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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20250114BHJP
   A61B 18/22 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
A61B18/18 200
A61B18/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021060699
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156820
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521031567
【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067492(JP,A)
【文献】特開2014-237053(JP,A)
【文献】特開2016-067526(JP,A)
【文献】特開2001-037892(JP,A)
【文献】特開2005-312944(JP,A)
【文献】特開2005-287722(JP,A)
【文献】特開2004-065674(JP,A)
【文献】特開平11-276606(JP,A)
【文献】特表2013-511747(JP,A)
【文献】特表2016-538052(JP,A)
【文献】特表2015-518752(JP,A)
【文献】特表2020-522745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0376862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
A61B 18/20
A61B 18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中心軸方向に見た両端面に開口を有する筒状部と、前記開口の夫々に設けられる、第1及び第2の側壁部と、を有する本体部と、
前記本体部に設けられ、外部の光を前記本体部の内部に入射させる第1の入射口と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の内部に入射した光を外部に出射させる長尺の第1の出射口と、
前記本体部の内周面に設けられた反射部と、
を有する光照射装置。
【請求項2】
前記第1の入射口は、前記第2の側壁部に設けられる
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第1の出射口の形状は、前記本体部の長さ方向の幅が、前記本体部の長さ方向に直交する方向の幅よりも大きい
請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記筒状部は、円筒形状である
請求項1~のいずれか一に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第1の側壁部は、平板の形状である
請求項1~のいずれか一に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記第1の側壁部は、前記筒状部の中心軸上に長軸を有し、短軸方向の半径が前記筒状部の半径に等しい半楕円体の表面の形状である、
請求項1~のいずれか一に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記筒状部は、その中心軸方向に直交する平面で切断したときの断面形状が多角形状である
請求項1~のいずれか一に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射により生体組織を焼灼するための装置が知られている。例えば特許文献1に記載された装置は、棒状の導光体の一端に光源からの光を入射し、他端から出射される光によって生体組織を焼灼することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6530919号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体組織の所定範囲を均一に焼灼したい場合、特許文献1に記載された装置では困難である。
【0005】
本発明の目的は、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することが可能な光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明は、その中心軸方向に見た両端面に開口を有する筒状部と、前記開口の夫々に設けられる、第1及び第2の側壁部と、を有する本体部と、前記本体部に設けられ、外部の光を前記本体部の内部に入射させる第1の入射口と、前記本体部に設けられ、前記本体部の内部に入射した光を外部に出射させる長尺の第1の出射口と、前記本体部の内周面に設けられた反射部と、を有する光照射装置である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体組織の所定範囲を均一に焼灼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の照射システムの構成を説明するための図である。
図2】第1実施形態の照射システムの導光体及び光照射装置の構成を説明するための断面図である。
図3】第1実施形態の照射システムの導光体及び光照射装置の構成を説明するための断面図である。
図4】第1実施形態の照射システムの導光体及び光照射装置の構成を説明するための断面図である。
図5】第2実施形態の照射システムの導光体及び光照射装置の構成を説明するための断面図である。
図6】実施例及び比較例の個別条件を説明するための図である。
図7】実施例及び比較例における光照射装置の内部の光の照度分布の計算結果である。
図8】実施例及び比較例における第1の出射口の光の照度分布の計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
==照射システム==
図1は、本実施形態の照射システム1の構成を説明する図である。照射システム1は、光源装置2と、導光体3と、光照射装置4とを備える。
【0010】
[光源装置]
光源装置2は、生体組織を焼灼するための光を生成する装置である。光源装置2は、焼灼する組織の光吸収/散乱特性に合わせた波長領域の光を生成する光源を有する。具体的に光源は、レーザ光源、LED光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ等若しくは前記光源を光ファイバーなどの伝送手段により、導光した光である。
【0011】
[導光体]
図2~4は、本実施形態の導光体3及び光照射装置4の構成を説明するための断面図である。以下においては、図2~4に示す互いに直交するx軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を用いて説明する。図2、3及び4はそれぞれ、導光体3及び光照射装置4を、後述する本体部40の中心Оを通るxy平面、yz平面及びzx平面で切断したときの断面図である。
【0012】
導光体3は、例えば光ファイバーのような、光源装置2からの光を光照射装置4まで伝搬させる部材である。導光体3の一端は、光源装置2に接続される(図1)。導光体3の他端は、光照射装置4に接続される(図1~4)。光源装置2から導光体3の一端に入射した光は、導光体3を伝搬し、光照射装置4の内部に入射する。
【0013】
以下の説明では、特に断らない限り、導光体3の端部のうち、光照射装置4側の端部を単に「端部」と呼ぶ。また、特に断らない限り、導光体3の端部において光源装置2からの光が出射する面を「端面3a」と呼ぶ。本実施形態では、導光体3の端面3aは、平坦な形状である。
【0014】
[光照射装置]
光照射装置4は、導光体3からの光を集光し、焼灼する生体組織に対して光を出射する装置である。光照射装置4は、本体部40と、反射部41とを有している。
【0015】
(本体部)
本体部40は、筒状部401と、側壁部402とを有している。
【0016】
筒状部401は、筒状である。なお、以下の説明では、筒状部401の一端から他端に向かう方向を、「筒状部401の長さ方向」、又は「本体部40の長さ方向」と呼ぶ。また、筒状部401の一端から他端までの長さをLとする。
【0017】
本実施形態の筒状部401は、円筒形状である。筒状部401の長さ方向に直交する平面で切断したときの断面の形状は、半径がRの円である。
【0018】
図2~4において、筒状部401の中心軸X1は、x軸に対して平行に配置されている。また、筒状部401の長さ方向は、x軸の方向に一致する。なお、以下の説明では、中心軸X1上の、筒状部401の両端の中央の点を、「筒状部401の中心O」、又は「本体部40の中心O」と呼ぶ。
【0019】
側壁部402は、筒状部401の両端面に設けられている。本実施形態においては、側壁部402は、平板の形状であり、筒状部401と一体に成形されている。従って、本体部40の内周面の形状は、円柱体の表面の形状となる。
【0020】
本体部40には、第1の入射口40aと、第1の出射口40bとが設けられている。
【0021】
第1の入射口40aは、本体部40の内周面から外周面まで貫通している。第1の入射口40aは、導光体3(端面3a)からの光を本体部40の内部に入射させるために設けられている。導光体3からの光は、「外部の光」に相当する。第1の入射口40aは、側壁部402の一方に設けられている。本実施形態において、第1の入射口40aは、側壁部402と、中心軸X1との交点に対応する位置に設けられている。
【0022】
具体的には、第1の入射口40aの形状は、所定の半径を有する円である。第1の入射口40aは、中心軸X1が第1の入射口40aの中心を通るように配置されている。本実施形態では、所定の半径とは、導光体3の半径に等しい。
【0023】
第1の入射口40aには、導光体3の端部が挿入され、光照射装置4と、導光体3とが接続される。これによって、光源装置2からの光を、導光体3の端面3aから出射させ、本体部40の内部に入射させることができる。なお、本実施形態では、導光体3は、端面3aが中心軸X1に対して垂直になるように、光照射装置4に接続されている。
【0024】
以下の説明では、第1の入射口40aが設けられた側壁部402を、「光源側の側壁部402b」と呼ぶことがある。また、他方の側壁部402を、「先端側の側壁部402a」と呼ぶことがある。両者を区別しない場合、両者をまとめて単に「側壁部402」と呼ぶ。
【0025】
第1の出射口40bは、本体部40の内部に入射した光を、外部に出射させるために設けられている。本実施形態では、本体部40の内部に入射した光とは、導光体3の端面3aから出射した、光源装置2からの光である。第1の出射口40bを生体組織の焼灼対象部位に位置させて、第1の出射口40bから光を出射させることにより、生体組織を焼灼することができる。
【0026】
第1の出射口40bの形状は、細長の形状である。本実施形態では、図4に示すように、第1の出射口40bの形状は、本体部40の長軸方向の幅が、本体部40の短軸方向の幅よりも大きい。第1の出射口40bの形状は、中心軸X1に平行な長辺を有する長方形である(図4)。
【0027】
以上、本体部40の構成について説明した。なお、本実施形態では、本体部40は、厚さ(内周面と外周面との距離)が一定である構造を有する態様を例示したが、これに限られるものではない。本体部40は、中空部を有し、中空部の表面の形状が円柱体の表面の形状と同様であれば、厚さが一定でなくても構わない。
【0028】
また、本実施形態では、第1の出射口40bの形状は、長方形である態様を示したが、これに限られるものではない。第1の出射口40bは、長方形以外の形状であってもよい。例えば、第1の出射口40bの形状は、楕円形、角丸四角形等であってもよい。また、本実施形態では、第1の出射口40bの数は1つである態様を示したが、複数であってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、本体部40の、中心軸X1の方向(x軸方向)に直交する平面(yz平面)で切断したときの断面形状(以下、単に「本体部40の断面形状」と呼ぶ)は円形であるが、これに限られるものではない。本体部40の断面形状は、多角形、楕円形等としてもよい。例えば、断面形状が四角形の場合、筒状部401は、筒状の四角柱の形状となる。
【0030】
また、第1の出射口40bに透明部材を充填することによって、本体部40の内部を密閉してもよい。または、本体部40の外周面側から、又は内周面側から第1の出射口40bを透明部材で覆うことによって、本体部40の内部を密閉してもよい。
【0031】
また、反射部41は、筒状部401の部分及び先端側の側壁部402aの部分にのみ設けられ、光源側の側壁部402bの部分には設けられなくても構わない。また、側壁部402は、光源側の側壁部402bのみ設けられ、先端側の側壁部402aが設けられず、筒状部401の先端側の端面が開口していても構わない。
【0032】
(反射部)
反射部41は、本体部40の内周面に亘って設けられている。つまり、反射部41は、筒状部401の内周面に設けられる部分と、先端側の側壁部402aの内表面と、光源側の側壁部402bの内表面に設けられる部分とを含んでいる。
【0033】
反射部41は、光を反射する材料で形成される。光源装置2で生成される光が可視光の波長域である場合、光を反射する材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。光源装置2で生成される光が赤外光の波長域である場合、光を反射する材料としては、金(Au)等の金属材料が用いられる。詳細は後述するが、反射部41は、筒状部401の高さL及び筒状部401の半径R(または筒状部401の断面の面積)に応じて、必要な反射率が得られる材料を用いて形成される。
【0034】
反射部41は、一例として、本体部40を形成した後に、内周面を、光を反射する材料でコーティングすることによって形成することができる。他の例として、本体部40を形成する前に、筒状部401の内周面を、光を反射する材料で内周面をコーティングし、平板状の側壁部402の一方の側面を、光を反射する材料でコーティングすることにより形成してもよい。
【0035】
以上、本実施形態の照射システム1の構成について説明した。本実施形態では、本体部40の外部に光源装置2が設けられ、導光体3を介して光源装置2からの光を本体部40の内部に導くこととしたが、これに限られるものではない。例えば、本体部40の内部に、LED素子等の光源素子を配置してもよい。また、導光体3の、光照射装置4から所定距離の箇所に、術者が照射システム1を操作する際に手で把持するための把持部を更に備えてもよい。
【0036】
==光の伝搬について==
光源装置2で生成された光は、導光体3を伝搬し、導光体3の端面3aから出射する(つまり、光照射装置4の本体部40の内部に入射する)。このとき、導光体3の端面3aに対して多様な角度を持って進行する光が、本体部40の内部に入射する。
【0037】
導光体3の端面3aから出射した光の一部は、反射部41のうち、筒状部401に形成された部分での反射を繰り返しながら、先端側の側壁部402aの方向へ伝搬する。先端側の側壁部402aに到達した光は、反射部41のうち、先端側の側壁部402aに形成された部分で反射し、反射部41のうち、筒状部401に形成された部分での反射を繰り返しながら、光源側の側壁部402bの方向へ伝搬する。
【0038】
つまり、本体部40の内部の光は、本体部40の外部に出射しない限り、反射部41において反射を繰り返しながら伝搬する。このとき、本体部40の内部の光は、本体部40の長さ方向については、先端側の側壁部402aと、光源側の側壁部402bとの間を往復する。
【0039】
本実施形態において、筒状部401は、本体部40の長さ方向について並進対称である。そのため、本体部40の内部の光の照度分布において、本体部40の長さ方向についての均一性は、他の方向についての均一性に比べて高い。
【0040】
本体部40の内部を進行する光の一部は、第1の出射口40bに到達し、第1の出射口40bから本体部40の外部に出射する。第1の出射口40bから出射した光によって、生体組織を焼灼することができる。
【0041】
本実施形態において、第1の出射口40bは、本体部40の長さ方向に長さ方向を有する長尺の形状である。前述のように、本体部40の内部の光の照度は、本体部40の長さ方向について高い均一性を持つ。これに伴い、第1の出射口40bから出射する光の照度も高い均一性を持つ。このことから、本実施形態の光照射装置4によれば、均一性の高い光で生体組織を焼灼することができる。
【0042】
なお、筒状部401の長さLが大きいほど、本体部40の内部において、筒状部401の内周面に設けられた反射部41の部分での反射の頻度が高くなる。従って、筒状部401の長さLが大きいほど、本体部40の内部での光の損失を抑えるためには、少なくとも筒状部401の内周面に設けられた反射部41の部分の反射率を高くすることが必要である。なお、Ag(銀)を蒸着することにより反射部41を形成することにより、96~98%程度の反射率が得られる。
【0043】
また、筒状部401の半径Rが大きいほど、本体部40の内部において、側壁部402の表面に設けられた反射部41の部分での反射の頻度が高くなる。従って、筒状部401の半径Rが大きいほど、本体部40の内部での光の損失を抑えるためには、少なくとも側壁部402の表面に設けられた反射部41の部分の反射率を高くすることが必要である。
【0044】
また、光源側の側壁部402bを設けず、筒状部401の一端面を導光体3の端部のみで塞いでもよい。この場合、筒状部401の断面の形状を、端面3aと同じとすればよい。
【0045】
<第2実施形態>
図5は、本実施形態の光照射装置5の構成を説明する図である。本実施形態の光照射装置5は、第1実施形態と比べると、本体部50の先端側の側壁部502aと、反射部51とが異なっている。本実施形態の光源側の側壁部502b、第1の出射口50bの構成はそれぞれ、第1実施形態の光源側の側壁部402b、第1の出射口40bの構成と等しい。
【0046】
先端側の側壁部502aは、回転楕円体の表面の一部の形状である。具体的には、先端側の側壁部502aは、半楕円体の表面の形状であり、凸状である。ここでの半楕円体は、中心軸X1上に長軸を有し、短軸方向の半径が筒状部501の半径Rに等しい。
【0047】
反射部51は、先端側の側壁部502aの形状が異なることに伴い、先端側の側壁部502aの内周面に設けられる部分が異なっている。つまり、反射部51の、先端側の側壁部502aの内周面に設けられる部分の形状は、半楕円体の表面の形状である。
【0048】
本実施形態のような構成であっても、本体部50の内部の光の照度は、x軸方向について高い均一性を持つ。これに伴い、第1の出射口50bから出射する光の照度も高い均一性を持つ。このことから、本実施形態の光照射装置5によれば、均一性の高い光で生体組織を焼灼することができる。
【0049】
なお、先端側の側壁部502aの形状は、この例に限られるものではない。半楕円体の表面の形状に代えて、例えば半球面、円錐の側面等の形状であってもよい。また、光源側の側壁部502bの形状についても、この例に限られるものではない。平板状に代えて、例えば、半楕円体の表面、半球面、円錐の側面等の形状であってもよい。
【0050】
以上、第1実施形態の照射システム1において、光照射装置4は、筒状の筒状部401と、筒状部401の少なくとも一方の端面に設けられた側壁部402とを有する本体部40と、本体部40に設けられ、外部の光を本体部40の内部に入射させる第1の入射口40aと、本体部40に設けられ、本体部40の内部に入射した光を外部に出射させる長尺の第1の出射口40bと、本体部40の内周面に設けられた反射部41と、を有する。第2実施形態についても同様である。
【0051】
このような構成によれば、本体部40の内部の光の照度分布は、本体部40の長さ方向についての均一性が高くなる。そのため、第1の出射口40bの全体に亘る領域から光が外部に出射される。これによって、生体組織の拡がりを有する領域に対して、同時に、均一な光を照射することが可能になる。
【0052】
第1実施形態の照射システム1において、第1の入射口40aは、側壁部402に設けられる。第2実施形態についても同様である。このような構成よれば、本体部40の長さ方向に対して近い角度で進行する光の割合を増加させることができる。更に、中心軸X1方向の光の照度のばらつきが小さくなる。従って、本体部40の内部を進行する光の反射の回数を抑え、ひいては反射に伴う光の損失を抑えることができる。これによって、生体組織の拡がりを有する領域を効率良く焼灼することが可能になる。
【0053】
第1実施形態の照射システム1において、側壁部402は、筒状部401の両端面に設けられてもよい。このような構成よれば、本体部40の内部における光の損失を抑えることができる。これによって、生体組織の拡がりを有する領域を更に効率良く焼灼することが可能になる。
【0054】
第1実施形態の照射システム1において、第1の出射口40bの形状は、本体部40の長さ方向の幅が、本体部40の長さ方向に直交する方向の幅よりも大きい。第2実施形態についても同様である。このような構成によれば、第1の出射口40bの近傍において、光の照度の均一性が更に高くなる。従って、第1の出射口40bの全体に亘る領域から光が外部に均一に出射される。これによって、生体組織の拡がりを有する領域に対して、同時に、高い均一性で、光を照射することが可能になる。
【0055】
第1実施形態の照射システムにおいて、筒状部401は、円筒形状である。第2実施形態についても同様である。このような構成によれば、本体部40の内部の光の照度分布は、本体部40の中心軸X1に対する高い軸対称性と、中心軸X1方向に高い均一性を有する。そのため、筒状部401の内周面に亘って、光の照度が均一になりやすい。これによって、第1の出射口40bの形状や配置に依らず、均一性の高い光を出射することができる。
【0056】
第1実施形態の照射システムにおいて、側壁部402は、平板の形状である。このような構成によれば、側壁部402の近傍に光が局在することを抑えることができる。これによって、中心軸X1方向の光の照度の均一性が向上する。従って、生体組織の拡がりを有する領域に、更に高い均一性で光を照射することが可能になる。
【0057】
第2実施形態の照射システムにおいて、側壁部502は、回転楕円体の表面の一部の形状である。このような構成によれば、導光体3の端面3aから離れた先端側の側壁部502aの焦点の位置に光が集まる。これによって、中心軸X1方向の光の照度の均一性が向上する。従って、第1の出射口40bから、均一性の高い光を出射することができる。更に、このような構成によれば、生体組織の狭隘な空間に、光照射装置5の先端側から挿入しやすくなる。これによって、照射システムの操作が容易になり、利便性が向上する。
【0058】
第1実施形態の照射システムにおいて、筒状部401は、多角形で構成されてもよい。第2実施形態についても同様である。このような構成であっても、本体部40の内部の光の照度分布は、中心軸X1方向に高い均一性を有する。これによって、第1の出射口40bの形状や配置に依らず、均一性の高い光を出射することができる。
【0059】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【実施例
【0060】
数値シミュレーションにより、本体部の内部及び第1の出射口における光の照度分布について評価を行った。本実施例の数値シミュレーションに用いたソフトは、ベストメディア社製照明シミュレータである。以下、詳細に説明する。
【0061】
[共通条件]
実施例1、2及び比較例1~3のいずれも、本体部の構成については、第1実施形態の本体部40(図2~4)と同様である。
【0062】
筒状部の長さL及び底面の半径Rはそれぞれ、50mm及び5mmとした。第1の出射口は、例えば図4に示したように、長方形とした。長方形の長辺及び短辺の長さはそれぞれ、30mm及び1mmとした。第1の入射口の径は、5mmとした。第1の入射口から入射する光は、1Wの光源とした。
【0063】
[個別条件]
図6は、本実施例の個別条件を説明する図である。実施例1、2及び比較例1~3はそれぞれ、筒状部の内周面に設けられた反射部の部分の反射率(以下、「反射率(筒状部)」と呼ぶ)と、側壁部に設けられた反射部の部分の反射率(以下、「反射率(側壁部)」と呼ぶ)との組み合わせが異なっている。図6は、実施例1、2及び比較例1~3における、反射率(筒状部)及び反射率(側壁部)を示している。
【0064】
[評価条件]
以上説明した条件の下で、筒状部と側壁部の反射率が98%以上あれば、第1の出射口の任意の位置における照度が、70,000μW/mm2以上あり、良好な焼灼状況を示した。
【0065】
なお、本体部の構成は、焼灼する対象となる生体組織の種類や部位等が有する吸収係数や散乱係数により、焼灼特性は変わってくるが、照射システムの用途に応じて適宜設計される。評価条件は、本体部の構成に応じて適宜設定されるものである。従って、上述した評価条件は、本実施例の本体部の構成に固有のものである。
【0066】
[計算結果]
図7は、実施例1、2及び比較例1~3の本体部の内部(中心軸X1)の光の照度分布の計算結果である。この図において、横軸は、中心軸X1上の、中心Oからの距離を示している。縦軸は、中心軸X1上における放射照度を示している。
【0067】
図8は、実施例1、2及び比較例1~3における、第1の出射口の照度分布の計算結果である。この図において、横軸は、第1の出射口における、中心Oからの本体部の長さ方向の距離を示している。縦軸は、第1の出射口における放射照度を示している。
【0068】
図8に示す結果から、側壁部のみの反射率を高くしても、第1の出射口における放射照度は高くならないが、側壁部の反射率が悪い第1の出射口における放射照度も悪くなるので、側壁部の反射率も重要であると評価された。
【0069】
ここで、実施例2は、実施例1に対して、反射率(側壁部)のみを18%だけ低下させた条件である。一方、比較例1は、実施例1に対して、反射率(筒状部)のみを18%だけ低下させた条件である。
【0070】
実施例1、2及び比較例1の結果から、本実施例で用いた本体部の構成の場合においては、反射率(筒状部)の低下による第1の出射口における照度の劣化は、反射率(側壁部)の低下による第1の出射口における照度の劣化に比べて大きいことがわかる。これは、中心軸X1上における照度の劣化についても同様である(図7)。
【0071】
この結果から、本実施例で用いた本体部の条件下においては、反射率(側壁部)よりも反射率(筒状部)の寄与が大きいことがわかる。このことは、筒状部の高さLが、筒状部の半径Rに比べて十分に大きいことに起因する。この場合、筒状部の内周面に設けられた反射部の部分の面積は、側壁部の表面に設けられた反射部の部分の面積に比べて十分に大きくなる。
【0072】
そのため、筒状部の内周面に設けられた反射部の部分における反射の頻度が、側壁部の表面に設けられた反射部の部分における反射の頻度よりも高くなる。これにより、筒状部の内周面に設けられた反射部の部分における光の損失が、側壁部の表面に設けられた反射部の部分における光の損失よりも大きくなる。
【0073】
従って、本実施例で用いた本体部の条件下においては、反射率(側壁部)に比べ、反射率(筒状部)を高くすることが要求される。
【符号の説明】
【0074】
1:照射システム
2:光源装置
3:導光体
4:光照射装置
40:本体部
401:筒状部
402:側壁部
41:反射部
40a:第1の入射口
40b:第1の出射口
5:光照射装置
50:本体部
51:反射部
50a:第1の入射口
50b:第1の出射口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8