(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20250114BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250114BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250114BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20250114BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250114BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250114BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250114BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20250114BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250114BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250114BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/46
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/80 C
H01M10/052
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2021526097
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2020022705
(87)【国際公開番号】W WO2020250892
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/023562
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】織田 明博
(72)【発明者】
【氏名】吉成 保彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀之
(72)【発明者】
【氏名】星野 稔
(72)【発明者】
【氏名】堀川 真代
(72)【発明者】
【氏名】瀬良 祐介
(72)【発明者】
【氏名】上田 克
(72)【発明者】
【氏名】三國 紘揮
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192255(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093411(WO,A1)
【文献】特開2018-078103(JP,A)
【文献】特開2018-170163(JP,A)
【文献】特開2019-040676(JP,A)
【文献】特開2011-086599(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/64- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
負極集電体と、
前記正極集電体及び前記負極集電体の間に配置された電解質層と、
前記正極集電体及び前記電解質層によって区画された正極電解液充填部と、
前記負極集電体及び前記電解質層によって区画された負極電解液充填部と、
を備え、
前記負極電解液充填部が、
前記負極集電体と前記電解質層とを導通させるように配置された、網目構造を有する導通部材と、
前記導通部材に保持された負極活物質と、
電解質塩と、
前記電解質塩を溶解させる非水溶媒と、
を含み、
前記負極活物質が、構成元素として、ケイ素、スズ、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、二次電池。
【請求項2】
前記導通部材が、炭素材料で形成されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記非水溶媒が、非水溶媒全量を基準として10質量%以上のフルオロエチレンカーボネートを含有する、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記非水溶媒が、フルオロエチレンカーボネートのみからなる、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記非水溶媒が、非水溶媒全量を基準として10質量%以上のビニレンカーボネートを含有する、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記非水溶媒が、ビニレンカーボネートのみからなる、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記非水溶媒が、非水溶媒全量を基準として10質量%以上の、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、ペンタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アゼライン酸ジエチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、エチルプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチルエーテル、12-クラウン-4、18-クラウン-6、タウリン、N-メチルタウリン、2-(メチルアミノ)エタノール、ジアミノヘキサン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアセトアミド、N-メチル-ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、1,1,3,3-テトラメチル尿素、N,N-ジメチル-プロプレン尿素、シクロヘキサン、ピペリジン、シクロペンタン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ピロリジン、キノリン、及び3-ピロリンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項8】
前記非水溶媒が、非水溶媒全量を基準として10質量%以上の、12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項
7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活物質が、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のケイ素を含有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極活物質が、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のスズを含有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極活物質が、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のアルミニウムを含有する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極電解液充填部が、
前記正極集電体と前記電解質層とを導通させるように配置された、網目構造を有する導通部材と、
前記導通部材に保持された正極活物質と、
電解質塩と、
前記電解質塩を溶解させる非水溶媒と、
を含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記正極電解液充填部に含まれる前記非水溶媒が、前記負極電解液充填部に含まれる前記非水溶媒と異なる非水溶媒である、請求項
12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記正極電解液充填部におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量が、前記正極電解液充填部に含まれる非水溶媒全量を基準として0.1質量%以下である、請求項
12又は
13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記正極電解液充填部が、フルオロエチレンカーボネートを含まない、請求項
12~
14のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記正極電解液充填部におけるビニレンカーボネートの含有量が、前記正極電解液充填部に含まれる非水溶媒全量を基準として0.1質量%以下である、請求項
12~
15のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項17】
前記正極電解液充填部が、ビニレンカーボネートを含まない、請求項
12~
16のいずれか一項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型電子機器、電気自動車等の普及により、リチウムイオン二次電池に代表される二次電池においては、更なる性能向上が求められている。例えば、特許文献1には、高容量の負極活物質であるシリコン材料を含む負極を備えたリチウムイオン二次電池において、良好なサイクル特性が得られるリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ケイ素を構成元素として含有する負極活物質を用いた場合、特許文献1にも記載されているように、二次電池の充放電に伴う負極活物質の膨張収縮が大きいため、負極活物質の微粉化(崩壊)が生じ易い。また、スズ又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質を用いた場合にも、同様の現象が起こり易い。その結果、負極活物質が負極から脱落してしまい、二次電池の放電容量等が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、ケイ素、スズ、又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質を用いた二次電池において、放電容量の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、正極集電体と、負極集電体と、正極集電体及び負極集電体の間に配置された電解質層と、正極集電体及び電解質層によって区画された正極電解液充填部と、負極集電体及び電解質層によって区画された負極電解液充填部とを備え、負極電解液充填部が、負極集電体と電解質層とを導通させるように配置された、網目構造を有する導通部材と、導通部材に保持された負極活物質と、電解質塩と、電解質塩を溶解させる非水溶媒とを含み、負極活物質が、構成元素として、ケイ素、スズ、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、二次電池である。
【0007】
この二次電池では、導通部材が負極集電体と電解質層との間の導通を確保しつつ、負極電解液充填部において、負極活物質が導通部材に保持された状態で負極電解液と共存することにより、二次電池として動作するようになっている。そして、この二次電池では、負極活物質が導通部材に保持されているため、二次電池の充放電によって、ケイ素、スズ、又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質が微粉化した場合であっても、負極活物質が、導通部材の網目構造に捕捉され易く、引き続き負極活物質として機能し得る。したがって、この二次電池では、負極活物質が負極集電体上に保持されている従来の二次電池に比べて、負極活物質の微粉化による放電容量の低下を抑制することができる。
【0008】
加えて、この二次電池は、正極電解液充填部と負極電解液充填部とをそれぞれ別個に備えているため、正極電解液及び負極電解液として、それぞれの電極に適した組成を有する電解液を別個に用いることができる。したがって、正極及び負極に共通の電解液を用いる従来の二次電池に比べて、二次電池の性能を向上させることができる。
【0009】
導通部材は、炭素材料で形成されていてよい。
【0010】
非水溶媒は、非水溶媒全量を基準として10質量%以上のフルオロエチレンカーボネートを含有してよく、フルオロエチレンカーボネートのみからなっていてよい。
【0011】
非水溶媒は、非水溶媒全量を基準として10質量%以上のビニレンカーボネートを含有してよく、ビニレンカーボネートのみからなっていてよい。
【0012】
非水溶媒は、非水溶媒全量を基準として10質量%以上の、12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してよく、これらの少なくとも1種のみからなっていてよい。
【0013】
負極活物質は、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のケイ素を含有してよい。負極活物質は、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のスズを含有してよい。負極活物質は、構成元素として、負極活物質全量を基準として10質量%以上のアルミニウムを含有してよい。
【0014】
正極電解液充填部は、正極集電体と電解質層とを導通させるように配置された、網目構造を有する導通部材と、導通部材に保持された正極活物質と、電解質塩と、電解質塩を溶解させる非水溶媒とを含んでよい。
【0015】
正極電解液充填部に含まれる非水溶媒は、負極電解液充填部に含まれる非水溶媒と異なる非水溶媒であってよい。
【0016】
正極電解液充填部におけるフルオロエチレンカーボネートの含有量は、正極電解液充填部に含まれる非水溶媒全量を基準として0.1質量%以下であってよい。正極電解液充填部は、フルオロエチレンカーボネートを含まなくてよい。
【0017】
正極電解液充填部におけるビニレンカーボネートの含有量は、正極電解液充填部に含まれる非水溶媒全量を基準として0.1質量%以下であってよい。正極電解液充填部は、ビニレンカーボネートを含まなくてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、ケイ素、スズ、又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質を用いた二次電池において、放電容量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図2(a)は、二次電池の一実施形態を示す模式断面図であり、
図2(b)は、二次電池の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。
図1に示すように、一実施形態に係る二次電池1は、電極群2と、電極群2を収容する袋状の電池外装体3とを備える、いわゆるラミネート型の二次電池である。電極群2には、正極集電タブ4及び負極集電タブ5が設けられている。正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、それぞれ正極集電体及び負極集電体(詳細は後述)が二次電池1の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体3の内部から外部へ突き出している。二次電池1は、他の一実施形態において、ラミネート型以外の形状(コイン型、円筒型等)の二次電池であってもよい。
【0022】
電池外装体3は、例えば、積層フィルムで形成された容器であってよい。積層フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリマーフィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってよい。
【0023】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図2に示すように、二次電池1は、電池外装体3内に、正極集電体6と、負極集電体7と、正極集電体6及び負極集電体7の間に配置された電解質層8と、正極集電体6及び電解質層8によって区画された正極電解液充填部9と、負極集電体7及び電解質層8によって区画された負極電解液充填部10とを備えている。
【0024】
電池外装体3は、正極電解液及び負極電解液が、それぞれ正極電解液充填部9及び負極電解液充填部10から漏れ出ないように封止されている。一実施形態において、
図2(a)に示すように、正極集電体6及び負極集電体7の全体が、電池外装体3の内部に収容されていてよい。他の一実施形態において、
図2(b)に示すように、正極集電体6及び負極集電体7の両端部が、電池外装体3の外部に突出していてよい。
【0025】
正極集電体6は、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等で形成されている。正極集電体6の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、50μm以下であってよい。
【0026】
負極集電体7は、例えば、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、アルミニウム-カドミウム合金等で形成されている。負極集電体7の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、50μm以下であってよい。
【0027】
電解質層8は、正極電解液充填部9及び負極電解液充填部10に含まれる電解質塩に由来するカチオン(例えば、リチウムカチオン)を透過させる一方で、正極電解液充填部9及び負極電解液充填部10に含まれる活物質(正極活物質及び負極活物質)、カチオン以外の成分(例えば上記非水溶媒)を透過させない層である。電解質層8は、例えば非多孔質の電解質層8(孔を有さない電解質層8)であってよい。電解質層8の厚さは、優れた強度が得られる観点から、好ましくは1μm以上であり、電解質層8におけるイオン伝導の抵抗を下げ、結果的に二次電池1の抵抗を下げることができる観点から、好ましくは500μm以下である。
【0028】
このような電解質層8は、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質材料であってよく、例えば、酸化物系の固体電解質で形成されていてもよく、ポリマーで形成されていてもよい。一実施形態において、電解質層8は、例えばパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜であってよい。パーフルオロスルホン酸系イオン交換膜は、例えば、下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーで構成されている。
【0029】
【化1】
[式中、xは1~20の整数、yは1~1000の整数、mは0又は1、nは1~10の整数をそれぞれ表し、Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【0030】
このようなポリマーは、例えば、公知の方法によって合成することができ、また、Nafion(登録商標、ダウ・デュポン株式会社製)、Dow膜(ダウ・デュポン製)、Aciplex(登録商標、旭化成株式会社製)、又はFlemion(登録商標、AGC株式会社製)として購入することもできる。
【0031】
電解質層8を構成するポリマーは、他の一実施形態において、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルスルホン)、又はスルホン化ポリ(p-フェニレン)であってよい。これらのポリマーは、好ましくは、イオン交換して使用される。
【0032】
正極電解液充填部9には、正極集電体6と電解質層8とを導通させるように導通部材が配置されている。導通部材は、網目構造を有している。導通部材は、正極電解液充填部9の一部に設けられていてよく、正極電解液充填部9の全部を埋めるように設けられていてもよい。正極電解液充填部9の厚さは、例えば、5μm以上であってよく、2000μm以下であってよい。
【0033】
導通部材は、例えば、シート状であってよい。導通部材は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、例えば、炭素材料、金属材料、導電性高分子材料等が挙げられる。
【0034】
炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、カーボンナノホーン、グラッシーカーボン、膨張黒鉛等が挙げられる。
【0035】
金属材料としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、金、銀等が挙げられる。
【0036】
導電性高分子材料としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレンスルフィド等の高分子化合物にドーピングした材料などが挙げられる。ドーピングの手法は、特に制限されないが、ヨウ素、五フッ化ヒ素等の電子受容体(アクセプタ)、アルカリ金属等の電子供与体(ドナー)などの化合物を高分子化合物に添加する方法であってよい。
【0037】
一実施形態において、導通部材として、予め網目構造に形成された部材を用いてよい。このような導通部材としては、例えば、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等の炭素材料で形成された導通部材、パンチングメタル(パンチングにより網目構造が形成された金属板)等の金属材料で形成された導通部材などが挙げられる。
【0038】
正極電解液充填部9は、正極電解液を含んでおり、具体的には、例えば、正極活物質と、電解質塩と、非水溶媒とを含んでいる。
【0039】
正極電解液充填部9において、正極活物質は、好ましくは、正極電解液(非水溶媒)中に分散された状態で存在する。言い換えれば、正極活物質は、好ましくは、正極集電体6に保持(固定)されておらず、正極電解液充填部9は、好ましくは、正極活物質を正極集電体6に保持(固定)するための結着材を含んでいない。
【0040】
正極活物質は、例えば、リチウム酸化物であってよい。リチウム酸化物としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(各式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す(ただし、Mは、各式中の他の元素と異なる元素である)。x=0~1.2、y=0~0.9、z=2.0~2.3である。)等が挙げられる。LixNi1-yMyOzで表されるリチウム酸化物は、LixNi1-(y1+y2)Coy1Mny2Oz(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y1=0~0.9、y2=0~0.9であり、且つ、y1+y2=0~0.9である。)であってよく、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2であってよい。LixNi1-yMyOzで表されるリチウム酸化物は、LixNi1-(y3+y4)Coy3Aly4Oz(ただし、x及びzは上述したものと同様であり、y3=0~0.9、y4=0~0.9であり、且つ、y3+y4=0~0.9である。)であってよく、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05O2であってもよい。
【0041】
正極活物質は、例えば、リチウムのリン酸塩であってもよい。リチウムのリン酸塩としては、例えば、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)等が挙げられる。
【0042】
正極活物質の含有量は、正極電解液充填部9に含まれる正極活物質、非水溶媒、及び導通部材の合計質量100質量部に対して、10質量部以上であってよく、80質量部以下であってよい。
【0043】
電解質塩は、例えばリチウム塩であってよい。リチウム塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、CF3SO2OLi、LiN(SO2F)2(Li[FSI]、リチウムビスフルオロスルホニルイミド)、LiN(SO2CF3)2(Li[TFSI]、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、及びLiN(SO2CF2CF3)2からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0044】
電解質塩の含有量は、非水溶媒全量を基準として、0.5mol/L以上、0.7mol/L以上、又は0.8mol/L以上であってよく、1.5mol/L以下、1.3mol/L以下、又は1.2mol/L以下であってよい。
【0045】
非水溶媒は、正極電解液充填部9に含まれる電解質塩を溶解させることができる溶媒である。非水溶媒としては、例えば、正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適に使用できる非水溶媒、正極電解液のみに好適に使用できる(負極電解液には好適でない)非水溶媒等が挙げられる。非水溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適に使用できる非水溶媒は、例えば、正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適な非プロトン性溶媒であってよい。そのような非プロトン性溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、N、N-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0047】
正極電解液のみに好適に使用できる(負極電解液には好適でない)非水溶媒は、耐酸化性に優れる一方で、耐還元性には優れない(負極電解液に含まれると分解が促進されて、被膜抵抗を上昇させてしまう)溶媒であってよい。そのような溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ヘキサフルオロイソプロピル-エチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、cis-ジフルオロエチレンカーボネート、リン酸トリスヘキサフルオロイソプロピル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、アセトニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、クロロエチレンカーボネート、ニトロメタン等が挙げられる。これらの中でも、正極電解液のみに好適に使用できる(負極電解液には好適でない)非水溶媒は、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、アセトニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル、クロロエチレンカーボネート、ニトロメタン、及びエチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0048】
正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適に使用できる非水溶媒の含有量は、正極電解液充填部9に含まれる非水溶媒全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。正極電解液のみに好適に使用できる(負極電解液には好適でない)非水溶媒の含有量は、正極電解液充填部9に含まれる非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0049】
正極電解液充填部9は、一実施形態において、後述する負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒を含まなくてよい。正極電解液充填部9は、一実施形態において、フルオロエチレンカーボネートを含まなくてよく、ビニレンカーボネートを含まなくてよく、12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含まなくてよい。他の一実施形態において、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、又は12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の含有量は、正極電解液充填部9に含まれる非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以下であってもよい。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る二次電池1では、正極電解液充填部9と負極電解液充填部10とが独立に設けられているため、正極電解液充填部9には、正極電解液にのみ好適である非水溶媒を用いることができると共に、負極電解液にのみ好適である非水溶媒を用いなくてもよい。その結果、二次電池1全体の特性を更に向上させることができる。
【0051】
正極電解液充填部9は、導電材を更に含んでいてよい。導電材は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料であってよい。これらの導電材は、正極電解液中に分散して、電子伝導ネットワークを形成し得る。導電材は、好ましくは粒子状であり、より好ましくは嵩高い粒子状である。導電材の含有量は、正極電解液充填部9に含まれる正極活物質、非水溶媒、及び導通部材の合計質量100質量部に対して、5質量部以上であってよく、50質量部以下であってよい。
【0052】
負極電解液充填部10には、負極集電体7と電解質層8とを導通させるように導通部材が配置されている。導通部材は、網目構造を有している。導通部材は、負極電解液充填部10の一部に設けられていてよく、負極電解液充填部10の全部を埋めるように設けられていてもよい。負極電解液充填部10の厚さは、例えば、5μm以上であってよく、2000μm以下であってよい。負極電解液充填部10における導通部材は、正極電解液充填部9における導通部材として説明したものと同様であってよい。
【0053】
負極電解液充填部10は、負極電解液を含んでおり、具体的には、例えば、負極活物質と、電解質塩と、非水溶媒とを含んでいる。
【0054】
負極電解液充填部10において、負極活物質は、好ましくは、負極電解液(非水溶媒)中に分散された状態で存在する。言い換えれば、負極活物質は、好ましくは、負極集電体7に保持(固定)されておらず、負極電解液充填部10は、好ましくは、負極活物質を負極集電体7に保持(固定)するための結着材を含んでいない。
【0055】
負極活物質は、構成元素として、ケイ素、スズ、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。ケイ素の含有量は、負極活物質全量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。スズの含有量は、負極活物質全量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。アルミニウムの含有量は、負極活物質全量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0056】
構成元素としてケイ素を含有する負極活物質は、ケイ素単体を含んでいてよく、ケイ素を構成元素として含む化合物(ケイ素含有化合物)を含んでいてもよい。構成元素としてスズを含有する負極活物質は、スズ単体を含んでいてよく、スズを構成元素として含む化合物(スズ含有化合物)を含んでいてもよい。
【0057】
ケイ素含有化合物又はスズ含有化合物は、例えば、ケイ素又はスズと、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1種とを構成元素として含む合金(ケイ素合金又はスズ合金)であってよい。ケイ素含有化合物又はスズ含有化合物は、酸化物、窒化物、又は炭化物であってもよい。そのようなケイ素含有化合物としては、例えば、SiO、SiO2、LiSiO等のケイ素酸化物、Si3N4、Si2N2O等のケイ素窒化物、SiC等のケイ素炭化物などが挙げられる。そのようなスズ含有化合物としては、例えば、SnO、SnO2、LiSnO等のスズ酸化物などが挙げられる。
【0058】
構成元素としてアルミニウムを含有する負極活物質は、例えば、リチウムアルミニウム合金等のアルミニウム合金であってよい。
【0059】
負極活物質の含有量は、負極電解液充填部10に含まれる負極活物質、非水溶媒、及び導通部材の合計質量100質量部に対して、10質量部以上であってよく、80質量部以下であってよい。
【0060】
電解質塩は、例えばリチウム塩であってよい。リチウム塩は、正極電解液充填部9に含まれる電解質塩として説明したリチウム塩と同様であってよい。電解質塩の含有量は、非水溶媒全量を基準として、0.5mol/L以上、0.7mol/L以上、又は0.8mol/L以上であってよく、5mol/L以下、3mol/L以下、又は2mol/L以下であってよい。
【0061】
非水溶媒は、負極電解液充填部10に含まれる電解質塩を溶解させることができる溶媒である。非水溶媒としては、例えば、上述した正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適に使用できる非水溶媒、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒等が挙げられる。非水溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒は、耐還元性に優れる一方で、耐酸化性には優れない(正極電解液(特に、正極活物質としてコバルト酸リチウム等の4V系正極を用いた正極電解液)に含まれると酸化分解が促進されて、抵抗を上昇させてしまう)溶媒であってよい。
【0063】
負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒としては、例えば、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、ペンタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アゼライン酸ジエチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、エチルプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチルエーテル、12-クラウン-4、18-クラウン-6、タウリン、N-メチルタウリン、2-(メチルアミノ)エタノール、ジアミノヘキサン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアセトアミド、N-メチル-ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、1,1,3,3-テトラメチル尿素、N,N-ジメチル-プロプレン尿素、シクロヘキサン、ピペリジン、シクロペンタン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ピロリジン、キノリン、3-ピロリン等が挙げられる。これらの中でも、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒は、12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0064】
また、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒としては、例えば、ビニレンカーボネート、プロパンサルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンサルトン、エチルメタンスルトン、エチレンサルファイト、トリフルオロメタンエチレンカーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエチレンカーボネート等も挙げられる。これらの中でも、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒は、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートであってよい。
【0065】
正極電解液及び負極電解液のいずれにも好適に使用できる非水溶媒の含有量は、負極電解液充填部10に含まれる非水溶媒全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒の含有量は、負極電解液充填部10に含まれる非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、100質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0066】
非水溶媒は、負極活物質の表面におけるSolid-Electrolyte-Interface(SEI)と呼ばれる被膜の生成を更に好適に制御できる観点から、一実施形態において、非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上のビニレンカーボネートを含有し、より好ましくは、ビニレンカーボネートのみからなっていてもよい。
【0067】
非水溶媒は、負極活物質の表面におけるSEIの生成及び消失を好適に制御できる観点から、一実施形態において、非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上のフルオロエチレンカーボネートを含有し、より好ましくは、フルオロエチレンカーボネートのみからなっていてもよい。
【0068】
非水溶媒は、負極活物質の表面におけるSEIの生成及び消失を好適に制御できる観点から、一実施形態において、非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上の、12-クラウン-4、18-クラウン-6、1,2-ジメトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘプタン酸エチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、2-(メチルアミノ)エタノール、及びジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、より好ましくは、これらの少なくとも1種のみからなっていてもよい。
【0069】
負極電解液充填部10は、一実施形態において、上述した負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒を含まなくてよい。他の一実施形態において、負極電解液のみに好適に使用できる(正極電解液には好適でない)非水溶媒の含有量は、負極電解液充填部10に含まれる非水溶媒全量を基準として、0.1質量%以下であってもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る二次電池1では、正極電解液充填部9と負極電解液充填部10とが独立に設けられているため、負極電解液充填部10には、負極電解液にのみ好適である非水溶媒を用いることができると共に、正極電解液にのみ好適である非水溶媒を用いなくてもよい。その結果、負極活物質の表面におけるSEIと呼ばれる被膜の生成が最小限に抑えられる。SEIは、二次電池の寿命特性に影響を与える因子であり、充放電を数百回繰り返す間にSEIが成長することによって、電池抵抗が大きくなり、初期の容量が取り出せなくなるおそれがある。そのため、SEIの形成を抑制できる非水溶媒を負極電解液のみに用いることによって、負極電解液の耐還元性を向上させ、二次電池1の更なる寿命向上が図られる。
【0071】
負極電解液充填部10は、導電材を更に含んでいてよい。導電材は、正極電解液充填部9に含まれる導電材として説明したものと同様であってよい。導電材の含有量は、負極電解液充填部10に含まれる負極活物質、非水溶媒、及び導通部材の合計質量100質量部に対して、5質量部以上であってよく、50質量部以下であってよい。
【0072】
以上説明した二次電池では、導通部材が負極集電体7と電解質層8との間の導通を確保しつつ、負極電解液充填部10において、負極活物質が導通部材に保持された状態で負極電解液と共存することにより、二次電池として動作するようになっている。そして、この二次電池では、負極活物質が導通部材に保持されているため、二次電池の充放電によって、ケイ素、スズ、又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質が微粉化した場合であっても、負極活物質が、導通部材の網目構造に捕捉され易く、引き続き負極活物質として機能し得る。
【0073】
一方、負極活物質が負極集電体7上に保持されている従来の二次電池では、二次電池の充放電によって負極活物質が微粉化すると、負極活物質が負極集電体7から脱落してしまい、負極活物質を含む電極が機能し得なくなるため、二次電池の放電容量等が低下するおそれがある。
【0074】
したがって、この二次電池1では、負極活物質が結着材を介して負極集電体7に固定されておらず、負極電解液中に分散されているため、負極活物質が負極集電体上に保持されている従来の二次電池に比べて、負極活物質の微粉化による放電容量の低下を抑制することができる。
【0075】
加えて、この二次電池は、正極電解液充填部9と負極電解液充填部10とをそれぞれ別個に備えているため、正極電解液及び負極電解液として、それぞれの電極に適した組成を有する電解液を別個に用いることができる。一方、正極及び負極に共通の電解液を用いる従来の二次電池では、例えば、負極に対して好適な成分を電解液に添加する場合に、当該成分が正極に対しては不適であると、二次電池全体の性能を低下させないように、その添加量等に制約が生じてしまう。したがって、そのような制約が生じない本実施形態の二次電池では、正極及び負極に共通の電解液を用いる従来の二次電池に比べて、二次電池の性能を向上させることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
(二次電池の作製)
コバルト酸リチウム50質量部及びアセチレンブラック20質量部を、アセトニトリル(脱水グレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)30質量部及びLiBF4(キシダ化学株式会社製)3質量部にボールミルで分散させ、正極電解液を作製した。また、Si(アルドリッチ社製、ナノシリコン(100nm以下))50質量部及びアセチレンブラック20質量部を、1-メチル-2-ピロリジノン(脱水グレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)30質量部及びLiBF43質量部にビーズミルで粉砕しながら分散させ、負極電解液を作製した。
【0078】
10cm×10cmの大きさの電解質層(ダウ・デュポン株式会社製、商品名Nafion212)を用意し、電解質層の両面に導通部材としてカーボンフェルト(AvCarb Material Solutions社製、AvCarb G100 Soft Graphite Battery Felt)を配置した。次に、電解質層の一方面側の導通部材上に厚さ20μmのアルミ箔(正極集電体)、多方面側の導通部材上に厚さ20μmの銅箔(負極集電体)を配置して積層体を得た。続いて、正極集電体と電解質層との間に上記の正極電解液を注入し、また、負極集電体と電解質層との間に上記の負極電解液を注入した後、積層体を40℃で熱プレスした。正極集電体及び負極集電体の一部が外に突出するように積層体をアルミラミネート袋(外装体)で覆い、封止することによって、二次電池を得た。
【0079】
(二次電池の評価)
25℃において、得られた二次電池を0.1Cに相当する電流で4.2Vまで充電した後、0.1Cに相当する電流で2.5Vまで放電を行い、初期(1サイクル目)の放電容量Xを測定した。この充電及び放電のサイクルを2サイクル行った後、0.5Cに相当する電流で充電し、0.5Cに相当する電流で放電するサイクルを100サイクル行った。100サイクル後の放電容量Yを測定し、容量維持率(=Y/X×100(%))を算出したところ、91%であった。
【0080】
[実施例2]
<実施例2-1>
(二次電池の作製)
LiNi0.5Mn1.5O250質量部及びアセチレンブラック20質量部を、アセトニトリル(脱水グレード)30質量部及びLiBF4(キシダ化学株式会社製)3質量部にボールミルで分散させ、正極電解液を作製した。また、Si(アルドリッチ社製、ナノシリコン(100nm以下))50質量部及びアセチレンブラック20質量部を、1,2-ジメトキシエタン(キシダ化学株式会社製)30質量部及びLiBF43質量部にビーズミルで粉砕しながら分散させ、負極電解液を作製した。
【0081】
電解質層としてリチウムイオン伝導ガラス(株式会社オハラ製、LICGC)を用意した。電解質層の両面に導通部材としてカーボンフェルト(AvCarb Material Solutions社製、AvCarb G100 Soft Graphite Battery Felt)を配置した。次に、電解質層の一方面側の導通部材上に厚さ20μmのアルミ箔(正極集電体)、多方面側の導通部材上に厚さ20μmの銅箔(負極集電体)を配置して積層体を得た。続いて、正極集電体と電解質層との間に上記の正極電解液を注入し、また、負極集電体と電解質層との間に上記の負極電解液を注入した後、積層体を40℃で熱プレスした。正極集電体及び負極集電体の一部が外に突出するように積層体をアルミラミネート袋(外装体)で覆い、その後、ガラス板を両面に挟み、外圧0.3MPをかけ、封止することによって、二次電池を得た。
【0082】
(二次電池の評価)
25℃において、得られた二次電池を0.1Cに相当する電流で5.0Vまで充電した後、0.1Cに相当する電流で3.0Vまで放電を行い、初期(1サイクル目)の放電容量Xを測定した。この充電及び放電のサイクルを2サイクル行った後、0.5Cに相当する電流で充電し、0.5Cに相当する電流で放電するサイクルを100サイクル行った。100サイクル後の放電容量Yを測定し、放電容量維持率(=Y/X×100(%))を算出したところ、91%であった。
【0083】
<実施例2-2~2-9>
(二次電池の作製及び二次電池の評価)
正極電解液の溶媒及び負極電解液の溶媒を表1に示す溶媒に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、二次電池の作製及び二次電池の評価を行った。なお、電解液溶媒は必要に応じて脱水処理を実施してから使用した。容量維持率の結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
上記より、本発明の一側面に係る二次電池(ケイ素、スズ、又はアルミニウムを構成元素として含有する負極活物質を用いた二次電池)が、放電容量の低下を抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0086】
1…二次電池、2…電極群、3…電池外装体、4…正極集電タブ、5…負極集電タブ、6…正極集電体、7…負極集電体、8…電解質層、9…正極電解液充填部、10…負極電解液充填部。