(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】トイレ管理装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250114BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2023576021
(86)(22)【出願日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2023035980
(87)【国際公開番号】W WO2024075710
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2022160669
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591047970
【氏名又は名称】共立製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓太
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062776(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213131(WO,A1)
【文献】特開2016-204833(JP,A)
【文献】特開2002-021148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を
、前記各トイレ個室に設けられ、前記各トイレ個室の使用を検出するセンサからの信号を受信して判断するトイレ個室使用頻度判断部と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を
各装備品の使用可能量に基づいて判断する装備品使用状況判断部と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨する
推奨トイレ個室を抽出する推奨トイレ個室抽出部と
、
前記推奨トイレ個室抽出部により抽出された
前記推奨トイレ個室をユーザに報知する報知部と
を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される
前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する第1抽出部と、
前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する第2抽出部と、
前記第1抽出部及び前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する前記推奨トイレ個室を決定する決定部と
を有
し、
前記第1抽出部は、前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される前記使用頻度の少ない順に前記推奨候補を抽出し、
前記第2抽出部は、前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出し、
かつ、前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する
トイレ管理装置。
【請求項2】
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を、前記各トイレ個室に設けられ、前記各トイレ個室の使用を検出するセンサからの信号を受信して判断するトイレ個室使用頻度判断部と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を各装備品の使用可能量に基づいて判
断する装備品使用状況判断部と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨する推奨トイレ個室を抽出する推奨トイレ個室抽出部と、
前記推奨トイレ個室抽出部により抽出された前記推
奨トイレ個室をユーザに報知する報知部と
を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する第1抽出部と、
前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する第2抽出部と、
前記第1抽出部及び前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する前記推奨トイレ個室を決定する決定部と
を有し、
前記第1抽出部は、前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される前記使用頻度の少ない順に前記推奨候補を抽出し、
前記第2抽出部は、前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出し、
かつ、前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記第1抽出部及び前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての各重み付けにより得られる重みを合わせた総合重みの高い順に前記推奨トイレ個室を決定する
トイレ管理装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記推奨トイレ個室と共に、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断された前記推奨トイレ個室の使用頻度と、
前記装備品使用状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室において使用可能な装備品の内容と
を併せて報知する請求項
1又は2記載のトイレ管理装置。
【請求項4】
さらに、
前記各トイレ個室の便器周囲の床面上に設置された濡れ検知センサの検出信号又は前記各トイレ個室内に設置された臭気センサの検出信号を受信し、前記各トイレ個室における床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下か否か又は臭気が所定の閾値以下か否かにより、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する汚れ状況判断部を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、前記汚れ状況判断部において
、前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する第3抽出部を有
し、
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第3抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する請求項
1記載のトイレ管理装置。
【請求項5】
さらに、前記各トイレ個室の便器周囲の床面上に設置された濡れ検知センサの検出信号又は前記各トイレ個室内に設置された臭気センサの検出信号を受信し、前記各トイレ個室における床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下か否か又は臭気が所定の閾値以下か否かにより、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する汚れ状況判断部を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、前記汚れ状況判断部において、前記汚れ状況として、前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する第3抽出部を有し、
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記第3抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、汚れ状況が少ない順に重み付けを行い、
前記第1抽出部、前記第2抽出部及び前記第3抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての各重み付けにより得られる重みを合わせた総合重みの高い順に前記推奨トイレ個室を決定する請求項
2記載のトイレ管理装置。
【請求項6】
前記報知部は、前記推奨トイレ個室と共に、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断された前記推奨トイレ個室の使用頻度と、
前記装備品使用状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室において使用可能な装備品の内容と、
前記汚れ状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室の汚れ状況と
を併せて報知する請求項
4又は5記載のトイレ管理装置。
【請求項7】
さらに、
前記トイレ個室使用頻度判断部において用いられる前記各トイレ個室の使用を検出するセンサからの検出信号を受信し、前記各トイレ個室への入退室状況を判定することにより、前記各トイレ個室の空き状況を判定する空き状況判定部を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、前記空き状況判定部において「空き」と判定されたトイレ個室を対象に前記推奨トイレ個室を決定する請求項
1、2、4又は5記載のトイレ管理装置。
【請求項8】
コンピュータをトイレ管理装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を
、前記各トイレ個室に設けられ、前記各トイレ個室の使用を検出するセンサからの信号を受信して判断する各トイレ個室の使用頻度を判断する手順と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を
各装備品の使用可能量に基づいて判断する手順と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨する
推奨トイレ個室を抽出する手順と、
抽出された
前記推奨トイレ個室をユーザに報知する手順と
を前記コンピュータに実行させると共に、
前記推奨トイレ個室を抽出する手順では、
前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する手順と、
前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する手順と、
前記使用頻度に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室及び前記装備品の使用可能量に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する
推奨トイレ個室を決定する手順と
を前記コンピュータに実行させ
、
前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する手順では、前記使用頻度の少ない順に前記推奨候補を抽出し、
前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する手順で
は、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出し、
かつ、前記推奨トイレ個室を決定する手順では、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する手順
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータをトイレ管理装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を、前記各トイレ個室に設けられ、前記各トイレ個室の使用を検出するセンサからの信号を受信して判断する各トイレ個室の使用頻度を判断する手順と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を各装備品の使用可能量に基づいて判断する手順と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨する推奨トイレ個室を抽出する手順と、
抽出された前記推奨トイレ個室をユーザに報知する手順と
を前記コンピュータに実行させると共に、
前記推奨トイレ個室を抽出する手順では、
前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する手順と、
前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する手順と、
前記使用頻度に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室及び前記装備品の使用可能量に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する推奨トイレ個室を決定する手順と
を前記コンピュータに実行させ、
前記使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する手順では、前記使用頻度の少ない順に前記推奨候補を抽出し、
前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する手順では、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出し、
かつ、前記推奨トイレ個室を決定する手順では、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての重み付けにより得られる重みと、前記使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての重み付けにより得られる重みとを合わせた総合重みの高い順に前記推奨トイレ個室を決定する手順
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
さらに、前記各トイレ個室の便器周囲の床面上に設置された濡れ検知センサの検出信号又は前記各トイレ個室内に設置された臭気センサの検出信号を受信させ、前記各トイレ個室における床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下か否か又は臭気が所定の閾値以下か否かにより、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する手順と、
前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判
断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する手順と
を前記コンピュータに実行させ、
かつ、前記推奨トイレ個室を決定する手順では、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する手順
を前記コンピュータに実行させる請求項8記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
さらに、前記各トイレ個室の便器周囲の床面上に設置された濡れ検知センサの検出信号又は前記各トイレ個室内に設置された臭気センサの検出信号を受信させ、前記各トイレ個室における床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下か否か又は臭気が所定の閾値以下か否かにより、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する手順と、
前記汚れ状況として、前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する手順と
を前記コンピュータに実行させ、
かつ、前記推奨トイレ個室を決定する手順では、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断された推奨候補の前記トイレ個室について、汚れ状況が少ない順に重み付けを行い、
前記使用頻度の少ない順に抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての重み付けにより得られる重み、前記使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されて抽出された推奨候補の前記トイレ個室についての重み付けにより得られる重み、及び前記床面上にたれている液体の量が所定の閾値以下又は前記臭気が所定の閾値以下と判断された推奨候補の前記トイレ個室についての重み付けにより得られる重みを合わせた総合重みの高い順に前記推奨トイレ個室を決定する手順
を前記コンピュータに実行させる請求項9記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザにトイレ個室を推奨する機能を有するトイレ管理装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便器の洗浄水の流れを検出するセンサ、流量を検出するセンサ、トイレ個室のドアの開閉を検出するセンサ、薬液供給装置の残量を検出するセンサ等からの検出信号を利用し、便器の使用回数を推定し、使用頻度の少ないトイレ個室にユーザを促し、便器の使用頻度の平準化を図るシステムが提案さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-62776号公報
【文献】特開2011-152928号公報
【文献】特開2018-87466号公報
【文献】特開2021-20195号公報
【文献】特開2018-43850号公報
【文献】特許第3923068号公報
【文献】特許第5713353号公報
【文献】特開2014-25320号公報
【文献】WO2022/113744A1号公報
【文献】特開2015-151240号公報に
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、使用頻度の少ないトイレ個室をユーザに提示することで、ユーザは汚れの少ない便器を利用できる。また、使用頻度が平準化されると、汚れ度合いも均等化され、清掃作業が容易かされると共に、薬液供給装置への薬液の補充などのメンテナンスのタイミングも揃いやすい。その結果、トイレ管理者によるトイレ個室の管理が容易となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、トイレ個室の使用頻度のみを基準としてユーザに所定のトイレ個室を推奨している。一方、各トイレ個室には、特許文献2~9に示したように、便器内に薬液を供給する薬液供給装置、使用済み衛生用品等を廃棄するための専用のごみ箱、着座前に便座等を拭いて除菌するための除菌剤吐出器など、トイレ使用を快適にするための各種装備品が付設されている。使用しようとするトイレ個室の便器の使用頻度が少ない場合であっても、例えば、ユーザが当該トイレ個室に入って便座を清浄しようとする際に、除菌剤が吐出されないとすれば、ユーザはそのトイレ個室を使用せずにそのまま出て隣接するトイレ個室に入り直すか、あるいは、除菌剤による清浄作業を諦めて使用するかといった選択を迫られる。また、使用済み衛生用品等を廃棄しようとする場合に、専用のごみ箱が既に満杯になっているとすれば非常に不便である。
特許文献10では、包装機能付きのごみ箱において、投入口付近に設けられる光センサの検出信号に基づいて、廃棄物の投入数をカウントして包装用フィルムの残数を算出したり、投入された廃棄物の重量を測定する重量センサの信号に基づいて異物投入の判断を行ったりすることが記載されている。しかしながら、この技術は、残数や異物投入を検出することで、それらの情報を管理者端末に送信し、消耗品の補充作業のタイミングやメンテナンスのタイミングを適切なものとすることができるものの、ユーザに対してそれらの情報を知らせることについての開示はない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、トイレ個室の使用頻度だけでなく、装備品の使用状況も加味し、ユーザがより快適に使用できるトイレ個室を推奨することができるトイレ管理装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のトイレ管理装置は、
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を判断するトイレ個室使用頻度判断部と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を判断する装備品使用状況判断部と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨するトイレ個室を抽出する推奨トイレ個室抽出部と
前記推奨トイレ個室抽出部により抽出された推奨トイレ個室をユーザに報知する報知部と
を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される使用頻度に基づいて推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する第1抽出部と、
前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する第2抽出部と、
前記第1抽出部及び前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する前記推奨トイレ個室を決定する決定部と
を有することを特徴とする。
【0008】
前記第2抽出部は、前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出する構成とすることが好ましい。
前記第2抽出部は、前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、全ての装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出する構成とすることも好ましい。
【0009】
前記装備品使用状況判断部において用いられる前記所定の閾値は、
前記各装備品の最大使用可能量、前記各装備品に対するメンテナンス周期及び前記トイレ個室使用頻度判断部から得られる前記各トイレ個室の使用頻度を基に設定される構成とすることが好ましい。
【0010】
前記第1抽出部は、前記トイレ個室使用頻度判断部において判断される使用頻度の少ない順に前記推奨候補を抽出する構成とすることが好ましい。
【0011】
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する構成とすることが好ましい。
【0012】
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記2つの重み付けを合わせた総合重みの高い順に前記推奨トイレ個室を決定する構成とすることも好ましい。
【0013】
前記報知部は、前記推奨トイレ個室抽出部により抽出された前記推奨トイレ個室を1以上報知する構成であることが好ましい。
前記報知部は、前記推奨トイレ個室と共に、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断された前記推奨トイレ個室の使用頻度と、
前記装備品使用状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室において使用可能な装備品の内容と
を併せて報知する構成とすることがより好ましい。
【0014】
さらに、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する汚れ状況判断部を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、前記汚れ状況判断部において汚れ状況が所定の閾値以下と判断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する第3抽出部を有する構成とすることが好ましい。
【0015】
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室と、前記第3抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室とのうち、重複して抽出されたトイレ個室を前記推奨トイレ個室として決定する構成とすることが好ましい。
【0016】
前記決定部は、
前記第1抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、
前記第2抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、使用可能な装備品の多い順に重み付けを行い、
前記第3抽出部により抽出された推奨候補の前記トイレ個室について、汚れ状況が少ない順に重み付けを行い、
前記3つの重みを合わせた総合重みが高い順に前記推奨トイレ個室を決定する構成とすることも好ましい。
【0017】
前記報知部は、前記推奨トイレ個室と共に、
前記トイレ個室使用頻度判断部において判断された前記推奨トイレ個室の使用頻度と、
前記装備品使用状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室において使用可能な装備品の内容と、
前記汚れ状況判断部において判断された前記推奨トイレ個室の汚れ状況と
を併せて報知する構成とすることが好ましい。
【0018】
さらに、前記各トイレ個室への入室を検知するセンサからの信号により入退室状況を判定することにより、前記各トイレ個室の空き状況を判定する空き状況判定部を有し、
前記推奨トイレ個室抽出部は、前記空き状況判定部において「空き」と判定されたトイレ個室を対象に前記推奨トイレ個室を決定する構成とすることが好ましい。
また、前記空き状況判定部により得られるユーザが選択したトイレ個室の情報を得ると共に、前記トイレ個室への入室タイミングから、その直前に表示されていた推奨トイレ個室の推奨結果とを対比し、ユーザが最終的に当該トイレ個室を選択した根拠情報を判定し、それを最終選択結果情報として出力する最終選択結果情報分析部を有することが好ましい。
この場合、前記第2抽出部は、前記装備品使用状況判断部において、前記1以上の装備品のうち、使用可能量の判定を重視する優先装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を前記推奨候補として抽出する機能を有すると共に、
前記最終選択結果情報分析部が、最終選択結果情報を前記第2抽出部にフィードバックし、前記第2抽出部が、前記最終選択結果情報に基づいて優先装備品を特定する構成とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明のコンピュータプログラムは、
コンピュータをトイレ管理装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
公共トイレに設けられる各トイレ個室の使用頻度を判断する手順と、
前記各トイレ個室に備えられた1以上の装備品の使用状況を判断する手順と、
前記各トイレ個室中、使用を推奨するトイレ個室を抽出する手順と、
抽出された前記推奨トイレ個室をユーザに報知する手順と
を前記コンピュータに実行させると共に、
前記推奨トイレ個室を抽出する手順では、
使用頻度に基づいて判断される推奨候補のトイレ個室を1以上抽出する手順と、
前記1以上の装備品のうち、少なくとも一つの装備品の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室を推奨候補として1以上抽出する手順と、
前記使用頻度に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室及び前記装備品の使用可能量に基づいて抽出された推奨候補の前記トイレ個室の中から、ユーザに報知する前記推奨トイレ個室を決定する手順と
を前記コンピュータに実行させる。
【0020】
さらに、前記各トイレ個室の汚れ状況を判断する手順を実行させ、
前記推奨トイレ個室を抽出する手順では、汚れ状況が所定の閾値以下と判断されたトイレ個室を推奨候補として抽出する手順を実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トイレ個室の使用頻度に加え、装備品の使用状況も加味して推奨トイレ個室が決定される。従って、使用頻度が少なく、より清潔に保たれているトイレ個室であっても、装備品の使用余地が少ない場合には、推奨トイレ個室に選択されない可能性があり、使用頻度が少なく、かつ、装備品の使用状況が所定の閾値以上のものが抽出される。そのため、ユーザは、使用頻度が少なくより清潔に保たれていると共に、装備品の使用余地がより多いトイレ個室を使用することが可能となる。また、公共トイレの管理者にとっては、トイレ個室の使用状況の平準化を図ることができ、それにより、トイレ個室毎の汚れ度合いも平準化されメンテナンスしやすくなることに加え、装備品のメンテナンスの平準化にもつながり、トータルのメンテナンスコストの低減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係るトイレ管理装置によりトイレ個室を管理するシステムの全体構成を示した概念図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態のトイレ管理装置による管理対象の公共トイレ、当該公共トイレ内のトイレ個室、装備品、センサ等を示した概念図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態のトイレ管理装置の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、トイレ管理装置における推奨トイレ個室抽出部の構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、トイレ個室に設置された装備品、センサの例を示した図である。
【
図6】
図6は、トイレ管理装置における装備品使用状況判断部における所定の閾値の設定の仕方を説明するための図である。
【
図7】
図7は、トイレ管理装置における推奨トイレ個室抽出部による推奨トイレ個室を抽出、決定するための工程を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、報知部の報知先であるディスプレイの一例を示した図であり、
図8(b)は、推奨トイレ個室が複数の場合のディスプレイの表示例を拡大して示した図である。
【
図9】
図9は、推奨トイレ個室抽出部に最終選択結果情報分析部を設けた態様を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施形態に係るトイレ管理装置の構成を説明するための図である。
【
図11】
図11は、上記の他の実施形態に係るトイレ管理装置における推奨トイレ個室抽出部の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係るトイレ管理装置1を用いて、公共トイレ2の各トイレ個室21を管理する際の概略構成を示した図である。公共トイレ2は、事前の契約等により、トイレ管理装置1による管理対象となっている。この図に示したように、本実施形態のトイレ管理装置1は、コンピュータから構成され、インターネット等の通信手段を介して公共トイレ2側の端末装置3と接続されている。トイレ管理装置1は、物理サーバーで構成されていてもよいし、クラウド環境におけるクラウドサーバーで構成されていてもよい。端末装置3は、トイレ管理装置1と通信可能であると共に、トイレ個室21に設けられる各種センサ21aとの間でも通信可能の機能を有すればよく、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットやスマートフォンなどの携帯端末、ゲートウエイやルータなどの中継器等を含む。また、「公共トイレ2」は、役所や公民館などの公共施設、デパートやスーパーなどの商業施設、ホテル、オフィスビル、駅、公園、飲食店、コンビニエンスストアなどに設けられ、不特定多数の者が利用するトイレの全てが含まれる。
【0024】
なお、端末装置3の設置数は限定されるものではなく、トイレ個室21毎に設けられていてもよいし、例えば、デパートなどにおいて、同一フロアに男性用、女性用というように複数の公共トイレ2が設置されている場合には、その公共トイレ2毎に設置されていてもよいし(
図1のNビルの例)、同一フロアに設置された公共トイレ2のいずれとも通信可能な場合にはフロア毎に設置されていてもよいし、管理対象の公共トイレ2を備えた建物毎(
図1のMビルの例)に設置されていてもよい。通信手段の種類、通信距離、端末装置3の性能等を考慮して適宜に設定できる。
【0025】
トイレ管理装置1は、
図3に示したように、その記憶部(当該コンピュータ(トイレ管理装置1)に内蔵のハードディスク等の記録媒体のほか、リムーバブルの各種記録媒体、通信手段で接続された他のコンピュータの記録媒体等も含む)1aに、トイレ個室使用頻度判断部110として機能する手順、装備品使用状況判断部120として機能する手順、推奨トイレ個室抽出部130として機能する手順、報知部140として機能する手順等を実行させるコンピュータプログラムが記憶されている。また、本実施形態のコンピュータプログラムは、トイレ個室21の空き状況を判定する空き状況判定部150として機能する手順も実行する。また、管理対象の公共トイレ2の各トイレ個室21に関し、それらの位置情報、装備品22の設置情報等は、トイレ個室情報データベース1bに登録されている。
【0026】
なお、コンピュータプログラムは、記録媒体に記憶させて提供することができる。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD-ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。また、通信回線を通じてコンピュータプログラムをコンピュータに伝送してインストールすることも可能である。
【0027】
トイレ個室使用頻度判断部110は、公共トイレ2の各トイレ個室21の使用頻度を判断する。各トイレ個室21には、
図2に示したように、トイレ個室21の使用を検出するセンサ21aが設けられている。センサ21aの信号は、当該センサ21aに内蔵されているかあるいは当該センサ21aに連結させた通信モジュールにより端末装置3に送信され、当該端末装置3を経由してトイレ管理装置1に送信される。使用頻度は、本実施形態では、トイレ管理装置1のトイレ個室使用頻度判断部110において受信した信号データから判断する。但し、端末装置3の性能によっては、当該端末装置3がセンサ21aの信号を分析し、使用頻度を判断してその結果のみをトイレ管理装置1側に送信し、トイレ個室使用頻度判断部110がそのデータを受信する構成とすることも可能である。
【0028】
トイレ個室21の使用を検出するセンサ21aの種類は限定されるものではないが、例えば、トイレ個室21内の便器に水(洗浄用水)を流したことを検出するセンサ、流量を検出するための配管に付設されるセンサ、トイレ個室の鍵の開閉動作を検出するセンサ、便座に着座したことを検出するセンサ、便器毎に設置され、便器に洗浄用水が流れるたびに、その洗浄用水に所定量の薬液を供給して混合させる薬液供給装置における薬液の供給回数を計測するセンサ、当該薬液供給装置における薬液の残量を計測するセンサ、各便器付近に設けられ、ユーザが接近すると動作する消臭装置や芳香装置の駆動回数を検出するセンサ、トイレ個室21に設けられるごみ箱(衛生用品等を廃棄する容器)の開閉蓋の開閉を検出するセンサ、当該ごみ箱にユーザが接近したことを検出するセンサ、廃棄用の衛生用品等の廃棄物を個別に包装する包装機能付きのごみ箱の場合には、その包装用フィルムの使用量若しくは残量を検出するセンサ等を用いることができる。使用頻度は、これらのセンサ21aの検出信号からその検出数をカウントしたり、薬液や包装用フィルムの残量を求めたりすることにより、計測することができる。
【0029】
装備品使用状況判断部120は、各トイレ個室21に備えられた1以上の装備品22の使用状況を判断する。ここでいう装備品22とは、トイレ個室21内の環境を快適にするために装備された種々のものをいう。例えば、特開2011-152928号公報(特許文献2)に開示されているように、手動又は自動により、石けん液や除菌剤などを吐出する液体ディスペンサ、特開2018-87466号公報(特許文献3)に開示されている便座やトイレ個室21内に除菌剤を噴霧する装置、特開2021-20195号公報(特許文献4)に掲載のトイレ個室21内に芳香剤や消臭剤等を噴霧する装置、特開2018-43850号公報(特許文献5)に開示されているような、上部に設けた蓋部材が開閉し、使用済みの衛生用品(使用済み生理用ナプキン、おむつ、尿漏れパッド等)等の廃棄物を廃棄するために用いられる廃棄物収容装置、特許第3923068号公報(特許文献6)及び特許第5713353号公報(特許文献7)に掲載されている使用済みの衛生用品等の廃棄物を2枚のフィルム間に挟んで密閉し、容器内に収容する廃棄物収容装置、特開2014-25320号公報(特許文献8)に開示されているように、水洗トイレにおいて洗浄水が流れるたびに所定量の薬液を供給する水洗便器用薬液供給装置、WO2022/113744A1号公報(特許文献9)に開示されているように生理用ナプキンやタンポン等の生理用品を提供する装置等が挙げられる。なお、生理用品を提供する装置の構成はこれに限定されるものではなく、トイレ個室21に設置され、ユーザの需要に応じて生理用品を供給できるものであればどのような構造であってもよい。また、提供する生理用品は生理用ナプキン等の主に女性を対象としたものに限定されるものではなく、年齢、性別に関わらずに使用されるおむつ、尿漏れパッド等を提供する装置も含まれる。
【0030】
また、市販品としては、日本カルミック株式会社製のサニタイザーと呼ばれる薬液供給装置、使用済み衛生用品を廃棄するためのサニタリーボックス、紙おむつ回収容器、便座を除菌する除菌剤を吐出するトイレットシートクリーナー等が挙げられる。
【0031】
装備品使用状況判断部120は、上記のトイレ個室使用頻度判断部110の判断の際に用いられる上記のセンサ21aのうち、装備品22の使用状況から使用頻度を推定する際に用いられるセンサ21a、例えば、薬液供給装置における薬液の供給を検出するセンサ、当該薬液供給装置における薬液の残量を検出するセンサ、各便器付近に設けられ、ユーザが接近すると動作する消臭装置や芳香装置の駆動を検出するセンサ、トイレ個室21に設けられるごみ箱(衛生用品等を廃棄する容器)の開閉蓋の開閉を検出するセンサ、当該ごみ箱にユーザが接近したことを検出するセンサ、廃棄用の衛生用品等の廃棄物を個別に包装する包装機能付きのごみ箱の包装用フィルムの使用量若しくは残量を検出するセンサ等から得られるデータを端末装置3を介して受信し、それらの使用状況を判断する。
【0032】
例えば、特開2015-151240号公報(特許文献10)に開示されているように、包装機能付きのごみ箱において、投入口付近に設けられる光センサの検出信号に基づいて、廃棄物の投入数をカウントして包装用フィルムの残数を算出したり、投入された廃棄物の重量を測定する重量センサの信号に基づいて異物投入の判断を行ったりすることができる。これにより、装備品使用状況判断部120は、装備品の使用状況として、包装用のフィルムの残量を示したり、異物投入がなされた状態であるといった異常状況を示したりすることができる。
【0033】
なお、各トイレ個室21に設置されている装備品22の種類や設置数等の装備品情報は、トイレ個室情報データベース1bに、管理対象の公共トイレ2の個別情報と共に登録されていることは上記のとおりである。従って、装備品使用状況判断部120は、トイレ個室情報データベース1bにアクセスして個別情報を読み込むことで、トイレ個室21毎に、設置されている装備品22の種類及び設置数等の装備品情報を把握できる。
【0034】
推奨トイレ個室抽出部130は、管理対象の公共トイレ2の各トイレ個室21中、使用を推奨するトイレ個室21(推奨トイレ個室21X)を抽出する。具体的には、推奨トイレ個室抽出部130は、
図4に示したように、トイレ個室21の中から推奨候補を抽出する機能を有する第1抽出部131及び第2抽出部132と、推奨トイレ個室21Xを決定する機能を有する決定部133とを備えている。第1抽出部131は、トイレ個室使用頻度判断部110において判断される使用頻度に関する情報に基づいて推奨候補のトイレ個室21を1以上抽出する。第2抽出部132は、装備品使用状況判断部120において、1以上の装備品22のうち、少なくとも一つの装備品22の使用可能量に関する情報に基づいて、その使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室21を推奨候補として1以上抽出する。決定部133は、第1抽出部131により抽出された1以上の推奨候補と第2抽出部132により抽出された1以上の推奨候補の中から、最終的にユーザに報知する推奨トイレ個室21Xを決定する。
【0035】
第1抽出部131は、トイレ個室使用頻度判断部110において判断される使用頻度の少ない順に推奨候補を抽出する構成とすることが好ましい。使用頻度が少ない場合には、汚れ度合いが低い場合が多く、また、トイレ個室21の使用頻度の平準化を図ることができるため、使用頻度の少ない順に推奨候補を抽出することが好ましい。
【0036】
第2抽出部132は、少なくとも一つの装備品22の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたものを抽出する構成としてもよいが、その場合には、推奨候補のトイレ個室21の抽出数が多くなってしまう場合がある。このようなことに鑑み、第2抽出部は、使用可能量の判定を重視する優先装備品22Aの使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室21を抽出する構成とすることが好ましい。優先装備品22Aは、例えば、
図5に示したように、トイレ個室21に複数の装備品22を設置する場合に、予め、例えば、除菌剤噴霧器とごみ箱が優先装備品22Aとなるように規定しておくこともできるし、公共トイレ2の管理者等のリクエストにより適宜に設定することもできる。また、公共トイレ2の設置場所などに応じて適宜にその優先順位を変更することももちろん可能である。優先装備品22Aについては、トイレ個室情報データベース1bに各トイレ個室21の個別情報に紐付けて登録しておく。従って、第2抽出部132は、トイレ個室21毎に優先装備品22Aを特定し、装備品使用状況判断部120において判定される使用可能量として、この優先装備品22Aについての情報を取得して推奨候補を抽出する。これにより、第2抽出部132により抽出される推奨候補は、優先装備品22Aを特定しない場合よりも絞り込まれる。
【0037】
また、第2抽出部132は、装備品使用状況判断部120において、トイレ個室21内に設置されている1以上の装備品22のうち、全ての装備品22の使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室21を推奨候補として抽出する構成とすることもできる。この場合も、トイレ個室21の少なくとも一つの装備品22の使用可能量が所定の閾値以上である場合に、それらを全て抽出する場合と比較して推奨候補を絞り込むことができる。なお、第2抽出部132は、所定の閾値以上と判断された少なくとも一つの対象の装備品22だけでなく、所定の閾値以上と判断されなかった装備品22も含め、装備品22毎に使用可能量に関して、例えば「多い」「少ない」、「使用可能回数:○回」、「残量○枚」といった具体的な状態を参考情報として付帯して抽出することもできる。
【0038】
ここで、装備品使用状況判断部120において用いられる「所定の閾値」は、例えば、除菌剤噴霧器であれば、全量の1/3の値としたり、廃棄物を密封する包装用フィルムを備えたごみ箱であれば、包装用フィルムの全量の1/5の値としたりするなど、任意に設定できる。装備品22毎に予め定められた値であってもよいし、公共トイレ2の管理者のリクエストにより所定の値に設定してもよい。また、各装備品22への液体の補充、フィルムの交換等のメンテナンス作業の周期は、装備品22の種類によって異なる。また、メンテナンス周期としては、公共トイレ2の管理者側において補充や交換等の作業を毎日あるいは数日おきに行うものや、装備品22を提供する提供者側が出向いて1ヶ月から数ヶ月に一度の割合で行うものもある。そこで、
図6に示したように、各装備品22の「所定の閾値」は、各装備品22の最大使用可能量及びメンテナンス周期に関する各情報をトイレ個室情報データベース1bから読み込むと共に、当該トイレ個室21に関する使用頻度に関する情報をトイレ個室使用頻度判断部110から得て、それらを用いて各装備品22の使用可能期間を求め、かつ、前回のメンテナンス作業を行った後、次のメンテナンス作業を行うまでの間で、補充や交換対象の液体やフィルム等の残量がつきないような値を設定することが好ましい。
【0039】
決定部133は、上記のように、2つの抽出部131,132から抽出された推奨候補の中から、推奨トイレ個室21Xを決定するものであり、その機能を有する限り、その決定方法は限定されるものではない。
【0040】
例えば、第1抽出部131により抽出された推奨候補の1以上のトイレ個室21と、第2抽出部132により抽出された推奨候補の1以上のトイレ個室21とのうち、重複して抽出されたトイレ個室21を推奨トイレ個室21Xとして決定する構成とすることができる。第1抽出部131により、例えば、
図2に示したトイレ個室21A,21Cの2つが使用頻度が少ないものとして抽出され、第2抽出部132により、トイレ個室21C,21Dが、それらに装備されている優先装備品22Aが所定の閾値以上あるいは全ての装備品22が所定の閾値以上として抽出された場合、重複しているトイレ個室21Cを推奨トイレ個室21Xとして決定する。
【0041】
また、決定部133としては、第1抽出部131により抽出された推奨候補のトイレ個室21について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、第2抽出部132により抽出された推奨候補のトイレ個室21について、使用可能な装備品22の多い順に重み付けを行い、2つの重み付けを合わせた総合重みの高い順に推奨トイレ個室21Xを決定する構成とすることもできる。
【0042】
例えば、管理対象の公共トイレ2に、
図2に示したように、6つのトイレ個室21A~21Fが設置されているとする。このケースにおいて、
図7に示したように、第1抽出部131により4つのトイレ個室21A,21B,21C,21Fが抽出された場合、その使用頻度の少ない順、例えば、トイレ個室21A,21B,21C,21Fの順に使用頻度が少ないとするとその順に、10,8,6,4と重み付けを行う。同様に、第2抽出部132により3つのトイレ個室21A,21C,21Fが抽出された場合に、使用可能な装備品22の多い順に、例えば、トイレ個室21Aでは、除菌剤噴霧器、ごみ箱及び薬液供給装置の3つが所定の閾値以上と判断され、トイレ個室21Cでは、除菌剤噴霧器、ごみ箱、薬液供給装置及び消臭装置の4つが所定の閾値以上と判断され、トイレ個室21Fでは、除菌剤噴霧器と薬液供給装置の2つが所定の閾値以上と判断されている場合、トイレ個室21Aの重みを8、トイレ個室21Cの重みを10、トイレ個室21Fの重みを6と付与する。そして、両者の重みを考慮した総合重みを求める。
【0043】
例えば、両者の重みを足した総合重みは、いずれかにおいて抽出されないトイレ個室の重みを0とすると、トイレ個室21A:10+8=18、トイレ個室21B:8+0=8、トイレ個室21C:6+10=16、トイレ個室21D:0+0=0、トイレ個室21E:0+0=0、トイレ個室21F:4+6=10となる。トイレ個室21D,21Eは、第1及び第2抽出部131,132のいずれにおいて抽出されなかったものであるが、これは、使用頻度が高くかつ装備品22の使用可能量が少ないために抽出されなかったケースのほか、後述の空き状況判定部150において「使用中」と判定されたため、抽出されなかったケースも含まれる。
【0044】
よって、この場合には総合重みが最も高いトイレ個室21Aが推奨トイレ個室21Xとなる。なお、重み付けの仕方や総合重みの求め方は上記に限定されるものでないことはもちろんであるが、使用頻度がより少なく、かつ、使用可能な装備品22がより充実しているトイレ個室21が推奨トイレ個室21Xとなるような設定とすることが好ましい。また、決定部133は、推奨トイレ個室21Xを一つ決定するだけでなく、複数決定するようにしてもよい。例えば、上記の総合重みの高い順に、トイレ個室21A、トイレ個室21C、トイレ個室21Fの3つを推奨トイレ個室21Xとして決定することもできる。また、この場合に、総合重み(「重み」は、数値に限らず、例えば、総合重み15以上を「A」、総合重みが10~15を「B」といった表示の仕方も含む)をつけ、推奨トイレ個室21Xにこれらの総合重みの値を付けて複数推奨することもできる。
【0045】
また、推奨トイレ個室抽出部130は、推奨トイレ個室21Xの総合重みだけでなく、推奨トイレ個室21Xにおいて使用可能な装備品22の内容(装備品22の種類、使用可能量(除菌剤や包装用フィルムの残量等)を付帯させて推奨することもできる。
【0046】
報知部140は、推奨トイレ個室抽出部130により抽出された推奨トイレ個室21Xを1以上報知する。具体的には、推奨トイレ個室抽出部130から推奨トイレ個室21Xに関する情報を受け取り、それを、報知先である各種ディスプレイ等に表示させたり、あるいは音声により通知したりする機能を有する。報知先としては、高速道路等のパーキング、デパート、オフィスビル等における公共トイレ2の入り口付近、あるいは、公共トイレ2を設置しているビルのエントランスや各フロアの人通りの多い場所とうに設置した専用のディスプレイ4(
図2参照)、公共トイレ2を利用するユーザのスマートフォンなどの携帯端末のディスプレイ、音声により通知する際には、公共トイレ2付近に設置したスピーカーやユーザのスマートフォンのスピーカー等を挙げることができる。
【0047】
報知先が
図2に示したような公共トイレ2の入り口委設置されたなディスプレイ4の場合、例えば、
図8(a)に示したように、当該公共トイレ2の各トイレ個室21の位置を示す地図を表示させ、例えば、推奨トイレ個室21X(例えばトイレ個室21A)のみを異なる色で表示するなどして、その位置を当該地図上で明示する指令を発する機能を有する構成とすることも可能である。また、推奨トイレ個室抽出部130による推奨トイレ個室21Xが複数の場合には、その複数のトイレ個室(例えば、トイレ個室21A,21C,21F)を異なる色で表示したりして、明示することができる(
図8(b)参照)。その場合、推奨順位に基づき、第1候補、第2候補の別がわかるように、色の違いや順位表示等によって示すようにすることもできる。さらに、推奨トイレ個室21Xとして抽出された例えば3つのトイレ個室21A,21C,21Fについて、
図8(b)に示したように、トイレ個室21Aは、使用頻度の重みが10、装備品22に関する重みが8であり、トイレ個室21Cは、使用頻度の重みが6、装備品22に関する重みが10であり、トイレ個室21Fは、使用頻度の重みが4、装備品22に関する重みが8であるといった評価結果も併せて示すようにすることもできる。また、推奨されなかったトイレ個室21B,21D,21Bの使用頻度や装備品22に関する情報をあわせて表示してユーザに知らせることで、例えば、公共トイレ2の入口に設置されたディスプレイ4を見て推奨トイレ個室21Xを確認後、当該ユーザが公共トイレ2の入口から推奨トイレ個室21Xに到達するまでのわずかな時間における状況変化(例えば、その間に、推奨トイレ個室21Xに第三者が急に入ったなど)が生じた場合でも、当該ユーザがより重視する項目(例えば使用頻度)を目安にしてトイレ個室21を選択できる。また、上記のように、推奨トイレ個室抽出部130が、推奨トイレ個室21Xにおいて使用可能な装備品22の内容(装備品22の種類、使用可能量(除菌剤や包装用フィルムの残量等)を付帯させて推奨している場合には、それらの情報を具体的(使用可能回数など)に示すこともできる。
【0048】
このように詳細な評価結果を併せて表示することで、公共トイレ2のユーザが、例えば、トイレ個室21Aとトイレ個室21Cを比較した場合、総合重みがトイレ個室21Aの方が高い場合であっても、装備品22の充実度がより高いトイレ個室21Cを選択することも考えられ、ユーザのニーズに合わせることができる。また、公共トイレ2の各トイレ個室21の位置を示す地図に推奨トイレ個室21Xを表示させることで、ユーザによっては、公共トイレ2からより近い位置のものを選択でき、その中でも、ユーザのニーズに見合った所定の装備品22が充実しているものを選択することもできる。
【0049】
上記のように、決定部133が推奨トイレ個室21Xを複数決定する場合、また、推奨トイレ個室抽出部130は、推奨トイレ個室21Xの評価結果(重み)だけでなく、推奨トイレ個室21Xにおいて使用可能な装備品22の内容(装備品22の種類、使用可能量(除菌剤や包装用フィルムの残量等)を付帯させて推奨する構成とした場合においては、
図8(b)の例において、実際にトイレ個室を使用するユーザが、例えば、トイレ個室21Aの総合重みが高い場合であっても、装備品22の充実度がより高いトイレ個室21Cを選択する場合もある。また、トイレ個室21Cが埋まってしまった場合に、トイレ個室21Aとトイレ個室21Fを比較し、第2抽出部132において所定の閾値を判断する対象となった装備品22の残量が相対的に多いトイレ個室21Aではなく、その判断対象とならず、第2抽出部132において付帯された上記の参考情報において、例えば、生理用品提供装置の残量に関してはトイレ個室21Aよりもトイレ個室21Fの方が多いという場合には、ユーザが当該トイレ個室21Fを選択する場合もある。
【0050】
そこで、このようなユーザの最終選択結果を、推奨トイレ個室抽出部130における推奨トイレ個室を決定する際の判断材料に用いることが好ましい。
図9に示したように、例えば、第2抽出部132において上記の優先装備品22Aを設定する場合、対象の装備品を予め設定しておくのではなく、ユーザの最終選択結果を統計的に処理し、あるいは機械学習させる最終選択結果情報分析部135を設け、最終選択結果情報分析部135からその最終選択結果情報を第2抽出部132にフィードバックし、第2抽出部132が、最終選択結果情報に基づいて優先装備品22Aを特定し、当該優先装備品22Aの使用可能量が所定の閾値以上と判断されたトイレ個室21を抽出する構成とすることができる。ユーザの最終選択結果として、例えば、生理用品の廃棄物収容装置や生理用品提供装置の使用可能量が多いトイレ個室21が選択される傾向が高いと最終選択結果情報分析部135において判定された場合には、第2抽出部132における優先装備品22Aとして廃棄物収容装置や生理用品提供装置を設定する。優先装備品22Aの設定が、ユーザの最終選択結果情報に基づいて統計的処理や機械学習により自動的にフィードバックされるため、優先装備品22Aの種類を、トイレの設置位置、季節、気候等によって変化するユーザの実際の使用状況に合わせることが可能となる。
【0051】
なお、上記の推奨トイレ個室21Xは、公共トイレ2の各トイレ個室21の中で、ユーザが利用しようとするタイミングにおいて、空いているトイレ個室21の中から選択される。そのため、本実施形態では、各トイレ個室21の空き状況を判定する空き状況判定部150を備えている(
図3参照)。空き状況判定部150は、上記のトイレ個室使用頻度判断部110において用いられる各種センサ21aの検出信号を受信し、トイレ個室21への入退室状況を判定し、それにより空き状況を判定する。例えば、各トイレ個室21のドア21bの開閉を検出するセンサ、ドア21bの鍵をかけたか否かを検出するセンサ等の検出信号を端末装置3を介して受信し、それに基づいてトイレ個室21が空いている状態か使用中かを判定する。
【0052】
空き状況判定部150による空き状況の判定結果は、常に最新の状態となるように空き状況の変化があるたびに更新され、トイレ個室使用頻度判断部110、装備品使用状況判断部120、推奨トイレ個室抽出部130による各工程は、空き状況判定部150により、「空き」と判定されているトイレ個室21について行われることが好ましい。空き状況判定部150は常に最新の状態を検出しているため、推奨トイレ個室21Xの推奨結果もその度に更新されることになり、公共トイレ2の利用者は常に空いているトイレ個室21の中から推奨候補を知ることができる。
【0053】
また、最終選択結果情報分析部135は、
図9に示したように、ユーザが所定のトイレ個室21に入ったことを空き状況判定部150が検知し、その情報を得たならば、その入室タイミングから、その直前に表示されていた推奨トイレ個室21Xの推奨結果とを対比し、ユーザが最終的に当該トイレ個室21を選択した根拠情報がいずれであるかを判定し、例えば、推奨トイレ個室21Xの評価結果(重み)にそのまま従っている場合にはこの評価結果が根拠情報となっており、第2抽出部132において付帯された上記の参考情報に基づいたトイレ個室を選択した場合には、この参考情報が根拠情報となっているといったことを判定し、それを最終選択結果情報として出力する。例えば、当該ユーザの入室タイミングの直前に、ディスプレイ4に
図8(b)に示した内容が表示されていた場合、総合重みが最も高いトイレ個室21Aを選択したか、装備品22の重みが最も高いトイレ個室21Cを選択したか、あるいは、特定の装備品22の残量の多いトイレ個室21Fを選択したかを分析する。そして、その最終選択結果情報を上記のように第2抽出部132にフィードバックする。
【0054】
なお、トイレ個室使用頻度判断部110は、トイレ個室21の使用を検出してその頻度を求めるものであることから、トイレ個室21の現在の状態が空き状態か使用中かも判定できる。よって、トイレ個室使用頻度判断部110に、空き状況判定部150としての機能を持たせた構成としてもよく、そのような構成も本実施形態に含まれる態様である。
【0055】
本実施形態によれば、公共トイレ2を利用しようとするユーザは、報知部140の報知先であるディスプレイ4等において、使用頻度の点から推奨候補となっているトイレ個室21と装備品22の使用可能量等の観点から推奨候補となっているトイレ個室21の両者を加味して判断された推奨トイレ個室21Xを把握することができる。よって、ユーザは、使用頻度の点から快適と想定されると共に、装備品22が充実しているトイレ個室21を利用することができ、トイレ個室21の使用の平準化とトイレ使用の快適性とを両立させることが可能となる。その結果、トイレ個室21毎の汚れ度合いが平準化されメンテナンスしやすくなることに加え、装備品22のメンテナンスの平準化にもつながり、トータルのメンテナンスコストの低減に資する。
【0056】
図10は、本発明の他の実施形態を示す概念図である。本実施形態では、コンピュータプログラムが、上記実施形態の各構成要素に加え、汚れ状況判断部160として機能する手順を実行する。汚れ状況判断部160は、各トイレ個室21に設置された汚れ状況を判定するセンサ、例えば、便器周囲の床面上に設置された濡れ検知センサ、トイレ個室21内の適宜位置に設置された臭気センサ等からの検出信号を端末装置3を介して受信し、床面上にたれている液体の量が予め設定した所定の閾値を上回っていたり、臭気が所定の閾値を上回っていたりした場合には、汚れ状況の度合いが高いとして推奨候補からは外す機能を有する。逆に言えば、液体のたれている量や臭気が所定の閾値以下のトイレ個室21を抽出する機能を有する。
【0057】
推奨トイレ個室抽出部130は、
図11に示したように、汚れ状況判断部160において汚れ状況の度合いが所定の閾値以下と判断されたトイレ個室21を推奨候補として抽出する第3抽出部134を有し、決定部133は、上記の第1抽出部131及び第2抽出部132による各推奨候補に加え、この第3抽出部134によって抽出された推奨候補を加味して推奨トイレ個室21Xを決定する。
【0058】
決定部133において、第3抽出部134によって抽出された推奨候補を加味する方法としては、例えば、第1抽出部131により抽出された推奨候補のトイレ個室21と、第2抽出部132により抽出された推奨候補のトイレ個室21と、第3抽出部134により抽出された推奨候補のトイレ個室21とのうち、全てに重複して抽出されたトイレ個室21を推奨トイレ個室21Xとして決定する方法をとることができる。
【0059】
また、上記実施形態と同様に、各抽出部131,132,134により抽出された推奨候補について重み付けを行って総合重みが高い順に推奨トイレ個室21Xを決定することもできる(
図7参照)。例えば、第1抽出部131により抽出された推奨候補のトイレ個室21について、使用頻度の少ない順に重み付けを行い、第2抽出部132により抽出された推奨候補のトイレ個室21について、使用可能な装備品22の多い順に重み付けを行い、第3抽出部134により抽出された推奨候補のトイレ個室21について、汚れ状況が少ない順に重み付けを行い、これら3つの重みを合わせた総合重みが高い順に推奨トイレ個室21Xを決定する。
【0060】
また、決定部133が第3抽出部134によって抽出された推奨候補を加味した上で、複数の推奨トイレ個室21Xを選択することができ、さらに、これら複数の推奨トイレ個室21Xを報知部140によって報知先であるディスプレイ4等にその重み(評価)や装備品22の詳細な内容(種類や残量等の情報)と共に、表示させることができることも同様である(
図8参照)。また、汚れ状況判断部160において判断された推奨トイレ個室21Xの汚れ状況を示して表示させることも可能である。汚れ状況は、例えば、濡れ検知センサによる検出信号から求めた床のぬれ程度を示す指標や臭気センサの検出信号から臭気の程度を示す指標などを表示して報知することができる。なお、ここでいう指標は、数値、記号、図形、メッセージ等、種々の表示態様を含む。
【0061】
本実施形態によれば、例えば、上記実施形態の例において、第1抽出部131及び第2抽出部132にって抽出された結果では、総合重みが高いとされたトイレ個室21Aであっても、第3抽出部134による重み(評価)を組み合わせると他のトイレ個室21よりも総合重みが低くなることもあり得る。また、各抽出部132,132,134により得られた重みや汚れ状況に関する指標をディスプレイ4等に併せて表示させることで、例えば、総合重みが相対的に低くても、第3抽出部134による重み(評価)が高いトイレ個室21を選択するユーザの出現もあり得る。
【0062】
また、本実施形態では、第1抽出部131により使用頻度が少ないと判断されたトイレ個室21であっても、第3抽出部134によって臭気が所定の閾値を超えていると判断される場合もあり、各トイレ個室21の清潔度合いを使用頻度以外の要素を考慮して判断できる。その結果、ユーザはトイレ個室21をより快適に使用することが可能となる。また、汚れ状況によっては即座に清掃作業を行う必要もあり、そのような状況を公共トイレ2の管理者側に伝達する機能を備えさせることもできる。また、最終選択結果情報分析部135において、ユーザによるトイレ個室21の選択の傾向を蓄積することで、複数種類の装備品22のうち、ユーザがトイレ使用時に重視している装備品22の種類も把握することができる。この情報を用いることで、公共トイレ2の管理者側において、設置を望むもの、設置しなくてもよいものを検討することができ、また、装備品22を提供する業者にとっては、管理者やユーザのニーズに合った種類の装備品22を勧めやすくなる。
【符号の説明】
【0063】
1 トイレ管理装置
1a 記憶部
110 トイレ個室使用頻度判断部
120 装備品使用状況判断部
130 推奨トイレ個室抽出部
131 第1抽出部
132 第2抽出部
133 決定部
134 第3抽出部
135 最終選択結果情報分析部
140 報知部
150 空き状況判定部
160 汚れ状況判断部
2 公共トイレ
21 トイレ個室
21A~21F トイレ個室
21X 推奨トイレ個室