(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】粘着付与及び充填シリコーン接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250114BHJP
C09J 183/10 20060101ALI20250114BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250114BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20250114BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250114BHJP
C09J 183/08 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C09J183/10
C09J11/04
C09J7/35
C09J7/38
B32B27/00 D
C09J183/08
(21)【出願番号】P 2021509980
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2019057054
(87)【国際公開番号】W WO2020039372
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コーダパラスト,パヤム
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,マイケル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ハックバース,ケント シー.
(72)【発明者】
【氏名】マッキー,ソーニャ エス.
(72)【発明者】
【氏名】キニング,デイヴィッド ジェイ.
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-505560(JP,A)
【文献】特開2006-225420(JP,A)
【文献】特開平05-124150(JP,A)
【文献】特開平03-128937(JP,A)
【文献】国際公開第2018/071278(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主表面と第2の主表面を有する、第1の基材と、
前記第1の基材の前記第1の主表面上の、第1の接着剤層と、
前記第1の基材の前記第2の主表面上の、第2の接着剤層と、
前記第2の接着剤層に隣接する、第2の基材と
を含む物品であって、前記第1の接着剤層は、以下:
(a)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約30重量%~約60重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約15重量%のヒュームドシリカ、又は
(b)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約30重量%~約60重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約15重量%の量のヒュームドシリカ、
の少なくとも1つを含み、ここで前記重量は前記第1の接着剤層の総重量に基づくものであり、
前記第1の接着剤層は、約-125℃~15℃のガラス転移温度を有し、
前記物品は、
乾式壁の上で、72°F(22℃)50%RH条件下で1時間の放置時間の後に行う、12in/min(30.5cm/min)のクロスヘッド速度での90°角剥離接着強度試験による、約0.5oz/in~約120oz/inの90°剥離接着力、
乾式壁の上で、72°F(22℃)75%RH条件下で行うパッケージ重量要求試験による、少なくとも1日の剪断保持、及び
乾式壁の上で、72°F(22℃)50%RH条件下、6.6lbs/in
2(464g/cm
2)の荷重で行う剪断強度試験による、
1800分
を超える静的剪断を有する、物品。
【請求項2】
前記ヒュームドシリカが、少なくとも約1ミクロン及び約15ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記シリケート粘着付与樹脂がMQシリケート粘着付与樹脂を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記シリケート粘着付与樹脂が、前記第1の接着剤層の総重量に基づいて、約40重量%~約60重量%の量で存在する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ヒュームドシリカが、前記第1の接着剤層の総重量に基づいて、約2重量%~約15重量%の量で存在する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ヒュームドシリカが、前記第1の接着剤層の総重量に基づいて、約3重量%~約9重量%の量で存在する、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記第1の接着剤層の表面に接触した剥離ライナーをさらに含む、請求項1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概ね、シリコーンポリマー、シリケート粘着付与樹脂、及び無機充填剤を含む接着剤組成物及び物品に関する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の発明者らは、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の無機粒子充填剤と、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤と、(3)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む接着剤組成物又は物品が、様々な利点又は利益を有することを発見した。このような接着剤組成物を特徴とする接着性物品は、湿潤環境又は湿度環境においても、損傷のない取り外し、再配置性、及び高剪断強度のうちの少なくとも1つを示す。現時点で好ましい接着剤組成物は、3つ全てを示す。このような組成物はまた、特定のシリコーン剥離ライナーへの接着力の低減を示すことができ、ユーザが、物体装着又は他の接着剤関連作業のための物品を迅速に調製することを可能にする。
【0003】
接着剤組成物、接着性物品、及び接着性物品の製造方法が提供される。このポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、多くの既知のポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーと比較して、比較的大きなポリジオルガノシロキサンの画分を含有し得る。接着剤組成物は、感圧又は熱活性化接着剤(heat activated adhesive:熱活性化した接着剤)のいずれかとして配合することができる。
【0004】
第1の態様では、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の無機粒子充填剤と、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤と、(3)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む接着剤組成物が提供される。無機充填剤は、典型的には、ヒュームドシリカである。一部の実施形態において、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、式Iの繰り返し単位を少なくとも2つ含有する。
【化1】
【0005】
この式中、各R1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、R1基の少なくとも50パーセントはメチルである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。下付きのnは、独立して40~1500の整数であり、かつ下付きのpは、1~10の整数である。基Gは、式R3HN-G-NHR3のジアミンから2個の-NHR3基(すなわち、アミノ基)を引いたものに等しい残基単位である二価の基である。基R3は、水素若しくはアルキルであるか、又はR3は、G及びそれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成する。各アスタリスク(*)は、繰り返し単位がコポリマー内の別の基、例えば式Iの別の繰り返し単位などに結合する部位を示す。いくつかの実施形態において、シリコーン含有ポリマーは、ヒドロシリル化触媒(例えば、白金錯体)の存在下で、ビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)と水素末端PDMSとの間の付加硬化反応によって形成される。
【0006】
第2の態様では、基材と、基材の少なくとも1つの表面に隣接する接着剤層とを含む物品が提供される。接着剤層は、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約0.1重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の無機粒子充填剤と、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤と、(3)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
第3の態様では、物品を製造する方法が提供される。この方法は、基材を準備することと、基材の少なくとも1つの表面に接着剤組成物を適用することとを含む。接着剤組成物は、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約0.1重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の無機粒子充填剤と、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤と、(3)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通して説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約10重量%の無機粒子充填剤と、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤と、(3)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量の無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む、接着剤組成物及び物品が提供される。無機粒子充填剤は、典型的には、ヒュームドシリカである。接着剤組成物は、感圧又は熱活性化接着剤のいずれかとすることができる。
【0010】
定義
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と区別なく使用され、記載される要素のうちの1つ以上を意味する。
【0011】
用語「付加硬化シリコーン」は、典型的には白金触媒の存在下で、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのビニル末端オリゴマー/ポリマーと、水素化ケイ素を含有するPDMSなどの水素化物含有オリゴマー/ポリマーとの反応をもたらすポリマーを指す。
【0012】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである一価の基を指す。アルケニルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、2~20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルケニルは、2~18個、2~12個、2~10個、4~10個、4~8個、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を含有する。例示的なアルケニル基としては、エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルが挙げられる。
【0013】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0014】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキレンは、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子であってもよく(すなわち、アルキリデン)、あるいは異なる炭素原子であってもよい。
【0015】
用語「アルコキシ」は、式、-OR[式中、Rはアルキル基である]の一価の基を指す。
【0016】
用語「アルコキシカルボニル」とは、式-(CO)OR(式中、Rはアルキル基であり、(CO)は、炭素が二重結合にて酸素に結合しているカルボニル基を意味する)の1価の基を指す。
【0017】
用語「アラルキル」は、式-Ra-Arの1価の基を指し、式中、Raはアルキレンであり、Arはアリール基である。すなわち、アラルキルは、アリールで置換されたアルキルである。
【0018】
「アラルキレン」という用語は、式、-Ra-Ara-[式中、Raはアルキレンであり、Araはアリーレンである(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)]の二価の基を指す。
【0019】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続している又は縮合している、1~5個の環を有し得る。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0020】
用語「アリーレン」は、炭素環でありかつ芳香族である二価の基を指す。この基は、接続しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである、1~5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、アリーレン基は、最大5個の環、最大4個の環、最大3個の環、最大2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってもよい。
【0021】
用語「アリールオキシ」は、式-OArの一価の基を指し、式中、Arはアリール基である。
【0022】
用語「カルボニル」とは、式-(CO)-(式中、炭素原子は二重結合にて酸素原子に結合している)の二価の基を指す。
【0023】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0024】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1個の水素原子がハロで置換されているアルキルを指す。いくつかのハロアルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、又はブロモアルキル基である。
【0025】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ、又は-NR-(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、最大60個の炭素原子及び最大15個のヘテロ原子を含むことができる。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキレンは、最大50個の炭素原子、最大40個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大20個の炭素原子、又は最大10個の炭素原子を含む。いくつかのヘテロアルキレンは、ポリアルキレンオキシドであり、ここでへテロ原子は酸素である。
【0026】
用語「オキサリル」とは、式-(CO)-(CO)-(式中、各(CO)はカルボニル基を意味する)の二価の基を指す。
【0027】
用語「オキサリルアミノ」及び「アミノオキサリル」は、互換的に用いられ、式-(CO)-(CO)-NH-(式中、各(CO)はカルボニルを意味する)の二価の基を指す。
【0028】
用語「アミノオキサリルアミノ」とは、
式-NH-(CO)-(CO)-NRd(式中、各(CO)はカルボニル基を意味し、Rdは水素、アルキルであるか、又はそれが結合した窒素と一緒になった複素環式基の一部である)の二価の基を指す。ほとんどの実施形態において、Rdは水素又はアルキルである。多くの実施形態において、Rdは水素である。
【0029】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、ホモポリマー等の1種のモノマーから調製された材料、又はコポリマー、ターポリマー等の2種以上のモノマーから調製された材料の両方を指す。同様に、「重合させる」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー等であり得るポリマー材料を製造するプロセスを指す。「コポリマー」及び「コポリマー材料」という用語は、少なくとも2種のモノマーから調製されたポリマー材料を指す。
【0030】
「ポリジオルガノシロキサン」という用語は、次式の二価のセグメントを意味する
【化2】
式中、各R
1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、下付きのnは、独立して、40~1500の整数である。
【0031】
用語「隣接する」は、第一の層が第二の層の近くに位置することを意味する。第一の層は、第二の層と接触してもよく、あるいは、1つ以上の追加の層により第二の層から分離されていてもよい。
【0032】
用語「室温」及び「周囲温度」は、20℃~25℃の範囲の温度を意味するものと互換的に使用される。
【0033】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる構造寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、それとは反対の指示がない限り、記載されている数字は、本明細書に開示されている教示を使用した所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0034】
接着剤組成物
本開示は概ね、基材、壁又は表面(一般的に、被着体)から損傷を伴わずに取り外すことができる接着性物品に関する。本明細書に記載される現時点で好ましい実装形態では、接着剤組成物は剥離可能である。他の実装形態において、剥離可能な層は伸長剥離可能である。得られた接着性物品は、ハードグッドに隣接して取り付けたり、配置したりすることができる。
【0035】
本明細書に記載の接着剤組成物を含む接着性物品は、使用中の優れた接着力及び剪断保持力と共に、接着性物品が接着され、装着され、又は付着させられた壁、表面、又は基材からの損傷のない取り外しをもたらす。伸長剥離可能な接着剤を特徴とする実施形態において、物品は、35°未満の角度で伸長させることによって基材又は表面から取り外すことができる。引き剥がし剥離可能な(すなわち、剥離可能な)接着剤を特徴とする実施形態において、物品は、35°以上の角度で伸長させることによって基材又は表面から取り外すことができる単層又は多層構造体である。いくつかの実施形態において、剥離可能接着剤は、伸長メカニズムと引き剥がし剥離メカニズムとの組合せによって取り外され得る。
【0036】
前に述べたように、本開示は概ね、基材から損傷を伴わずに取り外すことができる接着性物品に関する。本明細書で使用されるとき、「損傷を伴わずに」及び「損傷のない」などの用語は、接着性物品が、塗料、コーティング、樹脂、被覆物、又は下に存在する基材に、視認可能な損傷を与えることなく、かつ/又は残留物を残存させることなく、基材から分離され得ることを意味する。基材への視認可能な損傷は、例えば、基材のいずれかの層の引っ掻き、ちぎれ、層間剥離、破断、崩れ、ひずみ、膨れ、気泡などの形態であり得る。視認可能な損傷は、変色、脆弱化、光沢の変化、ヘイズの変化、又は基材の外観における他の変化でもあり得る。
【0037】
本開示の接着剤組成物は、シリコーンポリマー、粘着付与樹脂、及び充填剤を含む。接着剤組成物は、これらの用語が以下に定義されるように、感圧及び熱活性化のうちの少なくとも1つであり得る。いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、シリケート粘着付与樹脂、及び無機粒子充填剤、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、シリケート粘着付与樹脂、及び無機粒子充填剤、又は付加硬化シリコーン、シリケート粘着付与樹脂、及び無機粒子充填剤、のうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
シリコーンポリマー
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーを特徴とするいくつかの実施形態においては、このコポリマーは、式Iの繰り返し単位を少なくとも2つ含有する。
【化3】
【0039】
この式中、各R1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、R1基の少なくとも50パーセントはメチルである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。下付きのnは、独立して、40~1500の整数であり、下付きのpは、1~10の整数である。基Gは、式R3HN-G-NHR3のジアミンから2個の-NHR3基を引いたものに等しい残基単位である二価の基である。基R3は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、G及びそれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成する(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンなどである)。各アスタリスク(*)は、繰り返し単位がコポリマー内の別の基、例えば式Iの別の繰り返し単位等に結合する部位を示す。
【0040】
式I中のR1に好適なアルキル基は、典型的には、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、及びイソブチルが挙げられる。R1に好適なハロアルキル基は、多くの場合、対応するアルキル基の水素原子の一部分のみがハロゲンで置き換えられている。例示的なハロアルキル基としては、1~3個のハロ原子及び3~10個の炭素原子を有するクロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。R1に好適なアルケニル基は、多くの場合、2~10個の炭素原子を有する。エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニル等の例示的なアルケニル基は、多くの場合、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。R1に好適なアリール基は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有する。フェニルは、例示的なアリール基である。アリール基は、非置換であってもよく、又はアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)で置換されていてもよい。R1にとって好適なアラルキル基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基を有する。一部の例示的なアラルキル基において、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレン-フェニルであり、アルキレンがフェニル基に結合している)。
【0041】
いくつかの実施形態において、R1基の少なくとも50パーセントはメチルである。例えば、R1基の少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも98パーセント、又は少なくとも99パーセントがメチルであってもよい。残りのR1基は、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0042】
式I中の各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン、又はそれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、又は最大で4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレン等が挙げられる。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。一部の例示的なアラルキレン基において、アリーレン部分はフェニレンである。すなわち、二価のアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、ここでフェニレンは、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、Y基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2種以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であってもよい。例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせの1つにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0043】
式I中の各下付きのnは、独立して、40~1500の整数である。例えば、下付きのnは、最大で1000、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で80、又は最大で60の整数であり得る。nの値は、多くの場合、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、又は少なくとも55である。例えば、下付きのnは、40~1000、40~500、50~500、50~400、50~300、50~200、50~100、50~80、又は50~60の範囲内にあり得る。
【0044】
下付きのpは、1~10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、又は最大で2の整数である。pの値は、1~8、1~6、又は1~4の範囲内であり得る。
【0045】
式Iにおける基Gは、式R3HN-G-NHR3のジアミン化合物から2個のアミノ基(すなわち、-NHR3基)を除いたものに等しい残基単位である。基R3は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、G及びそれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成する(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンである)。ジアミンは、第一級又は第二級アミノ基を有し得る。ほとんどの実施形態において、R3は、水素又はアルキルである。多くの実施形態において、ジアミンのアミノ基は両方とも第一級アミノ基であり(すなわち、R3基は両方とも水素である)、ジアミンは、式H2N-G-NH2のジアミンである。
【0046】
一部の実施形態において、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレンは、多くの場合、2~10個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、多くの場合、少なくとも2個のエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2個のプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマー等のポリオキシアルキレンである。好適なポリジオルガノシロキサンとしては、下に記載される式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンから2個のアミノ基を除いたものが挙げられる。例示的なポリジオルガノシロキサンとしては、限定されるものではないが、アルキレンY基を有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。いくつかの例示的なアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、このフェニレンは、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、基Gに関する「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2種以上の基の組み合わせを指す。組み合わせは、例えば、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であってもよい。例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせの1つにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0047】
一部の実施形態において、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、式-Ra-(CO)-NH-(式中、Raはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。コポリマー材料の主鎖に沿った全てのカルボニルアミノ基は、オキサリルアミノ基(つまり、-(CO)-(CO)-NH-基)の一部である。すなわち、コポリマー材料の主鎖に沿うあらゆるカルボニル基は、別のカルボニル基に結合しており、オキサリル基の一部となっている。より具体的には、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、複数のアミノオキサリルアミノ基を有する。
【0048】
一部の実施形態において、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、直鎖のブロックコポリマーであり、エラストマー材料であり得る。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは概ね、脆性固体又は硬質プラスチックとして配合される公知のポリジオルガノシロキサンポリアミドの多くとは異なり、コポリマーの重量に基づいて、50重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを含むように配合することができる。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドにおけるジオルガノシロキサンの重量パーセントは、より高分子量のポリジオルガノシロキサンセグメントを使用することによって増大させることができ、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドにおいて、60重量パーセント超、70重量パーセント超、80重量パーセント超、90重量パーセント超、95重量パーセント超、又は98重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを提供することができる。より多量のポリジオルガノシロキサンを使用することで、適切な強度を維持しながら、弾性率がより低いエラストマー材料を調製することができる。
【0049】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドのいくつかは、材料の顕著な劣化を起こすことなく、最高200℃、最高225℃、最高250℃、最高275℃、又は最高300℃の温度まで加熱することができる。例えば、空気の存在下で熱重量分析器中で加熱した際、コポリマーは、20℃~約350℃の範囲で、50℃/分の速度で走査したとき、10重量パーセント未満の損失を有することが多い。更に、コポリマーは、多くの場合、例えば250℃の温度で1時間空気中で加熱することができ、冷却した際に機械的強度に検出可能な喪失がないことからわかるように、明らかな劣化を伴わない。
【0050】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、低いガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低い表面エネルギー及び疎水性、並びに多くのガスに対する高い透過性などの、ポリシロキサンの望ましい特性の多くを有する。加えて、コポリマーは、良好ないし優れた機械的強度を呈する。
【0051】
式Iのコポリマー材料は、光学的に透明であり得る。本明細書で使用するとき、用語「光学的に透明」とは、人間の目に透明に見える材料を意味する。光学的に透明なコポリマー材料は、多くの場合、少なくとも約90パーセントの視感透過率、約2パーセント未満のヘイズ、及び400nm~700nmの波長領域での約1%未満の不透明度を有する。視感透過率及びヘイズはいずれも、例えば、ASTM-D 1003-95の方法を使用して測定することができる。
【0052】
更に、式Iのコポリマー材料は、低い屈折率を有することができる。本明細書で使用される場合、用語「屈折率」とは、材料(例えば、コポリマー材料又は接着剤組成物)の絶対屈折率を意味し、自由空間内での電磁放射線速度の、関心材料中での電磁放射線速度に対する比である。電磁放射線は、白色光である。屈折率は、例えばFisher Instruments(Pittsburgh,PA)から市販されているAbbeの屈折計を使用して測定される。屈折率の測定は、ある程度、使用する具体的な屈折計によって変わり得る。コポリマー材料は、通常、約1.41~約1.50の範囲内の屈折率を有する。
【0053】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)、又はこれらの混合物のような、多くの一般的な有機溶媒に可溶性である。
【0054】
式Iの繰り返し単位を有する直鎖状ブロックコポリマーは、例えば、反応スキームAに示すように調製することができる。
【化4】
【0055】
本反応スキームにおいて、式IIの前駆体は、2個の一級アミノ基、2個の二級アミノ基、又は1個の一級アミノ基及び1個の二級アミノ基を有するジアミンと、反応条件下で混合する。ジアミンは、通常、式R3HN-G-NHR3のものである。R2OH副生成物は、典型的には、得られたポリジオルガノシロキサンポリオキサミドから除去される。
【0056】
反応スキームA中のジアミンR3HN-G-NHR3は、2個のアミノ基(すなわち、-NHR3)を有する。基R3は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、G及びそれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成する(例えば、ジアミンはピペラジンなどである)。大部分の実施形態において、R3は、水素又はアルキルである。多くの実施形態において、ジアミンは、2個の一級アミノ基を有し(すなわち、各R3基は水素である)、かつジアミンは、式H2N-G-NH2のものである。2つのアミノ基を含めないジアミンの部分は、式Iにおいて基Gと称される。
【0057】
ジアミンは、場合により、有機ジアミン又はポリジオルガノシロキサンジアミンとして分類され、有機ジアミンは例えば、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アラルキレンジアミン、若しくはアルキレン-アラルキレンジアミンから選択されたようなものを含む。ジアミンは、アミノ基を2個のみ有し、その結果、得られるポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは直鎖状ブロックコポリマーであり、これは、多くの場合、エラストマーで、熱溶融加工可能であり(例えば、このコポリマーは、組成物の明らかな劣化を起こさずに、例えば最高で250℃又はそれよりも高温で加工することができる)、いくつかの一般的な有機溶媒に可溶である。ジアミンは、3つ以上の一級又は二級アミノ基を有するポリアミンを有しない。式IIの前駆体と反応しない三級アミンが存在することができる。更に、ジアミンは、いかなるカルボニルアミノ基も有しない。すなわち、ジアミンはアミドではない。
【0058】
例示的なポリオキシアルキレンジアミン(すなわち、Gは、ヘテロ原子が酸素であるヘテロアルキレンである)としては、Huntsman(The Woodlands,TX)から、商品名JEFFAMINE D-230(すなわち、約230g/molの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE D-400(すなわち、約400g/molの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE D-2000(すなわち、約2,000g/molの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE HK-511(すなわち、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を備え、約220g/molの平均分子量を有するポリエーテルジアミン)、JEFFAMINE ED-2003(すなわち、ポリプロピレンオキシドで末端保護された、約2,000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール)、及びJEFFAMINE EDR-148(すなわち、トリエチレングリコールジアミン)で市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
例示的なアルキレンジアミン(すなわち、Gはアルキレンである)としては、これらに限定されるものではないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジアミン(すなわち、DuPont(Wilmington,DE)より商標表記DYTEK Aで市販)、1,3-ペンタンジアミン(Dupontより商標表記DYTEK EPで市販)、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン(Dupontより商標表記DHC-99で市販)、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及び3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0060】
例示的なアリーレンジアミン(すなわち、Gがフェニレンのようなアリーレンである)としては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びp-フェニレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン-フェニルのようなアラルキレンである)としては、4-アミノメチル-フェニルアミン、3-アミノメチル-フェニルアミン、及び2-アミノメチル-フェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルキレン-アラルキレンジアミン(すなわち、Gはアルキレン-フェニレン-アルキレンなどのアルキレン-アラルキレン)としては、4-アミノメチル-ベンジルアミン、3-アミノメチル-ベンジルアミン、及び2-アミノメチル-ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
反応スキームA中の式IIの前駆体は、少なくとも1個のポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2個のオキサリルアミノ基を有する。基R1、基Y、下付きのn、及び下付きのpは、式Iについて記載したものと同じである。各基R2は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。
【0062】
R2に好適なアルキル基及びハロアルキル基は、多くの場合、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。三級アルキル(例えば、tert-ブチル)及びハロアルキル基を使用することができるが、多くの場合、隣接するオキシ基に直接結合した(すなわち、付着した)、一級又は二級炭素原子が存在する。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、及びイソ-ブチルが挙げられる。例示的なハロアルキル基としては、対応するアルキル基上の水素原子のいくつか(全てではない)が、ハロ原子で置換されている、クロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。例えば、クロロアルキル基又はフルオロアルキル基は、クロロメチル、2-クロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、3-クロロプロピル、4-クロロブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチルなどであることができる。R2に好適なアリール基としては、6~12個の炭素原子を有するもの、例えば、フェニルなどが挙げられる。アリール基は、非置換であることができ、あるいは、アルキル(例えば、メチル、エチル、又はn-プロピルのような、1~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシのような、1~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)、又はアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、若しくはプロポキシカルボニルのような、2~5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル)によって置換することができる。
【0063】
式IIの前駆体は、単一化合物を含むことができ(すなわち、化合物の全てがp及びnについて同一の値を有する)、又は複数の化合物を含むことができる(すなわち、化合物がpについての異なった値、nについての異なった値、又はp及びnの両方についての異なった値を有する)。異なるn値を持つ前駆体は、異なる長さのシロキサン鎖を有する。少なくとも2のp値を有する前駆体は、鎖が延長されている。混合物中の異なる量の式IIの鎖延長前駆体により、式Iのエラストマー材料の最終特性に影響が及ばされ得る。すなわち、式IIの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)の量により、有利には、様々な特性を有するエラストマー材料を提供するために有利に変化させることができる。例えば、式IIの第2の化合物をより多量にすると、溶融レオロジーを変更したり(例えば、溶融する際にエラストマー材料をより容易に流動させる)、エラストマー材料の柔軟性を変更したり、エラストマー材料の弾性率を低下させたり、又はそれらの組合せを実現することができる。
【0064】
一部の実施形態において、前駆体は、下付きのpが1に等しい式IIの第1の化合物と下付きのpが少なくとも2に等しい式IIの第2の化合物との混合物である。第1の化合物は、nの値が異なる複数の異なる化合物を含むことができる。第2の化合物は、pの異なる値、nの異なる値、又はp及びnの両方の異なる値を有する複数の化合物を含むことができる。混合物は、混合物中の第1及び第2の化合物の重量の合計に基づいて、少なくとも50重量パーセントの式IIの第1の化合物(すなわち、pは1に等しい)及び50重量パーセント以下の式IIの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)を含むことができる。いくつかの混合物では、第1の化合物は、式IIの化合物の総量を基準にして、少なくとも55重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、又は少なくとも98重量パーセントの量で存在する。混合物は、多くの場合、50重量パーセント以下、45重量パーセント以下、40重量パーセント以下、35重量パーセント以下、30重量パーセント以下、25重量パーセント以下、20重量パーセント以下、15重量パーセント以下、10重量パーセント以下、5重量パーセント以下、又は2重量パーセント以下の第2の化合物を含有する。
【0065】
反応スキームAは、式IIを持つ複数の前駆体、複数のジアミン、又はそれらの組み合わせを使用して実施することができる。異なる平均分子量を有する複数の前駆体を、反応条件下で、単一のジアミン又は複数のジアミンと混合することができる。例えば、式IIの前駆体は、nの異なる値、pの異なる値、又はn及びpの両方の異なる値を有する材料の混合物を含んでもよい。複数のジアミンは、例えば、有機ジアミンである第1のジアミン、及びポリジオルガノシロキサンジアミンである第2のジアミンを含むことができる。同様に、単一の前駆体を、反応条件下で、複数のジアミンと混合することができる。
【0066】
式IIの前駆体とジアミンとのモル比は、約1:1であることが多い。例えば、モル比は、多くの場合、1:0.90以下、1:0.92以下、1:0.95以下、1:0.98以下、又は1:1以下である。モル比は、多くの場合、1:1.02以上、1:1.05以上、1:1.08以上、又は1:1.10以上である。例えば、モル比は、1:0.90~1:1.10の範囲、1:0.92~1:1.08の範囲、1:0.95~1:1.05の範囲、又は1:0.98~1:1.02の範囲であり得る。例えば、変動するモル比を用いて、全体的な分子量を変化させることができ、これは得られるコポリマーのレオロジーに影響を及ぼすことができる。更に、モル比を変化させて、どの反応物質がモル過剰に存在するかにより、オキサリルアミノ含有末端基又はアミノ末端基を提供することができる。
【0067】
式IIの前駆体とジアミンとの縮合反応(すなわち、反応スキームA)は、多くの場合、室温又は最高約250℃の温度などの高温で行われる。例えば、反応は、多くの場合、室温又は最高約100℃の温度で実施することができる。他の実施例では、反応は、少なくとも100℃、少なくとも120℃、又は少なくとも150℃の温度で実施することができる。例えば、反応温度は、多くの場合、100℃~220℃の範囲、120℃~220℃の範囲、又は150℃~200℃の範囲である。縮合反応は、多くの場合、1時間未満、2時間未満、4時間未満、8時間未満、又は12時間未満で完了する。
【0068】
反応スキームAは、溶媒の存在下又は不在下にて発生することができる。好適な溶媒は通常、反応のいかなる反応物又は生成物とも反応しない。更に、好適な溶媒は通常、溶液中の全ての反応物及び全ての生成物を重合プロセス中、常に維持することができる。例示的な溶媒としては、限定するものではないが、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
存在するあらゆる溶媒は、反応終了時に、得られたポリジオルガノシロキサンポリオキサミドからストリッピングすることができる。アルコール副生成物をストリッピングするために使用されるのと同一条件下で除去できる溶媒が、多くの場合、好ましい。ストリッピングプロセスは、多くの場合、少なくとも100℃、少なくとも125℃、又は少なくとも150℃の温度で実施される。ストリッピングプロセスは、典型的には、300℃未満、250℃未満、又は225℃未満の温度である。
【0070】
揮発性副生成物、R2OHのみを反応終了時に除去する必要があるため、反応スキームAを溶媒の不在下で実施することが望ましい場合がある。更に、反応物及び生成物の両方と適合性がない溶媒では、反応が完了せず、重合度が低い。
【0071】
任意の好適な反応器又はプロセスを用いて、コポリマー材料を反応スキームAによって調製することができる。この反応は、バッチプロセス、半バッチプロセス、又は連続プロセスを用いて実施することができる。例示的なバッチプロセスは、ブラベンダー(Brabender)ミキサーなどの機械的撹拌機を備えた反応容器内で実施できるが、但し、反応生成物が溶融状態にあり、反応器から取り出すのに十分な低い粘度を有するものとする。例示的なセミバッチプロセスは、連続攪拌されるチューブ、タンク又は流動層内で実施できる。例示的な連続プロセスは、単軸又は払拭面(wiped surface)逆回転式若しくは共回転式二軸押出機などの二軸押出機内で実施できる。
【0072】
多くのプロセスでは、成分を計量し、次いで共に混合して、反応混合物を形成する。成分は、例えばギア、ピストン又はプログレッシング・キャビティポンプ(progressing cavity pump)を使用して、体積測定的又は重力測定的に計量することができる。成分は、例えば、静的ミキサーのような、任意の既知の静的若しくは動的な方法、又は1軸若しくは多軸押し出し機のような配合ミキサーを使用して混合することができる。次に、反応混合物は、形成する、注ぐ、ポンピングする、コーティングする、射出成形する、噴霧する、スパッタリングする、霧化する、撚り線にする又はシート化する、及び部分的に又は完全に重合することができる。次に、部分的に又は完全に重合した材料は、固体ポリマーへの変換前に、任意選択的に、粒子、液滴、ペレット、球体、ストランド、リボン、ロッド、チューブ、フィルム、シート、共押出フィルム、ウェブ、不織布、マイクロ複写構造体、又は他の連続的な若しくは分離性の形状に変換することができる。これらの工程はいずれも、熱を適用して又は熱を適用しないで実施することができる。1つの例示的なプロセスでは、成分は、重合材料を固化する前に、ギアポンプを使用して計量し、静的ミキサーを使用して混合し、及び型へ射出することができる。
【0073】
反応スキームA中の式IIを持つポリジオルガノシロキサン含有前駆体は、任意の既知の方法により調製することができる。一部の実施形態において、この前駆体は、反応スキームBによって調製される。
【化5】
【0074】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミン(pモル)をモル過剰の式IVのオキサレート(p+1モル超)と、不活性雰囲気下にて反応させて、式IIのポリジオルガノシロキサン含有前駆体及びR2-OH副生成物を生成する。この反応において、R1、Y、n、及びpは、式Iについて前に記述されたものと同じである。式IV中の各R2は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。反応スキームBによる式IIの前駆体の調製については、米国特許出願公開第2007/0149745号(Leirら)に、更に記載されている。
【0075】
反応スキームBにおける式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンは、任意の既知の方法により調製することができ、かつ、700~150,000グラム/molの範囲の平均分子量のような、任意の好適な分子量を有することができる。好適なポリジオルガノシロキサンジアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンの製造方法は、例えば、米国特許第3,890,269号(Martin)、同第4,661,577号(Jo Laneら)、同第5,026,890号(Webbら)、同第5,276,122号(Aokiら)、同第5,214,119号(Leirら)、同第5,461,134号(Leirら)、同第5,512,650号(Leirら)、及び同第6,355,759号(Shermanら)に記載されており、これらは、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。いくつかのポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば、Shin Etsu Silicones of America,Inc.(Torrance,CA)及びGelest Inc.(Morrisville,PA)より市販されている。
【0076】
2,000g/mol超又は5,000g/mol超の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンは、米国特許第5,214,119号(Leirら)、同第5,461,134号(Leirら)、及び同第5,512,650号(Leirら)に記載の方法を用いて調製することができる。記載の方法の1つは、反応条件下及び不活性雰囲気下において、(a)以下の式
【化6】
(式中、Y及びR
1は、式Iについて定義されたものと同一である)と、(b)アミン官能性末端ブロック剤と反応して、2,000g/mol未満の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサンと、(c)以下の式の無水アミノアルキルシラノレート触媒
【化7】
(式中、Y及びR
1は、式Iにおいて定義されたものと同一であり、M
+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオン、又はテトラメチルアンモニウムイオンである)とを組み合わせることを伴う。この反応は、アミン官能性末端ブロック剤の実質的に全てが消費されるまで継続し、その後、追加的な環状シロキサンを添加して、分子量を増加させる。追加的な環状シロキサンは、緩徐に添加されることが多い(例えば、滴下添加)。反応温度は、多くの場合、80℃~90℃の範囲で、5~7時間の反応時間で実施される。結果として得られるポリジオルガノシロキサンジアミンは、高純度であり得る(例えば、シラノール不純物が、2重量パーセント未満、1.5重量パーセント未満、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満、0.05重量パーセント未満、又は0.01重量パーセント未満である)。アミン末端官能基端ブロック剤対環状シロキサンの比を変更することによって、得られる式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンの分子量を変えることができる。
【0077】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する別の方法には、反応条件下及び不活性環境下にて、(a)以下の式のアミン官能性末端ブロック剤
【化8】
(式中、R
1及びYは、式Iについて記載されたものと同一であり、かつ下付きのxは、1~150の整数に等しい)と、(b)アミン官能性末端ブロック剤の平均分子量よりも大きい平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを得るのに十分な環状シロキサンと、(c)水酸化セシウム、セシウムシラノレート、ルビジウムシラノレート、セシウムポリシロキサノレート、ルビジウムポリシロキサノレート、及びこれらの混合物から選択される触媒とを組み合わせることを含む。この反応は、アミン官能性末端ブロック剤の実質的に全てが消費されるまで継続する。この方法は更に、米国特許第6,355,759(B1)号(Shermanら)に記載されている。この手順を使用することで、任意の分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンを調製することができる。
【0078】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する更に別の方法は、米国特許第6,531,620(B2)号(Braderら)に記載されている。この方法においては、以下の反応に示されているように、環状シラザンを、ヒドロキシ末端基を有するシロキサン材料と反応させる。
【化9】
【0079】
基R1及びYは、式Iについて記載されたものと同じである。下付きのmは1を超える整数である。
【0080】
反応スキームBでは、式IVのオキサレートは、不活性雰囲気下にて、式IIIの上記ポリジオルガノシロキサンジアミンと反応する。式IVのオキサレート中の2つのR2基は、同一であっても、異なっていてもよい。いくつかの方法においては、2つのR2基は異なり、反応スキームBにおける式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンと異なった反応性を有する。
【0081】
反応スキームBにおける式IVのオキサレートは、例えば、式R2-OHのアルコールをオキサリルジクロリドと反応させることにより調製できる。市販の式IVのオキサレート(例えば、Sigma-Aldrich(Milwaukee,WI)及びVWR International(Bristol,CT)から)としては、ジメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジ-n-ブチルオキサレート、ジ-tert-ブチル-オキサレート、ビス(フェニル)オキサレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)オキサレート、1-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2,3,4,5,6-ペンタクロロフェニル)オキサレート、及びビス(2,4,6-トリクロロフェニル)オキサレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
モル過剰のオキサレートは、反応スキームBにおいて用いられる。すなわち、オキサレートとポリジオルガノシロキサンジアミンとのモル比が化学量論モル比より大きく、これは(p+1):pである。このモル比は、多くの場合、2:1を超え、3:1を超え、4:1を超え、又は6:1を超える。縮合反応は、通常、成分の混合時に、不活性雰囲気下で、かつ室温で起こる。
【0083】
式IIの前駆体を生成するために使用される縮合反応(すなわち、反応スキームB)は、溶媒の存在下又は不在下にて起こることができる。いくつかの方法では、反応混合物中には、溶媒が含まれないか又は少量の溶媒のみが含まれる。その他の方法においては、溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又は脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)などを挙げてもよい。
【0084】
反応スキームA内のジアミンとの反応前に、過剰なオキサレートを式IIの前駆体から除去することによって、光学的に透明なポリジオルガノシロキサンポリオキサミドを良好に形成できる傾向がある。過剰なオキサレートは、典型的には、ストリッピングプロセスを使用して前駆体から除去できる。例えば、反応済み混合物(すなわち、反応スキームBによる縮合反応の生成物)は、最高150℃、最高175℃、最高200℃、最高225℃、又は最高250℃の温度に加熱して、過剰なオキサレートを揮発させることができる。真空引きを行って、過剰なオキサレートの除去に必要な温度を下げることができる。式IIの前駆体化合物は、200℃~250℃以上の範囲の温度にて、ごく僅かしか分解しないか又は明らかな分解を示さない傾向がある。過剰なオキサレートを除去する任意の他の既知の方法を使用できる。
【0085】
反応スキームBに示す縮合反応の副生成物は、アルコールである(すなわち、R2-OHはアルコールである)。基R2は、多くの場合、約250℃以下の温度で加熱することにより、容易に除去する(例えば、蒸発させる)ことができるアルコールを形成する、1~4個の炭素原子を有するアルキル、1~4個の炭素原子を有するハロアルキル、又はフェニルなどのアリールに限定される。反応済み混合物を、式IVの過剰なオキサレートを除去するのに十分な温度まで加熱したとき、このようなアルコールを除去することができる。
【0086】
シリコーンポリマーの有用な部類の別の例は、シリコーンポリウレアブロックコポリマーである。シリコーンポリウレアブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シリコーンジアミンとも呼ばれる)と、ジイソシアネートと、任意選択的に有機ポリアミンとの反応生成物を含む。好適なシリコーンポリウレアブロックコポリマーは、国際公開第WO2016106040号(Shermanら)に示され記述された繰り返し単位によって表され、
【化10】
式中、各Rは、独立して、好ましくは約1~12個の炭素原子を有し、例えば、トリフルオロアルキル若しくはビニル基、ビニルラジカル若しくはより高級なアルケニルラジカル、好ましくは式R
2(CH
2)
b-又は-CH
2)
cCH=CH
2(式中、R
2は、-(CH
2)
b--又は-CH
2)
cCH----であり、aは1、2、又は3であり、bは、0、3、又は6であり、cは3、4、又は5である)で置換することができるアルキル部分であるか、約6~12個の炭素原子を有し、アルキル、フルオロアルキル、及びビニル基で置換することができるシクロアルキル部分であるか、又は、好ましくは約6~20個の炭素原子を有し、例えばアルキル、シクロアルキル、フルオロアルキル及びビニル基で置換することができるアリール部分である部分であり、あるいはRは、米国特許第5,028,679号(Teraeら)に記載され、かつ本明細書に組み込まれているペルフルオロアルキル基、又は米国特許第5,236,997号(Fujiki)に記載され、かつ本明細書に組み込まれているフッ素含有基、又は米国特許第4,900,474号(Teraeら)並びに同第5,118,775号(Inomataら)に記載され、かつ本明細書に組み込まれているペルフルオロエーテル含有基であり、好ましくは、R部分の少なくとも50%は、メチルラジカルであり、1~12個の炭素原子を有する一価のアルキル若しくは置換アルキルラジカル、アルケニレンラジカル、フェニルラジカル、又は置換フェニルラジカルである残部を伴い、各Zは、好ましくは約6~20個の炭素原子を有するアリーレンラジカル若しくはアラルキレンラジカル、好ましくは約6~20個の炭素原子を有するアルキレン若しくはシクロアルキレンラジカルである多価ラジカルであり、好ましくは、Zは、2,6-トリレン、4,4’-メチレンジフェニレン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレン、テトラメチル-m-キシレン、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン、3,5,5-トリメチル-3-メチレンシクロヘキシレン、1,6-ヘキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、2,2,4-トリメチルヘキシレン及びこれらの混合物であり、各Yは、独立して、1~10個の炭素原子のアルキレンラジカル、好ましくは6~20個の炭素原子を有するアラルキレンラジカル若しくはアリーレンラジカルである多価ラジカルであり、各Dは、水素、1~10個の炭素原子のアルキルラジカル、フェニル、及び複素環を形成するためにB又はYを含む環構造を完成するラジカルからなる群から選択され、Bは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドが含まれるポリアルキレンオキシド、及びこれらのコポリマー並びに混合物からなる群から選択される多価ラジカルであり、mは0~約1000である数であり、nは少なくとも1である数であり、pは少なくとも10、好ましくは約15~約2000、より好ましくは30~1500である数である。
【0087】
有用なシリコーンポリウレアブロックコポリマーは、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、及び同第5,461,134号、第WO96/35458号、同第WO98/17726号、同第WO96/34028号、同第WO96/34030号及び同第WO97/40103号に開示されており、それぞれが本明細書に組み込まれている。
【0088】
シリコーンポリウレアブロックコポリマーの調製で使用される有用なシリコーンジアミンの例には、米国特許第8,334,037号(Sheridanら)に示され記載される式によって表されるポリジオルガノシロキサンジアミンが含まれ、
【化11】
式中、R、Y、D、及びpの各々は、先述と同様に定義される。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンの数平均分子量は約700超である。
【0089】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンとしては、上記式IXに含まれる任意のポリジオルガノシロキサンジアミンが含まれ、約700~150,000、好ましくは約10,000~約60,000、より好ましくは約25,000~約50,000の範囲内の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンが挙げられる。好適なポリジオルガノシロキサンジアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンの製造方法は、例えば、米国特許第3,890,269号、同第4,661,577号、同第5,026,890号、及び同第5,276,122号、国際公開特許第95/03354号及び同第96/35458号に開示されており、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれている。
【0090】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5-ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、並びにこれらの組み合わせ及びコポリマーが挙げられる。
【0091】
好適なポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば、Shin Etsu Silicones of America,Inc.(Torrance,Calif.)及びHuls America,Inc.から市販されている。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンは実質的に純粋であり、米国特許第5,214,119号に開示されかつ本明細書に組み込まれるように調製する。このように高純度のポリジオルガノシロキサンジアミンは、テトラメチルアンモニウム-3-アミノプロピルジメチルシラノレートなどの無水アミノアルキル官能性シラノレート触媒を、好ましくは、反応が2段階で行われるのであれば、環状オルガノシロキサンの総量の重量を基準にして0.15重量%未満の量で用いた、環状オルガノシランとビス(アミノアルキル)ジシロキサンとの反応から調製される。特に好ましいポリジオルガノシロキサンジアミンは、セシウム及びルビジウム触媒を使用して調製され、米国特許第5,512,650号に開示され、かつ本明細書に組み込まれている。
【0092】
ポリジオルガノシロキサンジアミン成分は、結果として生じるシリコーンポリウレアブロックコポリマーの弾性率を調整する手段を提供する。概して、高分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンは、弾性率がより低いコポリマーをもたらすが、一方で低分子量のポリジオルガノシロキサンポリアミンは、弾性率がより高いコポリマーをもたらす。
【0093】
有用なポリアミンの例としては、例えばD-230、D-400、D-2000、D-4000、ED-2001及びEDR-148の商品名でHunstman Corporation(Houston,Tex.)から市販されているポリオキシアルキレンジアミンを含むポリオキシアルキレンジアミン、例えばT-403、T-3000及びT-5000の商品名でHunstmanから市販されているポリオキシアルキレントリアミンを含むポリオキシアルキレントリアミン、並びに例えばエチレンジアミン、並びにDytek A及びDytek EPの商品名でDuPont(Wilmington,Del.)から入手可能であるポリアルキレンを含むポリアルキレンが挙げられる。
【0094】
任意選択のポリアミンは、コポリマーの弾性率を修正する手段を提供する。有機ポリアミンの濃度、種類、及び分子量が、シリコーンポリウレアブロックコポリマーの弾性率に影響を及ぼす。
【0095】
シリコーンポリウレアブロックコポリマーは、好ましくは、約3モル以下、より好ましくは、約0.25~約2モルの量でポリアミンを含む。ポリアミンは、約300g/mol以下の分子量を有するのが好ましい。
【0096】
例えば、上記のポリアミンと反応可能であるジイソシアネート及びトリイソシアネートなどの任意のポリイソシアネートが、シリコーンポリウレアブロックコポリマーの調製において使用できる。好適なジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,6-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、ポリカルボジイミド修飾メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート)、5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼンなど、芳香族-脂肪族ジイソシアネート、例えばm-キシリレンジイソシアネート及びテトラメチル-m-キシリレンジイソシアネートなど、脂肪族ジイソシアネート、例えば1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,12-ジイソシアナトドデカン、及び2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタンなど、並びに脂環式ジイソシアネート、例えばメチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、及びシクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0097】
ポリアミンと、特にポリジオルガノシロキサンジアミンと反応可能である、任意のトリイソシアネートが好適である。このようなトリイソシアネートの例としては、例えばビウレットから生成されるものなどの多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、及び付加物が挙げられる。市販のポリイソシアネートの例としては、DESMODUR及びMONDURという販売名でBayerから入手可能であるポリイソシアネート、並びにPAPIの販売名でDow Plasticsから入手可能であるポリイソシアネートのシリーズの一部が挙げられる。
【0098】
ポリイソシアネートは、好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンと任意のポリアミンとの量に基づく化学量論的な量で存在する。
【0099】
シリコーンポリウレアブロックコポリマーは、溶媒系プロセス、無溶媒プロセス、又はこれらの組み合わせによって調製され得る。有用な溶媒系プロセスについては、例えばTyagiら,「Segmented Organosiloxane Copolymers:2.Thermal and Mechanical Properties of Siloxane-Urea Copolymers」,Polymer,vol.25,December,1984及び米国特許第5,214,119号(Leirら)に記載されており、かつ参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンポリウレアブロックコポリマーの有用な製造方法については、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119、同第5,461,134号、国際公開特許第96/35458号、同第98/17726号、同第96/34028号、及び同第97/40103号にも記載されており、かつ本明細書に組み込まれている。
【0100】
接着剤組成物に使用するための他の好適なシリコーンポリマーとしては、付加硬化シリコーン、過酸化物硬化シリコーン、及び湿気硬化シリコーンを挙げることができる。付加硬化化学によって調製されるシリコーン含有ポリマーは概ね、アルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン、SiO4/2及びR3 SiOι/2構造単位を含むコポリマーシリコーン樹脂(式中、Rは、前述したように、以下の官能基のうちの1つ以上:シリコーン結合水素、シリコーン結合アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、及びプロペニルからなる群から選択されるもの、又はシラノールを有する)、任意選択的に架橋若しくは鎖延長剤、並びにシリコーン接着剤の硬化をもたらすための白金又は他の貴金属ヒドロシリル化触媒を含む。1つのこのようなポリマーは、ヒドロシリル化触媒(例えば、白金錯体)の存在下で、ビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)と水素末端PDMSとの間の付加硬化反応によって形成される。ビニル末端PDMS鎖及び水素末端PDMS鎖は、それらの特定の化学部分のため、「官能化」シリコーンと呼ばれる。個別には、このような官能性シリコーンは、概ね反応性ではないが、これらは一緒になって反応性シリコーン系を形成することができる。例示的なヒドロシリル化触媒は、米国特許第8,202,939号(Mooreら)に記載されている。1つの例示的な好適な付加硬化シリコーンは、Dow Corning(Midland,MI)から入手可能なSylgard 184である。
【0101】
概ね、過酸化物硬化シリコーンは、硬化前に、(i)ポリジメチルシロキサン及び/又はポリジフェニルシロキサンガム及びシリコーン樹脂の反応付加物、(ii)任意選択的に1つ以上のシリコーン樹脂、並びに(iii)少なくとも1種の過酸化物架橋剤を含む。ある特定の実施形態において、このような過酸化物硬化剤は、水素を抽出し、及び/又は架橋し、高温を必要とし得る。例えば、過酸化ベンゾイルは、触媒が機能するために150℃超の硬化温度を必要とする。例示的な好適な過酸化物硬化剤は、Arkema Inc.(Houston,TX)から入手可能なLuperox 101である。
【0102】
シリコーンポリマーは、典型的には、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%かつ80重量%以下の量、又はその範囲内のいずれかの量で存在する。特定の実装形態において、シリコーン含有ポリマーは、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも30重量%かつ75重量%以下の濃度で存在するのが好ましい場合がある。
【0103】
粘着付与樹脂
シリコーン含有ポリマーをシリケート粘着付与樹脂と組み合わせることにより、感圧又は熱活性化接着剤のいずれかを配合することができる。本明細書において使用される場合、用語「感圧接着剤」とは、粘着性を有し、指圧以下で接着し、いかなるエネルギー源による活性化も必要とせず、被着体に適用される場合に、意図された使用角度及び意図された荷重で被着体上に保持するのに十分な接着力を有し、被着体からきれいに取り外すのに十分な粘着力を有する材料を意味する。本明細書において使用される場合、用語「熱活性化接着剤」は、本質的に室温で非粘着性であるが、室温を上回る、例えば約30℃超などの活性化温度を超えた温度にて粘着性となる、接着剤組成物を意味する。熱活性化接着剤は、典型的には、活性化温度超において、感圧接着剤の特性を有する。
【0104】
シリケート粘着付与樹脂などの粘着付与樹脂を、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーに添加して、コポリマーの接着性を提供する又は高める。シリケート粘着付与樹脂は、得られる接着剤組成物の物理的特性に影響を与え得る。例えば、シリケート粘着付与樹脂含量を増加させると、温度が高くなるにつれて、接着剤組成物はガラス状からゴム状に転移する。いくつかの例示的な接着剤組成物では、複数のシリケート粘着付与樹脂を使用して、望ましい性能を得ることができる。
【0105】
好適なシリケート粘着付与樹脂としては、以下の構造単位M(すなわち、一価のR’3SiO1/2単位)、D(すなわち、二価のR’2SiO2/2単位)、T(すなわち、三価のR’SiO3/2単位)及びQ(すなわち、四価のSiO4/2単位)、並びにこれらの組み合わせで構成される樹脂が挙げられる。典型的な例示的なシリケート樹脂としては、MQシリケート粘着付与樹脂、MQDシリケート粘着付与樹脂及びMQTシリケート粘着付与樹脂が挙げられる。これらのシリケート粘着付与樹脂は通常、100~50,000の範囲、又は500~15,000の範囲の数平均分子量を有し、概ね、メチルR’基を有する。
【0106】
MQシリケート粘着付与樹脂は、R3SiO1/2単位(「M」単位)及びSiO4/2単位(「Q」単位)を有するコポリマー樹脂であり、ここで、M単位はQ単位に結合しており、その各々が少なくとも1つの他のQ単位に結合している。SiO4/2単位(「Q」単位)は、ヒドロキシル基に結合してHOSiO3/2単位(「TOH」単位)をもたらし、それにより、シリケート粘着付与樹脂のケイ素結合ヒドロキシル含量に対応するものもあり、他のSiO4/2単位にのみ結合しているものもある。
【0107】
このような樹脂は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.15,John Wiley & Sons,New York,(1989),pp.265-270、並びに米国特許第2,676,182号(Daudt et al.)、同第3,627,851号(Brady)、同第3,772,247号(Flannigan)、及び同第5,248,739号(Schmidt et al.)に記載されている。その他の例は、米国特許第5,082,706号(Tangney)に開示されている。上記の樹脂は概ね、溶媒中で調製される。乾燥させた又は無溶媒の、Mシリコーン粘着付与樹脂は、米国特許第5,319,040号(Wengroviusら)、同第5,302,685号(Tsumuraら)、及び同第4,935,484号(Wolfgruberら)に記載されているように調製できる。
【0108】
特定のMQシリケート粘着付与樹脂は、米国特許第2,676,182号(Daudtら)に記載され、同第3,627,851号(Brady)、及び同第3,772,247号(Flannigan)によって改良されている、シリカヒドロゾル末端保護プロセスにより調製することができる。これらの改良されたプロセスは、多くの場合、ケイ酸ナトリウム溶液の濃度、及び/又はケイ酸ナトリウム中のケイ素対ナトリウムの比、及び/又は中和されたケイ酸ナトリウム溶液をキャッピングする前の時間を、Daudtらによって開示されている値よりも概ね低い値に制限することを含む。中和されたシリカヒドロゾルは、多くの場合、2-プロパノール等のアルコールによって安定化され、R3SiO1/2シロキサン単位により、中和後できる限り早くキャッピングされる。MQ樹脂上のケイ素結合水酸基(すなわち、シラノール)のレベルは、シリケート粘着付与樹脂の重量に基づいて、1.5重量パーセント以下、1.2重量パーセント以下、1.0重量パーセント以下又は0.8重量パーセント以下まで低減することができる。これは、例えば、ヘキサメチルジシラザンをシリケート粘着付与樹脂と反応させることによって実施することができる。このような反応は、例えば、トリフルオロ酢酸によって触媒してもよい。あるいは、トリメチルクロロシラン又はトリメチルシリルアセトアミドをシリケート粘着付与樹脂と反応させてもよく、この場合、触媒は必要ではない。
【0109】
MQDシリコーン粘着付与樹脂は、例えば、米国特許第2,736,721号(Dexter)に教示されている通り、R’3SiO1/2単位(「M」単位)、SiO4/2単位(「Q」単位)、及びR’2SiO2/2単位(「D」単位)を有するターポリマーである。MQDシリコーン粘着付与樹脂では、R’2SiO2/2単位(「D」単位)のメチルR’基の一部を、ビニル(CH2=CH-)基(「DVi」単位)で置き換えてもよい。
【0110】
MQTシリケート粘着付与樹脂は、例えば、米国特許第5,110,890号(Butler)及び特開平2-36234号に教示されている通り、R’3SiO1/2単位、SiO4/2単位、及びR’SiO3/2単位(「T」単位)を有するターポリマーである。
【0111】
好適なシリケート粘着付与樹脂は、Dow Corning(Midland,MI)、General Electric Silicones(Waterford,NY)及びRhodia Silicones(Rock Hill,SC)などの供給源から市販されている。特に有用なMQシリケート粘着付与樹脂の例としては、SR-545及びSR-1000という商品名で入手可能なものが挙げられ、これらは両方とも、GE Silicones(Waterford,NY)から市販されている。このような樹脂は概ね、有機溶媒中にて供給され、受け取ったままの状態で本開示の接着剤の配合物に用いてもよい。2種以上のシリケート樹脂のブレンドを接着剤組成物に含むことができる。
【0112】
粘着付与剤は、典型的には、組成物に、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、いくつかの実施形態においては少なくとも30重量%、いくつかの実施形態においては少なくとも40重量%、いくつかの実施形態においては少なくとも50重量%で添加される。粘着付与剤は、典型的には、組成物中に、接着剤組成物の総重量に基づいて、70重量%以下、65重量%以下、いくつかの実施形態においては60重量%以下で存在する。本明細書の典型的な接着剤組成物では、粘着付与剤は、組成物中に約60重量%以下かつ40重量%以上で存在する。理論に束縛されるものではないが、約60重量%を超える粘着付与剤の濃度は、特定の条件では、粘着付与剤が、シリコーン含有ポリマーに有利なように組成物の連続相をとることを意味する。連続相を形成する粘着付与剤を有する接着剤組成物は、不十分な粘着性、不十分な接着性、不十分な剪断保持強度、及び不十分な損傷のない取り外しのうちの少なくとも1つを呈する傾向がある。
【0113】
無機充填剤及び他の添加剤
シリコーン含有ポリマー及びシリケート粘着付与樹脂を無機粒子又は他の充填剤と組み合わせることによって、感圧又は熱活性化接着剤のいずれかを配合することができる。接着剤組成物に含まれる無機粒子は、得られる接着剤の性能を向上させる傾向がある。より具体的には、無機粒子は、感圧接着剤の粘着力を増加させる傾向があり、ゴム状プラトー弾性率を増加させる傾向がある。驚くべきことに、無機粒子の添加は、接着剤が基材に接着された後に取リ外しのために伸張又は引き剥がされたときに、剪断強度及び装着能力を実質的に犠牲にすることなく、基材上に残っている接着剤残留物を減少させ、接着剤を取り外すのに必要な剥離力を低減し、被着体への損傷の可能性を低減し、特定の剥離ライナーへの接着力を減少させる。
【0114】
無機粒子は、感圧接着剤組成物全体にわたって均一に又は不均一に分散させることができる。無機粒子は、任意の好適な金属、金属合金、金属酸化物、セラミック材料、又はこれらの混合物であり得る。無機粒子は、多くの場合、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカなどから選択されるが、これらに限定されない。
【0115】
多くの実施形態において、無機粒子はヒュームドシリカ粒子である。好適なヒュームドシリカは、例えば、Evonik Industries(Essen,Germany)から商品名AEROSIL(例えば、AEROSIL R972、R974、R976、R300、R380、R130、R150、R200、R202、R805、及びR812)で、又はCabot(Alpharetta,GA)から商品名CABOSIL(例えば、CABOSIL TS-720、TS-610、TS-530、及びTS-500)で市販されている。ヒュームドシリカは、任意の好適な表面積を有し得る。例えば、表面積は、1~500m2/グラムの範囲、10~400m2/グラムの範囲、又は100~400m2/グラムの範囲であり得る。ヒュームドシリカは、任意の好適な粒径を有し得る。いくつかの用途では、ヒュームドシリカは、30ミクロン未満、15ミクロン未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、及び1ミクロン未満の平均一次粒径を有する。特定の実装形態においてナノスケールのヒュームドシリカを使用することができるが、200ナノメートル未満の平均一次粒径を有するヒュームドシリカの使用により、基材の損傷がもたらされ得る。疎水性又は親水性のヒュームドシリカを使用することができるが、様々な組成物中に典型的に含まれる有機溶媒中で、粒子がより良好に分散する傾向があるため、疎水性ヒュームドシリカを使用することが多い。
【0116】
他の実施形態において、無機粒子は、シリカエアロゲル粒子(例えば、破砕状エアロゲル又はエアロゲル粉末)などのエアロゲルである。シリカエアロゲル粒子は、多くの場合、ナノメートル範囲(例えば、100ナノメートル未満又は50ナノメートル未満)の細孔を有し、少なくとも500m2/グラムに等しい表面積を有する。例示的なエアロゲルシリカ粒子は、20ミクロン未満又は10ミクロン未満の平均粒径を有することができる。シリカエアロゲル粒子のサイズは光の波長よりも大きいが、粒子は、多くの場合半透明であり、光学的に透明であると見なされない場合であっても比較的透明である接着剤層を形成するために使用することができる。半透明及び不透明グレードの例示的なシリカエアロゲル粒子は、Cabot(Billerica,MA)から商品名NANOGELで市販されている。
【0117】
無機粒子は、シリコーンポリマー又は接着剤組成物中の分散を促進するように表面改質され得るが、無機粒子は、多くの場合、表面改質されていない。無機粒子は、アグロメレートしたもの又はアグロメレートしていないものであってもよく、アグリゲートしたもの又はアグリゲートしていないものであってもよい。無機粒子は、任意の所望の粒径又は粒子形状を有し得る。光学的に透明な接着性物品が望ましい場合、無機粒子は、多くの場合、1000ナノメートル未満の平均粒径を有するように選択される。例えば、平均粒径は、多くの場合、500ナノメートル未満、200ナノメートル未満、100ナノメートル未満、又は50ナノメートル未満である。光学的に透明である必要はない接着性物品を調製するために、より大きな無機粒子を使用することができる。例えば、無機粒子は、最大5ミクロン、最大10ミクロン、最大20ミクロン、最大50ミクロン、又は最大100ミクロンの平均粒径を有することができる。
【0118】
典型的には、無機粒子は、接着剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約20重量%の濃度、又はその範囲内のいずれかの量で添加される。現時点で好ましい実装形態では、無機粒子は、接着剤組成物の総重量に基づいて、約2重量%~約15%重量%、約3重量%~約13重量%、及び約4重量%~約10重量%の濃度、並びにそれらの指定された範囲内のいずれかの量で添加される。20重量%未満の充填剤充填量、特に現時点で好ましい範囲内の充填剤充填量は、湿潤環境又は湿度環境においても、損傷のない取り外し、再配置性、及び高剪断強度のうちの少なくとも1つを示すように(少なくとも以下の実施例の結果によって示されるように)接着剤組成物を促進させることができる。例えば、約4重量%~約7重量%の充填剤充填量は、高湿度において、かつ浴室又は台所タイルのような比較的滑らかな表面において有用であり得る。別の例として、約5重量%~約13重量%の充填剤充填量は、テクスチャ加工された表面又は不規則な表面(例えば、乾式壁)に特に好適であり得る。このような組成物はまた、特定のシリコーン剥離ライナーへの接着の低減を示すことができ、ユーザが、物体装着又は他の接着剤関連作業のための物品を迅速に調製することを可能にする。
【0119】
接着剤組成物は、所望の特性を提供するために、他の添加剤を更に含んでもよい。例えば、染料及び色素を着色剤として添加することができ、接着剤を導電性及び/又は熱伝導性若しくは帯電防止性にするため、導電性及び/又は熱伝導性化合物を添加することができ、抗酸化剤及び抗菌剤を添加することができ、接着剤を紫外線劣化に対して安定化させ、ある特定の紫外線波長が物品を通過しないように遮断するため、紫外線安定剤及び吸収剤、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALSを添加することができる。他の添加剤としては、限定されるものではないが、接着促進剤、追加の充填剤(例えば、炭素繊維、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバブル及びセラミックバブル、ガラス繊維、鉱物繊維、粘土粒子、ナイロンなどの有機繊維、金属粒子、又は未膨張の高分子ミクロスフェア)、粘着性エンハンサー、発泡剤、炭化水素可塑剤、並びに難燃剤が挙げられる。
【0120】
接着剤組成物の製造方法
特定の溶媒系プロセスでは、シリケート粘着付与樹脂を、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応混合物に導入する前、導入中、又は導入後に取り入れることができる。ポリアミンとポリイソシアネートとの反応は、溶媒又は溶媒の混合物中で実施される。溶媒類は、ポリアミン及びポリイソシアネートとは非反応性であることが好ましい。出発物質及び最終生成物は、重合中及び重合の完了後も、溶媒中で完全に混和したままであることが好ましい。これらの反応は、室温又は反応溶媒の沸点以下で実施することができる。反応は、好ましくは最高で50℃の周囲温度で実行される。
【0121】
実質的な無溶媒プロセスでは、ポリアミンとポリイソシアネートとシリケート粘着付与樹脂とを反応器内で混合し、反応物を反応させて、シリコーンポリウレアブロックコポリマーを形成し、それを粘着付与樹脂と合わせて、感圧接着剤組成物を形成する。
【0122】
溶媒系プロセスと無溶媒プロセスとの組み合わせを含む1つの有用な方法には、シリコーンポリウレアブロックコポリマーを無溶媒プロセスを使用して調製した後、シリコーンポリウレアブロックコポリマーとシリケート粘着付与樹脂溶液とを溶媒中で混合することが含まれる。典型的には、シリコーンポリウレアブロックコポリマー系感圧接着剤組成物が、上述した組み合わせ方法によって調製され、シリコーンポリウレアブロックコポリマー及び粘着付与樹脂のブレンドを生成する。
【0123】
接着剤組成物は、無溶媒であってもよく、又は溶媒を含有してもよい。好適な溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
接着性物品及び接着性物品の製造方法
基材と、基材の少なくとも1つの表面に隣接する接着剤層とを含む接着性物品が提供される。本開示の他の接着性物品は、バッキング又は基材を含まなくてもよい。バッキングフリー接着構造体は、例えば、米国特許出願公開第2016/0068722号(Schmitz Stapelaら)に記載されている。接着剤層のいくつかの実施形態は、(1)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約0.1重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%のヒュームドシリカと、(2)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約0.1重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカと、(3)付加硬化シリコーン、約0.1重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカ、のうちの少なくとも1つを含む。基材は、単一層の材料を含んでもよく、2つ以上材料の組み合わせであってもよい。
【0125】
基材は、フィルム、シート、膜、フィルター、不織布繊維若しくは織布繊維、中空若しくは固体ビーズ、ボトル、プレート、チューブ、ロッド、パイプ、又はウェハが挙げられるが、これらに限定されない、任意の有用な形態を有することができる。基材は、多孔質又は非多孔質、剛性又は可撓性、透明又は不透明、無色又は有色、及び反射性又は非反射性であることができる。基材は、平坦な又は比較的平坦な表面を有することができ、あるいはウエル、ギザギザ、チャネル、バンプなどの質感を有することができる。基材は、単層又は多層の材料を有することができる。好適な基材材料としては、例えば、高分子材料、ガラス、セラミックス、サファイヤ、金属、金属酸化物、水和金属酸化物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0126】
好適な高分子基材材料には、ポリオレフィン(例えば、二軸配向ポリエチレン又は高密度ポリエチレンなどのポリエチレン及び二軸延伸ポリプロピレンなどのポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、レーヨン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリアミン、アミノ-エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロース系ポリマー、多糖類、ナイロン、ネオプレンゴム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのポリマー材料は、発泡体、織繊維、不織繊維、又はフィルムである。
【0127】
好適なガラス及びセラミック基材材料としては、例えば、シリコーン、アルミニウム、鉛、ホウ素、リン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ヒ素、ガリウム、チタン、銅、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ガラスは通常、様々な種類のシリケート含有材料を含む。
【0128】
いくつかの基材は剥離ライナーである。接着剤層は剥離ライナーに適用され、次いで、バッキングフィルム又は発泡体基材などの別の基材に移される。好適な剥離ライナーは、典型的には、ポリエステル若しくはポリオレフィンのようなポリマー、又はコーティングされた紙を含有する。一部の接着性物品は、2つの剥離ライナーの間に位置する接着剤層を含む転写テープである。例示的な剥離ライナーには、米国特許第5,082,706号(Tangney)に開示され、かつLoparex,Inc.,Bedford Park,ILから市販されているものなどのフルオロシリコーンで被覆されたポリエチレンテレフタレートが挙げられるが、これに限定されない。ライナーは、その表面に微細構造を有することができ、それは接着剤に付与されて、接着剤層の表面上に微細構造を形成する。ライナーを取り除いて、微細構造化表面(microstructured surface:微細構造化した表面)を有する接着剤層を得ることができる。
【0129】
一部の実施形態において、接着性物品は、接着剤層が発泡体又はフィルムなどの基材の単一の主表面上にある片面接着テープである。他の実施形態において、接着性物品は、接着剤層が発泡体又はフィルムなどの基材の2つの主表面上にある両面接着テープである。両面接着テープの2つの接着剤層は、同一であっても又は異なってもよい。例えば、一方の接着剤は感圧接着剤とすることができ、他方を熱活性化接着剤とすることができ、ここでは、接着剤のうちの少なくとも1つは、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド又はシリコーンポリウレアブロックコポリマーに基づいている。各露出接着剤層を他の基材に適用できる。
【0130】
接着性物品は、プライマー、バリアコーティング、金属及び/又は反射層、タイ層、並びにそれらの組み合わせのような追加の層を含有することができる。この追加の層は、接着剤層の反対側の基材に隣接して、又は基材の反対側の接着剤層に隣接して、基材と接着剤層との間に位置することができる。
【0131】
本開示のいくつかの接着性物品は、優れた剪断強度を有する。本開示のいくつかの実施形態は、以下の静的剪断試験方法に従って変更された、ASTM D3654-82によって測定されたときに、1800分を超える剪断強度を有する。本開示のいくつかの実施形態は、変更されたASTM D3654-82によって測定されたときに、10,000分を超える剪断強度を有する。本開示のいくつかの実施形態は、変更されたASTM D3654-82によって測定されたときに、50,000分を超える剪断強度を有する。
【0132】
本開示の接着性物品に使用できるいくつかの接着剤は、tan δピーク値の動的機械分析によって決定される、約-125℃~15℃のガラス転移温度を有する。本開示の接着性物品に使用できるいくつかの接着剤は、動的機械分析によって測定したときに、25℃で約400,000Pa以下又は300,000以下の貯蔵弾性率を有する。
【0133】
いくつかの実施形態において、多層担体の第1又は第2の主面の少なくとも一方における接着剤の厚さは、約1μm~約1mmである。
【0134】
本開示のいくつかの接着性物品は、少なくとも1つの方向において50%超の破断伸びを有する。本開示のいくつかの接着性物品は、少なくとも1つの方向において約50%~約1200%の破断伸びを有する。
【0135】
本開示のいくつかの接着性物品は、35°以下の角度で被着体から取り外される前に接着性物品が裂けないほどに十分高い引張破断強度を有する。
【0136】
本開示のいくつかの接着性物品は、接着性物品をより容易に取り外すために、より小さな剥離力(例えば、約25oz/in~約50oz/inの力)を有する。本開示のいくつかの接着性物品は、偶発的な分離を伴わずにユーザが接着性物品を取り扱えるように、より大きな剥離力(例えば、約50oz/in~約100oz/inの力)を有することができる。本開示のいくつかの実施形態は、約20oz/in~約90oz/inの剥離力を有する。本開示のいくつかの実施形態は、約30oz/in~約70oz/inの剥離力を有する。
【0137】
本開示のいくつかの接着性物品は、35°以上の角度で被着体から取り外される前に接着性物品が裂けないほどに十分高い引張破断強度を有する。
【0138】
接着性物品の製造方法は、典型的には、基材を準備することと、基材の少なくとも1つの表面に接着剤組成物を適用することとを含む。接着剤組成物は、例えば、溶液コーティング、溶液噴霧、ホットメルトコーティング、押出、共押出、積層、及びパターンコーティングなどの広範囲のプロセスによって基材に適用することができる。接着剤組成物は、多くの場合、0.02グラム/154.8cm2~2.4グラム/154.8cm2のコーティング重量で、接着剤層として基材の表面に適用される。
【0139】
本開示の接着性物品は、例えば硬化、架橋、ダイ切断、物品の膨張を引き起こすための加熱、例えばその場発泡(foam-in-place)などの加工後工程に曝されてもよい。
【0140】
ハードグッド
本明細書に記載される接着性物品のいくつかの実施形態は、ハードグッド又は取り付けデバイスを更に含む。例示的なハードグッド又は取り付けデバイスとしては、例えば、フック、ノブ、クリップ、及びループが挙げられる。いくつかの実施形態において、ハードグッドは釘に似ている。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、吊り下げ面として機能するための単一の外向き突出部を有する。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、吊り下げ面として機能するための複数の外向き突出部を有する。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、1つ以上の物品を、非限定的にボックス又はキャディなどの内部に保持できる形状に成形される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは棚板、棚状突起、又は架台である。いくつかの実施形態において、ハードグッドはバーであり、バーは、真っ直ぐ若しくは湾曲していてもよく、又は実質的にリングでもよく、バーは、基材表面に対して平行又は垂直に装着することができる。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、物品を装着する又は吊り下げるための複数の方法を使用する。本開示の接着性物品と共に、以下の取り付けデバイス:出願案件番号77486US002(本譲受人に譲渡されている)、米国特許第5,409,189号(Luhmann)、同第5,989,708号(Kreckel)、同第8,708,305号(McGreevy)、同第5,507,464号(Hamerskiら)、同第5,967,474号(doCantoら)、同第6,082,686号(Schumann)、同第6,131,864号(Schumann)、同第6,811,126号(Johanssonら)、同第D665,653号、及び同第7,028,958号(Pitzenら)のうちのいずれも使用することができ、それらの文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ハードグッドは、基材に装着される任意の対象物でもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、ハードグッドは、1つ以上の箇所で基材に装着され、装着位置の1つ以上が、本明細書に記載される1つ以上の接着剤組成物を特徴とする取り除ける接着剤部分を含む。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、取り除ける接着剤部分と、非限定的に釘、ねじ、ボルト、及びリベットなどの従来のメカニカルファスナーとの組み合わせを使用して装着される。
【0142】
いくつかの実施形態において、ハードグッドは、熱可塑性ポリマーから製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、熱硬化性ポリマーから製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、ポリオレフィン材料を使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、ポリカーボネート材料を使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、高耐衝撃性ポリスチレンを使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマーを使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、2種以上のポリマー材料を使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは金属から製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、ステンレス鋼から製造される。いくつかの実施形態において、金属は、その外観を改変するために、塗装、艶出し、染色、ブラッシング、又はコーティングされる。いくつかの実施形態において、ハードグッドはセラミックから製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは艶出しセラミックから製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは非艶出しセラミックから製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、木材、竹材、パーティクルボード、布、キャンバスなどの天然系材料、又は生物源由来材料などで構成される。いくつかの実施形態において、天然系材料は、それらの外観を変更するために、塗装、艶出し、染色、又はコーティングされてもよい。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、上記のリストから2種以上の材料を使用して製造される。いくつかの実施形態において、ハードグッドは、可逆的若しくは不可逆的に取り付けられる、接合される、又は溶接される2つの部品から製造される。
【0143】
いくつかの実施形態において、ハードグッドは2つの部品を備え、第1の部品は、基材にコンプライアント層及び取り除ける層を取り付けるための装着面として機能し、第2の部品は、基材に物体を吊り下げる又は装着するために使用され得る吊り下げ部材として機能する。2つの部品は、メカニカルファスナー、フックアンドループ材料、又は追加の接着剤層を使用して可逆的に取り付けられてもよい。
【0144】
ハードグッドは、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して製造することができる。いくつかの実施形態において、取り除ける接着剤は、積層プロセスを使用してハードグッドに付着させてもよい。いくつかの実施形態において、取り除ける接着剤(及び基材(存在する場合))は、複数の積層プロセスを使用してハードグッドに付着させてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態において、取り除ける接着剤は、1つ以上の成形型を使用する2つ以上の射出成形工程を使用して、ハードグッドに付着させてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、取り除ける接着剤は、エンドユーザによって手で付着させてもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、接着性物品は、分離可能コネクタを更に含むことができる。いくつかの例示的な分離可能なコネクタは、例えば、米国特許第6,572,945号、同第7,781,056号、同第6,403,206号、及び同第6,972,141号に記載されており、これらの全てはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0148】
本明細書に記載される接着性物品の使用方法
本開示の物品は、様々な方法で使用することができる。いくつかの実施形態において、接着性物品は、被着体に、適用され、付着され、又は押し付けられる。このようにして、接着性物品は被着体と接触する。剥離ライナーが存在する場合、剥離ライナーは、接着性物品が被着体に適用され、付着され、又は押し付けられる前に、取り除かれる。いくつかの実施形態において、接着性物品が被着体に適用され、付着され、又は押し付けられる前に、被着体の少なくとも一部分がアルコールで拭われる。
【0149】
接着性物品は、浴室に見られるような湿潤環境又は高湿度環境で使用されてもよい。例えば、接着性物品はトイレ(例えば、トイレタンク)、バスタブ、シンク、及び壁に接着することができる。接着性物品は、シャワー、ロッカー室、スチーム室、プール、高温タブ、及びキッチン(例えば、キッチンシンク、食器洗浄機、及びバックスプラッシュ領域、冷蔵庫及びクーラー)で使用されてもよい。接着性物品はまた、屋外用途及び冷蔵庫などの低温用途で使用されてもよい。有用な屋外用途としては、標識などの物品を窓、ドア、及び車両などの屋外表面に結合することが挙げられる。
【0150】
接着性物品(すなわち、接着テープ又は単一物品内のもの)は、例えば、テープ、ストリップ、シート(例えば、有孔シート)、ラベル、ロール、ウェブ、ディスク、及びキット(例えば、装着用の対象物と、対象物を装着するために使用される接着テープ)などの、任意の有用な形態で提供することができる。同様に、例えば、ディスペンサー、バッグ、ボックス、及びカートンを含む任意の好適なパッケージ内の、例えば、テープ、ストリップ、シート(例えば、有孔シート)、ラベル、ロール、ウェブ、ディスク、キット、スタック、タブレット、及びこれらの組み合わせを含む任意の好適な形態で、複数の接着性物品を提供することができる。
【0151】
接着性物品を被着体から取り外すために、接着性物品の少なくとも一部分が、被着体から剥ぎ取られたり伸長剥離されたりする。いくつかの実施形態において、伸長角度は35°以下である。タブが存在する実施形態において、ユーザは、タブを掴み、それを使用して接着性物品を被着体から剥離する又は取り外すことができる。
【0152】
接着性物品は、塗装された乾式壁、石膏、コンクリート、ガラス、セラミック、ガラス繊維、金属又はプラスチックなどの表面に様々な物品及び対象物を装着するために使用されてもよい。装着可能な品物としては、限定されるものではないが、壁ハンガー、オーガナイザー、ホルダー、バスケット、容器、滑り止めマット、装飾(例えば、休日装飾)、カレンダー、ポスター、ディスペンサー、ワイヤークリップ、車両上のボディサイド成形、取っ手、道路標識、車両マーキング、輸送マーキング、及び反射シートなどの標識用途が挙げられる。
【0153】
上述の事項は、本発明者が予測して有効な説明が得られた実施形態の観点から本開示を説明しているが、本開示の想像上の、今のところ予測されていない修正であっても本発明の均等物を表す場合がある、ということも表している。
【実施例】
【0154】
これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。
【0155】
試験方法
試験方法
90°角剥離接着強度試験(90° Angle Peel Adhesion Strength Test)
次の方法により剥離接着強度及び除去性を評価した。試験ストリップ(以下に記載の多層複合テープ)を、15ポンドのローラーで圧下して被着体に適用した。接着した試料を、試験前に少なくとも1時間の放置時間にわたって72°F(22℃)及び50% RH(CTH)条件下でエージングした。別途記載のない限り、INSTRON万能試験機を12in/min(30.5cm/min)のクロスヘッド速度で用いて、ストリップをパネルから剥離した(いくつかの試料は、90in/min(228.6cm/min)で実施された)。剥離力を測定し、目視可能な接着剤残留物がパネルに残されていないか、又は何らかの損傷が発生したかどうかを観察した。表中の剥離データは、3回の試験の平均を表す。
【0156】
剥離損傷コード(Peel damage code)-乾式壁上の剥離接着力の効果を試験するために、以下の定性的コーディングのシステムを異なるレベルの損傷に割り当てた。
【表1】
【0157】
剪断強度試験
剪断強度は、ASTM D3654-82法によって決定した。試験用正方形(以下に記載の多層複合テープ)を被着体に適用し、幅0.5in又は0.75in×長さ約4in(幅1.27cm又は幅1.91cm×長さ10.16cm)の金属化PETフィルムを、対向する(剥離不可能)接着剤に付着させた。金属化PETを折り返して、ステープル留めした。続いて、15ポンドのローラーを使用して、2回通過させて試料を圧下した。試料を垂直位置に取り付け、CTH条件(別途記載のない限り)で60分間放置させた後、750グラム又は1000グラムの荷重を接着剤に付着させた。損傷まで、又は少なくとも25,000分経過するまで(10,000分はASTMの時間限界であることに留意されたい)、試料を吊るした。
【0158】
パッケージ重量要求(claim)試験
多層複合テープ試料は、以下に記載されるように、DUAL LOCKストリップバッキングを用いて調製した。試験試料を、0.75in×0.75in(1.91cm×1.91cm)の正方形に切断した。各試料を各試験のためにペアで使用した。各ペアについて、一方は、DUAL LOCKバッキングが外向きとなるようにシリコーン接着剤側を乾式壁に貼り付けることによって、塗装された乾式壁に適用した。第2の部片を、同様にDUAL LOCKバッキングが外向きとなるように、シリコーン接着剤側から1in×2in(2.54cm×5.08cm)のアルミニウムパネルに適用した。15.4lbのローラーを使用して、12in/minの速度で、乾式壁に適用された部片に一貫した圧力をかけ(2回通過)、適切なウェットアウトを実現した。2つの部片(一方が乾式壁上、他方がアルミニウムパネル上)は、DUAL LOCK側を互いに締結することによって結合した。試料を垂直位置に取り付け、特定の条件(CTH又は72°F/75%RHのいずれか)で60分間、試験基材上に放置させた。1時間の放置時間が経過した後、アルミニウムパネル上に重りを吊り下げることによって、1000グラムの重量を試料に適用した。接着剤の正方形が試験基材から完全に脱落した(接着剤は試験基材表面にもはや接着していない)ことが観察された場合、損傷を示した。表中のパッケージ重量要求データは、重量保持力(日)として提供される。データは、3つの試験の平均である。
【0159】
いくつかのパッケージ重量試験は、72°F/75% RH条件のFENで、中程度のサイズのCommand(商標)ユーティリティフック(ストリップサイズ:5/8”×2”、3M Companyから入手可能)を用いて実施した。
【0160】
また、いくつかのパッケージ重量試験は、95% RHのシャワースプレーチャンバ内で、105°F~120°F(41℃~49℃)の水温で連続H2Oスプレーを用いて、実施した。この試験では、中程度のサイズのCommand(商標)ユーティリティフック(ストリップサイズ:5/8”×2”、3M Companyから入手可能)を使用した。試料をWhite Glazed Ceramic Wall Tile(Interceramic,Carollton,TX)に接着し、試料上の荷重は3ポンドであった。
【0161】
ライナー引き剥がし剥離試験
試料をCTH条件で試験した。
【0162】
イージー面(Easy side):
ライナー上の接着剤転写テープの幅2.54cm、長さ約20cmの試料を、試験片かみそりカッターを使用して切断した。以下に記載のように調製された少なくとも4つの転写接着テープを、各ストリップ上の接着剤側を次のストリップのライナー側と接触させるように、互いの上部に重なり合わせておいた。少なくとも2つのストリップの積層体を、3M Double Coated Paper Tape 410M(3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能)を使用して、剥離接着力試験機(IMASS SP-2100テスター、IMASS,Inc.(Accord,MA))より入手)のプラテン表面上に長さ方向に適用した。上部ストリップを、例えば、60in/min(152.4cm/min)で、180度の角度で、下のライナーから剥離した。3つのストリップをその下の対応物から引き剥がすのに必要な平均力を、イージー面ライナー剥離として記録した。
【0163】
タイト面(Tight side):
ライナー上の接着剤転写テープの幅2.54cm、長さ約20cmの試料を、試験片かみそりカッターを使用して切断した。カット試料を、3M Double Coated Paper Tape 410M(3M Company(St.Paul,MN,USA)より入手)を使用して、剥離接着力試験機(IMASS SP-2100テスター、IMASS,Inc.(Accord,MA)から入手可能)のプラテン表面上に長さ方向に適用した。剥離ライナーを、例えば12in/min(30.5cm/min)で180度の角度で接着剤から剥離した。3つのライナーを接着剤から引き剥がすのに必要な平均力を、タイト面ライナー剥離として記録した。
【0164】
レオロジー測定
8mm平行板グリップを備えた動的機械分析器Discovery HR-3(TA Instruments,New Castle,DE)を使用して、ねじりモードでレオロジー特性を実施した。PSAを4回折り畳んで、接着剤の厚さをおよそ約1mmにすることによって試料を調製した。試料を、その目的のために専用に作製されたパンチカッターを使用して直径8mmのディスクに切断した。
【0165】
試験中、50~300grの初期静的軸力を圧縮モードで適用して、試験中に接着剤が適切な力がかかっていることを確認した。実験中に試料に軸方向の変形が生じないように、常に50%のひずみ調整を有効モードにしておいた。窒素パージされた力対流式オーブンを使用して温度を制御した。TA Instrumentsにより供給された特別な液体窒素Dewarを使用して、周囲温度以下を達成した。初期試験温度25℃で試料を装填し、実験中、3℃刻みで温度を下げ、最終温度-65℃まで下降させた。各温度工程において、試料に1rad/sの周波数でひずみ5%のねじり振動を与えた。結果を温度の関数としてプロットした。剪断貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)及びtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)(G”/G’)の比の値として定義される)を、25℃などの特定の温度において報告した。
【0166】
試験被着体
乾式壁パネル(Materials Company(Metzger Building,St.Paul,MN)より入手)に、Behr PREMIUM PLUS ULTRA(登録商標)Primer and Paint 2 in 1 Flat Egyptian Nile(FEN)(Behr Process Corporation(Santa Ana,CA)より入手)、又はSherwin-Williams DURATION(登録商標)Interior Acrylic Latex Ben Bone White Paint SWBB(Sherwin-Williams Company(Cleveland,OH)より入手)を塗装した。剥離接着力試験に使用した第3の塗料は、Ace Hardwareより入手したClark+Kensington Semi-Gloss Acrylic Latex、Paint and Primer Designer White(CS)であった。
【0167】
塗装手順:塗料の第1のコートを塗装ローラーを使用してパネルに適用し、続いて、周囲条件にて24時間にわたり空気乾燥した。塗料の第2のコートを適用し、周囲条件で24時間乾燥させた。パネルを50℃に設定した強制空気オーブン内に7日間置いた。次いで、パネルを使用するまで周囲条件で保管した。
【0168】
2in×2in(5.1cm×5.1cm)に測定したガラス及び塗装された乾式壁のパネルを剪断強度試験に使用した。6in×12in(15.2cm×30.5cm)に測定したガラス及び塗装された乾式壁のパネルを、72°F/75RH%での剥離接着力及びパッケージ重量要求試験に使用した。
【0169】
接着剤転写テープの調製
感圧接着剤組成物を、フルオロアルキルシリコーン剥離面を有する紙ライナーウェブ上にナイフコーティングした。紙ライナーウェブ速度は2.75メートル/minであった。コーティング後、3つの温度ゾーンを有する長さ11メートルのオーブン(滞留時間合計4分)にウェブを通した。ゾーン1(2.75メートル)における温度は57℃であり、ゾーン2(2.75メートル)における温度は80℃であり、ゾーン3(約5.5メートル)における温度は93℃であった。乾燥接着剤のキャリパーは、およそ2.5~3.0milの厚さであった。次に、接着剤転写接着剤テープを周囲条件で保管した。
【0170】
付加硬化例は、手動のハンドスプレッドコーターを使用してコーティングされた。同じキャリパーを適用して、厚さ2.5~3.0milの乾燥接着剤を得た。コーティング後、接着剤を対流式オーブン内で120℃で3分間硬化させた。
【0171】
多層複合テープの調製
次いで、転写接着剤を、フィルム-発泡体-フィルム複合体に積層し、所望の大きさ及び形状をダイカットした。具体的には、試験接着剤組成物を、COMMANDストリップ製品(発泡体の両面に1.8milのポリエチレンフィルムを有する31mil6lbの発泡体)で見られるものと同様に、複合フィルム-発泡体-フィルム構造体の第1の面に接着させた。フィルム-発泡体-フィルム構造体のこの面を、接着剤の積層の前に、3M接着促進剤4298UV(3M Company,St.Paul,MN)で下塗りした。複合発泡体の第2の面は、試験サンプルの全幅及び長さに沿って接着された第2の非剥離性接着剤を有した。3M DUAL LOCKストリップバッキング又は2milのPETフィルムを、剥離接着力試験及びパッケージ重量要求試験用に、第2の面に接着させる、又は金属化PETフィルムを、剪断試験用に、第2の面に接着させた。接着剤被覆フィルム-発泡体-フィルム複合体の試料を、塗装された乾式壁からの剥離試験用に、幅1in×長さ6inのストリップ(2.54cm×15.24cm)に、又は剪断試験用に0.5in×0.5in(1.27cm×1.27cm)に、又はパッケージ重量要求試験用に0.75in×0.75in(1.91cm×1.91cm)にダイカットした。
【0172】
表面改質ヒュームドシリカの調製
ガラス瓶に、250gのCab-O-Sperse 2017A(Cabot Corp.(Alpharetta,GA,USA)から固形分約17%のシリカ水中分散液として入手可能)を添加した。磁気撹拌させながら、250gのイソプロパノールをゆっくりと添加した。この混合物に、10.29gのヘキサデシルトリメトキシシラン(Wacker Chemical Corp.(Adrian,MI,USA)からSilane 25013VPとして入手可能)と、0.45gのメチルトリメトキシシラン(Wacker Chemical Corp.(Adrian,MI,USA)からSilane M1-Trimethoxyとして入手可能)を添加した。瓶をキャップでしっかりと密封し、混合した混合物を80℃の水浴にて24時間加熱し、撹拌した。室温まで冷却した後、内容物をフラスコに移してトルエンを用いてすすぎ洗いした。水及びイソプロパノールをロータリーエバポレーターで除去し、得られた分散液がトルエン中で固形分16.5%になるまで、定期的に体積をトルエンを付加しながら交換した。
【0173】
実施例E1~E12及び比較例CE1~CE4
シリコーンポリウレアブロックコポリマー感圧接着剤配合物
ヒュームドシリカ(Evonik Corporation(Parsippany,NJ)から入手可能なAEROSIL R 812 S)を、空荷時32オンスのジャーに加え、トルエン及びMQ粘着付与樹脂(Momentive Performance Materials(Watertown,NY)から入手可能な、SR545、トルエン中固形分30重量%の溶液として供給)で希釈した。得られた混合物を、高に設定したペイントシェーカーに15分間かけて、濃厚な虹色の(iridescent)分散液を作製した。次に、シリコーンポリウレアブロックコポリマーのエラストマー溶液(65/35トルエン/イソプロピルアルコール中)を、ジャーに加え、密封し、ジャーをローラー上に18時間置き、約25rpmに設定して混合した。このシリコーンポリウレアブロックコポリマー(SPU)は、米国特許第6,569,521号の実施例28の感圧接着剤組成物を調製するために使用されるシリコーンポリウレアブロックコポリマーと同じであった。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表1に提供する。感圧接着剤のレオロジー特性を表2に提供する。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
実施例E13~E22
実施例E13~E22の感圧接着剤配合物を、実施例E1~E12について記載した一般的な手順に従って調製した。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表11に提供する。感圧接着剤のレオロジー特性を表12に提供する。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
実施例E23~E26
実施例E23~E26の感圧接着剤配合物を、実施例E1~E12に記載した一般的な手順に従って調製した、但し、CABOSIL TS-382(Cabot Corporation(Boston,MA)から入手可能)は、AEROSIL R 812 Sの代わりに、実施例E24及びE26に使用したヒュームドシリカである。接着剤転写テープ及び多層複合テープは、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表17に提供する。感圧接着剤のレオロジー特性を表18に提供する。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
実施例E27~E30
実施例E27~E30の感圧接着剤配合物を、上記のように調製した表面改質シリカナノ粒子を使用したシリカであるAEROSIL R 812Sを使用する代わりに、実施例E1~E12に記載の一般的な手順に従って調製した。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表21に提供する。感圧接着剤のレオロジー特性を表22に提供する。
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
実施例E31~E46
実施例E31~E46の感圧接着剤配合物を、実施例E1~E12について記載した一般的な手順に従って調製した。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表25に提供する。感圧接着剤のレオロジー特性を表26に提供する。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
実施例E47~E55及び比較例CE6~CE8
シリコーンポリジシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー感圧接着剤配合物
ヒュームドシリカ(Evonik Corporation(Parsippany,NJ)から入手可能なAEROSIL R 812 S)を、空荷時32オンスのジャーに加え、トルエン及びMQ粘着付与樹脂(Momentive Performance Materials(Watertown,NY)から入手可能な、SR545)で希釈した。得られた混合物を、高に設定したペイントシェーカーに15分間かけて、濃厚な虹色の(iridescent)分散液を作製した。次に、ポリジシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーのエラストマー溶液(77/23酢酸エチル/イソプロピルアルコール中)を、ジャーに加え、密封し、ジャーをローラー上に18時間置き、約25rpmに設定して混合した。使用したポリジシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー(PDMS I)は、米国特許第8,765,881号の実施例12の感圧接着剤組成物に使用されるものと同じであった。実施例12は、10,174g/molの当量重量、又は約20,000g/molの分子量のアミンを示す。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。コーティングに使用される感圧接着剤配合物及び固形分パーセントを表29に提供する。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
実施例E56~E61及び比較例CE9~CE11
付加硬化シリコーン感圧接着剤配合物
第1工程では、シリカ粉末を個々にトルエンに添加して、シリカストック溶液を作製した。シリカをトルエンに添加した後、混合物を中程度の強度を有するシェーカー上に置き、10分間振盪した。続いて、試料を混合用ローラー上に置き、次の工程に使用する時間になるまで放置した。次の工程では、適切な量の0.2重量分率のPDMS(PDMS II)溶液(Wacker Chemie AG,Germanyから入手可能なWacker 948、トルエン中固形分30重量%の溶液として供給)を配合物に基づいて計量し、8オンスジャーに添加した。次いで、MQ粘着付与樹脂(Momentive Performance Materials(Watertown,NY)から入手可能なSR545、トルエン中固形分30重量%の溶液として供給)を、適切な量でPDMS溶液に添加した。次いで、シリカストック溶液をPDMS/MQ樹脂混合物に添加した。最後に、架橋剤(SYL-OFF 7678架橋剤、Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能)を、適切な量で(水素化物対ビニル比6に基づいて)溶液に添加し、その溶液を混合用ローラー上に置き、ローラー上に一晩放置して、適切な混合を達成した。接着剤をコーティングする直前に、40ppmの白金触媒(Gelest,Morrisville,PAから入手可能な白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)を溶液に添加した。コーティングの前に10分間混合するために、溶液をローラー上に置いた。接着剤転写テープ及び多層複合テープを、上記のように調製した。感圧接着剤配合物を表33に提供する。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
実施形態
1.(a)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%のヒュームドシリカ、
(b)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカ、又は、
(c)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカ、
を含む、接着剤組成物。
2.接着剤組成物が、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%のヒュームドシリカを含む、実施形態1に記載の接着剤組成物。
3.接着剤組成物が、シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカを含む、実施形態1に記載の接着剤組成物。
4.接着剤組成物が、付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカを含む、実施形態1に記載の接着剤組成物。
5.感圧接着剤である、実施形態1~4に記載の接着剤組成物。
6.熱活性化接着剤である、実施形態1~4に記載の接着剤組成物。
7.シリケート粘着付与樹脂が、MQシリケート粘着付与樹脂である、実施形態1~6に記載の接着剤組成物。
8.粘着付与剤が、接着剤組成物の重量に基づいて、約20重量パーセント~約60重量パーセントの量で存在する、実施形態1~7のいずれかに記載の接着剤組成物。
9.粘着付与剤が、接着剤組成物の重量に基づいて、約40重量パーセント~約60重量パーセントの量で存在する、実施形態8に記載の接着剤組成物。
10.ヒュームドシリカが、接着剤組成物の重量に基づいて、約1重量パーセント~約15重量パーセントの量で存在する、実施形態1~9のいずれかに記載の接着剤組成物。
11.ヒュームドシリカが、接着剤組成物の重量に基づいて、約2重量パーセント~約10重量パーセントの量で存在する、実施形態10に記載の接着剤組成物。
12.基材と、その基材の少なくとも1つの表面に隣接する接着剤層とを含む物品であって、その接着剤層が、
(a)ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%のヒュームドシリカ、
(b)シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカ、又は、
(c)付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカ、
のうちの少なくとも1つを含む、物品。
13.接着剤層が、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%のヒュームドシリカを含む、実施形態12に記載の物品。
14.接着剤層が、シリコーンポリウレアブロックコポリマー、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカを含む、実施形態12に記載の物品。
15.接着剤組成物が、付加硬化シリコーン、約10重量%~約70重量%の量のシリケート粘着付与樹脂、及び約0.1重量%~約20重量%の量のヒュームドシリカを含む、実施形態12に記載の物品。
16.接着剤層が、熱活性化接着剤である、実施形態12~15に記載の物品。
17.接着剤層が、感圧接着剤である、実施形態12~15に記載の物品。
18.シリケート粘着付与樹脂が、MQシリケート粘着付与樹脂を含む、実施形態12~15に記載の物品。
19.粘着付与剤が、接着剤組成物の重量に基づいて、約30重量パーセント~約60重量パーセントの量で存在する、実施形態1~18のいずれかに記載の物品。
20.粘着付与剤が、接着剤組成物の重量に基づいて、約40重量パーセント~約60重量パーセントの量で存在する、実施形態18に記載の物品。
21.ヒュームドシリカが、接着剤組成物の重量に基づいて、約2重量パーセント~約10重量パーセントの量で存在する、実施形態1~20のいずれかに記載の物品。
22.ヒュームドシリカが、接着剤組成物の重量に基づいて、約3重量パーセント~約9重量パーセントの量で存在する、実施形態21に記載の物品。
23.約0.5oz/in~約120oz/inの剥離接着力、及び少なくとも約1500分の剪断保持を有する、実施形態11~22に記載の物品。
24.少なくとも約30,000分の静的剪断を有する、実施形態11~23に記載の物品。
25.少なくとも約50,000分の静的剪断を有する、実施形態24に記載の物品。
26.接着剤層の表面と接触する剥離ライナーを更に備える、実施形態11~23に記載の物品。
27.剥離ライナーに対する接着剤層の剥離接着力が、100oz/in以下である、実施形態24に記載の物品。
28.剥離ライナーに対する接着剤層の剥離接着力が、50oz/in以下である、実施形態24に記載の物品。
29.ヒュームドシリカが、少なくとも約200ナノメートル及び約20ミクロン以下の平均粒径を有する、実施形態24~28に記載の物品。
30.ヒュームドシリカが、少なくとも約1ミクロン及び約15ミクロン以下の平均粒径を有する、実施形態29に記載の物品。
31.接着性物品を調製する方法であって、
実施形態1~11のいずれかに記載の接着剤組成物を提供することと、
その接着剤組成物を基材の表面に適用することと、を含む、方法。
【0216】
端点による値範囲の記載は全て、その範囲内に含まれる全ての数を含むよう意図される(すなわち、1~10の範囲には、例えば、1、1.5、3.33、及び10が含まれる)。
【0217】
詳細な説明及び実施形態における、第1、第2、第3などの用語は、類似の要素同士を区別するために使用されるものであり、必ずしも順序又は時系列を説明するものとは限らない。そのように使用される用語は適切な状況下では互換的であること、及び本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載又は例示したもの以外の順序で機能できるということを理解されたい。
【0218】
更に、詳細な説明及び実施形態における、上部、底部、上、下などの用語は、説明の目的で使用されるものであり、必ずしも相対的な位置を説明するものとは限らない。そのように使用される用語は適切な状況下では互換的であること、及び本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載又は例示したもの以外の向きで機能できるということを理解されたい。
【0219】
本明細書で言及される参考文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
コネクタシステムは、特定の用途のため、又は特定のタイプの対象物を共に接続するために特に好適な多くの異なる特性を有し得ることが理解できる。したがって、本発明に従ってこのような任意のコネクタシステムが使用できるが、特定の用途のため、又は特定のタイプの対象物を共に接続するために特に好適な特性を基に選択されたコネクタシステムが有利に選ばれ得る。