IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-溶接方法 図1
  • 特許-溶接方法 図2
  • 特許-溶接方法 図3
  • 特許-溶接方法 図4
  • 特許-溶接方法 図5
  • 特許-溶接方法 図6
  • 特許-溶接方法 図7
  • 特許-溶接方法 図8
  • 特許-溶接方法 図9
  • 特許-溶接方法 図10
  • 特許-溶接方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/14 20060101AFI20250114BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20250114BHJP
   B23K 11/20 20060101ALI20250114BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20250114BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20250114BHJP
   H01R 27/00 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
B23K11/14
B23K11/00 560
B23K11/20
H01R4/64 A
H01R43/02 B
H01R27/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021003570
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022001380
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020105971
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】龍末 朗
(72)【発明者】
【氏名】米山 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】園田 寿良
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110397(JP,A)
【文献】特開2014-157753(JP,A)
【文献】特許第6672510(JP,B1)
【文献】国際公開第2011/125649(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0266805(US,A1)
【文献】特開昭52-041147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/14
B23K 11/00
B23K 11/20
H01R 4/64
H01R 43/02
H01R 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属で形成された第1の部材と第2の金属で形成された第2の部材とで第3の金属で形成され、モールド部材に保持された第3の部材を挟んだ状態で、前記第1の部材に第1の電極を接触させ、前記第2の部材に第2の電極を接触させ、前記第1の電極と前記第2の電極との夫々に対して前記第3の部材に向けて力を加えて電流を流す溶接工程を備え、
前記第1の部材は、前記第3の部材に向かって突出して前記第3の部材に接触する少なくとも1つの第1の突出部を有し、及び/又は、前記第2の部材は、前記第3の部材に向かって突出して前記第3の部材に接触する少なくとも1つの第2の突出部を有し、
前記溶接工程において、前記第1の部材と前記第2の部材は前記モールド部材から離れており、前記第1の部材と前記第3の部材の第1の面とが接合され、前記第2の部材と前記第3の部材の前記第1の面とは反対側の第2の面とが接合されることを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
第1の金属で形成された第1の部材と第2の金属で形成された第2の部材とで第3の金属で形成され、モールド部材に保持された第3の部材を挟んだ状態で、前記第1の部材に第1の電極を接触させ、前記第2の部材に第2の電極を接触させ、前記第1の電極と前記第2の電極との夫々に対して前記第3の部材に向けて力を加えて電流を流す溶接工程を備え、
前記第3の部材は、第1の面に前記第1の部材に向かって突出して前記第1の部材に接触する少なくとも1つの第1の突出部を有し、及び/又は、前記第3の部材は、前記第1の面とは反対側の第2の面に前記第2の部材に向かって突出して前記第2の部材に接触する少なくとも1つの第2の突出部を有し、
前記溶接工程において、前記第1の部材と前記第2の部材は前記モールド部材から離れており、前記第1の部材と前記第3の部材の前記第1の面とが接合され、前記第2の部材と前記第3の部材の前記第2の面とが接合されることを特徴とする溶接方法。
【請求項3】
前記第1の突出部及び/又は前記第2の突出部は、点形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接方法。
【請求項4】
複数の前記第1の突出部と、
複数の前記第2の突出部と、
を備え、
前記複数の第1の突出部は、前記複数の第2の突出部よりも数が多いことを特徴とする請求項3に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第1の突出部は、前記溶接工程においてペルチェ効果により発熱が発生する突出部であり、
前記第2の突出部は、前記ペルチェ効果により吸熱が発生する突出部であることを特徴とする請求項4に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記第1の突出部及び/又は前記第2の突出部は、線形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記第1の突出部は線形状であり、
前記第2の突出部は点形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接方法。
【請求項8】
前記第1の突出部は、前記溶接工程においてペルチェ効果により発熱が発生する突出部であり、
前記第2の突出部は、前記ペルチェ効果により吸熱が発生する突出部であることを特徴とする請求項7に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記第3の部材は、インレットが有するアース端子であり、
前記第1の部材及び前記第2の部材は、前記インレットを保持する板金であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項10】
前記第3の部材は、基板に実装されるアース端子であり、
前記第1の部材及び前記第2の部材は、前記基板を有する電子装置が有する板金であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記第1の金属及び前記第2の金属は鉄であり、
前記第3の金属は銅であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記第1の部材と前記第2の部材が一体的に形成されるように、前記第1の部材と前記第2の部材は屈曲部によって繋がれていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項13】
前記屈曲部の断面積は、前記第1の部材の平面部の断面積および前記第2の部材の平面部の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の溶接方法。
【請求項14】
前記屈曲部に穴が形成されていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の溶接方法。
【請求項15】
前記第1の部材、前記第2の部材、前記第3の部材は、記録材に画像を形成する画像形成装置に備えられることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1に記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法に関し、特に、異種間の金属を結合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等の電子装置は、一般にインレットを有しており、インレットへ電源コードを嵌合することで電子装置に交流電力が供給される。電子装置の筐体に用いられている筐体板金は、電気的な性能を満足させるために、電子装置に設けられているインレットのアース端子と電気的に締結されている。ここで、電気的な性能とは、例えば、装置内部に設けられた電気基板からの放射ノイズを遮断するためのシールド効果等である。筐体板金には、安価であることや加工のし易さ、入手が簡易である、比較的低い電気伝導率を有する、等の理由から、鉄が広く使用されている。一方、インレットのアース端子は、電流が流れることが前提であるため、低い電気伝導率であることが必須であり、また、入手が簡易である、かつ安価であることを理由に、銅が広く使用されている。
【0003】
インレットのアース端子と電子装置の筐体板金との電気的な締結方法においては、例えば特許文献1や特許文献2に示す構成が知られている。特許文献1には、筐体板金とインレットのアース端子とが、ねじによって締結された構成が記載されている。特許文献2には、筐体板金とインレットのアース端子とが、はんだ付けによって締結された構成が記載されている。また、例えば特許文献3には、アルミニウムとスチールのような融点が大きく異なる異種金属接合において、機械的強度を確保する方法が記載されている。すなわち、融点が高い金属で融点が低い金属を挟み込み、電極により加圧し電流を流すことで発生する熱により融点が低い金属を溶かし、融点が高い金属同士を接触させ溶接する方法である。
【0004】
更に、図8図9に示すような従来の異種間金属の結合方法も提案されている。この結合方法では、アース端子3を板金10の第1の部分10aと第2の部分10bとで挟み込んだ状態で、第1の電極20aと第2の電極20bに電流を流す。これにより、アース端子3と第1の部分10aの界面の接触抵抗と印加電流によりジュール熱が発生し、溶接部11aで溶接される。同様に、アース端子3と第2の部分10bの界面の接触抵抗と印加電流によりジュール熱が発生し、溶接部11bで溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3311061号公報
【文献】特許第5723992号公報
【文献】特表2016-523718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例では、アース端子3と第1の部分10a、第2の部分10bを面同士で接触させているため、接触抵抗が小さく、溶接に必要な熱量を得るために大きな電流を流す必要がある。また、発熱する領域(以下、発熱エリアという)が大きいために、アース端子3に付属しているモールド部4に熱が伝わり、モールド部4が溶解するおそれがある。さらに、異なる金属に電流を流してジュール熱によって溶接する際、ジュール熱の他に、接合点ではペルチェ効果による発熱と吸熱が起こる。従来例の様にアース端子3を第1の部分10aと第2の部分10bとで挟み込んで、2つの接合点で溶接を行う場合、ペルチェ効果により一方の接合点では発熱、他方の接合点では吸熱が起こるおそれがある。この場合、熱バランスが崩れることにより接合が安定せず、片側の面のみが剥がれ、溶接不良が発生するという課題がある。このため、溶接不良を低減し、生産性を向上させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、溶接不良を低減し、生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0009】
(1)第1の金属で形成された第1の部材と第2の金属で形成された第2の部材とで第3の金属で形成され、モールド部材に保持された第3の部材を挟んだ状態で、前記第1の部材に第1の電極を接触させ、前記第2の部材に第2の電極を接触させ、前記第1の電極と前記第2の電極との夫々に対して前記第3の部材に向けて力を加えて電流を流す溶接工程を備え、前記第1の部材は、前記第3の部材に向かって突出して前記第3の部材に接触する少なくとも1つの第1の突出部を有し、及び/又は、前記第2の部材は、前記第3の部材に向かって突出して前記第3の部材に接触する少なくとも1つの第2の突出部を有し、前記溶接工程において、前記第1の部材と前記第2の部材は前記モールド部材から離れており、前記第1の部材と前記第3の部材の第1の面とが接合され、前記第2の部材と前記第3の部材の前記第1の面とは反対側の第2の面とが接合されることを特徴とする溶接方法。
(2)第1の金属で形成された第1の部材と第2の金属で形成された第2の部材とで、第3の金属で形成され、モールド部材に保持された第3の部材を挟んだ状態で、前記第1の部材に第1の電極を接触させ、前記第2の部材に第2の電極を接触させ、前記第1の電極と前記第2の電極との夫々に対して前記第3の部材に向けて力を加えて電流を流す溶接工程を備え、前記第3の部材は、第1の面に前記第1の部材に向かって突出して前記第1の部材に接触する少なくとも1つの第1の突出部を有し、及び/又は、前記第3の部材は、前記第1の面とは反対側の第2の面に前記第2の部材に向かって突出して前記第2の部材に接触する少なくとも1つの第2の突出部を有し、前記溶接工程において、前記第1の部材と前記第2の部材は前記モールド部材から離れており、前記第1の部材と前記第3の部材の前記第1の面とが接合され、前記第2の部材と前記第3の部材の前記第2の面とが接合されることを特徴とする溶接方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接不良を低減し、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の板金の突出部の構成を示す図
図2】実施例1の板金の突出部の構成を示す図
図3】実施例2の板金の突出部の構成を示す図
図4】実施例2の板金の突出部の構成を示す図
図5】実施例4の電子装置としての画像形成装置の構成を示す図
図6】実施例4のインレット、板金、基板の構成を示す図
図7】実施例4の板金、アース端子の構成を示す図
図8】従来例のインレットと板金の構成を示す図
図9】従来例の異種間金属の溶接工程を示す図
図10】実施例3の構成を示す図
図11】実施例3の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[従来の溶接方法]
以下に説明する実施例との比較のために従来の異種間金属の溶接方法について図8図9を用いて説明する。図8(a)(b)は、インレット5の構成を説明する図である。図8(a)は、インレット5に電源ケーブル(不図示)を挿入する方向から見た図であり、図8(b)は、図8(a)を反対側から見た図である。インレット5は、インレット端子1、2、アース端子3、モールド部4を有している。なお、アース端子3は銅製の端子である。インレット端子1、2は交流電源(不図示)から電流が供給される端子である。アース端子3は電子装置のグランド(以下、GNDとする)となる板金(以下、フレームGNDともいう)に接続される端子である。モールド部4はインレット端子1、2及びアース端子3を固定するための部材である。
【0013】
図8(c)はインレット5と電子装置が有する板金10とが接続された構成を示した図である。板金10はインレット5のモールド部4を保持すると共に、アース端子3を第1の部分10aと第2の部分10bとで挟み込んだ構成になっている。すなわち、第1の部分10a及び第2の部分10bは板金挟み込み部ともいえる。なお、板金10は鋼製である。ここで、板金10は、第1の部分10a、第2の部分10b、部分10c、部分10d、屈曲部10eを有している。部分10dは、インレット5を避けつつアース端子3の先端(モールド部4とは反対側の端部)に向かって部分10cから連続してのびている。第1の部分10aは、部分10dに連続しており、アース端子3の第1の面3a(以下、面3aという)に接している。第2の部分10bは、屈曲部10eを介して第1の部分10aに連続しており、アース端子3の面3aとは反対側の第2の面3b(以下、面3bという)に接している。このようにして、第1の部分10a及び第2の部分10bは板金10(詳細には部分10c)と一体に構成されている。そして、電子装置の板金10、詳細には第1の部分10aと第2の部分10bとが、インレット5のアース端子3を挟み込むように配置されている。アース端子3は板金10の第1の部分10aと第2の部分10bに溶接される。
【0014】
図9はアース端子3と第1の部分10a、第2の部分10bとを溶接する手順(溶接工程)を断面図で示した図である。なお、屈曲部10eは不図示としている。図9(a)は溶接を行う前の状態を示している。第1の電極20aと第2の電極20bは、いずれも先端部の角がC面取りされた円柱形状の電極であり、アース端子3と第1の部分10a、第2の部分10bに電流を流す部材である。図9(b)は第1の電極20aと第2の電極20bとによってアース端子3と第1の部分10a、第2の部分10bが図9(b)の矢印方向に加圧されている状態を示している。図9(b)の状態で第1の電極20aから第2の電極20bに電流を印加する。なお、電流の方向は逆でも良い。図9(c)は電流印加後、アース端子3の面3aと第1の部分10aとが溶接され、アース端子3の面3bと第2の部分10bとが溶接された状態を示した図である。第1の電極20a及び第2の電極20bに電流を印加すると、アース端子3の面3aと第1の部分10aの界面の接触抵抗と電流によってジュール熱が発生し、溶接部11aで溶接される。同様に、アース端子3の面3bと第2の部分10bの界面の接触抵抗と電流によってジュール熱が発生し、溶接部11bで溶接される。
なお、アース端子3として銅製の端子、板金10として鋼製のものを例に説明したが、これ以外の異種金属で構成することも可能である。
【実施例1】
【0015】
実施例1の異種金属接合構成を図面に則して説明する。実施例1では、溶接に必要な熱量を得るための電流値を低減し生産性を向上させる構成、及び金属材に付属しているモールド部材の溶解を防止する構成について説明する。なお、インレット5の構成は図8(a)(b)と同様であり、説明を省略する。また、電子装置(不図示)が備える板金の構成は図8(c)と同様である。なお、実施例1では板金を板金30とする。図1図2は、実施例1の板金30、32、34、36のアース端子3との溶接部分の構成を説明した図である。
【0016】
[板金の構成]
電子装置(不図示)はインレット5と板金30とを備えている。板金30は、第1の部分30a、第2の部分30b、屈曲部30eを有している。なお、板金30も、図9で説明した部分10c、10dに相当する部分を有するものとし、後述する板金32、34、36についても同様とする。第1の部分30aは、第1の金属である鉄で形成された第1の部材であり、第2の部分30bは、第2の金属である鉄で形成された第2の部材である。なお、アース端子3は第3の金属である銅で形成された第3の部材である。第1の部分30aは、アース端子3の面3aに接する部分である。第2の部分30bは、屈曲部30eを介して第1の部分30aに連続しており、アース端子3の面3bに接する部分である。電子装置の板金30、詳細には第1の部分30aと第2の部分30bとが、インレット5のアース端子3を挟み込むように配置されている。アース端子3は板金30の第1の部分30aと第2の部分30bに溶接される。
【0017】
図1(a)では、第1の部分30a、第2の部分30bのそれぞれ内面(アース端子3と接触する面)側に突出するように点形状の第1の突出部である突起部31a、第2の突出部である突起部31bがそれぞれ設けられている。第1の部分30aに突起部31aを、第2の部分30bに突起部31bをそれぞれ設けることにより、突起部を設けない従来例よりも少ない電流値で、溶接に必要な熱量を発生させることができる。これは、アース端子3の面3aと第1の部分30aの界面の接触抵抗、及び、アース端子3の面3bと第2の部分30bの界面の接触抵抗がそれぞれ増大するためである。これにより、生産性を向上させることができる。また、発熱エリアを局所的にすることができ、アース端子3に付属しているモールド部4の溶解を防止することができる。
【0018】
なお、図2(a)の突起部31a(又は突起部31b)は、円錐形状としているが、他の形状であってもよく、溶接前のアース端子3の面3a(又は面3b)と点で接触するような形状であればよい。また、突起部31aの位置は、第1の電極20aが第1の部分30aと接する領域の略中央部に設けられることが好ましいが、第1の電極20aが第1の部分30aと接する領域内に配置されればよい。突起部31bの位置も同様に、第2の電極20bが第2の部分30bと接する領域の略中央部に設けられることが好ましいが、第2の電極20bが第2の部分30bと接する領域内に配置されればよい。
【0019】
(突起部の形状の変形例)
図1(b)では突起部の形状を変更した構成を示している。板金32は、第1の部分32aと第2の部分32bと屈曲部32eとを有する。第1の部分32aには、第1の部分32aの内面側に突出する線形状の第1の突出部である突起部33aが設けられている。また、第2の部分32bには、第2の突出部である第2の部分32bの内面側に突出する線形状の突起部33bが設けられている。図1(a)の構成と比べて接触抵抗が低くなり、溶接に必要な電流は増加するものの、接合面積が大きくなる分、接合強度を高めることができる。
【0020】
なお、第1の部分32a(又は第2の部分32b)に1つの突起部33a(又は突起部33b)を設けたが、突起部33a(又は突起部33b)が複数に分割されていてもよい。また、第1の部分32a(又は第2の部分32b)に複数の突起部33a(又は突起部33b)が設けられていてもよい。更に、図1(b)の突起部33a(又は突起部33b)は、かまぼこ形状としているが、他の形状であってもよく、溶接前のアース端子3の面3a(又は面3b)と線で接触するような形状であればよい。また、突起部33aの位置は、第1の電極20aが第1の部分32aと接する領域の略中央部に設けられることが好ましいが、第1の電極20aが第1の部分32aと接する領域内に配置されればよい。突起部33bの位置も同様に、第2の電極20bが第2の部分32bと接する領域の略中央部に設けられることが好ましいが、第2の電極20bが第2の部分32bと接する領域内に配置されればよい。
【0021】
図2は、板金34、36が屈曲部を有しない構成で、第1の部分と第2の部分とを別体とした構成を示している。図2(a)の第1の部分34aには、アース端子3と接触する面側に突出する点形状の突起部35aが設けられている。また、第2の部分34bには、アース端子3と接触する面側に突出する点形状の突起部35bが設けられている。
【0022】
また、図2(b)の第1の部分36aには、アース端子3と接触する面側に突出する線形状の突起部37aが設けられている。第2の部分36bには、アース端子3と接触する面側に突出する線形状の突起部37bが設けられている。図2では、更に板金34、36の使用量や加工費を低減することができる。
【0023】
以上説明した様に、アース端子3と板金30、32、34、36の第1の部分及び第2の部分の接触抵抗を増加させることで、溶接に必要な熱量を得るための電流値を低減し、生産性を向上させることができる。また、発熱エリアを局所的にすることで、金属材に付属しているモールド部材の溶解を防止することができる。実施例1では、板金30、32、34、36に突起部を設ける構成を説明したが、突起部をアース端子3に設ける構成や、板金とアース端子3の両方に設ける構成も、同様の効果が得られるため、適用可能である。また交流電源より電流が供給されるインレット端子1、2に適用しても良い。
【0024】
以上、実施例1によれば、溶接不良を低減し、生産性を向上させることができる。
【実施例2】
【0025】
実施例2では、ペルチェ効果による熱バランスの崩れが発生しても、安定した溶接を行うことができる構成について説明する。図3図4は、実施例2の板金40、42、44、46の第1の部分及び第2の部分の構成を説明した図である。
【0026】
[板金の構成]
図3(a)では、板金40において、第1の部分40aは屈曲部40eを介して第2の部分40bと接続されている。第2の部分40bには、第2の部分40bの内面(アース端子3と接触する面)側に突出する点形状の突起部41bが設けられている。一方、第1の部分40aには、第1の部分40aの内面側に突出する突起部は設けられていない。なお、突起部41bの形状や数、位置等については実施例1と同様である。
【0027】
この構成により、第1の部分40aとアース端子3の面3aの接触抵抗と、第2の部分40bとアース端子3の面3bの接触抵抗とが異なることとなる。具体的には、突起部41bがある方である第2の部分40bとアース端子3の面3bの接触抵抗の方が、突起部がない方である第1の部分40aとアース端子の面3aの接触抵抗よりも大きくなる。
【0028】
したがって、電流を印加した際に発生するジュール熱は、第2の部分40bとアース端子3の面3bの接合点で、より大きくなる。ペルチェ効果によって、一方の接合点では発熱、他方の接合点では吸熱が起こるため、ペルチェ効果による吸熱・発熱と、ジュール熱による発熱の合算が均等になる様に、ジュール熱を異ならせれば、安定した溶接を行うことができる。つまり、ペルチェ効果により発熱が起きる接合点では、ジュール熱が小さくなるように突起部を設けない第1の部分40aの構成とする。一方、ペルチェ効果により吸熱が起きる接合点では、ジュール熱を大きくするように突起部41bを設けた第2の部分40bの構成とすれば良い。
【0029】
(突起部の形状の変形例1)
図3(b)は、突起部を線形状とした構成を示している。板金42において、第1の部分42aは屈曲部42eを介して第2の部分42bと接続されている。第2の部分42bには、第2の部分42bの内面側に突出する線形状の突起部43bが設けられている。一方、第1の部分42aには、第1の部分42aの内面側に突出する突起部は設けられていない。この構成により、図3(a)の構成と同様、溶接時に発生するジュール熱を異ならせることができるため、同様の効果を得ることができる。
【0030】
(突起部の形状の変形例2)
図4(a)は、突起部の個数を変更した構成を示している。板金44において、第1の部分44aは屈曲部44eを介して第2の部分44bと接続されている。第2の部分44bには、第2の部分44bの内面側に突出する点形状の突起部45bが1つ設けられている。一方、第1の部分44aには、第1の部分44aの内面側に突出する点形状の突起部45aと突起部45cの2つが設けられている。ペルチェ効果により吸熱が起きる接合点では、ジュール熱が大きくなるように突起部を設ける数を少なくする(接触抵抗を大きくする)。一方、ペルチェ効果により発熱が起きる接合点では、ジュール熱が小さくなるように突起部を設ける数を多くする(接触抵抗を小さくする)。このように突起部を設ける数によって熱のバランスをとる。この構成により、図3(a)の構成と同様、溶接時に発生するジュール熱を異ならせることができ、同様の効果を得ることができる。ここで、突起部の個数は、1つと2つの組み合わせに限らず、個数が異なっていれば接触抵抗を異ならせることができ、同様の効果が得られる。
【0031】
(突起部の形状の変形例3)
図4(b)は、突起部の形状を変更した構成を示している。板金46において、第1の部分46aは屈曲部46eを介して第2の部分46bと接続されている。第2の部分46bには、第2の部分46bの内面側に突出する点形状の突起部47bが設けられている。一方、第1の部分46aには、第1の部分46aの内面側に突出する線形状の突起部47aが設けられている。
【0032】
点形状の突起部47bはアース端子3の面3bと点で接触し、線形状の突起部47aはアース端子3の面3aと線で接触する。このため、線形状である突起部47aがある第1の部分46aとアース端子3の面3aの接触抵抗の方が、点形状の突起部47bがある第2の部分46bとアース端子3の面3bの接触抵抗よりも小さくなる。ペルチェ効果により吸熱が起きる接合点では、ジュール熱が大きくなるように点形状の突起部とし、ペルチェ効果により発熱が起きる接合点では、ジュール熱が小さくなるように線形状の突起部とする。この構成においても、図3(a)の構成と同様、ジュール熱を異ならせることができ、同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上説明した様に、アース端子3と第1の部分及び第2の部分の2つの接合点の接触抵抗を異ならせることで、ペルチェ効果による熱バランスの崩れが発生しても、安定した溶接を行うことができる。また、上述した構成をアース端子3に設ける構成としてもよい。以上、実施例2によれば、溶接不良を低減し、生産性を向上させることができる。
【実施例3】
【0034】
実施例3では、インレットアース端子と溶接される平面部と折り曲げ部を有する異種金属接合部材において折り曲げ部の断面積を平面部の断面積よりも小さくすることを特徴としている。図10は、本実施例におけるインレット板金10の溶接部の構成を説明した図である。
【0035】
60aと60bはインレットアース端子3を挟み込む平面部であり、60cは折り曲げ部である。61は折り曲げ部60cに設けられた穴である。S1は折り曲げ部60cの断面積であり、S2は平面部60a、60bの断面積である。穴61を設けることにより、断面積S1は断面積S2よりも小さくなり(S1<S2)、穴がない従来構成よりも溶接後のインレット板金10の弾性力を低減させることができる。また、溶接時に流れる溶接に寄与しない電流I2は、折り曲げ部60cの断面積S1が小さくなることにより、経路の抵抗値が増加し、電流I2を低減させることができる。
【0036】
以上説明した様に、折り曲げ部60cに穴61を追加することで、溶接後のインレット板金10の弾性力を低減し、溶接部の剥がれを防止することができる。また、溶接に寄与しない無駄な電流I2を低減し、生産性を向上させることができる。本実施例では、折り曲げ部60に穴を1つ追加する構成を説明したが、穴を複数設ける構成でも同様の効果が得られるため、穴を複数設ける構成とすることも可能である。
【0037】
また、他の構成として穴を設けずに断面積を小さくする構成を図11に示す。図11の70aと70bはインレットアース端子3を挟み込む平面部であり、70cは折り曲げ部である。W1は折り曲げ方向と直交する方向における、折り曲げ部40cの曲げ幅であり、W2は直交する方向における平面部70aと平面部70bの曲げ幅である。S3は折り曲げ部70cの断面積であり、S4は平面部70a、70bの断面積である。折り曲げ部70cの曲げ幅W1は、平面部70aと平面部70bの曲げ幅W2よりも小さい構成となっている(W1<W2)。これにより、断面積S3は断面積S4よりも小さくなっており(S3<S4)、断面積を小さくしない構成よりも溶接後のインレット板金10の弾性力を低減させることができる。また、溶接時に流れる溶接に寄与しない電流I2は、折り曲げ部70cの断面積S3が減ることにより、経路の抵抗値が増加し、電流I2を低減させることができる。
【0038】
以上説明した様に、折り曲げ部70cの曲げ幅W1を小さすることで、溶接後のインレット板金10の弾性力を低減し、溶接部の剥がれを防止することができる。また、溶接に寄与しない無駄な電流I2を低減し、生産性を向上させることができる。
【実施例4】
【0039】
実施例4では、実施例1乃至3の異種金属接合構成を、電子装置の一例としての画像形成装置に用いられる電源基板に実装されるアース端子に適用した構成について説明する。
【0040】
[レーザビームプリンタの説明]
図5に画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ1000(以下、プリンタ1000という)は、感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030を備えている。感光ドラム1010は、静電潜像が形成される像担持体である。帯電部1020は、感光ドラム1010を一様に帯電する。現像部1030は、感光ドラム1010に形成された静電潜像をトナーにより現像することでトナー像を形成する。感光ドラム1010上(像担持体上)に形成されたトナー像をカセット1040から供給された記録材としてのシートPに転写部1050によって転写し、シートPに転写した未定着のトナー像を定着器1060によって定着してトレイ1070に排出する。この感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030、転写部1050が画像形成部である。また、プリンタ1000は、電源装置1080を備え、電源装置1080からモータ等の駆動部と制御部5000へ電力を供給している。プリンタ1000は、筐体板金7と、筐体板金7とビス8により締結された筐体板金6と、筐体板金6によって保持されたインレット5と、を有している(図1参照)。インレット5に電源コード(不図示)が嵌合されることで、電源装置1080に交流電力が供給される。制御部5000は、CPU(不図示)を有しており、画像形成部による画像形成動作やシートPの搬送動作等を制御している。なお、筐体板金6は、実施例1の板金30、32、34、36や実施例2の板金40、42、44、46に相当する。なお、本発明の溶接方法を適用することができる画像形成装置は、図5に例示された構成に限定されない。
【0041】
[画像形成装置内部の接続構成]
図6は、インレット5、電源板金53、電源基板50、アース端子の構成を示した図である。電源板金53はプリンタ1000内の板金であり、電源基板50は電源装置1080の回路基板である。電源板金53は、接続部52、56、57を有している。電源基板50は、基板アース端子54、55を有している。
【0042】
インレット5のインレット端子1は束線51aによって電源基板50と接続され、インレット端子2は束線51bによって電源基板50と接続される。これにより交流電源(不図示)からの電力が電源基板50へ供給されている。また、インレット5のアース端子3は、接続部52で電源板金53と接続されている。なお、接続部52は、これまでの実施例で説明した第1の部分及び第2の部分とインレット5のアース端子3とが接続されている部分である。基板アース端子54、55は、電源基板50に実装された端子であり、電源板金53の接続部56、57にそれぞれ接続されている。また、電源基板50と電源板金53とはフレームモールド(不図示)で保持されている。
【0043】
[接続部56、57への応用]
図7は基板アース端子55と接続部57の詳細を示した図である。基板アース端子55は電源基板50の部品実装面に実装されており、裏側の半田面では半田付けにより基板パターンと接続されている。曲げ加工部55aは曲げ加工により形成された部分であり、電源基板50の面と略直交する方向に曲げ加工され、電源基板50の外側へ延びた形状となっている。ここで、曲げ加工部55aの一方の面を面551a、他方の面を面551bとする。電源板金53は、第1の部分53aと第2の部分53bと屈曲部53eとを備えている。
【0044】
電源板金53の第1の部分53aと第2の部分53bとは基板アース端子55の曲げ加工部55aを挟み込んでいる。第1の部分53aと曲げ加工部55aの面551aとが溶接により接合され、第2の部分53bと曲げ加工部55aの面551bとが溶接により接合されている。第1の部分53a及び第2の部分53bは、それぞれ実施例1、2で説明した突起部(不図示)を有している。なお、突起部の形状及び構成は、実施例1及び実施例2で説明した内容と同様であり、説明を省略する。また、基板アース端子54と接続部56も同様の構成であり、説明を省略する。
【0045】
以上の様な構成とすることで、画像形成装置に用いられる電源基板の基板アース端子にも本発明の突起部を適用可能である。また、突起部を基板アース端子に設ける構成としてもよい。以上、実施例3によれば、溶接不良を低減し、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
3 アース端子
30、32 板金
30a、32a 第1の部分
30b、32b 第2の部分
31a、31b、33a、33b 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11