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特許7618441安全装置付き高所作業装置および高所作業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】安全装置付き高所作業装置および高所作業方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20250114BHJP
   B66F 11/04 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F11/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020210156
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096902
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】福本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良介
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-075769(JP,A)
【文献】特開平09-124297(JP,A)
【文献】実開昭63-048800(JP,U)
【文献】特開2006-131370(JP,A)
【文献】実開平04-065300(JP,U)
【文献】特開2018-070331(JP,A)
【文献】特開2018-177491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を、前記障害物との接触が検知された方向と反対の方向に制限する移動制限手段と、
を備えた安全装置付き高所作業装置。
【請求項2】
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を、下方向に制限する移動制限手段と、
を備えた安全装置付き高所作業装置。
【請求項3】
前記上向検知棒および前記水平検知棒は、その棒状体の中間に介在され当該棒状体の基部に対し当該棒状体の先端部を曲折可能にする曲折機構を有し、前記曲折機構は、当該曲折機構の曲折により前記棒状体の曲折を検知する検知棒曲折検知部を有する、
請求項1または請求項2に記載の安全装置付き高所作業装置。
【請求項4】
前記上向検知棒および前記水平検知棒の曲折機構は、前記棒状体の先端部に何も接触していない状態で、当該棒状体を直線状に保持するばね力を有し、
前記移動制限手段により前記バケットを移動させる方向が制限された後に、前記検知棒曲折検知部により前記棒状体の曲折が検知されなくなった場合、前記バケットを移動させる方向の制限を解除する制限解除手段を備えた、
請求項3に記載の安全装置付き高所作業装置。
【請求項5】
前記上向検知棒および前記水平検知棒は、その棒状体の少なくとも先端部が発光体により構成される、
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の安全装置付き高所作業装置。
【請求項6】
前記バケットの下部の縁に設けられ、当該バケットの下方へ向けてスポット状の光を投射する光投射部を備えた、
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の安全装置付き高所作業装置。
【請求項7】
前記バケットは箱型であり、
前記上向検知棒および前記水平検知棒は、前記バケットの上部の四隅に設けられる、
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の安全装置付き高所作業装置。
【請求項8】
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
を備えた高所作業装置により、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を前記障害物との接触が検知された方向と反対の方向に制限する、
ようにした高所作業方法。
【請求項9】
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
を備えた高所作業装置により、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を、下方向に制限する、
ようにした高所作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、安全装置付き高所作業装置および高所作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の通行するトンネル内の天井から側壁に掛けての高所部分の点検、保守などを行なう場合、高所作業車が使用される。高所作業車は、作業者を載せて上下左右に移動させることが可能なバケットを備え、作業者は、バケット内のバケット操作部を操作して当該バケットを任意の位置に移動させ、天井や側壁等に対する作業を行なう。
【0003】
しかしながら、作業者が、例えば、バケットを移動させる際に、当該バケット上の作業者から天井や側壁(トンネル内壁)までの距離感を見誤ったり、移動の操作そのものを誤ったりして、バケットをトンネル内壁に近付け過ぎてしまうと、作業者と内壁との接触事故やトンネルやその設備の破損等につながる恐れがある。
【0004】
従来、高所作業車のバケットに上方へ延ばした障害物検知部を設置し、当該障害物検知部がトンネル内壁に当たることで、報知ブザーと報知ランプを作動させ、作業者に対し、バケットのトンネル内壁への異常な接近を音と光で報知する高所作業車用安全装置が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-088351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両が通行するトンネル、特に基幹道路や高速道路のトンネルでは、車両を全面通行止めにして作業を実施することが難しく、対面通行であれば片側車線を通行止めにするか、あるいは複数ある車線のうち一部の車線を通行止めにするなどして作業が実施される。
【0007】
このようなトンネルでは、天井付近に照明設備や排気設備が設けられているため、天井部が明るく風通しが良いが、高速で走る車両の走行音の反響や送風ファンの音を含む騒音が著しい。
【0008】
このため、作業者に対し、バケットのトンネル内壁への異常な接近を、報知ブザーと報知ランプにより音と光で報知する高所作業車用安全装置では、その音と光による報知が伝わり難く、バケットを操作する作業者がバケットの移動の停止を直ちに行なうことができない恐れがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、天井部が明るく騒音の著しいトンネル内にあっても、作業者の接触事故やトンネルやその設備の破損等につながるバケットのトンネル内壁への異常な接近を確実に防止することが可能になる安全装置付き高所作業装置および高所作業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の第1態様の安全装置付き高所作業装置は、
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を、前記障害物との接触が検知された方向と反対の方向に制限する移動制限手段と、を備える。
実施形態の第2態様の安全装置付き高所作業装置は、
作業者が載って作業対象に対する作業を行なうためのバケットと、
前記バケットを任意の位置に移動させるバケット制御手段と、
前記バケットの上部の縁に上方へ向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する上向検知棒と、
前記バケットの上部の縁に水平方向に当該バケットの外側に向けて設けられる棒状体であって、障害物との接触を当該棒状体が曲折することで検知する水平検知棒と、
前記上向検知棒または前記水平検知棒により前記障害物との接触が検知された場合、前記バケット制御手段により前記バケットを移動させる方向を、下方向に制限する移動制限手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の安全装置付き高所作業車10の外観構成を示す斜視図。
図2】高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部の四隅に設けられた検知棒13a~13dおよび14a~14hの概略的な構成を示す斜視図。
図3】高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部の四隅に水平方向に設けられた検知棒14a~14hの概略的な構成を示す平面図。
図4】高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部に設けられた検知棒13a,13bおよび14a,14dと当該バケット11の下部に設けられた光投射部16a,16bの概略的な構成を示す側面図。
図5】検知棒13a~13dおよび14a~14hが有する曲折機能の概略的な構成を示す図。
図6】検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bの概略的な構成を示す側面図。
図7】検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bの概略的な構成を示す平面図。
図8】検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15に内蔵される検知棒曲折検知部15Dの構成例を示す図。
図9】バケット11の操作部12と共に設けられる制御部21を中心とするバケット/ブーム制御装置20の構成を示すブロック図。
図10】安全装置付き高所作業車10のバケット/ブーム制御装置20により実行されるバケット/ブーム制御処理を示すフローチャート。
図11】高所作業車10のバケット11の移動に伴い検知棒14a,14hがトンネルの側壁TSに接触して曲折した状態を概略的に示す平面図。
図12】高所作業車10のバケット11の移動に伴い光投射部16a~16dからの投射光Lがトンネル内の道路R上に光点Pa~Pdを形成した状態を概略的に示す側面図。
図13】バケット11の上部の四隅に上方へ向けて設けた検知棒13a,13bの曲折機構15と折畳み機構15Bを利用した収納手順を概略的に示す側面図。
図14】バケット11の上部の四隅に水平方向に設けた検知棒14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bを利用した収納手順を概略的に示す平面図。
図15】バケット11の上部の四隅に上方へ向けて設ける検知棒13a~13dの他の実施形態の収納機能を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の安全装置付き高所作業装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施形態の安全装置付き高所作業車10の外観構成を示す斜視図である。
【0014】
図2は、高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部の四隅に設けられた検知棒13a~13dおよび14a~14hの概略的な構成を示す斜視図である。
【0015】
図3は、高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部の四隅に水平方向に設けられた検知棒14a~14hの概略的な構成を示す平面図である。
【0016】
図4は、高所作業車10のバケット11と当該バケット11の上部に設けられた検知棒13a,13bおよび14a,14dと当該バケット11の下部に設けられた光投射部16a,16bの概略的な構成を示す側面図である。
【0017】
高所作業車10は、例えば、図1に示すように、高速道路のトンネル内の高所での作業に使用され、作業者W1,W2を載せる箱型のバケット11と、当該バケット11を上昇または下降または左右に移動または旋回させて任意の位置に移動させるブーム10Bを備える。なお、バケット11の旋回は、例えばブーム10Bの先端のバケット11との取り付け部に介在して設けられる電動モータなどを含む回転機構により行われる。
【0018】
バケット11には、当該バケット11およびブーム10Bを動作させるための操作と検知棒13a~13d、14a~14hの電源をON/OFFするための操作を行なう操作部12が設けられる。検知棒13a~13d、14a~14hは、バケット11をトンネル内で移動させている際に、トンネル内壁(障害物)との接触を当該検知棒13a~13d、14a~14hが曲折することで検知する機能を有する。
【0019】
バケット11に載った作業者W1,W2は、操作部12を操作してバケット11を任意の位置に移動させ、例えばトンネルの天井TCないし側壁TSに掛けてのトンネル内壁を作業対象として据付、撤去、および保守点検などを行なう。
【0020】
道路R上の監視者WRは、高所作業車10とその周辺を監視し、バケット11に載った作業者W1,W2による作業の状況や近くを走行する車両との関係等に起因する危険を未然に防ぐための役割を果たす。
【0021】
バケット11には、その上部の四隅に、垂直方向に伸びる検知棒(上向検知棒)13a~13dと、水平方向に外側に伸びる検知棒(水平検知棒)14a~14hとが設けられる。垂直方向の検知棒13a~13dは、バケット11の四隅の縦の縁が上方に伸びる方向に設けられ、水平方向の検知棒14a~14hは、バケット11の上部の四隅で直角に交わる横方向の縁が、そのままバケット11の外側へ向けて伸びる方向に2本ずつ設けられる。
【0022】
図5は、検知棒13a~13dおよび14a~14hが有する曲折機能の概略的な構成を示す図である。
【0023】
図6は、検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bの概略的な構成を示す側面図である。
【0024】
図7は、検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bの概略的な構成を示す平面図である。
【0025】
図5図7において、検知棒13a~13dおよび14a~14hは何れも同じ構成になるため、ここでは一つの検知棒13aを示して説明する。
【0026】
検知棒13aは、図5図7に示すように、何れもその中間部の曲折機構15を介して先端部13a1と基部13a2とに折れ曲がることが可能な構成である。
【0027】
検知棒13aの先端部13a1は、例えばLED(light-emitting diode)を内蔵した発光体または化学発光体を用いて構成される。なお検知棒13aの基部13a2も同様に発光体または化学発光体を用いて構成してよい。
【0028】
曲折機構15は、例えば両開き式のばね蝶番を用いて構成し、検知棒13aの先端部13a1に何も接触していない状態では、先端部13a1と基部13a2とをばねの力により直線状に保持し、先端部13aに何か接触した状態になると、その接触の圧力に応じて、図7の矢印ARに示すように、先端部13a1を、曲折機構15の軸を中心に左右に略180度の範囲内で回転させて曲折させる。
【0029】
検知棒13aの基部13a2は、バケット11の上部の隅に対して、折畳み機構15Bを介して取り付けられる。折畳み機構15Bは、例えば片開き式のばね蝶番を用いて構成し、例えば、作業者W1,W2が基部13a2をバケット11の縁に沿って折畳む力に応じて、図7の矢印ARbに示すように、基部13a2を検知棒13aごと、折畳み機構15Bの軸を中心にバケット11の縁に沿う方向に略90度の範囲内で回動させて折畳む。
【0030】
なお、曲折機構15の曲折に抗するばねの力と、折畳み機構15Bの折畳みに抗するばねの力とは、後者のばねの力の方が明らかに強く、先端部13a1を曲折させる力により基部13a2が折畳まれることはない。
【0031】
また、曲折機構15は、例えば図5(C)に示すように、先端部13a1を基部13a2に沿う位置まで曲折させた場合に、その曲折を戻そうとするばね力に抗して曲折したままの位置を保持する曲折ロック機構(図示せず)を設けてよい。
【0032】
また、折畳み機構15Bも、基部13a2をバケット11の縁に沿う位置まで折り畳んだ場合に、その折畳みを戻そうとするばね力に抗して折畳んだままの位置を保持する折畳みロック機構(図示せず)を設けてよい。
【0033】
バケット11の下部の四隅には、図1および図4に示すように、例えばスポット光源を使用した光投射部16a~16dが設けられる。光投射部16a~16dは、光の投射方向をバケット11の四隅の縦方向の縁が下方に伸びる方向に向けて設けられ、当該光投射部16a~16dからの投射光Lを道路R上に投射して光点Pa~Pdを形成することで、道路Rに対するバケット11の水平方向の現在位置を示すようにする。
【0034】
図8は、検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15に内蔵される検知棒曲折検知部15Dの構成例を示す図である。
【0035】
検知棒曲折検知部15Dは、例えば両開き式のばね蝶番である曲折機構15の軸15jに対して設けた当該軸15jと同心円で回転する磁性体の歯車15gと、当該歯車15gの外周部に対向して設けられ、当該歯車15gが回転しその山部分が通過することに伴う磁束の変化をバルス信号にして取得する近接センサ15sとを含む。
【0036】
検知棒曲折検知部15Dの近接センサ15sにより取得されるパルス信号は、パルスカウンタDpへ出力し、当該パルスカウンタDpによりパルス信号のパルス数及びパルス間隔を計測することで、歯車15gの回転角と回転速度、すなわち曲折機構15による検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折角度と曲折速度を取得する。
【0037】
パルスカウンタDpは、例えば、バケット11の操作部12と共に設けられる後述の制御部21(図9参照)に内蔵される。
【0038】
図9は、バケット11の操作部12と共に設けられる制御部21を中心とするバケット/ブーム制御装置20の構成を示すブロック図である。
【0039】
バケット/ブーム制御装置20は制御部21を備える。
【0040】
制御部21は、例えばプロセッサ(CPU:central processing unit)(図示せず)とメモリ21MとパルスカウンタDpを含み、プロセッサは、メモリ21Mに記憶されたバケット/ブーム制御プログラムに従いバケット/ブーム制御装置20の各部の動作を制御する。
【0041】
制御部21は、操作部12の例えば操作卓に設けられたバケット/ブーム操作部12Aから出力されるバケット11を任意の位置に移動させるためのバケット/ブーム操作信号と、検知棒ON/OFFスイッチ12Bから出力される検知棒13a~13d(14a~14h)の発光および光投射部16a~16dによる投射光Lの投射をON/OFFするための検知棒ON/OFF信号を入力する。
【0042】
また、制御部21は、検知棒曲折検知部15Dの近接センサ15s(図8参照)から出力されるパルス信号を入力し、検知棒13a~13d(14a~14h)の曲折角度と曲折速度とを取得する。
【0043】
制御部21は、例えば電動モータまたは高所作業車10のエンジンの回転を利用した回動機構により構成されるバケット/ブーム駆動部22を介してブーム10Bの動きを制御し、バケット11を例えば操作部12を操作する作業者W2の任意の位置に移動させる。
【0044】
また、制御部21は、発光駆動部23を介して検知棒13a~13dおよび14a~14hの発光(ON/OFF)を制御する。
【0045】
また、制御部21は、光投射駆動部24を介して光投射部16a~16dによる投射光Lの投射(ON/OFF)を制御する。
【0046】
次に、実施形態の安全装置付き高所作業車10の動作について説明する。
【0047】
図10は、安全装置付き高所作業車10のバケット/ブーム制御装置20により実行されるバケット/ブーム制御処理を示すフローチャートである。
【0048】
図11は、高所作業車10のバケット11の移動に伴い検知棒14a,14hがトンネルの側壁TSに接触して曲折した状態を概略的に示す平面図である。
【0049】
図12は、高所作業車10のバケット11の移動に伴い光投射部16a~16dからの投射光Lがトンネル内の道路R上に光点Pa~Pdを形成した状態を概略的に示す側面図である。
【0050】
図1で示したように、高所作業車10のバケット11に載った作業者W1,W2により操作部12の検知棒ON/OFFスイッチ12Bが電源ONに操作されると、バケット/ブーム制御装置20のバケット/ブーム制御プログラム(21M)に従った制御部21の動作が開始され、発光駆動部23を介して検知棒13a~13dおよび14a~14hが発光(ON)されると共に、光投射駆動部24を介して光投射部16a~16dから投射光Lが投射(ON)される。
【0051】
作業者W1,W2により操作部12のバケット/ブーム操作部12Aが操作されると(ステップS1(Yes))、制御部21は、各検知棒13a~13dおよび14a~14hの検知棒曲折検知部15DからパルスカウンタDpに入力されるパルス信号に基づいて、水平方向の検知棒14a~14hの何れかに曲折が検知されたか否かと、垂直(上方)方向の検知棒13a~13dの何れかに曲折が検知されたか否かと、を判定する(ステップS2,S3)。
【0052】
各検知棒13a~13dおよび14a~14hの全てにおいて曲折が検知されないと判定されると(ステップS2(No)→S3(No))、制御部21は、バケット/ブーム操作部12Aからのバケット/ブーム操作信号に応じて、バケット/ブーム駆動部22を介しバケット11およびブーム10Bの動きを制御し、バケット11を作業者W2の任意の位置に移動させる(ステップS4)。
【0053】
この後、例えば図11に示すように、水平方向の検知棒14a,14hの何れかの先端部14a1,14h1がトンネル内の側壁TSに接触することで、当該検知棒14a,14hの曲折機構15に内蔵された検知棒曲折検知部15Dにより同検知棒14a,14hの曲折が検知されるか(ステップS2(Yes))、または垂直(上方)方向の検知棒13a~13dの何れかの先端部13a1~13d1がトンネル内の天井TCに接触することで、当該検知棒13a~13dの曲折機構15に内蔵された検知棒曲折検知部15Dにより同検知棒13a~13dの曲折が検知されると(ステップS3(Yes))、制御部21は、バケット/ブーム駆動部22を介したバケット11およびブーム10Bの動きの制御を、バケット11を下方向に移動(下降)させる制御のみに制限する(ステップS5,S6)。
【0054】
これにより、高所作業車10によるトンネル内での作業中に、バケット11をトンネル内の側壁TSや天井TCに近付け過ぎてしまうことで、作業者W1,W2とトンネル内壁との接触事故やトンネルやその設備の破損等につながる恐れが生じた場合には、直ちに、当該バケット11の移動を下降させることにのみに制限できる。
【0055】
よって、天井部が明るく騒音の著しいトンネル内にあっても、作業者W1,W2の接触事故やトンネルやその設備の破損等につながるバケット11のトンネル内壁への異常な接近を確実に防止することが可能になる。
【0056】
この後、バケット/ブーム操作部12Aからのバケット11を下降させるバケット/ブーム操作信号に応じて、バケット11の位置が下方向に移動され、検知棒13a~13dおよび14a~14hの何れかの先端部13a1~13d1(14a1~14h1)のトンネル内壁との接触が解消され、全ての検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折機構15に内蔵された検知棒曲折検知部15Dにより同検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折が検知されていない状態に復帰すると(ステップS7(Yes))、制御部21は、ステップS5,S6にて実行したバケット11の移動の操作の制限を解除する(ステップS8→S1)。
【0057】
このように、全ての検知棒13a~13dおよび14a~14hの曲折が検知されていない状態にならないと、バケット11の移動の操作の制限は解除されないので、作業者W1,W2とトンネル内壁との接触事故やトンネルやその設備の破損等につながる恐れが少しでもある状態で、バケット11を上方や左右方向に移動させてしまう事態を完全に防止できる。
【0058】
なお、バケット11の移動の操作の制限は、バケット11を下方向に移動(下降)させる制御のみに制限することで行なう構成としたが、これに限らず、トンネル内壁と接触し検知棒曲折検知部15Dにより曲折が検知された何れかの検知棒(13a~13dおよび14a~14h)の伸びる方向と反対の方向、すなわち、垂直(上方)方向に向けた検知棒13a~13dによる曲折の検知であれば、バケット11の下方向への移動のみ、また水平方向に向けた検知棒14a,14hによる曲折の検知であれば、バケット11の反対側の検知棒14d,14eがある水平一方向への移動のみ、また同様に検知棒14b,14cによる曲折の検知であれば、バケット11の反対側の検知棒14f,14gがある水平一方向への移動のみ、また同様に検知棒14d,14eによる曲折の検知であれば、バケット11の反対側の検知棒14a,14hがある水平一方向への移動のみ、また同様に検知棒14f,14gによる曲折の検知であれば、バケット11の反対側の検知棒14b,14cがある水平一方向への移動のみに制限する構成としてもよい。
【0059】
トンネル内の道路R上に居て作業を監視する監視者WRは、バケット11の上部周縁に垂直方向および水平方向に設けられた発光する検知棒13a~13d及び14a~14hを視認することで、トンネル内の天井TCや側壁TSに対するバケット11の位置やバケット11との距離を容易に認識して監視できる。
【0060】
また監視者WRは、バケット11の光投射部16a~16dからの投射光Lにより道路R上に形成された光点Pa~Pdを視認することで、道路Rに対するバケット11の水平方向の現在位置を容易に認識して監視できる。監視者WRは、例えば図12に示すように、道路R上にひかれた白線Hを基準にして、バケット11がトンネルの側壁TSに近付き過ぎていないか、車両の通行する隣の車線に近付き過ぎていないかなどを容易に確認できる。
【0061】
(検知棒13a~13d(14a~14h)の収納機能)
図13は、バケット11の上部の四隅に上方へ向けて設けた検知棒13a,13bの曲折機構15と折畳み機構15Bを利用した収納手順を概略的に示す側面図である。
【0062】
検知棒13a,13b(13c,13dも同様)は、先ず図13(A)の矢印ARに示すように、先端部13a1,13b1を、曲折機構15を支点にして基部13a2,13b2に沿う位置まで曲折して回動させる。次に図13(B)の矢印ARbに示すように、先端部13a1,13b1を沿わせた基部13a2,13b2を、折畳み機構15Bを支点にしてバケット11の上部開口の縁に沿う位置まで回動させて折畳む。
【0063】
図14は、バケット11の上部の四隅に水平方向に設けた検知棒14a~14hの曲折機構15と折畳み機構15Bを利用した収納手順を概略的に示す平面図である。
【0064】
前述した検知棒13a~13dと同様に、検知棒14a~14hも、先ず図14(A)の矢印ARに示すように、先端部14a1~14h1を、曲折機構15を支点にして基部14a2~14h2に沿う位置まで曲折して回動させる。次に図14(B)の矢印ARbに示すように、先端部14a1~14h1を沿わせた基部14a2~14h2を、折畳み機構15Bを支点にしてバケット11の上部開口の縁に沿う位置まで回動させて折畳む。
【0065】
この際、各検知棒13a~13d(14a~14h)ともに、先端部13a1~13d1(14a1~14h1)と基部13a2~13d2(14a2~14h2)とが完全に重なってバケット11の上部開口の縁に沿う位置に水平に折畳まれる必要は無く、ジグザク状に折り畳まれてよい。
【0066】
これにより、バケット11を使用しないときには、検知棒13a~13d(14a~14h)が邪魔にならないように容易に収納できる。
【0067】
(実施形態のまとめ)
実施形態の安全装置付き高所作業車10によれば、作業者W1,W2の操作に応じて、ブーム10Bを介し、上下、左右、旋回させて任意の位置に移動させることが可能なバケット11の上部の四隅に、それぞれ、上方向に伸びる検知棒13a~13dと、バケット11の上部の縁に沿って水平に伸びる検知棒14a~14hとを設ける。各検知棒13a~13d、14a~14hの何れかの先端部13a1~13d1、14a1~14h1がトンネル内壁に接触すると、検知棒13a~13d、14a~14hが、その先端部13a1~13d1、14a1~14h1と基部13a2~13d2、14a2~14h2との間に介在した曲折機構15を支点にして曲折し、当該曲折機構15に内蔵させた検知棒曲折検知部15Dによりその曲折を検知する。検知棒13a~13d、14a~14hの曲折の検知により、バケット11がトンネル内の天井TCや側壁TSに近付いたと判定し、バケット11を移動させるための操作を、当該バケット11を下方向に移動させる操作のみ、あるいはトンネル内壁との接触を検知した方向と反対の方向に移動させる操作のみに制限する。
【0068】
これにより、高所作業車10によるトンネル内での作業中に、バケット11をトンネル内の側壁TSや天井TCに近付け過ぎてしまうことで、作業者W1,W2とトンネル内壁との接触事故やトンネルやその設備の破損等につながる恐れが生じた場合には、直ちに、バケット11が更にトンネル内壁に近付く方向に移動してしまうのを禁止し、当該バケット11をトンネル内壁から離すことができる。
【0069】
また、実施形態の安全装置付き高所作業車10によれば、検知棒13a~13d、14a~14hは、例えばLEDを内蔵した発光体または化学発光体を用いて構成する。
【0070】
これにより、道路R上の監視者WRは、トンネル内の天井TCや側壁TSに対するバケット11の位置やバケット11との距離を容易に認識して監視できる。
【0071】
さらに、実施形態の安全装置付き高所作業車10によれば、バケット11の下部の四隅に、投射光Lを下方に投射して道路R上に光点Pa~Pdを形成するための、例えばスポット光源を使用した光投射部16a~16dを設ける。
【0072】
これにより、監視者WRは、道路Rに対するバケット11の水平方向の現在位置を容易に認識して監視でき、バケット11がトンネルの側壁TSに近付き過ぎていないか、車両の通行する隣の車線に近付き過ぎていないかなどを容易に確認できる。
【0073】
よって、天井部が明るく騒音の著しいトンネル内にあっても、作業者W1,W2の接触事故やトンネルやその設備の破損等につながるバケット11のトンネル内壁への異常な接近を確実に防止することが可能になる。
【0074】
(他の実施形態)
図15は、バケット11の上部の四隅に上方へ向けて設ける検知棒13a~13dの他の実施形態の収納機能を概略的に示す斜視図である。
【0075】
前述の実施形態で説明した検知棒13a~13dは、その基部13a2~13d2を、折畳み機構15Bを介してバケット11の上部の四隅に設ける構成とした。
【0076】
これに対し、例えば図15に示すように、バケット11の上部の四隅に、当該バケット11の縁の肉厚を利用した縦長の検知棒収納穴17a~17dを設け、矢印xで示すように、検知棒13a~13dを、検知棒収納穴17a~17dに対し、上下方向にスライドさせて収納可能に構成してもよい。
【0077】
この場合、検知棒13a~13dの基部13a2~13d2は、例えば、検知棒収納穴17a~17dの内壁に上下方向に形成したレール部(図示せず)に対し、当該レール部に係合してスライド可能な台座(図示せず)を介して取り付ける構成とする。
【0078】
これによれば、検知棒13a~13dを検知棒収納穴17a~17dに収納できるだけでなく、例えば、前述のレール部に対し基部13a2~13d2の台座がスライドする位置を段階的に固定して保持する位置保持機構(図示せず)を設け、検知棒13a~13dが検知棒収納穴17a~17dから伸び出る長さを変更可能にすることで、検知棒13a~13dによりトンネル内壁との接触を検知する範囲を調節することもできる。
【0079】
なお、前述の実施形態の安全装置付き高所作業装置は、図1で示したように、安全装置付き高所作業車10である場合について説明したが、実施形態のブーム10Bおよびバケット11は、人が運転して走行する車両に対して設けられたものに限らず、例えば、地面の上を人の操作により移動させることが可能な車輪付きの台車上に設けるものとし、当該ブーム10Bおよびバケット11を設けた車輪付きの台車を、安全装置付き高所作業装置と称してもよい。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…安全装置付き高所作業車、10B…ブーム、11…バケット、12…操作部、12A…バケット/ブーム操作部、12B…検知棒ON/OFFスイッチ、13a~13d…上向検知棒、14a~14h…水平検知棒、13a1~13d1、14a1~14h1…検知棒先端部、13a2~13d2、14a2~14h2…検知棒基部、15…曲折機構、15B…折畳み機構、15D…検知棒曲折検知部、16a~16d…光投射部、17a~17d…検知棒収納穴、20…バケット/ブーム制御装置、21…制御部、22…バケット/ブーム駆動部、23…発光駆動部、24…光投射駆動部、R…道路、TC…トンネル天井、TS…トンネル側壁、L…投射光、Pa~Pd…光点。
図1
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