(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】小口ST類の取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20250114BHJP
【FI】
G06Q40/04
(21)【出願番号】P 2022195257
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(73)【特許権者】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】前田 侑香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028827(JP,A)
【文献】特開2019-191631(JP,A)
【文献】特開2020-067806(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーン
その他の分散
台帳技術においてデジタルで定義される価
値の総称
としてのトークン類、デジタル通貨やステーブルコイン類
というデジタル通貨
類、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士
を含むあらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン
その他の分散
台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、
複数の取引業者
としての証券会
社のシステムと、複数の前記取引業者
としての証券会
社のシステムと接続する、中央管理システ
ムまたは中央管理機
能とを有し、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムは、
大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有する主市場価格取得手段と、
前記主市場価格取得手段が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、
前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、
前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理
又は保
有する機能を有するリーブ注文管理手段と、
前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、
前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI
と称される相対取引方式的な取引意思表
示形式で、当該リーブ注
文における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情
報と当該取引業者
としての証券会
社のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能へ非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、
前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能は、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、
所定の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、
前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムに非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムは、さらに、
前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、
前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者
としての証券会
社のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、
他の取引業者
としての証券会
社のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、
前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有する
ことを特徴とする小口ST類の取引システム。
【請求項2】
ブロックチェーン
その他の分散
台帳技術においてデジタルで定義される価
値の総称
としてのトークン類、デジタル通貨やステーブルコイン類
というデジタル通貨
類、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士
を含むあらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン
その他の分散
台帳散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、
複数の取引業者
としての証券会
社のシステムと、複数の前記取引業者
としての証券会
社のシステムと接続する、中央管理システ
ムまたは中央管理機
能とを有し、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムは、
小口のST類の類似市場での売買価格
としての運用
体の開示する基準価
格を取得する機能を有する類似市場価格取得手段と、
前記類似市場価格取得手段が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、
前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、
前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理
又は保
有する機能を有するリーブ注文管理手段と、
前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、
前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI
と称される相対取引方式的な取引意思表
示形式で、当該リーブ注
文における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情
報と当該取引業者
としての証券会
社のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、
を有し、
前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能は、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、
所定の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、
前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムに非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、
夫々の前記取引業者
としての証券会
社のシステムは、さらに、
前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、
前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者
としての証券会
社のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、
他の取引業者
としての証券会
社のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、
前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有する
ことを特徴とする小口ST類の取引システム。
【請求項3】
前記主市場価格取得手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する機能を有し、
前記IOI問い合わせ情報回送手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI
と称される相対取引方式的な取引意思表
示形式で、当該リーブ注
文における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情
報と当該取引業者
としての証券会
社のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、前記リーブ注文管理手段が管理
又は保
有し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI
と称される相対取引方式的な取引意思表
示形式で、当該リーブ注
文における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情
報と当該取引業者
としての証券会
社のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有し、
前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の前記取引業者
としての証券会
社のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の小口ST類の取引システム。
【請求項4】
前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された問い合わせ情報を優
先して探
索するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の小口ST類の取引システム。
【請求項5】
前記取引業者
としての証券会
社のシステ
ムにおける前記回送リーブ注文受付手段が、前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた前記取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者
としての証券会
社にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することのできる機能を有する約定条件見直し手段と、
前記約定条件見直し手段によって当該リーブ注文についての約定条件をなす指値が当該取引業者
としての証券会
社にとって不利な方向へ変更された約定条件見直し情報を、IOI
と称される相対取引方式的な取引意思表
示形式での1対1の問い合わせ元の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムに非開示の状態で送信する機能を有する約定条件直し情報配信手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の小口ST類の取引システム。
【請求項6】
前記中央管理システ
ムまたは中央管理機
能は、所定の自己注文
の銘柄名、売り買いの種別及び指値を含
む情報を別途管理する機能を有する自己注文情報管理手段をさらに有し、
前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文
の銘柄名、売り買いの種別及び指値を含
む情報を、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有し、
前記約定可能性情報送信手段は、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による探索により、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文が、所定の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムの管理
又は保
有する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者
としての証券会
社のシステ
ムに約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の小口ST類の取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル証券類(ST類、ただし暗号資産や銀行取引など金融全般に応用可能とする)の取引のうち、特に、小規模で流動性が不十分である小口ST類の取引を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ST類のうち、みなし有価証券(信託財産受託権、匿名組合契約、合同会社の社員権など)である2項有価証券類に該当するST類や、1項有価証券類(株式、信託、有価証券など)に該当するST類を小口化したST類もしくはその他に分類されるST類は、小規模で流動性が不十分であるものが非常に多い。
【0003】
小規模で流動性が不十分な小口のST類に対しては、多:多(板注文処理など)や1:多(レート配信処理)などの取引において、多くの顧客からの注文をシステムの内部で保有し、その売り買いの注文の流動性のバランスから価格妥当性を算出する手法を用いて処理することは、「取引価格が取引対象の価値を適正にあらわす」と定義される価格発見の観点からみて最適であるとは考え難い。
【0004】
また、小口のST類の取引における顧客をなす注文者は、妥当な価格を把握することの難しい素人の投資家が多いと推測される。
また、ST類については、ブロックチェーンなどの分散技術を用いた取引システムにおいて24時間リアルタイムに取引が行われ得ることから、取引価格が分散されてばらつきを生じ得る。このため、ST類についての約定価格の妥当性が得られるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
約定の可能性を高め、約定価格のばらつきを抑えるための方策としては、各取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けたリーブ注文のデータを各取引業者(証券会社)(のシステム)内部で統合し、統合したデータについてクロッシング処理を行うPTS型の注文集中処理が考えられる。
しかし、PTS型の注文集中処理は、各取引業者(証券会社)(のシステム)に実装するための条件(ハードル)が非常に高くコスト面での負担も膨大なものになると考えられる。
【0006】
通常、多:多(板注文処理など)の取引を処理する取引所やPTS(私設取引システム)では、顧客からの注文を受け付けたときに注文板(BOOK)を作成し、作成した注文板から複数気配情報や板情報、場合によってはレート化したレート情報などを生成することが行われる。
【0007】
しかしながら、取引業者(証券会社)(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信をするのでは、その分、取引業者(証券会社)(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷が増大する。
特に、取引業者(証券会社)においては、レートを人間の作業により作成して1:多で配信している場合、レートの作成をするための人間の作業負担が増大する。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することなく、システムの負荷を低減するとともに、人間の作業負担を軽減し、かつ、約定率を上げることが可能な小口ST類の取引システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による小口ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーンなどの分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンなどの分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、複数の取引業者(証券会社)のシステムと、複数の前記取引業者(証券会社)のシステムと接続する、中央管理システム(または中央管理機能)とを有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有する主市場価格取得手段と、前記主市場価格取得手段が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理(保有)する機能を有するリーブ注文管理手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、さらに、前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、他の取引業者(証券会社)のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有することを特徴としている。
なお、本願明細書における「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上で稼働する、処理を自動化するプログラムである。
【0010】
また、本発明による小口ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーンなどの分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンなどの分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、複数の取引業者(証券会社)のシステムと、複数の前記取引業者(証券会社)のシステムと接続する、中央管理システム(または中央管理機能)とを有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する機能を有する類似市場価格取得手段と、前記類似市場価格取得手段が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理(保有)する機能を有するリーブ注文管理手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、さらに、前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、他の取引業者(証券会社)のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有することを特徴している。
【0011】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、前記主市場価格取得手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する機能を有し、前記IOI問い合わせ情報回送手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有し、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)の前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)するように構成されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、前記取引業者(証券会社)(のシステム)における前記回送リーブ注文受付手段が、前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた前記取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することのできる機能を有する約定条件見直し手段と、前記約定条件見直し手段によって当該リーブ注文についての約定条件をなす指値が当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ変更された約定条件見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定条件直し情報配信手段と、を有するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する機能を有する自己注文情報管理手段をさらに有し、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有し、前記約定可能性情報送信手段は、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による探索により、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する機能をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することなく、システムの負荷を低減するとともに、人間の作業負担を軽減し、かつ、約定率を上げることが可能な小口ST類の取引システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
【
図2】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける主市場価格取得手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図3】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける注文受付可能指値範囲設定手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図4】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるリーブ注文受付手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図5】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるリーブ注文管理手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図6】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるリーブ注文約定手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図7】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ情報回送手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図8】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける約定可能性情報受信手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図9】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるリーブ注文回送手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図10】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける回送リーブ注文受付手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図11】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける約定条件見直し手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図12】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける約定条件直し情報配信手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図13】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける問い合わせ情報管理手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図14】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ対当注文探索手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図15】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける約定可能性情報送信手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図16】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける自己注文情報管理手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図17】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの一部を概略的に示すフローチャートである。
【
図18】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの他部を概略的に示すフローチャートである。
【
図19】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れのさらに他部を概略的に示すフローチャートである。
【
図20】本発明の第2実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
【
図21】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける類似市場価格取得手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図22】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける注文受付可能指値範囲設定手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図23】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ情報回送手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図24】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ対当注文探索手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図25】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの一部を概略的に示すフローチャートである。
【
図26】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの他部を概略的に示すフローチャートである。
【
図27】本発明の第3実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
【
図28】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおける主市場価格取得手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図29】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ情報回送手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図30】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムにおけるIOI問い合わせ対当注文探索手段の機能及び構成を概念的に示すブロック図である。
【
図31】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの一部を概略的に示すフローチャートである。
【
図32】本実施形態にかかる小口ST類の取引システムを用いた処理の流れの他部を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
【0018】
上述のように、ST類のうち、みなし有価証券(信託財産受託権、匿名組合契約、合同会社の社員権など)である2項有価証券類に該当するST類や、1項有価証券類(株式、信託、有価証券など)に該当するST類を小口化したST類は、小規模で流動性が不十分であるものが非常に多い。
【0019】
小規模で流動性が不十分な小口のST類に対しては、多:多(板注文処理など)や1:多(レート配信処理)などの取引において、多くの顧客からの注文をシステムの内部で保有し、その売り買いの注文の流動性のバランスから価格妥当性を算出する手法を用いて処理することは、「取引価格が取引対象の価値を適正にあらわす」と定義される価格発見の観点からみて最適であるとは考え難い。
【0020】
また、小口のST類の取引における顧客をなす注文者は、妥当な価格を把握することの難しい素人の投資家が多いと推測される。
また、ST類については、ブロックチェーンなどの分散技術を用いた取引システムにおいて24時間リアルタイムに取引が行われ得ることから、取引価格が分散されてばらつきを生じ得る。このため、ST類についての約定価格の妥当性が得られるようにする必要がある。
【0021】
約定の可能性を高め、約定価格のばらつきを抑えるための方策としては、各取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けたリーブ注文のデータを各取引業者(証券会社)(のシステム)内部で統合し、統合したデータについてクロッシング処理を行うPTS型の注文集中処理が考えられる。
しかし、PTS型の注文集中処理は、各取引業者(証券会社)(のシステム)に実装するための条件(ハードル)が非常に高くコスト面での負担も膨大なものになると考えられる。
【0022】
通常、多:多(板注文処理など)の取引を処理する取引所やPTS(私設取引システム)では、顧客からの注文を受け付けたときに注文板(BOOK)を作成し、作成した注文板から複数気配情報や板情報、場合によってはレート化したレート情報などを生成することが行われる。
【0023】
しかしながら、取引業者(証券会社)(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信をするのでは、その分、取引業者(証券会社)(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷が増大する。
特に、取引業者(証券会社)においては、レートを人間の作業により作成して1:多で配信している場合、レートの作成をするための人間の作業負担が増大する。
【0024】
証券において、マーケットインパクトを誘導する要因は2つあり、一つは大口注文(1注文あたりの影響が大きい)であり、もう一つは流動性の少ない銘柄(少額注文であっても影響が大きい)である。そのため、ダークプールなど気配情報などを開示しないことで、マーケットインパクトを下げる工夫が行われている。
ただし、このダークプールは主に大口注文の処理が多く、小口のインパクトのある取引については、マーケットメイク型の注文処理となる傾向にある。マーケットメイク型の注文処理は、海外での応用が殆どとなり、国内では実用化が難しい状況である。
即ち、国内では注文処理については集中型による価格発見とした自動処理が主体であり、マーケットメイクのような価格妥当性を算出するプライシング機能を主体としたサービスは日本では殆ど普及していない。そして、国内において少額取引は、主に1:1型の電話などの取引交渉かクロッシング処理により行われる状況にある。
【0025】
そこで、本発明者は、少額取引において1:1型の形式をとるが、その注文状況や問い合わせ情報を参加ネットワーク内でシステム的に有効活用することで、注文情報を開示し相場操縦を誘導できない中で、多:多のような効率的な価格発見を行うことの可能な方策について考察、検討を行った。
そして、本来は注文処理を行うクロッシングエンジンが注文を受け付けて管理し、気配や注文板情報を開示し、注文を呼ぶが、本件発明者は、流動性を供給する1もしくは数体の注文処理機能に、注文の問い合わせが行われ、その問い合わせ記録(注文ではない)を保持し、記録している問い合わせ情報同士がクロッシングするときに、問い合わせ先へ注文を出して約定を促すようにすることを考えた。以下に考察、検討の過程を詳説する。
【0026】
まず、本件発明者は、特に、デジタル証券類(ST類、ただし暗号資産や銀行取引など金融全般に応用可能とする)の取引に関し、既存の多:多(板注文処理など)や1:多(レート配信処理)などの取引ではなく、1:1の相対取引をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で効率的に処理し、かつ、約定率を上げるための方策について、次のように考察、検討を行った。
【0027】
株式、信託、有価証券など、1項有価証券類に該当するST類の取引においては、大口(ホールセール市場)のST類を対象とした主市場が存在し、小口(リテール市場)のST類を別処理として扱うことが想定される。
【0028】
一般に、大口系の取引においては、取引データを日次で集計し、サマリ処理を行ったあと、T+2など数日後に清算を行う。
これに対し、小口系の取引においては、注文者である顧客などの取引者について供与し得る信用が有るか否かが不明確であるため、購入代金の支払いを前払いとし、取引成立時に即時決済することが望まれる。
【0029】
小口のST類の取引における処理のタイプ
小口のST類の取引における処理としては、次の2つのタイプが考えられる。
(1)大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格で、小口のST類の価格形成を行うタイプ(株式、信託、有価証券など、1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)。
(2)大口のST類の主市場が存在しない場合、類似市場での売買価格(例えば、運用体などの開示する基準価格)をベースとした所定範囲の価格で、小口のST類の価格設定(プライシング)を行うタイプ(2項有価証券類(みなし有価証券)に該当するST類を対象とした処理)。
【0030】
上記(1)のタイプの取引における処理(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)としては、例えば、PTS(私設取引システム)による、主市場での売買価格を用いて行う処理が考えられる。
上記(2)のタイプの取引における処理(2項有価証券類(みなし有価証券)に該当するST類を対象とした処理)としては、例えば、マーケットメイクを行う取引業者(証券会社)がレートなどの設定価格(プライス)を提示して行う処理が考えられる。
【0031】
小口のST類の取引における処理を効率化するための方策についての考察・検討
上記(1)のタイプの取引における処理を効率化するための方策
本件発明者は、ブロックチェーンなどの分散技術を用いたデジタル資産の取引システムを用いて小口のST類の取引を効率的に処理するための方策について、例えば、上記(1)のタイプの取引における処理(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)について、コモデティの取引における処理を参考に用いて、次のような考察、検討を行った。
【0032】
コモデティの取引における処理では、コモデティの主市場が海外であることから、取引単位と為替についての変換を行い、法定通貨として¥をベースとしたレートを生成する。そして、生成したレートを所定の取引アプリケーションが受け取る。顧客は取引アプリケーションが受け取ったレートを、注文を発注する際の参考価格として用い、ある程度の約定価格とのズレを想定してスリッページ幅を指定した注文価格で、取引業者(証券会社)(のシステム)に注文を発注する。
【0033】
ここで、本件発明者は、小口のST類の取引における処理については、顧客からの注文を受けた取引業者(証券会社)(のシステム)が、顧客からの注文と約定し得る他の注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、他の取引業者(証券会社)(のシステム)へ1対1の問い合わせを行い、問い合わせた順番を優先しながら、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受けた当該顧客からの注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客からの他の注文の約定条件と合致した場合に、約定させることができるようにすることを考えた。
【0034】
この処理方法は、マーケットメイクを行う取引業者(証券会社)がレートを作成して1:多で配信し、顧客が配信されたレートに対し約定条件と合致する注文を発注し、マーケットメイクを行う取引業者(証券会社)が作成・配信したレートで顧客の注文と約定する方法とは、取引業者(証券会社)(のシステム)における、注文が約定するまでの注文データの送信方向が逆向きとなる。マーケットメイクを行う取引業者(証券会社)(のシステム)がレートを1:多で配信すると、配信したレートが裁定取引などに用いられることによって顧客に不利な方向へ変動し、顧客に有利となる価格での約定にはならないケースが考えられる。
【0035】
このため、本件発明者は、流動性の少ない小口のST類の取引における処理については、上述のように、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせを行い、約定させる方式を用いることが好ましいと考えた。
【0036】
また、本件発明者は、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせにより約定し得る注文の約定可能性情報は、各取引業者(証券会社)(のシステム)に配信されるようにすることを考えた。
なお、他の取引業者(証券会社)(のシステム)への問い合わせの順番は、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)を優先させることを考えた。取引業者(証券会社)の営業時間は、例えば24時間取引を行う取引業者(証券会社)や、通常営業時間帯のみ取引を行う取引業者(証券会社)など、多様に異なる。このため、顧客からの注文を受けた取引業者によるIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ時刻に、営業を行っていて、当該問い合わせの注文と約定し得る他の注文の有無についての探索処理を行うことが可能な他の取引業者(証券会社)(のシステム)が優先的に対象となるようにする。
また、本件発明者は、取引業者(証券会社)の営業時間については、取引業者(証券会社)(のシステム)間で情報を共有化できるようにすることを考えた。
【0037】
IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での問い合わせは、1対1の相対処理であり、問い合わせ元である顧客からの取引業者(証券会社)(のシステム)への注文は、証券取引所を介在させずに証券会社内(のシステム)で注文を突き合わせて双方の注文の指値が対当する場合に約定させるダークプールと同様、基本的には指値で行われるようにすることを考えた。
このため、他の取引業者(証券会社)(のシステム)が、顧客からの注文を受けた取引業者(証券会社)(のシステム)からのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせを受け付けて、当該問い合わせの注文と(指値が対当し)約定し得る他の注文の有無についての探索処理を行ったとしても、即時には約定しない場合があり得ると考えられる。また、顧客が取引業者(証券会社)(のシステム)へ指値で注文を発注している時点では、他の取引業者(証券会社)の営業時間外であってもよく、また、実際の約定時刻と、約定報告を受ける時刻とに時間的なズレが発生しても問題ないと考えた。特に、外国証券取引などにおいては、そのような時間的なズレが生じ得ると考えられる。
【0038】
このように、本件発明者は、デジタル資産の取引システムを用いた小口のST類の取引における処理では、顧客からの注文は、取引業者(証券会社)(のシステム)が作成して1:多で配信したレートに対する注文ではなく、市場時価をベースとした注文であるものとし、顧客からの注文を受けた取引業者(証券会社)(のシステム)が他の取引業者(証券会社(のシステム))へIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせとして回送するようにすることを考えた。
【0039】
このようにすれば、取引業者(証券会社)(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信の必要性が無くなり、その分、取引業者(証券会社)(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷を低減することができると考えられる。
特に、取引業者(証券会社)においては、レートを人間の作業により作成して1:多で配信している場合が多いが、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせによる約定方式であれば、レートの作成が不要となるため、人間の作業負担を軽減することができる。
【0040】
また、本件発明者は、問い合わせを受けた、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)がIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせにおける、問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)からの問い合わせ件数を増やして、双方の指値注文が対当する頻度や約定率を上げるための条件についての見直し(例えば、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせを受けた、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)が管理(保有)する他の(例えば、他の顧客からの)注文の指値についての当該他の取引業者(証券会社)にとって不利な方向への変更)を行い、見直し後にIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせによる指値注文の提示者(問い合わせをした、問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム))に対し、当該見直し情報を配信することもできるようにすることも考えた。
【0041】
通常、多:多(板注文処理など)の取引を処理する取引所やPTS(私設取引システム)では、顧客からの注文を受け付けたときに注文板(BOOK)を作成し、作成した注文板から複数気配情報や板情報、場合によってはレート化したレート情報などを生成することが行われる。
【0042】
これに対し、本件発明者が考察、検討する、デジタル資産の取引システムを用いた小口のST類の取引における処理では、顧客からの注文を受け付けたときに取引業者(証券会社)(のシステム)が注文板の作成などをするのではなく、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対し、顧客からの注文と約定し得る他の注文の有無についての問い合わせをし、顧客からの注文を受け付けた、各取引業者(証券会社)(のシステム)からの問い合わせをセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)が受け付け、受け付けた問い合わせの元となる夫々の顧客からの指値を含む注文情報を問い合わせ情報として集中的に管理するようにする。
そして、各取引業者(証券会社)(のシステム)を、指値を含む注文情報を集中的に管理するセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に繋ぐことで、顧客からの注文を受け付けた各取引業者(証券会社)(のシステム)は、顧客からの注文と約定し得る他の注文の有無について1対1の問い合わせをすれば、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)を介して、当該顧客からの注文と約定し得る他の注文を管理(保有)する他の取引業者(証券会社)を把握できるため、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)が相互に約定し得る注文同士の約定可能性有りの情報を当該注文についての問い合わせをした当該取引業者(証券会社)(のシステム)に送信することで、各取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する個別注文同士を対当させることができるようになると考えた。
また、本件発明者は、所定の場合には、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)の自己が相手となり、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせのあった注文に対し、自己の注文が対当した場合に、自己の注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を送信することもできるようにすることを考えた。
【0043】
また、本件発明者は、上記(1)のタイプのST類の取引における処理(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)において、大口証券取引などが存在する場合も、大口証券取引での価格をベースとした一定範囲の価格で、上記と同様のIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせにより約定させる方式でST類の小口取引を行うことができるようにすることを考えた。
【0044】
上記(1)のタイプのST類の取引における処理(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせによる約定方式でのST類の小口取引を行うことができるようにすれば、取引業者(証券会社)(のシステム)がレートなどの価格情報の作成や1:多での配信をしないで済むため、取引業者(証券会社)(のシステム)は、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、システムの負荷を低減し、人間の作業負担を軽減することができると考えられる。
【0045】
上記(2)のタイプの取引における処理を効率化するための方策
次に、上記(2)のタイプのST類の取引における処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)については、例えば、不動産系STなど信託系のST類に関し、運用体による運用状況などにより、もしくは市場の動向(加熱・閑散など)により、類似市場での売買価格をベースとした一定範囲の価格で調整した基準値を算出する。そして、基本的に主市場での情報が無いことから、各取引業者(証券会社)(のシステム)は、顧客からの基準値を元にしたリーブ注文を受け付け、一定時間の間隔(例えば4時間単位など)ごとに、所定の同一時間内(例えば、1分間)において、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対して、各取引業者(証券会社)(のシステム)が管理(保有)しているリーブ注文と約定し得る他の注文の有無についての1対1の問い合わせを集中的に回送し、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)を介して、集中的に管理される注文同士でのクロッシング処理を行うようにすることを考えた。
【0046】
取引業者(証券会社)(のシステム)ごとに受け付ける顧客からのリーブ注文の数が少ないと、各取引業者(証券会社)(のシステム)内で管理(保有)している注文間でのクロッシング処理によっては約定する場合が少なく、あるいは、約定しても取引業者(証券会社)(のシステム)ごとに約定価格が分散してばらつきが生じてしまうことが考えられる。
そこで、このような課題に対処するために、本件発明者は、各取引業者(証券会社)(のシステム)内で管理(保有)している顧客からのリーブ注文の問い合わせを各取引業者(証券会社)(のシステム)と接続するセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に集中的に回送して、注文情報を問い合わせ情報として集中的に管理させ、問い合わせ情報として集中的に管理されるリーブ注文をダークプールのように処理することを考えた。また、顧客からのリーブ注文は各取引業者(証券会社)(のシステム)に分散しているが、クロッシング時間を決めておき、各取引業者(証券会社)(のシステム)がセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対し、問い合わせ可能な所定時間内に集中的に問い合わせるようにすれば、双方の指値注文が対当する頻度や、約定率を上げることができるようになると考えた。例えば、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対し、所定時間内に各取引業者(証券会社)(のシステム)からの問い合わせを集中させて、1分間のクロッシング時間を設けるようにすれば、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)を介して、売りと買いのリーブ注文についての問い合わせに対し1分以内は仮想的にダークプールのように処理できると考えられる。
【0047】
約定の可能性を高め、約定価格のばらつきを抑えるための方策としては、各取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けたリーブ注文のデータを各取引業者(証券会社)(のシステム)内部で統合し、統合したデータについてクロッシング処理を行うPTS型の注文集中処理が考えられる。
しかし、PTS型の注文集中処理は、各取引業者(証券会社)(のシステム)に実装するための条件(ハードル)が非常に高くコスト面での負担も膨大なものになると考えられる。
【0048】
このため、本件発明者は、各取引業者(証券会社)(のシステム)がPTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築しないで済むようにするための方策として、次の2種類の処理方式を考えた。
(A)(各取引業者(証券会社)(のシステム)は)複数の気配情報やレートなどを配信せず、各取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けた顧客からの注文の問い合わせをセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に集中させて、ダークプールのように処理する方式。
(B)(各取引業者(証券会社)(のシステム)は)顧客からの注文をセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に配信せずに、各取引業者(証券会社)(のシステム)が(実質的に指値の)リーブ注文をダークプールのように処理するとともに、定期的にIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式でセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に問い合わせを行い、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)を介して、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせによる注文同士の約定条件が合致する場合に、個別に約定させる処理方式。
これら2種類の処理方式であれば、コストなどが低減できると考えられる。
そもそも、これらの処理方式を用いる対象となる例えば上記(2)のタイプのST類の取引における処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)では、約定の基準となる価格が運用体などから開示され、その基準となる価格で顧客がリーブ注文を発注することで、約定することもあり得る。そのため、本件発明者は、上記(2)のタイプのST類の取引における処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)を行うために、高価なPTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することは、過剰であり非効率で不要であると考えた。
【0049】
上記(2)のタイプのST類の取引における処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)についても、類似市場での売買価格(例えば、運用体などの開示する基準価格)をベースとした一定範囲の価格でIOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせによる約定方式でのST類の小口取引を行うようにすれば、取引業者(証券会社)(のシステム)がレートを作成・発信しないで済むため、取引業者(証券会社)(のシステム)は、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、システムの負荷を低減し、人間の作業負担を軽減することができると考えられる。
【0050】
さらに、本件発明者は、クロッシング処理の母体となる問い合わせ情報を集中的に管理するセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)を介しての約定成立が難しい場合、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)が、各取引業者(証券会社)(のシステム)から受け付けて管理する問い合わせ情報(問い合わせの元となる夫々の顧客からの指値を含む注文情報)を参照し自己として顧客からの注文に介在し、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせのあった注文に対し、自己の注文が対当した場合に、自己の注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を送信することで約定を促進させることができるようにすることを考えた。
上記(2)のタイプのST類の取引の処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)における、各取引業者(証券会社)(のシステム)内で管理(保有)している注文同士でのクロッシング処理では、セントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)が、問い合わせ情報(問い合わせの元となる夫々の顧客からの指値を含む注文情報)を参照し自己として顧客からの注文に介在して約定を促進させる場合においても、ダークプールのように処理する。
【0051】
さらに、本件発明者は、上記(1)のタイプの取引の処理(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした処理)における、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせにより約定させる方式と、上記(2)のタイプの取引の処理(2項有価証券類(みなし有価証券)であるST類を対象とした処理)における、各取引業者(証券会社)(のシステム)がセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対し、問い合わせ可能な所定時間内に集中的に問い合わせ、管理している注文同士でのクロッシング処理により約定させる方式とを融合することもできるようにすることを考えた。
【0052】
例えば、上記(1)のタイプの取引(1項有価証券類に該当するST類を小口化したものを対象とした取引)において、主市場が開いている時間帯は上記(1)のタイプのST類の取引の処理における、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせにより約定させる方式とし、主市場が閉まっている時間帯は上記(2)のタイプのST類の取引の処理における、各取引業者(証券会社)(のシステム)がセントラルのシステム(取引システム本体、または、セントラルのシステムとして選定された特定の取引業者(証券会社)のシステム)に対し、問い合わせ可能な所定時間内に集中的に問い合わせ、問い合わせ情報として集中的に管理している注文同士でのクロッシング処理により約定させる方式に切り替えることができるようにする。
この場合、上記(2)のタイプのST類の取引の処理における、問い合わせ情報として集中的に管理している注文同士でのクロッシング処理により約定させる方式への切り替えでは、主市場の終値の時価インデックス(ただし、市場閉鎖フラグになっている)をベースとして、取引業者(証券会社)側(のシステム)は主市場の終値を基準値としてスプレッドを開けて、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせをするための注文を受け付け可能な価格の範囲の設定などを行うようにする。
【0053】
なお、ここでの「時価インデックス」は、価格の妥当性がある(基準となる)値段を意味する。例えば、ゴールドトークンの場合は、海外の主要取引所のg当たりに換算した¥ベースの値段である。そして、「時価インデックス」は、例えば、ロイターなどの通信社が情報提供しているものを用いる。
不動産系のST類の場合は、不動産系のST類の運用体が基準価格を開示する。そこで、運用体が開示した基準価格から一定範囲(上下5%など)の価格を定めて、その範囲であれば、自由に約定できるようにする。
【0054】
上記のST類の取引処理についての全ての方策は、顧客からの注文を呼び込むための価格情報を取引業者(証券会社)(のシステム)が配信しないで済むため、取引業者(証券会社)(のシステム)は、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、システムの負荷を低減し、人間の作業負担を軽減することができると考えられる。
【0055】
さらに、本件発明者は、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせを介在させる取引について、次の考察、検討を行った。
一般的には、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)の情報はヒトが操作し、ヒトがIOI(相対取引方式的な取引意思表示)の情報を認識するという概念がある。
しかるに、他人に自分の保有する注文(マーケットインパクトを発生することになる注文)の情報は、極力開示を望まないことが考えられる。
即ち、注文情報については、極力広範囲には問い合わせすることを望まないことが実情として考えられる。発注した注文がマーケットインパクトを発生することになる注文である場合、先回り取引(フロントランニング)により、発注者が不利になる虞があるからである。
【0056】
そこで、本件発明者は、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)の情報をヒトに開示しないで1対1の問い合わせをすることを考えた。ダークIOI(非開示的に機械間で注文意思を確認するもの)として、注文の問い合わせ情報を非開示情報として機械間でのみ扱い、自動処理を行うようにすれば、フロントランニングを懸念することなく、効率的に対当する注文を見つけることができると考えられる。
つまり、実注文ではなく、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)としての問い合わせ情報を取引業者のシステムにおける機能間で行い、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)を注文的に流動性情報として扱うことで、PTS(私設取引システム)的な機能、もしくはそれ以上のシステム内部に隠されている流動性まで探し出すことが可能になると考えられる。
より詳しくは、PTSには、顧客の注文が全て回送されるわけではなく、自己が相手として受けて自己の注文としてインパクトが出ない範囲で注文を小刻みに出すケースが多いが、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)としての問い合わせ情報を取引業者のシステムにおける機能間で行うようにすれば、インパクトのある注文同士であっても、システム内部でヒトが認識できない状態で、インパクトが出ない範囲で小刻みに処理することができ、全てのインパクトのある注文問い合わせも可能になると考えられる。その結果、PTSには発注されないインパクトが非常に大きいIOI(相対取引方式的な取引意思表示)同士の注文を対当させることが可能になると考えられる。
【0057】
本件発明者は、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することなく、システムの負荷を低減するとともに、人間の作業負担を軽減し、かつ、約定率を上げるための方策について、このような考察、検討を重ねた末に、本発明の小口ST類の取引システムを導出するに至った。
【0058】
本発明の小口ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーンなどの分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンなどの分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、複数の取引業者(証券会社)のシステムと、複数の前記取引業者(証券会社)のシステムと接続する、中央管理システム(または中央管理機能)とを有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有する主市場価格取得手段と、前記主市場価格取得手段が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理(保有)する機能を有するリーブ注文管理手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、さらに、前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、他の取引業者(証券会社)のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有する。
【0059】
本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、『大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有する主市場価格取得手段と、前記主市場価格取得手段が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、』を有した構成とすれば、取引業者(証券会社)におけるレートの作成が不要となり、レートの作成をするための人間の作業負担を軽減することが可能となる。また、取引業者(証券会社)のシステムにおいて、1:多での配信の必要性が無くなり、システムの負荷を低減することが可能となる。そして、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、コストを低減することが可能となる。
【0060】
また、本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、『前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段』を有し、中央管理システム(または中央管理機能)が、『夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、』を有した構成とすれば、問い合わせ件数を集中させることにより、対当可能性を増やすことが可能となり、夫々の取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けた注文についての約定可能性を上げることが可能となる。
【0061】
また、本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、さらに、『前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、前記リーブ注文約定手段が、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能』を有した構成とすれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステムにおいてリーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を約定させることが可能となり、約定率をより上げることが可能となる。
【0062】
また、本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、『主市場価格取得手段が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段』を有した構成とすれば、流動性の低い小口のST類であっても、取引価格のばらつきを抑え、価格の妥当性を得ることが可能となる。
【0063】
また、本発明の小口ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーンなどの分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンなどの分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、小口ST類の取引システムであって、複数の取引業者(証券会社)のシステムと、複数の前記取引業者(証券会社)のシステムと接続する、中央管理システム(または中央管理機能)とを有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する機能を有する類似市場価格取得手段と、前記類似市場価格取得手段が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理(保有)する機能を有するリーブ注文管理手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有するリーブ注文約定手段と、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段と、を有し、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、を有し、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムは、さらに、前記約定可能性情報送信手段からの前記約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段と、前記約定可能性情報受信手段が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段と、他の取引業者(証券会社)のシステムの前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段と、を有し、前記リーブ注文約定手段は、さらに、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と前記回送リーブ注文受付手段が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有する。
本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、『小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する機能を有する類似市場価格取得手段と、前記類似市場価格取得手段が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段と、前記注文受付可能指値範囲設定手段が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段と、』を有した構成とすれば、取引業者(証券会社)におけるレートの作成が不要となり、レートの作成をするための人間の作業負担を軽減することが可能となる。また、取引業者(証券会社)のシステムにおいて、1:多での配信の必要性が無くなり、システムの負荷を低減することが可能となる。そして、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、コストを低減することが可能となる。
【0064】
また、本発明の小口ST類の取引システムのように、夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムが、『前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送』し、中央管理システム(または中央管理機能)が、『夫々の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された前記問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段と、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段と、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段と、』を有して構成すれば、主市場の存在しない、非常に流動性の低い小口のST類であっても、短時間に問い合わせ件数を集中させることにより、対当可能性を増やすことが可能となり、夫々の取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けた注文についての約定率を上げることが可能となる。
【0065】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、好ましくは、前記主市場価格取得手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する機能を有し、前記IOI問い合わせ情報回送手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、前記リーブ注文管理手段が管理(保有)し、かつ、未約定となっている前記リーブ注文受付手段が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を前記中央管理システム(または中央管理機能)へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有し、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が回送されたとき、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムの前記IOI問い合わせ情報回送手段から前記問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有する。
このようにすれば、大口のST類の主市場が存在する、小口のST類について、市場が閉じている時間帯においても、約定率を上げながら効率よく取引することが可能となる。
【0066】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、好ましくは、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)の前記IOI問い合わせ情報回送手段から回送された問い合わせ情報を優先して探索するように構成されている。
このようにすれば、約定率をより上げることが可能となる。
【0067】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、好ましくは、前記取引業者(証券会社)(のシステム)における前記回送リーブ注文受付手段が、前記リーブ注文回送手段により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた前記取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することのできる機能を有する約定条件見直し手段と、前記約定条件見直し手段によって当該リーブ注文についての約定条件をなす指値が当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ変更された約定条件見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定条件直し情報配信手段と、を有する。
約定可能性有りの情報が回送されても、回送時には取引業者の管理するリーブ注文は他の注文の約定が済んでおり、取引業者の管理するリーブ注文には、回送された他の取引業者のリーブ注文と対当し得る注文がない場合が考えられる。このような場合に、リーブ注文の指値を不利な方向(他の取引業者のリーブ注文にとっては有利な方向)への見直しを行い、見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に送信するようにすれば、指値を見直した当該注文が、他の取引業者のリーブ注文と対当して約定する可能性を上げることが可能となる。
【0068】
また、本発明の小口ST類の取引システムにおいては、好ましくは、前記中央管理システム(または中央管理機能)は、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する機能を有する自己注文情報管理手段をさらに有し、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段は、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、前記問い合わせ情報管理手段に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有し、前記約定可能性情報送信手段は、前記IOI問い合わせ対当注文探索手段による探索により、前記自己注文情報管理手段に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する機能をさらに有する。
このようにすれば、自己注文を介在させることで、各取引業者(証券会社)の管理する個別注文同士を約定させた後に、約定せずに残っている注文と対当させることが可能となり、約定率をより一層上げることが可能となる。
【0069】
従って、本発明によれば、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することなく、システムの負荷を低減するとともに、人間の作業負担を軽減し、かつ、約定率を上げることが可能な小口ST類の取引システムが得られる。
【0070】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照して説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図1の小口ST類の取引システム1は、トークン類(ブロックチェーンなどの分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨やステーブルコイン類(以下、デジタル通貨類)、トークン類とデジタル通貨類、もしくはトークン類同士、デジタル通貨類同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンなどの分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築され、複数の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)と、複数の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)と接続する、中央管理システム(または中央管理機能)30とを有している。
夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)は、主市場価格取得手段11と、注文受付可能指値範囲設定手段12と、リーブ注文受付手段13と、リーブ注文管理手段14と、リーブ注文約定手段15と、IOI問い合わせ情報回送手段16と、約定可能性情報受信手段17と、リーブ注文回送手段18と、回送リーブ注文受付手段19と、約定条件見直し手段20と、約定条件直し情報配信手段21と、を有している。
また、中央管理システム(または中央管理機能)30は、問い合わせ情報管理手段31と、IOI問い合わせ対当注文探索手段32と、約定可能性情報送信手段33と、自己注文情報管理手段34と、を有している。
【0071】
主市場価格取得手段11は、例えば、
図2に示すように、大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有して構成されている。
【0072】
注文受付可能指値範囲設定手段12は、例えば、
図3に示すように、主市場価格取得手段11が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有して構成されている。
【0073】
リーブ注文受付手段13は、例えば、
図4に示すように、注文受付可能指値範囲設定手段12が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有して構成されている。
【0074】
リーブ注文管理手段14は、例えば、
図5に示すように、リーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文を非開示の状態で管理(保有)する機能を有して構成されている。
【0075】
リーブ注文約定手段15は、例えば、
図6に示すように、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能を有して構成されている。
また、リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能も有して構成されている。
【0076】
IOI問い合わせ情報回送手段16は、例えば、
図7に示すように、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段15が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送する機能を有して構成されている。
【0077】
約定可能性情報受信手段17は、例えば、
図8に示すように、約定可能性情報送信手段33からの約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有して構成されている。
【0078】
リーブ注文回送手段18は、例えば、
図9に示すように、約定可能性情報受信手段17が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有して構成されている。
【0079】
回送リーブ注文受付手段19は、例えば、
図10に示すように、他の取引業者(証券会社)のシステムのリーブ注文回送手段18により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有して構成されている。
【0080】
約定条件見直し手段20は、例えば、
図11に示すように、取引業者(証券会社)(のシステム)における回送リーブ注文受付手段19が、リーブ注文回送手段18により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することのできる機能を有して構成されている。
【0081】
約定条件直し情報配信手段21は、例えば、
図12に示すように、約定条件見直し手段20によって当該リーブ注文についての約定条件をなす指値が当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ変更された約定条件見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有して構成されている。
【0082】
問い合わせ情報管理手段31は、例えば、
図13に示すように、夫々の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有して構成されている。
【0083】
IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、例えば、
図14に示すように、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有して構成されている。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)するように構成されている。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有して構成されている。
【0084】
約定可能性情報送信手段33は、例えば、
図15に示すように、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有して構成されている。
また、約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による探索により、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する機能をさらに有して構成されている。
【0085】
自己注文情報管理手段34は、例えば、
図16に示すように、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する機能を有して構成されている。
【0086】
その他、小口ST類の取引システム1は、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)に、約定後の注文を清算する清算手段(不図示)を有している。また、処理状態設定手段(不図示)を介して、約定した注文については、リーブ注文管理手段14における所定の処理状態を示す所定領域に“約定済”を示す値がセットされるように構成されている。また、清算手段(不図示)が清算した注文については、処理状態設定手段(不図示)を介して、リーブ注文管理手段14における所定の処理状態を示す所定領域に“約定済”を示す値がセットされるとともに、問い合わせ情報管理手段31に管理されている当該問い合わせ情報が消去されるように構成されている。
これらの清算手段(不図示)、処理状態設定手段(不図示)は、後述する各実施形態の小口ST類の取引システム1’、1”においても同様である。
【0087】
第1実施形態の小口ST類の取引システムを用いた処理の流れ
このような構成を備えた第1実施形態の小口ST類の取引システムを用いた処理の流れを
図17~
図19を用いて説明する。
【0088】
(S1-1)売買価格の取得~小口のST類の注文受付~問い合わせ情報の回送(図17)
第1実施形態の小口ST類の取引システム1においては、主市場価格取得手段11は、大口のST類の主市場での売買価格を取得する。
次いで、注文受付可能指値範囲設定手段12は、主市場価格取得手段11が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する。
リーブ注文受付手段13は、注文受付可能指値範囲設定手段12が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける。
リーブ注文管理手段14は、リーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文を、例えば、所定の管理領域にて、非開示の状態で管理(保有)する。
リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。また、リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。
IOI問い合わせ情報回送手段16は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送する。
【0089】
(S1-2)問い合わせ情報の管理~1対1での問い合わせによる対当する注文の探索~約定可能性有りの情報の送信(図18)
問い合わせ情報管理手段31は、夫々の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する。また、自己注文情報管理手段34は、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する。
IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、所定の前記取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)する。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する。
また、約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による探索により、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する。
【0090】
(S1-3)約定可能性有りの情報の受信~当該リーブ注文の当該他の取引業者(証券会社)のシステムへの回送(図19)
約定可能性情報受信手段17は、約定可能性情報送信手段33からの約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する。
リーブ注文回送手段18は、約定可能性情報受信手段17が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する。
当該他の取引業者(証券会社)のシステムのリーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。
【0091】
なお、約定後の注文は、清算手段(不図示)を介して清算される。また、約定した注文については、処理状態設定手段(不図示)を介して、リーブ注文管理手段14における所定の処理状態を示す所定領域に“約定済”を示す値がセットされる。また、清算手段(不図示)が清算した注文ついては、処理状態設定手段(不図示)を介して、リーブ注文管理手段14における所定の処理状態を示す所定領域に“約定済”を示す値がセットされるとともに、問い合わせ情報管理手段31に管理されている当該問い合わせ情報が消去される。
【0092】
(S1-4)その他の処理:約定条件の見直し
約定条件見直し手段20は、取引業者(証券会社)(のシステム)における回送リーブ注文受付手段19が、リーブ注文回送手段18により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することができる。
例えば、約定可能性有りの情報が回送されても、回送時には取引業者の管理するリーブ注文は他の注文の約定が済んでおり、取引業者の管理するリーブ注文には、回送された他の取引業者のリーブ注文と対当し得る注文がない場合、当該取引業者(証券会社)(のシステム)は、約定条件見直し手段20を介して、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更する。
【0093】
第1実施形態の小口ST類の取引システムの効果
第1実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、『大口のST類の主市場での売買価格を取得する機能を有する主市場価格取得手段11と、主市場価格取得手段11が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段12と、注文受付可能指値範囲設定手段12が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段13と、』を有した構成としたので、取引業者(証券会社)におけるレートの作成が不要となり、レートの作成をするための人間の作業負担を軽減することができる。また、取引業者(証券会社)のシステムにおいて、1:多での配信の必要性が無くなり、システムの負荷を低減することができる。そして、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、コストを低減することができる。
【0094】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、『リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段16』を有し、中央管理システム(または中央管理機能)30が、『夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)のIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段31と、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段32と、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段33と、』を有した構成としたので、問い合わせ件数を集中させることにより、対当可能性を増やすことができ、夫々の取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けた注文についての約定可能性を上げることができる。
【0095】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、さらに、『約定可能性情報送信手段33からの約定可能性有りの情報を非開示の状態で受信する機能を有する約定可能性情報受信手段17と、約定可能性情報受信手段17が、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文との約定可能性有りの情報を受信したとき、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の受け付けた当該顧客からのリーブ注文を当該他の取引業者(証券会社)のシステムに非開示の状態で回送する機能を有するリーブ注文回送手段18と、他の取引業者(証券会社)のシステムのリーブ注文回送手段18により回送されたリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有する回送リーブ注文受付手段19と、を有し、リーブ注文約定手段15が、さらに、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる機能』を有した構成としたので、夫々の取引業者(証券会社)のシステムにおいてリーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を約定させることができ、約定率をより上げることが可能となる。
【0096】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、『主市場価格取得手段11が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段12』を有した構成としたので、流動性の低い小口のST類であっても、取引価格のばらつきを抑え、価格の妥当性を得ることができる。
【0097】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、『IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)する』構成としたので、約定率をより上げることができる。
【0098】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、『取引業者(証券会社)(のシステム)における回送リーブ注文受付手段19が、リーブ注文回送手段18により回送されたリーブ注文を受け付けたときに、リーブ注文を受け付けた取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件の見直しとして、当該リーブ注文の指値を当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ非開示の状態で変更することのできる機能を有する約定条件見直し手段20と、約定条件見直し手段20によって当該リーブ注文についての約定条件をなす指値が当該取引業者(証券会社)にとって不利な方向へ変更された約定条件見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定条件直し情報配信手段21と、』を有した構成としたので、約定可能性有りの情報が回送されても、回送時には取引業者の管理するリーブ注文は他の注文の約定が済んでおり、取引業者の管理するリーブ注文には、回送された他の取引業者のリーブ注文と対当し得る注文がない場合に、リーブ注文の指値を不利な方向(他の取引業者のリーブ注文にとっては有利な方向)への見直しを行い、見直し情報を、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式での1対1の問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に送信するようにすることで、指値を見直した当該注文が、他の取引業者のリーブ注文と対当して約定する可能性を上げることができる。
【0099】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1によれば、中央管理システム(または中央管理機能)30が、『所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する機能を有する自己注文情報管理手段34をさらに有し、IOI問い合わせ対当注文探索手段32は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有し、約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32による探索により、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する機能をさらに有する』構成としたので、自己注文を介在させることで、各取引業者(証券会社)の管理する個別注文同士を約定させた後に、約定せずに残っている注文と対当させることが可能となり、約定率をより一層上げることが可能となる。
【0100】
第2実施形態
図20は本発明の第2実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図20の小口ST類の取引システム1’では、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)は、類似市場価格取得手段11’と、注文受付可能指値範囲設定手段12’と、リーブ注文受付手段13と、リーブ注文管理手段14と、リーブ注文約定手段15と、IOI問い合わせ情報回送手段16’と、約定可能性情報受信手段17と、リーブ注文回送手段18と、回送リーブ注文受付手段19と、約定条件見直し手段20と、約定条件直し情報配信手段21と、を有している。
また、中央管理システム(または中央管理機能)30は、問い合わせ情報管理手段31と、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’と、約定可能性情報送信手段33と、自己注文情報管理手段34と、を有している。
【0101】
類似市場価格取得手段11’は、例えば、
図21に示すように、小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する機能を有して構成されている。
【0102】
注文受付可能指値範囲設定手段12’は、例えば、
図22に示すように、類似市場価格取得手段11’が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有して構成されている。
【0103】
IOI問い合わせ情報回送手段16’は、例えば、
図23に示すように、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有して構成されている。
ここでの所定時刻は、例えば、4時間ごとなど、一定の時間的な間隔をあけたときの所定時刻から、例えば1分間など、分単位の短い時間的な間隔をあけた所定時刻までの時刻とするのが好ましい。
【0104】
IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、例えば、
図24に示すように、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16’から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有して構成されている。
ここでの所定の時間内は、例えば、1分間など、分単位の短い時間とするのが好ましい。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16’から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)するように構成されている。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有して構成されている。
【0105】
その他、リーブ注文受付手段13、リーブ注文管理手段14、リーブ注文約定手段15、約定可能性情報受信手段17、リーブ注文回送手段18、回送リーブ注文受付手段19、約定条件見直し手段20、約定条件直し情報配信手段21、問い合わせ情報管理手段31、約定可能性情報送信手段33と、自己注文情報管理手段34の構成は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1におけるものと略同じである。
【0106】
第2実施形態の小口ST類の取引システム1’を用いた処理の流れ
このような構成を備えた第2実施形態の小口ST類の取引システム1’を用いた処理の流れを
図25、
図26を用いて説明する。
(S2-1)売買価格の取得~小口のST類の注文受付~問い合わせ情報の回送(図25)
第2実施形態の小口ST類の取引システム1’においては、類似市場価格取得手段11’が、小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する。
次いで、注文受付可能指値範囲設定手段12’は、類似市場価格取得手段11’が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する。
リーブ注文受付手段13は、注文受付可能指値範囲設定手段12’が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける。
リーブ注文管理手段14は、リーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文を、例えば、所定の管理領域にて、非開示の状態で管理(保有)する。
リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。また、リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。
IOI問い合わせ情報回送手段16’は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する。
【0107】
(S2-2)問い合わせ情報の管理~1対1での問い合わせによる対当する注文の探索~約定可能性有りの情報の送信(図26)
問い合わせ情報管理手段31は、夫々の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16’から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する。また、自己注文情報管理手段34は、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する。
IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16’から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16’から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)する。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する。
また、約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’による探索により、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する。
その他、約定可能性有りの情報の受信~当該リーブ注文の当該他の取引業者(証券会社)のシステムへの回送、約定条件の見直しにおける処理は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1と略同じである。
【0108】
第2実施形態の小口ST類の取引システムの効果
第2実施形態の小口ST類の取引システム1’によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、『小口のST類の類似市場での売買価格(運用体などの開示する基準価格)を取得する機能を有する類似市場価格取得手段11’と、類似市場価格取得手段11’が取得した類似市場での小口のST類の売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲を設定する機能を有する注文受付可能指値範囲設定手段12’と、注文受付可能指値範囲設定手段12’が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける機能を有するリーブ注文受付手段13と、』を有した構成としたので、取引業者(証券会社)におけるレートの作成が不要となり、レートの作成をするための人間の作業負担を軽減することができる。また、取引業者(証券会社)のシステムにおいて、1:多での配信の必要性が無くなり、システムの負荷を低減することができる。そして、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築せずに済み、コストを低減することができる。
【0109】
また、本実施形態の小口ST類の取引システム1’によれば、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)が、『リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有するIOI問い合わせ情報回送手段16’』を有し、中央管理システム(または中央管理機能)30が、『夫々の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16’から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する機能を有する問い合わせ情報管理手段31と、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16’から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを集中的に非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有するIOI問い合わせ対当注文探索手段32’と、IOI問い合わせ対当注文探索手段32’による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する機能を有する約定可能性情報送信手段33と、』を有した構成としたので、主市場の存在しない、非常に流動性の低い小口のST類であっても、問い合わせ件数を集中させることにより、対当可能性を増やすことができ、夫々の取引業者(証券会社)(のシステム)が受け付けた注文についての約定可能性を上げることができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1と略同じである。
【0110】
第3実施形態
図27は本発明の第3実施形態にかかる小口ST類の取引システムの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図27の小口ST類の取引システム1”では、夫々の取引業者(証券会社)のシステム10(1)~10(n)(但し、nは2以上の整数)は、主市場価格取得手段11”と、注文受付可能指値範囲設定手段12と、リーブ注文受付手段13と、リーブ注文管理手段14と、リーブ注文約定手段15と、IOI問い合わせ情報回送手段16”と、約定可能性情報受信手段17と、リーブ注文回送手段18と、回送リーブ注文受付手段19と、約定条件見直し手段20と、約定条件直し情報配信手段21と、を有している。
また、中央管理システム(または中央管理機能)30は、問い合わせ情報管理手段31と、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”と、約定可能性情報送信手段33と、自己注文情報管理手段34と、を有している。
【0111】
主市場価格取得手段11”は、例えば、
図28に示すように、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する機能を有して構成されている。
【0112】
IOI問い合わせ情報回送手段16”は、例えば、
図29に示すように、大口のST類の主市場が開いているときは、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有して構成されている。
【0113】
IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、例えば、
図30に示すように、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有して構成されている。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16”から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)するように構成されている。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能をさらに有して構成されている。
【0114】
その他、注文受付可能指値範囲設定手段12、リーブ注文受付手段13、リーブ注文管理手段14、リーブ注文約定手段15、約定可能性情報受信手段17、リーブ注文回送手段18、回送リーブ注文受付手段19、約定条件見直し手段20、約定条件直し情報配信手段21、問い合わせ情報管理手段31、約定可能性情報送信手段33と、自己注文情報管理手段34の構成は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1におけるものと略同じである。
【0115】
第3実施形態の小口ST類の取引システムを用いた処理の流れ
このような構成を備えた第3実施形態の小口ST類の取引システム1”を用いた処理の流れを
図31、
図32を用いて説明する。
【0116】
(S3-1)売買価格の取得~小口のST類の注文受付~問い合わせ情報の回送(図31)
第3実施形態の小口ST類の取引システム1”においては、主市場価格取得手段11”は、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する。
次いで、注文受付可能指値範囲設定手段12は、主市場価格取得手段11”が取得した大口のST類の主市場での売買価格をベースとした所定範囲の価格を、小口のST類の注文受付可能な指値範囲として設定する。
リーブ注文受付手段13は、注文受付可能指値範囲設定手段12が設定した指値範囲内の値段で指定された顧客からのリーブ注文を非開示の状態で受け付ける。
リーブ注文管理手段14は、リーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文を、例えば、所定の管理領域にて、非開示の状態で管理(保有)する。
リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文同士が対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。また、リーブ注文約定手段15は、リーブ注文管理手段14が管理(保有)する顧客からのリーブ注文と回送リーブ注文受付手段19が受け付けたリーブ注文とが対当する場合、当該リーブ注文同士を非開示の状態で約定させる。
IOI問い合わせ情報回送手段16”は、大口のST類の主市場が開いているときは、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する。
【0117】
(S3-2)問い合わせ情報の管理~1対1での問い合わせによる対当する注文の探索~約定可能性有りの情報の送信(図32)
問い合わせ情報管理手段31は、夫々の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から回送された問い合わせ情報を非開示の状態で集中的に管理する。また、自己注文情報管理手段34は、所定の自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を別途管理する。
IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
なお、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報への探索の順番について、売り注文と買い注文とで別々に、約定率の高い取引業者(証券会社)(のシステム)のIOI問い合わせ情報回送手段16”から回送された問い合わせ情報を優先(して探索)する。
また、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文の(銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む)情報を、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該自己注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する。
約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”による、問い合わせた順番を優先しながらの探索により、当該取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する当該顧客から受け付けたリーブ注文が、問い合わせ先である他の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する他の顧客から受け付けた他のリーブ注文の約定条件と合致した場合に、約定可能性有りの情報を、当該問い合わせを行った当該取引業者(証券会社)(のシステム)に非開示の状態で送信する。
また、約定可能性情報送信手段33は、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”による探索により、自己注文情報管理手段34に管理されている自己注文が、所定の取引業者(証券会社)(のシステム)の管理(保有)する顧客から受け付けたリーブ注文の約定条件と合致した場合に、自己注文と対当する注文についての問い合わせ元の取引業者(証券会社)(のシステム)に約定可能性有りの情報を非開示の状態で送信する。
その他、約定可能性有りの情報の受信~当該リーブ注文の当該他の取引業者(証券会社)のシステムへの回送、約定条件の見直しにおける処理は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1と略同じである。
【0118】
第3実施形態の小口ST類の取引システムの効果
第3実施形態の小口ST類の取引システム1”によれば、『主市場価格取得手段11”は、大口のST類の主市場が開いているときは、開いている主市場でのリアルタイムの売買価格を大口のST類の主市場での売買価格として取得し、大口のST類の主市場が閉じているときには、主市場の終値を大口のST類の主市場での売買価格として取得する機能を有し、IOI問い合わせ情報回送手段16”は、大口のST類の主市場が開いているときは、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ非開示の状態で回送し、大口のST類の主市場が閉じているときには、リーブ注文管理手段14が管理(保有)し、かつ、未約定となっているリーブ注文受付手段13が受け付けた顧客からのリーブ注文と約定し得る他のリーブ注文の有無について、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)形式で、当該リーブ注文(における銘柄名、売り買いの種別及び指値を含む情報)と当該取引業者(証券会社)のシステムの識別情報とを含んでなる問い合わせ情報を中央管理システム(または中央管理機能)30へ、所定時刻に集中的に、非開示の状態で回送する機能を有し、IOI問い合わせ対当注文探索手段32”は、大口のST類の主市場が開いているときは、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が回送されたとき、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を探索し、大口のST類の主市場が閉じているときには、所定の取引業者(証券会社)のシステムのIOI問い合わせ情報回送手段16”から問い合わせ情報が所定時刻に集中的に回送されたとき、所定の時間内において、問い合わせ情報管理手段31に管理されている他の問い合わせ情報と1対1での問い合わせを非開示の状態で集中的に行い、当該顧客から受け付けたリーブ注文と対当する他のリーブ注文を非開示の状態で探索する機能を有する』構成としたので、大口のST類の主市場が存在する、小口のST類について、市場が閉じている時間帯においても、約定率を向上させながら効率よく取引することができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の小口ST類の取引システム1と略同じである。
【0119】
従って、第1~第3実施形態によれば、PTS(私設取引システム)に該当するシステムを構築することなく、システムの負荷を低減するとともに、人間の作業負担を軽減し、かつ、約定率を上げることが可能な小口ST類の取引システムが得られる。
【0120】
以上、本発明の小口ST類の取引システムについて実施形態を用いて説明したが、本発明の小口ST類の取引システムは、上記実施形態で説明した構成に限られるものではなく、本発明の請求項の範囲内でどのような形態にも構成可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の小口ST類の取引システムは、小規模で流動性が不十分な小口のST類の取引を行うことが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0122】
1、1’、1” 小口ST類の取引システム
10(1)~10(n) 取引業者(証券会社)のシステム
11、11” 主市場価格取得手段
11’ 類似市場価格取得手段
12、12’ 注文受付可能指値範囲設定手段
13 リーブ注文受付手段
14 リーブ注文管理手段
15 リーブ注文約定手段
16、16’、16” IOI問い合わせ情報回送手段
17 約定可能性情報受信手段
18 リーブ注文回送手段
19 回送リーブ注文受付手段
20 約定条件見直し手段
21 約定条件直し情報配信手段
30 中央管理システム(または中央管理機能)
31 問い合わせ情報管理手段
32、32’、32” IOI問い合わせ対当注文探索手段
33 約定可能性情報送信手段
34 自己注文情報管理手段