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<図1>
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図1
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図2
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図3
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図4
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図5
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図6
  • 特許-薪ストーブ用蓄熱ユニット 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】薪ストーブ用蓄熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24B 13/00 20060101AFI20250114BHJP
   F24B 13/02 20060101ALI20250114BHJP
   F24B 1/02 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
F24B13/00 N
F24B13/02 G
F24B1/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023135849
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】517033296
【氏名又は名称】ヒューマニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140502
【氏名又は名称】株式会社岡本
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀江 耕太
(72)【発明者】
【氏名】若原 正敏
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-171298(JP,A)
【文献】米国特許第04328785(US,A)
【文献】特開2015-175577(JP,A)
【文献】米国特許第04574774(US,A)
【文献】米国特許第05469839(US,A)
【文献】特開2016-070643(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124081(JP,U)
【文献】国際公開第2006/072245(WO,A1)
【文献】特開2014-137168(JP,A)
【文献】特開2009-275936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24B 13/00-13/02
F24B 1/02
F24B 1/193-1/195
F23B 60/00-60/02
F23B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薪ストーブの燃焼室内に配置される蓄熱ユニットであって、
前記薪ストーブの前後方向を単に前後方向とするとき、
薪材を上方から覆うように構成されるとともに、前側ほど上側に位置するように傾斜している下面を有す鉄鋼材料製の板状の蓄熱部と、
前記蓄熱部を前記燃焼室の内壁から離間した状態で支持する支持部と、
開放されている前面部と、
前記蓄熱部の前縁から下方に延在する前側延在部を含むとともに、前記蓄熱部の下面に沿ったガスの移動を規制する規制部と、を備えており、
前記支持部は、上下方向に延在するとともに前記燃焼室の底部に載置されて前記蓄熱部を下方から支持するように構成されており、
前記燃焼室から取り出し可能に構成されている、
薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【請求項2】
前記蓄熱部よりも下方において前記支持部により支持されるとともに薪材が載置される載置板を備え、
前記載置板は、
前記支持部の下端よりも上方に位置する載置板本体と、
前記載置板本体の上方と下方とを連通するとともに前記載置板本体から上方に突出する連通部と、を有している、
請求項1に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【請求項3】
前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を幅方向とするとき、
前記支持部は、前記蓄熱部の前記幅方向の両側からそれぞれ下方に延在する2つの側壁部を有しており、
前記蓄熱部、2つの前記側壁部、及び前記載置板によって囲まれた部分を後側から覆う後壁部を備えており、
前記規制部は、
前記前側延在部と、
2つの前記側壁部と、
前記後壁部と、を含んでおり、前記蓄熱部の周縁の全周にわたって設けられている、
請求項2に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪ストーブ用蓄熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薪ストーブが開示されている。特許文献1に開示の薪ストーブを含む従来の薪ストーブは、燃焼室を有する鋳鉄製のストーブ本体と、ストーブ本体に接続されて上方に延びる煙突とを備えている。ストーブ本体には、燃焼室内に空気を導入する導入口が設けられている。薪ストーブには、導入口を通じて燃焼室内に導入される空気量を調整可能な空気量調整手段が設けられている。空気量調整手段によって燃焼室に供給される空気量を調整することで、薪材の燃焼状態を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-20573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の薪ストーブにおいては、薪材の燃焼に伴い発生する熱(以下、燃焼熱)の多くが煙突から外部に排出される。また、ストーブ本体が熱容量の大きい鋳鉄製であるため、燃焼熱によってストーブ本体の温度が上昇するまでに長い時間を要する。これらのことから、薪ストーブが設置された部屋の温度が上昇するまでに長い時間を要するという問題がある。
【0005】
これに対して、薪材の燃焼を促進すべく燃焼室に導入される空気量を増やすと、薪ストーブが一時的に高温となるものの、薪材が早期に灰となるために新たな薪材を投入しなければならない。このため、薪材のもちの向上において改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、薪ストーブが設置された部屋の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材のもちを向上できる薪ストーブ用蓄熱ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための薪ストーブ用蓄熱ユニットの各態様を記載する。
[態様1]
薪ストーブの燃焼室内に配置される蓄熱ユニットであって、
前記薪ストーブの前後方向を単に前後方向とするとき、
薪材を上方から覆うように構成される蓄熱部と、
前記蓄熱部を前記燃焼室の内壁から離間した状態で支持する支持部と、
開放されている前面部と、を備えている、
薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0008】
薪材に着火して種火が形成されると、薪材の燃焼に伴い発生する熱(以下、燃焼熱)が上方に移動するとともに、蓄熱部に蓄えられるようになる。
蓄熱部は、薪ストーブの燃焼室の内壁から離間している。また、蓄熱部と薪ストーブの内壁との間には、鉄などの金属に比べて熱伝導率が約数千分の1である断熱性の高い空気が存在する。このため、蓄熱部から薪ストーブへの熱の移動が抑制されるので、蓄熱部の温度が早期に上昇するようになる。
【0009】
蓄熱部の温度が上昇した状態において、種火の上に新たな薪材を投入すると、当該薪材が加熱される。
薪材の温度が約250度以上に高められると、薪材の熱分解反応が進行することで薪材から可燃ガスが発生するようになる。可燃ガスが高温の蓄熱部に近づくことで、可燃ガスの温度が上昇して可燃ガスが燃焼するようになる。
【0010】
ここで、可燃ガスの周囲の温度が高いことから、薪ストーブの既設の空気量調整手段を通じて燃焼室内に供給される空気量を減らしても可燃ガスの燃焼を維持できる。高温下において空気量が適切に減らされた状態で可燃ガスが燃焼することによって、青色の火炎、すなわち高温の火炎が発生する。また、薪材から可燃ガスが発生しなくなった後においては、炭化された薪材、すなわち木炭が燃焼するようになる。木炭は、薪材よりも燃焼時間が長い。
【0011】
なお、蓄熱部の温度が十分に上昇した後においては、可燃ガスや薪材の燃焼に伴い発生する燃焼ガスや、煙、すなわち未燃焼ガスからの受熱などによって薪ストーブ自体の温度が上昇するようになる。上記燃焼ガスや煙は、蓄熱ユニットのうち開放されている前面部を通じて排出される。
【0012】
このように蓄熱部の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材から発生する可燃ガスを高温下において空気量を適切に減らした状態で燃焼させることができる。これにより、薪材の燃焼が主とされる従来の薪ストーブ、すなわち上記構成の蓄熱ユニットを使用しない場合に比べて、薪材のもちが向上する。
【0013】
さらに、空気量を適切に減らすことで煙突から排出される煙を減らすことができる。これにより、煙突からの排熱を減らして室内に残る熱を増やすことができるため、薪ストーブが設置された室内の温度を早期に上昇させることができる。
【0014】
また、蓄熱ユニットの前面部が開放されているため、使用者が、薪材や可燃ガスが燃焼している様子を薪ストーブの前面の覗き窓を通じて視認することが妨げられない。
また、触媒を有する薪ストーブにおいては、高温下において可燃ガスが燃焼することによって生じる高温の熱が触媒を加熱することで、触媒の温度を早期に上昇させて触媒を活性化させることができる。これにより、触媒による二次燃焼を早期に開始することができる。
【0015】
従来の薪ストーブにおいては、空気量が多いために薪ストーブの最高温度が高くなるとともに、薪ストーブの温度変化量が大きくなる。これにより、薪ストーブを構成する部品、特に薪ストーブ本体や、触媒の耐久性が低下するおそれがある。
【0016】
この点、上記構成によれば、薪ストーブの最高温度及び温度変化量が、蓄熱ユニットを使用しない場合に比べて小さくなる。これにより、薪ストーブを構成する部品、特に薪ストーブ本体や、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0017】
[態様2]
前記蓄熱部の下面は、前側ほど上側に位置するように傾斜している、
態様1に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0018】
薪ストーブにおいては、外部から導入される一次空気または二次空気の一部を、薪ストーブの前面に設けられた覗き窓の内面に沿って下方に流すことで、所謂エアカーテンを形成して覗き窓への煤の付着の抑制を図っている。二次空気は、薪材や可燃ガスが一次燃焼する際に発生した煙を燃焼させる(二次燃焼)。
【0019】
上記構成によれば、薪材の燃焼に伴い発生する煙が、蓄熱部の下面に沿って前側に移動するとともに、蓄熱ユニットのうち開放されている前面部を通じて上方に移動することで、薪ストーブの覗き窓の内面に沿って下方に流れる二次空気の一部と反応しやすくなる。したがって、二次燃焼を好適に促進することができる。
【0020】
[態様3]
前記蓄熱部の周縁から下方に延在するとともに、前記蓄熱部の下面に沿ったガスの移動を規制する規制部を備えている、
態様1または態様2に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0021】
同構成によれば、蓄熱部の周縁に設けられた規制部によって蓄熱部の下面に沿った煙などのガスの移動が規制されるため、薪材の燃焼熱が蓄熱部の直下に留まりやすくなる。これにより、蓄熱部の温度を一層早期に上昇させることができる。
【0022】
[態様4]
前記支持部は、上下方向に延在するとともに前記燃焼室の底部に載置されて前記蓄熱部を下方から支持する、
態様3に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0023】
同構成によれば、薪ストーブの燃焼室の底部に支持部を載置することで、燃焼室内に蓄熱ユニットを容易に配置することができる。また、蓄熱ユニットを燃焼室内から容易に取り出すことができるので、薪ストーブや蓄熱ユニットのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0024】
[態様5]
前記蓄熱部よりも下方において前記支持部により支持されるとともに薪材が載置される載置板を備え、
前記載置板は、
前記支持部の下端よりも上方に位置する載置板本体と、
前記載置板本体の上方と下方とを連通するとともに前記載置板本体から上方に突出する連通部と、を有している、
態様4に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0025】
薪ストーブにおいては、外部から導入される一次空気または二次空気の一部を、薪ストーブの前面に設けられた覗き窓の内面に沿って下方に流すことで、所謂エアカーテンを形成して覗き窓への煤の付着の抑制を図っている。
【0026】
上記構成によれば、エアカーテンを形成する一次空気または二次空気の一部が載置板と薪ストーブの底部との間に形成される空間に流入するとともに、載置板本体の上方と下方とを連通する連通部を通じて薪材へと供給されるようになる。連通部は、載置板本体から上方に突出しているため、薪材や木炭の燃焼に伴って生じる灰によって連通部が塞がれることが抑制される。また、連通部を通過する際に、一次空気または二次空気が加熱されるため、高温の空気を薪材に対して供給することができる。したがって、薪材や木炭の燃焼を好適に持続させることができる。
【0027】
[態様6]
前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を幅方向とするとき、
前記支持部は、前記蓄熱部の前記幅方向の両側からそれぞれ下方に延在する2つの側壁部を有しており、
前記蓄熱部、2つの前記側壁部、及び前記載置板によって囲まれた部分を後側から覆う後壁部を備えており、
前記規制部は、
前記蓄熱部の前縁から下方に延在する前側延在部と、
2つの前記側壁部と、
前記後壁部と、を含んでおり、前記蓄熱部の周縁の全周にわたって設けられている、
態様5に記載の薪ストーブ用蓄熱ユニット。
【0028】
同構成によれば、蓄熱ユニットが、蓄熱部、2つの側壁部、載置板、及び後壁部によって前方に開口部を有する箱状をなす。このため、薪材の燃焼熱が逃げにくくなるため、蓄熱部及びその直下に位置する薪材の温度を早期に上昇させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、薪ストーブが設置された部屋の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材のもちを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、一実施形態に係る薪ストーブ用蓄熱ユニットの斜視図である。
図2図2は、図1の蓄熱ユニットの正面図である。
図3図3は、図2の3-3線に沿った蓄熱ユニットの断面図である。
図4図4は、図1の蓄熱ユニットが薪ストーブの内部に載置された状態を示す断面図である。
図5図5は、蓄熱ユニットを用いた場合と用いていない場合とについての薪ストーブの燃焼試験結果であって、薪ストーブの触媒の温度及びストーブ本体の温度の時間推移を示すグラフである。
図6図6は、変形例の蓄熱ユニットの斜視図である。
図7図7は、他の変形例の蓄熱ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1図5を参照して、薪ストーブ用蓄熱ユニット(以下、蓄熱ユニット10)の一実施形態について説明する。
図1図4に示すように、蓄熱ユニット10は、薪ストーブ50の燃焼室51の底部52に載置可能に構成されるものである。本実施形態の蓄熱ユニット10は、蓄熱板11、2つの側壁部20、載置板15、後壁部30、及び前側延在部40を備えている。蓄熱板11が[課題を解決するための手段]における蓄熱部に相当する。
【0032】
なお、以降において、薪ストーブ50の前後方向及び上下方向をそれぞれ単に前後方向及び上下方向として説明する。また、前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を幅方向として説明する。
【0033】
<蓄熱板11>
図4に示すように、蓄熱板11は、燃焼室51の内壁53から離間するとともに薪材90を上方から覆うように構成されている。
【0034】
図1図4に示すように、蓄熱板11は、前側ほど上側に位置するように傾斜していることが好ましい。本実施形態の蓄熱板11は、幅方向に沿って延在する長辺を有する長方形板状である。蓄熱板11は、例えば鉄鋼材料製であることが好ましい。蓄熱板11は、鋳物鋼でもよいし、圧延鋼でもよい。
【0035】
<側壁部20>
図1及び図2に示すように、2つの側壁部20は、蓄熱板11の幅方向の両側からそれぞれ下方に延在している。本実施形態の側壁部20は、蓄熱板11の幅方向の縁部全体から下方に延在している。すなわち、側壁部20の上端は、前側ほど上側に位置するように傾斜している。
【0036】
図3に示すように、側壁部20の下端は、前後方向に沿って延在している。
側壁部20は、例えば鉄鋼材料製であることが好ましい。
2つの側壁部20は、上下方向に延在するとともに蓄熱板11を下方から支持する支持部12を構成している。
【0037】
<載置板15>
図1図4に示すように、載置板15は、薪材90が載置されるものであり、蓄熱板11よりも下方において2つの側壁部20により支持されている。
【0038】
載置板15は、側壁部20の下端よりも上方に位置する載置板本体16と、載置板本体16の上方と下方とを連通するとともに載置板本体16から上方に突出する連通部17とを有している。
【0039】
本実施形態の載置板本体16は、幅方向に沿って延在する長辺及び前後方向に沿って延在する短辺を有する長方形板状である。載置板本体16は、例えば鉄鋼材料製であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の連通部17は、筒状である。連通部17は、載置板本体16と同一の材料により形成されている。
<後壁部30>
図2図4に示すように、後壁部30は、蓄熱板11、2つの側壁部20、及び載置板15によって囲まれた部分を後側から覆っている。本実施形態の後壁部30は、幅方向に沿って延在する長辺及び上下方向に沿って延在する短辺を有する長方形板状である。後壁部30は、鉄鋼材料製であることが好ましい。
【0041】
<前側延在部40>
図1図4に示すように、前側延在部40は、蓄熱板11の前縁から下方に延在している。本実施形態の前側延在部40は、蓄熱板11の前縁全体から下方に延在している。前側延在部40は、幅方向に沿って延在する長辺及び上下方向に沿って延在する短辺を有する長方形板状である。
【0042】
前側延在部40の下縁、2つの側壁部20の前縁、及び載置板本体16の前縁によって開口部18が形成されている。すなわち、蓄熱ユニット10は、開放された前面部13を有している。
【0043】
<規制部14>
前側延在部40と、2つの側壁部20と、後壁部30とにより、蓄熱板11の周縁から下方に延在するとともに、蓄熱板11の下面に沿ったガスの移動を規制する規制部14が構成されている。本実施形態の規制部14は、蓄熱板11の周縁の全周にわたって設けられている。
【0044】
なお、蓄熱ユニット10の各構成同士の連結態様は、溶接でもよいし、ボルト及びナットを用いた締結であってもよい。また、凹凸の嵌め合いによって各構成同士を連結するようにしてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、薪ストーブ50の燃焼室51の底部52に蓄熱ユニット10が載置された状態において、載置板15に載置された薪材90に着火して種火が形成される。これにより、薪材90の燃焼に伴い発生する熱(以下、燃焼熱)が上方に移動するとともに、蓄熱板11に蓄えられるようになる。なお、図4において、薪ストーブ50内における一次空気の流れを実線にて示すとともに、二次空気の流れを長破線にて示している。
【0046】
蓄熱板11は、薪ストーブ50の燃焼室51の内壁53から離間している。また、蓄熱板11と薪ストーブ50の内壁53との間には断熱性の高い空気が存在する。このため、蓄熱板11から薪ストーブ50への熱の移動が抑制されるので、蓄熱板11の温度が早期に上昇するようになる。
【0047】
蓄熱板11の温度が上昇した状態において、種火の上に新たな薪材90を投入すると、当該薪材90が加熱される。
図4に白抜き矢印にて示すように、薪材90の温度が約250度以上に高められると、薪材90の熱分解反応が進行することで薪材90から可燃ガスが発生するようになる。可燃ガスが高温の蓄熱板11に近づくことで、可燃ガスの温度が上昇して可燃ガスが燃焼するようになる。
【0048】
ここで、可燃ガスの周囲の温度が高いことから、薪ストーブ50の既設の空気量調整手段を通じて燃焼室51内に供給される空気量を減らしても可燃ガスの燃焼を維持できる。なお、本実施形態では、薪ストーブ50内に二次空気を導入する通路の途中に空気量調整手段(図視略)が設けられている。高温下において空気量が適切に減らされた状態で可燃ガスが燃焼することによって、青色の火炎、すなわち高温の火炎が発生する。また、薪材90から可燃ガスが発生しなくなった後においては、炭化された薪材90、すなわち木炭が燃焼するようになる。
【0049】
なお、蓄熱板11の温度が十分に上昇した後においては、可燃ガスや薪材90の燃焼に伴い発生する燃焼ガスや、煙、すなわち未燃焼ガスからの受熱などによって薪ストーブ50自体の温度が上昇するようになる。図4に一点鎖線の矢印にて示すように、上記燃焼ガスや煙は、蓄熱ユニット10のうち開放されている前面部13を通じて排出される。
【0050】
このように蓄熱板11の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材90から発生する可燃ガスを高温下において空気量を適切に減らした状態で燃焼させることができる。これにより、薪材90の燃焼が主とされる従来の薪ストーブ50、すなわち蓄熱ユニット10を使用しない場合に比べて、薪材90のもちが向上する。
【0051】
さらに、空気量を適切に減らすことで煙突54から排出される煙を減らすことができる。これにより、煙突54からの排熱を減らして室内に残る熱を増やすことができるため、薪ストーブ50が設置された室内の温度を早期に上昇させることができる。なお、図4において、薪ストーブ50内における煙の流れを短破線にて示す。
【0052】
また、蓄熱ユニット10の前面部13が開放されているため、使用者が、薪材90や可燃ガスが燃焼している様子を薪ストーブ50の前面の覗き窓55を通じて視認することが妨げられない。
【0053】
また、高温下において可燃ガスが燃焼することによって生じる高温の熱が触媒56を加熱することで、触媒56の温度を早期に上昇させて触媒56を活性化させることができる。これにより、触媒56による二次燃焼を早期に開始することができる。
【0054】
ここで、図5を参照して、薪材90に着火してからの薪ストーブ50の触媒56の温度及びストーブ本体の温度を測定した結果について説明する。
なお、図5の実線は、蓄熱ユニット10を使用した場合の触媒56の温度の時間推移を示している。図5の二点鎖線は、蓄熱ユニット10を使用した場合のストーブ本体の温度の時間推移を示している。
【0055】
また、図5の破線は、蓄熱ユニット10を使用していない場合の触媒56の温度の時間推移を示している。図5の一点鎖線は、蓄熱ユニット10を使用していない場合のストーブ本体の温度の時間推移を示している。
【0056】
蓄熱ユニット10を用いていない場合の薪ストーブ50、すなわち従来の薪ストーブ50においては、空気量が多いために薪ストーブ50(ストーブ本体及び触媒56)の最高温度が高くなるとともに、薪ストーブ50の温度変化量が大きくなる。これにより、薪ストーブ50を構成する部品、特に薪ストーブ50の本体や触媒56の耐久性が低下するおそれがある。
【0057】
本実施形態の蓄熱ユニット10を使用した場合には、薪ストーブ50(ストーブ本体及び触媒56)の最高温度及び温度変化量が、蓄熱ユニット10を使用しない場合に比べて小さくなる。これにより、薪ストーブ50を構成する部品、特に薪ストーブ50の本体や触媒56の耐久性を向上させることができる。
【0058】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)蓄熱ユニット10は、薪ストーブ50の燃焼室51内に配置されるものであり、蓄熱板11と、支持部12と、前面部13とを備えている。こうした構成によれば、上述した作用を奏するため、薪ストーブ50が設置された部屋の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材90のもちを向上できる。
【0059】
(2)蓄熱板11は、前側ほど上側に位置するように傾斜している。
薪ストーブ50においては、外部から導入される一次空気または二次空気の一部を、薪ストーブ50の前面に設けられた覗き窓55の内面に沿って下方に流すことで、所謂エアカーテンを形成して覗き窓55への煤の付着の抑制を図っている。二次空気は、薪材90や可燃ガスが一次燃焼する際に発生した煙を燃焼させる(二次燃焼)。
【0060】
上記構成によれば、薪材90の燃焼に伴い発生する煙が、蓄熱板11の下面に沿って前側に移動するとともに、蓄熱ユニット10のうち開放されている前面部13を通じて上方に移動することで、覗き窓55の内面に沿って下方に流れる二次空気の一部と反応しやすくなる。したがって、二次燃焼を好適に促進することができる。
【0061】
(3)蓄熱ユニット10は、規制部14を備えている。
こうした構成によれば、蓄熱板11の周縁に設けられた規制部14によって蓄熱板11の下面に沿った煙などのガスの移動が規制されるため、薪材90の燃焼熱が蓄熱板11の直下に留まりやすくなる。これにより、蓄熱板11の温度を一層早期に上昇させることができる。
【0062】
(4)
支持部12は、上下方向に延在するとともに燃焼室51の底部52に載置されて蓄熱板11を下方から支持する。
【0063】
こうした構成によれば、薪ストーブ50の燃焼室51の底部52に支持部12を載置することで、燃焼室51内に蓄熱ユニット10を容易に配置することができる。また、蓄熱ユニット10を燃焼室51内から容易に取り出すことができるので、薪ストーブ50や蓄熱ユニット10のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0064】
(5)蓄熱ユニット10は、載置板15を備えている。載置板15は、載置板本体16と連通部17とを有している。
上記構成によれば、エアカーテンを形成する二次空気の一部が載置板15と薪ストーブ50の底部52との間に形成される空間に流入するとともに、載置板本体16の上方と下方とを連通する連通部17を通じて薪材90へと供給されるようになる。連通部17は、載置板本体16から上方に突出しているため、薪材90や木炭の燃焼に伴って生じる灰によって連通部17が塞がれることが抑制される。また、連通部17を通過する際に、一次空気または二次空気が加熱されるため、高温の空気を薪材90に対して供給することができる。したがって、薪材90や木炭の燃焼を好適に持続させることができる。
【0065】
(6)支持部12は、2つの側壁部20を有している。蓄熱ユニット10は、後壁部30を備えている。規制部14は、前側延在部40と、2つの側壁部20と、後壁部30とを含んでおり、蓄熱板11の周縁の全周にわたって設けられている。
【0066】
こうした構成によれば、蓄熱ユニット10が前方に開口部18を有する箱状をなす。このため、薪材90の燃焼熱が逃げにくくなるため、蓄熱板11及びその直下に位置する薪材90の温度を早期に上昇させることができる。
【0067】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・薪ストーブ50がサイドドアを備える場合には、蓄熱ユニット10の一方の側壁部20に孔を設けるようにすればよい。これにより、サイドドアにより開放された薪ストーブ50の側部開口及び上記孔を通じて薪材90を蓄熱ユニット10の内部に投入することができる。
【0069】
・例えば図6に示すように、2つの側壁部20及び後壁部30に蓄熱ユニット10の内外を連通する孔21,31を設けるようにしてもよい。この場合であっても、前側延在部40、2つの側壁部20のうち孔21よりも上側の部分、及び後壁部30のうち孔31よりも上側の部分によって規制部14が構成される。このため、上記効果(2)、(5)に準じた効果を奏することができる。
【0070】
・載置板本体16を例えばグレーチングなどの多孔板によって構成することもできる。この場合、連通部17を省略してもよい。
・載置板15を、上下方向において側壁部20の下端、すなわち支持部12の下端と同一位置に設けることもできる。
【0071】
・載置板15を省略することもできる。この場合、薪ストーブ50の燃焼室51の底部52上に薪材90を直接載置すればよい。
・蓄熱板11の上下方向の位置が前後方向において一定であってもよい。
【0072】
・蓄熱板11の下面に、多数の突起を設けるようにしてもよい。これにより、蓄熱板11の表面積が増えることで、蓄熱板11による蓄熱性能を効果的に高めることができる。
・規制部14は、蓄熱板11の周縁の全周にわたって設けられていなくてもよい。例えば上記実施形態や図6に示す変形例において、後壁部30を省略することもできる。
【0073】
・規制部14を省略することもできる。例えば図7に示すように、支持部12を、一対の側壁部20と後壁部30とからなる平面視コ字状をなすものとするとともに、蓄熱板11を支持部12の上端縁に載置されるものとすることもできる。この場合、側壁部20の上端は、上記実施形態と同様、前側ほど上側に位置するように傾斜している。蓄熱板11の前端には、屈曲して下方に延在する前側延在部40が連なっている。前側延在部40が側壁部20の前縁に係止されることで、前後方向における蓄熱板11の位置決めがなされている。この場合であっても、上記効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【0074】
・複数本の柱状の部材によって支持部12を構成することもできる。この場合、例えば蓄熱板11の各角部に支持部12を設けることが好ましい。
・支持部12は、上下方向に延在するとともに燃焼室51の底部52に載置されて蓄熱板11を下方から支持するものに限定されない。例えば、燃焼室51の内壁53から延びるとともに蓄熱板11を支持するものであってもよい。
【0075】
・蓄熱板11は長方形板状に限定されず、正方形板状や三角形板状など適宜変更可能である。
・蓄熱板11は、鉄鋼材料製に限定されず、溶岩プレートや、バーミキュライト板、耐熱レンガなどの他の材料によって形成することもできる。
【0076】
・本発明に係る蓄熱部は、上記実施形態及びその変形例において示した板状の蓄熱板11に限定されない。
・蓄熱部は、通電により加熱されるヒータ線を備えるものであってもよいし、プロパンガスなどの薪ストーブ50の外部から供給される可燃ガスを燃焼させる燃焼器を備えるものであってもよい。この場合、外部から供給される電力や可燃ガスなどの外部エネルギによって、蓄熱部の温度を、より早期に上昇させることができる。
【0077】
・本発明に係る蓄熱ユニットが適用される薪ストーブは、上記実施形態において例示したものに限定されない。例えば触媒56を備えていない薪ストーブに対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
10…蓄熱ユニット
11…蓄熱板
12…支持部
13…前面部
14…規制部
15…載置板
16…載置板本体
17…連通部
18…開口部
20…側壁部
21…孔
30…後壁部
31…孔
40…前側延在部
50…薪ストーブ
51…燃焼室
52…底部
53…内壁
54…煙突
55…覗き窓
56…触媒
90…薪材
【要約】
【課題】薪ストーブが設置された部屋の温度を早期に上昇させることができるとともに、薪材のもちを向上できる。
【解決手段】蓄熱ユニット10は、薪ストーブ50の燃焼室51内に配置されるものであり、薪材90を上方から覆うように構成される蓄熱板11と、蓄熱板11を燃焼室51の内壁53から離間した状態で支持する支持部12と、開放されている前面部13とを備えている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7