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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20250114BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H61/662
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024509230
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011614
(87)【国際公開番号】W WO2023182451
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022047611
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】児島 謙治
(72)【発明者】
【氏名】東山 晃
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健二
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-59614(JP,A)
【文献】国際公開第2022/009568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
F16H 61/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリプーリとセカンダリプーリを有するバリエータと、
前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに作動用のオイルを供給するコントロールバルブと、を有する動力伝達装置であって、
前記コントロールバルブは、水平方向に移動する弁体を持つ調圧弁を複数有しており、
前記コントロールバルブは、前記調圧弁を上下方向に並べる向きで配置されており、
前記セカンダリプーリの回転軸は、前記プライマリプーリの回転軸よりも前記上下方向の上側に位置すると共に、
前記セカンダリプーリに対する供給圧を調整する第2調圧弁は、前記プライマリプーリに対する供給圧を調整する第1調圧弁よりも前記上下方向の上側に位置する、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記プライマリプーリは、前記セカンダリプーリと前記コントロールバルブの間に位置しており、
前記セカンダリプーリ用の第2油路が、前記プライマリプーリの支持壁とは別の壁部に設けられており、
前記壁部は、前記回転軸方向から見て前記プライマリプーリと重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記壁部は、前記第2油路が設けられた領域の前記回転軸方向の厚みが、他の領域の前記回転軸方向の厚みよりも厚くなっている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項において、
オイルポンプから供給される元圧からライン圧を調圧するライン圧調圧弁を、有しており、
前記コントロールバルブでは、前記上下方向における前記第1調圧弁の下側に、前記ライン圧調圧弁が位置している、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、前記ライン圧調圧弁の高さ位置は、
前記動力伝達装置の非駆動時にケース内に貯留されたオイルに、前記ライン圧調圧弁の少なくとも一部が油没する高さ位置に設定されている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1調圧弁の高さ位置は、
前記ケース内に貯留されるオイルが、前記動力伝達装置の非駆動時よりも高い温度である時に、前記第1調圧弁の少なくとも一部が油没する高さ位置に設定されている、動力伝達装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧制御装置が鉛直方向に沿う起立姿勢で配置された車両用駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この車両用駆動装置では、駆動伝達機構を収容するケース内の側部に、油圧制御装置が設けられている。水平線方向から見て油圧制御装置は、駆動伝達機構に重なる位置関係で設けられている。
【0005】
ここで、油圧制御装置が、鉛直線方向における駆動伝達機構の下方に配置されている場合には、鉛直線方向から見て駆動伝達機構の各構成要素は、他の構成要素と大きく重なることなく、油圧制御装置と重なる位置関係で配置される。
【0006】
一方、油圧制御装置が起立姿勢で配置されている場合、水平線方向から見て駆動伝達機構の構成要素には、他の構成要素と重なりつつ、油圧制御装置と重なる位置関係で配置されるものがある。
ここで、油圧制御装置(コントロールバルブ)は、駆動伝達機構の構成要素の作動用のオイルを調圧する。各構成要素には、調圧されたオイルが、ケース内に設けた油路を介して供給される。
そのため、油圧制御装置が起立姿勢で配置されている場合、ケースにおける油路のレイアウト(取り回し)が複雑となる。
【0007】
そこで、油圧制御装置が鉛直方向に沿う起立姿勢、すなわち縦置きされている場合の油路のレイアウトが複雑化する程度を抑えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、
プライマリプーリとセカンダリプーリを有するバリエータと、
前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに作動用のオイルを供給するコントロールバルブと、を有する動力伝達装置であって、
前記コントロールバルブは、水平方向に移動する弁体を持つ調圧弁を複数有しており、
前記コントロールバルブは、前記調圧弁を上下方向に並べる向きで配置されており、
前記セカンダリプーリの回転軸は、前記プライマリプーリの回転軸よりも前記上下方向の上側に位置すると共に、
前記セカンダリプーリに対する供給圧を調整する第2調圧弁は、前記プライマリプーリに対する供給圧を調整する第1調圧弁よりも前記上下方向の上側に位置する、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、油路のレイアウトが複雑化する程度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ケースを第2カバー側から見た模式図である。
図3図3は、ケースを第1カバー側から見た模式図である。
図4図4は、収容部を車両前方側から見た図である。
図5図5は、コントロールバルブ内の油圧制御回路の一例と、バリエータへのオイルの供給経路を説明する図である。
図6図6は、動力伝達装置の駆動時におけるオイルの移動と、第2室に貯留されるオイルOLの高さを説明する図である。
図7図7は、ダミーカバーを説明する図である。
図8図8は、ケース内油路と、プライマリ調圧弁およびセカンダリ調圧弁との位置関係を説明する図である。
図9図9は、変形例にかかる動力伝達装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0012】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0015】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0016】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0017】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0018】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0019】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0020】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0021】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
図1に示すように、動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
ハウジングHSの内部には、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
ここで、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5が、発明における動力伝達機構の構成要素である。
【0023】
車両Vに搭載された動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0024】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0025】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0026】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0027】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3上(第3軸)で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸)上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1の回転軸Xとも表記する。
【0028】
図2は、ケース6を、第2カバー8側から見た状態を示す模式図である。
図2に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
【0029】
図1に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止されて、閉じられた第1室S1が形成される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止されて、閉じられた第3室S3が形成される。
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
【0030】
ケース6では、周壁部61の車両前方側の外周に、第2室S2を形成する収容部68が付設されている。収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68の開口が第3カバー9で封止されて、閉じられた第2室S2が形成される。
第2室S2には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが設けられている。
【0031】
図2に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられている。隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。
【0032】
隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を間隔をあけて囲む周壁部641が、設けられている。図2において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(図1における第2カバー8側)に突出している。
【0033】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(図1参照)が回転可能に支持されている。
【0034】
図2に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。図2において支持壁部632は、紙面手前側(図1における第2カバー8側)に突出している。
支持壁部632の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(図1参照)が回転可能に支持される。
【0035】
図2に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1、X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0036】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(図1参照)が、回転可能に支持されている。
図1に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4回りに回転する。
【0037】
ケース6では、ファイナルギア45よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域が、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの収容部67となっている。
収容部67は、ケース6(ハウジングHS)内の下部に位置している。そのため、収容部67には、動力伝達機構の構成要素の駆動や冷却に用いられるオイルOLが貯留される。
収容部67は、有底の空間であり、収容部67では、図2における紙面奥側に底壁となる隔壁部62が位置している。
【0038】
収容部67では、ストレーナ10が、オイルOLの吸込口11を、ケース6の底壁部613に対向させて設けられている。
ストレーナ10の第1接続部105は、メカオイルポンプMOP側の接続口120に挿入されている(図2参照)。ストレーナ10の第2接続部106は、隔壁部62内の油路626に接続されている。そのため、ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPと隔壁部62の2箇所で支持されている。メカオイルポンプMOPは、隔壁部62内の油路628を介してコントロールバルブCVに連絡している。
よって、ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPと隔壁部62内の油路628を介してコントロールバルブCVに連絡している。ストレーナ10は、隔壁部62内の油路626を介して、電動オイルポンプEOPに連絡している。
【0039】
図3は、ケース6を第1カバー7側から見た平面図である。なお、図3では、開口部620の領域に交差したハッチングを付している。
図3に示すように、ケース6の第1カバー7側の面では、第3室S3を囲む周壁部61の内側に、隔壁部62が位置している。周壁部61の紙面手前側の端面は、第1カバー7との接合部612となっている。接合部612は、第3室S3を全周に亘って囲んでいる。
【0040】
周壁部61の内側では、開口部620と、貫通孔621、622が、隔壁部62に設けられている。
開口部620は、車両前方側の周壁部61の近傍で、周壁部61の上辺に沿って設けられている。開口部620から見て車両後方側には、オイルフィルタ69が設けられている。オイルフィルタ69は、開口部620に隣接する位置に設けられている。オイルフィルタ69と開口部620は、車両前後方向に沿う水平線方向で並んでいる。
【0041】
隔壁部62では、開口部620とオイルフィルタ69の下側に、貫通孔621が位置している。貫通孔622は、貫通孔621から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
開口部620は、貫通孔621の中心(回転軸X1)を通る鉛直線VLの車両前方側に位置している。オイルフィルタ69と貫通孔622は、鉛直線VLよりも車両後方側に位置している。
【0042】
第3室S3は、バリエータ3の収容室である。バリエータ3は、プライマリプーリ31と、セカンダリプーリ32と、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32に巻き掛けられたベルト30と、を有する。
プライマリプーリ31の入力軸34(図1参照)は、貫通孔621を貫通している。セカンダリプーリ32の出力軸33(図1参照)は、貫通孔622を貫通している。
【0043】
プライマリプーリ31は、セカンダリプーリ32よりも車両前方側の下方に位置している。プライマリプーリ31から見て車両前方側には、第2室S2(図1参照)に収容されたコントロールバルブCVが位置している。
【0044】
車両前方側(図中、矢印A側)から見て、コントロールバルブCVは、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32と重なる位置関係で設けられている。すなわち、車両前方側から見て、コントロールバルブCVは、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32と、高さ範囲OV1の部分がオーバーラップしている。
車両の前後方向においてプライマリプーリ31は、コントロールバルブCVとセカンダリプーリ32の間に位置している。
そのため、車両の前後方向に沿う水平線方向から見ると、セカンダリプーリ32は、プライマリプーリ31と大きく重なりつつ、コントロールバルブCVと重なる位置関係で配置されている。すなわち、車両前方側から見てセカンダリプーリ32は、プライマリプーリ31と高さ範囲OV2の部分がオーバーラップしている。車両前方側から見てセカンダリプーリ32は、コントロールバルブCVと高さ範囲OV3の部分がオーバーラップしている。
【0045】
車両の前後方向におけるコントロールバルブCVとセカンダリプーリ32との間には、開口部620とオイルフィルタ69が位置している。そのため、車両前方側から見ると、セカンダリプーリ32は、開口部620およびオイルフィルタ69とも重なる位置関係で設けられている。すなわち、車両前方側から見てセカンダリプーリ32は、開口部620およびオイルフィルタ69と高さ範囲OV4の部分がオーバーラップしている。
よって、セカンダリプーリ32とコントロールバルブCVとの間には、プライマリプーリ31と、開口部620と、オイルフィルタ69が位置している。
【0046】
図1に示すように、ケース6では、車両前方側の側面に、収容部68が付設されている。
収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68の底壁となる壁部682は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。回転軸X1の径方向から見て収容部68は、ケース6の周壁部61の領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X1方向の範囲を持って形成されている。
【0047】
収容部68の壁部682は、エンジンENG側の略半分の領域が、周壁部61と一体になっている。壁部682の反対側の略半分の領域は、周壁部61の延長上で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
【0048】
図4は、収容部68を車両前方側から見た図である。この図4では、車両前方側から見た第2室S2を、ハウジングHSの他の構成要素(ケース6、第1カバ-7、第2カバー8)と共に模式的に示している。また、紙面手前側に位置する接合部683の領域に交差したハッチングを付して示している。また、コントロールバルブCVの外観と、電動オイルポンプEOPの外観を模式的に示している。
【0049】
図4に示すように、車両前方側から見て収容部68は、壁部682と、壁部682の外周を全周に亘って囲む囲繞壁681を有している。囲繞壁681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。
図1に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。
【0050】
図1に示すように、第2室S2内には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが収容される。
コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路95(図5参照)が形成されている。油圧制御回路95には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁(スプール弁SP)が設けられている。
【0051】
第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向に沿わせた向きで、縦置きされている。
図4に示すように、第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数のスプール弁SPが、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)スプール弁SPの進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0052】
これにより、スプール弁SPの進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが第2室S2内で縦置きされる。よって、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0053】
第2室S2内では、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPとが、回転軸X方向(図4における左右方向)に並んでいる。図1に示すように、車両前方側から見てコントロールバルブCVは、第1室S1と重なる位置関係で設けられている。車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第3室S3と重なる位置関係で設けられている。
【0054】
図4に示すように電動オイルポンプEOPは、制御部931と、モータ部932と、ポンプ部933が、モータの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、電動オイルポンプEOPは、ポンプ部933を、第2室S2内の最下部に位置させる向きで縦置きされている。
ポンプ部933の吸入口933aと吐出口933bは、モータ部932との境界側に位置している。ポンプ部933の吸入口933aは、前記した油路626に接続されている。ポンプ部933の吐出口933bは、他のケース内油路を介して、コントロールバルブCVに接続されている。
【0055】
コントロールバルブCVには、調圧弁から排出されるオイルOLの排出口96が設けられている。
そのため、コントロールバルブCVを収容する第2室S2内に、コントロールバルブCVから余剰のオイルOLが排出される。
第2室S2では、壁部682における第1室S1と重なる領域の最下部に、連絡部94が開口している。連絡部94は、第1室S1と第2室S2とを連絡させている。
【0056】
さらに、壁部682における最上部に、開口部97が設けられている。開口部97は、壁部682における第1室S1と重なる位置に開口している。
開口部97の下縁97aは、コントロールバルブCVの上端縁925と略同じ高さに位置している。
このように、連絡部94と開口部97は、それぞれ、第2室S2と第1室S1とを連通させている。よって、第2室S2は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向の上部と下部で、第1室S1に連通している。
【0057】
図5は、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95の一例と、バリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)へのオイルOLの供給経路を説明する図である。油圧制御回路95は、バリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の作動油圧の調圧に関わる部分を示している。
【0058】
図5に示すように動力伝達装置1は、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを1つずつ備えている。これらオイルポンプ(メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOP)は、ストレーナ10を介して、ハウジングHS内の下部に貯留されたオイルOLを吸引する。吸引されたオイルOLは、加圧されたのち、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95に供給される。
以下の説明においては、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを特に区別しない場合には、単純に「オイルポンプOP」と表記する。
【0059】
コントロールバルブCV内の油圧制御回路95は、オイルポンプOPで発生させた油圧から、動力伝達機構(前後進切替機構2、バリエータ3など)の作動油圧を調圧する。
【0060】
ライン圧調圧弁951は、当該ライン圧調圧弁951でのオイルOLのドレン量を調整することで、オイルポンプOPで発生させた油圧からライン圧を調整する。
ライン圧調圧弁951により調整されたライン圧は、プライマリ調圧弁953およびセカンダリ調圧弁954と、パイロット圧調圧弁952に供給される。なお、ライン圧は、油圧制御回路95が備える他の調圧弁にも供給される。
【0061】
パイロット圧調圧弁952は、ライン圧からパイロット圧を調整する。パイロット圧調圧弁952で調整されたパイロット圧は、プライマリソレノイド955と、セカンダリソレノイド956に供給される。
プライマリソレノイド955と、セカンダリソレノイド956は、制御装置(図示せず)の指令に基づいて作動して、プライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954に供給される信号圧を調圧する。
【0062】
プライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954では、スプール弁が、信号圧に応じて軸線方向(図中、Xp方向)に移動する。
スプール弁が軸線方向に移動すると、ライン圧調圧弁951で調圧されたライン圧が、スプール弁の位置に応じた圧力に調圧されたのち、対応するプーリ(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の油室に供給される。
【0063】
前記したライン圧調圧弁951は、油圧制御回路95における最も上流側(オイルポンプOP側)に位置しており、オイルポンプOPで発生させた油圧が最初に供給される。
ライン圧調圧弁951では、オイルポンプOPで発生させた油圧からライン圧を調整する際に、オイルポンプOPで発生させたオイルの一部がドレンされる。
【0064】
ライン圧調圧弁951は、コントロールバルブCV内に設けられている。コントロールバルブCVは、油圧制御回路95内の調圧弁(スプール弁)が進退移動する方向XPを、水平線HL方向に沿わせた向きで配置する必要がある。
そのため、コントロールバルブCVは、第2室S2内で縦置きになる。
【0065】
図4に示すように、コントロールバルブCVでは、ライン圧調圧弁951と、プライマリ調圧弁953と、セカンダリ調圧弁954が、下方から上方に向けて、この順番で並ぶように配置されている。
ライン圧調圧弁951と、プライマリ調圧弁953は、電動オイルポンプEOPの側方で、調圧弁(スプール弁)を水平線方向に沿わせた向きで配置されている。
セカンダリ調圧弁954は、電動オイルポンプEOPよりも上側で、調圧弁(スプール弁)を水平線方向に沿わせた向きで配置されている。
【0066】
図6は、動力伝達装置1の駆動時におけるオイルOLの移動と、第2室S2に貯留されるオイルOLの高さを説明する図である。
図6に示すように、ケース6では、第1室S1の下部の収容部67に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルOLが貯留される。
動力伝達装置1の駆動時には、第1室S1内の回転体(ファイナルギア45など)で掻き上げられたオイルOLが、開口部97から第2室S2内に流入する。
そのため、第2室S2内には、開口部97から流入するオイルOLと、コントロールバルブCVから排出されるオイルOLが貯留される。第2室S2内のオイルOLは、第2室S2の下部に設けた連絡部94を通って、第1室S1に戻されるようになっている。
【0067】
ここで、連絡部94の開口径は、動力伝達装置1の駆動時に、第2室S2内にオイルOLが貯留されて、第1室S1内のオイルOLが、回転体の潤滑に必要な最小量となるように設定されている。
そのため、動力伝達装置1の駆動時では、第2室S2内に貯留されるオイルOLは、最大で開口部97に及ぶ高さH2となる。
【0068】
動力伝達装置1が停止すると、開口部97からの第2室S2へのオイルOLの流入が停止する。そして、コントロールバルブCVからのオイルOLの排出も停止する。
そのため、第2室S2内のオイルOLが、連絡部94を介して第1室S1に徐々に戻されて、第1室S1のオイルOLと、第2室S2内のオイルOLは、最終的に同じ高さH1になる。
【0069】
本実施形態では、縦置きされたコントロールバルブCV内のライン圧調圧弁951が、動力伝達装置1の停止時に、第2室S2に貯留されたオイルOLに油没する高さ位置に配置されている。
そのため、ライン圧調圧弁951は、動力伝達装置1の停止時のオイルOLの高さH1(動力伝達装置1の停止時のオイルレベルOL_Level)よりも下側に配置されている。
【0070】
動力伝達装置1の停止時には、油圧制御回路95内のオイルOLが、自重により、コントロールバルブCVの外に排出される。
そのため、動力伝達装置1の停止時に、ライン圧調圧弁951がオイルOLに油没していないと、ライン圧調圧弁951内のオイルOLも抜けてしまう。
この状態で動力伝達装置1が再駆動されると、オイルポンプOPから供給されたオイルOLがライン圧調圧弁951内部を満たした後でないと、下流側の調圧弁(プライマリ調圧弁953、セカンダリ調圧弁954)にライン圧が供給されない。かかる場合、バリエータ3への作動用の油圧の供給が遅れる可能性があり、バリエータ3の応答性に影響が及ぶ可能性がある。
【0071】
特に、オイルOLが0℃以下となる低温環境下では、オイルOLの温度が低くなるほど、オイルOLの体積が小さくなってハウジングHS内に貯留されたオイルOLの高さが低くなると共に、オイルOLの粘度が高くなってオイルOLの流動性が低下する。
本実施形態では、オイルOLの温度が低い時に、ライン圧調圧弁951の少なくとも一部、好ましくは全部が、第2室S2内に貯留されたオイルOLに油没する位置に、ライン圧調圧弁951を配置している。これにより、低温環境下で停止していた動力伝達装置1を再駆動したときに、ライン圧調圧弁951の下流側の調圧弁(プライマリ調圧弁953、セカンダリ調圧弁954)へのオイルOLの供給が大きく滞ることを防止できる。よって、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の向上が期待できる。
【0072】
さらに本実施形態では、動力伝達装置1の駆動時に、プライマリ調圧弁953の少なくとも一部、より好ましくは全部が、第2室S2内に貯留されたオイルOLに油没する位置に、プライマリ調圧弁953を配置している。
プライマリ調圧弁953は、一時停止していた車両が再発進する際の応答性に影響を及ぼす。
動力伝達装置1が駆動されると、オイルOLの温度が、非駆動時よりも高温になる。オイルOLの温度が高くなるほど、オイルOLの体積が大きくなって、オイルOLの流動性が高くなる。
オイルOLの流動性が高いと、車両が停止している短時間の間に、油圧制御回路95からオイルOLが抜けてしまう可能性が高い。
【0073】
上記のように、プライマリ調圧弁953は、動力伝達装置1の駆動時のオイルOLの高さH2(動力伝達装置1の駆動時のオイルレベル)よりも下側に配置されている。
そのため、オイルが高温の時であっても、プライマリ調圧弁953がオイルOLに油没する高さ位置に配置されている。そのため、走行中の車両が停止したのち再走行するときに、プライマリ調圧弁953からプライマリプーリ31の油室へのオイルOLの供給が大きく滞ることを防止できる。よって、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の向上が期待できる。
【0074】
図5に示すように、プライマリ調圧弁953で調圧されたオイルOLは、ケース内油路251を介して、プライマリプーリ31の油室に供給される。
セカンダリ調圧弁954で調圧されたオイルOLは、ケース内油路252を介して、セカンダリプーリ32の油室に供給される。
【0075】
本実施形態では、周壁部641(図1参照)の開口を塞ぐダミーカバー21を利用して、ケース内油路251、252を設けている。
【0076】
図7は、ダミーカバー21を説明する図である。図7では、説明の便宜上、ケース内油路251が設けられた領域と、ケース内油路252を内部に有するリブ240に、交差したハッチングを付して示している。
【0077】
図7に示すように、動力伝達装置1では、ストレーナ10から見て収容部68(図中、右側)に、メカオイルポンプMOPに回転駆動力を伝達して駆動するための回転伝達機構150が位置している。なお、図7では、メカオイルポンプMOPは、紙面奥側に隠れている。
回転伝達機構150は、ドライブスプロケット151と、ドリブンスプロケット152と、チェーン153と、から構成される。
【0078】
図1に示すように、ドライブスプロケット151は、トルクコンバータT/Cのインペラスリーブ155を介して入力される回転駆動力で、回転軸X1回りに回転する。
インペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20に外挿されている。入力軸20は、周壁部641の開口を塞ぐダミーカバー21で回転可能に支持されている。
ドライブスプロケット151とインペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20で回転可能に支持されている。
【0079】
図7に示すように、ドライブスプロケット151に入力された回転は、チェーン153を介して、ドリブンスプロケット152に伝達される。ドリブンスプロケット152は、伝達された回転で回転軸X5回りに回転する。ドリブンスプロケット152が回転すると、ドリブンスプロケット152が連結されたメカオイルポンプMOPの回転軸が回転して、メカオイルポンプMOPが駆動される。
これにより、ケース6の下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して吸引される。
【0080】
図2に示すように、ケース6では、前後進切替機構2の収容部を形成するための周壁部641が、紙面手前側(第2カバー8)側に開口を向けて設けられている。この周壁部641の開口は、第2カバー8側から周壁部641に組み付けられるダミーカバー21(図1参照)により塞がれる。
【0081】
図1に示すように、ダミーカバー21は、回転軸X1方向に所定の厚みを持つ板状部材である。回転軸X1方向から見てダミーカバー21は、前後進切替機構2およびプライマリプーリ31と重なる位置関係で設けられている。プライマリプーリ31から見てダミーカバー21は、トルクコンバータT/C側を横切って配置されている。図7に示すように、ダミーカバー21は、周縁部220と、周縁部220の内側のカバー部230と、を有する。
【0082】
周縁部220は、ケース6側の周壁部641(図1参照)に回転軸X1方向から当接している。この状態において周縁部220は、周壁部641にボルトBLで固定されている。
カバー部230は、前後進切替機構2の第2カバー8側(紙面手前側)の側面を覆う大きさで形成されている。カバー部230の中央部には、挿通孔231が設けられている。前後進切替機構2の入力軸20が、挿通孔231を回転軸X1方向に貫通する。
【0083】
カバー部230の内部には、コントロールバルブCV側から供給されるオイルOLを、分配するための油路が設けられている。カバー部230における紙面手前側の面では、油路が設けられた部分が紙面手前側に膨らんでいる。
図中、交差したハッチングを設けた領域の内部には、ケース内油路251が設けられている。ダミーカバー21においてケース内油路251は、回転軸X1を通る水平線HLよりも下側であって、回転軸X1を通る鉛直線VLよりも車両前方側の領域に位置している。
【0084】
ケース内油路251は、周縁部220の外周から回転軸X1に向けて延びており、挿通孔231まで達している。ケース内油路251は、前記したプライマリ調圧弁953の出力ポートと、プライマリプーリ31の軸内油路とを連絡させている。
そのため、プライマリ調圧弁953から供給される作動用のオイル(油圧)が、ケース内油路251を通ってプライマリプーリ31の油室に供給されるようになっている。
【0085】
鉛直線VL方向における水平線HLよりも上側には、内部に油路(ケース内油路252)を持つリブ240が位置している。
リブ240は、周縁部220やカバー部230よりも紙面手前側に膨出している。リブ240は、挿通孔231の上側を水平線HL方向に横切る範囲に設けられている。
【0086】
リブ240は、境界部240cよりも車両後方側(図中、左側)が、車両後方側に向かうにつれて鉛直線VL方向の高さが低くなる向きで傾斜している。
リブ240は、境界部240cよりも車両前方側が、車両前方側の端部240bに向かうにつれて鉛直線VL方向の高さが低くなる向きで傾斜している。
回転軸X1方向から見てリブ240の境界部240cは、回転軸X1を通る鉛直線VLの近傍に位置している。リブ240は、境界部240cを最も上側に位置させた屈曲形状で設けられている。
【0087】
鉛直線VL方向におけるリブ240の下側には、前記した回転伝達機構150のドライブスプロケット151が位置している。リブ240は、ドライブスプロケット151の上側を迂回しつつ、鉛直線VLを車両前方側から車両後方側に横切っている。
【0088】
リブ240の車両前方側の端部240bは、周縁部220の外周まで達している。リブ240内のケース内油路252は、前記したセカンダリ調圧弁954の出力ポートに連絡している。
【0089】
リブ240の車両後方側の端部240aは、周縁部220上に位置している。リブ240内のケース内油路252の端部240aは、周縁部220における紙面奥側の面に開口している。
図2に示すように、ダミーカバー21が取り付けられる周壁部641では、回転軸X1方向から見て端部240aと重なる位置に油孔641aが開口している。
油孔641aは、周壁部641内をセカンダリプーリ32側(紙面奥側に)延びており、セカンダリプーリ32の油室に連絡している。そのため、ケース内油路252は、前記したセカンダリ調圧弁954の出力ポートと、セカンダリプーリ32側の油室とを連絡させている。
そのため、セカンダリ調圧弁954から供給される作動用のオイル(油圧)が、ケース内油路252を通ってセカンダリプーリ32の油室に供給されるようになっている。
【0090】
図1に示すようにドライブスプロケット151は、ダミーカバー21から見て、トルクコンバータT/C側に位置している。ドライブスプロケット151は、ダミーカバー21とトルクコンバータT/Cとの間の隙間に配置されている。
ドライブスプロケット151は、回転軸X1方向に厚みを持っている。図7に示すようにドライブスプロケット151の上側には、空間的な余裕がある。本実施形態では、ドライブスプロケット151の上側の空間に、リブ240を設けている。リブ240は、ドライブスプロケット151の回転軸X1方向の厚みに略相当する分だけ、トルクコンバータT/C側に膨出している。そのため、リブ240を設けても、動力伝達装置1が、リブ240を設けたことによって、回転軸X1方向に大型化しないようにしている。
【0091】
図8は、ケース内油路251、252と、プライマリ調圧弁953およびセカンダリ調圧弁954との位置関係を説明する図である。この図8では、第1室S1内でのケース内油路251、252の上下関係と、第2室S2内でのプライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954の上下関係と、第3室内でのプライマリプーリ31とセカンダリプーリ32の上下関係が、揃っていることを示している。
【0092】
図8に示すように、第2室S2内に配置されたコントロールバルブCVは、プライマリ調圧弁953が、セカンダリ調圧弁954よりも鉛直線VL方向の下側に位置する向きで縦置きされている。
【0093】
第3室S3内では、プライマリプーリ31が、セカンダリプーリ32よりも鉛直線VL方向の下側に配置されている。
本実施形態では、プライマリプーリ31の油室とプライマリ調圧弁953とを連絡するケース内油路251と、セカンダリプーリ32の油室とセカンダリ調圧弁954とを連絡するケース内油路252が、ダミーカバー21を利用して設けられている。
【0094】
ケース内油路251は、ダミーカバー21の内部に設けた既存の油路である。ケース内油路252は、ダミーカバー21に付設したリブ240内に設けた油路である。
ハウジングHSの下部開口に設けた既存のコントロールバルブCVの場合、コントロールバルブCVは、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32の直下に位置している。そして、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32と、コントロールバルブCVとの間には、油路を迂回させる必要のある他の要素が存在しない。
そのため、コントロールバルブCVから上方に向けて油路を設けることで、コントロールバルブCVと、プーリ(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の油室とを最短距離で連絡させることができる。
【0095】
これに対して、本実施形態にかかる動力伝達装置1の場合、図3に示すように、セカンダリプーリ32とコントロールバルブCVとの間に、プライマリプーリ31とオイルフィルタ69と開口部620とが位置している。そのため、セカンダリプーリ32を支持する隔壁部62に、コントロールバルブCVとセカンダリプーリ32の油室とを接続するケース内油路252を、最短距離で設けるための余裕がない。
隔壁部62に油路を設ける場合には、プライマリプーリ31の下方(図3における下方)を大きく迂回させる必要がある。
【0096】
ここで、コントロールバルブCVとプライマリプーリ31の油室とを接続するケース内油路251は、ダミーカバー21に設けられている。そして、図1に示すように、ダミーカバー21では、ダミーカバー21の側方に位置するドライブスプロケット151の外径側に空間的な余裕がある。
本実施形態では、ダミーカバー21からドライブスプロケット151の外径側に突出させたリブ240に、ケース内油路252を設けている。
そして、リブ240は、ドライブスプロケット151が設けられた領域の回転軸X1方向の隙間に収まるように設けられている。そのため、内部にケース内油路252を持つリブ240により、動力伝達装置1が径方向に大型化することを防いでいる。
【0097】
さらに、図8に示すように、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32の上下関係と、プライマリ調圧弁953とセカンダリ調圧弁954の上下関係に倣って、ケース内油路252を、ケース内油路251よりも鉛直線VL方向の上側に位置させている。
【0098】
これにより、ケース6においてケース内油路252とケース内油路251とが、回転軸X1方向から見て互いに交差することなく設けられている。
そして、回転軸X1方向から見てケース内油路252は、前後進切替機構2とプライマリプーリ31の側方を車両前後方向に横切って設けられている。よって、セカンダリプーリ32とセカンダリ調圧弁954とを連絡させるケース内油路252を、最短距離で設けることができる。
これにより、ケース内油路251、252の取り回し、いわゆる配置が複雑化する程度を抑えることができ、ケース内油路251、252をそれぞれ短くできる。その結果、プライマリプーリ31の油室とセカンダリプーリ32の油室にオイルOLをスムーズに供給できる。これにより、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径をスムーズに変えることができ、バリエータ3での変速応答性を向上させることができる。
【0099】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32を有するバリエータ3と、
プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に作動用のオイルOLを供給する油圧制御回路95を持つコントロールバルブCVと、を有する。
コントロールバルブCVは、水平線HL方向に移動する弁体(スプール弁)を持つ調圧弁を複数有している。
コントロールバルブCVは、調圧弁を鉛直線VL方向(上下方向)に並べる向きで縦置き配置されている。
セカンダリプーリ32の回転軸X2は、プライマリプーリ31の回転軸X1よりも上下方向の上側に位置する。
セカンダリプーリ32に対する供給圧を調整するセカンダリ調圧弁954(第2調圧弁)は、プライマリプーリ31に対する供給圧を調整するプライマリ調圧弁953(第1調圧弁)よりも上下方向の上側に位置する。
【0100】
このように構成すると、上下方向におけるセカンダリプーリ32の回転軸X2とプライマリプーリ31の回転軸X1の並びと、上下方向におけるセカンダリ調圧弁954(第2調圧弁)とプライマリ調圧弁953(第1調圧弁)の並びが揃うことになる。これにより、セカンダリ調圧弁954からセカンダリプーリ32にオイル供給するためのケース内油路252(第2油路)と、プライマリ調圧弁953からプライマリプーリ31にオイルを供給するためのケース内油路251(第1油路)を、回転軸X1方向から見たときに、交差させることなく設けることができる。
これにより、油路のレイアウト(配置)が複雑化する程度を抑えることができ、ケース内油路251、252をそれぞれ短くできる。その結果、プライマリプーリ31の油室とセカンダリプーリ32の油室にスムーズにオイルOLを供給できる。これにより、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径をスムーズに変えることができ、バリエータ3での変速応答性を向上させることができる。
なお、実施形態では、調圧弁の弁体(スプール弁)として、弁体が水平線HL方向に移動する場合について説明したが、弁体は厳密に水平線HLに沿って移動する場合に限定されず、単に、車両の横方向に移動する場合も含んで構成される。
【0101】
(2)回転軸X1方向から見て、プライマリプーリ31は、セカンダリプーリ32とコントロールバルブCVの間に位置している。
セカンダリプーリ32用のケース内油路252が、プライマリプーリ31の支持壁である隔壁部62とは別の壁部であるダミーカバー21に設けられている。
ダミーカバー21は、回転軸X1方向から見てプライマリプーリ31と重なる位置関係で設けられている。
【0102】
セカンダリ調圧弁954で調圧されたオイルOLは、ケース内油路252を介して、セカンダリプーリ32の油室に供給される。
上記のように構成すると、ダミーカバー21は、隔壁部62から回転軸X1方向に離れて位置しており、回転軸X1方向から見ると、ダミーカバー21は、隔壁部62およびプライマリプーリ31とオーバーラップして配置される。
これにより、ケース内油路252を、回転軸X1方向におけるプライマリプーリ31の側方(トルクコンバータT/C側の側方)を通して設けることができる。
この場合、プライマリプーリ31の外径側(図3における、下側など)を迂回してケース内油路を設ける場合に比べて、ケース内油路252の長さを短くできる。これにより、ケース内油路の全長が短くなった分だけ、セカンダリプーリ32の油室にオイルOLをスムーズに供給できるので、バリエータ3での変速応答性を向上させることができる。
【0103】
(3)ダミーカバー21(壁部)は、ケース内油路252が設けられたリブ240の領域の回転軸X1方向の厚みが、他の領域の回転軸X1方向の厚みよりも厚くなっている。
【0104】
ケース内油路252は、ダミーカバー21に付設したリブ240内に設けられている。ダミーカバー21は、リブ240が付設された部分の回転軸X1方向の厚みが、リブ240の分だけ厚くなる。ダミーカバー21においてリブ240は、回転軸X方向に突出した突出部として形成される。
ダミーカバー21の全体の厚みを厚くするのではなく、ケース内油路252の配置に必要な部分のみの厚みを厚くすることで、ダミーカバー21全体の重量増加を好適に防止できる。
【0105】
(4)油圧制御回路95は、オイルポンプOPから供給される元圧からライン圧を調圧するライン圧調圧弁951を、有している。
コントロールバルブCVでは、鉛直線VL方向(上下方向)におけるプライマリ調圧弁953の下側に、ライン圧調圧弁951が位置している。
【0106】
コントロールバルブCVを収容する第2室S2内に、コントロールバルブCVを縦置き配置すると、ライン圧調圧弁951と、プライマリ調圧弁953と、セカンダリ調圧弁954とが、下側からこの順番で並んで配置される。そのため、ライン圧調圧弁951が最も下側に配置される。
動力伝達装置1の非駆動時には、コントロールバルブCVにオイルOLが供給されないので、コントロールバルブCV内のオイルOLが、コントロールバルブCVの外部に徐々に排出される。その結果、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95からオイルOLが抜けてしまう。
動力伝達装置1の再駆動時にコントロールバルブCVに供給されたオイルは、油圧制御回路95内をオイルOLで満たした後に、プライマリプーリ31やセカンダリプーリ32などのオイルOLの供給先に供給される。
そのため、油圧制御回路95内のオイルOLが抜けている程度が大きいと、バリエータ3の応答性が悪くなる。
ライン圧調圧弁951は、オイルポンプから供給されるオイルOLの圧力を調整する最初の調圧弁であり、動力伝達装置1の再駆動時の応答性に対する影響が大きい。そのため、ライン圧調圧弁951を最も下側に配置すると、動力伝達装置1の非駆動時に第2室S2内に貯留されるオイルOLに、ライン圧調圧弁951を油没させることができる。
これにより、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の改善が期待できる。
【0107】
(5)鉛直線VL方向(上下方向)におけるライン圧調圧弁951の高さ位置は、
動力伝達装置1の非駆動時に第2室S2内に貯留されたオイルOLに、ライン圧調圧弁951の少なくとも一部が油没する高さ位置に設定されている。
【0108】
ライン圧調圧弁951の高さ位置を、動力伝達装置1の非駆動時における第2室S2内に貯留されたオイルOL高さを基準に設定すると、動力伝達装置1を再駆動したときに、ライン圧調圧弁951から、プライマリ調圧弁953やセカンダリ調圧弁954へのオイルOLの供給が大きく滞ることがない。
特に、0℃以下の低温環境下では、オイルOLの温度が低くなるにつれて、オイルOLの体積が小さくなって、ハウジングHS(第2室S2)内に貯留されたオイルOLの高さが低くなると共に、オイルOLの粘度が高くなって、オイルOLの流動性が低下する。
上記のように構成すると、低温環境下で停止していた動力伝達装置1を再駆動したときに、ライン圧調圧弁951から、プライマリ調圧弁953やセカンダリ調圧弁954へのオイルOLの供給が大きく滞る可能性を低減できる。
これにより、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の向上が期待できる。
【0109】
(6)鉛直線VL方向(上下方向)におけるプライマリ調圧弁953(第1調圧弁)の高さ位置は、
ハウジングHS(第2室S2)内に貯留されるオイルOLが、動力伝達装置1の非駆動時よりも高い温度(高温)である時に、プライマリ調圧弁953の少なくとも一部が油没する高さ位置に設定されている。
【0110】
動力伝達装置1の駆動時には、オイルOLの温度が高くなる。オイルOLの温度が高くなると、オイルOLの体積が大きくなる。そうすると、オイルの粘度が低くなって、オイルOLの流動性が高くなる。そうすると、短時間の動力伝達装置1の停止であっても、油圧制御回路95内のオイルOLが抜けてしまう可能性がある。
そのため、プライマリ調圧弁953の高さ位置を、オイルOLの温度が高い時に第2室S2内に貯留されたオイルOLに少なくとも一部が油没する位置に設定すると、高温温環境下で停止していた動力伝達装置1を再駆動したときに、ライン圧調圧弁951やプライマリ調圧弁953からのオイルOLの供給が大きく滞る可能性を低減できる。これにより、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の向上が期待できる。
【0111】
(i)プライマリプーリ31用のケース内油路251(第1油路)が、ダミーカバー21の厚みを利用して設けられている。
【0112】
ケース内油路251(第1油路)と、ケース内油路252(第2油路)の両方をダミーカバー21の厚みを利用して設ける場合、ダミーカバー21の剛性を高くするために、ダミーカバー21の厚みを厚くする必要がある。
上記のように構成すると、ケース内油路252がダミーカバー21の厚みを局所的に厚くしたリブ240内に設けられるので、ダミーカバー21の全体の厚みを厚くする必要が無い。これにより動力伝達装置1の重量増加の程度を抑えることができる。よって、動力伝達装置1を搭載した車両における燃費の向上が期待できる。
【0113】
(ii)プライマリプーリ31は、回転軸X1方向における隔壁部62(支持壁)の一方側(第3室S3側)に位置している。
隔壁部62の他方側(第1室S1)に、回転伝達機構(前後進切替機構2)が位置している。ダミーカバー21は、前後進切替機構2の収容室を形成する周壁部641の開口を覆うカバーである。回転軸X1方向から見てダミーカバー21は、前後進切替機構2の第2カバー8側の側方を覆う大きさで形成されている。
【0114】
駆動源(エンジンENG)からの入力回転をプライマリプーリ31に伝達する前後進切替機構2(回転伝達機構)は、隔壁部62とは反対側の側方がダミーカバー21で覆われる。このダミーカバー21は、動力伝達装置1における既存部品である。
そのため、既存部品であるダミーカバー21にケース内油路252を設けることで、ケース内油路252を設けるための専用の壁部を、ハウジングHS内に別途用意する必要が無い。これにより、部品点数の増加による動力伝達装置1の重量増加を防止できる。
また、既存のダミーカバーとは別に壁部を用意する場合には、動力伝達装置1が回転軸X1方向に大型化する。既存部品であるダミーカバー21を利用してケース内油路252を設けることで、動力伝達装置1が回転軸X1方向に大型化することを好適に防止できる。
【0115】
(iii)ダミーカバー21から見て、回転軸X1方向におけるプライマリプーリ31とは反対側に、ドライブスプロケット151が設けられている。
ドライブスプロケット151は、ダミーカバー21に隣接して設けられている。
回転軸X1方向から見てケース内油路252は、ドライブスプロケット151の上側を迂回して設けられている。
【0116】
例えば、ドリブンスプロケット152が、ドライブスプロケット151の下方に配置されている場合、ダミーカバー21の回転軸X1方向の側方では、ドライブスプロケット151の上側に空間的な余裕がある。
回転軸X1方向から見て、ケース内油路252を、ドライブスプロケット151の上側を迂回して、ドライブスプロケット151の外周に沿うように設けると、ケース内油路252に起因するリブ240をドライブスプロケット151に干渉させることなく設けることができる。
かかる場合、リブ240は、ダミーカバー21の側方の空いた隙間に配置されるので、リブ240を設けるにあたり、動力伝達装置1が回転軸X方向に大型化することを好適に防止できる。
【0117】
(iv)回転軸X1方向から見てメカオイルポンプMOPは、上下方向におけるプライマリプーリ31の下側に位置している。
メカオイルポンプMOPは、ケース6の下部の収容部67で、第2室S2寄りに位置している。
【0118】
このように構成すると、メカオイルポンプMOPからライン圧調圧弁951にオイル供給するための油路628(第3油路)の長さを短くできるので、動力伝達装置1の再駆動時の応答性の向上が期待できる。
【0119】
(v)動力伝達機構を収容するハウジングHS内に、動力伝達機構を収容する第1室S1とは別に、コントロールバルブCVを収容する第2室S2が設けられている。
第2室S2には、動力伝達装置1の駆動時に、コントロールバルブCVから排出されるオイルOLが少なくとも貯留される。
第2室S2は、第1室S1よりも小さい容積で形成されている。
【0120】
このように構成すると、第2室S2内のオイルOLの高さの変動が、第1室S1内のオイルOLの高さの変動よりも大きくなる。そのため、動力伝達装置1の駆動時に第2室S2内に貯留されたオイルOLに、目的とする調圧弁(ライン圧調圧弁951、プライマリ調圧弁953)を確実に油没させることが可能になる。
【0121】
(vi)コントロールバルブCVは、第2室S2内で、プライマリプーリ31の回転軸X1に沿う向きで配置されている。
【0122】
このように構成すると、コントロールバルブCVの各調圧弁(ライン圧調圧弁951、プライマリ調圧弁953、セカンダリ調圧弁954)が、プライマリプーリ31の回転軸X1に沿う向きで配置される。
これにより、コントロールバルブCVを収容する第2室S2は、プライマリプーリ31の回転軸X1の径方向の厚みが薄くなるので、動力伝達装置1の大型化を好適に防止できる。
【0123】
図9は、変形例にかかる動力伝達装置1Aを説明する模式図である。
前記した実施形態では、ストレーナ10を収容する第1室S1と、コントロールバルブCVを収容する第2室S2とが、壁部682により完全に分かれている場合を例示した(図6参照)。
図9に示すように、コントロールバルブCVを、第1室S1と第2室S2とを区画する壁部として機能するようにした動力伝達装置1Aとしても良い。
このような構成の動力伝達装置1Aであっても、油路のレイアウトが複雑化する程度を抑えることができ、バリエータ3での変速応答性の向上が期待できる。
【0124】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0125】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0126】
1、1A 動力伝達装置
21 ダミーカバー(壁部)
240 リブ
251 ケース内油路(第1油路)
252 ケース内油路(第2油路)
3 バリエータ
31 プライマリプーリ
32 セカンダリプーリ
62 隔壁部(支持壁)
95 油圧制御回路
951 ライン圧調圧弁
953 プライマリ調圧弁(第1調圧弁)
954 セカンダリ調圧弁(第2調圧弁)
CV コントロールバルブ
OP オイルポンプ
S2 第2室
HS ハウジング
X1 回転軸
X2 回転軸


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9