(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】縦型風速加速型風車
(51)【国際特許分類】
F03D 1/04 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
F03D1/04 B
(21)【出願番号】P 2022051051
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2022-03-31
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】521518910
【氏名又は名称】合同会社加速流グリーンパワー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】浅井 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦光
(72)【発明者】
【氏名】清徳 則雄
(72)【発明者】
【氏名】吉場 康隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-65882(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038661(WO,A1)
【文献】特開昭56-2477(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063599(WO,A1)
【文献】特開2003-278635(JP,A)
【文献】特開2003-49760(JP,A)
【文献】特開昭57-148077(JP,A)
【文献】特開2005-54642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風コレクター基台と風胴体と風車と、からなり、風コレクター基台は、全周に風流入部が形成され、風胴体は風コレクター基台上に起立設置されて断面略長方形状でその断面積が前記風コレクター基台側に形成された風流入口から直線的又は曲線的に縮小
した断面積に形成されている下部風胴部材と、その縮小した断面積の位置から上端の風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大
する断面積を保持するように形成された上部風胴部材と、からなり、前記風車は風胴体の縮小部に風胴体の長辺部との間隔を最小とし、風胴体の短辺部と長辺部の比を1~10倍として設置し、上部風胴部材の風流出口の口縁に風の分散部を形成したことを特徴とする縦型風速加速型風車。
【請求項2】
風コレクター基台と風胴体と風車と、からなり、風コレクター基台は、全周に風流入部が形成され、風胴体は風コレクター基台上に起立設置されて断面略長方形状でその断面積が前記風コレクター基台側に形成された風流入口から直線的又は曲線的に縮小
した断面積に形成されている下部風胴部材と、その縮小した断面積の位置から上端の風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大
する断面積を保持するように形成された上部風胴部材と、からなり、前記風車は風胴体の縮小部に風胴体の長辺部との間隔を最小とし、風胴体の短辺部と長辺部の比を1~10倍として設置し、前記風コレクター基台上面の周縁部に集風を前記風コレクター基台の中央部に案内するベーンを設けたことを特徴とする縦型
風速加速型風車。
【請求項3】
風コレクター基台と風胴体と風車と、からなり、風コレクター基台は、全周に風流入部が形成され、風胴体は風コレクター基台上に起立設置されて断面略長方形状でその断面積が前記風コレクター基台側に形成された風流入口から直線的又は曲線的に縮小
した断面積に形成されている下部風胴部材と、その縮小した断面積の位置から上端の風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大
する断面積を保持するように形成された上部風胴部材と、からなり、前記風車は風胴体の縮小部に風胴体の長辺部との間隔を最小とし、風胴体の短辺部と長辺部の比を1~10倍として設置し、前記風コレクター基台の外周に前記風コレクター基台の風流入部の略半分を覆う回転体設け、前記回転体の略中央部にヨー機能を有する風見羽根を設けたことを特徴とする縦型風速加速型風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縦型風速加速型風車に関し、全方位から風を収集し、風車背面の風速を上げると共に風胴体の出口部分の風速を上げる、その結果、風車の羽根の回転効率を向上せしめて、発電電力を高めた縦型風速加速型風車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止が叫ばれて、新しいクリーンエネルギーの開発が急務となっている。該クリーンエネルギーの一つとして注目されているのがCO2を排出しない風力発電システムである。しかしながら、風力発電は、現在開発中であるが、現状では石油代替えエネルギーとしての位置は低い。風力エネルギーを有効に捕捉する手段を開発していかなければならない。
【0003】
従来、風力エネルギーの補足手段は揚力型プロペラ式風車による風力発電が主流となっている。該揚力型プロペラ式風車の場合は長大なブレード(プロペラ翼)を必要とするため、風車自体が大型化するという問題がある。また、そのエネルギー効率は40%前後、すなわち、風力エネルギーの40%前後を捕捉しているのが現状である。ちなみに理論的最高効率は59.3%(ベッツの法則)である。
【0004】
前記の風力発電用風車は、(1)できるだけ回転直径の大きな羽根を備え、(2)できるだけ背の高い風車を、(3)できるだけ風が吹く場所に設置する、という方向で発展してきた。
【0005】
しかし、できるだけ多くの風を捕捉するために回転羽根の直径を大きくすると支柱を高くしなければならず、強風に対しては不安定になり、風が強すぎると破損を恐れて運転を停止しなければならない、という問題があり、建設費にしても数億円と莫大である。
【0006】
時に、人がビルの谷間やアーケード街を通過する時、思いもよらぬ強風に出会うことがある。これは、ビルの壁などに堰き止められた風が空隙を求めて谷間やアーケード街の通過可能地点に集中するためである。これは一種のラバール管効果と考えられる。したがって、ラッパ管を前後に繋ぎ合わせた形のラバール管の中央部、すなわち、最小断面積の近傍に風車を置く風力発電装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
本発明者は、扇風機と風車との間に隔壁を設け、その壁面に穴をあけ、その穴を通して扇風機で風を送り、その穴の直後に風車を置き、風車の回転数を検討した。その結果、驚いたことに、隔壁を設けずに扇風機から直接風車に風を送った場合に比べてはるかに風車の回転数が落ちることが判明した。すなわち、風車の回転には、風車に当たる前面の風だけではなく、風車の周辺から背面へと通過する風の量も重要であることが判明し、二重構造風胴体の外側の風胴体により収束した大量の風力を風車背面へと送ることにより風車の発電効率を高める集風型風車が提案されている(特許文献2)。
【0008】
前記した集風型風車は以下に述べる原理で機能する。風車を通過する空気の速度をV、密度をρ、圧力をPとすれば、単位体積当たりの風の全エネルギーは(1/2)ρV2+P=一定であるから、集風は圧力エネルギーが減り、運動エネルギーを増やす。これは、V、Pの整流化(ランダム化の反対)だからエントロピー(S)の減少である。従って、―TΔS(T:温度)だけ自由エネルギーが増大する。従って、集風型の方がエネルギー効率が高い。しかし、これは、ベルヌーイ流管の定常流を想定した場合である。これに風車を置き、エネルギーを取り出せば、風車の背後のVは減少し、Pは増大する。従って、これを定常流に近づけるためには流管外測の高速流の摩擦によって低速流を高速化する必要がある。換言すれば、高速空気分子によって低速化した風車背後の空気分子を後方へ叩き出すのである(特許文献3)。
【0009】
さらに、風車背後の空気分子を叩き出すには中間風胴体の内部に設置されている風車の側面の両側と上下面側との両方に風が吹き抜ける隙間を設け高い風速を持った風を流すことが有効である(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-520900号公報
【文献】特開2011-140887号公報
【文献】特許第6033870号公報
【文献】特許第6110455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記特許文献3、特許文献4が基本的な考えである。その詳細を以下に説明する。
【0012】
人がビルの谷間やアーケード街を通過する時、しばしば思いもよらぬ強風に出会うことがある。これは、ビルの壁等に堰き止められた風が空隙を求めて谷間やアーケード街の通過可能地点に集中するためである。通過空気の密度をρ、風速をVとすれば、単位体積当たりの風のエネルギーは、(1/2)ρV2+P=一定であるから、壁で堰き止められて速度が0になればエネルギーは圧力だけとなり、谷間等の入り口の両側の壁に圧力の高い空気の壁が生じる。これが風胴ダクトとなり、風速が上がるものと考えられる。
【0013】
そこで、
図19(a)及び(b)に示すように、扇風機11(φ=240mm)と風車12(φ150mm)とを約750mmの間隔で配置し、風車12の風の流入口の口縁の外側には、それぞれ鍔状の壁部材13 a及び13bを設け、扇風機11から送風した場合の風車12の回転数を観測した。この壁部材13aの外径は扇風機11の風束よりも大きく、また、壁部材13bの外径は扇風機11の風束以下になるように構成した。また、図示していないが、壁部材を設けない場合についても同様にして回転数を観測した。
【0014】
その結果、壁部材13aを設けた場合(
図19(a))は、壁部材を設けなかった場合よりも風車12の回転数が大幅に落ちた。これは風源が扇風機であるために、基本的には扇風機11の羽根の直径に相当する風束しか得られないので、壁部材の外径を扇風機11の風速より大きくすると、風車12の背面への風流が完全に遮断されるためである。また、壁部材13bを設けた場合(
図19(b))は、壁部材13aを設けた場合よりも風車の回転数が増大した。これは扇風機11の風束以下の外径を有する壁部材13bを設けた場合、風量の一部が風車の背面に流れるため、風車12を通過する風が引っ張られて速度が上がるためであると考えられる。
【0015】
風が風車を通過すると、エネルギーが奪われて風速が下がる。このことは、分子運動論的には温度が下がることである。上記の実験は風車の背面風流の低下エネルギーを外側の風速の大きい、すなわち、動圧・運動エネルギーの大きい空気流との混合・摩擦により補い、風車背面の風流の速度が上がることを示している。その結果、風車の回転数を上げるためには風車を通過する風を風車後方へ強制的3に追い出すことが重要であることが分かる。
【0016】
本発明は、前記事情を踏まえて、従来技術の問題点を解決することにあり、全方位から風を収集して風車背面の風速を上げると共に風胴体の出口部分で風速を上げる、その結果、風車の回転効率を向上せしめて、発電電力を高めた縦型風速加速型風車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成する本発明の縦型風速加速型風車は、風コレクター基台と風胴体と風車と、からなり、風コレクター基台は、全周に風流入部が形成され、風胴体は風コレクター基台上に起立設置されて断面略長方形状でその断面積が前記風コレクター基台側に形成された風流入口から直線的又は曲線的に縮小した又は同じ断面積に形成されている下部風胴部材と、その縮小した断面積の位置から上端の風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大するか又は同じ断面積を保持するように形成された上部風胴部材と、からなり、前記風車は風胴体の縮小部に風胴体の長辺部との間隔を最小とし、風胴体の短辺部と長辺部の比を1~10倍として設置されていることを特徴とする(請求項1)。
【0018】
本発明によれば、風コレクター基台を設けたことによって全方位からの風が収集され、収集された風を断面略長方形状でその断面積が風コレクター基台側に形成された風流入口から直線的又は曲線的に縮小した断面積に形成されている下部風胴部材とその縮小した断面積の位置から上端の風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大するように形成された上部風胴部材に供給して風車背面の風速を上げると共に風胴体の出口部分で風速を上げる、その結果、風車の回転効率を向上せしめて、発電電力を高めた縦型風速加速型風車を提供することができる。
【0019】
なお、前記風胴体の断面略長方形状には長辺部及び短辺部を有する楕円形状、その他の多角形状なども含む。本発明は風胴体を断面略長方形状にすることにより、風胴体を円形状や正方形状とした場合と比べて風車の脇を流れる風速を風車の左右に逃がすことなく風車の背面の速度が低下した気流を効果的に叩き出して風車背面の気流の速度エネルギーを回復させることができる。
【0020】
具体的には、風車は風胴体の縮小部に風胴体の長辺部間との間隔を最小とし、風胴体の短辺部と長辺部の比を1~10倍として設置される。したがって風車の両側に隙間が形成され、該隙間を吹き抜ける高速気流によって風車によってエネルギーが奪われた風車背面の速度の低下した気流を叩き出して風車背面の気流の速度エネルギーを効果的に回復させることができる。
【0021】
本発明の実施の一形態は、前記風コレクター基台の上面の周縁部に集風を風コレクター基台の中央部に案内するベーンを設けたことを特徴とする(請求項2)。
【0022】
この実施の一形態によれば、風流入部からの全方位の風が風コレクター基台の中央部に効率的に集められて風胴体の下部風胴部材に形成された風流入口に無駄なく供給される。
【0023】
本発明の実施の一形態は、前記風コレクター基台の外周に該風コレクター基台の風流入部の略半分を覆う回転体を設け、該回転体の略中央部にヨー機能を有する風見羽根を設けたことを特徴とする(請求項3)。この実施の一形態によれば、風向きが変わった場合いにも風見羽根がヨー機能を発揮して回転体が回転させられて該回転体の開放部分が自動的に風向きに正対して有効に風を収集することができる。
【0024】
本発明の実施の一形態は、上部風胴部材上端の風流出口の口縁に風分散部を形成したことを特徴とする(請求項4)。この実施の一形態によれば、風胴体の外側の風が分散され、該風胴体の外側の風と風胴体内からの風との接触面積が増やされ風胴体内の風が上部風胴部材の風流出口から強制的に追い出されて風車を通過する風の量及び速度を向上させることができる。
【0025】
なお、風分散部の形状は限定されない、風分散部により風胴体の外側を流れる風が分散され、該分散された風と上部風胴部材の風流出口から流れ出す風との接触面積を増やすことができ、風の混合を促進して、ひいては流出風の速度を上昇させることができる形状であればその形状は限定されない。
【0026】
前記構成の本発明は、風コレクター基台で収集された全方位の風が下部風胴部材の風流入口によって収集され、該収集された風が下部風胴部材を通って断面略長方形状の縮小部に設置された風車に至り該風車を回転させる。同時に、風車の両側に形成された隙間から高速気流が吹き抜ける。そして、風車によってエネルギーが奪われた風車背面の速度の低下した気流を、風車の両側の隙間を吹き抜ける高速気流が叩き出して風車背面の気流の速度エネルギーを回復させる。
【0027】
同時に、断面積が風流入口から風車の設置された位置までの間で直線的又は曲線的に縮小するように形成された下部風胴部材により風が速度を上げて風車に導かれて風車を通過する風の量及び速度が上昇させられて上部風胴部材に供給される。
【0028】
上部風胴部材は縮小した断面積が風車の設置された位置から風流出口までの間で直線的若しくは曲線的に拡大するように形成されている。該上部風胴部材に供給された前記風車を通過した風に対し、上部風胴部材の外側を吹き抜ける、より速い、より低圧の気流と接触させて混合・摩擦、吸収により供給された、より低速、より高圧の上部風胴部材内の風を風流出口から引きずり出し、再度、風車を通過する風の量及び速度を上昇させる。この作用は、上部風胴部材上端の風流出口の口縁に風の分散部を形成することによりさらに助長される。本発明は前記二段構えの風速加速により風車背面の風速を上げ、風車の回転効率を向上せしめて、発電効率を高めるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、全方位から風を収集して風車背面の風速を上げると共に風胴体の出口部分の風速を上げる、その結果、風車の羽根の回転効率を向上せしめて、発電電力を高めた縦型風速加速型風車を提供することができる。
さらに、集風型風車を縦型にすることにより集風装置の内部を流れる風流と、その外側を流れる風流は集風装置の出口部分でほぼ直交することにより、より叩き出しが増す。これは横型に対して内部及び外部の風流の接触部分が大きくなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の縦型風速加速型風車の概略平面図である。
【
図2】
図1の縦型風速加速型風車の正面断面図である。
【
図3】
図1の縦型風速加速型風車の側面断面図である。
【
図5】上面にベーンを設けた風コレクター基台の平面図である。
【
図6】外周に回転体及び風見羽根を設けた風コレクター基台の平面図である。
【
図8】他の実施例を示す縦型風速加速型風車の正面断面図である。
【
図9】他の実施例を示す縦型風速加速型風車の平面図である。
【
図10】
図9の縦型風速加速型風車の正面断面図である。
【
図11】他の実施例を示す縦型風速加速型風車の正面断面図である。
【
図13】星形分散部(a)(b)(c)の例を示す正面図である。
【
図15】切欠き突起分散部の側面図及び正面図である。
【
図17】星形分散部の大きさを説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面に基づいて本発明の実施の一形態を説明する。
【0032】
図1は本発明の縦型風速加速型風車の概略平面図、
図2は
図1の正面断面図、
図3は
図1の側面断面図である。
【0033】
図中、1は風コレクター基台、2は風胴体、3は風車、4は風コレクター基台1の全周に形成された風流入部、5は風胴体2の下部風胴部材、6は風胴体2の上部風胴部材、7は風胴体2の縮小部、8は風胴体2の風流入口、9は風胴体2の風流出口である。また、Hは発電機、Sは隙間である。
【0034】
前記風コレクター基台1は、中空円盤状に形成され、さらに全周に風流入部4が形成される。風胴体2は前記風コレクター基台1上に起立設置されて断面略長方形状でその断面積が前記コレクター基台1側に形成された風流入口8から直線的又は曲線的に縮小した断面積に形成されている下部風胴部材5と、その縮小した断面積の位置から上端の風流出口9までの間で直線的若しくは曲線的に拡大する上部風胴部材6と、からなり、それぞれ長辺部10及び短辺部11を有する。
【0035】
前記風車3は風胴体2の縮小部7に風胴体2の長辺部10間との間隔を最小とし、風胴体2の短辺部11と長辺部10との比を1~10倍として設置される。その結果、風車3の両側には隙間Sが形成される。
【0036】
なお、12は風コレクター基台1から下部風胴部材5への風の流れを示す矢印、13は風胴体2の内部の風の流れを示す矢印、14は風胴体2の外部及び上部の風の流れを示す矢印である。
【0037】
図4は、
図3の異なる側面断面図であり、風胴体2をストレートタイプに構成した例である。なお、この構成にあっても図示しない正面断面図は
図1と同様に構成されて縮小部が構成される。
【0038】
図5は、風コレクター基台1の上面の周縁部に集風を風コレクター基台1の中央部に案内するベーン15を設けた平面図である。該ベーン15は風コレクター基台1の中央部に向けて湾曲させられて全方位の風を風コレクター基台1の中央部に収集することができ、該収集された風は下部風胴部材5の風流入口8に供給される。
【0039】
図6は、風コレクター基台1の外周に該コレクター基台1の略半分を覆う回転体16を設け、該回転体16の略中央部に風見羽根17を設けた平面図、
図7は、
図6のA―A線断面図である。この構成によれば、風向きに応じてヨー機能を有する風見羽根17が風下に移動されるとともに回転体16の開口部分が風向きに正対して該開口部が有効に風を収集することができる。
【0040】
さらに、上部風胴部材6の風流出口9の口縁に風分散部を形成することが好ましい。
図13~
図18に風分散部の一例を示す。
【0041】
分散部の例として、
図13(a)(b)(c)に示す星形分散部、
図14に示す鍔状分散部、
図15に示す切欠き状分散部、
図16に示す歯車形分散部、
図18に示す矩形の分散部などが考えられるがその他の形状であってもよく、それらに限定されない。
【0042】
なお、
図17示すように星形分散部の最外部を結ぶ外周円Dが描く円の面積が風胴体22の風流出口22bの外径dが描く円の面積の2倍以上であることが好ましい。
【0043】
図17において、外側の点線で描かれる円は星形分散部の頂点を繋ぐ仮想円径であり、内側の実線で示された円は風胴体2の風流出口9の外径である。仮想円径D及び風流出口外径dで挟まれた円径帯状空間において星形分散部の面積はそれ以外の部分の面積の半分未満程度であることが好ましい。
【0044】
図14の鍔状分散部の場合は、同図に示すように、鍔の高さは鍔の外径Dと風流出口22bの内径d差の半分は内径dの1/10~1/5であることが好ましい。
【0045】
図15の切欠き分散部の場合は、切り欠きは連続に限らず、間隔を開いてもよいが切り欠き部での圧力損失の観点から切り欠き部の総面積が切り欠きのある周囲部の面積の半分を超える程度が好ましい。
【0046】
前記の構成の縦型風速加速型風車は、風コレクター基台1によって収集された全方位の風は下部風胴部材5の風流入口8に至り、さらに下部風胴部材5を通って風胴体2の縮小部7に設置された風車3を回転させる(矢印12)。同時に、風車3の両側に形成された隙間Sから高速気流が吹き抜ける。そして、風車3によってエネルギーを奪われた風車背面の速度の低下した気流を、風車3の両側の隙間Sを吹き抜ける高速気流が叩き出して風車3の背面の気流の速度エネルギーを回復させる(矢印13)。
【0047】
同時に、断面積が風流入口8から風車3の設置された位置までの間で直線的又は曲線的に縮小するように形成された下部風胴部材5による風が速度を上げて風車3に導かれて風車3を通過する風が上部風胴部材6に供給される。
【0048】
上部風胴部材6は縮小した断面積が風車3の設置された位置から風流出口9までの間で直線的若しくは曲線的に拡大するように形成されている。該上部風胴部材6に供給された前記風車3を通過した風に対し、上部風胴部材6の外側を吹き抜ける、より速い、より低圧の気流と接触させて混合、摩擦、吸収により供給された、より低速、より高圧の上部風胴部材6の風を風流出口9から引きずり出し、再度、風車3を通過する風の量及び速度を上昇させる(矢印14)。この作用は、上部風胴部材6上端の風流出口9の口縁に風分散部を形成することによりさらに助長される。本発明は前記二段構えの風速加速により風車3の背面の風速を上げ、風車3の回転効率を向上せしめて、発電効率を高めるものである。
【0049】
図8は、他の実施例を示し、風コレクター基台1を多段(二段)且つそれぞれ中央部を隆起させて構成した縦型風速加速型風車の正面断面図である。前記発明と同一部分には同一符号付している。この実施例によれば、風コレクター基台1の集風機能をさらに向上させることができる。
【0050】
図9及び
図10は、さらに、他の実施例を示し、風胴体2を円筒状に形成した例である。
図9は縦型風速加速型風車の概略平面図、
図10は同正面断面図である。なお、この実施例では側面断面図は正面断面図と同一である。前記発明と同一部分には同一符号を付している。この実施例では前記本発明と異なり隙間Sが構成されていない。
【0051】
図11及び
図12は、さらに、他の実施例を示し、前記の風胴体構造を二段に配置した構造である。
図11は縦型風速加速型風車の正面断面図、
図12はガイドの平面図である。
【0052】
図11及び
図12において、20はガイド、
図12はその平面図であり上面にベーン21が形成される。さらに、風流入口が二段に構成されて下部風流入口22は風車回転用風の取入れ口とされ、上部風流入口23は風車3の上方に導かれて淀み掃流用の風の取入れ口とされている。図中、24は風車3及び発電機Hのサポートバー、25はベアリングである。
【0053】
この実施例においても風車3は風胴体2の縮小部7に設置される。そして、風車回転用の風の取入れ口22からの風に加えて、風車3を通過したより低速、より高圧の風が、淀み掃流用の風の取入れ口23から供給される、より速い、より低圧の気流と接触させられて引きずり出されて風車3を通過する風の量及び速度を上昇させることができる。
【産業上の利用分野】
【0054】
本発明は、風コレクター基台と風胴体と風車と、からなり、全方位からの風を収集して風車背面の風速を上げると共に風胴体の出口部分の出口部分で風速を上げる、その結果、風車の羽根の回転効率を向上せしめて、発電電力を高めた縦型風速加速型風車を提供するもので風力発電分野での利用可能性が大である。
【符号の説明】
【0055】
1 風コレクター基台
2 風胴体
3 風車
4 風流入部
5 下部風胴部材
6 上部風胴部材
7 縮小部
8 風流入部
9 風流出部
10 長辺部
11 短辺部
15 ベーン
16 回転体
17 風見羽根