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特許7618285椎弓根スクリューの固定プランニングシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】椎弓根スクリューの固定プランニングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20250114BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20250114BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023100449
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2021554669の分割
【原出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2023116743
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028981
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517402229
【氏名又は名称】キュレクソ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CUREXO, INC.
【住所又は居所原語表記】3rd & 4th Floor, 480, Wiryesunhwan-ro, Songpa-gu, Seoul, 05814, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジン・ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ドン・ギ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、スン・タク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079304(JP,A)
【文献】特表2008-537496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0241129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎弓根スクリューの固定プランニングシステムにおいて、
患者の脊椎の画像を撮影するC-armと、
前記C-armを介して取得したAP(Anterior-Posterior)の2D画像及びLL(Lateral-Lateral)の2D画像上で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを提供する挿入経路提供部と、
基準座標系を基に、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を算出する整合部と、
前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を基に、前記椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、前記挿入姿勢に応じて前記エントリポイントに向かって、プローブの挿入をガイドするためのガイド装置と、
光学式マーカーが接続された前記プローブの位置を追跡する光学追跡装置と、
記プローブの末端が骨に触れ合う始点の座標を、前記光学追跡装置により追跡された前記プローブの位置に基づいて取得し、前記挿入エンドポイントの座標と前記始点の座標との間の距離を算出して椎弓根スクリューの長さの条件を決定するスクリュー決定部を含み、
前記光学式マーカーを媒介として空間座標で算出される前記プローブの末端の位置は、前記APの2D画像及び前記LLの2D画像上の位置に整合されて、リアルタイムで追跡され、
前記スクリュー決定部は、前記プローブの末端が骨に触れたときの前記プローブの末端の座標を前記始点の座標として取得することを特徴とする椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
【請求項2】
前記整合部は、前記プローブの位置が整合される前記APの2D画像及び前記LLの2D画像上のピクセルを決定し、
前記挿入経路提供部は、前記整合されたピクセルに、前記プローブの投影画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
【請求項3】
前記挿入経路提供部は施術者が前記APの2D画像及び前記LLの2D画像上に前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントを選択できるユーザーインターフェイスを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項2の中のいずれか一項に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椎弓根スクリューの固定プランニングシステム及び方法に関し、より具体的には、C-armの画像をもとに椎弓根スクリューの長さ、挿入経路などをプランニングするシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
椎弓根スクリューは椎弓根(pedicle)を介して脊椎体(vertebra body)に挿入固定されて脊椎を固定するのに使用され、椎弓根スクリューの固定プランニングは施術者が患者及び施術部位に応じて適正な椎弓根スクリューの長さ、直径などを決定し、椎弓根スクリューの挿入経路についての事前計画を策定するための手順である。
【0003】
施術者がプランニングを行うことには図1に示すような脊椎の体軸断面の画像(axial view)が最も有利である。C-arm装置は、脊椎の体軸断面の画像を提供することができないので、手術前に、コンピュータ断層撮影(CT)を行って体軸断面の画像を施術者に提供することにより、手術前にプランニングできるようにしている。
【0004】
CT画像を基にプランニングが行われても、実際の手術の過程では、モバイルC-armのX-線装置が主に用いられるので、手術前にプランニングされたとおりに手術が行われているかどうかリアルタイム検証したり、プランニングされたとおりに手術器具をナビゲーションするためにCT画像とC-armの2D画像の整合(registration)の過程が先行しなければならない。また、患者が動いたりC-arm機器を移動する場合、整合が再度行わなければならない。
【0005】
以上のように、CT画像に基づくプランニングは体軸断面の画像を活用できる長所にもかかわらず、CT撮影が長時間の放射線被ばくにより、人体に有害で、C-armの2D画像との整合が必要である短所もある。
【0006】
一方、C-armの画像は、脊椎の体軸断面の画像を提供することができず、AP(Anterior-Posterior)画像とLL(Lateral-Lateral)画像上では、プランニングに必要な脊椎の部分がすべて表示されることもないので、プランニングに不適切な面がある。
【0007】
したがって、C-armの画像を基にプランニングを行う実務がないが、C-armは手術の過程で用いられる機器であるので、C-armの画像を基づくプランニングを行うと、3DのCT画像と2D画像との間の整合を行う必要がなく、手術中にも必要に応じて手術計画を変更することができる柔軟性を得ることができるなど、多くの長所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、前述した従来の問題を解決するために案出されたものであり、C-armの画像を基づく椎弓根スクリューの固定プランニングが可能なプランニングシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、本発明の一態様に係る椎弓根スクリューの固定プランニングシステムにおいて、患者の脊椎の画像を撮影するC-armと、C-armの画像上で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを提供する挿入経路提供部と、基準座標系を基に、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を算出する整合部と、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を基に、前記椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、前記挿入姿勢に応じて前記エントリポイントに向かって前記プローブの挿入をガイドするためのガイド装置と、前記プローブが挿入されるに伴い、骨に触れ合う始点の座標を取得し、前記挿入エンドポイントの座標と前記始点の座標との間の距離を算出して椎弓根スクリューの長さの条件を決定するスクリュー決定部を含むことを特徴とする椎弓根スクリューの固定プランニングシステムによって達成することができる。
【0010】
ここで、前記エントリポイントはAP(Anterior-Posterior)画像上で前記挿入エンドポイントと椎弓根の中心を結ぶライン上の任意の点で決定されることができ、また、前記エントリポイントはLL(Lateral-Lateral)画像上で脊椎体の水平ラインと平行に前記挿入エンドポイントから延びた線上の任意の点で決定されることができる。
【0011】
前記システムは、光学式マーカーが接続された前記プローブの位置を追跡する光学追跡装置をさらに含み、前記整合部は、前記プローブの位置が整合される前記C-armの画像上のピクセルを決定し、前記挿入経路提供部は、前記整合されたピクセルに、前記プローブの投影画像を表示することができる。
【0012】
そして、前記挿入経路提供部は施術者が前記C-armの画像上に前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントを選択できるユーザーインターフェイスを含むことができる。
【0013】
また、前記目的は、本発明の別の態様に係る椎弓根スクリューの固定プランニング方法において、C-armを介して患者の脊椎についてのC-armの画像を取得するAステップと、前記C-armの画像で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを決定するBステップと、基準座標系を基に、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を算出するCステップと、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を基に、前記椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、前記挿入姿勢に応じて前記エントリポイントに向かって前記プローブの挿入をガイドするDステップと、前記基準座標系を基に、前記プローブが挿入されるに伴い、骨に触れ合う始点の座標を取得するEステップと、前記挿入エンドポイントの座標と前記始点の座標との間の距離を算出して椎弓根スクリューの長さの条件を決定するFステップと、を含むことを特徴とする椎弓根スクリューの固定プランニング方法によって達成することができる。
【0014】
ここで、前記Bステップにおいて、前記エントリポイントは、AP(Anterior-Posterior)画像上で前記挿入エンドポイントと椎弓根の中心を結ぶライン上の任意の点で決定されるか、前記エントリポイントは、LL(Lateral-Lateral)画像上で脊椎体の水平ラインと平行に前記挿入エンドポイントから延びた線上の任意の点で決定されることができる。
【0015】
そして、前記Bステップにおいて、施術者がユーザーインターフェイスを介して前記C-armの画像上に前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントを選択することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、プランニングの際に用いていた既存のCT画像の代わりに、C-armの画像を用いるので、患者の放射線被ばくを減らして手術の手順を簡素化することができる。
【0017】
本発明によれば、手術中にもC-armの画像に基づく手術計画を修正して調整することができ、画像の整合を省略することができ、手術の進行のレビュー及び手術器具のナビゲーションの精度を向上させることができる。また、プランニングの過程で活用されたスクリューガイド姿勢に基づいて、連続的に施術に活用することができ、手術の手順を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】脊椎構造の体軸断面の画像(axial view)を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニングシステムの概略的なブロック構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング方法のフローチャートである。
図4a】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図4b】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図5a】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図5b】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図7a】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図7b】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図8】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図9】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図10a】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
図10b】本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニングシステムの概略的なブロック構成図である。
【0021】
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニングシステムは、C-arm10と、挿入経路提供部20と、光学追跡装置30と、整合部40と、ガイド装置50と、スクリュー決定部60と、を含んで構成される。
【0022】
C-arm10は、患者の脊椎の画像を撮影するためのものであり、C字形状のフレームの両端に設けられたX-線ソースとディテクタを介してC-armのX-線画像を撮影する。
【0023】
挿入経路提供部20は、C-armの画像に対応する椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを提供するためのものである。ここで、挿入エンドポイントは椎弓根スクリューが脊椎体(pedicle body)に挿入固定される際にスクリューの末端の位置を意味し、エントリポイントは挿入エンドポイントとの相対的な位置関係を介して椎弓根スクリューの挿入経路を決定できるように選択された位置を意味する。
【0024】
エントリポイント及び挿入エンドポイントに関する情報は、C-armの画像を基に推薦位置情報を自動的に生成する医用意思決定支援システム(CDSS、Clinical Decision Support System)によって提供されることができる。医用意思決定支援システムは、C-armの画像についてのディープラーニングを基づいて構築されることができ、MLP、CNNなど、様々なディープラーニングアルゴリズムに基づくAIまたは医用XAIが活用されることができる。
【0025】
他の方法では、エントリポイント及び挿入エンドポイントに関する情報は、施術者がUIを介して直接C-armの画像でエントリポイント及び挿入エンドポイントを指定することにより決定することができる。施術者は、専門的な知識を備えているので、医用意思決定支援システムの助けを借りずUIを介してエントリポイント及び挿入エンドポイントを選択することができるだろう。
【0026】
これとは異なり、エントリポイント及び挿入エンドポイントに関する情報は、患者及び手術部位の定型化された統計的基準等を踏まえに提供され、施術者が専門知識で直接調整するようにするなど、さまざまな方法でも決定することができる。
【0027】
光学追跡装置30は、手術空間内部の基準マーカ(図示せず)を認識し、基準座標系を提供して、光学式マーカーが設けられたさまざまな機器や器具の位置を基準座標系の基準に変換(transfomation)する。
【0028】
整合部40は、基準座標系を基準にエントリポイント及び挿入エンドポイントの空間座標を算出するためのものである。つまり、C-armの画像上のエントリポイント及び挿入エンドポイントに対応する脊椎内部の位置についての空間座標を算出するためのものである。
【0029】
具体的に、整合部40は、例えば、C-armのAP画像及びLL画像のそれぞれについての撮影の際にC-armのX-線ソースとディテクタの空間座標をもとに、AP画像及びLL画像上の等しいエントリポイント(または挿入エンドポイント)からX-線経路に沿って逆投影することにより、相互に交差する位置を決定し、空間座標を算出することができる。ここで、C-armのX-線ソースとディテクタの空間座標は、X-線ソースとディテクタの光学式マーカーを取り付けることにより算出することができる。ただし、ディテクタの表面とC-armの画像は同一平面でなければならない。
【0030】
もし、X-線ソースとディテクタの位置を識別しにくい場合においては、本出願人が2019年3月13日付けに韓国特許庁に出願した特許出願第2019-0028592号「C-armベースの医用画像システム及び2D画像と3D空間の整合方法」に開示された方法で整合を行うことができる。簡略に説明すれば、ディテクタの表面のAP画像を第3平面にワーピングして、新たに生成された画像から空間上にピクセルを逆投影して、複数の画像から交差する点を求める方式で空間座標を算出することができる。
【0031】
再び図2を参照すると、ガイド装置50は、エントリポイント及び挿入エンドポイントの空間座標をもとに椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、これによりエントリポイントに向かってプローブの挿入をガイドする。ガイド装置50は、自動または半自動の装置、あるいは医療用ロボットに実装されることができる。公知の医療用ロボットの場合、位置の座標のみ与えられると、光学追跡装置30を媒介としてスクリューを挿入するための位置に自動的に移動し、挿入姿勢に応じて、プローブを挿入することができるようエンドエフェクタ(図示せず)とガイドジグの姿勢を制御することができる。
【0032】
スクリュー決定部60は、プローブが挿入されるに伴い、骨に触れ合う始点の座標を取得する。ここで、プローブの末端の挿入深さは、プローブの挿入メカニズムに応じてプローブまたはプローブの挿入力を伝達するエンドエフェクタ(図示せず)等に取り付けられた光学式マーカーをもとに算出されることができる。
【0033】
スクリュー決定部60は、挿入エンドポイントの座標と始点の座標との間の距離を算出して、椎弓根スクリューの長さの条件を決定する。ここで、始点と挿入エンドポイントは、脊椎に挿入される椎弓根スクリューの総長さの合計値を表し、したがって椎弓根スクリューの長さの条件は始点から挿入エンドポイントまでの長さ、または、これよりも所定の長さだけ長い長さで決定することができる。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング方法を示すフローチャートであり、図4a乃至図10bは、本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニング過程を説明するための模式図である。
【0035】
図3乃至図10bを参照して、図2に示す本発明の実施形態に係る椎弓根スクリューの固定プランニングシステムの動作を説明する。
【0036】
まず、C-arm10を用いて、患者の脊椎についてのAP画像及びLL画像を取得する(S1)。C-arm10を用いて、AP画像及びLL画像を撮影することは、本技術分野の通常の知識を有する者に周知された技術であるので、説明の簡略化及び明確化のために詳細な説明を省略する。図4a及び図4bは、本発明の実施形態に係るプランニング過程を説明するためのAP画像とLL画像を示す。
【0037】
C-arm10は、撮影されたAP画像とLL画像を挿入経路提供部20に提供し、挿入経路提供部20はAP画像とLL画像で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを決定することにより、椎弓根スクリューまたはプローブの挿入経路を提供する(S2)。
【0038】
図5a及び図5bは、本発明の実施形態に係りAP画像とLL画像のそれぞれに、エントリポイント及び挿入エンドポイントが表示された例を示す。
【0039】
図5aを参照すると、左側の楕円(以下、第1楕円)eclは挿入エンドポイントEPを示し、右側楕円(以下、第2の楕円)eclはエントリポイントMPを示し、これを表示している。つまり、楕円で表現されている理由は、AP画像の撮影方向で椎弓根スクリューが斜線方向に挿入される点と椎弓根スクリューの直径を表現するためのものであり、第1楕円eclは椎弓根スクリューの末端面を示すもので、楕円の中心点を挿入エンドポイントEP及びエントリポイントMPで代表することができる。
【0040】
図5bを参照すると、右側の楕円(以下、第3楕円)eclは挿入エンドポイントEPを示し、左側の楕円(以下、第4楕円)eclはエントリポイントMPを示す。図5a及び図5bに示すエントリポイントMP及び挿入エンドポイントEPは、互いに連動される所に位置する。
【0041】
図6を参照すると、AP画像とLL画像は垂直方向に患者の脊椎を撮影したものなので、AP画像上の任意の点PAPimg、例えばエントリポイントをX-線の照射方向に対して逆方向に延びると、ソースSAPに至るラインを得ることができ、LL画像の撮影際のX-線の照射方向と重複する領域と交差するラインを得ることができ、このラインをLL画像に投影すると、第1ラインL1を求めることができる。AP画像上の任意の点PAPimg、例えばエントリポイントに対応するLL画像上のエントリポイントPLLimgは、第1ラインL1上のピクセルの中の一つである。したがって、AP画像上でエントリポイントの位置を変更すると、第1ラインL1の位置が変更され、LL画像上のエントリポイントの位置が一緒に修正される。
【0042】
挿入経路提供部20はAP画像を表示して、施術者にエントリポイントPAPimgを選択するようにして、これに対応する第1ラインL1をLL画像に表示した後、施術者が第1ラインL1上でエントリポイントPLLimgを選択することにより、AP画像とLL画像でのエントリポイントMPを入力するようにすることができる。また、前述したように、施術者を補助する医用意思決定支援システムに基づいてエントリポイントMPを推奨して表示する方式などでエントリポイントMPのほかにも、挿入エンドポイントEPを表示することができる。
【0043】
このように、図5a、図5b及び図6を介して説明したAP画像とLL画像との間のピクセル座標の整合はAP画像及びLL画像上のすべてのピクセルに対して適用することができる。
【0044】
図7a及び図7bは、AP画像上で挿入エンドポイントの位置が決定される過程を説明するための模式図である。
【0045】
図7aにおいて長手方向に表示されたラインSLは、脊椎の棘突起(spinous process)を表し、棘突起SLの右側に表示された円Cは椎弓根の位置を表示する。AP画像上の挿入エンドポイントEPは、椎弓根を示す円Cと棘突起SLとの間に位置するように選択され、挿入エンドポイントEPを中心とする楕円eclも円Cと棘突起SLとの間に位置するようにすることにより、挿入エンドポイントEPの位置及び楕円の形が決定される。
【0046】
図7bを参照すると、第1楕円eclと椎弓根を示す円Cの中心点を結ぶ第2ラインL2上でエントリポイントMPが選択されることができる。挿入エンドポイントEPを過ぎて第2ラインL2に直交する第1楕円eclの長軸と第1楕円eclが出会う二つの点をそれぞれEP1、EP2といい、エントリポイントMPを過ぎて第2ラインL2に直交する第2楕円eclの長軸と第2楕円eclが出会う二つの点をMP、MPというとき、EPとMPを結ぶラインTとEPとMPを結ぶラインTを得ることができる。
【0047】
AP画像から得られた二つの点(EP、EPAPとこれに相応する方法でLL画像から得られる二つの点(EP、EPLLをX-線経路に沿って逆投影して相互に交差する二つの点EP1_3d,EP2_3dを決定し、空間座標を算出する。このように得られた空間座標上の二つの点EP1_3d,EP2_3dの間の距離を求めることにより、椎弓根スクリューの直径を算出することができる。
【0048】
挿入エンドポイントEPを移動させると、第1楕円eclの形状が変更され、これに連動して第2楕円eclの形状も変更される。
【0049】
図8は、LL画像上での挿入エンドポイントに対応する第3楕円eclとエントリポイントに対応する第4楕円eclが決定される過程を説明するための模式図である。
【0050】
AP画像で選択された挿入エンドポイントとエントリポイントに連動してLL画像上で挿入エンドポイントとエントリポイントを選択する過程は、前述した。同様に、図8に示されている第3楕円ecl及び第4楕円の大きさeclは、AP画像の第1楕円及び第2楕円のピクセルの整合方法(図6を参照して説明された方法)で決定されることができる。したがって、第1乃至第4楕円の中の一つの楕円が中心点の移動または直径の変化によって形状が変更されると、残りの三つの楕円もこれに連動するように形状が変更される。
【0051】
LL画像でもAP画像と同じ方法で T、Tに対応するラインを決定することができる。LL画像で挿入エンドポイントEPとエントリポイントMPを過ぎる第2ラインL2と脊椎体(vertebra body)の画像上に表示される水平ラインVBと平行に位置させる。
【0052】
再び図3を参照すると、次のステップにおいて整合部40が基準座標系をもとにエントリポイントMPと挿入エンドポイントEPの空間座標を算出する(S3)。ここで、基準座標系は、光学追跡装置30が医療空間に設けられた基準光学式マーカーを認識して設定される。
【0053】
図9に示すように、互いに垂直なAP画像とLL画像上に表示されたエントリポイントMP(または挿入エンドポイント)をX-線の照射方向の逆方向に投影する第3ラインL3及び第4ラインL4の交差点PをエントリポイントMPに整合される空間座標で求めることができる。
【0054】
ただし、図9に示すような方法で空間座標を換算するためには、AP画像及びLL画像撮影の際にソースの位置と画像が結ばれるディテクタ平面の位置情報が必要である。ディテクタ平面の位置を知ることができない場合には、前述した本出願人の特許出願第2019-0028592号に開示されたように、空間位置を知ることができるX-線の照射経路上の平面にワーピングのアルゴリズムを適用して画像を生成することにより、生成された画像を図9に開示されたAP画像やLL画像に置き換えることができる。
【0055】
ガイド装置50は、エントリポイント及び挿入エンドポイントの空間座標をもとに椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、これに伴ってエントリポイントに向かってプローブの挿入をガイドする(S4)。
【0056】
医療用ロボットにおいては、エントリポイント及び挿入エンドポイントの空間座標の提供を受け、医療用ロボットが適正の位置に移動し、プローブの挿入方向をガイドするプローブグリッパー(gripper)を挿入の姿勢に合わせて位置させる。医療用ロボットが与えられた座標に合わせて移動し、エントリポイントと挿入エンドポイントを結ぶ挿入経路に向けてエンドエフェクタに装着されたプローブグリッパーの方向を設定する技術は、本技術分野で周知の技術であるので、本明細書においては具体的な説明を省略する。また、医療用ロボットではなくとも、公知のブリッジタイプの手術器具ガイド装置50なども類似する方式で制御することができる。
【0057】
スクリュー決定部60は、プローブが挿入されるに伴い、プローブの末端が骨に触れ合い始める点(以下、始点)SPの座標を取得する(S5)。
【0058】
図10a及び図10bは、プローブprが挿入されて始点に触れ合った状態を示すAP画像及びLL画像である。
【0059】
挿入されたプローブprの末端の位置SPは、プローブの挿入深さに応じて変わるが、プローブまたはガイド装置50に取り付けられた光学式マーカーを媒介として空間座標で算出することができる。プローブの末端の空間座標は、図9に示すように、X-線の照射方向に沿ってAP画像及びLL画像上の位置に整合されて、図10a及び図10bに示すように、リアルタイムで追跡することができる。
【0060】
スクリュー決定部60は、始点SPの座標と挿入エンドポイントEPとの間の座標をもとに二つの点間の距離を計算することにより、椎弓根スクリューの長さの条件を決定する(S6)。椎弓根スクリューの長さは、始点の座標と挿入エンドポイントとの間の3D空間上の距離と一致するか、これより所定の大きさだけさらに長い長さで選択されることができる。
【0061】
以上説明したように、本発明は、C-armの画像に基づいてプローブを挿入するに伴い、スクリューの長さを決定することができるのみならず、プローブの挿入のために設定されたガイドを椎弓根スクリューを挿入するのに用いることができるので、手術を迅速かつさらに正確に行うことができる。
【0062】
今まで本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、本発明の実施形態を変形したり置換することを理解することができる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に記載された技術的思想とその均等物に及ぶものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0063】
10:C-arm
20:挿入経路提供部
30:光学追跡装置
40:整合部
50:ガイド装置
60:スクリュー決定部
【0064】
以下に、原出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
椎弓根スクリューの固定プランニングシステムにおいて、
患者の脊椎の画像を撮影するC-armと、
C-armの画像上で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを提供する挿入経路提供部と、
基準座標系を基に、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を算出する整合部と、
前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を基に、前記椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、前記挿入姿勢に応じて前記エントリポイントに向かって、プローブの挿入をガイドするためのガイド装置と、
前記プローブが挿入されるに伴い、骨に触れ合う始点の座標を取得し、前記挿入エンドポイントの座標と前記始点の座標との間の距離を算出して椎弓根スクリューの長さの条件を決定するスクリュー決定部を含むことを特徴とする椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
[2]
前記エントリポイントはAP(Anterior-Posterior)画像上で前記挿入エンドポイントと椎弓根の中心を結ぶライン上の任意の点で決定されることを特徴とする[1]に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
[3]
前記エントリポイントはLL(Lateral-Lateral)画像上で脊椎体の水平ラインと平行に前記挿入エンドポイントから延びた線上の任意の点で決定されることを特徴とする[1]に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
[4]
光学式マーカーが接続された前記プローブの位置を追跡する光学追跡装置をさらに含み、
前記整合部は、前記プローブの位置が整合される前記C-armの画像上のピクセルを決定し、
前記挿入経路提供部は、前記整合されたピクセルに、前記プローブの投影画像を表示することを特徴とする[1]に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
[5]
前記挿入経路提供部は施術者が前記C-armの画像上に前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントを選択できるユーザーインターフェイスを含むことを特徴とする[1]乃至[4]の中のいずれか一項に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングシステム。
[6]
椎弓根スクリューの固定プランニング方法において、
C-armを介して患者の脊椎についてのC-armの画像を取得するAステップと、
前記C-armの画像で椎弓根スクリューのエントリポイント及び挿入エンドポイントを決定するBステップと、
基準座標系を基に、前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を算出するCステップと、
前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントの空間座標を基に、前記椎弓根スクリューの挿入姿勢を決定し、前記挿入姿勢に応じて前記エントリポイントに向かってプローブの挿入をガイドするDステップと、
前記基準座標系を基に、前記プローブが挿入されるに伴い、骨に触れ合う始点の座標を取得するEステップと、
前記挿入エンドポイントの座標と前記始点の座標との間の距離を算出して椎弓根スクリューの長さの条件を決定するFステップと、を含むことを特徴とする椎弓根スクリューの固定プランニング方法。
[7]
前記Bステップにおいて、前記エントリポイントは、AP(Anterior-Posterior)画像上で前記挿入エンドポイントと椎弓根の中心を結ぶライン上の任意の点で決定されることを特徴とする[6]に記載の椎弓根スクリューの固定プランニング方法。
[8]
前記Bステップにおいて、前記エントリポイントは、LL(Lateral-Lateral)画像上で脊椎体の水平ラインと平行に前記挿入エンドポイントから延びた線上の任意の点で決定されることを特徴とする[6]に記載の椎弓根スクリューの固定プランニングの方法。
[9]
前記Bステップにおいて、施術者がユーザーインターフェイスを介して前記C-armの画像上に前記エントリポイント及び前記挿入エンドポイントを選択することを特徴とする[6]乃至[8]の中のいずれか一項に記載の椎弓根スクリューの固定プランニング方法。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b