(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害剤を発現するがん特異的トランス-スプライシングリボザイム及びこの用途{TUMOR-TARGETING TRANS-SPLICING RIBOZYME EXPRESSING IMMUNE CHECKPOINT INHIBITOR AND USE THEREOF}
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20250114BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20250114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250114BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20250114BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20250114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250114BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250114BHJP
C12N 15/38 20060101ALN20250114BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N9/00
A61K31/7105
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/38
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2023530894
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2022001088
(87)【国際公開番号】W WO2022158891
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010416
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0193826
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520062823
【氏名又は名称】アールズィーノミクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・イ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・リム・パク
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524253(JP,A)
【文献】特表2016-531567(JP,A)
【文献】特開2020-146033(JP,A)
【文献】特表2017-532032(JP,A)
【文献】Human Gene Therapy,2013年,Vol.24, No.12,p.A169
【文献】Molecular Therapy,2013年,Vol.21, No.3,pp.688-695
【文献】Nature Biotechnology,2004年,Vol.22, No.5,pp.589-594
【文献】Scientific Reports,2015年,Vol. 5, Article Number 16273,pp.1-10
【文献】Scientific Reports,2015年,Vol.5, Article Number 12315,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TERT
(テロメラーゼ逆転写酵素)mRNAを標的とするトランススプライシングリボザイムであって、
前記リボザイムは、
[5’-TERT mRNA標的トランススプライシングリボザイム-がん治療用遺伝子-自己切断ペプチド遺伝子-免疫チェックポイント阻害剤遺伝子-3’]の構造を有し、
前記トランススプライシングリボザイムは、グループ1イントロンリボザイムであり、
前記がん治療用遺伝子は、免疫チェックポイント阻害剤遺伝子とは区別されるものである、トランススプライシングリボザイム。
【請求項2】
前記治療用遺伝子は、薬剤感受性遺伝子、アポトーシス遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、細胞毒性遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子、抗原性遺伝子、サイトカイン遺伝子及び抗新生血管生成遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子である、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項3】
前記薬剤感受性遺伝子は、HSVtk(Herpes Simplex Virus thymidine kinase)である、請求項
2に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項4】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、BTLA、B7H3、B7H4、TIM3、KIR、TIGIT、CD47、VISTA又はA2aRの阻害剤である、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項5】
前記トランススプライシングリボザイムは、3’末端位置にマイクロRNA-122a(miR-122a)の一部又は全部と相補的な配列を1コピー(copy)以上さらに含むものである、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項6】
前記自己切断ペプチドは、P2Aである、請求項
1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項7】
請求項1
、2、5及び6のいずれか一項に記載のトランススプライシングリボザイムを含む非ウイルス性遺伝子送達システム。
【請求項8】
請求項1
、2、5及び6のいずれか一項に記載のトランススプライシングリボザイムを発現できる発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターは、前記リボザイム遺伝子と作動可能に連結されたプロモーターをさらに含むものである、請求項
8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載の発現ベクターを発現する遺伝子送達システム。
【請求項11】
請求項
8又は
9に記載の発現ベクターに形質転換された細胞。
【請求項12】
請求項
1に記載のトランススプライシングリボザイム;請求項
7に記載の非ウイルス性遺伝子送達システム;請求項
8又は請求項
9に記載の発現ベクター;及び請求項
10に記載の遺伝子送達システム;からなる群より選ばれるいずれか1つを有効成分として含むがん治療用医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、経口又は注射剤の形態で静脈内、動脈内、がん組織内、又は皮下の経路で投与されるものである、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記がんは、肝がん、膠芽腫、胆道がん、肺がん、膵膓がん、黒色腫、骨がん、乳房がん、大膓がん、胃がん、前立腺がん、白血病、子宮がん、卵巣がん、リンパ腫、及び脳がんからなる群より選ばれる1種以上のがんである、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記がんは免疫チェックポイント阻害剤耐性がんであることを特徴とする、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項
12に記載の組成物をヒトを除く個体に投与するステップを含む、がん治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん細胞で免疫チェックポイント阻害剤を発現するがん特異的トランス-スプライシングリボザイム及びこの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
医学技術の発展に伴い、がん治療技術も引き続き開発されている。特に、最近、人体の免疫システムを用いて開発されたがん免疫療法の治療効果が立証され、既存の化学治療剤及び標的治療剤を使用していた抗がん治療療法は、免疫治療剤を利用するがん免疫療法にパラダイム転換が進められている。
【0003】
通常行われている抗がん治療は、手術による腫瘍切除法である。このとき、切除前の腫瘍サイズの縮小又は切除後の残存がん細胞の死滅及び再発防止を目的として放射線治療及び化学治療が併行される。第1世代抗がん剤(1970年代以降)と呼ばれる放射線治療及び化学治療は、がん細胞が無限に分裂増幅する過程を妨害してがん細胞の死滅を誘導する。しかし、放射線治療と化学治療法は、がん細胞だけでなく、正常細胞の死滅も誘導する副作用があった。
【0004】
2000年代に入って正常細胞と区分してがん細胞のみを選択的に攻撃する標的抗がん剤が開発され、前記第1世代抗がん治療剤の副作用を大幅に減らすことができる第2世代抗がん剤と呼ばれた。特定の標的タンパク質にのみ作用する標的抗がん剤は、がんを誘発するタンパク質にのみ作用してがん細胞を選択的に抑制することで治療効果を示す。したがって、がんの種類によって誘発タンパク質又は治療効果を示すタンパク質が異なるため、標的タンパク質の種類に合う抗がん剤を使用しなければならない。標的抗がん剤のもう一つの限界点は、がん細胞が標的抗がん剤に対して耐性を獲得する機作を有することである。すなわち、がん細胞自身が標的抗がん剤の標的にならないように突然変異を起こし、抗がん剤回避能力を獲得するため、標的抗がん剤ががん細胞として認識されないこともある。
【0005】
第3世代抗がん剤である免疫抗がん剤は、人体の免疫体系を活性化させて自己免疫力を高め、兔疫細胞ががん細胞を攻撃して除去するようにする。免疫抗がん剤によってがん細胞攻撃機能が向上した兔疫細胞は、がん細胞がその機能及び性質を完全に変えない限り、初めて攻撃したがん細胞を記憶し、持続的に攻撃する。
【0006】
免疫抗がん剤は、大きく免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)、兔疫細胞治療剤(immune cell therapy)、治療用抗体(therapeutic antibody)及び抗がんワクチン(anticancer vaccine)に分類することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質(immune checkpoint protein)の活性を遮断してT細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する薬剤であって、代表的にCTLA4、PD-1、PD-L1などを認識する抗体を使用する。
【0007】
しかし、免疫抗がん剤に対するがん患者の反応率はまだ15~45%のレベルにとどまっており、がんの種類及び患者によって反応率が異なり、がんだけでなく、皮膚及び胃腸関係、甲状腺及び副腎など体内の様々な臓器に影響を及ぼし、副作用がますます報告されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、免疫チェックポイント阻害剤遺伝子を含む2以上の異なるがん治療用遺伝子を含むトランススプライシングリボザイム、前記リボザイムを発現できるベクター及び遺伝子送達システムを提供することに目的がある。
【0009】
また、前記トランススプライシングリボザイムは、がん特異的遺伝子を標的してがん細胞で能動的に作動できるところ、本発明は、前記リボザイム、ベクター、又は遺伝子送達システムのがん治療用途提供を目的とする。
【0010】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、上記で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当該技術分野における通常の技術者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、がん特異的遺伝子を標的とするトランススプライシングリボザイムであって、前記リボザイムは、3’エクソンに連結された目的遺伝子を含み、前記目的遺伝子は免疫チェックポイント阻害剤遺伝子を含む2以上のがん治療用遺伝子であることを特徴とする、トランススプライシングリボザイムを提供する。
【0012】
本発明の一実施形態として、前記トランススプライシングリボザイムは、5’-trans-splicing ribozyme-がん治療用遺伝子-免疫チェックポイント阻害剤遺伝子-3’の構造を有し得る。
【0013】
本発明の他の実施形態として、前記2以上のがん治療用遺伝子のうち1種は、免疫チェックポイント阻害剤を暗号化する遺伝子であり、もう一つは、これと区別されるがん治療用遺伝子であって、薬剤感受性遺伝子、アポトーシス遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、細胞毒性遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子、抗原性遺伝子、サイトカイン遺伝子及び抗新生血管生成遺伝子からなる群より選ばれる1種であってもよい。
【0014】
本発明の他の実施形態として、前記薬剤感受性遺伝子は、HSVtk(Herpes Simplex Virus thymidine kinase)であってもよく、配列番号5の塩基配列からなるか、これを含んでもよい。
【0015】
本発明の他の実施形態として、前記がん特異的遺伝子は、TERT(Telomerase Reverse Transcriptase)mRNA、AFP(alphafetoprotein)mRNA、CEA(carcinoembryonic antigen)mRNA、PSA(Prostate-specific antigen)mRNA、CKAP2(Cytoskeleton-associated protein 2)mRNA及び突然変異RAS(Rat sarcoma)mRNAからなる群より選ばれる1種であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例によると、前記trans-splicing ribozymeは、TERT遺伝子を標的とすることができ、配列番号4の塩基配列からなるか、これを含んでもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態として、前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、BTLA、B7H3、B7H4、TIM3、KIR、TIGIT、CD47、VISTA又はA2aRの阻害剤であってもよい。
【0018】
本発明の他の実施形態として、前記トランススプライシングリボザイムは、3’末端位置にマイクロRNA-122a(miR-122a)の一部又は全部と相補的な配列をさらに含んでもよく、配列番号6の塩基配列を含んでもよく、前記配列が2~10回繰り返された配列を含んでもよい。
【0019】
本発明の他の実施形態として、前記トランススプライシングリボザイムにおいて免疫チェックポイント阻害剤遺伝子とこれを除くがん治療用遺伝子は、自己切断ペプチド(self-cleaving peptide)を暗号化する遺伝子に連結され得る。
【0020】
本発明の他の実施形態として、前記自己切断ペプチドはP2Aであってもよく、配列番号7の塩基配列で暗号化されてもよい。
【0021】
また、本発明は、前記トランススプライシングリボザイムを発現できる発現ベクターを提供する。
【0022】
本発明の一実施形態として、前記発現ベクターは、前記リボザイム遺伝子と作動可能に連結されたプロモーターをさらに含むことができ、前記プロモーターは組職特異的に作動するプロモーターであってもよい。
【0023】
また、本発明は、前記発現ベクターを含む遺伝子送達システムと前記発現ベクターに形質転換された細胞を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記トランススプライシングリボザイム、前記発現ベクター、及び前記遺伝子送達システムからなる群より選ばれる1種以上を有効成分として含むがん治療用医薬組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記トランススプライシングリボザイム、前記発現ベクター、及び前記遺伝子送達システムからなる群より選ばれる1種以上を個体に投与するステップを含むがん治療方法を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、抗がん剤製造のための前記トランススプライシングリボザイム、前記発現ベクター、及び/又は前記遺伝子送達システムの用途を提供する。
【0027】
本発明の一実施形態として、前記医薬組成物及び抗がん剤は、経口又は注射剤の形態で静脈内、動脈内、がん組織内及び/又は皮下を経路で投与されるものであってもよく、前記がん治療方法においても個体への投与は前記の経路で投与されるものであってもよい。
【0028】
本発明の他の実施形態として、前記がんは、肝がん、膠芽腫、胆道がん、肺がん、膵膓がん、黒色腫、骨がん、乳房がん、大膓がん、胃がん、前立腺がん、白血病、子宮がん、卵巣がん、リンパ腫、及び脳がんからなる群より選ばれる1種以上のがんであってもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態として、前記がんは、免疫チェックポイント阻害剤耐性がんであってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によるトランス-スプライシングリボザイムは、正常組職には作用せず、がん組職で特異的に発現して安全性が高く、転写後レベルで発現効率に優れた特徴がある。また、本発明のリボザイムの3’エクソンには、1つ以上の目的遺伝子が連結されており、体内に導入するとがん治療遺伝子及び免疫チェックポイント阻害剤を発現して兔疫細胞の作用と活性を増加させ、発現したがん治療遺伝子と共に抗がん効能にシナジー効果を奏し、がん治療に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のCRT-122T/ICIの基本構成及び抗がんメカニズムを概略的に示す図である。CRT-122T/ICIとは、がん治療用遺伝子(HSVtk)と免疫チェックポイント阻害剤(ICI)をがん特異的に発現し、3’末端にmiR-122aに対する相補的配列(mir-T)を有するTERT標的トランス-スプライシングリボザイムを発現できるベクターである。
【
図2】PD1scFv(PD1に対するscFv)又はPDL1scFv(PDL1に対するscFv)を発現するCRT-122T/ICIの構成を概略的に示す図である。
【
図3】肝がん細胞株における多様なRZ-001+の細胞死誘導活性を確認し、RZ-001と同等性を確認した結果である。RZ-001+とは、CRT-122T/ICIを含むベクターを発現できるウイルスベクターである。RZ-001とは、がん治療用遺伝子(HSVtk)をがん特異的に発現し、3’末端にmiR-122aに対する相補的配列(mir-T)を有するhTERT標的トランス-スプライシングリボザイムを発現できるウイルスベクターである(特許登録番号;10-2252423)。
【
図4】脳腫瘍細胞株における多様なRZ-001+の細胞死誘導活性を確認し、RZ-001と同等性を確認した結果である。
【
図5】肺がん細胞株及び黒色腫細胞株における多様なRZ-001+の細胞死誘導活性を確認し、RZ-001と同等性を確認した結果である。
【
図6】免疫チェックポイント阻害剤であるscFvPD1(N)又はscFvPD1(I)を発現する安定化細胞株を作製した後、免疫チェックポイント阻害剤の発現レベルを確認した結果である。
【
図7】ヒトPD1(hPD1)又はマウスPD1(mPD1)を発現する細胞溶解物とscFvPD1を発現する安定化細胞株から回収したscFvPD1を反応させた結果である。
【
図8】マウス肝がん細胞株であるHepa1-6細胞でマウスPD1(mPD1)を発現する安定化細胞株を作製した後、mPD1の発現如何を確認した結果である。
【
図9】Hepa1-6細胞及びマウスPD1(mPD1)を発現するHepa1-6細胞(Hepa1-6/mPD1)各々にmRZ-001+を処理した後、ウイルス感染の程度を確認した結果である。mRZ-001+とは、がん治療用遺伝子(HSVtk)と免疫チェックポイント阻害剤(ICI)をがん特異的に発現し、3’末端にmiR-122aに対する相補的配列(mir-T)を有するmouse TERT標的トランス-スプライシングリボザイムを発現できるウイルスベクターである。
【
図10】Hepa1-6、Hepa1-6/mPD1及びHepa1c1c7細胞の各々にmRZ-001+を処理した後、細胞生存率(cell viability)を確認した結果である。
【
図11】Hepa1-6、Hepa1-6/mPD1及びHepa1c1c7細胞の各々にmRZ-001+を処理した後、免疫チェックポイント阻害剤の発現レベルを確認した結果を示す。
【
図12】Hepa1-6細胞にmRZ-001+を処理した後、アポトーシス(apoptosis)レベルをフローサイトメーターで確認した結果を示す。
【
図13】Hepa1-6/mPDL1細胞にmRZ-001+を処理した後、アポトーシスレベルをフローサイトメーターで確認した結果を示す。
【
図14】Hep3b及びSNU398細胞にRZ-001+を処理した後、各細胞における目的遺伝子(HSVtk及びscFv)の発現レベルを測定した結果である。
【
図15】RZ-001+を処理した肝がん細胞株で発現したリボザイムによってTERT mRNAを標的としてトランススプライシングが発生したか否かとその発生位置を確認した結果である。
【
図16】Hep3b及びSNU398細胞にRZ-001+を処理し、PD1/PDL1 blockade bioassayを行った結果である。
【
図17】ヒト肝がん細胞株であるSNU398とヒト脳腫瘍細胞株であるU87MG各細胞におけるPD-L1の発現を確認した結果である。
【
図18】10MOI又は20MOI濃度でRZ-001+を処理したU87MG細胞において免疫チェックポイント阻害剤の発現レベルを確認した結果である。
【
図19】U87MG細胞にRZ-001+の量を増加しながら処理し、PD1/PDL1 blockade bioassayを行った結果である。対照群としてAtezolizumab(anti-PDL1)によるPD1/PDL1 blockade bioassayを行った。
【
図20】
図20A~
図20Cは、PBMC-ヒト化肝がんモデルにおけるRZ-001投与、RZ-001+_At投与、又はRZ-001とAt併用投与(RZ-001/At)による腫瘍の成長阻害及び重量減少と各投与薬物の肝毒性を確認した結果である。
【
図21】orthotopic脳腫瘍syngeneicモデルの各薬物投与群のMRI写真である。
【
図22】orthotopic脳腫瘍syngeneicモデルにおけるmRZ-001投与とmRZ-001+投与による腫瘍サイズ減少の程度を比較して確認した結果である。
【
図23】orthotopic脳腫瘍syngeneicモデルにおけるmRZ-001とmRZ-001+投与群の血清ALT及びASTレベルを確認した結果である。
【
図24】xenograft orthotopic脳腫瘍モデルにおけるRZ-001+の効果確認のための実験概略図である。
【
図25】xenograft orthotopic脳腫瘍モデルにRZ-001又はRZ-001+を投与したマウスの実験経過によるIVIS撮影イメージである。
【
図26】xenograft orthotopic脳腫瘍モデルにおけるRZ-001又はRZ-001+を投与したマウスの実験経過による体重変化を確認した結果である。
【
図27】xenograft orthotopic脳腫瘍モデルにおけるRZ-001又はRZ-001+の抗がん効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、以前の研究でがん特異的遺伝子、具体的には、TERT mRNAを標的とするトランススプライシングリボザイムを用いてがんの増殖及び成長を抑制し、前記リボザイムに目的遺伝子、特にがん治療用遺伝子を結合してがん細胞の死滅を誘導することによってがんを治療し得るトランススプライシングリボザイムとこれを発現するベクターを作製したことがある。
【0033】
以前の研究でトランススプライシングリボザイム発現ベクターはCRT-122Tと命名し、その基本的な構造は以下のような構造を含む。
[5’-プロモーター-TERT targeting ribozyme-目的遺伝子(HSVtk)-miR-122T-3’]
【0034】
CRT-122TでSD/SA及びWPRE配列が追加されたベクターを発現できるウイルスベクターをRZ-001と明記し(KR10-2252423)、RZ-001は多様ながん腫に作用して細胞死を誘導し、腫瘍の成長を抑制してがんの治療に適用可能である。
【0035】
本発明者らは、以前の研究に進み、より効果的にがんの治療が可能なトランススプライシングリボザイム開発のためにリボザイムによって発現する目的遺伝子を2種に拡大し、前記目的遺伝子に免疫チェックポイント阻害剤遺伝子を含めており、前記リボザイムを発現できるベクターとしてCRT-122T/ICIを開発した。本発明のCRT-122T/ICIの基本構造は、以下の通りである(
図1)。
[5’-プロモーター-TERT targeting ribozyme-目的遺伝子-自己切断ペプチド遺伝子-免疫チェックポイント阻害剤遺伝子-miR-122T-3’]
【0036】
一方、本明細書においてCRT-122T/ICIが暗号化する免疫チェックポイント阻害剤によって「/」を基準として後段にターゲット免疫チェックポイントタンパク質又は免疫チェックポイント阻害剤を表記した。例えば、アテゾリズマブ(Atezolizumab)を発現するベクターはCRT-122T/Atと表示する。
【0037】
本発明者らは、具体的な実験によってCRT-122T/ICIは肝がん細胞株、脳腫瘍細胞株、肺がん細胞株及び黒色腫細胞株においてCRT-122Tと類似のレベルの細胞死誘導活性を示した(実施例2)。
【0038】
さらに、本発明者らは、CRT-122T/ICIを発現するアデノウイルス(以下、「RZ-001+」と命名する)を作製し、具体的な実験によって多様な細胞株における作用を確認した。
【0039】
一方、本明細書においてRZ-001+はロードされたCRT-122T/ICIの種類によって、RZ-001+_(ターゲット免疫チェックポイントタンパク質又は免疫チェックポイント阻害剤)に区分して表記した。例えば、CRT-122T/Atを含むアデノウイルスはRZ-001+_Atと表示する。
【0040】
具体的には、RZ-001+でがん細胞を感染させた後、前記がん細胞の生存率を測定してRZ-001+感染によるアポトーシスの程度を確認し、前記RZ-001+感染によるCRT-122T/ICI導入が免疫チェックポイントタンパク質と結合してその機能を遮断できる抗体を発現するのか確認し、続いて前記抗体が円滑に分泌されて作用できるのか確認した。その結果、RZ-001+感染によってがん細胞の細胞死が増加し、前記抗体の発現が増加し、発現した抗体が十分に分泌されることを確認した(実施例5及び6)。
【0041】
続いて、本発明者らは、細胞実験で確認したRZ-001+の抗がん活性が生体内においても同様に発現できることを確認するために多様ながん動物モデルを作製してRZ-001+を投与し、腫瘍のサイズ及び重量を測定した。特に、脳腫瘍の治療薬物としての有効性評価のために、BBBなどの脳内微小環境を模倣するOrthotopic脳腫瘍モデルを作製し、脳腫瘍治療剤としてのRZ-001+の可能性を確認しようとした。その結果、肝がん動物モデル及び脳腫瘍動物モデルの両方において、RZ-001+の処理によって腫瘍のサイズ及び重量が減少した。特に、ヒト化肝がん動物モデルにおいてRZ-001+_At投与群は、RZ-001とAtezolizumabの併用投与群と比較して類似のレベルで腫瘍のサイズを減少させたが、肝毒性において併用投与群よりも低い肝毒性を示したところ、副作用がない、又は少ない抗がん剤として提供され得ることを確認した(実施例7)。さらに、orthotopic脳腫瘍syngeneic同モデルでは、mRZ-001+_I(mCRT-122T_scFvPD1(I))投与群がmRZ-001投与群と比較してより効果的な抗がん能を示した。また、ヒト由来脳腫瘍細胞を移植したXenograft Orthotopic脳腫瘍モデルにおいてもRZ-001+の有効な抗がん活性を確認したところ、本発明者らは細胞内でがん特異的遺伝子をターゲットとし、免疫チェックポイント阻害剤とがん治療物質を発現できるトランススプライシングリボザイムをがん治療のために提供する。
【0042】
本発明のトランススプライシングリボザイムが含む各構成とその基本構造は、以下の通りである。
[5’-がん特異的遺伝子を標的するリボザイム-目的遺伝子-自己切断ペプチド遺伝子-免疫チェックポイント阻害剤遺伝子-miR-122T-3’]
【0043】
前記トランススプライシングリボザイムは、標的する細胞内でがん特異的遺伝子のmRNAと相補結合してその遺伝子を切断し、目的遺伝子以下の転写物を発現させ得る。
【0044】
本発明のトランススプライシングリボザイムは、5’→3’の順にがん特異的遺伝子を標的するリボザイム、目的遺伝子、自己切断ペプチド遺伝子、免疫チェックポイント阻害剤遺伝子、及びmiR-122Tを含み、各構成は、その機能を維持する範囲内で直接的又は間接的な方法で作動可能に連結されたものであってもよく、前記トランススプライシングリボザイムは、特に目的遺伝子の機能を向上させるために各構成間に調節因子をさらに含んでもよい。
【0045】
本発明で使用された「リボザイム」という用語は、酵素のように作用するRNA分子又はそのRNA分子を含むタンパク質で構成される分子であって、RNA酵素又は触媒的RNAとも呼ばれる。明確な三次構造を有するRNA分子で化学反応を行い、触媒的又は自己触媒的特性を有する。いくつかのリボザイムは自己又は他のRNA分子を切断して活性を阻害し、他のリボザイムはリボソームのアミノトランスフェラーゼ(aminotransferase)活性を触媒することと知られている。このようなリボザイムには、ハンマーヘッド(hammerhead)リボザイム、VSリボザイム及びヘアピン(hairpin)リボザイムなどが含まれ得る。
【0046】
本発明によるリボザイムは、グループIイントロンのトランス-スプライシング反応によってがん特異的遺伝子の活性を阻害させ、選択的な抗がん効果を示すことができるだけでなく、がん治療遺伝子と接合された形態で発現してがん治療遺伝子を活性化できる。したがって、がん特異的遺伝子を不活性化し、がん治療遺伝子を活性化できる特性を示すと、いかなる形態のものも使用可能である。
【0047】
本発明によるリボザイムは、好ましくは、上述したhTERT mRNAを標的するリボザイムであってもよく、hTERTが過剰発現するがん細胞を標的としてhTERT mRNAを特異的に切断して発現を抑制させ、目的遺伝子を特異的に発現させる役割を果たすことができる。
【0048】
本発明で使用された用語「トランス-スプライシング(trans-splicing)」は、異なる遺伝子からのRNAを互いに連結することを意味する。好ましくは、がんに特異的なhTERTのmRNAを認知してトランス-スプライシングする能力が検証されたhTERT標的トランス-スプライシンググループIリボザイムを使用するものであってもよい。
【0049】
本発明で使用された「目的遺伝子」という用語は、前記リボザイムによってがん特異的遺伝子のmRNAと連結されて発現が誘導される遺伝子を意味する。
【0050】
本発明による目的遺伝子は、好ましくは、がん治療用遺伝子又はレポーター遺伝子であってもよく、最も好ましくは、がん治療用遺伝子であってもよい。
【0051】
本発明で使用された「がん治療遺伝子(anti-cancer therapeutic gene)」という用語は、がん細胞において発現時治療効果を示すポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチド配列を意味する。前記がん治療遺伝子は、前記リボザイムと接合された形態で発現、又は独立して発現し、抗がん活性を示すことができる。このようながん治療遺伝子は、好ましくは、薬剤感受性遺伝子、アポトーシス遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、細胞毒性遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子、抗原性遺伝子、サイトカイン遺伝子、及び抗新生血管生成遺伝子からなる群より選ばれる1つ以上であってもよく、最も好ましくは、薬剤感受性遺伝子であってもよい。
【0052】
本発明では、前記がん治療遺伝子を単独で使用してもよく、又は2つ以上の遺伝子を複合的に使用してもよい。
【0053】
本発明による薬剤感受性遺伝子(drug-sensitizing gene)は、毒性のない前駆体(prodrug)を毒性物質に変換する酵素をコードする遺伝子であって、遺伝子が導入された細胞が死滅するため、自殺遺伝子(suicide gene)とも呼ばれる。すなわち、正常細胞には毒性のない前駆体を全身的に投与したとき、がん細胞のみに前駆体が毒性代謝体(toxic metabolite)に転換され、薬剤に対する感受性を変化させることでがん細胞を破壊させる方法である。このような薬剤感受性遺伝子は、好ましくは、ガンシクロビル(ganciclovir)を前駆体とするHSVtk(Herpes simplex virus-thymidine kinase)遺伝子、又は5-フルオロシトシン(5-fluorocytosine、5-FC)を前駆体とする大膓菌のサイトシン脱アミノ酵素(cytosine deaminase、CD)遺伝子であってもよく、最も好ましくは、HSVtk遺伝子であってもよい。
【0054】
本発明によるアポトーシス遺伝子(proapoptotic gene)は、発現するとプログラムされた細胞死を誘導するヌクレオチド配列を指す。当業者に公知されたアポトーシス遺伝子であって、p53、アデノウイルスE3-11.6K(Ad2及びAd5由来)又はアデノウイルスE3-10.5K(Ad由来)、アデノウイルスE4遺伝子、p53経路遺伝子及びカスパーゼをコードする遺伝子が含まれ得る。
【0055】
本発明による細胞増殖抑制遺伝子(cytostatic gene)は、細胞内で発現して細胞週期途中に細胞週期を停止させるヌクレオチド配列を意味する。その例として、p21、網膜芽細胞腫遺伝子、E2F-Rb融合タンパク質遺伝子、サイクリン-従属性カイネーゼ抑制因子をコードする遺伝子(例えば、p16、p15、p18及びp19)、成長中止特異的ホメオボックス(growth arrest specific homeobox、GAX)遺伝子などがあり、これらに制限されるものではない。
【0056】
本発明による細胞毒性遺伝子(cytotoxic gene)は、細胞内で発現して毒性効果を示すヌクレオチド配列を指す。その例として、シュードモナス外毒素(exotoxin)、リジン毒素、ジフテリア毒素などをコードするヌクレオチド配列などがあり、これらに制限されるものではない。
【0057】
本発明による腫瘍抑制因子遺伝子(tumor suppressor gene)は、標的細胞内で発現して腫瘍表現型を抑制することができるかアポトーシスを誘導することができるヌクレオチド配列を意味する。代表的には、腫瘍壊死因子(tumor necrosisfactor-α、TNF-α)、p53遺伝子、APC遺伝子、DPC-4/Smad4遺伝子、BRCA-1遺伝子、BRCA-2遺伝子、WT-1遺伝子、網膜芽細胞腫遺伝子、MMAC-1遺伝子、腺腫瘍ポリープ症コイルタンパク質(adenomatous polyposis coil protein)、欠損結腸腫瘍(DCC)遺伝子、MMSC-2遺伝子、NF-1遺伝子、染色体3p21.3に位置する鼻咽喉腫瘍抑制因子遺伝子、MTS1遺伝子、CDK4遺伝子、NF-1遺伝子、NF-2遺伝子、VHL遺伝子又はsPD-1(programmed death-1)が含まれ得る。
【0058】
本発明による抗原性遺伝子(antigenic gene)は、標的細胞内で発現し、免疫システムで認識できる細胞表面抗原性タンパク質を生産するヌクレオチド配列を指す。当業者に公知された抗原性遺伝子の例として、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen、CEA)及びp53が含まれ得る。
【0059】
本発明によるサイトカイン遺伝子(cytokine gene)は、細胞内で発現し、サイトカインを生成するヌクレオチド配列を意味する。代表的には、GMCSF、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-4、IL-12、IL-10、IL-19、IL-20)、インターフェロンα、β、γ(インターフェロンα-2b)及びインターフェロンα-2α-1などの融合体などが含まれ得る。
【0060】
本発明による抗-新生血管生成遺伝子(anti-angiogenic gene)は、発現して抗-新生血管生成因子を細胞外に放出するヌクレオチド配列を指す。その例として、アンジオスタチン、血管内皮成長因子(VEGF)の抑制因子、エンドスタチンなどが含まれ得る。
【0061】
本発明で使用された用語「HSVtk(Herpes simplex virus-thymidine kinase)」は、単純ヘルペスウイルスから由来するチミジンリン酸化酵素を意味する。この酵素は、毒性のない前駆体(prodrug)を毒性物質に変換することによって、その遺伝子が移入された細胞を死滅させる薬剤感受性遺伝子の代表的な例である。本発明において、HSVtk遺伝子は、本発明によるリボザイムに接合した形態で発現し、抗がん活性を示すがん治療遺伝子として使用され得る。このようなHSVtk遺伝子は、好ましくは、ジンバンク(genbank)登録番号AAP13943、P03176、AAA45811、P04407、Q9QNF7、KIBET3、P17402、P06478、P06479、AAB30917、P08333、BAB84107、AAP13885、AAL73990、AAG40842、BAB11942、NP_044624、NP_044492、CAB06747などに記載されたものであってもよい。
【0062】
本発明で使用された用語「レポーター遺伝子」は、本発明の一例による組換えベクターの導入如何又はリボザイムの発現効率をモニターするために使用される遺伝子であって、感染細胞又は組職の損傷なしにモニターすることができる遺伝子であれば制限なく使用され得る。好ましくは、ルシフェラーゼ(luciferase)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、変形された緑色蛍光タンパク質(modified green fluorescent protein;mGFP)、増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescentprotein;EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、変形された赤色蛍光タンパク質(modified red fluorescent protein;mRFP)、増強された赤色蛍光タンパク質(ERFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、増強された青色蛍光タンパク質(EBFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強された黄色蛍光タンパク質(EYFP)、藍色蛍光タンパク質(CFP)又は増強された藍色蛍光タンパク質(ECFP)であってもよい。
【0063】
目的遺伝子としてレポーター遺伝子を挿入してがん細胞特異的なリボザイムの発現の程度を観察することができ、特に、本発明のリボザイムは、プロモーター及びマイクロRNA標的サイトを含んでおり、正常細胞では発現せず、がん細胞特異的に発現できる。これを用いて特定の組職でがんが発生したか否かを診断するのに適用できることは当業者に自明である。
【0064】
本明細書においてmiR-122の一部又は全部と相補的な塩基配列は、miR-122T(microRNA-122 target site)と命名される。本発明においてmiR-122Tは、miR-122と相補結合してdsRNAを形成することができれば、具体的な配列に差があっても構わない。miR-122Tは、前記miR-122の一部又は全部と相補的な塩基配列を1回以上含むことができ、例えば、1回~10回、好ましくは1回~5回、さらに好ましくは1回~3回繰り返して含むことができる。miR-122は正常肝細胞では正常に発現するが、肝がん細胞では発現量が減少する特徴がある。これを用いて肝がん細胞に対する敏感度及び特異度を増加させた治療剤を開発することができ、本発明では、目的遺伝子が連結されたリボザイムにmiR-122を認識する核酸配列を連結することで肝がん細胞特異的なリボザイムの発現が行われるようにした。
【0065】
本発明で使用された「がん特異的遺伝子」という用語は、がん細胞においてのみ特異的に発現する、又は著しく過剰発現する遺伝子を意味する。前記がん特異的遺伝子は、本発明によるリボザイムががん特異的に作用し得る特徴を付加することができる。このようながん特異的遺伝子は、好ましくは、TERT(Telomerase reverse transcriptase)mRNA、AFP(alphafetoprotein)mRNA、CEA(carcinoembryonic antigen)mRNA、PSA(Prostate-specific antigen)mRNA、CKAP2(Cytoskeleton-associated protein 2)mRNA、又はmutant RAS(Rat sarcoma)mRNAであってもよく、さらに好ましくは、TERT(Telomerase reverse transcriptase)mRNAであってもよく、最も好ましくは、hTERT(human telomerase reverse transcriptase)mRNA配列であってもよい。本発明のトランススプライシングリボザイムは、前記がん特異的遺伝子を標的としてトランススプライシングを誘導してリボザイムと連結された目的遺伝子を発現させることで、膠芽腫細胞株、黒色腫細胞株、肝がん細胞株、及び肺がん細胞株における細胞死誘導効果を確認した。
【0066】
本発明で使用された用語「TERT(Telomerase reverse transcriptase)」は、がん細胞の永続性(immortality)及び増殖(proliferation)能力を調節する最も重要な酵素の1つであって、染色体に末端小粒(telomere)構造を形成して染色体末端を保護する役割を通じて細胞の老化を抑制する酵素を意味する。正常な細胞では、細胞が分裂するたびに末端小粒の長さが少しずつ短くなり、結局、遺伝物質が失われ、細胞が死滅する。しかし、がん細胞では、この酵素が末端小粒を継続的に延長させるため、細胞が死滅せず、がん細胞の不滅性に直接寄与することでがんを治療するのに重大な障害要素として知られている。本発明では、がん特異的遺伝子としてhTERT mRNAを使用することができるが、これに制限されない。
【0067】
本発明で使用された用語「遺伝子送達システム(gene delivery system)」は、目的する遺伝子及び/又は核酸配列の細胞内部への送達効率を高め、発現効率を増加させ得るシステムを意味し、ウイルス媒介システム及び非ウイルスシステムに分類することができる。
【0068】
ウイルス媒介システムは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターなどのウイルス性ベクターを使用し、ヒト細胞に感染を引き起こすウイルス固有の細胞内浸透メカニズムを利用するので、非ウイルス性システムよりも細胞内遺伝子送達効率が比較的高いと知られている。また、細胞内に入った後、非ウイルス性ベクターはエンドソームがリソソームと融合してからエンドリソソームで遺伝子が分解する問題点があるが、ウイルス性ベクターはリソソームを通過せず、核内に遺伝子を送達するメカニズムによって遺伝子の損失が小さいため、遺伝子送達効率が高い長所がある。
【0069】
本発明で使用され得るウイルス性ベクターは、前記組換えベクターで説明したように、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどに由来したベクターであり得る。このようなウイルス性ベクターは、ウイルス粒子に組み立てられた後、感染(infection)などの形質導入(transduction)方法によって細胞内部に導入することができる。
【0070】
本発明の一実施例において、遺伝子トランスポーターの例として、上述した組換えベクターを含む組換えアデノウイルスを考案した。すなわち、前記組換えアデノウイルスは、がん特異的遺伝子に特異的なトランス-スプライシングリボザイムを発現する組換えベクターを目的とする細胞(例えば、がん細胞)に送達する機能を行い、細胞内に送達された組換えベクターは、細胞内転写システムによって発現する。発現したトランス-スプライシングリボザイムは、がん細胞内に多く存在するがん特異的遺伝子の転写物にリボザイムに連結された目的遺伝子を挿入することができる。
【0071】
本明細書において、RZ-001はCRT-122Tを発現するアデノウイルスを意味し、RZ-001+はCRT-122T/ICIを発現するアデノウイルスを意味する。
【0072】
前記非ウイルス性システムは、核酸及び/又は遺伝子の送達媒介体としてカチオン性脂質トランスポーター又はカチオン性高分子トランスポーターなどを利用するか電気穿孔法を使用する方法である。
【0073】
カチオン性脂質トランスポーターは、主にカチオン性脂質からなるナノメートルサイズのリポソームや脂質素材ナノ粒子の正電荷を利用して負電荷である遺伝子、遺伝子を含む発現ベクター又は核酸と複合体を形成させた後、この複合体を貪食作用として細胞内に送達する方法である。細胞内に送達された複合体は、エンドソームからリソソームに一次送達された後、細胞質に出て発現する。カチオン性高分子トランスポーターは、脂質の代わりに高分子を使用することを除いて、カチオン性脂質トランスポーターと同様の方式で遺伝子を送達し、代表的なカチオン性高分子としては、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)、ポリリジン(poly-L-lysine)、キトサン(chitosan)などがある。
【0074】
したがって、本発明の組換えベクターがカチオン性脂質トランスポーター又はカチオン性高分子トランスポーターと結合して形成された複合体は、遺伝子トランスポーターとして使用され得る。
【0075】
本発明において、前記遺伝子送達システムは、上述した組換えベクターを含み、ウイルス媒介システム及び非ウイルスシステムの両方が使用されるが、ウイルス媒介システムを使用するのが望ましい。
【0076】
本発明で使用された用語「ベクター」は、過度な宿主細胞において目的遺伝子を発現できる発現ベクターであって、ベクター内に含まれた遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された調節要素を含む遺伝子構造物を指す。
【0077】
本発明で使用された用語「作動可能に連結された(operably linked)」は、一般的な機能を行う核酸発現調節配列と目的とする遺伝子をコードする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されていることを指す。本発明のリボザイム又はベクターにおける各構成は、直接的な連結であると明示しない限り、互いに作動可能に連結されたものとみなされる。
【0078】
例えば、リボザイム暗号化配列をプロモーターに作動可能に連結させると、リボザイム暗号化配列の発現はプロモーターの影響又は調節下にあるようになる。2つの核酸配列(リボザイム暗号化配列及びこの配列の5’末端のプロモーター部位配列)は、プロモーター作用が誘導されてリボザイム暗号化配列が転写されると作動可能に連結されたものであり、前記2つの配列間の連結特性がフレーム変更突然変異(frameshift mutation)を誘導せず、発現調節配列がリボザイムの発現を阻害しないと作動可能に連結されたものとみることができる。組換えベクターとの作動可能な連結は、当該技術分野において周知の遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位-特異的DNA切断及び連結は、当該技術分野において一般的に知られている酵素などを用いることができる。
【0079】
本発明によるベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサーなどの発現調節要素に加えて、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列又はリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造され得る。また、本発明のベクターは、細胞内でトランススプライシングリボザイムの発現レベルを増加させ得る調節因子をさらに含むことができる。リボザイムの発現増加のための調節因子の非制限的な例としては、スプライシング供与/スプライシング授与配列(SD/SA)及びWPREがある。ベクターのプロモーターは構成的又は誘導的であり得る。さらに、発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合、複製起点を含むことができる。ベクターは自己複製するか宿主DNAに統合され得る。
【0080】
本発明によるベクターは、好ましくは、プラスミドベクター、コズミドベクター又はウイルスベクターなどであってもよく、最も好ましくは、ウイルスベクターであってもよい。前記ウイルスベクターは、好ましくは、レトロウイルス(Retrovirus)、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus、HIV)、マウス白血病ウイルス(Murine leukemia virus、MLV)、鳥肉腫/白血病ウイルス(Avian sarcoma/leucosis virus、ASLV)、脾臓壊死ウイルス(Spleen necrosis virus、SNV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus、RSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(Mouse mammary tumor virus、MMTV)など、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ関連ウイルス(Adeno-associated virus、AAV)、又はヘルペスシンプレックスウイルス(Herpes simplex virus、HSV)などに由来するベクターであってもよいが、これらに制限されない。本発明による組換えベクターは、最も好ましくは、組換えアデノウイルスベクターであってもよい。
【0081】
本発明で使用された「プロモーター」という用語は、DNAの一部として転写を開示することができるようにRNA重合酵素の結合に関与する。一般的に、標的遺伝子に隣接してこの上流に位置し、RNA重合酵素又はRNA重合酵素を誘導するタンパク質である転写因子(transcription factor)が結合する部位であって、前記酵素又はタンパク質が正しい転写開始部位に位置するように誘導することができる。すなわち、センス鎖(sense strand)から転写しようとする遺伝子の5’部位に位置し、RNA重合酵素が直接又は転写因子を介して該当位置に結合して標的遺伝子に対するmRNA合成を開示するように誘導することで特定の遺伝子配列を有する。
【0082】
一方、本発明のトランススプライシングリボザイムは、様々ながん腫において細胞死誘導活性を有し、肝毒性がないか非常に低いので、がんの治療のために利用することができる。
【0083】
本発明で使用された「がん」という用語は、細胞の正常的な分裂、分化及び死滅の調節機能に問題が生じ、非正常的には過剰増殖して周囲組職及び臓器に浸潤して塊を形成し、既存の構造を破壊するか変形させた状態を意味する。
【0084】
本発明によるがんは、好ましくは、肝がん、膠芽腫、胆道がん、肺がん、膵膓がん、黒色腫、骨がん、乳房がん、大膓がん、胃がん、前立腺がん、白血病、子宮がん、卵巣がん、リンパ腫、又は脳がんであってもよく、さらに好ましくは、肝がん、肺がん、黒色腫、膠芽腫、及び/又は胆道がんであってもよく、最も好ましくは、肝がん及び/又は脳がんであってもよい。
【0085】
また、本発明によるがんは、好ましくは、がん組職で発現するmiR-122のコピー数(発現量)が前記医薬組成物によってがん組職で発現するリボザイムのコピー数の100倍未満であってもよい。
【0086】
一方、本発明者らは、以前の研究で細胞死を誘導し得るmiR-122Tを保有したhTERT標的リボザイムの発現量と細胞内miR-122の発現量を比較した結果、リボザイムに対するmiR-122の比率が高くなるほどリボザイムの発現が減少し、細胞死誘導効果が減少することを確認した。したがって、がん組職内のmiR-122発現量によって抗がん効果を示すためのリボザイムの量を類推してリボザイムを発現するアデノウイルスの注入量を決定することができる。具体的には、miR-122の最小コピー数がリボザイムコピー数の約100倍以上であれば、miR-122標的部位を有するリボザイムの機能(発現)が弱くなるので、がん組職で発現するmiR-122のコピー数が本発明による医薬組成物によってがん組職で発現するリボザイムのコピー数の100倍未満であれば、高い抗がん効能が得られることが分かる。
【0087】
さらに、本発明によるがんは、好ましくは、がん組職でmiR-122が実質的に発現しないがんであってもよい。前記「がん組職でmiR-122が実質的に発現しないがん」とは、がん組職でmiR-122が発現するが、miR-122標的部位を有するリボザイムの機能に実質的な影響を及ぼさない程度にがん組職で発現するmiR-122のコピー数が少ないがんを意味する。
【0088】
本発明者らは、既研究によってがん組職でmiR-122が実質的に発現しない大膓がん、膠芽腫、黒色腫、子宮頸部がん、肺がん、骨肉種、乳房がん及び胆道がん細胞株において本発明によるリボザイムの抗がん効能を確認した。
【0089】
本発明において免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint inhibitor:ICI)は、T細胞の免疫機能維持のためのPD-L1とPD-1の結合阻害機能などを行うものであって、腫瘍内部に浸潤されたT-cellの活性を抑制するPD-1又はPDL-1を阻害するので、T-cellの活性を最大化して抗がん効果を高めることができる。本発明は、具体的な実験で本発明のリボザイムに配列番号1~3の免疫チェックポイント阻害剤発現配列を含ませて細胞内で発現を誘導し、その機能を確認したが、T-cell活性のために免疫チェックポイントタンパク質を標的とする免疫チェックポイント阻害剤であれば制限されない。
【0090】
本発明で使用された「予防」という用語は、本発明による併用物又は医薬組成物の投与でがんを抑制するか発症を遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0091】
本発明で使用された「治療」という用語は、本発明による併用物又は医薬組成物の投与でがんが好転するかその症状を有利に変更するあらゆる行為を意味する。
【0092】
本発明による医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、カルシウムシリケート、カルシウムカーボネート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0093】
本発明の医薬組成物は、目的とする方法によって経口投与又は非経口投与することができるが、非経口投与することが好ましい。
【0094】
本発明の一実施例によると、本発明による医薬組成物は、静脈内、動脈内、がん組織内又は皮下に直接投与することができ、注射剤として投与することができる。本発明による注射剤は、患者に投与時、そのまま利用できるように滅菌媒質に分散した形態であってもよく、投与時に注射用蒸溜水を加えて適切な濃度で分散させた後、投与する形態であってもよい。また、注射剤として製造されるとき、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などと混合することができ、単位投薬アンプル又は多重投薬形態で製造され得る。
【0095】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択される。一方、本発明による医薬組成物は、単独で使用されるか、又は外科的手術療法などの補助治療方法と並行して使用され得る。
【0096】
以下、添付の図面を参照して実施例を詳細に説明する。しかし、実施例には様々な変更が加えられるので、特許出願の権利範囲がこれらの実施例によって制限又は限定されるものではない。実施例に対する全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれると理解されるべきである。
【0097】
実施例で使用した用語は単に説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図として解釈されるべきではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、本明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないことを理解されたい。
【0098】
別途の定義がない限り、技術的又は科学的な用語を含み、ここで使用される全ての用語は、実施例が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願で明らかに定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されない。
【0099】
なお、添付図面を参照して説明するにあたって、図面符号にかかわらず同一の構成要素には同一の参照符号を付し、これに対する重複する説明は省略する。実施例を説明する際に関連した公知技術についての具体的な説明が実施例の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0100】
実施例1.免疫チェックポイント阻害剤発現トランス-スプライシングリボザイムの作製
既存に作製したトランス-スプライシングリボザイムを変形した組換えベクターを考案した。具体的には、CMVプロモーターを含み、hTERT mRNAの+21番uridineを含む部位を標的とし、326ヌクレオチド長のアンチ-センス(anti-sense)を保有し、miR122標的部位であるmiR-122Tを有し、治療遺伝子としてHSV-tkを保有するトランス-スプライシングリボザイム発現コンストラクトでHSV-tkの末端にペプチド切断部位をコードする核酸配列であるP2Aと免疫チェックポイント阻害剤発現配列をさらに導入した。
【0101】
免疫チェックポイント阻害剤としては、当技術分野で公知されたPD1抗体、PDL1抗体配列を応用して作製したscFvPD1(single chain variable fragment PD1)とscFvPDL1を利用した。本発明では、scFvPD1はアミノ酸配列に差がある2種抗体を使用し、各2種抗体を暗号化する遺伝子は、配列番号1及び2に示した(以下、各々scFvPD1(I)及びscFvPD1(N)と記載する)。また、scFvPDL1を暗号化する遺伝子配列は、配列番号3に示した(以下、scFvPDL1(A)と記載する)。
【0102】
免疫チェックポイント阻害剤の末端には、フラッグタッグ(FLAG Tag)配列を導入し、コンストラクト(construct)の3’末端部位には3コピー(copy)のmiR-122Tを挿入してmiR-122によってリボザイムの発現が調節できるようにした。
【0103】
一方、リボザイムがマウスTERT(mTERT)mRNAの+67番uridineを含む部位を標的し、100ヌクレオチド長のアンチ-センスを保有することのみを除いて、前記と同一の構成を含む組換えベクター(mCRT-122T/免疫チェックポイント阻害剤)も作製した。
【0104】
考案されたトランス-スプライシングリボザイムの発現ベクターはmCRT-122T/ICIと命名し、このベクター構造を
図2に示した。
【0105】
一方、以下の実験では、以前の研究で作製されたmCRT-122TとmCRT-122T/ICIの活性を比較して確認し、mCRT-122Tの構造は以下の通りである。
5’-CMVプロモーター-mTERT ribozyme-HSVtk-miR-122T(3X)-3’
【0106】
一方、CRT-122T/ICIベクターを発現するアデノウイルスは、RZ-001+と、mCRT-122T/ICIベクターを発現するアデノウイルスはmRZ-001+と各々命名し、CRT-122Tベクターを発現するアデノウイルスは、RZ-001と命名した。
【0107】
実施例2.RZ-001+細胞死誘導実験によるRZ-001と同等性の確認
2-1.ヒト肝がん細胞株における同等性の確認
以前の研究で作製されたRZ-001と同等性を比較するために、ヒト肝がん細胞株における細胞死誘導実験を行った。
【0108】
具体的には、SNU398及びHep3bを96ウェルプレートに1×104cells/well/100ulで分注し、翌日使用した培地を除去した後、FBS2%培地でRZ-001とRZ-001+を異なる感染多重度(Multiplicity of Infection、MOI)で処理した(0.01~10MOI)。ウイルス処理24時間後、2日間隔で3回100uM GCVを処理した。最後にGCVを処理した翌日、各ウェルごとに10ul EZ-Cytox regent(DOGEN、EZ-1000)を処理し、37℃で培養後、Abs450nmで吸光度を測定した。
【0109】
その結果、RZ-001又はRZ-001+処理濃度が増加するにつれて肝がん細胞のアポトーシスが増加することを確認し、免疫チェックポイント阻害剤遺伝子追加によるhTERT targeting ribozymeによる細胞死誘導活性に問題がないことが分かった。また、免疫システムの部材条件であるin vitro細胞株レベルでRZ-001+はRZ-001とhTERT targeting ribozymeによる活性が同等であることが分かった(
図3)。
【0110】
2-2.ヒト脳腫瘍細胞株における同等性の確認
ヒト脳腫瘍細胞株U87MGを96ウェルプレートに1×104cells/well/100ulで分注し、翌日使用した培地を除去した後、FBS2%培地でRZ-001とRZ-001+を各々様々な濃度で処理した(0.01~10MOI)。ウイルス処理24時間後、2日間隔で3回100uM GCVを処理した。最後にGCVを処理した翌日、各ウェルごとに10ul EZ-Cytox regent(DOGEN、EZ-1000)を処理し、37℃で培養後、Abs450nmで吸光度を測定した。
【0111】
Mockは、transgeneが含まれないのでtransgeneを発現しないadenovirus controlとして使用され、adenovirus感染による非特異的な細胞死誘導がないことを確認するためのnegative controlとして使用した。また、CTは、CMV-HSVtkとして、HSVtkによるGCVリン酸化によって発生する細胞死誘導確認のためのpositive controlとして使用した。
【0112】
吸光度測定結果から、RZ-001及び全てのRZ-001+処理群で細胞死が誘導されることが確認できた。上記から全てのRZ-001+は脳腫瘍細胞においても細胞死誘導活性を示しており、特に、0.5MOI以上では全てのRZ-001+がRZ-001と同一の効果を示すことが分かる(
図4)。
【0113】
2-3.肺がん細胞株及び黒色腫細胞株における同等性の確認
ヒト肺がん細胞株であるA549細胞株とヒト黒色腫細胞株A375P及びA375SMを対象にRZ-001+のアポトーシス効果を確認しようとした。各細胞株を96ウェルプレートに1×104cells/well/100ulで分注し、翌日使用培地をFBS2%培地に交換した後、RZ-001+を濃度を異にして処理した。ウイルス処理翌日から2日間隔で3回100uM濃度のGCVを処理し、最後にGCV処理24時間後、各ウェルに10ul EZ-Cytox regent(DOGEN、EZ-1000)を処理して37℃で培養し、Abs450nmで吸光度を測定した。
【0114】
その結果、RZ-001+は黒色腫細胞と肺がん細胞のアポトーシスを誘導し、1MOI以上でRZ-001+_PD1(I)を除くRZ-001+がRZ-001と類似のレベルの細胞死誘導活性を示すことが分かった(
図5)。
【0115】
実施例3.免疫チェックポイント阻害剤発現安定化細胞株の作製
3-1.安定化細胞株の作製
上記実施例1で作製したベクターの効果を確認する前に、免疫チェックポイント阻害剤を発現する安定化細胞株(stable cell line)を下記のように作製した。
【0116】
293A細胞を35mmの培養皿に2×105個分注した後、37℃5%CO2インキュベーターで24時間培養した。その後、各々の免疫チェックポイント阻害剤発現ベクター1μgとOpti-MEM 100ulを1.5mlチューブに入れて混合し、Lipofectamine 2000 5ulと無血清培地100ulを別の1.5mlチューブに入れて混合した後、5分間常温に放置した。その後、前記2つのチューブの内容物を混合し、リポソーム(liposome)形態の複合体を形成するために20分間常温で保管した。20分後、チューブを10秒間遠心分離した後、各々の細胞の上に振りかけて形質注入(transfection)し、4時間後、新しい培地に交換した。37℃5%CO2インキュベーターで24時間培養した後、1X PBSで細胞を洗浄し、トリプシン(trypsin)を処理して細胞を引き離した後、100mmの培養皿に移して培養した。2日~3日に一回ずつ、抗生剤であるジェネティシン(geneticin、G418)を5μg/mlの濃度で含む培地に交換した。細胞クローンを選別して各々を育てた後、免疫チェックポイント阻害剤の発現如何を確認した。
【0117】
細胞上澄み液からタンパク質を分離してウエスタンブロッティングを行い、細胞からRNAを抽出してRT-PCRで免疫チェックポイント阻害剤の発現レベルを確認した。
【0118】
3-2.免疫チェックポイント阻害剤の発現如何及び親和度の確認
前記3-1で作製した安定化細胞株を培養した後、細胞上澄み液(supernatant)からタンパク質を分離してウエスタンブロッティングを行い、細胞からRNAを抽出してRT-PCRで免疫チェックポイント阻害剤の発現如何を確認した。
【0119】
その結果、293A細胞に導入した免疫チェックポイント阻害剤がいずれも良好に発現することが確認でき(
図6のA)、mRNAレベルを確認した結果、よく発現することが確認できた(
図6のB)。
【0120】
3-3.発現したscFvPD1の親和度の確認
ヒトPD1(hPD1)又はマウスPD1(mPD1)を発現する細胞を培養して細胞溶解物を製造し、これを96-ウェルプレートに付着させた。その後、前記2-1の安定化細胞株培養液から回収したscFvPD1(I)と反応させて抗体親和度をELISA方法で確認した。対照群としては293A細胞培養液を使用した。その結果、細胞溶解物の濃度が増加するほど吸光度が増加することを確認し、scFvPD1(I)が抗体としてよく機能することが分かった(
図7)。
【0121】
3-4.マウスPDL1発現安定化細胞株の作製
がん治療遺伝子と免疫チェックポイント阻害剤同時発現の併用効果を確認するために、上記実施例2-1と同一の方法でマウスPDL1(mPDL1)を発現する安定化細胞株を作製した。簡単に説明すると、マウス由来肝がん細胞株であるHepa1-6細胞株にmPDL1/pCMV6を導入し、ジェネティシンを処理して3週間細胞クローンを選別した。選別された細胞クローンを培養してmPDL1の発現レベルを確認した結果、他のマウス肝がん細胞株(Hepa1-6、Hepa1c1c7)と比較して高レベルでmPDL1が発現することが確認できた(
図8)。
【0122】
以下、mPDL1が導入されたHepa1-6安定化細胞株は、Hepa1-6/mPDL1と記載する。
【0123】
実施例4.Hepa1-6安定化細胞株におけるRZ-001+発現ベクターの効果の確認
4-1.感染テスト
Hepa1-6又はHepa1-6/mPDL1細胞株に、上記実施例1で作製したmRZ-001+を10MOI濃度で処理した。
【0124】
使用したベクターは、以下の通りである。
mCRT-122T(CMVプロモーター+mTERTリボザイム+HSVtk+miR-122T(3X))、
mCRT-122T/scFvPD1(I)(CMVプロモーター+mTERTリボザイム+HSVtk+scFvPD1(I)+miR-122T(3X))、
ウイルス処理24時間後に細胞からgenomic DNAを抽出し、E4を標的するRT-PCRを行ってウイルス感染の程度を確認した。
【0125】
その結果、各試験群においてE4のCt平均値が類似のレベルで現れることが確認できた(
図9)。
【0126】
4-2.細胞生存率の確認
Hepa1-6、Hepa1-6/mPDL1及びHepa1c1c7細胞の各々を96-ウェルに1×104個分注した後、上記実施例1で作製したmRZ-001+発現ベクターを含むアデノウイルスを異なるMOIで処理した。アデノウイルス処理24時間後、GCV(ganciclovir)を細胞培養液に希釈して最終濃度100μMにした後、各ウェルに添加した。2日間隔で合計3回のGCVを処理し、最後にGCV処理24時間後にMTS assay試薬を入れた後、450nmの波長で吸光度を測定して細胞生存率を確認した。
【0127】
確認の結果、対照群(EGFP)と比較してリボザイム発現ベクターを処理した実験群でアポトーシスが増加することが分かり、特に、mCRT-122T処理群と比較して免疫チェックポイント阻害剤発現ベクター処理群(mCRT-122T/scFvPD1(I))でアポトーシスレベルが著しく高いことが確認できた(
図10)。
【0128】
4-3.PD1又はPDL1抗体の発現比較
Hepa1-6、Hepa1-6/mPDL1及びHepa1c1c7細胞に免疫チェックポイント阻害剤発現ベクターを含むアデノウイルスを50MOIで処理し、24時間後に細胞からタンパク質を分離して免疫チェックポイント阻害剤の発現レベルを確認した。タンパク質の予想サイズは、シグナルペプチドを含めて約28kDaである。
【0129】
確認の結果、3種の細胞株のいずれにも免疫チェックポイント阻害剤が発現した(
図11)。
【0130】
4-4.アポトーシスの効能
Hepa1-6及びHepa1-6/mPDL1細胞の各々を6-ウェルプレートに2×105個ずつ分注し、mRZ-001+発現ベクターを含むアデノウイルスを5MOIで処理した。ウイルス処理24時間後にGCVを細胞培養液に希釈して最終濃度100μMにした後、各ウェルに添加した。24時間さらに培養した後、プロピジウムヨージド(Propidium iodide、PI)を各ウェルに処理してフローサイトメーターでアポトーシス(apoptosis)の程度を分析した。
【0131】
分析の結果、Hepa1-6及びHepa1-6/mPDL1細胞のいずれもmCRT-122Tベクター処理群ではGCV処理によって初期アポトーシスレベルはほとんど変化がないが、免疫チェックポイント阻害剤発現ベクター処理群では、GCV処理後、初期アポトーシスが著しく増加することが分かった(
図12及び
図13)。
【0132】
実施例5.ヒト肝がん細胞株におけるRZ-001+発現ベクターの導入
5-1.RZ-001+導入による免疫チェックポイント阻害剤分泌の確認
ヒト肝がん細胞株であるHep3bとSNU398細胞を60π culture dishに1×106cells分注し、翌日使用培地をFBS2%培地に交換した後、RZ-001+発現ベクターを含むアデノウイルスを30MOI処理した。ウイルス処理後、48時間経過時の培地を15mlチューブに入れ、1,500rpmで5分間遠心分離してcentrifugeして細胞残渣を除去した。各々のサンプルを10k centriconに移し、3,000rpmで15~30分間濃縮し、サンプルの総容積が500ulになるようにした。濃縮されたサンプルを5x sample bufferを使用してサンプルを作製し、100℃で5minの間denaturationを誘導した。用意したサンプルを12%SDS-PAGEに40ulずつロードした。各細胞はPBSで洗浄して収穫し、RIPA bufferを入れて4℃で20分間処理後、13,000rpmで10分間遠心分離して上層液を取り、前記上層液を新しいチューブに移し、BCA定量法によって定量した。定量したタンパク質は30ug/wellになるようにサンプルを作製し、上記と同様にSDS-PAGEロードした。PAGE分離が終わったら、PVDFに移し、5% skim milk in PBS-Tで30分間blockingを進行し、anti-FLAGを1:1,000に希釈して4℃、O/N反応させた。翌日、PBS-Tで洗浄した後、二次抗体anti-mouse/HRPを1:2,000に希釈して1時間反応後、ECL solutionで発現量を検出した。
【0133】
その結果、RZ-001+を処理した肝がん細胞株からscFvが分泌されることを確認した。特に、RZ-001+_PDL1(At)で最も高いscFv分泌レベルを確認することができた。上記から、RZ-001+発現ベクターが導入された細胞がscFvを活発に分泌し、RZ-001+ががん細胞に適用され得ることが分かる(
図14)。
【0134】
5-2.RZ-001+導入によるトランススプライシング反応の確認
実施例5-1でアデノウイルスを処理した肝がん細胞株において、RZ-001+がターゲットとするTERT mRNAを効果的にトランススプライシングするかを確認しようとした。実施例5-1で30MOIウイルスを処理した細胞をウイルス処理48時間後、TRIzolを使用してRNAを用意して定量した。RT kit(Genet bio #SR3000)を使用して3ug RNAと1uL RT primerを混合して反応させた(50℃60min、70℃10min)。下記表1のプライマープリミクス(バイオニア、#k-2611)を使用してPCRを進行し、PCRは、95℃30sec、59℃30sec、72℃30sec条件で40cycleを行った。次いで、増幅産物を2% agarose gelに電気泳動してターゲットサイズのバンドを確認した。前記ターゲットサイズバンドでgel elutionを通じてTA vectorを使用してクローニングを進行し、塩基配列分析を行った。
【0135】
【0136】
その結果、RZ-001+を処理した肝がん細胞株サンプルでトランス-スプライシングが起こったときに生じ得るproduct sizeのバンドを確認することができ、前記バンドのproduct塩基配列は標的遺伝子のターゲット部位でトランススプライシングが発生したことが確認された。上記から、RZ-001+は導入された肝がん細胞において標的遺伝子と標的部位に正確に反応してトランス-スプライシング反応が誘導できることが分かる(
図15)。
【0137】
5-3.分泌された免疫チェックポイント阻害剤のbioactivityの確認
続いて、RZ-001+が導入された肝がん細胞株が分泌する免疫チェックポイント阻害剤が効果的に免疫チェックポイントタンパク質と結合してそのシグナルを遮断できるかを確認するために、PD1/PDL1 blockade bioassay(Promega、#J1250)を行った。PD1/PDL1 blockade bioassayは、PD-1又はPDL-1免疫抗がん剤がない条件でPD-1 effector cellの表面にあるPD-1とAPC細胞又はがん細胞に存在するPDL1を結合すると、PD1/PDL1相互作用がTCR媒介発光を抑制してルシフェラーゼシグナルが検出されないが、免疫抗がん剤がある条件では免疫抗がん剤の結合によってPDL1とPD1の結合が妨げられ、TCRが活性化され、NFAT signalの活性化によってルシフェラーゼ遺伝子発現を誘導してルシフェラーゼシグナルが増加するシステムを利用するものである。実験は製造社の推奨プロトコルに従って行った。具体的には、white plateにPDL1 aAPC/CHO-K1細胞を解放して用意した。翌日、細胞の培地を除去し、実施例4-1の濃縮サンプル40ulをプレートにロードし、濃縮サンプルをロードしたプレートにPD-1 effector cellを解放し、37℃で6時間反応を誘導した。続いて、bio-Glo reagentを添加して常温で5~10分間培養した後、luminometerで蛍光を測定した。
【0138】
RZ-001+を処理した肝がん細胞株サンプルの培養液を用いて分泌された免疫抗がん剤の活性を測定した結果、RZ-001+を処理した全ての細胞においてbioactivityの増加を確認することができ、上記からRZ-001+ウイルス感染によって細胞内で免疫チェックポイント阻害剤が生成され分泌されることが分かる。特に、実施例5-1の結果と対応するように、RZ-001+_Atの場合、bioactivityが最も多く増加したところ、最も多い免疫抗がん剤が生成及び分泌されており、分泌された免疫抗がん剤の活性に優れていることが分かる(
図16)。
【0139】
実施例6.ヒト脳腫瘍細胞株におけるRZ-001+発現ベクターの導入
6-1.RZ-001+が導入された細胞株におけるPD-L1発現の確認
ヒト肝がん細胞株であるSNU398とヒト脳腫瘍細胞株であるU87MGを12 well plateに5×104cells/well/1mLで分注し、2日間培養する。RIPA bufferを使用して細胞をlysisさせ、total proteinを抽出する。抽出したtotal proteinをBCA定量法で定量を進行し、全てのサンプルが同一のタンパク質量になるように用意し、用意したタンパク質サンプルをSDS-PAGEにロードした後、PVDFに移して5% skim milk in TBS-Tで抗原抗体反応を進行し、目的とするタンパク質の発現量を測定した。
【0140】
その結果、肝がん細胞株であるSNU398と脳腫瘍細胞株であるU87MGの両方でPD-L1タンパク質の発現を確認することによって、免疫チェックポイント阻害剤を発現するRZ-001+_PDL1の肝がん及び脳がんへの適用において有効性を提示することができる(
図17)。
【0141】
6-2.RZ-001+導入による免疫チェックポイント阻害剤分泌の確認
上記実施例5-1と同様に、RZ-001+発現ベクターを含むアデノウイルスに感染した脳腫瘍細胞株においてscFvの分泌を確認した。ウイルス処理濃度のみ10MOI及び20MOIで実験方法は、上記実施例5-1と同様に行った。
【0142】
その結果、Glioblastoma細胞株であるU87MGにおいてもRZ-001+発現ベクター導入によって細胞からscFvの分泌を確認することができ、特に、RZ-001+_At発現ベクターを導入した細胞から最も多いscFvの分泌を確認することができた(
図18)。
【0143】
6-3.分泌された免疫チェックポイント阻害剤のbioactivityの確認
続いて、RZ-001+_PDL1(At)発現ベクターを含むウイルスを処理した細胞の上澄み液を分離し、実施例5-3と同様にPD1/PDL1 blockade bioassay(Promega、#J1250)を行った。対照群としては、常用化されたatezolizumabを利用した。
【0144】
その結果、高いMOIでウイルスを処理した細胞から獲得した濃縮サンプルを処理するほどluciferase活性が増加することを確認した(
図19)。
【0145】
実施例7.in vivoにおけるRZ-001+の抗がん効果の確認
7-1.PBMC-ヒト化肝がんモデルにおけるRZ-001+の効果の確認
マウス異種移植皮下モデル(mouse xenograft subcutaneous model:6週齢の雄NOG)mouseにhuman PBMC 5×106cells/headを注入してPBMCヒト化マウス(PBMC-humice)を作製し、7~10日間マウスの体重及び状態を確認した後、SNU-398細胞5×106cells/50μlをsubcutaneous injectionし、2週間飼育して肝がん腫瘍モデルを構築した。次いで、腫瘍の成長及び重量を測定し、群分離を進行して各グループ別に薬物投与を進行した。さらに、薬物の肝毒性を確認するために、AST/ALTレベルを測定した。
【0146】
各グループは、対照群、Atezolizumab(At)投与群、RZ-001投与群、RZ-001+_At投与群、及びRZ-001及びAtezolizumab併用投与群に区分し、薬物の投与は1×109VP/head、48時間の間隔で2回腫瘍内に直接投与(intratumoral injection)し、Atezolizumab併用投与は、5mg/kg容量でウイルス投与2日後から2日間隔で3回、静脈投与(intravenous injection)した。
【0147】
その結果、RZ-001、Atezolizumab各々単独投与に比べて、RZ-001+_Atで投与した場合、腫瘍サイズや重量が減少することを確認し、RZ-001及びAt併用投与と同様に腫瘍が多く減少することを確認した。一方、肝毒性測定結果、RZ-001+_At投与群はAtzolizumab単独又は併用投与群に比べてAST/ALTのレベルが減少し、Ad-Mockに比べて類似のレベルを示したところ、肝毒性が著しく抑制されることが分かる(
図20)。
【0148】
7-2.Syngeneic Orthotopic脳腫瘍モデルにおけるRZ-001+の効果の確認
免疫活性を有する5週齢の雄C57BL/6マウスを痲酔し、定位的ツールを用いて頭皮を1cm正中切開した後、ブレグマ(bregma)を基準としてanterior 1mm、lateral 2.3mm、3mm深さにマウス由来脳がん細胞株(GL261)1×105cells/headを移植してOrthotopic脳腫瘍モデルを作製した。7日後、腫瘍の成長を測定し、群分離を進行して各グループ別に薬物投与を進行した。
【0149】
薬物の投与は、以下のような容量及び用法で進行した。
【0150】
mRZ-001とmRZ-001+は、3×109VP/5uLを1回腫瘍内に直接投与する。
【0151】
GCVは100ulの液量で50mg/kg投与し、ウイルス投与終了時の翌日から1日1回、合計10回投与する。
【0152】
実験動物群はmRZ-001投与群及びmRZ-001+投与群に区分し、対照群としてPBS投与群に区分した。
【0153】
腫瘍サイズを測定するために、薬物投与の翌日を含む3日周期でMRI撮影を行い、腫瘍移植位置を基準として5枚のsliceを選択し、ImageJシステムを用いて経時的な腫瘍の関心領域(region of interest:ROI)分析を行った(
図21)。具体的には、MRI映像は、Biospec 47/40 USR(Bruker、Ettlingen、Germany)horizontal bore magnetを使用した。撮影中、動物は痲酔された状態で映像獲得中の呼吸数、心拍数及び体温は、animal monitoring-gating systemを用いて観察し、体温維持のためにwarm bedを使用した。腫瘍成長及び成長抑制確認のための映像は15枚の連続したaxial sliceをRARE sequenceを使用して撮影され、関連条件は以下の通りである。
repetition time(TR)=2200ms
echo time(TE)=40ms
slice thickness=0.75mm
matrix=192×192
flip angle(FA)=90
field of view(FOV)=18×18mm
2
average=4
echo train length(ETL)=8
【0154】
腫瘍のサイズは、mRZ-001を基準として翌日をDay 1に設定し、GCV処理と共にDay 10まで合計10回処理による結果であり、PBS投与群と比較して腫瘍のサイズ減少の程度を確認した。その結果、ウイルス感染によって腫瘍のサイズが減少し、mRZ-001+の投与は、mRZ-001投与よりも腫瘍のサイズがより大幅に減少した(
図22)。
【0155】
一方、mRZ-001+投与群は対照群よりも低いAST、ALTレベルを示したところ、処理された試料の生体内毒性が著しく低い状態であることが分かった(
図23)。
【0156】
7-3.Xenograft Orthotopic脳腫瘍モデルにおける RZ-001+の効果の確認
上記実施例7-3に続いて、ヒト由来脳腫瘍細胞が移植された動物モデルにおいてRZ-001+の抗がん効果を確認しようとした。これに、5週齢の雄BALB/C nudeマウスにLuciferaseを安定的に発現するヒト由来脳腫瘍細胞U87MG-Luciを用いて上記実施例7-3と同様の方法でマウスに移植してXenograft Orthotopicマウス脳腫瘍モデルを作製した。7日後、IVIS撮影を通じて腫瘍の成長を測定し、群分離を進行して各グループ別に薬物投与を進行した(
図24)。
【0157】
薬物の投与は、以下のような容量及び用法で進行した。
【0158】
RZ-001とRZ-001+_ATは、1×1010VP/Headを1回腫瘍内に直接投与する。
【0159】
GCVはウイルス投与終了時の翌日から1日1回、合計10回50mg/kg投与する。
【0160】
ウイルス投与後3日間隔でIVIS撮影を行い、luciferaseを発現する腫瘍細胞の成長を追跡しており、ウイルス投与19日後、最後にIVIS撮影後翌日(Day 20)にマウスを犠牲して剖検を行った(
図25)。各薬物の投与群のマウスは実験期間中に安定した体重を維持したところ、RZ-001+の毒性がないか、非常に低いことが分かった(
図26)。一方、抗がん効果においてRZ-001とRZ-001+の両方に優れており、特にRZ-001+_Atの抗がん能がRZ-001よりも優れていることが確認できたところ、脳腫瘍においてもRZ-001+に優れた抗がん効果があることが分かる(
図27)。
【0161】
以上のように、実施例がたとえ限定された図面によって説明されているが、該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、上記に基づいて様々な技術的修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順序で行われる、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法とは異なる形態で結合又は組み合わされるか、他の構成要素又は均等物によって代替又は置換されても、適切な結果が達成できる。
【0162】
したがって、他の実施形態、他の実施例及び特許請求の範囲と均等なものも、後述する特許請求の範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、がん特異的遺伝子をターゲットとするトランススプライシングリボザイムは、がん治療遺伝子と免疫チェックポイント阻害剤を同時に発現して抗がん効能にシナジー効果を奏するところ、がん治療に有用に利用できると期待される。
【配列表】