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特許7618295ユニバーサル免疫細胞の製造方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】ユニバーサル免疫細胞の製造方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20250114BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250114BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20250114BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20250114BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250114BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20250114BHJP
   A61K 35/15 20250101ALI20250114BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250114BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/10
C12N1/00 A
C12N1/00 G
A61K35/15
A61K35/17
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511587
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2020109310
(87)【国際公開番号】W WO2022032665
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】523050139
【氏名又は名称】シャンハイ・シンフア・バイオ・ファーマスーティカル・サイエンス・アンド・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、フア
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516586(JP,A)
【文献】特表2002-528115(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102847144(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102847143(CN,A)
【文献】特表2017-537919(JP,A)
【文献】特表2017-527310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
A61K 35/00 - 35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを培養容器内において、液体細胞培養培地中で共培養して、ユニバーサル免疫細胞培養物を得るステップS1と、
ステップS1で得られた培養物から細胞集団を分離するステップS2と、を含み、
ここで、上記の細胞マイトジェンは、コンカナバリン及び植物性赤血球凝集素のうちのいずれかの一つまたは複数から選択され、
上記のサイトカインは、インターロイキン-2及びインターフェロンのうちのいずれかの一つまたは複数から選択され、
上記の免疫アジュバントは、ツイン-80であり、
上記の細胞集団は、細胞傷害性Tリンパ球であることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、上記のサイトカインの濃度は、20万~500万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、上記のサイトカインの濃度は、50万~200万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において、上記のマイトジェンの濃度は、10万~1000万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法において、上記のマイトジェンの濃度は、0.1mg~10mg/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、上記の単核細胞は末梢血または臍帯血に由来することを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、上記の免疫細胞の濃度は、1×10~1×1011個/mLであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、上記のステップS1における共培養時間は3~180日であることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、上記の培養容器は、三次元大容量高密度細胞培養容器であることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、上記方法は、ステップS1で得られた培養物またはステップS2で得られた細胞集団を原料として、液体細胞培養培地中でクローニングを行い、細胞株を得るクローニングステップを含み、上記のクローニングは、断続的循環刺激法または連続刺激法を採用することを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に関し、特に、ユニバーサル免疫細胞を調製する方法およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年で、癌治療の分野は大きな進歩を遂げた。特に、腫瘍関連抗原(TAA)をターゲットとする細胞ベースの治療法が急速に発展している。T細胞は、scFvをコードする遺伝子、共刺激ドメイン(CD28またはTNFRSF9)、及びT細胞の増殖と活性化のためのCD247シグナル伝達ドメインによる構成されるCARコンストラクトを生成することにより、腫瘍細胞を攻撃する能力を持つように設計されている。原則として、CAR-T細胞はT、細胞の表面上のscFvによるTAAの認識によって活性化され、続いてscFvによって連結された細胞内のシグナル伝達ドメインが活性化され、T細胞の増殖、活性化、及びサイトカインに関与する下流のシグナル伝達が誘導される。
【0003】
現在、CAR-T細胞療法の有効機能は、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、自家免疫疾患、喘息などのアレルギー疾患を含む様々な疾患で実証されている。さらに、抗原特異的制御性T細胞(Tregs)と遺伝子編集されたT細胞は、アレルギー性喘息の炎症を制御するのに有益であるように思われる。
【0004】
CAR-T細胞療法は、従来の薬剤と異なり、主にCAR遺伝子を組み込んだ自家T細胞療法である。本治療法は、採血、分離、活性化、遺伝子導入、増殖、整備、放出、冷凍、輸送、医薬品の投与を迅速に完成しなければならに。そのため、CAR-T細胞療法は、かなり高価で個別化されたプロセスであり、患者の細胞を採取するには高価な措置が必要で、これらの細胞を操作し、各段階で細胞を患者に再注入し、それに適切な品質管理を行う。さらに、従来のキャラ抗原受容体(CAR)は、設計が固定されており、一種類のCAR-T細胞が一つの抗原エピトープしか標的できない。このような厳格な設計は、臨床応用を制限し、製造コストが非常に高くなるにも繋がる。
【0005】
2017年にFDAにより、2種類のCAR-T細胞療法(YescartaとKymriah)が承認された。CAR-T細胞療法は、もうある種類のがんに対する最も有望な治療法の一つになっており、CAR-T細胞の産生を最適化するのに機会を提供し、患者さんが治療を受けやすくなる。ただし、現在承認されている2種類のキャラ抗原受容体(CAR)を持つT細胞製品は、自家T細胞に由来している。これら臨床応用が承認されたCAR-T細胞はカスタムベースで生成する必要がある。この自家T細胞産生プラットフォームは、高価で産生プロセスに時間がかかるため、依然として大規模な臨床応用の重要な制限要因となっている。また、産生に失敗する固有のリスクのほか、個別化、調整された自家CAR-T細胞の産生プロセスは、さまざまな種類の腫瘍の応用範囲にも影響を与えている。
【0006】
高度な細胞療法をより広く実施し、コストを削減するには、同種異系の「ユニバーサル」細胞療法製品を使用することが有利である。上記の同種異系「ユニバーサル」細胞療法製品は、バイオ医薬品と同様の方法で細胞バンクに保存でき、要求に応じて利用可能になる。したがって、ユニバーサルの同種異系T細胞を使用して、ユニバーサルCAR-T細胞を製造でき、それは大規模な臨床応用に「既製品」というすぐに使えバイオ治療薬として使える。これにより、従来のCAR-T細胞療法に必要なコストと時間が大幅に削減される。現在、ユニバーサル CAR-Tの研究開発は、主に免疫細胞の種類とその製造、及びCAR―Tのキャリアと構造を含む。主な技術ルートは、移植片対宿主反応を防ぐために内因性αβT細胞受容体(TCR)の発現消去、ゲノム編集技術、他の種類の免疫細胞、iPSC技術である。
【0007】
同種異系CAR-T細胞を輸注する場合、養子移入細胞の拒絶と宿主組織の損傷を防ぎ、顕著な抗腫瘍効果を引き出すために、宿主対移植片及び移植片対宿主拒絶反応を避ける必要がある。現在、採用されている編集方法は、CARを導入しながら、同種異系治療を妨げる内因性T細胞受容体などの遺伝子をノックアウトすることを含む。それにより、細胞表面にTCRαβ受容体が存在しなくなり、アロ反応性を防げる。本技術は、明らかにさらに製造操作の複雑性を増大させ、それに、TCRαβ受容体を不完全にノックアウトする潜在リスクもある。
【0008】
複数の遺伝子ターゲットを同時に編集できるため、一部の臨床試験ではCAR-T細胞の改善にCRISPR/Cas9システムが採用されている。これらの強力な技術の組み合わせは、臨床応用に新世代のCAR-T細胞ベースの免疫療法を提供することが期待されている。すなわち、遺伝子編集技術によって内因性TCRをノックアウトし、T細胞の抗腫瘍活性と安全性を改善する。ただし、この方法によっても、製造操作の複雑性をさらに増大させ、製造コストも増加させる。
【0009】
ナチュラルキラー(NK)細胞は異種移植でき、既製品になる可能性があるため、CAR-NK細胞療法が汎用性ある製品になる可能性がある。これらの製品は、CAR-T細胞療法より、安全かもしれない。科学者は、前立腺腫瘍細胞で過剰発現するヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)を認識するCARを用いた、CARNK-92細胞工学に基づく新型PCa治療法を報告した。CAR形質導入後、NK-92/CAR細胞は、体外でPSMAが発現している前立腺がん細胞に対して高い特異性と溶解活性を獲得し、抗原認識に応答して脱顆粒をし、高いレベルのIFN-γを産生する。ただし、本技術は、エフェクターに致死照射を必要とする。これは、表現型や短期機能に影響を与えることなく複製を完全に消去できる、標的NK-92細胞の臨床応用に必要な安全対策である。
【0010】
他の研究者は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来のナチュラルキラー(NK)細胞に基づく既製的な細胞療法を開発する技術ルートを探査し、iPSC由来のNK(iPSC-NK)細胞を設計して、免疫細胞機能を強化し、持続性を延長し、細胞のホーミングを促進する戦略を提案した。しかし、今まで、iPSC由来のCTL(iPSC-CTL)の報告がない。
【0011】
本発明は、先に出願した抗原特異的な免疫細胞薬(CN101626781B、CN1028471438、CN102847144B)がほぼ10年間の臨床応用において、18月から93歳までの年齢範囲で凡そ800例の腫瘍患者を治療し、回数的には最大500回以上、時間的には最大10年以上に使用された。末梢血白血球の総数は、0.9-30.0×10/Lの範囲である。従来のDLIで治療された患者で約50~60%が移植片対宿主拒絶反応(GVHD)の発症と比べ、多施設臨床試験を経って、安全性が高く、GVHDや自家免疫疾患がないことは証明されている。
【0012】
したがって、本出願人は、先に出願した特許に基づいて、ユニバーサル同種異系T細胞を製造する方法を設計し、それは、CAR-T、TCR-T、または他の免疫細胞タイプなどの他のタイプのユニバーサル免疫細胞調製物に親細胞を提供する。養子免疫細胞療法などの分野で使え、免疫細胞の品質を改善し、細胞療法のコストを削減し、安全性を向上させることができることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】CN101626781B
【文献】CN1028471438
【文献】CN102847144B
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、ユニバーサル免疫細胞を製造する簡単な方法及びその応用を提供することである。製造されたユニバーサル免疫細胞は、安全で信頼性が高く、持続性があり、効果的で、移植片対宿主拒絶反応がない。
【0015】
本発明は上述した課題を解決するために、以下の技術案を採用する。
【0016】
本発明の第1の実施形態は、ユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、
同種異系免疫細胞(例えば、単核細胞など)と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを培養容器内において、液体細胞培養培地中で共培養して、ユニバーサル免疫細胞培養物を得るステップS1と、
ステップS1で得られた培養物から細胞集団を分離するステップS2と、を含み、
ここで、サイトカインは、リンパ球と単球と他の細胞によって産生されたリンフォカイン、モノカイン、炎症を活性化するサイトカインと造血を刺激するサイトカインのうちのいずれかの一つまたは複数から選択される。
【0017】
さらに、上記のサイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、走化性サイトカイン、及びトランスフォーミング増殖因子のうちのいずれかの一つまたは複数から選択される。
【0018】
さらに、上記のサイトカインは、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-15及びインターフェロンのうちの一つまたは複数である。
【0019】
さらに、上記のサイトカインの濃度は、20万~500万単位/Lである。
【0020】
さらに、上記のサイトカインの濃度は、50万~200万単位/Lである。
【0021】
さらに、上記のマイトジェンは、コンカナバリン、植物性赤血球凝集素、アメリカヤマゴボウ、リポ多糖、及びデキストランのうちのいずれかの一つまたは複数から選択される。
【0022】
さらに、上記のマイトジェンの濃度は、10万~1000万単位/Lである。
【0023】
さらに、上記のマイトジェンの濃度は、0.1mg~10mg/Lである。
【0024】
さらに、上記の免疫アジュバントは、生物学的アジュバント、無機アジュバント、有機アジュバント、合成アジュバント、油及びフロイントアジュバントのうちのいずれかの1つまたは複数から選択され、濃度が0.01mL~1mL/Lである。
【0025】
さらに、免疫細胞は末梢血または臍帯血に由来する。
【0026】
さらに、免疫細胞は他家細胞または自家細胞であり得る。
【0027】
さらに、上記の免疫細胞の濃度は、1×10~1×1011個/mLである。
【0028】
さらに、上記の細胞集団は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、サイトカイン活性化キラー細胞(CIK)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)、活性化キラー単球(AKM)、及び樹状細胞(DC)のうちのいずれかの一つまたは複数を含む。
【0029】
さらに、上記の免疫活性を有する細胞集団は、CTL、NK、CIK及びB細胞などのリンパ球であり、最も好ましくは細胞傷害性Tリンパ球である。
【0030】
さらに、ステップS1における共培養時間は3~180日である。
【0031】
さらに、上記の培養容器は、三次元大容量高密度細胞培養容器である。
【0032】
さらに、当該方法は、ステップS1で得られた培養物またはステップS2で得られた免疫活性を有する細胞集団を原料として、液体細胞培養培地中でクローニングを行い、免疫活性を有する細胞株を得るクローニングステップも含み。当該のクローニングは、断続的循環刺激法または連続刺激法のいずれかを採用する。
【0033】
本発明の第2の実施形態は、上記の方法によって製造されたユニバーサル免疫細胞を提供し、当該の細胞には、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、サイトカイン活性化キラー細胞(CIK)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)、活性化キラー単球(AKM)、及び樹状細胞(DC)のうちのいずれかの一つまたは複数を含む。
【0034】
本発明の第3の実施形態は、免疫細胞製剤の製造における第2の実施形態におけるユニバーサル免疫細胞の応用を提供し、当該の免疫細胞製剤の親細胞はユニバーサル免疫細胞である。
【0035】
さらに、上記の免疫細胞製剤はCAR-T細胞またはTCR-T細胞を含む。
【0036】
本発明の第4の実施形態は、免疫細胞製剤を提供し、当該の免疫細胞製剤が第2の実施形態におけるユニバーサル免疫細胞を親細胞として製造される。
【0037】
本発明の第5の実施形態は、容器と、上記の容器内に配置された第4の実施形態における免疫細胞製剤とを含む養子細胞免疫療法のための生物学的薬剤を提供する。
【0038】
さらに、上記の生物学的製剤は、さらに、生理食塩水、アルブミン及び他の安定剤を含む。
【0039】
本発明の第6の実施形態は、本発明の第4の実施形態における免疫細胞製剤が、リンパ球の機能及び量の異常に関連する疾患を治療および予防する医薬品を製造中における応用を提供する。
【0040】
さらに、医薬品の投与経路は、静脈、胸部、腹腔内、脊髄内、皮内、皮下または腫瘍内注射などである。
【0041】
本発明は、以上の技術案を採用し、先行技術と比較して、以下の技術的効果を有する。
【0042】
本発明で採用されたユニバーサル免疫細胞の製造方法は、簡単で、操作が容易であり、同種異系免疫細胞を採用して、免疫細胞製剤の品質を改善し、細胞療法のコストを削減し、安全性を向上させることができる。また、長期わたる多数の臨床応用により、当該ユニバーサル免疫細胞が安全で信頼性が高く、持続性があり、拒絶反応がないことが証明されている。したがって、養子細胞免疫療法の分野で、CAR-T、TCR-T、または他の免疫細胞タイプなど他のタイプのユニバーサル免疫細胞製剤の親細胞として使用できる。現在の細胞免疫療法の高いコストと安全性の低さ、効率の低さなどの問題を解決し、細胞免疫療法の応用と促進に新たな道を提供する。
【0043】
なお、本発明の医薬品の製造方法は、従来のワクチンの作用機序を変更した。従来のワクチンは、病原体またはその抗原物質でできており、人体に注射後、免疫システムが防御物質(例えば、抗体など)を生成し、免疫システムが元の記憶に従ってより多くの保護物質を生成し、病原菌の損傷を防ぐが、本発明は、免疫応答反応を有する細胞を含む治療用ワクチンを体内に輸注し、体の免疫機能を直接改善し、腫瘍、HIVや肝炎ウイルスなどの病原菌感染、コロナウイルスや他の種類のウイルスに対する抵抗能力を高めるだけでなく、癌やエイズ、ウイルス性肝炎の治療と予防に使用でき、老化を遅らせるのにも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、本発明の一つの実施例におけるパスウェイ解析に基づく、セル1の有意差遺伝子パスウェイの分布図である。
図2図2は、本発明の一つの実施例におけるセル1とセル2のシグナル伝達経路間の活性化相互作用図であり、影付きの円は変化のないシグナル経路であり、斜線付きの円はセル1で活性化されたシグナル経路であり、空白の円はセル2で活性化されたシグナル経路である。
図3図3は、本発明の一つの実施例におけるパスウェイ解析に基づく、セル2の有意差遺伝子パスウェイの分布図である。
【0045】
(具体的な実施形態)
広範かつ詳細な研究の後、多数の実験と探索を通じて、本発明者が、同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを共培養して、ユニバーサル免疫細胞が安全で信頼性が高く、持続性があり、拒絶反応がないユニバーサル免疫細胞(特にCTL)を製造でき、それに例えば、CAR-T、TCR-T、または他の免疫細胞タイプなど他のタイプのユニバーサル免疫細胞製剤の細胞免疫療法に低コストで安全で信頼性の高い親細胞を提供することができることを発現した。
【0046】
本発明の第1の実施形態は、簡単なユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを共培養して、多数のユニバーサル免疫細胞を得る。当該方法は、具体的に以下のステップを含み、
同種異系免疫細胞(例えば、単核細胞など)と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを培養容器内において、液体細胞培養培地中で共培養して、免疫活性の高いユニバーサル免疫細胞培養物を得るステップS1と、
ステップS1で得られた培養物から免疫活性を有する細胞集団を分離するステップS2とを含み、
ここで、サイトカインは、リンパ球と単球と他の細胞によって産生されたリンフォカイン、モノカイン、炎症を活性化するサイトカインと造血を刺激するサイトカインのうちのいずれかの一つまたは複数から由来する。
【0047】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記のサイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、走化性サイトカイン、及びトランスフォーミング増殖因子のうちのいずれかの一つまたは複数から由来し、本発明の一つの好ましい実施例において、上記のサイトカインは、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-15及びインターフェロンのうちの一つまたは複数から選択される。
【0048】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記のサイトカインは、インターロイキン-2及び/またはインターフェロンである。
【0049】
共培養プロセス中に、同種異系単核細胞は細胞マイトジェン、サイトカイン、及び免疫アジュバントの刺激により、IL-2及び他のサイトカインを分泌することができるため、IL-2への依存性が低く、さらに、Il-2を必要としなくてもいい。もちろん、培養中、外因性IL-2を同時に添加して、活性化Tリンパ球の大量増殖をさらに促進することができる。
【0050】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫活性を有する細胞集団の培養物を得るために、培養中に、上記のサイトカインの濃度は、20万~500万単位/Lである。本発明の一つの好ましい実施例において、上記のサイトカインの濃度は、50万~200万単位/Lである。
【0051】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記のマイトジェンは、コンカナバリン、植物性赤血球凝集素、アメリカヤマゴボウ、リポ多糖、及びデキストランのうちのいずれかの一つまたは複数から選択される。
【0052】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫活性を有する細胞集団の培養物を得るために、培養中に上記のマイトジェンの濃度は、10万~1000万単位/Lである。本発明の一つの好ましい実施例において、上記のマイトジェンの濃度は、50万~500万単位/Lである。
【0053】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫活性を有する細胞集団の培養物を得るために、培養中に上記のマイトジェンの濃度は、0.1mg~10mg/Lである。本発明の一つの好ましい実施例において、上記のマイトジェンの濃度は、0.5mg~5mg/Lである。
【0054】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫アジュバントは、生物学的アジュバント、無機アジュバント、有機アジュバント、合成アジュバント、油及びフロイントアジュバントのうちのいずれかの1つまたは複数から選択され、免疫活性を有する細胞集団の培養物を得るために、培養中、免疫アジュバント濃度が0.01mL~1mL/Lである。本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫アジュバント濃度が0.1mL~0.5mL/Lである。
【0055】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫細胞は末梢血または臍帯血に由来した。本発明の一つの好ましい実施例において、免疫細胞は末梢血由来する。
【0056】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫細胞は他家細胞であってもよく、自家細胞であってもいい。本発明の一つの好ましい実施例において、免疫細胞は他家細胞である。
【0057】
本発明の一つの好ましい実施例において、免疫活性を有する細胞集団の培養物を得るために、培養中に上記の免疫細胞の濃度が、1×10~1×1011個/mLである。本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫細胞の濃度が1×10~1×10個/mLである。
【0058】
但し、異なるタイプの免疫細胞(すなわち、同種異系単核細胞)によっては、それと細胞マイトジェン、サイトカイン、及び免疫アジュバントとの比率が異なり、当業者は、試験や免疫細胞の特性によって適切な比率を決定することができる。
【0059】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫活性を持つ細胞集団は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、サイトカイン活性化キラー細胞(CIK)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)、活性化キラー単球(AKM)及び樹状細胞(DC)を含む。
【0060】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫活性を有する細胞集団は、CTL、NK、CIK及びB細胞などのリンパ球であり、より好ましい実施例において、上記の免疫活性を有する細胞集団は細胞傷害性Tリンパ球である。
【0061】
本発明の一つの好ましい実施例において、ステップS1における共培養時間は3~180日であり、本発明の一つの好ましい実施例において、ステップS1における共培養時間は3~60日であり、本発明の一つの好ましい実施例において、ステップS1における共培養時間は7~28日であり、より好ましい実施例において、ステップS1における共培養時間は14~21日である。
【0062】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の培養容器は、三次元大容量高密度細胞培養容器であるが、バイオリアクターを含む他の既知の培養容器も可能である。
【0063】
本発明の一つの好ましい実施例において、当該方法は、ステップS1で得られた培養物またはステップS2で得られた免疫活性を有する細胞集団を原料として、液体細胞培養培地中でクローニングを行い、免疫活性を有する細胞株を得るクローニングステップも含み。当該のクローニングは、断続的循環刺激法または連続刺激法のいずれかを採用する。
【0064】
本発明の第2の実施形態は、上記の方法によって製造されたユニバーサル免疫細胞を提供し、当該の細胞には、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、サイトカイン活性化キラー細胞(CIK)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)、活性化キラー単球(AKM)、及び樹状細胞(DC)のうちの一つまたは複数を含む。
【0065】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記のユニバーサル免疫細胞はCTL、NK、CIK及びB細胞などリンパ球である。より好ましい実施例において、上記のユニバーサル免疫細胞は細胞傷害性Tリンパ球である。
【0066】
本発明の第3の実施形態は、免疫細胞製剤の製造における第2の実施形態におけるユニバーサル免疫細胞の応用を提供し、当該ユニバーサル免疫細胞は免疫細胞製剤の親細胞となる。
【0067】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の免疫細胞製剤はCAR-T細胞またはTCR-T細胞を含み、当該の免疫細胞製剤は、養子細胞免疫療法に使用でき、さまざまな血液疾患やさまざまな固形腫瘍の治療と予防のためのバイオ医薬品として臨床的に使用できる。
【0068】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の血液疾患は、再生不良性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などの赤血球疾患と、様々な白血病、悪性リンパ種、悪性リンパ網状組織症、悪性リンパ細網症、形質細胞疾患、組織球症、骨髄異形成症候群(真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症)などの白血球疾患とを含む。
【0069】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の固形腫瘍は、上咽頭癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、白血病、口腔癌、唾液腺腫瘍、鼻腔および副鼻腔の悪性腫瘍、喉頭がん、耳の腫瘍、眼の腫瘍、甲状腺の腫瘍、縦隔の腫瘍、胸壁、胸膜の腫瘍、小腸の腫瘍、胆道の腫瘍、膵臓および乳頭部周囲の腫瘍、腸間膜および後腹膜腫瘍、腎臓腫瘍、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎癌、子宮内膜癌、卵巣悪性腫瘍、悪性絨毛腫瘍、外陰癌および膣癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、軟部組織腫瘍、骨腫瘍、皮膚・付属器腫瘍、悪性黒色腫、神経系腫瘍、各種小児腫瘍などから選択される。
【0070】
本発明の第4の実施形態は、免疫細胞製剤を提供し、当該の免疫細胞製剤が第2の実施形態におけるユニバーサル免疫細胞を親細胞として製造される。
【0071】
本発明の第5の実施形態は、容器と、上記の容器内に配置された第4の実施形態における免疫細胞製剤とを含む養子細胞免疫療法のための生物学的薬剤を提供する。
【0072】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の生物学的製剤は、さらに、生理食塩水、アルブミン及び他の安定剤を含む。
【0073】
本発明の第6の実施形態は、本発明の第4の実施形態における免疫細胞製剤が、リンパ球の機能及び量の異常に関連する疾患を治療および予防する医薬品を製造プロセスにおける応用を提供し、その応用は腫瘍免疫、移植免疫、過敏性免疫、自己免疫疾患、免疫増殖性疾患、免疫不全疾患、感染症と免疫、老化と免疫、生殖と免疫、生殖器と免疫、免疫血液疾患、呼吸器疾患および免疫、腎臓疾患および免疫、消化器系疾患および免疫、内分泌疾患および免疫、心血管系疾患および免疫、結合組織疾患、免疫皮膚科学、外傷および免疫、寄生虫疾患および免疫を含むが、それらに限らない。例えば、腫瘍、エイズ、ウイルス性肝炎、コロナウイルスやその他の種類のウイルス、または老化の遅延などを治療及び予防する。
【0074】
ここで、上記の医薬品は、体の免疫機能を改善するワクチンであってもよいし、または、体の免疫機能を改善することにより疾患を治療する医薬品であってもよい。当該のワクチン及び医薬品は、利用可能な任意の剤形に製造することができる。
【0075】
本発明の一つの好ましい実施例において、上記の医薬品の投与経路は、静脈、胸部、腹腔内、脊髄内、皮内、皮下または腫瘍内注射などである。
【0076】
以下は、本発明をよりよく理解できるために、具体的な実施例および図面を通じて、本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
実施例に使用している方法は、特別な説明がない限り、通常の方法を採用し、使用している試薬も特別な説明がない限り、市販試薬または通常の方法による製造された試薬である。
【0078】
実施例1
本実施例は、簡単なユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
【0079】
正常なヒト末梢血由来の同種異系単核細胞は、液体培地中で細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントと共培養され、培地中の細胞マイトジェンコンカナバリンの量は10万単位/Lであり、培地中のサイトカインインターロイキン-2の量は50万単位/Lであり、免疫アジュバント(5% ツイン-80)の量は0.5mL/Lである。
【0080】
同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカイン、および免疫アジュバントとを30日間共培養して、免疫活性を持つ免疫細胞培養物をえ、主に細胞傷害性Tリンパ球である。
【0081】
実施例2
本実施例は、簡単なユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
【0082】
同種異系末梢血由来の単核細胞と、液体培地中で細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを共培養し、上記の培養培地は、0.5mg/Lの細胞マイトジェン植物性赤血球凝集素と、500万単位/Lのサイトカインインターフェロンと、0.1mL/Lの免疫アジュバント(5%ツイン80)を含む。
【0083】
同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカイン、および免疫アジュバントとを30日間共培養して、免疫活性を持つ免疫細胞培養物をえ、主に細胞傷害性Tリンパ球である。
【0084】
実施例3
本実施例は、簡単なユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
【0085】
正常なヒト臍帯血由来の単核細胞と、液体培地中で細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを共培養し、培地中の細胞マイトジェンコンカナバリンの量は100万単位/Lであり、培地中のサイトカインインターロイキン-2の量は100万単位/Lであり、免疫アジュバント(5% ツイン-80)の量は0.1mL/Lである。
【0086】
同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを30日間共培養して、免疫活性を持つ免疫細胞培養物をえ、主に細胞傷害性Tリンパ球である。
【0087】
実施例4
本実施例は、簡単なユニバーサル免疫細胞を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
【0088】
同種異系末梢血由来の単核細胞と、液体培地中で細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを共培養し、上記の培養培地は、1mg/Lの細胞マイトジェン植物性赤血球凝集素と、300万単位/Lのサイトカインインターフェロンと、0.5mL/Lの免疫アジュバント(5%ツイン80)を含む。
【0089】
同種異系単核細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカイン、および免疫アジュバントとを30日間共培養して、免疫活性を持つ免疫細胞培養物をえ、主に細胞傷害性Tリンパ球である。
【0090】
効果例1
Tリンパ球を例にとると、上記の方法を用いることにより、多数の活性化され増殖した免疫細胞を得ることができる。コンビナトリアルバーコードを使用した、単一細胞の全遺伝子発現シーケンシングおよび全遺伝子遺伝子発現シーケンシングを使用する。二つ異なるグループの免疫エフェクター細胞の特徴的遺伝子スクリーニング分析を行い、セル2は免疫細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを8日間共培養し、セル1は免疫細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを26日間培養する。以下は、二つの検出分析方法によって免疫細胞の遺伝子全体の特徴を共同で発現した結果である。
【0091】
【表1】
【0092】
サンプルの2つグループ間の違いを研究する場合、我々は差次遺伝子を研究対象として、さらなる研究を行う。DESeq2を使用して2つのグループを比較し、サンプル間のマーカー遺伝子の差次倍率(Fold-change)を取得する。本分析では、2つのグループを比較して差次遺伝子をスクリーニングした。スクリーニング条件は、Fold changeをlog変換して、log2FoldChangeとなり、log2FoldChange>1.9または<-1.9の遺伝子をマーカー遺伝子として選択した。表1からこれらの遺伝子の差次発現特徴が明らかであることがわかる。
【0093】
効果例2
Tリンパ球を例にとると、上記の方法を使用することにより、本発明は、多数の活性化され増殖した免疫細胞を得ることができる。セル1は、免疫細胞と細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを26日間共培養し、その後経路分析を実施した。
【0094】
遺伝子間(及びそのコードされた産物)の関係、遺伝子機能、ゲノム情報のデータベースを体系的な分析は、研究者が遺伝子と発現情報を一つのネットワーク全体として研究するのに役立つ。KEGGが提供する統合代謝経路(Pathway)には、炭水化物、ヌクレオシド、アミノ酸などの代謝と有機物の生分解が含まれており、考えられるすべての代謝経路を提供するだけでなく、反応の各段階を触媒する酵素を包括的に注釈していた。KEGGは、生体内代謝解析および代謝ネットワーク研究のための強力なツールである。現在、KEGG Pathwayは、ネットワーク全体、代謝プロセス、遺伝情報伝達、環境情報伝達、細胞内生物学的プロセス、生体システム、ヒト疾患、創薬の8つのカテゴリに分類されている。
【0095】
パスウェイ解析はKEGGデータベースに基づき、差次遺伝子については、フィッシャーの直接確率検定とカイ二乗検定を使用し、標的遺伝子に関与するパスウェイの有意性分析を実行し、p値<0.05に従ってスクリーニングして、有意なパスウェイを獲得した。分析結果において有意なアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションを示す差次的遺伝子経路における各差次的遺伝子経路の有意水準(p値)および含まれる差次的遺伝子の数に応じて、有意な差次遺伝子経路の分布図を構築することができる。図に縦軸は差次遺伝子経路名で、横軸はp値の負の対数(-LgP)で、それが大きいほどp値が小さいを示し、つまり有意水準が高いことを示し、バブルの大きさは、経路に含まれる差次遺伝子の数を表す。研究者が見やすいように、一部(p値が0.05未満の部分、p値が0.05未満の部分が多い場合は、p値が小さい上位30項目のみが表示され)の有意なアップレギュレーションとダウンレギュレーションの差次的遺伝子機能に対してそれぞれにバブル図を作った。有意な上昇を示す経路図を例にとり、有意性部分を表示する結果は図1のように示す。
【0096】
図1から、マーカー遺伝子が豊富な2つのシグナル伝達経路があることがわかる。これらの2つの経路は、造血細胞系統(Hematopoietic cell lineage)シグナル伝達経路と、サイトカイン間相互作用(Cytokine-cytokine receptor interaction)シグナル伝達経路であり、これらの2つシグナル伝達経路はセル1活性化の主な特徴的な経路です。
【0097】
効果例3
Tリンパ球を例にとると、上記の方法を使用することにより、本発明は、多数の活性化され増殖した免疫細胞を得ることができる。セル1は、免疫細胞と細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを26日間共培養し、セル2は、免疫細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを8日間共培養し、そして、セル1とセル2のシグナル伝達経路間の活性化相互作用関係を分析する。その結果が図2に示す。
【0098】
図2において、上記の効果により、シグナル経路が活性化送達ネットワークを形成し、免疫細胞の表現型を誘導するカスケードが開始される。全ての免疫シグナル伝達経路を分析した後、セル1の特徴的な経路とする造血細胞系統のシグナル伝達経路が、上流のシグナル伝達経路からの刺激を受け、非常に重要なエフェクターシグナル伝達経路であり、サイトカイン-サイトカイン受容体相互作用シグナル伝達経路が、さらに多くの上流シグナル伝達経路の刺激の中心的な標的とされることを発現した。
【0099】
効果例4
Tリンパ球を例にとると、上記の方法を使用することにより、本発明は、多数の活性化され増殖した免疫細胞を得ることができる。セル2は、免疫細胞と細胞マイトジェンと、サイトカインおよび免疫アジュバントとを8日間共培養し、図3のようなパスウェイ解析を実施し、同様に、セル2が活性化される主要なシグナル伝達経路がECM受容体の相互作用(Receptor interaction)シグナル伝達経路であり、そのマーカー遺伝子の濃縮度が最も明らか(-LgPが最大)である。分析結果において有意なアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションを示す差次的遺伝子経路における各差次的遺伝子経路の有意水準(p値)および含まれる差次的遺伝子の数に応じて、有意な差次遺伝子経路の分布図を構築することができる。図に縦軸は差次遺伝子経路名で、横軸はp値の負の対数(-LgP)で、それが大きいほどp値が小さいを表し、つまり有意水準が高いことを示す。ここで、色の深さは、シグナル伝達経路におけるアップレギュレーションとダウンレギュレーションの程度、および遺伝子の相加効果を表し、バブルのサイズは、経路における差次遺伝子の数を表す。
【0100】
シグナル伝達経路活性化ネットワークを通じて、ECM受容体相互作用(Receptor interaction)シグナル伝達経路がセル2のフォーカルアドヒージョン(Focal Adhesion)シグナル伝達経路において活性化され、再びフォーカルアドヒージョンシグナル伝達経路を逆に強化することが分かった。
【0101】
効果例5
Tリンパ球を例にとると、上記の方法を使用することにより、本発明は、多数の活性化され増殖した免疫細胞を得ることができる。Countstar(登録商標) Rigel蛍光分析装置を使って、AOPI色素法により、PBMCサンプルの細胞濃度及び生存率を検出し、結果が以下の通りである。
【0102】
【表2】
【0103】
フローサイトメーターは免疫細胞サブセットを分析し、サンプル1、2、および3のCD8+Tリンパ球がそれぞれ95.34%、96.9%、および96.2%であることを示す。これらの結果は、以前の同様の方法で得られた結果と似ており、CD8+Tリンパ球の増加が95%以上に達し、その中で主に約93%のCD45RO陽性細胞であり、得られた免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であることが強く示唆される。
【0104】
効果例6
本発明による方法で製造されたユニバーサル免疫細胞を、その安全性および有効性を検証するためにサブジェクトに注射された。
【0105】
サブジェクト情報:劉様、男性、65歳、上記の方法で製造した同種異系のユニバーサル免疫細胞の静脈内注入のコースを過去2年間、3ヶ月ごとに受けた。治療の各コースは3回の静脈内注入に分け、一日おきに一回の注入が行われ、毎回注入の細胞数が5×10~1×1010である。
【0106】
効果としては、プロセス全体は良好な耐容性を示し、皮膚、肝臓、腸管等の臓器やシステムに拒絶反応に関連する発疹、黄疸、下痢などの臨床症状や徴候がない。また、上記の方法で製造した同種異系ユニバーサル免疫細胞を投入した後、(1)シミが薄くなり、(2)肌のキメが整くなり、(3)慢性湿疹が消失し、(4)白髪が減少し、(5)記憶力が向上し、(6)血中脂質がわずかに減少し、(7)グリコシル化ヘモグロビンがわずかな増加から正常に戻り、(8)口腔粘膜潰瘍がない、(9)関節損傷が減少し(10)エネルギッシュと10大効果が見られる。
【0107】
効果例7
本発明による方法で製造されたユニバーサル免疫細胞を、その安全性および有効性を検証するためにサブジェクトに注射された。
【0108】
サブジェクト情報:薛様、男性、56歳、肝臓がんあるサブジェクト。上記の方法で製造した同種異系のユニバーサル免疫細胞がほぼ4年間注入された。最初には毎月に静脈内に一つのコースの注入が行われ、各コースが5回の静脈内注入に分けられ、2年後に一ヶ月おきに静脈内に一つのコースの注入に変更され、各コースが5回の静脈内注入に分けられ、毎回注入の細胞数が5×10~1×1010である。
【0109】
効果としては、プロセス全体は良好な耐容性を示し、時折の一過性の発熱を除いて、有害反応が観察されなかった。血液検査、肝機能、腎機能を繰り返し検査し、異常がない。画像検査を含む様々な検査により、腫瘍が完全に緩解していることが示された。
【0110】
効果例8
本発明による方法で製造されたユニバーサル免疫細胞を、その安全性および有効性を検証するためにサブジェクトに注射された。
【0111】
サブジェクト情報:王様、女性、75歳、結腸癌あるサブジェクト。上記の方法で製造した同種異系のユニバーサル免疫細胞がほぼ10年間を経て毎月に注入、毎回注入の細胞数が5×10~1×1010である。
【0112】
効果としては、プロセス全体は良好な耐容性を示し、有害反応が観察されなかった。皮膚、肝臓、腸管等の臓器やシステムに拒絶反応に関連する発疹、黄疸、下痢などの臨床症状や徴候がない。血液検査、肝機能、腎機能を繰り返し検査し、異常がない。臨床的には、特別な症状や徴候がなく、全ての血液検査や腫瘍マーカーが正常を示す。大腸内視鏡検査の再検査でも、異常は見つからなかった。通常の風邪が大幅に軽減したとサブジェクトが主訴した。
【0113】
効果例9
本発明による方法で製造されたユニバーサル免疫細胞を、その安全性および有効性を検証するためにサブジェクトに注射された。
【0114】
サブジェクト情報:李様、男性、70歳、悪性黒色腫あるサブジェクト。上記の方法で製造された同種異系ユニバーサル免疫細胞は、静脈内注入、腹腔内注入、皮下(腫瘍内)注入など様々な経路と通して4年間注入された。最初は2週間ごとの治療コースでしたが、その後、毎月、3ヶ月、または6ヶ月ごとの治療コースに移動した。治療の各コースは4回の注入に分けられ、一日おきに一回の注入が行われ、毎回注入の細胞数が5×10~1×1010である。
【0115】
効果としては、:皮下注射中の痛みを除いて、プロセス全体は良好な耐容性を示し、有害反応が観察されなかった。血液検査、肝機能、腎機能を繰り返し検査し、異常がない。皮膚、肝臓、腸管等の臓器やシステムに拒絶反応に関連する発疹、黄疸、下痢などの臨床症状や徴候がない。サブジェクトは進行した悪性黒色腫で、手術後に再発、転移し、化学療法は無効でした。上記の方法で製造された同種異系ユニバーサル免疫細胞は単剤療法であり、腫瘍は十分に制御されている。
【0116】
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、これらは一例に過ぎず、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者にとって、この実施形態に対する同等の修正および置換も、すべて本発明の範囲内である。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされた均等な変更および修正は、すべて本発明の範囲内に属すべきである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
同種異系免疫細胞と、細胞マイトジェンと、サイトカインと、免疫アジュバントとを培養容器内において、液体細胞培養培地中で共培養して、ユニバーサル免疫細胞培養物を得るステップS1と、
ステップS1で得られた培養物から細胞集団を分離するステップS2と、を含み、
ここで、上記のサイトカインは、リンパ球と単球と他の細胞によって産生されたリンフォカイン、モノカイン、炎症を活性化するサイトカインと造血を刺激するサイトカインのうちのいずれかの一つまたは複数に由来することを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[2]
[1]に記載の上記の方法において、上記のサイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、走化性サイトカイン、及びトランスフォーミング増殖因子のうちのいずれかの一つまたは複数に由来することを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[3]
[1]に記載の上記n方法において、上記のサイトカインは、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-15及びインターフェロンのうちの一つまたは複数に由来することを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[4]
[1]に記載の上記の方法において、上記のサイトカインの濃度は、20万~500万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[5]
[1]に記載の上記の方法において、上記のサイトカインの濃度は、50万~200万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[6]
[1]に記載の上記の方法において、上記のマイトジェンは、コンカナバリン、植物性赤血球凝集素、アメリカヤマゴボウ、リポ多糖、及びデキストランのうちのいずれかの一つまたは複数から選択されることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[7]
[6]に記載の上記の方法において、上記のマイトジェンの濃度は、10万~1000万単位/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[8]
[6]に記載の上記の方法において、上記のマイトジェンの濃度は、0.1mg~10mg/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[9]
[1]に記載の上記の方法において、上記の免疫アジュバントは、生物学的アジュバント、無機アジュバント、有機アジュバント、合成アジュバント、油及びフロイントアジュバントのうちのいずれかの1つまたは複数から選択され、濃度が0.01mL~1mL/Lであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[10]
[1]に記載の上記の方法において、上記の免疫細胞は他家細胞または末梢血または臍帯血に由来する自家細胞であることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[11]
[1]に記載の上記の方法において、上記の免疫細胞の濃度は、1×103~1×1011個/mLであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[12]
[1]に記載の上記の方法において、上記の細胞集団は、細胞傷害性Tリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球、サイトカイン活性化キラー細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、腫瘍随伴マクロファージ、活性化キラー単球、及び樹状細胞のうちのいずれかの一つまたは複数を含むであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[13]
[1]に記載の上記の方法において、上記のステップS1における共培養時間は3~180日であるであることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[14]
[1]に記載の上記の方法において、上記の培養容器は、三次元大容量高密度細胞培養容器であることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[15]
[1]に記載の上記の方法において、上記の方法は、ステップS1で得られた培養物またはステップS2で得られた細胞集団を原料として、液体細胞培養培地中でクローニングを行い、細胞株を得るクローニングステップを含み、上記のクローニングは、断続的循環刺激法または連続刺激法を採用するあることを特徴とするユニバーサル免疫細胞を製造する方法。
[16]
細胞傷害性Tリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球、サイトカイン活性化キラー細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、腫瘍随伴マクロファージ、活性化キラー単球、及び樹状細胞のうちの一つまたは複数を含むことを特徴とする[1]~[15]のいずれかに記載の上記の方法で製造されたユニバーサル免疫細胞。
[17]
免疫細胞製剤の親細胞はユニバーサル免疫細胞であることを特徴とする[16]に記載の上記のユニバーサル免疫細胞が上記の免疫細胞製剤を製造する中の応用。
[18]
[17]に記載の上記の応用において、上記の免疫細胞製剤はCAR-T細胞またはTCR-T細胞を含む。
[19]
[16]に記載のユニバーサル免疫細胞を親細胞として製造して得られた免疫細胞製剤。
[20]
容器と、上記の容器内に配置された[11]に記載の上記の免疫細胞製剤とを含むことを特徴とする養子細胞免疫療法のための生物学的薬剤。
[21]
生理食塩水、アルブミン及び他の安定剤を含むことを特徴とする[20]に記載の上記の生物学的製剤。
[22]
[19]に記載の上記の免疫細胞製剤がリンパ球の機能及び量の異常に関連する疾患を治療および予防する医薬品を製造中における応用。
[23]
上記の医薬品の投与経路は、静脈、胸部、腹腔内、脊髄内、皮内、皮下または腫瘍内注射であることを特徴とする[22]に記載の応用。
図1
図2
図3