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特許7618334ノダケニンおよび/またはノダケネチンを含むインフルエンザウイルス阻害用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】ノダケニンおよび/またはノダケネチンを含むインフルエンザウイルス阻害用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20250114BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20250114BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20250114BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20250114BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20250114BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20250114BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20250114BHJP
   C07D 493/04 20060101ALN20250114BHJP
   C07H 15/26 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/37
A61K31/7048
A61K35/744
A61K35/747
A61K36/232
A61P31/16
C07D493/04 101C
C07H15/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021577634
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 KR2020003627
(87)【国際公開番号】W WO2020262799
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077936
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ム・ヒョン・ジン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502115(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0150250(KR,A)
【文献】特開平05-339162(JP,A)
【文献】富薬,2017年,Vol.39,No.7,p.48
【文献】LISHIZHEN MEDICINE AND MATERIA MEDICA RESEARCH,2005年,Vol.16,No.3,pp.198-199
【文献】BIOMEDICAL CHROMATOGRAPHY,2008年,Vol.22,pp.758-762
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノダケニン(nodakenin)およびノダケネチン(nodakenetin)を含むトウキ(Angelica gigas)植物抽出物の発酵物、または前記発酵物の分画物を含み、前記植物抽出物の発酵物または前記発酵物の分画物は、ノダケニンに対するノダケネチンの重量比が0.5~20である、インフルエンザウイルス感染の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項2】
前記抽出物は、水、C-Cアルコール、1,3-ブチレングリコールまたはエチルアセテートからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の抽出物であり、前記発酵物は、乳酸菌による発酵物であり、前記分画物は、発酵物に対する水、アルコール、ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルムまたはジクロロメタンからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の分画物である、請求項1に記載の健康機能食品組成物。
【請求項3】
ノダケニン(nodakenin)およびノダケネチン(nodakenetin)を含むトウキ(Angelica gigas)植物抽出物の発酵物、または前記発酵物の分画物を含み、前記植物抽出物の発酵物または前記発酵物の分画物は、ノダケニンに対するノダケネチンの重量比が0.5~20である、インフルエンザウイルス感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記抽出物は、水、C-Cアルコール、1,3-ブチレングリコールまたはエチルアセテートからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の抽出物であり、前記発酵物は、乳酸菌による発酵物であり、前記分画物は、発酵物に対する水、アルコール、ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルムまたはジクロロメタンからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の分画物である、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
ノダケニン(nodakenin)およびノダケネチン(nodakenetin)を含むトウキ(Angelica gigas)植物抽出物の発酵物、または前記発酵物の分画物を含み、前記植物抽出物の発酵物または前記発酵物の分画物は、ノダケニンに対するノダケネチンの重量比が0.5~20である、インフルエンザウイルス阻害用組成物。
【請求項6】
前記抽出物は、水、C-Cアルコール、1,3-ブチレングリコールまたはエチルアセテートからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の抽出物であり、前記発酵物は、乳酸菌による発酵物であり、前記分画物は、発酵物に対する水、アルコール、ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルムまたはジクロロメタンからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の分画物である、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)および/またはこれを含む植物抽出物、発酵物および/またはその分画物がノイラミニダーゼ(NA)活性を阻害してインフルエンザウイルス感染を予防、改善および/または治療でき、インフルエンザウイルスを阻害できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、オルトミクソウイルスに属し、季節 ごとに数千から数万人の生命を奪う代表的な病原性ウイルスである。20世紀以降にインフルエンザは、種の壁を越えて変種を起こし、流行性かぜを主導し、すでに明らかにされた薬剤を無意味にさせるほど突然変異率の高いウイルスである。流行性流感とよく呼ばれるこの病気は、一般的に、悪寒、発熱、咽喉炎、筋肉痛、せき、倦怠感と不快感を誘発し、このような非特異的症状は、一般的なかぜと比べてその程度がひどいだけであり、生命に威嚇を与えるほど致命的でないが、肺炎やライ症候群を伴うとき、致命的な合併症を誘発できる。普通、感染者のせきや痰、くしゃみを媒介として呼吸器感染が主に起こり、他の動物(特に鳥類)からヒトに感染されるとき、変種が多く発生する。インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスCの3つの型がある。これらのうち、動物種間の伝染を通じて大流行を惹起させた、2009年に流行したインフルエンザ流感、別名新型インフルエンザは、インフルエンザA/H1N1タイプであり、メキシコから初めて発病して様々な変種が生じることによって、様々な国に広まっていき、世界保健機(WHO)は、これを「世界的流行」と規定したことがある。普通、流感の場合、精製された不活性化菌株をかぜ流行時期以前に注入する方式で予防を通した防御的治療が一般的であるか、流感流行時期にすでに症状が発生した患者の場合、予防が不可能なので、治療の方式で症状を緩和させなければならない。このようにどうしようもなく流行が拡大を続けた新型インフルエンザの拡散を中止させた「タミフル」の場合、効果的な面で卓越するが、たまには、摂取後に幻覚症状の発生のような副作用の事例が言論を通じてたびたび報道されている。また、治療用薬剤でなく、予防の側面で長期的に摂取可能な成分は存在しない実情である。
【0003】
インフルエンザウイルスは、表面に糖タンパク質である赤血球凝集素、すなわち、ヘマグルチニン(hemaglutinine,HA)とノイラミニダーゼ(neuraminidase,NA)など2個の表面抗原を有しており、内部には、分離された8個のRNAが存在する。HAは、宿主細胞の表面にあるシアル酸残基と結合して、ウイルスを宿主細胞に付着させて浸透できるようにする。NAは、感染した宿主細胞で増殖を終えたウイルスが細胞表面の二糖類の部分とノイラミン酸(neuraminic acid)残基との間のアルファ-ケトシディク結合(α-ketosidic bond)を切ってウイルスがさらに他の宿主細胞に増殖するように誘導する役割をする。体内ウイルス防御機構は、HAを認識して宿主細胞の結合を妨害したり、NAに結合して感染した宿主細胞中のウイルスが近接細胞への増殖を阻害する方式で作用する。しかしながら、16種のHAと9種のNAの多様な組み合わせを通じて、ウイルスは、数多くの突然変異を発生させて、防御機構に対する耐性を有する。インフルエンザウイルス阻害剤は、様々な機序を狙った多様な薬が開発されているが、現在使用されている薬は、ウイルス遺伝子の転写および/または複製の阻害剤であるリバビリン(ribavirin)、M2チャネル(M2 channel)阻害剤であるアマンタジン(amantadine)とリマンタジン(rimantadine)、NA活性阻害剤であるザナミビル(Zanamivir)とオセルタミビル(oseltamivir)がある。これらのうち、リバビリンは、流感だけでなく、多様なウイルスによる感染症を治療するのに使用するが、流感類似症状、うつ病、不眠症など報告された副作用が多く、M2チャネル阻害剤であるアマンタジン、リマンタジンは、インフルエンザウイルスAにのみ効果があり、すでに耐性を有するウイルスが多数報告されており、神経系および/または胃腸に深刻な副作用を発生させるという事例があった。
このような背景下で、インフルエンザウイルスに対する阻害活性を示すと共に、人体に安全で、かつ、予防の観点から持続的に摂取が可能な成分および/または製剤の開発が依然として要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】KR 10-2016-0150250 A
【文献】KR 10-2019-0041130 A
【文献】KR 10-2012-0133133 A
【文献】KR 10-2016-0036863 A
【文献】KR 10-2018-0065458 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した目的を達成するために、鋭意研究努力した結果、薬用植物として使われてきた植物の抽出物、発酵物および/またはその分画物が、インフルエンザウイルス増殖に対する阻害効果に優れていることを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、インフルエンザウイルス増殖阻害に関する効能および/または長期的に摂取しても安全性に大きな問題がない有効成分が含まれたインフルエンザウイルスの阻害、感染予防、治療および/または改善用組成物を提供する。
【0007】
このために、具体的に、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス阻害用組成物を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含むインフルエンザウイルス阻害用組成物を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、個体に治療的有効量のノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物を投与することを含むウイルス感染の改善、予防および/または治療方法を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、個体に治療的有効量のノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を投与することを含むウイルス感染の改善予防および/または治療方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、ウイルス治療剤を製造するためのノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物の用途を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、ウイルス治療剤を製造するためのノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)の用途を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、ウイルス感染の改善、予防および/または治療に使用するためのノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物の用途を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、ウイルス感染の改善、予防および/または治療に使用するためのノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)の用途を提供する。
【0019】
本発明において前記植物は、トウキ属(Angelica sp.)植物、カワラボウフウ属(Peucedanum sp.)植物および/またはシャク属(Anthriscus sp.)植物からなる群から選ばれた植物でありうる。
【0020】
本発明において前記抽出物は、水、C-Cアルコール、1,3-ブチレングリコールおよび/またはエチルアセテートからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の抽出物でありうる。
【0021】
本発明において前記分画物は、発酵物に対する水、アルコール、ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルムおよび/またはジクロロメタンからなる群から選ばれた一つ以上の溶媒の分画物でありうる。
【0022】
本発明において前記分画物は、発酵物に対するnヘキサンおよび/またはエチルアセテート溶媒の分画物でありうる。
【0023】
本発明において前記発酵物は、乳酸菌による発酵物でありうる。
【0024】
本発明において前記乳酸菌は、ラクトバチルス属(lactobacillus sp.)乳酸菌でありうる。
【0025】
本発明において前記植物抽出物の発酵物および/またはこれらの分画物は、ノダケネチン(nodakenetin)/ノダケニン(nodakenin)を0.5~20重量比で含むものであってもよい。
【0026】
本発明において前記ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)は、植物抽出物の発酵物から分離したものであるか、合成および/または半合成を通じて得られたものであってもよい。
【0027】
本発明において前記植物は、トウキ(Angelica gigas)、ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)、カワラボウフウ(Peucedanum terebinthaceum)、イワミツバ(Aegopodium podagraria)、シャク(Anthriscus sylvestris)、チャービル(Anthriscus cerefolium)および/またはノダケ(Angelica decursiva)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
本発明においてノダケネチン(nodakenetin)/ノダケニン(nodakenin)を0.5~20重量比で含むものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルスの阻害および/または感染の予防および/または改善、治療用組成物を提供する。
【0029】
また、ノダケニンおよび/またはノダケネチンを含むインフルエンザウイルスの阻害および/または感染の予防および/または改善、治療用組成物を提供する。
【0030】
本発明の発酵物および/またはその分画物;および/またはノダケネチンが含まれた組成物を摂取する場合、インフルエンザウイルス感染を阻害できる。
【0031】
本発明における組成物は、薬学組成物、健康機能食品組成物および/または医薬部外品組成物でありうる。
【0032】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0033】
一様態として、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルスの阻害用組成物、感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物および/または予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0034】
前記植物は、トウキ属(Angelica sp.)植物、カワラボウフウ属(Peucedanum sp.)植物および/またはシャク属(Anthriscus sp.)植物からなる群から選ばれた植物でありうる。
【0035】
前記植物は、トウキ(Angelica gigas)、ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)、カワラボウフウ(Peucedanum terebinthaceum)、イワミツバ(Aegopodium podagraria)、シャク(Anthriscus sylvestris)、チャービル(Anthriscus cerefolium)および/またはノダケ(Angelica decursiva)などを含むが、これらに限定されるものではなく、ノダケネチンおよび/またはノダケニンを含むものは全部含まれてもよい。
【0036】
本発明の一実施例において、トウキ抽出物の発酵物を分画して得られた化合物がインフルエンザウイルス増殖を阻害する効果があることを確認し、このような化合物がノダケネチンであることを実験的に確認したところ、ノダケネチンおよび/またはノダケニンが含まれた植物の抽出物は、本発明において制限なしで使用できる。
【0037】
一様態として、本発明は、トウキ抽出物の発酵物および/またはその分画物を含むインフルエンザウイルスの阻害用組成物、感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物および/または予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明の用語「トウキ(Angelica gigas)」は、セリ科に属する多年生植物であり、東アジアなどに分布する。トウキは、オニノダケ、朝鮮トウキ、Korea angelica、中国トウキ、Dang gui、Dan gui、Dang quai、和トウキ、シラネセンキュウ、日本トウキ、日トウキ、西洋トウキ、angelicaと呼ばれ、これに制限しない。多年草であり、高さ1~2mであり、全体毛がなく、赤紫色を帯び、根は大きく、香りが強く、幹はまっすぐに立っている。8~9月に花が咲いて9~10月に実がなるが、新芽は野菜として食べたりもする。性質は暖かく、毒がなく、味は辛く甘くて苦い。血液循環不良、身体虚弱、関節痛、頭痛、腹痛、めまい、便秘、消化機能衰弱によりやつれているとき、打撲傷、関節炎、血管疾患によりできた内出血、血流停滞、腫脹、頭痛に使用し、婦人病の主な薬剤として月経調整、鎮静作用がある。トウキを使用するとき、部位を区別して使用するが、上側の部分は血を補い、胴の部分は血を調節し、根はお血を除去して血液の流れを円滑にする作用をし、全体は血液循環を活発にする作用をする。オニノダケの成分としては、精油が根に0.31%、果実には0.69%を含有し、クマリンが全草に1.38%、根に2~3%入っている。根の主成分は、ピラノクマリン(pyranocoumarin)系物質であるデクルシン(decursin)といい、その他デクルシノール(decursinol)、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ベータ-シトステロール(β-sitosterol)があると報告されている。その他、ノダケネチン、ノダケニン、インペラトリンなどが報告されている。オニノダケの根や葉は、食品として食用が可能であり、生薬の薬材として長時間摂取してきたので、毒性および/または副作用に関する問題がない。
【0039】
本発明の用語「インフルエンザ(influenza)」は、よく「流感」と知られており、インフルエンザウイルス(influenza virus)により発病する急性呼吸器疾患である。インフルエンザは、毎年全世界的に大小の流行を起こし、流行が始まれば、2~3週内に通常人口の10~20%が感染するほど伝染性が非常に高い病気である。
【0040】
インフルエンザウイルスは、1931年にShopeにより豚から初めて分離され、ヒトでは、1933年にSmith、AndrewsおよびLaidlowにより初めて分離された。以後、数回の変異を通じて全世界的に人類の有病率および/または死亡率を高める原因になっている。
【0041】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)および/またはインフルエンザウイルス属(Influenzavirus)に属し、ヌクレオカプシド(nucleocapsid,NP)とマトリックス(matrix,M)タンパク質の抗原性の差異によって大きくA、Bおよび/またはC型に区分される。これらのうち、A型は、HAタンパク質の抗原特性によってH1型からH15型まで、NAタンパク質抗原特性によってN1型からN9型の亜型に分類される。インフルエンザウイルス粒子は、直径が平均80~120nm程度であり、外部に突起がある球形であるが、有精卵および/または感受性細胞などから分離された直後のウイルスは、長さが400nmのフィラメント形態となっている場合もある。ビリオンは、被膜(envelope)を有しており、熱および/またはpHなどに敏感である。
【0042】
最も明確な症状は、感染24時間内に38~40℃の突然な高熱であり、頭痛、筋肉痛および/または疲労感などの全身症状と咽喉痛、せき、喀痰および/または鼻炎などの呼吸器症状が現れる。また、腹痛、嘔吐および/またはけいれんなどがまれに発生することがある。健康なヒトは、数日間症状を示した後に回復するが、慢性肺疾患者、心臓疾患者および/または免疫低下者などは、肺炎のような合併症が発生して死亡することがあり、その他、脳症、脊髄炎(transverse myelitis)、Reye症候群、筋炎、心筋炎および/または心嚢炎などの合併症が伴うことがある。小児の場合、成人と似た症状を示すが、熱がさらに高く出て、情熱けいれんが起こることがあり、中耳炎、偽膜性喉頭炎(croup)および/または筋肉痛もさらに頻繁に発生する。
本発明の用語「感染」は、寄生種による宿主生物の増殖を示す。簡単に病原体が体内にに入って増殖することをいう。
【0043】
本発明の用語「予防」は、本発明によるノダケネチンおよび/またはノダケニンを含む組成物の摂取および/または投与によりインフルエンザウイルスの感染および/または増殖を阻害および/または遅延させるすべての行為をいう。
【0044】
本発明では、ノダケネチンとノダケニンのノイラミニダーゼ活性阻害を通したインフルエンザウイルス増殖を阻害して、抗ウイルス剤として活用できることを実験的に確認した。
【0045】
また、本発明の組成物のようなノイラミニダーゼ阻害剤(タミフル、リレンザ)は、インフルエンザ予防効果が70%~90%であり、予防目的でのノイラミニダーゼ阻害剤の使用は、家族内にインフルエンザの発生時、地域社会にインフルエンザ流行時、養老院でインフルエンザ流行発生時に効果が立証されたことがある。ノイラミニダーゼ阻害剤は、ワクチン接種を受けないヒト、ワクチン株が現在流行しているウイルス株と一致しない場合、追加的な予防措置が必要な高危険群においてインフルエンザの発生を予防する効果的な手段である。ノイラミニダーゼ阻害剤は、インフルエンザワクチン接種後に抗体生成反応にあまり影響を及ぼさないので、インフルエンザ流行時期に一歩遅れてワクチン接種をした場合に、抗体ができる前まで予防のために使用できる(疾病管理本部の国家健康情報ポータルKCDC、http://health.cdc.go.kr/health/HealthInfoArea/HealthInfo/View.do?idx=3980)。
【0046】
したがって、本発明のノダケネチンおよび/またはノダケニンを含む組成物は、インフルエンザウイルス感染の改善および/または治療効果とともに予防効果も有する。
【0047】
本発明の用語「治療」は、本発明によるノダケネチンおよび/またはノダケニンを含む組成物の摂取および/または投与によりインフルエンザの症状が好転したり有利になるすべての行為をいう。
【0048】
本発明の用語「改善」は、本発明によるノダケネチンおよび/またはノダケニンを含む組成物の摂取および/または投与によりインフルエンザの症状を緩和させたり、インフルエンザウイルスの生存を阻害し、成長および/または分裂増殖を阻害および/または減少させることによって、インフルエンザの症状を緩和させる効果を意味する。
【0049】
本発明の用語「抽出物」は、前記植物素材の抽出処理により得られる抽出液、前記抽出液の希釈液や濃縮液、前記抽出液を乾燥して得られる乾燥物、前記抽出液の粗精製物や精製物、および/またはこれらの混合物など、抽出液自体および/または抽出液を用いて形成可能なすべての剤形の抽出物を含む。具体的に、本発明の前記抽出物は、抽出後に乾燥粉末の形態で製造されて使用できる。
【0050】
本発明の植物抽出物は、下記の段階を含む製造方法により製造できるが、これに限定されない:
1)植物を洗浄および/または乾燥した後、粉砕して粉末化する段階;
2)段階1)で収得した植物粉末に溶媒を加えて抽出する段階;
3)段階2)の抽出物をろ過する段階
4)段階3)のろ過した抽出物を濃縮する段階;
5)段階4)の濃縮した抽出物を乾燥して植物抽出物の乾燥粉末を得る段階。
【0051】
前記方法において、段階1)の植物は、栽培したものおよび/または市販のものなど制限なしで使用できる。また、段階1)で、これに制限されるものではないが、トウキは、幹、枝、葉および/または根を全部含んで抽出するものであってもよい。
【0052】
前記方法において、前記段階2)の抽出溶媒は、水、C~C低級アルコール、1,3-ブチレングリコール、および/またはエチルアセテートからなる群から選ばれる1種以上の溶媒であってもよく、好ましくは、水および/または発酵酒精であってもよいが、これらに限定されない。抽出方法としては、熱水抽出、浸漬抽出、還流冷却抽出および/または超音波抽出などの抽出方法を使用でき、好ましくは、熱水抽出であってもよいが、これに限定されない。前記抽出溶媒を乾燥した植物の分量に1倍~10倍添加して抽出でき、具体的に2倍~3倍添加して抽出できる。抽出温度は、20℃~100℃であってもよく、具体的に60℃~80℃であってもよく、より具体的に70℃であってもよいが、これに限定されない。また、抽出時間は、2時間~48時間であってもよく、具体的に15時間~30時間であってもよく、より具体的に24時間であってもよいが、これに限定されない。また、抽出回数は、1回~5回であってもよく、具体的に3回~4回であってもよく、より具体的に3回であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記方法において、段階4)では、抽出物を減圧濃縮する過程をさらに含んでもよく、前記減圧濃縮は、真空減圧濃縮装置および/または真空回転蒸発装置を利用できるが、これらに限定されない。
【0054】
前記方法において、段階5)では、前記減圧濃縮過程を経た抽出物を乾燥する段階をさらに含んでもよく、前記乾燥は、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥および/または凍結乾燥であってもよいが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の植物抽出物は、インフルエンザウイルス増殖阻害活性を向上させるために、加水分解、発酵、加熱、加圧など多様な方法で処理でき、好ましくは、発酵であってもよい。
【0056】
本発明の用語「発酵」および/または「発酵物」は、微生物(例えば、乳酸菌)が持っている効能を用いて有機物を分解させる過程および/またはこれによる生成物を意味する。発酵と腐敗は、類似な過程により進行されるが、分解結果、人間の生活に有用に使用される物質が形成されと、発酵といい、悪臭が出たり有害な物質が形成されると、腐敗という。したがって、生薬材を微生物を用いて発酵させると、抽出物の毒性が減少したり、低分子化して、消化が容易であるか、皮膚に塗布時に経皮吸収などが容易になって、生体利用率が向上する。また、天然成分は、それ自体でも薬理作用を示すことができるが、発酵を通じて薬理効果がさらに強化されたり、微生物の代謝により従来発酵前の抽出物が有さない薬理作用を発揮できる。前記発酵物は、ノダケネチン(nodakenetin)/ノダケニン(nodakenin)を0.5~20重量比で含むものであってもよい。
【0057】
発酵には乳酸菌を使用でき、好ましくは、ラクトバチルス属乳酸菌であってもよく、より好ましくは、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)で発酵することができるが、これに限定されない。
【0058】
本発明の一実施例において、ラクトバチルス・プランタルムで発酵した抽出物が、発酵しない抽出物よりノダケネチン(nodakenetin)/ノダケニン(nodakenin)の重量比が40倍以上、発酵後、ノダケネチンの含有量は、最大18倍上昇することを確認し、発酵した抽出物のインフルエンザウイルス阻害活性に優れていることを確認した。
【0059】
本発明の用語「分画物」とは、様々な多様な構成成分を含む混合物から特定の成分および/または特定の成分グループを分離するために分画を行って得られた結果物を意味する。本発明の分画物は、溶媒分画物、多糖類分画物を含んでもよいが、これに制限されない。前記分画物を得る分画方法は、当該技術分野において通常的に使用する方法により行われてもよい。
【0060】
前記分画方法の例としては、本発明の抽出物および/または発酵物に所定の溶媒を処理して前記抽出物から分画物を得る方法、前記抽出物および/または発酵物を冷浸法と遠心分離法を使って多糖類を浸漬し回収する方法などがあるが、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明において前記分画物を得るのに使用される分画溶媒の種類は、特に制限されず、当該技術分野において公知となった任意の溶媒を使用できる。前記分画溶媒の非制限的な例としては、水、アルコールなどの極性溶媒;ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルム、ジクロロメタンなどの非極性溶媒などが挙げられる。これらは、単独で使用したり、2種以上混合して使用できる。すなわち、本発明の植物から抽出した物質を用いて分画する場合、その抽出および/または分画方法に制限なしで、本発明の範疇に含まれることは当業者に自明である。
【0062】
具体的に、本発明の製造例3では、それぞれの抽出物の溶媒分画物を次のような過程を経て収得した。それぞれの抽出物を製造した後、好ましくは、懸濁液をろ過した後、約1~5倍体積のヘキサン、エチルアセテート、クロロホルム、C~Cの低級アルコールおよび/または水を用いて極性による分画化過程を経る場合、ヘキサン分画物、エチルアセテート分画物、クロロホルム分画物、C~Cの低級アルコール分画物および/または水分画物を収得できる。前記過程で分画した1次分画物をさらに約1~5倍体積のヘキサン、エチルアセテート、クロロホルム、C~Cの低級アルコールおよび/または水を用いて分画して2次分画物を収得でき、また、さらに上記の過程を経て3次分画物を収得できる。製造例3で実施した一例の場合、ヘキサン、エチルアセテート、ブタノールの順に分画して、ノダケネチンおよび/またはノダケニンの含有量の高い分画物を得ることができた。
【0063】
一様態として、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0064】
本発明の用語「健康機能食品組成物」は、植物抽出物の発酵物および/またはその分画物を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液などに製造した食品であり、これを摂取する場合、健康上特定の効果をもたらすことを意味するが、一般薬品とは異なって、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがないという長所がある。
【0065】
植物抽出物の発酵物および/またはその分画物を食品添加物として使用する場合、トウキ抽出物の発酵物および/またはその分画物をそのまま添加したり、他の食品および/または食品成分と共に使用でき、通常の方法によって適切に使用できる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康および/または治療的処置)によって適合するように決定できる。一般的に、食品および/または飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対し15重量部以下、好ましくは、10重量部以下の量で添加できるが、これに限定されない。しかしながら、健康および/または衛生を目的としたり、および/または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の観点から、何の問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量で使用できる。
【0066】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料および/またはビタミン複合剤などがあり、通常の意味における健康食品を全部含む。
【0067】
一様態として、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス感染の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0068】
本発明の用語「薬学的組成物」は、経口および/または非経口で投与でき、一般医薬品製剤の形態、例えば、臨床投与時に経口および/または非経口の様々な剤形で投与でき、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤および/または賦形剤を使って調製できるが、これらに限定されない。
【0069】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学的組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)および/またはラクトース(Lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製できるが、これらに限定されない。
【0070】
単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0071】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できるが、これらに限定されない。
【0072】
一様態として、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含む植物の抽出物、その発酵物および/またはこれらの分画物を含むインフルエンザウイルス阻害用組成物を提供する。
【0073】
本発明の用語「ウイルス阻害用組成物」は、ウイルスの複製を妨害したりウイルス性感染に対する免疫体系を強化させる。脊椎動物、好ましくは、ヒトを含む哺乳類に投与される医薬組成物の形態であるか、食品組成物、食器、台所用品、生活用品、その他各種洗浄剤、消毒剤、通常の抗ウイルス剤などに使用できるが、これらに限定されない。
【0074】
上記の方法で製造された植物抽出物の発酵物および/またはその分画物のインフルエンザウイルス増殖阻害能を確認するために、現在最も汎用的に使用されているインフルエンザウイルス増殖阻害評価法であるノイラミニダーゼ阻害試験(neuraminidase inhibition assay)を使用した。
【0075】
ノイラミニダーゼ(Neuraminidase、以下NAという)は、感染した宿主細胞内で増殖したウイルスが宿主細胞表面の二糖体部分とノイラミン酸(シアル酸)残基との間のアルファ-ケトシディク結合を切ることによって、ウイルスが宿主細胞に感染して個体数を増殖できるようにするタンパク質であり、その阻害剤は、ノイラミニダーゼの作用部位に結合して機能を阻害することによって、インフルエンザウイルス増殖を阻害できる。
【0076】
本発明におけるトウキ抽出物の発酵物の有効成分を追跡するために、製造例3の実験を行った。トウキ抽出物の発酵物を分画、精製してcompound Aを得、compound AのNMRスペクトルを従来知られた文献と比較した結果、ノダケネチンで同定し、購入したノダケネチン標準品とHPLC分析を通じて直接的に比較して確認した。
【0077】
トウキ抽出物の発酵物および/またはその分画物では、ノダケネチンの含有量が高く(実験例2)、濃度依存的に有意なインフルエンザウイルス増殖阻害効果を示し、特にトウキ抽出物の発酵物および/またはその分画物が高いインフルエンザウイルス増殖阻害能を示した(実験例1)。
【0078】
本発明の植物抽出物の発酵物および/またはこれらの分画物は、ノダケネチン/ノダケニンを0.5~20、好ましくは、1~15、2~10、および/または4~9の重量比で含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明では、発酵前にトウキ抽出物がノダケネチン/ノダケニンを0.1の重量比で含み、トウキ抽出物の発酵物および/またはこれらの分画物がノダケネチン/ノダケニンを0.5~20の重量比で含むことを確認した。この範囲を満たすトウキ抽出物の発酵物および/またはこれらの分画物は、発酵しないトウキ抽出物と比べてノダケネチン/ノダケニンの重量比が40倍以上高くなり、発酵後、ノダケネチンの量は、18倍以上増加することが確認されて、さらに優れたウイルス感染阻害能を有することが分かる。
【0080】
一様態として、ノダケニン(nodakenin)および/またはノダケネチン(nodakenetin)を含むインフルエンザウイルス阻害用組成物、感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物、感染の予防および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0081】
前記ウイルス阻害用組成物、健康機能食品組成物、薬学的組成物に対する記載は、重複を避けるために省略され、本発明のノダケニンおよび/またはノダケネチンを含む組成物にそのまま準用できる。
【0082】
前記「ノダケネチン」(Molecular formula:C1414,Molecluar weight:246.262)は、下記[化学式1]で表されるクマリン系非配糖体成分であり、[化学式2]で表される配糖体であるノダケニン(nodakenin、Molecular formula:C2024,Molecular weight:408.403)の発酵あるいは加水分解により転換される。
【0083】
【化1】
【0084】
【化2】
【0085】
ノダケネチンは、必ず発酵過程を経る場合にのみ形成されるわけではなく、配糖体であるノダケニンに対して少量であるが、自然的に植物体の様々な部位に存在する。ノダケネチンとノダケニンは、主にトウキ属(Angelica sp.)植物に主に含有されているが、その他、カワラボウフウ属(Peucedanum sp.)植物(ボタンボウフウ、カワラボウフウ、イワミツバなど)、シャク属(Anthriscus sp.)植物(シャク、チャービルなど)、ノダケにも存在することが知られている。
【0086】
前記ノダケニンおよび/またはノダケネチンは、植物抽出物の発酵物から分離したものであるか、合成および/または半合成を通じて得られたものであってもよいが、これに限定されない。
【0087】
前記「植物」は、トウキ属(Angelica sp.)植物、カワラボウフウ属(Peucedanum sp.)植物および/またはシャク属(Anthriscus sp.)植物からなる群から選ばれた一つ以上であってもよく、好ましくは、トウキ(Angelica gigas)、ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)、カワラボウフウ(Peucedanum terebinthaceum)、イワミツバ(Aegopodium podagraria)、シャク(Anthriscus sylvestris)、チャービル(Anthriscus cerefolium)および/またはノダケ(Angelica decursiva)であってもよく、より好ましくは、トウキであってもよいが、これらに限定されない。
【0088】
本発明においてノダケネチン/ノダケニンは、0.5~20、好ましくは、1~15、2~10、および/または4~9の重量比で含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0089】
本発明によるトウキ抽出物の発酵物および/またはその分画物は、ノイラミニダーゼ活性を阻害してインフルエンザウイルスの感染を増殖を阻害するので、インフルエンザウイルス感染の予防および/または改善用健康機能食品組成物、インフルエンザウイルス感染の予防および/または治療用薬学的組成物などに有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】トウキ抽出物の発酵物を分画してノダケネチンを分離精製する方法のフローチャートである。
図2】ノダケニン(Nodakenin)、ノダケネチン(nodakenetin)のインフルエンザウイルス増殖阻害能(%)の結果である。
図3】トウキを含む植物抽出物の発酵前後のインフルエンザウイルス増殖阻害能(%)の結果である。
図4】化合物A(Compound A、ノダケネチン)および/またはEA分画物のインフルエンザウイルス増殖阻害能(%)の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明を下記実験例および/または製造例により詳細に説明する。ただし、下記実験例および/または製造例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実験例および/または製造例により限定されるものではない。また、これらの実験例および/または製造例は、本発明に対する理解を助けるための目的で例示するだけであるから、いかなる意味でも本発明の範囲がこれらにより制限されるわけではない。
【0092】
製造例1:ノダケニンおよび/またはノダケネチンが含有された植物抽出物の製造
まず、トウキ原植物を洗浄および/または乾燥した。
【0093】
次に、トウキ原植物1kgに10kgの1次蒸留水を加えて80℃で3時間の間熱水抽出した。
【0094】
前記熱水抽出物をフィルターペーパーを用いて減圧ろ過し、ろ過した抽出物を回転蒸発濃縮機を用いて完全に濃縮して実験例2の試料として使用した。上記のような方法で製造された熱水抽出物の収率は、約36%である。
【0095】
50wt%エタノール抽出物製造方法は、原植物1kgに10kgの50wt%エタノール水溶液を加えて65℃で3時間の間熱水抽出した。前記50wt%エタノール抽出物をフィルターペーパーを用いて減圧ろ過し、回転蒸発濃縮機を用いて完全に濃縮して試料として使用した(実験例3)。上記のような方法で製造された50wt%エタノール抽出物の収率は約40%である。
【0096】
製造例2:植物抽出物の発酵物の製造
MRS培地パウダー(ペプトン10wt%、牛肉エキス10wt%、酵母エキス5wt%、デキストロース20wt%、ポリソルベート80 1wt%、クエン酸アンモニウム2wt%、酢酸ナトリウム5wt%、硫酸マグネシウム0.1wt%、硫酸マンガン0.05wt%、第二リン酸カリウム2wt%)55gを1Lの水に入れて、MRS液体培地を製造した後、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の固体コロニーをMRS液体培地100mlに接種した後、時間別にOD600を測定し、値が1.5になるまで培養させて、スターター培養液を製造した。以後、本培養液であるトウキ抽出物(エタノール抽出物)をそれぞれ1g、2g、5g、10gずつ含むMRS液体培地100mlに前記スターター培養液1mlを接種し、30℃シェイキングインキュベーター(shaking incubator)で150rpmで4日間発酵して、植物発酵物を完成した(実験例3)。
【0097】
トウキ抽出物(熱水抽出物)5gを含むMRS液体培地100mlに前記スターター培養液1mlを接種し、30℃シェイキングインキュベーターで150rpmで4日間発酵して、植物発酵物を完成した(実験例2)。
【0098】
製造例3:発酵物の分画物および/または活性化合物の分離精製
トウキ抽出物を含む乳酸菌培養物の有効成分を追跡するために、80gのトウキ抽出物を含むMRS培地8Lをラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)で発酵して得られた溶液を滅菌ろ過(0.22um)した。これを同量のn-ヘキサン(n-Hexane)を加えて振とう放置して分画し、順次にエチルアセテート(ethyl acetate、以下EAという)、n-ブチル(n-Butanol、以下BuOHという)を加えて振とう放置して、それぞれの分画物を得た。EA分画(15g)をn-ヘキサン/EA(gradient)の溶出溶媒でシリカゲルカラム クロマトグラフィー(silica gel column chromatography)を実施して、11個の小分画に分けた。小分画Fr.9をアセトニトリル/水(Acetonitrile(ACN)/H2O)(3:7)溶出溶媒でPrep-LCを実施して、化合物A(compound A)30mgを得た(図1)。Compound Aの化学構造は、NMRスペクトル(NMR spectrum)を通じて確認した。典型的なフロクマリン(Furocoumarins)構造の特徴的なピークから化合物A(compound A)がノダケネチンであることを分かった。このようなスペクトルデータ(spectral data)を総合して従来知られた文献と比較して化合物A(compound A)をノダケネチンで同定し、Biopurify社から購入したノダケネチン、TLCおよび/またはHPLCを通じて直接的に比較して確認した。
【0099】
NMR data
Compound A(Nodakenetin)-White amorphous powder,ESI-MS m/z:247[M+H]+;H-NMR(600MHz,CD3OD)δ_H:7.83(1H,d,J=9.6Hz,H-4),7.38(1H,S,H-5),6.70(1H,S,H-8),6.18(1H,d,J=9.6 Hz,H-3),4.75(1H,t,J=9.0 Hz,H-2’),3.24(2H,m,H-3’),1.29(3H,s,CH3),1.23(3H,s,CH3);13C-NMR(150MHz,CD3OD)δ_C:165.4(C-2),163.9(C-7),157.1(C-10),146.4(C-4),127.4(C-6),125.1(C-5),114.2(C-9),112.3(C-3),98.3(C-8),92.7(C-2’),72.4(C-4’),30.4(C-3’),25.5(CH3),25.5(CH3)。
【0100】
実験例1:インフルエンザウイルス阻害能の確認
下記実施例は、次のインフルエンザウイルス阻害能評価方法を利用した。
【0101】
インフルエンザウイルス阻害能評価は、ノイラミニダーゼ(NA)に候補物質を処理した後、NA活性分析キット(NA activity assay kit,Sigma,#cat:MAK121-1KT)を用いて実験を行った。陽性対照群は、新型インフルエンザ薬剤の成分であるザナミビル(zanamivir)10nMに設定し、実験群別に濃度に合うように試料5μlを取った後、野生型NA(R&D systems)と混合した。その後、NA活性分析キット(NA activity assay kit)から提供する試薬を説明書に合うように混合した後、40μlを添加、30℃インキュベーターで20分間反応させた後、570nmで吸光度を測定(A20)し、さらに、ホイルで包んで、37℃インキュベーターで30分間反応させた後、570nmで吸光度を測定(A50)した。各処理群の野生型NA活性は、A50からA20を引いた値で計算し、前記実験は、3回繰り返した。
【0102】
まず、ノダケネチン(Chengdu biopurify phytochemical Ltd.Cat No.BP3273)とノダケニン(Chengdu biopurify phytochemical Ltd.Cat No.BP1002)のインフルエンザ増殖阻害能を評価した。ノダケニンの糖分離を通じて形成されたノダケネチンは、濃度依存的(10、50、250ppm)に効能が増加したが、ノダケニンの場合、濃度依存的な効果が不十分であった(図2)。
【0103】
植物抽出物の発酵前後にインフルエンザウイルス増殖阻害能を評価した。発酵抽出物は、濃度依存的に未発酵抽出物と比べてインフルエンザウイルス阻害能が増加することを確認できた(図3)。
【0104】
ノダケネチンを含むEA分画物(250、500、1000ppm)と分画後に得られたノダケネチン(Compound A、25、50、100ppm)のNA活性阻害能が濃度依存的に増加することを確認できた(図4)。
【0105】
実験例2:植物抽出物の発酵によるノダケニンおよび/またはノダケネチンの変化推移
トウキ抽出物(熱水抽出物)の発酵によるノダケニンおよび/またはノダケネチンの含有量の変化を確認するために、前記製造例2の方法で発酵したトウキ抽出物(熱水抽出物)と発酵しないトウキ抽出物(熱水抽出物)を用いて含有量を測定した結果、下記表1に示されたように、トウキを含む植物抽出物のノダケネチン含有量が乳酸菌の発酵により約43ppm増加し、ノダケニン含有量がノダケネチン転換により43ppm減少した。
【0106】
発酵物がさらに優れたウイルス感染阻害能を有することを確認できた。
【0107】
【表1】
【0108】
実験例3:発酵前後のノダケニンおよび/またはノダケネチン含有量の比較
トウキ抽出物(エタノール抽出物)をそれぞれ1g、2g、5g、10gずつ含むMRS液体培地100mlでLactobacillus plantarum KCTC 3104菌株で発酵した後、発酵前後のノダケニンおよび/またはノダケネチンの含有量を分析した(表2)。
【0109】
【表2】
【0110】
トウキ抽出物は、完全濃縮、乾燥したパウダー形態であり、分析試料は、全部完全乾燥した状態で分析を進めた。前記表2に示されたように、発酵しないトウキ抽出物のノダケネチン(A’)/ノダケニン(A)の比率は、0.1内外であるが、発酵トウキ抽出物は、A’/Aが4.1~8.34であって、41倍以上増加し、したがって、ノダケネチンの含有量の高いトウキ抽出物の発酵物がさらに優秀なウイルス感染阻害能を有することを確認できた。これに加えて、抽出溶媒による効果を調べてみるために、トウキ熱水抽出物とトウキエタノール抽出物のノダケニンおよび/またはノダケネチンの含有量を分析、比較した。
【0111】
下記表3に示されたように、A’/Aの比率には、大きな差がなかった。
【0112】
【表3】
図1
図2
図3
図4