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特許7618151オボアルブミン抗炎症ペプチド及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】オボアルブミン抗炎症ペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/107 20060101AFI20250114BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20250114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250114BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20250114BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20250114BHJP
【FI】
C07K5/107 ZNA
A61K38/07
A61P29/00
A61P39/06
A23L33/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024045450
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】202310811456.5
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524109614
【氏名又は名称】杭州佰倍優生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou BIBAU Biotechnology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 501 and 502, 5/F, Building 3, Dongzhan Garden Business Center, No. 768 Huanzhan East Road, Shangcheng District, Hangzhou, Zhejiang 310000, China
(73)【特許権者】
【識別番号】524109625
【氏名又は名称】北京林業大学
【氏名又は名称原語表記】Beijing Forestry University
【住所又は居所原語表記】No.35 Qinghua East Road, Haidian District, Beijing 100083, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王阿琴
(72)【発明者】
【氏名】任迪峰
(72)【発明者】
【氏名】余鈞
(72)【発明者】
【氏名】梁雅馨
【審査官】坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0220540(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114957396(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00 - 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列がPhe-Gly-Pro-HisであるFGPHであることを特徴とする抗炎症活性ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のFGPHの抗炎症薬物又は食品の製造における使用。
【請求項3】
FGPHのメイラード反応生成物FGPH-MRPsの製造方法であって、FGPHを秤量して水溶液に調製し、1.5:1割合のペプチド糖質量比にしたがってデキストランを加えて、十分に混合し、80℃、pH9.0下で10h反応させ、反応が終了した後、室温まで冷却すると、FGPHのメイラード生成物FGPH-MRPsを得るステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性ペプチドの技術分野に属し、特に、オボアルブミン抗炎症活性ペプチド及びそのメイラード反応生成物の製造と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生物活性ペプチドは、タンパク質に由来し、そのうち生物活性を持つ断片であり、基本的な栄養要求を超える独特な生物活性を持っており、ヒトの健康への貢献から、ますます注目が高まっている。ペプチドは親タンパク質の中に隠れている複雑な構造であるため、その生物活性の効果的な発揮が難しくなる。外部プロテアーゼの酵素分解、発酵等の生物化学反応又は胃腸管の消化を経た後、複数種類の生理機能を生成することができ、ヒトの健康に肯定的な影響を与える。
【0003】
近年、多くの研究が新型卵白タンパクペプチドの同定に取り組み、鶏のゲノムの公開により、複雑なサンプルからタンパク質とポリペプチドを同定する能力を大幅に向上させた。研究から、卵白タンパクを特定のプロテアーゼで酵素分解した後に同定して、異なる種類の生物活性ペプチドを得ることが分かった。
【0004】
メイラード反応とは、タンパク質、ポリペプチド及びアミノ酸に代表されるアミノ化合物と、還元糖、アルデヒド及びケトンに代表されるカルボニル化合物との間に発生する化学反応をいい、制御されるメイラード反応は、発展して色、風味を含む望ましい感覚属性を形成することができ、生物活性に影響を与えることもできる。
【0005】
現在、生物活性ペプチドは、すでに予防と治療に使用されており、中国は鶏卵産業の大国として、卵の生産量と消費量が世界最大であり、卵白は豊富なタンパク質を含有し、そして大量の生物活性物質を含有しているため、疾患の予防と治療、免疫調節等の生理機能を有している。今のところ、卵白の深層開発と利用が少ないことにより、良質タンパク資源が大量に浪費され、卵白タンパクの抗炎症活性ペプチドの深層加工と利用が欠けている。そのため、卵白タンパクを原料として高品質の卵白ポリペプチド製品を研究開発することは、良い展望と意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鶏卵の卵白は、豊富なタンパク質を含有し、生物活性ペプチドを製造する重要な供給源である。タンパク質/ペプチドがメイラード反応を経た後、活性がさらに向上し、かつ風味が改善される。そのため、本発明は、ポリペプチドが卵白タンパクの酵素分解により製造され、メイラード反応を経た後の活性及び風味の変化を調査する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にて提供される技術的解決手段1は、卵白抗炎症活性ペプチドであって、前記抗炎症活性ペプチドのアミノ酸配列はPhe-Gly-Pro-Hisであり、以下はFGPHと略称し、
前記抗炎症ペプチドFGPHは、卵白に対して酵素分解・スクリーニングを行うことによって取得することができ、人工合成の方式によっても取得できる。
【0008】
本発明にて提供される技術的解決手段2は、上記活性ペプチドFGPHの抗炎症反応における使用であり、特に抗炎症薬物、食品又は他の製品の製造における使用である。
【0009】
本発明にて提供される技術的解決手段3は、FGPHのメイラード反応生成物FGPH-MRPsである。
【0010】
さらに、前記FGPH-MRPsの製造方法は、次のとおりである。FGPHを秤量して水溶液に調製し、1.5:1割合のペプチド糖質量比にしたがってデキストランを加え、十分に混合し、80℃、pH9.0下で10h反応させ、反応が終了した後、室温まで冷却すると、FGPHのメイラード生成物FGPH-MRPsを得る。
【0011】
本発明にて提供される技術的解決手段4は、技術的解決手段3に記載のFGPHのメイラード反応生成物FGPH-MRPsの使用であり、特に、抗炎症反応における使用であり、特に抗炎症薬物、食品又は他の製品の製造における使用である。
【発明の効果】
【0012】
本願は、卵白から酵素分解して抗炎症ポリペプチドを製造し、一連の分離・精製・同定・合成を経た後、高い抗炎症活性を有するポリペプチドFGPHを取得する。FGPHを人工合成した後、抗炎症活性を検証することにより、濃度が500μg/mLである場合、LPSに誘導されたRAW264.7の炎症性媒体(NO)、炎症因子(TNF-α、IL-6、IL-1β)に対するFGPHの阻害率は、それぞれ64.41±0.47%、28.07±2.10%、41.72±1.83%、52.43±2.29%であることを発見した。
【0013】
抗炎症活性ペプチドFGPHの活性と風味に対するメイラード反応の影響をさらに調査した。フーリエ赤外線スペクトル及び走査型電子顕微鏡を利用してメイラード生成物FGPH-MRPsを調査することにより、反応前に比べ、構造及び形態の両方が変化したことを発見し、メイラード反応前後の活性の変化を測定することにより、LPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成量の阻害率は64.41±0.47%から68.16±0.48%まで向上し、DPPH、ABTS、ヒドロキシラジカルのクリアランス率EC50値は、それぞれ4.96±0.05mg/mLから4.07±0.03mg/mLまで低下し、0.81±0.01mg/mLから0.61±0.01mg/mLまで低下し、2.01±0.03mg/mLから1.56±0.02mg/mL低下することを発見し、官能評価及び電子舌測定評価によると、FGPHの味が改善され、電子鼻の測定評価によると、特徴的な匂いの応答値が明らかに向上した。これは、メイラード反応により、FGPHのNO阻害率、抗酸化活性及び風味が改善されることを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】細胞生存率に対する異なる分子量(>10kDa、5~10kDa、3~5kDa、<3kDa)のポリペプチドの影響である。
図2】NO生成量に対する分子量<3kDaのポリペプチドの影響である。
図3】分子量<3kDaのポリペプチド成分のトータルイオンクロマトグラムである。
図4】FGPHの化学構造である。
図5】FGPHとiNOSとの相互作用図である。
図6】細胞生存率に対するFGPHの影響である。
図7】細胞NO(A)、TNF-α(B)、IL-6(C)、IL-1β(D)分泌量に対する異なる濃度のFGPHの影響である。
図8】FGPH及びFGPH-MRPsの赤外線スペクトル分析図である。
図9】FGPH(A)及びFGPH-MRPs(B)の走査型電子顕微鏡画像である。
図10】細胞生存率に対するFGPH及びFGPH-MRPsの影響である。
図11】細胞のNO生成量に対するFGPH及びFGPH-MRPsの影響である。
図12】FGPH及びFGPH-MRPsの官能評価のレーダーチャートである。
図13】FGPH及びFGPH-MRPsの電子舌味覚指標のレーダーチャートである。
図14】FGPH及びFGPH-MRPsの電子鼻匂い指標のレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、具体的な実施例を参照しながら、本発明について一層詳細に説明する。本明細書に記述する具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0016】
本発明に記載の抗炎症ペプチドFGPHは、卵白に対して酵素分解・スクリーニングを行うことによって取得することができ、人工合成の方式によっても取得できる。
【0017】
本発明で採用した一部の試験方法は、以下のとおりである。
【0018】
1.抗炎症活性の測定
1.1 RAW264.7細胞の培養
10%ウシ胎児血清含有DMEM培地を調製し、マウスマクロファージ細胞RAW264.7を活性化させて迅速に培地に加え、顕微鏡下で細胞の形態を観察し、インキュベータに移して培養し、インキュベータの温度を37℃に設定し、CO濃度を5%に設定する。24h毎に細胞形態を観察し、継代を行い、0.25%パンクレアチン(0.01%EDTAを含有)を加えることにより細胞を消化してから、DMEM培地を加えて洗浄、細胞の遠心分離を行い、最後に、PBSを使用した洗浄、遠心分離を行った後、細胞を培養皿に接種して、後続の実験操作に供する。
【0019】
1.2 RAW264.7細胞生存率に対する影響
MTT法を用いてRAW264.7細胞の細胞生存率を測定する。100μL/ウェルにしたがって対数増殖期にあるRAW264.7細胞を96ウェルプレートに接種し、密度は4×10/ウェルである。PBS溶液で96ウェルプレートの最外層を液封し、96ウェルプレートをインキュベータに移して12~24h培養し、インキュベータの温度は37℃であり、CO濃度は5%である。細胞が壁に付着した後、96ウェルプレート中の廃棄上澄み液を吸引する。ブランク群(培養液を100μL加える)、LPS群(最終質量濃度が1μg/mLのLPSを100μL加える)及びサンプル群(質量濃度が異なるか又は同じペプチドを100μL加え、2h反応させた後に最終質量濃度が1μg/mLのLPSを加える)の3つの群を設定し、群毎に3つの重複ウェルを設計した。24h培養した後、濃度が5mg/mLのMTT溶液を20μL取って、各ウェルに加え、インキュベータで引き続き4h培養してから、ジメチルスルホキシド(DMSO)を100μL加えて10min軽く振り、マイクロプレートリーダーにより570nmでの吸光度値を測定し、細胞生存率(%)は、下式(1)によって算出される。
【数1】
【0020】
式中、Vは、細胞生存率(%)を代表し、Aは、ブランク群の570nmでの吸光度値であり、Aは、サンプル群の570nmでの吸光度値である。
【0021】
1.3 RAW264.7細胞のNO生成量に対する影響
細胞のNO生成量は、Griess法により測定される。群分け、処理及び培養方式は、いずれも1.2と同じであり、24h培養した後、上澄み液を収集し、NO検出キットを利用してNOの生成量を測定する。50μLの細胞上澄み液と50μLのGriessI試薬と50μLのGriessII試薬とを均一に混合し、5min静置した後、540nmでの吸光度値を測定する。NOキットの説明にしたがって、各サンプルのNO生成量を計算し、NO生成量の阻害率は、式(2)によって算出される。
【数2】
【0022】
式中、Bは、NO阻害率(%)を代表し、Bは、ブランク群のNO生成量であり、Bは、LPS群のNO生成量であり、Bは、サンプル群のNO生成量である。
【0023】
1.4 サイトカインTNF-α、IL-6、IL-1βの測定
100μL/ウェルにしたがって、対数増殖期にあるRAW264.7細胞を96ウェルプレートに接種し、密度は4×10/ウェルであり、ウェル毎に3つの重複を設計した。ブランク群(培養液を100μL加える)、LPS群(最終質量濃度が1μg/mLであるLPSを100μL加える)及びサンプル群(濃度がそれぞれ異なるペプチドを100μL加え、2h反応させた後、最終質量濃度が1μg/mLであるLPSを加える)を設定し、3つの群をそれぞれインキュベータ中で24h培養して、上澄み液を収集する。ELISAキットの説明にしたがって450nmでの吸光度値を測定し、炎症因子TNF-α、IL-6及びIL-1βの分泌量を計算し、3種類の炎症因子の阻害率は、式(3)によって算出される。
【数3】
【0024】
式中、Cは、炎症因子の阻害率(%)を代表し、Cは、ブランク群の炎症因子分泌量であり、Cは、LPS群の炎症因子分泌量であり、Cは、サンプル群の炎症因子分泌量である。
【0025】
2.抗酸化活性の測定
2.1 1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)フリーラジカルのクリアランス率
GB/T39100-2020ポリペプチド抗酸化性を参考してDPPHを測定する。DPPH溶液の製造:遮光超音波の方法により、5mgのDPPHを適量の無水エタノールに十分に溶解させ、100mLに定容し、濃度が50μg/mLのDPPH溶液を製造し、使用時に製造して使用する。ポリペプチド溶液の製造:10mgのポリペプチドを適量の蒸留水に入れて完全に溶解させ、1mLに定容して、濃度が10mg/mLのポリペプチド溶液を製造し、一定の割合にしたがって希釈して、異なる濃度のポリペプチド溶液を得る。番号が1、2、3号である試験管を3本取って、試薬を表1にしたがって試験管に添加し、517nm位置で吸光度値を測定し、DPPHフリーラジカルのクリアランス率は式(4)によって算出される。ポリペプチド溶液濃度の自然対数値を横座標とし、DPPHフリーラジカルのクリアランス率を縦座標とし、ポリペプチド濃度の自然対数値とクリアランス率との線形方程式を得、DPPHフリーラジカルのクリアランス率の最大半分効果濃度EC50が算出される。
【数4】
【0026】
式中、P1は、DPPHフリーラジカルのクリアランス率(%)を代表し、Aは、DPPH溶液とポリペプチド溶液とを混合した後の517nmでの吸光度値であり、Aは、ポリペプチド溶液とエタノール溶液とを混合した後の517nmでの吸光度値であり、Aは、DPPH溶液とサンプル試薬溶液とを混合した後の517nmでの吸光度値である。
【0027】
[表1]
DPPHフリーラジカルクリアランス実験の試薬添加量
【0028】
2.2 2,2-アジノ-ビス(3-エチル-ベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)二アンモニウム塩(ABTS)フリーラジカルのクリアランス率
GB/T39100-2020ポリペプチド抗酸化性を参考してABTSを測定する。ABTS溶液の製造:ABTS試薬を200mg及び過硫酸カリウムを34.4mg取って、50mLの蒸留水に入れて十分に溶解させ、均一に振り、室温の条件下で24時間遮光保存し、ABTSテスト溶液は、95%エタノールで希釈する方式により、734nmでの吸光値が0.70±0.02になるように製造したものであり、溶液は、使用時に製造して使用する。10mgのポリペプチドを適量の蒸留水に入れて完全に溶解させ、1mLに定容して、濃度が10mg/mLのポリペプチド溶液を製造し、95%のエタノールで溶液を異なる倍数に希釈して、異なる濃度のポリペプチド溶液を得る。番号が1、2である試験管を2本取って、試薬を表2にしたがって試験管に添加し、734nmでの吸光度値を測定し、ABTSフリーラジカルのクリアランス率は、式(5)によって算出され、EC50の計算方法は2.1と同じである。
【数5】
【0029】
式中、P2は、ABTSフリーラジカルのクリアランス率(%)を代表し、Aは、ABTS溶液とサンプル試薬溶液とを混合した後の734nmでの吸光度値であり、Aは、ABTS溶液とポリペプチド溶液とを混合した後の734nmでの吸光度値である。
【0030】
[表2]
ABTSフリーラジカルのクリアランス実験試薬の添加量
【0031】
2.3 ヒドロキシラジカルのクリアランス率
Chenらの方法を参考してヒドロキシラジカルのクリアランス率を測定する。反応溶液の製造:適量の硫酸第一鉄、過酸化水素及びサリチル酸をそれぞれ蒸留水に十分に溶解させ、9mmol/Lの硫酸第一鉄溶液、8.8mmol/Lの過酸化水素溶液及び9mmol/Lのサリチル酸溶液を調製する。ポリペプチド溶液の製造:10mgのポリペプチドを適量の蒸留水に入れて完全に溶解させ、1mLに定容して、濃度が10mg/mLのポリペプチド溶液を製造し、一定の割合にしたがって希釈して、異なる濃度のポリペプチド溶液を得る。試験管に異なる濃度のポリペプチド溶液を1mL取って、1mLの硫酸第一鉄や1mLのサリチル酸と均一に混合し、10min反応させてから、試験管に過酸化水素溶液を1mL取って、37℃で30min反応させ、510nmでの吸光度値を測定する。ポリペプチド溶液の代わりに蒸留水を1mL取って、上記の操作と同様にし、510nmでの吸光度値を測定する。過酸化水素溶液の代わりに蒸留水を1mL取って、上記の操作と同様にし、510nmでの吸光度値を測定し、ヒドロキシラジカルのクリアランス率は、式(6)によって算出され、EC50の算出方法は2.1と同じである。
【数6】
【0032】
式中、P3は、ヒドロキシラジカルのクリアランス率(%)を代表し、Aは、ポリペプチド溶液の510nmでの吸光度値であり、Aは、過酸化水素溶液の代わりに蒸留水を使用したものの510nmでの吸光度値であり、Aは、ポリペプチド溶液の代わりに蒸留水を使用したものの510nmでの吸光度値である。
【0033】
3.LC-MS/MS分離同定
LC-MS/MSでポリペプチド成分のアミノ酸配列及び分子量を測定する。サンプルをマシンに置く前に、先に、還元アルキル化及び脱塩処理を行う。採用される毛細血管液体クロマトグラフィーカラムのプレカラムは、300μm×5mmのAcclaim PepMapRPLC C18分析カラム(5μm、100Å)であり、分析カラムは、150μm×150mmのAcclaim PepMap RPLC C18分析カラム(1.9μm、100Å)である。移動相Aは、0.1%(v/v)のギ酸溶液と2%(v/v)のアセトニトリル溶液であり、移動相Bは、0.1%(v/v)のギ酸溶液と80%(v/v)のアセトニトリル溶液であり、流速は600nL/minであり、成分毎の分析時間は60minである。
【0034】
MS及びMS/MSパラメータは、下記のとおりである。
(1)MSパラメータ:解像度は70000であり、最大注入時間は40msであり、スキャン範囲は300~1400m/zである。
(2)MS/MSパラメータ:解像度は175000であり、最大注入時間は60msであり、スキャン範囲は300~1400m/zであり、Top N=20で、NCE/steeped NCE=27である。
【0035】
サンプル種類のMascotソフトウェアに基づいてオリジナルMS/MSファイルを分析して、Uniprotデータベース(https://www.uniprot.org/)Gallus gallus(Chicken)を検索したものを照合して、これでペプチドのアミノ酸配列を決定する。
【0036】
以下、具体的な実施形態により、本発明についてさらに解釈説明する。
【0037】
(実施例1)
卵白タンパクペプチドの酵素分解
1.ポリペプチドの予熱処理と製造
4%(w/v)の基質濃度で卵白タンパクを蒸留水に溶解させ、90℃の水浴鍋中で20min下ごしらえし、下ごしらえした後、温度を45℃に下げた。タンパク溶液のpH値を7.5に調節し、温度は45℃であり、基質の質量にしたがって複合プロテアーゼ(C8800、Solarbio)を3000U/g加え、1.5h酵素分解し、pH値を10.0に調節し、温度は40℃であり、基質の質量にしたがってアルカリ性プロテアーゼを3000U/g加え、1.5h酵素分解し、pH値を7.5に調節し、温度は50℃であり、基質の質量にしたがって風味プロテアーゼを3000U/g加え、1.5h酵素分解し、酵素分解が終了したのち、10min煮沸して酵素を不活性化させ、その後、6000r/minで酵素分解液を20min遠心分離し、残留のタンパクを除去して、上澄み液を取得し、pHを7.0に調製し、凍結乾燥して後続の使用に供した。
【0038】
ポリペプチド収率の測定は、ビウレット法を用いてポリペプチド収率を測定し、結果は42.08±0.48%であった。
【0039】
2.ポリペプチドの限外ろ過分離
卵白タンパク酵素分解液を6000r/minで20min遠心分離して、上澄み液を取得した。まず、0.45μmろ過膜でろ過し、ろ過液を収集して次の操作を行った。ろ過液を10kDa、5kDa、3kDaの限外ろ過膜で分離して、異なる分子量(>10kDa、5~10kDa、3~5kDa及び<3kDa)のポリペプチドを収集し、異なる分子量の4種類のポリペプチド溶液を真空冷凍乾燥して、-80℃で保存した。
【0040】
3.抗炎症活性の測定
3.1 RAW264.7細胞生存率に対する影響
分子量>10kDa、5~10kDa、3~5kDa、<3kDaである酵素分解液の最終濃度を1mg/mLに設定し、4種類のサンプルの細胞生存率を測定した。図1に示すように、4種類のサンプルを加えた後、LPSに誘導されたRAW264.7細胞生存率は、いずれも100%以上であり、毒性作用がない。ここで、細胞生存率は、分子量<3kDaの作用後に最高で、103.62±0.84%に達した。
【0041】
3.2 NO生成量に対する分子量<3kDaのポリペプチドの影響
濃度が250~1000μg/mL範囲内にある分子量<3kDaのポリペプチド成分の、LPSに誘導されたRAW264.7マクロファージ細胞のNO生成量に対する影響である。図2に示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、RAW264.7細胞のNO生成量が有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の5.08倍であり、これは、LPSに誘導されたRAW264.7マクロファージ細胞の炎症モデルが正常に確立されたことを説明する。分子量<3kDaのポリペプチド成分の濃度が1000μg/mLであると、NO生成量が最低で、21.57±0.47μMであった。
【0042】
3.3 分子量<3kDaのポリペプチドの抗酸化活性
分子量<3kDaのポリペプチド成分の抗酸化能力のEC50値は表3に示すとおりであり、分子量<3kDaのポリペプチド成分は、DPPH、ABTS及びヒドロキシラジカルの3種類のフリーラジカルのいずれに対してもクリアランス能力があり、そのため、一定の抗酸化活性を備えている。例えばヒドロキシラジカル、スーパーオキシドアニオンフリーラジカルフリーラジカル、一重項酸素等のフリーラジカルと、炎症反応とは相互関連し、炎症は、活性酸素の過剰生成と放出に関し、抗酸化活性がよいポリペプチドは、通常、よい抗炎症潜在力を有する。また、生物活性ペプチドの抗酸化活性及び抗炎症活性を同時に調査する必要がある。
【0043】
[表3]
分子量<3kDaのポリペプチド成分の抗酸化能力
【0044】
(実施例2)
卵白タンパクペプチドの分離同定
分子量<3kDaのポリペプチド成分に対してLC-MS/MS液体クロマトグラフ質量分析を行い、そのトータルイオンクロマトグラムは図3に示すとおりであり、LC-MS/MS分析し且つデータベースを検索して照合し、ポリペプチド配列を合計790本取得した。
【0045】
2.仮想スクリーニングと分子ドッキング
2.1 仮想スクリーニング
ChemDraw 2DソフトウェアでLC/MS-MSによって得られたペプチド配列をペプチドの2D構造図にプロットしてから、Chem3D Ultra 14.0ソフトウェアでペプチドの3D構造図をプロットして、エネルギーが最小の構造(pdbqtフォーマット)であると設定した。RCSB Protein Data Bankデータベースから誘導型NO合成酵素(iNOS、PDB ID:3e6t)のx線結晶構造(PDB formatフォーマット)をダウンロードし、Autodock tools1.5.6ソフトウェアを使用して受容体iNOSに対して水分子の除去、水素添加及び電荷計算等の操作を行った。PyRx0.8ソフトウェアですべてのペプチド断片を受容体タンパクにそれぞれドッキングし、一般的な状況では、ドッキングエネルギーは0未満であり、数値が小さいほど、ドッキングがタイトになり、抗炎症潜在力が高くなることを説明し、そのため、ドッキングエネルギーの絶対値の大きさにしたがってペプチド断片に順位を付け、Peptide Ranker(http://distilldeep.ucd.ie/PeptideRanker/)での順位が前にあるペプチド断片を利用してそれが持つ可能性のある生物活性値を予測した。
【0046】
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、炎症反応に密接に関連する神経系酵素として、様々な炎症条件の刺激を受けると、LPS又はサイトカインがiNOSの大量発現を誘導し、さらにNOを持続的に生成するため、炎症部位の組織損傷を引き起こすおそれがある。iNOSの制御は、各タイプの病理状態での炎症反応を制御する重要なポリシーの1つであり、iNOSは、すでに、炎症疾患を治療する重要な標的となっている。PyRxソフトウェアは、受容体と異なる配位子とをバッチで模擬的にドッキングすることができ、ドッキングエネルギーの大きさによってその相互作用力の強弱を判断し、仮想スクリーニング効果を実現した。ドッキングエネルギー採点は、受容体と配位子との結合の潜在力を示すことができ、一般的に言えば、スコアが低いと、両者間の結合能力が強いことを表す。表4に示すように、LC-MS/MSによって得られたペプチド断片は、模擬的な採点とドッキングエネルギーの順位付けを経て、ドッキングエネルギーの順位が前にある6本のペプチド断片のドッキングエネルギーは≦-8.5kcalmol-1であり、これは、iNOSとの結合力が強いことを説明する。6本のペプチド断片をBIOPEP-UWMデータベースと照合すると、そのうちのWINPIGTやWNIPは、抗酸化ペプチドに合成・検証され、RADHPFLは、アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドに合成・検証された。6本のペプチド断片は、いずれも卵白由来の生物活性ペプチドであり、ここで、ペプチド断片であるフェニルアラニン-グリシン-プロリン-ヒスチジン(FGPH)は、BIOPEP-UWMデータベース中の知られている生物活性ペプチド配列のいずれとも一致せず、且つ、研究されていないペプチド断片のドッキングエネルギーが最低で、-9.3kcal mol-1であり、これは、FGPHが強いiNOS阻害作用を有するおそれがあり、潜在的な新型抗炎症活性ペプチドであることを説明する。
【0047】
[表4]
仮想スクリーニングとBIOPEP-UWMペプチド断片データベースとの照合結果
【0048】
Peptide Rankerにより、6本のペプチドが有する可能性のある生物活性に順位を付け、ToxinPredプログラムを利用して、ポリペプチドの毒性及び物理化学的性質を評価し、結果は表5に示すとおりであり、6本のペプチドは、いずれも毒性がないと予測され、FGPHのPeptide Rankerにおける生物活性のスコアは0.93であり、これは、FGPHが良好な生物活性を有する可能性があることを説明する。
【0049】
[表5]
ペプチド断片の生物活性のスコア及び物理化学的性質の予測
【0050】
潜在的な抗炎症活性ペプチドPhe-Gly-Pro-His(FGPH)の化学構造は、図4に示すとおりである。
【0051】
2.2分子ドッキング
ドッキングしソフトウェアはAutodock Vinaであり、Chem 3Dによって得られたpdbqtフォーマットのペプチド断片を配位子とし、RCSB Protein Data BankからダウンロードしたPDB formatフォーマットのiNOSを受容体とし、両者に対してセミフレキシブルドッキングを行った。Discovery studio 2.5ソフトウェアを用いて、単一の小分子と配位子との相互作用に対して可視化分析を行った。
【0052】
分子ドッキングによりFGPHの抗炎症機序を研究し、FGPHを受容体タンパクiNOSにドッキングした。FGPHをiNOSのキャビティにドッキングし、且つ、水素結合、炭素水素結合、カチオン-πの相互作用がペプチドとiNOSとの間の主な作用力であり、ドッキング結果から、FGPHとiNOSとのドッキングエネルギー絶対値は9.3kcal mol-1であり、FGPHは受容体タンパクと緊密に結合することが分かった。
【0053】
FGPHとiNOSとの間の相互作用は、図5に示すとおりであり、iNOSのGln257は、FGPHのGlyのカルボニル酸素原子と1つの水素結合作用を形成し、Proと1つの炭素水素結合を形成し、Arg260は、Hisのカルボキシル基と1つの水素結合作用を形成し、Arg382は、Hisの窒素原子及びProのカルボニル酸素原子と2つの水素結合作用を形成し、Pro344は、Pheのベンゼン環とπ-アルキル基作用を形成し、Arg375は、Hisのイミダゾール環と2つのカチオン-π相互作用を形成する。
【0054】
(実施例3)
ポリペプチド合成及び人工検証
南京源ペプチド生物有限公司に委託して固相合成法によりペプチド断片を合成し、純度≧95%であり、活性検出に関する実験の要件を満たした。
【0055】
1.FGPHの抗炎症活性の分析
1.1細胞生存率
濃度が異なるとき、FGPHの細胞生存率に対する影響を調査した。図6に示すように、濃度が125~1000μg/mL範囲内にある場合、LPSに誘導されたRAW264.7細胞生存率に対するFGPHの影響は、ペプチド濃度の向上に伴って、先に増加してから低下する傾向を呈した。FGPHの濃度が125、250、500μg/mLであるいずれの場合でも、細胞生存率はいずれも109%より高く、細胞増殖促進効果があり、FGPHの濃度が1000μg/mLである場合、細胞生存率が97%より低く、細胞生存率に対する阻害が生じた。そのため、FGPHは、一定の細胞増殖促進能力を有し、FGPHの濃度が125~500μg/mLであることを選択すると、引き続きLPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成量及び炎症因子分泌量に対する影響を測定した。
【0056】
1.2FGPHの抗炎症活性
濃度が125~500μg/mL範囲内にあるFGPHの、LPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成量及び炎症因子TNF-α、IL-1β、IL-6分泌量に対する影響を調査した。
【0057】
図7Aに示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、RAW264.7細胞のNO生成量は、有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の4.94倍であり、これは、LPSに誘導されたRAW264.7マクロファージ細胞の炎症モデルの確立に成功したことを説明する。LPS群と比較して、濃度が125、250、500μg/mLであるいずれの場合でも、FGPHはLPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成に対して有意な阻害作用があり(P<0.05)、この3種類の濃度のFGPHの作用下で、細胞のNO生成量は、それぞれ18.07±0.31、16.23±0.31、13.82±0.31μMであった。これから分かるように、FGPHは、濃度依存性の方式でLPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成量を有意に阻害し、FGPHの濃度の増加に伴って、細胞のNO生成量に対する阻害効果がより明らかになり、FGPHの濃度が500μg/mLであると、NO生成量が最低であり、NO生成量の阻害率が最高で、64.41±0.47%に達した。
【0058】
図7Bに示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、RAW264.7細胞のTNF-α分泌量が有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の11.03倍であった。3種類の濃度でのFGPHは、いずれも細胞TNF-αの分泌を有意に阻害することができ(P<0.05)、濃度依存性の特徴を呈し、濃度が500μg/mLであるFGPHの作用下で、最高の阻害率を呈し、28.07±2.10%に達した。
【0059】
図7Cに示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、細胞のIL-6分泌量は有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の8.05倍であった。FGPHは、LPS群と比較して、濃度が125、250、500μg/mLである場合、LPSに誘導されたマクロファージ細胞のIL-6分泌量に対する有意な阻害作用を生じた(P<0.05)。FGPHは、濃度依存性の方式でLPSに誘導されたRAW264.7細胞のIL-6分泌量を有意に阻害し、且つ、FGPHの濃度が増加するほど、細胞のIL-6分泌量に対する阻害効果がよくなり、FGPHの濃度が500μg/mLになると、41.72±1.83%に達した。
【0060】
図7Dに示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、細胞のIL-1β分泌量が有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の5.68倍であった。FGPHは、LPS群と比較して、濃度が125、250、50μg/mLである場合、LPSに誘導された細胞のIL-1β分泌量に対する有意な阻害作用を生じた(P<0.05)。FGPHは、濃度依存性の方式でLPSに誘導されたRAW264.7細胞のIL-1β分泌量を有意に阻害し、且つ、FGPHの濃度が増加するほど、細胞のIL-1β分泌量に対する阻害効果がよくなり、FGPHの濃度が500μg/mLになると、52.43±2.29%に達した。
【0061】
2.FGPH抗酸化活性の分析
FGPHの抗酸化能力のEC50値は、表6に示すとおりである。FGPHは、DPPH、ABTS及びヒドロキシラジカルの3種類のフリーラジカルのいずれに対してもクリアランス能力を有しているため、一定の抗酸化活性を備えている。
【0062】
[表6]
FGPHの抗酸化能力
【0063】
(実施例4)
FGPHのメイラード反応
1.製造方法
一定量のFGPHを秤量して、20mg/mLの溶液に調製し、1.5:1割合のペプチド糖質量比にしたがってデキストランを加え、十分に混合し、80℃の温度、9.0のpH値で10h反応させ、反応が終了した後、室温まで冷却すると、FGPHのメイラード生成物FGPH-MRPsを得た。
【0064】
294nmでの吸光度値が代表するメイラード中間生成物生成量及び420nmでの吸光度値が代表する褐変度を指標とし、上記のメイラード生成物FGPH-MRPsの294nmでの吸光度値は0.736±0.010であり、420nmでの吸光度値は0.696±0.010であった。
【0065】
2.物理化学的性質の測定
2.1 フーリエ赤外線(FTIR)の分析
FGPH及びFGPH-MRPsのフーリエ赤外線スペクトル写真は図8に示すとおりである。フーリエ赤外線スペクトルは、タンパク質と炭水化物との相互作用及びタンパク質構造を特徴付ける変化の研究によく使用される。タンパク質は、赤外線スペクトル中で特徴的な吸収ピークを複数有し、そのうち、アミドIバンド、アミドIIバンド、アミドIIIバンドは、それぞれ1700~1600cm-1、1600~1500cm-1、1450~1240cm-1で吸収がある。タンパク質と比較して、ペプチドはタンパク由来の小分子物質として、タンパク質の二次構造の大部分が消え、アミドIIバンド上では、吸収ピークが明確ではなかった。タンパク質/ペプチドは、メイラード反応を経た後、赤外スペクトル上で2つの典型的な特徴を示し、1つは、遊離ヒドロキシル基の引張振動により、赤外線スペクトルの3500~3000cm-1範囲内で広いピークが現れることであり、1つは、C-O結合の引張振動により、1260~1000cm-1範囲内で明確な吸収ピークが現れることである。図8に示すように、3500~3000cm-1及び1260~1000cm-1での吸収は、FGPH-MRPsがFGPHよりも高く、これは、メイラード反応がすでに発生したことを証明した。
【0066】
FGPHのアミドIバンドにおけるピークは1668cm-1に位置し、FGPH-MRPsのアミドIバンドにおけるピークが1683cm-1にブルーシフトする原因は、主に、-NHと-C=Oとが反応して、カルボニル電子雲密度の低下によりピークの位置がブルーシフトすることである。芳香族アミノ酸フェニルアラニン構造中でC-H面が外側へ曲がるから、FGPH-MRPsは、アミドIIIバンドの1435cm-1位置でFGPHよりもより明確な吸収ピークが現れ、以上は、同様に、メイラード反応の発生を証明した。
【0067】
2.2 走査型電子顕微鏡(SEM)の分析
FGPH及びFGPH-MRPsを走査型電子顕微鏡の下に置いて、同じ倍数に拡大し、FGPHのSEM画像は、図9Aに示すとおりであり、FGPH-MRPsの画像は図9Bに示すとおりである。メイラード反応を経た後のFGPHのミクロ形態が明確に変化し、FGPH-MRPsは不規則なシート状構造を呈し、細孔を有した。
【0068】
2.3 RAW264.7細胞生存率に対する影響
FGPH及びFGPH-MRPsが500μg/mLである場合、細胞生存率に対する影響を調査した。図10に示すように、濃度が500μg/mLである2種類のサンプルの作用下で、LPSに誘導されたRAW264.7の細胞生存率はいずれも114%以上であり、一定の細胞増殖能力を有し、2種類のサンプルの細胞生存率には有意な差がなかった(P>0.05)。
【0069】
2.4 RAW264.7細胞のNO生成量に対する影響
図11に示すように、濃度が1μg/mLであるLPSに誘導された後、RAW264.7細胞のNO生成量が有意に増加し(P<0.05)、約ブランク群の4.94倍であり、これは、LPSに誘導されたRAW264.7細胞の炎症モデルの確立に成功したことを説明する。FGPH及びFGPH-MRPsは、LPS群と比較して、濃度が500μg/mLである場合、いずれもLPSに誘導されたRAW264.7細胞のNO生成量を有意に阻害した(P<0.05)。メイラード反応後のNO生成量の阻害率は、64.41±0.47%から68.16±0.48%まで向上した。
【0070】
2.5 メイラード反応の抗酸化活性に対する影響
FGPH及びFGPH-MRPsの抗酸化能力は、表7に示すとおりである。FGPHは、メイラード反応を経た後、DPPH、ABTS及びヒドロキシラジカルのクリアランス率のEC50値がある程度低下し(P<0.05)、これは、メイラード反応がFGPH抗酸化活性の向上に役立つことを説明する。
【0071】
[表7]
FGPH、FGPH-MRPsの抗酸化能力
【0072】
2.6 官能評価、電子舌、電子鼻によるメイラード反応前後のFGPH風味変化の調査
官能評価、電子舌及び電子鼻の評価により、メイラード反応前後のFGPH、FGPH-MRPsの風味をテストし、FGPH-MRPsの味はFGPHより明らかに優れ、苦味、渋味、塩味がある程度カバーされ、全体的な受入度がFGPHより高く、メイラードの特徴的な味である芳醇味を取得し、匂いも明らかに変化して、電子舌と電子鼻が、FGPHとFGPH-MRPsとを明確に区分することができた。
【0073】
2.6.1 官能評価
官能評価は、食品が呈する味の特性研究において重要な位置を占め、図12に示すように、2種類のサンプルの官能評価スコアの差が大きく、苦味、渋味、塩味スコアは、FGPH-MRPsがFGPHより低く、メイラード反応は、よくない味をカバーするのに役立ち、芳醇味スコア及び全体的な受入度スコアは、FGPH-MRPsがFGPHより高く、メイラード反応後のサンプルの味が明らかに改善され、メイラードの特徴的な味である芳醇味が明らかに出てきた。
【0074】
2.6.2 電子舌による測定評価
電子舌により、FGPHとFGPH-MRPsとの味覚値を比較し、味覚レーダーチャートを作成し、2種類のサンプルのいずれからも酸味と苦味の後味が検出されなかった。図13に示すように、苦味、渋味、塩味のそれぞれは、メイラード生成物FGPH-MRPsがFGPHより低く、これは、メイラード反応がよくない味を一定の程度カバーすることができることを説明する。FGPH自体が、一定の旨味及びコクを有し、メイラード反応を経た後、旨味がさらに向上し、これは、メイラード反応がペプチドの特徴的な味を突出させるのに役立つことを説明する。
【0075】
2.6.3 電子鼻による測定評価
FGPH及びFGPH-MRPsの電子鼻センサの匂いレーダーチャートは、図14に示すとおりであり、メイラード反応前後の匂いが明らかに変化した。LY2/gCT、T30/1、P10/1、P40/1、T70/2、PA/2、P30/1センサ上の応答値のいずれも、FGPH-MRPsがFGPHより明らかに高く、本発明におけるペプチドFGPHの遊離アミノ基はフェニルアラニンに位置し、フェニルアラニンメイラード生成物の揮発性風味物質の電子鼻応答値は高く、メイラードの特徴的な匂いを得た。
【0076】
メイラード反応を経たFGPHの全体的な味が改善され、匂いがより明らかになった。
【0077】
以上に記載の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を表すものにすぎず、その説明は具体的かつ詳細であるが、それにより特許範囲を限定するものと理解すべきではない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、上記各実施形態に対してさらにいくつかの変形、組み合わせ及び改良を行うことができ、これらはいずれも本発明の保護範囲に属することを理解されたい。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲を準ずるべきである。
【要約】      (修正有)
【課題】オボアルブミン抗炎症活性ペプチド及びそのメイラード反応生成物の製造と使用を提供する。
【解決手段】抗炎症ペプチドはFGPH(Phe-Gly-Pro-His)である。FGPHのメイラード反応生成物FGPH-MRPsの製造方法は、FGPHを秤量して水溶液に調製し、1.5:1割合のペプチド糖質量比にしたがってデキストランを加えて、十分に混合し、80℃、pH9.0下で10h反応させ、反応が終了した後、室温まで冷却して、FGPHのメイラード生成物FGPH-MRPsを得る。該FGPHのメイラード反応生成物FGPH-MRPsの抗炎症反応における使用も提供する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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