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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】加工支援装置および加工支援方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20250114BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20250114BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250114BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20250114BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20250114BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20250114BHJP
   B23K 26/342 20140101ALN20250114BHJP
【FI】
B23K31/00 F
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
G05B19/4155 N
B23K26/342
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021158952
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049294
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】國友 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 靖
(72)【発明者】
【氏名】大内 尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/234898(WO,A1)
【文献】特開2021-028073(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/00
G05B 19/4155
G05B 19/418
B23K 26/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材から最終品への加工を支援するための加工支援装置において、
加工工程特定指示を受け付ける入力部と、
前記加工工程特定指示に応じて、前記最終品への加工工程の候補である複数の加工工程候補を導出する候補導出部と、
前記複数の加工工程候補の加工工程を構成する複数の部分工程それぞれの部分加工時間を算出し、算出された前記部分加工時間を合算して、前記加工工程候補それぞれの全体加工時間を算出する加工時間算出部と、
前記全体加工時間に応じて、前記複数の加工工程候補から加工工程を選択する加工工程選択部と、
前記最終品が利用される環境において、他の機器との干渉が発生するかを判定する干渉判定部を有する加工支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工支援装置において、
前記加工工程は、
前記被加工材である素材から基材を形成する前工程切削加工工程、
前記基材に対して肉盛加工を施す肉盛工程および
前記肉盛加工が施された基材に対して、前記肉盛加工で生じる変形を減じる後工程切削加工工程で構成され、
前記加工時間算出部は、
前記前工程切削加工工程の前工程切削加工工程時間を算出する前工程切削加工工程時間算出部と、
前記肉盛工程の肉盛工程時間を算出する肉盛工程時間算出部と、
前記後工程切削加工工程の後工程切削加工工程時間を算出する後工程切削加工工程時間算出部と、
前記前工程切削加工工程時間、前記肉盛工程時間および前記後工程切削加工工程時間を合算し、前記全体加工時間を算出する全体加工時間算出部を有する加工支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加工支援装置において、
前記後工程切削加工工程時間算出部は、
前記肉盛加工が施された基材の変形量を推定し、
前記変形量と前記肉盛加工が施される前の基材の形状に基づいて、前記肉盛加工が施された基材の形状を推定し、
前記肉盛加工が施された基材の形状および前記最終品の形状に基づいて、前記後工程切削加工工程時間を算出する加工支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の加工支援装置において、
さらに、前記最終品が予め定められた許容誤差の範囲内であるかを判定する合否判定部を有する加工支援装置。
【請求項5】
被加工材から最終品への加工を支援するための加工支援装置を用いた加工支援方法において、
入力部により、加工工程特定指示を受け付け、
候補導出部により、前記加工工程特定指示に応じて、前記最終品への加工工程の候補である複数の加工工程候補を導出し、
加工時間算出部により、前記複数の加工工程候補の加工工程を構成する複数の部分工程それぞれの部分加工時間を算出し、算出された前記部分加工時間を合算して、前記加工工程候補それぞれの全体加工時間を算出し、
加工工程選択部により、前記全体加工時間に応じて、前記複数の加工工程候補から加工工程を選択し、
干渉判定部により、前記最終品が利用される環境において、他の機器との干渉が発生するかを判定する加工支援方法。
【請求項6】
請求項に記載の加工支援方法において、
前記加工工程は、
前記被加工材である素材から基材を形成する前工程切削加工工程、
前記基材に対して肉盛加工を施す肉盛工程および
前記肉盛加工が施された基材に対して、前記肉盛加工で生じる変形を減じる後工程切削加工工程で構成され、
前記加工時間算出部は、前工程切削加工工程時間算出部と、肉盛工程時間算出部と、後工程切削加工工程時間算出部と、全体加工時間算出部を有し、
前記前工程切削加工工程時間算出部により、前記前工程切削加工工程の前工程切削加工工程時間を算出し、
前記肉盛工程時間算出部により、前記肉盛工程の肉盛工程時間を算出し、
前記後工程切削加工工程時間算出部により、前記後工程切削加工工程の後工程切削加工工程時間を算出し、
前記全体加工時間算出部により、前記前工程切削加工工程時間、前記肉盛工程時間および前記後工程切削加工工程時間を合算し、前記全体加工時間を算出する加工支援方法。
【請求項7】
請求項に記載の加工支援方法において、
前記後工程切削加工工程時間算出部により、
前記肉盛加工が施された基材の変形量を推定し、
前記変形量と前記肉盛加工が施される前の基材の形状に基づいて、前記肉盛加工が施された基材の形状を推定し、
前記肉盛加工が施された基材の形状および前記最終品の形状に基づいて、前記後工程切削加工工程時間を算出する加工支援方法。
【請求項8】
請求項に記載の加工支援方法において、
前記加工支援装置は、さらに合否判定部を有し、
前記合否判定部により、前記最終品が予め定められた許容誤差の範囲内であるかを判定する加工支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工程を特定するための技術に関する。なお、加工工程には、生産工程、製造工程、製作工程も含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、被加工材に対する様々な加工が実施されている。例えば、加工技術の一種である積層造形技術の1つとして、ダイレクテッド・エナジー・デポジション(Directed energy deposition:DEDと記載する場合がある)が挙げられる。このDEDについて、図1図2を用いて説明する。図1は、DEDにおける積層物の造形方法の原理を示す概要図である。図2は、DEDで造形した積層物を示す概要図である。
【0003】
ここで、DEDは、レーザ金属堆積、レーザ粉体肉盛り、等と呼ばれる場合がある。DED方式では、基材1の面上を走査し、対象箇所にレーザヘッド2が粉末金属材料5(粉末、金属等と記載する場合がある)及びガス等の物質を供給しながら、レーザ光3を照射する。レーザ光3が照射された箇所では、基材1または粉末金属等5が溶融して溶融池4(melt pool)が形成される。その溶融池4が凝固することで、ビード6が形成される。このような加工を層毎に繰り返すことにより、基材1面上にビード6が蓄積され、造形物7が積層物として積層造形される。
【0004】
このようなDEDでは、被加工材や造形物に変形が生じることがある。このような変形に対応する技術として、特許文献1および特許文献2が提案されている。
【0005】
特許文献1には、「溶接変形の推定に必要な手作業による諸条件の入力作業を削減することができ、さらに実作業において発生する強制変位荷重の影響を考慮した溶接変形推定方法及び溶接変形推定装置」が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、「造形及び機械加工の精度を高め、製造コスト及び製造時間を抑えることが可能な積層造形物の余肉量設定方法、積層造形物の製造方法及び製造装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-80393号公報
【文献】特開2021-16988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
但し、特許文献1や2では、加工工程で生じる変形へ十分対応しきれないことがある。すなわち、変形を抑止しようと加工精度を向上させたり、変形後に再加工により変形を戻そうとすると、加工に手間や時間が掛かってしまう。
【0009】
例えば、上記DED方式で、円柱形状の基材に設けた凹部に積層造形を行う場合、造形物は冷却による熱収縮により変形し、円柱の回転中心軸が直線であったものから曲線へと変化し、その結果、再加工(矯正)などで肉盛後の加工時間が増大することがある。
【0010】
そこで、本発明では、肉盛加工工程を含む加工工程における加工時間の長期化を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、複数の部分工程で構成される加工工程の加工工程候補であって、基材の形状を含む加工工程候補を導出し、それぞれの部分工程の加工時間に基づいて、複数の加工工程候補から加工工程を選択する。
【0012】
より具体的には、被加工材から最終品への加工を支援するための加工支援装置において、加工工程特定指示を受け付ける入力部と、前記加工工程特定指示に応じて、前記最終品への加工工程の候補である複数の加工工程候補を導出する候補導出部と、前記複数の加工工程候補の加工工程を構成する複数の部分工程それぞれの部分加工時間を算出し、算出された前記部分加工時間を合算して、前記加工工程候補それぞれの全体加工時間を算出する加工時間算出部と、前記全体加工時間に応じて、前記複数の加工工程候補から加工工程を選択する加工工程選択部と、前記最終品が利用される環境において、他の機器との干渉が発生するかを判定する干渉判定部を有する加工支援装置である。
【0013】
また、本発明には、加工支援装置を用いた加工支援方法も含まれる。さらに、加工支援装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムやこれを格納する記憶媒体も含まれる。またさらに、加工支援装置を含む加工支援システムも本発明の一態様に含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、肉盛工程および切削工程を含む加工時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の背景技術であるDEDにおける積層物の造形方法の原理を示す概略図である。
図2】本発明の背景技術のDEDで造形した積層物を示す概要図である。
図3】本発明の一実施形態における素材の元形状を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における前工程切削加工を施した基材の形状を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態における肉盛加工を施した基材の形状を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態における後工程切削加工を施した基材(最終品)の形状を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態における課題を説明するための後工程切削加工を施した基材(軸部)の断面形状を示す断面図である。
図8】実施例1における前工程切削加工を施した基材1’の形状を示す斜視図である。
図9】実施例1~3における加工支援システムの機能ブロックを示す構成図である。
図10】実施例1における処理フローを示すフローチャートである。
図11】実施例1~3で用いられる加工工程情報を示す図である。
図12】実施例2における処理フローを示すフローチャートである。
図13】実施例2で用いられるノズル形状情報を示す図である。
図14】実施例3における処理フローを示すフローチャートである。
図15】実施例3で用いられる設計情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
まず、図3から8を用いて、本実施形態が対象とする素材、基材や積層造形方法について、説明する。
【0018】
まず、図3は、本実施形態で加工対象となる素材8の元形状を示す斜視図である。本実施形態では、素材8に対して、切削加工および肉盛加工を施して、最終的には図7に示す最終品へ加工することになる。つまり、素材8は、これら加工を施す前の被加工材を示す。本実施形態では、素材8として、丸棒を用いるが、他の角材などを用いてもよい。
【0019】
ここで、素材8から図7に示す最終品への加工する工程について、説明する。まず、本実施形態では、素材8に対して、切削工程などの除去加工を行い、キー溝9を形成する。この切削工程を前工程切削加工工程と称する。図4は、前工程切削加工を施した基材の形状を示す斜視図である。図4に示すように、基材1は、頭部1-1および軸部1-2からなる。また、軸部1-2に、キー溝9が設けられる。このために、素材8に対して、旋削加工などにより、軸部1-2を設ける。そして、軸部1-2に対して、溝加工などによりキー溝9が設けられる。このように、素材8に対して、前工程切削加工が施され、基材1が作成される。
【0020】
次に、図4の基材1に対して、肉盛加工が施される。図5は、肉盛加工を施した基材の形状を示す斜視図である。例えば、上述のDED方式の肉盛加工が施される。このために、キー溝9に積層物が供給され、肉盛部10が形成される。
【0021】
ここで、図5に示す肉盛加工後の基材1においては、余分な肉盛(積層物)が形成されることがある。このため、肉盛部10の一部を取り除く必要がある。そこで、本実施形態では、後工程切削加工を行う。図6は、実施形態における後工程切削加工を施した基材1、つまり、最終品の形状を示す斜視図である。このような後工程切削加工工程の結果、基材1は、図6に示すとおり、キー溝9の表面には肉盛部10が形成されて、最終品となる。
【0022】
以下、以上の加工における本実施形態の課題について、説明する。
<課題等(1)-変形量の増加>
上述の加工においては、基材1に変形量が増加するとの課題が生じる。以下、この点について、図7を用いて、説明する。図7は、本実施形態における課題を説明するための後工程切削加工を施した基材1(軸部1-2)の断面形状を示す断面図である。ここで、説明上の方向として、X方向、Y方向、Z方向を示す。X方向は円柱回転軸と平行する方向であり、Y方向はX方向と水平面を構成する直交する2つの方向である。Z方向は鉛直方向である。
【0023】
上述のように、DED方式による積層造形を、円柱形状の基材1の軸部1-2に施すと、図7に示す断面形状となる。図7(a)は、造形を施した軸部1-2に対して、X方向とZ方向を含む平面で切断した断面図である。また、図7(b)は、造形を施した軸部1-2に対して、Y方向とZ方向を含む平面で切断した断面図である。ここで、図7に示すとおり、肉盛部10が回転中心軸11に対して片側にのみ存在するため、肉盛部10の造形後に冷却時に発生する熱収縮により、基材1(特に、軸部1-2)に曲がり変形が生じて形状精度が低下する。変形量の増大により、製品形状に切削加工した際に基材が不足する箇所が発生する。
<課題等(2)-加工時間の増大>
さらに、上記の課題(1)で言及した加工精度が低下することにより、図5に示す基材1の寸法精度が低下する。このため、最終品の形状と基材1の形状の寸法差が増大するため、肉盛後の加工時間は増大する。
【0024】
このように、本実施形態では、切削工程および肉盛工程により最終品を形成する。そこで、本実施形態では、切削工程および肉盛工程を含む複数の加工工程候補を導出し、それぞれの切削工程ないし肉盛工程の加工時間に基づいて、複数の加工工程候補から加工工程を選択する。以下、本実施形態のより具体的な態様を示す実施例1~3について、説明する。
【実施例1】
【0025】
まず、本発明の実施形態において、最も基本的な処理を行う実施例1について説明する。実施例1では、概要、構成、処理フローの順で説明する。
<概要>
前述のように、比較例のレーザ積層造形方法では、肉盛部10の熱収縮による基材1の曲がり変形が発生し得る。このような変形は、当然基材の剛性に応じたものとなる。このため、剛性が高いほど、変形が抑止されることになる。つまり、基材の形状をより適正化することで、より剛性の高くすることができる。この場合、基材の変形がより抑制されるこのように、変形を抑止できる形状の基材1’を、図8に示す。図8は、図4図6に示す基材1比べ剛性の高い前工程切削加工を施した基材1’の形状を示す斜視図である。基材1’は、頭部1’-1と軸部1’-2を有する。ここで、軸部1-2がいわゆる外丸削りないし端面削りで形成されるのに対し、軸部1’-2は図面上の上半分を削り取られている。そして、軸部1’-2には、キー溝9’を形成している。
【0026】
ただし、変形量が抑止した場合でも、肉盛部の体積とともに肉盛工程の時間が増加する場合がある。そのため、単に基材の剛性のみで、加工工程の効率性を評価することは困難である。そこで、本実施例では、複数の加工工程候補を想定し、それぞれについて肉盛工程および切削工程の時間を推定し、これらの合計値である加工時間を用いて、加工工程候補から加工工程を選択する。
<構成>
次に、本実施例での加工工程を選択する加工支援システムの構成について説明する。図9は、本実施例および後述する実施例2、3における加工支援システムの機能ブロックを示す構成図である。この加工支援システムは、加工支援装置20、記憶装置30および関連装置50で構成される。そして、加工支援装置20と関連装置50は、ネットワーク40を介して接続される。なお、ネットワーク40は、イントラネット、インターネットなどで実現できる。また、加工支援装置20と関連装置50の接続は、ネットワークに限定されない。
【0027】
以下、各装置について説明する。まず、加工支援装置20は、本実施例等で主たる処理を実行するものであり、サーバといったコンピュータで実現される。そして、加工支援装置20は、入出力部21、候補導出部22、前工程切削加工時間算出部23、肉盛工程時間算出部24、後工程切削加工時間算出部25、全体加工時間算出部26、加工工程選択部27、干渉判定部28および合否判定部29を有する。
【0028】
ここで、入出力部21は、ネットワークインターフェースなどで実現でき、ネットワーク40を介して各種情報やデータの入出力を実現できる。なお、加工支援装置20をいわゆるスタンドアロンやPCで実現する場合、入出力部21は、キーボード等の入力デバイスや表示モニタのような表示装置で実現できる。このように、入出力部21は、入力部と出力部に分けて構成することもできる。
【0029】
次に、候補導出部22、前工程切削加工時間算出部23、肉盛工程時間算出部24、後工程切削加工時間算出部25、全体加工時間算出部26、加工工程選択部27、干渉判定部28および合否判定部29は、後述するフローチャートで示す処理を実行する。以下、これら各部の機能の概要について説明し、その機能の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0030】
まず、候補導出部22は、記憶装置30に記憶された加工工程情報301から複数の加工工程候補を導出する。加工工程情報301は、基材の形状を含み、加工工程の内容を示す情報である。この詳細については、後述する。
【0031】
また、前工程切削加工時間算出部23、肉盛工程時間算出部24、後工程切削加工時間算出部25のそれぞれは、導出された加工工程候補を構成する各部分工程の部分工程時間を算出する。本実施例では、部分工程として、前工程切削加工、肉盛工程および後工程切削加工が含まれるので、これら各部を用いる。このため、各部分加工時間を算出するための構成としては、これら各部に限定されない。なお、前工程切削加工時間算出部23、肉盛工程時間算出部24、後工程切削加工時間算出部25については、部分工程時間算出部と称することができる。
【0032】
また、全体加工時間算出部26は、各部分工程時間算出部で算出された部分工程時間から、加工候補における加工工程全体の全体加工時間を算出する。このために、全体加工時間算出部26は、部分工程時間を合算し、その合計値を算出することが望ましい。なお、各部分工程時間算出部と全体加工時間算出部26は、一体で構成してもよい。
【0033】
また、加工工程選択部27は、全体加工時間に基づいて、加工工程候補から加工工程を選択する。この結果は、入出力部21を介して、関連装置50へ出力される。
【0034】
また、干渉判定部28は、選択された加工工程により形成される最終品が利用される状況において、他の装置等と干渉するかを判定する。なお、干渉判定部28は、実施例2で用いられる構成であり、本実施例や実施例3では省略可能である。また、合否判定部29は、選択された加工工程により形成される最終品が、いわゆる許容誤差を満たすかを判定する。なお、合否判定部29は、実施例3で用いられる構成であり、本実施例や実施例2では省略可能である。
【0035】
なお、候補導出部22、前工程切削加工時間算出部23、肉盛工程時間算出部24、後工程切削加工時間算出部25、全体加工時間算出部26、加工工程選択部27、干渉判定部28および合否判定部29は、いわゆるプログラムで実現できる。つまり、加工支援装置20は、ハードウエアとして、プロセッサなど演算部を有し、メモリや記憶媒体に格納されたプログラムに従ってフローチャートに示す処理を実行する。
【0036】
次に、記憶装置30は、情報を記憶するもので、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)といったストレージで実現できる。なお、本実施例では、記憶装置30を、加工支援装置20とは別筐体で構成したが、一体で構成してもよい。なお、記憶装置30には、加工工程情報301、ノズル形状情報302および設計情報303が記憶されるが、この内容は後述する。
【0037】
次に、関連装置50は、利用者が利用する端末装置やCADシステムが含まれる。端末装置は、利用者からの入力を受け付け、加工支援装置20に出力したり、加工支援装置20の処理結果を出力したりする。
【0038】
なお、加工支援システムには、加工を行うNC機械を含めてもよい。この場合、NC機械は、加工支援装置20と接続するなどでして、選択された加工工程を受け付け、これに従って加工を実現することが望ましい。
<処理フロー>
次に、本実施例の処理フローについて、説明する。図10は、本実施例における処理フローを示すフローチャートである。まず、ステップS1において、入出力部21が、関連装置50を介して利用者から入力される加工工程特定指示を受け付ける。この加工工程特定指示には、最終品の仕様を特定する形状データが含まれる。この仕様には、最終品の寸法や剛性が含まれる。
【0039】
次に、ステップS2において、候補導出部22が、加工工程特定指示に応じた複数の加工工程候補を、記憶装置30の加工工程情報301から導出する。ここで、加工工程情報301を図11に示す。なお、加工工程情報301は、本実施例に加え、実施例2や3でも用いられる。
【0040】
加工工程情報301は、加工工程ごとに、その特性を示す情報である。そして、加工工程情報301は、加工工程を識別する加工工程名ごとに、その特性を示す素材元形状、基材元形状、キー溝形状、材料特性、部分工程が対応付けられている。素材元形状は、加工前の素材の形状、寸法を示す情報である。基材形状は、前工程切削加工以前の基材の形状、寸法を示す情報である。キー溝形状は、キー溝の形状、寸法を示す情報である。なお、基材形状やキー溝については、後述する前工程切削加工で特定できれば、省略可能である。
【0041】
また、材料特性は、素材の特性を示す素材特性と、肉盛材の特性を示す肉盛材特性を有する。これら各特性には、その材質や剛性を用いることができる。
【0042】
さらに、部分工程は、各部分工程を特定する情報が含まれる。本実施例では、部分工程として、前工程切削加工、肉盛工程および後工程切削加工が用いられ、これらの内容を示す情報が記録されている。
【0043】
ここで、ステップS2においては、候補導出部22が、形状データを満たす加工工程情報を加工工程候補として導出する。このために、候補導出部22は、形状データの寸法以上の素材元形状であって、その剛性を満たす材料特性を有する加工工程情報を特定する。
【0044】
次に、ステップS3において、前工程切削加工時間算出部23が、ステップS2で導出された各加工工程候補について、その素材元形状に基づいて、前工程切削加工時間を算出する。このために、前工程切削加工時間算出部23は、導出された加工工程候補の素材元形状、基材元形状、つまり、肉盛加工前の形状および前工程切削加工を用いる。つまり、前工程切削加工時間算出部23は、素材元形状から基材元形状へ切削加工するために、前工程切削加工を用いてどの程度加工時間が掛かるかを算出する。
【0045】
また、ステップS4において、肉盛工程時間算出部24が、ステップS2で導出された各加工工程候補について、肉盛加工時間を算出する。このために、肉盛工程時間算出部24は、形状データに含まれる最終品の肉盛部の形状、導出された加工工程候補のキー溝形状および肉盛工程を用いる。
【0046】
さらに、ステップS5において、後工程切削加工時間算出部25が、ステップS2で導出された各加工工程候補について、後工程切削加工時間を算出する。このために、まず、後工程切削加工時間算出部25は、肉盛加工による素材の変形量を推定する。より詳細には、後工程切削加工時間算出部25は、ステップS4と同様に、最終品の肉盛部の形状、導出された加工工程候補のキー溝形状および肉盛工程を用いる。
【0047】
次に、後工程切削加工時間算出部25は、推定された変形量を用いて、肉盛加工後の素材の形状を推定する。つまり、後工程切削加工時間算出部25は、肉盛加工前の形状に変形量を加えて、肉盛加工後の素材の形状を推定する。
【0048】
次に、後工程切削加工時間算出部25は、推定された肉盛加工後の素材の形状と形状データに含まれる最終品の形状から、後工程切削加工時間を算出する。このために、後工程切削加工時間算出部25は、肉盛加工後の素材の形状と形状データに含まれる最終品の形状の差分と、導出された加工工程候補の後工程切削加工を用いる。なお、後工程切削加工時間算出部25は、肉盛加工により生じる変形量を減じるための加工である。
【0049】
以上で、ステップS5の説明を終了するが、ステップS3~S5の順序は不同であり、並行処理を行ってもよい。また、ステップS3~S5は、各部分工程の時間を示す部分工程時間を算出することになる。
【0050】
次に、ステップS6において、全体加工時間算出部26が、ステップS3~S5で算出された前工程切削加工時間、肉盛加工時間および後工程切削加工時間を用いて、全体加工時間を算出する。このために、全体加工時間算出部26は、これらを合算して、その合計値を算出する。なお、この合計値そのものを全体加工時間として用いてもよいし、合計値を変換した値を全体加工時間としてもよい。なお、変換した値とは、合計値に各部分工程の移行時間を加えることが含まれる。
【0051】
次に、ステップS7において、全体加工時間算出部26は、ステップS2で導出された各加工候補について、ステップS3~S6が終了したかを判定する。この結果、終了している場合(Y)、ステップS8に遷移する。また、終了していない場合(N)、ステップS3に遷移し、残りの加工候補に対する処理を実行する。なお、ステップS3~S7は、加工時間算出部といった1つの部位で実現してもよい。
【0052】
次に、ステップS8において、加工工程選択部27が、ステップS7で算出された全体加工時間に基づいて、加工工程候補から加工工程を選択する。このために、加工工程選択部27は、全体加工時間が最短である加工工程候補を選択することが望ましい。なお、選択される加工工程は複数であってもよい。また、予め定められた基準値以下の加工時間である加工工程を選択してもよい。
【0053】
そして、加工工程選択部27が、入出力部21を用いて、選択された加工工程を出力する。例えば、加工工程選択部27は、入出力部21を介して関連装置50に加工工程を出力したり、入出力部21そのものが出力したりする。
【0054】
なお、本実施例では、加工時間を用いて、加工工程を選択、特定したが、他の条件を用いてもよい。例えば、加工工程の費用・コストを用いてもよい。この場合も費用・コストが、最小や所定値以下のものを選択してもよい。以上で、実施例1の説明を終了する。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2について、説明する。実施例2では、実施例1での処理に加え、最終品が用いられる環境、状況で干渉が生じないかを判定する。また、本実施例での構成は、実施例1と共通する。このため、概要と構成についての説明は省略し、以下、処理フローについて説明する。なお、本実施例では、最終品がノズル近辺に設置され、これとの干渉を判定する場合を例に説明する。このため、ノズル以外の機器等との干渉を判定することも本発明には含まれる。
<処理フロー>
図12は、本実施例における処理フローを示すフローチャートである。ステップS1およびS2は、実施例1と同様である。
【0056】
次に、ステップS9において、干渉判定部28が、最終品の寸法を示す形状データとノズル形状情報302を用いて、干渉が生じるかを判定する。ここで、ノズル形状情報302を、図13に示す。ノズル形状情報302は、ノズルごとに、ノズル名、ノズル形状および必要クリアランスが記録される。ここで、ノズル名は、干渉の判定対象であるノズルを識別する情報である。ノズル形状は、当該ノズルの寸法、形状を示す情報である。必要クリアンランスは、当該ノズルで必要とされるクリアランス、つまり、どの程度の隙間が必要かを示す情報である。
【0057】
以下、ステップS9の詳細を説明する。干渉判定部28は、ステップS1で受け付けられた形状データと該当の最終品が設置される位置を特定する。この結果、干渉判定部28は、最終品が設置された場合に、ノズルに最も近い位置を特定できる。また、干渉判定部28は、特定された位置とノズル位置の距離を特定する。そして、干渉判定部28は、距離が必要クリアランス以上であるかにより、干渉するかを判定する。なお、最終品が設置される位置およびノズル位置は、記憶装置などに図示しない設計情報を用いて特定できる。
【0058】
ステップS9で干渉が生じると判定された場合(Y)、ステップS2に遷移する。この場合、ステップS2では、候補導出部22が、干渉を避けるような加工候補を新たに導出することが望ましい。また、ステップS9で干渉が生じないと判定された場合(N)、ステップS3に遷移する。
【0059】
なお、ステップS9は、ステップS1とS2の間で実行してもよい。この場合、干渉が生じると判定された場合、ステップS1に遷移する。この場合、干渉判定部28は、入出力部21を用いて、関連装置50に加工工程特定指示の再入力を促す情報を出力する。
【0060】
さらに、ステップS9は、ステップS7とS8の間で実行してもよい。この際、ステップS9で干渉が生じると判定された場合(Y)、該当の加工候補を候補から除外することが望ましい。またさらに、ステップS9は、ステップS8の後に、選択された加工工程での最終品について実行してもよい。この際、ステップS9で干渉が生じると判定された場合(Y)、上述と同様にステップS1に遷移することが望ましい。
【0061】
また、ステップS3以降のよりは、実施例1と同様であるため、その説明は省略する。以上で、実施例2の説明を終了する。
【実施例3】
【0062】
次に、実施例3について、説明する。実施例3では、実施例1での処理に加え、最終品で許容誤差を満たすかの合否判定を行う。また、本実施例での構成は、実施例1や2と共通する。このため、概要と構成についての説明は省略し、以下、処理フローについて説明する。
<処理フロー>
図14は、本実施例における処理フローを示すフローチャートである。ステップS1お~S7は、実施例1と同様である。
【0063】
次に、ステップS10において、合否判定部29が、各加工候補での最終品が、設計情報303を満たすかを判定する。ここで、設計情報303を、図15に示す。設計情報303は、最終品ごとに、最終品名、形状情報および許容誤差(公差)が記録される。ここで、最終品名は、最終品を識別する情報である。また、形状情報は、設計上の最終品の形状、寸法を示す情報である。さらに、許容誤差(公差)は、その最終品で許容された誤差を示す。
【0064】
以下、ステップS10の詳細を説明する。合否判定部29は、ステップS2で導出された各加工候補の最終品の形状データと、設計情報303の形状情報を比較する。そして、合否判定部29は、比較した結果である差分が、許容誤差(公差)の範囲内であるかを確認する。この結果、範囲であれば合格を判定される。
【0065】
ステップS10で合格と判定された場合(Y)、ステップS8に遷移する。また、不合格を判定された場合(N)、ステップS10の処理を繰り返す。つまり、合否判定部29は、判定されていない最終品について、ステップS10の処理を繰り返す。
【0066】
また、ステップS10は、ステップS8の後に実行してもよい。ここでは、選択された加工工程での最終品に対して、ステップS10が実行される。この際、合格と判定された場合(Y)、本処理フローを終了する。また、不合格を判定された場合(N)、ステップS1に遷移する。そして、この場合、合否判定部29は、入出力部21を用いて、関連装置50に加工工程特定指示の再入力を促す情報を出力する。
【0067】
以上で、実施例3の説明を終了するが、本実施例に、実施例2の干渉判定を加えてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…基材、2…レーザヘッド、3…レーザ光、4…溶融池、5…粉末金属材料、6…ビード、7…造形物、8…素材、9…キー溝、10…肉盛部、11…回転中心軸、20…加工支援装置、21…入出力部、22…候補導出部、23…前工程切削加工時間算出部、24…肉盛工程時間算出部、25…後工程切削加工時間算出部、26…全体加工時間算出部、27…加工工程選択部、28…干渉判定部、29…合否判定部、30…記憶装置、40…ネットワーク、50…関連装置
図1
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