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特許7618406通信中継装置およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】通信中継装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20250114BHJP
   H04B 7/024 20170101ALI20250114BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20250114BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20250114BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20250114BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H04B7/024
H04B7/0413 300
H04W16/26
H04W16/28 130
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020120727
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017893
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏則
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-519956(JP,A)
【文献】特開2003-283404(JP,A)
【文献】特開2017-163501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/024
H04B 7/0413
H04W 16/26
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される基地局と、移動局との間の通信を中継する通信中継装置において、
多数のアンテナ素子を備え、このアンテナ素子を介する信号の位相調整により指向性が制御されて任意の方向に電波のビームを形成するアンテナと、
前記アンテナが受信した信号強度を検出する信号強度検出部と、
前記アンテナが備える多数のアンテナ素子のうちの一部のアンテナ素子を介する信号の位相調整によって、前記アンテナが形成するビームの方向を第1の範囲で変化させ、前記信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、前記移動局が存在する方向を検出する第1のサーチ部と、
前記アンテナが備える多数のアンテナ素子のうちの一部のアンテナ素子を介する信号の位相調整によって、前記アンテナが形成するビームの方向を、前記第1のサーチ部が検出した方向を含み、かつ前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲で変化させ、前記信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、前記移動局が存在する方向を検出する第2のサーチ部と、
を具備する、通信中継装置。
【請求項2】
前記第1のサーチ部は、前記アンテナが形成するビームの方向を第1の範囲で変化させ、前記信号強度検出部が検出した信号強度の変化に基づいて、前記移動局が存在する方向を検出するものであって、前記信号強度の変化のうちピークの無線信号を受信した方向を前記移動局が存在する方向として検出する、請求項1に記載の通信中継装置。
【請求項3】
さらに、前記アンテナが形成するビームの方向を、前記第2の範囲以下の第3の範囲で変化させて前記移動局から送信される無線信号を受信し、前記信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、前記移動局の移動を検出する第3のサーチ部を、
備える、請求項1に記載の通信中継装置。
【請求項4】
ネットワークに接続される基地局と、移動局との間の通信を中継する通信中継装置で用いられるコンピュータを、
多数のアンテナ素子を備え、このアンテナ素子を介する信号の位相調整により指向性が制御されて任意の方向に電波のビームを形成するアンテナが受信した信号強度を検出する信号強度検出部と、
前記アンテナが備える多数のアンテナ素子のうちの一部のアンテナ素子を介する信号の位相調整によって、前記アンテナが形成するビームの方向を第1の範囲で変化させ、前記信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、前記移動局が存在する方向を検出する第1のサーチ部と、
前記アンテナが備える多数のアンテナ素子のうちの一部のアンテナ素子を介する信号の位相調整によって、前記アンテナが形成するビームの方向を、前記第1のサーチ部が検出した方向を含み、かつ前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲で変化させ、前記信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、前記移動局が存在する方向を検出する第2のサーチ部と、
して機能させる、通信中継プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、通信中継装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2020年に日本国内においても5G(第5世代移動通信システム)による携帯電話の商用サービスがスタートした。5Gにおいて注目される技術の1つとしてビームフォーミングがある。これは1つのアンテナ上の複数のアンテナ素子を協調動作させ、任意の方向に電波のビームを形成することで、カバーエリアの拡大や複数ユーザとの同時通信によるセル容量拡大を実現する機能であり、一般的には超多素子のアンテナ(Massive MIMO)との組合せにより実現される。
【0003】
ところで、5G以前より、移動通信システムの屋内のカバーエリア対策として、DAS(Distributed Antenna System)システムが用いられている。DASシステムは、移動局と基地局との間を中継するものであって、親機と分散配置された複数の子機からなる。親機は、1つの基地局の信号を複数の子機に分配し、各子機は、それぞれのアンテナから同一の下り信号を出力することで、1つのセルとしてエリアを構築する。
【0004】
5GシステムにDASシステムを単純に適用した場合、前述のように、各子機からは同じ信号が出力され、分散配置された子機によってそれぞれ形成されるビームも共通の方向を指向するので、必ずしもカバーエリア内の移動局が存在する方向に向いたものとはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6567438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、通信品質の向上に寄与する通信中継装置およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の通信中継装置は、アンテナと、信号強度検出部と、第1のサーチ部と、第2のサーチ部を備える。アンテナは、任意の方向に電波のビームを形成し、信号強度検出部は、アンテナが受信した信号強度を検出し、第1のサーチ部は、アンテナが形成するビームの方向を第1の範囲で変化させ、信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、移動局が存在する方向を検出し、第2のサーチ部は、アンテナが形成するビームの方向を、第1のサーチ部が検出した方向を含み、かつ第1の範囲よりも狭い第2の範囲で変化させ、信号強度検出部が検出した信号強度に基づいて、移動局が存在する方向を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】通信中継システムを含む移動通信システムを示す図。
図2図1に示した親機の構成例を示す図。
図3図1に示した子機の構成例を示す図。
図4図1に示した子機によるビームフォーミングの例を示す図。
図5図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図6図1に示した親機の処理を説明するためのフローチャート。
図7図1に示した子機による移動局の高速サーチ例を示す図。
図8図1に示した子機による移動局の低速サーチ例を示す図。
図9図1に示した子機による移動局の追尾サーチ例を示す図。
図10図1に示した子機による移動局の追尾サーチ例を示す図。
図11図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図12図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図13図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態に係わる通信中継システムについて説明する。
図1は、第5世代移動通信システム、いわゆる5Gの一部を示すものである。この移動通信システムは、5Gコアネットワーク(5th Generation Core network)5GCと、無線アクセスネットワークNR(New radio)を備える。図1の例では、無線アクセスネットワークNRに、通信中継システムを含む場合を示している。
【0010】
5Gコアネットワーク5GCは、無線アクセスネットワークNRを制御し、トラフィックを束ねて外部のネットワーク(インターネットIN、外部の電話網ENなど)とやりとりを行うものであり、その中枢としてコア装置Cを備える。コア装置Cは、例えば、認証・セキュリティ管理、セッション管理、ポリシー制御、パケット転送等を行う。
【0011】
一方、無線アクセスネットワークNRは、複数の基地局装置(例えば、図1のgNB(gNodeB)1、gNB2)を備える。基地局装置gNB1、gNB2は、コア装置Cによって制御され、それぞれ移動局UE(User Equipment)と通信可能な無線通信エリア(いわゆる、セル)を形成する。
【0012】
より具体的には、基地局装置gNB1は、ビルの屋上や専用の鉄塔に設けられたアンテナ装置ANを通じて移動局UEと無線通信し、移動局UEをコア装置Cを通じて5Gコアネットワーク5GCに接続する。また基地局装置gNB1は、アンテナ装置AN上の多数のアンテナ素子における信号の位相を制御するマッシブMIMO(Massive MIMO)によってビームフォーミングを行い、通信容量の増大などに寄与している。
【0013】
基地局装置gNB2は、基地局装置gNB1と同様の機能を備えるが、アンテナ装置ANの代わりに分散アンテナシステムDASを通じて、移動局UEと無線通信し、移動局UEをコア装置Cを通じて5GコアネットワークNWに接続する。
【0014】
分散アンテナシステムDASは、通信中継システムの一例であって、特殊な場所(例えば、建造物や地下街、その他構造物の内部、過疎地あるいは過密地、鉄塔建設が困難や制限のある地域、イベント会場などといったアンテナ装置ANの非常設場所など)において、アンテナ装置ANに比して相対的に小規模な無線通信エリアを形成するために用いられ、図1に示すように、親機MU(Master Unit)、子機RU(Remote Unit)1~RU3、アンテナAN1~AN3を備える。
【0015】
親機MUは、当該分散アンテナシステムDASの各部を統括して制御するものであって、アンテナ(AN1~AN3)および子機(RU1~RU3)を介して接続される移動局UEを、基地局装置gNB2と通信可能にする通信中継装置としての役割を担うものである。なお、親機MUは、子機RU1~RU3と光通信回線によって接続される場合、一般に、光リピータと称されることもある。
【0016】
アンテナAN1~AN3は、それぞれ対応する子機RU1~RU3に1対1で接続され、それぞれ多数のアンテナ素子からなり、送信RF信号および/または受信RF信号の位相調整により指向性が制御(ビームフォーミング)されるマッシブMIMO(Massive MIMO)に対応したものである。
【0017】
この実施形態では、説明を簡明にするために、各アンテナAN1~AN3は、同時に最大で4個のビームをそれぞれ任意の方向に形成するビームフォーミングを行うものとして説明し、後に詳述する親機MUについても、説明を簡明にするために、上記4個のビームに対応した同時に最大で4個のストリームを処理(中継)するものとして説明する。
【0018】
なお、実際の装置では、最大4個に限定されるものではなく、3以下や5以上でもよい。また各アンテナAN1~AN3が形成するビーム数は、固定したものでなく、使用するアンテナ素子数を可変するなどして動的に変化させてもよい。
【0019】
子機RU1~RU3は、それぞれ対応するアンテナAN1~AN3に1対1で接続されるとともに、親機MUと光通信回線を介して通信できるように接続可能なものである。接続方式としては、図1に示すように、子機RU1~RU3がディジーチェーン(Daisy Chain)方式により親機MUに接続される以外に、子機RU1~RU3がそれぞれ直接、親機MUに接続される方法(図示しない)も考えられる。
【0020】
また子機RU1~RU3は、それぞれ対応するアンテナAN1~AN3に対して位相調整によるビームフォーミングを行うことが可能であるとともに、受信強度の計測とビームフォーミングによって、移動局UEが存在する方向を検出(サーチ)し、移動する移動局UEを追随して通信することができる。
【0021】
ビームフォーミングについてより具体的には、アップリンクについて子機RU1~RU3は、それぞれ対応するアンテナAN1~AN3によって得られた各RF信号に対して位相調整(ビームフォーミング)を行う。この例では、各アンテナAN1~AN3より、それぞれ最大4個のビームに対応する受信RF信号を得る。
【0022】
そして子機RU1~RU3は、各ビームに対応する受信RF信号をダウンコンバートし、同時に最大で4個のビームにそれぞれ対応する4個の受信信号に復調する。そして、子機RU1~RU3は、それぞれ復調した受信信号をシリアルに束ねた後、電気信号から光信号に変換(光搬送波を変調)して、上記光通信回線を通じて親機MUに伝送する。なお、上記受信信号に含まれるストリームをULストリーム信号と称する。
【0023】
一方、ダウンリンクについて子機RU1~RU3は、上記光通信回線を通じて親機MUから伝送される光信号を電気信号に変換して、同時に最大で4個のストリームにそれぞれ対応する信号(以下、DLストリーム信号と称する)に復調する。
【0024】
そして、子機RU1~RU3は、上記DLストリーム信号を用いて搬送波を変調した送信RF信号を生成して、この送信RF信号をそれぞれ接続されたアンテナAN1~AN3に出力して空間に放射する。なお、子機RU1~RU3は、それぞれ同時に最大で4個のビームを形成するビームフォーミングが可能であり、DLストリーム信号毎にビームを形成して送信を行う。すなわち、復調によって4個のDLストリーム信号が得られた場合には、4つのビームを形成し、各ビームが1つのDLストリーム信号を送信する。
【0025】
次に、親機MUについて詳細に説明する。図2は、親機MUの構成例を示すものである。すなわち、親機MUは、ポートP、制御部100、伝送部110、UL(Up Link)信号処理部120、DL(Down Link)信号処理部130を備える。
【0026】
ポートPは、光通信回線を収容し、この光通信回線を介して子機RU1~RU3と接続可能であるとともに、UL信号処理部120とDL信号処理部130に接続される。なお、図2の例では、光通信回線を介して物理的に直接接続されるのは子機RU1であるが、上記光通信回線には、子機RU2、RU3との間でやり取りされる光信号も多重化されているため、ポートPは、実質的に、子機RU2、RU3と接続されており、いずれの子機RU1~RU3とも光信号の送受信が可能である。
【0027】
またアップリンクについてポートPは、子機RU1から送られる光信号を逆多重化して、複数の光信号に分離し、各光信号を電気信号に変換して復調し、複数の電気通信信号を得る。この複数の電気通信信号は、子機RU1~RU3の各ビーム(あるいはULストリーム信号)にそれぞれ対応する受信信号であって、パラレルにUL信号処理部120に出力される。
【0028】
そしてまたポートPは、各受信信号から子機RU1~RU3より送られた情報を取得する情報検出部として機能し、上記復調された各受信信号を監視し、この受信信号に含まれる移動局UEからの通信開始要求(PRACH)の検出や、各受信信号(ULストリーム信号)に割り当てられたストリームIDの検出を行う。また、ポートPは、位置検出部として機能し、上記検出結果などから、各子機RU1~RU3が形成するカバーエリア内に位置する移動局UEの存在を検出する。これらの検出結果は、制御部100に通知される。
【0029】
一方、ダウンリンクについてポートP1は、DL信号処理部130からそれぞれ同時に最大で4個のDLストリーム信号が入力される。そして、ポートPは、入力されたDLストリーム信号にあて先となる子機RU1~RU3の識別情報を付加して、電気信号から光信号に変換(光搬送波の変調)して、これらの光信号を多重化して上記光通信回線を通じて子機RU1~RU3に伝送する。
【0030】
伝送部110は、基地局装置gNB2に接続される通信回線を収容し、この通信回線を通じて基地局装置gNB2と通信を行うものである。具体的には、アップリンクについて伝送部110は、UL信号処理部120から入力されたUL信号(同時に最大4個)を基地局装置gNB2に伝送する。一方、ダウンリンクについて伝送部110は、上記通信回線を通じて基地局装置gNB2から伝送されるDLストリーム信号(同時に最大4個)を受信し、DL信号処理部130に出力する。
【0031】
UL信号処理部120は、制御部100の制御にしたがって、ポートPから入力される各ビームの受信信号を加算する信号加算処理を施し、UL信号として伝送部110に出力する。
DL信号処理部130は、制御部100の制御にしたがって、伝送部110から入力されるDLストリーム信号を多重化してポートPに出力する多重化処理を施す。
【0032】
制御部100は、親機MUの各部を統括して制御する制御中枢であって、制御プログラムや制御データを記憶するメモリ(図示しない)と、上記制御プログラムおよび上記制御データに基づく処理を実行するプロセッサ(図示しない)を備え、これらにより各種制御機能を実現する。
【0033】
具体的な制御としては、制御部100は、子機RU1~RU3を通じた移動局UEと基地局装置gNB2との間の通信中継制御を行うとともに、ポートPから通知される検出結果や、基地局装置gNB2から伝送されるDLストリーム信号などに基づいて、子機RU1~RU3に対し、ストリームの割り当て制御やハンドオーバ制御を行う。
【0034】
ストリームの割り当て制御では、子機RU1~RU3の能力(対応できるストリーム数など)、現時点で割り当てているストリーム数などを含む子機情報や移動局UEの位置情報などを含む移動局情報を記憶および管理(更新)し、この子機情報や移動局情報に基づいて、子機RU1~RU3に対してストリームの割り当てを行う。
【0035】
また、ハンドオーバ制御では、ポートPから通知される検出結果に基づいて、移動局UEと通信すべき子機RU1~RU3の変更の必要性の判定を行い、この判定結果に基づいて、各子機RU1~RU3および移動局UEに対して子機間のハンドオーバの指示を行う。
【0036】
より具体的には、例えば、各RU1~RU3から通知される移動局UEからの受信信号の信号強度を比較し、通信中の子機から通知される信号強度が予め設定した第1の閾値を下回り、かつ、別の子機から通知される同じ移動局UEの信号強度が第2の閾値を超える場合に、上記別の子機へハンドオーバを行うように、両子機に対して指示を行う。ハンドオーバの必要性の判定条件については、この例に限ったものではなく、設置環境などに応じて多様なものが考えられ、それを適用してもよい。
【0037】
次に、子機RU1~RU3について、詳細に説明する。なお、以下において、説明の冗長と構成の対応関係の混乱を避けるために、「子機RUn」と表記して説明する。「子機RUn」として説明する場合、子機RU1~RU3のいずれにも共通した説明である。すなわち、以下の説明において、「n」を1~3のいずれとして読むことができる。
【0038】
図3は、子機RUn(RU1~RU3)の構成例を示すものである。すなわち、子機RUnは、制御部200、通信部210、信号処理部220、無線通信部230、記憶部240、アンテナANnを備える。
【0039】
通信部210は、光通信回線を通じて光通信信号を送受信するものであって、収容するポートを少なくとも2つ備え、一方のポートに収容する光通信回線を通じて受信した光通信信号を増幅して、他方のポートに収容する光通信回線を通じて送信する光通信中継器としての機能と、光信号と電気信号との間を相互に変換する変復調器としての機能を備える。
【0040】
なお、変復調器としては、光通信回線を通じて光信号を受信し、光/電変換して電気的な通信信号(DLストリーム信号)を得る光/電変換機能と、後述する信号処理部220から入力された電気的な通信信号(ULストリーム信号)を光通信信号に電/光変換して、光通信回線を通じて送信する電/光変換機能を備える。
【0041】
信号処理部220は、基地局装置gNB2と所定の通信プロトコルにしたがって通信を行うものである。当該システムの下り方向については、通信部210にて得られた通信信号を復調および復号して、当該子機RUn宛てのDLストリーム信号を検出し、制御部200に出力する。一方、当該システムの上り方向については、制御部200から与えられた基地局装置gNB2宛ての信号を搬送波の変調に用いてULストリーム信号を生成し、通信部210に出力する。
【0042】
無線通信部230は、アンテナANnを通じて、移動局UEと無線通信を行うものであって、無線アクセス方式としては、5Gに準拠した方式を採用する。このため、移動局UEは、分散アンテナシステムDASを通じて通信を行う場合でも、図1に示したアンテナANを通じて基地局装置gNB1と通信する場合と同じ無線アクセス方式により無線通信を行うことができる。
【0043】
また無線通信部230は、制御部200の指示にしたがって、アンテナANn上の多数のアンテナ素子における信号(送信RF信号および/または受信RF信号)の位相を制御するマッシブMIMOによってビームフォーミングを行う。
そしてまた無線通信部230は、移動局UEからの受信信号強度(例えば、RSSI)を計測し、この計測結果を移動局UEの識別情報に対応付けて、制御部200に通知する。
【0044】
制御部200は、子機RUnの各部を統括して制御する制御中枢であって、ワークメモリ(図示しない)と、後述する記憶部240からワークメモリに読み込んだ制御プログラムおよび制御データなどに基づいて処理を実行するプロセッサ(図示しない)を備え、これらにより、各種制御機能を実現する。
【0045】
具体的な制御機能として制御部200は、当該子機RUnと無線接続される移動局UEを、親機MUおよび基地局装置gNB2を介して5Gコアネットワーク5GCに接続する通信制御機能の他に、少なくとも、ビームフォーミング制御機能200a、サーチ制御機能200b、ハンドオーバ制御機能200cを備えるとともに、これらの機能を統合して実行する処理機能を備える。
【0046】
ビームフォーミング制御機能200aは、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御し、移動局UEに割り当てたストリーム数などに応じて、所定のアルゴリズムにしたがったビームフォーミングを行う。
【0047】
図4に、ビームフォーミングの一例を示す。この例では、アンテナANnは、例えば図4(a)に示すように、多数のアンテナ素子が4つのストリームに対応するように、4つのグループGr1~Gr4に分けられ、各グループごとに任意の方向に指向性を制御できるものとする。
【0048】
1つの移動局UEがアンテナANnのカバーエリア内に存在し、2つのストリームを上記移動局UEに割当てる場合、例えば、図4(b)に示すように、グループGr1によるストリームと、グループGr2によるストリームを移動局UEの存在する方向に指向させるビームフォーミングを行う。
【0049】
また、1つの移動局UEがアンテナANnのカバーエリア内に存在し、4つのストリームを上記移動局UEに割当てる場合、例えば、図4(c)に示すように、グループGr1~Gr4による各ストリームを移動局UEの存在する方向に指向させるビームフォーミングを行う。
【0050】
サーチ制御機能200bは、無線通信部230を制御して、移動局UEが存在する方向および距離をサーチし、推定(検出)する。具体的には、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御して、例えば、図5(a)に示すように、ビームの指向する方向を任意の範囲で20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEが存在する方向と距離を検出する。図5(b)は、図5(a)に示した各ビームのタイミングを示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0051】
ハンドオーバ制御機能200cは、親機MUと連携して、子機RU1~RU3間で移動局UEのハンドオーバを実現する制御機能である。より具体的には、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を親機MUに通知し、親機MU(のハンドオーバ制御機能)からの指示にしたがって、通信中の移動局UEとの通信を終了したり(例えば、カバーエリア外方向への移動時)、あるいは、新たに移動局UEとの通信を開始する(例えば、カバーエリア内方向への移動時)。
【0052】
記憶部240は、制御部200が使用する制御プログラムおよび制御データを記憶するとともに、UE位置情報テーブル240aを記憶する。上記制御プログラムおよび上記制御データは、製造時に予めインストールされる他、工注設定時に図示しない外部インタフェースを通じてインストールや更新が行われたり、コア装置Cなどの5Gコアネットワーク5GC上のサーバと通信してインストールや更新が行われる。
【0053】
UE位置情報テーブル240aは、子機RUnのカバーエリア内に存在する移動局UEの位置情報を記録したデータテーブルであって、移動局UEの識別情報、位置情報、更新日時などの情報が対応づけられて記憶される。位置情報の例としては、例えば、前述したアンテナ素子のグループGr1~Gr4の識別情報とビームの指向する方位情報、推定した距離の情報などを組み合わせたものが考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
次に、動作について説明する。以下の説明では特に、分散アンテナシステムDASの子機RUnにおける移動局UEのサーチ制御とストリーム割り当てについて説明する。図6は、子機RUnの制御部200の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0055】
分散アンテナシステムDASの運用が開始されると、子機RUnにおいては、制御部200が、いくつかの制御フローを並行して実行するが、その1つが図6に示す制御フローである。図6に示す制御フローは、子機RUnの動作が停止されるか、親機MUなどから停止命令があるまで、繰り返し実行される。
【0056】
まず、ステップ601において制御部200は、タイマTを起動、あるいは再起動するとともに、ワークメモリに記憶するタイムアウトフラグFのパラメータにOFFを意味する値を設定し、ステップ602に移行する。すなわち、制御部200は、ステップ601に移行した時点より、タイマTによりタイムカウントを開始、あるいは再開する。
【0057】
ステップ602において制御部200は、親機MUから、移動局UEに対して新しいストリームの割り当てを受けているか否かを判定する。なお、ここでいう新しいストリームとは、親機MUからの要求によって新たに通信を行うためのストリームである。ここで、新しいストリームの割り当てを受けている場合には、ステップ606に移行し、一方、新しいストリームの割り当てを受けていない場合には、ステップ603に移行する。
【0058】
ステップ603において制御部200は、移動局UEから新しい通信開始の要求が発生しているか否かを判定する。なお、ここでいう新しい通信開始の要求とは、移動局UEからの要求によって新たに通信を行うための要求を意味する。ここで、新しい通信開始の要求が発生している場合には、ステップ606に移行し、一方、新しい通信開始の要求が発生していない場合には、ステップ604に移行する。
【0059】
ステップ604において制御部200は、ステップ601で起動したタイマTをチェックし、ステップ601から予め設定した時間tが経過したか否かを判定する。ここで、時間tを経過している場合には、ステップ605に移行し、一方、経過していない場合には、再びステップ602に移行する。
【0060】
ステップ605において制御部200は、前述のタイムアウトフラグFのパラメータにONを意味する値を設定し、ステップ607に移行する。この設定(ON設定)によりタイムアウトフラグFは、後段のステップ607~609の処理が、ステップ604でタイムアウトしたことをきっかけに実行されたものであることを示す。
【0061】
ステップ606において制御部200は、記憶部240が記憶するUE位置情報テーブル240aを参照し、このテーブルに含まれる更新日時を現在時刻と比較して、予め設定した時間が経過したか否かを判定する。
【0062】
ここで、UE位置情報テーブル240aに情報がなかったり、あるいは、予め設定した時間が経過している場合には、ステップ607に移行する。一方、予め設定した時間が経過していない場合にはステップ611に移行する。
【0063】
すなわち、UE位置情報テーブル240aに移動局UEの位置情報がなかったり、あるいは、位置情報が古いには、移動局UEのサーチが必要と判定し、ステップ607に移行して、移動局UEのサーチを行う。一方、参照可能な移動局UEの位置情報がUE位置情報テーブル240aにある場合には、ステップ611に移行して、ストリームの割り当てを行う。
【0064】
ステップ607において制御部200は、サーチ制御機能200bを使用して、移動局UEが存在する方向を検出するための高速サーチを実行し、ステップ608に移行する。
具体的には、制御部200は、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御して、例えば、図7(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を約120°に設定し、図7(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向や距離を検出する。なお、図7(b)は、図7(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0065】
またこの高速サーチは、アンテナANn上のアンテナ素子の4つのグループGr1~Gr4毎に独立して実施される。各グループGr1~Gr4がサーチする方位は、工注設定時に任意に作業員が設定したり、記憶部240に累積的に記憶させた移動局UEの位置情報の統計データや学習データに基づいて、サーチ制御機能200bが自ら設定したり、設定を見直す更新を行うようにしてもよい。
【0066】
ステップ608において制御部200は、サーチ制御機能200bを使用して、移動局UEが存在する方向をより高い精度で検出するための低速サーチを実行し、ステップ609に移行する。
具体的には、制御部200は、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御して、例えば、図8(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を、高速サーチ時の約120°よりも狭い約90°に設定し、図8(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を高速サーチと同じ頻度で監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向や距離を検出する。なお、図7と同様に、図8(b)は、図8(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0067】
またこの低速サーチは、アンテナANn上のアンテナ素子の4つのグループGr1~Gr4毎に独立して実施される。各グループGr1~Gr4がサーチする方位は、ステップ607の高速サーチで検出した方向を中心に行うようにする。なお、サーチする方向の範囲を、工注設定時に作業員が限定したり、記憶部240に累積的に記憶させた移動局UEの位置情報の統計データや学習データに基づいてサーチ制御機能200bが自ら限定したり、限定の範囲を見直すようにしてもよい。
【0068】
なお、ステップ608に移行した時点で、ワークメモリに記憶するタイムアウトフラグFのパラメータを参照し、ONを意味する値が設定されている場合には、ステップ608の低速サーチをスキップして、ステップ609に移行するようにしてもよい。すなわち、タイムアウトした場合には、より高い精度のサーチを省略するようにしてもよい。
【0069】
ステップ609において制御部200は、ステップ608で検出した移動局UEの識別情報と、存在する方向や距離の情報(位置情報)、検出時の時刻(更新日時)とを対応づけて、UE位置情報テーブル240aに記録し、ステップ610に移行する。なお、ここで、UE位置情報テーブル240aに、同じ移動局の情報が存在する場合には、上書きして保存するようにしてもよいし、累積的にログとして一定期間(一定回数)の情報を保存するようにしてもよい。このログは、前述の学習データとして制御部200が使用することができる。
【0070】
ステップ610において制御部200は、ワークメモリに記憶するタイムアウトフラグFのパラメータを参照し、ONを意味する値が設定されているか否かを判定する。ここで、ONを意味する値が設定されている場合には、ステップ601に移行し、一方、OFFを意味する値が設定されている場合には、ステップ611に移行する。
【0071】
すなわち、ONを意味する値が設定されている場合には、UE位置情報テーブル240aの情報の更新に留め、一方、OFFを意味する値が設定されている場合には、後段のストリーム割り当ての処理に移行する。
【0072】
ステップ611において制御部200は、移動局UEに対してストリームの割り当てを行い、ステップ612に移行する。具体的には、ステップ602にて親機MUから新しいストリームの割り当てを受けていると判定した場合には、親機MUから通知されたストリームのIDを移動局UEに対して割り当て、一方、ステップ603にて移動局UEから新しい通信開始の要求が発生した場合には、その移動局UEに対して空いているストリームのIDを割り当てる。なお、空いているストリームのIDは、親機MUから制御部200が予め定期的に通知を受けているものとする。
【0073】
ステップ612において制御部200は、ステップ611で移動局UEに割り当てたストリームのために、ビームフォーミング制御機能200aを使用して、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御し、所定のアルゴリズムにしたがったビームフォーミングを行い、ステップ613に移行する。
【0074】
具体的には、制御部200は、UE位置情報テーブル240aを参照し、ステップ611でストリームを割り当てた移動局UEの識別情報と、それに対応づけられた位置情報に基づいて、この移動局UEが存在する方向に指向したビームを形成する。
【0075】
ステップ613において制御部200は、無線通信部230を制御して、ステップ611でストリームを割り当てた移動局UEとの無線通信リンクを確立するとともに、信号処理部220を制御して、上記移動局UEのための通信リンクをコア装置Cとの間に確立し、これらのリンクを通じて移動局UEをコア装置Cに接続して、ステップ614に移行する。以後、移動局UEとコア装置Cとの間では、ステップ611で割り当てたストリームを介した通信が開始される。
【0076】
ステップ614において制御部200は、ステップ613で確立した無線通信リンクを維持するために、サーチ制御機能200bを使用して、移動局UEが存在する方向を追尾するための低速サーチを行い、ステップ615に移行する。
【0077】
具体的には、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御して、例えば、図9(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を、ステップ608の低速サーチ時の約90°よりも狭い、追尾可能な範囲(図9(a)の例では、約45°)に設定する。
【0078】
そして制御部200は、図9(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向を検出する。図9(b)は、図8と同様に、図9(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、図9(a)と図9(b)における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0079】
なお、上記可変範囲は、制御部200が、移動局UEの移動について学習したデータに基づいて、可変するようにしてもよい。また子機RUnと移動局UEとの距離を受信信号強度から推定し、上記可変範囲を可変するようにしてもよい。この場合、受信信号強度が相対的に高い場合には、子機RUnと移動局UEとの距離が近いと判定し、上記可変範囲を広め、一方、受信信号強度が相対的に低い場合には、子機RUnと移動局UEとの距離が遠いと判定し、上記可変範囲を狭める。
【0080】
ステップ615において制御部200は、ビームフォーミング制御機能200aを使用して、ステップ614で検出した方向に指向するビームを形成するビームフォーミングを行って、ステップ613で確立した無線通信リンクを維持し、ステップ616に移行する。
【0081】
なお、ステップ614において制御部200は、移動局UEの移動方向を推定し、ステップ615において制御部200は、ステップ614の推定結果に基づく方向に指向したビームを形成するビームフォーミングを行うようにしてもよい。例えば、図10(a)に示すように、移動局UEが移動すると、制御部200は、各ビームの受信信号強度や、各方位の受信信号強度の大小関係やその変化などから移動局UEの移動方向を推定できる。
【0082】
ステップ616において制御部200は、ステップ613で開始した通信が終了したか否かを判定する。ここで、通信が終了した場合には、新たに当該処理をステップ601より開始し、一方、通信が終了していない場合には、ステップ614に移行して、引き続き、無線通信リンクを維持するためにビームフォーミングを継続する。
【0083】
以上のように、上記構成の通信中継システムでは、子機RU1~RU3毎に、ビームの指向方向を可変させ、移動局UEから受信した信号強度に基づいて、移動局UEが存在する方向や距離を検出するようにしている。
したがって、上記構成の通信中継システムによれば、子機RU1~RU3がそれぞれのカバーエリアに存在する移動局UEの位置を検出することができる。
【0084】
また上記構成の通信中継システムでは、子機RU1~RU3は、広範な方向にビームを指向させて移動局UEの位置を検出する高速サーチと、この高速サーチより狭小な方向にビームを指向させて移動局UEの位置をより高い精度で検出する低速サーチを連続的に行うようにしている。
したがって、上記構成の通信中継システムによれば、子機RU1~RU3がそれぞれのカバーエリアに存在する移動局UEの位置を効率的に検出することができる。
【0085】
また上記構成の通信中継システムでは、子機RU1~RU3は、ビームの指向する方向を可変して、移動局UEを追尾するようにしている。
したがって、上記構成の通信中継システムによれば、子機RU1~RU3がそれぞれのカバーエリアに存在する移動局UEと安定した通信を行うことができる。
【0086】
また上記構成の通信中継システムでは、子機RU1~RU3は、それぞれが有するアンテナAN1~AN3上のアンテナ素子を4つのグループGr1~Gr4に分け、グループGr1~Gr4毎に独立してビームの指向する方向を可変して、移動局UEを追尾するようにしている。
【0087】
したがって、上記構成の通信中継システムによれば、例えば図11(a)に示すように、アンテナANnに対しておおむね同じ方位に、複数の移動局UE1、UE2が存在する場合でも、2つのグループGr1、Gr2がそれぞれに設定された方向についてサーチすることができる。
なお、図11(b)および図11(c)は、図11(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0088】
またこの場合、2つのグループGr1、Gr2は、制御部200によって互いに独立して制御されるので、例えば図12(a)に示すように、グループGr1が図6のステップ614により移動局UE1を追尾のための低速サーチを行っている際に、グループGr2が図6のステップ607により移動局UE2を高速サーチすることができる。
なお、図12(b)および図12(c)は、図12(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0089】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0090】
例えば、上記実施の形態では、説明を簡明にするために、アンテナ素子の1つのグループが1つの移動局UEをサーチする場合を例に挙げて説明したが、2つ以上の移動局を1つのアンテナグループがサーチするするようにしてもよい。
【0091】
具体的には、例えば図13に示すように、アンテナANn上のグループGr1が2つの移動局UE1、UE2をサーチする。この場合、図13(b)に示すように、受信信号強度は2つのピークが現れるため、制御部200は、受信信号強度のピークを検出することで、移動局が存在する個数と、その方向を検出することができる。
なお、図13(b)は、図13(a)に示した各ビームに対応する受信信号強度を示したものであり、両図における濃淡の一致が対応関係を示している。
【0092】
また例えば、上記実施の形態では、ステップ607の高速サーチ、ステップ608の低速サーチおよびステップ614の低速サーチにおいて、図7図8図9に例示したように、同じアンテナグループについてビームの指向する方向の範囲を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0093】
例えば、ステップ607の高速サーチ、ステップ608の低速サーチおよびステップ614の低速サーチにおいて、一部あるいは全部について、使用するアンテナグループを異ならせてもよい。すなわち、例えば、ステップ607の高速サーチ、ステップ608の低速サーチでは、グループGr1を使用し、ステップ614の低速サーチでは、グループGr2を使用する。あるいは、ステップ607の高速サーチでは、グループGr1を使用し、ステップ614の低速サーチおよびステップ608の低速サーチでは、グループGr2を使用する。あるいは、ステップ607の高速サーチおよびステップ614の低速サーチでは、グループGr1を使用し、ステップ608の低速サーチでは、グループGr2を使用する。あるいは、ステップ607の高速サーチでは、グループGr1を使用し、ステップ608の低速サーチでは、グループGr2を使用し、ステップ614の低速サーチでは、グループGr3を使用する。
【0094】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0095】
100…制御部、110…伝送部、120…UL信号処理部、130…DL信号処理部、200…制御部、200a…ビームフォーミング制御機能、200b…サーチ制御機能、200c…ハンドオーバ制御機能、210…通信部、220…信号処理部、230…無線通信部、240…記憶部、240a…UE位置情報テーブル、5GC…5Gコアネットワーク、AN1~AN3…アンテナ、Gr1~Gr4…アンテナグループ、P1…ポート、RU1~RU3…子機、UE1…移動局、UE2…移動局、gNB1…基地局装置、gNB2…基地局装置。
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