(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】PPARアゴニストとFXRアゴニストとの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20250114BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250114BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250114BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20250114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250114BHJP
A61K 31/192 20060101ALN20250114BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
A61K31/575 ZNA
A61P1/16
A61P3/00
A61P29/00
A61P37/00
A61P43/00 121
A61K31/192
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019545323
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2018054305
(87)【国際公開番号】W WO2018153933
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503067111
【氏名又は名称】ジェンフィ
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノエル,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ウォークザック,ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ベランジェ,カロル
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】伊藤 幸司
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/127019(WO,A1)
【文献】特表2008-516955(JP,A)
【文献】Journal of Lipid Research、2010年、Vol.51、No.4、p.771-784
【文献】Hepatology、2011年、Vol.54、No.4、p.1303-1312
【文献】Hepatology、2013年、Vol.58、No.6、p.1941-1952
【文献】Journal of Biological Chemistry、2013年、Vol.288、No.17、p.11761-11770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患を治療するための方法において使用するための組合せ物であって、該組合せ物は、
(i)エラフィブラノール(ELA)又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)FXRアゴニスト
を含み、
前記FXRアゴニストが、
オベチコール酸(OCA)又はこの薬学的に許容される塩である、組合せ物。
【請求項2】
線維性疾患を治療するための方法において使用するための組合せ物であって、該組合せ物は、
(i)エラフィブラノール(ELA)又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)FXRアゴニスト
を含み、
前記FXRアゴニストが、
INT-767又はこの薬学的に許容される塩である、組合せ物。
【請求項3】
肝線維症を治療するための方法において使用するための組合せ物であって、該組合せ物は、
(i)エラフィブラノール(ELA)又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)FXRアゴニスト
を含み、
前記FXRアゴニストが、オベチコール酸(OCA)又はこの薬学的に許容される塩である、組合せ物。
【請求項4】
肝線維症を治療するための方法において使用するための組合せ物であって、該組合せ物は、
(i)エラフィブラノール(ELA)又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)FXRアゴニスト
を含み、
前記FXRアゴニストが、INT-767又はこの薬学的に許容される塩である、組合せ物。
【請求項5】
(i)、(ii)及び薬学的に許容される担体
の組成物である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項6】
(i)及び(ii)を含むキットオブパーツである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
(i)及び(ii)が、疾患の治療のための相乗的有効量で存在する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項8】
ELAが、5~80mg/日の用量で投与され、OCAが、7~17mg/日の用量で投与される、
ELAが、40~60mg/日の用量で投与され、OCAが、5~12.5mg/日の用量で投与される、
ELAが、32~48mg/日の用量で投与され、OCAが、4~10mg/日の用量で投与される、
ELAが、27~40mg/日の用量で投与され、OCAが、3~8mg/日の用量で投与される、
ELAが、16~24mg/日の用量で投与され、OCAが、2~5mg/日の用量で投与される、又は
ELAが、8~12mg/日の用量で投与され、OCAが、1~2.5mg/日の用量で投与される、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Washington Manual of Medical Therapeutics(31版、2004年、Lippincott Williams及びWilkins)によれば、肝障害は、種々の疾患群に分類することができ、特に、ウイルス性疾患、薬物及びアルコール関連肝疾患、免疫介在性肝疾患、代謝性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患のような様々な疾患、及び肝機能不全(劇症肝不全又は肝細胞癌のような)の合併症に分類することができる。
【0002】
特に、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、アルコールを殆ど又は全く摂取しない個体におけるアルコール誘発性脂肪肝疾患の組織学的特徴を有する一般的な肝障害である(Yeh Mら、2007年;Marchesiniら、2003年)。NAFLDは、細胞内の異常な脂質保持(一般に脂肪化と定義される)が原因であり、この事象は、肝臓が脂質代謝を主として担当するので、この器官内においてより頻繁である。NAFLDは、肝細胞の破壊に起因する肝臓の炎症、脂肪化、壊死及び線維化を特徴とする、脂肪肝及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む、一連の組織学的形態を有する。NAFLDに関連する状態は様々であり、2型糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリックシンドローム、肝毒性薬物での治療、毒素、感染性因子又は他の外因性原因を含む。
【0003】
NAFLDは、典型的に、良性の非進行性の臨床経過を辿るが、NASHは、重症になる可能性のある状態であり、25%もの患者が、高度の線維化、硬変へと進行し、門脈圧亢進症、肝不全及び肝細胞癌の合併症を経験することがあり、このため、早期の正しい評定が必須となる(Yeh Mら、2007年)。
【0004】
肝イメージングシステムは、肝臓構造及び脂肪化の存在も評価するのに有用である。しかし、肝生検は、依然として、肝線維化を評価するための究極の判断基準であるが、この分析方法は、その侵襲性のため、1つ1つの研究に行うことができない。非侵襲的な肝臓生化学及び代謝評価は、NAFLD及びNASHにおけるような、肝疾患を定義するために使用されることが多い(Gressner Aら、2009年;Vuppalanchi R及びChalasani N、2009年)。血漿を使用することにより、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アルカリホスファターゼ(AP)及び/又はガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)のような酵素の高いレベル、並びに肝臓に由来する他のタンパク質(ハプトグロビン、総ビリルビン、アルファ-2-ミクログロブリン、レジスチン、切断型又はインタクト型サイトケラチン-18を含む)の存在が、血清グルコース及びインスリン抵抗性パラメーターに加えて、一般に測定される。ALAT活性レベルは、NASH患者において増加されることが多い(Angulo Pら、2002年)ので、この判定基準は、肝損傷を測定するための代替マーカーと見なされる。実際に、NAFLD及びNASHを正しく診断するための信頼できる非侵襲的方法は得られておらず、組織学的特徴でさえ、NAFLD又はNASHをアルコール性肝疾患のような他の状態と適切に区別するのに必ずしも十分であるとは限らない(Yeh Mら、2007年;Vuppalanchi R及びChalasani N、2009年)。
【0005】
肝線維性疾患、特に、NAFLD及びNASHを有効に治療するための手段は、いまだに不十分である。NASHを有する患者のための治療は確立されておらず、幾つかの治療選択肢が、臨床試験において試験される(Vuppalanchi R及びChalasani N、2009年;Dowman J.Kら、2009年)。これらの研究は、多くの異なる化学物質ファミリー(フィブレート、チアゾリジンジオン、ビグアニド、スタチン、カンナビノイド)及び治療標的ファミリー(核内受容体、アンジオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、HMG-CoAレダクターゼ)の使用を伴う。最近、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)を伴う研究により、これらの薬物は、肝臓の状態を向上させ得ること、しかし、これらの薬物での治療には、より高いうっ血性心不全及び骨粗鬆症リスク、並びに患者に対する精神的影響に伴う体重増加のような、望ましくない効果がないわけではないことが示された(Dowman J.Kら、2009年;Shiri-Sverdlov Rら、2006年;Neuschwander-Tetriら、2003年)。カンナビノイドの投与を伴う臨床試験は、神経精神崩壊の懸念を生じさせた(Vuppanchi R及びChalasani N、2009年)。現在行われている他の治療法は、NASH薬に関して抗酸化剤としての評定を模索しているが、これらの治療で確信的証拠を示したものはまだない(Nelson Aら、2009年)。
【0006】
現在、NASHのための認可された治療はないが、異なる作用機序を有する2つの化合物-オベチコール酸(OCA、FXRアゴニスト)及びエラフィブラノール-が、現在、第3相臨床試験中である。
【0007】
WO2004005233に開示されているPPAR-アルファ/デルタ二重アゴニストである、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン(エラフィブラノール、又はELA、旧名GFT505)は、多数の消化器病及び肝疾患、特に、PBC(原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitic))及びPSC(原発性硬化性胆管炎)のような胆汁うっ滞性疾患、又は肝疾患、特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のような非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療に有利であり得る特性を有する。
【0008】
エラフィブラノールは、NASHに関して今までに行われた最大の介入研究である、肝生検に基づく1年の第2b相試験(GFT505-2127)において、NASHにおける臨床的有効性について試験された。今までに800名を超える患者及び健常ボランティアに投与されたエラフィブラノールは、NASHに有益な特性、特に、ALAT、ASAT、γGT、ALPを含む、肝機能障害マーカーの向上;インスリン感受性及びグルコース恒常性の向上;血漿トリグリセリド及びLDL-Cの低下並びにHDL-Cレベルの上昇を含む、血漿脂質に対する好適な効果;抗炎症特性;動物疾患モデルにおける組織学的NASHパラメーター(脂肪化、炎症、線維化)に対する有効性-抗線維化活性を含む特性を明示し、2年に及ぶ完全な毒性学的総合発癌性研究において安全性の懸念がないことが確認された。エラフィブラノールは、現在、臨床第3相研究においてNASHの治療について評価されている。臨床第2相研究におけるPBCの治療についてのこの分子の評価も開始された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Washington Manual of Medical Therapeutics(31版、2004年、Lippincott Williams及びWilkins)
【文献】Yeh Mら、2007年
【文献】Marchesiniら、2003年
【文献】Gressner Aら、2009年
【文献】Vuppalanchi R及びChalasani N、2009年
【文献】Angulo Pら、2002年
【文献】Dowman J.Kら、2009年
【文献】Shiri-Sverdlov Rら、2006年
【文献】Neuschwander-Tetriら、2003年
【文献】Nelson Aら、2009年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、
(i)PPARアゴニスト、及び
(ii)FXRアゴニスト
を含む、組合せ物に関する。
【0012】
特定の実施形態において、PPARアゴニストは、エラフィブラノール(以降の説明ではELA)のようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩である。
【0013】
特定の実施形態において、FXRアゴニストは、胆汁酸FXRアゴニスト又は非胆汁酸FXRアゴニストである。さらなる特定の実施形態において、非胆汁酸FXRアゴニストは、Tropifexor(又はLJN452、以降の説明ではLJN452)である。
【0014】
さらなる特定の実施形態において、FXRアゴニストは、オベチコール酸(又はOCA、以降の説明ではOCA)のような半合成胆汁酸誘導体のような、胆汁酸誘導体、又はこの薬学的に許容される塩、若しくはINT-767、又はこの薬学的に許容される塩である。
【0015】
特定の実施形態において、FXRアゴニストは、FXR及びTGR5(Gタンパク質共役型胆汁酸受容体である)に対する二重活性を有する。すなわち、化合物INT-767のような二重FXR/TGR5アゴニスト、又はこの薬学的に許容される塩である。
【0016】
さらなる特定の実施形態において、本発明の組合せ物は、
(i)PPAR、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト、又はこの薬学的に許容される塩、
(ii)FXRアゴニスト、特に、OCA又はこの薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む組成物である。
【0017】
別の特定の実施形態において、組合せ物は、
(i)PPAR、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)FXRアゴニスト、特にOCA又はこの薬学的に許容される塩
を含む、キットオブパーツ(kit of parts)である。
【0018】
さらなる特定の実施形態において、本発明の組合せ物は、
(i)PPARアゴニスト、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩、
(ii)二重FXR/TGR5アゴニスト、特にINT-767又はこの薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む組成物である。
【0019】
別の特定の実施形態において、組合せ物は、
(i)PPARアゴニスト、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)二重FXR/TGR5アゴニスト、特に、INT-767又はこの薬学的に許容される塩
を含むキットオブパーツである。
【0020】
さらなる特定の実施形態において、本発明の組合せ物は、
(i)PPARアゴニスト、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩、
(ii)非胆汁酸FXRアゴニスト、特に、LJN452又はこの薬学的に許容される塩、
及び薬学的に許容される担体
を含む組成物である。
【0021】
別の特定の実施形態において、組合せ物は、
(i)PPARアゴニスト、特に、ELAのようなPPARα/δアゴニスト又はこの薬学的に許容される塩、及び
(ii)非胆汁酸FXRアゴニスト、特に、LJN452又はこの薬学的に許容される塩
を含むキットオブパーツである。
【0022】
本発明のキットオブパーツは、本明細書において言及される疾患のいずれかについての治療における、特に、NAFLD、NASH、肝線維症、肝硬変、PBC又はPSCの治療のための、逐次的使用、別々の使用又は同時使用ためのものである。
【0023】
本発明は、炎症性、代謝性、線維性及び胆汁うっ滞性疾患を含む、多数の疾患の治療のための方法であって、本発明の組合せ物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法にも関する。
【0024】
特定の実施形態において、個別に投与される(i)及び(ii)の量の治療効果の合計よりも(i)及び(ii)の量の併用効果が大きい、相乗的有効量で、(i)及び(ii)が使用される。本発明のおかけで、患者に投与される化合物(i)及び(ii)の各々についての量を、個別に投与される前記化合物(i)及び(ii)の量と比較して、少なくとも1.5分の1、少なくとも2分の1又はさらには少なくとも3分の1以下、例えば少なくとも4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1又は10分の1に、低減させることができる。例えば、臨床試験において患者に投与されるELAの量は、80又は120mg/日であり、臨床試験において患者に投与されるOCAの量は、10又は25mg/日であり、本発明による相乗的量は、3分の1への低減で、27mg又は40mg/日のELA量並びに3及び8mg/日のOCA量であり得る。
【0025】
特定の実施形態において、本発明の組合せ物で治療される患者は、NAFLD、NASH、肝線維症、肝硬変、PBC又はPSCを有する患者である。
【0026】
別の態様において、本発明は、炎症性、代謝性、線維性又は胆汁うっ滞性疾患のような疾患の治療のための方法における使用のための、本発明の組合せ物に関する。この態様において、組合せ物の成分の各々を、相乗的有効量で使用することができる。さらなる実施形態において、疾患は、NAFLD、NASH、肝線維症、肝硬変、PBC又はPSCである。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、炎症性、代謝性、線維性又は胆汁うっ滞性疾患のような疾患の治療のための医薬品の製造における本発明の組合せ物の使用に関する。この態様において、組合せ物の成分の各々を、相乗的有効量で使用することができる。さらなる実施形態において、疾患は、NAFLD、NASH、肝線維症、肝硬変、PBC又はPSCである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】CDAA/chol摂取ラット(n=10/群)における肝線維症に対するエラフィブラノール(GFT505)、OCA及びこれらの組合せの効果の図である。 線維化面のパーセンテージは、肝臓断面積に対するピクロシリウス陽性領域の形態学的定量により評定した。データは、平均±SDとして表示されている。スチューデントt検定を使用して、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001。クラスカル・ウォリス及び未補正ダン事後検定を使用して、§p<0.05、§§p<0.01、§§§p<0.001、§§§§p<0.0001。HSA、最高単剤モデル。
【
図2】CDAA/chol摂取ラット(n=10/群)における肝コラーゲン含量に対するエラフィブラノール(GFT505)、OCA及びこれらの組合せの効果の図である。 データは、平均±SDとして表示されている。スチューデントt検定を使用して、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001。一元配置ANOVA及び未補正フィッシャー事後検定を使用して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。クラスカル・ウォリス及び未補正ダン事後検定を使用して、§p<0.05、§§p<0.01、§§§p<0.001、§§§§p<0.0001。HSA、最高単剤モデル。
【
図3-1】CDAA/chol摂取ラット肝臓(n=10/群)における組織再構築及び炎症に関与する遺伝子の発現に対するエラフィブラノール(GFT505)、OCA及びこれらの組合せの効果の図である。 αSMA(ACTA2)、TIMP1及びTGFβの発現を、リアルタイム定量的PCRにより評定した。データは、平均±SDとして表示されている。スチューデントt検定を使用して、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001。一元配置ANOVA及び未補正フィッシャー事後検定を使用して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。クラスカル・ウォリス及び未補正ダン事後検定を使用して、§p<0.05、§§p<0.01、§§§p<0.001、§§§§p<0.0001。HSA、最高単剤モデル。
【
図3-2】CDAA/chol摂取ラット肝臓(n=10/群)における組織再構築及び炎症に関与する遺伝子の発現に対するエラフィブラノール(GFT505)、OCA及びこれらの組合せの効果の図である。 αSMA(ACTA2)、TIMP1及びTGFβの発現を、リアルタイム定量的PCRにより評定した。データは、平均±SDとして表示されている。スチューデントt検定を使用して、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001。一元配置ANOVA及び未補正フィッシャー事後検定を使用して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。クラスカル・ウォリス及び未補正ダン事後検定を使用して、§p<0.05、§§p<0.01、§§§p<0.001、§§§§p<0.0001。HSA、最高単剤モデル。
【
図4】TGFβ誘発性hHSCにおけるエラフィブラノール及びINT-767の差次的抗線維化効果の図である。 血清欠乏性HSCを、1時間、エラフィブラノール(A)及びINT-767(B)と共にプレインキュベートし、その後、線維形成促進性サイトカインTGFβ1(1ng/ml)で活性化した。48時間のインキュベーション後、α-SMAの発現をELISAにより測定した。得られた値を、TGFβ1対照に対する阻害パーセンテージに変換した。データは、平均(4回反復)±標準偏差(SD)として表示されている。
【
図5】エラフィブラノールとINT-767の組合せがTGFβ1誘発性hHSCにおけるα-SMA産生を相乗的に阻害することを示す図である。 組合せを用量応答行列形式で検定し、エクセス・オーバー・ブリス(EOB:Excess Over Bliss)相加作用モデルに従って分析した。エラフィブラノール(行)及びINT-767(列)の希釈系列を、それらのそれぞれのDMSO対照を含めて、調製した。得られた混合物を血清欠乏性HSCに添加し、1時間後に線維形成促進性サイトカインTGFβ1(1ng/ml)で活性化した。(A)全ての組合せペアについてのTGFβ1対照に対するα-SMA阻害パーセンテージ。データは、4回反復の平均として表示されている。(B)EOBスコアは、材料及び方法における記載の通りに算出した。EOB値>10を有するいずれの化合物ペアも、相乗的と考えられた(薄灰色から黒色に着色されている)。全ての組合せを含む総EOBスコアも算出した。(C)相乗的組合せペアから導出したデータ値を棒グラフ表示でプロットした。データは、平均(4回反復)±標準偏差(SD)として表示されている。最高単剤に対する組合せ群の比較のためにスチューデントt検定を使用して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 ****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上文で使用の用語「投与すること」は、経口、皮下、舌下、経粘膜、非経口、静脈内、動脈内、頬側、舌下、局所、膣、直腸、眼科的、耳、鼻、吸入、筋肉内、骨内、くも膜下腔内及び経皮投与又はこれらの組合せのような、あらゆる投与方法を含む。好ましい実施形態において、化合物は、経口投与され、特に、1つ以上の錠剤の形態で投与される。
【0030】
「投与すること」は、特定の化合物を含む剤形を処方すること、又はそのような剤形の処方箋の調剤をすることも、含むことができる。「投与すること」は、特定の化合物又はこの化合物を含む剤形を伴う方法を行うために指示を与えることも含むことができる。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「疾患」は、疾患、障害、状態、症状又は適応症を指す。この用語は、語句「疾患又は障害」と同義で使用される。
【0032】
上文で及び本開示を通して用いられる場合、用語「治療有効量」は、関連する障害、状態又は副作用の治療に関して所望の結果を達成するために必要な投薬量で、必要な期間にわたって、有効な量を指す。本発明の成分の有効量が、選択される特定の化合物、成分又は組成物、投与経路、及び個体において所望の応答を惹起する成分の能力によってばかりでなく、緩和すべき状態の病状又は重症度、個体のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の存在状態、及び治療される状態の重症度、併用薬物療法又はそのときに特定の患者が従う特別食のような因子、並びに当業者が認知する他の因子によっても、患者ごとに異なり、適切な投薬量が最終的には担当医の自由裁量であることは、理解される。投薬レジメンは、治療応答の向上が得られるように調整することができる。有効量は、成分のいかなる毒性又は有害効果よりも治療有益効果のほうが上回る量でもある。
【0033】
用語「相乗的」は、本明細書において使用される場合、本発明の組合せ物及び方法で達成される効果が、組合せの成分から又は成分の1つを含む方法から、別々に、本明細書の方法及び組成物で用いられる量で得られる効果の合計より、大きいことを意味する。そのような相乗作用は、エクセス・オーバー・ブリス(EOB)法を使用することによる方法のような、当技術分野において周知の方法に従って、判定することができる。
【0034】
本発明の組合せ物は、別々に使用されるその成分の各々に関して達成可能な効果より良好な効果を、特に、相乗的有効量で使用されたとき、達成することができる。「相乗的有効量」は、それを必要とする対象に投与されたとき相乗的効果の達成を可能にする、組合せ物の成分の各々についての量である。言い換えると、成分(i)及び(ii)が相乗的有効量で使用されたとき、(i)及び(ii)の量の併用効果は、個別に投与される(i)及び(ii)の量の治療効果の合計より大きい。上述のように、患者に投与される化合物(i)及び(ii)の各々についての量を、個別に投与される前記化合物(i)及び(ii)の量と比較して低減させることができる。例えば、各成分の量は、少なくとも1.5分の1、少なくとも2分の1又はさらには少なくとも3分の1以下、例えば、少なくとも4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1又は10分の1に、低減させることができる。例えば、臨床試験において患者に投与されるELAの量は、80又は120mg/日であり、臨床試験において患者に投与されるOCAの量は、10又は25mg/日であり、本発明による相乗的量は、3分の1への低減で、27mg又は40mg/日のELA量及び3又は8mg/日のOCA量であり得る。
【0035】
特定の実施形態によれば、PPARアゴニストは、PPAR-アルファアゴニスト、PPAR-ガンマアゴニスト、PPAR-デルタアゴニスト、PPAR-アルファ/ガンマ二重アゴニスト、PPARアルファ/デルタ二重アゴニスト、PPARガンマ/デルタ二重アゴニスト又はPPAR-アルファ/ガンマ/デルタ汎アゴニストである。
【0036】
特定の実施形態において、組合せ物の成分(ii)は、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-ガンマアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-デルタアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファ/デルタ二重アゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファアゴニスト及び少なくとも1つのPPARデルタアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファ/ガンマ二重アゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファアゴニスト及び少なくとも1つのPPARガンマアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-ガンマ/デルタ二重アゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-ガンマアゴニスト及び少なくとも1つのPPARデルタアゴニスト、
- 少なくとも1つのPPAR-アルファ/ガンマ/デルタ汎アゴニスト、並びに
- 少なくとも1つのPPAR-アルファアゴニスト、少なくとも1つのPPAR-ガンマアゴニスト及び少なくとも1つのPPAR-デルタアゴニスト
である。
【0037】
本発明によれば、用語「PPARアゴニスト」は、脂質及びグルコース恒常性において中心的役割を果たす薬物のクラスである、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニストを指す。PPARαは、主として脂肪酸代謝に影響を与え、その活性化は、脂質レベルを低下させ、その一方で、PPARγは、脂肪生成、エネルギーバランス及び脂質生合成の調節に主として関与する。PPARδは、主に骨格筋及び心筋における、脂肪酸酸化に関与するが、血中グルコース及びコレステロールレベルも調節する。
【0038】
本発明によれば、用語「PPARアルファアゴニスト」は、本明細書において使用される場合、これらに限定されないが、フェノフィブレート、シプロフィブレート、ペマフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、ビニフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブリン酸、ニコフィブレート、ピリフィブレート、プラフィブリド、ロニフィブレート、テオフィブレート、トコフィブレート及びSR10171を含む。
【0039】
本発明によれば、用語「PPARガンマアゴニスト」は、本明細書において使用される場合、これらに限定されないが、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001及びALL-4を含む。
【0040】
本発明によれば、用語「PPARデルタアゴニスト」は、本明細書において使用される場合、これらに限定されないが、GW501516(Endurabol、すなわち({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))又はMBX8025(Seladelpar、すなわち{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[1,2,3]トリアゾール-4-イルメチルスルファニル(sylfanyl)]-フェノキシ}-酢酸)又はGW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾリル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)又はL165041又はHPP-593又はNCP-1046を含む。
【0041】
本発明によれば、本明細書において使用される用語「PPARアルファ/ガンマアゴニスト」(別名グリタザール)は、これらに限定されないが、サログリタザール、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール、DSP-8658を含む。
【0042】
本発明によれば、本明細書において使用される用語「PPARアルファ/デルタアゴニスト」は、これらに限定されないが、ELA又はT913659を含む。
【0043】
本発明によれば、本明細書において使用される用語「PPARガンマ/デルタアゴニスト」は、これらに限定されないが、共役リノール酸(CLA)、T3D-959を含む。
【0044】
本発明によれば、本明細書において使用される用語「PPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト」は、これらに限定されないが、IVA337(Lanifibranor)又はTTA(テトラデシルチオ酢酸)又はBavachinin又はGW4148又はGW9135又はベンザフィブラート又はロベグリタゾン又はCS038を含む。さらなる実施形態において、PPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニストは、2-(4-(5,6-メチレンジオキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-メチルフェノキシ)-2-メチルプロパン酸(MHY2013)である。
【0045】
PPARアゴニストは、塩、水和物、溶媒和物、多形又は共結晶の形態であってもよい。PPARアゴニストはまた、塩の水和物、溶媒和物、多形又は共結晶の形態であってもよい。
【0046】
より特定の実施形態において、PPARアゴニストは、式(I)の化合物:
【0047】
【化1】
(式中、
Y1は、ハロゲン、Ra又はGa-Ra基を表し、
Aは、CH=CH又はCH2-CH2基を表し、
Y2は、Gb-Rb基を表し、
Ga及びGbは、同一であり又は異なり、酸素又は硫黄原子を表し、
Raは、水素原子、非置換(C1~C6)アルキル基を表し、1個以上のハロゲン原子、(C1~C6)アルコキシ若しくは(C1~C6)アルキルチオ基で置換されている、(C6~C14)アリール基若しくは(C1~C6)アルキル基を表し、(C3~C14)シクロアルキル基、(C3~C14)シクロアルキルチオ基又は複素環基を表し、
Rbは、少なくとも1つの-COORc基(ここで、Rcは、水素原子を表す)により置換されている(C1~C6)アルキル基、又は1個以上のハロゲン原子で置換されている若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、又は(C3~C14)シクロアルキル基、又は複素環基を表し、
Y4及びY5は、同一であり又は異なり、1個以上のハロゲン原子により置換されている若しくは置換されていない(C1~C6)アルキル基、又は(C3~C14)シクロアルキル基、又は複素環基を表す)
又はこの薬学的に許容される塩である。
【0048】
式(III)の化合物の特定の実施形態において、
Y1は、ハロゲン、Ra又はGa-Ra基を表し、
Aは、CH=CH基を表し、
Y2は、Gb-Rb基を表し、
Ga及びGbは、同一であり又は異なり、酸素又は硫黄原子を表し、
Raは、(C1~C6)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基を表し、特に、1個以上のハロゲン原子により置換されている又は置換されていない、(C1~C7)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基を表し、
Rbは、-COOR3基により置換されている(C1~C6)アルキル基を表し、ここでのRcは、水素原子を表し、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
Y4及びY5は、独立して、(C1~C4)アルキル基を表す。
【0049】
式(III)の化合物の特定の実施形態において、
Y1は、Ra又はGa-Ra基を表し、
Aは、CH2-CH2基を表し、
Y2は、Gb-Rb基を表し、
Gaは、酸素又は硫黄原子を表し、Gbは、酸素原子を表し、
Raは、(C1~C6)アルキル又は(C3~C7)シクロアルキル基を表し、
Rbは、少なくとも1つの-COORc基により置換されている(C1~C6)アルキル基を表し、ここでのRcは、水素原子又は(C1~C4)アルキル基を表し、
Y4及びY5は、独立して、(C1~C4)アルキル基を表す。
【0050】
式(III)の化合物の特定の実施形態において、
Y1は、ハロゲン原子又はRa若しくはGa-Ra基を表し、
Aは、CH2-CH2基を表し、
Y2は、Gb-Rb基を表し、
Gaは、酸素又は硫黄原子を表し、Gbは、酸素原子を表し、
Raは、1個以上のハロゲン原子により置換されている、(C1~C6)アルキル又は(C3~C14)シクロアルキル基を表し、
Rbは、1個以上のハロゲン原子で置換されている若しくは置換されていない、及び少なくとも1つの-COORc基により置換されている(C1~C6)アルキル基を表し、ここでのRcは、水素原子又は(C1~C4)アルキル基を表し、
Y4及びY5は、(C1~C4)アルキル基を表す。
【0051】
式(III)の化合物の特定の実施形態において、Gbは、酸素原子であり、Rbは、-COORc基により置換されている(C1~C6)アルキル基であり、ここでのRcは、水素原子、又は非置換直鎖若しくは分岐(C1~C4)アルキル基を表す。
【0052】
式(III)の化合物の特定の実施形態において、Y1は、1個以上のハロゲン原子により置換されている又は置換されていない、直鎖状である又は分岐している、(C1~C6)アルキル基を含む、(C1~C6)アルキルチオ基である。
【0053】
特定の実施形態において、式(III)の化合物は、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン(ELA)、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-イソプロピルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチルプロパン酸、及び2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチル-プロパン酸イソプロピルエステルからなる群の中から選択される。
【0054】
より特定の実施形態において、PPARアゴニストは、ELA又はこの薬学的に許容される塩である。ELAは、次の構造を有する:
【0055】
【0056】
ELAは、WO2004/005233、WO2005/005369又はWO2011/144579に記載されている方法により調製することができる。
【0057】
本発明に従って使用されるFXRアゴニストは、ステロイド性FXRアゴニストであってもよく、又は非ステロイド性FXRアゴニストであってもよい。
【0058】
本発明の実施の際に有用な、説明に役立つ非限定的FXRアゴニストは、WO02072598、WO2005082925、WO03080803、WO04007521、WO04046162、WO04045511、WO04048349、WO05082925、WO07140174、WO08000643、WO08025540、WO08025539、WO07140183、WO08157270、WO09005998、WO09027264、WO09062874、WO09080555、WO09149795、WO10034649、WO10034657、WO11020615、WO11039130、WO12087519、WO13007387、WO14184271、WO15138986、WO16073767、WO16086115、WO16086134、WO16086169及びWO16086218において開示されている。本発明によれば、これらの参考文献において開示されている各々の実施形態及び各々の具体的なFXRアゴニストは、PPARアゴニストと組み合わせて本明細書において個々に開示される。
【0059】
特定の実施形態によれば、FXRアゴニストは、オベチコール酸(INT-747)、GS-9674、LJN-452又はLJN452、LJN-763、LMB763、EDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、EPY-001、Px-103及びSR-45023からなる群の中から選択される。さらなる特定の実施形態において、PPARアゴニストは、ELAであり、FXRアゴニストは、オベチコール酸(INT-747)、GS-9674、LJN-452又はLJN452、LJN-763、LMB-763、EDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY-2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、EPY-001、Px-103及びSR-45023からなる群の中から選択される。
【0060】
特定の実施形態において、FXRアゴニストは、次の構造を有するINT-767である:
【0061】
【0062】
特定の実施形態において、FXRアゴニストは、次の構造を有するLJN452である:
【0063】
【0064】
別の実施形態において、FXRアゴニストは、次の構造を有するLY2562175である:
【0065】
【0066】
特定の実施形態において、FXRアゴニストは、オベチコール酸(OCA;6α-エチルケノデオキシコール酸;INT-747)又はこの薬学的に許容される塩である。OCAは、次の化学構造を有する:
【0067】
【0068】
OCAは、WO2006122977に記載されている方法により調製することができる。
【0069】
本発明の組合せ物は、コラーゲン線維の産生に関与する及び/又は細胞外基質の産生に関与する線維芽細胞の増殖及び/又は活性化の阻害に使用することができる。
【0070】
本発明の組合せ物は、免疫(例えば、自己免疫)、炎症性、代謝性、線維性又は胆汁うっ滞性疾患のような、疾患の治療に使用することができる。
【0071】
本発明によれば、用語「自己免疫疾患」は、体内に通常存在する物質及び組織に対する身体の異常な免疫応答から生じる状態を示すために使用される。この疾患は、ある特定の器官に限定されることもあり(例えば、I型糖尿病若しくは自己免疫性甲状腺炎の場合)、又は異なる位置の特定の組織を侵すこともある(例えば、グッドパスチャー病、肺及び腎臓における基底膜罹患の場合)。
【0072】
用語「炎症」は、宿主細胞が関与する保護応答、血管が関与する保護応答、並びに細胞/組織損傷の原因を除去する役割、最初の傷害の結果として生じる壊死細胞/組織を除去する役割、及び修復過程を開始させる役割を果たすことができる、タンパク質及び他の媒介因子が関与する保護応答から生じる、状態を示すために使用される。炎症反応は、疼痛、発熱、発赤、腫脹、血管拡張、血流増加及び機能喪失によって顕在化され得る。
【0073】
用語「線維症」、「線維性疾患」、「線維性障害」及びこれらの悪化は、器官又は組織における線維性結合組織の病的な過剰蓄積状態を意味する。より具体的には、線維症は、組織損傷に対する応答としての、結合組織による、持続的線維性瘢痕形成及び細胞外基質の過剰産生を含む、病態形成過程である。生理学的には、結合組織の蓄積は、基礎となる器官又は組織の構造及び機能を完全に破壊し得る。
【0074】
本発明によれば、線維症は、いずれの器官又は組織線維症であってもよい。特定の器官線維症の説明に役立つ非限定的な例としては、肝、腎、皮膚、表皮、内皮、筋、腱、軟骨、心、膵、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆管、軟部組織(例えば、縦隔若しくは後腹膜)、骨髄、関節又は胃線維症が挙げられる。
【0075】
好ましい実施形態において、線維性障害は、肝、消化管、肺、心、腎、筋、皮膚、軟部組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、腸及び関節(例えば、膝、肩又は他の関節)線維症からなる群の中から選択される。
【0076】
より好ましい実施形態において、線維性障害は、肝、肺、皮膚、腎及び小腸線維症からなる群の中から選択される。
【0077】
本発明のより好ましい実施形態において、治療される線維性障害は、次の非網羅的線維性障害リストからなる群の中から選択される:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(炭鉱夫塵肺の合併症)、増殖性線維症、腫瘍性線維症;慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核、IPF)に続いての肺線維症;アルコール又は薬物誘発性肝線維症、肝硬変、感染誘発性肝線維症、放射線又は化学療法誘発性線維症、腎性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症;粘着性関節包炎の一部の形態;原発性硬化性胆管炎(PSC)及び原発性胆汁性胆管炎(PBC)のような慢性線維化性胆嚢症;胆道閉塞症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、着床前後線維症並びに石綿肺。
【0078】
胆汁うっ滞は、肝細胞による分泌不全(肝細胞胆汁うっ滞)に起因する、又は肝内若しくは肝外胆管を通る胆汁の流れの閉塞(閉塞性胆汁うっ滞)に起因する、胆汁の流れの減少と定義される。臨床診療において、胆汁うっ滞は、肝臓からの胆汁の流れが緩徐化又は遮断される、あらゆる状態である。
【0079】
炎症性疾患、線維性疾患、代謝性疾患及び胆汁うっ滞性疾患の例としては、代謝性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性肝疾患、アルコール誘発性肝疾患、感染性因子誘発性肝疾患、炎症性肝疾患、免疫系機能障害媒介肝疾患、脂質異常症、心血管疾患、再狭窄、シンドロームX、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、高血圧;原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のような、慢性胆管症;胆道閉塞症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、炎症性疾患、神経変性疾患、がん、肝がん、肝細胞癌、消化器がん、胃がん;神経線維腫症に関連する髄膜腫;膵神経内分泌腫瘍、膵外分泌腫瘍、白血病、骨髄増殖性/骨髄異形成(myelodisplastic)疾患、肥満細胞症、皮膚線維肉腫;乳、肺、甲状腺又は結腸直腸がんを含む、固形腫瘍;前立腺がん、任意の起源の肝線維症又は硬変、代謝性疾患誘発性肝線維症又は硬変、NAFLD誘発性線維症又は硬変、NASH誘発性線維症又は硬変、アルコール誘発性肝線維症又は硬変、薬物誘発性肝線維症又は硬変、感染性因子誘発性肝線維症又は硬変、寄生虫感染誘発性肝線維症又は硬変、細菌感染誘発性肝線維症又は硬変、ウイルス感染誘発性線維症又は硬変、HBV感染誘発性肝線維症又は硬変、HCV感染誘発性肝線維症又は硬変、HIV感染誘発性肝線維症又は硬変、二重HCV・HIV感染誘発性肝線維症又は硬変、放射線又は化学療法誘発性線維症又は硬変、胆管線維症;あらゆる慢性胆汁うっ滞性疾患に起因する肝線維症又は硬変;あらゆる原因の消化管線維症;クローン病誘発性線維症、潰瘍性大腸炎誘発性線維症、腸(例えば、小腸)線維症、結腸線維症、胃線維症、皮膚線維症、表皮線維症、内皮線維症;強皮症/全身性強皮症に起因する皮膚線維症;肺線維症;COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)のような、慢性炎症性気道疾患に続いての、肺線維症;心線維症、腎線維症、腎性全身性線維症、筋線維症、軟部組織(例えば、縦隔又は後腹膜)線維症、骨髄線維症、関節線維症、腱線維症、軟骨線維症、膵線維症、子宮線維症、神経系線維症、精巣線維症、卵巣線維症、副腎線維症、動脈線維症、静脈線維症、眼線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(炭鉱夫塵肺の合併症)、増殖性線維症、腫瘍性線維症、着床前後線維症、及び石綿肺、関節線維症、粘着性関節包炎が挙げられる。
【0080】
特定の実施形態において、疾患は、代謝性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性肝疾患、アルコール誘発性肝疾患、感染性因子誘発性肝疾患、炎症性肝疾患、免疫系機能障害媒介肝疾患、脂質異常症、心血管疾患、再狭窄、シンドロームX、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、高血圧;原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のような、慢性胆管症;胆道閉塞症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、肝がん、肝細胞癌、消化器がん、胃がん、結腸直腸がん、代謝性疾患誘発性肝線維症又は硬変、NAFLD誘発性線維症又は硬変、NASH誘発性線維症又は硬変、アルコール誘発性肝線維症又は硬変、薬物誘発性肝線維症又は硬変、感染性因子誘発性肝線維症又は硬変、寄生虫感染誘発性肝線維症又は硬変、細菌感染誘発性肝線維症又は硬変、ウイルス感染誘発性線維症又は硬変、HBV感染誘発性肝線維症又は硬変、HCV感染誘発性肝線維症又は硬変、HIV感染誘発性肝線維症又は硬変、二重HCV・HIV感染誘発性肝線維症又は硬変、放射線又は化学療法誘発性線維症又は硬変、胆管線維症;あらゆる慢性胆汁うっ滞性疾患に起因する肝線維症又は硬変;あらゆる原因の消化管線維症;クローン病誘発性線維症、潰瘍性大腸炎誘発性線維症、腸(例えば、小腸)線維症、結腸線維症、胃線維症、肺線維症;COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)のような、慢性炎症性気道疾患に続いての、肺線維症からなる群の中から選択される。
【0081】
さらなる実施形態において、疾患は、NAFLD、NASH、肝線維症、肝硬変、PBC又はPSCである。
【0082】
用語「治療」又は「治療すること」は、それを必要とする対象における障害の治療、予防又は発病予防を指す。治療は、明言された障害を有する対象(例えば、患者)への本発明の組合せ物の投与であって、障害を予防する、治癒させる、遅延させる、好転させる、又は障害の進行を緩徐化し、それによって患者の状態を向上させるための投与を含む。治療は、健常である対象に投与されることもあり、又は免疫(例えば、自己免疫)、炎症性、線維性若しくは胆汁うっ滞性障害を発症するリスクがある対象に投与されることもある。
【0083】
用語「対象」は、哺乳動物、さらに特にヒトを指す。本発明に従って治療される対象は、過去の及び/又は現行の薬物治療、随伴病態、遺伝子型、リスク因子への曝露のような、免疫(例えば、自己免疫)、炎症性、線維性及び胆汁うっ滞性病態形成過程に関連する幾つかの判定基準に基づいて、並びに任意の適切な免疫学的、生化学的又は酵素的方法によって評価することができる任意の他の関連バイオマーカーに基づいて、適切に選択することができる。
【0084】
本発明者らは、本明細書において、PPARアゴニストの及びFXRアゴニストの組合せ、特に、ELA及びOCA又はINT-767の組合せ、特に、ELA及びOCAの組合せは、より幅広い患者集団に恩恵をもたらし、相乗的効果を有することができ、それによって、治療用量低減が可能になることを示す。付随する治療用量の低減は、有害薬物効果の発生率を低下させることができる。したがって、本発明は、有害薬物効果の発生率低下を伴う、上文で定義されたような疾患の治療のための方法にも関する。
【0085】
投与に関する頻度及び/又は量を、当業者は、患者、病態、投与形態等の関数で適応させることができる。典型的に、本発明の組合せ物は、疾患の治療のために、50mg/日~500mg/日、特に、70mg/日~150mg/日のような、10mg/日~1000mg/日のELAの用量で、投与することができる。OCAの用量は、約10mg/日~約50mg/日の用量のような、5mg/日~約100mg/日に含まれ得る。本発明の特定の実施形態において、OCAは、ELAと組み合わせて、OCAについては10mg/日~25mg/日の用量、及びELAについては80~120mg/日の用量で、使用される。特定の実施形態において、OCAは、10又は25mg/日で使用され、ELAは、80又は120mg/日で使用される。
【0086】
別の実施形態において、PPARアゴニストとFXRアゴニストの両方の量は、相乗的有効量である。特定の実施形態は、PPARアゴニスト及び/又はFXRアゴニストの1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、3.5分の1、4分の1、4.5分の1、5分の1、5.5分の1、6分の1、6.5分の1、7分の1、7.5分の1、8分の1、8.5分の1、9分の1、8.5分の1、10分の1への低減又は10分の1以下への低減を含む。さらなる特定の実施形態において、ELA(又はこの薬学的有効量)をPPARアゴニストとして、及びOCA若しくはこの薬学的に許容される塩、又はINT-767若しくはこの薬学的に許容される塩、又はLJN452若しくはこの薬学的に許容される塩をFXRアゴニストとして組み込むことは、ELAアゴニスト及び/又はFXRアゴニストの1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、3.5分の1、4分の1、4.5分の1、5分の1、5.5分の1、6分の1、6.5分の1、7分の1、7.5分の1、8分の1、8.5分の1、9分の1、8.5分の1、10分の1への低減又は10分の1以下への低減を含む。ELA(又はこの薬学的に許容される塩)をPPARアゴニストとして組み込み、OCA(又はこの薬学的に許容される塩)をFXRアゴニストとして組み込む、さらなる特定の実施形態は、
- ELAが5~80mg/日の用量で使用され、OCAが7~17mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の1.5分の1への低減、
- ELAが40~60mg/日の用量で使用され、OCAが5~12.5mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の2分の1への低減、
- ELAが32~48mg/日の用量で使用され、OCAが4~10mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の2.5分の1への低減、
- ELAが27~40mg/日の用量で使用され、OCAが3~8mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の3分の1への低減、
- ELAが16~24mg/日の用量で使用され、OCAが2~5mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の5分の1への低減、
- ELAが8~12mg/日の用量で使用され、OCAが1~2.5mg/日の用量で使用される、両方の成分の量の10分の1への低減、
等を含む。
【0087】
特定の実施形態において、本発明の組合せ物の成分の各々についての量は、単一投薬量として1日1回投与され、又は成分を複数回投与することにより、例えば、1日量の半分を、食事中(例えば、昼食及び夕食中に)のように、1日2回、投与することにより投与される。
【0088】
特定の実施形態において、PPARアゴニスト及びFXRアゴニストは、同時に、逐次的に又は別々に投与される。特定の実施形態において、PPARアゴニスト及びFXRアゴニストは、逐次的に投与され、PPARアゴニストが先ず投与され、次いでFXRアゴニストが投与される、又はFXRアゴニストが先ず投与され、次いでPPARアゴニストが投与される。
【0089】
治療の期間は、治療される状態及び前記状態の病期に依存して大幅に変わり得る。例えば、組合せ物を、少なくとも7、8、9若しくは10日以上のような、少なくとも2日以上連日;少なくとも1、2、3、4、5、10、20、50、60、70若しくは72週間以上のような、少なくとも1週間以上;少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20若しくは24カ月以上のような、少なくとも1カ月以上;又は少なくとも1、2、3、4若しくは5年以上のような、少なくとも1年以上、投与することができる。
【0090】
本発明は、以下の非限定的実施例に関連してさらに説明される。
【実施例】
【0091】
材料及び方法
慢性CDAA+1%コレステロールモデル(12週間)におけるエラフィブラノール、OCA、及び組合せエラフィブラノール+OCAの評価
単独でのエラフィブラノール(GFT505)、単独でのOCA、及び両方の組合せの予防効果を、CDAA+1%コレステロール飼料を摂取したラットの線維化NASHモデルにおいて評定した。150~175g雄ウィスターラットに、対照(CSAA)飼料、CDAA+1%コレステロール飼料、又はエラフィブラノール 1、3及び10mg/kg/日、OCA 10及び30mg/kg/日若しくは組み合わせた薬物(OCA 10mg/kg/日と組み合わせたエラフィブラノール 1、3及び10mg/kg/日)を補足したCDAA+1%コレステロール飼料を、12週間にわたって給餌した。
【0092】
体重及び食物摂取量を、週2回、モニターした。治療の最終日に、ラットを6時間の絶食期間後に屠殺した。肝臓を、生化学的研究及び組織学的研究のために、迅速に切除した。
【0093】
全ての動物手順は、標準的プロトコールに従って行い、実験動物の適正なケア及び使用に関する基準勧告に従って行った。
【0094】
組織診断
組織包埋及び切片作製:
肝臓薄片を、先ず、12時間、ホルマリン4%溶液中で固定した。次いで、肝臓片を、30分間、PBSで洗浄し、エタノール溶液(70、80、95及び100%エタノールでの連続浴)において脱水した。肝臓片を、キシレン(Sigma-Aldrich カタログ番号534056)の3つの異なる浴においてインキュベートし、続いて2つの浴の流動パラフィン(56℃)中でインキュベートした。次いで、肝臓片をラックに入れ、組織を完全に覆うようにラックにHistowax(登録商標)を穏やかに充填した。
【0095】
組織片を含有するパラフィンブロックをラックから取り出し、室温で保管した。肝臓ブロックを3μmの薄片に切断した。
【0096】
ヘマトキシリン/エオシン染色
肝臓切片を脱パラフィンし、再水和し、3分間、Mayerのヘマトキシリン(Microm、カタログ番号F/C0303)中でインキュベートした。次いで、肝臓切片を水ですすぎ、1分間、エオシンG(VWR、カタログ番号1.09844.1000)中でインキュベートした。切片を水ですすぎ、次いで脱水し、CV Mount媒体(Leica、カタログ番号14046430011)を使用してマウントした。
【0097】
ピクロシリウスレッド染色
肝臓切片を脱パラフィンし、再水和し、15分間、Fast Green FCF 0.1%(Sigma-Aldrich、カタログ番号F7258)の溶液中でインキュベートし、その後、0.5%酢酸(Panreac、カタログ番号131008.1611)浴ですすいだ。次いで、肝臓切片を水ですすぎ、30分間、飽和ピクリン酸水溶液(Sigma-Aldrichカタログ番号P6744)中の0.1%シリウスレッド(Direct Red 80、Fluka カタログ番号43665)の溶液中でインキュベートした。次いで、切片を脱水し、CV Mount媒体(Leica、カタログ番号14046430011)を使用してマウントした。
【0098】
組織学的検査
各肝臓切片源について知らされていない技術者が、組織学的検査を行った。3D HistechからのPannoramic 250スキャナーを使用して、バーチャルスライドを生成した。動物ごとに、NASHの主要な組織学的病変を要約するスコアを、NASH Clinical Research Networkに従って帰属させた(Kleiner 2005年、Brunt 1999年)。簡単に言うと、脂肪化、小葉炎症及び肝細胞のバルーニングを点数化した。NAFLD活動性スコア(NASスコア)を、各個体について、脂肪化、小葉炎症及びバルーン傷害等級付けの非重み付き合計として確立した。
【0099】
Quant Centerソフトウェア(3D Histech、このソフトウェアはPattern Quantモジュール及びHisto Quantモジュールを含む)を使用して、コラーゲン染色領域を定量した。簡単に言うと、Pattern Quantを使用して組織を検出し、その表面を測定した。次いで、Histo Quantを使用して、染色されたコラーゲン含量を検出し、カラー閾値法に基づいてその表面を測定した。次いで、線維化領域を、動物1匹当たりの全組織に対するコラーゲン表面のパーセンテージとして表示した。
【0100】
肝コラーゲン含量の測定
適切なQuickZymeキット(Total collagen assay、カタログ番号QZB-totcol2)を使用して、肝コラーゲン含量を判定した。このアッセイは、コラーゲンの三重らせんにおいて主として見いだされる非タンパク質構成アミノ酸であるヒドロキシプロリンの検出に基づく。したがって、組織加水分解物中のヒドロキシプロリンを、組織中に存在するコラーゲン(プロコラーゲン、成熟コラーゲン及びコラーゲン分解産物間の区別なく)の量の直接的尺度として使用することができる。
【0101】
ヒドロキシプロリンを投与する前に、95℃で6M HCl中での組織試料の完全加水分解が必要とされる。アッセイは、570nmで最大吸光度を有する色原体の生成をもたらす。結果を肝臓1g当たりのコラーゲンのmgとして表示する。
【0102】
肝臓遺伝子発現分析
RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造業者の説明書に従って使用して、全RNAをラット肝臓から単離した。1×RT緩衝液(Invitrogen)、0.5mM DTT(Invitrogen)、0.18mM dNTPs(Promega)、200ng pdN6(Amersham)及び30UのRNase阻害剤(Promega)中の、M-MLV RT(モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素)(Invitrogen カタログ番号28025)を使用して、全RNAをcDNAに逆転写した。
【0103】
次いで、CFX96 Touch(商標)Real-Time PCR Detection System(Biorad)を使用して、定量的PCRを行った。簡単に言うと、PCR反応は、1μLの逆転写反応物、0.5μLのリバース及びフォワードプライマー(各10pmol)並びに12.5μlの2×iQ SYBR Green Supermix(BioRad)を含有する、25μlの全体積で、96-WP形式で行い、下記のプライマー配列を使用した:
【0104】
【0105】
試料におけるRplp0遺伝子の発現を基準として使用して、発現レベルを正規化した。100%に近いPCR反応効率及び1に近い補正係数を有するために最良の点(少なくとも3点)を選択することにより、遺伝子ごとに標準曲線を描いた。ハウスキーピング遺伝子と標的遺伝子の両方についての標準曲線方程式を使用して(各標的遺伝子の特異的PCR効率を考慮に入れて)、発現レベルを決定した。
【0106】
肝線維形成のインビトロモデル(a vitro model)におけるエラフィブラノールと別のFXRアゴニストの組合せの評価
hHSC培養
ヒト初代肝星状細胞(hHSC)(Innoprot)を、2%ウシ胎仔血清(FBS、ScienCell カタログ番号0010)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ScienCell カタログ番号0503)及び星状細胞増殖サプリメント(SteCGS;ScienCell カタログ番号5352)を補足したSTeCM培地(ScienCell カタログ番号5301)中で、培養した。細胞培養フラスコを、よりよい接着のために、ポリ-Lリシン(Sigma カタログ番号P4707)でコーティングした。
【0107】
組成物の調製:2成分組合せ行列(FXRアゴニスト/エラフィブラノール)
FXRアゴニストINT-767(CAS番号1000403-03-1、カタログ番号HY-12434、バッチ番号19249)を、Haoyuan Chemexpressから購入した。これらの実験のために、チェッカーボード行列を生成した。INT-767及びエラフィブラノールをジメチルスルホキシド(DMSO、Fluka カタログ番号41640)に溶解し、384ウェルプレートの行(エラフィブラノール)において5点系列で及び列(INT-767)おいて11点系列で系列希釈した。その後、全単剤濃度の1:1混合により、5×11組合せ行列を生成した。各化合物についての試験濃度は、文献(Rizzoら;McMahanら)に基づいて選択した。
【0108】
TGF-β1及び化合物治療でのhHSCの活性化
hHSCを、384ウェルプレートに、細胞6.5×103個/ウェルの密度で蒔いた。翌日、細胞培養培地を除去し、細胞をPBS(Invitrogen カタログ番号14190)で洗浄した。24時間、無血清・無SteCGS培地において、hHSCを欠乏させた。INT-767及びエラフィブラノール並びにこれらの組合せでの治療のために、血清欠乏性hHSCを1時間それらの化合物と共にプレインキュベートし、続いて、さらに48時間にわたって線維形成促進性刺激剤TGF-β1(PeproTech カタログ番号100-21、1ng/mL)を無血清・無SteCGS培地に添加した。
【0109】
α-SMA ELISA
サンドイッチELISAを使用して、α-SMAレベルを測定した。簡単に言うと、ELISAプレートのウェルを、先ず、捕捉抗体(マウスモノクローナル抗ACTA2、Abnova)で、4℃で終夜、コーティングした。PBS+0.2%Tween20で3回洗浄した後、PBS+0.2%BSAからなるブロッキング溶液を1時間にわたって添加し、続いて別の洗浄サイクルを行った。細胞溶解物を捕捉抗体との結合のために2時間にわたって室温でウェルに移入した。洗浄手順後、検出抗体(ビオチン標識マウスモノクローナル抗ACTA2、Abnova)を2時間にわたって室温で添加し、続いて3回洗浄した。検出のために、ストレプトアビジンHRPコンジュゲート(R&D Systems カタログ番号DY998)を、先ず、30分間、室温で適用した。洗浄後、HRP基質TMB(BD#555214)を添加し、7分間、室温で、暗所でインキュベートした。酸化し次第、TMBは、水溶性青色反応生成物を形成し、硫酸を添加(溶解停止)するとその反応生成物は黄色になり、これにより、分光光度計を使用する450nmでの強度の正確な測定が可能になる。発生する色は、溶解物中に存在するα-SMAの量と正比例する。
【0110】
エクセス・オーバー・ブリス(EOB)法による相乗作用の判定
αSMA ELISAアッセイにおいて得た値を、先ず、TGF-β1対照に対する阻害パーセンテージに変換した。次いで、これらの阻害パーセンテージを使用して、EOB(エクセス・オーバー・ブリス)を決定して、薬の組合せの相乗効果を定義した。期待ブリス相加作用スコア(E)を、先ず、方程式:
E=(A+B)-(A×B)
(式中、A及びBは、所与の用量でのエラフィブラノール(A)及びINT-767(B)の阻害パーセンテージである)
により決定した。同じ用量での組み合わせたINT-767/エラフィブラノールについてのブリス期待値と阻害実測値との差が、「エクセス・オーバー・ブリス」スコアである。
- エクセス・オーバー・ブリススコア=0は、併用治療が相加的(独立した経路の効果について期待通り)であることを示し、
- エクセス・オーバー・ブリススコア>0は、相加的より大きい活性(相乗作用)を示し、
- エクセス・オーバー・ブリススコア<0は、組合せが相加的未満(拮抗作用)であることを示す。
【0111】
組合せINT-767/エラフィブラノールについて、さらなる総ブリススコアを、全EOBの総和により算出した。
【0112】
相乗作用を検証するために、FXRアゴニスト/エラフィブラノール組合せについての最高EOBスコアに対応する実験値を棒グラフにプロットした。
【0113】
最高単剤に対するINT-767/エラフィブラノール間の差の実測値の有意性を、スチューデントt検定により判定した。*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【0114】
結果及び考察
慢性CDAA+1%コレステロールモデル(12週間)におけるエラフィブラノール、OCA、及び組合せエラフィブラノール+OCAの評価
結果を次の表及び
図1~3において報告する。
【0115】
【0116】
西洋の生活様式は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝線維症及び硬変に進行することが多く、最終的に肝細胞癌に至ることもある、慢性肝疾患)高い発生率に、常に結び付けられる。現在、NASHのための認可されている治療法はない。複数の治療標的に同時に指向される薬の組合せには、薬物応答を劇的に向上させる可能性、及び最も幅広い患者集団に恩恵をもたらす可能性がある。薬の組合せは、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のような、他の全身性疾患において以前に試験され、基礎疾患のより良好な制御を示し、罹患率及び死亡率を低下させた。最近の第2B相研究において、エラフィブラノール(PPARα/δアゴニスト)とOCA(FXRアゴニスト)の両方が、NASH及び線維症エンドポイントに対する有効性を示した。本発明者らは、有意義なNASH病態アウトカムに対するそれらの作用を比較すること、および組合せの治療的恩恵を探すことを望んだ。
【0117】
この目的を達成するために、コレステロールを補足したコリン欠乏L-アミノ酸規定食(CDAA/chol飼料)をウィスターラットに給餌することにより、線維化NASHを誘発した。介入群の動物は、全研究期間にわたってエラフィブラノール若しくはOCAのどちらか、又は両方の化合物を摂取した。NASH及び線維症発症を組織診断により評価した。異なる関連バイオマーカーを用いて、さらなる生化学分析及び分子分析も行った。
【0118】
CDAA/chol飼料を摂取したウィスターラットは、NASH関連組織像及び線維化を発生し、重症疾患の浸透率が高かった。高度の脂肪化、小葉炎症及びバルーニングが全ての動物に存在し、NASスコア[最小0~最大8]は、6~8であった。肝組織診断(ピクロシリウス陽性領域)及び生化学検査(肝コラーゲン濃度)は、平均で、肝線維化含量の4倍増加を示し、線維化スコアは、薬物治療を受けていないCDAA/chol飼料を続けた全ての動物について、3又は4のどちらかであった(
図1~2)。炎症、組織再構築及び線維化に関連する遺伝子の発現は増加され、疾患が重症であるNASH患者において以前に報告された遺伝子シグネチャーと一致した(
図3)。
【0119】
単独でのエラフィブラノール投与は、線維症発症を減弱させたが、単独でのOCA投与は、線維症を有意には減弱させない(
図1~2)。併用治療は、線維化を低減させる点でより強力であり、これにより、用量の低減が可能であり、OCA 10mg/kgと組み合わせたGFT505 1mg/kgと3mg/kgの両方が、線維症に対して同様の有効性を達成した(
図1~2)。単独でのどちらか薬物候補の投与は、組織再構築の増加をある程度しか減弱させなかったが、両方の化合物の組合せは、任意の単剤と比較して、より効率的であった(
図3)。
【0120】
したがって、CDAA/chol飼料誘発性NASHモデルにおける肝線維症に対するエラフィブラノール及びOCAの相乗作用が、任意の単剤と比較して、両方の薬物候補の有意により低い用量で同等の治療的恩恵を生じさせたことを、本明細書において示す。この研究から、両方の薬物候補の用量を、少なくとも1.5分の1、2分の1、2.5分の1又はさらには少なくとも3分の1に低下させて、個別に使用される各化合物の最初の用量と同様の結果を得ることができることが、確実に予想される。加えて、エラフィブラノールは、肝損傷に対する明確な防御効果を示した。バルーニング及び小葉炎症に対するOCAの効果は、このモデルではかなり小規模であった。この研究から、エラフィブラノール/OCAの組合せは、より幅広い患者集団に恩恵をもたらし、付随する治療用量の低減は、有害副作用の発生率を低下させると、結論付けることができる。
【0121】
肝線維形成のインビトロモデル(a vitro model)におけるエラフィブラノール及び別のFXRアゴニストの組合せの評価
結果を
図4~5において報告する。
【0122】
分化筋線維芽細胞の異常な存続は、多くの線維性疾患の特徴である。
肝損傷後、静止HSCは、(α-SMA)陽性筋線維芽細胞への分化を特徴とする活性化過程を辿る。
【0123】
PPARアゴニストエラフィブラノールは、線維形成促進性サイトカインTGFβ1で活性化されたhHSCにおいて抗線維化活性を明示した。α-SMAマーカーは、試験したエラフィブラノールの最高用量(5μM)を用いて68%まで低減された(
図4A)。単独でのINT-767は、試験した最高用量(30μM)でα-SMAの産生をわずかに13%しか阻害しなかった(
図4B)。エラフィブラノールとINT-767の組合せが線維化を相乗的に低減させることができるかどうかを評価するために、組合せ行列実験をTGFβ誘発HSCにおいて行った。簡単に言うと、INT-767及びエラフィブラノール溶液をチェッカーボード形式で系列希釈して、INT-767/エラフィブラノール比の大パネルを包含する55組合せ行列を生成した。相乗作用を、先ず、エクセス・オーバー・ブリススコアを算出するにより判定した。これらの実験は、エラフィブラノールが、INT-767と相乗作用して活性化HSCにおけるα-SMA産生を低減させることができることを明らかにした(
図5)。2.5μMのエラフィブラノール及び1.9μMのINT-767を用いた、相乗作用の最高の例の1つを、
図5Cに示す。1.9μMの単独のINT-767は、抗線維化活性を一切示さないが、2.5μMのエラフィブラノールへのその添加は、エラフィブラノールの活性を相乗的に増大させ、(2.5μMの単独でのエラフィブラノールに関する26%と比較して)69%までの阻害に達した。
【0124】
結論として、線維形成に対するエラフィブラノールと異なるクラスのFXRアゴニストの相乗作用は、複数のタイプの線維性疾患におけるそのような組合せの潜在的利点を示す。
【0125】
【配列表】