(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】シート開閉操作装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/56 20060101AFI20250114BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
F16H3/56
A01G9/24 F
(21)【出願番号】P 2020198533
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】319012646
【氏名又は名称】株式会社吉武製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】吉武 正人
(72)【発明者】
【氏名】松井 和雄
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328830(JP,A)
【文献】特開2016-109146(JP,A)
【文献】特開2019-113090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/56
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部により回転させる入力軸の回転を、変速機構によって等速モードにより等速として又は減速モードにより減速して、シートの巻軸に連結した出力軸に伝達するシート開閉操作装置であって、
前記等速モード又は前記減速モードを切換可能な操作部を有し、
前記変速機構は、前記入力軸と一体の原歯車と、該原歯車の周囲に配置した複数個の歯車から成る変速歯車群と、これら変速歯車群の各歯車の軸部を回転自在に保持すると共に、前記出力軸
が嵌入する変速歯車保持部材と、前記操作部の操作により前記入力軸と前記変速歯車保持部材との連結を、前記等速モード又は前記減速モードに従って切換える連結切換部材とを備え、
前記出力軸と前記入力軸の回転を同速度とする前記等速モードの場合には、前記入力軸と前記変速歯車保持部材とを前記連結切換部材により一体として連結し、前記入力軸の回転を前記変速歯車保持部材を介して前記出力軸に伝達し、
前記出力軸の回転を前記入力軸の回転よりも低減する前記減速モードの場合には、前記入力軸と前記変速歯車保持部材とを前記連結切換部材によって分離し、前記入力軸の前記原歯車の回転を前記変速歯車群により減速して回転して前記変速歯車保持部材に伝達し、前記変速歯車保持部材を介して前記出力軸に伝達することを特徴とするシート開閉操作装置。
【請求項2】
前記連結切換部材は前記操作部の操作により、前記入力軸と一体に回転する回転伝達部材と接離自在に連結することを特徴とする請求項1に記載のシート開閉操作装置。
【請求項3】
前記連結切換部材は前記入力軸に沿って移動して前記回転伝達部材に連結することを特徴とする請求項2に記載のシート開閉操作装置。
【請求項4】
前記操作部はケーシングの一部に設け、前記操作部の操作により、前記連結切換部材を切換レバーを介して前記入力軸に沿って移動させることを特徴とする請求項3に記載のシート開閉操作装置。
【請求項5】
前記変速機構は遊星歯車機構とし、前記原歯車を太陽歯車とし、前記変速歯車保持部材は前記太陽歯車の周囲に配置した遊星歯車群を保持したことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のシート開閉操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば温室等でビニルシートを開閉するに当り、その開閉速度を切換え可能なシート開閉操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温室等において保温、遮光等に使用し、巻軸に巻回したビニルシートを、ハンドル部の操作により上下に開閉する場合に、特に巻き上げ時には重力の付加が加わるので、操作者の力が弱いと操作が困難となる。
【0003】
特許文献1には、シートの巻き下ろし、巻き上げに際し、その速度を変換可能とし、例えば巻き下ろしは高速で行い、巻き上げは低速で行う2段階変速式の回転伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の装置は、ビニルシートの巻き上げ時は低速ではあるが、大きな力を必要としないで操作でき、巻き下ろしは高速で行えるという利点がある。
【0006】
しかし変速時には、原動歯車6aを内歯車5b又は遊星歯車7・・・に、その都度、噛合を切換えるので、この切換えを繰り返し続けると、これらの歯車に損傷が発生し、耐久性に問題がある。また、巻き下ろし、巻き上げ中には、速度切換はできないので、一旦巻き下ろし、巻き上げを中断してから、歯車の噛合を切換えて切換操作を行わなければならない。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、変速に際して歯車同士の噛合の切換えを必要とせず、シートを巻き上げるときは低速の減速モードでハンドル部にかかる負荷を軽減でき、逆に巻き下ろすときには高速の等速モードに切換えて作業能率を高めることができ、変速切換操作が容易で、かつ耐久性に富むシート開閉操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るシート開閉操作装置は、ハンドル部により回転させる入力軸の回転を、変速機構によって等速モードにより等速として又は減速モードにより減速して、シートの巻軸に連結した出力軸に伝達するシート開閉操作装置であって、前記等速モード又は前記減速モードを切換可能な操作部を有し、前記変速機構は、前記入力軸と一体の原歯車と、該原歯車の周囲に配置した複数個の歯車から成る変速歯車群と、これら変速歯車群の各歯車の軸部を回転自在に保持すると共に、前記出力軸が嵌入する変速歯車保持部材と、前記操作部の操作により前記入力軸と前記変速歯車保持部材との連結を、前記等速モード又は前記減速モードに従って切換える連結切換部材とを備え、前記出力軸と前記入力軸の回転を同速度とする前記等速モードの場合には、前記入力軸と前記変速歯車保持部材とを前記連結切換部材により一体として連結し、前記入力軸の回転を前記変速歯車保持部材を介して前記出力軸に伝達し、前記出力軸の回転を前記入力軸の回転よりも低減する前記減速モードの場合には、前記入力軸と前記変速歯車保持部材とを前記連結切換部材によって分離し、前記入力軸の前記原歯車の回転を前記変速歯車群により減速して回転して前記変速歯車保持部材に伝達し、前記変速歯車保持部材を介して前記出力軸に伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシート開閉操作装置を、例えば温室等の日除けシート等の開閉装置に用いた場合に、ハンドル部で回転操作して重力に抗して巻軸によりシートを巻き上げるとき、つまり回転負荷が大きいときは、出力軸の回転速度を低速の減速モードに切換えて、その分だけハンドル部での回転負荷を軽減でき、容易にハンドル部を回転できる。逆に、シートを巻き下ろすとき、つまり出力軸の回転負荷が小さい等速モードとする場合には、高速に切換えて巻き下ろしを行うことができる。
【0010】
また、シートの巻き下ろし、巻き上げ中でも、その操作を中断することなく速度切換の実施が可能である。また、歯車同士は常時噛合しているので、速度切換えの際に歯車の噛合の切換えを必要とせず、歯車の損傷が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のシート開閉操作装置の外観斜視図である。
【
図2】実施例1の等速モードでの構成要素の断面図である。
【
図7】実施例1の減速モードでの構成要素の断面図である。
【
図8】シート開閉操作装置の使用状態の説明図である。
【
図9】実施例2の等速モードでの構成要素の断面図である。
【
図11】実施例2の減速モードでの構成要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1のシート開閉操作装置の外観斜視図である。1は例えば合成樹脂製の2つ割りのケーシングであり、側部にグリップ2が設けられ、片面には変速機構として機能する切換機構部3と、入力軸4の端部と、この入力軸4に連結されたハンドル部5が設けられ、他面には出力軸6が突出されている。
【0014】
また、ケーシング1のグリップ2寄りには、支柱Pを挿通する支柱挿通孔7が上下方向に設けられている。グリップ2の内周には握り部から成る操作部2aが組み込まれ、切換レバー2bを動かして切換機構部3を、等速モード、減速モードに従ってシート開閉操作装置が作動するようにされている。
【0015】
図2はケーシング1内の構成要素の断面図、
図3は分解斜視図である。ケーシング1内には、ケーシング1に固定された2枚の平行プレート8a、8bが配置されている。出力軸6を保持する保持板6aが平行プレート8a、8bに取り付けられ、平行プレート8aの外側に略円筒状の出力軸6が回転自在に突出され、出力軸6には後述する巻軸を連結するボルトを挿通する固定孔6bが設けられている。
【0016】
出力軸6の反対側の平行プレート8b側には、
図4に示すように、出力軸6
から断面四角状の角軸6cが突出され、角軸6cの中心には断面円形のガイド孔6dが穿孔されている。また、平行プレート8a、8b間の出力軸6は制御機構8cにより囲まれ、出力軸6が自在に回転しないようにされている。更に、平行プレート8a、8b間には、支柱挿通孔7の周囲に、支柱Pを上下方向に円滑に案内するために、支柱Pを囲む計4個のローラ7a~7d(7c、7dは図示せず)が上下左右に配置されている。
【0017】
角軸6cの先端側には、変速歯車保持部材である遊星歯車保持部材9が配置されている。
図5(a)に示すように、この遊星歯車保持部材9の円形の金属製の基板9aの角軸6c側の面の中央部は肉厚とされ、角軸6cが嵌入する角孔9bが形成されている。また、
図5(b)に示すように、基板9aの反対面には、同一円周状にそれぞれ回転軸9cを有する例えば4個の金属製の遊星歯車から成る変速歯車群である遊星歯車群9d~9gがそれぞれ回転自在に保持されている。
【0018】
遊星歯車保持部材9の遊星歯車群9d~9g側には、円筒状で金属製の入力軸4が出力軸6と中心線を一致させて配置され、入力軸4の端部には原歯車であり、金属製の外歯から成る遊星歯車機構の一部としての太陽歯車4aが設けられている。この太陽歯車4aは各遊星歯車群9d~9gの内側に共通して噛合されている。また、太陽歯車4aの軸部側にはフランジ部4bが設けられ、太陽歯車4aの軸方向の先端には、角軸6cのガイド孔6dに挿入して軸合わせを行うためのガイド軸4cが棒状に突出されている。更に、入力軸4の軸部には、両側に突出し後述する切換機構部3の一部に嵌合する2個の突部4d、4eと、切換機構部3の一部を固定するねじ孔4fと、ハンドル部5を固定する固定孔4gとが設けられている。
【0019】
太陽歯車4a、遊星歯車群9d~9gの周囲には、これらを覆う円筒部10aを前部に有する回転部材10が配置されている。
図6に示すように、回転部材10の後面は円形の背面板10bとされ、背面板10bの前側には、入力軸4のフランジ部4bが回転自在に嵌入する環状溝10cが設けられている。また、背面板10bの後部中央には、入力軸4が回転自在に挿入する筒状部10dが後方に向けて設けられている。この筒状部10dの外周には、軸方向に沿って例えば6個の溝部10eが等間隔に形成されている。
【0020】
回転部材10の円筒部10aの内周に沿って、各遊星歯車群9d~9gの外側に共通して噛合し遊星歯車機構の公転歯車としての金属製の内歯車10fが配置されており、この内歯車10fの歯数は、太陽歯車4aの歯数を例えば8個とすれば、その4倍の32個とされている。また、各遊星歯車群9d~9gの歯数は太陽歯車4aと同数の8個とされている。
【0021】
回転部材10は断面コ字状の固定カバー部材11の上下の側面により囲まれている。固定カバー部材11の出力軸6側は、ビスにより平行プレート8bに固定され、固定カバー部材11はケーシング1に固定されている。固定カバー部材11の後面は閉塞板11aとされ、更に閉塞板11aの後面にカム板11bが固定されている。また、閉塞板11a、カム板11bには、回転部材10の筒状部10dが挿通される孔部11c、11dが設けられ、カム板11bの孔部11dの周囲には、等間隔に例えば4個のカム溝11eが放射状に形成されている。また、カム板11bには、切換レバー2bを支える支点11fが設けられている。
【0022】
入力軸4が回転部材10の筒状部10dに挿入され、フランジ部4bが環状溝10cに嵌って、筒状部10dが固定カバー部材11の孔部11cに挿入されることにより、入力軸4は所定位置に配置されることになる。
【0023】
固定カバー部材11の後方には、切換機構部3の一部として、入力軸4に沿って可動の連結切換部材12が配置されている。この連結切換部材12には、前方に円形の前面板12a、中心部に円筒部12b、後方に円形の後面板12cが設けられている。連結切換部材12の中心には、回転部材10の筒状部10dが挿通する孔部12eが設けられ、孔部12eの周囲には、筒状部10dの溝部10eに嵌合する6個のカム歯12fが設けられている。また、前面板12aの外周には、固定カバー部材11のカム溝11eに嵌合する4個のカム歯12gが形成されている。
【0024】
連結切換部材12の後方には、略環状の回転伝達部材13が配置されている。この回転伝達部材13には孔部13aを介して入力軸4が挿通され、固定孔13bを介して入力軸4のねじ孔4fにねじを螺合して固定されている。回転伝達部材13の前面の孔部13aの周囲には、カム歯13cが前方に突出して形成されている。このカム歯13cは連結切換部材12のカム歯12f間の溝部に嵌入するようにされている。更に、このカム歯13cの歯間の2個所には、入力軸4の突出した突部4d、4eが、それぞれ嵌入する深い凹部13d、13eが形成されている。
【0025】
グリップ2の操作部2aには、切換レバー2bの端部2cが連結され、グリップ2を握って操作部2aを引き寄せると、切換レバー2bはカム板11bに設けられた支点11fを中心に回動して、連結切換部材12の円筒部12bに位置する切換レバー2bの先端2dが、連結切換部材12を回転伝達部材13から入力軸4に沿って分離し、連結切換部材12の前面板12aがカム歯12g、固定カバー部材11のカム溝11eに嵌入し、連結切換部材12は固定カバー部材11のカム板11bに連結するようにされている。
【0026】
また、切換レバー2bには2個の戻しコイルばね2eが、固定カバー部材11との間に取り付けられており、操作部2aを操作していないときには、切換レバー2bを操作部2aを握る場合とは逆方向に付勢し、連結切換部材12を回転伝達部材13に結合させている。
【0027】
このようにして、連結切換部材12は切換レバー2bの操作により、入力軸4と変速歯車保持部材である遊星歯車保持部材9との接離自在の連結を切換えて等速モード又は減速モードとする。
【0028】
このシート開閉操作装置を組み立てた状態においては、入力軸4の太陽歯車4aは遊星歯車保持部材9の遊星歯車群9d~9gの内側に噛合している。また入力軸4は、回転部材10、固定カバー部材11、連結切換部材12、回転伝達部材13に挿通されている。入力軸4の突部4d、4eは回転伝達部材13の凹部13d、13eに嵌合すると共に、回転伝達部材13はねじ孔4fを介してねじにより入力軸4に固定されているので、回転伝達部材13は入力軸4と一体となって回転する。
【0029】
操作部2aを操作していない、つまりグリップ2の操作部2aを握っていない状態の等速モードにおいては、
図2に示すように、戻しコイルばね2eによる付勢力が加えられた切換レバー2bによって、連結切換部材12を入力軸4に沿って後方の回転伝達部材13側に押し出し、連結切換部材12の後面板12cは回転伝達部材13の前面に接するようにされている。
【0030】
この状態において、回転伝達部材13のカム歯13cは連結切換部材12のカム歯12fに嵌入し、連結切換部材12は回転伝達部材13つまり入力軸4の回転につれ廻りをする。連結切換部材12のカム歯12fは回転部材10の筒状部10dの溝部10eに常時嵌合しており、入力軸4の回転は回転部材10に伝達され、回転部材10は入力軸4を中心として、入力軸4と共に回転する。
【0031】
この場合に、入力軸4の太陽歯車4aと回転部材10の内歯車10fとは、同じ回転速度とされるので、これらの間に介在する遊星歯車群9d~9gは個々に回転することなく固定された状態となる。従って、入力軸4、回転部材10の回転は、遊星歯車群9d~9gの各回転軸9cを経て遊星歯車保持部材9の基板9aに伝達され、更に角孔9bを介して出力軸6の角軸6cに同じ回転速度で伝達され、等速モードで回転がなされる。
【0032】
このように、グリップ2の操作部2aを操作せずに、入力軸4に固定孔4gを用いて連結したハンドル部5を回転すると、ハンドル部5の回転が伝達される入力軸4と遊星歯車保持部材9とは、1対1の等速で回転するので、遊星歯車保持部材9を介して出力軸6も、入力軸4と1対1の回転比の等速モードで同一方向に回転する。なお、ここでハンドル部5から手を離しても、出力軸6は制動機構8cにより急な回転は制動されるので、不時に出力軸6が回転を始めることはない。
【0033】
一方、グリップ2の操作部2aを握ると減速モードとなり、
図7に示すように、切換レバー2bの端部2cが操作部2aにより引かれ、先端2dは戻しコイルばね2eの付勢力に抗して作動し、連結切換部材12をそれまで離れていた前方の固定カバー部材11側に入力軸4に沿って移動する。この移動により、連結切換部材12は回転伝達部材13から分離して回転伝達部材13への固定が解除され、連結切換部材12の前面板12aのカム歯12gが、固定の固定カバー部材11のカム溝11eに嵌合する。これにより、連結切換部材12の回転は不能になり、連結切換部材12のカム歯12fは回転部材10の溝部10eに嵌合しているので、回転部材10の回転も不能になる。
【0034】
ハンドル部5によって入力軸4を回転すると、その回転は太陽歯車4aを介して遊星歯車群9d~9gに伝達される。入力軸4の回転に伴う太陽歯車4aと遊星歯車群9d~9gとの噛合による回転運動は、固定された回転部材10の内歯車10fとの間で遊星歯車運動となり、遊星歯車保持部材9に伝達される。入力軸4と遊星歯車保持部材9との回転比は、太陽歯車4aと内歯車10fとの歯数比である例えば1対4になる。つまり、入力軸4の回転は遊星歯車機構により減速され、遊星歯車保持部材9から出力軸6に伝達される回転は、入力軸4の回転に対して1対4に低減された速度比で回転することになる。
【0035】
このように、遊星歯車機構の使用により、入力軸4による出力軸6の回転速度は例えば1/4に減少し、入力軸4と連結したハンドル部5に掛かる回転負荷を1/4に軽減できるので、出力軸6の回転は遅くなるが、操作者の力が弱くとも、容易にハンドル部5を操作できることになる。
【0036】
図8は本実施例1の開閉操作装置を、温室のビニルシートBの巻軸Sの回転に使用する状態を示している。シート開閉操作装置の支柱挿通孔7に支柱Pに挿通してケーシング1を固定し、巻軸Sを出力軸6に固定する。左手でグリップ2を持ち、右手でハンドル部5を握り、グリップ2の操作部2aを操作せずに、等速モードでビニルシートBの巻き下ろしのためにハンドル部5を左に回すと、遊星歯車運動はなされずに、出力軸6は入力軸4に対し1対1の回転比で同速度で回転する。この場合は、ビニルシートBに加わる重力のために、大きな操作力を要することなく、ビニルシートBの巻き下ろしを高速で行うことができる。
【0037】
また、この状態でハンドル部5を右に回して、ビニルシートBを巻き上げることもできるが、ビニルシートBに掛かる重力に抗して巻き上げることになり、大きな操作力を要する。
【0038】
グリップ2の操作部2aを握って減速モードとして、切換レバー2bを介して連結切換部材12を移動して固定カバー部材11に連結し、回転部材10を固定した状態でハンドル部5を右に回すと、遊星歯車運動により入力軸4の回転負荷が1/4に軽減される。ビニルシートBの巻き上げに際しても、大きな操作力を要せずに、出力軸6を介して巻軸Sを容易に回転させることができる。
【0039】
また、この減速モードでビニルシートBを巻き下ろすこともできるが、操作力を必要としない代りに、巻き下ろしに時間が掛かる。
【0040】
ビニルシートBの巻き上げが終わり、操作部2aの握りを緩めると、
図2に示すように、切換レバー2bは戻しコイルばね2eの付勢力により、支点11fを中心に回動し、先端2dが連結切換部材12を回転伝達部材13側に移動し、等速モードとなる。これにより、連結切換部材12はカバー部材11から分離し、回転部材10の固定は開放されるので、回転部材10は出力軸6と共に、入力軸4の回転と同速度で回転することになる。
【実施例2】
【0041】
実施例2では、実施例1における遊星歯車群9d~9gの代りに、平歯車群20が使用されている。
図9は実施例2の等速モードでの構成要素の断面図であり、実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。
【0042】
変速歯車群である平歯車群20は、変速歯車保持部材である2枚の平行円形から成る回転板21a、21bの間に、回転板21a、21bに軸支された複数の歯車が配置されている。後方の回転板21bには、実施例1と同様の筒状部10dが固定されている。また、平行プレート8bに固定された固定カバー部材11の孔部11cに、回転板21a、21bの筒状部10dの基部が回転自在に挿通され、平歯車群20は保持されている。入力軸4はそのフランジ部4bが回転板21bに設けられた孔部21cに回転自在に挿入されると共に、入力軸4は筒状部10dに回転自在に挿通されている。
【0043】
図10は平歯車群20の斜視図であり、回転板21a、21bは点線で示している。入力軸4の先端には原歯車4hが設けられ、回転板21a、21b同士の間に、原歯車4hと噛合する大径の大歯車22a、22bが軸支されている。大歯車22a、22bは軸を同一とする2段歯車であり、小径の小歯車22c、22dが一体に形成されている。更に、これらの小歯車22c、22d間に大径の大歯車22eが噛合しており、この大歯車22eは入力軸4のガイド軸4cに回転自在に軸支されている。
【0044】
また、大歯車22eの出力軸6側の面には、出力軸6の角軸6cに回転力を伝達するための角孔22fが設けられている。なお、原歯車4h、小歯車22c、22dの歯数は例えば16、大歯車22a、22b、22eの歯数は22とされている。
【0045】
図9に示すグリップ2の操作部2aを操作しない状態では等速モードとなり、固定カバー部材11に取り付けた戻しコイルばね2eの付勢力により連結切換部材12は後方に移動し、回転伝達部材13と結合している。連結切換部材12は入力軸4の回転と共に回転する回転伝達部材13に従って回転し、筒状部10dと共に回転板21a、21bを回転する。回転板21a、21bが入力軸4と共に回転すると、平歯車群20内の各歯車は個々に回転することなく、入力軸4の回転はそのまま大歯車22eの角孔22fを経て角軸6cに伝達され、入力軸4の回転は1対1で出力軸6に伝達されることになる。
【0046】
一方、
図11に示すように、グリップ2の操作部2aを戻しコイルばね2eの付勢力に抗して操作すると減速モードとなる。切換レバー2bにより連結切換部材12は前方に移動して回転伝達部材13から分離する。この場合に、入力軸4と筒状部10dとは別個に回転可能なので、入力軸4の回転は原歯車4hから大歯車22a、22bに伝達され、一体の小歯車22c、22dを共に回転し、大歯車22eに伝達される。更に、大歯車22eの角孔22fに嵌合された角軸6cを介して、大歯車22eの回転は出力軸6に伝達される。出力軸6の回転数は、歯数比から、(16/22)・(16/22)=0.53となり、入力軸4の約1/2に逓減する。
【0047】
このように、実施例2においても、回転負荷が大きいときは、出力軸の回転速度を等速モードから減速モードに切換えて、ハンドル部に掛かる回転負荷を軽減できる。
【0048】
なお本明細書において、前後、上下、左右の用語は、図面の説明のために用いており、本発明の物品の形状等を規制するものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 ケーシング
2 グリップ
2a 操作部
2b 切換レバー
3 切換機構部
4 入力軸
4a 太陽歯車
4h 原歯車
5 ハンドル部
6 出力軸
6c 角軸
7 支柱挿通孔
8a、8b 平行プレート
9 遊星歯車保持部材
9b、22f 角孔
9d~9g 遊星歯車群
10 回転部材
10d 筒状部
10f 内歯車
11 固定カバー部材
12 連結切換部材
13 回転伝達部材
20 平歯車群
21a、21b 回転板
22a~22e 歯車
B ビニルシート
P 支柱
S 巻軸