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特許7618549一体型ダンパー構造を有する電気機械的に切り替え可能なブレーキ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】一体型ダンパー構造を有する電気機械的に切り替え可能なブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/28 20060101AFI20250114BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20250114BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20250114BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20250114BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20250114BHJP
【FI】
F16D55/28 B
F16D65/18
F16F15/04 A
B66B11/08 G
F16D121:22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021525750
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019080815
(87)【国際公開番号】W WO2020099296
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】102018008899.6
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521138707
【氏名又は名称】シーエイチアール. マイヤー ゲーエムベーハー プラス コンパニー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】CHR. MAYR GMBH + CO. KG
【住所又は居所原語表記】Eichenstr. 1 87665 Mauerstetten (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】フィチトル マイケル
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-018436(JP,U)
【文献】実開平05-008066(JP,U)
【文献】特開2011-112099(JP,A)
【文献】特開2000-220674(JP,A)
【文献】特表2008-540968(JP,A)
【文献】特開2010-014156(JP,A)
【文献】特開2009-185874(JP,A)
【文献】特開2015-230020(JP,A)
【文献】米国特許第05274290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/26-55/44
F16D 65/14-65/28
F16F 15/04
B66B 11/08
F16D 121/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコイルキャリア(3)と、少なくとも1つのアーマチャディスク(1)とを有し、前記コイルキャリアとアーマチャディスクとの間の互いの軸方向の距離を変化させることが可能であり、
制動すべきシャフトの少なくとも1つのハブ上の少なくとも1つのロータ(7)を有する電磁的に切り替え可能なブレーキであって、
前記電磁的に切り替え可能なブレーキは、
前記コイルキャリア(3)およびアーマチャディスク(1)の向かい合う端面の間に配置された減衰部材を有し、
前記減衰部材は、前記コイルキャリア(3)および/またはアーマチャディスク(1)の中実な本体の一部であり、
前記減衰部材は、少なくとも1つの弾性タブ(12)と、フット(13)とで構成された一体型ダンパー構造(D)を有する、
電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項2】
前記コイルキャリア(3)および/またはアーマチャディスク(1)の前記中実な本体は、前記コイルキャリア(3)および/または前記アーマチャディスク(1)の一部分を前記一体型ダンパー構造(D)として構成するための少なくとも1つの機械加工によるスロット(14)を有する、ことを特徴とする
請求項1に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項3】
前記スロット(14)は、前記コイルキャリア(3)および/またはアーマチャディスク(1)の前記中実な本体の縁/外周、ならびに/あるいは前記アーマチャディスクの端面から始まる、ことを特徴とする
請求項2に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項4】
前記スロット(14)は、前記アーマチャディスクおよび/またはコイルキャリアの前記中実な本体が弾性タブ(12)を形成し、該弾性タブ(12)が該弾性タブ(12)外側の端部において前記フット(13)を収容し、あるいは前記フット(13)に接触するように、前記アーマチャディスク(1)および/またはコイルキャリア(3)のそれぞれの端面または縁/外周から固定の間隔または変化する間隔で前記中実な本体を貫いて延びている、ことを特徴とする
請求項2または3に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項5】
前記スロット(14)は、前記アーマチャディスクおよび/またはコイルキャリアのそれぞれの端面に平行に延び、前記アーマチャディスクおよび/またはコイルキャリアのそれぞれの端面から近い距離にある、ことを特徴とする
請求項2~4のいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項6】
前記コイルキャリア(3)および/またはアーマチャディスク(1)の前記本体は、長方形である、ことを特徴とする
請求項1~5のいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項7】
前記それぞれのスロット(14)は、前記アーマチャディスクおよび/またはコイルキャリアの角部領域に設けられている、ことを特徴とする
請求項2~5のいずれかを引用する請求項6に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項8】
前記弾性タブ(12)には、回転軸(A)に平行な方向のプレストレスが加えられている、ことを特徴とする
請求項1に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項9】
前記フット(13)は、前記弾性タブ(12)のボア(16)または対向する構成部品のボア(16)に配置され、突出高(U)を有しているピン(17)によって形成されている、ことを特徴とする
請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項10】
前記フット(13)は、前記弾性タブ(12)または対向する構成部品に取り付けられ、突出高(U)を有している金属薄板(18)から形成されている、ことを特徴とする
請求項1~9の少なくともいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項11】
前記フット(13)は、前記弾性タブ(12)のねじ穴(19)または対向する構成部品のねじ穴(19)に配置され、突出高(U)を有する調整ねじ(20)から形成されている、ことを特徴とする
請求項1~10のいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項12】
前記弾性タブ(12)または対向する構成部品は、フット(13)として機能する円筒形ローラまたはボールが埋め込まれるくぼみを備える、ことを特徴とする
請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【請求項13】
前記弾性タブ(12)あるいは前記アーマチャディスク(1)または前記コイルキャリア(3)は、前記弾性タブ(12)を他方の構成部品から押し離すことができる調整ねじ(20)が螺合するねじ穴(19)を備える、ことを特徴とする
請求項1~12のいずれか一項に記載の電磁的に切り替え可能なブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主たる請求項の冒頭部分によるフェイルセーフブレーキおよび作動電流ブレーキのための一体型ダンパー構造を備えるアーマチャディスクまたはコイルキャリアに関する。この場合、フェイルセーフブレーキは、好ましくは、例えば電磁解除ばね圧ブレーキまたは永久磁石ブレーキなどの摩擦ブレーキを含む。
【背景技術】
【0002】
フェイルセーフブレーキは、一般に、外部からのエネルギの供給がないとき、すなわち例えば電流が流れていない状態において、ブレーキ効果を発揮するブレーキシステムを意味すると理解される。作動電流ブレーキは、反対の原理で作動する。したがって、作動電流ブレーキは、一般に、ブレーキ効果の発揮を可能にするために外部からのエネルギの供給を必要とするブレーキシステムを意味すると理解される。これには、とくには、いわゆるポールフェイスブレーキが含まれる。
【0003】
フェイルセーフ電流ブレーキは、とりわけ、ノイズに敏感な応用の分野で使用される。これらには、例えば、乗客用リフトあるいは劇場のステージにおける壇またはロープホイストが含まれる。ブレーキの役割として、静的荷重の保持および緊急事態における制御されない駆動部の運動の減速が挙げられる。
【0004】
上述のブレーキは、通常の動作においては、開かれるか、あるいは閉じられるかだけであり、これらがきわめて頻繁に発生する可能性がある。駆動部が移動のために解放されるか、あるいは静的荷重が保持される。通常の動作において、減速は、調整される駆動部によって引き継がれる。
【0005】
このような通常の動作において、ブレーキの開閉に起因する切り替えノイズを、周囲に悪影響を与えないように、可能な限り低くする必要がある。とくには、近隣の人々の幸福を損なうものであってはならない。また、ノイズの発生につながりかねない不要な振動を可能な限り低く抑えることも重要である。
【0006】
緊急の場合に、切り替えノイズおよび制動ノイズは、副次的な役割を果たす。
【0007】
ブレーキからの切り替えノイズを低減するためのいくつかの可能性が、先行技術から知られている。剛性の異なる複数の弾性要素をコイルキャリアとアーマチャディスクとの間に配置することが、欧州特許第1423626号明細書で提案されている。ここでは、ブレーキの開状態および閉状態において、より剛性の低い要素が、アーマチャディスクに接触すると同時に、コイルキャリアに接触するはずである。ここでは、調整ねじによって減衰要素のバイアスを可変にすることも提案されている。
【0008】
この種のノイズの減衰(damping)は、好ましくはエラストマーで実行される。これらは結果として温度とともに変化する剛性を有するがゆえに、ノイズ低減効果は、限られた温度範囲においてのみ効果的である。さらに、これらのダンパーは、戴荷時と除荷時との間で比較的大きい力のヒステリシスを呈する。
【0009】
さらに、調整ねじの助けによるこの減衰システムの調整には、特別な訓練を受けた従業員が必要である。減衰システムの調整は、時間の消費および金銭の支出も意味する。
【0010】
米国特許第9638272号明細書において、コイルキャリアとアーマチャディスクとの間に配置される減衰プレートが提案されている。これが、アーマチャディスクの動きに伴って弾性変形し、したがって減衰力を発生させる。
【0011】
好ましくはばね鋼で製作される減衰プレートは、大型の形態で設計されている。コイルキャリアの内側および外側磁極の大部分をカバーする。これは、コイルキャリアとアーマチャディスクの間に配置されるため、コイルキャリアとアーマチャディスクとの間のエアギャップが均一になるように設計されなければならないがゆえに、厚さおよび平坦性に関して高い精度が必要である。減衰プレートは、エアギャップの公差の連鎖において、エアギャップの全体の公差の状況を悪化させる追加のサイズを呈する。エアギャップの領域の不正確さは、磁気抵抗の増加につながる可能性があり、これは、磁気回路の引張力の低下として現れる可能性がある。
【0012】
均一に大きいエアギャップ、したがってアーマチャの均一な降下または引き付けは、高い精度によってのみ可能にできる。不整がアーマチャディスクの斜め運動として現れる可能性があり、結果として、切り替えノイズが増加する可能性がある。
【0013】
独国特許出願公開第102017000846号明細書は、アーマチャディスクとコイルキャリアとの間に配置される減衰プレートを提案している。減衰プレートは、ブレーキの解除時にクッション要素として機能するように意図された円周全体に分布したいくつかの隆起部を有する。
【0014】
アーマチャディスクが下がった状態にあるとき、減衰プレートにプリテンションが加えられていないため、アーマチャディスクがコイルキャリアへと引き付けられたときに発生する切り替えノイズを効果的に減衰させることが不可能である。
【0015】
また、プレス/曲げによる構成部品として提示される減衰プレートは、その寸法精度に関して望ましくない不正確さを免れない。これらが、コイルキャリアとアーマチャディスクとの間の磁束を妨げる減衰プレートとアーマチャディスクとの間のギャップの形で現れる可能性がある。
【0016】
技術水準は、切り替えノイズを減衰させるためのさまざまな考え方に関係する電磁的に切り替え可能なブレーキおよび同様の装置のさらなる例を提示している。以下の特許刊行物、すなわち独国特許第19622983号明細書、独国特許出願公開第19925173号明細書、独国特許出願公開第102013001899号明細書、独国特許出願公開第102007025081号明細書、および独国特許出願公開第1600229号明細書が、さらなる例として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第1423626号明細書
【文献】米国特許第9638272号明細書
【文献】独国特許出願公開第102017000846号明細書
【文献】独国特許第19622983号明細書
【文献】独国特許出願公開第19925173号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013001899号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007025081号明細書
【文献】独国特許出願公開第1600229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、電磁的に切り替え可能なブレーキの切り替えノイズの減衰を説明する電磁的に切り替え可能なブレーキに関する先行技術に対する技術的改善であって、簡単なやり方での製造および組み込みが可能である技術的改善を提案することである。さらに、できるだけ広い温度範囲にわたって可能な限り一様に機能しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、この目的は、主たる請求項の特徴によって達成される。一体型ダンパーは、隆起部を有する弾性タブとして提示される。以下では、この隆起部を、フットと呼ぶ。ブレーキ回路ごとに1つ以上のそのような弾性タブを設けることができる。タブは、アーマチャディスクまたはコイルキャリアの側面に位置することができ、アーマチャディスクまたはコイルキャリアと同じ構成部品から作られる。フットは、必ずしも弾性タブの一部である必要はない。これは、対向する構成部品上で行われてもよい。フットの高さは、ブレーキのエアギャップよりも大きい。したがって、タブは、常に対向する構成部品に接触し、プリテンション下にある。アーマチャディスクがコイルキャリアの方向に移動する場合、1つ以上のタブが弾性変形し、結果として生じる反力が、アーマチャディスクの動きに対抗して、コイルキャリアへのアーマチャディスクの衝突をより穏やかにし、ノイズをより静かにする。アーマチャディスクがコイルキャリアから遠ざかる方向に移動する場合、設けられた圧縮ばねよりも不釣り合いに大きな力を電磁石が依然として有する限りにおいて、タブのプリテンションが、アーマチャディスクのより早期の移動をもたらす。これにより、アーマチャディスクの動きもより低速になり、ブレーキロータに衝突するときのノイズが静かになる。
【0020】
少なくとも一体型ダンパー構造の弾性タブは、コイルキャリアまたはアーマチャディスクに組み込まれているため、構成部品自体と同じ材料で構成されている。それらの機能ゆえに、アーマチャディスクおよびコイルキャリアは、通常は軟磁性鋼で作られる。プラスチックおよびエラストマーと比較して、これらの材料は、ブレーキに関連する温度範囲(-40℃~+120℃)において剛性の変化がはるかに小さい。したがって、一体型ダンパー構造は、この温度範囲において均一に機能する。
【0021】
また、一体型ダンパー構造の製造を、加工機および工具に応じて、アーマチャディスクまたはコイルキャリアについての他の加工工程と同じ設定で行うことができることも好都合である。この事実は、一体型ダンパー構造の精度にとって有益であると同時に、経済的観点からも好都合である。
【0022】
弾性タブの長さおよび厚さの設計により、一体型ダンパー構造の剛性を、ブレーキにおける力に適合させることが可能である。一体型ダンパー構造の予荷重を、フットの高さによって決定することができる。
【0023】
一体型ダンパー構造のフットが、弾性タブと同じ構成部品から作られ、あるいは対向する構成部品に組み込まれ、もしくは取り付けられる場合、ブレーキの組み立て時の減衰システムの調整は不要である。したがって、ブレーキの組み込みに必要な労力が軽減される。
【0024】
タブに穴を取り入れることも可能である。ピンをこの穴に押し込み、あるいは接着することができる。これは、弾性タブのフットとして機能する。結果として、一体型ダンパー構造のプリテンションを、ピン表面と弾性タブとの間の距離によって事前に設定することができる。
【0025】
弾性タブを、最初に平たく、すなわちフットを備えずに製作することも可能である。次いで、これを、金属薄板の形態で接着することができる。
【0026】
フットの代わりに、半円形の溝をタブに加工し、弾性タブのフットとして機能する硬化させた円筒形ローラを溝に挿入することも可能である。アーマチャディスクの締め付けおよび解放時に、弾性タブがこれらの円筒形ローラ上で回転運動を実行できるため、フットの摩耗が減少する。
【0027】
弾性タブのフットは、エンボス加工によって製造することも可能である。この目的のために、押しのけられた材料が反対側にフットの形態で突出するように、プレスによってタブに片面から凹部をプレスすることができる。
【0028】
ねじ穴をタブに取り入れることも可能である。この場合、ねじがタブのフットとして機能することができる。フットの高さを、ブレーキの組み込みの前、最中、または後に調整することができる。したがって、プリテンションが調整可能である。
【0029】
また、弾性タブに設けられたねじ穴およびねじ込みねじを使用して、弾性タブを弾性タブの大元の構成部品(アーマチャディスクまたはコイルキャリア)から押し離すことも可能である。この実施形態において、弾性タブをフットを備えずに設けることも可能である。フットは、弾性タブの設定された変形によって形成される。
【0030】
最終的には説明されていない一体型ダンパー構造の実施形態を、アーマチャディスクおよび/またはコイル支持体の側面に実装することができる。これらの構成部品の外側の輪郭の幾何学的設計は、副次的な役割しか果たさない。一体型ダンパー構造を、長方形、正方形、三角形、円形、楕円形、または多角形のアーマチャディスクおよびコイルキャリアに統合することができる。
【0031】
本明細書に記載の発明に加えて、アーマチャディスクおよび/またはコイルキャリアを、さらにショックアブソーバを備えて設計することができる。これは、例えば、エラストマー、プラスチック、セルロース、または繊維材料であってよい。このようなショックアブソーバは、プリテンション下になく、ブレーキが閉じているときにのみアーマチャディスクまたはコイルキャリアに接触する。このようなショックアブソーバの助けにより、アーマチャディスクがコイルキャリアに衝突するときのノイズをさらに減らすことができる。
【0032】
先行技術に対する本発明の利点は、一体型ダンパー構造を、アーマチャディスクまたはコイルキャリアを製造する過程において統合できることである。調整可能にすることも、調整不可能にすることも可能である。調整不可能な場合、ブレーキの組み立てが簡単になる。さらに、一体型ダンパー構造は、周囲の温度への依存度が低いため、より広い温度範囲での使用が可能になる。さらに、ブレーキを開閉するときの一体型ダンパー構造の力のヒステリシスは、既知のダンパーシステムと比較して小さいことが、経験的に明らかになっている。
【0033】
本発明の目的は、主たる請求項の特徴によって達成される。本発明のさらなる好都合な詳細が、従属請求項および本発明の種々の典型的な実施形態を説明する後述の図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、いわゆる長方形ブレーキを示している。
図1.1】図1.1は、本発明による一体型ダンパー構造を備えた上述の長方形ブレーキを全体の断面図にて示している。
図1.2】図1.2は、本発明による一体型ダンパー構造を備えた長方形ブレーキの詳細を示している。
図1.3】図1.3は、わずかに変更された一体型ダンパー構造を備えたこのような長方形ブレーキの別の詳細を示している。
図2図2は、本発明による一体型ダンパー構造を備えた長方形ブレーキのアーマチャディスクを全体の断面図にて示している。
図3図3は、一体型ダンパー構造を備えた長方形ブレーキのコイルキャリアを全体の断面図にて示している。
図4図4は、本発明によるダンパー構造を形成するためのさまざまなスロット輪郭を有する長方形ブレーキの3つのアーマチャディスクを示している。
図5図5は、直線的なスロット輪郭を有する長方形ブレーキのアーマチャディスクを示している。
図6図6は、フットを形成するためのピンが挿入された一体型ダンパー構造を備えたさらなるアーマチャディスクの一部分の断面を示している。
図7図7は、金属薄板が配置された本発明による一体型ダンパー構造を備えたアーマチャディスクを示している。
図8図8は、調整ねじを有する一体型ダンパー構造を備えたアーマチャディスクの一部分の断面を示している。
図9図9は、ジャッキねじを有する一体型ダンパー構造を備えたアーマチャディスクの一部分の断面を示している。
図9A図9Aは、ボールまたはローラの形態のフットを有する一体型ダンパー構造を備えたアーマチャディスクの一部分の断面を示している。
図10図10は、本発明による極面スロットの形態の一体型ダンパー構造を備えたアーマチャディスクの一部分の側面図および上面図を示している。
図11図11は、弾性周状タブをスロットが外周へと開いている開放構造として有している本発明による一体型ダンパー構造を備えた円形アーマチャディスクを示している。
図12図12は、弾性周状タブをスロットが外周に平行な一部分を延びている閉じた構造として有している一体型ダンパー構造を備えた同様の円形アーマチャディスクを示している。
図13図13は、一体型ダンパー構造を周辺の環状弾性タブの形態で外周に備えた円形アーマチャディスクを示している。
図14図14は、本発明による一体型ダンパー構造を有するが、内部の一連の動きは機能として逆であるフェイルセーフ設計の電磁解除ばね圧ブレーキの斜視図を示している。
図15図15は、本発明による一体型ダンパー構造を有するが、内部の一連の動きは機能として逆であるフェイルセーフ設計の電磁解除ばね圧ブレーキの斜視図を示している。
図15.1】図15.1は、図15の主題を全体の断面図にて示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、同じロータ(7)に対して作用する2つのブレーキ回路で構成されたフェイルセーフ構造の電磁解除ばね圧ブレーキ(FDB)の斜視図を示している。これは、乗客用エレベータの分野における冗長フェイルセーフブレーキの一般的な設計である。ここに示されているばね圧ブレーキ(FDB)の一種類においては、並列に配置された2つのアーマチャディスク(1)が、コイルキャリア(3)に割り当てられている。コイルキャリア(3)は、各々のアーマチャディスク(1)のための個別の磁気コイル(5)および個別の圧縮ばね(4)を含んでいる。この例において、ばね付勢ブレーキ(FDB)は、いくつかのねじ(11)を使用してモータ端部シールド(M)にねじ止めされている。さらに、フランジプレート(2)が、モータ端部シールド(M)とロータ(7)との間に配置されている。
【0036】
図1.1は、図1に示した両方のブレーキ回路をずらして通過する断面全体を示している。圧縮ばね(4)と磁石コイル(5)とを含むコイルキャリア(3)が、モータ端部シールド(M)に堅固に取り付けられている。アーマチャディスク(1)は、ブシュ(6)によって回転できないように案内され、回転軸(A)に沿って軸方向に移動可能である。両面に有機摩擦ライニング(8)が接続された摩擦ライニングキャリア(9)で構成されるロータ(7)が、シャフト(10)に回転不能に接続され、回転軸(A)を中心として回転することができ、回転軸(A)に平行に軸方向に移動することができる。フランジプレート(2)は、モータ端部シールド(M)とブシュ(6)との間にしっかりと固定されている。
【0037】
ばね付勢ブレーキ(FDB)のブレーキ作用は、ロータ(7)が少なくとも1つのアーマチャディスク(1)とフランジプレート(2)との間に挟まれることによって生み出される。必要な軸方向の力は、圧縮ばね(4)によって加えられる。したがって、シャフト(10)は、回転に関して固定された様相でシャフト(10)に接続されたロータ(7)によって保持され、回転軸(A)を中心とするシャフト(10)の回転が防止される。
【0038】
このばね適用ブレーキ(FDB)を開くために、磁気コイル(5)が電源に接続される。結果として生じる磁場が、圧縮ばね(4)の力に逆らってアーマチャディスク(1)をコイルキャリア(3)の方向に引っ張り、その結果、ロータ(7)が解放され、ブレーキ作用が解除される。したがって、シャフト(10)は自由に回転できる。
【0039】
ここで、一体型ダンパー構造(D)が、アーマチャディスク(1)に統合されている。一体型ダンパー構造(D)は、弾性タブ(12)を含み、弾性タブ(12)は、アーマチャディスク(1)にスロット(14)を介して機械加工されているが、それでもなおアーマチャディスク(1)に材料がつながっている。弾性タブ(12)のフット(13)が、弾性ストラップ(12)のうちのコイル支持側に面する側に配置されている。
【0040】
弾性タブ(12)のフット(13)は、アーマチャディスク(1)よりも突出高(U)だけ突出しており、エアギャップ(15)の幅よりも高さが高い。エアギャップ(15)は、非通電時のばね付勢ブレーキ(FDB)のアーマチャディスク(1)とコイルキャリア(3)との間の距離として定義される。これは、典型的には、0.05mm~1.0mmである。したがって、弾性タブ(12)はプリテンション下にあり、したがって、アーマチャディスク(1)をコイルキャリア(3)から遠ざける力を生じさせる。
【0041】
ばね圧ブレーキ(FDB)の開放時には、アーマチャディスク(1)とコイルキャリア(3)との間のエアギャップ(15)が小さくなるため、弾性タブ(12)のたわみが大きくなる。したがって、結果として生じる力が大きくなる。弾性タブ(12)の剛性を、弾性タブの長さおよび厚さの設計によって操作することができる。同時に、フット(13)の突出高(U)を使用して、弾性タブ(12)のプリテンションを調整し、したがって結果として生じる力を調整することができる。
【0042】
結果としての力は、電源がオフにされたとき、磁場の消滅の初期段階において、アーマチャディスク(1)をコイルキャリア(3)から遠ざける。アーマチャディスク(1)は、電磁場からの力がまだ大きいときに動き始める。この動きは比較的低速であるため、アーマチャディスク(1)がロータ(7)に衝突するときのノイズは小さい。
【0043】
ばね圧ブレーキ(FDB)が電源に接続されている場合、磁力が高まり、アーマチャディスク(1)を圧縮ばね(4)のばね力に逆らってコイルキャリア(3)に引き寄せる。弾性タブ(12)がより強くプリテンションされ、したがって力をますます蓄積し、これが磁力に対抗して作用し、アーマチャディスク(1)の速度を低下させる。これにより、アーマチャディスク(1)がコイルキャリア(3)に衝突するときのノイズが静かになる。
【0044】
図1.2は、図1.1からの詳細を、変形およびエアギャップ(15)を大きく誇張して示している。ここで、アーマチャディスク(1)は、一体型ダンパー構造(D)を有している。フット(13)を備えた弾性タブ(12)が、スロット(14)によってアーマチャディスク(1)から分離されている。突出高(U)を有するフット(13)が、コイルキャリア(3)に接触している。この図は、ばね付勢ブレーキ(FDB)の開状態を示しており、したがって、アーマチャディスク(1)は、コイルキャリア(3)に電磁石の力によって引き付けられている。この力および弾性タブ(12)のプリテンションが、誇張された表現で示されている弾性タブ(12)の変形をもたらす。変形により、突出高(U)がエアギャップ(15)よりも大きくなる。
【0045】
図1.3は、図1.1からの詳細を、エアギャップ(15)を大きく誇張して示している。ここでのアーマチャディスク(1)は、スロット(14)によってアーマチャディスク(1)から分離された弾性タブ(12)を備える一体型ダンパー構造(D)を有する。ここで、フット(13)は、コイルキャリア(3)側に位置している。ばね付勢ブレーキ(FDB)の閉状態が示されており、したがってアーマチャディスク(1)は、圧縮ばね(4)によってコイルキャリア(3)から遠ざかる方向に押されている。この状態において、突出高(U)は少なくともエアギャップ(15)と同じ大きさである。
【0046】
図2は、図1および図1.1のばね圧ブレーキ(FDB)において使用することができ、一体型ダンパー構造(D)を含んでいるアーマチャディスク(1)の断面を示している。アーマチャディスク(1)の角部に取り入れられ、フット(13)を有する弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)の残りの部分から区切っているスロット(14)を見て取ることができる。
【0047】
図3は、長方形の設計のばね付勢ブレーキ(FDB)のコイルキャリア(3)の断面を示しており、コイルキャリア(3)が、合計2つのブレーキ回路のための2つの個別のマグネットコイル(5)および個別の圧縮ばね(4)のための凹部を有している。コイルキャリア(3)は、一体型ダンパー構造(D)を含む。弾性タブ(12)をコイルキャリア(3)の残りの部分から区切るスロット(14)を見て取ることができる。
【0048】
図4は、図1および図1.1のばね付勢ブレーキ(FDB)において使用することができる3つのアーマチャディスク(1)の断面を示している。これらの各々は、一体型ダンパー構造(D)を含んでいる。アーマチャディスク(1)の角部へと機械加工され、弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)の残りの部分から区切っているスロット(14)を、見て取ることができる。スロット(14)は、さまざまな輪郭を有している。これらを、曲線または直線にて処理することが可能である。各々のスロット(14)は、アーマチャディスク(1)の角部に取り入れられてよく、あるいはアーマチャディスク(1)の一辺の全体にわたって延びてもよい。
【0049】
図5は、一体型ダンパー構造(D)を備えたアーマチャディスク(1)を、正面図および側面図にて示している。アーマチャディスク(1)の両端に、弾性タブ(12)のフット(13)が配置されている。これらは、アーマチャディスク(1)の極面に配置され、突出高(U)を有する。スロット(14)は、極面に平行な平面内を延びている。
【0050】
図6は、一体型ダンパー構造(D)を備えたアーマチャディスク(1)を示している。ここでもやはり、スロット(14)が弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)から分離している。しかしながら、弾性タブ(12)は、アーマチャディスク(1)にしっかりと接続されたままである。弾性タブ(12)は、その自由端にボア(16)を有する。ボア(16)内に、弾性タブ(12)のフット(13)として機能するピン(17)が接着または圧入されて固定され、アーマチャディスク(1)の上方に突出高(U)だけ突出する。
【0051】
図7は、一体型ダンパー構造(D)を備えたアーマチャディスク(1)を側面図において示している。ここでもやはり、スロット(14)が弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)から分離している。しかしながら、弾性タブ(12)は、アーマチャディスク(1)にしっかりと接続されたままである。弾性タブ(12)は、その自由端に金属シート(18)を有する。これは、接着、焼結、または溶接によって弾性タブ(12)にしっかりと接続され、この場所で突出高(U)を有する弾性タブ(12)のフット(13)として機能する。
【0052】
図8は、一体型ダンパー構造(D)を備えたアーマチャディスク(1)を示している。ここでもやはり、スロット(14)が弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)から分離している。しかしながら、弾性タブ(12)は、アーマチャディスク(1)にしっかりと接続されたままである。弾性タブ(12)は、ねじ穴(19)を有する。調整ねじ(20)がねじ穴(19)にねじ込まれ、弾性タブ(12)のフット(13)として機能する。調整ねじ(20)の調整可能な位置を使用して、調整ねじ(20)の弾性タブに対する突出高(U)、したがってアーマチャディスク(1)に対する突出高(U)を調整することができる。このようにして、ばね付勢ブレーキ(FDB)において弾性タブ(12)のプリテンションを調整することができる。
【0053】
図9もやはり、調整可能な一体型ダンパー構造(D)の一変種を示している。これは、理解を容易にするために、ここでは変形を誇張して図示されている。ここでもやはり、スロット(14)が弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)から分離している。弾性タブは、調整ねじ(20)がねじ込まれるねじ穴(19)を有する。ここで、弾性タブ(12)を、調整ねじ(20)をねじ込むことによってアーマチャディスク(1)から押し離すことができ、これにより、弾性タブ(12)がアーマチャディスク(1)に対するずれを被る。したがって、この一変種は、別個のフット(13)を必要としない。弾性タブの最外縁が、フット(13)の機能を果たし、対向する構成部品に接触する。この一変種においては、調整ねじ(20)をさらにねじ込むほど、弾性タブ(12)がアーマチャディスク(1)からさらに押し離され、弾性タブ(12)のプリテンションが増加する。ねじ穴(19)をタブの下方の構成部品に設けることも、同様に考えられる。
【0054】
図9Aは、一体型ダンパー構造(D)を備えたアーマチャディスク(1)を示している。ここでもやはり、スロット(14)が弾性タブ(12)をアーマチャディスク(1)から分離している。しかしながら、弾性タブ(12)は、アーマチャディスク(1)にしっかりと接続されたままである。弾性タブ(12)は、自由端の外側にくぼみを有する。弾性タブ(12)のフット(13)として機能する円筒形ローラ(21)またはボール(21)が、くぼみに埋め込まれて固定されている。
【0055】
図10は、アーマチャディスク(1)の一体型ダンパー構造(D)のさらなる変種を示している。ここで、スロット(14)は、アーマチャディスク(1)の極面に垂直に延びている。弾性タブ(12)の剛性は、弾性タブ(12)自体の厚さによってではなく、弾性タブ(12)とアーマチャディスク(1)との間の残りの断面の厚さによって決定される。弾性タブ(12)のフット(13)は、ここでは、やはりアーマチャディスク(1)の一部であり、アーマチャディスク(1)にしっかりと接続されている。フット(13)を、好ましくは、アーマチャディスク(1)の極面の機械加工の一部として製造することが可能である。
【0056】
図11は、一体型ダンパー構造(D)を備えた円形の設計のアーマチャディスク(1)を示している。スロット(14)は、極面から垂直かつ完全にアーマチャディスク(1)を貫通している。スロット(14)は、片側においてアーマチャディスク(1)につながったままである円形リングの一部分を描く。スロット(14)を、アーマチャディスクに、例えばフライス加工、侵食、ウォータージェット、またはガス火炎切断によって形成することができ、あるいはレーザ切断によって形成することができる。ここで、弾性タブ(12)は、やはりスロット(14)によってアーマチャディスク(1)から分離されている。いずれの場合も、フット(13)が、弾性タブ(12)の自由端の領域に配置される。
【0057】
図12は、一体型ダンパー構造(D)を備えた円形構造のアーマチャディスク(1)を示している。スロット(14)は、やはり極面から垂直かつ完全にアーマチャディスク(1)を貫通している。ここで、スロット(14)は、弾性タブ(12)を円形リングの一部分の形態で分離しているが、それらは両端においてアーマチャディスク(1)につながったままである。フット(13)が、いずれの場合も、弾性ストラップ(12)の中央に配置されている。
【0058】
図13は、一体型ダンパー構造(D)を備えた円形構造のアーマチャディスク(1)を示している。ここでのスロット(14)も、アーマチャディスク(1)の極面に平行に延び、全周にわたって延びている。これにより、アーマチャディスク(1)の構造ゆえに貫通穴で中断されてよい板ばねに類似した周状の弾性タブ(12)がもたらされる。ここで、周状の弾性タブ(12)は、周辺の円形フット(13)を有する。
【0059】
さらに、図14図15、および図15.1は、本発明による一体型ダンパー構造を、運動の進行が機能的に逆であるブレーキにも使用できることを、明確にすることを意図している。したがって、アーマチャディスクがモータ端部シールド/機械の壁に堅固に接続され、ブレーキが開閉されるときにコイルキャリアが軸方向に移動するブレーキが考えられる。この場合、ロータは、フランジプレート/モータ端部シールドとコイルキャリアとの間に挟まれる。
【0060】
図14は、ロータ(7)に作用する2つのブレーキ回路で構成された閉回路構造の電磁解除ばね付勢ブレーキ(FDB)の斜視図を示している。ここに示されているばね付勢ブレーキ(FDB)の一変種においては、アーマチャディスク(1)が動かぬように取り付けられ、2つの浮動コイルサポート(3)が配置されている。コイルキャリアの各々が、少なくとも1つの磁気コイル(5)および個別の圧縮ばね(4)を含んでいる。この例において、アーマチャディスク(1)は、いくつかのねじ(11)を使用してモータ端部シールド(M)にねじ止めされている。さらに、フランジプレート(2)が、モータ端部シールド(M)とロータ(7)との間に配置されている。ここで説明されるばね圧ブレーキ(FDB)に電気エネルギが供給されていない場合、コイルキャリア(3)は、圧縮ばね(4)によってアーマチャディスク(1)から互いに押し離され、したがってロータ(7)がコイルキャリア(3)とフランジプレート(2)との間に摩擦で挟まれる。ここで説明されるばね付勢ブレーキ(FDB)の一変種においては、一体型ダンパー構造(D)を、コイルキャリア(3)およびアーマチャディスク(1)の両方に統合することができる。
【0061】
図15および図15.1は、1つのロータ(7)に作用する2つのブレーキ回路で構成されたフェイルセーフ設計の電磁解除ばね付勢ブレーキ(FDB)の三次元図または縦断面図を示している。ここに示されているばね付勢ブレーキ(FDB)の一変種においては、2つの別個の動かぬように取り付けられたアーマチャディスク(1)が、2つの浮動コイルキャリア(3)に割り当てられている。コイルキャリアの各々が、少なくとも1つの磁気コイル(5)および個別の圧縮ばね(4)を含んでいる。この例において、アーマチャディスク(1)は、いくつかのねじ(11)を使用してモータ端部シールド(M)にねじ止めされている。さらに、フランジプレート(2)が、モータ端部シールド(M)とロータ(7)との間に配置されている。ここで説明されるばね付勢ブレーキ(FDB)に電気エネルギが供給されていない場合、コイルキャリア(3)は、圧縮ばね(4)によってアーマチャディスク(1)から互いに押し離され、したがってロータ(7)がコイルキャリア(3)とフランジプレート(2)との間に摩擦で挟まれる。ここで説明されるばね付勢ブレーキ(FDB)の一変種においては、一体型ダンパー構造(D)がアーマチャディスク(1)に統合されている。
【0062】
本発明による電磁的に切り替え可能なブレーキにおいては、フット(13)を備える弾性タブ(12)が、ブレーキの開状態および閉状態において、対向する構成部品に接触することができ、あるいは弾性タブ(12)が、フット(13)を備えた対向する構成部品に接触し、あるいは弾性タブ(12)が、対向する構成部品に直接接触する。
【0063】
好ましくは、弾性タブ(12)は、関連するアーマチャディスクまたはコイルキャリアと同様に、鉄系材料で作られる。
【0064】
上述の電磁的に切り替え可能なブレーキは、コイル(5)の非通電時に、好ましくは圧縮ばね(4)からの恒久的に作用する力によって動かされるアーマチャディスク(1)が、コイルキャリア(3)によって押し返されることで、シャフト(10)に回転に関して固定された様相で接続されたロータ(7)を制動する、フェイルセーフ原理に基づくブレーキ(FDB)であってよい。同時に、この原理によれば、アーマチャディスク(1)は、恒久的な力に逆らう電磁石の力によってコイルキャリア(3)へと引き付けられる。
【0065】
上記段落に関係なく、電磁的に切り替え可能なブレーキは、アーマチャディスク(1)が回転に関して固定された様相でシャフト(10)に接続され、電磁石の力によってコイルキャリア(3)へと引き寄せられる、動作電流の原理に基づくブレーキであってもよい。
【0066】
本発明による一体型ダンパー構造(D)を備えた電磁的に切り替え可能なブレーキのコイルキャリア(3)またはアーマチャディスクディスク(1)の場合に、少なくとも1つの弾性タブ(12)を、コイルキャリアまたはアーマチャディスクの製造または加工の一部として、上述の構成部品から材料分離プロセスによって製作することができる。
【0067】
本発明による一体型ダンパー構造(D)を備えた電磁的に切り替え可能なブレーキのコイルキャリア(3)またはアーマチャディスク(1)の場合に、弾性タブ(12)の輪郭を、コイルキャリアまたはアーマチャディスクの製造または機械加工の文脈において、レーザカットを使用して製造することができる。
【0068】
本発明による弾性タブ(12)の輪郭を、ウォータージェット切断またはガス切断を使用して生成することも可能である。
【0069】
本発明によるこの電磁的に切り替え可能なブレーキのコイルキャリア(3)またはアーマチャディスク(1)は、弾性タブ(12)の輪郭がコイルキャリア(3)またはアーマチャディスク(1)の製造に使用される同じ機械加工プロセスで実現されるという点で、きわめて低コストかつ効率的なやり方で製造することが可能である。
【0070】
本発明による電磁的に切り替え可能なブレーキのコイルキャリア(3)またはアーマチャディスク(1)の場合に、該当のフット(13)をエンボス加工プロセスで製造することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
FDB ばね付勢ブレーキ
A 回転軸
M モータ端部シールド
D 一体型ダンパー構造
U 突出高
1 アーマチャディスク
2 フランジプレート
3 コイルキャリア
4 圧縮ばね
5 ソレノイド
6 ブシュ
7 ロータ
8 摩擦ライニング
9 摩擦ライニングキャリア
10 軸
11 ねじ
12 弾性タブ
13 フット
14 スロット
15 エアギャップ
16 ボア
17 ピン
18 金属薄板
19 ねじ穴
20 調整ねじ
21 円筒形ローラ/ボール
図1
図1.1】
図1.2】
図1.3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図15.1】