(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】波長変換材料を含む共振空洞構造体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20250114BHJP
H10H 20/851 20250101ALI20250114BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2023527956
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2021016222
(87)【国際公開番号】W WO2022103115
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0151356
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ホンス
(72)【発明者】
【氏名】イ、テユン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-107508(JP,A)
【文献】特開平03-187186(JP,A)
【文献】特表2009-517874(JP,A)
【文献】特開2008-242000(JP,A)
【文献】特開2018-109674(JP,A)
【文献】特開2016-152309(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0004403(KR,A)
【文献】特開2010-040976(JP,A)
【文献】特開2007-171177(JP,A)
【文献】特表2014-517520(JP,A)
【文献】特開2003-270432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0293803(US,A1)
【文献】特開2007-201301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20 - 5/28
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振空洞構造体であって、
互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び
前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含み、
前記上部層で前記空洞に接する誘電体層と前記下部層で前記空洞に接する誘電体層とは、互いに同じ誘電体層であり、
前記空洞は、第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、
前記第1波長は、前記共振空洞構造体に照射される励起光の波長であり、
前記第2波長は、前記共振空洞構造体から放出される色変換光の波長であり、
前記空洞の厚さは、前記第1波長の長さのn/(2n
c)倍(nは自然数であり、n
cは前記空洞の屈折率)であり、
前記共振空洞構造体は、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計され、
前記下部層の下部から前記第1波長の前記励起光が入射するように構成されている、共振空洞構造体。
【請求項2】
前記第2波長は、前記共振空洞構造体の阻止帯域(stopband)の外側に位置する、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項3】
前記第2波長は、前記第1波長より長い、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項4】
前記共振空洞構造体の阻止帯域は、前記第2波長より短波長の帯域に形成される、請求項3に記載の共振空洞構造体。
【請求項5】
共振空洞構造体であって、
互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び
前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含み、
前記上部層で前記空洞に接する誘電体層と前記下部層で前記空洞に接する誘電体層とは、互いに異なる誘電体層であり、
前記空洞は、第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、
前記第1波長は、前記共振空洞構造体に照射される励起光の波長であり、
前記第2波長は、前記共振空洞構造体から放出される色変換光の波長であり、 前記空洞の厚さは、前記第1波長の長さのn/(4n
c)倍(nは奇数であり、n
cは前記空洞の屈折率)であり、
前記共振空洞構造体は、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計され、
前記下部層の下部から前記第1波長の前記励起光が入射するように構成されている、
共振空洞構造体。
【請求項6】
前記下部層の下部に配置され、前記第1波長の光を通過させ、前記第2波長の光を反射する反射層をさらに含む、
請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項7】
前記空洞は、
前記第1波長の光を吸収して前記第2波長の光を放出する第1波長変換材料、及び
前記第1波長の光を吸収して第3波長の光を放出する第2波長変換材料をさらに含む、
請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項8】
前記空洞は、前記第1波長変換材料が分布した第1層、前記第2波長変換材料が分布した第2層、及び前記第1層と前記第2層との間に配置される第3誘電体層を含む、
請求項7に記載の共振空洞構造体。
【請求項9】
前記空洞の厚さは、前記空洞の厚さ方向と交差する一方向に沿って徐々に変化する、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項10】
前記空洞の厚さは、前記空洞の厚さ方向と交差する一方向に沿って周期的に変化する、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項11】
前記第1誘電体層の厚さ又は前記第2誘電体層の厚さは、前記上部層又は前記下部層の交番回数が増加するにつれて徐々に変化する、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項12】
前記共振空洞構造体の上面又は下面は、凹部又は凸部を含む、請求項1に記載の共振空洞構造体。
【請求項13】
前記共振空洞構造体の上面又は下面は、複数の凹部又は複数の凸部を含み、
前記複数の凹部又は前記複数の凸部は、規則的に配列されている、
請求項12に記載の共振空洞構造体。
【請求項14】
異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、 前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含む共振空洞構造体、並びに
前記下部層の下部に配置され、第1波長の励起光を生成する発光構造又は発光素子を含み、
前記上部層で前記空洞に接する誘電体層と前記下部層で前記空洞に接する誘電体層とは、互いに同じ誘電体層であり、
前記空洞は、前記第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、
前記第1波長は、前記共振空洞構造体に照射される励起光の波長であり、
前記第2波長は、前記共振空洞構造体から放出される色変換光の波長であり、
前記空洞の厚さは、前記第1波長の長さのn/(2n
c)倍(nは自然数であり、n
cは前記空洞の屈折率)であり、
前記共振空洞構造体は、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計されている、発光構造体。
【請求項15】
前記第2波長は、前記共振空洞構造体の阻止帯域(stopband)の外側に位置する、請求項14に記載の発光構造体。
【請求項16】
前記第2波長は、前記第1波長より長い、請求項14に記載の発光構造体。
【請求項17】
前記共振空洞構造体の阻止帯域は、前記第2波長より短波長の帯域に形成される、請求項16に記載の発光構造体。
【請求項18】
前記空洞は、
前記第1波長の光を吸収して前記第2波長の光を放出する第1波長変換材料、及び
前記第1波長の光を吸収して第3波長の光を放出する第2波長変換材料をさらに含む、
請求項14に記載の発光構造体。
【請求項19】
前記空洞は、前記第1波長変換材料が分布した第1層、前記第2波長変換材料が分布した第2層、及び前記第1層と前記第2層との間に配置される第3誘電体層を含む、
請求項18に記載の発光構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば蛍光体(phosphor)などの波長変換材料を含む共振空洞構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のLED市場規模は照明、ディスプレイなど多様な分野で増え続ける傾向である。特に白色LEDには色変換のための蛍光体(phosphor)が必須的に使用され得る。蛍光体は、高エネルギー(すなわち、短波長)の光を吸収して低エネルギー(すなわち、長波長)の光を放出する材料である。これまでは、主に蛍光体の材料の開発にのみ焦点が当てられてきた。
【0003】
これにより、特定材料に限定されず、任意の蛍光材料の色変換効率を高めることができる光構造体を開発すれば、照明やディスプレイなど色変換が必要な様々な分野で需要が活発であると期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点を改善するために案出されたものであり、様々な波長変換材料の色変換効率を向上させることができる光構造体を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、波長変換材料を含む共振空洞(resonant cavity)構造体を提供することを目的とする。
【0005】
しかしながら、このような課題は例示的なものであり、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による共振空洞構造体は、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含み、前記空洞は、第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計され、前記下部層の下部で前記第1波長の励起光が入射するように構成されることができる。
【発明の効果】
【0007】
上述したように構成された本発明の一実施形態によれば、光学構造を介して波長変換材料の色変換効率を向上させることができる。
【0008】
本発明の一実施形態による波長変換材料(例えば、蛍光体)を含む共振空洞構造体は、平面に薄膜が積層された単純な構造からなり、作製が簡単で素子への適用が容易であり得る。例えば、共振空洞構造体は、誘電体材料の繰り返し薄膜コーティングで作製することができ、プロセスが容易で大量生産が可能である。
【0009】
もちろん、これらの効果によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一般的な波長変換材料に対する励起光、透過光、及び色変換光を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態による共振空洞構造体に対する励起光、透過光、及び色変換光を説明するための図である。
【
図3A】本発明の他の実施形態による共振空洞構造体を説明するための図である。
【
図3B】本発明の他の実施形態による共振空洞構造体を説明するための図である。
【
図4】分布ブラッグ反射体の概略構造及びその反射率スペクトルS1の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による共振空洞構造体の概略構造及びその反射率スペクトルの例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による共振空洞構造体の透過率、吸収率、及び反射率をシミュレーションするための環境を示す図である。
【
図7】
図6のような環境における共振空洞構造体の透過率、吸収率、及び反射率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本発明の様々な実施形態による共振空洞構造体の透過率、吸収率、及び反射率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態による共振空洞構造体の概略構造を示す図である。
【
図10】本発明の他の実施形態による共振空洞構造体の概略構造を示す図である。
【発明の実施するための最善の形態】
【0011】
本発明の一実施形態による共振空洞構造体は、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含み、前記空洞は、第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計され、前記下部層の下部で前記第1波長の励起光が入射するように構成されることができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記第2波長は、前記共振空洞構造体の阻止帯域(stopband)の外側に位置してもよい。
【0013】
一実施形態によれば、前記第2波長は、前記第1波長より長くてもよい。
【0014】
一実施形態によれば、前記共振空洞構造体の阻止帯域は、前記第2波長より短波長の帯域に形成することができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記第1誘電体層の屈折率は前記波長変換材料を含む前記空洞の屈折率より小さく、前記第2誘電体層の屈折率は前記波長変換材料を含前記空洞の屈折率より大きくてもよい。
【0016】
一実施形態によれば、前記下部層の最下部に位置する層は、前記第1誘電体層であり得る。
【0017】
一実施形態によれば、前記上部層の最上部に位置する層は、前記第2誘電体層であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、前記上部層で前記空洞に接する誘電体層と前記下部層で前記空洞に接する誘電体層とは互いに同じ誘電体層であり、前記空洞の厚さは前記第1波長の長さのn/(2nc)倍(nは自然数であり、ncは前記空洞の屈折率)であり得る。
【0019】
一実施形態によれば、前記上部層で前記空洞に接する誘電体層と前記下部層で前記空洞に接する誘電体層とは互いに異なる誘電体層であり、前記空洞の厚さは前記第1波長の長さのn/(4nc)倍(nは奇数であり、ncは空洞の屈折率)であり得る。
【0020】
一実施形態によれば、共振空洞構造体は、前記下部層の下部に配置され、前記第1波長の光を通過させ、前記第2波長の光を反射する反射層をさらに含み得る。
【0021】
一実施形態によれば、前記空洞は、前記第1波長の光を吸収して前記第2波長の光を放出する第1波長変換材料、及び前記第1波長の光を吸収して第3波長の光を放出する第2波長変換材料をさらに含み得る。
【0022】
一実施形態によれば、前記空洞は、前記第1波長変換材料が分布した第1層、前記第2波長変換材料が分布した第2層、及び前記第1層と前記第2層との間に配置される第3誘電体層を含み得る。
【0023】
一実施形態によれば、前記空洞の厚さは、前記空洞の厚さ方向と交差する一方向に沿って徐々に変化し得る。
【0024】
一実施形態によれば、前記空洞の厚さは、前記空洞の厚さ方向と交差する一方向に沿って周期的に変化し得る。
【0025】
一実施形態によれば、前記第1誘電体層の厚さ又は前記第2誘電体層の厚さは、前記上部層又は前記下部層の交番回数が増加するにつれて徐々に変化し得る。
【0026】
一実施形態によれば、前記第1誘電体層の屈折率又は前記第2誘電体層の屈折率は、前記上部層又は前記下部層の交番回数が増加するにつれて徐々に変化し得る。
【0027】
一実施形態によれば、前記共振空洞構造体の上面又は下面は、凹部又は凸部を含み得る。
【0028】
一実施形態によれば、前記共振空洞構造体の上面又は下面は、複数の凹部又は複数の凸部を含み、前記複数の凹部又は前記複数の凸部は規則的に配置されてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態による発光構造体は、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層と第2誘電体層とが交互に積層された上部層、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが交互に積層された下部層、及び前記上部層と前記下部層との間に形成された空洞(cavity)を含む共振空洞構造体、並びに前記下部層の下部に配置され、第1波長の励起光を生成する発光構造又は発光素子を含み、前記空洞は、前記第1波長を有する光を吸収して前記第1波長とは異なる第2波長を有する光を放出する波長変換材料を含み、前記共振空洞構造体は、前記第1波長で前記空洞に共振が起こるように設計することができる。
【0030】
一実施形態によれば、前記第2波長は、前記共振空洞構造体の阻止帯域(stopband)の外側に配置してもよい。
【0031】
一実施形態によれば、前記第2波長は、前記第1波長より長くてもよい。
【0032】
一実施形態によれば、前記共振空洞構造体の阻止帯域は、前記第2波長より短波長の帯域に形成することができる。
【0033】
一実施形態によれば、前記第1誘電体層の屈折率は前記空洞の屈折率より小さく、前記第2誘電体層の屈折率は前記空洞の屈折率より大きく、前記下部層の最下部に位置する層は、前記第1誘電体層であり得る。
【0034】
一実施形態によれば、前記第1誘電体層の屈折率は前記空洞の屈折率より小さく、前記第2誘電体層の屈折率は前記空洞の屈折率より大きく、前記上部層の最上部に位置する層は、前記第2誘電体層であり得る。
【0035】
一実施形態によれば、前記空洞は、前記第1波長の光を吸収して前記第2波長の光を放出する第1波長変換材料、及び前記第1波長の光を吸収して第3波長の光を放出する第2波長変換材料をさらに含み得る。
【0036】
一実施形態によれば、前記空洞は、前記第1波長変換材料が分布した第1層、前記第2波長変換材料が分布した第2層、及び前記第1層と前記第2層との間に配置される第3誘電体層を含み得る。
【0037】
上述した以外の他の態様、特徴、利点は、以下の図面、特許請求の範囲、及び発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の実施するための形態】
【0038】
本発明は、様々な変換を加えることができ、様々な実施形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に示し詳細に説明しようとする。本発明の効果及び特徴、ならびにそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述される実施形態を参照することによって明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。
【0039】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明することとし、図面を参照して説明するとき、同一又は対応する構成要素は同一の図面符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。
【0040】
以下の実施形態において、第1、第2などの用語は限定的な意味ではなく、ある構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用されている。
【0041】
以下の実施形態において、単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。
【0042】
以下の実施形態において、含む又は有するなどの用語は、本明細書に記載の特徴又は構成要素が存在することを意味するものであり、1つ又は複数の他の特徴又は構成要素が追加される可能性を予め排除するものではない。
【0043】
図面では、説明の便宜上、構成要素がその大きさを誇張又は縮小されることがあり得る。例えば、図面に示される各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上任意に示されているので、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。
【0044】
以下の実施形態において、領域、構成要素、層などの部分が他の部分の上又は上にあるとすると、他の部分の真上にある場合だけでなく、その中間に他の領域、構成要素、層などが介在している場合も含む。
【0045】
図1は、一般的な波長変換材料Pに対する励起光EL、透過光TL′、及び色変換光CL′を説明するための図であり、
図2は、本発明の一実施形態による共振空洞構造体100に対する励起光EL、透過光TL、及び色変換光CLを説明するための図である。
【0046】
まず、
図1を参照すると、一般的な波長変換材料Pに励起光(excitation light、EL)を照射すると、波長変換材料Pは励起光ELの一部を吸収して色変換光(color-converted light、CL′)を放出することができる。波長変換材料Pは、例えば、高エネルギー(すなわち、短波長)の励起光ELを吸収して低エネルギー(すなわち、長波長)の色変換光CL′を放出する蛍光体(phosphor)であり得る。ただし、これに限定されず、波長変換材料Pは、長波長の励起光ELをアップコンバージョン(photon upconversion)を行って短波長の色変換光CL′に変えるナノ粒子であり得る。
【0047】
色変換光CL′は全方向に放出されてもよい。一方、励起光ELのうち波長変換材料Pに吸収され残った光は、透過光(transmitted light、TL′)として透過することができる。
【0048】
これと比較して
図2を参照すると、本発明の実施形態による共振空洞構造体100は、上部層10、下部層30、及び上部層10と下部層30との間に形成され、波長変換材料Pを含む空洞(cavity)20を含む。
【0049】
波長変換材料Pは、第1波長を有する光を吸収して前記第1波長より長い又は短い第2波長を有する光を放出することができる。波長変換材料Pが一般的な蛍光体である場合、第1波長より第2波長が長いことがある。波長変換材料Pがアップコンバージョンナノ粒子(upconverting nanoparticle)である場合、第1波長より第2波長が短いことがある。
【0050】
以下、波長変換材料Pを励起させる励起光の波長を第1波長、波長変換材料から放出される色変換光の波長を第2波長と呼ぶことにする。
【0051】
本発明の実施形態による共振空洞構造体100は、第1波長で共振が起こるように設計することができる。例えば、上部層10及び下部層30のそれぞれは、前記第1波長を含む所定範囲の光を反射する反射体(reflector)であり得、空洞20の厚さは所定の条件を満たすことができる。共振空洞構造体100が所定の条件を満たす場合、空洞20で第1波長の光の共振が起こり得る。
【0052】
共振空洞構造体100に励起光ELを照射すると、空洞20に含まれる波長変換材料Pは励起光ELの一部を吸収して色変換光CLを放出することができる。色変換光CLは全方向に放射されてもよい。励起光ELのうち波長変換材料Pに吸収され残った光は、透過光TLとして共振空洞構造体100の外側に透過することができる。励起光EL及び透過光TLは上述した第1波長を有し、色変換光CLは第2波長を有し得る。
【0053】
図1及び
図2を併せて参照して、一般的な波長変換材料Pと本発明の実施形態による共振空洞構造体100に同一の励起光ELを照射する場合とを比較すると、一般的な波長変換材料Pより、波長変換材料Pを含む共振空洞構造体100に励起光ELがより多く吸収されることができる。言い換えれば、波長変換材料Pを含む共振空洞構造体100の第1波長に対する吸収率が、一般的な波長変換材料Pの第1波長に対する吸収率(absorptivity)よりも高くなり得る。
【0054】
したがって、波長変換材料Pを含む共振空洞構造体100から放出される色変換光CLの強度は、一般的な波長変換材料Pから放出される色変換光CL′の強度よりも大きくなり得る。さらに、波長変換材料Pを含む共振空洞構造体100における透過光TLの強度は、一般的な波長変換材料Pにおける透過光TL′の強度よりも小さくなり得る。
【0055】
したがって、本発明の一実施形態によれば、励起光ELを青色光とし、波長変換材料Pが青色光を吸収して黄色光又は赤色光を放出する蛍光体とすると、共振空洞構造体100を白色光LEDに使用することができる。この場合、青色光の一部は透過光TLとして共振空洞構造体100を抜け出すことができ、他の一部は蛍光体に吸収され、黄色光又は赤色光の色変換光CLとして共振空洞構造体100を抜け出すことができる。
【0056】
一方、本発明の一実施形態によれば、上部層10及び下部層30のそれぞれは、分布ブラッグ反射体(Distributed Bragg Reflector、DBR)であり得る。
【0057】
図2では、共振空洞構造体100の表面、具体的には上面又は下面が平面構造であることを示しているが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態として、共振空洞構造体100の上面又は下面は凹部又は凸部を含む形状からなり得る。例えば、共振空洞構造体100の上面又は下面は、複数の凹部又は複数の凸部を含み、複数の凹部又は複数の凸部が規則的に配列された形状からなり得る。
【0058】
図3A及び
図3Bは、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体100を説明するための図である。
【0059】
図3A及び
図3Bを参照すると、他の実施形態による共振空洞構造体100は、
図2の共振空洞構造体100と同様に、上部層10、下部層30、及び上部層10と下部層30との間に形成され波長変換材料Pを含む空洞(cavity)20を含み、上部層10又は下部層30の上に設けられた基板1をさらに含み得る。
【0060】
基板1は、他の素子、例えば発光素子などの装置と共振空洞構造体100との間に配置される構成で、透過性材料からなり得る。一実施形態として、基板1はガラス(glass)材料からなり得る。このとき、他の実施形態による共振空洞構造体100は、
図2の共振空洞構造体とは異なり、上部層10と下部層30との厚さが異なる場合がある。
【0061】
より具体的には、励起光ELに近い下部層30の厚さは上部層10の厚さより薄くてもよい。この場合、
図3Aのように基板1は下部層30に隣接して配置されてもよく、
図3Bのように上部層10に隣接して配置されてもよい。
【0062】
図4は、分布ブラッグ反射体(DBR)の概略構造及びその反射率スペクトルS1の一例を示す図である。分布ブラッグ反射体は、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層11と第2誘電体層12とが交互に積層された構造を有し得る。
【0063】
図4を参照すると、本発明の一実施形態による上部層10及び下部層30のそれぞれは、分布ブラッグ反射体で形成することができる。上部層10及び下部層30のそれぞれは、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層11と第2誘電体層12とが交互に積層された構造であり得る。言い換えれば、上部層10及び下部層30のそれぞれは、屈折率が周期的に変化する構造であり得る。
【0064】
分布ブラッグ反射体は、特定の波長範囲の光を反射するように設計することができる。反射する波長範囲(又は、周波数範囲)を阻止帯域(stopband)と呼ぶ。阻止帯域内の波長を有する光は、分布ブラッグ反射体で伝播することが禁止される。
【0065】
本発明の一実施形態では、上部層10及び下部層30は、第1波長を含む阻止帯域を有するように設計することができる。例えば、上部層10及び下部層30において、第1誘電体層11の屈折率と厚さ、第2誘電体層12の屈折率と厚さを調整することにより、第1波長で阻止帯域が形成されるように設計することができる。
【0066】
一実施形態として、第1誘電体層11の厚さ又は第2誘電体層12の厚さは、上部層10又は下部層30に対して交番回数が増加するにつれて徐々に変化し得る。言い換えれば、第1誘電体層11及び第2誘電体層12は交互に積層されているが、交互になる層が同じ厚さに積層されるのではなく、交番回数が増加する方向に沿って各層の厚さがますます薄くなるか、ますます厚くなるように設計することができる。あるいは、第1誘電体層11の屈折率又は第2誘電体層12の屈折率は、上部層10又は下部層30に対して交番回数が増加するにつれて徐々に変化し得る。
【0067】
このように設計された分布ブラッグ反射体(DBR)10、30に第1波長の励起光ELを照射すると、反対側に光がほとんど透過しないことがある。
図4は、DBR10、30の下部からDBR10、30に向かって励起光ELを照射する場合、DBR10、30の上部に透過する光がない状況を示す。
【0068】
DBR10、30の反射率スペクトルS1は、DBR10、30の下部からDBR10、30に向かって励起光ELを照射した場合、DBR10、30の下部の平面P1での光強度のスペクトルをシミュレーションしたグラフである。
【0069】
図5は、本発明の一実施形態による共振空洞構造体100の概略構造及びその反射率スペクトルS2の例を示す図である。
【0070】
図5を参照すると、本発明の一実施形態による共振空洞構造体100は、互いに異なる屈折率を有する第1誘電体層11と第2誘電体層12とが交互に積層された上部層10、第1誘電体層11と第2誘電体層12とが交互に積層された下部層30、及び上部層10と下部層30との間に形成された空洞20を含み、空洞20には波長変換材料が含まれる。
【0071】
本発明の実施形態によれば、波長変換材料Pは、第1波長を有する光を吸収して、第1波長より長い又は短い第2波長を有する光を放出することができる。また、共振空洞構造体100は、前記第1波長で空洞20に共振が起こるように設計することができる。
【0072】
本発明の実施形態による共振空洞構造体100は、第1波長から第2波長への波長変換材料Pの色変換効率を向上させることができる。様々な実施形態において、第1波長及び第2波長を必要に応じて設定し、それに合った励起光EL及び波長変換材料Pを使用することによって、共振空洞構造体100を様々な発光素子に適用することができる。例えば、青色光の励起光ELを吸収して黄色光又は赤色光を放出する波長変換材料(例えば、蛍光体)を含む共振空洞構造体100は、白色LEDに適用することができる。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0073】
共振空洞構造体100は、上部層10と下部層30との間に空洞20を含むことによって、特定の波長で強い共振を引き起こすことができる。具体的には、空洞20の厚さT及び屈折率に基づいて決定される特定の波長で光共振が起こり得る。第1波長で光共振が起こるための空洞20の厚さTの条件の詳細な説明は後述される。
【0074】
本発明の実施形態では、空洞20の厚さTは、波長変換材料Pの吸収波長である第1波長で空洞20に共振が起こるように定めることができる。第1波長で空洞20に共振が起こる場合、第1波長の光の少なくとも一部が空洞20に閉じ込められることができる。したがって、第1波長における共振空洞構造体100の吸収率が大きくなり、波長変換材料Pの色変換効率が向上することができる。
【0075】
他の実施形態では、空洞20の厚さTは、空洞20の厚さ方向と交差する一方向、例えば、共振空洞構造体100の平面方向に沿って変化し得る。具体的には、空洞20の厚さは、共振空洞構造体100の平面方向に沿って徐々に変化し得る。あるいは、空洞20の厚さは、共振空洞構造体100の平面方向に沿って周期的に変化し得る。
【0076】
共振空洞構造体100の反射率スペクトルS2は、共振空洞構造体100の下部から共振空洞構造体100に向かって励起光を発生させた場合、共振空洞構造体100の下部の平面P2における光強度のスペクトルをシミュレーションしたグラフである。
【0077】
空洞のないDBR10、30のみの反射率スペクトルS1と比較すると、上部層10と下部層30との間に空洞20が形成された共振空洞構造体100の反射率スペクトルS2には、第1波長でディップ(dip)が発生し得る。
【0078】
したがって、第1波長の励起光ELを共振空洞構造体100に照射すると、第1波長の光の一部は空洞20に閉じ込められて共振し、他の一部は透過光TLとして共振空洞構造体100を抜け出すことができる。もちろん、残りの部分は反射されてもよい。したがって、第1波長における共振空洞構造体100の吸収率が大きくなり、波長変換材料Pの色変換効率が向上することができる。
【0079】
図6は、本発明の一実施形態による共振空洞構造体100の透過率、吸収率、及び反射率をシミュレーションするための環境を示す図である。
図7は、
図6のような環境における共振空洞構造体100の透過率T、吸収率A、及び反射率Rのシミュレーション結果を示す図である。
【0080】
図6に示すシミュレーション環境は、共振空洞構造体100の下部から共振空洞構造体100に向けて励起光ELを照射する場合を想定する。励起光ELは平面波(plane wave)であると仮定する。シミュレーション環境で共振空洞構造体100の下部面と上部面はPML(Perfectly Matched Layer)であると仮定した。シミュレーション環境で共振空洞構造体100の側部面は周期境界条件(periodic boundary condition、PBC)であると仮定した。
【0081】
図6及び
図7を参照すると、上述したようなシミュレーション条件で、共振空洞構造体100の上部領域A1における光スペクトルに基づいて共振空洞構造体100の透過率スペクトルTを取得することができる。前記シミュレーション条件で、共振空洞構造体100の下部領域A3における光スペクトルに基づいて共振空洞構造体100の反射率スペクトルRを取得することができる。また、励起光ELスペクトルから透過率スペクトルTと反射率スペクトルRとを引くことに基づいて、空洞領域A2での吸収率スペクトルAを取得することができる。
【0082】
図7のグラフG100は、上記のような条件で共振空洞構造体100の透過率スペクトルT、吸収率スペクトルA、及び反射率スペクトルRのシミュレーション結果である。シミュレーションは、例えば、FDTD(Finite-difference time-domain)シミュレーションであり得る。
【0083】
ここで、空洞20に含まれる波長変換材料Pは、赤色量子ドット(red Colloidal Quantum Dot、red CQD)(屈折率1.82)と仮定した。また、第1誘電体層11の材料はSiO2(屈折率1.46)と仮定し、第2誘電体層12の材料はSiN4(屈折率2.04)と仮定した。共振空洞構造体100は、設定された第1波長で空洞20に共振が起こるように設計された。第1波長は、例えば450nmに設定することができるが、これに限定されない。第1波長は、波長変換材料Pの特性に応じて、波長変換材料Pの吸収波長に設定される。
【0084】
具体的には、第1波長で共振し、第1波長の周囲は阻止帯域を形成するように、第1誘電体層11の厚さ、第2誘電体層12の厚さ、及び空洞20の厚さを設定した。例えば、空洞20の上下部に接触する2つの誘電体層が互いに同じ種類の誘電体層である場合、空洞20の厚さTは第1波長(例えば、450nm)のn/(2n-c)倍(nは自然数、n-cは空洞20の屈折率)に設定することができる。他の例では、空洞20の上下部に接触する2つの誘電体層のうちの一方の誘電体層の屈折率は空洞20の屈折率より小さく、他方の誘電体層の屈折率は空洞20の屈折率より大きい場合、空洞20の厚さTは、第1波長(例えば、450nm)のn/(4n-c)倍(nは奇数、n-cは空洞20の屈折率)に設定することができる。
【0085】
グラフG100を参照すると、設定された第1波長で反射率スペクトルRのディップ(dip)が形成されることができる。これにより、第1波長での共振により、前記第1波長で吸収率スペクトルAのピーク(peak)が形成されることができる。また、透過率スペクトルTを参照すると、前記第1波長で光の一部が透過されることが分かる。
【0086】
これに基づいて、第1波長の励起光ELを、波長変換材料Pを含む共振空洞構造体100に照射すると、第1波長の光の一部は共振空洞構造体100をそのままに抜け出し、他のいくつかは、波長変換材料Pによって第2波長に色変換された後、共振空洞構造体100を抜け出すことができる。
【0087】
本発明の一実施形態では、色変換された第2波長の光は、上部層10に対応する分布ブラッグ反射体(DBR)をうまく抜け出さなければならない。したがって、本発明の一実施形態では、共振空洞構造体100の阻止帯域(stopband)(すなわち、反射率が1に近い帯域)は、第2波長を含まないように形成することができる。
【0088】
以下では、共振空洞構造体100の阻止帯域が第2波長を含まないように共振空洞構造体100を設計するために必要な条件について説明する。
【0089】
下記数式1は、阻止帯域幅(stopband width)を示す式である。
【0090】
【0091】
数式1において、Δλmaxは阻止帯域幅を表し、λは阻止帯域の中心波長を表し、nLは波長λにおける第1誘電体層11の屈折率を、nHは波長λにおける第2誘電体層12の屈折率を示す。本発明の実施形態において、阻止帯域の中心波長は、波長変換材料Pの吸収波長である第1波長に合うように設計されているので、λは第1波長となる。
【0092】
数式1を参照すると、第1誘電体層11の屈折率nLと第2誘電体層12の屈折率nHとの差が大きいほど、阻止帯域幅が大きくなり得る。ところで、阻止帯域幅が大きすぎると、阻止帯域は第2波長を含んでしまうことになる。阻止帯域が第2波長を含んでしまうと、構造体100で第2波長の光の伝播が禁止されるため、色変換光が構造体100をうまく抜け出せないという問題が生じる。
【0093】
したがって、本発明の一実施形態によれば、第1誘電体層11の屈折率と第2誘電体層12の屈折率との差は、共振空洞構造体100の阻止帯域が第2波長を含まないように設定することができる。言い換えれば、第1誘電体層11の屈折率と第2誘電体層12の屈折率との差は、共振空洞構造体100の阻止帯域が第2波長より短波長又は長波長の帯域に形成されるように設定することができる。
【0094】
一実施形態によれば、第1誘電体層11の屈折率と第2誘電体層12の屈折率との差は、指定された値より小さいように設定することができる。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、上部層10における第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア(pair)数及び下部層30における第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア(pair)数は、それぞれ4以上6以下であり得る。
【0096】
例えば、上部層10及び下部層30における第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア数が多くなるほど、阻止帯域は明確に定義することができる。例えば、第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア数が多くなるほど、阻止帯域の境界で反射率が急激に変化することができる。しかしながら、前記ペア数が多くなるほど、第1波長における構造体100の反射率は上昇し、第1波長における構造体100の透過率は低下し得る。このため、第1波長における構造体100の吸収率は、上部層10で前記ペア(pair)数が4以上6以下であり、下部層30で前記ペア数が4以上6以下であるとき最も高くなり得る。ただし、これは一実施形態に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、上部層10における第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア数と下部層30における第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア数は互いに異なってもよい。また、本発明の一実施形態によれば、上部層10又は下部層30において第1誘電体層11と第2誘電体層12とのペア数は必ずしも整数である必要はない。例えば、上部層10において、第1誘電体層11と第2誘電体層12が5ペアの場合、上部層10には5つの第1誘電体層11と5つの第2誘電体層12が交互に積層されてもよい。例えば、下部層30において、第1誘電体層11と第2誘電体層12とが4.5ペアの場合、下部層30には5つの第1誘電体層11と4つの第2誘電体層12とが交互に積層されてもよい。ただし、これは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、上部層10で空洞20に接する層(すなわち、上部層10の最下層)は、第1誘電体層11であってもよく、第2誘電体層12であってもよい。また、下部層30で空洞20に接する層(すなわち、下部層30の最上層)も、第1誘電体層11であってもよく、第2誘電体層12であってもよい。
【0099】
以下では、第1誘電体層11の屈折率は空洞20の屈折率より小さく、第2誘電体層12の屈折率は空洞20の屈折率より大きい場合を想定する。
【0100】
一実施形態において、空洞20に接する層が第2誘電体層12である場合、空洞20と第2誘電体層12との境界は固定端(fixed end)になり、ノード(node)が形成されることができる。一実施形態において、空洞20に接する層が第1誘電体層11である場合、空洞20と第1誘電体層11との境界は自由端(free end)になり、アンチノード(antinode)が形成されることができる。
【0101】
一実施形態によれば、上部層10で空洞20に接する誘電体層及び下部層30で空洞20に接する誘電体層の両方が第2誘電体層12であり得る。この場合、空洞20の上端及び下端の両方が固定端になり、空洞20の中心に強い場(field)を形成することができる。
【0102】
他の実施形態によれば、上部層10で空洞20に接する誘電体層及び下部層30で空洞20に接する誘電体層の両方が第1誘電体層11であり得る。この場合、空洞20の上端及び下端の両方が自由端になり、空洞20の上端及び下端に強い場(field)を形成することができる。
【0103】
上部層10で空洞20に接する誘電体層及び下部層30で空洞20に接する誘電体層が同じ種類の誘電体層である場合、第1波長で共振するために空洞20の厚さTは第1波長のn/(2nc)倍(nは自然数、ncは空洞20の屈折率)であり得る。
【0104】
さらに別の実施形態によれば、上部層10で空洞20に接する誘電体層及び下部層30で空洞20に接する誘電体層は異なる種類の誘電体層であり得る。この場合、第1波長で共振するために、空洞20の厚さTは、第1波長(例えば、450nm)のn/(4nc)倍(nは奇数、ncは空洞20の屈折率)であり得る。
【0105】
図8は、本発明の様々な実施形態による共振空洞構造体100の透過率T、吸収率A、及び反射率Rをシミュレーションした結果を示す図である。
【0106】
本発明の様々な実施形態において、第2誘電体層12の屈折率が第1誘電体層11の屈折率よりも大きいと仮定する。
【0107】
図8を参照すると、本発明の様々な実施形態による共振空洞構造体100において、上部層10の最上層(
図8の1番層)、上部層10の最下層(
図8の2番層)、下部層30の最上層(
図8の3番層)、及び下部層30の最下層(
図8の4番層)は、それぞれ第1誘電体層11であってもよく、第2誘電体層12であってもよい。
図8に示すグラフG1~G16は、これら全ての場合の数に対する透過率T、吸収率A、光反射率Rのグラフである。
【0108】
図8の表記において、Lは低屈折率(low refractive index)、すなわち第1誘電体層11を表し、Hは高屈折率(high refractive index)、すなわち第2誘電体層12を表す。
【0109】
例えば、G1はLHHLと表記されたところ、1番層が第1誘電体層11であり、2番層及び3番層が第2誘電体層12であり、4番層が第1誘電体層11である共振空洞構造体のシミュレーショングラフである。
【0110】
G2は、LHHHと表記されたところ、1番層が第1誘電体層11であり、2番層、3番層、及び4番層が全て第2誘電体層12である共振空洞構造体のシミュレーショングラフである。
【0111】
G3は、HHHLと表記されたところ、1番層、2番層、及び3番層が全て第2誘電体層12であり、4番層が第1誘電体層11である共振空洞構造体のシミュレーショングラフである。
【0112】
また、1行目のG1~G4は、2番層及び3番層の両方が第2誘電体層12である場合のシミュレーショングラフである。
【0113】
2行目のG5~G8は、2番層が第2誘電体層12であり、3番層が第1誘電体層11である場合のシミュレーショングラフである。
【0114】
3行目のG9~G12は、2番層が第1誘電体層11であり、3番層が第2誘電体層12である場合のシミュレーショングラフである。
【0115】
4行目のG13~G16は、2番層と3番層の両方が第1誘電体層11である場合のシミュレーショングラフである。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、下部層30の最下部に位置する層(4番層)は第1誘電体層11であることが望ましい。下部層30の最下部に位置する層(4番層)の屈折率が低い場合、励起光を少なく反射する可能性があるからである。グラフG1~G16を参照しても、4番層が第1誘電体層11である場合(G1、G3、G6、G8、G9、G11、G14、及びG16)に第1波長で反射率スペクトルのディップ(dip)が深くできるのが見られる。したがって、励起光の反射を最小限に抑え、励起光ができるだけ構造体100の内部に入って空洞20で共振するようにするために、下部層30の最下部に位置する層(4番層)は第1誘電体層11であることが望ましい。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。任意の実施形態による共振空洞構造体100では、下部層30の最下部に第2誘電体層12が配置されることもある。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、上部層10の最上部に位置する層(1番層)は第2誘電体層12であることが望ましい。上部層10の最上部に位置する層(1番層)の屈折率が高い場合、透過が少なくなり吸収が増加する可能性があるからである。グラフG1~G16を参照しても、1番層が第2誘電体層12である場合(G3、G4、G7、G8、G9、G10、G13、及びG14)に第1波長で透過率が小さいのが見られる。したがって、励起光の透過を最小限に抑え、励起光ができるだけ構造体100の内部に閉じ込められて空洞20で共振するようにするために、上部層10の最上部に位置する層(1番層)は第2誘電体層12であるのが望ましい。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0118】
図9は、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体101の概略構造を示す図である。
【0119】
図9を参照すると、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体101は、上述した共振空洞構造体100と比較して、励起光が照射される側に配置される反射層40をさらに含むことができる。上述した内容に対応するように共振空洞構造体100、101の下部から励起光が照射されると仮定すると、共振空洞構造体101は、上述した共振空洞構造体100と比較して下部層30の下部に反射層40をさらに含むことができる。
【0120】
具体的には、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体101は、上部層10、下部層30、上部層10と下部層30との間に形成され、波長変換材料Pを含む空洞20、及び下部層30の下部に配置される反射層40を含むことができる。波長変換材料Pは、第1波長の光を吸収して第2波長の光を放出することができる。上部層10及び下部層30はそれぞれ、第1波長の光を反射する構造を有し得る。上部層10と下部層30との間の空洞20は、第1波長の光が共振するように形成することができる。また、下部層30の下部に配置される反射層40は、第2波長の光を反射する構造を有し得る。反射層40の下部から共振空洞構造体101に向かって励起光を照射することができる。
【0121】
一実施形態によれば、上部層10及び下部層30のそれぞれは、第1波長の光を反射する分布ブラッグ反射体(DBR)であり得る。また、反射層40は、第2波長の光を反射する分布ブラッグ反射体(DBR)であり得る。反射層40の阻止帯域は、第1波長を含まないように形成することができる。すなわち、反射層40の阻止帯域は、第1波長より長波長又は短波長の帯域に形成することができる。これにより、反射層40が追加された共振空洞構造体101の第1波長付近の光スペクトルは、上述した共振空洞構造体100の第1波長付近の光スペクトルと同様であり得る。すなわち、反射層40を追加しても、第1波長における透過率、吸収率、及び反射率の低下がほとんどないように反射層40が設計されることができる。一方、第2波長の光を反射する反射層40の存在により、上部に抜け出す第2波長の色変換光の強度はさらに向上することができる。
【0122】
図10は、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体102の概略構造を示す図である。
【0123】
図10を参照すると、本発明の他の実施形態による共振空洞構造体102の空洞20′は、第1波長変換材料P1及び第2波長変換材料P2を含み得る。
【0124】
一実施形態によれば、空洞20′は、第1波長変換材料P1が分布した第1層、第2波長変換材料P2が分布した第2層、及び前記第1層と第2層との間に配置される第3誘電体層21を含み得る。
【0125】
一実施形態によれば、第1波長変換材料P1は、励起光ELの波長である第1波長の光を吸収して第2波長の光を放出することができる。第2波長変換材料P2は、第1波長の光を吸収して第3波長の光を放出することができる。
【0126】
一実施形態によれば、第1波長変換材料P1は、第1波長の光を吸収して第1波長より長波長である第2波長の光を放出する第1蛍光体であり、第2波長変換材料P2銀は、第1波長の光を吸収して第1波長より長波長である第3波長の光を放出する第2蛍光体であり得る。この場合、励起光ELが共振空洞構造体102の下部から照射され、第1蛍光体を含む第1層が第2蛍光体を含む第2層より下部に配置されるとする時、第1蛍光体の発光波長である第2波長は、第2蛍光体の発光波長である第3波長より長波長であり得る。そうしてこそ、第1蛍光体によって色変換された第2波長の光は、第2蛍光体によって再吸収されないことができる。
【0127】
図10に示す実施形態による共振空洞構造体102の上部層10及び下部層30は、上述した上部層10及び下部層30に対応してもよい。
【0128】
本発明は、様々な実施形態による共振空洞構造体100、101、102、及び共振空洞構造体100、101、102の下部に配置され、励起光を放出する発光層を含む発光構造体をさらに含むことができる(図示せず)。前記発光層は、例えば発光構造あるいは、発光素子(例えば、LEDなど)であり得る。したがって、本発明の一実施形態による発光構造体は、共振空洞構造体100、101、102及び共振空洞構造体100、101、102の下部に配置され、第1波長の励起光を生成する発光構造あるいは、発光素子(例えば、LEDなど)を含むことができる。
【0129】
本発明は図面に示す一実施形態を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、これから様々な変形及び実施形態の変形が可能であることが理解されるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【産業上利用可能性】
【0130】
本発明の一実施形態によれば、共振空洞構造体を提供する。また、照明やディスプレイなど色変換が必要な様々な分野などに本発明の実施形態を適用することができる。