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特許7618550ガラスフィラーとその製造方法、及びガラスフィラーを含む樹脂組成物
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  • 特許-ガラスフィラーとその製造方法、及びガラスフィラーを含む樹脂組成物 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】ガラスフィラーとその製造方法、及びガラスフィラーを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 12/00 20060101AFI20250114BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20250114BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
C03C12/00
C03C3/091
C03C13/00
【請求項の数】 55
(21)【出願番号】P 2021526951
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024256
(87)【国際公開番号】W WO2020256143
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019115734
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 文
(72)【発明者】
【氏名】柳生 智宏
(72)【発明者】
【氏名】福地 英俊
(72)【発明者】
【氏名】倉知 淳史
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216637(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187471(WO,A1)
【文献】特開昭62-226839(JP,A)
【文献】特開平1-51345(JP,A)
【文献】特開2013-159546(JP,A)
【文献】特開2012-153582(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101012105(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
C08K3/40
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
10.5≦Al23≦18
0<R2O≦5
0≦RO≦12
0.01≦T-Fe23≦0.5
を含み、
SiO2+B23≧82、SiO2+B23+Al23≦98、及びLi2O>Na2
が成立する、
ガラス組成物を含むガラスフィラー。
ただし、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、ROは、MgO、CaO及びSrOから選ばれる少なくとも1種の酸化物である。
【請求項2】
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
10.5≦Al23≦15
0<R2O≦5
3≦RO≦12
を含み、
SiO2+B23≧82、SiO2+B23+Al23≦98、1≦MgO≦2、及び2≦CaO≦5
が成立する、
ガラス組成物を含むガラスフィラー。
ただし、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、ROは、MgO、CaO及びSrOから選ばれる少なくとも1種の酸化物である。
【請求項3】
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
0<Al23≦18
0<R2O≦5
2.16≦RO≦12
を含み、
i)SiO2+B23≧80、及びSiO2+B23+Al23≦99.9、並びに
ii)SiO2+B23≧78、SiO2+B23+Al23≦99.9、及び0<RO<10
の少なくとも一方と、
2.16≦SrO≦5
が成立する、
ガラス組成物を含むガラスフィラー。
ただし、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、ROは、MgO、CaO及びSrOから選ばれる少なくとも1種の酸化物である。
【請求項4】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
30<B23≦45
を含む、請求項3に記載のガラスフィラー。
【請求項5】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
40≦SiO2<58
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項6】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
40≦SiO2<55
を含む、請求項5に記載のガラスフィラー。
【請求項7】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
SiO2+B23≧82
SiO2+B23+Al23≦98
が成立する、請求項3に記載のガラスフィラー。
【請求項8】
重量%で表示して、
40≦SiO2<58
25≦B23≦40
10.5≦Al23≦15
0<R2O≦4
0.01≦Li2O≦1.5
0≦Na2O≦1.5
0≦K2O≦1
3≦RO<10
1≦MgO≦2
2≦CaO≦5
0≦SrO≦5
0.01≦T-Fe23≦0.5
を含み、Li2O>Na2Oが成立する、請求項1又は2に記載のガラスフィラー。
【請求項9】
重量%で表示して、
40≦SiO2<58
25≦B23≦40
7.5≦Al23≦18
0<R2O≦4
0≦Li2O≦1.5
0≦Na2O≦1.5
0≦K2O≦1
2.16≦RO<10
0≦MgO<10
0≦CaO<10
2.16≦SrO≦5
0≦T-Fe23≦0.5
を含む、請求項3に記載のガラスフィラー。
【請求項10】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
48≦SiO2≦51
33≦B23≦35
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項11】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
50≦SiO2≦53
32≦B23≦35
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項12】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
52≦SiO2≦54
31≦B23≦34
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項13】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
52≦SiO2≦55
30≦B23≦32
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項14】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
47≦SiO2≦52
25≦B23≦30
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項15】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
48≦SiO2≦53
28≦B23≦35
1≦MgO+CaO<3.5
を含む、請求項3又はに記載のガラスフィラー。
【請求項16】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
8≦Al23≦12.5
を含む、請求項に記載のガラスフィラー。
【請求項17】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
10≦Al23≦12.5
を含む、請求項16に記載のガラスフィラー。
【請求項18】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
13≦Al23≦17
を含む、請求項1又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項19】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
12≦Al23≦15
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項20】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.01≦Li23≦0.5
を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項21】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.05≦Li2O≦0.4
を含む、請求項20に記載のガラスフィラー。
【請求項22】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.01≦Na2O≦0.4
を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項23】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
Li2O>Na2
が成立する、請求項2又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項24】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.5≦MgO≦1.6
を含む、請求項1又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項25】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
2≦CaO≦3.5
を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項26】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.1≦SrO≦5
を含む、請求項1又は2に記載のガラスフィラー。
【請求項27】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.1≦MgO≦1
を含む、請求項1又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項28】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.5≦CaO≦2
を含む、請求項27に記載のガラスフィラー。
【請求項29】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
2≦MgO+CaO+SrO≦7
を含む、請求項27又は28に記載のガラスフィラー。
【請求項30】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
2≦MgO+CaO+SrO≦4
を含む、請求項1又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項31】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
1≦MgO≦2
2≦CaO≦5
を含む、請求項1又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項32】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.01≦T-Fe23≦0.5
を含む、請求項2又は3に記載のガラスフィラー。
【請求項33】
前記ガラス組成物が、重量%で表示して、
0.1≦T-Fe23≦0.3
を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項34】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
MgO/RO<0.8
が成立する請求項1~33のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項35】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
0.1≦MgO/RO≦0.5
が成立する請求項34に記載のガラスフィラー。
【請求項36】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
0.1≦MgO/(MgO+CaO)≦0.5
が成立する請求項1~35のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項37】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
BaO及びPbOが実質的に含まれていない、請求項1~36のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項38】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
TiO2が実質的に含まれていない、請求項1~37のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項39】
前記ガラス組成物において、重量%で表示して、
0<TiO2≦1
を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項40】
前記ガラス組成物の周波数1GHzにおける誘電率が4.35以下、
である、請求項1~39のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項41】
前記ガラス組成物の周波数1GHzにおける誘電正接が0.007以下、
である、請求項1~40のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項42】
前記ガラス組成物が粘度102dPasになる温度T2が1650℃以下、
である、請求項1~41のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項43】
前記ガラス組成物が粘度102dPasになる温度T2が1610℃以下、
である、請求項42に記載のガラスフィラー。
【請求項44】
前記ガラス組成物が粘度103dPasになる温度T3が前記ガラス組成物の失透温度TLよりも高い、請求項1~43のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項45】
フレーク状ガラス、チョップドストランド、ミルドファイバー、ガラス粉末、ガラスビーズ、フラットファイバー、及び薄片状ガラスから選ばれる少なくとも1つに該当する、請求項1~44のいずれか1項に記載のガラスフィラー。
【請求項46】
フレーク状ガラスである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項47】
チョップドストランドである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項48】
ミルドファイバーである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項49】
ガラス粉末である、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項50】
ガラスビーズである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項51】
フラットファイバーである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項52】
薄片状ガラスである、請求項45に記載のガラスフィラー。
【請求項53】
請求項1~52のいずれか1項に記載のガラスフィラーと、熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項54】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス組成物を溶融する工程と、溶融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含むガラスフィラーの製造方法。
【請求項55】
請求項1~52のいずれか1項に記載のガラスフィラーの製造方法であって、
前記ガラスフィラーを構成するガラス組成物が得られるように調製したガラス原料を溶融する工程と、溶融した前記ガラス原料を前記ガラスフィラーへと成形する工程と、を含むガラスフィラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィラーに関する。また、本発明は、ガラスフィラーの製造方法と、ガラスフィラーを含む樹脂組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が備える各種部品には、電気絶縁部材及び機構部材として樹脂組成物が広く使用されている。電気絶縁部材としては、SMT(surface mount technology)、FPC(flexible printed circuits)、ボード間、CPU(central processing unit)ソケット、メモリカード、カードエッジ、光コネクタ等に用いるコネクタハウジング、LCD(liquid crystal display)バックライト、コイル、フラット、トランス、磁気ヘッド等に用いるリアクタンス用ボビン、リレーケース、リレーベーススイッチ、リフローディップスイッチ、タクトスイッチ等に用いる開閉器、センサーケース、コンデンサケーシング、ボリュームケーシング、トリマーケーシング等が挙げられる。機構部品としては、光ピックアップ用のレンズホルダ及びピックアップベース、マイクロモータ用絶縁体及び端子、レーザプリンタ用ドラム等が挙げられる。樹脂組成物は、FPC用ベースフィルム、銅張積層板用ベースフィルム等のフィルムとしても使用されている。また、電子機器が備えるプリント回路板(printed circuit board)の一種にも樹脂組成物から構成される基板がある。電子部品が実装される前のプリント配線板(printed wiring board)にも樹脂組成物から構成される基板がある。以下、本明細書では、プリント回路板及びプリント配線板の双方を合わせて、「プリント基板(printed board)」と記載する。
【0003】
上記の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機充填材とを含み、必要に応じ、硬化剤、改質剤等をさらに含む。無機充填材としてガラスフィラーが使用されることがある。代表的なガラスフィラーはフレーク状ガラスである。近年、電子機器の小型化の要求と、高機能化を目的とした薄型化の要求とに応えるため、樹脂組成物には低誘電率化が求められ、それに応じてその構成材料にも低誘電率化が求められている。
【0004】
プリント基板にはガラス繊維がさらに含まれることがある。このガラス繊維にも低誘電率化が求められている。特許文献1~5には、低誘電率のガラス組成物から構成されたガラス繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-226839号公報
【文献】特表2010-508226号公報
【文献】特開2009-286686号公報
【文献】国際公開第2017/187471号
【文献】国際公開第2018/216637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ガラスフィラーについては低誘電率化の検討が十分に進められていない。ガラスフィラーを構成するためのガラス組成物には、誘電率が低いことと共に量産に適した特性温度を有することも求められている。ガラスフィラーの量産に重要なガラス組成物の特性温度としては、温度T3、すなわち粘度が103dPasとなる温度、が挙げられる。温度T2、T2.5、さらには失透温度TLも、そのガラス組成物がガラスフィラーの量産に適しているかを判断する指標となる。しかし、誘電率が低いガラス組成物は特性温度の調整が容易ではない。
【0007】
以上に鑑み、本発明は、誘電率が低く、量産に適した新規なガラス組成物を含むガラスフィラーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
5≦Al23≦15
0<R2O≦5
0<RO<15
を含み、
SiO2+B23≧80、及び/又は、SiO2+B23≧78かつ0<RO<10
が成立する、ガラス組成物を含むガラスフィラー、を提供する。
本明細書において、R2Oは、Li2O、Na2O及びK2Oから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、ROは、MgO、CaO及びSrOから選ばれる少なくとも1種の酸化物である。
【0009】
本発明は、別の側面から、
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
0<Al23≦18
0<R2O≦5
0≦RO≦12
を含み、
i)SiO2+B23≧80、及びSiO2+B23+Al23≦99.9、並びに
ii)SiO2+B23≧78、SiO2+B23+Al23≦99.9、及び0<RO<10
の少なくとも一方が成立する、ガラス組成物を含むガラスフィラー、を提供する。
【0010】
本発明は、別の側面から、
重量%で表示して、
40≦SiO2≦60
25≦B23≦45
0<Al23≦18
0<R2O≦5
3<RO<8
を含み、
SiO2+B23≧75、及びSiO2+B23+Al23<97
が成立する、ガラス組成物を含むガラスフィラー、を提供する。
【0011】
本発明は、別の側面から、
重量%で表示してSiO2+B23≧77が成立し、
周波数1GHzにおける誘電率が4.4以下であり、
粘度102dPasになる温度T2が1700℃以下、
である、ガラス組成物を含むガラスフィラー、を提供する。
【0012】
本発明は、また別の側面から、
本発明によるガラスフィラーと、熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物、を提供する。
【0013】
本発明は、また別の側面から、
上述のガラス組成物を溶融する工程と、溶融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含むガラスフィラーの製造方法、を提供する。ガラスフィラーの製造方法は、ガラスフィラーを構成する上述のガラス組成物が得られるように調製したガラス原料を溶融する工程と、溶融した前記ガラス原料を前記ガラスフィラーへと成形する工程と、を含む方法であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誘電率がより低く、量産に適した特性温度を有するガラス組成物を含むガラスフィラーを提供することができる。本発明によるガラスフィラーは、樹脂組成物の誘電率を低く抑えながら、ガラスフィラーの配合により樹脂組成物の諸特性を改善することに適している。この改善は、例えば、強度、耐熱性、寸法安定性の向上、線熱膨張係数の低下及び異方性の低減、成形時の収縮率の異方性の低減である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】フレーク状ガラスの一例を示す斜視図である。
図1B図1Aに示したフレーク状ガラスの平面図である。
図2】フレーク状ガラスの製造装置の一例を示す断面図である。
図3】チョップドストランドの製造装置の一例を示す断面図である。
図4】チョップドストランドの製造装置の一例を示す断面図である。
図5】フラットファイバーの一例を示す斜視図である。
図6】フラットファイバーの別の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において各成分の含有率を示す「%」表示は全て重量%である。「実質的に含まれない」とは、含有率が0.1重量%未満、好ましくは0.07重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満を意味する。この文言における「実質的に」は、上記を限度として工業原料から不可避的に混入する不純物を許容する趣旨である。各成分の含有率、特性その他の好ましい範囲は、以下において個別に記載する上限及び下限を任意に組み合わせて把握できる。
【0017】
以下においても、ガラス組成物の特性温度は、粘度が10ndPasとなる温度をTnと表記する(例えばT2.5は、そのガラス組成物の粘度が102.5dPasとなる温度を意味する)。誘電率は、厳密には比誘電率を意味するが、本明細書では慣用に従って単に誘電率と表記する。誘電率及び誘電正接は室温(25℃)での値である。以下の説明は、本発明を限定する趣旨ではなく、その好適な形態を示す意味で提示されている。
【0018】
[ガラス組成物の成分]
(SiO2
SiO2は、ガラスの網目構造を形成する成分である。SiO2は、ガラス組成物の誘電率を下げる作用を有する。SiO2の含有率が低過ぎると、ガラス組成物の誘電率を十分に低くすることができない。SiO2の含有率が高過ぎると、溶融時の粘性が高くなり過ぎて均質なガラス組成物を得ることが難しくなる。SiO2の含有率は、40%以上、45%以上、46%以上、さらには48%以上、特に49%以上が好ましく、場合によっては50%以上、さらに50.5%以上、51%以上、52%以上、53%以上であってもよい。SiO2の含有率は、60%以下、58%未満、56%以下、さらには55%未満、特に54.5%以下が好ましく、場合によっては54%以下、53%以下、52%以下、51%以下であってもよい。SiO2の含有率の好ましい範囲の一例は、40%以上58%未満であり、さらには40%以上55%未満である。また、SiO2の含有率は、40%以上49.95%以下とすることもできる。
【0019】
(B23
23は、ガラスの網目構造を形成する成分である。B23は、ガラス組成物の誘電率を下げると共に、溶融時のガラス組成物の粘性を下げ、脱泡性(泡抜け性)を向上させ、形成したガラスフィラーにおける泡の混入を抑制する作用を有する。一方で、B23は、ガラス組成物の溶融時に揮発しやすく、その含有率が過大となると、ガラス組成物として十分な均質性が得られ難くなったり、形成したガラスフィラーにおける泡の混入の抑制が不十分となる。B23の含有率は、25%以上、27%以上、29%以上、30%以上、さらには30%を超えることが好ましく、場合によっては30.5%以上、さらには31%以上、32%以上、33%以上、34%以上であってもよい。B23の含有率は、45%以下、43%以下、41%以下、さらには39%以下が好ましく、場合によっては38%以下、さらには36%以下、35%以下、34%以下、32%以下であってもよい。B23の含有率の好ましい範囲の一例は、30%を超え45%以下である。また、B23の含有率は、25%以上40%以下、25%以上29.9%以下、または31%以上40%以下とすることができる。
【0020】
(SiO2+B23)、(SiO2+B23+Al23
誘電率が十分に低いガラス組成物を得るためには、SiO2の含有率とB23の含有率の合計(SiO2+B23)を77%以上、78%以上、さらに80%以上に調整するとよい。(SiO2+B23)は、81%以上、82%以上、さらには83%以上が好ましく、場合によっては84%以上、さらには85%以上であってもよい。(SiO2+B23)は、90%以下、さらには87.5%以下であってもよい。(SiO2+B23)の値が高過ぎると、ガラス組成物が分相する傾向が助長されるからである。また、(SiO2+B23)は70%以上とすることができる。SiO2の含有率、B23の含有率、及びAl23の含有率の合計(SiO2+B23+Al23)は、その他の成分を許容するために、99.9%以下が好適である。(SiO2+B23+Al23)は、98%以下、97%以下、97%未満、さらには96%以下であってもよい。(SiO2+B23)と(SiO2+B23+Al23)との組み合わせの好ましい一例は、(SiO2+B23)が82%以上、(SiO2+B23+Al23)が98%以下である。また、(SiO2+B23+Al23)は、90%以上98%以下、または90%以上97%以下とすることができる。
【0021】
(SiO2とB23の好ましい組み合わせ)
誘電率がより低く、溶融しやすいガラス組成物を得るためには、SiO2とB23の含有率には好ましい範囲の組み合わせがある。第1の組み合わせは、SiO2の含有率が48~51%、好ましくは49~51%、より好ましくは50~51%であり、B23の含有率が33~35%、好ましくは34~35%の組み合わせである。第2の組み合わせは、SiO2の含有率が50~53%、好ましくは51~52%であり、B23の含有率が32~35%、好ましくは32~34%の組み合わせである。第3の組み合わせは、SiO2の含有率が52~54%、好ましくは52.5~54%であり、B23の含有率が31~34%、好ましくは32~34%の組み合わせである。第4の組み合わせは、SiO2の含有率が52~55%、好ましくは53~55%であり、B23の含有率が30~32%の組み合わせである。
【0022】
第5の組み合わせは、SiO2の含有率が47~52%、好ましくは48~51%、より好ましくは48.5~50.5%、特に好ましくは48.95~49.95%であり、B23の含有率が25~30%、好ましくは26~29.5%、より好ましくは26~29%の組み合わせである。第5の組み合わせにおいて、MgOの含有率とCaOの含有率との合計(MgO+CaO)は、3.5%以上、さらに4%以上が適しており、8%以下が適している。第6の組み合わせは、SiO2の含有率が48~53%、好ましくは49~52%であり、より好ましくは49~51.5%であり、場合によっては49~51%又は48.95~49.95%であり、B23の含有率が28~35%、好ましくは30~33%、場合によっては30.5~32.5%の組み合わせである。第6の組み合わせにおいて、(MgO+CaO)は、1%以上3.5%未満、好ましくは1~3%、より好ましくは1~2.5%、場合によっては1.5~2.5%である。
【0023】
(Al23
Al23は、ガラスの網目構造を形成する成分である。Al23は、ガラス組成物の化学的耐久性を高める作用を有する。一方で、Al23は、紡糸時におけるガラス組成物の失透を起こりやすくする。Al23の含有率は、5%以上、7.5%以上、8%以上、9%以上、さらには10%以上が好ましく、場合によっては10.5%以上、12%以上、13%以上であってもよい。Al23の含有率は、20%以下、18%以下、17%以下、さらには15%以下が好ましく、場合によっては14%以下、さらには13%以下、12.5%以下であってもよい。失透温度TLを温度T3よりも低い範囲に確実に制御したい場合に適したAl23の含有率の一例は12.3%以下である。Al23は、一般には溶融時のガラス組成物の粘性を高める成分と理解されている。しかし、SiO2+B23の値が高いガラス組成物では、Al23は特異的に溶融時の粘性を低下させる作用を奏しうる。
【0024】
Al23の含有率の好ましい範囲の例は、8~12.5%、特に10~12.5%である。上述したSiO2とB23の含有率の第1~4の組み合わせを採用する場合には、これらの範囲が特に適している。
【0025】
Al23の含有率の好ましい範囲の別の例は13~17%である。上述したSiO2とB23の含有率の第5の組み合わせを採用する場合には、Al23の含有率は13~17%が特に適している。Al23の含有率の好ましい範囲のさらに別の例は12~15%である。SiO2とB23の含有率の第6の組み合わせを採用する場合には、Al23の含有率は12~15%が特に適している。
【0026】
溶融時の粘性を低下させる作用を奏する成分としてはアルカリ金属酸化物が周知であるが、アルカリ金属酸化物の含有率を増加させると、同時に誘電率が増大する。これに対し、本発明による好ましいガラス組成物においては、Al23は特異的に溶融時の粘性を低下させる作用を有するが、誘電率を増大させる副作用がわずかである。
【0027】
(MgO)
MgOは、溶融時におけるガラス組成物の粘性を下げてガラスフィラーへの泡の混入を抑制し、ガラス組成物としての均質性を向上させる任意成分である。MgOの含有率は、0.1%以上、0.2%以上、さらには0.5%以上、0.6%以上、場合によっては0.8%以上、さらには1%以上であってもよい。MgOの含有率は、10%未満、8%以下、7%以下、5%以下が好ましく、場合によっては3%以下、さらには2%以下、特に1.6%以下であってもよい。MgOの含有率は、CaOの含有率との比を適切な範囲とするために、1.7%以下、1.5%以下、さらには1.2%以下、1%以下が好ましいこともある。ただし、その他の成分の含有率によっては、最適なMgOの含有率が2%以上、例えば2~8%、さらには2~5%、或いは3~5%になることもある。なお、MgOは、失透温度を下げる効果が大きく、そうでありながらアルカリ金属酸化物R2Oほどには誘電率を引き上げないため、R2Oより優先的に、言い換えるとR2Oより含有率が高くなるように、添加することが好ましい。
【0028】
MgOの含有率の好ましい範囲の例は、0.5~2%である。SiO2とB23の含有率の第1~4の組み合わせを採用する場合には、MgOの含有率は0.5~2%、さらに0.5~1.6%が特に適している。SiO2とB23の含有率の第5の組み合わせを採用する場合には、MgOの含有率は0.5~2%、さらに1~2%が特に適している。MgOの含有率の好ましい範囲の別の例は0.1~1%である。SiO2とB23の含有率の第6の組み合わせを採用する場合には、MgOの含有率は0.1~1%、さらには0.1%以上1%未満が特に適している。
【0029】
(CaO)
CaOは、ガラス原料の溶解性を向上させ、溶融時におけるガラス組成物の粘性を下げる任意成分である。CaOの作用はMgOに比べて大きい。CaOの含有率は、0.1%以上、0.5%以上、さらには1%以上、場合によっては1.5%以上、さらには2%以上であってもよい。CaOの含有率は、10%未満、7%以下、5%以下が好ましく、場合によっては4%以下、3.5%以下、3%以下、さらには2.5%以下であってもよい。なお、CaOは、MgO及びZnOに比べて、ガラス組成物の誘電率を増加させてしまう効果が大きい。MgOと同様の理由により、CaOも、アルカリ金属酸化物R2Oより優先的に、言い換えるとR2Oより含有率が高くなるように、添加することが好ましい。
【0030】
CaOの含有率の好ましい範囲の例は2~5%、さらに2~3.5%である。SiO2とB23の含有率の第1~5の組み合わせを採用する場合には、CaOの含有率は2~5%が特に適し、第1~4の組み合わせについては2~3.5%、第5の組み合わせについては2.5~5%がより適している。CaOの含有率の好ましい範囲の別の例は0.5~2%である。SiO2とB23の含有率の第6の組み合わせを採用する場合には、CaOの含有率は0.5~2%が特に適している。
【0031】
MgOの含有率とCaOの含有率との特に好ましい組み合わせの例としては、MgOが1~2%、CaOが2~5%を挙げることができる。この組み合わせは、SiO2とB23の含有率の第5の組み合わせを採用する場合に特に適している。
【0032】
(SrO)
SrOも、ガラス原料の溶解性を向上させ、溶融時におけるガラス組成物の粘性を下げる任意成分である。しかし、SrOは、MgO及びCaOと比較してガラス組成物の誘電率を高くするため、その含有率は制限することが望ましい。SrOの含有率は、1%以下、0.5%以下、さらには0.1%以下が好ましい。SrOは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0033】
SiO2とB23の含有率の第1~5の組み合わせを採用する場合には、SrOの含有率は0.1%以下が特に適している。この場合、SrOは実質的に含まれていなくてもよい。ただし、SrOは、その含有率が0.1~5%、さらに1~3.5%となるように添加してもよいことがある。SiO2とB23の含有率の第6の組み合わせを採用する場合には、SrOの含有率は0.1~5%、さらに1~3.5%が特に適している。特に第6の組み合わせにおいて、SrOは、当業者の技術常識に反し、誘電損失の低下、言い換えると誘電正接の低下に有効に作用しうることが見い出された。第6の組み合わせにおいて、CaOの含有率に対するSrOの含有率に対する比SrO/CaOは1を超えていてもよい。この場合、MgOの含有率に対するCaOの含有率に対する比CaO/MgOも1を超えていてもよい。
【0034】
(RO)
ROの含有率、すなわちMgO、CaO及びSrOの含有率の合計は、15%未満、12%以下、10%以下、10%未満、9.5%以下、8%以下、さらには7%未満、特に6%以下が好ましく、場合によっては5%以下、さらには4%以下であってもよい。ROの含有率が高過ぎると誘電率が十分に下がらないことがある。ROを構成する各成分は、個別には任意成分であるが、その少なくとも1つが含まれていること、すなわち含有率の合計が0%を超えていることが好ましい。ROの含有率は、1%以上、1.5%以上、2%以上、さらには2.5%以上が好ましく、場合によっては3%以上、さらには3.5%以上であってもよい。
【0035】
ROの含有率の範囲の好ましい例は、2~7%、特に2~4%である。
【0036】
(MgO/RO)
MgO/RO、すなわちROの含有率に対するMgOの含有率の比は、0.8未満、さらには0.7未満が好ましく、場合によっては0.5以下、0.4以下であってもよい。MgO/ROが大きくなると、ガラス組成物が分相する傾向が顕著になるため、ガラス組成物の均質性が損なわれることがある。一方で、ガラス組成物の誘電率を抑えるべく、MgO/ROは、0.1以上、さらには0.14以上が好ましく、場合によっては0.19以上であってもよい。MgO/ROは、好ましくは0.1~0.5である。
【0037】
(MgO/(MgO+CaO))
MgO/(MgO+CaO)、すなわちMgOとCaOの含有率の合計に対するMgOの含有率の比も、MgO/ROについての上述した上限及び下限を任意に組み合わせた範囲にあってよい。MgO/(MgO+CaO)は、好ましくは0.1~0.5であり、特に0.1~0.4である。
【0038】
(Li2O)
Li2Oは、少量の添加であっても溶融時におけるガラス組成物の粘性を下げてガラスフィラーへの泡の混入を抑制する作用を有し、さらには失透を抑制する作用も有する任意成分である。また、適量のLi2Oの添加はガラス組成物が分相する傾向を顕著に抑制する。しかし、Li2Oは、他のR2Oよりもその作用は相対的に弱いものの、ガラス組成物の誘電率を上昇させる。Li2Oの含有率は、1.5%以下、1%以下、0.5%以下が好ましく、場合によっては0.4%以下、0.3%以下、さらには0.2%以下であってもよい。Li2Oの含有率は、0.01%以上、0.03%以上、さらには0.05%以上が好ましい。Li2Oの含有率の好ましい範囲の例は、0.01~0.5%、さらに0.05~0.4%である。
【0039】
(Na2O)
Na2Oも、少量の添加であっても溶融時におけるガラス組成物の粘性が下げてガラスフィラーへの泡の混入を抑制する作用を有し、さらには失透を抑制する作用も有する任意成分である。この観点からはNa2Oの含有率は、0.01%以上、0.05%以上、さらには0.1%以上であってもよい。しかし、Na2Oの添加は、ガラス組成物の誘電率を上昇させないように、限られた範囲に止める必要がある。Na2Oの含有率は、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、さらには0.4%以下が好ましく、場合によっては0.2%以下、さらには0.15%以下、特に0.1%以下、0.05%以下、0.01%以下であってもよい。Na2Oの含有率の好ましい範囲の例は、0.01~0.4%である。
【0040】
(K2O)
2Oも、少量の添加であっても溶融時におけるガラス組成物の粘性が下げてガラスフィラーへの泡の混入を抑制する作用を有し、さらには失透を抑制する作用も有する任意成分である。しかし、K2Oは、ガラス組成物の誘電率を上昇させる作用が大きい。K2Oの含有率は、1%以下、0.5%以下、0.2%以下が好ましく、場合によっては0.1%以下、0.05%以下、0.01%以下であってもよい。K2Oは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0041】
(R2O)
2Oの含有率、Li2O、Na2O及びK2Oの含有率の合計は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、さらには1.5%以下が好ましく、場合によっては1%以下、さらには0.6%以下、0.5%以下であってもよい。R2Oを構成する各成分は、個別には任意成分であるが、その少なくとも1つが含まれていること、すなわち含有率の合計が0%を超えていることが好ましい。R2Oの含有率は、0.03%以上、0.05%以上、さらには0.1%以上、特に0.15%以上、0.2%以上が好ましい。
【0042】
さらに、Li2Oの含有率がNa2Oの含有率より大きい場合には、ガラス組成物が分相する傾向がより効果的に抑制されることがある。
【0043】
Li2Oの含有率を0.25%以上、さらには0.3%以上とすると、特性温度をより好ましい範囲に調整できることがある。特にSiO2とB23の含有率の第1の組み合わせを採用する場合には、Li2Oを含有率が0.25%以上、さらには0.3%以上となるように添加することが好ましい。この場合は、Na2Oを含有率が0.05%以上でLi2Oの含有率未満となるように添加してもよい。
【0044】
(T-Fe23
T-Fe23は、その熱線吸収作用によってガラス原料の溶解性を向上させると共に、溶融時におけるガラス組成物の均質性を向上させる任意成分である。T-Fe23の含有率は、0.01%以上、0.02%以上、0.05%以上、さらには0.10%以上が好ましい。なお溶解性向上の効果はT-Fe23の含有率が0.01%以上で顕著に表れるが、均質性向上の効果は0.02%以上で特に顕著に表れる。T-Fe23による過度の熱線吸収作用を抑制する等の目的から、T-Fe23の含有率は、0.5%以下、0.3%以下、さらに0.25%以下が好ましく、場合によっては0.20%以下であってもよい。本明細書では、慣用に従い、ガラス組成物の全酸化鉄の量を、FeO等のFe23以外の酸化鉄をFe23に換算した値、すなわちT-Fe23の含有率、として表示している。したがって、T-Fe23の少なくとも一部はFeOとして含まれうる。T-Fe23の含有率の好ましい範囲の例は0.01~0.5%、さらに0.1~0.3%である。
【0045】
(ZnO)
ZnOは、ガラス原料の溶解性を向上させ、溶融時におけるガラス組成物の粘性を下げる任意成分である。しかし、ZnOは、ガラス組成物の誘電率を上昇させる。ZnOの含有率は、3.5%以下、2%以下、1%以下、さらには0.5%以下が好ましい。ZnOは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0046】
(その他の成分)
ガラス組成物が含みうる上記以外の成分としては、P25、BaO、PbO、TiO2、ZrO2、La23、Y23、MoO3、WO3、Nb25、Cr23、SnO2、CeO2、As23、Sb23、SO3を例示できる。ガラス組成物が含みうる別の成分は、例えばPt、Rh、Os等の貴金属元素であり、また例えばF、Cl等のハロゲン元素である。これらの成分の許容される含有率は、それぞれについて好ましくは2%未満、さらには1%未満、特に0.5%未満であり、合計で好ましくは5%未満、さらに3%未満、特に2%未満、とりわけ1%未満である。ただし、ガラス組成物には、上記その他の成分がそれぞれ実質的に含まれていなくてもよい。TiO2は、後述する理由により微量を添加してもよいが、実質的に含まれていなくてもよい。ZrO2も同様である。また、BaO及びPbOは実質的に含まれていないことが好ましい。P25も実質的に含まれていないことが好ましい。BaO及びPbOはガラス組成物の誘電率を引き上げる効果が大きく、P25は分相を誘発するためである。上記に列挙したSiO2からZnOまでの成分以外の成分は実質的に含まれていなくてもよい。ただしこの場合でも、ガラス組成物は、溶融時の清澄促進に有効な成分、好ましくはSO3、F、Clをそれぞれ2%未満の範囲で含有していてもよい。
【0047】
微量のTiO2の添加により、当業者の技術常識に反し、ガラス組成物の誘電率及び誘電正接は低下する場合があることが見い出された。この観点から、TiO2の含有率は、0%を超え1%以下であってもよい。特にSiO2とB23の含有率の第6の組み合わせを採用する場合には、0%を超え1%以下のTiO2を添加してもよい。
【0048】
(好ましい組成の例示)
好ましい一形態におけるガラス組成物は、以下の成分を含む。
40≦SiO2<58
25≦B23≦40
7.5≦Al23≦18
0<R2O≦4
0≦Li2O≦1.5
0≦Na2O≦1.5
0≦K2O≦1
1≦RO<10
0≦MgO<10
0≦CaO<10
0≦SrO≦5
0≦T-Fe23≦0.5
【0049】
上記成分を含む一形態では、7.5≦Al23≦15、及び0≦SrO≦1が成立してもよい。
【0050】
上記の末尾に
0≦ZnO≦3.5
を加えたガラス組成物も好ましい別の一形態である。
【0051】
これらの形態のガラス組成物は、好ましくは40≦SiO2<55をさらに満たす。また、SiO2+B23≧80を満たしていてもよく、好ましくはSiO2+B23+Al23≦99.9をさらに満たしていてもよい。MgO/RO<0.8、特にMgO/RO<0.8かつ40≦SiO2<55も、上記形態のガラス組成物が満たしていてよい別の条件である。
【0052】
[ガラス組成物の特性]
(誘電率)
好ましい一形態において、ガラス組成物の測定周波数1GHzの誘電率は、4.65以下、4.4以下、4.35以下、4.30以下、4.25以下、さらには4.20以下であり、場合によっては4.18以下である。測定周波数5GHzの誘電率は、4.63以下、4.4以下、4.31以下、4.27以下、4.22以下、さらには4.17以下であり、場合によっては4.15以下である。測定周波数10GHzの誘電率は、4.55以下、4.4以下、4.22以下、4.18以下、4.14以下、さらには4.08以下であり、場合によっては4.06以下である。
【0053】
(誘電正接:tanδ)
好ましい一形態において、ガラス組成物の測定周波数1GHzの誘電正接は、0.007以下、0.005以下、0.004以下、さらには0.003以下、場合によっては0.002以下である。測定周波数1GHzの誘電正接は、0.001以下、0.001未満、0.0009以下、0.0008以下、さらには0.0007以下であってもよい。測定周波数5GHzの誘電正接は、0.007以下、0.005以下、0.004以下、さらには0.003以下、場合によっては0.002以下である。測定周波数10GHzの誘電正接は、0.007以下、0.006以下、0.005以下、0.004以下、さらには0.003以下であり、場合によっては0.002以下である。
【0054】
(特性温度)
好ましい一形態において、ガラス組成物のT2は、1700℃以下、1650℃以下、1640℃以下、1620℃以下、さらには1610℃以下であり、場合によっては1600℃未満、1550℃以下、さらに1520℃以下、特に1510℃以下である。T2はガラス融液の溶融温度の目安となる温度である。過度に高いT2は、ガラス融液の溶融に極めて高温を要するためエネルギーコストや高温に耐える装置のコストが高い。同じ温度であれば、T2の低いガラスの方が融液の粘度が低いのでガラス融液の清澄や均質化に効果があり、一方、同じ粘度で溶融する場合はT2が低いガラスの方が低温で溶融でき、量産に適している。T2.5は、好ましくは、1590℃以下、1550℃以下、さらには1500℃以下であり、場合によっては1450℃以下、さらに1400℃以下である。T3は、好ましくは、1450℃以下、1420℃以下、1400℃以下、さらには1365℃以下、特に1360℃以下であり、場合によっては1330℃以下、さらに1300℃以下である。T3は、ガラスフィラーの成形の目安となる温度である。
【0055】
好ましい一形態において、ガラス組成物のT3は、失透温度TLよりも高い。また、より好ましい一形態において、T3は、TLより10℃以上、さらには50℃以上、場合によっては100℃以上高い。好ましい一形態において、ガラス組成物のT2.5は、失透温度TLよりも50℃以上高い。また、より好ましい一形態において、T2.5は、TLより100℃以上高い。TLよりも十分に高いT3及びT2.5は、ガラスフィラーの安定した製造への寄与が大きい。
【0056】
SiO2とB23の含有率の第5の組み合わせは、特に好ましい特性温度の達成に適している。好ましい特性温度は、例えば、1520℃以下、特に1510℃以下のT2であり、また例えば、1300℃以下でTLより高いT3である。SiO2とB23の含有率の第1の組み合わせにおいて、Li2Oの含有率が0.25%以上であるガラス組成物も、上記程度に好ましい特性温度の達成に適している。
【0057】
[ガラスフィラー]
(ガラスフィラーの形態)
ガラスフィラーの形態は、特に制限されないが、例えば、フレーク状ガラス、チョップドストランド、ミルドファイバー、ガラス粉末、ガラスビーズ、フラットファイバー、及び薄片状ガラスから選ばれる少なくとも1種に該当するものであってよい。ただし、これらの形態は、互いに厳密に区別されるものではない。また、互いに異なる形態を有する2種以上のガラスフィラーを組み合わせてフィラーとして用いてもよい。ガラスフィラーの形態は、ガラス繊維以外であってもよい。以下、各形態について説明する。
【0058】
フレーク状ガラスは、鱗片状ガラスとも呼ばれ、フレーク状の形状を有する。フレーク状ガラスの平均厚さは、例えば0.1~15μmである。図1Aに示すように、フレーク状ガラスの厚さは、フレーク状ガラス10の両主面間の距離tに相当する。図1Bには、面積Sを有するフレーク状ガラス10の主面が示されている。平均粒子径は、例えば0.2~15000μmである。フレーク状ガラスのアスペクト比は、例えば2~1000である。アスペクト比は、平均粒子径を平均厚さで除して求めることができる。平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて100枚以上のフレーク状ガラスの厚さtを測定し、その平均値を算出して求めることができる。フレーク状ガラスの平均粒子径は、レーザ回折散乱法により測定された粒度分布において累積堆積百分率が50%に相当する粒子径(D50)により定めることができる。
【0059】
フレーク状ガラスは、公知のブロー法、カップ法等により得ることができる。ブロー法を用いる製造装置を図2に示す。この装置では、耐火窯槽12において溶融された所定の組成を有するガラス素地11がブローノズル13に送り込まれたガスによって風船状に膨張し、中空状ガラス膜14となる。この中空状ガラス膜14を一対の押圧ロール15で粉砕することにより、フレーク状ガラス10が得られる。
【0060】
チョップドストランドは、ガラス繊維を短く切断した形状を有する。チョップドストランドの繊維径は、例えば1~50μmであり、そのアスペクト比は、例えば2~1000である。チョップドストランドのアスペクト比は、繊維長さを繊維径で除して求めることができる。チョップドストランドは、例えば、図3及び図4に示す装置を用いて製造できる。
【0061】
図3に示すように、耐火窯槽内で溶融され、所定の組成を有するガラス素地は、底部に多数(例えば2400本)のノズルを有するブッシング20から引き出され、多数のガラスフィラメント21として引き出される。ガラスフィラメント21には、冷却水が吹きかけられた後、バインダアプリケータ22の塗布ローラ23により、バインダー(集束剤)24が塗布される。バインダー24が塗布された多数のガラスフィラメント21は、補強パッド25により、各々が例えば800本程度のガラスフィラメント21からなる3本のストランド26として集束される。各ストランド26は、トラバースフィンガ27で綾振りされつつコレット28に嵌められた円筒チューブ29に巻き取られる。ストランド26が巻き取られた円筒チューブ29をコレット28から外して、ケーキ(ストランド巻体)30が得られる。
【0062】
次に、図4に示すように、クリル31にケーキ30を収容し、ケーキ30からストランド26を引き出して、集束ガイド32によりストランド束33として束ねられる。ストランド束33に、噴霧装置34より水又は処理液が噴霧される。ストランド束33を切断装置35の回転刃36で切断し、チョップドストランド37が得られる。
【0063】
ミルドファイバーは、ガラス繊維を粉末状に切断した形状を有する。ミルドファイバーの繊維径は、例えば1~50μmであり、そのアスペクト比は例えば2~500である。ミルドファイバーのアスペクト比は、繊維長さを繊維径で除して求めることができる。ミルドファイバーは、公知の方法により得ることができる。
【0064】
ガラス粉末は、粉末状のガラスであり、ガラスを粉砕することによって製造される。ガラス粉末の平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラス粉末の粒子径は、ガラス粉末の粒子と同体積の球体の直径として定義される。ガラス粉末は、公知の方法により得ることができる。
【0065】
ガラスビーズは、球形又は略球形の形状を有する。ガラスビーズの平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラスビーズの粒子径は、ガラスビーズの粒子と同体積の球体の直径として定義される。ガラスビーズは、公知の方法により得ることができる。
【0066】
フラットファイバーは、断面が楕円等の偏平な形状であるガラス繊維を切断した形状を有する。図5に示すように、フラットファイバーの断面の短径D1に対して長径D2は大きく、D2/D1は、例えば1.2以上である。短径D1は、例えば0.5~25μmである。長径D2は、例えば0.6~300μmである。フラットファイバーの長さLは、例えば10~1000μmである。フラットファイバーは、公知の方法により得ることができる。図6に示すように、フラットファイバーの断面形状は、長径D2に沿って延びる表面が端部よりも中央部において後退した凹形状を有していてもよい。
【0067】
薄片状ガラスは、薄物のフレーク状ガラスである。薄片状ガラスは、例えば、平均厚さが0.1~2.0μmのフレーク状ガラスで構成されていてもよく、また例えば、厚さ0.01~2.0μmの範囲にあるフレーク状ガラスを90質量%以上の割合で含有していてもよい。この程度に平均厚さが薄く、厚さのバラツキが小さい薄片状ガラスは、樹脂を補強する効果が高く、樹脂の成形収縮率を低減する効果にも優れている。
【0068】
薄片状ガラスは、樹脂成形体の厚さ等の制限を従来よりも緩和することにも適している。薄片状ガラスは、好ましくは平均厚さが0.1~1.0μmのフレーク状ガラスで構成されている。薄片状ガラスは、好ましくは厚さ0.05~1.0μmの範囲にあるフレーク状ガラスを90質量%以上の割合で含有している。薄片状ガラスは、上述の方法により得ることができる。
【0069】
(ガラスフィラーの顆粒化)
ガラスフィラーは、少なくともその一部が顆粒化されていてもよい。顆粒化は、ガラスフィラーにバインダー処理を施し、個々のガラスフィラーをバインダーによって互いに結びつけて造粒する処理である。顆粒状のフレーク状ガラスは、飛散性が低いために作業性に優れ、樹脂中での分散性にも優れている。顆粒状のフレーク状ガラスを用いると、フィード性が向上し、より確実な定量的フィードが可能となる。以下、顆粒化に用いるバインダーについて説明する。
【0070】
バインダーは、界面活性剤及び結合成分を含むことが好ましい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性のいずれであってもよい。ただし、結合成分がエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含む場合には、非イオン性の界面活性剤の使用が好ましい。バインダーの凝集を抑制して安定化させることができるからである。アニオン性界面活性剤としては、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウムまたは第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、グリコールモノステアレート等のグリコール脂肪酸エステル類、脂肪酸モノグリセリド類等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0071】
バインダーの結合成分は、特に限定されず、有機系又は無機系の成分を使用できる。有機系の結合成分としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、ウレタン樹脂等が挙げられる。無機系の結合成分としては、水ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アミノシラン等が挙げられる。結合成分は、シランカップリング剤、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。シランカップリング剤は、分子中に2種以上の反応基を有し、その1つがフレーク状ガラスの表面と反応し、他の1つが有機系の結合成分及び熱可塑性樹脂と反応するため、フレーク状ガラスと熱可塑性樹脂との馴染みが改善する。エポキシ樹脂及びウレタン樹脂は、シランカップリング剤及び熱可塑性樹脂との馴染みがよい。
【0072】
バインダーは、水又はアルコールを溶媒として、ガラスフィラーの表面に各成分が均一に存在しうるようにその濃度を調整することが好ましい。バインダーの濃度は、全固形分濃度で表して1~10質量%が好ましい。バインダーは、例えば、常温大気圧下において結合成分、界面活性剤等を溶媒中に適宜添加し、均一になるまで攪拌することにより製造することができる。
【0073】
顆粒化したガラスフィラーにおけるバインダーの比率、言い換えるとバインダーの付着率は、例えば、固形分質量比で0.1~2質量%である。0.1質量%以上の付着率は、ガラスフィラーの飛散性の十分な抑制に適している。2質量%以下の付着率は、樹脂組成物の押し出し成形時のガスの発生や樹脂組成物の変色の抑制に適している。
【0074】
ガラスフィラーの顆粒化の方法は、特に限定されず、例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法、噴射造粒法、回転造粒法等を利用できる。具体的には、スプレー等によりバインダーを適量付着させたガラスフィラーを回転ドラム中または振動するトレイ上に拡げ、加熱して溶媒を蒸発させつつ、造粒する方法を適用できる。回転ドラムの回転速度又は振動トレイの振動周波数、さらには溶媒の蒸発速度を適宜調整することにより、所望の大きさの顆粒状のガラスフィラーを製造できる。
【0075】
ガラスフィラーは、表面処理剤によってその表面が処理されたものであってもよい。この処理により、ガラスフィラーの補強効果が向上することがある。表面処理剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシリコン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の使用量は、例えば、ガラスフィラーの0.05~0.20質量%である。
【0076】
(ガラスフィラーの製造方法)
ガラスフィラーは、上記で説明したガラス組成物を溶融する工程と、溶融したガラス組成物を所望のガラスフィラーへと成形する工程と、を含む方法により製造される。ガラス組成物を溶融する温度は、例えば1400℃以上である。
【0077】
ガラスフィラーは、ガラスフィラーを構成するガラス組成物が得られるように調製したガラス原料を溶融する工程と、溶融した前記ガラス原料を前記ガラスフィラーへと成形する工程と、を含む方法により製造することもできる。ガラス原料を溶融する温度は、例えば1400℃以上である。
【0078】
[樹脂組成物]
本発明による樹脂組成物は、本発明によるガラスフィラーと共に熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合体等である。ポリブチレンテレフタレートを用いると、ガラスフィラーとの混合による成形品の反り抑制や寸法安定性の改善効果が大きくなる。
【0079】
樹脂組成物中におけるフレーク状ガラス等のガラスフィラーの含有率は、5~70質量%が好ましい。5質量%以上とすることにより、ガラスフィラーの補強材としての機能が十分に発揮されやすくなる。70重量%以下とすることにより、樹脂組成物中にガラスフィラーを均一に分散させることが容易になる。成形収縮率を十分抑えるためには、ガラスフィラーの含有率を30質量%以上とすることがより好ましい。
【0080】
樹脂組成物には、ガラスフィラー以外の補強材を適宜含有させてもよい。例えば高い強度が要求される用途では、ガラス繊維を含有させてもよい。この場合、ガラス繊維は、ガラスフィラーと同程度の含有率で添加してもよい。
【0081】
フレーク状ガラス、フラットファイバー及び薄片状ガラスは、比表面積が相対的に大きく、熱可塑性樹脂との間の接合力の確保に適している。この観点から、図6に示したフラットファイバーは、凹型の表面形状が比表面積の拡大に寄与していて好ましい。
【0082】
本発明による樹脂組成物は、誘電率が低く、かつ強度、耐熱性、寸法安定性の向上、線熱膨張係数の低下及び異方性の低減、成形時の収縮率の異方性の低減等といった諸特性の改善に適したものとなる。
【実施例
【0083】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0084】
表1~6に示す各組成(成分の含有率の単位は重量%)となるようにガラス原料を秤量し、均質な状態となるように混合して、ガラス原料混合バッチを作製した。次に、作製した混合バッチを白金ロジウム製るつぼに投入し、1600℃に設定した間接加熱電気炉内で、大気雰囲気中にて3時間以上加熱して溶融ガラスとした。次に、得られた溶融ガラスを耐火性鋳型に流し出して鋳込み成形した後、得られた成形体を徐冷炉により室温まで徐冷処理して、評価に使用するガラス組成物試料とした。
【0085】
このようにして作製したガラス試料について、特性温度T2、T2.5及びT3、失透温度TL、周波数1GHz、5GHz及び10GHzにおける誘電率及び誘電正接を評価した。評価方法は下記のとおりである。
【0086】
(特性温度)
白金球引き上げ法により粘度を測定し、その粘度が102dPa・s、102.5dPa・s、103dPa・sとなる温度を、それぞれT2、T2.5、T3とした。
【0087】
(失透温度)
試料ガラスを粉砕し、目開き2.83mmの篩を通り、目開き1.00mmの篩に残る粒子をふるい分けた。この粒子を洗浄して粒子に付着した微粉を除去し、乾燥して失透温度測定用サンプルを調製した。失透温度測定用サンプルの25gを白金ボート(長方形でフタのない白金製の器)に厚みが略均一になるようにいれ、温度傾斜炉中で2時間保持した後に炉から取り出し、ガラス内部に失透が観察された最高温度を失透温度とした。
【0088】
(耐水性試験)
耐水性試験は、日本光学硝子工業会規格 JOGIS 06:1999 「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」に準じた溶出試験に基づき行った。具体的には以下のように行った。試料ガラスを粉砕し、目開き600μmの篩を通り、目開き425μmの篩に残る粒子をふるい分けた。この粒子をメタノールで洗浄して粒子に付着した微粉を除去し、乾燥して耐水試験用サンプルを調製した。耐水試験用サンプルのその比重と同じ重量gを丸底フラスコに秤量し、純水80mlを加え、栓をして温度99℃以上で1時間保持して溶出処理を施した。溶出処理後のサンプルをメタノールで洗浄し、乾燥後に残ったサンプルを秤量し、減量率を百分率で算出した。
【0089】
(誘電率及び誘電正接)
各周波数における誘電率及び誘電正接は、空洞共振器摂動法による誘電率測定装置を用いて測定した。測定温度は25℃、測定用サンプルの寸法は、底面が1辺1.5cmの正方形で長さ10cmの直方体とした。
【0090】
例1~44及び例48~96のガラス組成物は、測定周波数1GHzの誘電率が4.65以下、T2が1700℃以下、T3が1450℃以下であった。これらのガラス組成物には、測定周波数1GHzの誘電率が4.4以下となったものもあり、例1~43、例48~81、例83~84、及び例93~96のガラス組成物は、測定周波数1GHzの誘電率が4.36以下となった。例1~41、例48~81、例83~84、及び例93~96のガラス組成物は、測定周波数1GHzの誘電率が4.35以下となった。また、例5~6、例66~67、及び例83~92のガラス組成物は、T2が1520℃以下であり、T3が1300℃以下でTLよりも高くなった。例66~67及び例83~92のガラス組成物は、B23の含有率が35%以下、場合によっては30%以下であって、T2が1520℃以下であり、T3が1300℃以下でTLよりも高くなった。例2及び例93~96のガラス組成物は、周波数1GHzの誘電正接が0.001未満であった。例93~96のガラス組成物は、周波数1GHzの誘電正接が0.001未満であり、T2が1600℃未満であった。例45~47のガラス組成物は比較例であり、例45はT2が1700℃を超え、例46~47は測定周波数1GHzの誘電率が4.7を超えていた。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6