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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】リチウム2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20250114BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250114BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALN20250114BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M4/1395
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022558804
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041040
(87)【国際公開番号】W WO2022091407
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅継
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-243957(JP,A)
【文献】特開2019-140057(JP,A)
【文献】特開平11-310864(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158181(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/145288(WO,A1)
【文献】特表2019-501480(JP,A)
【文献】特開2009-004370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/1399
H01M 4/64-4/84
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極活物質を有しない負極と、を備えるリチウム2次電池であって、
前記負極は、表面粗さの最大高さRzが1.0μm以下であり、かつ配向面が(200)面または(220)面のCuであり、前記配向面は、X線回折測定により評価したときに得られたピーク強度のうち、最も高いピーク強度が得られた箇所に対応する配向面である
リチウム2次電池。
【請求項2】
前記Cuが圧延により形成される、
請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
リチウム金属が前記負極の表面に析出し、かつ析出した前記リチウム金属が溶解することによって充放電が行われる、
請求項1または請求項2に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
初期充電の前に、前記負極の表面にリチウム箔が形成されていない、
請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
エネルギー密度が350Wh/kg以上である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間を金属イオンが移動することで充放電を行う2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られており、典型的には、リチウムイオン2次電池が知られている。典型的なリチウムイオン2次電池としては、正極及び負極にリチウムを保持することのできる活物質を導入し、正極活物質及び負極活物質の間でのリチウムイオンの授受によって充放電をおこなうものが挙げられる。また、負極に活物質を用いない2次電池として、負極表面上にリチウム金属を析出させることでリチウムを保持するリチウム金属2次電池が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、室温で少なくとも1Cのレートでの放電時に、1000Wh/Lを越える体積エネルギー密度及び/又は350Wh/kgを越える質量エネルギー密度を有する、高エネルギー密度、高出力リチウム金属アノード2次電池が開示されている。特許文献1は、そのようなリチウム金属アノード2次電池を実現するため、極薄リチウム金属アノードを用いることを開示している。
【0005】
また、特許文献2には、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム2次電池において、前記負極は、負極集電体上に金属粒子が形成され、充電によって前記正極から移動され、負極内の負極集電体上にリチウム金属を形成する、リチウム2次電池が開示されている。特許文献2は、そのようなリチウム2次電池は、リチウム金属の反応性による問題と、組み立ての過程で発生する問題点を解決し、性能及び寿命が向上されたリチウム二次電池を提供することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-517722号公報
【文献】特表2019-537226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献に記載のものを始めとする従来の電池を詳細に検討したところ、エネルギー密度及びサイクル特性の少なくともいずれかが十分でないことがわかった。
【0008】
例えば、正極活物質及び負極活物質の間での金属イオンの授受によって充放電をおこなう典型的な2次電池は、エネルギー密度が十分でない。また、上記特許文献に記載されているような、負極表面上にリチウム金属を析出させることでリチウムを保持する従来のリチウム金属2次電池は、充放電を繰り返すことにより負極表面上にデンドライト状のリチウム金属が形成されやすく、短絡及び容量低下が生じやすい。その結果、サイクル特性が十分でない。
【0009】
また、リチウム金属2次電池において、リチウム金属析出時の離散的な成長を抑制するために、電池に大きな物理的圧力をかけて負極とセパレータとの界面を高圧に保つ方法も開発されている。しかしながら、そのような高圧の印加には大きな機械的機構が必要であるため、電池全体としては、重量及び体積が大きくなり、エネルギー密度が低下する。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、負極活物質を有しない負極と、を備える。負極は、表面粗さの最大高さRzが1.0μm以下であり、かつ配向面が(200)面または(220)面のCuである。
【0012】
そのようなリチウム2次電池は、負極活物質を有しない負極を備えることにより、リチウム金属が負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高い。また、本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池では、その負極を、表面粗さの最大高さRzが1.0μm以下であり、かつ配向面が(200)面または(220)面のCuとしている。これにより、2次電池のサイクル特性を高めることができる。
【0013】
更に、本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、負極のCuが圧延により形成される。これにより、負極に適した、配向面が(200)面または(220)面のCuを用いた構成にすることができる。
【0014】
上記リチウム2次電池は、リチウム金属が負極の表面に析出し、かつ析出したリチウムが溶解することによって充放電が行われるリチウム2次電池である。そのような態様によれば、エネルギー密度が一層高くなる。
【0015】
上記リチウム2次電池は、好ましくは、初期充電の前に、上記負極の表面にリチウム箔が形成されていない。そのような態様によれば、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、一層安全性及び生産性に優れるものとなる。
【0016】
上記リチウム2次電池は、好ましくは、エネルギー密度が350Wh/kg以上である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
図2】第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の使用の概略断面図である。
図3】第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
図4】負極に用いられるCuのX線解析測定結果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
[第1の本実施形態]
(リチウム2次電池)
図1は、第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。図1に示すように、第1の本実施形態のリチウム2次電池100は、正極120と、負極活物質を有しない負極130と、正極120と負極130との間に配置されているセパレータ140と、を備える。正極120は、セパレータ140に対向する面とは反対側の面に正極集電体110を有する。
【0021】
(負極)
負極130は、負極活物質を有しないものである。負極活物質を有する負極を備えるリチウム2次電池は、その負極活物質の存在に起因して、エネルギー密度を高めることが困難である。一方、本実施形態のリチウム2次電池100は負極活物質を有しない負極130を備えるため、そのような問題が生じない。すなわち、本実施形態のリチウム2次電池100は、リチウム金属が負極130の表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高い。
【0022】
本実施形態において、「リチウム金属が負極の表面に析出する」とは、負極の表面、及び負極の表面に形成された後述する固体電解質界面(SEI)層の表面の少なくとも1箇所に、リチウム金属が析出することを意味する。したがって、リチウム2次電池100において、リチウム金属は、例えば、負極130の表面(負極130とセパレータ140との界面)に析出してもよい。
【0023】
本明細書において、「負極活物質」とは、電池において電荷キャリアとなるリチウムイオン又はリチウム金属(以下、「キャリア金属」ともいう。)を負極130に保持するための物質を意味し、キャリア金属のホスト物質と換言してもよい。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられる。
【0024】
そのような負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、炭素系物質、金属酸化物、及び金属又は合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、酸化リチウム系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記金属又は合金としては、キャリア金属と合金化可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、ガリウム、リチウム、及びこれらを含む合金が挙げられる。
【0025】
負極130としては、負極活物質を有さないCu(銅)が用いられる。本実施形態の負極130のCuは、銅板を圧延して箔状にすることで配向面が(200)面または(220)面となったCuに対して、既知の表面処理を施したものを用いる。また、このCuは、表面粗さの最大高さRzが1.0μm以下のものを用いる。なお、表面粗さの最大高さRzは、Cu表面において、高さが最も高い位置と最も低い位置との高さの差を示す。詳細な作用機序は不明なものの、Cuの特定の配向面(200)面または(220)面を採用し、表面粗さRzを制御することにより、後述する実施例に示すように、2次電池のサイクル特性を高めることができることが確認されている。
【0026】
Cuの配向面は、圧延したCuの結晶構造を、特性X線の波長を1.5406ÅとしてX線回折測定(XRD)により評価したときに、最も高いピーク強度が得られた箇所に対応する配向面として定義する。すなわち、得られたピーク強度が、(111)面、(200)面、または(220)面のいずれに対応する箇所で得られたかに基づき、Cuの配向面を決定する。例えば、図4のような測定結果が得られた場合、ピークP1、P2、及びP3がそれぞれ(111)面、(200)面、及び(220)面の配向面に対応しており、最も高いピーク強度が得られているのが(200)面に対応するピークP2である。よって、このような測定結果が得られるCuの配向面は(200)面であるといえる。
【0027】
本明細書において、「負極が負極活物質を有しない」とは、負極における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極全体に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。なお、リチウム2次電池100が負極活物質を有しない負極を備えるということは、リチウム2次電池100が、一般的に用いられる意味でのアノードフリー2次電池、ゼロアノード2次電池、又はアノードレス2次電池であることを意味する。アノードフリー2次電池は、リチウム金属も負極活物質も一切含まない、負極側に集電体のみから構成される電池系のことをいう。
【0028】
なお、典型的なリチウムイオン2次電池において、負極が有する負極活物質の容量は、正極の容量と同じ容量となるように設定される。したがって、負極130における負極活物質の容量が、正極120の容量に対して小さい場合、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下である場合も、「負極が負極活物質を有しない」ことを意味する。
【0029】
負極130の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における負極130の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0030】
(正極)
正極120は、正極活物質を含むため、リチウム2次電池100は、安定性に優れ、高い出力電圧を有するものとなる。本明細書において、「正極活物質」とは、リチウムイオンを正極120に保持するための物質を意味し、リチウムイオンのホスト物質と換言してもよい。そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO2、LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO(x+y=1)、LiNiO2、LiMn24、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びTiS2が挙げられる。上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0031】
正極120は、上記の正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、公知の導電助剤、バインダー、固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質が挙げられる。
【0032】
正極120における導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラック等が挙げられる。また、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0033】
正極120における、正極活物質の含有量は、正極120全体に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下あってもよい。バインダーの含有量は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質の含有量の合計は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0034】
(正極集電体)
正極120の片側には、正極集電体110が形成されている。正極集電体110は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体であれば特に限定されない。そのような正極集電体としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0035】
正極集電体110の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における正極集電体110の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0036】
(セパレータ)
セパレータ140は、正極120と負極130とを隔離することにより電池が短絡することを防ぎつつ、正極120と負極130との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を確保するための部材であり、電子導電性を有さず、リチウムイオンと反応しない材料により構成される。また、セパレータ140は当該電解液を保持する役割も担う。セパレータ140は、上記役割を担う限りにおいて限定はないが、例えば、多孔質のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はこれらの積層構造により構成される。
【0037】
セパレータ140は、セパレータ被覆層により被覆されていてもよい。セパレータ被覆層は、セパレータ140の両面を被覆していてもよく、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、イオン伝導性を有し、リチウムイオンと反応しない部材であれば特に限定されないが、セパレータ140と、セパレータ140に隣接する層とを強固に接着させることができるものであると好ましい。そのようなセパレータ被覆層としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びアラミドのようなバインダーを含むものが挙げられる。セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸リチウム等の無機粒子を添加させてもよい。
【0038】
セパレータ140の平均厚さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100におけるセパレータ140の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。また、セパレータ140の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極120と負極130とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0039】
(電解液)
リチウム2次電池100は、電解液を有していてもよい。電解液は、セパレータ140に浸潤させてもよく、リチウム2次電池100と共に電解液を封入したものを完成品としてもよい。電解液は、電解質及び溶媒を含有し、イオン伝導性を有する溶液であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、電解液を有するリチウム2次電池100は、内部抵抗が一層低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が一層向上する。
【0040】
電解質は、塩であれば特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。電解質としては、好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF3CF32、LiB(O2242、LiB(O224)F2、LiB(OCOCF34、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられる。リチウム2次電池100のエネルギー密度、容量、及びサイクル特性が一層優れる観点から、リチウム塩は、LiN(SO2F)2が好ましい。なお、上記のリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0041】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネート、トリフロロメチルプロピレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ノナフロロブチルメチルエーテル、ノナフロロブチルエチルーテル、テトラフロロエチルテトラフロロプロピルエーテル、リン酸トリメチル、及びリン酸トリエチルが挙げられる。上記のような溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0042】
(リチウム2次電池の使用)
図2に本実施形態のリチウム2次電池の1つの使用態様を示す。リチウム2次電池100は、正極集電体110及び負極130に、リチウム2次電池100を外部回路に接続するための正極端子220及び負極端子230がそれぞれ接合されている。リチウム2次電池100は、負極端子230を外部回路の一端に、正極端子220を外部回路のもう一端に接続することにより充放電される。
【0043】
正極端子220及び負極端子230の間に、負極端子230から外部回路を通り正極端子220へと電流が流れるような電圧を印加することでリチウム2次電池100が充電される。リチウム2次電池100を充電することにより、負極130とセパレータ140との界面にリチウム金属の析出が生じる。
【0044】
リチウム2次電池100は、初期充電により、負極130とセパレータ140との界面に固体電解質界面層(SEI層)210が形成されていてもよい。形成されるSEI層210としては、特に限定されないが、例えば、リチウムを含む無機化合物、及びリチウムを含む有機化合物等を含んでいてもよい。SEI層の典型的な平均厚さとしては、1nm以上10μm以下である。
【0045】
リチウム2次電池100にSEI層210が形成されている場合、リチウム2次電池100の充電時に析出するリチウム金属は、負極130とSEI層210との界面に析出してもよく、SEI層210とセパレータ140との界面に析出してもよい。
【0046】
充電後のリチウム2次電池100について、正極端子220及び負極端子230を接続するとリチウム2次電池100が放電される。負極130とSEI層210との界面、及びSEI層210とセパレータ140との界面の少なくともいずれかに生じたリチウム金属の析出が電解溶出する。
【0047】
(リチウム2次電池の製造方法)
図1に示すようなリチウム2次電池100の製造方法としては、上述の構成を備えるリチウム2次電池を製造することができる方法であれば特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0048】
まず、正極120を公知の製造方法により、又は市販のものを購入することにより準備する。正極120は例えば以下のようにして製造する。上述した正極活物質、公知の導電助剤、及び公知のバインダーを混合し、正極混合物を得る。その配合比は、例えば、上記正極混合物全体に対して、正極活物質が50質量%以上99質量%以下、導電助剤が0.5質量%30質量%以下、バインダーが0.5質量%30質量%以下であってもよい。得られた正極混合物を、所定の厚さ(例えば、5μm以上1mm以下)を有する正極集電体としての金属箔(例えば、Al箔)の片面に塗布し、プレス成型する。得られた成型体を、打ち抜き加工により、所定のサイズに打ち抜き、正極120を得る。
【0049】
次に、上述した負極材料、例えば1μm以上1mm以下のCu箔に対して防錆処理を施したものを負極130として用いる。
【0050】
次に、上述した構成を有するセパレータ140を準備する。セパレータ140は従来公知の方法で製造してもよく、市販のものを用いてもよい。
【0051】
以上のようにして得られる正極120、セパレータ140、及び負極130を、この順に積層することで積層体を得る。得られた積層体を、電解液と共に密閉容器に封入することでリチウム2次電池100を得ることができる。密閉容器としては、特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルムが挙げられる。
【0052】
[第2の本実施形態]
(リチウム2次電池)
【0053】
図3は、第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。図3に示すように、第2の本実施形態のリチウム2次電池300は、正極集電体110と、正極集電体110の片面に形成され、正極活物質を有する正極120と、負極活物質を有しない負極130と、正極120及び負極130の間に配置されている固体電解質310と、を備える。正極集電体110、正極120、及び負極130の構成及びその好ましい態様は後述する点を除き第1の本実施形態のリチウム2次電池100と同様であり、リチウム2次電池300は、リチウム2次電池100と同様の効果を奏するものである。
【0054】
(固体電解質)
一般に、液体電解質を備える電池は、液体の揺らぎに起因して、電解質から負極表面に対してかかる物理的圧力が場所によって異なる傾向にある。一方、リチウム2次電池300は、固体電解質310を備えるため、固体電解質310から負極130表面にかかる圧力が一層均一なものとなり、負極130の表面に析出するキャリア金属の形状を一層均一化することができる。すなわち、このような態様によれば、負極130の表面に析出するキャリア金属が、デンドライト状に成長することが一層抑制されるため、リチウム2次電池300のサイクル特性は一層優れたものとなる。
【0055】
固体電解質310としては、一般的にリチウム固体2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム2次電池300の用途及びキャリア金属の種類によって、公知の材料を適宜選択することができる。固体電解質310は、好ましくはイオン伝導性を有し、電子伝導性を有さないものである。固体電解質310が、イオン伝導性を有し、電子伝導性を有さないことにより、リチウム2次電池300の内部抵抗が一層低下すると共に、リチウム2次電池300の内部で短絡することを一層抑制することができる。その結果、リチウム2次電池300のエネルギー密度、容量、及びサイクル特性は一層優れたものとなる。
【0056】
固体電解質310としては、特に限定されないが、例えば、樹脂及びリチウム塩を含むものが挙げられる。そのような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、主鎖及び/又は側鎖にエチレンオキサイドユニットを有する樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリビニリデンフロライド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリアセタール、ポリスルホン、及びポリテトラフロロエチレン等が挙げられる。上記のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0057】
固体電解質310に含まれるリチウム塩としては、特に限定されないが、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF3CF32、LiB(O2242、LiB(O224)F2、LiB(OCOCF34、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられる。上記のようなリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0058】
一般に、固体電解質における樹脂とリチウム塩との含有量比は、樹脂の有する酸素原子と、リチウム塩の有するリチウム原子の比([Li]/[O])によって定められる。固体電解質310において、樹脂とリチウム塩との含有量比は、上記比([Li]/[O])が、好ましくは0.02以上0.20以下、より好ましくは0.03以上0.15以下、更に好ましくは0.04以上0.12以下になるように調整される。
【0059】
固体電解質310は、上記樹脂及びリチウム塩以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、溶媒及びリチウム塩以外の塩が挙げられる。リチウム塩以外の塩としては、特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。
【0060】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、上記リチウム2次電池100が含み得る電解液において例示したものが挙げられる。
【0061】
固体電解質310の平均厚さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に、好ましくは15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池300における固体電解質310の占める体積が減少するため、リチウム2次電池300のエネルギー密度が一層向上する。また、固体電解質310の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に、好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極120と負極130とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0062】
なお、本明細書において、「固体電解質」とは、ゲル電解質を含むものとする。ゲル電解質としては、特に限定されないが、例えば、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含むものが挙げられる。ゲル電解質における高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等が挙げられる。
【0063】
なお、図3において、負極130の表面には、固体電解質界面層(SEI層)が形成されていてもよい。形成されるSEI層は、特に限定されないが、例えば、リチウムを含む無機化合物、及びリチウムを含む有機化合物等を含んでいてもよい。SEI層の典型的な平均厚さとしては、1nm以上10μm以下である。リチウム2次電池300にSEI層が形成されている場合、充電により析出するリチウム金属は負極130とSEI層との界面に析出してもよく、SEI層と固体電解質310との界面に析出してもよい。
【0064】
(2次電池の製造方法)
リチウム2次電池300は、セパレータに代えて固体電解質を用いること以外は、上述した第1の本実施形態に係るリチウム2次電池100の製造方法と同様にして、製造することができる。
【0065】
固体電解質310の製造方法としては、上述した固体電解質310を得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、以下のようにすればよい。固体電解質に従来用いられる樹脂、及びリチウム塩(例えば、固体電解質310が含み得る樹脂として上述した樹脂及びリチウム塩。)を有機溶媒に溶解する。得られる溶液を所定の厚みになるように成形用基板にキャストすることで、固体電解質310を得る。ここで、樹脂及びリチウム塩の配合比は、上記したように、樹脂の有する酸素原子と、リチウム塩の有するリチウム原子との比([Li]/[O])によって定めてもよい。上記比([Li]/[O])は、例えば0.02以上0.20以下である。また、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばアセトニトリルを用いてもよい。成形用基板としては、特に限定されないが、例えばPETフィルムやガラス基板を用いてもよい。
【0066】
上記本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその本実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0067】
例えば、第1の本実施形態のリチウム2次電池100、及び第2の本実施形態のリチウム2次電池300において、正極120が、正極集電体110の両面に形成されていてもよい。この場合、リチウム2次電池は、2つの正極120と、各正極120に対面するように配置されている2つの負極130と、正極120及び負極130の各間に配置されている2つのセパレータ140又は固体電解質310と、を備えるものである。そのような態様によれば、リチウム2次電池の容量を一層向上させることができる。
【0068】
本実施形態のリチウム2次電池は、リチウム固体2次電池であってもよい。そのような態様によれば、電解液を用いなくてもよいため、電解液漏洩の問題が生じず、電池の安全性が一層向上する。
【0069】
本実施形態のリチウム2次電池は、負極に接触するように配置される集電体を有していてもよい。そのような集電体としては、特に限定されないが、例えば、負極材料に用いることのできる集電体が挙げられる。なお、リチウム2次電池が負極集電体を有しない場合、負極自身が集電体として働く。
【0070】
本実施形態のリチウム2次電池は、正極集電体及び負極に、外部回路へと接続するための端子を取り付けてもよい。例えば10μm以上1mm以下の金属端子(例えば、Al、Ni等)を、正極集電体及び負極の片方又は両方にそれぞれ接合してもよい。接合方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば超音波溶接を用いてもよい。
【0071】
なお、本明細書において、「エネルギー密度が高い」又は「高エネルギー密度である」とは、電池の総体積又は総質量当たりの容量が高いことを意味するが、好ましくは800Wh/L以上又は350Wh/kg以上であり、より好ましくは900Wh/L以上又は400Wh/kg以上であり、更に好ましくは1000Wh/L以上又は450Wh/kg以上である。
【0072】
また、本明細書において、「サイクル特性に優れる」とは、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクルの前後において、電池の容量の減少率が低いことを意味する。すなわち、初期充放電の後の1回目の放電容量と、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクル後の容量とを比較した際に、充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対してほとんど減少していないことを意味する。ここで、「通常の使用において想定され得る回数」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、30回、50回、70回、100回、300回、又は500回である。また、「充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対してほとんど減少していない」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対して、75%以上、80%以上、又は85%以上であることを意味する。
【実施例
【0073】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
[リチウム2次電池の作製]
リチウム2次電池の製造に関する各工程は以下のように実施した。
【0075】
(負極の準備)
以下のそれぞれの実施例に合わせて準備した10μmのCu箔を負極として用いる。負極に対しては防錆処理などを施す。
【0076】
(セパレータの準備)
セパレータとして、12μmのポリエチレン微多孔膜の両面に2μmのポリビニリデンフロライド(PVDF)がコーティングされた所定の大きさ(50mm×50mm)のセパレータを準備した。
【0077】
(正極の作製)
正極活物質としてLiNi0.85Co0.12Mn0.032を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合したものを、正極集電体としての12μmのAl箔の片面に塗布し、プレス成型した。得られた成型体を、打ち抜き加工により、所定の大きさ(40mm×40mm)に打ち抜き、正極を得た。
【0078】
(電池の組み立て)
電解液として、4M LiN(SO2F)2(LFSI)のジメトキシエタン(DME)溶液を準備した。次いで、正極、セパレータ、及び負極を、この順に積層することで積層体を得た。なお、セパレータに緩衝機能層が形成されている場合は、緩衝機能層が負極と対向するようにして、負極に金属層が形成されている場合は、金属層がセパレータと対向するようにして積層を実施した。更に、正極及び負極に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入した。次いで、上記の電解液を上記の外装体に注入した。外装体を封止することにより、リチウム2次電池を得た。
【0079】
[実施例1]
圧延により形成された、配向面が(200)面、表面粗さの最大高さRzを0.3μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0080】
[実施例2]
圧延により形成された、配向面が(200)面、表面粗さの最大高さRzを0.7μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0081】
[実施例3]
圧延により形成された、配向面が(220)面、表面粗さの最大高さRzを0.7μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0082】
[実施例4]
圧延により形成された、配向面が(200)面、表面粗さの最大高さRzを1.0μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0083】
[比較例1]
圧延により形成された、配向面が(200)面、表面粗さの最大高さRzを1.2μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0084】
[比較例2]
電気めっきにより形成された電解銅箔であって、配向面が(111)面、表面粗さの最大高さRzを0.8μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0085】
[比較例3]
電気めっきにより形成された電解銅箔であって、配向面が(111)面、表面粗さの最大高さRzを1.5μmとしたCuを負極として用い、正極、セパレータ、及び負極を備える2次電池を作成した。
【0086】
[エネルギー密度及びサイクル特性の評価]
以下のようにして、各実施例及び比較例で作製したリチウム2次電池のサイクル特性を評価した。
【0087】
作製したリチウム2次電池を、0.2mAh/cm2で、電圧が4.2Vになるまで充電した(初期充電)後、0.2mAh/cm2で、電圧が3.0Vになるまで放電した(初期放電)。次いで、1.0mAh/cm2で、電圧が4.2Vになるまで充電した後、1.0mAh/cm2で、電圧が3.0Vになるまで放電する充放電サイクルを、温度25℃の環境で更に49サイクル繰り返した。いずれの実施例及び比較例についても、初期充電から求められた容量(初期容量)は、60mAhであった。初期充放電サイクルを1サイクル目と数えたときの、充放電サイクルの2サイクル目における放電から求められる放電容量に対する、充放電サイクルの50サイクル目における放電から求められる放電容量の比を、容量維持率(%)として計算し、サイクル特性の指標として用いた。容量維持率が高いほど、サイクル特性に優れることを意味する。各例における容量維持率を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示されるように、実施例1~4のリチウム2次電池では、88%~90%という比較的高い容量維持率を示した。一方で、比較例1~3のリチウム2次電池では、容量維持率が70~71%となった。すなわち、配向面が(200)面または(220)面であって、かつ表面粗さの最大高さRzが1.0μm以下のCuを用いた実施例1~4では、比較例1~3と比較して容量維持率が高く、サイクル特性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のリチウム2次電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるため、様々な用途に用いられる蓄電デバイスとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0091】
100,300…リチウム2次電池、110…正極集電体、120…正極、130…負極、140…セパレータ、210…固体電解質界面層(SEI層)、220…正極端子、230…負極端子、310…固体電解質。
図1
図2
図3
図4