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  • 特許-歯面着色用組成物 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】歯面着色用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/25 20200101AFI20250114BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20250114BHJP
【FI】
A61K6/25
A61K6/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023562444
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2021019503
(87)【国際公開番号】W WO2022139407
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179473
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522146004
【氏名又は名称】アイオバイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AIOBIO Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】(Yeoksam-dong, Taeyoung Building) 801ho, 8 Floor, 38, Teheran-ro 4-gil, Gangnam-gu, Seoul, 06241 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】523235677
【氏名又は名称】テコザイム インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TECOZYME INC
【住所又は居所原語表記】106-1 ho,101,Daehak-ro Jongno-gu Seoul 03080,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ホン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ユン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514867(JP,A)
【文献】特表2013-514868(JP,A)
【文献】特表2013-515069(JP,A)
【文献】国際公開第2016/106173(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/084744(WO,A1)
【文献】特表2010-508346(JP,A)
【文献】特開2021-183584(JP,A)
【文献】Susumu ISHIMITSU et al.,Formation of a Hydroxyl Radical from Riboflavin Sodium Phosphate by Photo-Illumination,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,1997年,45,2107-2109,DOI:10.1248/cpb.45.2107
【文献】Ivan Katalinic et al.,The photo-activated and photo-thermal effect of the 445/970 nm diode laser on the mixed biofilm inside root canals of human teeth in vitro: A pilot study,Photodiagnosis and Photodynamic Therapy,2019年,26,277-283,DOI:10.1016/j.pdpdt.2019.04.014
【文献】Shiuh-Tsuen Huang et al.,The Influence of the Degradation of Tetracycline by Free Radicals from Riboflavin-5’-Phosphate Photolysis on Microbial Viability,Microorganisms,2019年,7,500,1-16,10.3390/microorganisms7110500
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00-6/90
A61K 8/00-8/99
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯面着色用の組成物であって、
リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含み、
前記組成物は、獲得被膜を着色させるものである
ことを特徴とする歯面着色用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、歯面細菌膜を着色させる
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムは 0.1~50.0mg/mlの濃度で含まれた
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の剤形が、粉末、エマルジョン、エアロゾル、または軟質や硬質のカプセルである
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、405nmの光の照射時に蛍光を発散する
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、歯面着色後に別途の洗浄が不要である
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の組成物を含む
ことを特徴とする歯面着色剤。
【請求項8】
前記歯面着色剤の剤形が、液体、ゲル、ジェル、クリーム、パウダー、フィルム、パッチ、タブレット、または固形である
請求項7に記載の歯面着色剤。
【請求項9】
前記歯面着色剤は、歯面着色後に別途の洗浄が不要である
請求項7に記載の歯面着色剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面着色用組成物に関し、具体的には、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人間の口腔には、常に、食品を通じて多量の細菌が入り込み、さらに、口腔内は高温多湿な状態となっているため、細菌が繁殖することが容易になっている。
【0003】
口腔内の細菌は、食品内の糖分及び澱粉の炭水化物を分解することで、歯を取り囲んでいる組職を破壊する。これらの細菌が歯の表面に持続的に取り付けられて無色の膜を形成するところ、これは歯面細菌膜と称される。
【0004】
このような歯面細菌膜は、新しい細菌と既存の細菌との増殖、及び細菌及び宿主の代謝物質の蓄積により、その固まりが次第に大きくなり、虫歯、風歯、口臭及び歯周病を引き起こす主な原因になる。これは、口腔内の自浄作用、すなわち、唾液により除去されることなく、歯磨きのような物理的な方法のみで除去可能である。歯磨きを疎かにすると、細菌がはっきりと除去されず、歯ぐきと歯との間、または歯と歯との間に残るようになり、時間が経過すると歯に細菌が取り付けられ、歯面細菌膜が再度形成される。
【0005】
一方、歯面細菌膜は、歯の表面に歯面細膜或いは獲得被膜という薄い膜から形成され得る。現在、光学装置を活用することで歯面細菌膜を確認できる方法が開発されているところ、従来技術には、膜が形成されたか、それとも形成されることが予想される初期の歯面細菌膜を観察することができないという問題がある。また、化学着色製品を活用して歯面細菌膜を確認する方法の場合、使用後の残余物質により審美性が低下され、直接に化学着色製品が吸着された歯面細膜を物理的に掻き出すべきだという不便な点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者は、歯面細菌膜の形成予定地及び初期の歯面細菌膜の観察ができる歯面着色用組成物を開発しようと鋭意研究を進めてきた。その結果、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムが、バイオフィルムのみならず獲得被膜にも着色できることを究明することで、本発明を完成するようになった。
【0007】
よって、本発明は、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物を提供することを目的としている。
【0008】
さらに、本発明は、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物を含む歯面着色剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者は、歯面細菌膜の形成予定地及び初期の歯面細菌膜の観察ができる歯面着色用組成物を開発しようと鋭意研究を進めてきた。その結果、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムが、バイオフィルムのみならず獲得被膜にも着色できることを究明した。
【0010】
本発明は、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物及びこれを含む歯面着色剤に関する。
【0011】
以下、本発明について、より詳しく説明する。
【0012】
本発明の一態様は、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物に関する。
【0013】
本発明において、「リボフラビン5-ホスフェートナトリウム」とは、下記の化学式1に表され、分子式C1724NaO11P、分子量514.4を有し、自然発生したビタミンB複合体の主要の成長・促進因子であるリボフラビンのリン酸ナトリウム塩の形態を意味する。
【0014】
前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムの塩の具体例として、リボフラビン5-ホスフェートナトリウム塩2水化物、またはリボフラビン5-ホスフェートナトリウム塩水化物であり得るが、これらに制限されない。
【0015】
【化1】
【0016】
前記組成物は、歯面細菌膜または獲得被膜を着色(染色)させるものであり得る。
【0017】
本発明において、「歯面細菌膜」とは、歯苔とも呼ばれる、虫歯と歯周病の主な原因になる歯石を形成する初期物質であって、獲得被膜に細菌が取り付けられてコロニーを成している状態を意味する。
【0018】
本発明において、「獲得被膜」とは、歯面、補綴物、歯石、人工物などの表面に形成される無構造、無細胞性の有機体膜であって、歯磨きをしても数分内に再形成され、酸から歯を保護する役割をするのに対し、細菌が歯に取り付けられることにおいて重要な役割をする後天性の薄い膜を意味する。
【0019】
本発明の上記の化学式1に表すリボフラビン5-ホスフェートナトリウムの獲得方法は、特に限定されず、当業界における公知の方法を用いて化学的に合成するか、市販中の物質を使用することができる。
【0020】
前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムは、溶媒化された形態だけではなく、非溶媒化された形態で存在することもできる。本発明のリボフラビン5-ホスフェートナトリウムは、結晶形または無晶形の形態で存在することが可能であり、これらの全ての物理的な形態は本発明の範囲に含まれる。
【0021】
前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムは、水溶液において陰電荷を帯びるリボフラビンホスフェートを生成させ、この物質が歯面細菌膜及び獲得被膜に静電気的に結合され得る。
【0022】
この際、リボフラビンホスフェートは、405nmの光の照射時に、濃度に応じて、薄緑色~赤色の蛍光を発散するので、本発明の組成物の処理後、405nmの照射時に、歯面細菌膜の形成予定地及び初期の歯面細菌膜を観察することができる。
【0023】
前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムの濃度は、0.1~50.0mg/ml、0.1~40.0mg/ml、0.1~30.0mg/ml、0.1~20.0mg/ml、0.1~10.0mg/ml、0.1~5.0mg/ml、0.1~4.0mg/ml、0.1~3.0mg/ml、0.1~2.0mg/ml、または0.1~1.0mg/mlであり得る。前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムの濃度が0.1mg/ml未満の場合、蛍光の強度が非常に低くて、歯面細菌膜が観察されなくなる可能性もある。なお、前記リボフラビン5-ホスフェートナトリウムの濃度が50.0mg/ml超過の場合、蛍光物質の消光効果により、むしろ蛍光の強度が小さくなる現象及び残留物質により審美性が毀損されてしまう結果が発生し得る。
【0024】
一方、本発明のリボフラビン5-ホスフェートナトリウムは、韓国の食品医薬品安全処から認証された食品添加物及び水溶性ビタミン(服用限度無し)であるため、口腔用組成物である歯面着色用組成物として使用することは安全であるという利点がある。
【0025】
また、上述したように、本発明のリボフラビン5-ホスフェートナトリウムは、405nmの光を照射した時のみに蛍光を発散し、別途の洗浄が要求されないので、蛍光を帯びる化学着色製品を歯面に被せて確認し、確認後には別途の洗浄過程が必須に従われる従来の着色用組成物に比べて、使用が簡便であり、且つ審美的にも優れているという利点がある。
【0026】
本発明の歯面着色用組成物の剤形は特に限定されず、粉末、料粒、錠剤、エマルジョン、エアロゾル、軟質や硬質のカプセル、滅菌注射溶液や滅菌粉末の形態であることができ、分散剤または安定化剤を追加に含むことができる。
【0027】
本発明の歯面着色用組成物は、剤形及び使用目的に応じて、通常的に使用している研磨剤、湿潤剤、気泡剤、結合剤、甘味剤、pH調節剤、防腐剤、薬効成分、香料、増白剤、色素、溶剤などを含むことができる。
【0028】
本発明の他の一態様は、リボフラビン5-ホスフェートナトリウムを含む歯面着色用組成物を含む歯面着色剤に関する。
【0029】
本発明において、「歯面着色剤」とは、歯面細菌膜(歯苔)または獲得被膜などを染色または着色するのに使用する製剤を意味する。
【0030】
前記歯面着色剤の剤形は特に限定されず、液体、ゲル、ジェル、クリーム、フィルム、パッチ、パウダー、タブレット、または固形製剤であり得る。
【0031】
上記の本発明の歯面着色用組成物及び前記歯面着色剤間の共通する内容は、本願の明細書が過度に複雑になるのを避けるために、その記載を省略する。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、歯面着色用組成物及びこれを含む歯面着色剤に関し、本発明に係る歯面着色用組成物は、歯面細菌膜(バイオフィルム)に対して着色(染色)されるだけでなく、歯面細菌膜の形成予定地、すなわち、獲得被膜に対しても着色(染色)されることが可能であり、本発明のリボフラビン5-ホスフェートナトリウムが発散する蛍光の色及び強度を分析して、歯面細菌膜の量及び性質に関する情報を多様に獲得可能であることを特徴とするところ、特に、初期の歯面細菌膜を観察する用途として有用に使用可能であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1a】本発明の一実施例に係る組成物の蛍光強度を評価した結果であって、図1aは、Qraycam Pro(AIOBIO、Seoul、Korea)で撮影したイメージ(左:白色光、右:青色光)であり、図1bは、蛍光分光器で測定した結果グラフである。
図1b】本発明の一実施例に係る組成物の蛍光強度を評価した結果であって、図1aは、Qraycam Pro(AIOBIO、Seoul、Korea)で撮影したイメージ(左:白色光、右:青色光)であり、図1bは、蛍光分光器で測定した結果グラフである。
図2】本発明の一実施例に係る組成物の獲得被膜に対する染色評価の結果を示す図である。(左:白色光、右:青色光)
図3】本発明の一実施例に係る組成物のストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)バイオフィルムに対する染色評価の結果を示す図である。(左の半円:対照群、右の半円:実験群)
図4】本発明の一実施例に係る組成物の多菌性バイオフィルムに対する染色評価の結果を示す図である。(左の半円:対照群、右の半円:実験群)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施例を通じて、本発明について、より詳しく説明する。これらの実施例は、ひたすら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に応じて本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を持った者にとって自明である。
【0035】
実験例1. リボフラビン5-ホスフェートナトリウム(以下、RPS)の蛍光強度の評価
【0036】
滅菌蒸溜水(DW、(1))、うがい(GG、スームグリーンうがい、(2))、唾液(S(F-X)、(3))及びフィルタリング唾液(S(F-O)、(4))別に100mg/ml RPS貯蔵溶液を製造した後、100、50、25、12.5、6.25、3.12、1.5、0.78、0.39、0.19及び0.1mg/mlの濃度に希釈してプレートを製作した。
【0037】
製造された各プレートをQraycam Pro(AIOBIO、Seoul、Korea)で撮影して、白色光及び青色光の映像を獲得した。次に、蛍光分光器(Varioskan、Excitation=405nm/Emission=520nm)を用いて蛍光強度を測定した。
【0038】
図1に示すように、イメージを肉眼により評価した結果、白色光(図1aの左)及び青色光(図1aの右)の映像の何れも溶媒間の蛍光の差を示しておらず、高濃度(100mg/ml)から低濃度(0.01mg/ml)に進むほど、赤色蛍光が緑色蛍光に変わることが分かった。
【0039】
また、蛍光分光器を用いてRPSの蛍光強度を濃度別に測定した結果、0.01mg/mlから0.39mg/mlに進むほど蛍光強度が増加した後、また減少する成り行きを示した。このような増加・減少の成り行きは溶媒に応じた差がなく、すべての溶媒において最大の蛍光強度は0.4mg/ml濃度であることが確認できた(図1b)。
【0040】
実験例2. RPSの獲得被膜(AP)に対する染色の評価
【0041】
RPSが唾液成分である獲得被膜も染色させるか否かを評価するために、以下のように実験を施した。
【0042】
人工唾液に牛の歯の試片を4時間沈積して、人工の獲得被膜を形成した。獲得被膜が形成された試片を2T(2-Tone)、RPS50(RPS50mg/ml)及びRPS0.4(RPS0.4mg/ml)に沈積させた。沈積させた後、蒸溜水に3回の水洗を実施した。その後、染色剤を適用した直後(Application)、第1回目の水洗後(1st washing)、第2回目の水洗後(2nd washing)、及び第3回目の水洗後(3rd washing)の映像を撮影(Qraycam Proを利用)して、段階別の染色の程度を確認した。
【0043】
[臨床で使用中の歯苔染色剤(2-Tone(2T))を10%濃度に希釈して、対照群として設定し、実験群としては、上記の実験例1の結果に基づいて、RPSが完全に溶解された最高濃度である50mg/ml及び蛍光強度が最も強い0.4mg/mlの2つの濃度に設定した。]
【0044】
図2に示すように、染色剤を適用した直後、RPS50及びRPS0.4は、何れも獲得被膜に染色された。第3回目の水洗後には、RPS50は、青色光(図2の右)のみから蛍光が観察され、RPS0.4は、水洗後、蛍光が消失された。特に、RPS50は、蛍光が水洗前に赤色から、水洗後に黄色に変わる特徴を示した。
【0045】
このような結果は、歯面細菌膜に取り付けられたRPSの残留量に応じて、各々異なる蛍光を示すことを意味するので、RPSが発散する蛍光の色及び強度を分析して、歯面細菌膜の量及び性質に関する情報をより一層、多様に獲得できることを示唆する。
【0046】
実験例3. RPSのストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)バイオフィルムに対する染色の評価
【0047】
S. mutansは、口腔内の主な病源菌であって、バイオフィルムをよく形成するため、単一菌種S. mutansバイオフィルムモデルを用いて、バイオフィルムに対するRPS染色の程度を評価するために、下記のように実験を施した。
【0048】
牛の歯の試片に獲得被膜を形成した後、S. mutans種子を接種した。上記の実験例2と同様に、3つの群(2T、RPS50及びRPS0.4)に分け、1つの群当たり24時間、48時間、及び72時間の間に成熟させたバイオフィルムを形成した。その後、各時間別(24時間、48時間、及び72時間)にバイオフィルムに染色剤を適用した直後(No washing)、及び第3回目の水洗後(After washing 3 times)にQraycam Pro映像を撮影した。この際、上記の実験例2の獲得被膜の実験結果のイメージを対照イメージとして使用した。
【0049】
図3に示すように、染色剤を適用した直後、RPS50は、試片全般に広がった赤色の蛍光を示し、第3回目の水洗後には培養時間が長くなるほど黄色の蛍光から黄色+赤色の蛍光に変わる特徴を示した。
【0050】
なお、染色剤を適用した直後、RPS0.4は、24時間バイオフィルムから黄色の蛍光のみが薄く観察されており、48時間及び72時間のバイオフィルムからは、試片の中央部位に赤色の蛍光が観察された。第3回目の水洗後には、24時間のバイオフィルムからは蛍光がほとんど示されておらず、48時間のバイオフィルムからは薄い黄色の蛍光、72時間のバイオフィルムからは僅かな赤色の蛍光が観察された。
【0051】
このような結果は、歯面細菌膜に取り付けられたRPSの残留量及び歯面細菌膜の成熟度に応じて、それぞれ異なる色の蛍光を示すことを意味するので、RPSが発散する蛍光の色及び強度を分析して、歯面細菌膜の成熟度、量、及び性質に関する情報をより一層、多様に獲得できることを示唆する。
【0052】
実験例4. RPSのMicrocosmバイオフィルムに対する染色の評価
【0053】
口腔内の歯苔は、多菌性微生物の群集であるため、これを模写した多菌種microcosmバイオフィルムモデルを用いて、バイオフィルムに対するRPS染色の程度を評価するために、以下のように実験を施した。
【0054】
牛の歯の試片に刺激性の唾液を接種して多菌性バイオフィルムを形成した。上記の実験例2と同様に、3つの群(2T、RPS50、及びRPS0.4)に分け、1つの群当たり24時間、48時間、及び72時間の間に形成されたバイオフィルムに適用した。その後、各時間別(24時間、48時間、及び72時間)にバイオフィルムに染色剤を適用した直後(No washing)、及び第3回目の水洗後(After washing 3 times)、Qraycam Pro映像を撮影した。この際、上記の実験例2の獲得被膜の実験結果のイメージを対照イメージとして使用した。
【0055】
図4に示すように、上記の実験例3のS. mutansバイオフィルムの結果に比べて、特徴的な差異が示されなかった。但し、全体的なバイオフィルムの量は少なく観察されたところ、これは多菌性微生物の群集のバイオフィルムの場合、各細菌の相互作用及び競争により、歯面細菌膜の形成が阻害された結果として解釈可能である。
【0056】
本発明に係る歯面着色用組成物は、歯面細菌膜(バイオフィルム)に対して着色(染色)されるだけでなく、歯面細菌膜の形成予定地、すなわち、獲得被膜に対しても着色(染色)されることができ、本発明のリボフラビン5-ホスフェートナトリウムが発散する蛍光の色及び強度を分析して、歯面細菌膜の量及び性質に関する情報を多様に獲得可能であることを特徴としているところ、特に、初期の歯面細菌膜の観察用途として有用に使用可能であることが期待される。

図1a
図1b
図2
図3
図4