(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】撮像装置、光電変換システム
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20250114BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20250114BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/76
(21)【出願番号】P 2020201485
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】岩田 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】有嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅紀
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161080(JP,A)
【文献】特開2019-057884(JP,A)
【文献】国際公開第2009/047883(WO,A1)
【文献】特開2018-019362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00
H04N 25/20-25/61
H04N 25/615-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素と、
前記複数の画素に接続された信号線と、
前記信号線の振幅を制限する制限回路とを有し、
前記複数の画素のうちの第1画素から前記信号線にノイズ信号、焦点検出信号、撮像信号が順に出力され、前記複数の画素のうちの第2画素から前記信号線にノイズ信号、撮像信号が順に出力され、
前記第1画素が前記焦点検出信号を出力してから前記撮像信号を出力する前の期間に前記制限回路が動作状態となり、
前記第2画素が前記ノイズ信号を出力してから前記撮像信号を出力する前の期間に
前記制限回路
が動作状態となることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制限回路は、前記焦点検出信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制限回路は、前記第1画素および前記第2画素のそれぞれの前記撮像信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制限回路は、前記第1画素および前記第2画素のそれぞれの前記ノイズ信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の光電変換部を各々が備える複数の画素と、
前記複数の画素が接続された信号線と、
前記信号線の振幅を制限する制限回路とを有し、
前記複数の画素のうちの第1画素から、ノイズ信号と、前記複数の光電変換部の一部のみの光電変換部の電荷に基づく第1信号と、前記複数の光電変換部の電荷に基づく第2信号が順に前記信号線に出力され、
前記複数の画素のうちの第2画素から、ノイズ信号と、前記信号線に前記複数の光電変換部の電荷に基づく第3信号とが前記信号線に出力され、
前記第1画素が前記第1信号を出力してから前記第2信号を出力する前の期間に、前記制限回路が動作状態となり、
前記第2画素が前記ノイズ信号を出力してから前記第3信号を出力する前の期間に
前記制限回路
が動作状態となることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
1つのマイクロレンズが前記複数の光電変換部に対応して設けられていることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制限回路は、前記第1信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制限回路は、前記第2信号、前記第3信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制限回路は、前記第1画素および前記第2画素のそれぞれの前記ノイズ信号が前記信号線に出力される期間に、前記信号線の電位が変化可能な範囲を狭めることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部とを有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の撮像装置を備える移動体であって、
前記撮像装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、光電変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、焦点検出用の信号と、画像生成用の信号を出力する撮像装置が記載されている。この複数の画素の一部の画素は、焦点検出用の信号を信号線に出力した後、画像生成用の信号を信号線に出力する。また、複数の画素の別の一部の画素は、焦点検出用の信号の出力は行わず、画像生成用の信号を信号線に出力する。よって、画像生成用の信号が出力される前に、焦点検出用の信号が出力される画素と、焦点検出用の信号が出力されない画素とが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像生成用の信号が信号線に出力される前の信号線の電位は、焦点検出用の信号が出力されたか否かで異なる。これにより、画像生成用の信号が信号線に出力された際に、信号線の電位の静定の度合いが焦点検出用の信号が出力されたか否かで異なりやすい。よって、画像生成用の信号の精度の低下が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の側面は、複数の画素と、前記複数の画素に接続された信号線と、前記信号線の振幅を制限する制限回路とを有し、前記複数の画素のうちの第1画素から前記信号線にノイズ信号、焦点検出信号、撮像信号が順に出力され、前記複数の画素のうちの第2画素から前記信号線にノイズ信号、撮像信号が順に出力され、前記第1画素が前記焦点検出信号を出力してから前記撮像信号を出力する前の期間に前記制限回路が動作状態となり、前記第2画素が前記ノイズ信号を出力してから前記撮像信号を出力する前の期間に前記制限回路が動作状態となることを特徴とする撮像装置である。
【0006】
本開示の別の一の側面は、複数の光電変換部を各々が備える複数の画素と、前記複数の画素が接続された信号線と、前記信号線の振幅を制限する制限回路とを有し、前記複数の画素のうちの第1画素から、ノイズ信号と、前記複数の光電変換部の一部のみの光電変換部の電荷に基づく第1信号と、前記複数の光電変換部の電荷に基づく第2信号が順に前記信号線に出力され、前記複数の画素のうちの第2画素から、ノイズ信号と、前記信号線に前記複数の光電変換部の電荷に基づく第3信号とが前記信号線に出力され、前記第1画素が前記第1信号を出力してから前記第2信号を出力する前の期間に、前記制限回路が動作状態となり、前記第2画素が前記ノイズ信号を出力してから前記第3信号を出力する前の期間に前記制限回路が動作状態となることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、画像生成用の信号の精度の低下を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら各実施例を説明する。
【0010】
なお、以下に述べる実施形態に記載されるトランジスタの導電型は一例のものであって、実施例中に記載された導電型のみに限定されるものでは無い。実施形態中に記載された導電型に対し、導電型は適宜変更できるし、この変更に伴って、トランジスタのゲート、ソース、ドレインの電位は適宜変更される。
【0011】
例えば、スイッチとして動作させるトランジスタであれば、ゲートに供給する電位のローレベルとハイレベルとを、導電型の変更に伴って、実施例中の説明に対し逆転させるようにすればよい。また、以下に述べる実施例中に記載される半導体領域の導電型についても一例のものであって、実施例中に記載された導電型のみに限定されるものでは無い。実施例中に記載された導電型に対し、導電型は適宜変更できるし、この変更に伴って、半導体領域の電位は適宜変更される。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における撮像装置の構成図である。撮像装置は画素アレイ100を有する。画素アレイ100には、複数の画素101(単位画素と呼ぶ場合もある)が複数行および複数列に渡って配されている。複数の信号線120は、複数列の画素101の各列に対応して配されている。なお、ここでは信号線120は、1列の画素101に対して1本設けられた構成を示しているが、さらに多くの信号線が1列の画素101に対して設けられていても良い。
【0013】
撮像装置は、読出し回路102を有する。読出し回路102には、複数の信号線120のそれぞれに対応するように、複数の単位回路が設けられている。また、撮像装置は読出し回路102の駆動制御と、基準バイアスの供給とを行う第1バイアス回路103を有する。
【0014】
撮像装置は、読出し回路102から出力される信号をデジタル信号に変換するAD変換回路104を有する。AD変換回路104には、読出し回路102が備える複数の単位回路のそれぞれに対応するように、複数のAD変換器のそれぞれが設けられている。撮像装置は、AD変換回路104の駆動制御と基準バイアスを供給する第2バイアス回路105を有する。撮像装置は、AD変換回路104のAD変換で使用する参照信号(ランプ信号)を供給する参照信号供給回路を備える。
【0015】
撮像装置は、AD変換回路104が生成したデジタル信号を保持するメモリ群106を有する。メモリ群106は、AD変換回路104が備える複数のAD変換器のそれぞれに対応するように、複数のメモリ素子のそれぞれが配されている。メモリ群106には、カウンタ109から時間経過を示すカウント信号が入力される。カウンタ109は、PLL(Phased Locked Loop)回路113から出力されるクロックパルスを用いて、時間経過を示すカウント信号を生成する。
【0016】
撮像装置は、水平走査回路107を有する。水平走査回路107は、メモリ群106の各列のメモリ素子を順次選択し、メモリ素子が保持したデジタル信号を順次、DFE(Digital Front End)115に出力する。DFE115は、水平走査回路107から出力されたデジタル信号に対し、ノイズと誤差を低減する補正、デジタル信号同士の演算(加減算等)処理等の各種の演算処理を行う。DFE115は、信号出力回路112に処理済のデジタル信号を出力する。
【0017】
撮像装置は、垂直走査回路110を有する。垂直走査回路110は、画素アレイ100に配された複数の画素101を、行単位で選択する。垂直走査回路110によって選択された行の画素101は、対応する信号線120に信号を出力する。
【0018】
撮像装置は、タイミングジェネレータ(TG)111を有する。TG111は、垂直走査回路110、第1バイアス回路103、第2バイアス回路105、参照信号供給回路108、カウンタ109、PLL回路113の駆動制御を行う。
【0019】
【0020】
画素101は、光電変換部201、202を有する。光電変換部201、202は、典型的にはフォトダイオードである。画素101は、転送トランジスタ203、204を有する。転送トランジスタ203は光電変換部201と、フローティングディフュージョン(FD)208に接続されている。転送トランジスタ203のゲートには
図1に示した垂直走査回路110から信号pTXAが入力される。転送トランジスタ204は光電変換部202と、FD208に接続されている。転送トランジスタ204のゲートには
図1に示した垂直走査回路110から信号pTXBが入力される。光電変換部201、202は、1つのマイクロレンズMLに対応して設けられている。
【0021】
画素101は、リセットトランジスタ205を有する。リセットトランジスタ205は、電源とFD208に接続されている。リセットトランジスタ205のゲートには、垂直走査回路110から信号pFDRESが入力される。
【0022】
画素101は、増幅トランジスタ206を有する。増幅トランジスタ206のゲートはFD208に接続されている。また、増幅トランジスタ206は電源と、選択トランジスタ207に接続されている。
【0023】
選択トランジスタ207のゲートには、垂直走査回路110から信号pSELが入力される。選択トランジスタ207は信号線120に接続されている。
【0024】
画素101が備える、転送トランジスタ203、204、リセットトランジスタ205、増幅トランジスタ206、選択トランジスタ207はすべてN型のMOSトランジスタである。転送トランジスタ203、204、リセットトランジスタ205、選択トランジスタ207は垂直走査回路110から入力される信号がハイレベル(Hi)にある場合にはオンの状態にあり、ローレベル(Lo)にある場合はオフの状態にある。
【0025】
図3は、
図1に示した読出し回路102が備える単位回路1020と、AD変換回路104が備えるAD変換器1040の回路図である。読出し回路102は、
図1を参照しながら説明したように複数の単位回路1020が設けられている。また、AD変換回路104は、
図1を参照しながら説明したように複数のAD変換器1040が設けられている。
【0026】
単位回路1020は、電流源負荷301を備える。電流源負荷301は、信号線120に流れる電流量を制御する。単位回路1020は、サンプルホールド回路(SH回路)310を有する。SH回路310は、スイッチ311、容量素子312を有する。スイッチ311は、
図1に示したTG111から出力される信号pSHによって制御される。信号120に画素101から出力された信号を、信号PIXSIGと表記している。
【0027】
単位回路1020は、制限回路320を有する。制限回路320は、クリップトランジスタ321と、スイッチ322を有する。スイッチ322は、TG111から出力される信号pCLIPによって制御される。クリップトランジスタ321のゲートには第1バイアス回路103から電圧VCLIPが入力される。制限回路320は、信号線120の電位が変化可能な範囲を制限する回路である。具体的には、クリップトランジスタ321は、電圧VCLIPから、閾値電圧Vthと、電流源301で決められた電流値を流すためのオーバードライブ電圧とを合わせた分、低下した電位(クリップ電位と呼ぶ)で信号線120の電位をクリップする。つまり、信号線120の電位は、このクリップ電位を越えて変化しないように制限される。
【0028】
AD変換器1040は、比較器300を有する。比較器300には、
図1の参照信号供給回路108から参照信号RAMPが入力される。参照信号RAMPは、時間の経過に伴って電位が変化する信号であり、ランプ信号とも呼ばれる。この電位の変化はスロープ状であっても良いし、階段状であっても良い。また、電位が変化している途中で、電位の変化量が変化するようにしても良い。
【0029】
図4(a)は、参考例の動作を示した図である。なお、この参考例では、撮像装置は
図3に示した制限回路320を有しない構成としている。
【0030】
この参考例では、N行目の画素101からはノイズ信号と画像生成用の信号(撮像信号)が出力される。また、N+1行目の画素101からは、ノイズ信号、焦点検出用の信号(焦点検出信号)、撮像信号が出力される。
【0031】
T1期間をN行目の画像生成用の信号読出し期間とする。また、T2期間をN+1行目の焦点検出用の信号読出し期間とする。また、T3期間をN+1行目の画像生成用の信号読出し期間とする。
【0032】
時刻t410に、垂直走査回路110は信号pSELをHiにする。これにより、N行目の画素101の選択トランジスタ207がオンし、増幅トランジスタ(SF)206が信号線120に接続される。
【0033】
また、垂直走査回路110は信号pFDRESをHiとしているので、リセットトランジスタ205はオンしている。これにより、FD208は電源の電圧に基づく電圧(典型的には電源の電圧からリセットトランジスタの閾値電圧を引いた電圧)にリセットされている。
【0034】
時刻t411に、垂直走査回路110は信号pFDRESをLoとする。これにより、リセットトランジスタ205がオフし、FD208がフローティングになる。リセットトランジスタ205の状態がオンからオフに変化することによって生じるノイズがFD208に生じる。主に、リセットトランジスタ205によるチャージインジェクションがノイズとして現れる。この時の信号線の信号PIXSIGを信号Vn1とする信号Vn1はノイズ信号である。
【0035】
T1期間の開始から時刻t412までの期間、TG111が信号pSHをHiとする。これにより、スイッチ311がオンし、容量素子312に信号Vn1が入力される(サンプリング)。そして、TG111は信号pSHをLoとする。これにより、スイッチ311がオフし、容量素子312は信号Vn1をホールドする。
【0036】
時刻t412から時刻t413の信号pSHがLoである期間に、参照信号RAMPが変化して、信号保持部310に保持した信号のAD変換が行われる。信号Vn1と参照信号RAMPの電位の大小関係が逆転したタイミングに対応するカウント信号が、信号Vn1に対応するデジタル信号として得られる。この参照信号RAMPが変化して信号Vn1をデジタル信号に変換する期間を、NAD期間と呼ぶ。
【0037】
NAD変換期間後の時刻t413から時刻t415までの期間、TG111は信号pSHを再びHiとする。これにより容量素子312に信号PIXSIGが入力される。
【0038】
時刻t414に、垂直走査回路110は信号pTXAと信号pTXBをHiにする。これにより、転送トランジスタ203、204がオンする。よって、光電変換部201、202で生じた電荷がFD208に転送される。
【0039】
FD208の電圧は光電変換部201、202から転送された電荷によって低下する。それに連動して信号PIXSIGも信号Vn1の電位から低下する。この時の信号PIXSIGは信号Vpix1まで低下する。
【0040】
この参考例では、時刻t415にTG111は信号pSHをLoとしている。この時刻t415は、信号線120の電位が信号Vpix1まで下がり終わる前(静定する前)である。この結果、容量素子312がホールドする信号は、信号Vpix1の電位よりも高い電位の信号Vs1である。
【0041】
時刻t415の後、参照信号RAMPの電位の変化が開始され、容量素子312がホールドした信号Vs1のAD変換が行われる。
【0042】
時刻t416で信号Vs1と参照信号RAMPの電位の大小関係が逆転する。このタイミングにコンパレータ300が信号LATCHをメモリ群106の対応するメモリ素子に出力する。そのタイミングに対応するカウント信号がメモリ群106の対応するメモリ素子に書き込まれる。この参照信号VRAMPの電位が変化している期間をS1期間とする。
【0043】
N行目の真の撮像信号ΔVpix1とAD変換される撮像信号ΔVs1の差をdV1とすると、
dV1=Vpix1-Vs1・・・式(1)
となる。
【0044】
式(1)からも分かるように、時刻t415に信号pSHがLoになった時、信号PIXSIGが信号Vpix1まで下がりきっていないため、本来の撮像信号よりもdV1だけ小さい信号が撮像信号としてAD変換される。
【0045】
その後、時刻t417に垂直走査回路110は信号pSELをLoとする。これによりN行目の画素101の選択トランジスタ207がオフする。
【0046】
次に、時刻t417に垂直走査回路110はN+1行目の画素101に出力する信号pSELをHiにする。これにより、N+1行目の選択トランジスタ207がオンし、信号線120に接続される。
【0047】
時刻t417から時刻t423はN行目の画素101のノイズ信号の読出しと、ノイズ信号のAD変換動作と同様の動作がN+1行目の画素101に対しても行われる。
【0048】
時刻t424に垂直走査回路110は、信号pTXAをHiにする。これにより、N+1行目の画素101の転送トランジスタ203がオンし、光電変換部201で生じた電荷をFD208に転送する。この時、信号pTXBはLoのままなので、光電変換部202で生じた電荷は、この時点ではFD208に転送されない。信号PIXSIGは、光電変換部201の電荷に対応する信号電位である信号Vpix2に向かって低下する。
【0049】
時刻t424-2に、垂直走査回路110は信号pTXAをLoにする。
【0050】
時刻t425に、TG111は、信号pSHをLoにする。時刻t425は、信号線120の電位が静定する前である。これにより、容量素子312は、信号Vpix2よりも高い電位である信号Vs2を保持する。
【0051】
その後、参照信号RAMPの電位が変化し、AD変換回路140は、信号Vs2をデジタル信号に変換する。この参照信号RAMPの電位が変化し、光電変換部201で生じた電荷に基づく信号をAD変換している期間を、S2期間とする。
【0052】
AD変換期間後、TG111は信号pSHを再びHiにする。
【0053】
垂直走査回路110は、時刻t434に信号pTXA、信号pTXBをともにHiにする。これにより、N+1行目の転送トランジスタ203及び204がオンする。よって光電変換部201で時刻t424-2以降に生じた電荷と、光電変換部202で生じた電荷がFD208に転送される。
【0054】
これにより、信号VSIGPIXは、光電変換部201、202の電荷に対応する信号電位である信号Vpix3に向かって、信号Vpix2を起点として低下する。
【0055】
その後、垂直走査回路110は、信号pTXA、信号pTXBをともにLoにする。
【0056】
説明を簡単にするため、信号Vpix3は、N行目の画素101の信号Vpix1と同じ電位であるとする。また、信号Vpix2(光電変換部201の電荷に対応する信号)は、信号Vpix3(光電変換部201、201の電荷に対応する信号)の1/2の振幅の信号であるとする。
【0057】
T3期間の信号線120の電位の変化量は、
Vpix3-Vpix2=Vpix1-(1/2・Vpix1)=1/2・Vpix1・・・式(2)
として表される。
【0058】
時刻t435にTG111が信号pSHをLoとする。時刻t435は、信号線120の電位が静定する前である。この時の信号線120の信号Vs3が容量312に保持される。信号Vs3は信号Vpix3よりも高い電位である。
【0059】
時刻t435から時刻t436の期間は前述したS1期間に対応しており、信号Vs3がAD変換される。
【0060】
式(2)で示したように、T3期間における信号線120の振幅はT1期間のおよそ半分になっているため、時刻t435において、より信号Vpixに近くなっている。つまり容量素子312に書き込まれる信号Vs3は、T1期間の信号Vs1よりも電位が低くなっている。よって、信号Vpix1,Vpix3が同じであるが、T3期間におけるAD変換される撮像信号がT1期間で得られる撮像信号よりも大きくなる。
【0061】
これにより、撮像画像を生成したときに、T1期間とT3期間のAD変換される撮像信号の差による横線が発生する。
【0062】
図4(b)は本実施形態の撮像装置の動作を示した図である。
【0063】
図4(a)と同じ番号の時刻での動作は
図4(a)と同じため、説明は省略する。
【0064】
T1期間の時刻t418から時刻t419の期間、TG111は信号pCLIPをHiにする。これにより、制限回路320のスイッチ322がオンする。よって、制限回路320のクリップトランジスタ321が信号線120に接続される。この時のクリップトランジスタ321のゲート電圧は、画素101のFD208のリセットレベル近辺に設定する。
【0065】
時刻t414に、転送トランジスタ203、204がオンして光電変換部201、202で光電変換された電荷がFD208に転送される。これに伴い、信号線120の電位が低下し始める。
【0066】
時刻t419の前に信号線120は信号VCLIP_VLに到達する。ここで、信号VCLIP_VLはクリップトランジスタ321が動作したときに固定される電位である。時刻t419になるまで、信号pCLIPがHiになっている。よって、クリップトランジスタ321により、信号線120の電位は信号VCLIP_VL以下に下がらない。
【0067】
時刻t419で信号pCLIPがLoになり、クリップクリップトランジスタ321が信号線120から切り離される。それにより、信号線120の信号VCLIP_VLへの固定が解除され、光電変換された電荷量によって信号線120の電位の低下が開始される。時刻t415から時刻t417までの動作は
図4(a)で説明した内容と同じなので省略する。
【0068】
信号線120の電位が時刻t418から時刻t419の期間、信号VCLIP_VLに設定される。
【0069】
T2期間の時刻t428から時刻t429において、クリップトランジスタ321及びスイッチ322は、T1期間の時刻t418から時刻t419と同様の動作を行う。これにより、信号線120の電位の変化範囲が信号VCLIP_VLまでに制限される。
【0070】
次にT3期間だが、時刻t438から時刻t439の期間において、T1期間の時刻t418から時刻t419、T2期間の時刻t428から時刻t429と同様の動作をクリップトランジスタ321とスイッチ322が行う。これにより、T3期間においても時刻t434から時刻t435までの期間に信号VCLIP_VLに設定される。
【0071】
本実施形態では、T1期間、T2期間、T3期間において、光電変換部201、202の電荷をFD208に転送している期間に、信号線120の電位を一度、信号VCLIP_VLという同一の電位に設定している。
【0072】
よって、信号Vpix1および信号Vpix3へ向けての電位変化を同一の電位である信号VCLIP_VLから開始できる。
【0073】
本実施形態では、撮像信号が出力される前の所定期間に、信号線120の電位を信号VCLIP_VLに設定している。この所定期間は、時刻t418~t419、時刻t428~t429、時刻t438~t439である。
【0074】
このように、撮像信号の前に焦点検出用の信号が出力されるか否かに依らず、撮像信号への電位変化の開始点を揃えることができる。これにより、焦点検出用の信号が出力されるか否かによる、撮像信号の静定条件の不一致を低減することができる。よって、撮像信号の信号精度の低下を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、信号pTXAあるいは信号pTXBがHiである期間内に信号pCLIPをLoにしているが、信号pCLIPをLoにするタイミングは信号pTXAあるいは信号pTXBがLoになった後にしても良い。また、信号pCLIPをLoにするタイミングは信号pTXAあるいは信号pTXBがHiになるのと同時としても良い。
【0076】
本実施形態の効果をより大きくするには、信号pCLIPがLoになるタイミングから信号pSHがLoになるタイミングまでの期間の長さを、少なくともT1期間とT3期間で合わせるのが良い。
【0077】
本実施形態では、SH回路310を設けて信号PIXSIGを容量素子312が保持しているが、SH回路310を設けなくても良い。また、SH回路310を設けた場合でも、スイッチ311をオンに維持し、信号をホールドしなくても良い。その場合、信号pCLIPがLoになってからAD変換開始までの時間を、少なくともT1期間とT3期間で合わせることで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、N行目の画素101からはノイズ信号と画像生成用の信号(撮像信号)が出力されていた。また、N+1行目の画素101からは、ノイズ信号、焦点検出用の信号、撮像信号が出力されていた。この行位置に限定されるものではなく、画素行のうち、どの行からノイズ信号と画像生成用の信号(撮像信号)を出力させるか、また、どの行からノイズ信号、焦点検出用の信号、撮像信号を出力させるか、それぞれ適宜変更することができる。また、その行の選択はフレームごとに変更するようにしても良い。
【0079】
(第2実施形態)
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0080】
図5に本実施形態の読出し回路102の回路図を示す。
図6に本実施形態の撮像装置の動作タイミングと信号線および後述するAMP_OUTの電圧の遷移を示す。
【0081】
まず
図5を説明する。
図5内の
図3と同じ番号のものは、
図3と同じ回路なので説明を省略する。
【0082】
図1に示した読出し回路102は、単位回路1020に代えて単位回路1021を有する。単位回路1021は、反転増幅器501を有する。反転増幅器501は、信号線120の電圧変化を容量素子503(入力容量)と容量素子502(帰還容量)の容量比で増幅した信号を出力する。
【0083】
スイッチ504は反転増幅器501の出力である信号AMP_OUTと反転入力端子をショートさせて反転増幅器501、帰還容量502、入力容量503を初期化するためのスイッチである。反転増幅回路501の非反転入力端子には電源電圧VREFが入力される。反転増幅器501の反転入力端子と非反転入力端子は仮想ショートされている。よって、スイッチ504がオンした時に、信号AMP_OUTと反転入力端子が電源電圧VREFの電位にリセットされる。
【0084】
スイッチ505とスイッチ506は、信号AMP_OUTを所定の電圧に固定するためクリップトランジスタ507のゲートに印可する電圧を切り替えるためのスイッチである。
【0085】
TG111が信号p2をHiとしている時にスイッチ505がオンする。これにより、電圧VCANがクリップトランジスタ507のゲートに印加される。また、TG111が信号p2BをHiとしている時にスイッチ506がオンし、電圧VCASがクリップトランジスタ507のゲートに印加される。
【0086】
スイッチ505、506、クリップトランジスタ507から構成されるブロックを、制御回路520とする。
【0087】
【0088】
第1実施形態と同様、T1期間をN行目の画像生成用の信号読出し期間とする。また、T2期間をN+1行目の焦点検出用の信号読出し期間とする。また、T3期間をN+1行目の画像生成用の信号読出し期間とする。
【0089】
各期間の信号pSEL、信号pTXA、信号pTXB、信号pSHに関し、第1実施形態と重複する部分については説明を一部省略する。
【0090】
時刻t610から時刻t612の期間に信号p1がHiとなる。これにより、スイッチ504がオンし、反転増幅器501の出力と反転入力端子がショートする。これにより、反転増幅器501の出力である信号AMP_OUTは、非反転入力端子に接続されている電源電圧VREFの電位に初期化される。また、その後、スイッチ504をオフしたタイミングで、この時の信号線120の電位(信号PIXSIG)が容量素子503にクランプされる。反転増幅器502は、時刻612でクランプされたPIXSIGから、それ以降にPIXSIGが変化した分を
AMP_OUT=-ΔPIXSIG×(容量素子503の容量値/容量素子502の容量値)・・・式(3)
で増幅させて出力する。
【0091】
ここでΔPIXSIGは、時刻t612からのPIXSIGの変化量とする。
【0092】
時刻t613で信号pHSがLoとなり容量素子312への信号AMP_OUTの書き込みを終える。この電圧を反転増幅器501、及び画素102の基準レベルの信号として使用し、Vnと呼ぶ事にする。このVnを参照電圧RAMPと比較することでN行目のノイズ信号のAD変換を行う。このAD変換は信号pSHがLoになっている時刻t614までの期間内に終了する。
【0093】
時刻t615に信号pTXAと信号pTXBがHiとなる。よって、光電変換部201および光電変換部202で生じた電荷がFD208に転送される。時刻t615から信号PIXSIGはFD208転送された電荷によって低下を開始し、反転増幅器502はその信号PIXSIGの変化を増幅して信号AMP_OUTに出力する。
【0094】
時刻t611から時刻t616まで信号p2がHiになり、スイッチ505がオンとなる。これにより、クリップトランジスタ507のゲート電圧VCA1はVCANになっている。
【0095】
信号p2Bは信号p2の逆相のパルスである。従って、信号p2がHiの時にスイッチ505がオンし、スイッチ506がオフして、VCA1=VCANとなる。また、信号p2がLoの時に、スイッチ505がオフし、スイッチ507がオンし、VCA1=VCANとなる。この時、
VCAN<VCAS・・・式(4)
である。
【0096】
従って、時刻t615から信号AMP_OUTは変化を開始するが、クリップトランジスタ507によって、電圧VCANに対応する電圧にクリップされる。
【0097】
クリップされた信号AMP_OUTの電位を信号VCLIP_AMPとする。
【0098】
その後、時刻t616に信号p2がLoになり、電圧VCA1が電圧VCANから電圧VCASに切り替わるため、クリップトランジスタ507による信号AMP_OUTのクリップが解除される。これにより、信号AMP_OUTの変化が再開する。
【0099】
時刻t617に信号pSHがLoとなる。その時の信号AMP_OUTの電位である信号Vs1を容量素子312がホールドする。その後、信号AMP_OUTは信号PIXSIGに対応した信号Vamp_out1まで変化する。
【0100】
時刻t617から時刻t619の期間に参照信号RAMPが変化し、撮像信号のAD変換を行う。時刻t618で信号Vs1と参照信号RAMPの大小関係が逆転する。このタイミングに基づくカウント信号が、信号Vs1に対応するデジタル信号として生成される。
【0101】
時刻t619で信号pFDRESがHiになりFD208がリセットされる。そのため信号線120の電位である信号PIXSIGはリセットレベルに向けて上昇を開始する。
【0102】
次にT2期間の説明を行う。
【0103】
時刻t620から時刻t625までの動作はT1期間の時刻t610から時刻t615と同じ動作とすることができる。
【0104】
時刻t625に信号pTXAがHiになり、光電変換部201の電荷がFD208に転送される。それに伴って、信号PIXSIGがリセットレベルから変化を開始し、その変化を反転増幅器502が増幅して信号AMP_OUTに出力する。
【0105】
時刻t621から時刻t626まで信号p2がHiになっているため、T1期間と同様に、信号AMP_OUTは電圧VCANに対応した信号VCLIP_AMPにクリップトランジスタ507によりクリップされる。時刻t626に信号p2がLoになり、電圧VCA1が電圧VCASに切り替わる。これにより、信号AMP_OUTの信号VCLIP_AMPへのクリップが解除される。これにより、時刻t626から信号AMP_OUTの変化が再開する。
【0106】
時刻t627で信号pSHがLoになり、その時の信号AMP_OUTの電圧Vs2を容量素子312に保持する。その後、信号AMP_OUTは信号PIXSIGに対応した信号Vamp_out2まで変化する。
【0107】
時刻t627から時刻t629の間に参照信号RAMPを変化させ、信号Vs2のAD変換を行う。時刻t628で参照信号RAMPと信号Vs2の大小関係が逆転する。このタイミングに基づくカウント信号が信号Vs2に対応するデジタル信号として生成される。
【0108】
次にT3期間の説明を行う。
【0109】
時刻t631にTG111は信号p2をHiにする。これにより、信号AMP_OUTは信号Vamp_out2から信号VCLIP_AMPまで低下する。信号PIXSIGは、T3期間にFD208のリセットを入れていないのでT2期間の最後の電位を維持する。
【0110】
時刻t635で信号pTXAと信号pTXBがHiになり、光電変換部201と光電変換部202の電荷がFD208に転送される。これにより、信号PIXSIGの変化が始まる。
【0111】
この時、時刻t636に信号p2がLoになり電圧VCA1が電圧VCANから電圧VCASに切り替わるまで、信号AMP_OUTは信号VCLIP_AMPにクリップされている。時刻t636にクリップが解除されてから、信号AMP_OUTは信号PIXSIGの変化に合わせて変化する。
【0112】
時刻t637に信号pSHがLoになる。この時の信号AMP_OUTの信号Vs3が容量素子312にホールドされる。信号AMP_OUTは信号PIXSIGに対応した信号Vamp_out3まで変化する。
【0113】
時刻t637から時刻t639の間に参照信号RAMPを変化させ、信号Vs3のAD変換を行う。時刻t638に参照信号RAMPと信号Vs3の大小関係が逆転する。このタイミングに基づくカウント信号が信号Vs3に対応するデジタル信号として生成される。
【0114】
T1期間、T2期間、T3期間を通して、AD変換前に信号AMP_OUTを信号VCLIP_AMPにクリップしている。つまり、信号AMP_OUTの変化開始のレベルをT1、T2、T3期間で同じにすることができる。
【0115】
従って、信号p2をLoにしてクリップを解除する時間から信号pSHをLoにして信号AMP_OUTを容量素子312がホールドするまでの時間を同じにする。これにより、N行目のAD変換される撮像信号Vs1とN+1行目のAD変換される撮像信号Vs3を
Vs1≒Vs3・・・式(5)
とする事ができる。
【0116】
これにより、焦点検出用の信号を出力させるか否かによって生じる撮像信号の信号精度の低下を抑制できる。
【0117】
なお、本実施形態では信号AMP_OUTの信号VCLIP_AMPでのクリップを信号pTXAがHiの期間に解除しているが、信号pTXAがHiからLoに変化した後に解除しても良い。
【0118】
また、本実施形態では信号を容量素子312にホールドさせているが第1実施形態でも述べたように、SH回路310を設けなくても良いし、SH回路310を設けた場合でもホールド動作を行わないようにしても良い。
【0119】
(第3実施形態)
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0120】
図7は本実施形態の読出し回路102の回路図である。
図8は本実施形態の撮像装置の動作を示す。
【0121】
本実施形態の撮像装置は、
図1の読出し回路102が、単位回路1020に代えて、
図7に示した単位回路1022を有している。
【0122】
図7では、
図3及び
図5に示した符号と同じ符号を付している要素については説明を省略する。
【0123】
図7の単位回路1022は、制限回路321を有する。制限回路321は、クリップトランジスタ701を有する。クリップトランジスタ701は、反転増幅器501の信号AMP_OUTが所定のレベルより下がらない様にクリップするためのクリップトランジスタである。クリップトランジスタ701のゲートには電圧VCA2が印加される。電圧VCA2から、クリップトランジスタ701の閾値電圧とクリップトランジスタ701が動作するときのオーバードライブ電圧分を差し引いた電圧に信号AMP_OUTが下がるとそのレベルにクリップする。
【0124】
電圧VCA2は、クリップトランジスタ701が動作してクリップするAMP_OUTが、反転増幅器501を構成するトランジスタが飽和領域から外れない電圧になる様に設定する。
【0125】
【0126】
信号pSEL、信号pTXA、信号pTXB、信号pFDRES、信号p1の動作は第1実施形態、第2実施形態と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0127】
まずT1期間の説明を行う。
【0128】
時刻t8101に信号pFDRESがLoになり、FD208のリセットが解除される。この時の信号PIXSIGの電位を信号VPIX_RESとする。
【0129】
その後、時刻t8105から時刻t8107までの期間、信号pCLIPがHiになり、クリップトランジスタ321がスイッチ322を介して信号線120に接続される。
【0130】
この時、クリップトランジスタ321のゲート電圧VCLIPは
VCLIP-Vth1-ΔVov=VCLIP_PIX、VCLIP_PIX>VPIX_RES・・・式(6)
を満たす電圧に設定する。
【0131】
ここでVth1はクリップトランジスタ321の閾値電圧である、ΔVovはクリップトランジスタ321が動作する時のオーバードライブ電圧である。信号VCLIP_PIXは、クリップトランジスタ321が動作した時に信号PIXSIGがクリップされる電圧である。
【0132】
時刻t8102に、信号p1がLoになる。その時の信号PIXSIGである信号VPIX_RESは容量素子503にクランプされている。よって、その時の信号AMP_OUTは、反転増幅器501を初期化した時の電位である信号Vnになっている。
【0133】
その後、前述した時刻t8105から時刻t8107における動作により、式(6)に示すように、信号PIXSIGは
ΔVclippix=VCLIP_PIX-VPIX_RES>0・・・式(7)
の様に変化する。
【0134】
これにより、反転増幅器501の反転入力端子が正側に変動する事となり、結果として信号AMP_OUTは信号Vnから低下する。
【0135】
この時、反転増幅器501の出力側についているクリップトランジスタ701は、信号AMP_OUTが低下しすぎない様に、
AMP_OUT=VCLIP_AMP=VCA2-Vth2-ΔVov2・・・式(8)
でクリップする。反転増幅器501の構成要素が飽和領域から外れないように電圧VCLIP_AMPの目標値を設定する。この目標値を満たすように、電圧VCA2を調整すると良い。
【0136】
時刻t8107で信号pCLIPがLoになる。よって、クリップトランジスタ321が信号線120から切り離される。クリップが解除された事により、信号PIXSIGは、時刻t8106に信号pTXA及び信号pTXBがHiになって光電変換部201、光電変換部202からFD208に転送された電荷に対応して変化を開始する。
【0137】
それに連動して、信号AMP_OUTも、信号VCLIP_AMPから信号Vamp_out1に向けて変化を開始する。ここで、信号Vamp_out1はFD208に読み出した電荷に対応した信号PIXSIGの変化分を、反転増幅器501で増幅した時の信号AMP_OUTの電位である。
【0138】
時刻t8108に信号pSHがLoになる。その時、信号AMP_OUTはまだ信号Vamp_out1に到達しておらず、その時のAMP_OUTである信号Vs1を容量素子312に保持する。
【0139】
時刻t8108から時刻t8110の間に参照信号RAMPを変化させてN行目のSAD変換を行う。時刻t8109に、参照信号RAMPと信号Vs1の大小関係が逆転する。比較器300がLATCH信号を出力して信号Vs1のAD変換を終える。
【0140】
次にT2期間の説明を行う。
【0141】
時刻t8200から時刻t8204まではT1期間の時刻t8100から時刻t8104と同じため説明を省略する。
【0142】
時刻t8205から時刻t8207に信号pCLIPがHiになり、クリップトランジスタ321が信号線120に接続される。信号PIXSIGが信号VCLIP_PIXにクリップされる。それに伴い、T1期間と同様に、信号AMP_OUTは信号VCLIP_AMPにクリップされる。
【0143】
時刻t8207に信号pCLIPがLoになり、クリップトランジスタ321が信号線120から切り離され信号PIXSIGのクリップが解除される。
【0144】
それにより、信号PIXSIGは、時刻t8206に信号pTXAがHiになって光電変換部201からFD208に転送された電荷に対応して変化を開始する。
【0145】
それに連動して、信号AMP_OUTも信号VCLIP_AMPから信号Vamp_out2に向けて変化を開始する。ここで、信号Vamp_out2はFD208に読み出した電荷に対応した信号PIXSIGの変化分を、反転増幅器501で増幅した時の信号AMP_OUTである。
【0146】
時刻t8208に信号pSHがLoになる。その時、信号AMP_OUTはまだ信号Vamp_out2に到達しておらず、その時の信号AMP_OUTである信号Vs2を容量素子312に保持する。
【0147】
時刻t8208から時刻t8210の間に参照信号RAMPを変化させてN+1行目の焦点検出用の信号のAD変換を行う。時刻t8209に、参照信号RAMPと信号Vs2の大小関係が逆転し、比較器300がLATCH信号を出力する。信号Vs2のAD変換が終了する。
【0148】
次にT3期間の説明を行う。
【0149】
時刻t8305から時刻t8307に信号pCLIPがHiになり、クリップトランジスタ321が信号線120に接続される。
【0150】
T3期間では信号pFDRESが入らず、FD208はT2期間において光電変換部201から電荷を転送した状態を維持している。そのため、この時刻t8305から時刻t8307の期間に、信号PIXSIGはクリップトランジスタ321によって、T2期間での画素信号読み出し時のレベルから信号VCLIP_PIXへ変化する。
【0151】
これに伴って、反転増幅器501の出力AMP_OUTは信号Vamp_out2から信号VCLIP_AMPに変化する。
【0152】
時刻t8306に信号pTXA、信号pTXBがHiになり、光電変換部201及び光電変換部202で生じた電荷がFD208に転送される。信号線120はクリップトランジスタ321により信号VCLIP_PIXにクリップされているため変化しない。
【0153】
時刻t8307に信号pCLIPがLoになり、クリップトランジスタ321が信号線120から切り離される。よって、信号PIXSIGは時刻t8306にFD208に転送された電荷に対応して変化する。
【0154】
それに伴い、反転増幅器501の出力である信号AMP_OUTも信号Vamp_out3に向けて変化を開始する。
【0155】
信号Vamp_out3は、FD208に読み出した電荷に対応した信号PIXSIGの変化分を、反転増幅器501で増幅した時の信号AMP_OUTである。
【0156】
時刻t8308に信号pSHがLoになる。その時、信号AMP_OUTはまだ信号Vamp_out3に到達しておらず、その時の信号AMP_OUTである信号Vs3を容量素子312に保持する。
【0157】
時刻t8308から時刻t8310の間に参照信号RAMPを変化させてN+1行目の撮像信号のAD変換を行う。時刻t8309に、参照信号RAMPと信号Vs3が交差し、比較器300がLATCH信号を出力して撮像信号のAD変換を終える。
【0158】
ここで
【0159】
(VCLIP_PIX-VPIX_RES)×(容量素子503の容量値/容量素子502の容量値)>Vn-VCLIP_AMP・・・式(9)
となる様に、クリップトランジスタ321のゲートの電圧VCLIPとクリップトランジスタ701のゲートの電圧VCA2を設定する。これにより、信号AMP_OUTを信号VCLIP_AMPにクリップする事ができる。
【0160】
以上、述べた様に、T1期間、T2期間、T3期間のSAD開始前に、PIXSIGはVCLIP_PIXという所定の電圧にクリップされ、かつAMP_OUTもVCLIP_AMPという所定の電圧にクリップされる。
【0161】
そのため、信号線120(PIXSIG)及び反転増幅器501の出力AMP_OUTの静定時間はT1及び、T3期間で概ね同じにする事ができる。そのため、
Vs1≒Vs3・・・式(10)
とする事ができる。
【0162】
これにより、T1期間とT3期間のAD変換する撮像信号のレベルを概ね合わせることができるため、T1期間とT3期間の特性差による画像劣化を抑制し良好な画像を提供する事ができる。
【0163】
本実施形態では信号AMP_OUTのVCLIP_AMPでのクリップを、信号pTXAがHiの期間に解除しているが、信号pTXAがHiからLoに遷移した後に解除しても良い。
【0164】
また、本実施形態では信号を容量素子312にサンプルホールドしているが、第1、第2実施形態でも述べたように、その機能を使用しなくても良い。その場合は、信号AMP_OUTのVCLIP_AMPでのクリップを解除してからAD変換の開始までの時間を、少なくともT1期間とT3期間で合わせることで、本実施形態で説明した効果と同様の効果を得る事ができる。
【0165】
また、
図7に制御回路520を示しているが本実施形態においては不使用とすることができる。ただし、第2実施形態で説明したように、制御回路520を本実施形態と合わせて使用しても良い。
【0166】
(第4実施形態)
本実施形態による光電変換システムについて、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0167】
上記第1~第3実施形態で述べた撮像装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図9には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0168】
図9に例示した光電変換システムは、撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0169】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置1004と信号処理部1007とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0170】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0171】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する制御部である全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0172】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0173】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0174】
(第5実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0175】
図10(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置(撮像装置)である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0176】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0177】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図10(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0178】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0179】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0180】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0181】
また、上記第4実施形態、第5実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図9及び
図10に示した構成に限定されるものではない。
【0182】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0183】
本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBである」旨(A=B)の記載があれば、「AはBではない」旨(A≠B)の記載を省略しても、本明細書は「AはBではない」旨を開示もしくは示唆しているものとする。なぜなら、「AはBである」旨を記載している場合には、「AはBではない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0184】
100 画素アレイ
101 画素
102 読出し回路
104 AD変換回路
120 信号線
320 制限回路
321 制限回路
1020 単位回路
1021 単位回路
1022 単位回路
1040 AD変換器