(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】路面状態検出装置、及びこの路面状態検出装置を備えたパワーステアリング装置。
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20250114BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20250114BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20250114BHJP
B62D 121/00 20060101ALN20250114BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D5/04
B62D113:00
B62D121:00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2020205807
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】安間 友輔
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-099956(JP,A)
【文献】特開2007-137113(JP,A)
【文献】特開2005-067485(JP,A)
【文献】特開2014-201269(JP,A)
【文献】特開2008-087672(JP,A)
【文献】特開2020-168952(JP,A)
【文献】特開2004-155283(JP,A)
【文献】特開2007-137138(JP,A)
【文献】特開平06-286630(JP,A)
【文献】特開2012-016977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 113/00
B62D 121/00
B62D 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
車輪を転舵する転舵部の転舵軸の軸力を検出する軸力検出部と、
車両に発生したヨーレートを検出するヨーレート検出部と、
前記操舵角に対する前記軸力の値に基づいて、前記車輪が接している路面の路面状況を判断する第1の路面状況判断部と、
前記操舵角に対する前記ヨーレートの値に基づいて、前記車輪が接している前記路面の路面状況を判断する第2の路面状況判断部と、
を備え、
前記第1の路面状況判断部は、前記軸力に関する閾値である軸力閾値によって路面状況を判断し、
前記第2の路面状況判断部は、前記ヨーレートに関する閾値であるヨーレート閾値によって路面状況を判断
し、
前記第1の路面状況判断部と前記第2の路面状況判断部とは、並列処理を実行する、路面状態検出装置。
【請求項2】
前記車両の走行速度を検出する車速検出部を、さらに備え、
前記軸力閾値と前記ヨーレート閾値の少なくともいずれか一方は、前記走行速度に基づいて変化する、請求項1に記載の路面状態検出装置。
【請求項3】
前記軸力閾値と前記ヨーレート閾値の少なくともいずれか一方は、前記路面が低摩擦状況であるか否かを判断するための値である、請求項1又は請求項2に記載の路面状態検出装置。
【請求項4】
前記第1の路面状況判断部及び/又は前記第2の路面状況判断部によって、前記路面が前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合に、前記車両を運転している運転者に警告を発する警告発生部を、さらに備えている、請求項3に記載の路面状態検出装置。
【請求項5】
前記警告発生部は、
前記第1の路面状況判断部によって、前記路面が前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合と、
前記第2の路面状況判断部によって、前記路面が前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合とで、
互いに種類の異なる警告を発する、請求項4に記載の路面状態検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の路面状態検出装置を備え、
前記ステアリングホイールと前記転舵部との間は、機械的に分離または分離可能な構成である、パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ステアリングホイールの操舵入力に抵抗する操舵反力を発生して前記ステアリングホイールに付加する反力付加アクチュエータと、
この反力付加アクチュエータを駆動制御する反力付加アクチュエータ制御部と、をさらに備え、
前記第2の路面状況判断部が前記低摩擦状況であるという判断をした場合には、前記反力付加アクチュエータ制御部は、前記路面に対する前記車輪のスリップを修正する方向の前記操舵反力を前記ステアリングホイールに付与して前記操舵角を補正するように、前記反力付加アクチュエータを制御する、請求項6に記載のパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は路面状態検出装置、及びこの路面状態検出装置を備えたパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステアリングホイールと転舵部との間が機械的に分離されている、いわゆるステアバイワイヤ式(steer-by-wire)のパワーステアリング装置の開発が進められてきた。この種のステアバイワイヤ式パワーステアリング装置は、例えば特許文献1によって知られている。
【0003】
特許文献1のステアバイワイヤ式パワーステアリング装置は、転舵角センサによって検出された転舵角が目標転舵角に近づくように、ステアリング姿勢制御をするとともに、低摩擦路面を走行中には、ステアリング姿勢制御を機能させずに、運転者の操舵に基づいて転舵部の転舵角を制御すると、いうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車両の運転状況は多種多様であり、このような運転状況に対応した路面状況を精度良く判断することが求められている。
【0006】
本発明は、多様な操作や運転状況に対応した路面状況を、より高精度に判断することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、車両の運転者が路面摩擦の低下を感じる状態量が、操作や運転状況に応じて変化することを知見した。例えば、運転者は、次の3つの状態の場合に、路面と操舵車輪との間の摩擦力(路面摩擦)が低下したことを認知する。
【0008】
第1の状態では、車両の低速走行中(例えば、車速が約20km/h以下)に、ステアリングホイールを切り増し操作している(操舵角の増大方向へ操舵している)ときには、運転者はステアリングホイールの操舵トルクが過小な状態になったと感じることによって、路面摩擦が低下したことを認知する。
【0009】
第2の状態では、車両の高速走行中(例えば、車速が約50km/h以上)に、操舵角が増大しているときには、運転者は車両に発生したヨーレートが過大な状態になったと感じることによって、路面摩擦が低下したことを認知する。
【0010】
第3の状態では、車両の加速走行時に、操舵角が増大しているときには、運転者は、操舵トルクが過小な状態になり且つヨーレートが過大な状態になったと感じることによって、路面摩擦が低下したことを認知する。
【0011】
本発明は、このように、運転者が路面摩擦の低下を感じる状態量が、操作や運転状況に応じて変化するという、知見に基づいて完成させた。
【0012】
本開示によれば、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、車輪を転舵する転舵部の転舵軸の軸力を検出する軸力検出部と、車両に発生したヨーレートを検出するヨーレート検出部と、前記操舵角に対する前記軸力の値に基づいて、前記車輪が接している路面の路面状況を判断する第1の路面状況判断部と、前記操舵角に対する前記ヨーレートの値に基づいて、前記車輪が接している前記路面の路面状況を判断する第2の路面状況判断部と、、を備えている路面状態検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、多様な操作や運転状況に対応した路面状況を、より高精度に判断することができる技術を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1によるパワーステアリング装置の模式図である。
【
図2】
図1に示される制御部の制御フローチャートである。
【
図3】
図3(a)は
図2に示される第1マップの説明図であり、
図3(b)は
図2に示される第2マップの説明図である。
【
図4】本発明の実施例2によるパワーステアリング装置の模式図である。
【
図5】
図4に示される制御部の制御フローチャートである。
【
図6】
図6(a)は
図5に示される第1マップの説明図であり、
図6(b)は
図5に示される第2マップの説明図である。
【
図7】本発明の実施例3によるパワーステアリング装置の模式図である。
【
図8】
図7に示される制御部の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0016】
<実施例1>
図1~
図3を参照しつつ実施例1のパワーステアリング装置20を説明する。
【0017】
図1に示されるように、車両10にはパワーステアリング装置20が搭載されている。このパワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21の操舵入力(操舵力または操舵トルクともいう)が生じる操舵部22と、左右の転舵車輪23,23(車輪23,23。タイヤを含む)を転舵する転舵部24とを含む。左右の転舵車輪23,23は、転舵部24によって転舵されるものであればよく、前輪、後輪、又は両方を含む。
【0018】
パワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21と転舵部24との間が、機械的に分離または分離可能な構成の、いわゆるステアバイワイヤ式(steer-by-wire)パワーステアリング装置であって、ステアリングホイール21の操舵量に応じて転舵用アクチュエータ44を作動させることにより、左右の転舵車輪23,23を転舵することが可能である。
【0019】
操舵部22は、運転者が操舵するステアリングホイール21と、このステアリングホイール21に連結されているステアリング軸31と、ステアリングホイール21に対して操舵反力を付加する反力付加アクチュエータ32と、を含む。この操舵反力は、左右の転舵車輪23,23が路面Rdから受ける転舵抵抗(路面反力)に応じて、反力付加アクチュエータ32(第1アクチュエータ32)からステアリングホイール21へ付加されるものであって、反力トルク(操舵トルクに抵抗するトルク)と言い換えることができる。
【0020】
ここで、運転者がステアリングホイール21を操舵角θsの増大方向へ操舵することを、「切り増し操作」という。運転者が、切り増し操作の後に、ステアリングホイール21を操舵角θsの減少方向(中立方向)へ操舵することを、「切り戻し操作」という。
【0021】
反力付加アクチュエータ32は、運転者が操舵するステアリングホイール21の操舵入力(操舵トルク)に抵抗する操舵反力(反力トルク)を発生して、ステアリングホイール21に付加することによって、運転者に操舵感を与える。この反力付加アクチュエータ32は、操舵反力を発生する反力付加モータ33(第1モータ33)と、操舵反力をステアリング軸31に伝達する反力伝達機構34と、を含む。反力付加モータ33は、電動モータによって構成される。以下、反力付加モータ33のことを、適宜「反力モータ33」と略称する。
【0022】
転舵部24は、車幅方向へ延びている転舵軸41と、この転舵軸41の両端にタイロッド42,42及びナックル43,43を介して連結されている左右の転舵車輪23,23と、転舵軸41に転舵用動力を付加する転舵用アクチュエータ44と、を含む。
【0023】
転舵用アクチュエータ44(第2アクチュエータ44)は、転舵用動力を発生する転舵用モータ45と、転舵用動力を転舵軸41に伝達する転舵動力伝達機構46とからなる。転舵用モータ45(第2モータ45)は、例えば電動モータによって構成される。転舵用モータ45が発生した転舵用動力は、転舵動力伝達機構46によって転舵軸36に伝達される。この結果、転舵軸41は車幅方向にスライドする。
【0024】
さらに、パワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21の操舵角θsを検出する操舵角検出部51と、ステアリング軸31に発生する操舵トルクを検出する操舵トルク検出部52と、反力モータ33の回転角を検出する反力モータ回転角検出部53と、反力モータ33の電流値を検出する反力モータ電流検出部54とを備えている。反力モータ回転角検出部53は、例えば、反力モータ33に備えたレゾルバによって構成される。
【0025】
さらに、パワーステアリング装置20は、転舵用モータ45の回転角を検出する転舵用モータ回転角検出部55と、転舵用モータ45の電流値を検出する転舵用モータ電流検出部56と、転舵軸41の中立位置からのストローク量を検出するストローク検出部57と、転舵軸41の軸力frを検出する軸力検出部58とを備えている。転舵用モータ回転角検出部55は、例えば、転舵用モータ45に備えたレゾルバによって構成される。
【0026】
転舵軸41のストローク量と、転舵車輪23,23の転舵角とは、相関関係を有する。検出されたストローク量に基づいて、転舵車輪23,23の転舵角を間接的に求めることができる。なお、この転舵角は、転舵用モータ回転角検出部55によって検出された転舵用モータ45の回転角により、間接的に求めることができる。
【0027】
また、軸力frは、操舵角検出部51によって検出されたステアリングホイール21の操舵角θsと、転舵用モータ回転角検出部55によって検出された転舵用モータ45の回転角と、転舵用モータ電流検出部56によって検出された転舵用モータ45の電流値とにより、間接的に求める(推定する)ことができる。
【0028】
さらに、パワーステアリング装置20は、車両10の走行速度Vs(車速Vs)を検出する車速検出部61と、車両10の加速度を検出する加速度検出部62と、車両10に発生したヨーレートYrを検出するヨーレート検出部63と、その他の各種検出部64と、車両10を運転している運転者に警告を発する警告発生部65と、制御部66とを備えている。
【0029】
制御部66は、上記の検出部51~58,61~64からそれぞれ検出信号を受けて、反力付加アクチュエータ32及び転舵用アクチュエータ44に電流を付与するとともに、警告発生部65に作動信号を発する。この制御部66は、反力付加アクチュエータ32を駆動制御する反力付加アクチュエータ制御部71と、転舵用アクチュエータ44を駆動制御する転舵用アクチュエータ制御部72と、警告発生部65を駆動制御する警告駆動制御部73と、を備えている。
【0030】
実施例1では、操舵角検出部51と軸力検出部58とヨーレート検出部63と制御部66とによって、路面状態検出装置80が構成されている。この路面状態検出装置80において、制御部66は、前記警告駆動制御部73と、第1の路面状況を判断する第1の路面状況判断部81と、第2の路面状況を判断する第2の路面状況判断部82と、を備えていることを特徴とする。
【0031】
第1の路面状況判断部81は、操舵角検出部51によって検出された操舵角θsに対する、軸力検出部58によって検出された軸力frの値に基づいて、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第1の路面状況を判断する。
【0032】
第2の路面状況判断部82は、操舵角検出部51によって検出された操舵角θsに対する、ヨーレート検出部63によって検出されたヨーレートYrの値に基づいて、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第2の路面状況を判断する。
【0033】
次に、
図1を参照しつつ、
図2及び
図3に基づいて、制御部66による制御を説明する。制御部66は、例えばマイクロコンピュータによって構成される。マイクロコンピュータによって構成した制御部66の、具体的な制御の一例を説明すると、次の通りである。
【0034】
図2は、制御部66の制御フローチャートであって、制御部66の一連の制御のなかの、第1の路面状況及び第2の路面状況の判断及び警告発生部65の作動制御の処理を実行するサブルーチンを示している。このサブルーチンは、例えば所定の条件による割込処理や、時分割処置によって実行する。
【0035】
制御部66は制御を開始すると、先ずステップS01では、操舵角検出部51によって実際に検出された操舵角θs(実操舵角θs)を取得する。次に、ステップS11~S13の一連の第1の処理と、ステップS21~S23の一連の第2の処理とを、並列処理を実行する。
【0036】
第1の処理において、先ずステップS11では、操舵角θsの値から軸力frに関する閾値である軸力閾値fsを設定する。この軸力閾値fsは、例えば転舵車輪23,23が接している路面Rdが、低摩擦状況であるか否かを判断する第1の基準値である。この軸力閾値fsは、予め設定されている所定の、第1マップ(
図3(a)参照)や演算によって求められる。
【0037】
図3(a)は、横軸を操舵角θsとし、縦軸を軸力閾値fsとして、操舵角θsに対する軸力閾値fsを求める第1マップを示している。この第1マップによれば、操舵角θsの増大に従って軸力閾値fsが増大することが判る。
【0038】
前記ステップS11の次の、ステップS12では、軸力検出部58によって実際に検出された軸力fr(実軸力fr)を取得する。なお、この軸力frは、操舵角検出部51によって検出されたステアリングホイール21の操舵角θsと、転舵用モータ回転角検出部55によって検出された転舵用モータ45の回転角と、転舵用モータ電流検出部56によって検出された転舵用モータ45の電流値とにより、間接的に求めた(推定した)値であってもよい。
【0039】
次に、ステップS13では、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第1の路面状況を判断、つまり、実軸力frが軸力閾値fsを下回っているか否かを判断する。このステップS13は、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第1の路面状況を判断する第1の路面状況判断部81を構成している。
【0040】
一方、前記第2の処理において、先ずステップS21では、操舵角θsの値からヨーレートYrに関する閾値であるヨーレート閾値Ysを設定する。このヨーレート閾値Ysは、例えば転舵車輪23,23が接している路面Rdが、低摩擦状況であるか否かを判断する第2の基準値である。このヨーレート閾値Ysは、予め設定されている所定の、第2マップ(
図3(b)参照)や演算によって求められる。
【0041】
図3(b)は、横軸を操舵角θsとし、縦軸をヨーレート閾値Ysとして、操舵角θsに対するヨーレート閾値Ysを求める第2マップを示している。この第2マップによれば、操舵角θsの増大に従ってヨーレート閾値Ysが増大することが判る。
【0042】
前記ステップS21の次の、ステップS22では、ヨーレート検出部63によって実際に検出されたヨーレートYr(実ヨーレートYr)を取得する。
【0043】
次に、ステップS23では、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第2の路面状況を判断、つまり、実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っているか否かを判断する。このステップS04は、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第2の路面状況を判断する第2の路面状況判断部82を構成している。
【0044】
前記ステップS13において実軸力frが軸力閾値fsを下回っていると判断、及び/又は、前記ステップS23において実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていると判断をした場合、つまり、路面Rdが低摩擦状況であるという判断をした場合には、次のステップS31において警告駆動制御部73により警告発生部65を作動させた後に、このサブルーチンを終了する。この結果、警告発生部65は車両10を運転している運転者に警告を発する。
【0045】
一方、前記ステップS13において実軸力frが軸力閾値fsを下回っていないと判断をするとともに、前記ステップS23において実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていないと判断をした場合には、警告発生部65を作動させることなく、このサブルーチンを終了する。
【0046】
以上の説明から明らかなように、パワーステアリング装置20は路面状態検出装置80を備えている。この路面状態検出装置80は、第1の路面状況判断部81(ステップS13)と、第2の路面状況判断部82(ステップS23)と、警告駆動制御部73(ステップS31)と、を備えている。
【0047】
以上の実施例1の説明をまとめると、次の通りである。
路面状態検出装置80は、ステアリングホイール21の操舵角θsを検出する操舵角検出部51と、車輪23,23(転舵車輪23,23)を転舵する転舵部24の転舵軸41の軸力frを検出する軸力検出部58と、車両10に発生したヨーレートYrを検出するヨーレート検出部63と、前記操舵角θsに対する前記軸力frの値に基づいて、前記車輪23,23が接している路面Rdの路面状況(第1の路面状況)を判断する第1の路面状況判断部81と、前記操舵角θsに対する前記ヨーレートYrの値に基づいて、前記車輪23,23が接している前記路面Rdの路面状況(第2の路面状況)を判断する第2の路面状況判断部82と、を備えている。
【0048】
このため、操舵角θsに対する転舵軸41の軸力frの値に基づいて、第1の路面状況を判断することができる。操舵角θsに対する車両10のヨーレートYrの値に基づいて、第2の路面状況を判断することができる。2種類の路面状況判断部を有することによって、多様な操作や運転状況に対応した路面状況を、より高精度に判断することができる。
【0049】
しかも、路面Rdが摩擦低下の状況にあることを、運転者が認知することが可能な程度の状態量を定義して、運転者の認知に基づく低摩擦路面を判断することが可能なので、実際に路面Rdの状況を計測する必要がない。
【0050】
さらに、前記第1の路面状況判断部81は、前記軸力frに関する閾値である軸力閾値fsによって、前記第1の路面状況を判断している。前記第2の路面状況判断部82は、前記ヨーレートYrに関する閾値であるヨーレート閾値Ysによって、前記第2の路面状況を判断している。
【0051】
このように、路面が摩擦低下の状況にあることを、運転者が認知することが可能な程度の軸力閾値fsやヨーレート閾値Ysを設定することによって、運転者の認知に基づく低摩擦路面を、より明確に且つ確実に判断することが可能である。
【0052】
さらに、前記軸力閾値fsと前記ヨーレート閾値Ysの少なくとも一方は、前記路面Rdが低摩擦状況であるか否かを判断するための値である。
【0053】
このため、例えば次の3つの状態の場合に、路面状態検出装置80は、路面Rdと転舵車輪23,23との間の摩擦力(路面摩擦)が低下したと判断することができる。
【0054】
第1に、路面状態検出装置80は、ステアリングホイール21を切り増し操作している(操舵角θsが増大している)ときには、軸力frが軸力閾値fsよりも低下した場合に、路面Rdが低摩擦状況であると判断する。軸力は、車両の低速走行中(例えば、車速が約20km/h以下)において、運転者が、路面の摩擦力が低下したと判断し修正操舵を行う契機となる状態量であり、当該車速域において特に効果を奏する。
【0055】
第2に、路面状態検出装置80は、操舵角θsが増大しているときには、ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを超えた場合に、路面Rdが低摩擦状況であると判断する。ヨーレートは、車両の高速走行中(例えば、車速が約50km/h以上)において、運転者が、路面の摩擦力が低下したと判断し修正操舵を行う契機となる状態量であり、当該車速域において特に効果を奏する。
【0056】
第3に、路面状態検出装置80は、操舵角θsが増大しているときには、運転者は、軸力frが軸力閾値fsよりも低下するとともに、ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを超えた場合に、前記路面Rdが低摩擦状況であると判断する。軸力及びヨーレートの2つの指標は、車両の加速走行時において、運転手が、路面の摩擦力が低下したと判断し修正操舵を行う契機となる状態量であり、加速走行時において特に効果を奏する。
【0057】
さらに、前記第1の路面状況判断部81及び/又は前記第2の路面状況判断部82によって、前記路面Rdが前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合に、前記車両10を運転している運転者に警告を発する警告発生部65を備えている。
【0058】
このため、警告発生部65は、第1の路面状況判断部81と第2の路面状況判断部82との、少なくともいずれか一方が、路面Rdが摩擦低下の状況にあるとの判断結果に従って、警告を発することができる。従って、運転者は、運転の習熟度の大小にかかわらず、路面が摩擦低下の状況にあることを明確に且つ速やかに判断することができる。
【0059】
パワーステアリング装置20は、前記ステアリングホイール21と前記転舵部24との間が、機械的に分離または分離可能な構成である、いわゆるステアバイワイヤ式のパワーステアリング装置であって、路面状態検出装置80を備える。
【0060】
このように、ステアバイワイヤ式のパワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21と転舵車輪23,23との間が機械的に分離している。そのため、転舵軸41の軸力frの変化による前記第1の路面状況を運転者が認知することはできない。これに対し、ステアバイワイヤ式のパワーステアリング装置20に路面状態検出装置80を備えたことによって、ステアリングホイール21と転舵車輪23,23との間が機械的に分離しているにもかかわらず、運転者は前記第1の路面状況を確実に認知することができる。
【0061】
<実施例2>
次に、
図4~
図6を参照しつつ実施例2の路面状態検出装置80A、及びこの路面状態検出装置80Aを備えたパワーステアリング装置20Aを説明する。
【0062】
図4は、実施例2のパワーステアリング装置20Aの模式図であり、実施例1のパワーステアリング装置20を説明する
図1に対応させて表している。
図5は、実施例2の制御部66Aの制御フローチャートであり、実施例1の制御部66の制御フローチャートを説明する
図2に対応させて表している。
図6(a)は、実施例2の第1マップの説明図であり、実施例1の第1マップを説明する
図3(a)に対応させて表している。
図6(b)は、実施例2の第2マップの説明図であり、実施例1の第2マップを説明する
図3(b)に対応させて表している。
【0063】
実施例2のパワーステアリング装置20Aの路面状態検出装置80Aは、軸力閾値fsとヨーレート閾値Ysの少なくともいずれか一方が、車速検出部61によって検出された走行速度Vsに基づいて変化することを特徴とする。その他の基本的な構成については、実施例1のパワーステアリング装置20と共通する。実施例1のパワーステアリング装置20と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0064】
実施例2の制御部66Aは、実施例1の制御部66に対して、前記走行速度Vsに基づいて軸力閾値fsとヨーレート閾値Ysの少なくともいずれか一方を変化させるという、路面状態検出装置80Aの機能を有している。
【0065】
実施例2の制御部66Aは制御を開始すると、先ずステップS01では、検出された操舵角θs(実操舵角θs)を取得する。次に、ステップS02では、車速検出部61によって実際に検出された車速Vs(実車速Vs)を取得する。次に、ステップS11A~S13Aの一連の第1の処理と、ステップS21A~S23Aの一連の第2の処理とを、並列処理を実行する。
【0066】
第1の処理において、先ずステップS21Aでは、操舵角θsと車速Vsとの値から軸力frに関する閾値である軸力閾値fsを設定する。この軸力閾値fsは、路面Rdが低摩擦状況であるか否かを判断する第1の基準値である。この軸力閾値fsは、予め設定されている所定の、第1マップ(
図6(a)参照)や演算によって求められる。
【0067】
図6(a)は、横軸を操舵角θsとし、縦軸を軸力閾値fsとして、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsn毎に、操舵角θsに対する軸力閾値fsを求める第1マップを示している。ここで、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsnは、車速検出部61によって検出された車速Vsのうち、値Vs1が最も低速であり、値Vsnが最も高速である。この第1マップによれば、操舵角θsの増大に従って軸力閾値fsが増大するとともに、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsnが高速であるほど、操舵角θsの増大に従って軸力閾値fsの増大する割合が大きくなることが判る。
【0068】
前記ステップS11Aの次のステップS12Aでは、上記実施例1と同様に、軸力検出部58によって実際に検出された軸力fr(実軸力fr)を取得する。
【0069】
次に、ステップS13Aでは、上記実施例1と同様に、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第1の路面状況を判断、つまり、実軸力frが軸力閾値fsを下回っているか否かを判断する。このステップS13Aは、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第1の路面状況を判断する第1の路面状況判断部81Aを構成している。
【0070】
一方、前記第2の処理において、先ずステップS21Aでは、操舵角θsと車速Vsとの値からからヨーレートYrに関する閾値であるヨーレート閾値Ysを設定する。このヨーレート閾値Ysは、路面Rdが低摩擦状況であるか否かを判断する第2の基準値である。このヨーレート閾値Ysは、予め設定されている所定の、第2マップ(
図6(b)参照)や演算によって求められる。
【0071】
図6(b)は、横軸を操舵角θsとし、縦軸をヨーレート閾値Ysとして、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsn毎に、操舵角θsに対するヨーレート閾値Ysを求める第2マップを示している。ここで、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsnの配列は、上記
図6(a)に示される第1マップに対して逆順である。この第2マップによれば、操舵角θsの増大に従ってヨーレート閾値Ysが増大するとともに、各車速Vs1,Vs2,・・・Vsnが高速であるほど、操舵角θsの増大に従ってヨーレート閾値Ysの増大する割合が小さくなることが判る。
【0072】
前記ステップS21Aの次の、ステップS22Aでは、上記実施例1と同様に、ヨーレート検出部63によって実際に検出されたヨーレートYr(実ヨーレートYr)を取得する。
【0073】
次に、ステップS23Aでは、上記実施例1と同様に、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第2の路面状況を判断、つまり、実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っているか否かを判断する。このステップS23Aは、転舵車輪23,23が接している路面Rdの、第2の路面状況を判断する第2の路面状況判断部82Aを構成している。
【0074】
前記ステップS13Aにおいて実軸力frが軸力閾値fsを下回っていると判断、及び/又は、前記ステップS23Aにおいて実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていると判断をした場合、つまり、路面Rdが低摩擦状況であるという判断をした場合には、次のステップS31において警告駆動制御部73により警告発生部65を作動させた後に、このサブルーチンを終了する。この結果、警告発生部65は車両10を運転している運転者に警告を発する。
【0075】
一方、前記ステップS13Aにおいて実軸力frが軸力閾値fsを下回っていないと判断をするとともに、前記ステップS23Aにおいて実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていないと判断をした場合には、警告発生部65を作動させることなく、このサブルーチンを終了する。
【0076】
以上の説明から明らかなように、パワーステアリング装置20Aは路面状態検出装置80Aを備えている。この路面状態検出装置80Aは、第1の路面状況判断部81A(ステップS13A)と、第2の路面状況判断部82A(ステップS23A)と、警告駆動制御部73(ステップS31)と、を備えている。
【0077】
以上の実施例2の説明をまとめると、次の通りである。
路面状態検出装置80Aは、前記車両10の走行速度Vs(車速Vs)を検出する車速検出部61を備える。前記軸力閾値fsと前記ヨーレート閾値Ysの少なくともいずれか一方は、前記走行速度Vsに基づいて変化する。
【0078】
一般に、運転者が路面摩擦低下であるとの認知は、走行速度Vs(車速Vs)に従って変化し得る。これに対し、実施例2では、走行速度Vs(車速Vs)に基づいて軸力閾値fsやヨーレート閾値Ysを変化させている。例えば、車速が高速であるほど、軸力閾値fsを高く設定するとともに、ヨーレート閾値Ysを低く設定することができる。このため、多様な操作や運転状況に対応した路面状況を、より一層高精度に判断することができる。その他の作用、効果は、上記実施例1の作用、効果と同じである。
【0079】
<実施例3>
次に、
図7及び
図8を参照しつつ実施例3の路面状態検出装置80B、及びこの路面状態検出装置80Bを備えたパワーステアリング装置20Bを説明する。
【0080】
図7は、実施例3のパワーステアリング装置20Bの模式図であり、実施例2のパワーステアリング装置20Aを説明する
図4に対応させて表している。
図8は、実施例3の制御部66Bの制御フローチャートであり、実施例2の制御部66Aの制御フローチャートを説明する
図5に対応させて表している。
【0081】
実施例3のパワーステアリング装置20Bの路面状態検出装置80Bは、(1)警告発生部65Bが、第1の路面状況と第2の路面状況とで互いに異なる警告を発するとともに、(2)第2の路面状況が低摩擦状況であるときには転舵車輪23,23のスリップを修正する方向の操舵反力をステアリングホイール21に付与することを特徴とする。その他の基本的な構成については、実施例1のパワーステアリング装置20と共通する。実施例2のパワーステアリング装置20Aと共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0082】
実施例2の警告発生部65に対して、実施例3の警告発生部65Bは、第1警告部101と第2警告部102という2つの警告部を有していることを特徴とする。第1警告部101は、第1の路面状況の場合に報知するものであって、例えば運転者が視覚によって認識することが可能な構成(点滅する警告灯など)であり、車室内において運転者が認知しやすい位置、例えばインストルメントパネルに配置される。第2警告部102は、第2の路面状況の場合に報知するものであって、例えば運転者が聴覚によって認識することが可能な構成(ブザー等の警音器など)あり、車室内に配置される。
【0083】
実施例3の警告駆動制御部73Bは、第1警告部101を駆動制御する第1警告駆動制御部103と、第2警告部102を駆動制御する第2警告駆動制御部104とによって構成されている。
【0084】
実施例2の制御部66Aに対して、実施例3の制御部66Bは、(1)第1の路面状況と第2の路面状況とで互いに異なる警告を警告発生部65Bに発生させるとともに、(2)第2の路面状況が低摩擦状況であるときには転舵車輪23,23のスリップを修正する方向の操舵反力を反力付加アクチュエータ32に発生させるという、路面状態検出装置80Bの機能を有している。
【0085】
図8に示される実施例3の制御部66Bの制御フローチャートにおいて、ステップS01,S02,S11A~S13A,S21A~S23Aの制御内容は、上記
図5に示される実施例2の制御部66Aの制御フローチャートの制御内容と同じであり、説明を省略する。
【0086】
前記ステップS13Aにおいて実軸力frが軸力閾値fsを下回っていると判断、つまり、路面Rdが低摩擦状況であるという判断をした場合には、次のステップS31Aにおいて第1警告駆動制御部103により第1警告部101を作動させた後に、このサブルーチンを終了する。この結果、第1警告部101は車両10を運転している運転者に、第1の路面状況であるという警告を発する。一方、前記ステップS13Aにおいて実軸力frが軸力閾値fsを下回っていないと判断をした場合には、第1警告部101を作動させることなく、このサブルーチンを終了する。
【0087】
前記ステップS23Aにおいて実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていると判断、つまり、路面Rdが低摩擦状況であるという判断をした場合には、次のステップS31Bにおいて第2警告駆動制御部104により第2警告部102を作動させた後に、ステップS32に進む。この結果、第2警告部102は車両10を運転している運転者に、第2の路面状況であるという警告を発する。一方、前記ステップS23Aにおいて実ヨーレートYrがヨーレート閾値Ysを上回っていないと判断をした場合には、第2警告部102を作動させることなく、このサブルーチンを終了する。
【0088】
前記ステップS31Bの次の、ステップS32では、反力付加アクチュエータ制御部71により反力付加アクチュエータ32を駆動制御しすることによって、路面Rdに対する転舵車輪23,23のスリップを修正する方向の操舵反力を、反力付加アクチュエータ32から発生させる。
【0089】
以上の説明から明らかなように、パワーステアリング装置20Bは路面状態検出装置80Bを備えている。この路面状態検出装置80Bは、第1の路面状況判断部81A(ステップS13A)と、第2の路面状況判断部82A(ステップS23A)と、第1警告駆動制御部103(ステップS31A)と、第2警告駆動制御部104(ステップS31B)と、反力付加アクチュエータ制御部71と、を備えている。
【0090】
以上の実施例3の説明をまとめると、次の通りである。
前記警告発生部65Bは、前記第1の路面状況判断部81によって、前記路面Rdが前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合と、前記第2の路面状況判断部82によって、前記路面Rdが前記低摩擦状況であるという判断がなされた場合とで、互いに種類の異なる警告を発する。
【0091】
一般に、車両の走行している路面が、(1)滑りやすい路面であることと、(2)実際に滑っている状態であることとは、運転者の危険度合いが異なるので、警告発生部65Bが発する警告も異なることが好ましい。
【0092】
第1の路面状況は、運転者が、ステアリングホイール21の操舵トルクが過小な状態になったと感じることによって、路面摩擦が低下したことを認知する、滑りやすい路面状況である。また、第2の路面状況は、運転者が、車両10に発生したヨーレートYrが過大な状態になったと感じることによって、路面摩擦が低下したことを認知する、車両運動に影響を与えている路面状況である。
【0093】
これに対し、警告発生部65Bは、軸力frの変化から第1の路面状況であると判断した場合には、第1警告部101を駆動する(例えば警告灯を点滅させる)。また、警告発生部65Bは、ヨーレートYrの変化から、低摩擦の第2の路面状況であると判断した場合には、第2警告部102を駆動する(例えばブザー等の警音器を鳴らす)。このように、警告発生部65Bから発せられる警告が異なることによって、運転者は速やかに且つ容易に路面状況の危険度合いを認知することができる。
【0094】
さらに、前記ステアバイワイヤ式のパワーステアリング装置20は、前記ステアリングホイール21の操舵入力に抵抗する操舵反力を発生して前記ステアリングホイール21に付加する反力付加アクチュエータ32と、この反力付加アクチュエータ32を駆動制御する反力付加アクチュエータ制御部71とを備える。前記第2の路面状況判断部82Aが前記低摩擦状況であるという判断をした場合には、前記反力付加アクチュエータ制御部71は、前記路面Rd対する前記転舵車輪23,23のスリップを修正する方向の前記操舵反力を前記ステアリングホイール21に付与して前記操舵角θsを補正するように、前記反力付加アクチュエータ82を制御する。
【0095】
このように、操舵角θsに対するヨーレートYrの変化から、低摩擦の第2の路面状況であると第2の路面状況判断部82が判断した場合には、転舵車輪23,23のスリップを修正する方向の操舵反力をステアリングホイール21に付与することによって、操舵角θsや、操舵トルクに基づいて変化する転舵用アクチュエータ44の制御量が変化することとなるため、速やかに修正操舵をおこなうことができ、路面Rdに対する転舵車輪23,23のスリップ状態を迅速に解消することができる。
【0096】
その他の作用、効果は、上記実施例1及び実施例2の作用、効果と同じである。
【0097】
なお、本発明による緩衝器は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例1~3のパワーステアリング装置20,20A,20Bは、いずれか2つ、または全てを組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の路面状態検出装置80,80A,80B、及びこの路面状態検出装置80,80A,80Bを備えたパワーステアリング装置20,20A,20Bは、自動車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0099】
10 車両
20,20A,20B パワーステアリング装置
21 ステアリングホイール
22 操舵部
23 車輪
24 転舵部
32 反力付加アクチュエータ
44 転舵用アクチュエータ
51 操舵角検出部
53 反力モータ回転角検出部
58 軸力検出部
61 車速検出部
63 ヨーレート検出部
65,65B 警告発生部
66,66A,66B 制御部
71 反力付加アクチュエータ制御部
73,73B 警告駆動制御部
80,80A,80B 路面状態検出装置
81,81A 第1の路面状況判断部
82,82A 第2の路面状況判断部
101 第1警告部
102 第2警告部
103 第1警告駆動制御部
104 第2警告駆動制御部
fr 転舵軸の軸力
Rd 路面
Vs 車両の走行速度(車速)
Yr 車両に発生したヨーレート
θs ステアリングホイールの操舵角