(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
E04F15/16 A
(21)【出願番号】P 2021160733
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 夏帆
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-020994(JP,A)
【文献】特開2021-133688(JP,A)
【文献】特開2020-084116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0085566(US,A1)
【文献】特開2009-29089(JP,A)
【文献】特開平10-327959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化性樹脂を含む表面被覆層を有し、
前記表面被覆層が、粉末セルロースを含
み、
前記表面被覆層の表面が、凹部及び凸部を有する凹凸状に形成され、前記凹部及び前記凸部に前記粉末セルロースが含有されている、床材。
【請求項2】
前記粉末セルロースが、前記表面被覆層全体を100重量%としたときに、0.5重量%以上20重量%以下含まれている、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記粉末セルロースが、繊維長1μm以上200μm以下の繊維状のものを含む、請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
前記凸部が、前記凹部よりも突出した第1突起部と、前記第1突起部上に形成され且つ前記第1突起部よりも突出した2つ以上の第2突起部と、を有する長状突起部を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の床材。
【請求項5】
前記第1突起部が、前記表面被覆層の表面の第1方向を長軸とする平面視略細長状であり、前記2つ以上の第2突起部が、前記第1突起部の長軸方向に連なっている、請求項4に記載の床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑性及び防摩耗性に優れた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル、商業施設、マンション、一般家屋などの床面に、樹脂製の床材が敷設されている。
樹脂製の床材の表面には、防滑性を向上させるために、耐摩耗性粒子を分散させた塗膜が設けられている場合がある。
例えば、特許文献1には、アクリレート系など合成樹脂材料の塗膜に、塗膜よりも高硬度なアルミナなどの耐摩耗性粒子を配合した床材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の床材は、耐摩耗粒子が塗膜の表面から露出しているので、防滑性に優れている。
しかしながら、上記床材は、その塗膜がアルミナなどの高硬度な耐摩耗性粒子を含むことから、靴下などを履いた状態で歩行すると、靴下が擦り減り易いことが判ってきた。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、防滑性に優れ、さらに、防摩耗性にも優れた床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の床材は、電離放射線硬化性樹脂を含む表面被覆層を有し、前記表面被覆層が、粉末セルロースを含み、前記表面被覆層の表面が、凹部及び凸部を有する凹凸状に形成され、前記凹部及び前記凸部に前記粉末セルロースが含有されている。
【0007】
本発明の好ましい床材は、前記粉末セルロースが、前記表面被覆層全体を100重量%としたときに、0.5重量%以上20重量%以下含まれている。
本発明の好ましい床材は、前記粉末セルロースが、繊維長1μm以上200μm以下の繊維状のものを含む。
本発明の好ましい床材は、前記凸部が、前記凹部よりも突出した第1突起部と、前記第1突起部上に形成され且つ前記第1突起部よりも突出した2つ以上の第2突起部と、を有する長状突起部を含む。
本発明の好ましい床材は、前記第1突起部が、前記表面被覆層の表面の一方向を長軸とする平面視略細長状であり、前記2つ以上の第2突起部が、前記第1突起部の長軸方向に連なっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床材は、防滑性及び防摩耗性に優れている。さらに、本発明の床材は、低光沢性を有し、看者に良好な質感を与えやすいので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】表面被覆層の表面を拡大した参考拡大平面図。
【
図10】
図9のX-X線で切断し且つさらに拡大した参考拡大断面図。
【
図11】
図9のXI-XI線で切断し且つさらに拡大した参考拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、床材の「表面」又はそれを構成する任意の層の「表面」は、床材を施工する床面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側(床面に近い側)の面を指す。平面視は、床材の表面に対して鉛直な方向から床材を見ることをいう。
本明細書において「略」は、本発明の技術分野で許容される範囲を含む意味である。
本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0011】
[床材の概要]
本発明の床材は、防滑性及び防摩耗性に優れ、さらに、低光沢性も有する。
ここで、防滑性は、床材の表面を歩行などした際に滑り難いことをいう。防摩耗性は、床材の表面に接する物品(この物品としては、靴下などの衣類、スリッパの底面などの履物などが含まれる)が摩耗し難いことをいう。
【0012】
図1は、第1実施形態の床材1の平面図であり、
図2は、第2実施形態の床材1の平面図である。
図1を参照して、床材1は、平面視で長尺帯状に形成されている。前記長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいい、例えば、長手方向長さが短手方向の長さの3倍以上、好ましくは5倍以上である。長尺帯状の具体的な寸法としては、例えば、短手方向の長さが500mm以上3000mm以下で、長手方向の長さが2m以上500m以下などの場合が挙げられる。長尺帯状に形成された床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
図2を参照して、床材1は、平面視で略正方形状の枚葉状に形成されている。もっとも、枚葉状の床材1は、平面視略長方形状、平面視略六角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。前記平面視略正方形状又は略長方形状の床材1の具体的な寸法としては、例えば、縦×横=200mm以上1000mm以下×200mm以上1000mm以下などの場合が挙げられる。図示例のような枚葉状の床材1は、その複数を重ね合わせた状態で、又は、個々にロール状に巻いた状態で保管・運搬に供される。
【0013】
本発明の床材1は、柔軟性を有していてもよく、柔軟性を有さずに比較的硬質であってもよい。床材1の柔軟性の程度としては、例えば、床材1の裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。
床材1の全体の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは、1mm以上8mm以下である。
【0014】
[床材の層構成]
床材1は、本体層と、前記本体層に設けられ且つ電離放射線硬化性樹脂及び粉末セルロースを含む表面被覆層と、を有する。前記本体層は、保護層を有する表層を有し、好ましくは、前記表層と、その裏面に設けられた裏層と、を有する。表面被覆層の表面が、床材1の最表面を構成している。従って、本発明の床材1は、その表面にパイル糸や布生地を有さず、床材1の表面が表面被覆層にて構成されている。床材1を構成する各層は互いに強固に接着されている。
表層は、床材1にデザインを付与するための層であり、単層でも複層でもよい。前記表層が単層である場合、顔料を添加した樹脂からなる層が用いられ、複層である場合、表面側から順に、保護層と、着色化粧層と、を有する構成が好適に用いられる。表層に着色化粧層が設けられる場合、その着色化粧層の色彩を床材1の表面から視認できるようにするため、着色化粧層の表面側に積層される表面被覆層や保護層は、無色透明又は有色透明な層、好ましくは無色透明な層とされる。
【0015】
図3は、床材1の層構成の第1例を示し、
図4乃至
図8は、床材1の層構成の第2例乃至第6例を示す。
図3乃至
図8は、
図1及び
図2のIII-III線の位置で切断したときの断面図である。
図3の床材1は、表面側から順に、表面被覆層2と、表層3と、裏層4と、を有する。表層3は、表面側から順に、保護層31と、着色化粧層32と、基材層33と、を有する。裏層4は、表面側から順に、第1樹脂層41と、第2樹脂層42と、第3樹脂層43と、を有する。なお、裏層4は、4つ以上の樹脂層を有していてもよい。
図4の床材1は、表層3が、表面側から順に、保護層31と、着色化粧層32と、のみからなる点で、
図3の層構成例と異なる。
図5の床材1は、裏層4が、第1樹脂層41と、第2樹脂層42と、を有する点で、
図3及び
図4の層構成例と異なる。なお、
図5では、表層3として
図3に示す層構成を表しているが、
図4に示す層構成(保護層31及び着色化粧層32からなる)であってもよい。以下、表層3については、他の図においても同様である。
図6の床材1は、裏層4が、第1樹脂層41のみから構成されている点で、
図3及び
図4の層構成例と異なる。
図7の床材1は、裏層4が、樹脂層内に埋設された繊維層44、又は、表層3の裏面と裏層4の表面の間に介在された繊維層(図示せず)を有する点で他の層構成例と相違する。なお、
図7の裏層4は、表面側から順に、第1樹脂層41と、繊維層44と、第2樹脂層42と、を有する。従って、
図7の繊維層44は、樹脂層の内部に埋設されている。
図8の床材1は、裏層4の最裏面に、繊維層46が設けられている点で、他の層構成例と異なる。なお、
図8の裏層4は、表面側から順に、第1樹脂層41と、1つの繊維層45と、第2樹脂層42と、もう1つの繊維層46と、を有する。
【0016】
特に図示しないが、
図3乃至
図8の裏層4の層構成を適宜組み合わせてもよく、或いは、置換してもよい。また、特に図示しないが、裏層4の一部の層を省略してもよく、或いは、裏層4に別の機能層を付加してもよい。例えば、裏層4の裏面(裏層4を有さない場合には、表層3の裏面)に、吸着部又は粘着部を設けてもよい(図示せず)。吸着部又は粘着部は、床面に剥離可能な状態で付着する部分である。吸着部の形成材料としては、非常に柔らかい発泡樹脂などが挙げられ、粘着部の形成材料としては、ピールアップ性粘着剤などが挙げられる。
【0017】
また、床材1の表面に、エンボス凹凸が形成されていてもよい。前記エンボス凹凸は、視覚にて識別できる凹凸をいう。前記エンボス凹凸は、外見上、特定の柄を形成するような凹凸であってもよく、或いは、外見上、特定の柄を形成しない凹凸であってもよい。前者の例としては、例えば、木目柄を表した凹凸、石目柄を表した凹凸などが挙げられる。後者の例としては、梨地の凹凸、砂目の凹凸などが挙げられる。
床材1の表面にエンボス凹凸を形成する場合、その凹凸の深さは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上1mm以下であり、好ましくは0.2mm以上0.5mm以下である。なお、エンボス凹凸の深さは、その凸の頂点と凹の底部の落差をいう。
【0018】
[表面被覆層]
表面被覆層は、床材の最表面を構成する層である。
表面被覆層は、電離放射線硬化性樹脂と、粉末セルロースと、を含む。
電離放射線硬化性樹脂は、荷電粒子線又は電磁波の中でモノマーなどを架橋重合させ得るエネルギー量子を有するもの(例えば電子線、紫外線等)を照射することにより、架橋し硬化する樹脂が用いられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば硬化性モノマー又はオリゴマーが電離放射線により硬化した樹脂を好適に用いることができる。
前記の硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、電離放射線によって硬化するものであれば特に限定されない。前記硬化性モノマーとしては、単官能モノマー、2官能モノマー又は3官能以上の多官能モノマーを1種又は2種以上用いることができる。
【0019】
硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、例えば分子中に(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合基又はエポキシ基等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
前記硬化性モノマーの具体例としては、例えばα-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物等が挙げられる。
前記硬化性オリゴマーの具体例としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コロイダルシリ力と(メタ)アクリロイルアルコキシシランを縮合して得られる有機無機ハイブリッド(メタ)アクリレート等の重合性不飽和結合を有する単官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートのほか、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0020】
本発明では、これらの中でも、適度な柔軟性を有し、耐熱性、耐薬品性、耐久性等に優れ、さらに、本体層との密着性に優れているという点で、前記硬化性モノマー又はオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なお、本発明では、アクリレート及びメタクリレートを総称して「(メタ)アクリレート」と表記し、アクリル酸又はメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」と表記し、アクリロイル基又はメタクリロイル基を総称して「(メタ)アクリロイル基」と表記する。
また、前記硬化性モノマー又はオリゴマーの分子量は、特に限定されないが、例えば200~10000の範囲内等が挙げられる。
【0021】
本発明では、比較的強固な表面被覆層を形成でき、さらに汎用的であることから、紫外線によって硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーを好適に用いることができる。すなわち、電離放射線硬化性樹脂として、特に紫外線硬化型樹脂を好適に使用することができる。紫外線硬化型樹脂としては、特に限定されず、例えば不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類等を使用することもできる。これらは市販品を用いることもできる。
表面被覆層中の電離放射線硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、表面被覆層の全体を100重量%とした場合、例えば、30重量%以上97重量%以下であり、さらに、40重量%以上70重量%以下が好ましい。電離放射線硬化性樹脂の含有量が前記範囲であることにより、高硬度の表面被覆層を形成でき、床材の防汚性を向上できる。なお、防汚性は、床材の表面に付着した汚れを除去し易いことをいう。
【0022】
粉末セルロースは、表面被覆層の表面に微細な凹凸を生じさせる。なお、この微細な凹凸は、エンボス凹凸とは異なる微視的な凹凸をいう。
図9は、表面被覆層2の表面を拡大した状態を参考的に表した平面図であり、
図10は、表面被覆層2を第1方向に沿って切断した状態を表した拡大断面図であり、
図11は、表面被覆層2を第2方向に沿って切断した状態を表したさらなる拡大断面図である。なお、
図10及び
図11においては、表面被覆層2と保護層31のみを表し、着色化粧層などのその他の層は省略している。
【0023】
図9乃至
図11に示すように、表面被覆層2の表面は、複数の凹部7及び凸部6を有する凹凸状に形成されている。前記凹部7と凸部6は、相対的な概念であり、凸部6は、凹部7を基準として上方に突出した部分である。表面被覆層2の表面の凹凸は、凹部7を海とし、複数の凸部6を島とする、海島模様を成している。前記凸部6は、微細である。この微細な凸部6は、同図に示す平面視で、第1方向を長軸とし且つ第2方向を短軸とする細長形状を成した長状突起部6Aを含む。第1方向と第2方向は、表面被覆層2の表面内において互いに直交する方向である。また、凸部6は、第2方向を長軸とし且つ第2方向を短軸とする平面視細長形状を成した長状突起部6Bを含む。なお、第1方向を長軸とする、又は、第2方向を長軸とするとは、長状突起部6A又は長状突起部6Bの長軸が、第1方向又は第2方向と略平行であるという意味である。また、凸部6は、平面視で略円形状の突起部6Cや平面視で不定形の突起部(図示せず)を含む。
【0024】
長状突起部6A及び長状突起部6Bは、前記凹部7よりも突出した第1突起部61と、前記第1突起部61上に形成され且つ前記第1突起部61よりも突出した2つ以上の第2突起部62と、を有する。例えば、前記長状突起部6A及び長状突起部6Bは、それぞれ独立して、長軸方向の寸法が200μm以上1500μm以下であり、短軸方向の寸法が50μm以上200μm以下である。
第1突起部61は、平地上に盛り上がった台地のごとき形態であり、第2突起部62は、その台地の如き第1突起部61の上にさらに盛り上がった山のごとき形態である。第1突起部61上に形成された2つ以上の第2突起部62は、長軸方向に間隔を開けて連なっている。第1方向を長軸とする長状突起部6Aについては、2つ以上の第2突起部62が第1方向に並設されており、第2方向を長軸とする長状突起部6Bについては、2つ以上の第2突起部62が第2方向に並設されている。
このような第1突起部61及び第2突起部62を有する長状突起部6Aが表面被覆層2に形成されていることにより、防滑性と防摩耗性を両立することができる。さらに、2つ以上の第2突起部62が第1方向に並んだ長状突起部6Aが形成されていることにより、防汚性を維持しつつ、防滑性を高めることができる。
【0025】
図10及び
図11に示すように、長状突起部6Aなどの微細な凸部6は、粉末セルロース8の存在によって形成されている。凸部6は、複数の粉末セルロース8が集合し、積み重なって形成されている。また、1つの粉末セルロース8によって凸部6が形成されている場合もある。また、多くの凸部6の表面は電離放射線硬化性樹脂によって覆われているが(換言すると、当該凸部6を形成する粉末セルロース8が電離放射線硬化性樹脂によって覆われている)、幾つかの凸部6の表面においては粉末セルロース8が部分的に露出している。
なお、
図9において、便宜上、第1突起部61に網掛けを付し、第2突起部62に無数のドットを付している。また、
図10及び
図11において、電離放射線硬化性樹脂5に細斜線を付し、粉末セルロース8を無地としている。
【0026】
表面被覆層の表面粗さSa(算術平均高さ)は、例えば、0.1μm以上5.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以上3.0μm以下である。前記Saは、Ra(線の算術平均高さ)を面に拡張したパラメーターであり、例えば、ISO 25178に準拠して測定される。
【0027】
粉末セルロースは、針葉樹、広葉樹などの木材;麻類、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、ワラ、バガス、タケなどの葉繊維、茎繊維又はジン皮繊維;木綿、キワタ、カポックなどの種子毛繊維;などを精製したもの、或いは、それらを必要に応じて部分的に加水分解したもの、或いは、綿、麻、レーヨンなどの加工繊維などからなる、微細な繊維状体である。
【0028】
粉末セルロースは、形状的には、繊維状のもの、繊維状とは言えない粒状のもの、扁平状のもの、及び、特に形状を特定できない不定形状のものを含む。
繊維状である粉末セルロースの繊維径は、特に限定されず、例えば、1μm以上50μm以下であり、好ましくは、10μm以上40μm以下であり、その繊維長は、特に限定されず、例えば、1μm以上200μm以下であり、好ましくは、10μm以上100μm以下である。繊維径及び繊維長が、下限値以上であれば、防滑性を高めることができ、また、上限値以下であれば、表面被覆層を形成する際、塗工液を良好に塗布できる。例えば、粉末セルロースは、平均繊維径が30μm以上40μm以下、平均繊維長が40μm以上50μm以下の範囲内のものを好適に用いることができる。
【0029】
本発明においては、様々な大きさの粉末セルロースが表面被覆層に含まれていることが好ましい。大小様々な粉末セルロースが含まれていることにより、表面被覆層に、当該粉末セルロースに起因して突出高さや突出表面積の異なる微細な凸部が複数形成されるので、防滑性に優れた表面被覆層を形成できる。
例えば、表面被覆層は、体積基準の粒度分布における累積頻度50体積%の粒子径(D50)が35μm以上45μm以下である粉末セルロースを含む。好ましくは、表面被覆層は、体積基準の粒度分布における累積頻度50体積%の粒子径(D50)が35μm以上45μm以下であり且つ累積頻度90体積%の粒子径(D90)が130μm以上140μmである粉末セルロースを含む。このような粒度分布の粉末セルロースは、例えば、篩い分けによって得ることができる。
【0030】
前記粉末セルロースの粒度分布は、表面被覆層から求めることができる。例えば、表面被覆層に含まれる粉末セルロースの粒度分布は、エネルギー分散型X線分光器などの元素分析機能付走査型電子顕微鏡を用い、表面被覆層の表面の電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された粒子を面積が近似する球形と見なして粒子径(すなわち、円相当径)を計算し、撮影画像内に存在する任意の100個の粉末セルロースについて前記粒子径を測定することによって得ることができる。そして、縦軸を頻度(%)、横軸を粒子径(μm)として100個の測定された粒子径データから粒子画像解析ソフトウェアを用いて得られた粒度分布により、累積頻度が50体積%となる粒子径(D50)及び90体積%となる粒子径(D90)を算出することができる。
【0031】
粉末セルロースの含有量は、特に限定されない。粉末セルロースを比較的多量に含有させると、表面被覆層の表面積に対する微細な凸部の占める割合が増加し、防滑性に優れた床材を形成できる。一方、粉末セルロースの量が多すぎると、表面被覆層を形成する際、塗工液を良好に塗布できなくなるそれがある。かかる観点から、表面被覆層中の粉末セルロースの含有量は、表面被覆層の全体を100重量%とした場合、例えば、0.5重量%以上20重量%以下であり、さらに、3重量%以上15重量%以下が好ましい。
【0032】
表面被覆層の厚みは、特に限定されず、例えば、5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上20μm以下である。表面被覆層の厚みTは、凹部7における厚みをいう(厚みTは、
図10参照)。
なお、床材の表面にエンボス凹凸が形成されない場合(床材の表面が実質的に平坦状である場合)、表面被覆層の効果を床材表面に均等に付与するため、表面被覆層の厚みは、床材の面方向において略同じであることが好ましい。また、床材の表面にエンボス凹凸が形成される場合、表面被覆層の厚みは、床材の面方向において異なっていてもよく、或いは、略同じであってもよいが、前述と同様の理由から、略同じであることが好ましい。
【0033】
前記表面被覆層は、電離放射線硬化性樹脂及び粉末セルロースを含むが、本発明の効果を妨げないことを条件として、必要に応じて、任意の配合物を添加してもよい。前記配合物としては、例えば、任意の骨材、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、防黴剤、耐候安定剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防錆剤、抗菌剤、凍結防止剤、消泡剤、造膜助剤などが挙げられる。このような必要に応じて添加される配合物の含有量は、特に限定されないが、表面被覆層の全体を100重量%として、例えば、3重量%以下であり、好ましくは1重量%以下である。
【0034】
[表層]
<着色化粧層>
着色化粧層は、床材に色彩を付与する層である。前記着色化粧層は、着色された合成樹脂層、印刷シート、転写シートなどが挙げられる。
着色された合成樹脂層は、その層そのものが色彩を呈する層である。前記合成樹脂層は、(1)樹脂そのものの色彩からなる樹脂層、(2)着色剤が混合され、その着色剤によって着色された樹脂層、(3)着色された樹脂チップが混合されてシート状に成形された樹脂層、などが挙げられる。着色された合成樹脂層からなる着色化粧層は、基材層や裏層の表面などに積層することによって形成される。
印刷シートは、塩化ビニル製樹脂シートなどの合成樹脂シートにインキが印刷されたものである。転写シートは、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離することによって得られる。前記転写シートからなる着色化粧層は、基材層の表面や保護層の裏面などに転写することによって形成される。
前記着色化粧層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm~1mmであり、好ましくは1μm~0.8mmである。着色化粧層が着色された合成樹脂層からなる場合、その厚みは、例えば、0.3mm~1mmであり、着色化粧層が印刷シート又は転写シートからなる場合、その厚みは、0.5μm~0.5mmである。
【0035】
<保護層>
保護層は、着色化粧層を保護するための層である。
保護層は、無色透明又は有色透明であり、好ましくは無色透明である。保護層は、樹脂層からなる。保護層は、非発泡体であることが好ましい。保護層を構成する樹脂成分は、特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂などが挙げられ、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。ここで、本明細書において、ある層の主成分樹脂は、層中に含まれる樹脂成分全体に対して(樹脂成分全体を100重量%とした場合)、60重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める樹脂を意味する。
【0036】
塩化ビニル系樹脂は、少なくとも塩化ビニルの単量体(クロロエチレン)を重合させることで形成された重合体(ポリマー)である。塩化ビニル系樹脂には、クロロエチレンを単独重合させてなる重合体(ホモポリマー)だけでなく、クロロエチレン及びクロロエチレンと共重合し得る他の単量体の共重合体(コポリマー)、ホモポリマー及びコポリマーの混合物、並びに2種以上のコポリマーの混合物が含まれる。なお、混合物とは、ホモポリマーとコポリマー、又は、コポリマー同士が実質的に重合せずに混練された重合体を意味する。塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体(ホモポリマー);塩素化塩化ビニル;部分架橋塩化ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体などの塩化ビニルを含む共重合体(コポリマー);ホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物、2種以上のコポリマーの混合物;などが挙げられる。好ましくは、塩化ビニル重合体(ホモポリマー)が用いられる。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記塩化ビニル重合体(ホモポリマー)は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができ、ペースト塩化ビニル系樹脂又は/及びサスペンション塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
ペースト塩化ビニル系樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状の塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1以上10μm以下(好ましくは1μm以上3μm以下)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ペースト塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1000以上2000以下程度が好ましい。
サスペンション塩化ビニル系樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル系樹脂は、粒子径が好ましくは20μm以上100μm以下の微細粉末である。サスペンション塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700以上1500以下程度が好ましく、700以上1100以下程度がより好ましく、700以上1000以下程度がさらに好ましい。
【0038】
保護層が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含む場合、保護層には、可塑剤及び任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。可塑剤としては、例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤などが挙げられる。前記添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、着色剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、界面活性剤などが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどが挙げられる。
【0039】
保護層は、例えば、100重量部の塩化ビニル系樹脂に対して、可塑剤を30重量部以上70重量部以下含み、添加剤を0.1重量部以上20重量部以下含む。
保護層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.05mm以上2mm以下であり、好ましくは、0.1mm以上1mm以下である。
保護層は、炭酸カルシウムなどの充填剤を含んでいてもよく、或いは、それを含んでいなくてもよいが、耐久性に優れた保護層を構成する観点では、保護層は、充填剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0040】
<基材層>
基材層は、必要に応じて設けられる。基材層は、合成樹脂から形成される。基材層は、発泡されている発泡体でもよく、或いは、発泡されていない非発泡体でもよい。
基材層の樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられ、さらに、軟質の熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。安価で且つ優れた可撓性及び耐久性を有し、さらに、裏層と強固に接着することから、基材層は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含むことが好ましい。裏層の樹脂層が、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合、例えば、塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤を含み、必要に応じて各種の添加剤を含む。樹脂層の塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤としては、上記<保護層>の欄で説明したようなものが用いられる。
【0041】
[裏層]
<樹脂層>
裏層の第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層などの樹脂層は、主として床材の強度及び重量を構成する層である。樹脂層は、発泡されている発泡体でもよく、或いは、発泡されていない非発泡体でもよい。裏層が複数の樹脂層を有する場合、少なくとも1つの樹脂層が発泡体から構成され且つ少なくとも1つの樹脂層が非発泡体から構成されていてもよく、或いは、全ての樹脂層が発泡体又は非発泡体から構成されていてもよい。また、裏層が複数の樹脂層を有する場合、各樹脂層の主成分樹脂が異なっていてもよく、或いは、各樹脂層の主成分樹脂が同じであってもよい。
前記樹脂層の樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、上記<基材層>の欄で説明したようなものが用いられる。安価で且つ優れた可撓性及び耐久性を有し、さらに、表層と強固に接着することから、裏層の樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含むことが好ましい。裏層の樹脂層が、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合、例えば、塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤を含み、必要に応じて各種の添加剤を含む。樹脂層の塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤としては、上記<保護層>の欄で説明したようなものが用いられる。
【0042】
<繊維層>
裏層の繊維層は、床材の寸法安定性を維持するなどの目的で設けられる。繊維層としては、例えば、不織布、織布などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、温度による寸法変化が小さいことから、繊維層としては、ガラス繊維を含むガラスシートを用いることが好ましい。
【0043】
[床材の製造方法]
本発明の床材は、次のような製造方法によって製造できるが、本発明の床材は次の製法によって製造されたものに限定されるわけではない。
床材の製造方法は、本体層を形成する工程、本体層の表面に表面被覆層を形成する工程、を有する。表面にエンボス凹凸が形成された床材を製造する場合、本体層を形成する工程、本体層の表面にエンボス加工を施す工程、エンボス加工によって凹凸が形成された本体層の表面に表面被覆層を形成する工程、を有する。
以下では、本体層が、表層及び裏層からなる場合を例に採って簡単に説明する。
【0044】
<本体層の形成工程>
表層は、上記[床材の層構成]の欄で説明したように様々な層の組み合わせが考えられる。形成したい表層に従い、保護層や着色化粧層などを準備する。保護層としては、例えば、フィルム状に成膜した樹脂シートを用いることができる。塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする保護層の場合、上記<保護層>の欄で説明したように、塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤などを混合し、フィルム状に成膜することによって、樹脂シートが得られる。また、例えば、印刷シートを着色化粧層として用いる。
裏層は、上記[床材の層構成]の欄で説明したように、様々な層の組み合わせが考えられる。形成したい裏層に従い、樹脂層や繊維層を準備する。樹脂層としては、例えば、フィルム状に成膜した樹脂シートを用いることができる。塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層の場合、塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び充填剤などを混合し、フィルム状に成膜することによって、樹脂シートが得られる。
【0045】
表面側から順に、表層を形成する樹脂シートや印刷シートなどを重ね、さらに、裏層を形成する樹脂シートや繊維層などを重ねることによって、積層体を形成する。この積層体を加熱して隣接するシート及び各層を接着させることによって、本体層を得ることができる。塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、前記加熱温度は、塩化ビニル系樹脂が溶融する温度以上であり、例えば、140℃以上200℃以下である。層間をより強固に接着させるために、前記積層体を加圧することが好ましい。加圧方法としては、特に限定されず、加圧ローラ、プレス板などが挙げられる。
【0046】
<エンボス工程>
積層体の表面にエンボスローラやエンボス板などを押し当てることにより、積層体の表面にエンボス凹凸が形成される。エンボスローラの押圧などのエンボス加工を行う際には、積層体の少なくとも表面を加熱しておくことが好ましい。前記加熱は、エンボス加工する前に積層体を加熱してもよく、又は/及び、エンボス加工と同時に積層体を加熱してもよい。後者の例としては、加熱されたエンボスローラなどを用いることが挙げられる。
【0047】
<表面被覆層の形成工程>
上記積層体の表面(保護層の表面)に、電離放射線硬化性樹脂(又は電離放射線硬化性樹脂を形成し得る硬化性モノマー又はオリゴマー)、粉末セルロース及び必要に応じて添加される配合物を含む塗工液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって、表面被覆層を形成できる。
電離放射線硬化性樹脂、粉末セルロース及び配合物については、上記[表面被覆層]の欄で説明したようなものを使用できる。
【0048】
塗工液の調製に際して、必要に応じてラジカル重合開始剤を添加してもよい。前記ラジカル重合開始剤は、電離放射線の照射によりラジカルを生成する化合物であり、公知の水素引き抜き型又は光開裂型等を1種又は2種以上で使用することができる。このようなラジカル重合開始剤には、必要に応じて光増感剤等を併用することも可能である。前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のほか、チオキサント系化合物等が挙げられる。
これらの各成分を略均一に混合することによって塗工液を調製することができる。前記混合は、粉末セルロールが十分に分散するまで行うことが好ましい。
【0049】
塗工液の塗布方法は、特に制限されず、例えば、ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、カーテンコーターなどの各種コーター法を採用できる。例えば、前記コーター法を用いて1つの方向(例えば、第1方向)に引張り力を作用させながら塗工液を塗工することにより、
図9に示すような細長形状を成した凸部を有する表面被覆層を形成できる。
前記塗膜に電離放射線を照射することによって、未硬化の前記塗膜を硬化させる。電離放射線としては、塗膜を硬化できるエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を用いればよい。例えば、紫外線又は電子線を用いる。紫外線源としては、例えば低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ブラックライト、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素の線源などが挙げられる。電離放射線の照射量は、例えば用いるモノマー又はオリゴマーの種類等に応じて適宜設定すればよく、例えば紫外線波長365nmでの積算光量で50mJ/cm
2以上5000mJ/cm
2以下などが挙げられる。
このようにして、本体層の表面(保護層の表面)に表面被覆層が形成された床材を得ることができる。
【0050】
[床材の使用]
本発明の床材は、建築物の床材などとして使用できる。なお、本発明の床材を、腰壁材として使用することも可能である。
前記床材は、接着剤又は粘着剤を介して床面に敷設される。ただし、本発明の床材の裏面に吸着部が設けられている場合、接着剤などを用いずにそのまま床面に敷設することもできる。
本発明の床材は、例えば、店舗やホテルなどの商業施設、オフィスビル、住居用一般家屋などの屋内、これらの通路、ベランダなどの屋外の床面に使用することができる。特に、本発明の床材は、防滑性及び防摩耗性に優れているので、靴下などの衣類が直接接触する床面、例えば、ホテルなどの商業施設や住居用一般家屋の屋内の床面用の床材として好適に使用できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
[使用材料]
・電離放射線硬化性樹脂
ウレタン系紫外線硬化性樹脂(中国塗料株式会社製の製品名「オーレックスNo.171 マット」。無溶剤型の液状タイプ)。
・粉末セルロース
レッテンマイヤー社製の製品名「ARBOCEL FD600-30」。本製品は、ふるい分析にて、全ての粒子が71μm以下で、45μm以上のものが7%を含むものである。ふるい分析は、DIN EN ISO 4610に準拠した、エアジェットシーブを用いて分析される。
・アルミナ
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の製品名「AW15-20」。球状。平均粒径15.5±2.0μm。
【0053】
・第1の塩化ビニル製シート
基布上に第1樹脂シートを重ね、その第1樹脂シート上に第2樹脂シートを重ね、加熱して融着させることによって、表面側から順に第2樹脂層/第1樹脂層/基布からなる第1の塩化ビニル製シートを作製した。なお、前記第2樹脂層は、本体層の表層に相当し、第1樹脂層及び基布は、本体層の裏層に相当する。前記基布は、ポリエレチレンテレフタラート系とセルロース系の繊維を混繊した織物であった。この第1の塩化ビニル製シートの厚みは、約2mmであった。
前記第1樹脂シートは、58重量%の塩化ビニル系樹脂、19重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、19重量%の充填剤(炭酸カルシウム)、及び4重量%の安定剤等からなる。前記第2樹脂シートは、20重量%の塩化ビニル系樹脂、15重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、62重量%の充填剤(炭酸カルシウム)、及び3重量%の安定剤等からなる。
【0054】
・第2の塩化ビニル製タイル
カレンダー成型機にて、第3樹脂シート、第4樹脂シート、第5樹脂シートを作製した。第3樹脂シート、第4樹脂シート、第5樹脂シート、印刷シート及び保護シートを重ね合わせ、加熱して融着させた後、表面にエンボス加工を施し、平面視正方形状に打ち抜き加工を行うことによって、表面側から順に保護層/印刷層/第5樹脂層/第4樹脂層/第3樹脂層からなる第2の塩化ビニル製タイルを作製した。なお、前記保護層及び印刷層は、本体層の表層に相当し、第3樹脂層乃至第5樹脂層は、本体層の裏層に相当する。この第2の塩化ビニル製タイルの厚みは、約3mmであった。
前記第3樹脂シートは、35重量%の塩化ビニル系樹脂、11重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、及び54重量%の安定剤等からなる。前記第4樹脂シートは、21重量%の塩化ビニル系樹脂、9重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、及び70重量%の安定剤等からなる。前記第5樹脂シートは、25重量%の塩化ビニル系樹脂、8重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、及び67重量%の安定剤等からなる。前記印刷シートは、80重量%の塩化ビニル系樹脂、10重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、及び10重量%の安定剤等からなる。前記保護シートは、75重量%の塩化ビニル系樹脂、19重量%の可塑剤(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))、及び6重量%の安定剤等からなる。
【0055】
[実施例1]
電離放射線硬化性樹脂に粉末セルロースを入れ、ハンドミキサーを用いて約5分間混合することにより、粉末セルロースの含有量が1重量%の塗工液を調製した。
この塗工液を、第1の塩化ビニル製シートの表面に、スポンジロールを用いて均一な厚みで塗工した後、直ちに空気中において有電極紫外線ランプで紫外線を照射して硬化させることによって、厚み約15μmの表面被覆層を形成した。このようにして、表面被覆層/第1の塩化ビニル製シートからなる床材を作製した。
なお、表面被覆層の厚みは、微細な凸部を有さない部分を測定した。
【0056】
[実施例2乃至7]
粉末セルロースを、表1に示す含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み約15μmの表面被覆層を形成した。
【0057】
[比較例1]
粉末セルロースを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚み約15μmの表面被覆層を形成した。
【0058】
[比較例2]
粉末セルロースに代えてアルミナを用い、そのアルミナの含有量が5重量%の塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み約15μmの表面被覆層を形成した。
【0059】
[比較例3]
アルミナの含有量を15重量%に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、厚み約15μmの表面被覆層を形成した。
【0060】
[表面粗さ]
実施例1乃至7及び比較例1乃至3で得られた床材の、表面被覆層の表面粗さSaを測定した。
表面粗さSaの測定は、株式会社キーエンス製の「レーザー顕微鏡 VK-X3000」を用いて、下記の条件で測定した値である。表面粗さSaは、1回測定(n=1)の算術平均値を採用した。
・測定モード:レーザーコンフォーカル。
・対物レンズ:20X。
・測定面積:3177μm×2383μm。
【0061】
[防滑性試験-歩行試験]
実施例1乃至7及び比較例1乃至3で得られた床材について、乾燥状態の床材の表面(表面被覆層の表面)を、靴下を履いた人(成人男性12名、成人女性3名)が歩行し、その際の滑り程度を各人が評価した。次に、靴下を脱ぎ、素足のままで同様に歩行し、各人が評価した。
評価は、比較例1を基準とし、これと実施例1乃至7並びに比較例2及び3を対比することによって行なった。具体的には、先ず、比較例1の床材上を歩行し、そのときの滑り易さを評価した。次に、実施例1乃至7並びに比較例2及び3の床材上を歩行し、比較例1の床材の歩行時と対比して、それらの床材の滑り易さを評価した。そして、比較例1の滑り易さをポイント5と固定し、各人が、比較例1よりも滑り難いと評価できたときに、その程度に応じて、ポイント6から10を1刻みで付与し、比較例1よりも滑り易いと評価できたときに、その程度に応じてポイント4から1を1刻みで付与した。ポイントが高いほど滑り難く、ポイントが低いほど滑り易いと評価したことを表している。その結果を表1に示す。ただし、表1の結果は、比較例1を除いて、各人が付与したポイントの平均値(小数点1位を四捨五入)である。
表1の実施例1と比較例1は、ポイント数が同じになったものの、過半数の人が比較例1よりも実施例1のほうが滑り難いという感覚を得ていた。
【0062】
実施例1乃至7の床材は、比較例1の床材よりも滑り難いことが判る。特に、粉末セルロースを3重量%以上20重量%以下含む実施例2乃至7の床材は、防滑性に優れている。かかる結果から、粉末セルロースを概ね2重量%以上含有させることにより、防滑性に優れた床材を得ることができると言える。
【0063】
[防摩耗性試験]
実施例1、5乃至7で得られた床材を、23℃±2℃、湿度50%RH±10%RHの環境下で24時間静置した。その後、同環境下で、表面摩擦強度試験機を用いて、前記床材の表面(表面被覆層の表面)に、ゴム片の下方に織物を貼り付けた滑り片を載置し、1000gの荷重をかけた状態で約45cm往復擦動させ、前記織物が擦り切れるまでの往復数を計測した。前記織物は、40番綿ブロードを用い、ゴム片は、直径20mm、高さ4mmの円柱状であった。前記擦り切れるまでの往復数は、100往復(100回)ごとに動作を停止して織物の状態を確認することによって決定した。計測は、3000往復(3000回)まで行った。その結果を表1に示す。
【0064】
[光沢度測定]
実施例1乃至7及び比較例1乃至3で得られた床材を、23℃±2℃、湿度50%RH±10%RHの環境下で24時間静置した。その後、同環境下で、光沢計(日本電色工業株式会社製の製品名「VG2000」)を用いて、これらの床材の表面(表面被覆層の表面)の光沢度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例1乃至7の床材は、比較例1の床材に比して、光沢度が低いことが判る。この低光沢性は、表面被覆層に粉末セルロースを配合することにより、表面被覆層に微細な凹凸が形成されたことに起因すると推定される。特に、粉末セルロースを5重量%以上20重量%以下含む実施例3乃至7の床材は、低光沢性に優れている。
【0065】
[防汚性試験-東工大式汚れ試験]
実施例1乃至7及び比較例1乃至3で得られた床材について、東京工業大学汚れ試験方法に準じて、その表面(表面被覆層の表面)に汚れを付着させ、その後、その汚れを乾拭きした後の床材の表面の汚れ具合を評価した。同様に、水を含ませた布で拭いた後(水拭き後)の床材の表面の汚れ具合を評価した。具体的な試験方法は、下記の通りである。
各床材を縦×横=15cm×15cmの矩形状に裁断してサンプルを作製した。このサンプルの表面被覆層の表面の一部分を露出させ、一部分を保護フィルムで覆った(すなわち、表面被覆層の表面の一部分に、汚れが付着しないブランクを形成した)。サンプルの表面被覆層の表面とは反対側の面を、回転式試験機(安田精機(株)製、商品名:東工大式汚れ試験機)の正六角柱状の中空容器(六角柱の6つの側面の大きさがそれぞれ、縦(軸方向)×横(周方向)=16.0cm×16.3cm)の側面内壁に両面テープを用いて貼り付けた。この中空容器内に、150gの炭化ケイ素(No.80)、2gの粉末パステルを入れ、この容器を時計回り及び半時計回りに計3分間回転(回転速度:20回転/分)させた。
【0066】
回転停止後、サンプルを容器から取り出し、保護フィルムで覆われていない表面被覆層の表面を乾燥した布で拭きとり、汚れを除去した。布拭き後の表面と保護フィルムを外した表面(ブランクの表面)との色差を、色差計(日本電色工業(株)製の商品名「ZE-2000」。測定径30mmφ。0°-d方式によるダブルビーム方式)を用いて測定した。下記式に従い、色差からY値を求め、Y値からZ値を求めた。
式(1):色差ΔE={(L-L1)2-(a-a1)2-(b-b1)2}1/2
式(2):Y値=0.6531×ΔE-0.4333
式(3):Z値=0.2581×Y値+1.4493
ただし、Lは、ブランクの表面の明度を、L1は、布拭き後の表面の明度を、aは、ブランクの表面の緑色から赤色を、a1は、布拭き後の表面の緑色から赤色を、bは、ブランクの表面の青色から黄色を、b1は、布拭き後の表面の青色から黄色を示す。
【0067】
別のサンプルについて、上記と同様にして容器に入れて汚れを付着させた後、保護フィルムで覆われていない表面被覆層の表面を水で濡らした布で拭きとり、汚れを除去した。水拭き後の表面と保護フィルムを外した表面(ブランクの表面)との色差を、上記と同様にして色差計で測定し、上記式に従い、色差からY値を求め、Y値からZ値を求めた。ただし、上記式のL1、a1及びb1の「布拭き後」は、「水拭き後」に読み替えるものとする。
前記Z値は、東京工業大学小野英治氏の論文(昭和55年9月の日本建築学会退会学術講演梗概集の第337頁及び第338頁「建築物床仕上材料の汚れおよびその評価方法に関する研究(2)」)で規定されている。
Z値に基づく評価は、表1の通りである。Z値が、4以下の場合、汚れを除去し易いと評価できる。
【0068】
実施例1乃至7の床材の防汚性は、比較例1乃至3の床材の防汚性に比して甲乙を付け難く、表面被覆層に粉末セルロースを配合しても防汚性が低下しないことが判る。
【0069】
【0070】
[表面触感評価]
実施例1乃至7及び比較例1乃至3で得られた床材の表面(表面被覆層の表面)の凹凸感及びべたつき感を、23℃±2℃、湿度50%RH±10%RHの環境下にて、2名(成人男性1名、成人女性1名)が評価した。その結果を表2に示す。
・凹凸評価
床材の表面を指でなぞり、凹凸の有無及びその感触を評価した。
・べたつき評価
床材の表面に手のひら全体を30秒押し当てて、この状態で手のひらを面方向に約1~2cmの幅で数回往復させて、べたつき感を評価した。べたつき感は、汗や湿気によって、床材表面が肌にまとわりつくような感覚をいい、特に、夏場など気温が高いときに不快感の原因となる。
【0071】
実施例1乃至7の床材は、粉末セルロースの量に比例して凹凸が多く形成されることが確認できた。比較例2及び3の床材は、凹凸を余り感じ取れなかったが、これは、アルミナが表面被覆層内で沈み込んでいるからと推定される。
また、実施例1乃至7の床材は、べたつき感が無い又はほとんど無かったが、比較例1乃至3は、べたつきを感じた。これは、実施例の床材の表面被覆層に微細な凹凸が形成されたこと及びそれが粉末セルロースによって形成されているという材料的な面に起因すると推定される。
【0072】
【0073】
[撮像]
実施例2、実施例4及び実施例6の床材の表面被覆層の表面を、株式会社キーエンス製の「レーザー顕微鏡 VK-X3000」を用い、測定モードをレーザーコンフォーカルにして20倍に拡大して撮像して複数の画像を得た後、そのうちの25枚の画像を前記レーザー顕微鏡VK-X3000に付随する画像連結アプリケーション(バージョン3.3.1.0)にて連結し、さらに画像処理を施した。画像処理は、前記VK-X3000に付随するマルチファイル解析アプリケーション(バージョン3.2.0.66)にて行った。前記マルチファイル解析アプリケーションでの画像処理は、画像処理ツールにて次の(1)から(4)の処理を順次行った。(1)画像処理ツールの高さカットレベル:中、(2)同ツールの面形状補正:うねり除去 補正強度5、(3)同ツールの面形状補正:うねり除去 補正強度5、(4)同ツールの基準面設定:領域指定 連続面抽出。得られた画像を任意のカラーパレットに設定し、視認性を高めたカラー画像を得た。
このようにして得られた実施例2、実施例4及び実施例6の表面被覆層の表面の画像を
図12乃至
図14に示す。なお、得られた画像はカラーであったが、
図12乃至
図14は、それをグレースケールに変換したものである。なお、
図12乃至
図14の画像の紙面横方向の寸法は、いずれも約3000μmである。
図15は、画像から分析できた表面の立体構造を説明するための参考図である。
図15において、上述の長状突起部6A、長状突起部6B、突起部6C、第1突起部61、第2突起部62及び凹部7に対応する箇所の幾つかに、それらの符号を付している。
【0074】
[実施例8乃至14]
実施例1乃至7の第1の塩化ビニル製シートを、第2の塩化ビニル製タイルに変更したこと以外は、同様にして、実施例8乃至14の床材を作製した。
【0075】
[比較例4乃至6]
比較例1乃至3の第1の塩化ビニル製シートを、第2の塩化ビニル製タイルに変更したこと以外は、同様にして、比較例4乃至6の床材を作製した。
【0076】
[防摩耗性試験]
実施例8、10、13及び14並びに比較例4乃至6の床材について、上記と同様に、防摩耗性試験を行なった。その結果を表3に示す。
アルミナを配合した比較例5及び6の床材は、早期に織物が擦り切れてしまい、摩耗させやすいことが判る。実施例の床材は、防摩耗性に優れていることが判る。
上述の実施例1、5乃至7の床材の防摩耗性試験の結果及び実施例8、10、13及び14の防摩耗性試験の結果から、粉末セルロースの含有量に比例して防摩耗性が低下する傾向にある。これらの結果を考慮すると、粉末セルロースを概ね15重量%以下含有させることにより、防摩耗性に特に優れた床材を得ることができると言える。
【0077】
【符号の説明】
【0078】
1 床材
2 表面被覆層
3 表層
4 裏層
5 電離放射線硬化性樹脂
6 凸部
6A 長状突起部
61 第1突起部
62 第2突起部
7 凹部
8 粉末セルロース