(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】アラートシステムおよびフォークリフト
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
B66F9/24 L
(21)【出願番号】P 2024208367
(22)【出願日】2024-11-29
【審査請求日】2024-12-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅之
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-44864(JP,A)
【文献】特開2022-35123(JP,A)
【文献】特開2004-330998(JP,A)
【文献】特開2018-158779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、
前記フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、
を含むアラートシステムであって、
前記フォークリフトは、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定、前記車両本体の車速の測定および前記操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、
前記アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、前記フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、
前記爪抜き動作中において前記旋回角度が所定の第1角度以上の時に、第1危険行為が生じたと特定する第1特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第1危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行う
ことを特徴とするアラートシステム。
【請求項2】
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の前記後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中において前記旋回角度が所定の第2角度以上の時に、第2危険行為が生じたと特定する第2特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第2危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のアラートシステム。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記第2制御部において前記第1危険行為または前記第2危険行為が生じたと特定された場合に、前記荷役走行動作の制限行為として前記車両本体の車速制限または強制停車を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のアラートシステム。
【請求項4】
前記第2制御部は、
前記センサ部の測定信号が入力される入力部と、
前記第1危険行為の判定条件と第1危険行為IDと前記制限行為とを紐付けした第1危険行為データおよび前記第2危険行為の判定条件と第2危険行為IDと前記制限行為とを紐付けした第2危険行為データを記憶している記憶部と、
前記第1判定処理、前記第1特定処理、前記第2判定処理および前記第2特定処理を行う処理部と、
前記第1危険行為IDおよび前記第2危険行為IDに関する第1信号を前記アラート部に出力し、前記制限行為に関する第2信号を前記第1制御部に出力する出力部と、を備え、
前記アラート部は、前記第1信号が入力されると前記警告を行い、
前記第1制御部は、前記第2信号が入力されると前記制限行為を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のアラートシステム。
【請求項5】
前記アラート部は、音声による前記警告を行う音声アラート部であり、
前記音声アラート部は、
前記第1危険行為IDと第1警告用音声データとを紐付けした第1音声データおよび前記第2危険行為IDと第2警告用音声データとを紐付けした第2音声データを記憶している音声データ記憶部と、
前記第1危険行為IDに関する前記第1信号が入力されると前記第1警告用音声データを再生し、前記第2危険行為IDに関する前記第1信号が入力されると前記第2警告用音声データを再生する音声データ処理部と、
前記音声データ処理部で再生中の音声を出力するスピーカーと、を備える
ことを特徴とする請求項4に記載のアラートシステム。
【請求項6】
前記オペレータの脇見を検知する脇見検知部をさらに含み、
前記脇見検知部は、
前記オペレータを撮影して撮影画像を生成するカメラ部と、
前記撮影画像から前記脇見を検知して検知信号を前記第2制御部に出力する画像処理部と、を備え、
前記第2制御部は、前記爪抜き動作中または前記荷取り動作中において前記検知信号が入力されている時に、第3危険行為が生じたと特定する第3特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第3危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のアラートシステム。
【請求項7】
前記第1制御部は、前記第2制御部において前記第3危険行為が生じたと特定された場合に、前記車両本体の車速制限または強制停車を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のアラートシステム。
【請求項8】
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、
前記フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、
を含むアラートシステムであって、
前記フォークリフトは、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定、前記車両本体の車速の測定および前記操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、
前記アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中において前記旋回角度が所定の第2角度以上の時に、第2危険行為が生じたと特定する第2特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第2危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行う
ことを特徴とするアラートシステム。
【請求項9】
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定および前記車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、前記フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、
前記爪抜き動作中と判定した場合に、前記車両本体の車速制限を行う第1制限処理と、を行う
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項10】
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定および前記車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中と判定した場合に、前記車両本体の車速制限を行う第2制限処理と、を行う
ことを特徴とするフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラートシステムおよびフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォークリフトの稼働状況を管理するためのフォークリフト稼働管理システムが知られている。フォークリフト稼働管理システムは、例えば、データロガーユニット(以下、DLU)を搭載したフォークリフトと、DLUに通信可能に接続されたサーバと、サーバに通信可能に接続された管理装置とで構成される。
【0003】
DLUは、フォークリフトの稼働状況だけでなく、フォークリフトの危険行為もサーバに保存することができる。このため、フォークリフト稼働管理システムの管理者は、管理装置からサーバにアクセスして、フォークリフトの稼働状況および危険行為を確認することができる。
【0004】
一方、危険行為発生時のフォークリフトは、ブザーや警告灯によりオペレータに警告を行う。例えば、路面に段差が存在している場合、特許文献1に記載のフォークリフトは、運転席のインスツルメンタルパネルに設けられた警告灯を光らせたり、ブザー音を鳴らしたりして、オペレータに段差が近くに存在することを知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォークリフトの危険行為には、段差が存在する路面での走行だけでなく、他の様々な行為(例えば、爪抜き動作中の旋回や荷取り動作中の旋回)も含まれる。しかしながら、特許文献1に記載のフォークリフトのように、警告手段がブザーと警告灯だけでは、オペレータはどのような危険行為が検知されたのかをすぐに判断することができない場合がある。その結果、特許文献1に記載のフォークリフトでは、危険行為を抑制できない事態が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その課題は、オペレータが危険行為を容易に判断できるアラートシステムおよび当該危険行為を抑制できるフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアラートシステムは、
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、
前記フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、
を含むアラートシステムであって、
前記フォークリフトは、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定、前記車両本体の車速の測定および前記操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、
前記アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、前記フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、
前記爪抜き動作中において前記旋回角度が所定の第1角度以上の時に、第1危険行為が生じたと特定する第1特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第1危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行うことを特徴とする。
【0009】
前記アラートシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の前記後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中において前記旋回角度が所定の第2角度以上の時に、第2危険行為が生じたと特定する第2特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第2危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行うよう構成できる。
【0010】
前記アラートシステムにおいて、
前記第1制御部は、前記第2制御部において前記第1危険行為または前記第2危険行為が生じたと特定された場合に、前記荷役走行動作の制限行為として前記車両本体の車速制限または強制停車を行うよう構成できる。
【0011】
前記アラートシステムにおいて、
前記第2制御部は、
前記センサ部の測定信号が入力される入力部と、
前記第1危険行為の判定条件と第1危険行為IDと前記制限行為とを紐付けした第1危険行為データおよび前記第2危険行為の判定条件と第2危険行為IDと前記制限行為とを紐付けした第2危険行為データを記憶している記憶部と、
前記第1判定処理、前記第1特定処理、前記第2判定処理および前記第2特定処理を行う処理部と、
前記第1危険行為IDおよび前記第2危険行為IDに関する第1信号を前記アラート部に出力し、前記制限行為に関する第2信号を前記第1制御部に出力する出力部と、を備え、
前記アラート部は、前記第1信号が入力されると前記警告を行い、
前記第1制御部は、前記第2信号が入力されると前記制限行為を行うよう構成できる。
【0012】
前記アラートシステムにおいて、
前記アラート部は、音声による前記警告を行う音声アラート部であり、
前記音声アラート部は、
前記第1危険行為IDと第1警告用音声データとを紐付けした第1音声データおよび前記第2危険行為IDと第2警告用音声データとを紐付けした第2音声データを記憶している音声データ記憶部と、
前記第1危険行為IDに関する前記第1信号が入力されると前記第1警告用音声データを再生し、前記第2危険行為IDに関する前記第1信号が入力されると前記第2警告用音声データを再生する音声データ処理部と、
前記音声データ処理部で再生中の音声を出力するスピーカーと、を備えるよう構成できる。
【0013】
前記アラートシステムは、
前記オペレータの脇見を検知する脇見検知部をさらに含み、
前記脇見検知部は、
前記オペレータを撮影して撮影画像を生成するカメラ部と、
前記撮影画像から前記脇見を検知して検知信号を前記第2制御部に出力する画像処理部と、を備え、
前記第2制御部は、前記爪抜き動作中または前記荷取り動作中において前記検知信号が入力されている時に、第3危険行為が生じたと特定する第3特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第3危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行うよう構成できる。
【0014】
前記アラートシステムにおいて、
前記第1制御部は、前記第2制御部において前記第3危険行為が生じたと特定された場合に、前記車両本体の車速制限または強制停車を行うよう構成できる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るアラートシステムは、
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、
前記フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、
を含むアラートシステムであって、
前記フォークリフトは、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定、前記車両本体の車速の測定および前記操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、
前記アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中において前記旋回角度が所定の第2角度以上の時に、第2危険行為が生じたと特定する第2特定処理と、を行い、
前記アラート部は、前記第2制御部において前記第2危険行為が生じたと特定された場合に前記警告を行うことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定および前記車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、前記フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、
前記爪抜き動作中と判定した場合に、前記車両本体の車速制限を行う第1制限処理と、を行うことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、
操舵輪が設けられた車両本体と、
前記車両本体の前側に設けられたフォークと、
前記フォークの荷重の測定および前記車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、
前記荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの前記車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、前記フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、
前記荷取り動作中と判定した場合に、前記車両本体の車速制限を行う第2制限処理と、を行うよう構成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オペレータが危険行為を容易に判断できるアラートシステムおよび当該危険行為を抑制できるフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るフォークリフトを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るフォークリフトの第1制御部のブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るフォークリフトの第2制御部および音声アラート部のブロック図である。
【
図5】第1実施形態においてフォークリフト、サーバおよび管理装置の関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係るフォークリフトを示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るフォークリフトの第2制御部、脇見検知部および音声アラート部のブロック図である。
【
図8】第3実施形態に係るフォークリフトを示す図である。
【
図9】第3実施形態に係るフォークリフトの第1制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るアラートシステムおよびフォークリフトの実施形態について説明する。
【0021】
図1に、本発明の第1実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Aを示す。第1実施形態に係るアラートシステムは、少なくとも1台のフォークリフト1Aと、フォークリフト1Aに設けられた音声アラート部2とで構成される。
【0022】
フォークリフト1Aは、所定の作業領域において荷役走行動作を行う。荷役走行動作は荷役動作および走行動作を含み、走行動作は旋回動作を含む。作業領域は、例えば、工場または倉庫等の任意の建築物内の領域である。作業領域には、少なくとも1つの棚Rが設けられており、棚Rには、荷物W(パレットを含む)が保管されている(
図4参照)。
【0023】
フォークリフト1Aは、カウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトであり、車両本体10と、荷役装置20と、センサ部30と、第1制御部40と、第2制御部50と、音声アラート部2と、図示しないバッテリとを備える。
【0024】
車両本体10の下部には、左右一対の前輪11および後輪12が設けられている。フォークリフト1Aにおいては、前輪11は、走行用モータによって駆動される駆動輪であり、後輪12は、操舵用モータによって操向(旋回動作)される操舵輪である。
【0025】
車両本体10の上部には、オペレータの運転席13が設けられている。運転席13の前方下部には、アクセル14およびブレーキ15が設けられており、運転席13の前方のダッシュボードには、ハンドル16および荷役操作部17が設けられている。
【0026】
アクセル14は、運転席13のオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたアクセルペダルである。アクセル14は、オン状態(ペダルが踏まれた状態)の時に、ペダルの踏み込み量(アクセル開度)に応じて車両本体10を加速させる一方、オン状態からオフ状態(ペダルが踏まれていない状態)に切り替わると、弱い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる。
【0027】
ブレーキ15は、運転席13のオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたブレーキペダルである。ブレーキ15は、オン状態(ペダルが踏まれた状態)の時に、アクセル14の回生ブレーキよりも強い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる一方、オフ状態の時には、回生ブレーキを生じさせない。
【0028】
ハンドル16は、後述する操舵制御機構42を介して後輪12に接続される。オペレータは、ハンドル16を回転させることで、その回転方向に応じて後輪12の向き(旋回角度)を変えることができる。ハンドル16を回転させていない時(直進時)は、後輪12の旋回角度は0°である。
【0029】
荷役操作部17は、リフトレバーおよびティルトレバーを含む。リフトレバーおよびティルトレバーは、後述する荷役制御機構43を介して荷役装置20に接続される。オペレータは、リフトレバーやティルトレバーを操作することで、荷役装置20を動作させることができる。
【0030】
車両本体10の上部および運転席13の上方には、ヘッドガード18が設けられている。ヘッドガード18は、左右一対のフロントピラーと、左右一対のリアピラーと、ルーフとで構成される。
【0031】
荷役装置20は、マスト21と、リフトブラケット22と、フォーク23と、バックレスト24と、ティルトシリンダ25と、リフトシリンダ26とを備える。
【0032】
マスト21は、車両本体10の前側に設けられ、フォーク23を昇降させる。マスト21は、アウターマストおよびインナーマストを備える。アウターマストは、上下方向に延びる左右一対のガイドレールと、ガイドレールの上端部同士を連結するクロスビームとを備える。インナーマストは、アウターマストのガイドレールの内側に設けられ、アウターマストのガイドレールに沿って昇降する。
【0033】
リフトブラケット22は、フォーク23を支持するとともに、マスト21に沿って昇降する。リフトブラケット22は、リフトチェーンの一端に取り付けられ、リフトチェーンに吊り下げられた状態でインナーマストに沿って昇降する。リフトチェーンの他端は、リフトシリンダ26の上部に設けられたチェーンホイールを介して、アウターマストの下部に取り付けられている。
【0034】
フォーク23は、左右一対のL字型のアームであり、リフトブラケット22の前面に設けられている。フォーク23には、荷物Wが積載される。
【0035】
バックレスト24は、フォーク23に積載された荷物Wが後方に荷崩れするのを防ぐための枠体であり、リフトブラケット22の上部に設けられている。マスト21(インナーマスト)が昇降すると、リフトブラケット22、フォーク23およびバックレスト24も昇降する。
【0036】
ティルトシリンダ25は、マスト21を前後方向に傾動させるための油圧シリンダである。本実施形態では、ティルトレバーを前方向に傾けるとティルトシリンダ25が伸長してマスト21が前傾し、ティルトレバーを後方向に傾けるとティルトシリンダ25が収縮してマスト21が後傾する。ティルトレバーを中立位置(前傾も後傾もさせない位置)に戻すと、マスト21の傾動は停止する。
【0037】
リフトシリンダ26は、マスト21を昇降させるための油圧シリンダである。本実施形態では、リフトレバーを前方向に傾けるとリフトシリンダ26が収縮してインナーマストが下降し、リフトレバーを後方向に傾けるとリフトシリンダ26が伸長してインナーマストが上昇する。リフトレバーを中立位置(前傾も後傾もさせない位置)に戻すと、インナーマストの昇降は停止する。
【0038】
センサ部30は、荷重センサ31と、車速センサ32と、旋回角度センサ33とを含む。荷重センサ31は、フォーク23に積載された荷物Wの荷重を測定する。荷重センサ31としては、例えば、リフトシリンダ26の圧力から荷重の有無を測定する圧力センサを用いることができる。車速センサ32は、車両本体10の車速を測定する。車速センサ32としては、例えば、走行用モータの回転数および回転方向から車両本体10の走行速度を測定する速度センサを用いることができる。旋回角度センサ33は、後輪12の旋回角度を測定する。旋回角度センサ33としては、例えば、ハンドル16の回転角度から後輪12の旋回角度を測定する角度センサ、または、後輪12の旋回軸の回転角度から後輪12の旋回角度を測定する角度センサを用いることができる。
【0039】
また、センサ部30は、
図2に示すアクセルセンサ34と、ブレーキセンサ35とを含む。アクセルセンサ34は、アクセル14のアクセル開度を検知する。ブレーキセンサ35は、ブレーキ15の状態(オン状態/オフ状態)を検知する。
【0040】
第1制御部40は、車両本体10の内部に設けられており、荷役走行動作の制御および第2制御部50との通信を行う。第1制御部40は、
図2に示すように、走行制御機構41と、操舵制御機構42と、荷役制御機構43とを含む。
【0041】
走行制御機構41は、アクセルセンサ34、ブレーキセンサ35および車速センサ32から測定信号を取得し、駆動輪である前輪11を制御する。走行制御機構41は、例えば、走行用コントローラ、走行用インバータ、走行用モータ、油圧回路等を含む。
【0042】
走行制御機構41は、荷役走行動作の制御として、車両本体10の走行速度を所定の目標速度に近づける速度制御を行う。具体的には、走行制御機構41の走行用コントローラは、車速センサ32の測定信号に基づいて車両本体10の走行速度を取得し、アクセルセンサ34の検知信号および/またはブレーキセンサ35の検知信号に基づいて目標速度を算出する。走行用コントローラは、走行速度を目標速度に近づけるため、PI制御またはPID制御を行う。目標速度は、例えば、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出される。設定速度は、走行用コントローラにおいて予め設定された速度である。
【0043】
操舵制御機構42は、ハンドル16の回転方向および回転量に関する検知情報(検知信号)を取得し、操舵輪である後輪12を制御する。操舵制御機構42は、例えば、操舵用モータ、パワーステアリング装置、油圧回路等を含む。なお、操舵制御機構42は、従来のバッテリフォークリフトにおける操舵制御機構と同じ構成である。
【0044】
荷役制御機構43は、荷役操作部17(リフトレバーおよびティルトレバー)から操作信号(測定信号)を取得し、荷役装置20を制御する。荷役制御機構43は、例えば、荷役用コントローラ、荷役用インバータ、荷役用モータ、油圧回路等を含む。なお、荷役制御機構43は、従来のバッテリフォークリフトにおける荷役制御機構と同じ構成である。
【0045】
第2制御部50は、例えば、データロガーユニット(DLU)を含み、ヘッドガード18のフロントピラーに設けられる。
図3に示すように、第2制御部50は、入力部51と、記憶部52と、処理部53と、出力部54とを備える。
【0046】
入力部51は、センサ部30の測定信号を取得する。具体的には、入力部51は、荷重センサ31からフォーク23の荷重の有無に関する測定信号を取得し、車速センサ32から車両本体10の車速に関する測定信号を取得し、旋回角度センサ33から後輪12の旋回角度に関する測定信号を取得する。
【0047】
記憶部52は、固有の危険行為ID(以下、ID)と、予め定義された危険行為と、危険行為の判定条件と、荷役走行動作の制限行為とを紐付けした複数の危険行為データを記憶している。本実施形態では、IDを数字としているが、IDは、文字や記号でもよく、文字、記号、数字の組み合わせでもよい。
【0048】
オペレータや当該システムの管理者は、記憶部52に記憶されている危険行為データの内容を変更することができ、新たな危険行為データを追加することもできる。例えば、複数の危険行為データに、下記の表1に示す2つの危険行為データを含めることができる。
【0049】
【0050】
ID「001」の危険行為データは、ID「001」に、危険行為「爪抜き動作中の旋回」と、判定条件「爪抜き動作中、旋回あり」と、制限行為「車速制限」とを紐付けしたものである。危険行為「爪抜き動作中の旋回」は、フォークリフト1Aが爪抜き動作中に旋回動作を行うという危険行為(本発明の「第1危険行為」に相当)を定義したものである。上記判定条件は、爪抜き動作の検知中に旋回動作を検知したことを、当該危険行為の判定条件としたものである。制限行為「車速制限」は、上記判定条件を満たす場合に、第1制御部40が車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行うことを定義したものである。すなわち、フォークリフト1Aは、上限速度を超える速度での走行が禁止される。
【0051】
ID「002」の危険行為データは、ID「002」に、危険行為「荷取り動作中の旋回」と、判定条件「荷取り動作中、旋回あり」と、制限行為「車速制限」とを紐付けしたものである。危険行為「荷取り動作中の旋回」は、フォークリフト1Aが荷取り動作中に旋回動作を行うという危険行為(本発明の「第2危険行為」に相当)を定義したものである。上記判定条件は、荷取り動作の検知中に旋回動作を検知したことを、当該危険行為の判定条件としたものである。制限行為「車速制限」は、上記判定条件を満たす場合に、第1制御部40が車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行うことを定義したものである。
【0052】
なお、ID「001」および/またはID「002」の制限行為「車速制限」は、制限行為「強制停車」に変更してもよい。制限行為「強制停車」は、上記判定条件を満たす場合に、第1制御部40が車両本体10を減速させて最終的に停止させることを定義したものである。例えば、第1制御部40は、車両本体10の目標速度を、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出する。アクセル開度は、アクセル14がオフ状態の場合に0[%]となり、アクセル14がオン状態になると、アクセル14の踏み込み量に比例して増加し、最大で100[%]となる。第1制御部40は、上記の制限行為を実行する場合、設定速度を段階的に絶対値の小さな値に変更して最終的にゼロする。
【0053】
また、記憶部52は、IDと危険行為と判定条件とを紐付けした(荷役走行動作の制限行為を紐付けしていない)危険行為データを記憶してもよい。当該危険行為には、例えば、シートベルト未装着、バッテリ残量低下、パーキングブレーキかけ忘れ等の行為が該当する。
【0054】
処理部53は、第1判定処理、第1特定処理、第2判定処理および第2特定処理を行うことで、各危険行為の判定条件が満たされているか否かの判定を行い、判定条件を満たす危険行為(危険行為データ)を特定する。
【0055】
第1判定処理は、爪抜き動作中を判定するための処理である。第1判定処理を開始した処理部53は、入力部51が取得した荷重センサ31の測定信号に基づいて、荷重が所定の第1閾値以上の状態から第1閾値未満の状態に変化したか否かの判定を行う。第1閾値は、荷重ありの状態と荷重なしの状態とを区別できる値に設定される。例えば、フォーク23で保持している荷物Wを棚Rに置くと、フォーク23は荷重ありの状態から荷重なしの状態に変化するので、荷重センサ31の測定信号(測定値)は第1閾値以上の状態から第1閾値未満の状態に変化する。
【0056】
荷重が第1閾値未満の状態に変化した場合、処理部53は、入力部51が取得した車速センサ32の測定信号に基づいて、荷重が第1閾値未満の状態に変化した時点からの車両本体10の後進距離を算出する。それとともに、処理部53は、荷重が第1閾値未満の状態で、かつ、上記の後進距離が予め設定された第1距離以内か否かの判定を行う。ここで、第1距離は、例えば、フォーク23の前後方向の寸法よりも大きい値に設定される。言い換えれば、第1距離は、荷物Wのパレットからフォーク23が完全に抜けたかどうかを判定できる値に設定される。なお、第1距離はフォーク23の前後方向の寸法以下に設定してもよい。
【0057】
上記のとおり、第1判定処理時の処理部53は、荷重が第1閾値未満の状態で、かつ、後進距離が第1距離以内の場合、フォークリフト1Aの状態が爪抜き動作中であると判定する。
【0058】
第1特定処理は、危険行為「爪抜き動作中の旋回」を特定するための処理である。第1特定処理は、第1判定処理において爪抜き動作中であると判定されている時に行われてもよい。第1判定処理の一部に、第1特定処理が含まれていてもよい。
【0059】
第1特定処理を開始した処理部53は、入力部51が取得した旋回角度センサ33の測定信号に基づいて、爪抜き動作中に後輪12の旋回動作が行われたか否かの判定を行う。処理部53は、例えば、後輪12の旋回角度が所定の第1角度以上の場合に、後輪12の旋回動作が行われたと判定する。第1角度は、0°よりも大きい任意の値に設定することができる。
【0060】
上記のとおり、第1特定処理時の処理部53は、荷重が第1閾値未満かつ後進距離が第1距離以内の状態で、旋回角度が第1角度以上の場合に、危険行為「爪抜き動作中の旋回」すなわちID「001」の危険行為データを特定する。
【0061】
第2判定処理は、荷取り動作中を判定するための処理である。第2判定処理を開始した処理部53は、入力部51が取得した荷重センサ31の測定信号に基づいて、荷重が所定の第2閾値未満の状態から第2閾値以上の状態に変化したか否かの判定を行う。第2閾値は、荷重ありの状態と荷重なしの状態とを区別できる値に設定される。例えば、棚Rに置かれている荷物Wをフォーク23で持ち上げると、フォーク23は荷重なしの状態から荷重ありの状態に変化するので、荷重センサ31の測定信号(測定値)は第2閾値未満の状態から第2閾値以上の状態に変化する。なお、第2閾値は、第1閾値と同じ値に設定されてもよい。
【0062】
荷重が第2閾値以上の状態に変化した場合、処理部53は、入力部51が取得した車速センサ32の測定信号に基づいて、荷重が第2閾値以上の状態に変化した時点からの車両本体10の後進距離を算出する。それとともに、処理部53は、荷重が第2閾値以上の状態で、かつ、上記の後進距離が予め設定された第2距離以内か否かの判定を行う。ここで、第2距離は、
図4に示すように、棚Rの載置スペースの前後方向における寸法Lよりも大きい値に設定される。言い換えれば、第2距離は、棚Rから荷物Wが完全に取り出されたかどうかを判定できる値に設定される。なお、第2距離は棚Rの載置スペースの前後方向における寸法L以下に設定してもよい。
【0063】
上記のとおり、第2判定処理時の処理部53は、荷重が第2閾値以上の状態で、かつ、後進距離が第2距離以内の場合、フォークリフト1Aの状態が荷取り動作中であると判定する。
【0064】
第2特定処理は、危険行為「荷取り動作中の旋回」を特定するための処理である。第2特定処理は、第2判定処理において荷取り動作中であると判定されている時に行われてもよい。第2判定処理の一部に、第2特定処理が含まれていてもよい。
【0065】
第2特定処理を開始した処理部53は、入力部51が取得した旋回角度センサ33の測定信号に基づいて、荷取り動作中に後輪12の旋回動作が行われたか否かの判定を行う。処理部53は、例えば、後輪12の旋回角度が所定の第2角度以上の場合に、後輪12の旋回動作が行われたと判定する。第2角度は、0°よりも大きい任意の値に設定することができる。
【0066】
上記のとおり、第2特定処理時の処理部53は、荷重が第2閾値以上かつ後進距離が第2距離以内の状態で、旋回角度が第2角度以上の場合に、危険行為「荷取り動作中の旋回」すなわちID「002」の危険行為データを特定する。
【0067】
出力部54は、処理部53が特定した危険行為データのIDに関する第1信号を音声アラート部2に送信するとともに、当該IDに紐付けされている制限行為に関する第2信号を第1制御部40に送信する。第1信号および第2信号の送信タイミングは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
音声アラート部2は、ヘッドガード18のルーフの下部に設けられており、音声データ記憶部2Aと、音声データ処理部2Bと、スピーカー2Cとを備える。音声アラート部2は、フォークリフト1Aのオペレータに対して音声による警告(アラート)を行う。
【0069】
本発明の音声は、オペレータに情報を伝達することが可能な言語音声を含む音声である。本発明の音声は、ブザー音のような効果音単独のものは含まないが、言語音声の前または後であれば効果音を含めてもよい。
【0070】
音声データ記憶部2Aは、IDに警告用の音声のデータ(以下、警告用音声データ)を紐付けした複数の音声データを記憶している。複数の音声データには、例えば、下記の表2に示す2つの音声データが含まれる。
【0071】
【0072】
ID「001」の音声データは、ID「001」に、警告用音声データ「旋回しないでください。フォーク引き抜き中です。」を紐付けしたものである。ID「001」の警告用音声データには、オペレータが危険行為の構成要件である「旋回動作」および「爪抜き動作」を連想する言葉(情報)である「旋回」および「フォーク引き抜き」が含まれている。
【0073】
ID「002」の音声データは、ID「002」に、警告用音声データ「旋回しないでください。荷取り中です。」を紐付けしたものである。ID「002」の警告用音声データには、オペレータが危険行為の構成要件である「旋回動作」および「荷取り動作」を連想する言葉(情報)である「旋回」および「荷取り」が含まれている。
【0074】
オペレータや当該システムの管理者は、音声データ記憶部2Aに記憶されている警告用音声データを変更することができ、新たな音声データを追加することもできる。音声データ記憶部2Aとして、例えば、警告用音声データの書き換えが可能なメモリーカードを用いることができる。メモリーカードは、例えば、SDカードやUSBメモリである。オペレータや管理者は、例えば、警告用音声データをWAV形式等のファイル形式で生成し、音声データ記憶部2Aに記憶させることができる。
【0075】
音声データ処理部2Bは、出力部54から出力される第1信号を取得し、音声データ記憶部2Aにおいて第1信号のIDに紐付けされている警告用音声データを再生する。例えば、出力部54からID「001」に関する第1信号を受信した場合、音声データ処理部2Bは、ID「001」の警告用音声データ「旋回しないでください。フォーク引き抜き中です。」を再生する。音声データ処理部2Bは、例えば、ボイスプレーヤーモジュールを含む。
【0076】
スピーカー2Cは、音声データ処理部2Bに接続され、音声データ処理部2Bで再生中の警告用音声データの音声を出力する。例えば、音声データ処理部2BがID「001」の警告用音声データ「旋回しないでください。フォーク引き抜き中です。」を再生中の場合、スピーカー2Cは、「旋回しないでください。フォーク引き抜き中です。」という音声を出力する。
【0077】
以上のように、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Aでは、音声アラート部2がオペレータに対して音声による警告(アラート)を行う。このため、オペレータは、どの危険行為が検知されたのかを容易に判断できる。例えば、オペレータは、ID「001」やID「002」の危険行為が検知されたことを、音声アラート部2の音声に含まれる情報を聞くことで、すぐに判断でき、適切な対応を取ることができる。
【0078】
また、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Aでは、定義された危険行為に荷役走行動作の制限行為が紐付けされているので、仮にオペレータの対応が遅れたとしても、上記制限行為に基づいて第1制御部40が荷役走行動作の制限を行う。このため、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Aでは、定義された危険行為を抑制することができる。
【0079】
(稼働管理システム)
図5に示すように、第1実施形態に係るアラートシステムは、サーバ3および管理装置4を含み、フォークリフト1Aの稼働管理システムを構成してもよい。
【0080】
サーバ3は、フォークリフト1Aに通信可能に接続される。サーバ3は、例えば、物理サーバでもよいし、クラウドのような仮想サーバでもよい。フォークリフト1Aは、音声アラート部2による警告用音声データの再生中に、センサ部30に含まれるドライブレコーダーで撮影して生成した動画データを、サーバ3にアップロード(保存)することができる。
【0081】
管理装置4は、サーバ3に通信可能に接続される。管理装置4は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)でもよいし、スマートフォンでもよい。管理装置4は、サーバ3から上記動画データを取得可能である。これにより、アラートシステムの管理者は、警告用音声データの再生時における動画データを管理装置4において確認することができる。
【0082】
[第2実施形態]
図6に、本発明の第2実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Bを示す。第2実施形態に係るアラートシステムは、少なくとも1台のフォークリフト1Bと、フォークリフト1Bに設けられた音声アラート部2とで構成される。
【0083】
フォークリフト1Bは、脇見検知部60を備える点、および、脇見検知部60に関連する制御を行う点を除いて、第1実施形態のフォークリフト1Aと同じ構成である。
【0084】
脇見検知部60は、運転席13のオペレータの脇見を検知するためのものであり、例えば、ヘッドガード18のルーフの下部に設けられている。
図7に示すように、脇見検知部60は、カメラ部61と、画像処理部62とを備える。
【0085】
カメラ部61は、オペレータを撮影して撮影画像を生成する。画像処理部62は、カメラ部61が生成した撮影画像に対して、公知かつ任意の画像処理を行い、オペレータの脇見を検知する。画像処理部62は、オペレータの顔の向きや視線の方向からオペレータの脇見を検知することができる。
【0086】
画像処理部62は、例えば、オペレータの顔の向きが車両本体10の前側を向いていない場合、または、オペレータの視線が車両本体10の前側を向いていない場合に、オペレータの脇見を検知してもよい。脇見の検知範囲を広げるのであれば、上下方向も考慮し、オペレータの顔の向きが荷物Wに向いていない場合、または、オペレータの視線が荷物Wに向いていない場合に、画像処理部62がオペレータの脇見を検知してもよい。
【0087】
入力部51は、オペレータの脇見を検知した画像処理部62から、当該脇見の検知に関する検知信号を取得する。
【0088】
記憶部52は、ID「001」の危険行為データおよびID「002」の危険行為データに加えて、下記の表3に示すID「003」の危険行為データおよびID「004」の危険行為データを予め記憶している。
【0089】
【0090】
ID「003」の危険行為データは、ID「003」に、危険行為「爪抜き動作中の脇見」と、判定条件「爪抜き動作中、脇見あり」と、制限行為「車速制限」とを紐付けしたものである。危険行為「爪抜き動作中の脇見」は、フォークリフト1Aの爪抜き動作中にオペレータが脇見を行うという危険行為(本発明の「第3危険行為」に相当)を定義したものである。上記判定条件は、爪抜き動作の検知中に脇見を検知したことを、当該危険行為の判定条件としたものである。制限行為「車速制限」は、上記判定条件を満たす場合に、第1制御部40が車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行うことを定義したものである。
【0091】
ID「004」の危険行為データは、ID「004」に、危険行為「荷取り動作中の脇見」と、判定条件「荷取り動作中、脇見あり」と、制限行為「車速制限」とを紐付けしたものである。危険行為「荷取り動作中の脇見」は、フォークリフト1Aの荷取り動作中にオペレータが脇見を行うという危険行為(本発明の「第3危険行為」に相当)を定義したものである。上記判定条件は、荷取り動作の検知中に脇見を検知したことを、当該危険行為の判定条件としたものである。制限行為「車速制限」は、上記判定条件を満たす場合に、第1制御部40が車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行うことを定義したものである。
【0092】
なお、ID「003」および/またはID「004」の制限行為「車速制限」は、第1実施形態と同様に、制限行為「強制停車」に変更してもよい。
【0093】
処理部53は、脇見検知部60に関連する制御として第3特定処理を行うことで、脇見に関する危険行為の判定条件が満たされているか否かの判定を行い、判定条件を満たす危険行為(危険行為データ)を特定する。
【0094】
第3特定処理は、危険行為「爪抜き動作中の脇見」を特定するための処理と、危険行為「荷取り動作中の脇見」を特定するための処理とを含む。第3特定処理は、第1判定処理において爪抜き動作中であると判定されている時、または、第2判定処理において荷取り動作中であると判定されている時に行われてもよい。第1判定処理および第2判定処理の一部に、第3特定処理が含まれていてもよい。
【0095】
第3特定処理を開始した処理部53は、第1判定処理において爪抜き動作中であると判定した時に、入力部51が画像処理部62から検知信号を取得していると、危険行為「爪抜き動作中の脇見」すなわちID「003」の危険行為データを特定する。一方、処理部53は、第2判定処理において荷取り動作中であると判定した時に、入力部51が画像処理部62から検知信号を取得していると、危険行為「荷取り動作中の脇見」すなわちID「004」の危険行為データを特定する。
【0096】
出力部54は、処理部53が特定した危険行為データのIDに関する第1信号を音声アラート部2に送信するとともに、当該IDに紐付けされている制限行為に関する第2信号を第1制御部40に送信する。第1信号および第2信号の送信タイミングは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
音声データ記憶部2Aは、下記の表4に示すID「003」の音声データおよびID「004」の音声データをさらに含む。
【0098】
【0099】
ID「003」の音声データは、ID「003」に、警告用音声データ「脇見しないでください。」を紐付けしたものである。ID「003」の警告用音声データには、オペレータが危険行為の構成要件である「脇見」を連想する言葉(情報)が含まれている。ID「004」の音声データも同様である。
【0100】
以上のように、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Bでは、音声アラート部2がオペレータに対して音声による警告(アラート)を行う。このため、オペレータは、どの危険行為が検知されたのかを容易に判断できる。例えば、オペレータは、ID「001」~ID「004」のどの危険行為が検知されたのかを、音声アラート部2の音声に含まれる情報を聞くことで、すぐに判断でき、適切な対応を取ることができる。
【0101】
また、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Bでは、定義された危険行為に荷役走行動作の制限行為が紐付けされているので、仮にオペレータの対応が遅れたとしても、上記制限行為に基づいて第1制御部40が荷役走行動作の制限を行う。このため、本実施形態に係るアラートシステムおよびフォークリフト1Bでは、定義された危険行為を抑制することができる。
【0102】
(警告用音声データの作動頻度)
上記の例では、警告用音声データの作動頻度を1回と想定しているが、作動頻度は適宜変更することができる。
【0103】
例えば、音声データ記憶部2Aで、IDに再生回数または再生時間を紐付けしてもよい。再生回数を紐付けした場合、指定した再生回数だけ警告用音声データを再生させることができ、再生時間を紐付けした場合、指定した再生時間に繰り返し警告用音声データを再生させることができる。
【0104】
一方で、警告用音声データを複数回再生させると、オペレータが不快に感じる場合がある。この場合、記憶部52または音声データ記憶部2Aにおいて、IDに危険レベルを紐付けしてもよい。音声データ処理部2Bは、危険レベルが所定の閾値レベルを超えている場合、警告用音声データを複数回再生し、かつ危険レベルが高いほど再生回数を増やすことが好ましい。例えば、危険レベルを危険レベル1、危険レベル2、危険レベル3と分類し、危険レベル1は再生回数1回、危険レベル2は再生回数2回、危険レベル3は再生回数3回というように、音声データ記憶部2Aにおいて、IDに危険レベルおよび再生回数を紐付けしてもよい。
【0105】
また、記憶部52において、危険行為IDに第2信号の出力タイミングが紐付けされている場合、出力タイミングは、「第1信号を出力するタイミングの所定時間経過後」とすることができる。ここで、所定時間については、危険レベルに応じて適宜設定することができる。
【0106】
上記のように危険レベルを危険レベル1、危険レベル2、危険レベル3と分類した場合、所定時間については、危険レベル1は第1所定時間とし、危険レベル2は第1所定時間よりも短い第2所定時間とし、危険レベル3は第2所定時間よりも短い第3所定時間とすることができる。第3所定時間は、ゼロでもよい。例えば、ID「001」、ID「002」の危険行為を危険レベル3とし、ID「003」、ID「004」の危険行為を危険レベル1としてもよい。処理部53がID「003」またはID「004」の危険行為を特定した場合、音声アラート部2がオペレータに対して音声による警告(アラート)を行い、第1所定時間を経過してもID「003」またはID「004」の危険行為が検知される場合、第1制御部40は、第2信号に基づいて制限行為を実行してもよい。
【0107】
上記のように危険行為の危険レベルに応じて第2信号の出力タイミングを変更することで、フォークリフト1Bの作業効率の低下を最小限に抑えつつ、危険行為を抑制して安全を確保することができる。
【0108】
[第3実施形態]
図8に、本発明の第3実施形態に係るフォークリフト1Cを示す。フォークリフト1Cは、第1実施形態および/または第2実施形態に係るアラートシステムに含めることができる。
【0109】
フォークリフト1Cは、第1制御部40の代わりに第1制御部40’(本発明の「制御部」に相当)を備える点、センサ部30が旋回角度センサ33を含まない点、第2制御部50および音声アラート部2を備えていない点を除いて、第1実施形態のフォークリフト1Aと同じ構成である。
【0110】
図9に示すように、第1制御部40’は、走行制御機構41の代わりに走行制御機構41’を備える点を除いて、第1実施形態と同じ構成である。
【0111】
走行制御機構41’は、第1実施形態の走行制御機構41の制御に加えて、荷重センサ31の測定信号(測定値)に基づく制御を行う。当該制御には、第1判定処理、第1制限処理、第2判定処理および第2制限処理が含まれる。
【0112】
第1判定処理は、第1実施形態で処理部53が行う第1判定処理と同様の処理である。すなわち、走行制御機構41’は、荷重が第1閾値未満の状態で、かつ、後進距離が第1距離以内の場合、フォークリフト1Cの状態が爪抜き動作中であると判定する。
【0113】
第1制限処理は、フォークリフト1Cの車速制限に関する処理である。走行制御機構41’は、フォークリフト1Cの状態が爪抜き動作中であると判定した場合、フォークリフト1Cの車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行う。これにより、フォークリフト1Cは、爪抜き動作中、上限速度を超える速度での走行が禁止される。
【0114】
第2判定処理は、第1実施形態で処理部53が行う第2判定処理と同様の処理である。すなわち、走行制御機構41’は、荷重が第2閾値以上の状態で、かつ、後進距離が第2距離以内の場合、フォークリフト1Cの状態が荷取り動作中であると判定する。
【0115】
第2制限処理は、フォークリフト1Cの車速制限に関する処理である。走行制御機構41’は、フォークリフト1Cの状態が荷取り動作中であると判定した場合、フォークリフト1Cの車速制限(例えば、上限速度4[km/h])を行う。これにより、フォークリフト1Cは、荷取り動作中、上限速度を超える速度での走行が禁止される。
【0116】
本実施形態のフォークリフト1Cによれば、実際に旋回動作が行われる前に車両本体10の車速制限を行うので、オペレータの安全意識を向上させることができ、危険行為である「爪抜き動作中の旋回」または「荷取り動作中の旋回」を抑制できる。なお、フォークリフト1Cと同様に、フォークリフト1Aにおいても、旋回動作が行われる前に車速制限を行うことができる。この場合、第2制御部50が上記の危険行為を特定する前に、第1制御部40が制限行為(車速制限)を行う。
【0117】
以上、本発明に係るアラートシステムおよびフォークリフトの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0118】
本発明に係るアラートシステムは、所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、を含むアラートシステムであって、フォークリフトは、操舵輪が設けられた車両本体と、車両本体の前側に設けられたフォークと、フォークの荷重の測定、車両本体の車速の測定および操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、第2制御部は、荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、爪抜き動作中において旋回角度が所定の第1角度以上の時に、第1危険行為が生じたと特定する第1特定処理と、を行い、アラート部は、第2制御部において第1危険行為が生じたと特定された場合に警告を行うのであれば、適宜構成を変更できる。
【0119】
また、本発明に係るアラートシステムは、所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトと、フォークリフトのオペレータに対して警告を行うアラート部と、を含むアラートシステムであって、フォークリフトは、操舵輪が設けられた車両本体と、車両本体の前側に設けられたフォークと、フォークの荷重の測定、車両本体の車速の測定および操舵輪の旋回角度の測定を行うセンサ部と、荷役走行動作の制御を行う第1制御部と、アラート部の制御を行う第2制御部と、を備え、第2制御部は、荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、荷取り動作中において旋回角度が所定の第2角度以上の時に、第2危険行為が生じたと特定する第2特定処理と、を行い、アラート部は、第2制御部において第2危険行為が生じたと特定された場合に警告を行うのであれば、適宜構成を変更できる。
【0120】
アラート部は、音声で警告を行う音声アラート部が好ましいが、音声以外の手段で警告を行ってもよい。アラート部は、例えば、警告灯を光らせたり、音声を含まない効果音(例えば、ブザー音や電子音)を鳴らしたりして、オペレータに警告を行ってもよい。危険行為に応じて、光の色または状態、効果音の種類等を異ならせることで、オペレータは危険行為を判断できる。
【0121】
上記実施形態では、フォークリフト1A、1Bが音声アラート部2を備えていたが、本発明の音声アラート部は、フォークリフト1A、1B以外の場所(例えば、作業領域の棚R)に設けることができる。
【0122】
上記実施形態では、フォークリフト1Bが脇見検知部60を備えていたが、本発明の脇見検知部は、フォークリフト1B以外の場所(例えば、作業領域の棚R)に設けることができる。
【0123】
本発明に係るフォークリフトは、所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、操舵輪が設けられた車両本体と、車両本体の前側に設けられたフォークと、フォークの荷重の測定および車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、制御部は、荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの車両本体の後進距離が所定の第1距離以内の時に、フォークの爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、爪抜き動作中と判定した場合に、車両本体の車速制限を行う第1制限処理と、を行うのであれば、適宜構成を変更できる。
【0124】
また、本発明に係るフォークリフトは、所定の作業領域において荷役走行動作を行うフォークリフトであって、操舵輪が設けられた車両本体と、車両本体の前側に設けられたフォークと、フォークの荷重の測定および車両本体の車速の測定を行うセンサ部と、荷役走行動作の制御を行う制御部と、を備え、制御部は、荷重が所定の第2閾値以上の状態に変化した時点からの車両本体の後進距離が所定の第2距離以内の時に、フォークによる荷取り動作中と判定する第2判定処理と、荷取り動作中と判定した場合に、車両本体の車速制限を行う第2制限処理と、を行うのであれば、適宜構成を変更できる。
【0125】
本発明に係るフォークリフトは、上記実施形態ではカウンターバランスタイプのフォークリフトを例に挙げて説明したが、リーチタイプのフォークリフトでもよいし、別のタイプのフォークリフトでもよい。
【符号の説明】
【0126】
1A、1B、1C フォークリフト
2 音声アラート部
10 車両本体
11 前輪
12 後輪
13 運転席
14 アクセル
15 ブレーキ
16 ハンドル
17 荷役操作部
18 ヘッドガード
20 荷役装置
21 マスト
22 リフトブラケット
23 フォーク
24 バックレスト
25 ティルトシリンダ
26 リフトシリンダ
30 センサ部
31 荷重センサ
32 車速センサ
33 旋回角度センサ
40、40’ 第1制御部
50 第2制御部
60 脇見検知部
【要約】
【課題】オペレータが危険行為を容易に判断できるアラートシステムを提供する。
【解決手段】フォークリフト1Aとアラート部2とを含むアラートシステムであって、フォークリフト1Aは、フォーク23の荷重の測定、車速の測定および後輪12の旋回角度の測定を行うセンサ部30と、第1制御部40と、第2制御部50とを備え、第2制御部50は、荷重が所定の第1閾値未満の状態に変化した時点からの車両本体10の後進距離が所定の第1距離以内の時に、フォーク23の爪抜き動作中と判定する第1判定処理と、爪抜き動作中において旋回角度が所定の第1角度以上の時に、第1危険行為が生じたと特定する第1特定処理と、を行い、アラート部2は、第2制御部50において第1危険行為が生じたと特定された場合に警告を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1