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特許7618420画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/62 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
H04N1/62
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020183502
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2021093719
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019222038
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 道彦
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022648(JP,A)
【文献】特開2003-134349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像出力装置にて画像データを出力する際のカラーマッチング処理における変換特性を調整する画像処理装置であって、
出力される前記画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を調整対象色に設定する第一設定手段と、
基準となる見本を読み取って得られたスキャン画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を前記調整対象色に対する目標色に設定する第二設定手段と、
前記目標色に基づいて、前記調整対象色に対応する色信号が入力された場合の前記カラーマッチング処理における変換特性を変更する変更手段と、
を備え、
前記第二設定手段は、
前記調整対象色の周辺色を含む複数の色のパッチが印刷された色見本を前記見本として読み取って得られた第一のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定する機能と、
出力される前記画像データの見本原稿を前記見本として読み取って得られた第二のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定する機能とを有する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第一のスキャン画像データ又は前記第二のスキャン画像データをユーザ指示に基づき表示する表示手段をさらに備え、
前記第二設定手段は、前記表示手段に表示されたスキャン画像データに基づきユーザが選択した色を、前記目標色に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第一のスキャン画像データに基づいて前記目標色を設定する場合に使用する前記色見本の元になるパッチ画像データを生成する生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
設定された前記調整対象色の情報を前記第一設定手段から取得し、
取得した情報で特定される前記調整対象色を変化させた複数の色を算出し、
算出した前記複数の色に対応するパッチが並んだ前記パッチ画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、ユーザ指示に基づいて、前記パッチ画像データを生成することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第一設定手段にて複数の調整対象色が設定された場合において、前記第二設定手段にて前記第二のスキャン画像データに基づく前記目標色の設定が前記複数の調整対象色のうち一部の調整対象色についてなされた場合、前記生成手段は、前記複数の調整対象色のうち前記目標色が未設定の残りの調整対象色についての前記パッチ画像データをユーザ指示に基づかずに生成する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記変更手段は、前記カラーマッチング処理のための入力信号値と出力信号値とを対応付けたルックアップテーブルにおける変換特性を、前記調整対象色を示す入力信号値に対応する出力信号値が、前記目標色または前記目標色にできるだけ近い色を示す出力信号値となるように変更する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像出力装置の色再現範囲の情報を取得する取得手段をさらに備え、
前記変更手段は、取得した情報で特定される色再現範囲に収まるように前記変更を行う、ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像出力装置は、入力された前記画像データに従った画像を、色材を用いて記録媒体上に形成する画像形成装置であることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像出力装置にて画像データを出力する際のカラーマッチング処理における変換特性を調整する画像処理装置の制御方法であって、
出力される前記画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を調整対象色に設定する第一設定ステップと、
基準となる見本を読み取って得られたスキャン画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を前記調整対象色に対する目標色に設定する第二設定ステップと、
前記目標色に基づいて、前記調整対象色に対応する色信号が入力された場合の前記カラーマッチング処理における変換特性を変更する変更ステップと、
を含み、
前記第二設定ステップでは、
前記調整対象色の周辺色を含む複数の色のパッチが印刷された色見本を前記見本として読み取って得られた第一のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定するステップと、出力される前記画像データの見本原稿を前記見本として読み取って得られた第二のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定するステップとの何れかがユーザの選択に応じて実行される、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに基づき印刷等の出力処理を行う際の色調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データに基づいて例えば印刷処理を行う際、印刷対象の画像データ内の色を調整することが行われる。この際の色の調整は、一般に以下の手順で行われる。まず、印刷対象の画像データから調整したい色(以下、「調整対象色」と呼ぶ)をユーザに選択させる。次に、当該調整対象色の目標となる色(以下、「目標色」と呼ぶ)の候補を複数算出して印刷し、その中からユーザに目標色を選択させる。そして、調整対象色を示す色信号値が入力された場合に、目標色に対応する色信号値が出力されるような、色変換LUTを生成する。
【0003】
上記のような色調整に関し、特許文献1には、1つの目標色候補の色パッチと当該目標色候補の周辺色の色パッチを合わせてサンプル出力し、ユーザにその中から目標色を選択させる技術が記載されている。また、特許文献2には、見本となる印刷物を光学的に読み取り、読み取った画像(スキャン画像)から目標色となる色の部分をユーザに指定させて目標色を設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007‐166305号公報
【文献】特開2011‐205505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目標色を含む見本となる印刷物がユーザの手許にある場合、当該印刷物を利用して目標色を選択するのがユーザにとっては便利である。このような場合においても上記特許文献1の技術では、複数の色パッチからなるサンプル出力の結果と目標色を含む印刷物とを見比べて目標色を選択することになり、ユーザにとっては手間である。また、上記特許文献2の技術は、目標色を含む見本となる印刷物がユーザの手許にあることが前提となっており、見本の印刷物がないと目標色を設定することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る画像処理装置は、画像出力装置にて画像データを出力する際のカラーマッチング処理における変換特性を調整する画像処理装置であって、出力される前記画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を調整対象色に設定する第一設定手段と、基準となる見本を読み取って得られたスキャン画像データに含まれる色のうちユーザが選択した色を前記調整対象色に対する目標色に設定する第二設定手段と、前記目標色に基づいて、前記調整対象色に対応する色信号が入力された場合の前記カラーマッチング処理における変換特性を変更する変更手段と、を備え、前記第二設定手段は、前記調整対象色の周辺色を含む複数の色のパッチが印刷された色見本を前記見本として読み取って得られた第一のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定する機能と、出力される前記画像データの見本原稿を前記見本として読み取って得られた第二のスキャン画像データに基づき前記目標色を設定する機能とを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、見本となる印刷物がある場合にはそれを利用して目標色を設定でき、見本となる印刷物がない場合においても色見本に基づき目標色を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】MFPのハードウェア構成を示すブロック図
図2】画像処理部の内部構成を示す機能ブロック図
図3】実施形態1に係る、スポットカラー調整部の内部構成を示す機能ブロック図
図4】スポットカラー調整用UI画面の一例を示す図
図5】スポットカラー調整の対象となる特定の色(調整対象色)を設定する処理の流れを示すフローチャート
図6】(a)は色見本を得るためのUI画面の状態を示す図、(b)はパッチ画像を印刷して得られた色見本を示す図
図7】パッチ画像を生成する処理の流れを示すフローチャート
図8】見本の読み取りを促すメッセージウィンドウが表示された状態を示す図
図9】調整対象色に対する目標色を設定する処理の流れを示すフローチャート
図10】見本原稿がスキャンされた場合のUI画面の状態を示す図、(b)は色見本がスキャンされた場合のUI画面の一例を示す図
図11】実施形態2に係る、スポットカラー調整部の内部構成を示す機能ブロック図
図12】(a)は調整対象色の設定開始時のUI画面を示す図、(b)は設定完了持のUI画面を示す図
図13】色見本の自動生成処理の流れを示すフローチャート
図14】(a)は見本原稿に基づく目標色の設定完了時のUI画面を示す図、(b)はすべての調整対象色に対する目標色の設定完了時のUI画面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが必須のものとは限らない。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
【0010】
[実施形態1]
本実施形態では、印刷対象の画像データから特定の調整対象色とその目標色を設定し、調整対象色の信号値(入力信号値)に対応する出力信号値が、目標色に対応した出力信号値となるように色調整を行う。まず、このような色調整が求められる背景について確認しておく。
【0011】
近年では、家庭やオフィス向けプリンタの性能向上に伴い、商業印刷機と同等の画質を実現可能なプリンタが登場している。そのため販売店などで用いられるいわゆるPOP印刷が、各店舗でより簡単に行えるようになっている。ここで、POPとは、Point of purchase advertisingの略語で、販売促進のための広告のことである。このとき、使用するプリンタの機種等の違いなどにより、見本となる印刷物とは異なる色味で印刷されてしまうことがある。このようなケースで、見本となる印刷物と同様の色味で印刷することができるようにするために色調整が行われる。
【0012】
本実施形態では、印刷対象の画像データに従って記録媒体上に電子写真方式にて画像を形成する画像形成装置としていわゆるMFP(Multi Function Printer)を例に説明を行うものとする。ただし、本開示の技術の適用範囲はMFPに限定されるものではなく、入力された画像データに従って画像を出力する画像出力装置全般に広く適用可能である。すなわち、複写機、レーザプリンタ、インクジェットプリンタといった他の種類の画像形成装置に加え、モニタやプロジェクタ等の画像表示装置に対しても適用可能である。
【0013】
<画像形成装置のハードウェア構成>
図1は、本実施形態に係る、MFPのハードウェア構成を示すブロック図である。MFP100は、CPU101、ROM102、RAM103、大容量記憶装置104、UI部105、画像処理部106、エンジンインタフェース(I/F)107、ネットワークI/F108、スキャナI/F109を備える。これら各部は、システムバス110を介して相互に接続されている。また、MFP100は、プリンタエンジン111及びスキャナユニット112を備える。プリンタエンジン111及びスキャナユニット112は、それぞれエンジンI/F107及びスキャナI/F109を介してシステムバス110に接続されている。尚、画像処理部106は、MFP100とは独立した画像処理装置(画像処理コントローラ)として構成されていてもよい。
【0014】
CPU101は、MFP100全体の動作を制御する。CPU101は、ROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって、後述する各種の処理を実行する。ROM102は、読み出し専用メモリであり、システム起動プログラムまたはプリンタエンジンの制御を行うためのプログラム、及び、文字データまたは文字コード情報等が格納されている。RAM103は、揮発性のランダムアクセスメモリであり、CPU101のワークエリア、及び、各種のデータの一時的な記憶領域として使用される。例えば、RAM103は、ダウンロードによって追加的に登録されたフォントデータ、または、外部装置から受信した画像ファイル等を格納するための記憶領域として使用される。大容量記憶装置104は、例えばHDDやSSDであり、各種のデータがスプールされ、プログラム、ルックアップテーブル(LUT)、情報ファイル及び画像データ等の格納、および、作業領域として使用される。
【0015】
UI(ユーザインタフェース)部105は、例えばタッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、MFP100の設定状態、実行中の処理の状況、エラー状態等を表示する。例えば色調整処理を実行する際の調整対象色の候補や目標色の候補の表示にも使用される。また、UI部105は、MFP100の各種設定における値の入力や各種ボタンの選択など様々なユーザ指示を受け付ける。例えば色調整処理に関する設定や実行指示などもUI部105を介してなされる。なお、UI部105は、ハードキーなどの入力デバイスを別途備えていてもよい。
【0016】
エンジンI/F107は、印刷を実行する際に、CPU101からの指示に応じてプリンタエンジン111を制御するためのインタフェースとして機能する。エンジンI/F107を介して、CPU101とプリンタエンジン111との間でエンジン制御コマンド等が送受信される。ネットワークI/F108は、MFP100をネットワーク113に接続するためのインタフェースとして機能する。尚、ネットワーク108は、例えば、LANであってもよいし、電話回線網(PSTN)であってもよい。プリンタエンジン111は、システムバス110側から受信した印刷画像データに基づいて、複数色(ここではCMYKの4色)の色材(ここではトナー)を用いてマルチカラー画像を紙等の記録媒体上に形成する。スキャナI/F109は、スキャナユニット112による原稿の読み取りを行う際に、CPU101からの指示に応じてスキャナユニット112を制御するためのインタフェースとして機能する。スキャナI/F109を介して、CPU101とスキャナユニット112との間でスキャナユニット制御コマンド等が送受信される。スキャナユニット112は、CPU101による制御によって、原稿を光学的に読み取って読取画像データを生成し、スキャナI/F109を介してRAM103または大容量記憶装置104に読取画像データ(スキャン画像データ)を送信する。
【0017】
なお、本実施形態では、例えばPOP印刷用の入力画像データを用いてプリンタエンジン111で印刷を行ったところ、見本となる印刷物とは異なる色味で印刷されてしまったというケースを想定している。そして、印刷結果における色味が見本となる印刷物とは異なっていることを認識したユーザが、UI部105を操作し、色味が違ってしまって調整を行いたい色(すなわち、調整対象色)について色調整の実行指示を入力する。そして、この明示的な色調整の実行指示に基づき、カラーマッチング処理における変換特性を規定するカラーマッチングLUTを修正して、調整対象色についてユーザが目指す色を実現可能な新たな変換特性を持つカラーマッチングLUTを得る。すなわち、新たなカラーマッチングLUTの生成は、ユーザから明示的な指示が入力された場合にのみ実行される。そして、通常の印刷処理に際しては、画像処理部106は新たなカラーマッチングLUTの生成を都度行わず、既定のカラーマッチングLUTを用いてカラーマッチング処理を行う。以下の説明では、上述したユーザによる明示的な指示に基づく特定の色の調整を「スポットカラー調整」と呼ぶこととする。また、見本となる印刷物のことを「見本原稿」と呼ぶこととする。
【0018】
<画像処理装置の構成>
図2は、画像処理部106の内部構成を示す機能ブロック図である。画像処理部106は、画像入力部201、制御コマンド生成部202、スポットカラー調整部203、色変換部204、RIP部205、中間調処理部206、および画像出力部207を備える。これらの各機能部は、CPU101がROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって実現される。あるいは、これらの一部または全部が、ASICまたは電子回路等のハードウェアで実現されてもよい。
【0019】
画像入力部201は、印刷対象の画像データの入力を受け付ける。画像データは、例えばホストPC115からネットワーク113及びネットワークI/F108を介して入力される。或いは、大容量記憶装置104に格納された画像データが入力されてもよい。入力される画像データは、例えば、プリンタエンジン111に非依存のsRGB色空間に対応した色信号を8bit(256階調)で表現する、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の色毎のプレーンで構成される二次元データである。なお、sRGBとは、IEC(国際電気標準会議)が定めたRGB色空間の標準規格のことを指している。画像入力部201に入力された画像データは、制御コマンド生成部202に送られる。
【0020】
制御コマンド生成部202は、スポットカラー調整部203及び色変換部204を制御して、プリンタエンジン111で取り扱い可能なCMYK色空間の画像データを得る。そして、得られたCMYK色空間の画像データを含んだ、RIP部205の制御用コマンド(以下、「RIP制御コマンド」と表記)を生成する。生成されたRIP制御コマンドは、RIP部205に送られる。
【0021】
スポットカラー調整部203は、ユーザによるスポットカラー調整の実行指示に基づき、制御コマンド生成部202の制御の下、カラーマッチング処理で使用するカラーマッチングLUTの調整を行う。カラーマッチング処理とは、画像出力装置にて画像を出力する際に、出力対象となる画像データの色空間を当該画像出力装置の色再現性に合うように色空間を変換する処理をいう。本実施形態の場合、画像入力部201が受け取った印刷対象の入力画像データの色空間を、プリンタエンジン111に依存しないsRGBからプリンタエンジン111に依存したRGBに変換する処理を意味する。以下、プリンタエンジン111の色再現性に依存した、いわゆるデバイス依存のRGB色空間のことを、「devRGB」と表記することとする。カラーマッチングLUTは、色空間内の複数の離散点(後述の格子点に相当)における入力値と出力値とを対応付けて保持している。スポットカラー調整部203は、予め用意したカラーマッチングLUTに対して、調整対象色に対応する色信号が入力された場合に目標色と同じ色信号が出力されるように変換特性の修正を行う。ここで、調整対象色を第一の色、当該第一の色が既定のカラーマッチングLUTに入力された場合に出力される色を第二の色、目標色に対応する色を第三の色とする。変換特性の修正とは、第一の色が入力された時に出力される色を、第二の色から第三の色に置き換えることを意味する。換言すれば、調整対象色を第一の色として入力したときに、第三の色が出力されるような新たなカラーマッチングLUTを生成することになる。このスポットカラー調整部203における処理の詳細については後述する。
【0022】
色変換部204は、上述のカラーマッチングLUTと色変換LUTとを用いて、入力された画像データの各画素の画素値を、sRGB色空間で表される値(sRGB値)から、CMYK色空間で表される値(CMYK値)に変換する。カラーマッチングLUT及び色変換LUTは、RAM103或いは大容量記憶装置104に記憶されている。まず、色変換部204は、カラーマッチングLUTを用いて、入力画像データの画素値をsRGB値からdevRGB値に変換するカラーマッチング処理を行う。この際、上述のスポットカラー調整によって新たに生成されたカラーマッチングLUTを使用することで、入力画像データに含まれる調整対象色がその目指す色である目標色に近づくことになる。更に、色変換部204は、カラーマッチング処理後の画像データに対し、devRGB色空間からLab色空間に変換する第1色変換LUT、および、Lab色空間からCMYK色空間に色変換する第2色変換LUTの2つの色変換LUTを用いた色変換処理を行う。これにより、各画素がCMYK値で表現された画像データが得られる。なお、「Lab」は、CIE(国際照明委員会)が定める、人間の視覚特性を考慮したプリンタエンジン111に非依存の3次元の視覚均等色空間である「L*a*b*」を簡略的に示したものである。プリンタエンジン111に非依存の標準色空間を介して色変換することで、人間が同一色と認識する色の再現を実現する。なお、色変換部204における処理は、上述した内容に限定されない。例えば、カラーマッチングLUTと2つの色変換LUTとを合成した1つのLUTを作成し、sRGB色空間からCMYK色空間への変換をまとめて行ってもよい。また、LUTに代えて関数式に基づいて、画像データに対しカラーマッチング処理や色変換処理を行うような構成であってもよい。
【0023】
RIP(Raster Image Processer)部205は、制御コマンド生成部202が生成したRIP部制御コマンドを用いて、CMYK色空間で表現されたラスタ形式の画像データ(以下、「CMYKラスタ画像データ」と表記)を生成する。
【0024】
中間調処理部206は、RIP部205によって生成されたCMYKラスタ画像データに対して、中間調処理を施して、プリンタエンジン111で処理可能な、網点で表現された印刷画像データ(ハーフトーン画像データ)を生成する。プリンタエンジン111は、通常、2階調、4階調、16階調といったように、入力画像データの階調数よりも低い階調数にて出力可能な場合が多い。このため、上述のような少ない階調数で印刷出力した場合でも安定した中間調表現が可能となるように、中間調処理を行う。なお、中間調処理の手法には、濃度パターン法、組織的ディザ法、誤差拡散法等があり、これら公知の手法を適用することが可能である。
【0025】
画像出力部207は、中間調処理部206から印刷画像データを受け取ると、エンジンI/F107を介してプリンタエンジン111に印刷画像データを送信する。CPU101は、印刷画像データに基づく画像形成の指示を、プリンタエンジン111に対して行う。プリンタエンジン111は、露光、現像、転写、及び定着の各プロセスを実行することによって、記録媒体上に入力された印刷画像データに従ったカラー画像を形成して出力する。
【0026】
(スポットカラー調整部の詳細)
図3は、本実施形態に係る、スポットカラー調整部203の内部構成を示す機能ブロック図である。スポットカラー調整部203は、調整対象色設定部301、色見本生成部302、目標色設定部303、色再現範囲取得部304、出力色決定部305及びLUT修正部306を有する。これらの各機能部は、CPU101がROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって実現される。あるいは、これらの一部または全部が、ASICまたは電子回路等のハードウェアで実現されてもよい。以下、各機能部について説明する。
【0027】
調整対象色設定部301は、印刷対象の入力画像を構成する色のうち、スポットカラー調整の対象となる特定の色(調整対象色)を設定する処理を行う。図4及び図5を参照して詳しく説明する。なお、本明細書において、フローチャートの説明における記号「S」はステップを意味する。まず、調整対象色設定部301は、印刷対象の入力画像データを制御コマンド生成部202から受け取る(S501)。そして、受け取った入力画像データに基づき、UI部105に表示したスポットカラー調整用UI画面上に入力画像を表示する(S502)。図4に、本実施形態に係るスポットカラー調整用UI画面(以下、単に「UI画面」と呼ぶ。)の一例を示す。調整対象色の設定時には、図4に示すように、まず、入力画像402が画像表示領域401内に表示される。そして、表示された入力画像402に対するユーザ選択、すなわち、特定の位置の選択を受け付ける(S503)。この選択は、例えば、画像表示領域内401内の入力画像402における「全品3割引」の領域をユーザがタッチ操作し、当該タッチ操作の位置に対応した座標情報(x,y)が取得されることで実現される。なお、タッチ操作に代えて、マウス等のポインティングデバイスによって特定の位置の選択を行ってもよい。ここで、x,yは、入力画像402の一番左上の位置を原点(0,0)とした、2次元平面上の横方向の位置x(右方向が+)と縦方向の位置y(下方向が+)を表す。続いて、取得した座標情報に基づいて、ユーザ選択に係る位置に対応する色値が取得される(S504)。いま、入力画像の各画素はsRGB値を持つため、ユーザが選択した位置におけるsRGB値が取得されることになる。そして、当該取得されたsRGB値に対応する色が、UI画面400内の調整対象色表示領域403に表示される(S505)。この際、調整対象色表示領域403の近傍には、取得したsRGB値(R、G、Bの3値。ここでは、(R=0,G=0,B=160))が合わせて表示される。なお、画像表示領域401に表示される入力画像や調整対象色表示領域403に表示される色は、UI部105が搭載するモニタデバイスに依存したモニタ色変換LUTを用いて、モニタデバイスに依存したRGBの色空間で表示される。最後に、ユーザによる決定ボタン404の押下に応答して、調整対象色表示領域403に表示中の色が、調整対象色として設定される(S506)。そして、このようにして設定された調整対象色の情報が、出力色決定部305に送られる。
【0028】
色見本生成部302は、調整対象色の目標となる色(目標色)を決定するための色見本の元となる、目標色の候補となる複数の色に対応したパッチ群からなるパッチ画像を生成する。図6(a)は、色見本を得るためのUI画面400の状態を示す図である。図6(a)に示すように、色見本生成部302は、まず、色見本の要否をユーザに確認するメッセージウィンドウ600をUI画面400上に表示する。色見本が必要な場合、すなわち、目指す色を含む見本印刷物が手許にない場合、ユーザは「はい」ボタン601を押下して、色見本の印刷を指示する。一方、見本原稿が手許にあって色見本が不要な場合、ユーザは「いいえ」ボタン602を押下する。この場合、色見本生成部302は動作しない。そして、「はい」ボタン601の押下を検知した色見本生成部302は、ユーザ選択に基づき設定された調整対象色の情報を調整対象色設定部301から取得し、当該情報に基づき、例えば図6(b)に示すような色見本603を得るためのパッチ画像を生成する。図6(b)の色見本603を得るためのパッチ画像の場合、調整対象色を含む27色それぞれに対応する矩形(例えば945画素×945画素の矩形)が、600dpiの解像度で横に5つ(X方向)、縦に6つ(Y方向)並ぶパッチ画像となっている。また、パッチ画像の上部には横方向(X方向)に沿ってA~Eまでのアルファベットが付され、左端部には縦方向(Y方向)に沿って1~6までの数字が付されている。これは、後述の目標色設定用のUI画面において、アルファベットと数字の組み合わせから成るパッチ番号(各パッチを識別可能な情報)によって、ユーザが所望のパッチを指定できるようにするためである。この時の各パッチの色はsRGBで規定される色である。なお、パッチの総数や並べ方は任意である。1つ1つのパッチについても、異なる矩形サイズでもよいし、そもそも矩形とは異なる形状であってもよい。また、解像度も600dpiに限定されるものではない。
【0029】
ここで、図7のフローチャートを参照して詳しく説明する。なお、図7のフローチャートにおける記号「S」はステップを意味する。
【0030】
まず、色見本生成部302は、調整対象色設定部301によって設定された調整対象色の情報を取得する(S701)。次に、設定された調整対象色を段階的に変化させた複数の色を算出する(S702)。ここで算出された色(ここでは調整対象色を含む27色)が各パッチの色となる。この際の色の変化のさせ方としては、例えばR、G、B別に所定の変化量を調整対象色に足す手法がとられる。ここで、変化量をx、y、zとした時のパッチの色を示すsRGB値は、以下の式(1)~式(3)で求められる。
【0031】
out(i) = Rin + x(i) + y(i) + z(i) ・・・式(1)
out(i) = Gin + x(i) + y(i) + z(i) ・・・式(2)
out(i) = Bin + x(i) + y(i) + z(i) ・・・式(3)
上記式(1)~式(3)において、“Rout”、“Gout”、“Bout”は調整対象色を変化させた後のR値、G値、B値をそれぞれ示す。また、“Rin”、“Gin”、“Bin”は、調整対象色におけるR値、G値、B値をそれぞれ示す。また、iは変化番号を示し、変化番号に応じた変化量が以下の表1に示すようなテーブルによって規定される。なお、ここではsRGB色空間を基準として色を変化させているがこれに限定されるものではなく、例えばLab色空間やLuv色空間などを基準として色を変化させてもよい。
【0032】
【表1】
【0033】
最後に、調整対象色を変化させた色それぞれに対応した矩形のパッチを並べたパッチ画像を生成する(S703)。こうして得られたパッチ画像を印刷出力することで色見本が得られる。そして、色見本生成部302は、上述のようにして色見本の基となるパッチ画像を生成後、既定の変換テーブル(カラーマッチングLUT)を用いて、各パッチのsRGB値をdevRGB値に変換する。以下の表2は、カラーマッチングLUTの一例である。
【0034】
【表2】
【0035】
上記表2に示すようなカラーマッチングLUTに基づく変換後のパッチ画像のデータは、制御コマンド生成部202を介してプリンタエンジン111に送られ印刷出力される。
【0036】
目標色設定部303は、調整対象色設定部301によって設定された調整対象色についての目標とする色(目標色)を設定する。図8及び図9を参照して詳しく説明する。なお、図9のフローチャートにおける記号「S」はステップを意味する。まず、目標色設定部303は、図8(a)に示すように、見本の読み取りを促すメッセージウィンドウ800をUI画面400上に表示する(S901)。この場合において、ユーザは、手許に見本原稿801(図8(b))があればそれを、なければ色見本生成部302で生成されたパッチ画像に基づく色見本802(図8(c))を使用する。つまり、ユーザは、見本原稿或いは色見本のどちらかをスキャナユニット112の原稿読取台(不図示)にセットして、読み取り実行を指示するための「OK」ボタン803を押下する。この「OK」ボタン803の押下に応答して、スキャナユニット112が見本原稿801或いは色見本802をスキャンする。このスキャンによって得られるスキャン画像データは、例えば600dpiの解像度を持ち、各画素がRGB8bitで表現された画像データである。このスキャン画像データも、スキャナユニット112の色再現性に依存するdevRGB値からスキャナ用の変換LUTを用いて、sRGB色空間に変換される。これら変換前後のスキャン画像データはRAM103に保存される。次に、目標色設定部303は、sRGB色空間に変換後のスキャン画像データをRAM103から読み出してUI部105に表示する(902)。図10(a)及び(b)は、目標色設定時のUI画面400の状態を示しており、(a)は見本原稿801がスキャンされた場合、(b)は色見本802がスキャンされた場合にそれぞれ対応している。図10(a)に示すUI画面400の場合、見本原稿801のスキャン画像1001が画像表示領域401内に表示されている。図10(b)のUI画面400の場合、色見本802のスキャン画像1001’が画像表示領域401内に表示されている。また、図10(b)のUI画面400には、上述のパッチ番号を指定するための入力欄1003が存在すする。なお、入力欄1003を含むUI画面400を表示するかどうかは、スキャン画像の特徴に基づき判断すればよい。S903以降の各処理は、以下のとおりである。スキャン画像1001又は1001’に対するユーザ操作を受け付けた場合には、その操作内容に応じて処理が振り分けられる(S903、S904)。表示されたスキャン画像が見本原稿801のスキャン画像1001である場合において、例えば、画像表示領域内401内のスキャン画像1001における「全品3割引」の領域をユーザがタッチ操作すると、当該タッチ操作の位置に対応した座標情報(x,y)に基づいて色値が取得される(S905)。スキャン画像の各画素もsRGB値を持つため、ユーザがタッチ操作によって選択した位置におけるsRGB値が取得されることになる。そして、当該取得されたsRGB値に対応する色が、目標色表示領域1002に表示される(S907)。この際、目標色表示領域1002の近傍(この例では下部)には、取得したsRGB値(R、G、Bの3値。ここでは、(R=0,G=0,B=180))が合わせて表示される。なお、画像表示領域401に表示されるスキャン画像や目標色表示領域1002に表示される色は、UI部105が搭載するモニタデバイス(ここではタッチパネル)に依存したモニタ色変換LUTを用いて、モニタデバイスに依存したRGBの色空間で表示される。最後に、ユーザによる「決定」ボタン404の押下に応答して、目標色表示領域1002に表示中の色が、目標色として設定される(S908)。そして、このようにして設定された目標色の情報が、出力色決定部305に送られる。一方、表示されたスキャン画像が色見本802のスキャン画像1001’である場合において、入力欄1003を介してパッチ番号が入力されて確定ボタンが押下された場合には、当該パッチ番号に対応する位置のパッチの色値であるsRGB値が取得される(S906)。そして、当該取得されたsRGB値に対応する色が、目標色表示領域1002に表示される(S907)。この際にも、目標色表示領域1002の近傍(この例では下部)には、取得したsRGB値(R、G、Bの3値。ここでは、(R=0,G=0,B=180))が合わせて表示される。そして、ユーザによる「決定」ボタン404の押下に応答して、目標色表示領域1002に表示中の色が、目標色として設定される(S908)。そして、このようにして設定された目標色の情報が、出力色決定部305に送られる。
【0037】
色再現範囲取得部304は、制御コマンド生成部202からプリンタエンジン111の色再現範囲の情報を取得する。ここで、プリンタエンジン111の色再現範囲とは、例えば標準色空間であるLab空間上で、プリンタエンジン111が表現可能な色の範囲を意味する。ここでは、この色再現範囲の情報を、以下の表3に示すような、プリンタエンジン111に依存するdevRGB色空間におけるRGB値とLab色空間におけるLab値との対応関係を規定するLUT形式にて取得する。
【0038】
【表3】
【0039】
上記表1において、実数値で与えられるLab値は、Lは0.0~100.0、a及びbは-127.0~128.0の値を取るものとする。また、入力値であるRGB値は、devRGB色空間の中で離散的な位置の値となっている。入力値として保持されていないRGB値が入力された場合には、その周辺の値を用いた補間演算によってLab値が算出される。なお、色再現範囲の特定に用いる標準色空間はLab色空間に限定されるものではなく、CIE(国際照明委員会)が定めるLuv色空間など他の色空間でもよい。取得された色再現範囲の情報は、出力色決定部305に送られる。
【0040】
出力色決定部305は、上述のようにして設定された調整対象色とその目標色の情報、および、プリンタエンジン111の色再現範囲の情報に基づいて、調整対象色が入力された場合の出力色となる色を決定する。出力色決定部305は、まず、設定された目標色に対応するLab値が、プリンタエンジン111の色再現範囲に収まっているか否かを判定する。判定の結果、目標色のLab値が色再現範囲内である場合は、目標色のLab値に対応するdevRGB値で特定される色を、出力色として決定する。一方、判定の結果、目標色のLab値が色再現範囲外である場合は、色再現範囲の内側において目標色に一番近い色(つまり、ユーザが求める色に最も近い色)を、出力色として決定する。この際には、例えば、複数の候補色を含んだチャート画像を生成してUI部105に表示し、求める色に近い色をチャート画像の中からユーザに選択させるようにしてもよい。なお、チャート画像を印刷出力した上で、ユーザに所望の色を選択させてもよい。こうして、設定された目標色ないしはそれに近い色が出力色として決定される。本実施形態の場合、決定された出力色は、devRGB色空間におけるR、G、Bの3値を持つ色信号値によって特定される。これにより、sRGBからdevRGBに色空間を変換するためのカラーマッチングLUTにおいて、所定のsRGB値を持つ調整対象色が入力された場合に、ユーザが所望する目標色(ないしはそれに近い色)が出力されるようなdevRGB値が決まる。こうして、決定した出力色の情報は調整対象色の情報と共に、LUT修正部306に送られる。
【0041】
LUT修正部306は、受け取った調整対象色と出力色の情報に基づいて、既定のカラーマッチングLUTを修正する。例えば、調整対象色情報として暗めの濃い青を示す(R=0,G=0,B=160)のsRGBの色信号値、その出力色情報として(R=0,G=0,B=125)のdevRGBの色信号値を出力決定部305から受け取ったとする。この場合、LUT修正部306は、前述の表2に示す既定のカラーマッチングLUTを、以下の表4のように修正する。
【0042】
【表4】
【0043】
表4に示すカラーマッチングLUTでは、調整対象色のsRGB値(R=0,G=0,B=160)に対応する格子点のdevRGB値が、(R=0,G=0,B=115)から(R=0,G=0,B=125)へと書き換えられているのが分かる。このような格子点に対応するRGB値の書き換えは、カラーマッチングLUTの変換特性の変更を行うことと同義である。こうして、調整対象色をユーザが望む色に近づけるようなカラーマッチング処理を実現するための新たなカラーマッチングLUTが得られる。なお、ここでは1つの格子点のdevRGB値のみを変更しているが、より好適には、その近傍格子点におけるdevRGB値との差が滑らかになるようにスムージング処理を施すことが望ましい。上述のようにして生成された、ユーザが指定する調整対象色とその出力色とが関連付けられた新たなカラーマッチングLUTは、色変換部204に送られる。
【0044】
本実施形態によれば、見本原稿が手許にある場合はそれを利用して目標色を設定することが出来るので、色見本を毎回印刷し見本印刷物と比較することで目標色を設定するという面倒な作業を行わなくても済む。また、見本印刷物が手許にない場合においても、色見本を生成・印刷して適切に目標色を設定することができる。
【0045】
[実施形態2]
スポットカラー調整を入力画像内の複数の色について行う場合、調整対象色を1つずつ選択し、その都度スキャナユニットで色見本や見本原稿を読み取って目標色設定を行うのは、ユーザにとって非常に手間である。そこで、複数の調整対象色の設定を先ず行った上で、見本原稿に目指す色がある調整対象色については見本原稿に基づき目標色を設定し、見本原稿に目指す色がない調整対象色についてのみ色見本を自動生成する態様を、実施形態2として説明する。なお、画像処理部106の基本構成など実施形態1と共通する内容については説明を省略し、以下では差異点であるスポットカラー調整部203における処理内容について説明を行うこととする。
【0046】
<スポットカラー調整部の構成>
(スポットカラー調整部の詳細)
図11は、本実施形態に係る、スポットカラー調整部203’の内部構成を示す機能ブロック図である。本実施形態のスポットカラー調整部203’も、実施形態1と同様の機能ブロックで構成される。すなわち、調整対象色設定部301’、色見本生成部302’、目標色設定部303’、色再現範囲取得部304、出力色決定部305及びLUT修正部306を有する。以下では、実施形態1とは一部異なる動作をする、調整対象色設定部301’、色見本生成部302’及び目標色設定部303’を中心に説明を行うこととする。
【0047】
調整対象色設定部301’は、入力画像を構成する色のうち、スポットカラー調整の対象となる複数の調整対象色を設定する処理を行う。図12(a)は、本実施形態に係るスポットカラー調整用UI画面の一例であり、調整対象色設定開始時の状態を示している。印刷対象の入力画像データを制御コマンド生成部202から受け取ると、調整対象色設定部301’は、図12(a)に示すように、UI画面400’内の画像表示領域401に入力画像402を表示する。画像表示領域401の右側は、ユーザ選択に係る複数の調整対象色とそれらに対応する目標色を表示するための選択色表示領域1201である。そして、選択色表示領域1201の中にはさらに、ユーザが選択した調整対象色を表示するための調整対象色領域1202と、ユーザが選択した目標色を表示するための目標色領域1203が存在する。図12(a)のUI画面400’はユーザがなんらの選択も行っていない状況のUI画面である。なので、調整対象色領域1202と目標色領域1203のいずれにおいても、未選択状態(ブランク状態)の入力欄1202a~1202c及び1203a~1203cがそれぞれ並んでいる。調整対象色を設定する場合、ユーザは、まず、調整対象色領域1202に並んだブランク状態の入力欄のうち任意の入力欄をタッチ操作等により選択する。続いて、入力画像402の特定の位置をユーザがタッチ操作等により選択すると、その座標情報に基づいて色値(sRGB値)が取得され、直前に選択された調整対象色領域1202内の入力欄に、当該取得されたsRGB値に対応する色が入る。つまり、ブランク状態であった入力欄が、ユーザが選択した色が付いた状態に変化する。こうして1色目の調整対象色が設定される。2色目や3色目がある場合、ユーザは、同様の処理を繰り返して所望の数の調整対象色を設定する。図12(b)は、3色の調整対象色が設定された状態のUI画面400’を示している。図12(a)と比較すると明らかなうように、調整対象色領域1202に並んだ3つの入力欄1202a~1202cのすべてに色が付いている。上記のようにして、すべての調整対象色の設定を終えたユーザは、「決定」ボタン404を押下する。ユーザによる「決定」ボタン404の押下により、上述のようにして設定された複数の調整対象色の情報が、出力色決定部305に送られる。なお、スクロールバー1204は、設定された複数の調整対象色が一つの画面内に収まらなかった場合に、画面をスクロールして、設定された複数の調整対象色を確認できるようにするために用いる。また、「見本変更」ボタン1205は、複数の調整対象色それぞれに対応する目指す色が、別々の見本原稿に含まれている場合に、スキャン対象の見本原稿を切り替える場合に利用する。
【0048】
色見本生成部302’は、調整対象色設定部301’によって設定された複数の調整対象色のうち、色見本の生成が必要な調整対象色についての色見本を自動生成する。言い換えれば、本実施形態の色見本生成部302’は、調整対象色設定部301’にて設定されたすべての調整対象色それぞれについて見本原稿を用いて目標色が設定された場合には動作しないことになる。ここで、複数の調整対象色のうち色見本が必要となる調整対象色とは、例えば、見本原稿において一部の色について適切な色が再現されていない等、見本原稿内に目指す色が含まれていないようなケースである。すなわち、本実施形態の場合、ユーザは、設定した複数の調整対象色のうち、目指す色が見本印刷物の中に含まれている調整対象色については、まず当該見本原稿を用いて目標色を決定する。そして、見本原稿の中に目指す色が存在しない調整対象色については、自動生成される色見本を用いて目標色を決定する。本実施形態の特徴である、色見本の自動生成処理の詳細については、別途フローチャート(図13)を参照して後述する。
【0049】
目標色設定部303’は、調整対象色設定部301’によって設定された複数の調整対象色それぞれに対して、ユーザ操作に基づき目標色を設定する。まず、見本原稿の中に目指す色が適切に表現されている調整対象色については、見本原稿に基づいて目標色が設定される。具体的な操作としてユーザはまず、前述の図8に示すようなメッセージウィンドウに従って見本原稿をスキャナユニットにセットして見本原稿のスキャンを行う。これにより、前述のUI画面400’における画像表示領域401内に見本原稿のスキャン画像が表示される。次に、ユーザは、選択色表示領域1201内の目標色領域1203に並んだブランク状態の入力欄のうち任意の入力欄をタッチ操作等により選択する。続けて、表示中のスキャン画像の特定の位置をユーザがタッチ操作等により選択すると、その座標情報に基づいて色値(sRGB値)が取得される。そして、その直前に選択された目標色領域1203内の入力欄に、当該取得されたsRGB値に対応する色が入る。つまり、ブランク状態であった入力欄が、ユーザが選択した色が付いた状態に変化する。そして、このような操作をユーザはすべての調整対象色について行う。こうして、見本原稿の中に目指す色が存在する調整対象色について目標色の設定を終えると、ユーザは「決定」ボタン404を押下する。いま、上述の図12(b)に示すように3色の調整対象色が設定された状況下で、そのうち2色の調整対象色について見本原稿に基づき目標色が設定されたとする。図14(a)は、この際のUI画面400’を示しており、目標色領域1203に並ぶ3つの入力欄1203a~1203cのうち、1番上の入力欄1203aと1番下の入力欄1203cにそれぞれ色が入っている。この状態で「決定」ボタン404が押下されると、目標色設定部303’は、設定された2色の目標色の情報をその対応する調整対象色と関連付けて出力色決定部305に送る。出力色決定部305では、設定された2色の目標色それぞれについて出力色を決定し、その結果を色見本生成部302’に送る。そして、色見本生成部302’にて、目標色が未設定である残り1色の調整対象色について色見本が生成されることになる。
【0050】
目標色設定部303’は、見本原稿の中に目指す色が存在しなかった調整対象色については、自動生成された色見本に基づき目標色を設定する。いま、図14(a)に示す状況下にあるとする。この場合、ユーザは、目標色領域1203内の未だブランク状態の入力欄1203bをタッチ操作等により選択する。この操作を検知した目標色設定部303’は、UI画面400’上に、色見本をスキャナユニットにセットするよう促すメッセージウィンドウ(前述の図8を参照)を表示する。そして、ユーザが色見本をセットして読み取りの実行を指示すると、色見本が読み取られてスキャン画像データが生成され、画像表示領域401内に色見本のスキャン画像が表示される。後は、見本原稿を用いた場合と同様、表示されたスキャン画像内の所望の位置をタッチ操作等することで、入力欄1203bにも当該タッチ操作等に係る色が入り、目標色が設定される。図14(b)は、色見本に基づく目標色設定によって残りの1色についても目標色が設定され、3色の調整対象色すべてについての目標色設定処理が完了した状態のUI画面400’を示している。
【0051】
なお、見本原稿に基づいて目標色の設定が行われないことが確定した時点で、目標色領域1203内のブランク状態のままの入力欄について、その外枠を太くするなどの強調表示を行ったり、「未設定」の文字を重畳表示するなどしてもよい。これにより、例えばブランク状態の入力欄内部が「白」で表示されるような場合において、調整対象色の目指す色が白に近い色であった場合にも、ユーザは目標色が未設定であることを容易に認識することができる。
【0052】
(色見本の自動生成処理)
続いて、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る、色見本生成部302’による、色見本の自動生成処理について詳しく説明する。なお、前述の通り、図13に示すフローは、見本原稿内に目指す色が存在する調整対象色についての目標色の設定処理が完了し、ユーザが「決定」ボタン404を押下したことをトリガーとしてその実行が開始する。
【0053】
まず、S1301では、ユーザが設定したすべての調整対象色の情報が、出力色決定部305から取得される。続くS1302では、S1301で取得した情報で特定されるすべての調整対象色について、S1303~S1305の準備処理が完了したかどうかが判定される。完了していた場合はS1306に進み、完了していない場合はS1303に進む。
【0054】
準備処理が完了していいない場合のS1303では、すべての調整対象色のうち注目する調整対象色についての目標色の情報が、出力色決定部305に対してリクエストされる。リクエストを受けた出力色決定部305は、注目調整対象色に関連付けられた目標色の情報を目標色設定部303’からすでに受け取っていれば、その情報を色見本生成部302’に返す。一方、受け取っていなければ(つまり、注目調整対象色について目標色が未設定であれば)、その旨を示す例えばエラー信号を色見本生成部302’に返す。
【0055】
S1304では、注目調整対象色についての目標色の情報が取得できたかどうかが判定される。目標色の情報が取得できた場合はS1302に戻る。一方、目標色の情報が取得できなかった場合はS1305に進む。
【0056】
S1305では、注目調整対象色についての色見本を生成するための、当該注目調整対象色を変化させた複数の色が算出される。この際には、実施形態1の時と同様、例えば調整対象色を含む27色が算出される。
【0057】
上述の準備処理がすべての調整対象色について完了した場合のS1306では、いずれかの注目調整対象色について、色見本(パッチ画像)用の色の算出が行われたかどうかが判定される。色見本のための色の算出が行われた調整対象色が存在する場合は、S1307に進む。一方、色見本のための色の算出が行われた調整対象色が存在しなければ、本処理を終了する。
【0058】
S1307では、調整対象色単位でS1305にて算出された色を用いて、実施形態1と同様の色見本用のパッチ画像が生成される。この際、複数の調整対象色について色見本用の色の算出が行われていた場合には、各調整対象色と算出された色との対応関係が分かるようになっていればよい。すなわち、必ずしも調整対象色毎に1ページのパッチ画像とする必要はなく、1ページの中に複数の調整対象色が含まれていてもよい。そして、実施形態1と同様、カラーマッチングLUTを用いた変換後のパッチ画像のデータが制御コマンド生成部202を介してプリンタエンジン111に送られ印刷出力され、1又は複数の調整対象色に対応した色見本が得られる。
以上が、本実施形態に係る色見本の自動生成処理の内容である。
【0059】
本実施形態によれば、複数の調整対象色がある場合において、見本印刷物のスキャン画像から目標色を選択するという操作を1色毎に繰り返す必要がない。また、見本印刷物内に目指す色が存在しない調整対象色がある場合には自動で色見本が生成される。従って、ユーザの操作負担を大幅に軽減することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
図11
図12
図13
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