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特許7618547モータビークル用の能動的空力学装置及びモータビークル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】モータビークル用の能動的空力学装置及びモータビークル
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/00 20200101AFI20250114BHJP
   B62J 45/411 20200101ALI20250114BHJP
   B62J 45/412 20200101ALI20250114BHJP
   B62J 45/414 20200101ALI20250114BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20250114BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20250114BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20250114BHJP
【FI】
B62J17/00
B62J45/411
B62J45/412
B62J45/414
B62J45/415
B62K5/08
B62K5/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523760
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2019059430
(87)【国際公開番号】W WO2020095166
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】102018000010029
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】サントゥッチ,マリオ ドナート
(72)【発明者】
【氏名】ディ タンナ,オノリーノ
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ヴァレンティノ
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0171530(US,A1)
【文献】特開平04-201792(JP,A)
【文献】特開平05-170157(JP,A)
【文献】特開2015-205642(JP,A)
【文献】特表2008-526587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/00 - 17/10
B62J 45/00 - 45/423
B62J 23/00
B62K 5/08
B62K 5/10
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルに乗るタイプのモータビークル(100)であって、前記モータビークル(100)は、前記モータビークル(100)を前方から見たときにおける車幅方向の中心を含み、前記モータビークルの前後方向及び上下方向に広がりを有し、前記モータビークルを対称な左部分と右部分に分割する中央面(L)を有し、
前記モータビークル(100)は、空力学装置(10)を有し、
前記空力学装置(10)は、
前記モータビークル(100)の前方への移動中、空気流(F)に晒されるように、前記モータビークル(100)の前部(101)に配置された少なくとも一つのウィング(1,1’)と、
前記モータビークル(100)の前記中央面(L)に垂直な回転軸(2)を中心に、前記少なくとも一つのウィング(1,1’)を動かすように構成された作動手段(3)とを有し、
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)は、前記モータビークル(100)がローリング動作する際に、前記モータビークル(100)の動作に追従して動作し、
一対の前輪(102)を備えたローリング式のモータビークルである、モータビークル(100)。
【請求項2】
前記空力学装置は、
静止状態(A,A’、A”)、第1動作状態(B)及び第2動作状態(C)をとり、
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)の傾斜を変化させ、
前記第1動作状態(B)では、前記モータビークル(100)の第1の側に向けてローリングトルク(MS)を発生し、
前記第2動作状態(C)では、前記モータビークル(100)の第2の側に向けてローリングトルク(MD)を発生する、ように構成されている、請求項1のモータビークル(100)。
【請求項3】
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)は、前記モータビークル(100)のフェアリング(106)に片持ちで回転するように接続されている、請求項2に記載のモータビークル(100)。
【請求項4】
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)は、前方端(1a)と前記前方端(1a)の反対側の後方端(1b)とを有し、
前記空気流(F)は、前記前方端(1a)から前記後方端(1b)に向かって前記少なくとも一つのウィング(1,1’)の表面に沿って流れ、
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)が中立位置(N)にあるとき、前記前方端(1a)と前記後方端(1b)は、前記回転軸(2)を通り、かつ、地面に平行な基準面(P)上に位置し、
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)が上昇位置(U)又は下降位置(D)にあるとき、前記前方端(1a)と前記後方端(1b)は前記基準面(P)の反対側に配置され、
前記モータビークル(100)が直立状態において、前記少なくとも一つのウィング(1,1’)が前記上昇位置(U)にあるとき、前記後方端(1b)が前記前方端(1a)の上に表れ、前記少なくとも一つのウィング(1,1’)が前記下降位置(D)にあるとき、前記後方端(1b)が前記前方端(1a)の下に表れる、請求項2又は3のいずれかに記載のモータビークル(100)。
【請求項5】
前記空力学装置(10)は第1ウィング(1)と第2ウィング(1’)を有し、
前記空力学装置(10)は、
前記静止状態(A,A’,A”)で、前記第1ウィング(1)と前記第2ウィング(1’)は、共に前記中立位置(N)をとるか、共に前記上昇位置(U)をとるか、または、共に前記下降位置(D)をとり、
前記第1動作状態(B)で、前記第1ウィング(1)は前記上昇位置(U)をとり、前記第2ウィング(1’)は前記下降位置(D)をとり、
前記第2動作状態(C)で、前記第1ウィング(1)は前記下降位置(D)をとり、前記第2ウィング(1’)は前記上昇位置(U)をとる、請求項4に記載のモータビークル(100)。
【請求項6】
前記作動手段(3)は、
前記モータビークル(100)のローリング速度を変化して、前記モータビークルの前記第1の側に向けた前記ローリングトルク(MS)又は前記モータビークルの前記第2の側に向けた前記ローリングトルク(MD)を発生するように、ステアリング角、ローリング角及び走行速度に従って前記作動手段(3)に指令を出すように構成された制御ユニット(CPU)に接続されており、
前記作動手段(3)は、前記第1ウィング(1)を動かす第1のアクチュエータと前記第2ウィング(1’)を動かす第2のアクチュエータを備えている、請求項に記載のモータビークル(100)。
【請求項7】
前記少なくとも一つのウィング(1,1’)は、前記モータビークル(100)のフェアリング(106)に接続されて前記少なくとも一つのウィング(1,1’)を保護するように構成された支持部材(7)を有する、請求項3に従属しない請求項4~6のいずれかに記載のモータビークル(100)。
【請求項8】
前記作動手段(3)は、前記少なくとも一つのウィング(1,1’)の位置を前記中立位置(N)、前記上昇位置(U)及び前記下降位置(D)の間で選択するように構成された少なくとも一つのスイッチ(C)に接続されている、請求項4又は5のいずれかに記載のモータビークル(100)。
【請求項9】
前記少なくとも一つのスイッチ(C)は、前記モータビークル(100)のハンドルに配置されたボタン又は前記モータビークル(100)の中間プラットフォームに配置されたペダルによって選択される、請求項8に記載のモータビークル(100)。
【請求項10】
前記ステアリング角を測定するリニアポテンショメータ又はロータリポテンショメータを有する、請求項6に記載のモータビークル(100)。
【請求項11】
前記ローリング角を測定するジャイロスコープ又は慣性プラットフォームを有する、請求項6に記載のモータビークル(100)。
【請求項12】
前記走行速度を測定する一つ又は複数のホニックホイールを有する請求項6に記載のモータビークル(100)。
【請求項13】
ステアリングトルクを測定する捩り動力計を有し、前記制御ユニット(CPU)は前記ステアリング角を前記ステアリングトルクの関数として予測するように構成されている、請求項6に記載のモータビークル(100)。
【請求項14】
前記モータビークル(100)の両側に配置され、前記空気流(F)を横方向に偏向するように構成された複数の横デフレクタ(20)を有する、請求項~13のいずれかに記載のモータビークル(100)。
【請求項15】
前記空力学装置(10)は、
前記少なくとも一つのウィング(1、1’)は、一つのウィング(1)だけを有し、
前記静止状態(A)で、前記一つのウィング(1)は前記中立位置(N)をとり、
前記第1動作状態(B)で、前記一つのウィング(1)は前記上昇位置(U)をとり、
前記第2動作状態(C)で、前記一つのウィング(1)は前記下降位置(D)をとる、
請求項に記載のモータビークル(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが乗ることができるサドルを備えた2輪又は3輪のモータビークル(例えば、モータサイクル、スクータ)、また、乗物の長手方向の中央面を中心にローリング動作を行ういわゆるローリング式のモータビークルに関する。3輪のローリング式モータビークルは、2つのフロントステアリングホイールと、固定された車軸を有する一つのリアドライビングホイールを有する。モータビークルは、運転中、例えばカーブに沿って走行する際に、ローリング動作によって傾くことができる。
【背景技術】
【0002】
乗物の業界では、空力学的付属品を設けることが知られている。特に、自動車等の4輪の乗物の付属品は、一般に、ウィング又はバッフルの形を有し、前車軸又は後車軸、また中間の側部に設けられている。それらの付属品の主目的は、グリップ、安定性、牽引力を改善するために、車輪に加わる空力学的な荷重を作り出すことである。例えば、フォーミュラワンカーには、後部にスポイラが設けられている加えて、そのような付属品は、加熱する車の特定の部品を冷却するために、空気を運ぶ役目も果たす。
【0003】
前部に配置されて走行中に風の流れに晒されて前輪に加わる荷重を生み出す空力学的付属品は、モータビークル(例えば、モータサイクルやスクータ)の業界では知られている。
【0004】
モータビークルにおける空力学的付属品は、通常は固定されている(すなわち、走行中固定されている)。この空力学的付属品は、例えば、モータビークルのフェアリングに一体になっているか、または固定部材によってそこに取り付けられている。
【0005】
その他の形態では、付属品は位置を調整することができる。すなわち、例えば、走行ルートに応じて付属品の機能を最適化するために、付属品の傾斜が調整可能である。また、調整可能な形態の場合、そのウィングは常に、動作中も固定された状態である。すなわち、モータビークルが停止している状態で、ウィングの傾斜を変えることができるだけである。
【0006】
位置が固定されたウィングはいくつかの問題がある。ダイナミックな運転を行う場面では、ウィングによって生じる空力学的荷重が不利に働くことがある。例えば、そのような荷重は、第1カーブから逆方向の第2カーブに移るように、モータビークルが方向転換する際に好ましいものでない。傾斜した状態と直立状態との間で、モータビークルを逆方向に調整することになり、そのためにモータビークルの操縦が難しくなるからである。ただ、そのような場面で前輪に作用するリフトアップ効果は有用なものである。
【0007】
したがって、すべての運転環境(特に、カーブに入るときやカーブから出る場面)で、モータビークルの操縦性が良くなる、モータビークル用の空力学装置を提供する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、走行中のモータビークルを安定させる、モータビークル用の空力学装置を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
これらの問題を解消するため、サドルに乗る型式のモータビークルのために、能動的な空力学装置を提供するものである。この装置は、モータビークルの前方移動中に空気流によって流されるようにモータビークルの前部(又は前車軸)に配置された少なくとも一つのウィングと、前記モータビークルの中央面にほぼ直角な回転軸を中心に前記少なくとも一つのウィングを動かすように構成された作動手段を有する。これにより、各ウィングは、走行中、モータビークルの安定性及び/又は操縦性を良くするためにダイナミックに動かすこと又調整することが可能である。言い換えると、ウィングの作動手段により、ドライバ又は自動制御システムは、特定の走行状態で、ウィングを動かして調整し、カーブに入り易く、または方向転換し易くして、例えば風や地面の構造等の外的要因に起因するモータビークルの好ましくない不安定性を解消して安定性を取り戻す。ウィングが動くことで、前輪に対して動的にリフトアップ効果やダウンフォース効果を得ることができ、種々の走行条件に適用できる。以下、「モータビークル」は、サドルの付いた乗物(好ましくは、モータサイクル、原動機付き自転車)を意味する。
【0010】
構造上の観点から、上述の能動的な空力学装置は、少なくとも一つのウィングの傾斜を変えることによって、静止状態、第1動作状態、及び第2動作状態の、3つの状態を取り得る。特に、第1動作状態はモータビークルの片側に向けて該モータビークルにローリングトルクを発生させる状態で、第2動作状態はモータビークルの反対側に向けて該モータビークルにローリングトルクを発生させる状態である。これらのローリングトルクにより、モータビークルは素早くカーブに入ることができ、及び/又は、素早くカーブから出ることができ、これにより、ステアリングを素早く傾斜させること又はステアリングを素早く傾斜状態から元に戻すことができる。これらのローリングトルクにより、モータビークルは、突然不安定になった場合でも安定性を取り戻すことができる。
【0011】
好ましくは、2つのウィングを、モータビークルの中央面に対してその両側に配置するのが好ましい。さらに好ましくは、それらのウィングは、モータビークルのフェアリングに片持ちで回転できるように接続することが好ましく、これにより、ウィングによって発生するローリングトルクを、明らかにゼロよりも大きな予め決められた値にすることができる。
【0012】
特に、上述のウィング(又はブレード)はそれぞれ、前縁と、前縁の反対側の後縁を有する。前縁と後縁は、空気流が前縁から後縁へとウィングに沿って流れるように配置される。上述のウィングが中立位置にある場合、前縁と後縁は、回転軸を通り、地面にほぼ平行な基準面上に位置する。上述のウィングが上昇位置又は下降位置にある場合、前縁と後縁は上述の基準面に対して整列せず、その両側に配置される特に、地面に対し直立した状態のモータビークルを前方から見たとき、上昇位置において、少なくとも一つのウィングの後縁は前縁の上に配置され、下降位置において、少なくとも一つのウィングの後縁が前縁の下に配置される。ウィングは、活発に動くことができ、上昇位置と下降位置においてそれぞれ、モータビークルの姿勢を変えることができる上向きの力(リフトフォース)と下向きの力(ダウンフォース)(垂直上方への推力と垂直下方への推力)を生じる。もちろん、第1の状態と第2の状態とは異なる中間の任意の位置に位置させることも可能である。
【0013】
さらに具体的に説明すると、上述の能動的空力学装置は一つのウィングを有していてもよい。ここで、装置の静止状態は、ウィングが中立位置にあるとき得られる。第1動作状態(すなわち、第1のローリングトルクを発生する状態)は、ウィングが上昇位置にあるとき得られる。逆に、第2動作状態(すなわち、第1の状態で発生したローリングトルクとは逆のローリングトルクを発生する状態)は、ウィングが下降位置にあるとき得られる。ローリングトルクの方向は、そのウィングが取り付けられたビークル側の機能である。ウィングがモータビークルの右側に取り付けられている場合、上昇位置で時計周り方向(右側へ)のローリングトルクを生じ、逆に、下降位置にあるとき反時計周り方向(左側へ)のローリングトルクを生じる。代わりに、ウィングがモータビークルの左側に取り付けられており、ウィングが上昇位置にあるときは反時計周り方向(左側へ)のローリングトルクを生じ、逆に、ウィングが下降位置にあるときは時計周り方向(右側へ)のローリングトルクを生じる。
【0014】
2つのウィングが中央面に対してモータビークルの反対側に配置されている場合、同様であるが顕著な効果が得られる。特に、モータビークルが第1動作状態で、第1ウィングは上昇位置にあり、第2ウィングは下降位置にあり、一方向のローリングトルクを生じる。第1ウィングがモータビークルの右側に取り付けられ、第2ウィングがモータビークルの左側に取り付けられている場合、モータビークルの長手方向軸を中心に時計回り方向のローリングトルク(モータビークルを右側に傾斜させるトルク)が発生する。逆に、第2動作状態において、第1ウィングは下降位置、第2ウィングは上昇位置にあり、反対側のローリングトルクを生じる。上述のように、第1ウィングがモータビークルの右側に取り付けられ、第2ウィングがモータビークルの左側に取り付けられている場合、モータビークルの長手方向軸を中心に反時計周り方向のローリングトルク(モータビークルを左側に傾けるトルク)が発生する。静止状態では、モータビークの前車軸を持ち上げる効果(軽くする効果)を生み出し、又はモータビークルの前車軸にダウンフォース効果(地面に押し付ける効果)を生み出し、若しくは中立の挙動(すなわち、あたかもモータビークルに上述の空力学装置が設けられていない挙動)を示すように、装置は事前に設定される。空力学では知られているように、ウィングを上昇位置に位置付けることで下方向の力(ダウンフォース)が得られ、これはフォーミュラワンのスポイラでは一般的なことである。一方、ウィングを下降位置に位置付けることで上向きの力(持ち上げ力)が得られ、これは着陸時の飛行機のフラップで一般的なことである。
【0015】
「上昇位置」の表現は、ウィングの後縁又は出口縁が前縁又は入口縁の上にある状態をいう。「下降位置」は、ウィングの後縁又は出口縁が前縁又は入口縁の下にある状態をいう。上述の定義は、ウィングの長手方向断面の形状とは別で、ウィングは典型的な液滴形状を有し、上部が対称又は非対称に丸みを帯びて、後端(出口端)が下向きになっているか、又は底部が非対称に丸みを帯びて、後縁(出口縁)が上向きになっている。
【0016】
上述のウィング作動手段は、このましくは、ステアリング角、ローリング角、及び車速にしたがって、作動手段に指令を出すように構成された制御ユニットに機能上接続されている。上述の制御ユニットは、特に、モータビークルのローリング角を変えて、モータビークルの両側の一方に向かうローリングトルクを生じるように構成される。能動的モータビークルパラメータ(特に、能動的なカーブ設定パラメータ)に従ってローリングトルクを選択するように構成された制御ユニットにより、カーブへの進入とカーブからの脱出が最適化される。これにより、制御ユニットにより、少なくとも一つのウィングの傾斜が調整される。制御ユニットにより、ウィングの傾斜が調整されて、前車輪を下降させるダウンフォース効果、または前車輪を持ち上げるリフティング効果が得られる。走行中にその効果を調整することにより、特に方向転換する際のモータビークルの操縦性が向上するとともに、カーブへ進入する・カーブを通過する・カーブから脱出する際のモータビークルの操縦性が向上する。
【0017】
好ましい実施形態では、第1ウィングと第2ウィングは、モータビークルの前部に該モータビークルの両側に設けられる。上述のウィングはそれぞれ、上述の回転軸を中心にウィングを移動させるように構成されたそれ自身のアクチュエータを有する。回転軸は、一つで、両ウィングに対して水平であってもよい。代わりに、上述の回転軸は、各ウィングの軸であってもよいし、僅かに上方又は下方に傾いていてもよい。「モータビークルの中央面にほぼ垂直」は、モータビークルの中央面に垂直な軸、又は垂直方向(すなわち、中央面から垂直に離れた方向)に対して±20°だけ傾いた軸を意味する。「中央面」は、直立状態に配置されたモータビークルの中央を通る長手方向の垂直な平面で、直立状態のモータビークルを対称な左部分と右部分に分割する面である。
【0018】
特定の実施形態において、ウィングは、モータビークルのフェアリングに接続された支持部材による衝撃から保護される。
【0019】
上述の作動手段、特に上述のアクチュエータは、該アクチュエータに接続された少なくとも一つのスイッチによって制御される。そのスイッチにより、中立位置、上昇位置、及び下降位置に中で、ウィングの位置を選択できる。特に、スイッチは、モータビークルのハンドルに配置されたボタン又はモータサイクルの中間プラットフォームに配置されたペダルであってもよい。各ウィングに対して一つのスイッチが設けられる。それらのスイッチは、中央面に対してその両側(例えば、ハンドルの右側と左側)でモータビークルに配置される。代わりに、スイッチはそのサイクル及びドライバの好みの空力学姿勢を選択する一つのスイッチであってもよい。
【0020】
所望の状態でローリング速度を変化させるために、制御ユニットの入力パラメータを効果的に測定して必要なローリングトルクを計算するために、市場で利用可能な複数の機器が使用できる。いずれの場合であっても、ステアリング角を測定するリニア式又はロータリ式のポテンショメータ、ローリング角を測定するジャイロスコープ又は慣性プラットフォーム、モータビークルの前進速度を測定するセンサ付フォニックホイールを使用することが好ましい。ローリング速度の変化は、異常にローリングが変化したときに、モータビークルを安定させ、ローリングを変化させる外部の力(例えば横風や一定しない地面の変化)を相殺する。代わりに、ローリング速度の変化は、操縦性を改善し、ドライバによって望まれるローリング動作を促進する。
【0021】
また、上述の装置には、ドライバによってモータビークルのハンドルに加えられるステアリングトルクを測定する捩り動力計(トーションメータ)を有する。ここで、制御ユニットは、ステアリングトルクにしたがってステアリング角を予想するように構成されている。上述のステアリング角度は、ステアリングトルクから生じる。これにより、ステアリングトルクを測定することによって、カーブに対して、モータビークルのステアリングを傾ける前にウィングが作動されて動かされる。換言すると、ステアリングトルクを測定することによって、カーブを効果的に走行するように、ウィングが設定される。ステアリングトルクは、ステアリング角を変えることによる効果を引き出すものである。したがって、前もってカーブセッティングするために必要な操縦を確認する。したがって、この検出によって、対をなすウィングは、操縦に関して前もって動かされ、モータビークルに作用するローリング速度の変化を生み出す。測定されたステアリングトルクは、逆方向のステアリングトルク(すなわち、モータビークルが回ろうとするカーブの方向とは反対方向のステリングの回転)である。
【0022】
本発明の他の目的は、上述の能動的な空力学装置を有するサドルに乗るタイプのモータビークルを提供することである。カーブへの進入やカーブから脱出を容易にする上述の効果は、ローリングする乗物、特にバランスをとるために外力を必要とする乗物で、顕著に生じる。
【0023】
上述のモータビークルは、好ましくは、モータビークルが前進する際に発生する空気流を横方向に偏向するために、モータビークルの両側に配置された一対の横デフレクタを有する。これらのデフレクタによりドライバの快適性が増す。特に、モータビークルがスクータで、空気の乱れがフロントシールドの背後の領域(すなわち、フートレストの領域の近くの領域)からできるだけ逸らされる。
【0024】
モータビークルの更なる有利な特徴と該モータビークルの能動的空力学装置の実施形態が以下に説明され、本明細書の一体的部分を形成する特許請求の範囲に定義されている。
【0025】
本発明は、以下の説明と添付図面によってさらにより良く理解される。これらの図面は、本発明の非限定的実施形態を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、ウィングが中立位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの側面図。
図2図2は、ウィングが上昇位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの側面図。
図3図3は、ウィングが上昇位置にある、ウィングが上昇位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの側面図。
図4図4は、本発明に係る能動的空力学装置を有する静止状態のモータビークルの静止状態の不等角投影斜視図。
図5図5は、静止状態でウィングが中立位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの正面図。
図6図6は、静止状態でウィングが上昇位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの正面図。
図7図7は、静止状態でウィングが下降位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの正面図。
図8図8は、第1動作状態で、第1ウィングが上昇位置、第2ウィングが下降位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの正面図。
図9図9は、第2動作状態で、第1ウィングが上昇位置、第2ウィングが下降位置にある、本発明に係る能動的空力学装置を有するモータビークルの正面図。
図10A図10Aは、カーブを走行する種々の段階にある、本発明に係る空力学装置を有するモータビークルの平面図。
図10B図10Bは、カーブを走行する種々の段階にある、本発明に係る空力学装置を有するモータビークルの平面図。
図10C図10Cは、カーブを走行する種々の段階にある、本発明に係る空力学装置を有するモータビークルの平面図。
図11図11は、2つのカーブを走行する種々の段階にある、本発明に係る空力学装置を有するモータビークルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1図9を参照すると、モータビークル(自動車)100に設置された能動的な空力学装置10が示されている。図示するモータビークル100は、一対のフロントホイール102を有するローリング型の自動車である。
【0028】
空力学装置10は、動作中の空気の流れに晒されるようにモータビークル100の前部に配置された、少なくとも一つのウィング1を有する。回転軸2を中心にウィング1を選択的に移動するように構成された、作動手段3もまた設けられている。図面において、図1~9に示されるようにビークルが直立状態にあるとき、回転軸は水平方向(すなわち、地面Tに平)に描かれている。回転軸2は、モータビークル100の長手方向中央面Lに垂直である。これにより、以下により明瞭に説明するように、図4,5に示される静止状態Aにおいて、ウィング1はモータビークルの姿勢を不動に保つように空気の流れFに対して中立に晒される。図8に示される第1の動作状態Bにおいて、両ウィングは互いに逆位相になり(すなわち、一方が他方よりも上になり)、空気の流れFによって、モータビークル100のローリングモーメントを生じ、そのために、モータビークル100のローリング速度が変化する。図9に示される第2の動作状態Cにおいて、両ウィングは互いに逆位相になり(すなわち、一方が上に他方が下になり)、空気の流れFによってモータビークル100に異なるローリングモーメントを生じ、そのために、モータビークル100のローリング速度が変化する。
【0029】
構造上の観点から、ウィング1は、先端又は入口端1aと、先端の反対側に後端又は出口端1bを有し、これらは風の流れFの方向に関して定義されている。ウィング1は、モータビークル100の前車軸に設けられる。これにより、走行中、空気流Fは、先端1aから後端1bに進む方向に、ウィング1上を流れる。走行中、空気流の方向は、モータビークルにほぼ水平である。
【0030】
図1~3に示されるように、ウィングは、テーパの付いた液滴形状を有し、大きな入口端1aと先細りの出口端1bによって特徴づけられている。図面上、その形状は、先端1aと後端1bを通る面に対して対称である。ウィングの形状はまた、所望の空力学効果を得るように、異なる形状としてもよい。
【0031】
特に、図1に示すように、ウィング1の先端1aと後端1bは、ほぼ互いに整列しており、ウィング1の回転軸2を通る基準面P上にある。基準面Pは、モータビークル100が直立位置にあるとき、地面Tにほぼ平行である。したがって、ウィング1は、中立位置N(図1)と呼ばれる位置にある。
【0032】
図2に示されるように、ウィング1の第1の動作位置(上場位置Uと呼ばれる)において、先端1aと後端1bは、基準面Pに対してオフセットしている。後端1bは、基準面Pの上にあり、先端1aは基準面Pの下にある。
【0033】
図3にされるように、ウィング1の第2の動作位置(下降位置Dと呼ばれる)において、先端1aと後端1bは、基準面Pに対してオフセットしている。後端1bは基準面Pの下にあり、先端1aは基準面Pの上にある。
【0034】
ウィング1は、作動手段3の作動に応じて、上昇位置Uと下降位置との間の任意の中間角度位置を取り得る。
【0035】
図4~9に示されるように、2つのウィングがある場合、ウィング1,1’のそれぞれは、上昇位置Uと下降位置Dの間の任意の位置を取り得る。ここで、ウィングは、ビークルの両側に設けられており、ビークルのフェアリング106に対して片持ち状態で接続されている。特に第1ウィング1はモータビークル100の左側に接続されており、第2ウィング1’はモータビークル100の右側に接続されている。
【0036】
図4,5に示されるように、両ウィングが中立位置にあるとき、モータビークル100の静止状態Aが得られる。この状態で、ウィング1,1’は、モータビークルに対して空力学的に貢献せず、空気の流れに対して中立状態をとる。したがって、空力学係数(Cx)と上昇係数(Cx)との比は最小である。
【0037】
また、図6,7に示されるように、静止状態A’とAも可能である図7において、特に両ウィング1,1’は上昇位置にあり、したがって、前車軸101のダウンフォースが発生し、これにより、モータビークル100の前部101にプレロードが生じる。代わりに図8を参照すると、両ウィング1,1’は下降位置Dにあり、したがって、上昇力が発生し、それがモータビークル100の前部101を軽くする。モータビークル100の前車軸にプレロードを与えたり又は軽くすることが望まれる場合、中立静止状態Aに対して静止状態A’(両ウィング1,1’が上昇位置U-Uにある)とA”(両ウィング1,1’が下降位置D-Dにある)にあることが好ましい。
【0038】
図8を参照すると、ウィング1,1’は逆位相に配置されている。すなわち、第1ウィング1は上昇位置Uにあり、第2ウィング1’は下降位置Dにある。このような特別な位置をウィング1,1が取ることにより、第2ウィング1’から上向き推力FDが生じ、第1ウィング1から下向き推力FUが生じる。これらの推力FD,FUの影響は、垂直軸に沿った方向には作用しないが、左側(すなわち、モータビークルの長軸が後Baから前Frに向けられた状態で、モータビークルの長軸を中心とする反時計回り方向)にローリングモーメントMSを生じる。
【0039】
図8に示される能動的な空力学装置の別の実施形態(図示せず)では、ウィング1,1’は、基準面Pに対して異なる角度に下降される(ウィング1’はウィング1よりも大きく下降される)。これにより、ウィング1、1’に当たる空気流Fによって生じる推力は上向き方向(前車軸101が軽くなる)で、左側へのローリングトルクMSが同時に発生する。図8に示される能動的な空力学装置のさらに別の実施形態(図示せず)では、両ウィング1,1’は上昇しているが、基準面Pに対して異なる角度である。これにより、ウィング1,1’に当たる空気流Fによって生じる推力は下向き方向(前車軸101の荷重)で、左側のローリングトルクが同時に発生する。
【0040】
図9を参照すると、ウィング1,1’は逆位相に配置されている。すなわち、第1ウィング1は下降位置Dにあり、第2ウィング1’は上昇位置にある。この特別な位置にウィング1,1’があることで、第1ウィング1から上向き推力FDが生じ、第2ウィング1’から下向き推力FUが生じる。これらの推力FD,FUの影響は、垂直軸に沿った方向には作用しないが、右側(すなわち、モータビークルの長軸が後Baから前Frに向けられた状態で、モータビークルの長軸を中心とする時計回り方向)にモーメントMDを生じる。
【0041】
図9に示される能動的な空力学装置の別の実施形態(図示せず)では、両ウィング1,1’は、下降しているが、基準面Pに対して異なる位置にある(ウィング1がウィング1’よりも下降している。)。これにより、ウィング1,1’に当たる空気流Fによって生じる推力は上向きで(前車軸101が軽くなる)、右側へのローリングトルクMDが同軸に発生する。図8に示される能動的な空力学装置のさらに別の実施形態(図示せず)では、両ウィング1,1’は上昇位置あるが、基準面Pに対して異なる位置にある(ウィング1がウィング1’よりも上昇している。)。これにより、ウィング1,1’に当たる空気流Fによって生じる推力は下向きで(前車軸101が重くなる)、右側へのローリングトルクMDが同軸に発生する。
【0042】
下向き推力は、前車軸101に圧縮荷重を生じる。一方、上向き推力は、前車軸101に係る力を軽減し、通常これらの推力は省略形「Cz」で示される。上向き推力Czは、前車軸101の操縦性を高める。したがって、モータビークル100の操作性が向上する。下向き推力Czにより、地面Tに対する前車軸101のグリップが改善される。
【0043】
ウィング1,1’は、回転軸2を中心に、基準面P(地面に水平)に対して、好ましくは+/-25°回転可能である。
【0044】
上述のモーメント、すなわち、ローリングトルクMD、MSは、後に詳細に説明するように、モータビークル100の操縦性、特にカーブに入るときやカーブから出るときの操縦性、を向上するうえで重要である。
【0045】
各ウィング1,1’は、ウィングの外側に設けられた支持要素7を有する。支持要素7により、ウィングの片持ち側が支持され、よりウィングが安定する。支持要素7は、特に、ウィングの軸2とモータビークル100の前部101のフェアリングとの間に延在する部分を有する。この部分は、フェアリング領域に置かれており、支持部を形成している。すなわち、それは留め手段によってそこにしっかりと留められている。
【0046】
さらに詳細に説明すると、支持要素7は、モータビークル100のフェアリングに向かってL形状をしており、それぞれのウィング1,1’とフェアリングと共に、空気流を運ぶチャンネルを形成している。
【0047】
機能的観点から、図1~3,5~9に図示された作動手段3は、ウィング1,1’を中立位置N、上昇位置U,及び下降位置Dの間で移動させる2つのアクチュエータ3を有する。このアクチュエータは、好ましくは電気モータである。
【0048】
上述の作動手段、すなわち、アクチュエータ3は、ボタン等のスイッチC(図1~3に図示されている)に接続されている。
【0049】
上述の装置は、好ましくは、第1ウィング1と第2ウィング1’をそれぞれ作動する第1のアクチュエータ3と第2のアクチュエータ3を有する。これらのアクチュエータ3は、機能的に、制御ユニットCPUに接続される。制御ユニットCPUは、第1ウィング1と第2ウィング1’を選択的に動かして、基準面Pに対して中心軸2を中心に、それぞれのウィングの回転角を選択するようにプログラムされている。基準面Pに対するウィング1,1’の角度、及びそれによって生じるローリングトルクは、ステアリング角、ローリング角、及びモータビークルの速度に基づいて制御ユニットCPUで計算された出力である。したがって、ローリングトルクによって、ビークルのローリング速度が変わる。すなわち、カーブに入るとき又カーブから出るとき、モータビークルのローリング傾斜は素早く行われる。したがって、モータビークル100は、直立状態からステアリング傾斜位置に、逆に、ステアリング傾斜位置から直立位置に素早く移動する。この影響は、モータビークル100の速度が50km/時間を超えると、特に知覚される。

【0050】
上述のステアリング角、すなわち、ステアリング軸とフレームとの間の角度は、好ましくは、リニアポテンショメータ又はロータリポテンショメータによって測定される。モータビークルが直立状態で車輪が互いに平行な状態で、ステアリング角はゼロである。
【0051】
モータビークル100のハンドルに加わるステアリングトルクは、例えばねじり動力計(トーションメータ)によって検出される。上述のステアリング角は、ステアリングトルクから得られるステアリングトルクを測定することにより、カーブにおけるモータビークルのステアリング傾斜に対して前もって、ウィング1,1’が作動し動かされる。言い換えると、ステアリングトルクを検出することにより、システムは、カーブ設定に対するドライバの制御を予測する。ステアリングトルクは、ステアリング角の変化の影響を誘導するための一つであるから、それはカーブを走るモータビークルの方法を特定するものである。したがって、この方法により、一対のウィングは、実質的に事前に動かされ、モータビークル100のローリング速度を変化させる。
【0052】
上述のローリング角は、好ましくは、制御ユニットCPUに設けた又は制御ユニットCPUに接続された慣性プラットフォームに設けたジョイロスコープによって測定される。ローリング角がゼロということは、モータビークル100が直立位置にあることを示す。
【0053】
前方への移動速度は、好ましくは、音声ホイールセンサを備えたフォニックホイール105によって測定される。上述の感知式フォニックホイールは、モータビークル100の少なくとも一つのフロントホイール及び/又はリアホイールに配置される。
【0054】
この動作原理によれば、ローリング速度が変化することにより、異常なローリング変化があってもモータビークルが安定し、ローリングを変えようとする外力(例えば、モータビークルの横方向に作用する風、又は平坦でない地面)を相殺する。代わりに、ローリング速度の変化は、操縦性を改善し、ドライバによって望まれるローリング動作を促進する。
【0055】
上述のサドルに乗るタイプのモータビークル100は、上述の能動的な空力学装置を有する。 図1~4に示されるように、上述のモータビークル100はさらに、モータビークル100の前部101に配置された一対の横デフレクタ20を有する。上述のデフレクタ20は、空気流Fを横方向に偏向させるように構成されており、モータビークル100の前移動速度に基づいて、モータビークル100を通過する空気流F、すなわち前進するモータビークルに向かってくる空気流Fを横方向に偏向して調整する。空気流Fを横方向に偏向することで、ドライバは前車軸101のシールドの背後の領域における乱流をより感じなくなり、速度が50km/時間を超えても運転が安定する。図1と4に示されるように、デフレクタ20は、ほぼ垂直なヒンジ(モータビークル100の中央面Lに平行な軸V’、V”を有するヒンジ)によって、モータビークル100にヒンジ取り付けされる。上述のデフレクタ20は、空気の偏向を横方向に改善するために、モータビークル100に正面に向けて(最も前進した位置に)ヒンジされる。代わりに、デフレクタ20は、デフレクタ20の少なくとも一つが横方向に開いたときに、モータビークル100にブレーキをかける空力学的効果を得るために、少なくとも一つのモータビークル100の後部に(すなわち、最も後部)ヒンジしてもよい。両方の効果を得るために、デフレクタ20は、モータビークル100の中間位置にヒンジしてもよい。これにより、モータビークル100のフェアリング106に対するデフレクタ20の入射角度に応じて、ブレーキ効果又は偏向効果が得られる。二つのデフレクタ20があり、それらはモータビークル100の両側に配置されている。上述のデフレクタは、好ましくは、個々にモータ駆動され、制御ユニットに接続され、偏向効果又はブレーキ効果が操作される。デフレクタ20の制御信号は、ドライバによって供給される。この制御信号は、モータビークル100のハンドルに配置されたスイッチCに対する出力信号である。デフレクタ20は、少なくとも一つのフィン1,1’に拘わらず、モータビークルに設けられる。上述のサドルに座るタイプのモータビークル100は、可動式のデフレクタ20を有する。可動式のデフレクタ20は、個別に作動され、モータビーク100の両側に配置され、モータビークル100の中央面Lにほぼ平行な軸V1’、V”な軸を有するヒンジの手段によって、モータビークル100にヒンジされる。
【0056】
本発明及び関連するモータビークルに係る空力学装置の種々の実施形態の革新的な特徴を理解するために、空力学装置及びそれを使用した関連するモータビークルの具体的な図面の後に、空力学装置の構造と効果を示す概念図が示されている。この簡略化した図面は図10と11に示されている。
【0057】
図10と11に示されるように、モータビークル100Aは、まず両ウィングを中立位置N-Nにした状態で直線を走行している。特別な場合(図示せず)、直線を走行しているときにあっても、モータビークルの予め決められた振る舞いをするために、両ウィングは共に上昇位置U又は下降位置Dにある。
【0058】
モータビークル(100Bの位置)が右カーブのセッティングを開始しなければならない場合、第1と第2のアクチュエータの動作によって、左側のウィングが下降位置Dに設定され、右側のウィングが上昇位置U設定される。これにより、右側へのローリングモーメントMDが発生し、モータサイクルはステアリングを傾斜させて、簡単に且つ素早くカーブする。本発明で説明したローリングタイプのモータビークルは、モータビークルとドライバに作用する遠心力によって、カーブを回るときはカーブの内側に傾斜する。
【0059】
モータビークル(100C)がカーブを回ると、両ウィングは中立位置N-Nに戻る。代わりに、例えばドライバがブレーキを掛けようとするか又は前車軸のグリップを高めようとする場合、モータビークルの前車軸にさらに荷重がかけるために、両ウィングは上昇位置U-Uに移行するようにウィングが設定される。また別の場合には、例えば突然の路面変化にモータビークルが対応する場合、モータサイクルの車軸に作用する力を軽くするために、両ウィングは下降位置D-Dに移行するようにウィングが設定される。
【0060】
後者の仮想的な場面が図11に示されており、そこではモータビークルは逆カーブが連続する道に沿って走行している。ここで、一つのカーブから次のカーブへとモータビークルの走行方向が変化する場合、ドライバが出来るだけ容易に方向転換できるように、モータビークルの前車軸に係る荷重を大きく提言することが好ましい。これにより、方向転換のタイミング判断が良くなる。いま、モータビークル100C’が2つのカーブの間にいる場合、両ウィングは、右側ウィングD”を左側ウィングD’よりも大きく傾斜させた下降位置D’ーD’に位置させることが好ましい。これにより、前車軸が軽くなり、左側へのローリングトルクが得られる。
【0061】
次に、モータビークル(100Dの位置)がカーブを出て直線に向かうとき、モータビークルは素早く直立位置(図10)に戻るトルクが必要である。この場合、右側のウィングが下降位置Dに設定され、左側のウィングが上昇位置Uに設定される。これにより、モータビークを直立させるように、左側へのローリングトルクMSが発生する図11のプロセスは同じであるが、モータビークルが左カーブを出たあとに真っ直ぐに走行する場合右側に真っ直ぐに走行する場合は逆である。したがって、右側ウィングが上昇(U)され、左側ウィングが下降される(D)。
【0062】
モータサイクルが直線走行に戻ると、両ウィングは中立位置N-Nに設定される(図10,11における位置100E)。
【0063】
上向き又は下向きの効果を得るための空力学的変更は種々の要因や環境(例えば、ビークルのタイプ、路面状況、速度)に依存する。しかし、一般的には、カーブに入り易くしたりカーブから出易くするトルクや方向転換するトルクを好適に発生させる。
【0064】
突然の要求や特定の要求に応えるために、上述した解決手段に対して当業者はいくつかの変更を加えることができ、それらはすべて特許請求の範囲に記載した本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11