また、音楽再生中に電話がかかってきた場合には、タップすることで受話し、再度タップで通話を終了して、ダブルタップで着信拒否をすることができる。なお、自動二輪等の場合、走行中の通話はせず、路肩等に停車してからの通話が推奨される。
【0048】
また、マイク5を使用することにより、Siri(登録商標)やGoogleアシスタント(登録商標)等の音声アシスタントによる携帯端末Sの操作も可能となる。すなわち、「○○さんに電話をかけて」とか、「今日の天気は?」とか等を、音声で行うことができる。
LINE(登録商標)やFacebook(登録商標)メッセンジャーでグループを作れば、グループ通話も可能となる。
【0049】
また、音響装置本体3を携帯端末Sと通信させることにより、音響装置本体3のファームウェアのアップデートをさせることもできる。
また、携帯端末Sをカーナビゲーションとして用いて、音楽を聴きながら音声案内をナレーションさせて、自動二輪等を走行させるようなこともできる。
【0050】
次に、加振型音響ユニット4について、5乃至
図7を用いて、その詳細を説明する。
図5は、
図1に於けるA-A断面図であって、
図2に示すように加振型音響ユニット4は衝撃吸収ライナー12に設けられた凹部に固定されているが、その詳細な状況と、加振型音響ユニット4の断面の詳細を示している。
図6は加振型音響ユニット4の分解斜視図、
図7は加振型音響ユニット4の構造による周波数特性を示すグラフである。
【0051】
図5に示すように、衝撃吸収ライナー12の外面上部は帽体11の内面に固定されており、また、衝撃吸収ライナー12の内面の上部は頭頂カバー13により、内面の下部、下端面、外面の下部は頭側カバー14により、覆われている。衝撃吸収ライナー12に設けられた凹部に固定された加振型音響ユニット4は、頭頂カバー13と頭側カバー14に覆われる構成となっている。
【0052】
図5及び
図6に示すように、加振型音響ユニット4は樹脂からなる扁平な箱型の形状のケース本体41とエキサイター7とパッシブラジエータ8を有している。ケース本体41は左側の第1の主面と右側の第2の主面とこの2つの主面を結ぶ側面を持ち、第1の主面と側面からなる固定ケース42と第2の主面からなる蓋ケース43を有している。
【0053】
図5及び
図6に示すように、第1の主面の外面は衝撃吸収ライナー12に設けられた凹部に固定され、第1の主面の内面には加振型振動子であるエキサイター7が固定されている。第2の主面は開口部を有し、この開口部を塞ぐようにパッシブラジエータ8が固定されている。また、第2の主面外面のパッシブラジエータ8の周囲には、パッシブラジエータ8を取り囲むようにパッシブラジエータガード突起44が突出している。
図6に示すように、固定ケース42と蓋ケース43は、防水両面テープ45を介し、4本の固定ネジで水密に固定されている。
【0054】
図5に示すように、パッシブラジエータ8は、柔軟性のあるゴムやエラストマー等でできたパッシブラジエータ本体81と鉄等の金属でできた重り板82を有している。パッシブラジエータ本体81の中央部には重り板82が固定され、その周囲に重り板82を揺動可能に保持するダンパー構造のエッジ部があり、エッジ部の外側にある平らなフランジ部が蓋ケース43に固定されている。
【0055】
図5に示すように、エキサイター7は、ヨーク71及び永久磁石72からなる磁気回路を有し、ヨーク71と永久磁石72の間の隙間の磁気ギャップの間にボイスコイル73の一端部が保持される構成を有している。ボイスコイル73は、ヨーク71に固定されたダイヤフラム状のダンパー74を介してヨーク71と結合している。ボイスコイル73の他端部には固定部75が結合し、固定部75が固定ケース42の底部に固定されることにより、エキサイター7はケース本体41内の中空に保持されるように構成されている。
【0056】
図5に示すように、ボイスコイル73の他端部からは端子線76が出ていて、信号伝達ケーブル6と結線されている。信号伝達ケーブル6から駆動信号が端子線76を介してボイスコイル73に入力されると、ボイスコイル73は磁気ギャップの間を左右に振動する。ボイスコイル73の振動は固定部75と固定ケース42の第1の主面を介して、衝撃吸収ライナー12に伝達され、衝撃吸収ライナー12及び帽体11が加振されて振動し、ヘルメット本体10内で音響が発生する。
【0057】
図5に示すように、加振型音響ユニット4は衝撃吸収ライナー12の内面に形成された凹部に取り付けられるように構成されているため、薄く小さくする必要がある。そのため、加振型音響ユニット4に用いられるエキサイター7も、薄く小さく、その結果出力も1W程度の比較的小さなものを用いる必要がある。ヘルメット本体10の外面にエキサイターを取り付ける場合には、帽体11を介して衝撃吸収ライナー12を振動させるので、出力の大きな少なくても2W程度のものとする必要がある。しかし、本実施形態では、ヘルメット本体10の内面に取り付けるので、出力が比較的小さな場合でも、十分な音量が得られることが確認されている。
【0058】
また、音質についても、低音部が出にくい傾向にあるものの、通話や静かなところでの音楽鑑賞には十分に良い音であるが、ヘルメット特有の問題がここで生じた。自動二輪走行中、特に高速での走行ではヘルメットに多くの風切り音が発生するが、この風切り音のため低音部が聞こえなくなり、音が痩せ、音楽が楽しめなくなるという問題である。風洞実験によれば、時速100km走行相当環境における風切り音は200Hz付近をピークとした山形になるとのことであるが、この風切り音により低音部がマスキングされ、聞こえなくなってしまうものと考えられる。
【0059】
発明者たちは、この低音が出にくい現象を、ケース本体41のような密閉された小さな箱にエキサイター7を入れたことも影響しているのではないかと考えた。すなわち、内部の空気がいわゆる空気バネのように働き、エキサイター7の振動を抑えてしまうことによる可能性である。そこで、空気バネの働きを軽減するために、第2の主面にパッシブラジエータ8を取り付けてみた。また、パッシブラジエータ8の場合、その共振により、低音部の音量を増やせる効果も期待できる。
【0060】
図7に示すように、破線で示すパッシブラジエータ8無しの場合は、低域の出力が落ちている。ところが、実線で示すパッシブラジエータ8有りの場合のデータは、特に150Hzから350Hzの低域において、10dBほど低域の出力が向上することが分かった。
このようにして、小さな出力のエキサイター7を用いながらも、低音も充実したさらに良い音質となり、通話はもちろん、音楽鑑賞等も快適に行うことが可能となった。特に、風切り音が大きい自動二輪等での高速走行中においても、低音部が十分に出ている音楽を楽しめるようになった。
【0061】
図5及び
図6に示すように、パッシブラジエータ8は蓋ケース43の第2の主面に設けられた開口部を塞ぐようにして固定されているため、ケース本体41の密閉状態を保つことができる。また、扁平なケース本体41の第2の主面に取り付けるようにしたため、大きなパッシブラジエータ8を用いることができた。更に、パッシブラジエータ8をヘルメット本体10の内面方向を向いて固定するようにしたので、パッシブラジエータ8の振動によって発生する低音部の音を、使用者の耳に直接届けることができた。
【0062】
図5及び
図6に示すように、第2の主面外面のパッシブラジエータ8の周囲には、パッシブラジエータガード突起44が突出しているが、これはパッシブラジエータ8を保護するためのものである。すなわち、ヘルメット本体10内部で、頭頂カバー13や頭側カバー14等がパッシブラジエータ8に不用意に触って、パッシブラジエータ8の振動を妨げることを防止するよう構成されている。なお、ここではパッシブラジエータガード突起44として円形のリブ状のものを示したが、これに限定されず、ダボ状や柱状等の複数の突起等をパッシブラジエータ8の周囲に配置するようにしてもよい。また、パッシブラジエータガード突起44の第2の主面からの高さを、もっと高くしたりしてもよい。
【0063】
ところで、前述したように、ヘルメット用音響装置では安全性等の観点から、外部からの音も聞けるようにする必要性について述べたが、これを検討する。ヘルメットを装着しての自動二輪走行中においても、緊急車両のサイレンの音や踏切の警告音等、外部の音に注意を払う必要がある。外部からの音はヘルメットを経由して耳に到達すると考えられるが、ここで、耳の近傍にスピーカーがある場合には、耳の傍のスピーカーから直接耳に届く直接音のために外部からの音が打ち消され、聞き取りにくくなってしまう。
【0064】
一方、音響装置付きヘルメット1では、加振型音響ユニット4、4によってヘルメット本体10の衝撃吸収ライナー12と帽体11を振動させ、音響を発生させている。外部からの音も、ヘルメットを振動させ、ヘルメット内部に伝達されると考えられる。そうすると、この2つの音は同じヘルメットの振動によるものであり、互いに打ち消さず、重なり合って耳に到達することになる。そのため、外部からの音が聞き取りやすくなるものと考えられる。
【0065】
ところで、ヘルメット本体10の内面方向を向けて固定されたパッシブラジエータ8の低音部の音は、使用者の耳に直接届くが、この直接音により、通話等やサイレン等の音を聞きづらくなるかどうかを検討する。男性の話し声は500Hzくらい、女性の話し声は1000Hzくらいとされているが、パッシブラジエータ8は低域再生なので、影響が少ないものと考えられる。すなわち、パッシブラジエータ8の直接音があっても、通話やナレーションの音声は十分に聞き取ることができる。また、例えば救急車のハーモニック・サイレンは、960Hzと770Hzを基音として「ピーポー」と鳴らすとされるが、これも同様に、十分に聞き取ることができる。
【0066】
以上のようにして、本実施形態の音響装置付きヘルメット1は、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質の得られるものとなった。また、加振型音響ユニット4、4がヘルメット本体10内部に装着されているため、外部に装着されるものと比べ、出っ張りのない、すっきりとした形のものとなった。更に、加振型音響ユニット4、4をヘルメット本体10内部に装着されるようにしたため、小さな出力のエキサイター7で十分な音量が得られることになり、消費電力が削減されてバッテリーの小型化が可能となり、音響装置本体3も小型化できるようになった。
【0067】
なお、本実施形態では、加振型音響ユニット4が固定される衝撃吸収ライナー12について、発泡スチロール材または発泡スチロール材と同等の衝撃吸収性能を有する素材から形成されていると説明したが、特に発泡スチロール材であることが好ましい。発泡スチロール材は硬くて軽く、加振型音響ユニット4で加振して効果的に振動させて音を出させやすいからである。
【0068】
またなお、音響装置本体3について、衝撃吸収ライナー12の凹部と帽体11内面との間に収納されるように説明したが、これに限定されない。例えば、衝撃吸収ライナー12に凹部を設けず、帽体11の前頭部下部を前方に膨出させて、この膨出部の内面と、衝撃吸収ライナー12との間に音響装置本体3を収納させてもよいことは勿論である。
【0069】
またなお、ヘルメット本体10について、オープンフェイスヘルメット型のヘルメットを用いて説明したがこれに限定されない。例えば、頭から耳、頬と顎部も守るフルフェイス型のヘルメットに用いてもよいし、少なくとも頭から耳を守るヘルメットであれば、用いることができるのは勿論である。
【0070】
またなお、音響装置付きヘルメット1の音響装置2として、音響装置本体3、加振型音響ユニット4、4とマイク5を有するものとしたが、これに限定されず、マイク5を有さなくてもよい。マイク5がなければ、マイク5を使った通話等はできなくなるが、音響装置付きヘルメット1を装着すれば音楽鑑賞等を楽しめることになり、十分な活用ができるからである。
【0071】
またなお、マイク5をマイクユニット51とこれを保持するマイク保持具52を有するものとして、マイク保持具52を頬パッド15と帽体11の間に保持される構成としたが、これに限定されない。例えば、フルフェイス型のヘルメットの場合には、マイクユニット51だけを顎部の裏面に面ファスナー等で固定するようにしてもよい。また、ヘルメットの外面に支点を固定し、長いアームを回動自在に設け、このアームの先端にマイクユニット51を取り付けるようにしても良いことは勿論である。
【0072】
またなお、音響装置付きヘルメット1の操作を、ヘルメット本体10をタップすることにより行うとしたが、これに限定されず、ヘルメット本体10に操作部を設けこれを操作するようにしてもよいし、別体の操作部を設けるなどしてもよいことは勿論である。
【0073】
またなお、パッシブラジエータ8について、柔軟性の材質でできたパッシブラジエータ本体81と金属でできた重り板82と説明したが、この形に限定されず、いろいろな形状や材質、方式のものを用いてもよいことは勿論である。
同様に、エキサイター7についても、いろいろな形状や材質、方式のものを用いてもよいことは、勿論である。
【0074】
(第2の実施形態)
図8を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、ヘルメット用音響装置1は、音響装置本体3、加振型音響ユニット4、4とマイク5を有するが、音響装置本体3の取り付け位置が異なる。以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する
【0075】
図8は、音響装置付きヘルメット1を頭部に装着した使用者Uが、音響装置2を用いて、再生される音楽鑑賞や通話等を楽しんでいる状況を示すものである。
図8に示すように、加振型音響ユニット4とマイク5は第1の実施形態と同様の位置に取り付けられているが、音響装置本体3はヘルメット本体10の前頭部内面側ではなく、前頭部外面側に取り付けられる。
【0076】
図8に示すように、ヘルメット本体10の前頭部外面には、音響装置2を保持するための前頭部音響装置ホルダー100が取り付けられている。前頭部音響装置ホルダー100は、音響装置収納部110、ホルダー取り付け部120と前鍔部130を有し、音響装置収納部110の内側に音響装置2を装着すると、図示されない音響装置固定部によりその位置に固定される。前頭部音響装置ホルダー100は、ホルダー取り付け部120の2本のリベット121によりヘルメット本体10に固定される。前鍔部130は、短いサンバイザー状をなし、日光や雨水から音響装置2や使用者Uの顔を守る役目をする。
【0077】
図8に示すように、信号伝達ケーブル6は束ねられて、ヘルメット本体10の縁部から内側に配線される。ここで例えば、音響装置2と信号伝達ケーブル6との間にコネクターを付ければ、音響装置2から信号伝達ケーブル6を外し、図示されない音響装置固定部の固定を解除して、前頭部音響装置ホルダー100から取り外しが可能となる。この場合、充電するときに音響装置付きヘルメット1全体を充電器に接続するのではなく、音響装置2だけを接続すればよいので、充電時の取り扱いが簡単になる。
【0078】
なお、本実施形態では、前頭部音響装置ホルダー100をリベット121によりヘルメット本体10に取り付けられるようにしたが、これに限定せず、例えば、ヘルメット本体10がサンバイザーを着衣脱自在に取り付けるサンバイザー取り付け部を有する場合は、これを利用して、取り付けるように構成してもよいことは勿論である。
【0079】
(第3の実施形態)
図9を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、ヘルメット用音響装置1は、音響装置本体3、加振型音響ユニット4、4とマイク5を有するが、音響装置本体3の取り付け位置が異なる。以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する
【0080】
図9は、音響装置付きヘルメット1を背面側から見た斜視図である。
図9に示すように、加振型音響ユニット4、4は第1の実施形態と同様の位置に取り付けられているが、音響装置本体3はヘルメット本体10の前頭部内面側ではなく、後頭部外面側に取り付けられる。
【0081】
図9に示すように、ヘルメット本体10の後頭部外面には、音響装置2を保持するための後頭部音響装置ホルダー200が取り付けられている。信号伝達ケーブル6は束ねられて、ヘルメット本体10の縁部から内側に配線される。ここで例えば、音響装置2と信号伝達ケーブル6との間にコネクターを付けるとともに、後頭部音響装置ホルダー200から音響装置2を取り外し可能に構成してもよい。この場合、第2の実施形態と同様、充電するときに音響装置付きヘルメット1全体を充電器に接続するのではなく、音響装置2だけを接続すればよいので、充電時の取り扱いが簡単になる。
【0082】
なお、本実施形態では、信号伝達ケーブル6をヘルメット本体10の縁部から内側に配線されるように構成したが、これに限定されず、ヘルメット本体10に穴を明けてハトメを付け、このハトメの穴から配線してもよいことは勿論である。
【0083】
(第4の実施形態)
図10を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第4の実施形態では、第1の実施形態と同様に、ヘルメット用音響装置1は、音響装置本体3、加振型音響ユニット4、4とマイク5を有するが、音響装置本体3の取り付け位置が異なる。以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する
【0084】
図10は、音響装置付きヘルメット1を背面側から見た斜視図である。
図10に示すように、加振型音響ユニット4、4は第1の実施形態と同様の位置に取り付けられているが、音響装置本体3はヘルメット本体10の前頭部内面側ではなく、後頭部内面側に取り付けられる。すなわち、衝撃吸収ライナー12の後頭部外面下部に凹部を有し、この凹部による衝撃吸収ライナー12と帽体11内面との隙間からなる後頭部内面音響装置ホルダー300に、音響装置本体3が固定される構成となっている。後頭部内面に後頭部内面音響装置ホルダー300を設けることにより、ヘルメット本体10に出っ張り等がない、すっきりとしたものに、構成することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、音響装置本体3を衝撃吸収ライナー12の凹部と帽体11内面との間の後頭部内面音響装置ホルダー300に音響装置本体3が収納されるように説明したが、これに限定されない。例えば、衝撃吸収ライナー12に凹部を設けず、帽体11の後頭部下部を後方に膨出させて、この膨出部の内面と、衝撃吸収ライナー12との間を後頭部内面音響装置ホルダー300として、音響装置本体3を収納させてもよいことは勿論である。
以上のようにして、第1の実施形態と同様に、第2乃至第4の実施形態の場合も、本実施形態の音響装置付きヘルメット1は、外部からの音が聞き取りやすく、小型の簡単な構造で良い音質の得られるものとなった。
【0086】
本発明のヘルメット用音響装置は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、加振型音響ユニットが衝撃吸収ライナー内面の凹部に固定されると説明したが、帽体内面に直接取り付けるようにしてもよい。
【0087】
また例えば、上述した実施の形態においては、加振型音響ユニットをヘルメット本体に装着される音響装置に用いられた場合について説明しているが、これに限定されない。この加振型音響ユニットはコンパクトで良い音のものであるので、例えば、板状の振動板に装着して音楽再生用に用いたり、飛沫防止用のアクリルパーティションに装着して会議の発言の内容が大きい音声で伝わるようにしたりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
U 使用者
S 携帯端末
1 音響装置付きヘルメット
2 音響装置
3 音響装置本体
4 加振型音響ユニット
5 マイク
6 信号伝達ケーブル
7 エキサイター
8 パッシブラジエータ
10 ヘルメット本体
11 帽体
12 衝撃吸収ライナー
13 頭頂カバー
14 頭側カバー
15 頬パッド
16 音響装置本体下面カバー
71 ヨーク
72 永久磁石
73 ボイスコイル
74 ダンパー
75 固定部
76 端子線
100 前頭部音響装置ホルダー
200 後頭部音響装置ホルダー
300 後頭部内面音響装置ホルダー