(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20250114BHJP
A61F 13/493 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
A61F13/56 200
A61F13/493
(21)【出願番号】P 2021138053
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高石 美奈
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-068345(JP,A)
【文献】特開2015-142685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/56
A61F 13/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、前記股間部から前側へ延び出た腹側部分と、前記股間部から後側へ延び出た背側部分と、
前記背側部分の両側部に設けられ、幅方向外側へ延在した止着テープと、を有し、
前記止着テープは、
背側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な背側伸縮部材と、
股間側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な股間側伸縮部材と、
前記背側伸縮部材と前記股間側伸縮部材の間を架橋した、前記腹側部分の外面に止着可能な架橋部材と、を
有し、
前記架橋部材は、
幅方向に隣合せて設けられた複数の架橋構成要素を有し、
製品状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が設けられておらず、
前記止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が生じる、ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
股間部と、前記股間部から前側へ延び出た腹側部分と、前記股間部から後側へ延び出た背側部分と、
前記背側部分の両側部に設けられ、幅方向外側へ延在した止着テープと、を有し、
前記止着テープは、
背側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な背側伸縮部材と、
股間側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な股間側伸縮部材と、
前記背側伸縮部材と前記股間側伸縮部材の間を架橋した、前記腹側部分の外面に止着可能な架橋部材と、を有し、
前記架橋部材は、
幅方向に隣合せて設けられた複数の架橋構成要素を有し、
製品状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が設けられており、
前記止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に設けられた前記空隙が大きくなる、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記止着テープは、
背側に設けられた背側止着テープと、
股間側に設けられた股間側止着テープと、を有し、
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材は前記股間側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい請求項1
または2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材が接着されているとともに、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材が接着されており、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積が、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材の
接着面積よりも小さい、請求項
3記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積が、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積よりも小さい、請求項
3または
4記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記止着テープは、
背側に設けられた背側止着テープと、
股間側に設けられた股間側止着テープと、を有し、
前記股間側止着テープにおいて、
前記股間側伸縮部材は前記背側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい請求項1
または2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記股間側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材が接着されているとともに、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材が接着されており、
股間側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積が、前記背側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積よりも小さい、請求項
6記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記股間側止着テープにおいて、
股間側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積が、前記背側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積よりも小さい、請求項
6または
7記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつの背側部分の両側部に設けた止着テープをおむつの腹側部分の外面に止着する使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から市販されているテープタイプ使い捨ておむつは、おむつの背側部分の両側部に外方へ突出するファスニング基材シートを設け、このファスニング基材シートから外方に突出する止着テープを設けたものが一般的である。おむつを身体に密着させるために、おむつの背側部分の両側部に前記ファスニング基材シートおよび止着テープをそれぞれ前後方向に2つずつ設けたものが多い。
【0003】
この市販されているテープタイプ使い捨ておむつの装着方法は、着用者が任意に決めることができるが、以下の2通りの方法が大勢である。
【0004】
1つ目の装着方法は、上下2段の止着テープを略平行の状態でおむつの腹側部分の外面に止着する「通常止め」である。この装着方法は、着用者が標準的な体型である場合や肥満体型である場合によく見られる。
【0005】
2つ目の装着方法は、上下2段の止着テープを互いに交差させるようにしながらおむつの腹側部分の外面に止着する「クロス止め」である。この装着方法は、着用者が痩せ型である場合によく見られる。
【0006】
前記「通常止め」を行った場合、使い捨ておむつが装着者の身体に密着しづらいため、装着中に使い捨ておむつが重力によってズレ落ちてしまう可能性がある。また、使い捨ておむつと装着者の背中(特に、装着者の背骨付近)との間に隙間が生じやすく、その隙間部分から尿などの体液が漏れ出る(いわゆる「背漏れ」が発生する)可能性がある。このような問題を防止するため、着用者が標準的な体型である場合や肥満体型である場合もクロス止めが推奨される。
【0007】
他方、前記テープタイプ使い捨ておむつ以外にパンツタイプ使い捨ておむつも市販されている。このパンツタイプ使い捨ておむつは、少なくとも前身頃の胴周り部及び後身頃の胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体の内面に取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側縁部と後身頃の外装体の両側縁部とが溶着されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものが一般的である。近年はこのパンタイプ使い捨ておむつの後身頃の両側部にも止着テープを設け、この止着テープを前身頃の外面に止着させることで、おむつのフィット性を向上させたものもみられる。
【0008】
なお、本発明に関連する発明として以下のものがある。
特許文献1に開示されたテープタイプ使い捨ておむつは、背側の両側部に設けられたファスニングテープが腹側外面に係止されることで装着されるように構成されており、前記ファスニングテープは、前記背側の両側部に固定されたテープ取付部と、このテープ取付部から突出するテープ本体部とを有し、このテープ本体部に、表面に多数の係止ピンを有するフック材が幅方向に複数並設されるか、又は幅方向に複数のフック材に分割可能なフック材連結体が設けられており、かつ少なくともテープ本体部における前記フック材の間の部分が幅方向に弾性伸縮する伸縮部分とされている。
【0009】
この特許文献1には、以下の作用効果が開示されている。
特許文献1のおむつのファスニングテープは、先端部を摘まんで引張ると、伸縮部分が伸長してフック材間の間隔が広がるため、このフック材間隔を広げた状態で腹側外面に係止することができる。よって、全体としての係止面積を維持しつつ、個々のフック材の面積を小さくすることができるため、係止力を損ねることなく、フック材に起因する硬質な装着感を軽減することができる。特に、フック材の間の部分が伸縮するため、単に複数のフック材を設けるのとは異なり、各フック材が腹側外面に対してより深くしっかりと食い付き、かえって係止力は非常に高いものとなる。さらに、フック材の間の部分は柔軟な伸縮部分となるため、単に複数のフック材を設けるのとは異なり、身体表面の凹凸に対する追従性が顕著に向上し、例えば捻じれや曲りに対しても良好に追従する。
【0010】
特許文献2に開示された着用物品は、腹側部から股下部を亘り背側部に至る縦方向とこれに直交する幅方向を有し、物品本体と、その腹側部及び背側部の少なくとも一方の幅方向両側縁に配置された張出し部とを有する着用物品であって、前記張出し部は、シート部材と複数の弾性部材と複数の糸状部材とを有してなり、前記複数の弾性部材及び糸状部材はともに前記幅方向外方に向けて延び前記シート部材に配設されており、かつ前記弾性部材は伸長状態で配設され伸長状態解放時に収縮可能とされている。
【0011】
この特許文献2には、以下の作用効果が開示されている。
特許文献2の着用物品は、張出し部に適度な伸縮性を付与したことにより着用中の体勢の変化などによるお腹周りの圧迫を防ぐことができ、しかも装着するときに引っ張りすぎてしまうことをも防ぐことができるという優れた効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013‐074974号公報
【文献】特開2012‐016456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
おむつのフィット性を向上させるため、止着テープをおむつの腹側部分の外面に止着するときに、止着テープの部分を変形させて止着することが好ましい。例えばクロス止めを行う際に、止着テープの部分も斜め下方(または斜め上方)に変形させながら止着することで、フィット性をより高めることができる。また通常止めを行う際も、止着テープの部分を横方向に伸ばしやすくすることで、着用者が止着テープの部分を横方向により強く伸ばすようになり、結果としてフィット性を高めることができる。
【0014】
前記特許文献1に開示された使い捨ておむつのテープ本体部(ファスニングテープを配置した部分)には、フック材の間の部分が幅方向に弾性伸縮する伸縮部分が設けられているが、テープ本体部が一枚のシートになっているため、その変形方向や変形量には自ずと限界があり、おむつのフィット性を高めることに限界がある。
【0015】
前記特許文献2に開示された着用物品のファスニングテープの部分は全く変形しないため、おむつのフィット性を高めることに限界がある。
【0016】
そこで、本発明の主たる課題は、フィット性を向上させた使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(第1の態様)
股間部と、前記股間部から前側へ延び出た腹側部分と、前記股間部から後側へ延び出た背側部分と、
前記背側部分の両側部に設けられ、幅方向外側へ延在した止着テープと、を有し、
前記止着テープは、
背側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な背側伸縮部材と、
股間側に設けられ、幅方向外側へ延在した、幅方向に伸縮可能な股間側伸縮部材と、
前記背側伸縮部材と前記股間側伸縮部材の間を架橋した、前記腹側部分の外面に止着可能な架橋部材と、を有する、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、背側伸縮部材、股間側伸縮部材、およびそれらの部材の間を架橋した架橋部材を有する止着テープを設けている。特許文献1のようにテープ本体部が1枚のシート状になっていないため、おむつの腹側部分の外面に止着テープを止着する際、止着テープが変形しやすい。そのため、クロス止めをする際に、止着テープの部分を斜め下方(または斜め上方)に変形させながら止着することができ、特許文献1や2のおむつと比べて、フィット性をより高めることができる。また、通常止めをする際も、止着テープの部分を横方向に伸ばしやすくなるため、特許文献1や2のおむつと比べて、フィット性をより高めることができる。
【0019】
(第2の態様)
前記架橋部材は、
幅方向に隣合せて設けられた複数の架橋構成要素を有し、
製品状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が設けられておらず、
前記止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が生じる、前記第1の態様の使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、隣り合う架橋構成要素の間に空隙が生じる。特許文献1のようにテープ本体部が1枚のシート状になっている場合はこのような空隙が生じないが、このような空隙が生じる構造にすることで背側伸縮部材や股間側伸縮部材が変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0021】
(第3の態様)
前記架橋部材は、
幅方向に隣合せて設けられた複数の架橋構成要素を有し、
製品状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が設けられており、
前記止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、
隣り合う前記架橋構成要素の間に設けられた前記空隙が大きくなる、前記第1の態様の使い捨ておむつ。
【0022】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、製品状態で、隣り合う前記架橋構成要素の間に空隙が設けられており、さらに前記止着テープを幅方向外側へ引き伸ばした状態で、隣り合う前記架橋構成要素の間に設けられた前記空隙が大きくなる構成となっている。そのため、前記第2の態様よりも止着テープがさらに変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0023】
(第4の態様)
前記止着テープは、
背側に設けられた背側止着テープと、
股間側に設けられた股間側止着テープと、を有し、
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材は前記股間側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい前記第1~第3のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0024】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、背側止着テープにおける背側伸縮部材が股間側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい構成となっている。そのため、背側止着テープが斜め下方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0025】
(第5の態様)
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材が接着されているとともに、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材が接着されており、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積が、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積よりも小さい、前記第4の態様の使い捨ておむつ。
【0026】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、背側止着テープにおける背側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積が、股間側伸縮部材と架橋部材の接着面積よりも小さい構成となっている。そのため、背側止着テープが斜め下方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0027】
(第6の態様)
前記背側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積が、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積よりも小さい、前記第4または第5の態様の使い捨ておむつ。
【0028】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、背側止着テープにおける背側伸縮部材と架橋部材の重なり合った面積が、股間側伸縮部材と架橋部材の重なり合った面積よりも小さい構成となっている。そのため、背側止着テープが斜め下方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0029】
(第7の態様)
前記止着テープは、
背側に設けられた背側止着テープと、
股間側に設けられた股間側止着テープと、を有し、
前記股間側止着テープにおいて、
前記股間側伸縮部材は前記背側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい前記第1~第3のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0030】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、股間側止着テープにおける股間側伸縮部材が背側伸縮部材よりも外側へ伸びやすい構成となっている。そのため、股間側止着テープが斜め上方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0031】
(第8の態様)
前記股間側止着テープにおいて、
前記背側伸縮部材と前記架橋部材が接着されているとともに、前記股間側伸縮部材と前記架橋部材が接着されており、
股間側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積が、前記背側伸縮部材と前記架橋部材の接着面積よりも小さい、前記第7の態様の使い捨ておむつ。
【0032】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、股間側止着テープにおける股間側伸縮部材と架橋部材の接着面積が、背側伸縮部材と架橋部材の接着面積よりも小さい構成となっている。そのため、股間側止着テープが斜め上方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【0033】
(第9の態様)
前記股間側止着テープにおいて、
股間側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積が、前記背側伸縮部材と前記架橋部材の重なり合った面積よりも小さい、前記第7または第8の態様の使い捨ておむつ。
【0034】
(作用効果)
本態様の使い捨ておむつは、股間側止着テープにおける股間側伸縮部材と架橋部材の重なり合った面積が、背側伸縮部材と架橋部材の重なり合った面積よりも小さい構成となっている。そのため、股間側止着テープが斜め上方へ向かって変形しやすくなり、おむつのフィット性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のとおり本発明によれば、おむつのフィット性を向上させた使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明にかかる実施形態Aのおむつ(製品状態)を内面側からみた平面図である。なお、幅方向における左側及び右側は、背側から腹側を見たときの左側及び右側を示す。
【
図2】本発明にかかる実施形態Aのおむつ(製品状態)を裏面側からみた平面図である。
【
図5】(5A)
図1の右上に位置する止着テープの拡大図である。(5B)前記(5A)の止着テープを幅方向外側に引っ張った状態を示す図である。
【
図6】(6A)
図5の(5A)を裏面側からみた平面図である。(6B)
図5の(5B)を裏面側からみた平面図である。
【
図7】(7A)腹側部分の外面に設けたフロントターゲットテープに止着テープを止着した状態を示す平面図である。(7B)
図7の(7A)のP-P線の断面図である。
【
図8】(8A)本発明にかかる実施形態Bのおむつ(製品状態)を内面側からみたときの止着テープの拡大図である。止着テープ部分以外は
図1と同様である。(8B)前記(8A)の止着テープを幅方向外側に引っ張った状態を示す図である。
【
図9】(9A)本発明にかかる実施形態Cのおむつ(製品状態)を内面側からみたときの止着テープの拡大図である。止着テープ部分以外は
図1と同様である。(9B)前記(9A)の止着テープを幅方向外側に引っ張った状態を示す図である。
【
図10】本発明にかかる実施形態Dのおむつ(製品状態)を内面側からみたときの止着テープの拡大図である。止着テープ部分以外は
図1と同様である。
【
図11】本発明にかかる実施形態Cのおむつ(製品状態)を内面側からみたときの止着テープの拡大図である。止着テープ部分以外は
図1と同様である。
【
図12】(12A)伸縮部材を幅方向に最大限引っ張った状態における要部平面図である。(12B)前記(12A)の断面図である。(12C)装伸縮部材を幅方向に少々被引っ張った状態における断面図、(12D)は自然長状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
なお、本発明に係る使い捨ておむつを展開した状態で、着用者の肌に近い側の面を「内面」といい、遠い側の面を「外面」という。また、着用者に近い側を「内面側」といい、遠い側を「外面側」という。
【0038】
(テープタイプ使い捨ておむつ100)
図1、
図2は、本発明に係るテープタイプ使い捨ておむつの一例100を示しており、この使い捨ておむつ100は、裏面側に位置するバックシート1と肌に接触する透液性トップシート2との間に、吸収体3が介在されているものである。
【0039】
なお、股間部Cは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、殆ど多くの製品では前後方向中央部及びその前後近傍の部分である。具体的には、成人向けの使い捨ておむつの場合、製品の前後方向中央を基準として±150mmの範囲である。また、腹側部分(前側部分)Fは股間部Cよりも前側の部分を意味し、背側部分(後側部分)Bは股間部Cよりも後側の部分を意味する。
【0040】
(トップシート2)
トップシート2は、吸収体3の周囲より外側に延出しており、吸収体3側縁より外側に延在する部分がバックシート1にホットメルト接着剤等により固着されている。トップシート2としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。トップシート2に用いる不織布の繊維目付けは15~30g/m2であるのが好ましく、厚みは0.05~1mmであるのが好ましい。
【0041】
(吸収体3)
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。また、必要に応じて、吸収体3はクレープ紙CPにより包むことができる。また、吸収体3の形状は適宜定めることができるが、図示したような砂時計形状の他、長方形等のように、股間部の前側から後側まで延在する形状が好適である。吸収体3におけるパルプ目付けは100~500g/m2程度、厚みは1~15mm程度であるのが望ましい。また、高吸水性樹脂の目付けは0~300g/m2程度であるのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が少な過ぎると、十分な吸収能を与えることができず、多過ぎるとパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、ヨレや割れ等が発生し易くなる。
【0042】
(液不透過性シート15)
吸収体3の外側には、液不透過性シート15が吸収体3の周縁より若干食み出すように設けられている。この液不透過性シート15は、吸収体3に吸収された排泄物の裏面側への移動を遮断するものである。液不透過性シート15としては、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。バックシート1の単位面積あたりの重量は10~40g/m2であるのが好ましく、厚みは0.01~0.1mmであるのが好ましい。
【0043】
(バックシート1)
液不透過性シート15の外面は、不織布からなるバックシート1により覆われており、このバックシート1は、所定の食み出し幅をもって液不透過性シート15の周縁より外側に食み出している。バックシート1としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0044】
(セカンドシート)
図示しないが、吸収体3の内面に、尿などの逆戻りを防止するためのセカンドシートを設けても良い。セカンドシートの側縁から吸収体3が一部食み出すようにセカンドシートの幅を設けても良いし、吸収体3の側縁が食み出さないようにセカンドシートの幅を広げることもできる。セカンドシートとしては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0045】
おむつ100の内面の両側部(図示形態ではトップシート2の側縁部表面からその側方に延在する外装シート12の表面)には、バリヤーシート4の幅方向外側の部分が前後方向全体にわたり貼り付けられている。バリヤーシート4は、各種不織布(スパンボンド不織布が好適である)の他、バックシート1に用いられるものと同様のプラスチックフィルム、又はこれらの積層シートを用いることができるが、肌への感触性の点で、撥水処理を施した不織布が好適である。バリヤーシート4の幅方向中央側の部分は、前後方向両端部では物品内面(図示形態ではトップシート2表面)にホットメルト接着剤等の手段により固着されているが、これらの間の中間部は非固定の自由部分となっており、この自由部分の先端部(展開状態における幅方向中央側の端部)には、バリヤーシートの起立に寄与する起立弾性伸縮部材4Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この起立弾性伸縮部材4G(他の起立弾性伸縮部材や細長状弾性伸縮部材も同様)としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。この自由部分は、起立弾性伸縮部材4Gの収縮力が作用する結果、物品内面(図示形態ではトップシート2表面)に対して起立するバリヤーを構成する。この起立部分の基端はバリヤーシート4における幅方向外側の固定部分と内側の部分との境に位置する。このように、起立弾性伸縮部材4Gが収縮して生じるバリヤーのことを立体ギャザー40といい、この立体ギャザー40を構成するバリヤーシート4をギャザーシートともいう。
【0046】
(エンドフラップ部EF)
使い捨ておむつ100の前後方向LD両端部では、バックシート1、外装シート12、透液性トップシート2およびバリヤーシート4が吸収体3の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0047】
(フロントターゲットテープ6)
前記おむつの腹側表面には、幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が設けられている。このフロントターゲットテープ6に後述する止着手段5を止着することによって、おむつが身体に装着される。
【0048】
(サイドフラップ部SF)
使い捨ておむつ100の左右両側部では、バックシート1、外装シート12、透液性トップシート2およびバリヤーシート4が吸収体3の側縁よりも側方にそれぞれ延在し、吸収体3の存在しないサイドフラップ部SFが形成されている。各サイドフラップ部SFにおけるシート間(例えばバックシート1とトップシート2の間)(サイドフラップ部を構成するシートをサイドフラップシートともいう)には、腹側部分Fのウエスト側部分から背側部分Bのウエスト側部分まで、複数本の細長状弾性伸縮部材(図示しない)が前後方向LDに間隔を空けて平行に、かつそれぞれ長手方向に伸張した状態で挟持固定されている。
【0049】
サイドフラップ部SFのうち腹側部分F及び背側部分Bにそれぞれ位置する部分は、それらの間の股間部Cよりも幅方向WD外側に延び出ており、これらの部分が、おむつの胴回り部分となるウエスト側サイドフラップ部WSFをそれぞれ構成する。なお、ウエスト側サイドフラップ部WSFのうち、腹側部分Fに位置するものを腹側サイドフラップ部FSFといい、背側部分Bに位置するものを背側サイドフラップ部BSFという。
【0050】
背側サイドフラップ部BSFの両側部には、その側縁の上端部及び下端部近傍からそれぞれ突出する止着テープ5が取り付けられている。腹側部分Fのウエスト側端縁と背側部分Bのウエスト側端縁とが合わさるように、おむつ100の前後方向中央を境に二つ折りした状態では、腹側部分Fの腹側サイドフラップ部FSFの下縁は背側部分Bの下側の止着テープ5の下縁より股間側に位置するように、サイドフラップ部SFの寸法・形状及び止着テープ5の位置等が定められている。また、腹側部分Fの胴回り部表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼着されており、身体への装着に際しては、おむつ100を身体にあてがった状態で、両側の止着テープ5を腰の各側から腹側外面に回してフロントターゲットテープ6に止着する。フロントターゲットテープ6は省略することもでき、その場合、止着テープ5はおむつ外面(図示形態の場合バックシート1の外表面)に直に止着される。
【0051】
(基材シート8)
使い捨ておむつ100の背側部分Bの両端部には基材シート8が設けられている。例えば、この基材シート8をバリヤシート4とバックシート1の間に挟み込むようにして設けても良いし、図示形態のように、トップシート2とバックシート1の間に挟みこむようにして設けても良い。以上のように、基材シート8を厚み方向のどこに設けるかは特に限定されず、バリヤシート4、トップシート2、バックシート1および液不透過性シート15等の各シートのいずれかの間、または、最も内側に位置するシートの内側表面、もしくは、最も裏側に位置するシートの裏側表面に設けることができる。この基材シート8とバックシート1やトップシート2は、ホットメルト接着剤等により接着されている。この基材シート8は必ずしもバックシート1とトップシート2の間に設けなくても良い。具体的には、バックシート1の外面側やトップシート2の内面側に設けるようにしても良い。
【0052】
この基材シート8はホットメルト接着等によって基端側がおむつ本体に固着される。そして、基端側から先端側へ向かって延在するように設けられる。
【0053】
基材シート8は、複数枚の不織布を貼り合わせて形成することも、一枚の不織布で形成することもできる。この不織布としては公知のものを用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。特にオレフィン系繊維を用いたスパンボンド不織布、SMS不織布が好ましい。使用する不織布の坪量は適宜定めることができるが、着用者の肌に触れることと、一定の強度が必要になることから、高目付の不織布が望ましく、好ましくは50~100g/m2の坪量を有するのが好ましい。
【0054】
(止着テープ12)
前記基材シート8の先端側には、外方へ突出する上下2段の止着テープ12が設けられている。止着テープ12は、背側BSに設けられ、幅方向WD外側へ延在した、幅方向WDに伸縮可能な背側伸縮部材13Bと、腹側FS(股間側CSでもある)に設けられ、幅方向WD外側へ延在した、幅方向WDに伸縮可能な股間側伸縮部材13Cと、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの間を架橋した、腹側部分Fの外面に止着可能な架橋部材5を有している。基材シート8が幅方向WDに伸縮可能な伸縮部材からなるときは、この背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cは、基材シート8自体を外方へ突出させることによって形成しても良いし、基材シート8とは別体の部材を用意し、ホットメルト等によって、それを基材シート8と固着することによって形成しても良い。基材シート8が幅方向WDに伸縮しない部材からなるときは、基材シート8とは別体の部材を用意し、ホットメルト等によって、その部材を基材シート8と固着することによって、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cを形成することが好ましい。
【0055】
(背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13C)
背側伸縮部材13Bおよび股間側伸縮部材13Cとして、例えば伸縮シートを用いることができる。この伸縮シートは、例えば
図12に示すように、第1シート層20A、第2シート層20B、およびそれらの層20A、20B間に介在させた弾性シート30を設けたものを用いることができる。この伸縮シートは、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、間隔を空けて配列された多数の接合部41で弾性シート30を貫通する接合孔31を通じて接合された弾性シート伸縮構造となっている。図示しないが、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部分は、間隔を空けて配列された多数の接合部41で弾性シート30を介して接合されていてもよい。そして、この伸縮シートは、弾性シート30の収縮により幅方向WDに収縮しているとともに、幅方向WDに伸長可能である。
【0056】
より具体的には、弾性シート30を幅方向WDに伸長した状態で、幅方向WD及びこれと直交する前後方向LD(伸縮方向と直交する方向LD)にそれぞれ間隔を空けて、弾性シート30の接合孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数の接合部41を形成することにより、弾性シート伸縮構造を形成する。伸縮領域では弾性シート30が幅方向WDに途切れずに残り、かつこの弾性シート30の収縮力により第1シート層20A及び第2シート層20Bが収縮して収縮襞25が形成されるように第1接合部40を配置することによって、このような伸縮性を付与することができる。
【0057】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、柔軟性及び通気性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。
【0058】
また加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10~25g/m2程度とするのが好ましい。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部又は全部は、一枚の資材を折り返して対向させた一対の層であっても良い。もちろん、第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材を個別に設け、構成材を折り返しすることなく、第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材間に弾性フィルム30を介在させることもできる。
【0059】
弾性フィルム30も特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する熱可塑性樹脂フィルムであれば、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、幅方向WDにおける引張強度が8~25N/35mm、前後方向LDにおける引張強度が5~20N/35mm、幅方向WDにおける引張伸度が450~1050%、及び前後方向LDにおける引張伸度が450~1400%の弾性フィルム30であると好ましい。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20~40μm程度であるのが好ましい。
【0060】
シート接合部41における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合は、弾性シート30に形成された接合孔31を通じて接合される場合、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では、第1シート層20A及び第2シート層20Bは弾性シート30と接合されていないことが望ましい。
【0061】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合手段は特に限定されない。例えば、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合はホットメルト接着剤によりなされていても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合手段によりなされていても良い。
【0062】
背側伸縮部材13Bおよび股間側伸縮部材13Cとして、2層構造または複数層構造の不織布シートを用いることもできる。この不織布シートは、不織布シートを構成する任意のシートの間に細長状弾性伸縮部材が挟まれて配設され、この細長状弾性伸縮部材の伸縮作用によって、不織布シート全体が伸縮可能となっている。
【0063】
前記不織布シートのシートを構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。前記細長状弾性伸縮部材としては、例えば、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
【0064】
以上のような不織布シートは、特に、幅方向WDにおける引張強度が15~50N/35mm、前後方向LDにおける引張強度が10~20N/35mm、幅方向WDにおける引張伸度が30~80%、及び前後方向LDにおける引張伸度が40~140%のシートであると好ましい。不織布シートの厚みは特に限定されないが、200~700μm程度であるのが好ましい。
【0065】
なお、上下3段以上の止着テープ12を設けるようにしても良いが、製造の容易性や装着時の便宜を考慮すると段数は少ないほうが好ましく、上下2段からなるものが特に好ましい。上側の止着テープ12Aと下側の止着テープ12Bの間には、両止着テープ12A、12Bが離間した部分(谷部)が形成される。
【0066】
(架橋部材5)
前後方向LDにおいて、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの間に間隙16が設けられている。すなわち、前後方向LDにおいて背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの間に所定の間隔が空けられており、両部材13B、13Cは接するように配置されていない。そして、この間隙16を埋めるように、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cを架橋する架橋部材5が設けられている。この架橋部材5は前後方向WDに延在しており、図示形態では前後方向LDに延びた長方形になっているが、長方形に限られず、前後方向LDに延びた三角形や楕円形などの任意の形状にしてもよい。
【0067】
この架橋部材5の内面には粘着剤層や面ファスナー要素等の止着手段(図示しない)が設けられており、これらの止着手段を介して止着テープ12が腹側部分の外面に止着可能になっている。この粘着剤層としては、例えば、ポリアクリル酸エステルを主体としたアクリル系接着剤や、天然ゴムまたは合成ゴムの弾力性成分を主体とした粘着付与剤を主成分として、これに可塑剤、老化防止剤などが配合されているゴム系接着剤などを使用することができる。その他、ホットメルト接着剤なども使用可能である。また、面ファスナー要素としては、面ファスナーのフック材やループ材を用いることができる。なお、架橋部材5の内面に粘着剤層や面ファスナー要素等の止着手段を直接設けても良いが、架橋部材5と止着手段の間にシート等の中間部材を設けても良い。
【0068】
止着手段として面ファスナー要素を設けた場合、面ファスナー要素を介して、おむつの腹側表面に設けられたフロントターゲットテープ6に止着テープ12が脱着可能に止着する。例えば、止着テープ12に設けた面ファスナー要素をフック材とした場合、フロントターゲットテープはループ材とする。反対に、止着テープ12に設けた面ファスナー要素をループ材とした場合、フロントターゲットテープはフック材とする。図示形態では架橋部材5の内面にフック材を設けている。フック材の突起形状は公知のものを用いることができ、例えば鉤状、きのこ状、錯状を挙げることができる。なお、面ファスナー要素とフロントターゲットテープ6との剥離強度は、300~800gf程度になるようにすることが好ましい。
【0069】
なお、架橋部材5を腹側部分の外面に止着させやすくするため、
図5等に示すように背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの内面側に架橋部材5を取り付けることが好ましいが、反対に架橋部材5を背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの外面側に取り付けた形態にしてもよい。また
図5等に示す形態では、架橋部材5の前後方向LDの後側BS端部を背側伸縮部材13Bに取り付け、架橋部材5の前後方向LDの股間側CS端部を股間側伸縮部材13Cに取り付けているが、このような形態に限られるものでもない。たとえば、架橋部材5の前後方向LDの後側BS端部以外の後側部分を背側伸縮部材13Bに取り付け、架橋部材5の前後方向LDの股間側CS端部以外の股間側部分を股間側伸縮部材13Cに取り付けるようにしてもよい。
【0070】
また、図示形態では架橋部材5と背側伸縮部材13B(および股間側伸縮部材13C)の接合は接着剤によって行っているが、超音波シールや、ヒートシールなどの他の手段によって結合させてもよい。
【0071】
なお、各止着テープ12に設ける架橋部材5の数は任意定めることができる。
図5等に示す実施形態では1つの止着テープ12に対して5つの架橋部材5を設けているが、1つの止着テープ12に対して架橋部材5を1つだけ設けても良いし、2~4個、6個以上など、任意の数にしてもよい。なお、架橋部材5の内面には止着手段が設けられている。そのため、架橋部材5の面積がすべて同じであると想定した場合、架橋部材5の数を増やすほど止着力が高くなり、止着テープ12をしっかりと止めることができる。また、架橋部材5と背側伸縮部材13B(および股間側伸縮部材13C)は接着剤等で接合されているため、架橋部材5の面積がすべて同じであると想定した場合、架橋部材5の数を増やすほど、背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cが伸びにくくなる。以上のことから、1つの止着テープ12に対して設ける架橋部材5の数を3~7個にすることが好ましく、4~6個にすることがより好ましい。また、このときの架橋部材5の面積の平均値は、100~250mm
2/個にすることが好ましく、125~200mm
2/個にすることがより好ましい。
【0072】
図5の(5A)や
図6の(6A)に示す実施形態Aのように、製品状態で、隣り合う架橋部材5、5の間に間隙16を設けたり、
図8の(8A)に示す実施形態Bのように、製品状態で、隣り合う架橋部材5、5を互いに接するように配置し、間隙16を設けないようにすることができる。なお、隣り合う架橋部材5、5の間に間隙16を設けた方が、装着時に止着テープ12が変形しやすなる。その結果、止着テープ12をより任意の引き延ばした状態でフロントターゲットテープ6に止着することができるため、おむつのフィット性をより高めることができる。そのため、実施形態Bよりも実施形態Aの方が好ましい形態である。
【0073】
また、
図9に示す実施形態Cのように、前後方向LDにおいて、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cの間に中間伸縮部材13Mを設けてもよい。そして、この
図9の形態においては、架橋部材5を前後方向LDに2つに分けて配置している。実施形態Aや実施形態Bと比べて、実施形態Cは、架橋部材5が前後に分かれていることで、フロントターゲットテープ6に止着させる各架橋部材5の位置をより自由に決めることができ、その結果おむつのフィット性を向上させることができる。
【0074】
また、
図10に示す実施形態Dのように、架橋部材5と背側伸縮部材13Bを接合する接合領域19Bの面積(接着剤の面積。以下同様。)と、架橋部材5と股間側伸縮部材13Cを接合する接合領域19Cの面積(接着剤の面積。以下同様。)を変えることもできる。具体的には、背側の止着テープ12Bにおいては、架橋部材5と背側伸縮部材13Bを接合する接合領域19Bの面積が、架橋部材5と股間側伸縮部材13Cを接合する接合領域19Cの面積よりも小さくなるようにし、反対に股間側の止着テープ12Cにおいては、架橋部材5と背側伸縮部材13Bを接合する接合領域19Bの面積が、架橋部材5と股間側伸縮部材13Cを接合する接合領域19Cの面積よりも大きくなるようにすることが好ましい。接着剤が塗布された部分は固化して硬くなるため、接合領域19B、19Cの面積が大きくなるほど、背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cが伸長しづらくなる。そのため、
図10のような実施形態にすることで、股間側の止着テープ12Cが斜め上の引っ張り方向22の伸びやすくなり、背側の止着テープ12Bが斜め下の引っ張り方向22の伸びやすくなるため、いわゆるクロス止めが容易になる。
【0075】
前記実施形態Dでは、架橋部材5の裏面側全面を背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cに接着させるのではなく、その一部を接着させる形態を示した。このような態様のほか、
図11に示す実施形態Eのように、架橋部材5の裏面側全面を背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cに接着させる場合であっても、架橋部材5の形を変えることで、
図10と同様の作用効果を得ることができる。例えば、実施形態Eでは架橋部材5の形状を前後方向に長い二等辺三角形状としている。具体的には、背側の止着テープ12Bにおいては、架橋部材5の底辺が股間側伸縮部材13Cと重なり、架橋部材5の頂点が背側伸縮部材13Bと重なるように、股間側から背側へ向かって架橋部材5が次第に狭くなるような形状にしている。その結果、架橋部材5と背側伸縮部材13B(および股間側伸縮部材13C)の接地部分全体を接着すると仮定したときに、架橋部材5と背側伸縮部材13Bを接合する接合領域19Bの面積が、架橋部材5と股間側伸縮部材13Cを接合する接合領域19Cの面積よりも小さくなる。他方、股間側の止着テープ12Cにおいては、架橋部材5の底辺が背側伸縮部材13Bと重なり、架橋部材5の頂点が股間側伸縮部材13Cと重なるように、背側から股間側へ向かって架橋部材5が次第に狭くなるような形状にしている。その結果、架橋部材5と背側伸縮部材13B(および股間側伸縮部材13C)の接地部分全体を接着すると仮定したときに、架橋部材5と背側伸縮部材13Bを接合する接合領域19Bの面積が、架橋部材5と股間側伸縮部材13Cを接合する接合領域19Cの面積よりも大きくなる。このような形態にすることで、股間側の止着テープ12Cが斜め上の引っ張り方向22の伸びやすくなり、背側の止着テープ12Bが斜め下の引っ張り方向22の伸びやすくなるため、いわゆるクロス止めが容易になる。
【0076】
実施形態Dや実施形態Eは、架橋部材5と背側伸縮部材13B(股間側接着部材13C)を連結する接着剤の面積の大小によってクロス止めをしやすくするというものである。しかし、このような形態に限られるものではなく、背側伸縮部材13Bや股間側接着部材13Cの素材自体を変えることにより、実施形態Dや実施形態Eと同様の作用効果を得るようにしてもよい。例えば、背側の止着テープ12Bにおいては、背側伸縮部材13Bを股間側伸縮部材13Cよりも伸長しやすい素材にし、股間側の止着テープ12Bにおいては、股間側伸縮部材13Cを背側伸縮部材13Bよりも伸長しやすい素材にすることで、いわゆるクロス止めをしやすくしてもよい。
【0077】
(つまみ部14)
止着テープ12の幅方向WDの外側につまみ部14を設けることが好ましい。このつまみ部14は、例えば着用者が止着テープ12を操作する際につまむ部分である。このつまみ部14の形成は、例えば
図7等に示すように、背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cの内面に、これらの部材13B、13Cとは異なる任意の部材を接合し、この接合した部材をつまみ部14としても良い。つまみ部14となる任意の部材は、背側伸縮部材13Bや股間側伸縮部材13Cの裏面に接合してもよい。そのほか、背側伸縮部材13Bと股間側伸縮部材13Cとつまみ部14を構成する部材を一つの部材で構成してもよい。このように一つの部材で構成する場合、この部材は「コの字」形状となる。
【0078】
(接合手段)
各構成部材を接合する接合手段としては、接着剤を例示することができ、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0079】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0080】
・「前身頃」「後身頃」は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を境としてそれぞれ前側及び後側の部分を意味する。また、股間部は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を含む前後方向範囲を意味し、吸収体が括れ部を有する場合には当該括れ部を有する部分の前後方向範囲を意味する。腹側部分は、股間部よりも前後方向前側に位置する部分をいい、背側部分は股間部よりも前後方向後側に位置する部分をいう。
【0081】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0082】
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、製品の部分によっていずれか一方が前後方向となるものであり、他方が幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
【0083】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0084】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0085】
・「最大伸び」とは、伸縮方向EDの伸びの最大値(換言すれば第1シート層及び第2シート層が収縮や弛み無く平坦に展開した展開状態の伸び)を意味し、展開状態の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
【0086】
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域80、非伸縮領域70)における対象部分(例えばシート接合部40、接合孔31の開口、通気孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に伸縮構造を有する領域における「面積率」とは、展開状態の面積率を意味するものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。
【0087】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0088】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0089】
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J-B(測定範囲0~35mm)又は型式K-4(測定範囲0~50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
【0090】
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0091】
・「引張強度」及び「引張伸度(破断伸び)」は、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とする以外は、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法-」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS-G100Nを用いることができる。
【0092】
・「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法-」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により、弾性領域内で伸長するときに測定される引張応力(N/35mm)を意味し、伸長の程度は試験対象により適宜決定することができる。試験片は幅35mm、長さ80mm以上の長方形状とすることが好ましいが、幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。また、対象領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合であっても、伸長応力の大小を比較するのであれば、適宜小さい試験片でも同寸法の試験片を用いる限り少なくとも比較は可能である。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS-G100Nを用いることができる。
【0093】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0094】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0095】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【符号の説明】
【0096】
1…バックシート、2…(透液性)トップシート、3…吸収体、4…バリヤシート、4G…起立弾性伸縮部材、5…架橋部材、6…フロントターゲットテープ、8…基材シート、12…止着テープ、12A…背側の止着テープ、12B…股間側の止着テープ、13…伸縮部材、13B…背側伸縮部材、13C…股間側伸縮部材、13M…中間伸縮部材、14…つまみ部、15…液不透過性シート、16…間隙、19…接合領域、19B…背側接合領域、19C…股間側接合領域、20A…第一シート層、20B…第二シート層、22…引っ張り方向、25…収縮襞、30…弾性シート、31…接合孔、32…非接合部、40…立体ギャザー、41…接合部、100…(テープ式)使い捨ておむつ、F…腹側部分、C…股間部、B…背側部分、Z…腹側部分のうち、フロントターゲットよりも裏面側に位置する部分、EF…エンドフラップ部、、SF…サイドフラップ部、LD…前後方向、BS…背側(後側)、CS…股間側、FS…腹側(前側)、WD…幅方向、LS…左側、RS…右側