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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20250114BHJP
【FI】
F16H57/04 F
F16H57/04 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024509231
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011615
(87)【国際公開番号】W WO2023182452
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022047612
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 智也
(72)【発明者】
【氏名】松島 渉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-8078(JP,A)
【文献】特開2007-255369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構の作動用のオイルを調圧するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給するポンプと、
前記ポンプに吸引されるオイルが通過するストレーナと、を有し、
前記ケース内には、
前記ストレーナが底壁部に対向配置された第1室と、
前記コントロールバルブから排出されたオイルが流入する第2室と、
前記第1室と前記第2室とを連絡する連絡部が、設けられており、
前記第1室内では、前記連絡部と前記ストレーナとを結ぶオイルの移動経路上で、第1の磁石が前記底壁部に対向配置されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コントロールバルブは、内部に複数の調圧弁を有しており、
前記コントロールバルブは、前記ケース内で前記調圧弁を上下方向に並べる向きで配置されており、
前記第2室では、前記コントロールバルブの下部に近接する位置に、前記連絡部が開口している、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ポンプは、駆動源の回転駆動力で駆動するメカオイルポンプであり、
前記コントロールバルブと前記ストレーナとの間に、前記回転駆動力を前記メカオイルポンプに伝達する回転伝達機構が設けられており、
前記第1の磁石は、前記回転伝達機構を覆うバッフルプレートに設けられている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記バッフルプレートは、前記第1の磁石が設置されるフランジ部を有している、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記底壁部には、前記ケースの内側に膨出した膨出部が間隔をあけて設けられている、
前記フランジ部は、隣接する前記膨出部の間の領域に対向する位置に設けられている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ストレーナは、前記底壁部に対向する下部に、オイルの吸入口を有しており、
前記ストレーナの下部には、第2の磁石が設けられている、
前記ストレーナの下部において前記第2の磁石は、前記オイルの吸入口から見て前記コントロールバルブとは反対側に位置している、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1室には、動力伝達時に回転する回転体と、前記回転体の外周を囲む第2バッフルプレートが、設けられており、
前記回転体と前記第2バッフルプレートは、前記ストレーナから見て前記コントロールバルブとは反対側に位置しており、
前記第2バッフルプレートの外周に、第3の磁石が設けられている、動力伝達装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストレーナにおけるオイルパンとの対向面に、磁石を設けて、オイルパン内のオイルに含まれる異物を捕捉するようにした油圧制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-208779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルパン内のオイルは、ストレーナを介してオイルポンプ側に吸引される。ストレーナの内部には、オイルに含まれる異物を除去するためのフィルタが設けられている。
ストレーナの内部に流入するオイルに含まれる異物の量は、少ない方がより好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構の作動用のオイルを調圧するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給するポンプと、
前記ポンプに吸引されるオイルが通過するストレーナと、を有し、
前記ケース内には、
前記ストレーナが底壁部に対向配置された第1室と、
前記コントロールバルブから排出されたオイルが流入する第2室と、
前記第1室と前記第2室とを連絡する連絡部が、設けられており、
前記第1室内では、前記連絡部と前記ストレーナとを結ぶオイルの移動経路上で、第1の磁石が前記底壁部に対向配置されている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、ストレーナの内部に流入するオイルに含まれる異物の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ケースを第2カバー側から見た模式図である。
図3図3は、第2室におけるコントロールバルブの配置を説明する模式図である。
図4図4は、収容部におけるストレーナの配置を説明する模式図である。
図5図5は、ストレーナをロアケース側の下方から見た平面図である。
図6図6は、収容部におけるストレーナとメカオイルポンプの配置を説明する模式図である。
図7図7は、回転伝達機構とバッフルプレートを説明する図である。
図8図8は、バッフルプレートの第2カバーの平面図である。
図9図9は、バッフルプレートの第2カバーの斜視図である。
図10図10は、第2カバーのフランジ部における磁石の支持を説明する図である。
図11図11は、バッフルプレートに取り付けられた磁石の作用を説明する模式図である。
図12図12は、底壁部に沿うオイルOLの移動経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0013】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0014】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁(弁体)を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0015】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0016】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0017】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0018】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
図1に示すように、動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
ハウジングHSの内部には、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
ここで、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5が、発明における動力伝達機構の構成要素である。
【0020】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0021】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0022】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0023】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0024】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0025】
図2は、ケース6を、第2カバー8側から見た状態を示す模式図である。
図2に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
【0026】
図1に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止されて、閉じられた第1室S1が形成される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止されて、閉じられた第3室S3が形成される。
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
【0027】
ケース6では、周壁部61の車両前方側の外周に、第2室S2を形成する収容部68が付設されている。収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68の開口が第3カバー9で封止されて、閉じられた第2室S2が形成される。
第2室S2には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが設けられている。
【0028】
図2に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。
【0029】
隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を間隔をあけて囲む周壁部641が、設けられている。図2において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(図1における第2カバー8側)に突出している。
【0030】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(図1参照)が回転可能に支持される。
【0031】
図2に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0032】
図2に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0033】
図2に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0034】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(図1参照)が、回転可能に支持されている。
図1に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0035】
図2に示すように、隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624の下側にバッフルプレート66が取り付けられている。回転軸X4方向から見てバッフルプレート66は、曲面を下方に向けた半円形状を成しており、ファイナルギア45の回転軸X4方向の両方の側面を覆う側板部661と、回転軸X4の径方向の外周を覆う弧状壁部662とを有している。なお、図2では、紙面手前側の側板部661の図示を省略している。弧状壁部662の外周には、磁石14D(第3の磁石)が、ストレーナ10側の斜め下方を向いて取り付けられている。
【0036】
ケース6では、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域が、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの収容部67となっている。
収容部67は、ケース6(ハウジングHS)内の下部に位置している。そのため、収容部67には、動力伝達機構の構成要素の駆動や冷却に用いられるオイルOLが貯留される。
【0037】
収容部67は、有底の空間であり、収容部67では、図2における紙面奥側に底壁となる隔壁部62が位置している。
【0038】
隔壁部62には、開口部620が設けられている。回転軸X1方向から見て開口部620は、隔壁部62における周壁部641の下側に位置している。
回転軸X1方向から見て開口部620は、前後進切替機構2(図示せず)を囲む弧状の周壁部641の外周と、ファイナルギア45の外周を囲むバッフルプレート66の弧状壁部662の外周とを結ぶ接線Lmと交差する位置に設けられている。前記した磁石14Dは、弧状壁部662における接線Lmが交差する位置に設けられている。
【0039】
開口部620は、周壁部641と弧状壁部662との間の領域から、直線Lnに沿って、接線Lmを上方から下方に横切ってケース6の下部まで及ぶ範囲に形成されている。
ここで、直線Lnは、周壁部641と弧状壁部662との間を通り、接線Lmに直交する直線である。
開口部620は、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側で、周壁部61(接合部611)の内周に沿って設けられている。
【0040】
動力伝達装置1のケース6では、周壁部641の下側であって、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高い。
本実施形態では、周壁部641よりも下側であって、弧状壁部662よりも車両前方側領域を、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPを配置するための収容部67することで、デッドスペースが生じないようにしている。
【0041】
図2の拡大図に示すように、収容部67では、周壁部641に隣接する位置に、ストレーナ10の接続部625が設けられている。回転軸X1方向から見て接続部625は、下部側の一部の領域が、開口部620と重なる位置関係で設けられている。
【0042】
接続部625の接続口625aには、油路626が連絡している。油路626は、隔壁部62内を開口部620から離れる方向に直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路を介して、第2室S2内に収容された電動オイルポンプEOPに接続されている。
【0043】
収容部67では、油路626の下側に、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628に連絡している。
油路628は、前記した油路626の下側を、油路626に沿って収容部68側(図中、右側)に延びている。油路628は、ケース6内の油路を介して、第2室S2内に設置されたコントロールバルブCV(図1参照)に連絡している。
【0044】
図3は、第2室S2におけるコントロールバルブCVの配置を説明する図である。この図3では、車両前方側から見た第2室S2を、ハウジングHSの他の構成要素(ケース6、第1カバー7、第2カバー8)と共に模式的に示している。また、紙面手前側に位置する接合部683の領域に交差したハッチングを付して示している。また、コントロールバルブCVの外観と、メカオイルポンプMOPの外観を模式的に示している。
【0045】
図3に示すように、車両前方側から見て収容部68は、壁部682と、壁部682の外周を全周に亘って囲む囲繞壁681を有している。壁部682は、第1室S1と重なる領域が、第2室S2と第1室S1との境界壁を兼ねている。囲繞壁681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。
図1に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。
【0046】
図3に示すように、第2室S2内には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが収容される。
図1に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁(スプール弁SP)が設けられている。
【0047】
第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向に沿わせた向きで、縦置きされている。
図3に示すように、第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数のスプール弁SPが、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)スプール弁SPの進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
本明細書における用語「縦置き」とは、コントロールバルブ内のスプール弁SPが、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される向きでコントロールバルブCVが設置されている状態をいう。この状態で、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の積層方向が水平線方向(車両前後方向)に沿う向きとなる。
【0048】
このように、スプール弁SPの進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが第2室S2内で縦置きされる。よって、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0049】
第2室S2内では、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPとが、回転軸X方向に並んでいる。車両前方側から見てコントロールバルブCVは、第1室S1と重なる位置関係で設けられている。車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第3室S3と重なる位置関係で設けられている。電動オイルポンプEOPは、図示しないモータの回転軸X1が、回転軸Xに直交すると共に上下方向に沿う向きで、縦置きされている。
【0050】
コントロールバルブCVには、スプール弁SPから排出されるオイルOLの排出口96が設けられている。
そのため、コントロールバルブCVを収容する第2室S2内に、コントロールバルブCVから余剰のオイルOLが排出されて、第2室S2内にオイルOLが貯留される。
第2室S2では、コントロールバルブCVの下端縁924が、囲繞壁681の内周686との間に隙間を空けて設けられている。
第2室S2では、壁部682における第1室S1と重なる領域の最下部に、連絡部94が開口している。
車両前方側から見て連絡部94は、コントロールバルブCVの下端縁924と、囲繞壁681との間の隙間に開口している。下端縁924と囲繞壁681との間のオイルOLが、連絡部94内に速やかに流入できるようになっている。
【0051】
さらに、壁部682における最上部に、開口部95が設けられている。開口部95は、壁部682における第1室S1と重なる位置に開口している。
開口部95の下縁95aは、コントロールバルブCVの上端縁925と略同じ高さに位置している。
このように、連絡部94と開口部95は、それぞれ、第2室S2と第1室S1とを連通させている。よって、第2室S2は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向の上部と下部で、第1室S1に連通している。
【0052】
図7に示すように、ケース6では、第1室S1の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルOLが貯留される。
動力伝達装置1の駆動時には、図11に示すように、第1室S1内の回転体(ファイナルギア45など)で掻き上げられたオイルOLが、開口部95から第2室S2内に流入するようになっている。
第2室S2内には、開口部95から流入するオイルOLと、コントロールバルブCVから排出されるオイルOLが貯留される。第2室S2内のオイルOLは、第2室S2の下部に設けた連絡部94を通って、第1室S1に戻されるようになっている。
【0053】
図4は、収容部67におけるストレーナ10の配置を説明する模式図である。図4は、ケース6を、図2における紙面奥側で切断して、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPとの接続部が断面で示されるようにした図である。
【0054】
図4に示すように、第1室S1の下部の収容部67は、オイルOLが貯留される貯留部としても機能する。収容部67では、ストレーナ10が、オイルOLの吸込口135を持つ周壁13を、ケース6の底壁部613に対向させて設けられている。
動力伝達装置1では、ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)が駆動されると、第1室S1の下部(収容部67)に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して吸引されて、ポンプ側に供給されるようになっている。
【0055】
図4に示すように、ストレーナ10は、アッパケース11とロアケース12との間に形成した空間S10内に、フィルタ19を配置した基本構成を有している。アッパケース11とロアケース12は、樹脂材料で形成されている。
【0056】
アッパケース11には、筒状の第1接続部15と、円形の接続口17を持つ第2接続部16が設けられている。
ストレーナ10は、第1接続部15の先端15a側をメカオイルポンプMOP側の接続口120に挿入することで、内部の空間S10をメカオイルポンプMOPに連絡させている。
さらに、ストレーナ10の第2接続部16は、接続口17と、隔壁部62側の接続部625(図2参照)とに跨がって挿入された筒状部材(図示せず)を介して、内部の空間S10をケース6側の油路626(図2参照)に連絡させている。油路626は、電動オイルポンプEOP(図2参照)に連絡している。
【0057】
そのため、ストレーナ10は、ふたつのポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)で共用されている。ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)が駆動されると、収容部67内に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して、ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)側に吸引される。
この際に、ストレーナ10内に吸引されたオイルOLがフィルタ19を通過することで、夾雑物がフィルタ19で除去されたオイルOLが、ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)側に吸引される。
【0058】
図5は、ストレーナ10を、ロアケース12側の下方から見た平面図である。
以下の説明において、中心線C1は、ストレーナ10の幅方向(図中、上下方向)の略中間を通る直線である。中心線C2は、ストレーナ10の長手方向(図中、左右方向)の略中間を通ると共に、中心線C1に直交する直線である。
ストレーナ10のロアケース12には、周壁13と、磁石14(14A、14B)(第2の磁石)が設けられている。
【0059】
図5に示すように、ロアケース12では、中心線C2から見て第1接続部15側(図中、左側)に、周壁13が位置していると共に、反対側に、リング状の磁石14(14A、14B)が設けられている。
磁石14A、14Bは、中心線C1を間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
なお、磁石14A、14Bを、区別しない場合には、単純に「磁石14」と表記する。
【0060】
周壁13は、第1側板部131と、第2側板部132と、第3側板部133と、第4側板部134と、から筒状に形成されている。
第1側板部131と、第2側板部132は、中心線C2に沿う向きで、互いに間隔を開けて設けられている。第1側板部131は、第2側板部132よりも中心線C2側に位置している。
第3側板部133と第4側板部134は、中心線C1に沿う向きで設けられている。第3側板部133と第4側板部134は、第1側板部131と第2側板部132の端部同士を接続している。
【0061】
図4に示すように、周壁13の各側板部(第1側板部131、第2側板部132、第3側板部133、第4側板部134)は、ストレーナ10と底壁部613との対向方向に沿う鉛直線VL方向に突出している。
第1側板部131と第2側板部132は、それぞれ鉛直線VLに対して所定の交差角θ131、θ132で傾いている。ここで、第1側板部131の鉛直線VLに対する交差角θ131は、第2側板部132の鉛直線VLに対する交差角θ132よりも小さい(θ131<θ132)。
そのため、周壁13は、先端側に向かうにつれて、車両前後方向の幅Wが狭くなる先細り形状で形成されている。
【0062】
第1側板部131の先端131aは、第2側板部132の先端132aよりも鉛直線VL方向の上側に位置している。
周壁13の底壁部613側の端部は、オイルOLの吸込口135となっている。動力伝達装置1の車両への設置状態を基準とすると、周壁13は、吸込口135の開口方向を、車両後方側の斜め下方に向けて設けられている。
ここで、吸込口135の開口方向とは、吸込口135の開口面に直交する方向であり、吸込口135の開口面とは、第1側板部131の先端131aと第2側板部132の先端132aとを結ぶ直線Lに沿う面を意味する。本実施形態は、この直線Lが鉛直線VLに対して傾きを持って交差している。吸込口135の開口面に沿う直線Lは、磁石14側(図中、左側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の位置が高くなる向きで傾斜している。
【0063】
図4に示すように、ケース6では、底壁部613におけるストレーナ10側の周壁13に対向する領域に、膨出部675が設けられている。膨出部675は、底壁部613をケース6の内側に窪ませて形成されている。断面視において膨出部675は、頂点Pを鉛直線VL方向における上側に向けた略半円形状を成している。
【0064】
図6は、収容部68におけるストレーナ10とメカオイルポンプMOPの配置を説明する模式図である。図6は、ケース6を図4におけるA-A線に沿って切断して、底壁部613の領域を上方から見た状態を模式的に示している。
【0065】
図6に示すように膨出部675は、底壁部613の領域を車幅方向に直線状に延びている。
底壁部613において膨出部675は、接合部611と接合部612との間に位置する領域である。膨出部675は、ボルト穴615aを持つボス部615(図2参照)の延長上を、接合部612側に直線状に延びている。膨出部675は、隔壁部62が設けられた領域まで及んで形成されている。
【0066】
図6に示すように、底壁部613では、膨出部674、675、676、677が、車両前後方向に間隔を開けて設けられている。膨出部674、676、677もまた、底壁部613の領域を車幅方向に直線状に延びている。
膨出部674、676、677は、ボルト穴614a、616a、617aを持つボス部614、616、617(図2参照)の延長上を、接合部612側(図中、上側)に直線状に延びている。
図4に示すように、膨出部674、676、677もまた、底壁部613をケース6の内側に窪ませて形成されている。
【0067】
図4に示すように、ケース6内に配置されたストレーナ10は、周壁13を、底壁部613側の膨出部674と膨出部675との間に位置させている。この状態において、ストレーナ10は、オイルOLの吸込口135を、膨出部675の車両前方側の外周面675bに対向させている。
周壁13は、第2側板部132の先端132aを、膨出部675の頂点Pよりも鉛直線VL方向の下側に位置させると共に、第1側板部131の先端131aを、膨出部675の頂点Pよりも鉛直線VL方向の上側に位置させている。
【0068】
車両前方側(図中、右側)から見ると、吸込口135の先端132a側が、膨出部675の頂点P側の領域とオーバーラップしている。すなわち、吸込口135の先端132a側と、膨出部675の頂点P側とが、所定の高さ範囲の領域R1に亘って重なる位置関係で設けられている。
【0069】
また、鉛直線VL方向の上側から見ると、吸込口135は、膨出部675の車両前方側の領域とオーバーラップしている。すなわち、吸込口135と、膨出部675の車両前方側とが、所定の範囲の領域R2に亘って重なる位置関係で設けられている。
【0070】
図7は、回転伝達機構150を説明する図である。
図2に示すように、動力伝達装置1では、ストレーナ10から見て収容部68(図中、右側)に、メカオイルポンプMOPが位置している。
【0071】
図7に示すように、メカオイルポンプMOPは、回転伝達機構150を介して伝達される回転駆動力で駆動される。回転伝達機構150は、ドライブスプロケット151と、ドリブンスプロケット152と、チェーン153と、から構成される。
図1に示すように、ドライブスプロケット151は、トルクコンバータT/Cのインペラスリーブ155を介して入力される回転駆動力で、回転軸X1回りに回転する。
インペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20に外挿されている。入力軸20は、周壁部641の開口を塞ぐダミーカバー21で回転可能に支持されている。
ドライブスプロケット151とインペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20で回転可能に支持されている。
【0072】
図7に示すように、ドライブスプロケット151に入力された回転は、チェーン153を介して、ドリブンスプロケット152に伝達される。ドリブンスプロケット152は、伝達された回転で回転軸X5回りに回転する。ドリブンスプロケット152が回転すると、ドリブンスプロケット152が連結されたメカオイルポンプMOPの回転軸が回転して、メカオイルポンプMOPが駆動される。
これにより、ケース6の下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して、メカオイルポンプMOPに吸引される。
【0073】
図7に示すように、ケース6の下部には、バッフルプレート160が設けられている。
バッフルプレート160は、ドリブンスプロケット152で掻き上げられるオイルOLの移動方向を調整するために設けられている。バッフルプレート160は、第1カバー部161と、第2カバー部165と、から構成される。
図6に示すように、第1カバー部161の側板部162は、ドリブンスプロケット152とメカオイルポンプMOPとの間に位置している。側板部162は、ドリブンスプロケット152の側面を覆う大きさで形成されている。
側板部162は、ドリブンスプロケット152の外周を囲む周壁部163を有している。図7に示すように、周壁部163は、ドリブンスプロケット152の底壁部613側(下方側)の外周を囲む円弧状を成している。
側板部162は、ファイナルギア45側(図中、左側)に延びる延出部164を有しており、延出部164の先端部は、ケース6側の周壁部641にボルトBLで固定されている。
【0074】
図6に示すように、第2カバー部165は、ドリブンスプロケット152の側面を覆う側板部166を有している。側板部166は、ドリブンスプロケット152におけるメカオイルポンプMOPとは反対側の側面を覆う大きさの板状部材である。
【0075】
図8は、バッフルプレート160の第2カバー部165の平面図である。
図9は、バッフルプレート160の第2カバー部165の斜視図である。
図10は、第2カバー部165のフランジ部168における磁石14C(第1の磁石)の支持を説明する図である。図10は、図8におけるA-A線に沿ってフランジ部168の部分を切断した断面を示しており、バッフルプレート160の第1カバー部161と磁石14Cが仮想線で示されている。
【0076】
図8および図9に示すように、側板部166には、ボルト孔167aを持つ連結片167と、磁石14Cの膨出部168aを持つフランジ部168が、一体に設けられている。
連結片167とフランジ部168は、メカオイルポンプMOPの回転軸X5を間に挟んで略対称となる位置関係で設けられている(図8参照)。
第2カバー部165は、連結片167をケース6側の周壁部641にボルトBLで固定することで、ケース6に取り付けられる(図7参照)。
【0077】
図9および図10に示すように、フランジ部168は、側板部166に対して略直交する方向に折り曲げられている。バッフルプレート160をケース6に取り付けた際に、フランジ部168は、回転軸X5に沿う向きで配置される。
フランジ部168の中央部には、膨出部168aが設けられている。膨出部168aは、フランジ部168を外側に膨出させて形成されている。
【0078】
膨出部168aには、リング状の磁石14Cが外嵌して位置決めされている。
本実施形態では、バッフルプレート160のうちの少なくとも第2カバー部165が、磁性材料で形成されている。そのため、膨出部168aに外嵌した磁石14Cは、膨出部168aで位置決めされつつ、フランジ部168に磁着する。これにより、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時の振動などにより、磁石14Cが位置ズレし難くなる。
なお、フランジ部168を、側板部166とは別体に設けて、磁性材料で形成されたフランジ部168を側板部166に取り付けるようにしても良い。
【0079】
図11は、バッフルプレート160に取り付けられた磁石14Cの作用を説明する模式図である。図12は、ケース6の底壁部613に沿うオイルOLの移動経路を説明する図である。
【0080】
図11に示すように、ケース6内にバッフルプレート160を配置すると、フランジ部168が、底壁部613における隣接する膨出部674、677の間の領域に対向配置される。フランジ部168は、膨出部674に対向している。よって、フランジ部168に設けられた磁石14Cは、底壁部613側の膨出部674に対向配置される。
磁石14Cは、膨出部674における第2室S2側の表面674bとの間に隙間をあけて対向している。磁石14Cの対向方向における表面674bとの間隔が最も狭い部分は、隙間W674である。この隙間W674は、ケース6の底壁部613と、バッフルプレート160との間の隙間のうちの最も狭い部分の隙間W160よりも狭くなっている(W160>W674)。
【0081】
バッフルプレート160から見て、第2室S2側には、壁部682が位置している。壁部682は、第1室S1と第2室S2との境界壁であり、壁部682の下部には、連絡部94が開口している。
前記したように、第2室S2内のオイルOLが、連絡部94を通って第1室S1に戻されるようになっている。
【0082】
図12に示すように、ケース6の底壁部613は、壁部682から離れるにつれて鉛直線VL方向における下側に位置する向きで傾斜している。そのため、連絡部94を通って第1室S1戻されたオイルOLは、自重により、底壁部613の傾斜した領域(傾斜領域613a)に沿って、ストレーナ10側に移動する。
そして、ストレーナ10の吸込口135は、連絡部94よりも下方に高さh11だけ離れて位置している。そのため、傾斜領域613aに沿って移動するオイルOLは、連絡部94よりも下方に位置する吸込口135から、ストレーナ10の内部に吸引される。
【0083】
この際に、傾斜領域613aを移動するオイルOLは、バッフルプレート160と底壁部613との間の隙間を通って、ストレーナ10側に移動する。
ストレーナ10に取り付けられた磁石14Cは、底壁部613側の下方を向いて配置されている。そして、磁石14Cは、底壁部613から内側に膨出した膨出部674に対向している。
そのため、磁石14Cは、第2室S2から第1室S1に戻されてストレーナ10に向かうオイルOLの移動経路上で、底壁部613に対向配置されている。
【0084】
ここで、本明細書における「対向配置」は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VLに沿う方向で、磁石14Cと底壁部613とが向き合って配置されていることを意味する。よって、磁石14Cが底壁部613に対向配置されていると記載した場合、磁石14Cと底壁部613が鉛直線VLに並んでいることを意味する。
よって、図11における対向方向は、磁石14Cと膨出部675との対向方向ともいえる。
【0085】
図6に示すように、連絡部94から第1室S1に戻されたオイルOLは、ポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)の吸引力により、ストレーナ10の周壁13側に引き寄せられる。
【0086】
そのため、第1室S1では、鉛直線VL方向から見ると、連絡部94と、周壁13の第3側板部133とを結ぶ直線L94aと、連絡部94と、周壁13の第4側板部134とを結ぶ直線L94bとの間の領域が、オイルOLの流量が最も多くなる。
さらに、図12に示すように、第1室S1では、動力伝達装置の回転軸X方向から見ると、直線L94cと、底壁部613の傾斜領域613aとの間の領域が、オイルOLの流量が最も多くなる。
ここで、直線L94cは、連絡部94の上縁と、ストレーナ10の吸込口135の上縁(第1側板部131の先端131a:図4参照)と、を通る直線である。
ハウジングHS(第1室S1)の内部では、動力伝達装置1の駆動時に、鉛直線VL方向における底壁部613の傾斜領域613aと直線L94cとの間の高さ範囲のオイルOLの流量が最も多くなる。
【0087】
本実施形態では、バッフルプレート160のフランジ部168に支持された磁石14Cの少なくとも一部が、直線L94aと直線L94bとの間の領域(オイルOLの移動領域:図6参照)と、直線L94cと傾斜領域613aとの間の領域(オイルOLの移動領域:図12参照)に位置するように、フランジ部168の形状と配置が設定されている。
【0088】
以下、バッフルプレート160に設けた磁石14Cの作用を説明する。
動力伝達装置1を搭載した車両の前進走行時には、図11に示すように、第1室S1内の下部に貯留されたオイルOLは、回転軸X4周りに回転するファイナルギア45で掻き上げられる。
図11では、ファイナルギア45が時計回り方向CWに回転する。そのため、ファイナルギア45でかき挙げられたオイルOLは、第1室S1内の上部を第2室S2側(図中、右側)に移動する。
【0089】
第1室S1と第2室S2との境界壁である壁部682の上部には、開口部95が設けられている。そのため、ファイナルギア45で掻き上げられたオイルOLの多くは、開口部95から第2室S2内に流入する。
第2室S2の下部には、第1室S1に連絡する連絡部94が開口しているので、第2室S2内のオイルOLが、第1室S1に戻される。
【0090】
ここで、第2室S2には、第1室S1から流入するオイルOLに加えて、コントロールバルブCVから排出される余剰のオイルOLが貯留される。そして、第2室S2の下部に開口する連絡部94は、開口径が開口部95よりも小さい。
そのため、動力伝達装置1の駆動時には、第2室S2内のオイルOLの高さ(オイルレベルOL_Level)が、第1室S1内のオイルOLの高さ(オイルレベルOL_Level)よりも高くなる(図11参照)。
【0091】
車両の走行時には、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPのうちの少なくとも一方が駆動される。そのため、ケース6の下部の収容部67内のオイルOLは、底壁部613に対向配置された吸込口135から、ストレーナ10の内部に吸引される。
そのため、収容部67では、吸込口135に向かうオイルOLの流れが形成される(図12参照)。
【0092】
連絡部94から第1室S1に戻されたオイルOLは、ポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)の吸引力により、ストレーナ10に向けて移動する。
図12に示すように、ケース6の底壁部613は、壁部682からストレーナ10が設けられた領域までの範囲が、壁部682から離れるにつれて鉛直線VL方向の高さが低くなる傾斜領域613aとなっている。
そのため、連絡部94を通って第1室S1戻されたオイルOLは、自重によっても、底壁部613に沿って、ストレーナ10が位置する下方に向けて移動する。
底壁部613に沿ってストレーナ10側に向けて移動するオイルOLは、バッフルプレート160と底壁部613との間の隙間を通って、ストレーナ10側に移動する。
【0093】
ここで、バッフルプレート160と底壁部613との間の隙間は、磁石14Cが設けられた領域で最も狭くなる(図11参照)。そのため、連絡部94側から移動したオイルOLは、膨出部674の部分で移動が妨げられて、移動速度が遅くなる。
磁石14Cは、膨出部674の表面674bに対向配置されているので、移動速度が低下したオイルOLから、より多くの夾雑物が磁石14Cに捕捉できるようになっている。
さらに、図6に示すように、第1室S1内では、磁石14Cは、連絡部94からストレーナ10に向けて移動するオイルOLの流量が最も多くなる領域(直線L94aと直線L94bとの間の領域:オイルOLの移動経路)に位置している。さらに、図12に示すように、磁石14Cは、連絡部94からストレーナ10に向けて移動するオイルOLの流量が最も多くなる領域(直線L94cと傾斜領域613aとの間の領域:オイルOLの移動経路)そのため、より多くの夾雑物が磁石14Cに捕捉できるようになっている。
【0094】
さらに、ストレーナ10が配置された収容部67は、開口部620を介して第3室S3に連絡している。
第3室S3には、バリエータ3が位置しており、第3室S3の下部には、バリエータ3の潤滑や冷却などに用いられたオイルが自重により移動する。そのため、第3室S3の下部に移動したオイルOLが、開口部620を通って、第1室S1に戻されるようになっている。図12の場合、紙面奥側に開口する開口部620から、紙面手前側に位置するストレーナ10に向かうオイルOLの流れが発生する。
【0095】
図6に示すように、ケース6内に配置されたストレーナ10は、吸込口135を、底壁部613側の膨出部674と膨出部675との間に位置させている。この状態において、ストレーナ10は、オイルOLの吸込口135を、膨出部675の車両前方側の外周面675b(図4参照)に対向させている。
図4に示すように、ストレーナ10の周壁13は、第2側板部132の先端132aを、膨出部675の頂点Pよりも鉛直線VL方向の下側に位置させると共に、第1側板部131の先端131aを、膨出部675の頂点Pよりも鉛直線VL方向の上側に位置させている。
【0096】
車両前方側(図4における右側)から見ると、吸込口135の先端132a側が、膨出部675の頂点P側の領域とオーバーラップしている。すなわち、吸込口135の先端132a側と、膨出部675の頂点P側とが、所定の高さ範囲の領域R1に亘って重なる位置関係で設けられている。
【0097】
また、鉛直線VL方向の上側から見ると、吸込口135は、膨出部675の車両前方側の領域とオーバーラップしている。すなわち、吸込口135と、膨出部675の車両前方側とが、所定の範囲の領域R2に亘って重なる位置関係で設けられている。
【0098】
図4および図12に示すように、ストレーナ10の吸込口135は、開口を、車両後方側の斜め下方に向けて配置されている。
そのため、開口部620から収容部67に戻されたオイルOLのうち、磁石14(14A、14B、14D)が位置する車両後方側のオイルOLのほうが、車両前方側のオイルOLよりも、吸込口135からストレーナ10内に積極的に吸入される。
鉛直線VL方向の上側から見ると、車両後方側から吸込口135に向かうオイルOLの移動経路の途中に、磁石14(14A、14B、14D)が位置している。そのため、吸込口135に向かうオイルOLは、磁石14(14A、14B、14D)の磁力が及ぶ範囲を通って吸込口135に到達するようになっている。
【0099】
ここで、ケース6内の下部に貯留されたオイルOLは、動力伝達機構の潤滑や冷却に用いられたオイルOLであり、金属粉などの夾雑物(異物)を含んでいる。
本実施形態では、磁石14の近傍を通過した後のオイルOLが、ストレーナ10内に積極的に吸入されるようにしている。そのため、オイルOLが磁石14の下方を通過する際に、オイルOLに含まれる金属粉などの異物が、磁石14の磁力により引き寄せられて、磁石14に捕捉されるようになっている。これにより、吸込口135からストレーナ10の内部に吸入されるオイルOLに含まれる異物の量を低減できるようにしている。
【0100】
ここで、膨出部675は、磁石14(14A、14B)が配置された領域と吸込口135との間に位置している。そして、ストレーナ10と底壁部613との鉛直線VL方向の隙間は、膨出部675の部分で狭くなっている。
よって、磁石14側から吸引されるオイルOLの流れが、膨出部675の部分で阻害されて遅くなる。そうすると、膨出部675から見て磁石14(14A、14B)側の領域でのオイルOLの流れが遅くなる結果、オイルOLに含まれる異物が磁石14(14A、14B)に捕捉されやすくなる。これにより、ストレーナ10の内部に吸引されるオイルOLに含まれる異物の量をさらに低減できるようにしている。
【0101】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHS(ケース)と、
動力伝達機構の作動用のオイルを調圧するコントロールバルブCVと、
コントロールバルブCVにオイルを供給するポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)と、
ポンプに吸引されるオイルOLが通過するストレーナ10と、を有する。
ハウジングHS内には、
ストレーナ10が底壁部613に対向配置された第1室S1と、
コントロールバルブCVから排出されたオイルOLが流入する第2室S2と、
第1室S1と第2室S2とを連絡する連絡部94が、設けられている。
第1室S1内では、連絡部94とストレーナ10とを結ぶオイルの移動経路上で、磁石14C(第1の磁石)が底壁部613に対向配置されている。
【0102】
コントロールバルブCVから排出される余剰のオイルOLは、ストレーナ10を介してポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)に再び吸引される。上記のように構成すると、コントロールバルブCV側からストレーナ10に向かうオイルOLの移動経路上に磁石14Cが配置される。これにより、オイルOLに含まれる異物を磁石14Cで補足できるので、ストレーナ10に流入するオイルOLに含まれる異物の量を抑制できる。
【0103】
(2)コントロールバルブCVは、内部に複数のスプール弁SP(調圧弁)を有している。
コントロールバルブCVは、ハウジングHSの第2室S2内でスプール弁SPを上下方向に並べる向きで、縦置き配置されている。
第2室S2では、コントロールバルブCVの下端縁924(下部)に近接する位置に、連絡部94が開口している。
【0104】
コントロールバルブCVが縦置き配置され、第2室S2において、コントロールバルブCVの下端縁924(下部)に近接する位置に、連絡部94が開口していると、コントロールバルブCV側からストレーナ10に向かうオイルOLは、ハウジングHSの底壁部613に沿って移動する。そのため、磁石14Cを底壁部613に対向配置すると、オイルOLに含まれる異物を磁石で、いっそう捕捉できる。
【0105】
(3)ポンプは、駆動源の回転駆動力で駆動するメカオイルポンプMOPである。
ハウジングHS内では、コントロールバルブCVとストレーナ10との間に、駆動源の回転駆動力をメカオイルポンプMOPに伝達する回転伝達機構150が設けられている。
磁石14Cは、回転伝達機構150のドリブンスプロケット152を覆うバッフルプレート160に設けられている。
【0106】
このように構成すると、コントロールバルブCV側からストレーナ10に向かうオイルOLの移動経路上にバッフルプレート160が位置することになる。そのため、磁石14Cをバッフルプレート160に設けることで、磁石14Cを設置するための専用の部品を別途用意する必要が無い。これにより、部品点数の増加によるコストの上昇を好適に防止できる。
また、コントロールバルブCVが縦置きされることにより、ケース6の下部に開口を覆う鉄製のオイルパンが設けられていない。そのため、ストレーナ10は、ケース6の底壁部613に近接配置されているが、ケース6は、アルミニウム合金などの非磁性の材料で形成されているため、磁石14Cをケース6に設ける場合には、磁石14Cを位置決めするための部位をケース6に設けることや、専用の位置決め部品を別途用意する必要がある。
上記のとおり、既存の部品であるバッフルプレート160に磁石14Cを設けることで、磁石14Cを位置決めするための部位をケース6に設けることや、専用の位置決め部品を別途用意する必要がない。磁石14Cを位置決めするための部位をケース6に設けることや、専用の位置決め部品を別途用意する場合に比べて、動力伝達装置1の作成コストの低減が期待できる。
【0107】
(4)バッフルプレート160は、磁石14が設置されるフランジ部168を有している。
【0108】
このように構成すると、少なくともフランジ部168を磁性材料で形成することで、磁石14Cを簡単に位置決めできる。また、バッフルプレート160から延びるフランジ部168に磁石14Cを設けることで、フランジ部168を、磁石14Cとの接触面積を確保できる大きさで設けることができる。
これにより、磁石14Cとフランジ部168との接触面積を増やして、磁石14Cのフランジ部168からの脱落を好適に防止できる。
【0109】
(5)底壁部613には、ケース6の内側に膨出した膨出部674、675、676、677が、底壁部613の周方向に間隔をあけて設けられている。
フランジ部168は、底壁部613において隣接する膨出部674、677の間の領域に対向する位置に設けられている。
【0110】
膨出部674、675、676、677は、ケース6の内側に向けて膨出している。そのため、ストレーナ10とコントロールバルブCVの並び方向で隣接する膨出部の間の領域は、膨出部が位置する領域よりも、バッフルプレート160との隙間が広くなっている。
そのため、上記のように構成すると、隙間が広くなった部分に磁石14Cが配置される。磁石14Cの配置は、作業者が磁石14Cを持つ手指を、底壁部613とフランジ部168との間の隙間に挿入することで行われる。そのため、膨出部674とバッフルプレート160との隙間に磁石14Cを設ける場合よりも、磁石14Cの設置作業が容易に行える。これにより、磁石14Cを設置する際の作業効率の低下を好適に防止できる。
【0111】
(6)ストレーナ10は、底壁部613に対向する下部に、オイルOLの吸込口135を有している。
ストレーナ10の下部には、磁石14A、14B(第2の磁石)が設けられている、
ストレーナ10の下部において磁石14A、14Bは、オイルの吸込口135から見てコントロールバルブCVとは反対側に位置している。
【0112】
このように構成すると、オイルの吸入口135から見てコントロールバルブCVとは反対側にも、磁石14A、14Bが配置される。そのため、コントロールバルブCVとは反対側からオイルの吸入口135に向けて移動するオイルOLに含まれる異物を、磁石14A、14Bで捕捉することができる。これにより、ストレーナ10内に流入するオイルOLに含まれる異物の量を抑えることができる。
【0113】
(7)第1室S1には、動力伝達機構を介した動力伝達時に回転する回転体であるファイナルギア45と、ファイナルギア45の外周を囲むバッフルプレート66(第2バッフルプレート)が、設けられている。
ファイナルギア45とバッフルプレート66は、ストレーナ10から見てコントロールバルブCVとは反対側に位置している。
バッフルプレート66の外周に、磁石14D(第3の磁石)が設けられている。
【0114】
第1室S1では、バッフルプレート66側の下部に、ストレーナ10に吸引される前のオイルOLが貯留される。バッフルプレート66の外周に磁石14Dを設けることで、ストレーナ10に吸引される前のオイルOLに含まれる異物をより好適に除去できる。
【0115】
(i)回転伝達機構150は、メカオイルポンプMOPの回転軸X5回りに回転するドリブンスプロケット152と、ドリブンスプロケット152の外周に巻き掛けられたチェーン153を有する。
バッフルプレート160は、ドリブンスプロケット152の回転軸X5方向の一方の側面を覆う第1カバー部161と、ドリブンスプロケット152の回転軸X5方向の他方の側面を覆う第2カバー部165と、チェーン153の外周を覆う周壁部163と、を有している。
周壁部163は、第1カバー部161に設けられている。磁石14Cが取り付けられるフランジ部168は、第2カバー部165に設けられている。
【0116】
このように構成すると、バッフルプレート160の機能を損なうことなく、バッフルプレート160上の任意の位置に、フランジ部168を設けることができる。よって、磁石14Cの設置の自由度が向上する。
【0117】
(ii)フランジ部168には、磁石14Cの係止部となる膨出部168aが設けられている。
【0118】
例えば、磁石14Cがリング状を成している場合には、磁石14Cの中央の開口に挿入可能な大きさの係止部をフランジ部168に設けることで、磁石14Cを所望の位置に位置決めできる。また、開口に係止部が挿入されることにより、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時の振動などで磁石14Cが位置ズレすることを好適に防できる。
【0119】
(iii)フランジ部168で支持された磁石14Cは、ストレーナ10とフランジ部168との間に位置する膨出部674を向いて設けられている。
磁石14Cは、膨出部674におけるコントロールバルブCV側の表面674bに、隙間W674をあけて対向している。
【0120】
コントロールバルブCVからストレーナ10側に向かうオイルOL流れが、膨出部674の部分で妨げられる。上記のように構成すると、オイルOLの流れが膨出部674の部分で妨げられて遅くなると共に、移動が妨げられたオイルOLが、磁石14Cのより近傍を通過するようになる。
これにより、オイルOLに含まれる異物を磁石14Cでより適切に捕捉できる。
【0121】
(iv)底壁部613には、連絡部94からストレーナ10側に向かうにつれて、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向の高さが低くなる傾斜領域613aが設けられている。
磁石14Cは、鉛直線VL方向における連絡部94よりも下側に位置している。
【0122】
連絡部94を通って第1室S1に流入したオイルOLは、自重により傾斜領域613aに沿ってストレーナ10側に移動する。動力伝達装置1による動力の伝達時には、ファイナルギア45等の回転体が第1室S1内のオイルOLを掻き上げることで、第1室S1内のオイルの高さが低くなる。そして、連絡部94の上縁を通る直線L94c(図12参照)と傾斜領域613aとの間、そして、直線L94aと直線L94bとの間(図6参照)が、連絡部94からストレーナ10の吸込口135に向かうオイルOLの移動経路であって、オイルの流量が多い領域となる。
上記のように構成すると、第1室S1に流入したオイルOLを速やかにストレーナ10側に移動させて、オイルポンプでのエア吸いの可能性を低減できる。さらに、磁石14Cを油没する位置に配置できるので、オイルOLに含まれる異物を適切に除去できる。
【0123】
(v)動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、ストレーナ10の一部は、開口部620と重なる位置関係で設けられている。
開口部620から見て、バッフルプレート66は、メカオイルポンプMOPとは反対側に位置している。
バッフルプレート66は、弧状壁部662の外周が、開口部620の周縁の近傍に位置している。
磁石14Dは、弧状壁部662の外周に取り付けられて、ケース6の底壁部613におけるストレーナ10の下方に位置する領域を向いて設けられている。
【0124】
バリエータ3を収容する第3室S3の下部に移動したオイルOLは、第3室S3の下部と第1室S1の下部とを連通させる開口部620を通って、第1室S1に戻される。
第1室S1に戻されたオイルOLの一部は、ストレーナ10から見てバッフルプレート66側(図12における左側)と、バッフルプレート160側(図12における右側)を通って、ストレーナ10の吸込口135に向けて移動する。
上記のように構成すると、吸込口135から見て、バッフルプレート66側に、磁石14A、14Bと、磁石14Dが位置することになる。これにより、バッフルプレート66側から吸込口135に向かうオイルOLに含まれる異物を、適切に除去できる。
【0125】
前記した実施形態では、磁石14Cが、膨出部674に対向配置している場合を例示した。磁石14Cは、ストレーナ10に向けて移動するオイルOLに含まれる異物を適切に除去できる位置であれば、他の位置に設けても良い。
そのため、磁石14Cは、バッフルプレート160と底壁部613との隙間を向いて配置されていれば良い。よって、図12における符号R14で示す角度範囲内の何れかの位置に設けられていれば、ストレーナ10に向けて移動するオイルOLに含まれる異物を適切に除去できる。
特に、隣り合う膨出部674、677の間の領域は、オイルOLの移動速度が低下してオイルOLが滞留しやすい領域であるので、膨出部674と膨出部677の間の底壁部613を向いて磁石14Cが設けられていることが好ましい。
【0126】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0127】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
45 ファイナルギア
5 差動装置(動力伝達機構)
6 ケース
66 バッフルプレート(第2バッフルプレート)
613 底壁部
674~677 膨出部
94 連絡部
924 下端縁
10 ストレーナ
135 吸入口(吸込口)
14 磁石
14A、14B 磁石(第2の磁石)
14C 磁石(第1の磁石)
14D 磁石(第3の磁石)
150 回転伝達機構
152 ドリブンスプロケット
160 バッフルプレート
168 フランジ部
CV コントロールバルブ
HS ハウジング(ケース)
MOP メカオイルポンプ(ポンプ)
EOP 電動オイルポンプ(ポンプ)
ENG エンジン(駆動源)
S1 第1室
S2 第2室
SP スプール弁(調圧弁)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12