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特許7618563高強度標識されたシーケンシング用の反応組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】高強度標識されたシーケンシング用の反応組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20250114BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20250114BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021542532
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020014856
(87)【国際公開番号】W WO2020154546
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】62/795,932
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シー、シンホア
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ハイドン
(72)【発明者】
【氏名】ドッド、デイビッド
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/027625(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/193231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識を含む核酸に連結されたヌクレオシドポリリン酸を含む標識されたヌクレオチドであって、
前記FRET標識は、ドナー分子対アクセプター分子比率が1:1よりも大きいかまたはアクセプター分子対ドナー分子比率が1:1よりも大きいものであり、各ルミネッセンス発光分子は、前記核酸上のグアニンまたはシトシンから少なくとも2塩基離れた前記核酸の付着部位において前記核酸に付着している、前記標識されたヌクレオチド。
【請求項2】
前記FRET標識は、ドナー分子対アクセプター分子比率が1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、または4:1より大きいか、または、アクセプター分子対ドナー分子比率が1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、または4:1より大きい、請求項1に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項3】
前記FRET標識は、少なくとも2つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含むか、または少なくとも1つのドナー分子および少なくとも2つのアクセプター分子を含む、請求項1または2に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項4】
前記核酸は1つ以上のステムループ構造を含み、
任意選択で、少なくとも1つのドナー分子または少なくとも1つのアクセプター分子はステムループ構造のループ領域に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項5】
各ステムループ構造が、少なくとも4つの対になっていない塩基を含むループ領域を含むものである、および/または、各ステムループ構造のループ領域が、33%未満のG/C含量を有する配列を含むものである、請求項4に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項6】
各ドナー分子とアクセプター分子とが約1~3nmだけ離れているか、または、各ドナー分子とアクセプター分子とが3~13塩基だけ分離されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項7】
各ドナー分子およびアクセプター分子は、少なくとも85%のFRET効率を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項8】
前記核酸は、第1オリゴヌクレオチド鎖と、前記第1オリゴヌクレオチド鎖にハイブリダイズされた第2オリゴヌクレオチド鎖とを含むものであり、任意選択で、少なくとも1つのルミネッセンス発光分子は、他のルミネッセンス発光分子とは異なる鎖上にある、請求項1~7のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項9】
1つ以上のルミネッセンス発光分子は、前記核酸内に組み込まれている請求項1~8のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項10】
前記核酸は、150より少ない、100より少ない、または50より少ない塩基を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項11】
1つ以上のルミネッセンス発光分子は、任意の他の付着部位から少なくとも5塩基離れた付着部位において前記核酸に付着している、請求項1~10のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項12】
なくとも1つのルミネッセンス発光分子は、前記核酸上の脱塩基部位に付着している、請求項1~11のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項13】
前記ルミネッセンス発光分子は蛍光色素であり、任意選択で、前記蛍光色素は、ローダミン色素、BODIPY色素、またはシアニン色素である、請求項1~12のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項14】
前記ヌクレオチドは、前記ルミネッセンス発光分子のいずれからもおおよそ1~10nm離れている請求項1~13のいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチド。
【請求項15】
鋳型核酸の配列を決定する方法であって、前記方法は、
(i)標的域中の複合体を1つ以上の異なるタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドに曝露することであって、前記複合体は、前記鋳型核酸、プライマー、および重合酵素を含むものであり、各タイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドは、請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチドを含む、曝露することと、
(ii)1つ以上の励起エネルギの一連のパルスを前記標的域の近傍に向けることと、
(iii)前記プライマーを含む核酸への連続的な取り込み中にルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドから複数の放射される光子を検出することと、
(iv)前記放射される光子に基づいてルミネッセンス発光強度およびルミネッセンス発光寿命のうちの少なくとも1つを決定することにより、取り込まれたヌクレオチドの配列を同定することとを含む方法。
【請求項16】
鋳型核酸をシーケンシングするためのキットであって、前記キットは、
2つ以上の異なるタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドを含み、各タイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドは、請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチドを含む、キット。
【請求項17】
反応混合物中に2つ以上の異なるタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドを含む核酸シーケンシング反応組成物であって、各タイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドは、請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の標識されたヌクレオチドを含む、核酸シーケンシング反応組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に明るく標識された反応組成物、および、それを使用した単一分子(single molecules)の検出方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
次世代シーケンシングテクノロジーにおける進歩は、単一分子の大規模並列分析を実施することを可能にし、ライフサイエンス研究の状況を根本的に変えた。これらの技術のいくつかは、ルミネッセンス発光標識された反応成分を使用したリアルタイムでの生物学的反応をモニタリングすることを含む。それらの標識を光源での照射によってルミネッセンス発光させ、そのルミネッセンス発光を光検出器で検出する。これらの事象は、対応する発光特性に基づいて個々の反応成分を同定するために記録され、分析され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数のタイプの中から特定のタイプの標識分子を同定することにおいて、各タイプが固有の、かつ、容易に同定可能な発光特性を有することは重要である。さらにまた、これらのパラメータは励起源および機器全体のサイズなどの機器の要件を決定するものであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されたテクノロジーの複数の態様は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、3つ以上のルミネッセンス発光分子を含むFRET標識を含む標識された反応成分に関連する。いくつかの実施形態において、本出願は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識を含む核酸に連結されたヌクレオシドポリリン酸塩を含む標識されたヌクレオチドに関連する。本明細書に開示されるテクノロジーの他の態様は、リンカー(例えば、制約されたリンカー)によって分離された2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む標識された反応成分に関連する。いくつかの実施形態において、本出願は、標識-標識相互作用による検出可能なシグナルの減衰を防ぐためのルミネッセンス発光標識の分離に関連する。いくつかの態様において、本出願は、リンカーを介して2つ以上のルミネッセンス発光標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本出願は、鋳型核酸のシーケンシング用の組成物、方法、およびキットを提供する。
【0005】
いくつかの態様において、本出願は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、本開示のリンカーは、FRET標識を有するヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を提供するために有用である。いくつかの実施形態において、標識されたヌクレオチドのその標識はリンカーを介して、またはリンカーの部分として、ヌクレオシドポリリン酸塩に連結され得るFRET標識である。いくつかの実施形態において、そのリンカーは、核酸リンカーである。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチドは、重合反応において基質として使用するように構成される。
いくつかの実施形態において、本出願の標識されたヌクレオチドは、1:1のドナー分子対アクセプター分子比率を含むFRET標識を含む。いくつかの実施形態において、ドナー分子対アクセプター分子比率は1:1より大きい(例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、またはそれ以上)。いくつかの実施形態において、アクセプター分子対ドナー分子比率は1:1より大きい(例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、またはそれ以上)。いくつかの実施形態において、FRET標識は、少なくとも2つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、2つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、3つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、4つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、4つのドナー分子および2つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも2つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、2つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、3つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識は、4つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、本出願の標識されたヌクレオチドは、最小距離で互いに分離された少なくとも3つのルミネッセンス発光標識を含むFRET標識を含む。例えば、いくつかの実施形態において、各ドナー分子およびアクセプター分子は、少なくとも1nm離れている。いくつかの実施形態において、各ドナー分子およびアクセプター分子は、約1~3nm離れている。いくつかの実施形態において、各ドナー分子およびアクセプター分子は、3~13塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、各ドナー分子およびアクセプター分子は3~6塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、各ドナー分子およびアクセプター分子は3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13塩基によって分離される。
【0008】
いくつかの実施形態において、FRET標識の各ドナー分子およびアクセプター分子の対は、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%)のFRET効率を有する。
【0009】
いくつかの態様において、本出願は、リンカーを介して2つ以上のルミネッセンス発光標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、そのヌクレオチドは重合反応において基質として使用されるように構成される。いくつかの実施形態において、本出願の標識されたヌクレオチドは最小距離で互いに分離された2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、任意の他のルミネッセンス発光標識から少なくとも5オングストローム離れている。例えば、いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、任意の他のルミネッセンス発光標識から少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50オングストローム離れている。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は任意の他のルミネッセンス発光標識の重心から少なくとも5オングストローム離れる重心を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本出願の標識されたヌクレオチドは、スペーサー分子を介して前記リンカーに付着された1つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、スペーサー分子は、リンカー上の付着部位にルミネッセンス発光標識を連結させる。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識は、前記ルミネッセンス発光標識とリンカー上の前記付着部位との間に少なくとも8個の連続する原子を含むスペーサー分子を介して前記リンカーに付着される。いくつかの実施形態において、そのスペーサー分子はルミネッセンス発光標識とリンカー上の前記付着部位との間に50より少ない、40より少ない、30より少ない、または20より少ない連続する原子を含む。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識はリンカー内に組み込まれる。
【0011】
いくつかの実施形態において、リンカーはオリゴマーである(例えば、オリゴマーリンカー、またはポリマーリンカー)。いくつかの実施形態において、オリゴマーはモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは2つ以上の異なるタイプのモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは複数の同じタイプのモノマー単位を含む(例えば、オリゴマーは1のタイプのモノマー単位からなるポリマーである)。いくつかの実施形態において、オリゴマーは複数の第1タイプのモノマー単位を有する第1領域と、複数の第2タイプのモノマー単位を有する第2領域とを含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、複数の異なるタイプのモノマー単位をそれぞれ含む複数の異なる領域(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは少なくとも5モノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは少なくとも10モノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーは150より少ない、100より少ない、または50より少ないモノマー単位(例えば、少なくとも5モノマー単位で、かつ、200、150、100、75、50、または25より少ないモノマー単位;少なくとも10モノマー単位で、かつ、200、150、100、75、50、または25より少ないモノマー単位)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記リンカーがオリゴマー(例えば、オリゴマーリンカー、ポリマーリンカー)である場合、各ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、そのオリゴマーの少なくとも5モノマー単位によって他の標識それぞれから分離される。いくつかの実施形態において、第1ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は第2位置から少なくとも5モノマー単位離れた第1位置においてリンカー内に組み込まれ、第2位置において第2ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子はそのリンカー内に組み込まれるか、または付着される。いくつかの実施形態において、隣接するルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子がリンカー内に組み込まれる場合、それらの標識は5より少ないモノマー単位だけ離され得る。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、任意の他の付着部位から少なくとも5モノマー単位(例えば、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、またはそれ以上のモノマー単位)離れた付着部位においてリンカーに付着される。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、任意の他の付着部位から少なくとも5モノマー単位で、かつ、40より少ないモノマー単位(例えば、38より少ない、36より少ない、34より少ない、32より少ない、30より少ない、28より少ない、26より少ない、24より少ない、22より少ない、または20より少ないモノマー単位)離れた付着部位に付着される。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子はオリゴマーの2つの連続的なモノマー単位の間のリンカーに組み込まれる(例えば、オリゴマーの2つの隣接するモノマー単位を共有結合する)。
【0013】
いくつかの実施形態において、リンカーは、リンカーに連結された2つ以上のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子間の相互作用を防ぐために十分な剛性がある。いくつかの実施形態において、リンカーの剛性は、同じリンカーに付着された単一標識として存在する場合のその強度と比較して、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、例えば95~100%(例えば、およそ95%、およそ96%、およそ97%、およそ98%、およそ99%、およそ100%)の各標識の強度を保存するために十分である。
【0014】
いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドである。いくつかの実施形態において、前記ペプチドのアミノ酸組成物は構造的な剛性を提供する(例えば、ペプチドリンカー内の1つ以上のポリプロリンセグメントの存在によって)。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーの90%以上(例えば、全て)はポリプロリンポリマーからなる。いくつかの実施形態において、ペプチド剛性は、化学修飾によってペプチドを制約することによって提供される。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドは1つ以上の環化セグメントを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは環化ペプチド(例えば、ステープルペプチド、末端-末端環化ペプチドなど)である。いくつかの実施形態において、十分なペプチド剛性は、1つ以上の剛性アミノ酸ポリマーセグメントおよび1つ以上の化学的に修飾されたアミノ酸ポリマーセグメントの組み合わせを取り込むことによって提供され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、リンカーは多糖類(例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ポリグルコース、ポリラクトース、アミノグリコシド、N-アセチルアミノグリコシド、およびそれらの組み合わせ)である。
【0016】
いくつかの実施形態において、リンカーは核酸である。いくつかの実施形態において、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態において、十分な剛性は、1つ以上の二本鎖核酸セグメントを使用することによって提供される(例えば、2つ以上の異なる標識の分離)。いくつかの実施形態において、十分な剛性は核酸の(例えば、一本鎖または二本鎖核酸の、または1つ以上の一本鎖と1つ以上の二本鎖セグメントとを含む核酸の)1つ以上の化学修飾によって提供される。いくつかの実施形態において、核酸は1つ以上の二本鎖セグメントと1つ以上の化学的に修飾されたセグメントとの組み合わせを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記核酸は1つ以上の一本鎖セグメントと1つ以上の二本鎖セグメントとの組み合わせを含む。一本鎖セグメントは、いくつかの実施形態において、ループ(例えば、本明細書の他の所に記載されるようにステムループ2次構造内に)の形態で存在し得る。いくつかの実施形態において、一本鎖セグメントは、二本鎖セグメント内の対になっていない領域の形態で存在する。例えば、内部ループは一方の鎖の1つ以上の塩基が、他方の鎖の1つ以上の隣接する塩基との塩基対相互作用を形成しない二本鎖セグメント内に形成し得る。対になっていない領域のさらなる一例はバルジループを含み、これは、一方の鎖が他方の鎖に対して1つ以上の追加の塩基を含む二本鎖セグメント内に形成し得る。いくつかの実施形態において、一本鎖領域および二本鎖領域は構造的な剛性を与える。
【0018】
いくつかの実施形態において、一本鎖領域(例えば、対になっていない領域)は、少なくとも2塩基長(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の塩基長)である。いくつかの実施形態において、一本鎖領域は2~10塩基長(例えば、2~8、4~10、または4~8塩基長)である。いくつかの実施形態において、二本鎖領域は2~40塩基長(例えば、2~20、2~10、10~40、10~30、10~20、20~40、または20~30塩基長)である。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記核酸は1つ以上のステムループ構造(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上のステムループ構造)を含む。いくつかの実施形態において、FRET標識の少なくとも1つのドナー分子は、ステムループ構造のループ内に配置される。いくつかの実施形態において、FRET標識の少なくとも1つのアクセプター分子はステムループ構造のループ内に配置される。いくつかの実施形態において、各ステムループのループ領域は、少なくとも4つの対になっていない塩基(例えば、4、5、6、7、8、またはそれ以上の、対になっていない塩基)を含む。いくつかの実施形態において、各ステムループのループ領域は33%より少ないG/C含量を有する配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、FRET標識の少なくとも1つのアクセプター分子は、FRET標識の1つ以上のドナー分子の5’側に配置される。例えば、いくつかの実施形態において前記少なくとも1つのアクセプター分子は、前記1つ以上のドナー分子から上流(5’)に1つ以上の塩基である付着部位において配置される。いくつかの実施形態において、FRET標識の少なくとも1つのアクセプター分子はFRET標識の1つ以上のドナー分子の3’側において配置される。例えば、いくつかの実施形態において少なくとも1つのアクセプター分子は、1つ以上のドナー分子から下流(3’)に1つ以上の塩基である付着部位において配置される。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記核酸は2つ以上のルミネッセンス発光標識に付着された第1オリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、その2つ以上のルミネッセンス発光標識は第1オリゴヌクレオチド鎖上の2つ以上の付着部位に付着される。いくつかの実施形態において、FRET標識の3つ以上のルミネッセンス発光分子は、第1オリゴヌクレオチド鎖上の3つ以上の付着部位に付着される。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、任意の他のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子の中心点から少なくとも5オングストローム離れた中心点を有する立体体積を含む。例えば、いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、任意の他のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子の中心点から少なくとも6オングストローム、約5~10オングストローム、約6~10オングストローム、約10~15オングストローム、約15~20オングストローム、約20~25オングストローム、または約25~50オングストローム離れた中心点を有する立体体積を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記核酸は第1オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズされた第2オリゴヌクレオチド鎖をさらに含む。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖はヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に付着される。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド鎖はヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に付着される。いくつかの実施形態において、FRET標識の少なくとも1つのルミネッセンス発光分子は、その他のルミネッセンス発光分子とは異なる鎖上である。いくつかの実施形態において、アクセプター分子は1つ以上のドナー分子とは異なる鎖上である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子はその核酸の同じ鎖上である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記2つ以上の付着部位は第1オリゴヌクレオチド鎖上で少なくとも5塩基(例えば、少なくとも5ヌクレオチド)だけ互いに分離される。いくつかの実施形態において、2つ以上の付着部位は第1オリゴヌクレオチド鎖上で少なくとも5でかつ40より少ない塩基(例えば、約5~30塩基、約5~20塩基、約5~10塩基、約10~40塩基、約20~40塩基、または約30~40塩基)互いに分離される。いくつかの実施形態において、各付着部位は第1オリゴヌクレオチド鎖上でグアニンまたはシトシンから少なくとも2塩基離れる。いくつかの実施形態において、各付着部位は、第1オリゴヌクレオチド鎖上の脱塩基部位において生じる。いくつかの実施形態において、各付着部位は第1オリゴヌクレオチド鎖上のヌクレオチドの核酸塩基において生じる。いくつかの実施形態において、前記核酸塩基はA、T、またはU核酸塩基から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上)ステムループを形成する。いくつかの実施形態において、各ステムループのループ領域は2つ以上の付着部位の付着部位を含む。いくつかの実施形態において、各ステムループのそのループ領域は、少なくとも4つの対になっていない塩基(例えば、4、5、6、7、8、またはそれ以上の、対になっていない塩基)を含む。いくつかの実施形態において、ループ領域は33%より少ないG/C含量を有する配列(例えば、ヌクレオチド配列)を含む。
【0025】
いくつかの態様において、本開示の標識されたヌクレオチドは、第1オリゴヌクレオチド鎖の末端において2つ以上の分岐オリゴヌクレオチド鎖に付着した第1オリゴヌクレオチド鎖を含む核酸リンカーを含む。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は、共有結合性カップリング化合物を介して2つ以上の分岐オリゴヌクレオチド鎖に付着する。いくつかの実施形態において、各分岐オリゴヌクレオチド鎖は少なくとも1つのルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は第2オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド鎖はヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に付着する。いくつかの実施形態において、各分岐オリゴヌクレオチド鎖は、相補的な分岐オリゴヌクレオチド鎖とさらにハイブリダイズする。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記共有結合性カップリング化合物は以下の構造を有し、
【0027】
【化1】

式中、Nは第1オリゴヌクレオチド鎖;Nは分岐オリゴヌクレオチド鎖;RおよびRはそれぞれ互いに独立し、置換または非置換アルキレン;置換または非置換アルケニレン;置換または非置換アルキニレン;置換または非置換ヘテロアルキレン;置換または非置換ヘテロアルケニレン;置換または非置換ヘテロアルキニレン;置換または非置換ヘテロシクリレン;置換または非置換カルボシクリレン;置換または非置換アリーレン;置換または非置換ヘテロアリーレン;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される結合または連結基;各例のOは、隣接するオリゴヌクレオチド鎖の5’リン酸基または3’ヒドロキシル基のいずれかの酸素原子である。
【0028】
いくつかの態様において、本開示の標識されたヌクレオチドは、共有結合性カップリング化合物から延在する3つ以上のオリゴヌクレオチド鎖(例えば、3、4、5、6、またはそれ以上のオリゴヌクレオチド鎖)を含む第1オリゴヌクレオチド成分を含む核酸リンカーを含む。いくつかの実施形態において、前記3つ以上のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つは、ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に付着する。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド成分は、第2オリゴヌクレオチド成分とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド成分は、ルミネッセンス発光標識に付着した少なくとも1つのオリゴヌクレオチド鎖を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示の標識されたヌクレオチドは蛍光色素でルミネッセンス発光標識される。いくつかの実施形態において、蛍光色素はローダミン色素、BODIPY色素、またはシアニン色素である。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示の標識されたヌクレオチドは、2つ以上のルミネッセンス発光標識のルミネッセンス発光標識のいずれからも少なくとも1nm離れたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチドは2つ以上のルミネッセンス発光標識のルミネッセンス発光標識のいずれからもおおよそ1~10nm(例えば、おおよそ2~10nm、おおよそ4~10nm、おおよそ6~10nm、またはおおよそ8~10nm)離れる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは2つ以上のルミネッセンス発光標識のルミネッセンス発光標識のいずれからもおおよそ2~20nm(例えば、おおよそ6~20nm、おおよそ10~20nm、おおよそ12~20nm、またはおおよそ16~20nm)離れる。
【0031】
いくつかの態様において、本開示は鋳型核酸の配列を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は標的域において、本出願によって提供される複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドに複合体を曝露することを含むステップを含み、前記複合体は鋳型核酸と、プライマーと、重合酵素とを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのうちの1つ以上(例えば、1つの、2つの、3つの、4つの、またはそれ以上のタイプの標識されたヌクレオチド)は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む。各タイプのヌクレオチドのFRET標識は複数の標識されたヌクレオチドの中から区別可能である(例えば、1のタイプのFRET-標識されたヌクレオチドは全ての他のタイプのFRET-標識されたヌクレオチドおよび/またはFRETを経ない標識から区別可能である)。いくつかの実施形態において、1つ以上の複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドは、リンカーを介して2つ以上のルミネッセンス発光標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは少なくとも10モノマー単位を含むオリゴマーである。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、任意の他の付着部位から少なくとも5モノマー単位離れた付着部位においてリンカーに付着する。例えば、いくつかの実施形態において、付着部位は他の付着部位のいずれからも約5~30モノマー単位、約5~20モノマー単位、約5~10モノマー単位、約10~40モノマー単位、約20~40モノマー単位、または約30~40モノマー単位離れる。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、他のルミネッセンス発光標識のいずれからも少なくとも5オングストローム離れる。例えば、いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、他のルミネッセンス発光標識のいずれからもおおよそ5~10オングストローム、おおよそ6~10オングストローム、おおよそ10~15オングストローム、おおよそ15~20オングストローム、おおよそ20~25オングストローム、または、おおよそ25~50オングストローム離れる。したがって、いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載されたルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのうちのいずれかを利用する核酸シーケンシングの方法を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本方法は1つ以上の励起エネルギの一連のパルスを標的域の近傍に向けるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法はプライマーを含む核酸への連続的な取り込み中にルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドから放射される複数の光子を検出するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法はタイミング、および任意選択的に放射される光子のルミネッセンス発光強度および/または輝度を決定することによって取り込まれたヌクレオチドの配列を同定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は放射される光子に基づいてルミネッセンス発光強度およびルミネッセンス発光寿命のうちの少なくとも1つを決定することによって取り込まれたヌクレオチドの配列を同定するステップをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、反応混合物中の4つの異なるタイプのヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン/ウラシル)は1つ以上のルミネッセンス発光分子でそれぞれ標識され得る(本明細書に記載されるように例えば、2つ以上のルミネッセンス発光標識を有する)。いくつかの実施形態において、各タイプのヌクレオチドは1つより多い同じルミネッセンス発光分子に連結され得る(例えば、ヌクレオチドに連結された2つ以上の同じ蛍光色素)。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光分子は1つより多いヌクレオチドに連結され得る(例えば、2つ以上の同じヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、1つより多いヌクレオチドが1つより多いルミネッセンス発光分子に連結され得る(例えば、本明細書に記載されるリンカーを介して)。
【0034】
いくつかの実施形態において、4つのヌクレオチドのセットの中のルミネッセンス発光標識は、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物を含む色素から選択され得、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、クマリン、フルオロセイン(fluoroscein)、ローダミン、または他の同様の化合物であり得る。色素の例は、フルオレセイン色素またはローダミン色素、ナフタレン色素、クマリン色素、アクリジン色素、シアニン色素、ベンゾオキサゾール色素、スチルベン色素、ピレン色素、フタロシアニン色素、フィコビリタンパク質色素、スクアライン色素、BODIPY色素、および同様のものなどのキサンテン色素を含む。
【0035】
いくつかの態様において、本出願は鋳型核酸をシーケンシングするためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは本明細書に記載されるように複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、各タイプの標識されたヌクレオチドはリンカーを介して1つ以上のヌクレオチド(例えば、1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩)に付着した2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、キットは重合酵素をさらに含む。いくつかの実施形態においてキットは、シーケンシングされる鋳型核酸に相補的なプライマーをさらに含む。
【0036】
いくつかの態様において、本出願は核酸シーケンシング反応組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本組成物は、反応混合物中に2つ以上の(例えば、2、3、4、またはそれ以上)異なるタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、各タイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドは、本出願による標識されたヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、本組成物は重合酵素をさらに含む。いくつかの実施形態において、本組成物は鋳型核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、本組成物は鋳型核酸に相補的なプライマーをさらに含む。
【0037】
いくつかの態様において、本出願は図11Aに示される構造のうちのいずれか1つによる標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本出願は図11Eに示される構造のうちのいずれか1つによる標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本出願は図12に示される構造のうちのいずれか1つによる標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本出願は図13A~13Cに示される構造のうちのいずれか1つによる標識されたヌクレオチドを提供する。
【0038】
当業者は、本明細書に記載の図が例示のみを目的としていることを理解するであろう。場合によっては、本発明の理解を容易にするために、本発明の様々な態様が誇張または拡大して示され得ることを理解されたい。図面では、様々な図全体にわたって、同様の参照文字は一般に同様の特徴、機能的に類似および/または構造的に類似している要素を表す。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、教示の原理を説明することに重点が置かれている。図面は本教示の範囲を何らかの方法で制限することを目的としていない。
【0039】
本発明の特徴および利点は、図面と併せて読めば以下に示す詳細な説明からより明らかになるであろう。
図面を参照して実施形態を説明する場合、方向の参照(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」など)を使用することがある。そのような参照は、単に読者が通常の向きで図面を見ることへの補助として意図されている。これらの方向の参照は、具体化された装置の好ましい向きまたは唯一の向きを記載することを意図していない。装置は他の向きで具体化されてよい。
【0040】
詳細な説明から明らかなように、図面(例えば、図1~10)に示され、本出願を通して図示の目的でさらに説明される例は、非限定的な実施形態を説明し、いくつかの場合において、より明確に図示する目的のために、あるプロセスを単純化するか、または特徴またはステップを省略する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】明るく標識された反応物のルミネッセンス発光標識分離を一般的に示すダイアグラム。
図1B】異なるルミネッセンス発光標識付着構成を有する汎用リンカー構造を示す図。
図2A】2つのルミネッセンス発光標識に付着した核酸リンカーを一般的に示すダイアグラム。
図2B】異なる鎖構成を有する汎用核酸を示す図(上)、および、ルミネッセンス発光標識の空間的占有を一般的に示すダイアグラム(下)。
図2C】異なる相対的標識付着部位(上)および異なる反応物連結(下)を有する汎用核酸を示す図。
図3A】同一(左)または反対(右)のオリゴヌクレオチド鎖連結を介して反応物に標識を連結する汎用核酸を示す図。
図3B】明るく標識された反応物の設計において使用され得るおおよそのサイズ制約の例を有する汎用核酸を示す図。
図3C】同一鎖連結を介してヌクレオシドポリリン酸塩に2つのルミネッセンス発光標識を連結する核酸の一例示的な構造の図。
図3D】棒状核酸リンカー(例えば、図3Cにおいて示されるように)を使用して、標識されたヌクレオシドポリリン酸塩の取り込みを検出できることを確認したシーケンシング反応の一例を示す図。
図3E】反対の鎖連結を介してヌクレオシドポリリン酸塩に2つのルミネッセンス発光標識を連結する核酸の例示的な構造を示す図。
図3F】オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれたルミネッセンス発光標識を有する核酸リンカーの例示的な構造を示す図。
図3G】示される4つの異なる核酸リンカーコンストラクトを使用して行われたシーケンシング反応の一例を示す図。
図4A】単一のステムループ2次構造を有する汎用核酸リンカーを示す図。
図4B】複数のステムループ2次構造を有する汎用核酸リンカーを示す図。
図4C】別個のステムループ2次構造のループに付着されたルミネッセンス発光標識を有する核酸リンカーの一例示的な構造。
図4D】ステムループ核酸リンカー(例えば、図4Cにおいて示されるように)を有する標識されたヌクレオシドポリリン酸塩を使用してヌクレオシドポリリン酸塩の取り込みを検出できることを確認したシーケンシング反応の一例を示す図。
図5A】ルミネッセンス発光標識に付着された分岐オリゴヌクレオチド鎖を有する樹状核酸リンカーを一般的に示す図。
図5B】別個の分岐オリゴヌクレオチド鎖の末端に付着されたルミネッセンス発光標識を有する樹状核酸リンカーの一例を示す図。
図6A】星型核酸リンカーを一般的に示し、星型核酸リンカーの設計に使用され得るおおよそのサイズ制約の一例を提供する図。
図6B】星型核酸リンカーの構造の一例の図。
図6C】四面体コアを有する核酸リンカーの構造の一例の図。
図6D】四面体コアを有する核酸リンカーを合成するために使用され得る反応スキームの一例を示す図。
図6E】3方向接合部に付着されたルミネッセンス発光標識を有する四面体-ベースの核酸リンカー構造を一般的に示す図。
図6F】星型核酸リンカーを一般的に示し、星型核酸リンカーの設計において使用され得るおおよそのサイズ制約の一例を提供する図。
図7】3方向接合部に付着されたルミネッセンス発光標識を有するシクロデキストリン-ベースの核酸リンカーを生成するプロセスを一般的に示す図。
図8】蛍光寿命測定値へのスペーサー長の影響を評価するための実験のセットにおいて使用される核酸リンカー構造の例を示す図。
図9】蛍光寿命測定値へのリンカー制約の影響を評価するための実験のセットにおいて使用される核酸リンカー構造の例を示す図。
図10】制限されたリンカーの蛍光寿命へのスペーサー長の影響を評価するための実験のセットにおいて使用される核酸リンカー構造の例を示す図。
図11A】従来のルミネッセンス発光標識(上部パネル)対大きいストークスシフトのルミネッセンス発光標識(下部パネル)を有するFRET核酸リンカー構造の一例を示す図。示されるように、大きいストークスシフトは、レーザーの排除のために使用されるスペクトルフィルタによる輝度の損失の削減を伴う。ドナー分子は明るい灰色の太陽として示され、アクセプター分子は黒い太陽として示される。ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は灰色の丸として示される。
図11B】FRET核酸リンカー構造を使用して行われた一例示的なシーケンシング反応を示す図。ドナー分子は明るい灰色の太陽として示され、アクセプター分子は黒い太陽として示される。ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は灰色の丸として示される。
図11C】従来のルミネッセンス発光標識(上)対大きいストークスシフトのルミネッセンス発光標識(下)を有するFRET核酸リンカー構造についてのルミネッセンス発光寿命およびルミネッセンス発光強度クラスターの一例を示す図。
図11D】FRET核酸リンカー構造へのスペクトルフィルタの異なる影響の一例を示す図。
図11E】FRET核酸リンカー構造の異なる構成を示す図。ドナー分子は明るい灰色の太陽として示され、アクセプター分子は黒い太陽として示される。ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は灰色の丸として示される。
図11F】複数のドナールミネッセンス発光標識を有するFRET核酸リンカー構造を使用して行われた一例示的なシーケンシング反応を示す図。ドナー分子は明るい灰色の太陽として示され、アクセプター分子は黒い太陽として示される。ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は灰色の丸として示される。
図12】中心(A)にアクセプター分子および両側に2つのドナー分子(D)のある、直鎖状核酸を有するFRET核酸リンカー構造の一例を示す図。
図13A】ドナー分子(D)とアクセプター分子(A)との間、および、標識の周囲に、核酸の部分を分離するための異なる数のAT対および核酸の部分を安定化するための異なる数のGC対を含むスペーサーを有するFRET核酸リンカー構造を示す図。
図13B】ドナー分子(D)とアクセプター分子(A)との間、および、標識の周囲に、核酸の部分を分離するための異なる数のAT対および核酸の部分を安定化するための異なる数のGC対を含むスペーサーを有するFRET核酸リンカー構造を示す図。
図13C】ドナー分子(D)とアクセプター分子(A)との間、および、標識の周囲に、核酸の部分を分離するための異なる数のAT対および核酸の部分を安定化するための異なる数のGC対を含むスペーサーを有するFRET核酸リンカー構造を示す図。
図14】ドナーとしてATRho6GC3(明るい灰色の丸)およびアクセプターとしてBODIPY576(暗い灰色の丸)を有する、ATRho6GC3-BODIPY576対間の最適な距離を決定するための研究の結果を示す図。
図15】直鎖状DNA核酸構成および3方向DNA接合部構成におけるルミネッセンス発光分子とヌクレオチドとの間の距離の比較を示す図。
図16】FRET効率に対する、ドナーとしてCy3とアクセプターとしてCy5とを有する、ドナー分子:アクセプター分子比率の影響を示す図。
図17】FRET効率への異なるFRET核酸リンカー構造の影響の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
他の態様の中で、本開示は2つ以上の標識を含むルミネッセンス発光標識された反応物を提供し、それらの標識は高強度および/または一貫した発光特性(例えば、一貫した発光寿命)を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、それら2つ以上の標識は、発光の強度または他の発光特性を低減させ得る標識間の相互作用を避けるように構成される。いくつかの実施形態において、それら2つ以上の標識はa)リンカーとの相互作用を避けるように、および/またはb)それぞれがリンカーと同様の相互作用を有するように構成される。
【0043】
いくつかの態様において、本開示は高発光強度を有するルミネッセンス発光標識された反応物に関連する方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本開示は、高発光輝度を有するルミネッセンス発光標識された反応物に関連する方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本開示は、一貫した発光寿命を有する明るく標識された反応物に関連する。本明細書に使用されるとき、いくつかの実施形態において、「輝度」(およびその変形、例えば、「明るい」「明るく」など)は、標識された反応物の分子あたりの平均発光強度を報告するパラメータを表す。したがって、いくつかの実施形態において「発光強度」は、一般に、明るく標識された反応物を含む組成物の輝度を表すために使用され得る。いくつかの実施形態において、標識された反応物の輝度は、その量子収率と吸光係数との積に等しい。いくつかの実施形態において、本開示の標識された反応物は、増加された輝度を促進するために、量子収率値の最大化および/または吸光係数値の最小化するように設計される。
【0044】
本開示の明るく標識された反応物は、いくつかの実施形態において、増加した発光輝度および一貫した発光寿命を有するように設計される。いくつかの実施形態において、2つの標識の反応物は、互いにおよび/または周囲の環境と相互作用し得、1つ以上の発光特性がその2つの標識間で一貫しない。単一分子検出方法が特定のタイプの分子を同定するためにこれらの特徴に依存するいくつかの実施形態において、一貫しない発光特性は問題であり得る。例えば、いくつかの実施形態において一貫しない発光寿命は、一貫した発光寿命で観察され得る情報の単一のグループ化とは対照的に、情報の2つの別個のクラスターを報告する寿命の読み出しをもたらし得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、一貫した発光寿命は発光寿命の保存を伴い得、例えば、1つ少ない標識を有する標識された反応物と比較しておおよそ変わらない発光寿命を有する。いくつかの実施形態において、多重標識反応物における標識の発光寿命は、単一標識反応物における同じ標識と比較して変わらない。本明細書に記載されるように、輝度を増大させるために単一のコンストラクト上のルミネッセンス発光標識の数を増加させることは、いくつかの実施形態において、減少した発光寿命をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本開示は、発光寿命に影響を与えることなく輝度を増大させる、ある特定の最小距離だけ隣接する標識を分離する特定の構造上の制約を使用して設計された組成物を提供する。いくつかの実施形態において、多重標識されたコンストラクトの発光寿命は、少なくとも1つ少ないルミネッセンス発光標識(例えば、少なくとも1つ少ない同じタイプの蛍光体色素)を有するコンストラクトの発光寿命と比較される。いくつかの実施形態において、発光寿命は、おおよそ30%以下だけ変わる(例えば、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、またはおおよそ0%増加または減少する)。
【0046】
いくつかの態様において、本開示はシーケンシング反応における検出可能な組成物を開発して、特定の機器構成要素の必要性を排除し、それによってテクノロジーをよりコンパクトなシステムに移行させることができるという認識および理解に関連する。例えば、シーケンシング機器は一般に、センサにおける所望でない検出事象を引き起こさないように励起光をフィルタするための光学フィルタを必要とする。所望のルミネッセンスを透過し、かつ、十分に励起光を遮断するために使用される光学フィルタは厚く、かさばり、高価であり、光の入射角の変化に耐えられず、小型化を妨げ得る。しかしながら、発明者らは保存された寿命を有する明るく標識された反応物の使用により、そのようなフィルタリングの必要を減らすことができるか、または、いくつかの場合において、そのようなフィルタの必要性を完全に取り除くことができることを認識および理解した。本明細書に記載される明るい反応物により、より少ない光パワー(例えば、励起エネルギ)を使用することが可能になり、その結果、散乱およびフィルタリングの必要性が減少する。
【0047】
本出願の複数の態様は、図1Aに示される非限定的なダイアグラムにしたがって構成される明るく標識された反応物を提供し、図1Aはリンカー100を介して反応物180に連結された2つのルミネッセンス発光標識を示す。示されるように、各ルミネッセンス発光標識はスペーサーを介してリンカー100に付着する。いくつかの実施形態において前記スペーサーは、標識とリンカーとの間に共有結合性ブリッジを形成する。したがって、いくつかの実施形態において、スペーサーはリンカー組成物のルミネッセンス発光分子の部分でも、スペーサー部分でもない(例えば、スペーサーはポリマーまたはオリゴマーリンカーのモノマー単位を含有しない)。スペーサーの第1端はリンカー付着部位102に付着し、スペーサーの第2端は標識付着部位122に付着する。いくつかの実施形態において、リンカー付着部位102は、スペーサーの原子をリンカー100の原子に結合する共有結合接合部の位置で近似できる。いくつかの実施形態においてリンカー付着部位102は、リンカー100の連続鎖内の原子で生じる。いくつかの実施形態において、標識付着部位122は、スペーサーの原子を標識の原子に結合する共有結合接合部の位置で近似できる。いくつかの実施形態において標識付着部位122は、スペーサーの原子に共有結合する標識の原子で生じる。いくつかの実施形態において標識付着部位122は、標識の原子に共有結合するスペーサーの原子で生じる。
【0048】
本明細書の他の所に記載されるように、いくつかの実施形態において、本出願のリンカーコンストラクトは隣接するルミネッセンス発光標識が最小距離dだけ離れた付着部位を有すると記載された2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識はその隣から最小距離dだけ離れる。図1Aにおいて示されるように、いくつかの実施形態において、dは標識付着部位間の距離である。いくつかの実施形態において、標識-標識分離は各標識分子のサイズによってさらに決定され得る。したがって、いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識は楕円体または回転楕円体の近似または計算された立体体積112によって記述され、立体半径rの測定値を得ることができる。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識は楕円体または円の近似または計算された立体円周によって記述され、立体半径rの測定値を得ることができる。いくつかの実施形態において、立体半径(例えば、r、r)はルミネッセンス発光標識の最長寸法の半分として計算または概算できる。例えば、いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識の化学構造はソフトウェアまたは当技術分野において知られる適切な方法を使用して2次元または3次元構造(例えば、熱力学的に有利な分子立体配座に基づく)として評価され、立体半径(例えば、r、r)は2次元または3次元空間における構造の最長寸法の半分を計算することによって決定される。いくつかの実施形態において、標識が重ならないような標識の総半径(r+r)の場合、標識は最小距離dだけ離れる。
【0049】
いくつかの実施形態において、図1Bに示されるように、リンカー構成および/またはスペーサー剛性は、付着部位間の距離dがdとおおよそ同じになるようなものであり得る(例えば、コンストラクト150のように)。いくつかの実施形態において、リンカー構成および/またはスペーサー剛性は、付着部位間の距離dは最小距離dより小さいようなものであり得る(例えば、コンストラクト152のように)。いくつかの実施形態において、リンカー構成および/またはスペーサー剛性は付着部位間の距離dが最小距離dより大きいようなものであり得る(例えば、コンストラクト154のように)。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された概念は、任意の適切な分子足場をリンカー100として使用して実装され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態において、リンカーは有機化合物である。リンカー100としての使用のために適切な有機化合物の例は、限定することなしに、ポリフェニル、ポリアルキン、アルファヘリックス模倣物、およびペプチド模倣物を含む。
【0051】
いくつかの実施形態においてリンカー100は、例えば、モノマー単位を含むオリゴマーリンカーなどのオリゴマーである。いくつかの実施形態においてオリゴマーは、1つ以上のタイプのモノマー単位を含む。モノマー単位のタイプは、例として、限定ではなく、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、およびそれらの類似体およびそれらの誘導体)、アミノ酸(例えば、天然アミノ酸および非天然アミノ酸)、単糖、およびフェニル含有化合物およびアルキニル含有化合物などの有機化合物を含み得る。いくつかの実施形態において、オリゴマーは1つ以上の同じタイプのモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、1つのタイプのモノマー単位を含むオリゴマーはポリマー(例えば、ポリマーリンカー)と表され得る。いくつかの実施形態において、オリゴマーは2つ以上の異なるタイプのモノマー単位(例えば、モノマー単位の混合物)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、オリゴマー(例えば、オリゴマーリンカーまたはポリマーリンカー)は、少なくとも5モノマー単位を含有する。いくつかの実施形態において、オリゴマーは少なくとも10モノマー単位を含有する。いくつかの実施形態において、オリゴマーは少なくとも10でかつ200より少ないモノマー単位(例えば、少なくとも10でかつ150より少ないモノマー単位、少なくとも10でかつ100より少ないモノマー単位、少なくとも10でかつ50より少ないモノマー単位、少なくとも10でかつ40より少ないモノマー単位、少なくとも10でかつ30より少ないモノマー単位、または少なくとも10でかつ20より少ないモノマー単位)を含有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、リンカー(例えば、ポリマーリンカー、オリゴマーリンカー)は多糖類である。リンカー100としての使用に適切な多糖類の例は当技術分野で知られている(例えば、Solid Support Oligosaccharide Synthesis and Combinatorial Carbohydrate Libraries、Wiley2001に記載されるように)。
【0054】
いくつかの実施形態において、リンカー(例えば、ポリマーリンカー、オリゴマーリンカー)はペプチドである。リンカー100としての使用に適切なペプチドの非限定的な例は、限定することなしに、オリゴペプチド、環状ペプチド、および小タンパク質(例えば、Hodges,A.M.およびSchepartz,A.(2007)、J.Am.Chem.Soc.129:11024-11025などに記載されるトリ膵臓ペプチド-ベースミニチュアタンパク質)を含む。ペプチド構造に幾何学的制約を設計する方法は、当技術分野においてよく知られ、例えば、剛性を与えるため、および、標識分離を促進するために特に有用であると想定される。例えば、ペプチドアミノ酸配列のプロリン含量は、ペプチド形状を制御するために変更することができる(例えば、Kritzer,J.A.ら(2006)、ChemBioChem7:29-31参照)。有用であるペプチド設計技術の非限定的な追加の例は、ペプチド環化(例えば、Maltsev,O.V.ら(2016)、Angewandte Chemie55(4):1535-1539参照)、ステープリングおよび/またはH結合代理によるα-ヘリックスペプチドの制約(例えば、Douse,C.H.ら(2014)、ACS Chem.Biol.9:2204-2209参照)、環状βシートおよびβヘアピン模倣物によるペプチド制約(例えば、Gibbs,A.C.ら、(1998)、Nat.Struc.Biol.5:284-288参照)を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、リンカー(例えば、ポリマーリンカー、オリゴマーリンカー)は核酸である。いくつかの態様において、明るく標識された反応物は図2Aに示されるダイアグラムにしたがって設計され得、図2Aは、コア核酸コンストラクトに付着した2つのルミネッセンス発光標識を一般的に示す。示されるように、いくつかの実施形態において少なくとも1つのルミネッセンス発光標識210は、スペーサー220を介して付着部位202において核酸リンカー200に付着する。いくつかの実施形態において、核酸リンカー200は少なくとも2つのハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、核酸リンカー200は少なくとも2つのルミネッセンス発光標識を含み、各ルミネッセンス発光標識はその隣から最小距離dだけ離れる。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのルミネッセンス発光標識は同じオリゴヌクレオチド鎖に付着し、各付着部位はその隣から最小距離dだけ離れる。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識はスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖に付着し、各スペーサーはその付着部位から所与のルミネッセンス発光標識を最小距離dALだけ離す。
【0056】
いくつかの実施形態において、最小距離d、最小距離d、および最小距離dALは、例えば、当技術分野において知られる理論的方法(例えば、計算的にまたはその他)を使用して得ることができる。いくつかの実施形態において、理論的方法は、結合長、結合角および回転などの分子構造、静電気学、核酸らせん構造、および溶液中の分子を記述し得る他の物理的因子を組み込んだ任意のアプローチを含み得る。いくつかの実施形態において、距離測定値は、例えば結晶学的または分光学的手段によって実験的に得ることができる。
【0057】
本開示の複数の態様は、少なくとも部分的には、核酸リンカーを有する明るく標識された反応物(例えば、標識されたヌクレオチド)は
【0058】
【数1】

式中、2(dAL)-dは、負の値であり得る方程式1にしたがって設計され得るという発見に関連する。いくつかの実施形態において、dは17オングストローム(Å)より大きい。いくつかの実施形態において、dは少なくとも17Åであるが、350Å未満である(例えば、dは、約17~350Å、約17~300Å、約17~250Å、約17~200Å、約17~150Å、約17~100Å、または約17~50Åである)。
【0059】
さらに他の実施形態において、本開示の標識されたヌクレオチドは方程式2にしたがって設計され得る。
【0060】
【数2】

いくつかの実施形態において、2(dAL)/dは1未満、好ましくは0.5未満である。いくつかの実施形態において2(dAL)/dは0.1未満である。
いくつかの実施形態において、本開示の標識されたヌクレオチドは方程式3にしたがって設計され得、
【0061】
【数3】

式中、LLDは最長標識寸法(LLD)を表す距離である。いくつかの実施形態において、[2(dAL)+LLD]/dは0.5未満である。いくつかの実施形態において、[2(dAL)+LLD]/dは0.2未満である。いくつかの実施形態において、[2(dAL)+LLD]/dは0.1未満である。
【0062】
いくつかの実施形態において、最小距離dALはルミネッセンス発光標識210のおおよそ中心原子からスペーサー220が付着するオリゴヌクレオチド鎖上の原子まで測定される。いくつかの実施形態において、最小距離dALはルミネッセンス発光標識210の中心(例えば、ルミネッセンス発光分子の重心に基づいて概算されるか、または当技術分野において知られる方法かまたは本明細書の他の所に記載される他の方法)からスペーサー220が付着するオリゴヌクレオチド鎖の原子まで測定される。いくつかの実施形態において、最小距離dALスペーサー220の長さ(例えば、ルミネッセンス発光標識210に付着するスペーサー220の原子から核酸200に付着するスペーサー220の原子まで測定される)として測定される。いくつかの実施形態において、最小距離dはスペーサーが共有結合するオリゴヌクレオチド骨格上の原子間距離(例えば、脱塩基付着部位の炭素原子間)として測定される。いくつかの実施形態において、最小距離dは、オリゴヌクレオチド鎖上の標識された塩基間の距離(例えば、塩基付着部位の核酸塩基上の原子間)として測定される。
【0063】
いくつかの実施形態において、最小距離dは隣接するルミネッセンス発光標識のおおよそ中心原子間の距離として測定される。いくつかの実施形態において、隣接するルミネッセンス発光標識はおおよそ6オングストロームの距離dだけ離れる。いくつかの実施形態において、距離dは少なくとも6オングストローム(例えば、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、または少なくとも12オングストローム)である。いくつかの実施形態において、最小距離dは近似値として測定され、スペーサー構成、スペーサーの柔軟性、または核酸の柔軟性を考慮に入れるか入れない場合がある。
【0064】
他の態様の中で、本開示は発光寿命を損なうことなく最大の輝度を有するように多重標識反応物を設計できるように、ルミネッセンス発光標識間の距離dを開発するための一般的な戦略を提供する。いくつかの実施形態において、十分に近接した隣接するルミネッセンス発光標識は、消光効果が生じるように相互作用し得、発光寿命の減少した値および/または一貫しない値につながる。したがって、本明細書に提供される一般的な設計戦略は、いくつかの実施形態において、隣接するルミネッセンス発光標識間の相互作用の程度を制限する構造上の制約を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識は、放射性および/または非放射性崩壊を介して核酸リンカーのグアニン核酸塩基と相互作用し、ルミネッセンス発光寿命の減少および/または一貫しない発光寿命をもたらし得る。いくつかの実施形態において、付着部位周囲の領域においてG/C含量を最小化することによってルミネッセンス発光標識付着部位が開発される。したがって、いくつかの実施形態において、付着部位はオリゴヌクレオチド鎖のA/T-リッチな領域内に配置される。いくつかの実施形態において、各付着部位はオリゴヌクレオチド鎖上のGまたはCヌクレオチドから少なくとも2ヌクレオチド離れる(GまたはCヌクレオチドから例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10より多いヌクレオチド離れる)。したがって、いくつかの実施形態において、各付着部位はAまたはTから選択される、少なくとも2つの連続したヌクレオチドに隣接する。
【0066】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖の付着部位間の距離は、間にある標識されていない塩基(例えば、間にあるヌクレオチド)の数によって記載することができる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖上の付着は、少なくとも5つの標識されていない塩基(例えば、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個の標識されていない塩基)によって分離される。いくつかの実施形態において、付着部位は6、7、8、または9個の標識されていない塩基によって分離される。いくつかの実施形態において付着部位は、オリゴヌクレオチド鎖上の5~100個の標識されていない塩基(例えば、5~80、5~60、5~40、5~20、または5~10個の標識されていない塩基)によって分離される。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される設計原理は、輝度および/またはルミネッセンス発光強度を増大させるために標識された反応成分に、連続するルミネッセンス発光標識の追加を可能にする。いくつかの実施形態において、本出願の技術は式L(x)にしたがって輝度および/またはルミネッセンス発光強度を有する多重標識反応成分を提供し、式L(x)中、Lは標識された反応物上のルミネッセンス発光標識の総数に等しく、xは対応する単一に標識された反応物の測定された輝度または蛍光強度に等しい。したがって、いくつかの実施形態において、2つの色素で標識された反応成分は、1つの色素で標識された類似体と比べて2倍の輝度および/またはルミネッセンス発光強度を有する。いくつかの実施形態において、3つの色素または4つの色素で標識された反応成分は1つの色素で標識された類似体と比べてそれぞれ3倍の、または4倍の輝度および/またはルミネッセンス発光強度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された明るく標識された反応物は、L(x)による予測値の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の輝度および/またはルミネッセンス発光強度を示す。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される核酸リンカーは、少なくとも2つのルミネッセンス発光標識を有するオリゴヌクレオチド鎖を含む。図2Bは、2つのルミネッセンス発光標識に付着する一本鎖核酸リンカー250を一般的に示す。示されるように、一本鎖リンカーは標識間の相互作用を促進し得る比較的高い柔軟性を有し得る。いくつかの実施形態において、一貫した寿命および/または保存された寿命を有する明るく標識された反応物は、一本鎖リンカーコンストラクトを使用して、例えば、相互作用して消光効果を生み出さないシアニン-ベースの色素などの或る標識を利用することによって、生成することができる。しかしながら、いくつかのクラスの色素では、リンカーの柔軟性による標識-標識の近接性の促進により、発光寿命が減少するか、および/または一貫性がなくなる場合がある。したがって、いくつかの実施形態において、全体的な核酸リンカーの柔軟性を減少させるために、標識されたオリゴヌクレオチド鎖が1つ以上のオリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズされる。
【0069】
いくつかの実施形態において、鎖ハイブリダイゼーションは、核酸リンカー上のルミネッセンス発光標識間の好適な距離dを開発するための一般的な設計戦略として使用される。いくつかの実施形態において、鎖ハイブリダイゼーションは、核酸の特定の領域(例えば、標識された領域内および/または反応物から標識された領域を分離する領域内)における剛性を増大するために使用される。図2Bは、標識された領域を剛性化するためにハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド鎖を含み、それによって、そうでなければ標識-標識相互作用を促進する場合がある鎖柔軟性を減少させる二本鎖核酸リンカー252を一般的に示す。
【0070】
核酸リンカー252によって示されるように、いくつかの実施形態において、付着点周りのルミネッセンス発光標識の運動は、標識-標識の近傍性を促進することができる。また、示されるようにいくつかの実施形態において、付着部位周りの標識の運動は核酸リンカーのオリゴヌクレオチド鎖内に、より近接した標識をもたらし得る。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖は、ルミネッセンス発光標識と相互作用して一貫しないおよび/または減少した発光寿命測定値を生み出し得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される核酸リンカーは、標識-標識および/またはリンカー-標識相互作用の程度を制限するある長さ、ある剛性、ある付着の部位、および/またはある構成を有するスペーサーを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識間の分離距離は、標識が互いに対して存在する空間の体積で定義できる。例えば、図2Bは距離dがどのように測定され得るかについての一例を示すダイアグラム254を示す。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は立体体積212によって定義できる。いくつかの実施形態において立体体積212は、半径212-rの球として、またはそれ以外の場合は楕円形として近似される。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は、任意の他の標識から少なくとも5オングストローム離れる中心点(例えば、隣接する標識の中心点は少なくとも5オングストロームだけ離れる)を有する立体体積212を含む。ルミネッセンス発光標識の中心点は標識の任意の適切な中心であり得、例えば、標識の重心または幾何学的中心を含む。いくつかの実施形態において、図2Bに示されるようにルミネッセンス発光標識の中心点は半径212-rを計算または概算することにより決定され得る。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識の中心点はルミネッセンス発光標識の最長寸法の半分(例えば、図1Aのrおよびrに関して本明細書の他の所に記載されるように)として計算または概算することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、隣接するルミネッセンス発光標識間の距離(d)は隣接するルミネッセンス発光標識の重心間の距離として測定することができる。いくつかの実施形態において重心は、ルミネッセンス発光標識内のすべての原子のそれらの質量にしたがって重み付けされた平均位置を表す。重心の計算方法は当技術分野において知られる(例えば、Leach,A.R.、Molecular Modelling:Principles and Applications(第2版)、Prentice-Hall2001;Guenza,M.(2002)、Macromolecules35(7):2714-2722参照)。
【0073】
いくつかの実施形態において、隣接するルミネッセンス発光標識間の距離(d)は隣接するルミネッセンス発光標識の幾何学的中心間の距離として測定できる。分子の幾何学的中心は、いくつかの実施形態において、その分子の全原子(例えば、ルミネッセンス発光標識内の全原子)の平均位置を表し、それら原子は重み付けされない。したがって、いくつかの実施形態において、分子の幾何学的中心は分子内の全原子の座標の平均である、空間内の点を表す。
【0074】
いくつかの実施形態において、立体体積212は当技術分野において知られる任意の適切な方法を使用してより正確に計算される。例えば、分極率を含む特性のモル屈折率係数は、次の方程式に従って計算することができる:
【0075】
【数4】

式中、n=屈折率;MW=分子量;およびd=密度。
いくつかの実施形態において、標識の立体体積212は、追加の因子および/またはより複雑な因子を含むようにコンピュータ計算によって計算され得る。例えば、Verloop立体因子は結合角、ファンデルワールス半径、結合長、および可能な立体配座に基づいた分子の空間寸法を提供する(例えば、Harper,K.C.ら、(2012)、Nature Chemistry 4、366-374参照)。
【0076】
いくつかの実施形態において、付着部位の周りのルミネッセンス発光標識の運動は分離距離dに考慮され得る。図2Bにおいて示されるように、各付着部位の周りの標識の運動範囲は、いくつかの実施形態において、スペーサー長および標識の立体体積に基づいて定義され得る。この理論的範囲の運動は、破線で示される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される様々な組成物および設計戦略は、有利には運動範囲が示される重複領域に近づく程度を制限し得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、スペーサー剛性、スペーサー長、および付着部位分離は、標識が重複領域に近づく可能性がある程度を制限するために、本開示に従ってそれぞれ扱うことができる。また、例えば、放射性および/または非放射性崩壊を生じるために、標識が必ずしも物理的に接触する必要はないので、ダイアグラム254は説明を意図したものであることも理解されたい。
【0077】
いくつかの実施形態において、ダイアグラム254に示される標識の運動範囲は一般に空間体積として表され得、例えば、標識が所与の時点で空間内のある点に存在し得る異なる確率の領域を有する空間領域である。いくつかの実施形態において、各標識は任意の他のルミネッセンス発光標識の空間体積と実質的に重複しない空間体積を占める。いくつかの実施形態において、各標識は任意の他の標識が実質的にない空間体積を占める。
【0078】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識の相対的付着部位は、二本鎖リンカーのらせん構造を考慮して設計され得る。図2Cは距離、xだけ離れた2つの標識を有する核酸260の一例を示す。核酸262(おおよそ正確な縮尺率で描かれる)は、付着部位において核酸260の大体半分の塩基だけ離れた2つのルミネッセンス発光標識に付着するが、ヘリックスに沿った相対的付着部位の場所は、おおよそ2xの空間での標識分離距離をもたらす。示されるように、いくつかの実施形態において、核酸リンカーは、標識間の立体障壁として作用することにより、放射性および/または非放射性崩壊の程度をさらに制限することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、用語「立体障壁」は、リンカーに付着したルミネッセンス発光標識とリンカーの他の付着との間に位置するリンカーまたはリンカー部分(例えば、核酸リンカーまたはその部分)を表す。理論に縛られることを望まないが、立体障壁はルミネッセンス発光標識によって放射される放射性および/または非放射性崩壊を吸収し、偏向し、またはその他遮断することが考えられる。いくつかの実施形態において、立体障壁は1つ以上のルミネッセンス発光標識が1つ以上の他のルミネッセンス発光標識と相互作用する程度を妨げるか、または制限する。いくつかの実施形態において、立体障壁は1つ以上のルミネッセンス発光標識が1つ以上の反応物と相互作用する程度を妨げるか、または制限する。いくつかの実施形態において、立体障壁は1つ以上のルミネッセンス発光標識が反応物に付随した1つ以上の分子(例えば、反応物に結合したポリメラーゼ)と相互作用する程度を妨げるか、または制限する。したがって、いくつかの実施形態において、用語、立体障壁は核酸リンカーのある部分によって提供される保護効果または遮蔽効果を一般に表し得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、1つ以上の構造モチーフは立体障壁として機能することができる。例えば、いくつかの実施形態において、二本鎖核酸リンカーによって形成されるヘリックスは立体障壁として機能する。いくつかの実施形態において、ステムループまたはその部分(例えば、ステム、ループ)は立体障壁として機能する。いくつかの実施形態において、3方向接合部(例えば、2つ以上のステムループを有する核酸のように)は立体障壁として機能する。いくつかの実施形態において、付着を有さないハイブリダイズされた鎖(例えば、サポート鎖)は立体障壁として機能する。いくつかの実施形態において、スペーサーは立体障壁として機能する。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された明るく標識された反応物は、ルミネッセンス発光標識と反応物との間の分離を提供する。いくつかの実施形態において核酸264は、合成反応においてポリメラーゼ290の基質として働くヌクレオシドポリリン酸塩280反応物を含む。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ活性部位に近接する標識はポリメラーゼ光傷害を引き起こし得(例えば、非放射性崩壊またはその他を介して)、それはポリメラーゼ活性に有害であり得る。示されるように、核酸266は反応物に付着し、リンカーの少なくとも一部分は標識と反応物との間にある領域にある。したがって、いくつかの実施形態において、核酸リンカーは標識によって引き起こされる光傷害からポリメラーゼをさらに保護するための立体障壁として機能することができる。ポリメラーゼ保護のこの効果は、いくつかの実施形態において、標識-反応物空間分離および/または標識と反応物との間の立体障壁の存在を介して生じ得る。ポリメラーゼ保護は同時係属中の米国特許出願第15/600,979号にさらに詳細に記載され、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0082】
いくつかの実施形態において、核酸リンカーのサイズおよび構成(例えば、核酸リンカーの1つ以上のオリゴヌクレオチド鎖および/または1つ以上のスペーサー)は、ルミネッセンス発光標識とヌクレオシドポリリン酸塩との間の距離を決定する。いくつかの実施形態において、その距離は約1nmまたは2nmから約20nmである。例えば、2nmより多い、5nmより多い、5~10nm、10nmより多い、10~15nm、15nmより多い、15~20nm、20nmより多い。しかしながら、ある検出技術はルミネッセンス発光標識が励起される規定の照射域の中にあることを必要とする(例えば、ポリメラーゼの活性部位内にヌクレオシドポリリン酸塩が保持されるとき)ので、ルミネッセンス発光標識とヌクレオシドポリリン酸塩との距離は長すぎることはできない。したがって、いくつかの実施形態において、全体の距離は30nm未満、25nm未満、およそ20nm、または20nm未満である。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された組成物の他の特徴は、例えば、スペーサー長、スペーサー剛性、付着部位の場所などの標識に引き起こされる光傷害の可能性を最小限にするために、標識-反応物分離を促進するように実装することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される核酸リンカーへの反応物連結は、標識-反応物分離を促進するようにルミネッセンス発光標識に関連して変更することができる。図3Aは、同一鎖または逆鎖標識-反応物連結を有する核酸リンカーを一般的に示す。いくつかの実施形態において、核酸300は同じオリゴヌクレオチド鎖に付着した2つ以上のルミネッセンス発光標識および反応物を含む。いくつかの実施形態において、同一鎖連結は標識と反応物との間の共有結合性連結を生じる。
【0084】
いくつかの実施形態において、核酸302は、異なるオリゴヌクレオチド鎖に付着された2つ以上のルミネッセンス発光標識および反応物を含む。いくつかの実施形態において、逆鎖連結は、標識と反応物との間の非共有結合をもたらす。いくつかの実施形態において、標識および反応物の逆鎖連結は、標識-付着されたオリゴヌクレオチド鎖および反応物-付着されたオリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーションによって生じる。示されるように、いくつかの実施形態において、本開示の核酸リンカーは、標識-反応物分離距離dLRを含む。いくつかの実施形態において、dLRは、反応物と最も近いルミネッセンス発光標識との間の距離である。いくつかの実施形態において、dLRは、標識付着部位から反応物付着部位まで測定される。いくつかの実施形態において、dLRは、標識のルミネッセンス発光分子から反応物まで測定される。いくつかの実施形態において、dLRは、少なくとも1nmである。いくつかの実施形態において、dLRは、約1nm~約10nm(例えば、おおよそ1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、または10nmより大きい)である。いくつかの実施形態において、dLRは、約2nm~約30nm(例えば、約2~25nm、約2~20nm、約2~15nm、約2~10nm、約2~5nm、約5~10nm、約10~20nm、約5~30nm、約15~30nm、または約20~30nm)である。
【0085】
図3Bは、明るく標識された反応物の設計において使用される非限定的距離仕様の複数の例を示す。いくつかの実施形態において、核酸リンカー304は同一鎖連結を介して2つのルミネッセンス発光標識およびヌクレオシド6リン酸塩(例えば、反応物)に付着する。いくつかの実施形態において、示されるように、dはおおよそ1nmであり、dLRはおおよそ7nmである。いくつかの実施形態において、本開示の明るく標識された反応物は、2つより多いルミネッセンス発光標識を含む。例えば、いくつかの実施形態において、核酸リンカー306は、同一鎖連結によって3つのルミネッセンス発光標識およびヌクレオシド6リン酸塩(例えば、反応物)に付着される。示されるように、いくつかの実施形態において、2つより多い付着部位に付着した2つより多いルミネッセンス発光標識を有するコンストラクトは、必然的に1つより多い分離距離dを有するであろう。いくつかの実施形態において、単一コンストラクト上の各分離距離dは、本明細書の記載にしたがって独立して設計することができる。いくつかの実施形態において、各標識分離距離dは、おおよそ同じであるように設計することができる。例えば、いくつかの実施形態において分離距離dの各発生は、おおよそ3.5nmであり、dLRはおおよそ7nmである。
【0086】
いくつかの実施形態において、本出願の明るく標識された反応物は、異なるオリゴヌクレオチド鎖を介して付着された2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。例えば、いくつかの実施形態において、核酸リンカー308は、別個のオリゴヌクレオチド鎖を介して付着された4つのルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、核酸リンカー308の標識されていないオリゴヌクレオチド鎖は、2つのルミネッセンス発光標識およびヌクレオシドポリリン酸塩に付着された、第1オリゴヌクレオチド鎖に相補的である第1部分を含む。標識されていないオリゴヌクレオチド鎖は、2つのルミネッセンス発光標識に付着された第2オリゴヌクレオチド鎖に相補的である第2部分をさらに含む。示されるように、いくつかの実施形態において各標識された鎖内のルミネッセンス発光標識付着部位は、9ヌクレオチド離れる。いくつかの実施形態において、非連続標識された鎖上の最も近い付着部位間の分離は同じか、または異なり得る(例えば、10-ヌクレオチド分離によって示されるように)。
【0087】
同一鎖標識-反応物連結を有する非限定的汎用な核酸リンカー304は、図3Cに示されるように、標識されたヌクレオシドポリリン酸塩を生成するための基礎として使用された。示されるように、図3Cの核酸リンカーは、2つのハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド鎖を含む。本開示のある実施形態に従って、2つのルミネッセンス発光標識がリンカーの第1オリゴヌクレオチド鎖内の脱塩基部位に付着する。本明細書の他の所に記載されるように一般的な付着戦略として、クリックケミストリー技術は、同じオリゴヌクレオチド鎖にヌクレオシドポリリン酸塩を付着するために使用される。第2オリゴヌクレオチド鎖は第1鎖にハイブリダイズされ、本明細書に記載される理論に従って付着した成分の制約された空間的立体配座を促進する。図3Cのコンストラクトは、他の標識ヌクレオシドポリリン酸塩とともに単一分子シーケンシングランにおいて正常に使用された(図3D)。同様に設計されたコンストラクトは逆鎖連結を有して生成され、図3Eに示される。
【0088】
図3Eは、ヌクレオシドポリリン酸塩(例えば、反応物)をルミネッセンス発光標識と非共有結合的に連結する核酸リンカーの構造の一例を示す。示されるように、脱塩基付着部位において2つのルミネッセンス発光標識に付着する第1オリゴヌクレオチド鎖は、末端付着部位においてヌクレオシド6リン酸塩に付着する第2オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物を生成するための本開示において提供される設計戦略は、リンカー内に取り込まれた標識など(例えば、オリゴヌクレオチド鎖などのオリゴマーまたはポリマーリンカーに取り込まれた)代替標識コンジュゲーション戦略を含むことが企図される。例えば、図3Fはオリゴヌクレオチド鎖内に付着する2つの標識を有する核酸リンカーの一例を示す。
【0089】
図3Fにおいて示されるように、いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物は、オリゴヌクレオチド鎖内に付着する2つのルミネッセンス発光標識を含む(例えば、その鎖に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、そのようなコンジュゲーション戦略は、放射性および/または非放射性崩壊を介して相互作用しない、シアニン-ベースの色素などのルミネッセンス発光分子を実装しうる(例えば、図3Fにおいて示されるように、枠で囲まれた領域)。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖内に付着するルミネッセンス発光分子の数は、オリゴヌクレオチド鎖のサイズによってのみ制限され得る。したがって、いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物はオリゴヌクレオチド鎖内に付着した2つより多いルミネッセンス発光標識(例えば、2、3、4、5、6、または6つより多いルミネッセンス発光標識)を含む。図3Fに示されるコンストラクトは、3つの他の明るく標識されたヌクレオシドポリリン酸塩とともにシーケンシングランにおいて正常に利用された(図3G)。
【0090】
本開示は、いくつかの態様において、核酸リンカーが一貫した発光寿命および/または保存された発光寿命を有する明るく標識された反応物のための足場を提供する構造的に制約された立体配座を有して設計され得るという発見に関連する。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖ハイブリダイゼーションは、標識分離の目的のための制約された立体配座を促進する一般的な1戦略である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖ハイブリダイゼーションは異なるオリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーションを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖ハイブリダイゼーションは自己鎖ハイブリダイゼーション(例えば、一本鎖内の自己ハイブリダイゼーション)を含む。いくつかの実施形態において、分離鎖ハイブリダイゼーションに関して本明細書の他の所に記載されるように、自己鎖ハイブリダイゼーションは核酸リンカーの柔軟性を制限し得る。いくつかの実施形態において、自己鎖ハイブリダイゼーションは、核酸リンカー内の1つ以上のステムループ構造を形成するために使用される。
【0091】
ステムループまたはヘアピンループは、オリゴヌクレオチド鎖が折りたたまれ、同じ鎖の別の区画と塩基対を形成するときに形成される、オリゴヌクレオチド鎖上のヌクレオチドの対になっていないループである。いくつかの実施形態において、ステムループの対になっていないループは3~10個のヌクレオチドを含む。したがって、ステムループは、ステムを形成するようにハイブリダイズする逆相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド鎖の2つの領域によって形成され得、2つの領域は対になっていないループを形成する3~10ヌクレオチドだけ離れる。いくつかの実施形態において、ステムは1つ以上のG/Cヌクレオチドを有するように設計することができ、1つ以上のG/Cヌクレオチドは、A/Tヌクレオチドと比較して形成される追加の水素結合相互作用で追加された安定性を提供できる。いくつかの実施形態において、そのステムは対になっていないループ配列にすぐ隣接するG/Cヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ステムは対になっていないループ配列に隣接する最初の2、3、4、または5つのヌクレオチド内にG/Cヌクレオチドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカーの対になっていないループは1つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上の標識付着部位は対になっていないループ内に存在する。いくつかの実施形態において、付着部位は対になっていないループ内の脱塩基部位で生じる。いくつかの実施形態において、付着部位は対になっていないループの塩基で生じる。いくつかの実施形態においてループは、例えば、本明細書の他の所に記載されるようにグアニンで観察される消光効果のため、A/T/U-リッチ配列を含む。いくつかの実施形態において、付着部位は対になっていないループ内のA、T、またはUヌクレオチドにおいて生じる。いくつかの実施形態において、少なくとも4つの連続するA、T、またはUヌクレオチドは、付着部位の両側に生じる。いくつかの実施形態において、対になっていないループは33%未満のG/C含量(例えば、30%未満、20%未満、10%未満、または0%G/C含量)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識はステムループの対になっていないループに付着する(例えば、標識付着部位はループ内で生じる)。例えば、図4Aは、ステムループ核酸リンカー400を有する標識された反応物の一例を一般的に示す。示されるように、いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖410はセルフハイブリダイズして、ステムループを形成する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖のセルフハイブリダイゼーションした部分は、ステムループのステム412を形成する。いくつかの実施形態において、自己鎖ハイブリダイゼーションは、ステムループのループ414の形成を生じる(例えば、対になっていないループ)。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖410は反応物に付着する第2オリゴヌクレオチド鎖420とさらにハイブリダイズする。したがって、いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカーは、逆鎖連結を介して反応物にルミネッセンス発光標識を非共有結合的に連結する。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識に付着するセルフハイブリダイゼーションしたオリゴヌクレオチド鎖(例えば、ステムループを有する鎖)は、同一鎖連結を介して1つ以上の反応物に付着することができることを理解されたい。
【0094】
いくつかの実施形態において、2つ以上のルミネッセンス発光標識は、ステムループ核酸リンカーに付着する。例えば、いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカー402は、2つのルミネッセンス発光標識に付着する。示されるように、いくつかの実施形態において、2つのルミネッセンス発光標識のための付着部位は、ステムループのループ内に生じる。いくつかの実施形態において、セルフハイブリダイゼーションしたステム領域によって提供される安定性は、比較的低い柔軟性のレベルを有するループ領域を生じる。いくつかの実施形態において、対になっていないループ内のルミネッセンス発光標識付着部位は、有利な標識-標識空間分離および/または有利な標識-反応物空間分離を促進するように設計することができる。非限定的なステムループ核酸リンカー402によって提供される例は、ループの直径とほぼ同じである距離によって互いに分離される標識付着部位を示す。いくつかの実施形態において、この設計は、空間を介した標識-標識の分離を最大化できる。いくつかの実施形態において、この設計は、本明細書の他の所に記載されるように、ループによって提供される立体障壁効果を介した標識-標識相互作用の程度をさらに限定する。いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカーは2つ以上のステムループを含む(図4B)。
【0095】
図4Bにおいて示されるように、いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカー404は2つのステムループを含む。いくつかの実施形態において、2つのステムループの形成はY型を有する核酸リンカーを生じ、3方向接合部410が形成される。いくつかの実施形態において、3方向接合部は、これらの特徴から生じる相対的な安定性および幾何学的に制約された立体配座のため一般的な設計戦略として企図される。いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカー404は、各ループに付着する1つのルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、ステムループ核酸404は逆鎖連結を介してルミネッセンス発光標識および反応物を非共有結合的に連結し、例えば、1つ以上の反応物に付着した第2オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする第1オリゴヌクレオチド鎖に1つ以上の標識が付着する。いくつかの実施形態において、ステムループ核酸406は同一鎖連結を介してルミネッセンス発光標識および反応物を連結する(例えば、同じオリゴヌクレオチド鎖に付着された1つ以上の標識および1つ以上の反応物)。ステムループ核酸406は、3方向接合部を有する明るく標識された反応物の設計に使用される非限定的距離仕様の一例を示す。例えば、これらのおおよその距離は、図4Cに示される標識されたヌクレオシドポリリン酸塩の生成の基礎として使用される。図4Cのコンストラクトは、他の標識ヌクレオシドポリリン酸塩とともに単一分子シーケンシングランにおいて正常に使用された(図4D)。
【0096】
いくつかの実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識はステムループのステムに付着される。いくつかの実施形態において、核酸リンカーのステムループはルミネッセンス発光標識を含まない。いくつかの実施形態において、核酸リンカーのステムループはステム内に対になっていない領域(例えば、「バルジループ」)を含む。いくつかの実施形態において、ステムループなどの1つ以上の標識されていない構造モチーフが核酸リンカー内に(例えば、1つ以上のルミネッセンス発光標識と1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩との間に付着するような核酸リンカー上の位置に)含まれる。そのような実施形態において、その1つ以上の標識されていない構造モチーフは、本明細書の他の所に記載されるように、立体障壁効果を提供できる。
【0097】
いくつかの実施形態において、ステムループ核酸リンカーは、ルミネッセンス発光標識に付着した第1オリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、そのルミネッセンス発光標識は、スペーサーを介して第1オリゴヌクレオチド鎖の付着部位に付着される。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は、ステムおよびループ(例えば、対になっていないループ)を有するステムループ2次構造を形成する。いくつかの実施形態において、ループは付着部位を含む。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは、第1オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする第2オリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド鎖は、ヌクレオシドポリリン酸塩に付着する。いくつかの実施形態において、ヌクレオシドポリリン酸塩はスペーサーを介して第2オリゴヌクレオチド鎖に付着する。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は下記構造を有する:
【0098】
【化2】

式中、NおよびNは、それぞれ、A、U、T、G、およびCから独立して選択される5~40ヌクレオチドの連続する配列であり、第2オリゴヌクレオチド鎖はNの5’部分またはNの3’部分のいずれかにハイブリダイズする;括弧はyステムループを形成する領域を示し、各ステムループはステムおよびループを有し、yは1~3;NおよびNはそれぞれ、A、U、T、G、およびCから独立して選択される5~20ヌクレオチドの連続する配列であり、Nの5’部分(S)およびNの3’部分(S)は逆相補的であるか、または部分的に逆相補的であり、ステムモチーフを形成するように互いにハイブリダイズすることができる;SとSとがハイブリダイズしてステムモチーフを形成するとき、Nの3’部分(L)、Nの5’部分(L)、および間にある領域はループモチーフを形成する;(A/T)はA、T、およびUから選択されるヌクレオチドである;Xは第2オリゴヌクレオチド鎖上の付着部位である;Yは第1リンカーである;Zはルミネッセンス発光標識である。
【0099】
本明細書に記載されるように、本開示の複数の態様は、1つ以上の反応物(例えば、1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩)に1つ以上のルミネッセンス発光標識を連結するための幾何学的に制約されたリンカー構成に関連する。いくつかの実施形態において、幾何学的に制約された構成は2つ以上のルミネッセンス発光標識を有する核酸リンカーを表し、ルミネッセンス発光標識は対称性の構成によって空間的に分離される。いくつかの態様において、本開示の明るく標識された反応物は図5Aに示されるように、樹状構成に似た核酸リンカーを含む。いくつかの実施形態において、樹状リンカー500は、反応物(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に連結されたトリス-標識された核酸リンカーを含む。示されるように、いくつかの実施形態において、樹状リンカー500は3つの主要なオリゴヌクレオチド成分を含む。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド成分510は分岐リンカーを介して共有結合的に付着する4つのオリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、成分510のオリゴヌクレオチド鎖のうちの3つはそれぞれ、ルミネッセンス発光標識に付着する(例えば、本明細書に記載される末端付着または他のコンジュゲーション戦略を介して)。したがって、いくつかの実施形態において、成分510の3つの標識されたオリゴヌクレオチド鎖は、一般的に成分510の標識された部分として表される。いくつかの実施形態において、成分510の第4オリゴヌクレオチド鎖は標識されていない。いくつかの実施形態において、前記第4オリゴヌクレオチド鎖は第2オリゴヌクレオチド成分520とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、核酸リンカー500の第2オリゴヌクレオチド成分520は反応物に付着する(例えば、本明細書に記載される末端付着または他のコンジュゲーション戦略を介して)。いくつかの実施形態において、第3オリゴヌクレオチド成分530は、成分510の標識された部分の3つのオリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、第3オリゴヌクレオチド成分530は、成分510とのそのハイブリダイゼーションが標識された領域内の構造的な剛性を提供してルミネッセンス発光標識の空間分離を促進するので、サポート鎖と表される。
【0100】
理解されるべきであるように、本明細書に記載される任意のリンカー設計戦略は本開示によって企図される樹状核酸リンカーまたは任意の他の核酸リンカー構成に適用することができる(例えば、鎖連結、スペーサー特性およびスペーサー構成、標識-標識分離、標識-反応物分離、3方向接合部など)。樹状核酸502は、樹状核酸リンカーを有する明るく標識された反応物の設計に使用される非限定的距離仕様の一例を示す。例示的な一例として、これらのおおよその距離は、図5Bに示される標識されたヌクレオシドポリリン酸塩を生成する基礎として使用される。示されるように、いくつかの実施形態において、樹状核酸は1つより多い反応物(例えば、2つのヌクレオシドポリリン酸塩、または2つより多いヌクレオシドポリリン酸塩)を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、樹状核酸リンカーは反応物を有するハイブリダイズされた部分を含む第1および第2オリゴヌクレオチド鎖の観点から説明される。例えば、いくつかの実施形態において、樹状核酸リンカーはカップリング化合物(例えば、分岐カップラー)を介して第1オリゴヌクレオチドの末端において2つ以上の分岐オリゴヌクレオチド鎖に付着した第1オリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、各分岐オリゴヌクレオチド鎖はルミネッセンス発光標識に付着する。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド鎖は、反応物(例えばヌクレオシドポリリン酸塩)に付着した第2オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズされる。いくつかの実施形態において、第3オリゴヌクレオチド鎖(例えば、第3オリゴヌクレオチド成分)は2つ以上の分岐オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、カップリング化合物は以下の構造である:
【0102】
【化3】

式中、Nは第1オリゴヌクレオチド鎖;Nは分岐オリゴヌクレオチド鎖;RおよびRはそれぞれ互いに独立であり、結合または連結基は、置換または非置換アルキレン;置換または非置換アルケニレン;置換または非置換アルキニレン;置換または非置換ヘテロアルキレン;置換または非置換ヘテロアルケニレン;置換または非置換ヘテロアルキニレン;置換または非置換ヘテロシクリレン;置換または非置換カルボシクリレン;置換または非置換アリーレン;置換または非置換ヘテロアリーレン;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される;各例のOは隣接するオリゴヌクレオチド鎖の5’リン酸基または3’ヒドロキシル基のいずれかの酸素原子である。
【0103】
いくつかの態様において、本開示は星型核酸リンカーを有する明るく標識された反応物を提供する。図6Aにおいて示されるように、星型核酸リンカーは、リンカーの外部領域に対称的に配置された反応物と本構成のコア領域により近い1つ以上のルミネッセンス発光標識とを提供し得る。このように、いくつかの実施形態において反応物は、例えば、ポリメラーゼとより反応しやすい場合がある。いくつかの実施形態において、コア領域近くのルミネッセンス発光標識付着部位の周囲のヌクレオチド含量は本明細書に記載される仕様にしたがって選択される(例えば、標識とリンカーとの間の消光効果を避けるように低いG/C含量)。いくつかの実施形態において、星型核酸リンカー600は、分岐リンカーを介して付着した3つのオリゴヌクレオチド鎖を有するY型オリゴヌクレオチド成分を含む。いくつかの実施形態において、Y型オリゴヌクレオチド成分の3つのオリゴヌクレオチド鎖はそれぞれ反応物に付着する(例えば、末端に)。いくつかの実施形態において、Y型オリゴヌクレオチド成分の3つのオリゴヌクレオチド鎖はそれぞれ、オリゴヌクレオチド鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド鎖のうちの1つはルミネッセンス発光標識に付着する。しかしながらいくつかの実施形態において、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド鎖のうちの2つまたは3つは、ルミネッセンス発光標識(601)にそれぞれ付着する。
【0104】
いくつかの実施形態において、星型核酸リンカーのY型オリゴヌクレオチド成分は3つより多い反応物に付着する。例えば、いくつかの実施形態において、星型核酸リンカー602を有する明るく標識された反応物は、Y型オリゴヌクレオチド成分の2つのオリゴヌクレオチド鎖のそれぞれにおいて2つの反応物を含む。いくつかの実施形態において、その2つの反応物は、示されるように標識されていない鎖とハイブリダイズするY型オリゴヌクレオチド成分の鎖に付着する。いくつかの実施形態において、その2つの反応物は、標識された鎖(603)とハイブリダイズするY型オリゴヌクレオチド成分の鎖に付着する。
【0105】
いくつかの実施形態において、星型核酸リンカーは標識されたオリゴヌクレオチド成分と反応物オリゴヌクレオチド成分とを含み、各オリゴヌクレオチド成分はY型オリゴヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態において、星型核酸リンカー604は、3つのルミネッセンス発光標識に付着する第1Y型オリゴヌクレオチド成分を含む。いくつかの実施形態において、各ルミネッセンス発光標識は第1Y型成分の各オリゴヌクレオチド鎖に付着する。いくつかの実施形態において、示されるように、各ルミネッセンス発光標識は第1Y型オリゴヌクレオチド成分のコア領域近くに付着する。いくつかの実施形態において、星型核酸リンカー604は、3つの反応物に付着した第2Y型オリゴヌクレオチド成分とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、各反応物は第2Y型成分の各オリゴヌクレオチド鎖に付着する。いくつかの実施形態において、示されるように、各反応物は第1Y型オリゴヌクレオチド成分の外部領域に付着する(例えば、末端付着部位を介して)。星型核酸606は、星型核酸リンカーを有する明るく標識された反応物の設計に使用される非限定的距離仕様の一例を示す。本開示によって生成された星型核酸リンカーを有する明るく標識された反応物の構造の一例は、図6Bにおいて示される。
【0106】
いくつかの実施形態において、星型核酸リンカーは、リンカーのY型オリゴヌクレオチド成分に使用される共有結合性カップリング化合物の観点から説明され得る。例えば、いくつかの実施形態において、星型核酸リンカーを有する明るく標識された反応物は、共有結合性カップリング化合物から延在する3つ以上のオリゴヌクレオチド鎖を含む第1オリゴヌクレオチド成分を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つは、反応物(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)に付着する。いくつかの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド成分のオリゴヌクレオチド鎖のうちの2つ以上(例えば、2、3、4、5つ以上)は1つ以上の反応物にそれぞれ付着する。いくつかの実施形態において第1オリゴヌクレオチド成分は、第2オリゴヌクレオチド成分とハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド成分は、ルミネッセンス発光標識に付着した少なくとも1つのオリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド成分は共有結合性カップリング化合物から延在する3つ以上のオリゴヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、第2オリゴヌクレオチド成分のオリゴヌクレオチド鎖のうちの2つ以上(例えば、2、3、4、5つ以上)はルミネッセンス発光標識にそれぞれ付着する。
【0107】
いくつかの態様において、本開示の明るく標識された反応物は四面体コアを有する核酸リンカーを含む。図6Cの例示的構造によって示されるように、四面体コアは、1つ以上のルミネッセンス発光標識および1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩の対称的に制約された空間配置を促進する4方向共有結合性カップリング化合物を表す。図6Dは、図6Cに示される例示的な構造を合成するために使用され得る反応スキームの一例を示す。いくつかの実施形態において四面体コアは、本明細書に記載される明るく標識された反応物の設計戦略の1つ以上のいずれかと組み合わせて使用することが企図される。一例として、四面体コアによって提供される対称的に制約された利点は、図6Eに示される明るく標識された反応物を生成するために、本明細書に記載される3方向接合部で実施される。示されるように、いくつかの実施形態において、3方向接合部における、またはその近くでのルミネッセンス発光標識の付着は、本明細書の他の所に記載されるように、有利には立体効果を提供することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において本開示は、対称的付着を可能にするコア化学カップラーを使用する対称的に制約された構成をさらに企図する。いくつかの実施形態において、例えば、明るく標識された反応物はシクロデキストリン-ベースコアを含む。3方向接合部を有するシクロデキストリン-ベースの核酸リンカーを生成するための合成スキームの一例は、図7に示される。シクロデキストリンカップリング化合物の構造の一例は、本明細書に記載される複数の実施形態に従って3つ以上のオリゴヌクレオチド鎖の共有結合に使用され得る他のカップリング化合物の複数の例と共に表1に提供される。
【0109】
【表1】

スペーサー
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物はスペーサーを介して核酸リンカーに付着し得る。いくつかの実施形態において、スペーサーは付着部位において核酸リンカーのオリゴヌクレオチド鎖に付着する。いくつかの実施形態において、付着部位はオリゴヌクレオチド鎖上の末端部位(例えば、5’または3’端において)生じる。末端付着部位の例は、例えば、図3C、3E、4C、6B、6C、8、9、および10(ヌクレオチドの末端付着)、および図5B、9、および10(ルミネッセンス発光標識の末端付着)において示されるように、当該出願において提供される。いくつかの実施形態において、付着部位はオリゴヌクレオチド鎖内の脱塩基部位において生じる(例えば、ヌクレオチドを欠くが隣接する部位において)。脱塩基付着部位の例は、例えば、図3C、3E、6B、6C、および8に示されるように(ルミネッセンス発光標識の脱塩基付着)当該出願において提供される。いくつかの実施形態において、付着部位はオリゴヌクレオチド鎖上の塩基部位において生じる(例えば、鎖上の核酸塩基などのヌクレオチド、ヌクレオチドの糖またはリン酸に付着する)。例えば、図4Cおよび8に示されるように(ルミネッセンス発光標識の塩基付着)、塩基付着部位の例は当該出願内に提供される。
【0110】
いくつかの実施形態において、スペーサーは複数のチミジンヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、スペーサーは分岐スペーサー、例えば、分岐チミジンスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、分岐スペーサーは、分岐チミジンスペーサーを含む。例えば、いくつかの実施形態において、各ヌクレオシドポリリン酸塩は式Nu-T(T)T-Rのチミジンスペーサーを含み、Nuはヌクレオシドポリリン酸塩を表し、Tはチミジンヌクレオチドを表し、nは1~30の値を有する整数であり、Rは1つ以上の追加のヌクレオシドポリリン酸塩を連結する収束点を表す。いくつかの実施形態において、収束点は核酸のオリゴヌクレオチド鎖にさらに直接付着する。いくつかの実施形態において収束点は、例えばさらなるチミジンリンカーおよび/またはさらなる収束点を介してオリゴヌクレオチド鎖にさらに間接的に付着する。分岐チミジンスペーサーの一例は図5Bにおいて示され、図5Bは、チミジンスペーサーを有する2つのヌクレオシドポリリン酸塩と、オリゴヌクレオチド鎖にさらに直接付着する収束点とを示す。
【0111】
いくつかの実施形態において、スペーサーは1つ以上の分岐点を含有し、2つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)ヌクレオシドポリリン酸塩が各ルミネッセンス発光標識に連結され、2つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)ルミネッセンス発光標識が各ヌクレオシドポリリン酸塩に連結され、または2つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)ヌクレオシドポリリン酸塩が2つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)ルミネッセンス発光標識に連結される。
【0112】
いくつかの実施形態において、スペーサーは核酸リンカーのオリゴヌクレオチド鎖の末端部位に付着される。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示される汎用スペーサーを介してリゴヌクレオチド鎖の5’または3’端のいずれかに付着される:
【0113】
【化4】

いくつかの実施形態において、スペーサーは核酸リンカーのオリゴヌクレオチド鎖内の内部脱塩基部位に付着する。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示される汎用スペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部脱塩基部位に付着する:
【0114】
【化5】

ルミネッセンス発光標識付着のスペーサーの例(例えば、末端、内部脱塩基、または塩基付着部位を介して)は表2に提供され、以下に示される。スペーサー構造はルミネッセンス発光標識を有して示され得るが、いくつかの実施形態において反応物は、本明細書に提供される任意のスペーサー構造が核酸リンカーに反応物(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を付着するために使用できるように置換され得ることを理解されたい。
【0115】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示されるグリコールアミンスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部脱塩基部位に付着される:
【0116】
【化6】

いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示されるセリノールアミンスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部脱塩基部位に付着される:
【0117】
【化7】

いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示されるC6-アミノ-Tスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部塩基部位に付着される:
【0118】
【化8】

いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物は以下に示されるC2-アミノ-Tスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部塩基部位に付着される:
【0119】
【化9】

いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識および/または反応物はは以下に示されるC8-アルキン-dTスペーサーを介してオリゴヌクレオチド鎖上の内部塩基部位に付着される:
【0120】
【化10】

いくつかの実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識および/または1つ以上の反応物(例えば、1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩)は、当技術分野において知られる化学カップリング技術を使用して核酸リンカーに付着することができる。任意の共有結合形成反応は、ルミネッセンス発光標識(例えば、ドナー発色団および/またはアクセプター発色団)をヌクレオチドにコンジュゲートするために使用され得る。例示的な反応は、限定するものではないが、アルキル化反応、メタセシス反応、付加反応、置換反応、付加環化反応などを含む。
【0121】
例えば、いくつかの実施形態において、「クリックケミストリー」技術(例えば、銅触媒、歪み促進、銅フリークリックケミストリーなど)は、核酸に1つ以上のルミネッセンス発光標識および1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩を付着するために使用され得る。ある実施形態において、ヌクレオチドにルミネッセンス発光標識(例えば、ドナー発色団および/またはアクセプター発色団)をコンジュゲートするために使用される反応は「クリックケミストリー」反応である。当技術分野において知られる任意の「クリックケミストリー」反応はこの目的のために使用され得る。クリックケミストリーは2001年にSharplessによって導入された化学的アプローチであり、控えめな反応性ユニットを結合することにより、物質を迅速かつ確実に生成するように適合された化学について説明する。例えば、Kolb、FinnおよびSharpless Angewandte Chemie International Edition(2001)、40:2004-2021;Evans、Australian Journal of Chemistry(2007)、60:384-395参照。例示的なカップリング反応(そのうちのいくつかは「クリックケミストリー」として分類され得る)は、限定するものではないが、活性化された酸またはハロゲン化アシルからのエステル、チオエステル、アミドの形成(例えば、ペプチドカップリング、アミン-NHSケミストリー);求核置換反応(例えば、ハロゲン化物の求核置換または歪み環系の開環など);アジド-アルキンヒュスゲン環化付加;チオール-イン付加;イミン形成;マイケル付加(例えば、マレイミド付加);およびディールズ-アルダー反応(例えばテトラジン[4+2]付加環化)を含む。
【0122】
ある実施形態において、ルミネッセンス発光標識にヌクレオチドをコンジュゲートするために使用される反応は、付加環化反応である。ある実施形態において、付加環化は[4+2]付加環化である。ある実施形態において、付加環化は1,3-双極子付加環化である。ある実施形態において、前記反応はアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)である。ある実施形態において、付加環化は触媒存在下で行われる。ある実施形態において、その触媒は銅触媒である。ある実施形態において、付加環化反応は銅フリーの反応である。ある実施形態において、アジド-アルキン付加環化は環状アルキン(例えば、シクロオクチン)を含み、歪み促進型である。ある実施形態において、これらの反応はルミネッセンス発光標識をヌクレオチドにコンジュゲートして、本明細書に記載される「クリックスペーサー」を形成する。
【0123】
ある実施形態において、ヌクレオチドはアジドで官能化され、ルミネッセンス発光標識はアルキンで官能化され、ヌクレオチドは本明細書に記載されるアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)を介して、ルミネッセンス発光標識にコンジュゲートされる。別の実施形態において、ヌクレオチドはアルキンで官能化され、ルミネッセンス発光標識はアジドで官能化され、ヌクレオチドは本明細書に記載されるアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)を介してルミネッセンス発光標識にコンジュゲートする。この反応スキームの一例は以下に示され、式中「Nuc」はヌクレオチド(例えば、Rの3’または5’位置に連結される)である;
【0124】
【化11】

例えば、ある実施形態において、アジドで官能化されたルミネッセンス発光標識とヌクレオチド骨格上のC1-アルキニル-デオキシリボースを反応させることによってルミネッセンス発光標識はコンジュゲートされる(以下のスキーム参照)。
【0125】
【化12】

いくつかの実施形態において、以下に示される汎用構造にしたがって、ヌクレオシドポリリン酸塩はアジド-コンジュゲートdN6P(例えば、dN6P-N)を介して核酸リンカーに結合される:
【0126】
【化13】

式中、塩基はアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、およびそれらの誘導体から選択される核酸塩基である;-Y-Z-=-CHCH-、-CONH-、または-NHCO-;およびX=NHまたはO。例えば、いくつかの実施形態において、適切な反応条件下で核酸リンカーとdN6Pまたは色素との間にトリアゾール結合を形成するように、アジド-コンジュゲートdN6P(例えば、dN6P-N)および/またはアジド-コンジュゲートルミネッセンス発光標識(例えば、色素-N)は、dN6P-Nまたは色素-Nのアジドとアルキン-コンジュゲート核酸リンカーの末端アルキンを接触させることにより、銅触媒反応において核酸リンカーに付着する。いくつかの実施形態において、適切な反応条件下で核酸リンカーとdN6Pまたは色素との間に多環状結合を形成するように、アジド-コンジュゲートdN6P(例えば、dN6P-N)および/またアジド-コンジュゲートルミネッセンス発光標識(例えば、色素-N)は、dN6P-Nまたは色素-Nのアジドとシクロオクチン-コンジュゲート核酸リンカーの内部アルキンを接触させることにより、銅フリー反応において核酸リンカーに付着する。核酸リンカーのシクロオクチン修飾は、当技術分野において知られる銅フリークリックケミストリー部分を生成するために適切なシクロオクチン試薬を使用して達成され得る。例えば、シクロオクチン-修飾核酸リンカーは、適切なシクロオクチン試薬(例えば、(1R,8S,9s)-ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン-9-イルメチルN-炭酸スクシンイミジル)を核酸リンカーの末端アミンと接触することによって調製される。
【0127】
ある実施形態において、ヌクレオチドにルミネッセンス発光標識(例えば、ドナー発色団および/またはアクセプター発色団)をコンジュゲートするために使用される反応は、エステル結合またはアミド結合形成反応である。ある実施形態において、アミン-N-ヒドロキシスクシンイミド(アミン-NHS)化学が使用される。ある実施形態において、ヌクレオチドはNHSエステルで官能化され、ルミネッセンス発光標識はアミンで官能化され、ヌクレオチドはアミン-NHSカップリング反応を介してルミネッセンス発光標識にコンジュゲートされる。別の実施形態において、ヌクレオチドはアミンで官能化され、ルミネッセンス発光標識はNHSエステルで官能化され、ヌクレオチドはアミン-NHSカップリング反応を介してルミネッセンス発光標識にコンジュゲートされる。この反応スキームの一例を以下に示す。ある実施形態において、これらの反応はルミネッセンス発光標識をヌクレオチドにコンジュゲートして本明細書に記載される「クリックスペーサー」を形成する。
【0128】
【化14】

本明細書に記載されるFRETシステムの場合、ドナー発色団およびアクセプター発色団は、異なるクリックケミストリー反応を介してヌクレオチドにコンジュゲートされ得る(例えば、それらの制御された/選択的な取り込みを可能にするように)。ある実施形態において、1つ以上のドナーは本明細書に記載されるアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)を介してコンジュゲートされ、1つ以上のアクセプターは異なる反応を介してコンジュゲートされる。ある実施形態において、1つ以上のドナー発色団は本明細書に記載されるアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)を介してコンジュゲートされ、1つ以上のアクセプターは本明細書に記載されるアミン-NHS反応を介してコンジュゲートされる。ある実施形態において、用いられる反応は逆になる。例えば、ある実施形態において、1つ以上のドナーは本明細書に記載されるアミン-NHSを介してコンジュゲートされ、1つ以上のアクセプターは本明細書に記載されるアジド-アルキン付加環化(すなわち、ヒュスゲン環化付加)を介してコンジュゲートされる。
【0129】
本明細書に記載されるコンジュゲート反応は、ヌクレオチドをルミネッセンス発光標識(または、他の実施形態において、反応物)に連結する「スペーサー」を形成する。したがって、いくつかの実施形態において、スペーサーは、結合基(例えば、BCN、テトラジン、テトラゾール、トリアゾール、アミド、またはクリック反応および同様のカップリング技術に適切な反応部分のカップリングを介して生成された他の産物)を含む。いくつかの実施形態において、スペーサーは以下の式である:
【0130】
【化15】

式中、Rは第1連結基であり、第1オリゴヌクレオチド鎖上の付着部位に付着する;Rは第2連結基であり、RおよびRを共有結合するために行われるカップリング反応(例えば、トリアゾール、アミド)において形成されるカップリング部分を含む;Rは第3連結基であり、ルミネッセンス発光標識に付着する。
【0131】
いくつかの実施形態において、スペーサーは以下の式から選択される式である:
【0132】
【化16】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換または非置換アルキレン;置換または非置換アルケニレン;置換または非置換アルキニレン;置換または非置換ヘテロアルキレン;置換または非置換ヘテロアルケニレン;置換または非置換ヘテロアルキニレン;置換または非置換ヘテロシクリレン;置換または非置換カルボシクリレン;置換または非置換アリーレン;置換または非置換ヘテロアリーレン;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される結合または連結基である。
【0133】
いくつかの実施形態において、スペーサーは以下の式から選択される式である:
【0134】
【化17】

いくつかの実施形態において、クリックケミストリーを使用して生成されるスペーサーの例は表2において提供される。
【0135】
【表2-1】

【表2-2】

本明細書に使用されるとき、「核酸リンカー」は、一般に、1つ以上のルミネッセンス発光標識を1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩に連結する核酸を表す。いくつかの実施形態において核酸リンカーは、一般に、共有結合性付着を介して、または塩基対(例えば、ハイブリダイゼーション)を介して、連結される任意の数のオリゴヌクレオチド鎖を有するコンストラクトを表し得る。いくつかの実施形態においてリンカーは、あるいは、異なる機能成分(例えば、1つ以上のルミネッセンス発光標識、1つ以上のヌクレオシドポリリン酸塩)が付着し得る「コア」または「ベース」コンストラクトと表され得る。用語「コンストラクト」は、いくつかの実施形態において、リンカーを一般に表すために様々な文脈を通して使用され、本明細書に記載される様々な他の成分(例えば、スペーサー、標識、ヌクレオシドポリリン酸塩など)を包含してもしなくてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される核酸リンカーは、物質の粒子に付着しない(例えば、金属粒子、磁性粒子、ポリマーの粒子、または他の物質の粒子に付着しない)。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは直鎖状分子(例えば、「棒状」核酸)である。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは環状分子である。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは一本鎖(例えば、ステムループ構造有りでも無しでも)である。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは二本鎖(例えば、ステムループ構造有りでも無しでも)である。いくつかの実施形態において、二本鎖核酸リンカーの2つの鎖は(相補的な配列のために)ハイブリダイズし、共有結合的に付着しない。しかしながら、いくつかの実施形態において1つ以上の共有結合は、二本鎖リンカーの2つの鎖を共有結合的に付着するために導入され得る(例えば、1つ以上の化学リンカーを使用して)。いくつかの実施形態において、核酸リンカーは本明細書に記載されるように、1つ以上の追加の部分を含み得る。いくつかの実施形態において核酸リンカーは、i)糖リン酸骨格内または端における1つ以上の追加の部分、ii)1つ以上の修飾(例えば、1つ以上の修飾塩基または糖)、またはi)およびii)の組み合わせを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、核酸リンカーはi)、ii)、またはi)またはii)のいずれかを含まない。
【0137】
核酸リンカーの文脈において、核酸リンカーに付着する「ヌクレオチド」または「ヌクレオシドポリリン酸塩」は成長する核酸鎖内(例えば、シーケンシング反応中)に取り込まれるように構成された1つ以上のヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)を表すことを理解されたい。いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオシド1リン酸またはヌクレオシドポリリン酸塩を含む。ヌクレオシドポリリン酸塩の例は、いくつかの実施形態において、ヌクレオシド2リン酸またはヌクレオシド3リン酸、またはヌクレオシド6リン酸などの3つより多い5’リン酸を有するヌクレオシドを含む。したがって、いくつかの実施形態において、「標識されたヌクレオチド」は、本出願のリンカーによって1つ以上のルミネッセンス発光標識に連結されたヌクレオシドポリリン酸塩を表し、そのヌクレオシドポリリン酸塩は、核酸合成反応条件下でポリメラーゼ酵素の基質として働く。いくつかの実施形態において、ヌクレオシドポリリン酸塩は、リン酸基転移反応において適切なポリメラーゼ酵素の作用を受け得る少なくとも2リン酸基または3リン酸基を含む(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩のα-リン酸のβ-リン酸から成長中の核酸鎖の3’ヒドロキシル基への転移)。
【0138】
いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレオシドリン酸塩(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は、末端リン酸を介して、本出願のリンカーの部分を形成するオリゴヌクレオチド(例えば、標識された、または標識されていないオリゴヌクレオチド鎖)に付着し得、標識-誘導光傷害(例えば、本出願の他のところに記載されるように)からポリメラーゼを保護する保護分子として機能する。本出願に記載される任意の組成物または方法のいくつかの実施形態において、ヌクレオシドリン酸の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、1つ以上のリン酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のリン酸基)またはそれらのバリアントを含む。例えば、いくつかの実施形態において、ヌクレオシドリン酸塩の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、リン酸エステル、チオエステル、ホスホルアミダート、ホスホン酸アルキル結合、他の適切な結合、または1つより多いそのような修飾、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、核酸リンカーの標識された鎖および標識されていない鎖は、実質的に互いに相補的である(例えば、二量体化ドメイン内の鎖が例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%互いに相補的であり得る二量体化ドメインの長さにわたって)。
【0139】
ヌクレオシドポリリン酸塩は、nが2、3、4、5、6、7、8、9、または10と等しいかそれ以上の数であるnリン酸基を有し得る。ヌクレオシドポリリン酸塩の例は、ヌクレオシド2リン酸およびヌクレオシド3リン酸を含む。標識されたヌクレオチドは末端リン酸が標識されたヌクレオシドポリリン酸塩であり得、ヌクレオシドポリリン酸塩の末端リン酸は、1つ以上のルミネッセンス発光標識を含むリンカー(例えば、核酸リンカー)に付着し、それによって標識されたヌクレオシドポリリン酸塩を形成する。そのような標識はルミネッセンス発光(例えば、蛍光または化学ルミネッセンス発光)標識、蛍光発生標識、着色標識、発色標識、質量タグ、静電標識、または電気化学的標識であり得る。標識(またはマーカー)は、本明細書に記載されるようにスペーサーなどのリンカーを介して末端リン酸に結合し得る。リンカー(例えば、スペーサー)は、天然の、または修飾されたヌクレオチドの末端リン酸における例えば、リン酸エステル、チオエステル、アミド亜リン酸エステルまたはホスホン酸アルキル結合の形成に適切であり得る例えば、少なくとも1つのまたは複数のヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基またはハロアルキル基を含み得る。リンカー(例えば、スペーサー)は末端リン酸から標識を分離するために、重合酵素の助けなどによって切断可能であり得る。ヌクレオチドおよびリンカー(例えば、スペーサー)の例は、参照によってその全体が援用される米国特許第7,041,812号に提供される。
【0140】
ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸塩)は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそれらのバリアントのうちのいずれかを含み得る。ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)は、メチル化核酸塩基を含み得る。例えば、メチル化ヌクレオチドは、核酸塩基に付着した1つ以上のメチル基を含むヌクレオチドであり得る(例えば、核酸塩基の環に直接的に付着、核酸塩基の環の置換基に付着)。例示的なメチル化核酸塩基は、1-メチルチミン、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、7-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、1-メチルグアニン、7-メチルグアニン、N2-メチルグアニン、およびN2,N2-ジメチルグアニンを含む。
【0141】
本明細書に使用されるとき、用語「核酸」は、一般に1つ以上の核酸サブユニットを含む分子を表す。核酸はアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそれらのバリアントから選択される1つ以上のサブユニットを含み得る。いくつかの例において、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態において、核酸は修飾核酸であり、限定することなしに、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、トリアゾール連結型核酸、2’-F-修飾核酸、およびそれらの誘導体およびそれらの類似体を含む。核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの実施形態において、核酸は一般にヌクレオチドの任意のポリマーを表す。
【0142】
いくつかの実施形態において、本開示は、それらの分子の1つ以上の発光特性に基づいて単一分子を同定するための新たな組成物を提供する。いくつかの実施形態において、分子(例えば、ルミネッセンス発光標識されたヌクレオシドポリリン酸)は、その輝度、ルミネッセンス発光寿命、吸収スペクトル、発光スペクトル、ルミネッセンス発光量子収率、ルミネッセンス発光強度、またはそれらの2つ以上の組み合わせに基づいて同定される。同定することは、分子の正確な分子同一性を割り当てることを意味し得るか、または特定の分子を可能性のある分子のセットから区別し得る。いくつかの実施形態において、複数の単一分子は、異なる輝度、ルミネッセンス発光寿命、吸収スペクトル、発光スペクトル、ルミネッセンス発光量子収率、ルミネッセンス発光強度、またはそれらの2つ以上の組み合わせに基づいて互いに区別し得る。いくつかの実施形態において、単一分子は、その分子を一連の別個の光パルスに曝露し、その分子から放射される各光子のタイミングまたは他の特性を評価することによって、同定される(例えば、他の分子から区別される)。いくつかの実施形態において、単一分子から連続的に放射される複数の光子の情報は、その分子を同定するために集約され、評価される。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、その分子から連続的に放射される複数の光子から決定され、そのルミネッセンス発光寿命は、その分子を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光強度は、その分子から連続的に放射される複数の光子から決定され、そのルミネッセンス発光強度はその分子を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命およびルミネッセンス発光強度はその分子から連続的に放射される複数の光子から決定され、そのルミネッセンス発光寿命およびルミネッセンス発光強度はその分子を同定するために使用され得る。
【0143】
したがって、本出願のいくつかの態様において、反応サンプルを複数の別個の光パルスに曝露し、一連の放射された光子を検出し、分析した。いくつかの実施形態において、その一連の放射された光子は、存在し、実験の時間にわたって反応サンプルで変化しない単一分子に関する情報を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態において、その一連の放射された光子は、反応サンプル中の異なる時間に(例えば、反応またはプロセスが進行するにつれて)存在する一連の異なる分子に関する情報を提供する。
【0144】
ルミネッセンス発光標識
本明細書に使用されるとき、「ルミネッセンス発光標識」は1つ以上の光子を吸収し、その後1つ以上の持続時間の後に1つ以上の光子を放射する場合がある分子である。いくつかの実施形態において、本用語は標識された反応物の非反応物部分を一般に表すために使用され得る(例えば、ルミネッセンス発光標識は蛍光体およびスペーサーの少なくとも部分を含み得る)。いくつかの実施形態において、本用語は光子を吸収および/または放射する分子を具体的に表す(例えば、蛍光体)。いくつかの実施形態において本用語は、文脈によって「ルミネッセンス発光分子」と互換的に使用される。いくつかの実施形態においてルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、蛍光体(例えば、本明細書に互換的に使用されるように「色素」または「蛍光体色素」)である。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子はローダミン-ベースの分子である。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子はシアニン-ベースの分子である。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子はBODIPY-ベースの分子である。
【0145】
通常、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物を含み、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、クマリン、フルオロセイン(fluoroscein)、ローダミン、または他の同様の化合物であり得る。色素の例は、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)を含むフルオレセイン色素またはローダミン色素などのキサンテン色素を含む。色素の例はまた、アルファ位置またはベータ位置にアミノ基を有するナフチルアミン色素を含む。例えば、ナフチルアミノ化合物は、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホン酸、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホン酸および2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホン酸、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)を含む。色素の他の例は、3-フェニル-7-イソシアナトクマリン(isocyanatocoumarin)などのクマリン;9-イソチオシアナトアクリジンやアクリジンオレンジなどのアクリジン;N-(p-(2-ベンゾオキサゾールイル)フェニル)マレイミド;インドジカルボシアニン3(Cy(登録商標)3)、(2Z)-2-[(E)-3-[3-(5-カルボキシペンチル)-1,1-ジメチル-6,8-ジスルホベンゾ[e]インドール-3-イウム-2-イル]プロプ-2-エニリデン]-3-エチル-1,1-ジメチル-8-(トリオキシダニルスルファニル)ベンゾ[e]インドール-6-スルホネート(Cy(登録商標)3.5)、2-{2-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2-オキソエチル}-16,16,18,18-テトラメチル-6,7,7a,8a,9,10,16,18-オクタヒドロベンゾ[2’’,3’’]インドリジノ[8’’,7’’:5’,6’]ピラノ[3’,2’:3,4]ピリド[1,2-a]インドール-5-イウム-14-スルホネート(Cy(登録商標)3B)、インドジカルボシアニン5(Cy(登録商標)5)、インドジカルボシアニン5.5(Cy(登録商標)5.5)、3-(-カルボキシ-ペンチル)-3’-エチル-5,5’-ジメチルオキサカルボシアニン(CyA)などのシアニン;1H,5H,11H,15H-キサンテノ[2,3,4-ij:5,6,7-i’j’]ジキノリジン-18-イウム、9-[2(または4)-[[[6-[2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-6-オキソヘキシル]アミノ]スルホニル]-4(または2)-スルホフェニル]-2,3,6,7,12,13,16,17-オクタヒドロ-内塩(TRまたはTexas Red(登録商標));BODIPY(登録商標)色素;ベンゾオキサゾール;スチルベン;ピレン;および同様のものが含まれる。ある実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表3から選択される色素である。表3に列挙される色素は限定的ではなく、本出願のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は表3に列挙されていない色素を含んでよい。ある実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は表3から選択される。ある実施形態において、4つ以上のルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は表3から選択される。いくつかの実施形態において、本出願のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表3に列挙される色素に由来する色素を含む。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、ATTO Rho6Gに由来する。いくつかの実施形態において、ATRho6Gの第三級アミド側鎖(カルボキシブチル)はアジドプロピル部分に変更し得る。理論に縛られることを望まないが、この変更は、より短く、より剛性のある色素を生じる。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は以下の構造を有する:
【0146】
【化18】
【0147】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

色素は最大吸光度または放射されたルミネッセンスの波長に基づいて分類してもよい。表4は、最大吸光度のおおよその波長にしたがって列にグループ化された例示的な蛍光体を提供する。表4に列挙される色素は非限定的であり、本出願のルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表4に列挙されていない色素を含み得る。正確な最大吸光度または放射波長は示されたスペクトル範囲に対応しない場合がある。ある実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表4に列挙される「赤」群から選択される。ある実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表4に列挙される「緑」群から選択される。ある実施形態において、1つ以上のルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表4に列挙される「黄/橙」群から選択される。ある実施形態において、4つのヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、表4に列挙される「赤」、「黄/橙」、または「緑」群からすべて選択されるように選択される。ある実施形態において、4つのヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、3つが表4に列挙される「赤」、「黄/橙」、および「緑」群の第1群から選択され、4つ目が表4に列挙される「赤」、「黄/橙」、および「緑」群の第2群から選択されるように選択される。ある実施形態において、4つのヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、2つが表4に列挙される第1の「赤」、「黄/橙」、および「緑」群から選択され、3つ目および4つ目が表4に列挙される第2群の「赤」、「黄/橙」、および「緑」群から選択されるように選択される。ある実施形態において、4つのヌクレオチドのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、2つが表4に列挙される第1の「赤」、「黄/橙」、および「緑」群から選択され、3つ目が表4に列挙される第2群の「赤」、「黄/橙」、および「緑」群から選択され、4つ目が表4に列挙される第3群の「赤」、「黄/橙」、および「緑」群から選択されるように選択される。
【0148】
【表4-1】

【表4-2】

ある実施形態において、ルミネッセンス発光標識は、第1発色団および第2発色団を含み得る。いくつかの実施形態において、第1発色団(例えば、ドナールミネッセンス発光分子、ドナー標識またはドナー分子としても表される)の励起状態は、第2発色団(例えば、アクセプタールミネッセンス発光分子、アクセプター標識またはアクセプター分子としても表される)へのエネルギ移動を介して緩和することができる。いくつかの実施形態において、エネルギ移動はFoerster共鳴エネルギ移動(FRET)である。そのようなFRET対は、複数のルミネッセンス発光標識の中から区別しやすくする特性を有するルミネッセンス発光標識を提供するために有用であり得る。ある実施形態において、FRET対は第1スペクトル範囲において励起エネルギを吸収し得、第2スペクトル範囲においてルミネッセンスを放射し得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、本明細書に記載されるリンカー分子内に付着する(例えば、オリゴマーまたはポリマーリンカーに組み込まれる)。表5は、オリゴヌクレオチド鎖の文脈におけるそのようなコンジュゲーション戦略に適合する蛍光体のいくつかの例を提供する。示されるように、表5のシアニン-ベースの蛍光体は、オリゴヌクレオチド鎖内の共有結合の部分を形成するように、第1鎖部分の3’端および第2鎖部分の5’端にコンジュゲートする(例えば、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光標識はスペーサーを使用せずに付着する)。いくつかの実施形態において、これらのタイプまたは同様のタイプの蛍光体は、オリゴマーまたはポリマー構造の任意のクラス内に付着され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、蛍光体は、第1ペプチド部分のC-末端および第2ペプチド部分のN-末端へのコンジュゲーションを介してペプチド内に付着する。いくつかの実施形態において、単一リンカー分子はリンカー内に付着された2つ以上の蛍光体(単一リンカー内に付着された例えば、2、3、4、5、6、または6より多い色素)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーはリンカー内に付着された1つ以上の蛍光体と、スペーサーを介して付着された1つ以上の蛍光体とを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載された明るく標識された反応物は、スペーサー無しにリンカー内に付着された1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、または6より多い)蛍光体と、スペーサーを介してリンカーに付着された1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、または6より多い)蛍光体とを含む。
【0150】
【表5】

ルミネッセンス発光標識された分子(例えば、ルミネッセンス発光標識されたヌクレオチド)のセットの場合、ルミネッセンス発光標識されたFRET対の特性は、複数の区別可能な分子(例えば、ヌクレオチド)の選択を可能にし得る。いくつかの実施形態において、FRET対の第2発色団(例えば、FRET標識のアクセプター分子)は複数の他のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるルミネッセンス発光寿命を有する。いくつかの実施形態において、FRET対の第2発色団(例えば、FRET標識のアクセプター分子)は複数の他のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるルミネッセンス発光強度を有する。いくつかの実施形態において、FRET対の第2発色団(例えば、FRET標識のアクセプター分子)は、複数の他のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるルミネッセンス発光寿命およびルミネッセンス発光強度を有する。いくつかの実施形態において、FRET対の第2発色団(例えば、FRET標識のアクセプター分子)は、複数の他のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるスペクトル範囲において光子を放射する。いくつかの実施形態において、FRET対の第1発色団(例えば、FRET標識のドナー分子)は、複数のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるルミネッセンス発光寿命を有する。ある実施形態において、FRET対(例えば、FRET標識のドナー分子およびアクセプター分子)は、複数の他のルミネッセンス発光標識された分子とは異なるスペクトル範囲において励起エネルギを吸収し得る。ある実施形態において、FRET対(例えば、FRET標識のドナー分子およびアクセプター分子)は、複数の他のルミネッセンス発光標識された分子のうちの1つ以上と同じスペクトル範囲において励起エネルギを吸収し得る。
【0151】
シーケンシング反応の場合、ある組み合わせの明るく標識された反応物が好ましい場合がある。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも1つは、シアニン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも1つはローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも2つは、それぞれシアニン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも2つは、それぞれローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも3つは、それぞれシアニン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも3つは、それぞれローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも4つは、それぞれシアニン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの少なくとも4つは、それぞれローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの3つはそれぞれシアニン色素、またはその類似体を含み、4番目の明るく標識された反応物はローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの2つはそれぞれシアニン色素、またはその類似体を含み、3番目の、および任意選択的に4番目の明るく標識された反応物はローダミン色素、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態において、明るく標識された反応物のうちの3つはそれぞれローダミン色素、またはその類似体を含み、3番目の、および任意選択的に4番目の明るく標識された反応物はシアニン色素、またはその類似体を含む。
【0152】
本明細書に記載されるように、ルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は1つ以上の光子を吸収し、その後1つ以上の持続時間後に1つ以上の光子を放射する分子である。分子のルミネッセンスは、ルミネッセンス発光寿命、吸収スペクトル、発光スペクトル、ルミネッセンス発光量子収率、およびルミネッセンス発光強度を含むが、これらに限定されないいくつかのパラメータによって説明される。用語、吸収および励起は、本出願を通して互換的に使用される。いくつかの実施形態において、用語、ルミネッセンス(luminescence)および放射(emission)は互換的に使用される。典型的なルミネッセンス発光分子は、複数の波長における光を吸収するか、またはそれによる励起を受ける場合がある。ある波長における励起またはあるスペクトル範囲内の励起は、発光放射事象によって緩和される場合があるが、ある他の波長またはスペクトル範囲における励起は、発光放射事象によって緩和されない場合がある。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光分子は、単一波長において、または単一スペクトル範囲内でのルミネッセンスのためにのみ適切に励起される。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光分子は、2つ以上の波長において、または2つ以上のスペクトル範囲内で、ルミネッセンスのために適切に励起される。いくつかの実施形態において、分子は、その励起光子の波長またはその吸収スペクトルを測定することによって同定される。
【0153】
発光放射事象から放射された光子は、可能な波長のスペクトル範囲内の波長で放射する。通常、放射された光子は、励起光子の波長と比較してより長い波長を有する(例えば、エネルギが少ない、または赤方偏移する)。ある実施形態において、分子は放射された光子の波長を測定することにより同定される。ある実施形態において、分子は複数の放射された光子の波長を測定することにより同定される。ある実施形態において、分子は発光スペクトルを測定することにより同定される。
【0154】
ルミネッセンス発光寿命は、励起事象と放射事象との間の持続時間を表す。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光寿命は指数関数的減衰の方程式の定数として表される。励起エネルギを送達する1つ以上のパルス事象があるいくつかの実施形態において、持続時間は、パルスとその後の放射事象との間の時間である。
【0155】
分子のルミネッセンス発光寿命の決定は、任意の適切な方法を使用して行われ得る(例えば、適切な技術を使用して寿命を測定することによって、または発光の時間依存特性を決定することによって)。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命を決定することは、1つ以上の分子(例えば、シーケンシング反応における異なるルミネッセンス発光標識されたヌクレオシドポリリン酸)に対する寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命を決定することは、参照に対する寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命を決定することは、その寿命(例えば、蛍光寿命)を測定することを含む。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命を決定することは、寿命を示す1つ以上の時間的特性を決定することを含む。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、励起パルスに対して1つ以上の時間ゲート窓にわたって生じる複数の放射事象の分布に基づいて決定することができる(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上の放射事象)。例えば、単一分子のルミネッセンス発光寿命は、励起パルスに関して測定された光子到達時間の分布に基づいて、異なるルミネッセンス発光寿命を有する複数の分子と区別され得る。
【0156】
単一分子のルミネッセンス発光寿命は、単一分子が励起状態に達した後に放射される光子のタイミングを示し、単一分子は光子のタイミングを示す情報によって区別できることを理解されたい。いくつかの実施形態は、分子を、その分子によって放射される光子に関連する時間を測定することにより、その分子のルミネッセンス発光寿命に基づいて複数の分子から区別することを含み得る。時間の分布は、その分布から決定され得るルミネッセンス発光寿命の指標を提供し得る。いくつかの実施形態において、単一分子は、その時間の分布を既知の分子に対応する参照分布と比較することなどにより、時間の分布に基づいて複数の分子から区別可能である。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光寿命の値は時間の分布から決定される。
【0157】
ルミネッセンス発光量子収率は、所与の波長において、または所与のスペクトル範囲内で放射事象につながる励起事象の割合を表し、通常1未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される分子のルミネッセンス発光量子収率は、0~約0.001、約0.001~約0.01、約0.01~約0.1、約0.1~約0.5、約0.5~0.9、または約0.9~1である。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光量子収率を決定または推定することによって分子が同定される。
【0158】
単一分子について本明細書に使用されるとき、ルミネッセンス発光強度は、パルス励起エネルギの送達によって励起されている分子によって放射される単位時間あたりの放射される光子の数を表す。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光強度は、パルス励起エネルギの送達によって励起されている分子によって放射され、特定のセンサまたはセンサのセットによって検出される、単位時間あたりの放射される光子の検出数を表す。
【0159】
ルミネッセンス発光寿命、ルミネッセンス発光量子収率、およびルミネッセンス発光強度は、異なる条件下で所与の分子によってそれぞれ異なる場合がある。いくつかの実施形態において単一分子は、分子の集合とは異なる、観測されたルミネッセンス発光寿命、ルミネッセンス発光量子収率、またはルミネッセンス発光強度を有するであろう。いくつかの実施形態において、サンプルウェルに閉じ込められた分子は、サンプルウェルに閉じ込められていない分子とは異なる観察されたルミネッセンス発光寿命、ルミネッセンス発光量子収率、またはルミネッセンス発光強度を有するであろう。いくつかの実施形態において、別の分子に付着するルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は、別の分子に付着しないルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子とは異なるルミネッセンス発光寿命、ルミネッセンス発光量子収率、またはルミネッセンス発光強度を有するだろう。いくつかの実施形態において、巨大分子複合体と相互作用する分子は、巨大分子複合体と相互作用しない分子とは異なるルミネッセンス発光寿命、ルミネッセンス発光量子収率、またはルミネッセンス発光強度を有するであろう。
【0160】
ある実施形態において、本出願に記載されるルミネッセンス発光分子は、1つの光子を吸収し、ある持続時間後に1つの光子を放射する。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、持続時間を測定することにより、決定または推定することができる。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の持続時間を測定することにより決定または推定することができる。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、持続時間を測定することにより、複数のタイプの分子のルミネッセンス発光寿命間で区別することができる。いくつかの実施形態において、分子のルミネッセンス発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の持続時間を測定することにより、複数のタイプの分子のルミネッセンス発光寿命間で区別することができる。ある実施形態において、分子は、その分子のルミネッセンス発光寿命を決定または推定することにより、複数のタイプの分子間で同定または区別される。ある実施形態において、分子は、複数のタイプの分子の複数のルミネッセンス発光寿命の間でその分子のルミネッセンス発光寿命を区別することにより、複数のタイプの分子の間で同定または区別される。
【0161】
ある実施形態において、発光放射事象は蛍光である。ある実施形態において、発光放射事象はリン光である。本明細書に使用されるとき、用語、ルミネッセンス発光は、蛍光およびリン光の両方を含むすべてのルミネッセンス発光事象を包含する。
【0162】
シーケンシング
本出願のいくつかの態様は核酸およびタンパク質などの生物学的ポリマーのシーケンシングに有用である。いくつかの態様において、本出願において記載される組成物および技術は、核酸またはタンパク質に取り込まれた一連のヌクレオチドモノマーまたはアミノ酸モノマーの同定のために使用することができる(例えば、一連の標識されたヌクレオチドモノマーまたはアミノ酸モノマーの取り込みのタイムコースを検出することによって)。いくつかの実施形態において、本出願において記載される組成物および技術は、ポリメラーゼ酵素によって合成された鋳型依存核酸シーケンシング反応産物に取り込まれる一連のヌクレオチドを同定するために使用することができる。いくつかの実施形態において、複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドのうちの1つ以上(例えば、1つの、2つの、3つの、4つの、またはそれ以上のタイプの標識されたヌクレオチド)は、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)を含む。各タイプのヌクレオチドのFRET標識は、複数の標識されたヌクレオチドの中から区別可能である(例えば、FRET-標識されたヌクレオチドのうちの1つのタイプは、FRETを起こさない全ての他のタイプのFRET-標識されたヌクレオチドおよび/または標識から区別可能である)。
【0163】
標的核酸の核酸塩基と相補的なヌクレオシドポリリン酸(例えば、dNTP)との間の塩基対形成時、ポリメラーゼは、新たに合成された鎖の3’ヒドロキシル端とdNTPのアルファリン酸との間にホスホジエステル結合を形成することによって新たに合成された核酸鎖にdNTPを取り込む。dNTPにコンジュゲートされたルミネッセンス発光標識(例えば、本出願のリンカーを介して)が蛍光体である例において、その存在は励起によって信号を出され、放射のパルスは取り込みのステップ中および/または後に検出される。本出願のリンカーを介してdNTPの末端(ガンマ)リン酸にコンジュゲートされた検出標識(例えば、ルミネッセンス発光標識)の場合、新たに合成された鎖へのdNTPの取り込みによりベータリン酸およびガンマリン酸が解離され、リンカーはサンプルウェル内で自由に核酸する検出標識を含み、蛍光体から検出される発光の減少をもたらす。
【0164】
ある実施形態において、鋳型依存核酸シーケンシング反応産物は天然に存在する核酸ポリメラーゼによって行われるシーケンシング反応において合成される。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは天然に存在するポリメラーゼの変異体または修飾されたバリアントである。いくつかの実施形態において、鋳型依存核酸シーケンシング産物相補的な鋳型核酸鎖に相補的な1つ以上のヌクレオチドセグメントを含む。一態様において、本出願は、その相補的な核酸鎖の配列を決定することによって鋳型(または標的)核酸鎖の配列を決定する方法を提供する。
【0165】
本明細書に使用されるとき、用語「ポリメラーゼ」は一般に、重合反応を触媒することができる任意の酵素(または重合酵素)を表す。ポリメラーゼの例は、限定することなしに、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼを含む。ポリメラーゼは重合酵素であり得る。(例えば、核酸シーケンシングのための)単一分子核酸伸長を対象とする実施形態は、標的核酸分子に相補的な核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用してよい。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはそれらの1つ以上の変異体または改変型であり得る。
【0166】
ポリメラーゼの例は、限定するものではないが、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、修飾ポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼ、φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfuturboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、Klenow断片、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、およびそれらのバリアント、修飾産物、および誘導体を含む。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは単一サブユニットポリメラーゼである。DNAポリメラーゼおよびそれらの特性の非限定的な例は、中でも、DNA Replication第2版、KornbergおよびBaker,W.H.Freeman、New York、N.Y.(1991)に詳細に記載される。
【0167】
いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは高いプロセッシビリティを有するポリメラーゼである。しかしながらいくつかの実施形態において、ポリメラーゼは減少したプロセッシビリティを有するポリメラーゼである。ポリメラーゼのプロセッシビリティは、一般に、核酸鋳型を離すことなく核酸鋳型にdNTPを連続的に取り込むためのポリメラーゼの能力を表す。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、低い5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼである。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、対応する野生型ポリメラーゼと比較して低下した5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’活性を有するよう改変される(例えば、アミノ酸置換によって)。DNAポリメラーゼのさらなる非限定的な例は、9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)、およびKlenowエキソ-ポリメラーゼのP680G変異体(Tuskeら、(2000)、JBC、275(31):23759-23768)を含む。いくつかの実施形態において、低下したプロセッシビリティを有するポリメラーゼは、ヌクレオチドリピートの1つ以上のストレッチ(例えば、同じタイプの2つ以上の連続的な塩基)を含有するシーケンシング鋳型の精度の向上を提供する。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは非標識核酸よりも標識されたヌクレオチドに対してより高い親和性を有するポリメラーゼである。
【0168】
別の態様において、本出願はシーケンシング複数の核酸断片によるシーケンシング標的核酸の方法を提供し、標的核酸はその断片を含む。ある実施形態において、本方法はペアレント標的核酸の配列または部分的な配列を提供するために複数の断片配列を組み合わせることを含む。いくつかの実施形態において、組み合わせるステップはコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアによって行われる。本明細書に記載される方法は、シーケンシングされる染色体全体またはゲノムなどの1組の関連する標的核酸について可能にし得る。
【0169】
シーケンシング中、重合酵素は標的核酸分子のプライミング位置にカップリング(例えば、付着)し得る。プライミング位置は標的核酸分子の一部に相補的であるプライマーであり得る。代替として、プライミング場所は標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されるギャップまたはニックである。ギャップまたはニックは0から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40ヌクレオチドの長さであり得る。ニックは二本鎖配列のうちの1つの鎖内に切断を提供し得、それは例えば、鎖置換ポリメラーゼ酵素などの重合酵素のためのプライミング場所を提供し得る。
【0170】
いくつかの場合において、シーケンシングプライマーは、固体支持体に固定化されてもされていなくてもよい標的核酸分子にアニーリングし得る。固体支持体は、例えば、核酸シーケンシングのために使用されるチップ上のサンプルウェル(例えば、ナノ開口部、反応チャンバ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、シーケンシングプライマーは固体支持体に固定化され得、標的核酸分子ハイブリダイゼーションはまた標的核酸分子を固体支持体に固定化する。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは固体支持体に固定化され、可溶性プライマーおよび標的核酸はポリメラーゼに接触する。しかしながら、いくつかの実施形態において、ポリメラーゼと、標的核酸と、プライマーとを含む複合体は溶液中で形成され、その複合体は固体支持体に固定化される(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸の固定化を介して)。いくつかの実施形態において、サンプルウェル(例えば、ナノ開口部、反応チャンバ)内のいずれの成分も固体支持体に固定化されない。例えば、いくつかの実施形態において、ポリメラーゼと、標的核酸と、プライマーとを含む複合体は溶液中で形成され、その複合体は固体支持体に固定化されない。
【0171】
好適な条件下、アニーリングされたプライマー/標的核酸に接触するポリメラーゼ酵素はプライマー上に1つ以上のヌクレオチドを追加、または取り込むことができ、ヌクレオチドは、鋳型依存的に5’から3’にプライマーに追加され得る。プライマー上へのそのようなヌクレオチドの取り込み(例えば、ポリメラーゼの作用を介した)は、一般的にプライマー伸長反応と言及され得る。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応中に検出および同定され得る検出可能な標識に関連づけられ得(例えば、そのルミネッセンス発光寿命および/または他の特徴に基づいて)、伸長されたプライマーおよび、したがって、新たに合成された核酸分子の配列に取り込まれた各ヌクレオチドを決定するために使用され得る。新たに合成された核酸分子の配列相補性を介して、標的核酸分子の配列も決定され得る。いくつかの場合において、シーケンシングプライマーの標的核酸分子へのアニーリングおよびシーケンシングプライマーへのヌクレオチドの取り込みは、同様の反応条件において(例えば、同じかまたは同様の反応温度)、または異なる反応条件において(例えば、異なる反応温度)生じ得る。いくつかの実施形態において、合成方法によるシーケンシングは、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)の存在および/または標的核酸の集団を達成するための標的核酸の増幅のステップを含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態において合成によるシーケンシングが使用され、評価されている各反応における単一分子の配列が決定される(シーケンシングのための標的鋳型を調製するために核酸増幅は必要とされない)。いくつかの実施形態において、複数の単一分子シーケンシング反応は、本出願の複数の態様にしたがって並行して行われる(例えば、単一チップ上で)。例えば、いくつかの実施形態において、複数の単一分子シーケンシング反応は、単一のチップ上の別個の反応チャンバ内(例えば、ナノ開口部、サンプルウェル)でそれぞれ行われる。
【0172】
複数の実施形態は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、または99.9999%の精度、および/または約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、または100,000bp以上のリード長などの高い精度および長いリード長で単一の核酸分子種をシーケンシングすることができる。いくつかの実施形態において、単一分子シーケンシングにおいて使用される標的核酸分子は、サンプルウェルの底部または側壁などの固体支持体に固定化または付着されたシーケンシング反応の少なくとも1つの追加成分(例えば、DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼ、シーケンシングプライマー)を含有するサンプルウェル(例えば、ナノ開口部)に添加または固定化される一本鎖にされた標的核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型である。標的核酸分子またはポリメラーゼは、サンプルウェルの底部または側壁のようなサンプルの壁に直接またはリンカーを介して付着することができる。サンプルウェル(例えば、ナノ開口部)はまた、例えば適切な緩衝液、補因子、酵素(例えば、ポリメラーゼ)および、本出願のリンカーを介してdNTPに連結され得る蛍光体などのルミネッセンス発光標識を含む、例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)と、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)と、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)と、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)と、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTPとを含むデオキシリボヌクレオシド三リン酸などのデオキシリボヌクレオシドポリリン酸などのプライマー伸長反応を介する核酸剛性に必要な任意の他の試薬を含有することができる。いくつかの実施形態において、標識から放射される光の検出が新たに合成された核酸に取り込まれるdNTPの同一性を示すように、各クラスのdNTP(例えば、アデニン含有dNTP(例えば、dATP)、シトシン含有dNTP(例えば、dCTP)、グアニン含有dNTP(例えば、dGTP)、ウラシル含有dNTP(例えば、dUTP)およびチミン含有dNTP(例えば、dTTP))は(例えば、本出願のリンカーを介して)別個のルミネッセンス発光標識にコンジュゲートされる。「別個のルミネッセンス発光標識」は、いくつかの実施形態において、別のdNTPとは異なるルミネッセンス発光標識(例えば、異なる蛍光体)を含む1つのdNTPを表し得る。いくつかの実施形態において、別個のルミネッセンス発光標識は、別のdNTPと異なる数の同じか、または同様のルミネッセンス発光標識を含む1つのdNTPを表す。いくつかの実施形態において、別個のルミネッセンス発光標識は、別のdNTPと検出可能に異なる1つ以上の発光特性を含む1つのdNTPを表す。ルミネッセンス発光標識から放射される光は、任意の適切な装置および/または方法を介して検出され、その好適なルミネッセンス発光標識(および、したがって、付随したdNTP)に帰属される。ルミネッセンス発光標識は、そのルミネッセンス発光標識の存在が新たに合成された核酸鎖へのdNTPの取り込みまたはポリメラーゼの活性を阻害しないように、任意の位置においてdNTPにコンジュゲートされ得る(例えば、本出願のリンカーを介して)。いくつかの実施形態において、ルミネッセンス発光標識は、dNTPの末端リン酸(例えば、ガンマリン酸)にコンジュゲートする(例えば、本出願のリンカーを介して)。
【0173】
いくつかの実施形態において、一本鎖標的核酸鋳型は、シーケンシングプライマー、dNTP、ポリメラーゼおよび核酸合成に必要な他の試薬と接触し得る。いくつかの実施形態において、dNTPの取り込みが継続的に生じ得るように、全ての好適なdNTPは、一本鎖標的核酸鋳型と同時に(例えば、全てのdNTPが同時に存在する)接触し得る。他の実施形態において、dNTPは連続的に一本鎖標的核酸鋳型と接触し得、一本鎖標的核酸鋳型は、一本鎖標的核酸鋳型が異なるdNTPと接触する間に洗浄ステップを伴って、個別に好適な各dNTPと接触する。一本鎖標的核酸鋳型を各dNTPと個別に接触させ、続いて洗浄するようなサイクルは、同定する一本鎖標的核酸鋳型の連続する各塩基位置について繰り返すことができる。
【0174】
いくつかの実施形態において、シーケンシングプライマーは一本鎖標的核酸鋳型にアニーリングし、ポリメラーゼは一本鎖標的核酸鋳型に基づいて、プライマーにdNTP(または他のヌクレオシドポリリン酸)を連続的に取り込む。取り込まれた各dNTPに関連する固有のルミネッセンス発光標識は、プライマーへのdNTPの取り込み中または取り込み後に好適な励起光で励起でき、その放射は、その後任意の適切な装置および/または方法を使用して検出され得る。光の特定の放射の検出(例えば、特定の発光寿命、強度、スペクトルおよび/またはそれらの組み合わせを有する)は取り込まれた特定のdNTPに起因する。その後、検出されたルミネッセンス発光標識の集合から得られた配列を使用して、配列相補性を介して一本鎖標的核酸鋳型の配列を決定することができる。
【0175】
いくつかの実施形態において、本開示は、参照によってその内容のそれぞれが援用される、同時係属中の米国特許出願第14/543,865号、同第14/543,867号、同第14/543,888号、同第14/821,656号、同第14/821,686号、同第14/821,688号、同第15/161,067号、同第15/161,088号、同第15/161,125号、同第15/255,245号、同第15/255,303号、同第15/255,624号、同第15/261,697号、同第15/261,724号、同第15/600,979号、同第15/846,967号、同第15/847,001号、同第15/971,493号、同第62/289,019号、同第62/296,546号、同第62/310,398号、同第62/339,790号、同第62/343,997号、同第62/344,123号、および同第62/426,144号に記載される技術に有利には利用され得る方法および組成物を提供する。
【0176】
キット
さらに他の態様において、本出願は鋳型核酸をシーケンシングするためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは本明細書に記載されるように複数のタイプのルミネッセンス発光標識されたヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、各タイプの標識されたヌクレオチドは、本出願によるリンカーを介して1つ以上のヌクレオシドポリリン酸に付着した2つ以上のルミネッセンス発光標識を含む。いくつかの実施形態において、各タイプの標識されたヌクレオチドは、本出願による少なくとも1つのドナー分子と少なくとも1つのアクセプター分子とを含む少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含むFRET標識に連結されたヌクレオシドポリリン酸を含む。いくつかの実施形態において、その複数のヌクレオチドは、図3A~3C、3E~3G、4A~4C、5A~5B、6A~6C、および8~10に示される標識されたヌクレオチドから選択される。例えば、いくつかの実施形態において、前記複数のヌクレオチドは図3Gに示される構造にしたがって設計される。いくつかの実施形態において複数のヌクレオチドは、図3B(306)、図3B(308)、および図5A(502)に示される構造にしたがって設計される。いくつかの実施形態において、複数のヌクレオチドは図11A図11E図12図13A図13B図13C図14図15、および図16に示される構造にしたがって設計される。いくつかの実施形態において、本キットは重合酵素(本明細書の他の所に記載されるように、例えば、DNAポリメラーゼ)をさらに含む。いくつかの実施形態において、本キットはシーケンシングされる鋳型核酸に相補的なプライマーをさらに含む。
【0177】
いくつかの態様において、本出願は本明細書に記載された1つ以上の明るく標識された反応物を含む反応混合物を提供する。いくつかの実施形態において、前記反応混合物はシーケンシング反応に添加される混合物を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は重合酵素を含む。いくつかの実施形態において、重合酵素は固体支持体に固定化されるように構成される(例えば、本明細書の他の所に記載されるように、サンプルウェルの底部)。いくつかの実施形態において、反応混合物はシーケンシングされる鋳型核酸を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は鋳型核酸の一部分に相補的なプライマーを含む。いくつかの実施形態において、反応混合物はシーケンシング反応を開始するために必要な1つ以上の成分(例えば、マグネシウムまたは鉄などの二価金属イオン)を含む。いくつかの実施形態において、反応混合物はシーケンシング反応を安定化させるために必要な1つ以上の成分(例えば、1つ以上の緩衝剤、1つ以上の還元剤など)を含む。
【0178】
FRET核酸リンカー
いくつかの実施形態において、本出願は、本明細書に記載されるように、核酸リンカーを介してFRET対を含む少なくとも2つのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子に連結されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)を含む標識されたヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのルミネッセンス発光標識またはルミネッセンス発光分子は少なくとも1つのドナー標識(ドナー分子としても本明細書に表される)と、少なくとも1つのアクセプター標識(アクセプター分子としても本明細書に表される)とを含み、FRET対を形成するためにドナー標識の発光スペクトルは、アクセプター標識の吸収スペクトルと重複する。用語「FRET標識」はFRETを経ることができる少なくとも1つのドナー分子と少なくとも1つのアクセプター分子とを含むルミネッセンス発光標識を表す。いくつかの実施形態において、FRET対またはFRET標識を含む核酸リンカーは、本明細書においてFRET核酸リンカーと表され得る。
【0179】
いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは、1つのドナー標識および1つのアクセプター標識を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは1つのドナー標識および1つより多いアクセプター標識(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアクセプター標識)を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは1つより多いドナー標識(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のドナー標識)および1つのアクセプター標識を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは、少なくとも1つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む、少なくとも3つのルミネッセンス発光分子を含む。いくつかの実施形態において、ドナー分子対アクセプター分子比率は1:1である。いくつかの実施形態において、ドナー分子対アクセプター分子比率は1:1より大きい(例えば、1.5:1、2:1、3:1、3.5:1、4:1、またはそれ以上)である。いくつかの実施形態において、1:1より大きいドナー分子対アクセプター分子比率は、1:1の比率の対で観測される輝度と比較して、FRET標識の増大した輝度につながる。いくつかの実施形態において、その改善は5%より大きい、10%より大きい、15%より大きい、20%より大きい、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、その改善は約5~10%、10~15%、15~20%、20%~25%、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、アクセプター分子対ドナー分子比率は、1:1より大きい(例えば、1.5:1、2:1、3:1、3.5:1、4:1、またはそれ以上)。いくつかの実施形態において、1:1より大きいアクセプター分子対ドナー分子比率は、1:1の比率の対で観測されるFRET効率と比較して、改善されたFRET効率につながる。いくつかの実施形態において、その改善は5%より大きい、10%より大きい、15%より大きい、20%より大きい、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、その改善は約5~10%、10~15%、15~20%、20%~25%、またはそれ以上である。
【0180】
いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは少なくとも2つのドナー分子および少なくとも1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは2つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは3つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは4つのドナー分子および1つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは2つのドナー分子および2つのアクセプター分子を含む。いくつかの実施形態において、アクセプター分子の数に対してドナー分子の数を増加させることは、1:1の比率の対で観測される輝度と比較して、FRET標識の改善された輝度につながる。いくつかの実施形態において、その改善は5%より大きい、10%より大きい、15%より大きい、20%より大きい、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、その改善は約5~10%、10~15%、15~20%、20%~25%、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは少なくとも2つのアクセプター分子および少なくとも1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは2つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは3つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは4つのアクセプター分子および1つのドナー分子を含む。いくつかの実施形態において、ドナー分子の数に対してアクセプター分子の数を増加させることは1:1の比率の対で観測されるFRET効率と比較して、改善されたFRET効率につながる。いくつかの実施形態において、その改善は5%より大きい、10%より大きい、15%より大きい、20%より大きい、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、その改善は約5~10%、10~15%、15~20%、20%~25%、またはそれ以上である。
【0181】
いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは、1つ以上のステムループ(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上のステムループ)を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のステムループを含むFRET核酸リンカーは、ステムループ構造のループ内にドナーおよび/またはアクセプター標識または分子のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、ドナー分子のそれぞれは、ステムループ構造のループに配置される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子のそれぞれはステムループ構造のループに配置される。いくつかの実施形態において、前記1つ以上のアクセプター分子は、2つ以上のステムループが交わる接合部において配置される。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは2つ以上のステムループを含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは3つ以上のステムループを含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは4つ以上のステムループを含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは直鎖状リンカーである。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは分岐リンカーである。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは、3方向DNA接合部を有する。
【0183】
いくつかの実施形態において前記核酸は、第1オリゴヌクレオチド鎖と、第1オリゴヌクレオチド鎖にハイブリダイズする第2オリゴヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態において、前記ドナー分子と前記アクセプター分子は同じ鎖上に配置される。いくつかの実施形態においてアクセプター分子は、ドナー分子とは異なる鎖上に配置される。いくつかの実施形態において、1つ以上のドナー分子および1つ以上のアクセプター分子は同じ鎖上か、または異なる鎖上に配置される。
【0184】
いくつかの実施形態において、1つ以上のアクセプター分子は1つ以上のドナー分子の5’にある。いくつかの実施形態において、1つ以上のアクセプター分子は1つ以上のドナー分子の3’にある。いくつかの実施形態において、アクセプター分子は2つのドナー分子間にあり得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、1つ以上のドナー分子(例えば、1、2、3、4、5またはそれ以上)および/または1つ以上のアクセプター分子(例えば、1、2、3、4、5またはそれ以上)は核酸リンカーの中に組み込まれる。
【0186】
いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、3塩基によって分離される(または塩基対またはヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、4塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、5塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、6塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、7塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、8塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、9塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、10塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、11塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、12塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、13塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、3つ以上の塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、4つ以上の塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、5つ以上の塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、6つ以上の塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー分子およびアクセプター分子は、3~4、4~5、5~6、3~6、3~10、または5~10塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対のそれぞれは同じ数の塩基によって分離される。いくつかの実施形態において、異なるドナー-アクセプター対は同じか、または異なる数の塩基によって分離される。一般に、より長い距離はドナー分子の発光スペクトルとアクセプター標識の吸収スペクトルとの間の重複がより大きいドナー分子とアクセプター分子との対で機能し得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、ドナー分子とアクセプター分子との間の距離は、1~3nmである。いくつかの実施形態において、ドナー分子とアクセプター分子との間の距離は、1~4nm、1~5nm、1~6nm、1~7nm、1~8nm、1~9nmまたは1~10nmである。いくつかの実施形態において、ドナー分子とアクセプター分子との間の距離は、2~4nm、2~5nm、2~8nm、または2~10nmである。いくつかの実施形態において、ドナー分子とアクセプター分子との間の距離は、3~5nm、3~8nm、または3~10nmである。一般に、より長い距離は、ドナー分子の発光スペクトルとアクセプター標識の吸収スペクトルとの間の重複がより大きいドナー分子とアクセプター分子との対で機能し得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対間のFRET効率は約65%~約100%の範囲である。いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対間のFRET効率は約75%~約95%である。いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対間のFRET効率は約80%~約90%である。いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対間のFRET効率は約85%である。いくつかの実施形態において、ドナー-アクセプター分子対間のFRET効率は約65%より多い、約70%より多い、約75%より多い、約80%より多い、約85%より多い、または約90%より多い。
【0189】
いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーはDNA、RNA、PNA、LNA、またはそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーはLNAを含む。理論に縛られることを望まないが、GC対はシグナルを消光するので、GC対をLNAに置き換えることは、改善された輝度および/または効率につながることになる。
【0190】
核酸リンカーの例示的な構成およびFRET核酸リンカーを含む標識されたヌクレオチドを使用したシーケンシング実験の結果を図11A~11Fおよび図12~17に示す。いくつかの実施形態において、本出願のFRET核酸リンカーは、大きいストークスシフトを示す。例えば、いくつかの実施形態において、ドナー標識のための532nmの励起波長およびアクセプター標識のための590nmの放射波長は、おおよそ570nmのスペクトルフィルタでの検出を増強する大きいストークスシフトを提供する。いくつかの実施形態において、本出願のFRET核酸リンカーは、より赤い放射および/またはより赤いスペクトルフィルタからのレーザーの排除に役立つ。いくつかの実施形態において、本出願のFRET核酸リンカーは、より青い(例えば、457、488、515nm)励起波長の使用を可能にする。
【0191】
したがって、いくつかの実施形態において、FRET核酸リンカーは本出願に記載される1つ以上の他のリンカーまたは標識されたヌクレオチドと組合され得る。
実施例
実施例1:核酸リンカーでの色素付着戦略
様々な次世代シーケンシング技術は、標識された反応成分を実装する。例えば、色素-標識されたヌクレオチドは、各塩基タイプに対応する固有の発光特性の検出または観測に基づいて、取り込み事象中、特定のベースコールを行うために使用され得る。したがって、寿命および強度などのこれらの特性は、セットの中で各塩基について容易に同定可能である必要がある。標識されたヌクレオチドの蛍光強度増強への当初の努力により、第2色素分子がコンストラクトに追加されたとき、色素標識されたヌクレオチドの輝度は増大することが明らかになった。しかしながら、単一標識されたバリアントと比べて、蛍光寿命は著しく減少した。改善された標識ヌクレオチドの開発において、蛍光色素をヌクレオチドに連結するためのコア構造として核酸を研究した。
【0192】
多重標識ヌクレオチドの蛍光寿命の変化の潜在的な1つの原因は、同じコンストラクトの色素分子間の相互作用の程度であり、これは消光効果をもたらす。この可能性は、図8に示す色素標識されたヌクレオチドを生成することにより、さらに調査された。核酸リンカーを介して、2つの色素分子(DyLight530R2)をヌクレオシドポリリン酸に連結した。標識されていないオリゴヌクレオチド鎖を標識されたオリゴヌクレオチド鎖にハイブリダイズさせ、核酸リンカーに剛性を与えた。核酸への色素付着のためにC6-アミノ-Tスペーサーを使用して第1コンストラクト800を作成し、色素付着のためにグリコールアミンスペーサーを使用して第2コンストラクト802を作成した。
【0193】
第1コンストラクトの分析により、おおよそ1.4nsの蛍光寿命が明らかになり、一方、第2コンストラクトは、おおよそ3.5nsの寿命を示した。第2コンストラクトで測定された寿命の増加は、第1コンストラクトと比較して、色素付着のために比較的短いスペーサーを使用したことに起因した。図8において示されるように、第1コンストラクトのC6-アミノ-Tスペーサーは、第2コンストラクトのグリコールアミンスペーサーよりも長い。第2コンストラクトの寿命の改善に対する1つの可能性のある説明は、スペーサー長が短くなると、付着した色素の運動範囲が重複する程度が制限されることによって、色素-色素相互作用が減少することである。
【0194】
実施例2:増大したリンカー剛性は蛍光寿命を延ばす
潜在的に色素の空間的重複が原因でスペーサー長が蛍光寿命に影響を与え得るという観察に続いて、多重標識分子内の色素の対称配置が同様の効果を有し得ることが考えられた。Y型核酸リンカーを生成し、図9に示す。当初のコンストラクトは、示される分岐リンカーを介して共有結合した3つのオリゴヌクレオチド鎖を有する。2つの鎖はそれぞれ色素分子(Chromis530N)に末端付着し、第3鎖はヌクレオシドポリリン酸に末端付着する。第3鎖は、標識されていない鎖とさらにハイブリダイズして、ヌクレオシドポリリン酸と標識された領域との間に剛性を与える。このコンストラクトの第2バージョンは、第1鎖および第2鎖にハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド成分902とのハイブリダイゼーションによって生成される。
【0195】
当初のコンストラクトの分析により、おおよそ2.3nsの蛍光寿命が明らかになったが、追加のオリゴヌクレオチド成分902を有するコンストラクトは、おおよそ4.2nsの寿命を示した。後者のコンストラクトでの寿命の測定された増加の1つの可能性のある説明は、オリゴヌクレオチド成分902が標識された領域に剛性を与えたことである。増大した剛性は、各色素をより制限された運動範囲に制約することにより、おそらく色素分離を促進するであろう。
【0196】
実施例3:制限されたリンカー構成における色素スペーサー長の効果
幾何学的に制限されたリンカー構成は、図10に示されるトリス-色素標識されたコンストラクトを生成することにより、さらに開発された。示されるように、核酸リンカー部分は3つの主要なオリゴヌクレオチド成分を含む。第1成分は、示される4方向分岐リンカーを介して共有結合的に付着される4つのオリゴヌクレオチド鎖を含む。これらの鎖のうちの3つは、色素分子(AttoRho6G)にそれぞれ末端付着し、4つ目の鎖は第2オリゴヌクレオチド成分とハイブリダイズする。第2オリゴヌクレオチド成分は、示される分岐リンカーを介して2つのヌクレオシドポリリン酸に末端付着する。示される分岐リンカーを介して共有結合する3つのオリゴヌクレオチド鎖を含む第3オリゴヌクレオチド成分は、第1成分の3つの色素-標識された鎖とハイブリダイズして、標識された領域に剛性を与える。異なるスペーサー長を有する2つの別個のトリス-色素コンストラクトは、図10に示す枠で囲まれた領域にしたがって生成された。
【0197】
より長いスペーサーを有する第1トリス-色素標識されたヌクレオチドコンストラクト(図10、枠で囲まれた領域、上部を参照)は、1つの色素標識されたヌクレオチドコンストラクトに比べて蛍光強度が3倍になることが示された。加えて、同じ色素分子を有する2色素1ヌクレオチドコンストラクトと比較した場合、寿命がわずかに減少したことが示された(示していない)。より短いスペーサーを有する第2トリス-色素標識されたヌクレオチドコンストラクトで得られた測定値(図10、枠で囲まれた領域、下部参照)は、第1トリス-色素標識されたコンストラクトと比較して蛍光寿命のわずかな増加を示した。
【0198】
以前のトリス-色素標識されたヌクレオチドはシーケンシング反応中に複数の寿命を生成し、これは2つの色素が相互作用して第1の寿命を生成し、非相互作用色素が第2の寿命を生成する結果と考えられた。重要なことに、シーケンシング反応中、図10に示されるいずれかのトリス-色素標識された分子について、単一の寿命のみが観察された。
【0199】
実施例4:FRET核酸リンカーの特性評価
図12は、中心にアクセプター分子(A)および両側に2つのドナー分子(D)を有する、直鎖状核酸を有するFRET核酸リンカー構造の一例を示す。この例において各ドナー分子は、アクセプター分子から9塩基離れている。2つのドナー分子-アクセプター分子の距離は類似しているが、必ずしも同一ではない。83%のFRET効率が観察された。
【0200】
ドナー分子とアクセプター分子との間、および、ドナー分子およびアクセプター分子の周囲に様々な数のAT対およびGC対を有するFRET核酸リンカーを開発した。これらのFRET核酸リンカーを図13A~13Cに示す。ATRho6Gを改変し、より短く、より剛性のある分子、ATRho6G-C3を生成した。具体的には、ATRho6Gの第三級アミド側鎖(カルボキシブチル)をアジドプロピルに変えた。ATRho6G-C3により、ドナー-アクセプター距離を1塩基対減らすことが可能であった(図13A)。内部シアニン色素の使用および/または二本鎖構造を破壊しない修飾因子であるC2-アミノ-TにコンジュゲートされたBODIPY色素での脱塩基アミノコンジュゲーション部位の置換は、ドナー-アクセプター距離の減少をも可能にした(図13B)。図13Bに示されるように、シアニン-BODIPYのFRET対で90%のFRET効率が観察された。6-塩基対スペーサーを有する追加のFRET核酸リンカーは、図13Cにおいて示される。
【0201】
ドナー分子およびアクセプター分子の相対位置がFRET効率および輝度にどのように影響を与えるかについての体系的な研究をATRho6GC3-BODIPY対について行った。アクセプター分子の最適な位置はドナー分子から5塩基離れ、90%のFRET効率を有する(図14)。
【0202】
次に、シーケンシングシグナル強度に対するルミネッセンス発光分子と標識されたヌクレオチド(またはポリメラーゼ-鋳型複合体)との間の距離の影響を試験した。標識されたヌクレオチド(またはポリメラーゼ-鋳型複合体)から15~16nm以上離れた位置にあるルミネッセンス発光分子は効率的に照射されなかった。3方向DNA接合部構造と比較した直鎖状構造のルミネッセンス発光分子と標識されたヌクレオチドとの間の距離は、図15に示される。
【0203】
FRET効率へのアクセプター分子の数の影響も試験した。1-ドナー-1-アクセプター配置または1-ドナー-2-アクセプター配置のいずれかにおけるCy3-Cy5対のFRET効率を比較した。追加のアクセプター分子が追加されたとき、FRET効率は約60~70%から約90%に改善した(図16)。したがって、複数のコピーのアクセプターを使用してドナー発光を出すことは、より効率的なエネルギ移動をもたらす。
【0204】
図17は、異なるドナー分子およびアクセプター分子対、比率、および配向に関して得られたFRET効率の概要を提供する。
等価物および範囲
本明細書においていくつかの発明の実施形態が記載および例示されたが、当業者は機能を実施するための、および/または本明細書に記載される結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定するであろうが、そのような変更および/または修正のそれぞれは本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般には、当業者は本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味すること、および、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が特定の用途または本発明の教示が使用される用途に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者は、ルーチン的な実験のみを使用して、本明細書に記載される具体的な発明の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または確認するであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示されること、および、添付の特許請求の範囲およびそれに相当するものの範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載および特許請求される以外の方法で実施できることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載されるそれぞれ個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に向けられる。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のうちの2つ以上の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0205】
本明細書で定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照によって援用される文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を制御するものであると理解されたい。
【0206】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許、および特許出願は、それぞれが引用される主題に関して参照により援用され、それらは、いくつかの場合において、その文書全体を包含し得る。
【0207】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるとき、不定冠詞「a」および「an」は、明らかに反対に示されなければ、「少なくとも1つの」を意味すると理解されたい。
【0208】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるとき、用語「および/または」は、そのように結びつけられた「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合において結合的に存在し、他の場合において非結合的に存在する要素を意味することを理解されたい。「および/または」を用いて列挙された複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結びつけられた要素のうちの「1つ以上」として解釈されたい。「および/または」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、具体的に特定される要素に関連するか否かに関わらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などの非制限的な言語とともに使用されるとき、一実施形態において、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を表し得る;別の実施形態において、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を表し得る;さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を表し得る;など。
【0209】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるとき、「または」は、上に定義されるように「および/または」と同じ意味を有することが理解されたい。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的、すなわち、要素の数またはリストのうちの少なくとも1つを含むが、複数の要素の数またはリストのうちの2つ以上、および任意選択的に追加のリスト化されていない項目を含むと解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」または「のうちの厳密に1つ」、または特許請求の範囲において使用される「からなる」などは、明確に反対に示される場合にのみ、複数の要素の数またはリストのうちの厳密に1つの要素を含むことを表す。一般に、本明細書に使用されるとき、「いずれか」「のうちの1つ」または「のうちの厳密に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、用語「または」は、排他的な代替的用語を示すものとしてのみ解釈するものとする(すなわち「一方または他方であるが、両方ではない」)。特許請求の範囲において使用される場合、「本質的に~からなる」は、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0210】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つ以上の要素のリストを参照する際の語句「少なくとも1つの」は、その要素のリスト内の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されたいが、その要素のリスト内の具体的にリスト化されたすべての要素のそれぞれのうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、その要素のリスト内の任意の組み合わせを排除しないこの定義はまた、語句「少なくとも1つの」が表すその要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連しないかに関わらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、同じく、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」または、同じく「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、少なくとも1つのA、任意選択的に1つより多いAを含み、Bが存在しない(および任意選択的にB以外の要素を含む)こと、別の実施形態において、少なくとも1つのB、任意選択的に1つより多いBを含み、Aが存在しない(および任意選択的にA以外の要素を含む)こと、さらに別の実施形態において、少なくとも1つのA、任意選択的に1つより多いAを含み、かつ、少なくとも1つのB、任意選択的に1つより多いBを含む(および任意選択的に他の要素を含む)こと等を表し得る。
【0211】
特に反対に示されなければ、1つより多いステップまたは行為を含む本願の特許請求された任意の方法において、本方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも、本方法のステップまたは行為が説明されている順序に限定されないことも理解されたい。
【0212】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「含む(comprising、including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む/伴う(involving)」「保持する(holding)」、「~から構成される(composed of)」、および同様のものなどの全ての移行句は、非限定的である、すなわち、含むがこれらに限定されないことを意味すると理解されたい。移行句「~からなる」および「本質的に~からなる」のみ、米国特許庁特許審査手続マニュアル(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03に述べられるように、それぞれ限定的または半限定的であるものとする。非限定的な移行句(例えば、「含む(comprising)」を使用する本文書に記載される実施形態はまた、複数の代替実施形態において、その非限定的な移行句によって記載される特徴「~からなる」および「本質的に~からなる」と企図されることを理解されたい。例えば、本開示が「AおよびBを含む組成物」を説明する場合、本開示はまた、複数の代替実施形態「AおよびBからなる組成物」および「本質的にAおよびBからなる組成物」を企図する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D-1】
図3D-2】
図3E
図3F
図3G-1】
図3G-2】
図3G-3】
図3G-4】
図3G-5】
図4A
図4B
図4C
図4D-1】
図4D-2】
図5A
図5B-1】
図5B-2】
図6A-1】
図6A-2】
図6B-1】
図6B-2】
図6C-1】
図6C-2】
図6C-3】
図6D-1】
図6D-2】
図6E
図6F
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13A
図13B
図13C
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
【配列表】
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