(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】シートパッド、及び、シートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20250114BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20250114BHJP
【FI】
A47C27/14 Z
A47C27/14 A
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2023135003
(22)【出願日】2023-08-22
(62)【分割の表示】P 2018217627の分割
【原出願日】2018-11-20
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】山口 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】米澤 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070628(JP,A)
【文献】特開2018-175483(JP,A)
【文献】特開2008-212345(JP,A)
【文献】実公昭53-053533(JP,Y2)
【文献】特開2005-131277(JP,A)
【文献】特開2008-194957(JP,A)
【文献】特開2012-065883(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147268(WO,A1)
【文献】特開2015-097597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14 - A47C 27/20
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体と、
前記樹脂発泡体に埋設されたシート状部材と、
を備えた、シートパッドであって、
前記シートパッドの左右方向及び厚さ方向に対して垂直な方向を、前記シートパッドの延在方向と称するとき、
前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分は、前記延在方向において、前記シートパッドの裏面側に凸に湾曲して
おり、
前記樹脂発泡体に埋設された、複数の埋設部材を、さらに備え、
前記複数の埋設部材は、それぞれ、前記シート状部材のいずれか一方側の面と接触しており、
前記シートパッドの平面視において、前記シート状部材の前記延在方向の両端部が、それぞれ、1つ又は複数の前記埋設部材と重複しており、
前記樹脂発泡体には、前記シートパッドの着座者側の面又は裏面に開口し、前記シート状部材にまで延在する、複数の凹部が形成されており、
前記複数の埋設部材は、それぞれ、前記シート状部材を介して、前記凹部と対向しており、
各前記埋設部材は、金属又は磁石からなる、シートパッド。
【請求項2】
前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分は、前記左右方向及び前記延在方向において、前記シートパッドの裏面側に凸に湾曲している、請求項1に記載のシートパッド。
【請求項3】
前記シート状部材は、メッシュ状に構成されている、請求項1又は2に記載のシートパッド。
【請求項4】
前記シートパッドの平面視において、前記シート状部材の前記左右方向の両端
部が、それぞれ、1つ又は複数の前記埋設部材と重複して
いる、請求項1~3のいずれか一項に記載のシートパッド。
【請求項5】
前記シートパッドの平面視において、
前記シート状部材の前記左右方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部が、前記延在方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記埋設部材と重複しており、かつ/又は、
前記シート状部材の前記延在方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部が、前記左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記埋設部材と重複している、請求項4に記載のシートパッド。
【請求項6】
前記シートパッドの平面視において、前記複数の埋設部材のうち少なくとも一部の埋設部材は、前記シートパッドの着座者側の面に設けられた溝と重複した位置にある、請求項
1~5のいずれか一項に記載のシートパッド。
【請求項7】
シートパッドを成形するための発泡成形用金型の内部に、シート状部材を配置する、シート配置ステップと、
前記シート配置ステップの後、前記発泡成形用金型に発泡樹脂材料を注入し、型締めして、樹脂発泡体を発泡成形する、発泡成形ステップと、
前記樹脂発泡体を、前記シート状部材が前記樹脂発泡体に埋設された状態で脱型する、脱型ステップと、
を含む、シートパッドの製造方法であって、
前記発泡成形用金型は、前記シートパッドの着座者側の面を成形するように構成された下型成形面を有する下型と、前記シートパッドの裏面を成形するように構成された上型成形面を有する上型と、有し、
前記シートパッドの左右方向及び厚さ方向に対して垂直な方向を、前記シートパッドの延在方向と称するとき、
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材の左右方向の両端部と前記シート状部材の前記延在方向の両端部とを、それぞれ、前記下型成形面又は前記上型成形面に対して、1つ又は複数の留め具によって仮留めし、
前記発泡成形ステップでは、前記下型成形面と前記シート状部材との間に前記発泡樹脂材料を注入し、当該発泡樹脂材料の膨張によって前記シート状部材が前記上型成形面側へ押し上げられることにより、前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分が、前記左右方向及び前記延在方向のそれぞれにおいて、前記上型成形面側に凸に湾曲した形状へと変形する、シートパッドの製造方法。
【請求項8】
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材の左右方向の両端部と前記シート状部材の前記延在方向の両端部とを、それぞれ、前記下型成形面又は前記上型成形面に設けられた凸部に対して、1つ又は複数の留め具によって仮留めする、請求項7に記載のシートパッドの製造方法。
【請求項9】
前記シート配置ステップでは、
前記シート状部材の前記左右方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部を、前記発泡成形用金型の前記凸部に対して、前記延在方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記留め具によって仮留めし、かつ/又は、
前記シート状部材の前記延在方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部を、前記発泡成形用金型の前記凸部に対して、前記左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記留め具によって仮留めする、請求項8に記載のシートパッドの製造方法。
【請求項10】
前記下型成形面には、前記凸部としての凸条が設けられており、
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材を、前記凸条に対して、前記留め具によって仮留めする、請求項8又は9に記載のシートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド、及び、シートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートパッドとして、樹脂発泡体に平坦状の布帛体を埋設したものがある(例えば、特許文献1)。この布帛体は、平坦状をなしている。特許文献1によれば、このような構成により、座り心地を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシートパッドにおいては、座り心地に関し、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、座り心地を向上できるシートパッド、及び、座り心地を向上できるシートパッドが得られるシートパッドの製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシートパッドは、
樹脂発泡体と、
前記樹脂発泡体に埋設されたシート状部材と、
を備えた、シートパッドであって、
前記シートパッドの左右方向及び厚さ方向に対して垂直な方向を、前記シートパッドの延在方向と称するとき、
前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分は、前記延在方向において、前記シートパッドの裏面側に凸に湾曲している。
本発明のシートパッドによれば、座り心地を向上できる。
【0007】
本発明のシートパッドにおいては、
前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分は、前記左右方向及び前記延在方向において、前記シートパッドの裏面側に凸に湾曲していると、好適である。
これにより、座り心地をより向上できる。
【0008】
本発明のシートパッドにおいては、
前記シート状部材は、メッシュ状に構成されていると、好適である。
これにより、座り心地をより向上でき、また、製造性を向上できる。
【0009】
本発明のシートパッドにおいては、
前記樹脂発泡体に埋設された、複数の埋設部材を、さらに備え、
前記複数の埋設部材は、それぞれ、前記シート状部材のいずれか一方側の面と接触しており、
前記シートパッドの平面視において、前記シート状部材の前記左右方向の両端部と前記シート状部材の前記延在方向の両端部とが、それぞれ、1つ又は複数の前記埋設部材と重複しており、
前記樹脂発泡体には、前記シートパッドの着座者側の面又は裏面に開口し、前記シート状部材にまで延在する、複数の凹部が形成されており、
前記複数の埋設部材は、それぞれ、前記シート状部材を介して、前記凹部と対向していると、好適である。
これにより、座り心地をより向上できる。
【0010】
本発明のシートパッドにおいては、
前記シートパッドの平面視において、
前記シート状部材の前記左右方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部が、前記延在方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記埋設部材と重複しており、かつ/又は、
前記シート状部材の前記延在方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部が、前記左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記埋設部材と重複していると、好適である。
これにより、座り心地をより向上できる。
【0011】
本発明のシートパッドにおいては、
前記シートパッドの平面視において、前記複数の埋設部材のうち少なくとも一部の埋設部材は、前記シートパッドの着座者側の面に設けられた溝と重複した位置にあると、好適である。
これにより、製造性を向上できる。
【0012】
本発明のシートパッドの製造方法は、
シートパッドを成形するための発泡成形用金型の内部に、シート状部材を配置する、シート配置ステップと、
前記シート配置ステップの後、前記発泡成形用金型に発泡樹脂材料を注入し、型締めして、樹脂発泡体を発泡成形する、発泡成形ステップと、
前記樹脂発泡体を、前記シート状部材が前記樹脂発泡体に埋設された状態で脱型する、脱型ステップと、
を含む、シートパッドの製造方法であって、
前記発泡成形用金型は、前記シートパッドの着座者側の面を成形するように構成された下型成形面を有する下型と、前記シートパッドの裏面を成形するように構成された上型成形面を有する上型と、有し、
前記シートパッドの左右方向及び厚さ方向に対して垂直な方向を、前記シートパッドの延在方向と称するとき、
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材の左右方向の両端部と前記シート状部材の前記延在方向の両端部とを、それぞれ、前記下型成形面又は前記上型成形面に対して、1つ又は複数の留め具によって仮留めし、
前記発泡成形ステップでは、前記下型成形面と前記シート状部材との間に前記発泡樹脂材料を注入し、当該発泡樹脂材料の膨張によって前記シート状部材が前記上型成形面側へ押し上げられることにより、前記シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分が、前記左右方向及び前記延在方向のそれぞれにおいて、前記上型成形面側に凸に湾曲した形状へと変形する。
本発明のシートパッドの製造方法によれば、座り心地を向上できるシートパッドを得ることができる。
【0013】
本発明のシートパッドの製造方法においては、
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材の左右方向の両端部と前記シート状部材の前記延在方向の両端部とを、それぞれ、前記下型成形面又は前記上型成形面に設けられた凸部に対して、1つ又は複数の留め具によって仮留めすると、好適である。
これにより、座り心地をより向上できる。
【0014】
本発明のシートパッドの製造方法においては、
前記シート配置ステップでは、
前記シート状部材の前記左右方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部を、前記発泡成形用金型の前記凸部に対して、前記延在方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記留め具によって仮留めし、かつ/又は、
前記シート状部材の前記延在方向の両端部のうち少なくともいずれか一方の端部を、前記発泡成形用金型の前記凸部に対して、前記左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる前記留め具によって仮留めすると、好適である。
これにより、座り心地をより向上できる。
【0015】
本発明のシートパッドの製造方法においては、
前記下型成形面には、前記凸部としての凸条が設けられており、
前記シート配置ステップでは、前記シート状部材を、前記凸条に対して、前記留め具によって仮留めすると、好適である。
これにより、製造性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、座り心地を向上できるシートパッド、及び、座り心地を向上できるシートパッドが得られるシートパッドの製造方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートパッドを備えた車両用シートを、概略的に示す斜視図である。
【
図2】クッションパッドとして構成された、本発明の第1実施形態に係るシートパッドを示す、平面図である。
【
図3】
図2のクッションパッドを示す斜視図である。
【
図4】
図2及び
図3のクッションパッドを、
図2及び
図3のA-A線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図5】
図2及び
図3のクッションパッドを、
図2及び
図3のB-B線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図6】
図2のシート状部材の一例を拡大して示す、斜視図である。
【
図7】
図2のシート状部材の別の例を拡大して示す、斜視図である。
【
図8】
図2のクッションパッドを成形するためのクッションパッド発泡成形用金型の下型を、発泡樹脂材料が注入される前の状態で示す、平面図である。
【
図11】
図8及び
図9の下型を、
図8及び
図9のB’-B’線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図12】
図10の下型において、発泡樹脂材料が注入される様子を示す、左右方向断面図である。
【
図13】
図12の下型において、注入された発泡樹脂材料が膨張する様子を示す、左右方向断面図である。
【
図15】
図14の下型に上型が嵌め合わせられたクッションパッド発泡成形用金型が、樹脂発泡体を発泡成形している様子を示す、左右方向断面図である。
【
図16】
図15の状態におけるクッションパッド発泡成形用金型を示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図17】クッションパッドとして構成された、本発明の第2実施形態に係るシートパッドを示す、平面図である。
【
図18】
図17のクッションパッドを、
図17のC-C線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図19】
図17のクッションパッドを、
図17のD-D線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図20】
図17のクッションパッドを成形するためのクッションパッド発泡成形用金型の下型を、発泡樹脂材料が注入される前の状態で示す、平面図である。
【
図21】
図20の下型を、
図20のC’-C’線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図22】
図20の下型を、
図20のD’-D’線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図23】
図21の下型に上型が嵌め合わせられたクッションパッド発泡成形用金型が、樹脂発泡体を発泡成形している様子を示す、左右方向断面図である。
【
図24】
図23の状態におけるクッションパッド発泡成形用金型を示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図25】クッションパッドとして構成された、本発明の第3実施形態に係るシートパッドを示す、平面図である。
【
図26】
図25のクッションパッドを、
図25のE-E線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図27】
図25のクッションパッドを、
図25のF-F線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図28】
図25のクッションパッドを成形するためのクッションパッド発泡成形用金型の上型を、発泡樹脂材料が注入される前の状態で示す、平面図である。
【
図29】
図28の上型を、
図28のE’-E’線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図30】
図28の上型を、
図28のF’-F’線に沿う断面により示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図31】
図29の上型と嵌め合わせられる下型において、発泡樹脂材料が注入される様子を示す、左右方向断面図である。
【
図32】
図31の下型に
図29の上型が嵌め合わせられたクッションパッド発泡成形用金型の内部で、注入された発泡樹脂材料が膨張する様子を示す、左右方向断面図である。
【
図33】
図32のクッションパッド発泡成形用金型が、樹脂発泡体を発泡成形している様子を示す、左右方向断面図である。
【
図34】
図33の状態におけるクッションパッド発泡成形用金型を示す、前後方向(延在方向)断面図である。
【
図35】バックパッドとして構成された、本発明の第4実施形態に係るシートパッドを示す、平面図である。
【
図36】
図35のバックパッドを、
図35のG-G線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図37】
図35のバックパッドを、
図35のH-H線に沿う断面により示す、延在方向断面図である。
【
図38】
図35のバックパッドを成形するためのバックパッド発泡成形用金型の下型を、発泡樹脂材料が注入される前の状態で示す、平面図である。
【
図39】
図38の下型に上型が嵌め合わされたバックパッド発泡成形用金型が、樹脂発泡体を発泡成形している様子を、
図38のG’-G’線に沿う断面により示す、左右方向断面図である。
【
図40】
図39の状態におけるバックパッド発泡成形用金型を、
図38のH’-H’線に沿う断面により示す、延在方向断面図である。
【
図41】本発明のシートパッドの比較例1、比較例2の試験結果を示す図面である。
【
図42】本発明のシートパッドの比較例3、実施例1の試験結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のシートパッド、及び、本発明のシートパッドの製造方法により製造されるシートパッドは、任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッドに用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【0019】
以下、本発明に係るシートパッド、及び、シートパッドの製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本発明の任意の実施形態に係るシートパッド1を備えた車両用シート100の一例を、概略的に示す斜視図である。
図1に破線で示すように、シートパッド1は、車両用シートパッドとして構成されており、着座者が着座するためのクッションパッド10と、着座者の背中を支持するためのバックパッド20と、を備えている。クッションパッド10とバックパッド20とは、それぞれ、シートパッド1を構成している。以下では、クッションパッド10又はバックパッド20を、単に「シートパッド1」と呼ぶことがある。車両用シート100は、シートパッド1に加え、例えば、シートパッド1の表側(着座者側)を覆う表皮30と、クッションパッド10を下から支持するフレーム(図示せず)と、バックパッド20の裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、バックパッド20の上側に設置され、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト40と、を備える。表皮30は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。
図1の例において、クッションパッド10とバックパッド20とは、互いに別体に構成されているが、互いに一体に構成されてもよい。
また、
図1の例において、ヘッドレスト40は、バックパッド20とは別体に構成されているが、ヘッドレスト40は、バックパッド20と一体に構成されてもよい。
【0021】
図1に破線で示すように、クッションパッド10は、着座者の尻部及び大腿部を下から支持するように構成されたメインパッド部(「着座部」ともいう。)11と、メインパッド部11の左右両側に位置し、メインパッド部11よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部12と、メインパッド部11の後側に位置し、バックパッド20と上下方向に対向配置するように構成された、バックパッド対向部13と、を有している。メインパッド部11は、着座者の大腿部を下から支持するように構成された、腿下部11tと、腿下部11tに対し後側に位置し、着座者の尻部を下から支持するように構成された尻下部11hと、からなる。
一方、バックパッド20は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部21と、メインパッド部21の左右両側に位置し、メインパッド部21よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部22と、を有している。
【0022】
本明細書では、車両用シート100やシートパッド1について説明する際に、
図1~
図5、
図17~
図19、
図25~
図27、
図35~
図37に表記するとおり、車両用シート100に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。また、本明細書では、シートパッド1を成形するための発泡成形用金型200について説明する際に、
図8~
図16、
図20~
図24、
図28~
図34、
図38~
図40に表記するとおり、発泡成形用金型200によって成形されたシートパッド1に着座した着座者から観たときの「左」、「右」、「前」、「後」の各方向に対応する方向を、それぞれ単に「左」、「右」、「前」、「後」などといい、また、発泡成形時における鉛直方向の「上」、「下」を、それぞれ単に「上」、「下」などという。
また、本明細書において、「シートパッド1の延在方向(LD)」(以下、単に「延在方向(LD)」ともいう。)とは、シートパッド1の左右方向及び厚さ方向(TD)に対して垂直な方向であり、
図1に示すように、クッションパッド10の場合、前後方向を指しており、バックパッド20の場合、バックパッド20のメインパッド部21の下面から上面までにわたってメインパッド部21が延在する方向である。
また、「シートパッド1の厚さ方向(TD)」(以下、単に「厚さ方向(TD)」ともいう。)とは、
図1に示すように、クッションパッド10の場合、上下方向を指しており、バックパッド20の場合、バックパッド20のメインパッド部21の着座者側の面(表面)FSから裏面BSまでにわたってメインパッド部21が延在する方向である。
また、シートパッド1の「着座者側の面(表面、FS)」は、クッションパッド10の場合、上面を指しており、バックパッド20の場合、前面を指す。シートパッド1の「裏面(BS)」は、クッションパッド10の場合、下面を指しており、バックパッド20の場合、後面を指す。
【0023】
〔第1実施形態〕
図2~
図16を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るシートパッド1、及び、本発明の第1実施形態に係るシートパッドの製造方法について、説明する。
図2~
図5は、クッションパッド10として構成された第1実施形態に係るシートパッド1を示しており、
図8~
図16は、
図2~
図5のクッションパッド10を製造するために使用できる、第1実施形態に係るシートパッドの製造方法を説明するための図面である。
図6及び
図7は、後述のシート状部材70の別々の例を示している。
【0024】
まず、
図2~
図7を参照しながら、本実施形態のシートパッド1(以下、「クッションパッド10」ともいう。)について説明する。
図2は、本実施形態のクッションパッド10の着座者側の面(上面)FSを平面視した様子を示す平面図である。
図3は、
図2のクッションパッド10を斜め上側から観た様子を示している。
図4は、
図2及び
図3のクッションパッド10を、
図2及び
図3において左右方向に延在するA-A線に沿う断面により示している。
図5は、
図2及び
図3のクッションパッド10を、
図2及び
図3において前後方向(延在方向LD)に延在するB-B線に沿う断面により示している。
図2~
図5に示すように、本実施形態のクッションパッド10は、樹脂発泡体50と、樹脂発泡体50に埋設されたシート状部材70と、を備えている。
【0025】
樹脂発泡体50を構成する樹脂は、可撓性のある樹脂であり、具体的には、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。
樹脂発泡体50は、クッションパッド10の着座者側の面FSと裏面BSとを構成している。クッションパッド10の着座者側の面FSには、それぞれ略前後方向(延在方向LD)に延在するとともに互いから左右方向に離間した、複数本(図の例では、2本)の溝52aと、それぞれ略左右方向に延在する、1本又は複数本(図の例では、2本)の溝52bと、が形成されている。図の例において、略前後方向(延在方向LD)に延在する2本の溝52aが、それぞれ、メインパッド部11とサイドパッド部12との間の境界をなしており、略左右方向に延在する2本の溝52bのうち、前側に位置するほうの溝52bが、腿下部11tと尻下部11hとの間の境界をなしており、また、略左右方向に延在する2本の溝52bのうち、後側に位置するほうの溝52bが、尻下部11h(ひいては、メインパッド部11)とバックパッド対向部13との間の境界をなしている。ただし、クッションパッド10の着座者側の面FSには、
図2とは異なる形態で溝52a、52bが形成されていてもよい。
これらの溝52a、52bには、例えば、表皮30(
図1)を取り付けるための取付具が設けられる。
【0026】
シート状部材70は、シートパッド1の厚さ方向TDに薄い、シート状に構成されている。シート状部材70は、シートパッド1の着座者側の面FSと裏面BSとの両方から離間した位置に配置されている。
図3~
図5に示すように、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分は、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、クッションパッド10の裏面(下面)BS側に凸に湾曲している。すなわち、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分は、略球状に、クッションパッド10の裏面(下面)BS側に凸に湾曲している。図の例では、シート状部材70のうち、左右方向の両端部70aと前後方向(延在方向LD)の両端部70bとに配置された後述の複数の埋設部材262によって囲まれた部分(すなわち、複数の埋設部材262よりも内周側の部分)が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、クッションパッド10の裏面BS側に凸に湾曲している。
なお、「左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて・・・凸に湾曲している」とは、左右方向の断面(
図4)と延在方向LDの断面(
図5)とのそれぞれにおいて、凸に湾曲していることを指す。
【0027】
図2~
図5に示すように、クッションパッド10は、樹脂発泡体50に埋設された、金属又は磁石からなる複数の埋設部材262を、さらに備えている。本例において、各埋設部材262は、それぞれ金属からなる。なお、埋設部材262は、後述するように、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第2留め具構成部材262(
図15~
図16)である。
これら複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面(図の例では、裏面BS側の面)と接触している。
本例において、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図2)において、シート状部材70が、尻下部11hの全体と重複しており、シート状部材70の面積が、尻下部11hの面積よりも僅かに大きい。
シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図2)においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとが、それぞれ、1つ又は複数の埋設部材262と重複している。
より具体的に、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(
図2の例では、両方)の端部70aが、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(
図2の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。また、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(
図2の例では、両方)の端部70bが、左右方向において互いから離間された複数(
図2の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。
なお、「シート状部材70の左右方向の端部70a」は、例えば、シート状部材70の左右方向の端(外縁)から、シート状部材70の左右方向の端(外縁)からシート状部材70の左右方向の中心に向かって30mm離れた左右方向位置までにわたる、部分である。また、「シート状部材70の延在方向LDの端部70b」は、例えば、シート状部材70の延在方向LDの端(外縁)から、シート状部材70の延在方向LDの端(外縁)からシート状部材70の延在方向LDの中心に向かって30mm離れた延在方向LD位置までにわたる、部分である。
また、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図2)においては、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262のうち少なくとも一部(
図2の例では、全部)の埋設部材262が、シートパッド1(クッションパッド10)の着座者側の面FSに設けられた溝52a、52bと重複した位置にある。
【0028】
図3~
図5に示すように、樹脂発泡体50には、シートパッド1(クッションパッド10)の着座者側の面FSに開口し、シート状部材70にまで延在し、そこで終端する、複数の有底の凹部(以下、「到達凹部」という。)51が形成されている。
図4及び
図5に示すように、本例において、到達凹部51は、着座者側の面FSに開口し、厚さ方向TDに延在して、シート状部材70に至る手前で終端する、上述の溝52a又は52bと、この溝52a又は52bの溝底面からシート状部材70まで厚さ方向TDに延在する、連結孔61と、からなる。樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、到達凹部51と対向している。なお、連結孔61は、後述するように、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第1留め具構成部材261(
図15~
図16)によって形成されるものである。
【0029】
本実施形態において、シート状部材70は、メッシュ状に構成されており、シート状部材70を貫通する多数の穴72を有している。
図6及び
図7は、それぞれシート状部材70の別々の構成例を示している。
シート状部材70は、例えば
図6に示すように、1本又は複数本の糸71が編み込み又は織り込みされることにより、メッシュ状に構成されるとよい。この場合、穴72は、糸71どうしの間に区画される。1本の糸71は、1本の単繊維からなってもよいし、あるいは、複数本の単繊維が撚られ又は束ねられてなるものでもよい。
あるいは、シート状部材70は、例えば
図7に示すように、一続きのシート(布を含む。)に多数の穴72がパンチング加工等により形成されることにより、メッシュ状に構成されてもよい。
図6及び
図7の各例において、シート状部材70を構成する材料は、例えば、合成樹脂がよい。
本例において、シート状部材70は、樹脂発泡体50よりも、曲げ剛性が低い(すなわち、曲げやすい)ものである。ただし、シート状部材70は、樹脂発泡体50よりも、曲げ剛性が高くてもよい。
【0030】
つぎに、上述した本発明の第1実施形態に係るシートパッド1(クッションパッド10)を製造するための、本発明の第1実施形態に係るシートパッドの製造方法について、
図8~
図16を参照しつつ、説明する。
本実施形態において、クッションパッド10は、クッションパッド発泡成形用金型210を用いて製造される。クッションパッド発泡成形用金型210は、後に説明する
図15及び
図16に示すように、クッションパッド10の着座者側の面FSを成形するように構成された下型成形面LSを有する下型200Lと、クッションパッド10の裏面BSを成形するように構成された上型成形面USを有する上型200Uと、有している。上型200Uは、下型200Lに対し、鉛直方向の上側に配置される。
図8に示すように、下型成形面LSは、クッションパッド10のメインパッド部(着座部)11の着座者側の面FSを成形するように構成されたメインパッド部(着座部)成形面211Sと、メインパッド部成形面211Sの左右両側に位置し、クッションパッド10の一対のサイドパッド部12の着座者側の面FSを成形するように構成された、一対のサイドパッド部成形面212Sと、メインパッド部(着座部)成形面211Sの後側に位置し、クッションパッド10のバックパッド対向部13の着座者側の面FSを成形するように構成された、バックパッド対向部成形面213Sと、を有している。メインパッド部成形面211Sは、クッションパッド10の腿下部11tの着座者側の面FSを成形するように構成された腿下部成形面211tSと腿下部成形面211tSに対し後側に位置し、クッションパッド10の尻下部11hの着座者側の面FSを成形するように構成された、尻下部成形面211hSと、からなる。
また、本実施形態において、下型成形面LSには、後に説明する
図8及び
図9に示すように、それぞれ略前後方向(延在方向LD)に延在するとともに互いから左右方向に離間した、複数本(図の例では、2本)の凸条252aと、それぞれ略左右方向に延在する、1本又は複数本(図の例では、2本)の凸条252bと、が形成されている。略前後方向(延在方向LD)に延在する凸条252aは、クッションパッド10において略前後方向(延在方向LD)に延在する溝52a(
図2及び
図3)を成形するように構成されており、略左右方向に延在する凸条252bは、クッションパッド10において略左右方向に延在する溝52b(
図2及び
図3)を成形するように構成されている。図の例において、略前後方向(延在方向LD)に延在する2本の凸条252aが、それぞれ、メインパッド部成形面211Sとサイドパッド部成形面212Sとの間の境界をなしており、略左右方向に延在する2本の凸条252bのうち、前側に位置するほうの凸条252bが、腿下部成形面211tSと尻下部成形面211hSとの間の境界をなしており、また、略左右方向に延在する2本の凸条252bのうち、後側に位置するほうの凸条252bが、尻下部成形面211hS(ひいては、メインパッド部成形面211S)とバックパッド対向部成形面213Sとの間の境界をなしている。ただし、下型成形面LSには、
図8とは異なる形態で凸条252a、252bが形成されていてもよい。
本実施形態のシートパッド1(クッションパッド10)の製造方法は、シート配置ステップと、発泡成形ステップと、脱型ステップと、を含む。
【0031】
<シート配置ステップ>
まず、シート配置ステップにおいて、シートパッド1(クッションパッド10)を成形するための発泡成形用金型200(クッションパッド発泡成形用金型210)の内部に、シート状部材70を配置する(
図8~
図11)。
本実施形態において、シート状部材70は、クッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lに取り付けられる。
図8~
図11は、クッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lに、シート状部材70を配置した状態を示している。
図8は、クッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lを、発泡樹脂材料が注入される前の状態で示す、平面図である。
図9は、
図8の下型200Lを示す、斜視図である。
図10は、
図8及び
図9の下型200Lを、
図8及び
図9において左右方向に延在するA’-A’線に沿う断面により示している。
図11は、
図8及び
図9の下型200Lを、
図8及び
図9において前後方向(延在方向LD)に延在するB’-B’線に沿う断面により示している。
図8~
図11に示すように、本実施形態において、シート配置ステップでは、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、下型成形面LS又は上型成形面US(本例では、下型成形面LS)に対して、1つ又は複数(本例では、複数)の留め具260によって仮留めする。より具体的に、本実施形態では、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、下型成形面LSに設けられた凸部250としての凸条252a、252bに対して、留め具260によって仮留めする。
ここで、
図8及び
図9に示すように、本例では、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70aを、下型200Lの凸部250(具体的には、凸条252a)に対して、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(図の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。また、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70bを、下型200Lの凸部250(具体的には、凸条252b)に対して、左右方向において互いから離間された複数(図の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。
図9~
図11に示すように、本例において、留め具260は、それぞれ、金属及び磁石のうち一方(本例では、磁石)からなる第1留め具構成部材261と、金属及び磁石のうち他方(本例では、金属)からなる第2留め具構成部材262と、を有している。
第1留め具構成部材261は、下型200Lの凸部250(具体的には、凸条252a、252b)の先端面(上面)に固定されている。第1留め具構成部材261を凸部250に固定する手法としては、例えば、第1留め具構成部材261及び凸部250どうしを機械的に固定する手法や、第1留め具構成部材261及び凸部250どうしを接着剤により接着固定する手法など、任意の手法を用いることができるが、両者を機械的に固定する手法のほうが、より強固に固定できるので好適である。第1留め具構成部材261及び凸部250どうしを機械的に固定する手法としては、例えば、第1留め具構成部材261及び凸部250に予めねじを形成しておき、両者を螺合させる手法や、第1留め具構成部材261及び凸部250に予め凹凸面を形成しておき、両者を係合させる手法等がある。
第2留め具構成部材262は、シート配置ステップにおいて、第1留め具構成部材261との間でシート状部材70を挟持するように、シート状部材70に対して第1留め具構成部材261とは反対側に配置される。これにより、各第2留め具構成部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、第1留め具構成部材261と対向した状態となる(
図10及び
図11)。
本例において、留め具260は、このように構成されているので、シート状部材70は、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で作用する磁力によって、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で挟持され、下型成形面LSに対して、着脱可能に固定(仮留め)される。
なお、図の例では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、平坦状になるように配置するとともに、この後の発泡成形ステップにおいて型締めしたときにシート状部材70が下型200Lの下型成形面LSと上型200Uの上型成形面USとの両方から離間するように、配置する。
【0032】
<発泡成形ステップ>
シート配置ステップの後は、発泡成形ステップにおいて、発泡成形用金型200(クッションパッド発泡成形用金型210)に発泡樹脂材料50’を注入し、型締めして、樹脂発泡体50を発泡成形する(
図12~
図16)。
より具体的に、発泡成形ステップでは、まず、
図12に示すように、液状の発泡樹脂材料50’を注入する。このとき、少なくとも、クッションパッド発泡成形用金型210の下型成形面LSとシート状部材70との間に、液状の発泡樹脂材料50’を注入する。ここで、図の例では、シート状部材70が上述のようにメッシュ状に構成されており、発泡樹脂材料50’が、シート状部材70の上から、注入ヘッドH等により、注入される。そして、注入された発泡樹脂材料50’は、シート状部材70の多数の穴72(
図6及び
図7)を通ることでシート状部材70を透過し、その下の下型成形面LS上に配置される。その後、
図13及び
図14に示すように、下型成形面LSとシート状部材70との間に配置された発泡樹脂材料50’が徐々に膨張していくことによって、シート状部材70のうち、留め具260により仮留めされた箇所以外の部分が、上型成形面US側(上側)へと押し上げられていき、それにより、シート状部70材のうちの少なくとも中央側の部分(具体的には、仮留めされた箇所よりも内周側の部分)が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側(上側)に凸に湾曲した形状へと変形する(
図13及び
図14)。
また、発泡成形ステップでは、これと並行して、必要に応じて、発泡樹脂材料50’を、下型成形面LSとシート状部材70との間以外の部分(サイドパッド部成形面212Sの上側など)にも配置した後、下型200Lに上型200Uを嵌め合わせることで型締めし、下型200Lと上型200Uとにより区画されるキャビティ内で樹脂発泡体50を発泡成形する(
図15及び
図16)。なお、発泡成形ステップでは、例えば、下型成形面LSとシート状部材70との間で膨張した発泡樹脂材料50’の一部が、シート状部材70を介して、シート状部材70と上型成形面USとの間に戻ることにより、シート状部材70と上型成形面USとの間に発泡樹脂材料50’が充填される。
このとき、下型成形面LSに設けられた凸条252a、252bによって、上述した溝52a、52b(
図3~
図5)が成形される。また、留め具260における第1留め具構成部材261によって、上述した連結孔61(
図4及び
図5)が成形される。
【0033】
<脱型ステップ>
発泡成形ステップの後は、脱型ステップにおいて、樹脂発泡体50を、シート状部材70が埋設された状態で脱型する。
このとき、各留め具260において第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間に作用する磁力に対抗して、各第2留め具構成部材262をそれぞれ対応する第1留め具構成部材261から引き離すことにより、シート状部材70の仮留めを解除する。それにより、各第2留め具構成部材262が樹脂発泡体50の内部に残って前述の埋設部材262となる一方、各第1留め具構成部材261は下型200L側に残る。樹脂発泡体50のうち、各第1留め具構成部材261が埋まっていたところは、連結孔61(
図4及び
図5)となって残る。
脱型ステップの後、
図2~
図5を参照して前述した構成を有するクッションパッド10を得ることができる。
【0034】
上述のように、本実施形態のシートパッド1(クッションパッド10)の製造方法においては、発泡成形ステップにおいて、クッションパッド発泡成形用金型210の下型成形面LSとシート状部材70との間に、液状の発泡樹脂材料50’を注入し、当該発泡樹脂材料50’の膨張によってシート状部材70が上型成形面US側へ押し上げられることにより、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形する(
図12~
図16)。
また、これに伴い、本実施形態のシートパッド1(クッションパッド10)においては、シート状部材のうちの少なくとも中央側の部分は、左右方向及び延在方向のそれぞれにおいて、シートパッドの裏面側に凸に湾曲している(
図3~
図5)。
このように、シートパッド1(クッションパッド10)において、裏面BS側に凸に湾曲したシート状部材70が、樹脂発泡体50の内部に埋設されることで、シート状部材70によって樹脂発泡体50が実質的に厚さ方向TDに分割され、クッションパッド10の樹脂発泡体50のうち、シート状部材70よりも着座者側(上側)の層が、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(下側)の層よりも、撓みやすくなる。それにより、例えば着座者が着座する際において、クッションパッド10に対して着座者からの荷重が掛かると、クッションパッド10の樹脂発泡体50のうち、シート状部材70よりも着座者側(上側)の層が、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(下側)の層よりも先に撓み、その後、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(下側)の層が撓むようになり、すなわち、クッションパッド10が2段階で撓むようになる。
これにより、クッションパッド10の厚さや25%硬度を一定として考えたときに、仮に、シート状部材70が無い場合や、シート状部材70が平坦状をなしている場合に比べて、クッションパッド10の撓みを増加させることができるので、着座者が着座する際に感じるストローク感を増やすことができ、座り心地を向上できる。また、逆にいえば、仮に、シート状部材が無い場合や、シート状部材70が平坦をなしている場合に比べて、クッションパッド10の厚さを薄くしても、同等のストローク感ひいては座り心地を確保することができ、ひいては、クッションパッド10の薄肉化をしつつ、良好な座り心地を得ることが可能になる。
ここで、「25%硬度(N)」は、JIS K6400-1 D法に従って測定されるものとする。
なお、本実施形態では、シート状部材70が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、裏面BS側に凸に湾曲した形状をなしているので、仮にシート状部材70が平坦状をなしている場合や、左右方向又は延在方向LDのいずれか一方のみにおいて裏面BS側に凸に湾曲した円筒形状をなしている場合に比べて、シート状部材70の形状が、着座者の身体の形状に、よりフィットするようになる。これにより、上述した座り心地の向等の効果を、より一層得ることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
つぎに、
図17~24を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るシートパッド1、及び、本発明の第2実施形態に係るシートパッドの製造方法について、第1実施形態とは異なる点を中心に、説明する。
図17~
図19は、クッションパッド10として構成された本発明の第2実施形態に係るシートパッド1を示しており、それぞれ、
図20~
図24は、
図17~
図19のクッションパッド10を製造するために使用できる、本発明の第2実施形態に係るシートパッドの製造方法を説明するための図面である。
上述した第1実施形態のシートパッド(クッションパッド10)では、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の面積が尻下部11hの面積よりも大きいものである。そして、第1実施形態のシートパッド(クッションパッド10)の製造方法は、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、下型成形面LSに設けられた凸部250としての凸条252a、252bに対して、留め具260により仮留めするものである(
図8及び
図9)。
一方、第2実施形態のシートパッド(クッションパッド10)では、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の面積が尻下部11hの面積よりも小さいものである。そして、第2実施形態のシートパッド1(クッションパッド10)の製造方法は、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、下型成形面LSに設けられた凸部250として、凸条252a、252bよりも内周側にある内側凸部253に対して、留め具260により仮留めするものである。それ以外の点(シート状部材70の湾曲形状やメッシュ状をなす構成、留め具260及び埋設部材262の構成等)は、第1実施形態と同様である。
【0036】
まず、
図17~
図19を参照しながら、本実施形態のシートパッド1(以下、「クッションパッド10」ともいう。)について説明する。
図17は、本実施形態のクッションパッド10の着座者側の面(上面)FSを平面視した様子を示す平面図である。
図18は、
図17のクッションパッド10を、
図17において左右方向に延在するC-C線に沿う断面により示している。
図19は、
図17のクッションパッド10を、
図17において前後方向(延在方向LD)に延在するD-D線に沿う断面により示している。
本実施形態では、上述のように、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の面積が尻下部11hの面積よりも小さい。
図17~
図19に示すように、クッションパッド10の樹脂発泡体50には、メインパッド部11、より具体的には尻下部11hにおいて、溝52a、52bの内周側(すなわち、略延在方向LDに延在する一対の溝52aどうしの間、かつ、略左右方向に延在する一対の溝52bどうしの間)に、シートパッド1(クッションパッド10)の着座者側の面FSに開口し、シート状部材70にまで延在し、そこで終端する、複数の有底の凹部(到達凹部)51が形成されている。本例において、到達凹部51は、着座者側の面FSに開口し、厚さ方向TDに延在して、シート状部材70に至る手前で終端する、内側凹部53と、この内側凹部53の底面からシート状部材70まで厚さ方向TDに延在する、連結孔61と、からなる。
シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図17)において、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、別々の到達凹部51と重複する位置にある。より具体的に、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、別々の到達凹部51と対向している(
図18及び
図19)。1つの到達凹部51に対して、1つの埋設部材262が設けられている。なお、連結孔61は、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第1留め具構成部材261(
図23~
図24)によって形成されるものである。また、内側凹部53は、シートパッド1の製造時に用いられるクッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lの下型成形面LSに設けられた内側凸部253(
図23~
図24)によって形成されるものである。
樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面(図の例では、裏面BS側の面)と接触している(
図18及び
図19)。
シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図17)においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとが、それぞれ、1つ又は複数の埋設部材262と重複している。
より具体的に、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(
図17の例では、両方)の端部70aが、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(
図17の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。また、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(
図17の例では、両方)の端部70bが、左右方向において互いから離間された複数(
図17の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。
【0037】
そして、本実施形態においても、
図18及び
図19に示すように、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分(図の例では、複数の埋設部材262よりも内周側の部分)は、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、クッションパッド10の裏面(下面)BS側に凸に湾曲している。
【0038】
つぎに、上述した本発明の第2実施形態に係るシートパッド1(クッションパッド10)を製造するための、本発明の第2実施形態に係るシートパッドの製造方法について、
図20~
図24を参照しつつ、説明する。
本実施形態では、クッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lの下型成形面LSの平面視(
図20)において、シート状部材70の面積が尻下部成形面211hSの面積よりも小さい。
本実施形態においてクッションパッド10の製造に用いられるクッションパッド発泡成形用金型210の下型成形面LSには、
図20~
図22に示すように、メインパッド部成形面211S、より具体的には尻下部成形面211hSにおいて、凸条252a、252bの内周側(すなわち、略延在方向LDに延在する一対の凸条252aどうしの間、かつ、略左右方向に延在する一対の凸条252bどうしの間)に、それぞれ凸部250としての複数の内側凸部253が形成されている。
そして、シート配置ステップにおいては、
図20~
図22に示すように、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、下型成形面LSに設けられた凸部250としての内側凸部253に対して、留め具260によって仮留めする。
ここで、
図20に示すように、本例では、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70aを、下型200Lの凸部250(具体的には、内側凸部253)に対して、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(図の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。また、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70bを、下型200Lの凸部250(具体的には、内側凸部253)に対して、左右方向において互いから離間された複数(図の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。
図20~
図22に示すように、本例において、留め具260は、それぞれ、金属及び磁石のうち一方(本例では、磁石)からなる第1留め具構成部材261と、金属及び磁石のうち他方(本例では、金属)からなる第2留め具構成部材262と、を有している。第1留め具構成部材261は、下型200Lの凸部250(具体的には、内側凸部253)の先端面(上面)に固定されている。第2留め具構成部材262は、シート配置ステップにおいて、第1留め具構成部材261との間でシート状部材70を挟持するように、シート状部材70に対して第1留め具構成部材261とは反対側に配置される。これにより、各第2留め具構成部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、第1留め具構成部材261と対向した状態となる(
図21及び
図22)。
本例において、留め具260は、このように構成されているので、シート状部材70は、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で作用する磁力によって、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で挟持され、下型成形面LSに対して、着脱可能に固定(仮留め)される。
なお、図の例では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、平坦状になるように配置するとともに、この後の発泡成形ステップにおいて型締めしたときにシート状部材70が下型200Lの下型成形面LSと上型200Uの上型成形面USとの両方から離間するように、配置する。
【0039】
第2実施形態において、発泡成形ステップは、第1実施形態と同様に行うことができる。
図23及び
図24は、本実施形態において、型締めされたクッションパッド発泡成形用金型210が、樹脂発泡体50を発泡成形している様子を示している。図示は省略するが、発泡成形ステップでは、クッションパッド発泡成形用金型210の下型成形面LSとシート状部材70との間に、液状の発泡樹脂材料50’を注入し、当該発泡樹脂材料の膨張によってシート状部材70が上型成形面US側へ押し上げられることにより、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形する(
図23及び
図24)。
なお、内側凸部253によって、上述したクッションパッド10の内側凹部53(
図18及び
図19)が形成される。
【0040】
第2実施形態において、脱型ステップは、第1実施形態と同様に行うことができる。
脱型ステップの後、
図17~
図19を参照して前述した構成を有するクッションパッド10を得ることができる。
【0041】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、第2実施形態において、クッションパッド発泡成形用金型210の下型200Lの下型成形面LSには、略延在方向LDに延在する一対の凸条252aどうしの間、かつ、略前後方向に延在する一対の凸条252bよりも前側における、腿下部成形面211tSに、内側凸部253が設けられていてもよく、その場合、シート配置ステップにおいて、シート状部材70が、その内側凸部253に対して、留め具260により仮留めされてもよい。
これに伴い、本実施形態のクッションパッド10においては、内側凹部53が、略延在方向LDに延在する一対の溝52aどうしの間、かつ、略前後方向に延在する一対の溝52bよりも前側における、腿下部11tに、形成されていてもよく、その場合、クッションパッド10の平面視において、シート状部材70が、その内側凹部53と重複する位置に配置されていてもよい。
【0043】
〔第3実施形態〕
つぎに、
図25~
図34を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るシートパッド1、及び、本発明の第3実施形態に係るシートパッドの製造方法について、第1実施形態や第2実施形態とは異なる点を中心に、説明する。
図25~
図27は、クッションパッド10として構成された本発明の第3実施形態に係るシートパッド1を示しており、
図28~
図34は、
図25~
図27のクッションパッド10を製造するために使用できる、本発明の第3実施形態に係るシートパッドの製造方法を説明するための図面である。
上述した第1実施形態や第2実施形態では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、下型成形面LSに設けられた凸部250(凸条252a、252b又は内側凸部253)に対して、留め具260により仮留めするものである。
一方、第3実施形態では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、上型成形面USに設けられた凸部250(裏側凸部254)に対して、留め具260により仮留めするものである。それ以外の点(シート状部材70の湾曲形状やメッシュ状をなす構成、留め具260及び埋設部材262の構成等)は、第1実施形態と同様である。
【0044】
まず、
図25~
図27を参照しながら、本実施形態のシートパッド1(以下、「クッションパッド10」ともいう。)について説明する。
図25は、本実施形態のクッションパッド10の着座者側の面(上面)FSを平面視した様子を示す平面図である。
図26は、
図25のクッションパッド10を、
図25において左右方向に延在するE-E線に沿う断面により示している。
図26は、
図25のクッションパッド10を、
図25において前後方向(延在方向LD)に延在するF-F線に沿う断面により示している。
図25~
図27に示すように、クッションパッド10の樹脂発泡体50には、メインパッド部11、より具体的には尻下部11hにおいて、シートパッド1(クッションパッド10)の裏面BSに開口し、シート状部材70にまで延在し、そこで終端する、複数の有底の凹部(到達凹部)51が形成されている。本例において、到達凹部51は、裏面BSに開口し、厚さ方向TDに延在して、シート状部材70に至る手前で終端する、裏側凹部54と、この裏側凹部54の底面からシート状部材70まで厚さ方向TDに延在する、連結孔61と、からなる(
図26及び
図27)。
シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図25)において、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、別々の到達凹部51と重複する位置にある。より具体的に、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、別々の到達凹部51と対向している(
図26及び
図27)。1つの到達凹部51に対して、1つの埋設部材262が設けられている。なお、連結孔61は、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第1留め具構成部材261(
図33~
図34)によって形成されるものである。また、裏側凹部54は、シートパッド1の製造時に用いられるクッションパッド発泡成形用金型210の上型200Uの上型成形面USに設けられた凸部250としての裏側凸部254(
図33~
図34)によって形成されるものである。
図26及び
図27に示すように、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面(図の例では、着座者側の面FS側の面)と接触している。
シートパッド1(クッションパッド10)の平面視(
図25)においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとが、それぞれ、1つ又は複数の埋設部材262と重複している。
より具体的に、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(
図26の例では、両方)の端部70aが、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(
図26の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。また、シートパッド1(クッションパッド10)の平面視において、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(
図26の例では、両方)の端部70bが、左右方向において互いから離間された複数(
図26の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。
【0045】
そして、本実施形態においても、
図26及び
図27に示すように、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分(図の例では、複数の埋設部材262よりも内周側の部分)は、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、クッションパッド10の裏面(下面)BS側に凸に湾曲している(
図26及び
図27)。
【0046】
つぎに、上述した本発明の第3実施形態に係るシートパッド1(クッションパッド10)を製造するための、本発明の第3実施形態に係るシートパッドの製造方法について、
図28~
図34を参照しつつ、説明する。
本実施形態においてクッションパッド10の製造に用いられるクッションパッド発泡成形用金型210の上型成形面USには、
図28~
図30に示すように、凸部250としての複数の裏側凸部254が形成されている。
そして、シート配置ステップにおいては、
図28~
図30に示すように、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、上型成形面USに設けられた凸部250としての裏側凸部254に対して、留め具260によって仮留めする。
ここで、
図28に示すように、本例では、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70aを、上型200Uの凸部250(具体的には、裏側凸部254)に対して、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(図の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。また、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70bを、上型200Uの凸部250(具体的には、裏側凸部254)に対して、左右方向において互いから離間された複数(図の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。
図29~
図30に示すように、本例において、留め具260は、それぞれ、金属及び磁石のうち一方(本例では、磁石)からなる第1留め具構成部材261と、金属及び磁石のうち他方(本例では、金属)からなる第2留め具構成部材262と、を有している。第1留め具構成部材261は、上型200Uの凸部250(具体的には、裏側凸部254)の先端面(下面)に固定されている。第2留め具構成部材262は、シート配置ステップにおいて、第1留め具構成部材261との間でシート状部材70を挟持するように、シート状部材70に対して第1留め具構成部材261とは反対側に配置される。これにより、各第2留め具構成部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、第1留め具構成部材261と対向した状態となる(
図29及び
図30)。
本例において、留め具260は、このように構成されているので、シート状部材70は、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で作用する磁力によって、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で挟持され、上型成形面USに対して、着脱可能に固定(仮留め)される。
なお、図の例では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、平坦状になるように配置するとともに、この後の発泡成形ステップにおいて型締めしたときにシート状部材70が下型200Lの下型成形面LSと上型200Uの上型成形面USとの両方から離間するように、配置する。
【0047】
発泡成形ステップでは、まず、
図31に示すように、液状の発泡樹脂材料50’を、クッションパッド発泡成形用金型210の下型成形面LSの上に注入する。このとき、シート状部材70は、上述のように上型成形面USに取り付けられているので(
図29及び
図30)、シート状部材70を介さずに、発泡樹脂材料50’を、下型成形面LS上に注入する。その後、
図32に示すように、下型200Lに上型200Uを嵌め合わせることにより型締めし、それにより、シート状部材70を下型成形面LS上の発泡樹脂材料50’に近接対向させる。その状態で、下型成形面LSとシート状部材70との間に配置された発泡樹脂材料50’が徐々に膨張していくことによって、シート状部材70のうち、留め具260により仮留めされた箇所以外の部分が、上型成形面US側(上側)へと押し上げられていき、それにより、シート状部70材のうちの少なくとも中央側の部分(具体的には、仮留めされた箇所よりも内周側の部分)が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側(上側)に凸に湾曲した形状へと変形する。そのようにして、下型200Lと上型200Uとにより区画されるキャビティ内で樹脂発泡体50を発泡成形する(
図33及び
図34)。
なお、裏側凸部254によって、上述したクッションパッド10の裏側凹部54(
図26及び
図27)が形成される。
【0048】
第3実施形態において、脱型ステップは、第1実施形態や第2実施形態と同様に行うことができる。なお、各第2留め具構成部材262が樹脂発泡体50の内部に残って前述の埋設部材262となる一方、各第1留め具構成部材261は上型200U側に残る。
脱型ステップの後、
図25~
図27を参照して前述した構成を有するクッションパッド10を得ることができる。
【0049】
第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、
図25~
図27の例のクッションパッド10においては、クッションパッド10の平面視(
図25)において、シート状部材70の面積が尻下部11hの面積よりも小さい。また、
図28~
図34の例のクッションパッド発泡成形用金型210においては、上型200Uの平面視において、シート状部材70の面積が尻下部成形面211hSの面積よりも小さい。
しかし、第3実施形態においては、図示する例に限られず、クッションパッド10の平面視において、シート状部材70の面積が尻下部11hの面積以上であってもよく、また、クッションパッド発泡成形用金型210の上型200Uの平面視において、シート状部材70の面積が尻下部成形面211hSの面積以上であってもよい。この場合、クッションパッド10の平面視において、クッションパッド10の裏側凹部54は、クッションパッド10の着座者側の面FSに設けられた溝52a、52bと重複する位置にあってもよく、また、型締めした状態におけるクッションパッド発泡成形用金型210の平面視において、上型200Uの裏側凸部254は、下型200Lの下型成形面LSに設けられた凸条252a、252bと重複する位置にあってもよい。
また、裏側凸部254は、クッションパッド発泡成形用金型210の上型200Uの腿下部成形面211tSに設けられていてもよく、また、裏側凹部54は、クッションパッド10の平面視において、クッションパッド10の腿下部11tと重複する位置にあってもよい。
【0051】
〔第4実施形態〕
つぎに、
図35~
図37を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るシートパッド1、及び、本発明の第4実施形態に係るシートパッドの製造方法について、第1実施形態とは異なる点を中心に、説明する。
図35~
図37は、バックパッド20として構成された本発明の第4実施形態に係るシートパッド1を示しており、
図38~
図40は、
図35~
図37のバックパッド20を製造するために使用できる、本発明の第4実施形態に係るシートパッドの製造方法を説明するための図面である。
第4実施形態は、クッションパッド10ではなくバックパッド20にシート状部材70を埋設させるものである。
【0052】
まず、
図35~
図37を参照しながら、第4実施形態のシートパッド1(以下、「バックパッド20」ともいう。)について説明する。
図35は、本実施形態のバックパッド20の着座者側の面(前面)FSを平面視した様子を示す平面図である。
図36は、
図35のバックパッド20を、
図35において左右方向に延在するG-G線に沿う断面により示している。
図37は、
図35のバックパッド20を、
図35において延在方向LDに延在するH-H線に沿う断面により示している。
図35~
図37に示すように、本実施形態のバックパッド20は、樹脂発泡体50と、樹脂発泡体50に埋設されたシート状部材70と、を備えている。
【0053】
樹脂発泡体50を構成する樹脂は、可撓性のある樹脂であり、具体的には、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。
樹脂発泡体50は、バックパッド20の着座者側の面FSと裏面BSとを構成している。バックパッド20の着座者側の面FSには、それぞれ略延在方向LDに延在するとともに互いから左右方向に離間した、複数本(図の例では、2本)の溝52aと、略左右方向に延在する、1本又は複数本(図の例では、1本)の溝52bと、が形成されている。図の例において、略延在方向LDに延在する2本の溝52aが、それぞれ、メインパッド部21とサイドパッド部22との間の境界をなしている。ただし、バックパッド20の着座者側の面FSには、
図35とは異なる形態で溝52a、52bが形成されていてもよい。
これらの溝52a、52bには、例えば、表皮30(
図1)を取り付けるための取付具が設けられる。
【0054】
シート状部材70は、シートパッド1の厚さ方向TDに薄い、シート状に構成されている。シート状部材70は、シートパッド1の着座者側の面FSと裏面BSとの両方から離間した位置に配置されている。
図36~
図37に示すように、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分は、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、バックパッド20の裏面(後面)BS側に凸に湾曲している。すなわち、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分は、略球状に、バックパッド20の裏面(後面)BS側に凸に湾曲している。図の例では、シート状部材70のうち、左右方向の両端部70aと延在方向LDの両端部70bとに配置された後述の複数の埋設部材262によって囲まれた部分(すなわち、複数の埋設部材262よりも内周側の部分)が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、バックパッド20の裏面BS側に凸に湾曲している。
【0055】
図35~
図37に示すように、バックパッド20は、樹脂発泡体50に埋設された、金属又は磁石からなる複数の埋設部材262を、さらに備えている。本例において、各埋設部材262は、それぞれ金属からなる。なお、埋設部材262は、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第2留め具構成部材262(
図39~
図40)である。
これら複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面(図の例では、裏面BS側の面)と接触している。
シートパッド1(バックパッド20)の平面視(
図35)においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとが、それぞれ、1つ又は複数の埋設部材262と重複している。
より具体的に、シートパッド1(バックパッド20)の平面視においては、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(
図2の例では、両方)の端部70aが、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(
図2の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。また、シートパッド1(バックパッド20)の平面視において、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(
図2の例では、両方)の端部70bが、左右方向において互いから離間された複数(
図2の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。
また、シートパッド1(バックパッド20)の平面視(
図35)においては、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262のうち少なくとも一部(
図35の例では、一部のみ)の埋設部材262が、シートパッド1(バックパッド20)の着座者側の面FSに設けられた溝52a、52bと重複した位置にある。
【0056】
図35~
図37に示すように、樹脂発泡体50には、シートパッド1(バックパッド20)の着座者側の面FS又は裏面BS(図の例では、着座者側の面FS)に開口し、シート状部材70にまで延在し、そこで終端する、複数の有底の凹部(以下、「到達凹部」という。)51が形成されている。本例において、これら複数の到達凹部51のうちの一部の到達凹部51は、バックパッド20の平面視(
図35)において、略延在方向LDに延在する溝52aと重複しており、厚さ方向TDの断面(
図36)において、着座者側の面FSに開口し、厚さ方向TDに延在して、シート状部材70に至る手前で終端する、上述の溝52aと、この溝52aの溝底面からシート状部材70まで厚さ方向TDに延在する、連結孔61と、からなる。一方、樹脂発泡体50に形成された複数の到達凹部51のうちの残りの到達凹部51は、バックパッド20の平面視(
図35)において、略延在方向LDに延在する一対の溝52aどうしの間に配置されており、厚さ方向TDの断面(
図37)において、着座者側の面FSに開口し、厚さ方向TDに延在して、シート状部材70に至る手前で終端する、内側凹部53と、この内側凹部53の底面からシート状部材70まで厚さ方向TDに延在する、連結孔61と、からなる。樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、到達凹部51と対向している。なお、連結孔61は、シートパッド1の製造時に用いられる留め具260の一部を構成する、第1留め具構成部材261(
図39~
図40)によって形成されるものである。
【0057】
つぎに、上述した本発明の第4実施形態に係るシートパッド1(バックパッド20)を製造するための、本発明の第4実施形態に係るシートパッドの製造方法について、
図38~
図40を参照しつつ、説明する。
本実施形態において、バックパッド20は、バックパッド発泡成形用金型220を用いて製造される。バックパッド発泡成形用金型220は、
図39及び
図40に示すように、バックパッド20の着座者側の面FSを成形するように構成された下型成形面LSを有する下型200Lと、バックパッド20の裏面BSを成形するように構成された上型成形面USを有する上型200Uと、有している。上型200Uは、下型200Lに対し、鉛直方向の上側に配置される。下型成形面LSは、バックパッド20のメインパッド部(着座部)21の着座者側の面FSを成形するように構成されたメインパッド部(着座部)成形面221Sと、メインパッド部(着座部)成形面221Sの左右両側に位置し、バックパッド20の一対のサイドパッド部22の着座者側の面FSを成形するように構成された、一対のサイドパッド部成形面222Sと、を有している。図の例において、上型200Uは、中子200UIを有しており、この中子200UIが上型成形面USを有している。ただし、上型200Uは、中子200UIを有していなくてもよい。
また、本実施形態において、下型成形面LSには、
図38に示すように、それぞれ略延在方向LDに延在するとともに互いから左右方向に離間した、複数本(図の例では、2本)の凸条252aと、略左右方向に延在する、1本又は複数本(図の例では、1本)の凸条252bと、が形成されている。略延在方向LDに延在する凸条252aは、バックパッド20において略延在方向LDに延在する溝52a(
図35)を成形するように構成されており、略左右方向に延在する凸条252bは、バックパッド20において略左右方向に延在する溝52b(
図35)を成形するように構成されている。図の例において、略延在方向LDに延在する2本の凸条252aが、それぞれ、メインパッド部成形面221Sとサイドパッド部成形面222Sとの間の境界をなしている。ただし、下型成形面LSには、
図38とは異なる形態で凸条252a、252bが形成されていてもよい。
本例においてバックパッド20の製造に用いられるバックパッド発泡成形用金型220の下型成形面LSには、
図38及び
図40に示すように、メインパッド部成形面221Sにおいて、略延在方向LDに延在する一対の凸条252aどうしの間に、凸部250としての複数の内側凸部253が形成されている。
【0058】
そして、シート配置ステップにおいては、
図38~
図40に示すように、シート状部材70の左右方向の両端部70aを、それぞれ、下型成形面LSに設けられた凸部250としての凸条252aに対して、留め具260によって仮留めするとともに、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bを、それぞれ、下型成形面LSに設けられた凸部250としての内側凸部253に対して、留め具260によって仮留めする。
ここで、
図38に示すように、本例では、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70aを、下型200Lの凸部250(具体的には、凸条252a)に対して、延在方向LDにおいて互いから離間された複数(図の例では、2つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。また、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方(図の例では、両方)の端部70bを、下型200Lの凸部250(具体的には、内側凸部253)に対して、左右方向において互いから離間された複数(図の例では、3つ)の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めする。
図39~
図40に示すように、本例において、留め具260は、それぞれ、金属及び磁石のうち一方(本例では、磁石)からなる第1留め具構成部材261と、金属及び磁石のうち他方(本例では、金属)からなる第2留め具構成部材262と、を有している。第1留め具構成部材261は、下型200Lの凸部250(具体的には、凸条252a、内側凸部253)の先端面(上面)に固定されている。第2留め具構成部材262は、シート配置ステップにおいて、第1留め具構成部材261との間でシート状部材70を挟持するように、シート状部材70に対して第1留め具構成部材261とは反対側に配置される。これにより、各第2留め具構成部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、第1留め具構成部材261と対向した状態となる(
図39及び
図40)。
本例において、留め具260は、このように構成されているので、シート状部材70は、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で作用する磁力によって、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間で挟持され、下型成形面LSに対して、着脱可能に固定(仮留め)される。
なお、図の例では、シート配置ステップにおいて、シート状部材70を、平坦状になるように配置するとともに、この後の発泡成形ステップにおいて型締めしたときにシート状部材70が下型200Lの下型成形面LSと上型200Uの上型成形面USとの両方から離間するように、配置する。
【0059】
第4実施形態において、発泡成形ステップは、第1実施形態と同様に行うことができる。
図39及び
図40は、本実施形態において、型締めされたバックパッド発泡成形用金型220が、樹脂発泡体50を発泡成形している様子を示している。発泡成形ステップでは、バックパッド発泡成形用金型220の下型成形面LSとシート状部材70との間に、液状の発泡樹脂材料50’を注入し、当該発泡樹脂材料の膨張によってシート状部材70が上型成形面US側へ押し上げられることにより、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形する(
図39及び
図40)。
なお、内側凸部253によって、上述したバックパッド20の内側凹部53(
図37)が形成される。
【0060】
第4実施形態において、脱型ステップは、第1実施形態と同様に行うことができる。
脱型ステップの後、
図35~
図37を参照して前述した構成を有するバックパッド20を得ることができる。
【0061】
上述のように、本実施形態のシートパッド1(バックパッド20)の製造方法においては、発泡成形ステップにおいて、バックパッド発泡成形用金型220の下型成形面LSとシート状部材70との間に、液状の発泡樹脂材料50’を注入し、当該発泡樹脂材料の膨張によってシート状部材70が上型成形面US側へ押し上げられることにより、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形する(
図39及び
図40)。
また、これに伴い、本実施形態のシートパッド1(バックパッド20)においては、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分は、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、シートパッド1の裏面BS側に凸に湾曲している(
図36及び
図37)。
このように、シートパッド1(バックパッド20)において、裏面BS側に凸に湾曲したシート状部材70が、樹脂発泡体50の内部に埋設されることで、シート状部材70によって樹脂発泡体50が実質的に厚さ方向TDに分割され、バックパッド20の樹脂発泡体50のうち、シート状部材70よりも着座者側(前側)の層が、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(後側)の層よりも、撓みやすくなる。それにより、例えば着座者が着座する際にバックパッド20にもたれかかる際等において、バックパッド20に対して着座者からの荷重が掛かると、バックパッド20の樹脂発泡体50のうち、シート状部材70よりも着座者側(前側)の層が、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(後側)の層よりも先に撓み、その後、樹脂発泡体50のうちシート状部材70よりも裏側(後側)の層が撓むようになり、すなわち、バックパッド20が2段階で撓むようになる。
これにより、バックパッド20の厚さや25%硬度を一定として考えたときに、仮に、シート状部材70が無い場合や、シート状部材70が平坦状をなしている場合に比べて、バックパッド20の撓みを増加させることができるので、着座者が着座する際に感じるストローク感を増やすことができ、座り心地を向上できる。また、逆にいえば、仮に、シート状部材70が無い場合や、シート状部材70が平坦状をなしている場合に比べて、バックパッド20の厚さを薄くしても、同等のストローク感ひいては座り心地を確保することができ、ひいては、バックパッド20の薄肉化をしつつ、良好な座り心地を得ることが可能になる。
なお、本実施形態では、シート状部材70が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、裏面BS側に凸に湾曲した形状をなしているので、仮にシート状部材70が平坦状をなしている場合や、左右方向又は延在方向LDのいずれか一方のみにおいて裏面BS側に凸に湾曲した円筒形状をなしている場合に比べて、シート状部材70の形状が、着座者の身体の形状に、よりフィットするようになる。これにより、上述した座り心地の向上等の効果を、より一層得ることができる。
【0062】
なお、上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1の製造方法においては、上述のように、シート配置ステップで、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、下型成形面LS又は上型成形面USに対して、1つ又は複数の留め具260によって仮留めするものである(
図8、
図20、
図28、
図38)。ここで、シート状部材70の中央部分においては、留め具260によって仮留めされない。
また、これに伴い、上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1においては、上述のように、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材(第2留め具構成部材)262が、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面と接触しており、また、シートパッド1の平面視において、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとが、それぞれ、1つ又は複数の埋設部材262と重複しており、また、樹脂発泡体50には、シートパッド1の着座者側の面FS又は裏面BSに開口し、シート状部材70にまで延在する、複数の到達凹部51が形成されており、また、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、到達凹部51と対向している(
図2~
図5、
図17~
図19、
図25~
図27、
図35~
図37)。ここで、シートパッド1の平面視において、シート状部材70の中央部分は、埋設部材262や到達凹部51と重複していない。
これにより、シートパッド1の製造時におけるシート配置ステップにおいて、シート状部材70の四方の端部70a、70bの位置が固定され、シート状部材70の中央部分の位置が固定されないので、その後の発泡成形ステップにおいて、下型成形面LSとシート状部材70との間に配置された発泡樹脂材料50’の膨張により、シート状部材70が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、裏面BS側に凸に湾曲した形状へと、変形しやすくなる。よって、製造後に得られたシートパッド1における、シート状部材70の湾曲形状が、より良好になるので、シートパッド1の座り心地を、より向上できる。
なお、シートパッド1の製造時におけるシート配置ステップにおいて、シート状部材70が複数の留め具260によって仮留めされた状態では、発泡成形用金型200の平面視において、これら複数の留め具260のうち、シート状部材70の外縁から最も離れた位置にある留め具260の、シート状部材70の外縁からの距離d(
図8)は、15mm以下であると好適であり、10mm以下であるとより好適である。同様に、シートパッド1の平面視において、シートパッド1内に埋設された複数の埋設部材(第2留め具構成部材)262のうち、シート状部材70の外縁から最も離れた位置にある埋設部材262の、シート状部材70の外縁からの距離d(
図2)は、15mm以下であると好適であり、10mm以下であるとより好適である。
【0063】
上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1の製造方法においては、上述のように、シート配置ステップにおいて、シート状部材70の左右方向の両端部70aのうち少なくともいずれか一方の端部70aを、発泡成形用金型200の凸部250に対して、延在方向LDにおいて互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めし、かつ/又は、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方の端部70bを、発泡成形用金型200の凸部250に対して、左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる留め具260によって仮留めするものである。また、シート状部材70の四方の端部70a、70bのいずれも、その全体にわたって線状に仮留めされない。
また、これに伴い、上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1においては、上述のように、シートパッド1の平面視において、シート状部材70の左右方向の両端部70a、70bのうち少なくともいずれか一方の端部が、延在方向LDにおいて互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複しており、かつ/又は、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのうち少なくともいずれか一方の端部が、左右方向において互いから離間された複数の位置で、それぞれ異なる埋設部材262と重複している。
このように、シートパッド1の製造時におけるシート配置ステップにおいて、シート状部材70の四方の端部70a、70bを、それぞれ、複数個所で点状に仮留めすることにより、仮にシート状部材70の四方の端部70a、70bが、連続的に(線状に)仮留めされる場合に比べて、その後の発泡成形ステップにおいて、下型成形面LSとシート状部材70との間に配置された発泡樹脂材料50’の膨張により、シート状部材70が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、裏面BS側に凸に湾曲した形状へと、変形しやすくなる。よって、製造後に得られたシートパッド1における、シート状部材70の湾曲形状が、より良好になるので、シートパッド1の座り心地を、より向上できる。また、留め具260を小型に構成できるので、製造性を向上できる。
【0064】
上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1の製造方法においては、上述のように、シート配置ステップにおいて、シート状部材70の左右方向の両端部70aとシート状部材70の延在方向LDの両端部70bとを、それぞれ、下型成形面LS又は上型成形面USに設けられた凸部250に対して、1つ又は複数の留め具260によって仮留めするものである。このように、シート配置ステップにおいて、シート状部材70の四方の端部70a、70bを、下型成形面LS又は上型成形面USに設けられた凸部250に対して仮留めすることにより、シート状部材70を、安定的に、下型成形面LS又は上型成形面USから所定の距離だけ離間した位置に配置することができ、ひいては、その後の発泡成形ステップにおいて得られる、シート状部材70の湾曲形状が、より良好になるので、シートパッド1の座り心地を、より向上できる。
ただし、シート配置ステップにおいて、シート状部材70の四方の端部70a、70bを、下型成形面LS又は上型成形面USに対して、直接、1つ又は複数の留め具260によって仮留めするようにしてもよい。この場合、各留め具260の第1留め具構成部材261が、下型成形面LS又は上型成形面USに対して、固定される。シート状部材70の四方の端部70a、70bの厚さ方向TDにおける位置は、第1留め具構成部材261の厚さ方向TDの長さを調整することにより、調整するとよい。
【0065】
上述した第1及び第4実施形態に係るシートパッド1の製造方法においては、上述のように、発泡成形用金型200の下型成形面LSには、凸部250としての凸条252a、252bが設けられており、シート配置ステップでは、シート状部材70を、この凸条252a、252bに対して、留め具260によって仮留めするものである。
これに伴い、上述した第1及び第4実施形態に係るシートパッド1においては、上述のように、シートパッド1の平面視において、複数の埋設部材262のうち少なくとも一部の埋設部材262は、シートパッド1の着座者側の面FSに設けられた溝52a、52bと重複した位置にある。
もともと一般的なシートパッドの着座者側の面には、表皮を取り付けるための取り付け具が配置される溝が設けられるところ、上記の構成によれば、当該溝を成形するための凸条を有効活用して、シート状部材70を安定的に、下型成形面から所定の距離だけ離間した位置に配置することができる。よって、シート状部材70を発泡成形用金型200内に配置するために、専用の凸部250を設ける必要性を低減でき、製造性を向上できる。
【0066】
上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1の製造方法においては、上述のように、留め具260は、それぞれ、発泡成形用金型200の凸部250に固定され、金属及び磁石のうち一方からなる第1留め具構成部材261と、シート配置ステップにおいて、第1留め具構成部材261との間でシート状部材70を挟持する、金属及び磁石のうち他方からなる第2留め具構成部材262と、を有し、また、脱型ステップでは、第1留め具構成部材261が発泡成形用金型200側に残り、第2留め具構成部材262が樹脂発泡体50の内部に残るものである。
これに伴い、上述した第1~第4実施形態に係るシートパッド1においては、上述のように、樹脂発泡体50に埋設された、金属又は磁石からなる複数の埋設部材(第2留め具構成部材)262が、それぞれ、シート状部材70のいずれか一方側の面と接触しており、また、樹脂発泡体50には、シートパッド1の着座者側の面FS又は裏面BSに開口し、シート状部材70にまで延在する、複数の到達凹部51が形成されており、また、樹脂発泡体50に埋設された複数の埋設部材262は、それぞれ、シート状部材70を介して、到達凹部51と対向している(
図2~
図5、
図17~
図19、
図25~
図27、
図35~
図37)。
このように、シート配置ステップでは、留め具260における第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間に作用する磁力によって、シート状部材70を挟持することで、シート状部材70の仮留めを行うので、必要に応じて仮留めのやり直しを簡単にすることができるとともに、脱型ステップにおいて、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材262との間に作用する磁力に対抗して第2留め具構成部材262を第1留め具構成部材261から引き離すだけで、簡単に脱型ができる。よって、製造性を向上できる。
なお、この場合、留め具260における第1留め具構成部材261及び第2留め具構成部材262のいずれか一方を構成する磁石としては、例えば、ネオジウム磁石が、磁力が強力であるので、好適である。また、留め具260における第1留め具構成部材261及び第2留め具構成部材262のいずれか他方を構成する金属としては、磁石にくっつく性質をもつもの(強磁性体)であることが好適であり、例えば、鉄であると、特に好適である。
ただし、留め具260としては、上述のものに限定されず、シート状部材70を発泡成形用金型200に対して仮留め(着脱可能に固定)できるような構成であれば、任意の構成が可能である。
例えば、図の例において、第1留め具構成部材261は柱状に構成されており、第2留め具構成部材(埋設部材)262は板状に構成されているが、第1留め具構成部材261と第2留め具構成部材(埋設部材)262との形状は任意でよい。また、例えば、留め具260は、磁力を用いない、クリップ式又はフック式に構成されてもよい。また、留め具260は、脱型ステップにおいて発泡成形用金型200側に残る第1留め具構成部材261のみを有していてもよく、その場合、脱型ステップ後に得られる樹脂発泡体50の内部には、第2留め具構成部材(埋設部材)262が無いこととなる。あるいは、留め具260は、脱型ステップにおいて樹脂発泡体50の内部に残る第2留め具構成部材(埋設部材)262のみを有していてもよい。また、留め具260を構成する部材(第1留め具構成部材261及び/又は第2留め具構成部材262)を構成する材料は、金属や磁石以外の材料でもよく、例えば、樹脂でもよい。
【0067】
上述した第1~第3実施形態に係るシートパッド1(クッションパッド10)においては、
図2、
図17、
図25の各例のように、シート状部材70の少なくとも一部分が、クッションパッド10の平面視において、メインパッド部11と重複すると好適であり、尻下部11hと重複するとより好適である。この場合、シート状部材70の湾曲形状が、クッションパッド10に着座する着座者の尻部の形状に好適にフィットするので、シートパッド1の座り心地を、より向上できる。
同様の観点から、第1~第3実施形態に係るシートパッド1(クッションパッド10)の製造方法においては、
図8、
図20、
図28の各例のように、留め具260により仮留めされた状態におけるシート状部材70の少なくとも一部分が、クッションパッド発泡成形用金型210の平面視において、メインパッド部成形面211Sと重複すると好適であり、尻下部成形面211hSと重複するとより好適である。
また、上述した第4実施形態に係るシートパッド1(バックパッド20)においては、
図35の例のように、シート状部材70の少なくとも一部分が、バックパッド20の平面視においてメインパッド部21と重複すると好適である。この場合、シート状部材70の湾曲形状が、バックパッド20にもたれかかる着座者の背中の形状に好適にフィットするので、シートパッド1の座り心地を、より向上できる。
同様の観点から、第4実施形態に係るシートパッド1(バックパッド20)の製造方法においては、
図38の例のように、留め具260により仮留めされた状態におけるシート状部材70の少なくとも一部分が、バックパッド発泡成形用金型220の平面視において、メインパッド部成形面221Sと重複すると好適である。
【0068】
上述した第1~第4実施形態において、シート状部材70は、多数の穴72を有するメッシュ状に構成されている。これにより、仮にシート状部材70が、穴72を有さずに、一続きのシート状に構成されている場合に比べて、シートパッド1の座り心地を向上できる。また、上述の第1、第2及び第4実施形態のように、シートパッド1の製造時における発泡成形工程において、液状の発泡樹脂材料50’をシート状部材70の上から注入し、シート状部材70を透過させることで、下型成形面LS上に配置することができる。よって、仮にシート状部材70が一続きのシート状に構成されている場合に比べて、シート状部材70に対する両側を、段階分けすることなく1つの段階で、発泡樹脂材料50’の注入及び成形することができるので、製造性を向上できる。
なお、発泡成形工程において、液状の発泡樹脂材料50’がシート状部材70を透過しやすくする観点から、シート状部材70を平面視したときの穴72(
図6、
図7)の直径は、1mm以上であると好適であり、3mm以上であるとより好適である。一方、発泡成形工程において、液状の発泡樹脂材料50’の膨張によってシート状部材70を押し上げやすくする観点から、シート状部材70を平面視したときの穴72(
図6、
図7)の直径は、25mm以下であると好適であり、22mm以下であるとより好適である。
ここで、「シート状部材70を平面視したときの穴72の直径」とは、
図6及び
図7の各例のように穴72の形状が非円形(図の例では、四角形)である場合、シート状部材70を平面視したときの穴72の外接円の直径を指すものとする。
また、発泡成形工程においてシート状部材70が変形し易くする観点や、シートパッド1の座り心地向上の観点や、シート状部材70の耐久性の観点などから、シート状部材70を平面視したときの穴72どうしの間の距離(ひいては、
図6の例の場合、1本の糸71の太さ)は、1~3mm程度が好適である。
ただし、シート状部材70は、穴72の無い、一続きのシート状に構成されていてもよい。
【0069】
上述した第1~第4実施形態係るシートパッド1において、座り心地向上の観点から、シート状部材70は、シートパッド1の裏面BS寄りに配置されるのが好適である。具体的には、
図4~
図5、
図18~
図19、
図26~
図27、
図36~
図37に示す各例のように、シート状部材70のなす湾曲形状における、裏面BS側への頂点が、厚さ方向TDにおいて、シートパッド1の着座者側の面FSよりもシートパッド1の裏面BSのほうに近いと、好適である。なお、シート状部材70のなす湾曲形状における、裏面BS側への頂点から、シートパッド1の裏面BSまでの、厚さ方向TDの距離(すなわち、シート状部材70からシートパッド1の裏面BSまでの厚さ方向TDの最短距離)は、短すぎると、ストローク感をさほど増大できなくなるため、3mm以上あると好適であり、5mm以上あるとより好適である。
同様に、上述した第1~第4実施形態係るシートパッド1の製造方法において、シート状部材70は、発泡成形ステップにおいて発泡成形用金型200内で湾曲形状へと変形した後の状態において、上型成形面US寄りに配置されるのが好適である。具体的には、
図15~
図16、
図23~
図24、
図33~
図34、
図39~
図40に示す各例のように、発泡成形ステップにおいて発泡成形用金型200内で湾曲形状へと変形した後の状態において、シート状部材70のなす湾曲形状における、上型成形面US側への頂点が、厚さ方向TDにおいて、下型成形面LSよりも上型成形面USのほうに近いと、好適である。また、発泡成形ステップにおいて発泡成形用金型200内で湾曲形状へと変形した後の状態において、シート状部材70のなす湾曲形状における、上型成形面US側への頂点から、上型成形面USまでの、厚さ方向TDの距離(すなわち、シート状部材70から上型成形面USまでの厚さ方向TDの最短距離)は、3mm以上あると好適であり、5mm以上あるとより好適である。
なお、シート状部材70の厚さ方向TDの位置の調整は、例えば、シート配置ステップにおいて、留め具260の第1留め具構成部材261の長さを調整することで、行うことができる。
【0070】
なお、上述した各例のシートパッド1においては、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、シートパッド1の裏面BS側に凸に湾曲しているが、これに限られない。上述した各例のシートパッド1は、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、少なくとも延在方向LDにおいて、シートパッド1の裏面BS側に凸に湾曲していればよく、左右方向には湾曲していなくてもよい。例えば、シートパッド1は、シート状部材70のうちの少なくとも中央側部分が、略円筒状に、延在方向LDのみにおいて、シートパッド1の裏面BS側に凸に湾曲していてもよい。このような場合でも、シート状部材70は、着座者の身体の形状に沿う形状となるので、シートパッド1の座り心地を向上できる。
同様に、上述した各例のシートパッド1の製造方法においては、発泡成形ステップにおいて、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、左右方向及び延在方向LDのそれぞれにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形するようにされるが、これに限られない。上述した各例のシートパッド1の製造方法においては、シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、少なくとも延在方向LDにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形すればよく、左右方向には湾曲しなくてもよい。例えば、シートパッド1は、シート状部材70のうちの少なくとも中央側部分が、略円筒状に、延在方向LDのみにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状へと変形してもよい。このことは、例えば、シート配置ステップにおいて、シート状部材70の延在方向LDの両端部70bのみを、1つ又は複数の留め具260によって仮留めすることにより、実現することができる。このような場合でも、製造後に得られたシートパッド1において、シート状部材70は、着座者の身体の形状に沿う形状となるので、シートパッド1の座り心地を向上できる。
【0071】
また、上述した各例のシートパッド1の製造方法においては、発泡成形ステップにおいて、下型成形面LSとシート状部材70との間に配置された発泡樹脂材料50’が徐々に膨張していくことによって、シート状部材70のうち、留め具260により仮留めされた箇所以外の部分が、上型成形面US側(上側)へと押し上げられていき、それにより、シート状部70材のうちの少なくとも中央側の部分が、湾曲した形状へと変形するものであるが、これに限られない。例えば、上述した各例のシートパッド1の製造方法における、発泡成形ステップの前のシート配置ステップにおいて、留め具260及び/又は他の固定手段(つっかえ棒等)によって、シート状部材70を、所望の湾曲形状(シート状部材70のうちの少なくとも中央側の部分が、少なくとも延在方向LDにおいて、上型成形面US側に凸に湾曲した形状)に予め曲げた状態で、発泡成形用金型200内に配置するようにしてもよい。その場合、その後の発泡成形ステップでは、シート状部材70の周りに発泡樹脂材料50’が充填されるだけで、シート状部材70の形状は変化しないようにするとよい。
【0072】
〔実施例、比較例〕
つぎに、
図41~
図42を参照しながら、本発明のシートパッドにおける実施例、比較例について説明する。
【0073】
<比較例1と比較例2>
図41は、本発明の比較例1、比較例2に係るシートパッド(クッションパッド)について、それぞれ圧縮試験を行った結果(圧縮たわみ曲線)を示している。
図41の圧縮たわみ曲線において、横軸は上下方向のたわみ(mm)であり、縦軸は荷重(N)である。圧縮試験においては、比較例1、比較例2の各試験体に対し、上下方向(厚み方向)に荷重を掛けて圧縮させた。
比較例1、比較例2の各試験体は、それぞれ、外形の寸法と、試験体自体の25%硬度(N)とが、同じであった。ここで、「25%硬度(N)」は、JIS K6400-1 D法に従って測定されるものとする。
比較例1の試験体は、樹脂発泡体のみからなり、内部にシート状部材を有していなかった。樹脂発泡体は、ポリウレタンフォームであった。
一方、比較例2の試験体は、樹脂発泡体と、樹脂発泡体に埋設されたシート状部材と、を有していた。樹脂発泡体は、ポリウレタンフォームであった。シート状部材は、
図6の例のようにメッシュ状に構成されているとともに、その全体にわたって平坦状をなしていた。
図41の圧縮たわみ曲線において、上側の曲線は圧縮時の曲線を示し、下側の曲線は復元時の曲線を示している。
図41から判るように、比較例2は、比較例1に比べ、圧縮時に撓みが小さく、高荷重負荷時の傾きが大きい。そのため、比較例2は、比較例1に比べ、底付き感が大きく、ストローク感が少なく、座り心地が低下した。
【0074】
<比較例3と実施例1>
図42は、本発明の比較例3、実施例1に係るシートパッド(クッションパッド)について、それぞれ圧縮試験を行った結果(圧縮たわみ曲線)を示している。
図42の圧縮たわみ曲線において、横軸は上下方向のたわみ(mm)であり、縦軸は荷重(N)である。圧縮試験においては、比較例3、実施例1の各試験体に対し、上下方向(厚み方向)に荷重を掛けて圧縮させた。
比較例3、実施例1の各試験体は、それぞれ、外形の寸法と、試験体自体の25%硬度とが、同じであった。
比較例3の試験体は、樹脂発泡体のみからなり、内部にシート状部材を有していなかった。樹脂発泡体は、ポリウレタンフォームであった。
一方、実施例1の試験体は、樹脂発泡体と、樹脂発泡体に埋設されたシート状部材と、を有していた。樹脂発泡体は、ポリウレタンフォームであった。シート状部材は、
図6の例のようにメッシュ状に構成されているとともに、
図2~
図5の例のように、そのほぼ全体にわたって、試験体のなすクッションパッドの左右方向及び延在方向のそれぞれにおいて、シートパッドの裏面側に凸に湾曲するものであった。
図42から判るように、実施例1は、比較例3に比べ、圧縮時に大きく撓めて、高荷重負荷時の傾きが緩い。そのため、実施例1は、比較例3に比べ、底付き感が少なく、ストローク感が良好であり、座り心地に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のシートパッド、及び、本発明のシートパッドの製造方法により製造されるシートパッドは、任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッドに用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【符号の説明】
【0076】
1:シートパッド、
10:クッションパッド、 11:メインパッド部(着座部)、 11t:腿下部、 11h:尻下部、 12:サイドパッド部、 13:バックパッド対向部、
20:バックパッド、 21:メインパッド部、 22:サイドパッド部、
30:表皮、
40:ヘッドレスト、
50:樹脂発泡体、 50’:発泡樹脂材料、 51:到達凹部(凹部)、 52a、52b:溝、 53:内側凹部、 54:裏側凹部、 61:連結孔、
70:シート状部材、 70a:左右方向の端部、 70b:延在方向の端部、 71:糸、 72:穴、
100:車両用シート、
200:シートパッドのための発泡成形用金型、
200L:下型、 LS:下型成形面、
200U:上型、 US:上型成形面、 200UI:中子、
210:クッションパッド発泡成形用金型、 211S:メインパッド部(着座部)成形面、 211tS:腿下部成形面、 211hS:尻下部成形面、 212S:サイドパッド部成形面、 213S:バックパッド対向部成形面、
220:バックパッド発泡成形用金型、 221S:メインパッド部(着座部)成形面、 222S:サイドパッド部成形面、
250:凸部、 252a、252b:凸条、 253:内側凸部、 254:裏側凸部、
260:留め具、 261:第1留め具構成部材、 262:埋設部材/第2留め具構成部材、
TD:厚さ方向、 LD:延在方向、
FF:着座者側の面(表面)、 BS:裏面、
H:注入ヘッド