(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】道路標示シート
(51)【国際特許分類】
E01F 9/512 20160101AFI20250114BHJP
【FI】
E01F9/512
(21)【出願番号】P 2021119611
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕太
(72)【発明者】
【氏名】柳井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 亮太郎
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-026915(JP,A)
【文献】特開2017-031795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00~9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されて設置面へ付着する道路標示シートであって、
施工時に加熱によって軟化、又は溶融する熱可塑性を有する基材シートと、
前記基材シートの設置面側に配置された接着剤層と、を備え、
前記基材シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有しており、
前記接着剤層は、ポリアミド又はポリエステルが主成分であり、
前記接着剤層の空隙率が
60%以上であ
って、
前記接着剤層の形態は、スポンジ状又は不織布の少なくとも何れか一方である
ことを特徴とする道路標示シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に線、文字、記号等を描き、これによって道路中央線、横断歩道等を明示するための道路標示シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面に線や文字等の標示を行うための道路標示シートに関しては種々の発明が開示されている。例えば特許文献1には、酢酸ビニル含有量が15~40重量%であってメルトインデックスが50~150のエチレン-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、着色剤、充填材、反射材等の添加剤が200~500重量部混入され、これらが均一に溶融混合されてシート状に成形された道路標示シート、が本件出願人によって開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、基材の一面にホットメルト接着剤を積層してなる道路面標示材であって、基材が90℃以上の軟化点を有するものであり、かつホットメルト接着剤が、23℃において106~1010Paの弾性率、及び90℃以下の軟化点を有するものであることを特徴とする道路面標示材、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-169048号公報
【文献】特開2001-26915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に係る道路標示シートや、特許文献2に係る道路面標示材が設置される道路としては、通常アスファルト舗装道路が想定されている。一方、このような道路標示シートが設置される設置面としてはコンクリート面もあり、このような表面状態が異なる設置面にも使用可能な道路標示シートが求められていた。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、設置面の状態によらず、施工性及び接着性に優れた標示シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、特定の樹脂成分を含む基材シートと、特定の樹脂成分を主成分とする接着剤層とからなる標示シートとすることによって、設置面として、アスファルト舗装面、コンクリート面においても、強固な接着強度を有するため、設置面によっては必要となっていた接着性を向上させるためのプライマーの塗布といった前処理が不要となり、もって、設置面の所定の位置に配置して、加熱処理により設置面に強固に接着する道路標示シートとなすことができることを知得し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路標示シートは、加熱されて設置面へ付着する道路標示シートであって、施工時に加熱によって軟化、又は溶融する熱可塑性を有する基材シートと、前記基材シートの設置面側に配置された接着剤層と、を備え、前記基材シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有しており、前記接着剤層は、ポリアミド又はポリエステルが主成分であり、前記接着剤層の空隙率が60%以上であって、前記接着剤層の形態は、スポンジ状又は不織布の少なくとも何れか一方であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置面の状態によらず、施工性に優れた道路標示シートとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る巾木装置の実施の一形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、10は道路標示シートである。
図1に示す道路標示シート10は、矩形状に形成している。
【0012】
図2は
図1のA-A断面図である。道路標示シート10は、基材シート20と、その下面に配置された接着剤層30とを有する二層からなる。本形態では、接着剤層30は、基材シート20の下面に接着剤を塗布して形成したものである。
【0013】
道路標示シート10は、路面などの設置面へ載置させて下面を当接させ、上面側から炎であぶる等の方法で加熱することで軟化又は溶融し、設置面へ付着させるように形成している。具体的には、基材シート20は、加熱によって軟化又は溶融し、加熱を停止すると冷えて再び固まる結合材を原料として含有している。詳細には、基材シート20は、前記結合材の他に、ワックスや、顔料などの添加剤を原料として含有しており、これらを均一に溶融混合させ、シート状に形成して、基材シート20を設けている。
【0014】
前記結合材としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体や、ロジンや、石油樹脂などを選択、又は組み合わせて用いることができ、本形態に係る基材シート20は、結合材としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を全体の10~30重量%程度配合させている。
【0015】
基材シート20の形態としては、例えば、一定幅の長尺体の形態や、基材シート20を複数組み合わせた形態が考えられる。後者の場合、具体的には、矩形状の基材シート20の厚さ方向に貫通する孔部を形成し、その孔部の外径形状に合わせて形成した別の基材シート20を嵌め込んで一体的に形成したものを挙げることができる。孔部の外径形状を、文字、数字、記号とするとともに、別の基材シート20の色調を変えることによって、通行人や通行車両に対する情報提供にも活用することができる。この色調を変えた基材シート20同士は、異なる顔料を含有するものであるが、他の原料はほぼ同じである。
【0016】
接着剤層30で用いられる接着剤は、エチレン-酢酸ビニル共重合体よりも、融点又は軟化温度が高い、ポリアミド又はポリエステルが利用できる。一般に、道路標示シート10を施工する際は、接着剤層30側を施工面側に配置して、基材シート20側から加熱して、道路標示シート10を溶融させた後、冷却して固化させることで、施工面に接着させるものである。施工面としては、通常、アスファルト舗装面やコンクリート面が想定されるところ、例えば、アスファルト舗装面に施工する場合、加熱時に、先に接着剤層が溶けてしまうと、基材シート20側との接着力が十分に発現していない状態で、溶けた接着剤層の一部がアスファルト用の凹部に流れ込んでしまうため、基材シート20と接着剤層30との接着力が部分的に低下するおそれがある。したがって、基材シート20に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体よりも、融点又は軟化温度が高い、ポリアミド又はポリエステルを用いることによって、接着剤層30が溶融又は軟化した状態においては基材シート20も溶融又は軟化しているので、接着力が十分に発現される。
【0017】
前述のような道路標示シート10の施工方法を勘案すると、接着剤層30の厚さは薄い方が好ましい。それは、接着剤層30が厚くなると、施工時に道路標示シート10を加熱した際、上方から熱が上がっていくため、施工面と接している接着剤層30の下方側まで十分に加熱するには時間を要するため、加熱時間不足により施工面に対する接着剤層30の接着力が十分に発現されない可能性や、加熱時間超過により基材シート20の変色等の熱劣化が生じる可能性がある。
【0018】
基材シート20の下面に薄い接着剤層30を形成する方法としては、例えば、基材シート20を押出成型により形成する場合に、接着剤層30を同時成型するものを挙げることができる。ただ、この方法は、基材シート20が一定幅の長尺体の形態の場合には利用できるが、基材シート20を複数組み合わせた形態に対しては前述の方法の利用は困難である。
【0019】
そこで、本発明においては、基材シート20に対して後から接着剤層30を形成するものとしている。具体的には、基材シート20の下面にスプレー塗装により薄いシート状の接着剤層30を直接形成する方法と、シート状の接着剤層30を形成して、それを基材シート20の下面に配置する方法を挙げることができる。
【0020】
薄いシート状の接着剤層30の形態としては、例えば、接着剤を溶剤に溶かして溶液とするか、接着剤を加熱して溶融させて、その溶液又は溶融物を基材シート20の下面にスプレー塗装として接着剤層30を形成するものを挙げることができる。
接着剤を加熱して溶融させた場合は、接着剤層30の厚さを薄くすることが一般的には難しいので、接着剤層30の形態としては、空隙を有しており、その空隙が上下方向及び幅方向に連通したスポンジ状に形成されたものが好ましい。
【0021】
空隙を有するスポンジ状の接着剤層30を形成することによって、単位面積当たりの接着剤層30の厚さが厚くなっても、単位面積当たりの接着剤成分の量(目付量)を少なくすることができる。したがって、道路標示シート10として、施工面状に配置して加熱した際に先に溶けた基材シート20が、溶ける前のスポンジ状の接着剤の空隙に侵入しやすくなるので、接着剤層30が下方まで溶けやすくなり、基材シート20と接着剤層30との界面における接着力の向上が期待できる。
【0022】
また、後者のシート状の接着剤層30を形成するものとしては、押出成形により薄いシート状の長尺体としたものや、接着剤成分の繊維からなる不織布を挙げることができる。不織布を用いた場合は、前述のスポンジ状の接着剤層30と同様な効果を期待することができる。
【0023】
なお、前述の接着剤層30において、薄いシート状の形態を用いる場合、一般に施工面であるアスファルト舗装面やコンクリート面は必ずしも平滑でないため、道路標示シート10を施工面上に配置した際、施工面と接着剤層30との間に隙間(空気)が存在する。このため、加熱操作により、空気が膨張して道路標示シート10の一部が破損したり、隙間が残存したままとなったりして接着力が十分に発現できないおそれがある。
一方、空隙を有するスポンジ状の接着剤層30や不織布による接着剤層30を用いた場合は、隙間(空気)が存在しても、接着剤層30の空隙から接着剤層30の側端部を伝って移動できるため、加熱後に接着剤層30が溶融する過程において残存する空気を外部へ排出できるので隙間を少なくすることが可能となる。
【0024】
次に、本発明に係る道路標示シート10の実施例を示す。
【0025】
(実施例1)
エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する基材シート20(積水樹脂社製、製品名「ジスラインS」、幅150mm)の下面に、接着剤としてダイマー酸系ポリアミド(ボステック社製、製品名「HM4229」)を塗布して接着剤層30を形成した。
具体的には、接着剤(ポリアミド)の固形物をホットメルトスプレーガンの容器に入れて、容器内を180~210℃に加熱し、ポリアミドを溶かして、基材シート20の下面を上面に配置した状態でその上に塗布してスポンジ状の接着剤層30を形成した。10秒間乾燥させ、接着剤層30が固化した道路標示シートを作成した。
【0026】
(接着剤層の見掛比重及び空隙率)
接着剤層30の見掛比重は、織物及び編物の生地試験方法(JIS L1096)に準拠して算出した。なお、接着剤層30の厚さについて、基材シート20から接着剤層30を剥離させることができる場合、又は別体の接着剤層30を用いる場合は、剥離させた接着剤層30の厚さを計測した。なお、基材シート20からの剥離が困難な場合は、道路標示シート10の厚さから基材シート20の厚さを減じたもの接着剤層30の厚さとした。また、施工面に接着剤を直接塗布して接着剤層30を形成する場合は空隙率を0%とみなした。本形態に係る道路標示シート10においては、基材シート20から接着剤層30を剥離させることが可能であり、剥離させた接着剤層30の厚さ(単位:μm)、接着剤成分の比重(g/cm3)、目付量(g/m2)、見掛密度(g/cm3)から空隙率(%)を算出した。各物性値の測定結果を表1に示す。なお、空隙率(%)は、以下の計算式に基づいて算出した。空隙率(%)=(1-見掛比重)/密度×100。
【0027】
(アスファルト接着性評価試験)
施工面としてアスファルト舗装面に作成した道路標示シート10を配置し、プロパンバーナー(火口径100mm、ガス圧0.03MPa、バーナー高さ100mm)で基材シート20の上面側からムラなく全体を加熱して道路標示シート10を溶かし、1時間養生した。続いて、建築研究所式接着試験機(建研式引張試験器、オックスジャッキ社製、製品名「LPT-1500」)を用いて接着力を計測するために、基材シート20に専用治具を接着剤(積水樹脂社製、製品名「ロードボンド」)で接着して、24時間養生して、前記建研式引張試験器にて上方に引っ張った時の力(kgf/cm2)の強さを測定し、これを接着力とした。接着性評価結果を表1に示す。
【0028】
(コンクリート接着性評価試験)
施工面としてコンクリート面に対して、前記アスファルト接着性評価と同様な接着性評価試験を実施し、施工面に対する接着力を測定した。接着力の測定結果を表1に示す。
【0029】
なお、以下の比較例1、比較例2に示すように、アスファルト舗装面、コンクリート面に対して各接着剤を塗布し、十分に乾燥させるために比較例1は1時間、比較例2は2時間の養生を行い、接着剤層30を形成した。続いて、その上に基材シート20を載置して、プロパンバーナーで基材シート20の上面側から加熱して基材シート20を溶かし、1時間養生した。その後、接着性評価試験を実施し、施工面と接着剤層30との接着力を測定した。比較例1をアスファルト舗装面の接着強度の基準、比較例2をコンクリート面の接着強度の基準として、それぞれの接着強度を100とし、表1における各実施例及び各比較例における接着強度は比較例1、比較例2の接着強度に対する相対値を記載した。
【0030】
【0031】
(実施例2)
エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する基材シート20(積水樹脂社製、製品名「ジスラインS」、幅150mm)に、接着剤層30としてポリエステルの不織布(呉羽テック社製、商品名「G4030」)を積層して道路標示シート10を得た。
実施例1と同様に接着剤層30の空隙率の算出と各種施工面に対する接着性評価試験を実施した。各物性値及び各接着性評価結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例2において、接着剤層30としてポリアミドの不織布(呉羽テック社製、商品名「LSN0030」)を用いた以外は、実施例2と同様にして道路標示シート10を得た。実施例1と同様に接着剤層30の空隙率の算出と各種施工面に対する接着性評価試験を実施した。各物性値及び各接着性評価結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、接着剤の代わりに、クロロプレンゴムを主成分とする溶剤型接着剤(積水樹脂社製、商品名「ジスラインSプライマー」)を用いた。各接着性評価においては、接着剤を基材シート20に塗布する代わりに、アスファルト舗装面に溶剤型接着剤を塗布し1時間養生して接着剤層30を形成後、その上に基材シート20を載置して、プロパンバーナーで基材シート20の上面側から加熱して基材シート20を溶かした。24時間養生後、実施例1と同様にアスファルト舗装面に対する接着性評価試験を実施した。なお、本形態に係る接着剤層30については、溶剤型接着剤を用いており、アスファルト舗装面に塗布するものであるから、比重、厚さ、目付、見掛比重等は測定しておらず、また、空隙は生じてないものとみなして空隙率を0%とした。各接着性評価結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
比較例1において、エポキシ樹脂を主成分とする別の溶剤型接着剤(積水樹脂社製、商品名「エポプライマーC」)を用いた。各接着性評価においては、接着剤を基材シート20に塗布する代わりに、コンクリート面に溶剤型接着剤を塗布し1時間養生して接着剤層30を形成後、その上に基材シート20を載置して、プロパンバーナーで基材シート20の上面側から加熱して基材シート20を溶かした。24時間養生後、実施例1と同様にコンクリート面に対する接着性評価試験を実施した。なお、本形態に係る接着剤層30については、溶剤型接着剤を用いており、コンクリート面に塗布するものであるから、比重、厚さ、目付、見掛比重等は測定しておらず、また、空隙は生じてないものとみなして空隙率を0%とした。各接着性評価結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
実施例1において、接着剤としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する接着剤(三洋ライフマテリアル社製、商品名「ピュアメルトP-502」)を用いてスポンジ状の接着剤層30を得た以外は、実施例1と同様にして道路標示シート10を得た。実施例1と同様に接着剤層30の空隙率の算出と各種施工面に対する接着性評価試験を実施した。各物性値及び各接着性評価結果を表1に示す。
【0036】
(比較例4)
実施例1において、接着剤としてナイロン系ポリアミド(アルケマ社製、商品名(Platamid HX2544)を用いたが、スプレーガンのノズルで詰まって基材シート20に塗布できなかった。そのため、各接着性評価はできなかった。
【0037】
(比較例5)
接着剤層30としてダイマー酸系ポリアミド(ボステック社製、製品名「HM4229」)を180℃の熱プレス機にて2分間プレスし、シート状に成形した。エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する基材シート20(積水樹脂社製、製品名「ジスラインS」、幅150mm)に接着剤層30を積層して道路標示シート10を得た。なお、本形態に係る接着剤層30については、空隙は生じてないものとみなして空隙率を0%とした。施工面としてアスファルト舗装面に接着剤層30と基材シート20を順に配置して、プロパンバーナーで基材シート20の上面側から加熱して溶かし、24時間間養生した。続いて、接着性評価試験を実施し、施工面に対する接着強度を測定した。接着性評価結果を表1に示す。
【0038】
比較例1、比較例2においては、接着剤の養生に比較例1は1時間、比較例2は2時間要する。すなわち、接着剤の塗布作業と基材シート20の施工作業が分離されているが、実施例1~実施例3は、接着剤の塗布作業と基材シート20の施工作業を実質的に同時に行うことができるので、施工性が優れる上、接着強度が優れたものとなっている。
【0039】
実施例1~実施例3の方が比較例1、比較例2と比べて接着強度が高い理由としては、接着剤層30の形態の違いが影響したものと考えられる。具体的には、道路標示シート10を施工する際は基材シート20側から加熱するので、基材シート20が先に溶けて、接着剤層30は後から溶ける。実施例1~実施例3は、接着剤層30の空隙率が50%を超えており、接着剤層30の空気は、接着剤層30の側端部に伝って移動できるので、接着剤層30中に残存しうる空気量を減らし、接着力への影響を減らすことができる。また、溶けた基材シート20が空隙内に侵入しうるので、基材シート20と接着剤層30との接触面積が大きくなって接着力が高まるものと考えられる。更に、基材シート20と接着剤層30との接触面積も増えることで、加熱時に接着剤層30が溶けやすくなり、施工面に対する接着力が発現しやすくなったものと考えられる。
【0040】
実施例1と比較例5とを比較すると、接着剤層30の材質としては同じであるが、接着剤層30の形態が空隙を有するスポンジ状の形態か、空隙がない薄いシート状の形態かの点で異なったものであり、アスファルト舗装面に対する接着強度において、比較例5は実施例1に比べて30%以上低下している。前述のように、接着剤層30が薄いシート状の形態である場合は、施工面と接着剤層30との間で隙間(空気)が生じると、外部に空気が抜けにくいので、接着力が十分に発現しなかったものと思われる。
【0041】
比較例3は、接着剤層30の接着剤の主成分として、基材シート20に含有されるエチレン-酢酸ビニル共重合体と同じ樹脂成分を用いたものであり、実施例1と同様に空隙を有するスポンジ状の接着剤層30であるが、コンクリート面に対する接着力は実施例1~実施例3、及び比較例2よりも劣るものであった。
【符号の説明】
【0042】
10 道路標示シート
20 基材シート
30 接着剤層