(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】リチウム2次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20250114BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250114BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20250114BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0568
(21)【出願番号】P 2023525333
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021442
(87)【国際公開番号】W WO2022254717
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-044165(JP,A)
【文献】特開2020-181806(JP,A)
【文献】特開2015-043309(JP,A)
【文献】特開2000-348762(JP,A)
【文献】特開2006-092815(JP,A)
【文献】特表2019-537226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極活物質を有しない負極と、電解液と、を備え、
前記電解液が、
リチウム塩と、
少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有する環状フッ素化合物と、を含む
リチウム2次電池。
【請求項2】
前記環状フッ素化合物が極性を有する、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記環状フッ素化合物において、フッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))が0.20以上1.0以下である、請求項1又は2に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数が4以上15以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
前記電解液が、LiN(SO
2F)
2をリチウム塩として含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項6】
前記環状フッ素化合物の含有量が、前記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上90体積%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
前記電解液が、フッ素原子を有しないエーテル化合物を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記エーテル化合物が、エーテル結合を2つ以上5つ以下で含む化合物である、請求項7に記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記エーテル化合物の含有量が、前記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上70体積%以下である、請求項7又は8に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
前記電解液が、下記式(A)又は式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する鎖状フッ素化合物を更に含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【化1】
【化2】
(上記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。)
【請求項11】
前記鎖状フッ素化合物の含有量が、前記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上85体積%以下である、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項12】
前記環状炭化水素骨格が、飽和の環状炭化水素骨格である、請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項13】
前記環状フッ素化合物において、フッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))が0.7以上1.0以下であり、
前記環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数が5又は6である、請求項1~12のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行うリチウム2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られている。典型的なリチウム2次電池として、正極及び負極にリチウム元素を保持することのできる活物質を有し、当該正極活物質及び負極活物質の間でのリチウムイオンの授受によって充放電をおこなうリチウムイオン2次電池(LIB)が知られている。
【0004】
また、高エネルギー密度化の実現を目的として、負極活物質として、炭素材料のようなリチウムイオンを挿入することができる材料に代えて、リチウム金属を用いるリチウム2次電池(リチウム金属電池;LMB)が開発されている。例えば、特許文献1には、負極としてリチウム金属をベースとする電極を用いる充電型電池が開示されている。
【0005】
また、更なる高エネルギー密度化や生産性の向上等を目的として、炭素材料やリチウム金属といった負極活物質を有しない負極を用いるリチウム2次電池が開発されている。例えば、特許文献2には、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム2次電池において、前記負極は、負極集電体上に金属粒子が形成され、充電によって前記正極から移動され、負極内の負極集電体上にリチウム金属を形成する、リチウム2次電池が開示されている。特許文献2は、そのようなリチウム2次電池は、リチウム金属の反応性による問題と、組み立ての過程で発生する問題点を解決し、性能及び寿命が向上されたリチウム2次電池を提供することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2006-500755号公報
【文献】特表2019-505971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献に記載のものを始めとする従来の電池を詳細に検討したところ、エネルギー密度及びサイクル特性の少なくともいずれかが十分でないことがわかった。
【0008】
例えば、負極活物質を有する負極を備えるリチウム2次電池は、その負極活物質の占める体積や質量に起因して、エネルギー密度を十分高くすることが困難である。また、負極活物質を有しない負極を備えるアノードフリー型リチウム2次電池についても、従来型のものは、充放電を繰り返すことにより負極表面上にデンドライト状のリチウム金属が形成されやすく、短絡及び容量低下が生じやすいため、サイクル特性が十分でない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、負極活物質を有しない負極と、電解液と、を備え、上記電解液が、リチウム塩と、少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有する環状フッ素化合物と、を含む。
【0011】
そのようなリチウム2次電池は、負極活物質を有しない負極を備えることにより、リチウム金属が負極表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高い。
【0012】
また、本発明者らは、少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有する環状フッ素化合物を含有するリチウム2次電池がサイクル特性に優れることを見出した。この要因として、そのような環状フッ素化合物を含む態様において、負極表面に固体電解質界面層(以下、「SEI層」ともいう。)が形成されやすいことが考えられるが、要因はこれに限られない。なお、SEI層はイオン伝導性を有するため、SEI層が形成された負極表面におけるリチウム析出反応の反応性は、負極表面の面方向について均一なものとなる傾向にある。
更に、本発明者らは、この態様において、電解液における溶媒間の相溶性が向上し、電池を繰り返し充放電したときでも電解液が安定に組成を維持することを見出した。これは、環状のフッ素化合物は、鎖状のフッ素化合物に比べ、極性が大きい傾向にあり、電解液中に均一に分布する傾向にあるからであると考えられる。環状フッ素化合物が均一に分布している電解液を用いることで、例えば上記したような要因により電池のサイクル特性が一層向上すると考えられる。
したがって、上記リチウム2次電池は、繰り返し充放電したときでも、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが抑制され、サイクル特性に優れたものとなる。なお、フッ素化合物を含むことによりSEI層が形成されやすくなる要因、及び環状であるフッ素化合物を含むことにより相溶性が向上する要因は特に限定されない。
【0013】
更に、本発明者らは、リチウム2次電池の電解液中に上記環状フッ素化合物を含むことにより、繰り返し充放電したときの電池の体積膨張率が小さくなることも見出した。環状フッ素化合物は、鎖状のフッ素化合物に比べ極性が高い傾向にあるため、沸点が高く、蒸気圧が低いと推察される。したがって、本発明のリチウム2次電池は、電池の体積膨張率が抑制され、安全性にも優れたものとなる傾向にある。
【0014】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状フッ素化合物が極性を有する。そのような態様によれば、電解液における溶媒間の相溶性が一層向上し、かつ、電池の体積膨張率が一層抑制されやすいため、リチウム2次電池は、サイクル特性及び安全性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0015】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状フッ素化合物において、フッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))が0.20以上1.0以下である。そのような態様によれば、SEI層の性質が好適なものとなる傾向にあるため、リチウム2次電池はサイクル特性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0016】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数が4以上15以下である。そのような態様によれば、電解液における相溶性が一層向上し、かつ、電池の体積膨張率が一層抑制されやすいため、リチウム2次電池は、サイクル特性及び安全性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0017】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記電解液が、LiN(SO2F)2をリチウム塩として含む。そのような態様によれば、リチウム2次電池のサイクル特性が一層優れたものとなる傾向にある。
【0018】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状フッ素化合物の含有量が、上記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上90体積%以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、サイクル特性及び安全性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0019】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記電解液が、フッ素原子を有しないエーテル化合物を更に含む。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、電解液におけるリチウム塩の溶解度が向上するため、電解液におけるイオン伝導性が向上し、サイクル特性に優れたものとなる傾向にある。
【0020】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記エーテル化合物が、エーテル結合を2つ以上5つ以下で含む化合物である。そのような態様によれば、電解液における電解質の溶解度が向上し、リチウム2次電池のサイクル特性が一層優れたものとなる傾向にある。
【0021】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記エーテル化合物の含有量が、上記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上70体積%以下である。そのような態様によれば、電解液における電解質の溶解度が向上し、リチウム2次電池のサイクル特性が一層優れたものとなる傾向にある。
【0022】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記電解液が、下記式(A)又は式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する鎖状フッ素化合物を更に含む。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、サイクル特性に一層優れたものとなる傾向にある。
【化1】
【化2】
上記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。
【0023】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記鎖状フッ素化合物の含有量が、上記電解液の溶媒成分の総量に対して、10体積%以上85体積%以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、サイクル特性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0024】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状炭化水素骨格が、飽和の環状炭化水素骨格である。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、サイクル特性に一層優れたものとなる傾向にある。
【0025】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池において、好ましくは、上記環状フッ素化合物において、フッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))が0.7以上1.0以下であり、上記環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数が5又は6である。そのような態様によれば、リチウム2次電池は、サイクル特性及び安全性に一層優れたものとなる傾向にある。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るリチウム2次電池の使用の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
[本実施形態]
(リチウム2次電池)
図1は、本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態のリチウム2次電池100は、正極120と、負極活物質を有しない負極140と、正極120と負極140との間に配置されているセパレータ130と、
図1には図示されていない電解液とを備える。正極120は、セパレータ130に対向する面とは反対側の面に正極集電体110を有する。
以下、リチウム2次電池100の各構成について説明する。
【0030】
(負極)
負極140は、負極活物質を有しないものである。本明細書において、「負極活物質」とは、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。具体的には、本実施形態の負極活物質としては、リチウム金属、及びリチウム元素(リチウムイオン又はリチウム金属)のホスト物質が挙げられる。リチウム元素のホスト物質とは、リチウムイオン又はリチウム金属を負極に保持するために設けられる物質を意味する。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられ、典型的には、インターカレーションである。
【0031】
本実施形態のリチウム2次電池は、電池の初期充電前に負極が負極活物質を有しないため、負極上にリチウム金属が析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われる。したがって、本実施形態のリチウム2次電池は、負極活物質を有するリチウム2次電池と比較して、負極活物質が占める体積及び負極活物質の質量が削減され、電池全体の体積及び質量が小さくなるため、エネルギー密度が原理的に高い。
【0032】
本実施形態のリチウム2次電池100は、電池の初期充電前に負極140が負極活物質を有せず、電池の充電により負極上にリチウム金属が析出し、電池の放電によりその析出したリチウム金属が電解溶出する。したがって、本実施形態のリチウム2次電池において、負極は負極集電体として働く。
【0033】
本実施形態のリチウム2次電池100をリチウムイオン電池(LIB)及びリチウム金属電池(LMB)と比較すると、以下の点で異なるものである。
リチウムイオン電池(LIB)において、負極はリチウム元素(リチウムイオン又はリチウム金属)のホスト物質を有し、電池の充電によりかかる物質にリチウム元素が充填され、ホスト物質がリチウム元素を放出することにより電池の放電が行われる。LIBは、負極がリチウム元素のホスト物質を有する点で、本実施形態のリチウム2次電池100とは異なる。
リチウム金属電池(LMB)は、その表面にリチウム金属を有する電極か、あるいはリチウム金属単体を負極として用いて製造される。すなわち、LMBは、電池を組み立てた直後、すなわち電池の初期充電前に、負極が負極活物質であるリチウム金属を有する点で、本実施形態のリチウム2次電池100とは異なる。LMBは、その製造に、可燃性及び反応性が高いリチウム金属を含む電極を用いるが、本実施形態のリチウム2次電池100は、リチウム金属を有しない負極を用いるため、より安全性及び生産性に優れるものである。
【0034】
本明細書において、負極が「負極活物質を有しない」とは、負極140が負極活物質を有しないか、実質的に有しないことを意味する。負極140が負極活物質を実質的に有しないとは、負極140における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極140全体に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。負極140が負極活物質を有せず、又は、負極140における負極活物質の含有量が上記の範囲内にあることにより、リチウム2次電池100のエネルギー密度が高いものとなる。
【0035】
本明細書において、電池が「初期充電前である」とは、電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態を意味する。また、電池が「放電終了時である」とは、電池の電圧が1.0V以上3.8V以下、好ましくは1.0V以上3.0V以下である状態を意味する。
【0036】
本明細書において、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム2次電池」とは、電池の初期充電前に、負極140が負極活物質を有しないことを意味する。したがって、「負極活物質を有しない負極」との句は、「電池の初期充電前に負極活物質を有しない負極」、「電池の充電状態に依らずリチウム金属以外の負極活物質を有せず、かつ、初期充電前においてリチウム金属を有しない負極」、又は「初期充電前においてリチウム金属を有しない負極集電体」等と換言してもよい。また、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム2次電池」は、アノードフリーリチウム電池、ゼロアノードリチウム電池、又はアノードレスリチウム電池と換言してもよい。
【0037】
本実施形態の負極140は、電池の充電状態によらず、リチウム金属以外の負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であってもよく、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
また、本実施形態の負極140は、初期充電前において、リチウム金属の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であってもよく、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
【0038】
本実施形態のリチウム2次電池100は、電池の電圧が1.0V以上3.5V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極140全体に対して10質量%以下であってもよく(好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよい。);電池の電圧が1.0V以上3.0V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極140全体に対して10質量%以下であってもよく(好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよい。);又は、電池の電圧が1.0V以上2.5V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極140全体に対して10質量%以下であってもよい(好ましくは5.0質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよい。)。
【0039】
また、本実施形態のリチウム2次電池100において、電池の電圧が4.2Vの状態において負極上に析出しているリチウム金属の質量M4.2に対する、電池の電圧が3.0Vの状態において負極上に析出しているリチウム金属の質量M3.0の比M3.0/M4.2は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは38%以下であり、更に好ましくは35%以下である。比M3.0/M4.2は、1.0%以上であってもよく、2.0%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であってもよい。
【0040】
本実施形態の負極活物質の例としては、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記リチウムと合金化する金属としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウムが挙げられる。
【0041】
本実施形態の負極140としては、負極活物質を有せず、集電体として用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられ、好ましくは、Cu、Ni、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。このような負極を用いると、電池のエネルギー密度、及び生産性が一層優れたものとなる傾向にある。なお、負極にSUSを用いる場合、SUSの種類としては従来公知の種々のものを用いることができる。上記のような負極材料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。なお、本明細書中、「Liと反応しない金属」とは、リチウム2次電池の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0042】
負極140の容量は、正極120の容量に対して十分小さく、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下であってもよい。なお、正極120、及び負極140の各容量は、従来公知の方法により測定することができる。
【0043】
負極140の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における負極140の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0044】
本実施形態において、厚さは公知の測定方法により測定することができる。例えば、リチウム2次電池を厚さ方向に切断し、露出した切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することで測定することが可能である。本実施形態における「平均厚さ」及び「厚さ」は、3回以上、好ましくは5回以上の測定値の相加平均を算出することにより求められる。
【0045】
(電解液)
電解液は、電解質及び溶媒を含有し、イオン伝導性を有する溶液であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。電解液は、セパレータ130に浸潤させてもよく、正極120とセパレータ130と負極140との積層体と共に密閉容器に封入してもよい。
【0046】
本実施形態の電解液は、リチウム塩と、少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有する環状フッ素化合物(以下、単に「環状フッ素化合物」ともいう。)と、を含む。
【0047】
一般的に、電解液を有するアノードフリー型のリチウム2次電池において、電解液中の溶媒等が分解されることにより、負極等の表面にSEI層が形成される。SEI層は、リチウム2次電池において、電解液中の成分が更に分解されること、並びにそれに起因する非可逆的なリチウムイオンの還元、及び気体の発生等を抑制する。また、SEI層はイオン伝導性を有するため、SEI層が形成された負極表面において、リチウム析出反応の反応性が負極表面の面方向について均一なものとなる。したがって、SEI層の形成を促進することは、アノードフリー型のリチウム2次電池の性能を向上させるために、非常に重要である。本発明者らは、上記の環状フッ素化合物を溶媒として含有するリチウム2次電池において、負極表面に良質のSEI層が形成されやすく、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが抑制され、その結果、サイクル特性が向上することを見出した。その要因は、必ずしも明らかではないが、以下の要因が考えられる。
【0048】
リチウム2次電池100の充電時、特に初期充電時において、リチウムイオンだけでなく、溶媒である上記環状フッ素化合物も負極上で還元されると考えられる。そして、環状フッ素化合物は構造の一部がフッ素に置換されていることに起因して、環状炭化水素骨格において特に結合が弱くなった部分が脱離する等の反応が生じやすくなると推察される。その結果、リチウム2次電池100の充電時において、環状フッ素化合物の一部、又は全部が負極表面に吸着し、当該吸着した部分を起点としてSEI層が生じるため、リチウム2次電池100はSEI層が形成されやすいと推察される。ただし、その要因は上記に限られない。
【0049】
更に、環状フッ素化合物は、少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有することにより、電解液において他の溶媒との相溶性が高いことが見出された。これは、環状のフッ素化合物は、鎖状のフッ素化合物に比べて分子構造のコンフォメーションが限定されているために大きな極性を示すことに起因すると考えられる。ただし、その要因はこれに限定されない。
したがって、上記の環状フッ素化合物は電解液において均一に分布し、一層均一なSEI層を形成すると考えられる。
【0050】
また、上述のとおり、環状フッ素化合物は、鎖状のフッ素化合物と比較して大きな極性を有する傾向にあるため、分子間相互作用が強く、沸点が高い傾向にある。そのような環状フッ素化合物を含む電解液は蒸気圧が低くなる傾向にあるため、本実施形態のリチウム2次電池は、繰り返し充放電したときでも体積膨張率が低く、安全性に優れたものとなる傾向にある。
【0051】
本明細書において、「環状炭化水素骨格」とは、複数の炭素原子が環状に結合することにより形成される、炭化水素鎖が環状化した構造を意味し、環式炭化水素骨格と換言することもできる。また、環状炭化水素骨格は、環状に結合した炭素原子に直接結合している水素原子が任意の置換基により置換されていてもよい。すなわち、環状炭化水素骨格は、複数の炭素原子からなる環状構造と、該環状構造に結合する水素原子及び/又は置換基とからなる。環状炭化水素骨格は、全ての水素原子が置換基に置換されていてもよい。
本明細書において、「フッ素化合物」とは、少なくとも1つのフッ素原子を有する化合物を意味する。
【0052】
本実施形態の電解液は、典型的には環状フッ素化合物を溶媒として含む。すなわち、リチウム2次電池の使用環境において、環状フッ素化合物は電解質を溶解させて溶液相にある電解液を作製することができ、又は当該化合物単体若しくは他の化合物との混合物が液体であることが好ましい。
【0053】
本実施形態の電解液に含まれる環状フッ素化合物は、極性を有することが好ましい。環状フッ素化合物が極性を有することにより、電解液における溶媒間の相溶性が向上し、SEI層が均一に形成する結果、負極表面においてリチウム金属がデンドライト状に成長することを抑制でき、リチウム2次電池がサイクル特性に優れる傾向にある。
本明細書において、化合物が「極性を有する」とは、その化合物の分子構造内において、正電荷の重心と負電荷の重心が一致しないことを意味する。すなわち、分子全体において双極子モーメントが0でない場合は、極性を有するといえる。
【0054】
本実施形態の電解液に含まれる環状フッ素化合物は、少なくとも1つのフッ素原子に置換された環状炭化水素骨格を有する。環状フッ素化合物において、フッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))は、特に限定されないが、例えば、0.10以上1.0以下である。電池のサイクル特性向上及び/又は安定性向上の観点から、上記比(F/(F+H))は、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上、0.40以上、0.45以上、又は0.50以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記比(F/(F+H))は、1.0未満、0.95以下、0.90以下、0.85以下、又は0.80以下であることが好ましい。上記比(F/(F+H))は、例えば0.7以上1.0以下であることが特に好ましい。
【0055】
環状フッ素化合物が有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に限定されず、例えば、1以上45以下である。電池のサイクル特性向上及び/又は安定性向上の観点から、環状フッ素化合物が有するフッ素原子の数は、3以上、5以上、6以上、又は7以上であることが好ましい。また、同様の観点から、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であることが好ましい。
【0056】
本実施形態の環状フッ素化合物において、環状炭化水素骨格を構成する(すなわち環を構成する)炭素原子の数は、特に限定されないが、例えば、3以上20以下である。サイクル特性及び安全性を一層向上させる観点から、環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数は、4以上、5以上、又は6以上であることが好ましい。また、同様の観点から、炭素原子の数は、18以下、15以下、12以下、10以下、又は8以下であることが好ましい。上記炭素原子の数は、特に好ましくは5又は6である。なお、環状炭化水素骨格がビシクロ環等の2以上の環状構造が融合した骨格を有するとき、それぞれの環を構成する炭素原子の数は、好ましくは、3以上10以下である。
【0057】
本実施形態の環状フッ素化合物を構成する炭素原子の数は、特に限定されないが、例えば、4以上30以下である。また、環状フッ素化合物を構成する炭素原子の数は、5以上25以下であってもよく、6以上20以下であってもよく、7以上15以下であってもよく、8以上12以下であってもよい。
【0058】
本実施形態の環状フッ素化合物において、環状炭化水素骨格は、飽和の環状炭化水素骨格であってもよく、不飽和の環状炭化水素骨格であってもよい。電池のサイクル特性を向上させる観点から、環状フッ素化合物は、飽和の環状炭化水素骨格を有することが好ましい。なお、「飽和の環状炭化水素骨格」とは、環状炭化水素骨格を構成する炭素原子同士の結合がすべて単結合であることを意味する。また、「不飽和の環状炭化水素骨格」とは、環状炭化水素骨格を構成する炭素原子同士の結合において、少なくとも1つの単結合でない結合(二重結合又は三重結合)を有することを意味する。同様の観点から、本実施形態の環状フッ素化合物は、炭素-炭素二重結合を有していないことが好ましく、二重結合を有していないことがより好ましい。
【0059】
本実施形態の環状フッ素化合物において、環状炭化水素骨格はフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、更に置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、及びアリール基;ニトリル基;ハロゲン基;シリル基;ヒドロキシ基;更に置換基を有していてもよいアルコキシ基;並びに、更に置換基を有していてもよいアリールオキシ基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、及びピリジル基が挙げられる。置換基が炭化水素鎖を有する場合、かかる炭化水素鎖は直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基が更に有し得る置換基としては、ニトリル基、ハロゲン基、シリル基、及びヒドロキシ基等が挙げられる。
環状フッ素化合物の環状炭化水素骨格に結合するフッ素原子以外の置換基の数は、特に限定されず、例えば1以上10以下であってもよい。フッ素原子以外の置換基の数は、上記の範囲内において、8以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下であってもよい。
【0060】
環状炭化水素骨格に結合する置換基が炭素原子を有する場合、置換基の炭素数は1以上10以下であると好ましく、1以上5以下、又は1以上3以下であるとより好ましい。環状炭化水素骨格に結合する置換基は、置換基を有していてもよい炭素数1以上5以下(好ましくは1以上3以下)のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択されることが好ましい。環状炭化水素骨格に結合する置換基は、ハロゲン基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1以上5以下(好ましくは1以上3以下)のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択されることがより好ましい。環状炭化水素骨格に結合する置換基は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1以上3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
【0061】
環状炭化水素骨格に結合する置換基は、フッ素原子により置換されていることが好ましい。フッ素原子により置換されている置換基としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、フルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、フルオロプロポキシ基、及びフルオロブトキシ基等が挙げられる。このようなフッ素化合物の置換基の中でも、リチウム2次電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、フルオロエトキシ基、及びフルオロプロポキシ基が好ましく、トリフルオロメチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロプロポキシ基、及び2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基がより好ましく、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0062】
本実施形態の環状フッ素化合物の好適な態様としては、例えばフッ素原子及び水素原子の合計数(F+H)に対するフッ素原子の数(F)の比(F/(F+H))が0.7以上1.0以下であり、環状炭化水素骨格を構成する炭素原子の数が5又は6である環状フッ素化合物が挙げられる。そのような態様によれば、電池のサイクル特性及び/又は安全性が一層向上する傾向にある。
【0063】
本実施形態における環状フッ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、ヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロシクロペンタン、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレン、オクタフルオロシクロブタン、オクタフルオロナフタレン、及びパーフルオロアントラセン等が挙げられる。本実施形態における環状フッ素化合物の上記効果を有効かつ確実に奏する観点から、環状フッ素化合物としては、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、ヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロシクロペンタン、及びオクタデカフルオロデカヒドロナフタレンが好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン及びヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)がより好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンが更に好ましい。
本実施形態において、電解液は、環状フッ素化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0064】
本実施形態の電解液における環状フッ素化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、電解液の溶媒成分の総量に対して、1.0体積%以上95体積%以下である。リチウム2次電池における環状フッ素化合物の上記効果を有効かつ確実に奏する観点から、環状フッ素化合物の含有量は、電解液の溶媒成分の総量に対して、5.0体積%以上、10体積%以上、又は15体積%以上であることが好ましく、20体積%以上、25体積%以上30体積%以上、又は50体積%以上であってもよい。また、同様の観点から、環状フッ素化合物の含有量は、電解液の溶媒成分の総量に対して、90体積%以下、又は85体積%以下であることが好ましく、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、又は55体積%以下であってもよい。
【0065】
本実施形態の電解液は、上記の環状フッ素化合物以外のフッ素化合物を溶媒として含んでいてもよい。そのようなフッ素化合物としては、例えば、鎖状のフッ素化合物がある。本実施形態の電解液は、リチウム2次電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、鎖状のフッ素化合物を含むことが好ましい。リチウム2次電池の安定性の観点からは、本実施形態の電解液が、フッ素原子を有する溶媒として、上記の環状フッ素化合物のみを含むことが好ましい。本実施形態の電解液は、フッ素原子を有する溶媒として上記の環状フッ素化合物及び後述する第一鎖状フッ素化合物のみを含んでいてもよい。
【0066】
本実施形態の電解液は、そのような鎖状のフッ素化合物のうち、下記式(A)又は式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有する鎖状フッ素化合物(以下、「第一鎖状フッ素化合物」ともいう。)を更に含むことが好ましい。電解液が、上記第一鎖状フッ素化合物を含むことにより、リチウム2次電池の充電時、特に初期充電の際にSEI層が形成されやすくなり、リチウム2次電池がサイクル特性及び/又はレート特性に優れる傾向にある。
【化3】
【化4】
ただし、上記式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。
【0067】
本実施形態における第一鎖状フッ素化合物には、上記式(A)及び上記式(B)で表される構造の両方を含む化合物、上記式(A)で表される構造を含み、かつ、上記式(B)で表される構造を含まない化合物、並びに、上記式(A)で表される構造を含まず、かつ、上記式(B)で表される構造を含む化合物が含まれる。
また、本実施形態の電解液は、上述した第一鎖状フッ素化合物以外の、鎖状のフッ素化合物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態の電解液は、上記式(A)及び上記式(B)で表される構造を両方含まない鎖状のフッ素化合物(以下、「第二鎖状フッ素化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0068】
第一鎖状フッ素化合物の炭素数は、特に限定されないが、例えば、3以上15以下である。電解液における電解質の溶解度を一層向上させる観点から、第一鎖状フッ素化合物の炭素数は、4以上、5以上、又は6以上であると好ましい。また、同様の観点から、第一鎖状フッ素化合物の炭素数は、14以下、12以下、10以下、又は8以下であると好ましい。
【0069】
第二鎖状フッ素化合物の炭素数は、特に限定されないが、例えば、3以上20以下である。電解液における電解質の溶解度を一層向上させる観点から、第二鎖状フッ素化合物の炭素数は、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、又は10以上であると好ましい。また、同様の観点から、第二鎖状フッ素化合物の炭素数は、18以下、15以下、又は12以下であると好ましい。
【0070】
本実施形態において、第一鎖状フッ素化合物としては、上記式(A)又は式(B)で表される1価の基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エーテル結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及びカーボネート結合を有する化合物等が挙げられる。電解液における電解質の溶解度を一層向上させる観点、及び電池のサイクル特性が一層向上する観点から、第一鎖状フッ素化合物は、エーテル結合を有するエーテル化合物であると好ましい。
【0071】
エーテル化合物である第一鎖状フッ素化合物は、特に限定されない。上記式(A)及び上記式(B)で表される構造の両方を含む化合物としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、及び1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシメタン等が挙げられる。
また、上記式(A)で表される構造を含み、かつ、上記式(B)で表される構造を含まない化合物としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、エチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、及びプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル等が挙げられる。
更に、上記式(A)で表される構造を含まず、かつ、上記式(B)で表される構造を含む化合物としては、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、トリフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、及びジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
リチウム2次電池のサイクル特性及び/又はレート特性を向上させる観点から、第一鎖状フッ素化合物は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルから選択されることが好ましい。
【0072】
第二鎖状フッ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン、メチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、及び1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
電解液が環状フッ素化合物以外のフッ素化合物を含む場合、環状フッ素化合物の含有量は、特に限定されないが、フッ素化合物の総量に対して、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、又は25体積%以上であってもよく、90体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、又は50体積%以下であってもよい。
電解液が第一鎖状フッ素化合物を含む場合、第一鎖状フッ素化合物の含有量は、特に限定されないが、フッ素化合物の総量に対して、50体積%以上、60体積以上、又は70体積%以上であってもよく、95体積%以下、90体積%以下、又は85体積%以下であってもよい。
電解液が第二鎖状フッ素化合物を含む場合、第二鎖状フッ素化合物の含有量は、特に限定されないが、フッ素化合物の総量に対して、5体積%以上、又は10体積%以上であってもよく、50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下、20体積%以下、又は15体積%以下であってもよい。
なお、電解液が2種以上の環状フッ素化合物を含む場合、それらの総量を環状フッ素化合物の含有量とする。また、電解液が2種以上の第一鎖状フッ素化合物又は第二鎖状フッ素化合物を含む場合も同様とする。
【0074】
電解液における第一鎖状フッ素化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、電解液の溶媒成分の総量に対して、0体積%以上90体積%以下である。第一鎖状フッ素化合物の含有量は、5体積%以上、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、又は40体積%以上であると好ましい。また、第一鎖状フッ素化合物の含有量は、85体積%以下、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、又は50体積%以下であると好ましい。
【0075】
本実施形態において、電解液は、フッ素原子を有しないエーテル化合物(以下、「エーテル副溶媒」という。)を溶媒として含むことが好ましい。このような態様によれば、電解液における電解質の溶解度が一層向上するため、電解液のイオン伝導性が向上し、その結果、リチウム2次電池100がサイクル特性に優れたものとなる。エーテル副溶媒としては、フッ素原子を有せず、かつエーテル結合を有する化合物であれば特に限定されない。リチウム2次電池の使用環境において、エーテル副溶媒は電解質を溶解させて溶液相にある電解液を作製することができ、又は当該化合物単体若しくは他の化合物との混合物が液体であることが好ましい。
【0076】
エーテル副溶媒の炭素数は、特に限定されず、例えば、2以上20以下である。電池のサイクル特性を一層向上させる観点からは、エーテル副溶媒の炭素数は3以上、又は4以上であると好ましく、5以上、又は6以上であってもよい。また、同様の観点から、エーテル副溶媒の炭素数は、15以下、12以下、10以下、9以下、又は7以下であると好ましい。
【0077】
エーテル副溶媒におけるエーテル結合の数は、特に限定されないが、例えば、1以上10以下である。電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、エーテル副溶媒としては、エーテル結合を2つ以上有することが好ましく、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ有していてもよい。エーテル結合の数は好ましくは、2つ以上5つ以下である。
【0078】
エーテル副溶媒としては、フッ素原子を有しないエーテル化合物であれば特に限定されず、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、1,4-ジメトキシブタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、2,2-ジメトキシプロパン、1,3-ジメトキシブタン、1,2-ジメトキシブタン、2,2-ジメトキシブタン、2,3-ジメトキシブタン、1,2-ジエトキシプロパン、1,2-ジエトキシブタン、2,3-ジエトキシブタン、及びジエトキシエタン等が挙げられる。電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、エーテル副溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、1、2-ジメトキシプロパン、及び2,2-ジメトキシプロパンが好ましい。
【0079】
本実施形態の電解液におけるエーテル副溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、電解液の溶媒成分の総量に対して、0体積%以上80体積%以下である。リチウム2次電池における環状フッ素化合物の上記効果を有効かつ確実に奏する観点から、環状フッ素化合物の含有量は、電解液の溶媒成分の総量に対して、5.0体積%以上、10体積%以上、15体積%以上、又は20体積%以上であることが好ましい。また、同様の観点から、環状フッ素化合物の含有量は、電解液の溶媒成分の総量に対して、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、又は55体積%以下であることが好ましい。
【0080】
電解液は、更に、上記のエーテル副溶媒以外のフッ素原子を有しない化合物(以下、「非エーテル副溶媒」ともいう。)を溶媒として含んでいてもよい。非エーテル副溶媒としては、特に限定されず、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、リン酸トリメチル、及びリン酸トリエチル等が挙げられる。非エーテル副溶媒は、カーボネート基、カルボニル基、ケトン基、及びエステル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有していてもよい。
【0081】
電解液は、少なくとも1種の環状フッ素化合物を含有していればよい。電解液における電解質の溶解度を一層向上させる観点、及び電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、電解液は、2種以上のフッ素化合物を含有することが好ましい。同様の観点から、電解液は、少なくとも1種の環状フッ素化合物と、少なくとも1種の第一鎖状フッ素化合物を含むことが好ましい。
【0082】
電解液の溶媒として、上記環状フッ素化合物、上記第一鎖状フッ素化合物、上記第二鎖状フッ素化合物、上記エーテル副溶媒及び上記非エーテル副溶媒を任意選択的に自由に組み合わせて用いることができる。また各溶媒について、それぞれの溶媒を1種単独で又は2種以上を併用してもよい。電解液において、フッ素原子を有しない化合物は、エーテル副溶媒を単独で、又はエーテル副溶媒を非エーテル副溶媒と組み合わせて使用してもよい。
【0083】
本実施形態が溶媒として含み得る化合物の構造式を下記の表に例示する。表1に上記環状フッ素化合物を例示する。また、表2に上記第一鎖状フッ素化合物及び第二鎖状フッ素化合物を例示する。更に、表3にエーテル副溶媒を例示する。ただし、溶媒として使用可能な化合物の種類はこれらに限定されない。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
電解液に含まれるリチウム塩としては、特に限定されないが、リチウムの無機塩及び有機塩が挙げられる。具体的には、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiBF2(C2O4)、LiB(O2C2H4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられる。リチウム2次電池100のエネルギー密度、及びサイクル特性が一層優れる観点から、リチウム塩としては、LiN(SO2F)2が好ましい。なお、上記のリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
電解液は、リチウム塩以外の塩を電解質として更に含んでいてもよい。そのような塩としては、例えば、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。
【0088】
電解液におけるリチウム塩の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5M以上であり、より好ましくは0.7M以上であり、更に好ましくは0.9M以上であり、更により好ましくは1.0M以上である。リチウム塩の濃度が上記の範囲内にあることにより、SEI層が一層形成されやすくなり、また、内部抵抗が一層低くなる傾向にある。特に、フッ素化合物を溶媒として含むリチウム2次電池100は、電解液中におけるリチウム塩の濃度を高くすることができるため、サイクル特性及びレート性能を一層向上させることができる。リチウム塩の濃度の上限は特に限定されず、リチウム塩の濃度は10.0M以下であってもよく、5.0M以下であってもよく、2.0M以下であってもよい。
【0089】
本実施形態のリチウム2次電池は、液体以外の状態で電解液又は電解液の成分を含んでいてもよい。例えば、後述するセパレータを調製する際に電解液を添加することにより固体状又は半固体状(ゲル状)の部材中に電解液を含む電池とすることができる。また、電解液は電解質と換言することができる。
【0090】
なお、電解液に環状フッ素化合物及びエーテル副溶媒等が含まれることは、従来公知の種々の方法により確かめることができる。そのような方法としては、例えば、NMR測定法、HPLC-MS等の質量分析法、及びIR測定法等が挙げられる。
【0091】
電解液に含まれる溶媒の分子構造は、公知の方法で測定又は解析を行うことにより推定することができる。そのような方法としては、例えば、NMR、質量分析、元素分析、及び赤外分光等を用いる方法が挙げられる。また、溶媒の分子構造は、分子動力学法、分子軌道法等を用いた理論計算により推定することもできる。
【0092】
(固体電解質界面層)
リチウム2次電池100において、充電、特に初期充電により、負極140の表面に固体電解質界面層(SEI層)が形成されると推察されるが、リチウム2次電池100は、SEI層を有しなくてもよい。形成されるSEI層は、上記環状フッ素化合物及びリチウム塩に由来する有機化合物を含むと推察されるが、例えば、その他の、リチウムを含有する無機化合物、及び/又はリチウムを含有する有機化合物等を含んでいてもよい。
【0093】
リチウムを含有する有機化合物及びリチウムを含有する無機化合物としては、従来公知のSEI層に含まれるものであれば特に限定されない。限定することを意図するものではないが、リチウムを含有する有機化合物としては、炭酸アルキルリチウム、リチウムアルコキシド、及びリチウムアルキルエステルのような有機化合物が挙げられ、リチウムを含有する無機化合物としては、LiF、Li2CO3、Li2O、LiOH、リチウムホウ酸化合物、リチウムリン酸化合物、リチウム硫酸化合物、リチウム硝酸化合物、リチウム亜硝酸化合物、及びリチウム亜硫酸化合物等が挙げられる。
【0094】
リチウム2次電池100は、溶媒として環状フッ素化合物を含有し、更には鎖状のフッ素化合物を含有し得るため、SEI層の形成が促進されると推察される。SEI層はイオン伝導性を有するため、SEI層が形成された負極表面におけるリチウム析出反応の反応性は、負極表面の面方向について均一なものとなる。したがって、リチウム2次電池100は、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが抑制され、サイクル特性に優れたものとなると考えられる。
【0095】
SEI層の典型的な平均厚さとしては、1nm以上10μm以下である。リチウム2次電池100にSEI層が形成されている場合、電池の充電により析出するリチウム金属は負極140とSEI層との界面に析出してもよく、SEI層とセパレータとの界面に析出してもよい。
【0096】
(正極)
正極120としては、一般的にリチウム2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム2次電池の用途によって、公知の材料を適宜選択することができる。リチウム2次電池100の安定性及び出力電圧を高める観点から、正極120は、好ましくは正極活物質を有する。
【0097】
本明細書において、「正極活物質」とは、電池においてリチウム元素(典型的には、リチウムイオン)を正極に保持するための物質を意味し、リチウム元素(典型的には、リチウムイオン)のホスト物質と換言してもよい。そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO2、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiNixCoyAlzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO2(x+y=1)、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCoPO4、FeF3、LiFeOF、LiNiOF、及びTiS2が挙げられる。
【0098】
上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。正極120は、上記の正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、導電助剤、バインダー、及び電解質が挙げられる。
【0099】
正極120における導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SW-CNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MW-CNT)、カーボンナノファイバー、及びアセチレンブラック等が挙げられる。
また、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、正極120における電解質としては、例えばポリマー電解質、ゲル電解質、及び無機固体電解質等が挙げられ、典型的な電解質はポリマー電解質又はゲル電解質である。ポリマー電解質及びゲル電解質としては、後述するものを用いることができる。
上記のような導電助剤、バインダー、及び電解質は、それぞれについて、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0100】
正極120における、正極活物質の含有量は、正極120全体に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下あってもよい。バインダーの含有量は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。電解質の含有量の合計は、正極120全体に対して、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0101】
正極120の平均厚さは、例えば10μm以上300μm以下であり、好ましくは30μm以上200μm以下、又は50μm以上150μm以下である。ただし、正極の平均厚さは、所望する電池の容量に応じて適宜調整することができる。
【0102】
(正極集電体)
正極120の片側には、正極集電体110が形成されている。正極集電体110は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体であれば特に限定されない。そのような正極集電体としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0103】
本実施形態の正極集電体110の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における正極集電体110の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0104】
(セパレータ)
本実施形態のセパレータ130は、正極120と負極140とを隔離することにより電池が短絡することを防ぎつつ、正極120と負極140との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を確保するための部材である。すなわち、セパレータ130は、正極120と負極140を隔離する機能、及びリチウムイオンのイオン伝導性を確保する機能を有する。また、セパレータ130は電解液を保持する役割も担う。このようなセパレータとして、上記の2つの機能を有する1種の部材を単独で用いてもよいし、上記の1つの機能を有する部材を2種以上組み合わせて用いてもよい。セパレータとしては、上述した機能を担うものであれば特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する多孔質の部材、ポリマー電解質、ゲル電解質、及び無機固体電解質が挙げられ、典型的には絶縁性を有する多孔質の部材、ポリマー電解質、及びゲル電解質からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0105】
セパレータ130が絶縁性を有する多孔質の部材を含む場合、かかる部材の細孔にイオン伝導性を有する物質が充填されることにより、かかる部材はイオン伝導性を発揮する。充填される物質としては、上述の電解液、ポリマー電解質、及びゲル電解質が挙げられる。
セパレータ130は、絶縁性を有する多孔質の部材、ポリマー電解質、若しくはゲル電解質を1種単独で、又はそれらを2種以上組み合わせて用いることができる。
【0106】
上記の絶縁性を有する多孔質の部材を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば絶縁性高分子材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。すなわち、セパレータ130は、多孔質のポリエチレン(PE)膜、多孔質のポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造であってよい。
【0107】
上記のポリマー電解質としては、特に限定されないが、例えば高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質が挙げられる。
上記のゲル電解質としては、特に限定されないが、例えば高分子及び液体電解質(すなわち、溶媒と電解質)を主に含むものが挙げられる。
【0108】
ポリマー電解質及びゲル電解質が含み得る高分子としては、特に限定されないが、例えばエーテル及びエステル等の酸素原子を含む官能基、ハロゲン基、並びにシアノ基のような極性基を含む高分子が挙げられる。具体的には、ポリエチレンオキサイド(PEO)のような主鎖及び/又は側鎖にエチレンオキサイドユニットを有する樹脂、ポリプロピレンオキサイド(PPO)のような主鎖及び/又は側鎖にプロピレンオキサイドユニットを有する樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、及びポリテトラフロロエチレンが挙げられる。上記のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0109】
ポリマー電解質及びゲル電解質に含まれる電解質としては、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。典型的には本実施形態において、ポリマー電解質及びゲル電解質はリチウム塩を含む。
リチウム塩としては、特に限定されないが、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiB(O2C2H4)2、LiB(C2O4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4が挙げられ、好ましくはLiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2CF3CF3)2からなる群より選択される少なくとも1種である。上記のような塩、又はリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0110】
ポリマー電解質及びゲル電解質における高分子とリチウム塩との配合比は、高分子の有する極性基と、リチウム塩の有するリチウム原子の比によって定めてもよい。例えば高分子が酸素原子を有する場合、高分子の有する酸素原子の数と、リチウム塩の有するリチウム原子の数の比([Li]/[O])によって定めてもよい。ポリマー電解質及びゲル電解質において、高分子とリチウム塩との配合比は、上記比([Li]/[O])が、例えば、0.02以上0.20以下、0.03以上0.15以下、又は0.04以上0.12以下になるように調整することができる。
【0111】
ゲル電解質に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば上述の電解液に含まれ得る溶媒を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい溶媒の例についても後述する電解液におけるものと同様である。
半固体ポリマー電解質に含まれる可塑剤としては、特に限定されないが、例えばゲル電解質に含まれ得る溶媒と同様の成分、及び種々のオリゴマーが挙げられる。
【0112】
セパレータ130は、セパレータ被覆層により被覆されていてもよい。セパレータ被覆層は、セパレータ130の両面を被覆していてもよく、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、リチウムイオンと反応しない部材であれば特に限定されないが、セパレータ130と、セパレータ130に隣接する層とを強固に接着させることができるものであると好ましい。そのようなセパレータ被覆層としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びアラミドのようなバインダーを含むものが挙げられる。セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び硝酸リチウム等の無機粒子を添加させてもよい。
【0113】
セパレータ130の平均厚さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100におけるセパレータ130の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。また、セパレータ130の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極120と負極140とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑制することができる。
【0114】
(リチウム2次電池の使用)
図2に本実施形態のリチウム2次電池の1つの使用態様を示す。リチウム2次電池200は、正極集電体110及び負極140に、リチウム2次電池200を外部回路に接続するための正極端子210及び負極端子220がそれぞれ接合されている。リチウム2次電池200は、負極端子220を外部回路の一端に、正極端子210を外部回路のもう一端に接続することにより充放電される。
【0115】
正極端子210及び負極端子220の間に、負極端子220(負極140)から外部回路を通り正極端子210(正極120)へと電流が流れるような電圧を印加することでリチウム2次電池200が充電される。リチウム2次電池200は、初期充電により、負極140の表面(負極140とセパレータ130との界面)に固体電解質界面層(SEI層)が形成されると推察されるが、リチウム2次電池200はSEI層を有していなくてもよい。リチウム2次電池200を充電することにより、負極140とSEI層との界面、負極140とセパレータ130との界面、及び/又はSEI層とセパレータ130との界面にリチウム金属の析出が生じる。
【0116】
充電後のリチウム2次電池200について、所望の外部回路を介して正極端子210及び負極端子220を接続するとリチウム2次電池200が放電される。これにより、負極上に生じたリチウム金属の析出が電解溶出する。リチウム2次電池200にSEI層が形成されている場合、負極140とSEI層との界面、及び/又はSEI層とセパレータ130との界面の少なくともいずれかに生じたリチウム金属の析出が電解溶出する。
【0117】
(リチウム2次電池の製造方法)
図1に示すようなリチウム2次電池100の製造方法としては、上述の構成を備えるリチウム2次電池を製造することができる方法であれば特に限定されないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0118】
正極集電体110及び正極120は例えば以下のようにして製造する。上述した正極活物質、導電助剤、及びバインダーを混合し、正極混合物を得る。その配合比は、例えば、上記正極混合物全体に対して、正極活物質が50質量%以上99質量%以下、導電助剤が0.5質量%以上30質量%以下、バインダーが0.5質量%以上30質量%以下であってもよい。得られた正極混合物を、所定の厚さ(例えば、5μm以上1mm以下)を有する正極集電体としての金属箔(例えば、Al箔)の片面に塗布し、プレス成型する。得られる成型体を、打ち抜き加工により、所定のサイズに打ち抜き、正極集電体110及び正極120を得る。
【0119】
次に、上述した負極材料、例えば1μm以上1mm以下の金属箔(例えば、電解Cu箔)を、スルファミン酸を含む溶剤で洗浄した後に所定の大きさに打ち抜き、更に、エタノールで超音波洗浄した後、乾燥させることにより負極140を得る。
【0120】
次に、上述した構成を有するセパレータ130を準備する。セパレータ130は従来公知の方法で製造してもよく、市販のものを用いてもよい。
【0121】
次に、少なくとも1種の上記環状フッ素化合物と、必要に応じて上記のエーテル副溶媒、鎖状フッ素化合物、及び/又は非エーテル副溶媒とを混合することにより得られる溶液を溶媒として、当該溶液にリチウム塩を溶解させることにより、電解液を調製する。各溶媒、及びリチウム塩の電解液における含有量又は濃度が上述した範囲内となるように、適宜、溶媒及びリチウム塩の混合比を調整すればよい。
【0122】
以上のようにして得られる正極120が形成された正極集電体110、セパレータ130、及び負極140を、正極120とセパレータ130とが対向するように、この順に積層することで積層体を得る。得られた積層体を、電解液と共に密閉容器に封入することでリチウム2次電池100を得ることができる。密閉容器としては、特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルムが挙げられる。
【0123】
[変形例]
上記本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその本実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0124】
例えば、リチウム2次電池100において、セパレータ130を省略してもよい。その場合、正極120及び負極140が物理的又は電気的に接触しないように、両者を十分離した状態で固定することが好ましい。
【0125】
また、本実施形態のリチウム2次電池は、負極の表面において、当該負極に接触するように配置される集電体を有していてもよい。そのような集電体としては、特に限定されないが、例えば、負極材料に用いることのできるものが挙げられる。なお、リチウム2次電池が正極集電体、及び負極集電体を有しない場合、それぞれ、正極、又は負極自身が集電体として働く。
【0126】
本実施形態のリチウム2次電池は、負極の表面において、セパレータに対向する表面の一部又は全部がコーティング剤でコーティングされていてもよい。負極コーティング剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)、イミダゾール(IM)、及びトリアジンチオール(TAS)、並びにこれらの誘導体等が挙げられる。例えば、上述した負極材料を洗浄した後、負極コーティング剤を含有する溶液(例えば、負極コーティング剤が0.01体積%以上10体積%以下である溶液)に浸漬して、更に、大気下で乾燥させることにより、負極コーティング剤をコーティングすることができる。上述した化合物がコーティングされることで、負極の表面においてリチウム金属が不均一に析出することを抑制し、負極上に析出するリチウム金属がデンドライト状に成長することが抑制されると推察される。
【0127】
本実施形態のリチウム2次電池は、正極集電体及び/又は負極に、外部回路へと接続するための端子を取り付けてもよい。例えば10μm以上1mm以下の金属端子(例えば、Al、Ni等)を、正極集電体及び負極の片方又は両方にそれぞれ接合してもよい。接合方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば超音波溶接を用いてもよい。
【0128】
なお、本明細書において、「エネルギー密度が高い」又は「高エネルギー密度である」とは、電池の総体積又は総質量当たりの容量が高いことを意味するが、好ましくは700Wh/L以上又は300Wh/kg以上であり、より好ましくは800Wh/L以上又は350Wh/kg以上であり、更に好ましくは900Wh/L以上又は400Wh/kg以上である。
【0129】
また、本明細書において、「サイクル特性に優れる」とは、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクルの前後において、電池の容量の減少率が低いことを意味する。すなわち、初期充放電の後の1回目の放電容量と、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクル後の容量とを比較した際に、充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対してほとんど減少していないことを意味する。ここで、「通常の使用において想定され得る回数」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、30回、50回、70回、100回、300回、又は500回である。また、「充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対してほとんど減少していない」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、充放電サイクル後の容量が、初期充放電の後の1回目の放電容量に対して、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、又は85%以上であることを意味する。
【0130】
本明細書において、好ましい範囲等として記載した数値範囲は、記載した上限値及び下限値を任意に組み合わせて得られる数値範囲に置き換えてもよい。例えば、あるパラメータが好ましくは50以上、より好ましくは60以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは90以下である場合、当該パラメータは、50以上100以下、50以上90以下60以上100以下、又は60以上90以下のいずれであってもよい。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の試験例によって何ら限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]
以下のようにして、実施例1のリチウム2次電池を作製した。
【0133】
(負極の準備)
まず、8μmの電解Cu箔を、スルファミン酸を含む溶剤で洗浄した後に所定の大きさ(45mm×45mm)に打ち抜き、更に、エタノールで超音波洗浄した後、乾燥させて得られたCu箔を負極として用いた。
【0134】
(正極の作製)
次に、正極を作製した。正極活物質としてLiNi0.85Co0.12Al0.03O2を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合したものを、12μmのAl箔の片面に塗布し、プレス成型した。得られた成型体を、打ち抜き加工により、所定の大きさ(40mm×40mm)に打ち抜き、片面に正極集電体を有する正極を得た。
【0135】
(セパレータの準備)
セパレータとして、12μmのポリエチレン微多孔膜の両面に2μmのポリビニリデンフロライド(PVDF)がコーティングされた所定の大きさ(50mm×50mm)のセパレータを準備した。
【0136】
(電解液の調製)
電解液を以下のようにして調製した。1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンが80体積%、1,2-ジメトキシエタンが20体積%になるように、両溶媒を混合させた。得られた混合液に、モル濃度が1.0MとなるようにLiN(SO2F)2を溶解させることにより電解液を得た。
【0137】
(電池の組み立て)
以上のようにして得られた正極が形成された正極集電体、セパレータ、及び負極を、この順に、正極がセパレータと対向するように積層することで積層体を得た。更に、正極集電体及び負極に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入した。次いで、上記のようにして得られた電解液を上記の外装体に注入した。外装体を封止することにより、リチウム2次電池を得た。
【0138】
[実施例2~14]
表4に記載の溶媒を用いて電解液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0139】
[比較例及び参考比較例]
表4に記載の溶媒を用いて電解液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。なお、比較例は、環状フッ素化合物を含有せず、エーテル副溶媒のみを含有するものであり、参考比較例は、エーテル副溶媒及び鎖状フッ素化合物を含有するものである。
【0140】
なお、表4において、「HFCP」は1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを、「HDFMCH」はヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)を、「TDFMCH」はテトラデカフルオロメチルシクロヘキサンを、「ODFDHN」はオクタデカフルオロデカヒドロナフタレンを、「FCP」はフルオロシクロペンタンを、それぞれ表す。また、「TTFE」は1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルを、「TFEE」は1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2を,それぞれ表す。更に、「DME」は1,2-ジメトキシエタンを、「DMP」は1,2-ジメトキシプロパンを、それぞれ表す。
【0141】
表4中、各溶媒は、上記した定義において、環状フッ素化合物、鎖状フッ素化合物、又はエーテル副溶媒のいずれかに分類されている。また、表4中、各溶媒の右隣の欄において、溶媒の総量に対する含有量が体積%単位で記載されている。例えば、表4において、実施例1は、HFCP80体積%と、DME20体積%とを含有することを意味する。なお、すべての実施例、比較例、及び参考比較例は、電解質として1.0MのLiN(SO2F)2を含有する。
【0142】
[サイクル特性の評価]
以下のようにして、各実施例及び比較例で作成したリチウム2次電池のサイクル特性を評価した。
【0143】
作製したリチウム2次電池を、3.2mAで、電圧が4.2VになるまでCC充電した(初期充電)後、3.2mAで、電圧が3.0VになるまでCC放電した(以下、「初期放電」という。)。次いで、13.6mAで、電圧が4.2VになるまでCC充電した後、20.4mAで、電圧が3.0VになるまでCC放電するサイクルを、温度25℃の環境で繰り返した。各例について、初期放電から求められた容量(以下、「初期容量」といい、表中では「容量」と記載する。)を表4に示す。また、各例について、その放電容量が初期容量の80%になったときのサイクル回数(表中、「サイクル」と記載する。)を表4に示す。
【0144】
[体積膨張率の測定]
以下のようにして、各実施例及び比較例で作製したリチウム2次電池の体積膨張率を評価した。
各例について、作製した直後のセルの厚さ、及び上記充放電サイクルを99回した後、100回目の充電後におけるセルの厚さを、マイクロゲージを用いてそれぞれ測定することにより、充放電に伴う体積膨張率を測定した。
作製した直後のセルに対する100回目の充電後におけるセルの体積膨張率(作製した直後のセルの厚さに対する、100回目の充電後におけるセルの膨張割合を意味する。)を「体積膨張率(%)」として、表4に示す。
【0145】
【0146】
表4中、「-」は該当する成分を有しないことを、「NA」は体積膨張率を測定していないことを意味する。
【0147】
表4から、上記の環状フッ素化合物を含む電解液を用いた実施例1~14は、そうでない比較例と比較して、サイクル特性に優れることが分かる。また、参考比較例と実施例1~4とを比較すると、実施例1~4の体積膨張率が低く、本実施形態のリチウム2次電池は、安全性に一層優れることが分かる。
【産業上利用可能性】
【0148】
本発明のリチウム2次電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるため、様々な用途に用いられる蓄電デバイスとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0149】
100,200…リチウム2次電池、110…正極集電体、120…正極、130…セパレータ、140…負極、210…正極端子、220…負極端子。