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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】脳神経系疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250114BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250114BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250114BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250114BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20250114BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250114BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250114BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20250114BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P25/00
A61P25/28
G01N33/53 D
C12Q1/68
C07K16/28
C12N15/13
C07K16/46
C12N15/63 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021556910
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2020003903
(87)【国際公開番号】W WO2020190104
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0031630
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194381(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2018-0116925(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239964(US,A1)
【文献】国際公開第2015/187359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する結合分子を有効成分として含む、脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物であって、
前記結合分子は抗体またはその抗原結合断片であり、
前記脳神経系疾患はアルツハイマー病または多発性硬化症である、治療用薬学組成物
【請求項2】
前記Lrig-1タンパク質は、配列番号1または3で表されるアミノ酸配列からなるものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記Lrig-1タンパク質は、配列番号2または4で表されるポリヌクレオチドによってコーディングされるものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、および配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および
配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2、および配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域
を含むものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領
らなる群より選択される重鎖可変領域;および
(c)配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;および
(d)配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領
らなる群より選択される軽鎖可変領
含むものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;および
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分
らなる群より選択される、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号11または19で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;および
配列番号12または20で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領
含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号11で表される重鎖可変領域、および配列番号12で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;および
配列番号19で表される重鎖可変領域、および配列番号20で表される軽鎖可変領域を含む結合分子からなる群より選択される、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、Fc領域または不変領域(constant region)をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項10】
前記Fc領域は、IgA、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域、またはハイブリッドFc(hybrid Fc)領域である、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号21、23、24、26、27、28および29からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項12】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22または25で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項13】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;および
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項14】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号23、24、26、27または28で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;および
配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項15】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項16】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号30で表される重鎖、および配列番号31で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号32で表される重鎖、および配列番号33で表される軽鎖を含む結合分子;および
配列番号34で表される重鎖、および配列番号35で表される軽鎖を含む結合分
らなる群より選択されるものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項17】
前記の抗体またはその抗原結合断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片である、請求項に記載の薬学組成物。
【請求項18】
制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸分子;
前記核酸分子が挿入された発現ベクター;または
前記発現ベクターが形質感染した宿主細胞株
を有効成分として含む、脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物であって、
前記脳神経系疾患はアルツハイマー病または多発性硬化症であり、
前記の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;および配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域; 並びに配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1;配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;および配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む、
治療用薬学組成物
【請求項19】
体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む脳神経系疾患の予防または治療用薬学組成物であって、
前記脳神経系疾患はアルツハイマー病または多発性硬化症であり、
前記抗体-薬物結合体における抗体は、
制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合し、
配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;および
配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1;配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む、
治療用薬学組成物
【請求項20】
抗体またはその抗原結合断片を含む、脳神経系疾患の診断用組成物であって、
前記脳神経系疾患はアルツハイマー病または多発性硬化症であり、
前記の抗体またはその抗原結合断片は、
制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)の表面に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合し、
配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;および
配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1;配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む、
診断用組成物
【請求項21】
請求項20に記載の診断用組成物を含む脳神経系疾患の診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳神経系疾患の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中、痴呆、アルツハイマー病などの退行性脳神経疾患において記憶力、注意力、認知能力、感情調節などの低下が観察され、これは神経細胞の死滅および神経分枝の萎縮による結果である。神経細胞の神経分枝の伸長は神経可塑性を増大することで神経回路の記憶、学習機能に重要な役割を果たしている。このため、神経細胞の神経分枝の伸長と神経再生を促進する有効成分は、退行性脳神経疾患の新たな治療剤として開発の可能性があると予測される。
【0003】
高齢化人口の急増に伴って退行性脳神経系疾患の発病も増加傾向にあり、医学の革新的な発展にもかかわらず、まだ退行性脳神経系疾患に対する予防法と治療法が明らかでなく、決定的な効果を有する薬剤を見つけていないのが現状である。現在、退行性脳神経系疾患治療剤と治療法が開発されているが、長期服用による副作用および毒性を呈する場合が多く、治療よりは症状を軽減させる効果のみあるため、副作用および毒性を減少し治療できる素材の開発が急務なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、脳神経系疾患、特に神経退行性疾患または神経炎症性疾患を予防、改善または治療できる多様な用途の組成物を提供することである。
【0005】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する結合分子を有効成分として含む、脳神経系疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。
【0007】
本発明で使用される「結合分子」は、キメラ、ヒト化またはヒト単クローン抗体のような単クローン抗体を含む完全な(intact)イムノグロブリン(immunoglobulin)、または抗原に結合するイムノグロブリン、例えば、インフルエンザAウイルスの単量体HAまたは三量体HAとの結合のために完全な(intact)イムノグロブリンと競争するイムノグロブリン断片を含む可変性ドメインを意味する。構造とは関係なく、抗原-結合断片は、完全な(intact)イムノグロブリンによって認識された同一の抗原と結合する。抗原-結合断片は、結合分子のアミノ酸配列の2個以上の連続基、20個以上の連続アミノ酸残基、25個以上の連続アミノ酸残基、30個以上の連続アミノ酸残基、35個以上の連続アミノ酸残基、40個以上の連続アミノ酸残基、50個以上の連続アミノ酸残基、60個以上の連続アミノ酸残基、70個以上の連続アミノ酸残基、80個以上の連続アミノ酸残基、90個以上の連続アミノ酸残基、100個以上の連続アミノ酸残基、125個以上の連続アミノ酸残基、150個以上の連続アミノ酸残基、175個以上の連続アミノ酸残基、200個以上の連続アミノ酸残基、または250個以上の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを含むことができる。「抗原-結合断片」は、特にFab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、単一鎖抗体(scFv)、二価(bivalent)単一鎖抗体、単一鎖ファージ抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ、テトラボディ、ポリペプチドへの特定の抗原に結合するのに十分なイムノグロブリンの1つ以上の断片を含有するポリペプチドなどを含む。前記断片は、合成でまたは完全なイムノグロブリンの酵素的または化学的分解によって生成されるか、組換えDNA技術によって遺伝工学的に生成できる。生成方法は当業界にてよく知られている。
【0008】
本発明において、前記「Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質」は、制御性T細胞の表面に存在する1091個のアミノ酸からなる膜貫通タンパク質であって、細胞外あるいはルーメン側のロイシン反復配列(leucine-rich repeat(LRR))と3つの免疫グロブリン様ドメイン(immunoglobulin-like domains)、細胞膜貫通配列および細胞質尾部から構成されている。LRIG遺伝子ファミリーはLRIG1、LRIG2とLRIG3が存在し、これらの間のアミノ酸は非常に保全的に構成されている。前記LRIG1遺伝子は正常皮膚で高く発現しており、基底と毛包細胞に発現して上皮幹細胞の増殖を調節することができる。したがって、表皮の恒常性の維持に重要な役割をし、不存在の場合、乾癬や皮膚癌に発展しうる。LRIG1が位置した染色体3p14.3部分が切断される場合には癌細胞に発展する可能性があると報告されており、実際に腎臓癌(renal cell carcinoma)と扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma)ではLRIG1の発現が非常に減少していることが確認された。ところが、最近は、前記Lrig-1を発現する癌は20~30%程度に過ぎないことが究明されている。一方、本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質は、ヒトまたはマウスに存在するタンパク質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0009】
本発明において、前記Lrig-1タンパク質は、ヒト由来である配列番号1で表されるポリペプチドであるか、マウス由来である配列番号3で表されるポリペプチドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0010】
また、本発明において、前記配列番号1で表されるLrig-1タンパク質は、配列番号2で表されるポリヌクレオチドによってコーディングされるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0011】
さらに、本発明において、前記配列番号3で表されるLrig-1タンパク質は、配列番号4で表されるポリヌクレオチドによってコーディングされるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;および
配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1;配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む結合分子であってもよい。
【0013】
本発明において、前記結合分子は、
(a)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;からなる群より選択される重鎖可変領域;および
(c)配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;および
(d)配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;からなる群より選択される軽鎖可変領域;を含む結合分子であってもよい。
【0014】
本発明において、前記結合分子は、
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;および
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;および配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0015】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号11または19で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;および
配列番号12または20で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;を含む結合分子であってもよい。
【0016】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号11で表される重鎖可変領域、および配列番号12で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;および
配列番号19で表される重鎖可変領域、および配列番号20で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0017】
本発明において、前記結合分子は、Fc領域(Fragment crystallization region)または不変領域(constant region)をさらに含むことができる。この時、前記Fc領域は、IgA、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であるか、それに由来するものであってもよく、あるいはハイブリッドFc(hybrid Fc)領域であってもよい。
【0018】
本発明において、前記Fc領域は、哺乳動物由来IgA、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよく、好ましくは、ヒト由来IgA、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号21で表されるマウス由来IgG2a不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号22で表されるマウス由来免疫グロブリンカッパ(kappa)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号23または24で表されるヒト由来IgG1不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号25で表されるヒト由来免疫グロブリンカッパ(kappa)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号26で表されるヒト由来IgG2不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号27で表されるヒト由来IgG3不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号28で表されるヒト由来IgG4不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の一例として、前記Fc領域は、ヒト由来免疫グロブリンラムダ(lambda)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明において、前記「ハイブリッドFc」は、ヒトIgGサブクラスの組み合わせまたはヒトIgDおよびIgGの組み合わせから誘導される。前記ハイブリッドFcは、生物学的活性分子、ポリペプチドなどに結合する場合、生物学的活性分子の血清半減期を増加させるだけでなく、Fc-ポリペプチド融合タンパク質をコーディングするヌクレオチドが発現する時、ポリペプチドの発現レベルを高める効果がある。
【0028】
本発明の一例として、前記ハイブリッドFc領域は、配列番号29で表されるハイブリッドFcであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の前記結合分子において、前記Fcまたは不変領域は、前記可変領域にリンカー(linker)で連結可能である。この時、前記Fcまたは不変領域のC-末端にリンカーが連結され、前記リンカーに本発明の結合分子のN-末端が連結されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明において、前記「リンカー(linker)」は、目的とする疾患の組織または細胞内で過発現する酵素によって切断可能な配列を含むことができる。前記のように過発現する酵素によって切断可能な場合には、Fcまたは不変領域によってポリペプチドの活性が低下するのを効果的に防止することができる。本発明では、リンカーの好ましい例として、血液内に最も多く存在するヒトアルブミンの282番~314番目の部分に位置した33個のアミノ酸からなるペプチドリンカー、より好ましくは、292番~304番目の部分に位置した13個のアミノ酸からなるペプチドリンカーであってもよいし、これらの部分は3次元的な構造上大部分外部に露出した部分であって、体内で免疫反応を誘導する可能性が最小化された部分である。ただし、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の結合分子は、配列番号21、23、24、26、27、28および29からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0032】
本発明の結合分子は、配列番号22または25で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の結合分子は、
配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;および
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0034】
本発明の結合分子は、
配列番号23、24、26、27または28で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;および
配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の結合分子は、
配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0036】
本発明の結合分子は、
配列番号30で表される重鎖、および配列番号31で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号32で表される重鎖、および配列番号33で表される軽鎖を含む結合分子;および
配列番号34で表される重鎖、および配列番号35で表される軽鎖を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0037】
本発明の結合分子は、抗体であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。前記抗体は、単クローン抗体(monoclonal antibody)、全長抗体(full-length antibody)または抗体の一部分であって、Lrig-1タンパク質に結合する能力を有し、本発明の結合分子と競争的にLrig-1抗原決定部位に結合可能な抗体断片のすべてを含む。
【0038】
本発明において、前記「抗体」は、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割を果たすタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、前記抗原は、制御性T細胞(regulatory T cell)の表面に存在するLrig-1タンパク質であってもよい。好ましくは、前記Lrig-1タンパク質のロイシンリッチ区域(Leucine Rich Region)または免疫グロブリン様ドメインを特異的に認識するものであってもよいが、これに限定されない。
【0039】
本発明において、前記「免疫グロブリン」は、重鎖および軽鎖を有し、それぞれの重鎖および軽鎖は、不変領域および可変領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3つの多変可能な領域および4つの構造領域(Framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(Epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0040】
また、本発明において、前記「単クローン抗体」は、実質的に同一の抗体集団から得た単一分子組成の抗体分子を称する用語で、特定の抗原決定基(Epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す。
【0041】
本発明において、前記「全長抗体」は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド(Disulfide)結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含む。前記IgGはその亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0042】
また、本発明において、前記「抗体の断片」は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvなどを含む。前記Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の1番目の不変領域(CH1ドメイン)を有する構造で1つの抗原結合部位を有する。さらに、Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabとは差がある。F(ab’)抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなして生成される。Fv(Variable fragment)は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体片を意味する。二重鎖Fv(dsFv)は、ジスルフィド結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが連結されており、単鎖Fv(scFv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されている。前記抗体断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパインまたはペプシンを用いる場合、FabまたはF(ab’)の断片を得ることができ、遺伝子組換え技術により作製することができる。
【0043】
また、本発明において、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異的抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、またはその断片であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明において、前記「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域およびヒト抗体の不変領域を組換えた抗体であって、マウス抗体に比べて免疫反応が大きく改善された抗体である。
【0045】
また、本発明において、前記「ヒト化抗体」は、ヒトでない種に由来する抗体のタンパク質配列をヒトから自然的に生産された抗体変異体と類似するように変形させた抗体を意味する。その例として、前記ヒト化抗体は、マウス由来のCDRをヒト抗体由来のFRと組換えてヒト化可変領域を製造し、これを好ましいヒト抗体の不変領域と組換えてヒト化抗体を製造することができる。
【0046】
本発明において、前記結合分子は、Lrig-1タンパク質に結合でき、それ以外の他のタンパク質にも結合できる二重特異的抗体または二重特異的抗原結合断片としても提供可能である。
【0047】
本発明において、前記二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、本発明による結合分子を含むことができる。本発明において、一例として、前記二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、Lrig-1タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含み、ここで、Lrig-1タンパク質に結合できる抗原結合ドメインは、本発明による結合分子を含むか、これから構成されてもよい。
【0048】
本発明で提供する二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、本発明によるLrig-1タンパク質に結合できる結合分子である抗原結合ドメイン、および他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含む。ここで、他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインは、Lrig-1タンパク質以外の他のタンパク質で、これに限定されるものではないが、例えば、PD-1または細胞表面受容体に結合できる抗原結合ドメインであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片は、任意の好適なフォーマット、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Kontermann MAbs2012,4(2):182-197)に記載のフォーマットで提供可能である。例えば、二重特異的抗体または二重特異的抗原結合断片は、二重特異的抗体接合体(例:IgG2、F(ab’)2またはCovX-ボディ)、二重特異的IgGまたはIgG-型分子(例:IgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、または2イン(in)1-IgG、mAb2、またはTandemab common LC)、非対称性二重特異的IgGまたはIgG-型分子(例:kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、電荷対またはSEED-ボディ)、小型二重特異的抗体分子(例:ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAbs、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、またはF(ab’)2-scFv2)、二重特異的FcおよびCH3融合タンパク質(例:taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-Fc、またはscFv-kih-CH3)、または二重特異的融合タンパク質(例:scFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-毒素、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-サイトカイン2)であってもよい。特に、文献(参照:Kontermann MAbs2012,4(2):182-19)の図2を参照する。当業者は本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片を設計し製造することができる。
【0050】
本発明において、前記二重特異的抗体を生産する方法は、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Segal and Bast,2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16)に記載のように、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と抗体または抗体断片の化学的架橋結合を含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)は、ジスルフィド連結された二重特異的F(ab)2ヘテロダイマーを生成するために、例えば、ヒンジ領域SH-グループを介してFab断片を化学的に架橋結合させるのに使用できる。
【0051】
また、本発明において、前記二重特異的抗体を生産するための他の方法は、例えば、文献(参照:D.M.and Bast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16)に記載のように、二重特異的抗体を分泌可能なクアドローマ細胞を生成するために、抗体-生産ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合させることを含む。
【0052】
本発明による二重特異的抗体および二重特異的抗原結合断片はさらに、例えば、両方とも全文が本願に参照として引用された文献(参照:Antibody Engineering:Methods and Protocols,Second Edition(Humana Press,2012),at Chapter40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Hornig and Farber-Schwarz)、またはFrench、How to make bispecific antibodies、Methods Mol.Med.2000;40:333-339)に記載のように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコーディングする核酸作製物から発現によって組換え生産できる。
【0053】
例えば、2個の抗原結合ドメイン(すなわち、PD-1などに結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、および他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)のための軽鎖および重鎖可変ドメインをコーディングし、抗原結合ドメイン間の好適なリンカーまたは二量体化ドメインをコーディングする配列を含むDNA作製物は、分子クローニング技術によって製造できる。組換え二重特異的抗体は、後に好適な宿主細胞(例:哺乳類宿主細胞)中で作製物の発現(例:試験管内)によって生産可能であり、次いで発現した組換え二重特異的抗体は任意に精製可能である。
【0054】
抗体は、非変形の親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和度が改善された変形抗体が生成される親和度成熟工程によって生成できる。親和度成熟抗体は、当該技術分野、例えば、文献(参照:Marks et al.,Rio/Technology10:779-783(1992);Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-159(1995);およびHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992))に公知の手順で生産できる。
【0055】
同時に、本発明で提供する結合分子は、Lrig-1タンパク質に特異的に結合できる限り、前記アミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度および/またはその他の生物学的特性を改善させるために抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入および/または置換を含む。
【0056】
このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいて行われる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状および種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンはすべて正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似の形状を有することが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは生物学的に機能均等物といえる。
【0057】
変異を導入するにあたり、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考えられる。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するにあたり、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換してこそ類似の生物学的活性を保有できることは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の疎水性インデックスの差を示すアミノ酸の間で置換をする。
【0058】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすこともよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されているように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸の間で置換を行うことができる。
【0059】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野にて公知である(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York(1979))。最も通常起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Gln/Gluの間の交換である。
【0060】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の結合分子は、配列リストに記載の配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むと解釈される。
【0061】
本発明において、用語「実質的な同一性」とは、本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するように並列し、当業界で通常利用されるアルゴリズムを用いて並列された配列を分析した場合に、最小61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、さらにより好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界にて公知である。アラインメントに対する多様な方法およびアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.48:443(1970);Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.24:307-31(1988);Higgins and Sharp,Gene73:237-44(1988);Higgins and Sharp,CABIOS5:151-3(1989);Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90(1988);Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.8:155-65(1992)and Pearson et al.,Meth.Mol.Biol.24:307-31(1994)に開示されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10(1990))は、NBCI(National Center for Biological Information)などでアクセス可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn and tblastxのような配列分析プログラムと連動して用いることができる。BLSATはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性の比較方法は、オンライン(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html)を通して確認可能である。
【0062】
本発明において、前記結合分子、好ましくは、前記抗体は、抗体を生産する通常の方法によって生成できるが、親和度成熟(Affinity maturation)によって生成可能である。
【0063】
本発明において、前記「親和度成熟(Affinity maturation)」は、活性化されたB細胞が免疫反応過程で抗原に対する親和度が増加した抗体を生産する過程を意味する。本発明の目的上、前記親和度成熟は、自然で起こる過程と同様に、突然変異と選択の原理に基づいて親和度成熟によって生成された抗体または抗体断片を生成することができる。
【0064】
本発明で提供する結合分子、好ましくは、抗体は、脳神経系疾患、特に神経退行性疾患または神経炎症性疾患を効果的に予防、改善または治療することができる。
【0065】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記結合分子をコーディングする核酸分子;前記核酸分子が挿入された発現ベクター;または前記発現ベクターが形質感染した宿主細胞株;を有効成分として含む脳神経系疾患の予防、改善または治療用組成物を提供する。
【0066】
本発明の核酸分子は、本発明で提供する結合分子のアミノ酸配列を、当業者に知られているようにポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子のすべてを含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0067】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送できる前記核酸分子である。ベクターの一類型は、追加的なDNAセグメントが結紮できる円形二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージベクターである。さらに他の類型のベクターはウイルス性ベクターで、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムに結紮できる。あるベクターは、それらが流入した宿主細胞で自律的な複製が可能である(例えば、バクテリア性ベクターはバクテリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非-エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入しながら宿主細胞のゲノムに統合され、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において、「組換え発現ベクター」または単純に「発現ベクター」と名付けられる。一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターの中で最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用可能である。
【0068】
本発明において、前記発現ベクターの具体例としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムダ状(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμμ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択できるが、これに限定されるものではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべての発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する時には、目的とする宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクションまたは電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるものではなく、当業者は使用する発現ベクターおよび宿主細胞に適した導入方法を選択して用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含むが、これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産の有無によって選別可能である。選別マーカーの選択は、目的とする宿主細胞によって選別され、これはすでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに制限を設けない。
【0069】
本発明の核酸分子を、精製を容易にするために、タグ配列を発現ベクター上に挿入して融合させることができる。前記タグとしては、ヘキサ-ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグまたはflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0070】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクターのレシピエント(recipient)であり得るか、またはレシピエントであった個別的な細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は自然的な、偶発的なまたは故意の突然変異のため、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態学上またはゲノムDNA補完体において)でなくてもよい。宿主細胞には本願のポリペプチドで体内で形質注入された細胞が含まれる。
【0071】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類または細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大膓菌、ストレプトミセス、サルモネラティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキアパストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボウズメラノーマ細胞、HT-1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)またはPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;または植物細胞であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた宿主細胞株として使用可能な細胞はすべて利用可能である。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗体および薬物を含む抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む脳神経系疾患の予防、改善または治療用組成物を提供する。
【0073】
本発明において、前記「抗体-薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)」とは、抗体と薬物の生物学的活性を低下させることなく薬物と抗体を化学的に連結した形態を指す。本発明において、前記抗体-薬物結合体は、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端のアミノ酸残基に薬物が結合した形態、具体的には、抗体の重鎖および/または軽鎖のN-末端、α-アミン基に薬物が結合した形態をいう。
【0074】
本発明において、前記「薬物」は、細胞に特定の生物学的活性を有する任意の物質を意味することができ、これはDNA、RNAまたはペプチド(Peptide)を含む概念である。前記薬物は、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含む形態であってもよいし、α-アミン基と反応して架橋できる反応基を含むリンカーが連結されている形態も含む。
【0075】
本発明において、前記α-アミン基と反応して架橋できる反応基の例としては、抗体の重鎖または軽鎖のN-末端のα-アミン基と反応して架橋できれば、その種類は特に限定されず、当業界にて公知のアミン基と反応する種類をすべて含む。その例として、イソチオシアネート(Isothiocyanate)、イソシアネート(Isocyanates)、アシルアジド(Acyl azide)、NHSエステル(NHS ester)、スルホニルクロライド(Sulfonyl chloride)、アルデヒド(Aldehyde)、グリオキサール(Glyoxal)、エポキシド(Epoxide)、オキシラン(Oxirane)、カーボネート(Carbonate)、アリールハライド(Aryl halide)、イミドエステル(Imidoester)、カルボイミド(Carbodiimide)、アンハイドライド(Anhydride)およびフルオロフェニルエステル(Fluorophenyl ester)のいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0076】
本発明において、前記薬物は、脳神経系疾患、特に神経退行性疾患または神経炎症性疾患を治療できる薬物であれば、その種類に関係なく含まれる。
【0077】
本発明で提供する組成物が予防、改善または治療するための脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0078】
本発明において、前記「神経退行性疾患」は、神経細胞の機能減少または消失によって発生する疾患を意味することができ、前記「神経炎症性疾患」は、神経系の過度の炎症反応によって発生する疾患を意味することができる。本発明において、前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患の具体的な例としては、脳卒中、痴呆、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭痴呆、レビー小体型痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、腫瘍随伴症候群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底核変性症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳失調(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー病(tauopathy)からなる群より選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、本発明で提供する組成物は、薬学組成物または食品組成物として使用できるが、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明の前記「予防」は、本発明の前記組成物を用いて神経退行性疾患または神経炎症性疾患によって起因する症状を遮断するか、その症状を抑制または遅延させることができるすべての行為であれば制限なく含まれる。
【0081】
本発明の前記「治療」および「改善」は、本発明の前記組成物を用いて神経退行性疾患または神経炎症性疾患によって起因する症状が好転するか、有利になり得るすべての行為であれば制限なく含まれる。
【0082】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0083】
本発明の薬学組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬剤的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0084】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含んでもよい。
【0085】
本発明による薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0086】
本発明において、「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与可能である。
【0087】
本発明の薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kg投与することができる。前記投与は、1日に1回または数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化可能である。
【0088】
本発明の組成物を有効成分として含む食品組成物は、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、お菓子、餅、パンなどの形態に製造できる。本発明の食品組成物は、毒性および副作用がほとんどない植物抽出物からなるので、予防の目的で長期間服用の際にも安心して使用可能である。
【0089】
本発明の組成物が食品組成物に含まれる時、その量は全重量の0.1~50%の比率で添加することができる。
【0090】
ここで、前記食品組成物が飲料形態に製造される場合、指示された比率で前記食品組成物を含有する以外に特別な制限はなく、通常の飲料のように多様な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。すなわち、天然炭水化物として、ブドウ糖などのモノサッカライド、果糖などのジサッカライド、スクロースなどのおよびポリサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールなどを含むことができる。前記香味剤としては、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルリチンなど)および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)などが挙げられる。
【0091】
その他、本発明の食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【0092】
このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率は、それほど重要ではないが、本発明の組成物100重量部あたり0.1~約50重量部の範囲から選択されることが一般的である。
【0093】
本発明のさらに他の実施形態によれば、投与が必要な個体に、本発明で提供する結合分子;前記結合分子をコーディングする核酸分子;前記核酸分子が挿入された発現ベクター;前記発現ベクターが形質感染した宿主細胞株;または本発明で提供する抗体-薬物結合体(ADC)を投与する段階を含む脳神経系疾患の予防、改善または治療方法を提供する。
【0094】
本発明において、前記「個体」は、脳神経系疾患の発病が疑われる個体であって、前記疾患発病の疑われる個体は、当該疾患が発病したか発病しうるヒトを含むネズミ、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明で提供する有効物質で治療可能な個体は制限なく含まれる。
【0095】
本発明の方法により治療される脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよく、その具体例としては、脳卒中、痴呆、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭痴呆、レビー小体型痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、腫瘍随伴症候群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底核変性症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳失調(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー病(tauopathy)からなる群より選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明の前記方法は、本発明で提供する結合分子;前記結合分子をコーディングする核酸分子;前記核酸分子が挿入された発現ベクター;前記発現ベクターが形質感染した宿主細胞株;または本発明で提供する抗体-薬物結合体(ADC)を薬学的有効量で投与することを含むことができる。
【0097】
好適な1日の総使用量は正しい医学的判断の範囲内で処置医師によって決定可能であり、1回または数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては、他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的な前記有効成分を含む組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および前記有効成分を含む組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物とともに使用されるか同時使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野にてよく知られた類似因子によって異なって適用することが好ましい。
【0098】
一方、これに限定されないが、前記脳神経系疾患の予防または治療方法は、1つ以上の疾患に対する治療的活性を有する化合物または物質を投与することをさらに含む併用療法であってもよい。
【0099】
本発明において、前記「併用」は、同時、個別または順次投与を示すことが理解されなければならない。前記投与が順次または個別的な場合、2次成分投与の間隔は、前記併用の有利な効果を失わないようにするものでなければならない。
【0100】
本発明において、前記結合分子;または抗体-薬物結合体の投与用量は、患者の体重1kgあたり約0.0001μg~500mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0101】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する結合分子を含む、脳神経系疾患の診断用組成物を提供する。
【0102】
本発明において、前記「診断」とは、病理状態の存在または特徴を確認することを意味し、本発明の目的上、診断は、脳神経系疾患、特に神経退行性疾患または神経炎症性疾患の発病の有無を確認することである。
【0103】
本発明では、前記結合分子を用いてLrig-1タンパク質の発現レベルを測定することにより、脳神経系疾患を診断することができる。
【0104】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の診断用組成物を含む脳神経系疾患の診断キットを提供する。
【0105】
本発明において、前記「キット」とは、特定の目的のために必要な組成物および付属品を集めておいたセットを意味する。本発明の目的上、本発明のキットは、Lrig-1タンパク質の発現レベルを確認することにより、前記疾患を診断することができる。本発明のキットには、免疫関連疾患の診断マーカーの発現レベルを測定するためのプライマー、プローブまたは選択的にマーカーを認知する抗体だけでなく、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分の組成物、溶液または装置が含まれる。
【0106】
本発明において、前記キットは、RT-PCRキット、DNAチップキット、ELISAキット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0107】
本発明の診断用キットは、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分の組成物、溶液または装置をさらに含むことができる。
【0108】
例えば、本発明の診断用キットは、逆転写重合酵素反応を行うために必要な必須要素をさらに含むことができる。逆転写重合酵素反応キットは、マーカータンパク質をコーディングする遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む。プライマーは、前記遺伝子の核酸配列に特異的な配列を有するヌクレオチドであって、約7bp~50bpの長さ、より好ましくは、約10bp~30bpの長さを有することができる。また、対照群遺伝子の核酸配列に特異的なプライマーを含むことができる。その他、逆転写重合酵素反応キットは、テストチューブまたは他の適切な容器、反応緩衝液(pHおよびマグネシウムの濃度は多様)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq-ポリメラーゼおよび逆転写酵素のような酵素、DNase、RNase抑制剤、DEPC水(DEPC-water)、滅菌水などを含むことができる。
【0109】
また、本発明の診断用キットは、DNAチップを行うために必要な必須要素を含むことができる。DNAチップキットは、遺伝子またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)が付着している基板、および蛍光標識プローブを作製するための試薬、製剤、酵素などを含むことができる。さらに、基板は、対照群遺伝子またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0110】
なお、本発明の診断用キットは、ELISAを行うために必要な必須要素を含むことができる。ELISAキットは、前記タンパク質に対して特異的な抗体を含む。抗体は、マーカータンパク質に対する特異性および親和性が高く、他のタンパク質に対する交差反応性がほとんどない抗体で、単クローン抗体、多クローン抗体または組換え抗体である。さらに、ELISAキットは、対照群タンパク質に特異的な抗体を含むことができる。その他、ELISAキットは、結合した抗体を検出可能な試薬、例えば、標識された二次抗体、発色団(chromophores)、酵素(例:抗体とコンジュゲートされる)およびその基質または抗体と結合可能な他の物質などを含むことができる。
【0111】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する結合分子を用いて、目的とする個体の生物学的試料に存在するLrig-1タンパク質の発現レベルを測定して脳神経系疾患の診断に関する情報を提供する方法を提供する。
【0112】
本発明において、前記「目的とする個体」とは、脳神経系疾患、特に神経退行性疾患または神経炎症性疾患が発病するか否かが不確実な個体で、発病の可能性が高い個体を意味する。
【0113】
本発明において、前記「生物学的試料」は、個体から得られるか、個体に由来する任意の物質、組織、細胞、全血、血清、血漿、組織剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髄など)、細胞培養上澄液、破裂した真核細胞および細菌発現系などが挙げられるが、好ましくは、制御性T細胞であってもよい。
【0114】
本発明において、前記Lrig-1タンパク質の発現レベルを測定または比較分析する方法としては、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、2次元電気泳動分析、リキッドクロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0115】
本発明で目的とする個体の生物学的試料に対して測定された前記Lrig-1タンパク質の発現レベルが正常対照群に比べて増加または減少した場合、神経退行性疾患または神経炎症性疾患の発病の可能性が高いと予測する段階を含むことができる。
【0116】
本発明において、前記診断用組成物、診断キットまたは前記情報提供方法により診断の対象になる疾患である脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよく、その具体例としては、脳卒中、痴呆、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭痴呆、レビー小体型痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、腫瘍随伴症候群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底核変性症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳失調(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髄損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー病(tauopathy)からなる群より選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0117】
本発明で提供する結合分子は、多様な神経退行性または神経炎症性疾患などの脳神経系疾患を特異的に予防、改善または治療できるだけでなく、これを診断するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
図3】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の抗原決定基(epitope)を予測した結果を示す図である。
図4】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の抗原決定基(epitope)を予測した結果を示す図である。
図5】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図6】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図7】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図8】本発明の一実施例によるLrig-1、Lrig-2およびLrig-3 mRNAの発現程度を示す図である。
図9】本発明の一実施例による制御性T細胞と非制御性T細胞内のLrig-1タンパク質の発現量の比較結果を示す図である。
図10】本発明の一実施例による制御性T細胞の表面でのLrig-1タンパク質の発現を示す図である。
図11】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す図である。
図12】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の多発性硬化症の治療効果を確認するための実験設計図を示す。
図13】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の投与後の多発性硬化症の治療効果を分析した結果を示す図である。
図14】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の投与後のアルツハイマーの治療効果を分析した結果を示す図である。
図15】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の投与後のアルツハイマーの治療効果を分析した結果を示す図である。
図16】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の投与後のアルツハイマーの治療効果を分析した結果を示す図である。
図17】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体の投与後のアルツハイマーの治療効果を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明は、制御性T細胞(regulatory T cells、Treg cells)に存在するLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する結合分子を有効成分として含む、脳神経系疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。
【0120】
ここで、前記結合分子は、
【0121】
配列番号5または13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6または14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7または15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;および
【0122】
配列番号8または16で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR1;配列番号9または17で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10または18で表されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む結合分子であってもよい。
【実施例
【0123】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0124】
実施例
[準備例1]T細胞の亜型細胞の培養
制御性T細胞(Treg)でのみLrig-1タンパク質が発現するかを確認するために、T細胞の亜型(subset)であるTh0、Th1、Th2、Th17およびiTregを用意した。前記iTregは、自然的に分離したnTregとは異なり、下記の組成を含む培地で分化を人工的に誘導した細胞を意味する。
【0125】
T細胞の亜型はまず、マウスの脾臓から得たナイーブ(naive)T細胞を分離した後、ウシ胎児血清(FBS;hyclone、logan、UT)10%を含むRPMI1640(Invitrogen Gibco、Grand Island、NY)栄養培地に下記表1の成分をそれぞれさらに含ませて、37℃、5%CO培養器内で72時間培養によりそれぞれの細胞に分化誘導した。
【0126】
【表1】
【0127】
[実施例1]Lrig-1構造の分析
制御性T細胞の表面タンパク質であるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインの3次元立体構造を予測した。
【0128】
まず、抗原決定基(Epitope)塩基配列の予測のためにLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(Extracellular domain;ECD)の構造を確認するために、Uniprot(http://www.uniprot.org)とRCSB Protein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb)ツールを用いて3次元立体構造を予測した後、その結果を図1および2に示した。
【0129】
図1に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-LRRドメイン(アミノ酸配列41~494番)内にはLRR1~LRR15の計15個のロイシンリッチ部位(Leucine rich region)が存在した。前記LRRドメインそれぞれは23~27個のアミノ酸から構成され、ロイシンは3~5個が存在した。
【0130】
また、図2に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-1タンパク質のアミノ酸配列494~781番には免疫グロブリン様ドメイン(Immunoglobulin-like domain)が3個存在した。
【0131】
[実施例2]Lrig-1抗原決定基(epitope)アミノ酸配列の予測
前記塩基配列の予測は、Lrig-1タンパク質の構造をベースとする抗原決定基予測ソフトウェア(epitope prediction software)であるElliproサーバ(http://tools.iedb.org/ellipro/)を用いた。前記Ellipro検索エンジンは、現存する抗原決定基を予測するアルゴリズムの中で最も信頼度が高いと知られた検索エンジンに相当してこれを用いた。
【0132】
抗原決定基予測ソフトウェアに前記実施例1で分析された細胞外ドメインを入力した後、予測された抗原決定基の予測された連続または不連続アミノ酸配列を図3および4に示した。
【0133】
図3および4に示すように、連続した抗原決定基のアミノ酸配列は計22個が予測され、不連続した抗原決定基のアミノ酸配列は計8個が予測された。
【0134】
[製造例1~8]Lrig-1タンパク質に特異的な単クローン抗体の作製
本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製した。本抗体は、特定の抗原決定基を定めて生産するのではなく、Lrig-1タンパク質にどの部位でも結合できる抗体を生産した。
【0135】
前記抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質が発現する細胞を作製した。より詳しくは、配列番号2に相当するDNA断片およびpcDNA(hygro)を切断酵素で切断した後、37℃で培養してライゲーション(Lrigation)して、Lrig-1タンパク質のDNA配列が挿入(insert)されているpcDNAを作製した。前記作製された配列番号2が挿入されたpcDNAはL細胞に形質注入(transfection)により導入されて、L細胞の表面にLrig-1タンパク質が発現できるようにした。
【0136】
前記細胞表面に発現するLrig-1に結合できる軽鎖(Lright chain)および重鎖(heavy chain)アミノ酸の配列をHuman scFv libraryから選別して、計8個の重鎖および軽鎖を選別した。
【0137】
前記選別された重鎖および軽鎖アミノ酸配列をmlgG2a Fc領域と融合して単クローン抗体(monoclonal antibody)を作製した。前記単クローン抗体の配列は下記表2の通りである。
【0138】
【表2-1】
【0139】
【表2-2】
【0140】
【表2-3】
【0141】
【表2-4】
【0142】
【表2-5】
【0143】
[実施例3]Lrig-1 mRNAの制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が制御性T細胞に特異的なバイオマーカー(biomarker)として作用できるかを検証した。
【0144】
前記検証のために、マウスの脾臓からCD4ビーズを通して磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4 T細胞を分離した。以後、CD25抗体を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)を用いて制御性T(CD4CD25 T)細胞および非制御性T(CD4CD25 T)細胞を分離した。それぞれの細胞および前記準備例1で分化された細胞はトリゾール(Trizol)を用いてmRNAを抽出した後、ゲノミックRNAは、gDNA抽出キット(Qiagen)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、gDNAを除去した。gDNAの除去されたmRNAは、BDsprint cDNA合成キット(Clonetech)によりcDNAに合成した。
【0145】
前記cDNAでLrig-1 mRNAの発現量を定量的に確認するためにリアルタイム重合酵素連鎖反応(real time PCR)を行った。
【0146】
前記リアルタイム重合酵素連鎖反応は、SYBR Green(Molecular Probes)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、95℃で3分、61℃で15秒、72℃で30秒ずつ、40サイクルの条件で、下記表3のプライマーを用いて行い、相対的な遺伝子発現量はΔCT方法を用いて計算し、HPRTを用いて一般化(normalization)して、その結果を図5~8に示した。
【0147】
【表3】
【0148】
図5に示すように、非制御性T(CD4CD25 T)細胞に比べて、制御性T(CD4CD25 T)細胞でLrig-1の発現が18.1倍高いことが分かる。これは、従来知られている制御性T細胞のマーカーであるLag3およびIkzf4と比較した時、約10倍程度発現量が高い水準であった。また、図6および7に示すように、他の種類の免疫細胞に比べて、制御性T細胞、特に誘導された制御性T細胞(iTreg)に比べて、自然的に分離した制御性T細胞(nTreg)でLrig-1 mRNAの発現が著しく高かった。
【0149】
また、図8に示すように、Lrigファミリーに相当するLrig-1、Lrig-2およびLrig-3のうち、Lrig-1の発現が最も高かった。
【0150】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞、特に自然的に存在する制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0151】
[実施例4]Lrig-1タンパク質の制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1 mRNAから発現したLrig-1タンパク質が制御性T細胞でのみ特異的に発現するかを確認した。
【0152】
制御性T細胞特異的な転写因子であるFOXP3プロモーターにRFP(Red fluorescence protein)が結合したFOXP3-RFP注入(Knock-in)マウスを用いて、前記マウスの脾臓から、CD4ビーズで磁石活性細胞分類機(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4 T細胞を分離した。以後、RFPタンパク質を用いて、蛍光活性細胞分類機(FACS)により制御性T(CD4RFP T)細胞および非制御性T(CD4RFP T)を分離して得た。それぞれの前記細胞は購入したLrig-1抗体および陰性対照群はアイソタイプ(isotype)により染色して蛍光活性細胞分類機でLrig-1の発現量を測定して、その結果を図9に示した。
【0153】
図9に示すように、点線で表される非-制御性T細胞の場合、陰性対照群とほぼ同じLrig-1の発現レベルを見せたが、制御性T細胞の場合、Lrig-1の発現レベルの高い細胞が多数存在した。
【0154】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0155】
[実施例5]制御性T細胞の表面でのLrig-1タンパク質特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が細胞治療のターゲットになるためには、制御性T細胞の表面に発現してこそより効果的にターゲット治療が可能なため、Lrig-1タンパク質が表面で発現するか否かを確認した。
【0156】
前記準備例1のそれぞれの分化されたT細胞の亜型を抗-CD4-APCおよび抗Lrig-1-PE抗体で染色し、蛍光活性細胞分類機(Fluorescence-Activated Cell Sorter;FACS)を用いてそれぞれの細胞表面でLrig-1の発現量を測定して、その結果を図10に示した。
【0157】
図10に示すように、活性化されたT細胞(activated T cell)、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびナイーブ(Naive)T細胞ではLrig-1の発現が0.77~15.3の量で発現するのに対し、分化が誘導されたT細胞(iTreg)では83.9と高く発現した。
【0158】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞(Treg)細胞で特異的に発現するだけでなく、特にTreg細胞の表面でより高く発現することが分かる。
【0159】
[実施例6]本発明による抗体のLrig-1タンパク質に対する結合能評価
前記製造例1~8で作製された本発明による単クローン抗体がLrig-1をよく認識するかを確認するために、Lrig-1を安定して発現するL細胞に前記製造例1~8の抗体それぞれを結合させた後、マウス抗体を認識できかつ、eFlour670がコンジュゲーション(conjugation)された二次抗体(secondary antibody)を入れた後、FACSを用いて前記単クローン抗体のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析して、その結果を図11に示した。
【0160】
図11に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的な単クローン抗体(GTC110-04およびGTC210-01)ともL細胞の表面に存在するLrig-1タンパク質を効果的に認識して結合したことを確認することができた。
【0161】
[実施例7]本発明による抗体の多発性硬化症の治療能評価
1.多発性硬化症マウスモデルの作製
多発性硬化症マウスモデルを作製するために、図12に示した実験設計図によって実験を行った。0日目に7週齢C57BL/6マウスにMOGペプチドを皮下注射し、結核菌毒素を腹腔内に注射した。2日目にマウスの免疫システムを増強するために結核菌毒素をもう一度注射した。9日目にマウスに製造例1で作製されたGTC210-01抗体を投与し、陽性対照群としては抗-IL-17a抗体を投与した。
【0162】
2.多発性硬化症の治療効果評価
7日目から以下の評価基準によって臨床的点数を計算してマウスの多発性硬化症の治療効果を評価し、その結果を図13に示した。
【0163】
<評価基準>
0点:何ら症状がなく、正常に動く
1点:尾の端部分の一部が麻痺して下へ垂れ下がっている
2点:尾の全体が麻痺して尾全体が垂れ下がっている
3点:後足の一方が一部麻痺したものの、刺激への反応が可能である
4点:後足の一方が完全に麻痺して刺激に反応せず、足を引きずっている
5点:後足がすべて麻痺して前足で身を引きずっている
6点:前足で身を引きずりにくいものの、まだ前足は刺激への反応がある
7点:マウスが身動きできないものの、一方の前足は刺激への反応がある
8点:マウスが身動きできず、両前足とも刺激への反応がない
9点:マウスが身動きできず、呼吸が不規則である
10点:マウスが死んでいる
【0164】
その結果、多発性硬化症誘導モデルに本発明による抗体を投与した場合、多発性硬化症が著しく治療されることを確認することができ、特に22日および23日目には正常マウスと類似レベルに回復することを確認することができた。
【0165】
[実施例8]本発明による抗体のアルツハイマーの治療能評価
本発明による抗体のアルツハイマーの治療能を評価するために、下記表4のような群を設計した。具体的には、7ヶ月齢のアルツハイマー誘導5xFADマウスにGTC110-04抗体とGTC210-01抗体をそれぞれ10mpkの量で1ヶ月間静脈に注射した。8ヶ月齢のアルツハイマーマウスに陽性対照群としてグラチラマーアセテート(glatiramer acetate、GA、Copaxone(登録商標))を100ugの量で3週間皮下注射した。
【0166】
【表4】
【0167】
1.Y字迷路試験(Y-maze test)
Y字迷路試験は40cmの長さ(壁の高さ15cm)の同一の3つのアーム(arm)を120度の角度に配置して作った迷路枠を用いた。この実験は齧歯類の本能的な探索習性を利用した行動実験であり、新しい領域を探索する可能性が高いことに着目した方法である。直前に探索したアーム(arm)を記憶して同一のアーム(arm)に入らないほど、高い記憶力の数値を表した。個体あたり8分の探索時間を提供し、最終結果は図14に自発的交替(spontaneous alteration)(%)値で表現した。自発的交替(spontaneous alteration)(%)値は次の式1で計算した。ここで、行動パターンの分析はSMART VIDEO TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施した。
【0168】
[式1]
Spontaneous alternation(%)=
The number of triplet/(total arm entry-2)
【0169】
その結果、実験動物が周辺の手がかりを把握して順次に迷路へ入っていく相対的頻度を測定した本実験において、アルツハイマー誘導マウスに本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、正常対照群と類似レベルに自発的交替値を有することを確認することができた。
【0170】
2.新規物体認識試験(Novel Object Recognition)
新規物体認識試験は40cm×40cmのアクリルケージに異なる2つの物体を用いて記憶力を評価した。アクリルケージ内を見慣れるようにした後、2つの物体を一定の位置に位置して自由に認知させた後、各物体を探索した時間を測定した。24時間の遅延時間を個体別に与え、再び同じ位置に1つの物体のみ他の物体に変更した。この時、変更した物体を新規物体として認識して探索時間が長いほど、記憶力が良いものと判断することができる。24時間前の物体を記憶していなければ、新規物体と既存の物体を区分することができず、両物体とも均一に探索する可能性がある。計10分間自由に探索させ、結果は選好度数値(preference index=Novel object exploring time/total exploring time)として図15に示した。この時、分析はSMART VIDEO TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施した。
【0171】
その結果、新しい物体に対する選好度数値(Preference Index)において正常対照群(G1)は0.51±0.06、G2群(vehicle)は0.42±0.04と測定され、アルツハイマー誘導群(G2)は正常対照群(G1)に比べて選好度数値が低く観察された。ところが、本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、正常対照群以上に選好度数値が増加したことを確認することができた。
【0172】
3.水中迷路試験(Water maze test)
水中迷路試験はMorrisによって考案された方法に基づいて実施した。ステンレスプール(pool)(直径90cm、高さ50cm)に水(22±1℃)を満たして水面の高さを30cmになるようにした。隠されたプラットフォーム(platform)(直径5cm)は水面下1cmの地点に位置させた。評価初日に3回~4回の練習を実施した。1個体あたりの全体水泳時間は60秒に設定し、60秒以内にプラットフォームを見つけた個体は10秒間プラットフォーム上でとどまるようにして記憶を誘導した。60秒経過後もプラットフォームを見つけられなかった個体は人為的にプラットフォームに案内してプラットフォーム上で10秒間とどまるようにし、この時の脱出時間は60秒とした。水泳練習をさせた後、6日目にプローブテスト(probe test)を実施して、空間知覚能力として、プラットフォームのあった4象限内にとどまっていた時間を全体水泳時間中の比率で計算した値(Percentage of time in SW area、%)、プラットフォームのあった位置への到達にかかった時間(Latency to target、sec)を測定し、その結果は図16および17に示した。この時、分析はSMART VIDEO TRACKING Software(Panlab、USA)を用いて実施した。結果の解釈から除外させる基準は、水泳による探索をせず特定部位のみ旋回する個体に設定した。
【0173】
その結果、本発明による抗体(GTC210-01およびGTC110-04抗体)を投与した場合、プラットフォームのあった4象限内にとどまっていた時間を全体水泳時間中の比率で計算した値(Percentage of time in SW area、%)が著しく増加し、プラットフォームのあった位置への到達にかかった時間(Latency to target、sec)は、正常対照群と類似レベルに著しく減少したことを確認することができた。
【0174】
これらの実験を通して、本発明による抗体は、脳神経系疾患の予防、改善または治療効果があることを確認することができた。
【0175】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0176】
[産業上の利用可能性]
本発明は、脳神経系疾患の予防または治療用組成物に関する。
【0177】
図1
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【配列表】
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