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特許7618587フィルム特性を最適化するための磁気充填剤の配向
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】フィルム特性を最適化するための磁気充填剤の配向
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20250114BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20250114BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20250114BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250114BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20250114BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
H05K9/00 H
C08K3/08
C08L23/06
C08L101/00
H01F1/26
H01F27/36 101
H05K9/00 W
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021567910
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2020054388
(87)【国際公開番号】W WO2020229975
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】62/848,245
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ミカエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】デヘン,デレク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,ポール ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルッゾーン,チャールズ エル.
(72)【発明者】
【氏名】アチャリャ,ブファラット アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジェスメ,ロナルド ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コペッキー,ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ソコル,ジェニファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マヌイロブ,セルゲイ エー.
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253122(JP,A)
【文献】特開2003-229694(JP,A)
【文献】特開2002-217586(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0131930(KR,A)
【文献】国際公開第2018/116127(WO,A1)
【文献】特開2017-027730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C08K 3/08
C08L 23/06
C08L 101/00
H01F 1/26
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1及び第2の主面と、それらの間に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、各粒子は、磁気透過性、前記粒子の厚さ方向に沿った厚さH、前記厚さ方向に直交する前記粒子の長さ方向に沿った最長寸法L、2以上のL/Hを有し、前記粒子は、それらの間に複数の空隙を画定し、前記粒子の少なくとも60%の前記長さ方向は、同じ配向方向の5.5度以内に配向されており、
前記第1及び第2の主面のうちの少なくとも1つに実質的に直交する垂直方向における前記磁気遮蔽フィルムの断面において、前記磁気遮蔽フィルムは、複数対の垂直に隣接する粒子を含み、複数の実質的に平行な細長ポリマー要素は、前記対の垂直に隣接する粒子のそれぞれにおいて前記粒子を接続する、磁気遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記複数の空隙のうちの前記空隙の少なくとも一部が、相互接続されている、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム
【請求項3】
前記対の垂直に隣接する粒子のそれぞれにおいて前記粒子を接続する前記実質的に平行な細長ポリマー要素が、前記垂直方向に沿って実質的に配向されている、請求項に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記細長ポリマー要素が、ポリエチレンを含む、請求項に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記粒子が、ロッド状である、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項6】
前記粒子が、鉄、ケイ素、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、コバルト、及びモリブデンのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項7】
前記粒子が、その最外面に磁性コーティングを含む、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項8】
前記コーティングされていない粒子が、磁気透過性を有さない、請求項に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項9】
約1MHzの周波数でμ’2/μ’1≧100である、前記フィルムのそれぞれ厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部を有する、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項10】
前記粒子が、約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲の平均厚さ、及び約20ミクロン~約200ミクロンの範囲の平均最長寸法を有する、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項11】
前記磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って、少なくとも0.15W/(m・K)、又は0.2W/(m・K)、又は0.25W/(m・K)の平均熱伝導率を有する、請求項に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項12】
前記磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿って、少なくとも5W/(m・K)、又は7W/(m・K)、又は9W/(m・K)、又は10W/(m・K)、又は10.6W/(m・K)の平均熱伝導率を有する、請求項に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項13】
前記第1及び第2の主面との間に配設された樹脂を更に含み、前記複数の粒子は、前記樹脂中に分散し、前記樹脂は、約10g/molを超える数平均分子量を有する、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【請求項14】
前記複数の粒子中の前記粒子が、前記第1及び第2の主面との間に、約50%を超える体積容量で分散される、請求項1に記載の磁気遮蔽フィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書のいくつかの態様において、対向する第1及び第2の主面と、それらの間に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、各粒子が、磁気透過性、厚さ方向に沿った厚さH、粒子の厚さ方向に直交する粒子の長さ方向に沿った最長寸法L、2以上のL/Hを有し、粒子が、それらの間に複数の空隙を画定し、粒子の少なくとも60%の長さ方向が、同じ配向方向の5.5度以内に配向されている、磁気遮蔽フィルムを提供する。
【技術分野】
【0002】
本明細書のいくつかの態様において、約10g/モルを超える数平均分子量を有する樹脂と、約50%、又は55%、又は60%、又は65%を超える体積容量でその中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、約1MHzの周波数で、フィルムが、約6000ガウスよりも大きい磁気飽和と、μ’1≦5及びμ’2≧150である、フィルムのそれぞれの厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部と、を有する、磁気遮蔽フィルムを提供する。
【0003】
本明細書のいくつかの態様において、第1の周波数帯域の電磁波に含まれるエネルギーを実質的に減衰させるように構成されたプレートと、第1の周波数帯域内のデバイス内に配置されたバッテリを無線充電するための、プレート上に配置された受信アンテナと、プレートと受信アンテナとの間に配置された磁気遮蔽フィルムと、を含む、電子デバイスを提供する。磁気遮蔽フィルム(magnetic shield film)は、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子を含み得、粒子は、実質的に同じ方向に沿って配向され、それらの間に複数の空隙を画定し、これにより、デバイスが、第1の周波数帯域の電力Ptxを受信アンテナに送信する送信アンテナに隣接して配置されると、受信アンテナが、送信アンテナから電力Prxを受信し、Prxの増加により、少なくとも1%のPrx/Ptxの初期減少をもたらした後、Prxが更に増加すると、Prx/Ptxの減少は約5%未満であるため、Prxは少なくとも2倍に増加する。
【0004】
本明細書のいくつかの態様において、樹脂と、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、樹脂が、粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み、これにより、約1MHzの周波数で、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部が、量(420.0-0.04M)を超え、Mが、ガウス単位の磁気遮蔽フィルムの磁気飽和である、磁気遮蔽フィルムを提供する。
【0005】
本明細書のいくつかの態様において、樹脂と、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、樹脂が、粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み、これにより、約1MHzの周波数で、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部が、約130を超え、磁気遮蔽フィルムの磁気飽和が、約6,000ガウスを超える、磁気遮蔽フィルムを提供する。
【0006】
本明細書のいくつかの態様において、ポリマー材料と、その中に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、粒子が、磁気透過性を有し、ポリマー材料が、磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って概ね配向され、複数の粒子を相互接続する複数の実質的に平行な繊維状の要素を含む、磁気遮蔽フィルムを提供する。
【0007】
本明細書のいくつかの態様において、磁気遮蔽フィルムを製造する方法であって、約10g/molを超える数平均分子量を有するポリマー、ポリマーと混和性の希釈剤、及び磁気透過性を有する複数の異方性形状の粒子を提供することと、ポリマー、希釈剤、及び複数の異方性形状の粒子を混合して、混和性溶液を形成することと、混和性溶液の層を形成することと、磁場を層に適用して、実質的に同じ配向方向に沿って粒子を配向することと、磁場が層に適用され、粒子が実質的に配向方向に沿って配向されている間に、希釈剤からのポリマーの相分離を誘導することと、希釈剤の少なくとも一部分を除去して、磁気遮蔽フィルムを形成することと、を含み、粒子の少なくとも60%が、配向方向の5度以内に配向される、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】先行技術によるフィルム形成及び高密度化プロセスのプロセスフロー図である。
図2A】本明細書の一実施形態による、フィルム形成及び高密度化プロセスのための主要な加工要素を説明する。
図2B】本明細書の一実施形態による、フィルム形成プロセスで使用される磁石アセンブリの拡大図である。
図3A】本明細書の一実施形態による、フィルム形成及び高密度化プロセスで使用するための粒子形状の例を提供する。
図3B】本明細書の一実施形態による、フィルム形成及び高密度化プロセスで使用するための粒子形状の例を提供する。
図3C】本明細書の一実施形態による、フィルム形成及び高密度化プロセスで使用するための粒子形状の例を提供する。
図3D】本明細書の一実施形態による、フィルム形成及び高密度化プロセスで使用するための粒子形状の例を提供する。
図4】本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムを示す。
図5A】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメント及び超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図5B】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメント及び超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図5C】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメント及び超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図6A】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図6B】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図6C】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、超音波高密度化を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図7A】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、カレンダー加工を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図7B】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、カレンダー加工を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図7C】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、カレンダー加工を使用したフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図8A】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメントを使用し、超音波高密度化を使用しないフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図8B】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメントを使用し、超音波高密度化を使用しないフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図8C】典型的な先行技術のフィルムと比較した、本明細書の一実施形態による、磁気アライメントを使用し、超音波高密度化を使用しないフィルム形成プロセスによって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。
図9】本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムに対する相対透磁率対磁気飽和誘導値をプロットするグラフである。
図10】本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムに対する無線電力伝達効率対受信電力値をプロットするグラフである。
図11】本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムを使用する電子デバイスの斜視図である。
図12】本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムの製造方法のフロー図である。
図13】本明細書の一実施形態による、4つの例示的な磁気遮蔽フィルムの実験的性能を示す表である。
図14】本明細書の一実施形態による、例示的な磁気遮蔽フィルムの磁気透過性に対する様々な設計パラメータの効果を示すパレート図である。
図15】本明細書の一実施形態による、例示的な磁気遮蔽フィルムの磁気透過性に対する様々な設計パラメータの効果を示すキューブプロットである。
図16】本明細書の一実施形態による、例示的な磁気遮蔽フィルムの磁気透過性に対する様々な設計パラメータの効果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、本明細書の一部を形成し様々な実施形態が例示として示されている添付図面が参照される。図面は、必ずしも比率の縮尺ではない。他の実施形態が想到され、本明細書の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施されてもよい点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0010】
磁気遮蔽フィルムは、好適な樹脂によって一緒に結合された磁気フレーク形状又はロッド状充填材粒子を有する、高充填複合材料から形成されてもよい。最良の結果を得るには、このような複合体は、次の特性を備えている必要がある:(1)磁気飽和誘導を最大化するためのフレーク形状又は細長い充填材粒子の大量の割合(60体積%を超える)、及び(2)磁気透過性を最大化し、機械的に敏感な充填材粒子への損傷を制限しながら高い充填密度を促進するために、フィルム面と同一平面上にある高度な粒子配向。これは、より効果的な遮蔽及びより高い電力伝達効率につながる。加えて、理想的には複合体は、良好な機械的一体性を提供するのに十分な結合剤体積分率を有する、最小の空隙体積分率を有するべきである。高飽和誘導は、最終用途のアプリケーションでの無線充電速度の高速化につながる。
【0011】
この複合体を実現するには、克服しなければならないいくつかの固有の課題がある。例えば、固体の容量が高い混合物は、高粘度を有する傾向があり、処理が困難であり得る。加えて、フレーク粒子の容量が高い混合物を配向させることは、固体粒子の立体的相互作用のために困難である。最後に、任意の手段を介して、所望の構造が作り出されると、その構造体は次いで、適所に「ロック」されなければならない。
【0012】
従来技術は、フレークが十分な移動性を有する比較的流動的な状態でフレークのフィルム形成及び配向を実行することによって、これらの課題に対処しようと試みてきた。例えば、これは、溶媒及び/又は低分子量反応性樹脂で希釈することにより流体混合物を生成することと、フィルムを形成することと、磁場をフィルムに適用して、磁気フレークを内部に配向させる(配向構造を生成する)のを助けることと、溶媒を蒸発させる、及び/又は樹脂マトリックスを硬化させることにより、構造を所定の位置にロックすることと、によって達成され得る。
【0013】
しかしながら、これらの先行技術のアプローチは、対処されなければならないいくつかの欠陥を有する。例えば、溶媒の蒸発及び硬化は、比較的緩やかな(遅い)プロセスであり、その間、秩序付けられたシステムは、通常の機械的取り扱い及び振動によって不規則になる。また、フィルムが一時的な状態にある間に磁場を継続的に適用すると、配向の秩序を維持するのに役立つ可能性があるが、半液体材料の物理的移動、又は比較的液化したポリマー/希釈剤からの磁気フレークの分離によって、望ましくないフィルム変形を引き起こす可能性もある。
【0014】
これらの課題に対処し、克服する磁気遮蔽フィルムを作製する新しい方法が提示される。本方法は、配向磁場を比較的短時間、磁気遮蔽フィルムに適用し、次いで、一次相転移を使用して秩序付けられた構造を所定の位置に迅速にロックすることによって、これらの課題に対処する。いくつかの実施形態において、一次相転移は、単一のポリマー/希釈剤ゲル相から二相系への熱誘起相分離(すなわち、TIPS)である。TIPSプロセスでは、ポリマーは数秒で強力な分離相を形成し、分離相は、細長い磁性粒子を連続希釈相内のネットワーク構造に結合するミクロフィブリル構造を有する。いくつかの実施形態において、希釈剤は揮発性が低く、高度に秩序化されたフレーク配列を乱すことなく、フィルム形成後のある時点で行われるインライン又はオフライン工程のいずれかですぐに抽出することができる。いくつかの実施形態において、希釈剤が抽出されると、空隙体積は高密度化工程によって除去され得る。本明細書に記載の方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,287,413号に記載されているフィルム形成及び高密度化プロセスに基づいており、改善を提供している。このプロセスは、通常、熱誘起相分離(TIPS)プロセスと組み合わせて高い充填材充填を伴う一連のプロセスとして最もよく説明される。
【0015】
図1は、前述のようなフィルム形成及び高密度化プロセスに典型的な一連のプロセスの概要を提供する。プロセス工程Aでは、粒子10、希釈剤(溶媒)12、及び結合剤ポリマー14は、室温で、分散体中で混合される。典型的なフィルム形成プロセスで使用される粒子10の例は、典型的には、音響活性粒子、軟磁性粒子、熱伝導性粒子、断熱性粒子、発泡性粒子(intumescent particle)、機能性粒子、誘電体粒子、インジケータ粒子、極性溶媒可溶性粒子、極性溶媒膨潤性粒子、又は吸熱粒子が挙げられる。しかしながら、明らかな理由により、本明細書に記載の新しいフィルム及び方法は、細長い磁性粒子を使用するであろう。プロセス工程Bにおいて、粒子10、結合剤ポリマー14、及び希釈剤12は、高温で能動的に混合されて、ポリマー14及び希釈剤12を溶解する。いくつかの実施形態において、次いで、混合物をホットプレスすること(例えば、実験室規模で)、又は加熱されたダイを通して押し出すこと(例えば、大規模又は製造規模で)のいずれかによって、ブレンドを所望の形状因子に成形することができる。
【0016】
次いで、高温のフィルムは、プロセス工程Cで相分離が起こるより低い温度に急冷される。相分離を誘導した後、溶媒の少なくとも一部分は、プロセス工程Dでポリマー複合体から除去され、それにより、熱可塑性ポリマー、ネットワーク構造、及び熱可塑性ポリマー、ネットワーク構造内に分布した粒子状材料を有するポリマー複合体シートを形成する。いくつかの実施形態において、溶媒は、蒸発によって除去することができ、蒸気圧の高い溶媒は、この除去方法に特に適している。
【0017】
相分離を誘導し、希釈剤12の少なくとも一部分を除去した後、形成された熱可塑性ポリマーネットワーク構造は、いくつかの実施形態において、ポリマー複合体を高密度化するために、引き伸ばされる(プロセス工程E)及び/又は圧縮される(プロセス工程F)場合がある。これは、圧縮力及び引張力のうちの少なくとも1つをポリマー複合体に適用することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、ポリマー複合体の製造方法は、溶媒を除去する工程の後に、圧縮力及び引張力のうちの少なくとも1つを適用し、これにより、ポリマー複合体シートを高密度化すること、を更に含む。圧縮力及び引張力のうちの少なくとも1つは、当該技術分野において既知の技術によって適用され得る。例えば、圧縮力は、ポリマー複合体、例えば、ポリマー複合体シートを、ポリマー複合体の厚さよりも小さい間隙を有する一対のニップロールのニップに通すことによって、例えば、カレンダー加工することによって、達成することができる。
【0018】
本明細書のいくつかの態様によれば、上記の相転移工程中の磁気遮蔽フィルムの形成中に磁場が適用され、次いで、このように生成された秩序化された構造は、フィルムを冷却することによって所定の位置に急速にロックされ、磁気遮蔽フィルムを作製する。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、対向する第1及び第2の主面と、それらの間に分散された複数の粒子と、を含み、各粒子は、磁気透過性(すなわち、磁場の発生をサポートする磁性材料の能力)を有する。いくつかの実施形態において、各粒子は、粒子の厚さ方向に沿って厚さHを有し得、比L/Hが2以上であるように、厚さ方向に直交する粒子の長さ方向に沿って最長寸法Lを有し得る。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルム内の粒子の少なくとも60%の長さ方向は、同じ配向方向から5.5度以内、又は5度以内、又は4.5度以内、又は4度以内に配向する(すなわち、実質的に同じ方向に整列する)。
【0019】
いくつかの実施形態において、配向方向は、第1及び第2の主面に実質的に平行であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は、それらの間に複数の空隙を画定する。いくつかの実施形態において、複数の空隙のうちの空隙の少なくとも一部は、相互接続されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、第1及び第2の主面との間に配置された樹脂を更に含み得、ここで、複数の粒子が、樹脂中に分散されている。いくつかの実施形態において、樹脂は、約10g/molを超える数平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、樹脂の数平均分子量は、約10g/mol未満であり得る。
【0021】
磁気遮蔽フィルムのいくつかの実施形態において、第1及び第2の主面のうちの少なくとも1つに実質的に直交する垂直方向に取られた磁気遮蔽フィルムの断面において、磁気遮蔽フィルムが、複数対の垂直に隣接する粒子を含み得、複数の実質的に平行な細長ポリマー要素が、対の垂直に隣接する粒子のそれぞれにおいて粒子を接続する。いくつかの実施形態において、実質的に平行な細長ポリマー要素は、熱可塑性フィブリルであり得、これは、隣接する粒子に直接付着し、結合剤として作用し得る。いくつかの実施形態において、隣接する粒子を接続する実質的に平行な細長ポリマー要素は、垂直方向に沿って実質的に配向されている(すなわち、粒子の配向方向に実質的に直交するか、又は第1及び第2の主面に実質的に直交する)。いくつかの実施形態において、細長ポリマー要素は、ポリエチレンを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、約1MHzの周波数での比μ’2/μ’1が100以上であるように、フィルムのそれぞれの厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部を有し得る。いくつかの実施形態において、約1MHzでの磁気遮蔽フィルムのμ’1は、約5以下であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、粒子は、約50パーセントを超える体積容量で、磁気遮蔽フィルムの第1及び第2の主面との間に分散され得る。いくつかの実施形態において、粒子には、フレークが含まれ得る(すなわち、薄くて平らな材料のビットのように、粒子の長さ及び幅よりも実質的に薄い厚さを有する)。いくつかの実施形態において、粒子は、約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲の平均厚さ、及び約20ミクロン~約200ミクロンの範囲の平均最長寸法を有し得る。いくつかの実施形態において、粒子は、実質的にロッド状であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は、実質的にディスク状であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は、回転楕円体型であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は、より低い熱伝導性の内側部分と、より高い熱伝導性の外側部分と、を有し得る。いくつかの実施形態において、粒子は、それらの最外面上に熱伝導性コーティングを有し得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、粒子は、強磁性材料であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は、以下の材料のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない:鉄、ケイ素、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、コバルト、及びモリブデン。いくつかの実施形態において、粒子は、磁性コーティングを含んでもよく、コーティングされていない粒子は、それ自体が磁気透過性を有してもよく、又は有さなくてもよい。いくつかの実施形態において、粒子は、熱伝導性であり得る。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って、少なくとも0.15W/(m・K)、又は少なくとも0.2W/(m・K)、又は少なくとも0.25W/(m・K)の平均熱伝導率を有し得る。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿って、少なくとも5W/(m・K)、又は少なくとも7W/(m・K)、又は少なくとも9W/(m・K)、又は少なくとも10W/(m・K)、又は少なくとも10.6W/(m・K)の平均熱伝導率を有し得る。
【0025】
本明細書のいくつかの態様によれば、磁気遮蔽フィルムは、樹脂を含み得、樹脂は、約10g/molを超える数平均分子量、及び約1MHzの周波数で、その中に高体積容量(例えば、約50%、又は55%、又は60%、又は65%を超える)で分散された複数の異方性形状の粒子(例えば、粒子の第1の寸法が第2の寸法よりも著しく大きくなるように細長い)を有する。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、約6000ガウスを超える磁気飽和(すなわち、適用された外部磁場の増加がもはやフィルムの磁化の増加を引き起こさない状態)、及びμ’1が約5以下であり、μ’2が約150以上であるように、フィルムのそれぞれの厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部を有し得る。いくつかの実施形態において、樹脂は、粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素(例えば、熱可塑性フィブリル)を含み得る。
【0026】
磁気遮蔽フィルムのいくつかの実施形態において、異方性形状の粒子の少なくとも一部は、磁場に応答して磁気モーメント(すなわち、粒子の磁気強度及び配向、又は磁場と位置合わせする粒子の傾向の尺度を定義する)を発生するように構成される。いくつかの実施形態において、異方性形状の粒子の少なくとも一部は、永久磁気モーメントを含み得る。いくつかの実施形態において、異方性形状の粒子の少なくとも一部は、磁気的に導電性であり、電気絶縁性である。
【0027】
いくつかの実施形態において、樹脂は、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造へと形成される熱可塑性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーは、特に限定されない。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ乳酸)、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6及びポリペプチド)、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド)、ポリカーボネート(ビスフェノール-A-ポリカーボネート)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアクリレート(例えば、アクリレート官能基を含有するモノマーの付加重合から形成される熱可塑性ポリマー)、ポリメタクリレート(例えば、メタクリレート官能基を含有するモノマーの付加重合から形成される熱可塑性ポリマー)、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン)、スチレン及びスチレン系ランダムコポリマー及びブロックコポリマー、塩素化ポリマー(ポリ塩化ビニル)、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのポリマー;エチレン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;並びにポリテトラフルオロエチレン)、並びにエチレン及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマーのうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、ブロックコポリマー又はランダムコポリマー)のうちの少なくとも1つであってよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、2種以上の熱可塑性ポリマーの混合物(例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物又はポリエチレンとポリアクリレートとの混合物)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン(例えば、超高分子量ポリプロピレン)、ポリ乳酸、ポリ(エチレン-co-クロロトリフルオロエチレン)、及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つであってよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、単一の熱可塑性ポリマーであり、すなわち、2種以上の熱可塑性ポリマーの混合物ではない。
【0028】
熱可塑性ポリマーの分子量は、溶媒から相分離することができ、ネットワーク構造の形成をもたらすのに十分な分子量を有する必要があることを除き、特に限定されない。一般に、熱可塑性ポリマーの数平均分子量は、10g/molより高いことを必要とし得る。超高分子量を有する熱可塑性ポリマーが特に有用であり得る。いくつかの実施形態において、超高分子量とは、少なくとも3×10g/モルの数平均分子量を有する熱可塑性ポリマーと定義される。数平均分子量は、限定するものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を含む、当該技術分野において既知の技術によって測定することができる。GPCは、熱可塑性ポリマーに対しての良溶媒中、分子量分布の狭いポリマー標準、例えば、分子量分布の狭いポリスチレン標準の使用を伴って、実施することができる。熱可塑性ポリマーは、概ね、部分的に結晶質であることを特徴とし、融点を示す。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、120℃~350℃の間、120℃~300℃の間、120℃~250℃の間又は更には120℃~200℃の間に融点を有し得る。熱可塑性ポリマーの融点は、当該技術分野において既知の技術によって測定することができ、これには、5mg~10mgの試料を用いて、試料が窒素雰囲気下にある間、10℃/分の加熱走査速度で実施される示差走査熱量測定(DSC)試験にてオンセット温度を測定することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーと適切な溶媒とを混合して混和性熱可塑性ポリマー溶媒溶液を形成することと、続いて、熱可塑性ポリマーを溶媒から相分離することと、次いで溶媒の少なくとも一部分を除去することと、を含む、プロセスを介して、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造に形成され得る。このプロセスは、典型的には、相分離の前に、粒子材料を混和性ポリマー溶媒溶液に添加することによって実施される。いくつかの実施形態において、粒子材料は、強磁性粒子であり得る。熱可塑性ポリマーのネットワーク構造は、このプロセスの相分離工程中に形成され得る。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造は、混和性熱可塑性ポリマー溶媒溶液の誘起相分離によって製造される。熱可塑性ポリマーのネットワーク構造は、本質的に多孔性(すなわち、孔)である。孔は連続的であってもよく、これにより、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の内側領域から熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の表面への流体連通、及び/又は熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の第1の表面と熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の反対側の第2の表面との間の流体連通が可能になる。
【0030】
熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の孔径は、特に限定されない。いくつかの実施形態において、孔径は、マイクロメートル尺度(すなわち、約1マイクロメートル~1000マイクロメートル)のものである。いくつかの実施形態において、孔径は、ナノメートル尺度(すなわち、約10ナノメートル~1000ナノメートル)のものである。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の平均孔径又はメジアン孔径P、は、10ナノメートル~1000マイクロメートル、10ナノメートル~500マイクロメートル、10ナノメートル~250マイクロメートル、10ナノメートル~100マイクロメートル、10ナノメートル~50マイクロメートル、10ナノメートル~25マイクロメートル、100ナノメートル~1000マイクロメートル、50ナノメートル~1000マイクロメートル、50ナノメートル~500マイクロメートル、50ナノメートル~250マイクロメートル、50ナノメートル~100マイクロメートル、50ナノメートル~50マイクロメートル、50ナノメートル~25マイクロメートル、100ナノメートル~1000マイクロメートル、100ナノメートル~500マイクロメートル、100ナノメートル~250マイクロメートル、100ナノメートル~100マイクロメートル、100ナノメートル~50マイクロメートル、100ナノメートル~25マイクロメートル、250ナノメートル~1000マイクロメートル、250ナノメートル~500マイクロメートル、250ナノメートル~250マイクロメートル、250ナノメートル~100マイクロメートル、250ナノメートル~50マイクロメートル又は更には250ナノメートル~25マイクロメートルである。断面の撮像(例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡又は原子間力顕微鏡)及び適切なソフトウェアを使用した画像解析を含む、従来の孔径分析技術を使用して、孔径及び孔径分布を統計的に分析することができる。また、X線マイクロトモグラフィ及び水銀ポロシメトリ-、バブルポイント及びキャピラリーフローポロシメトリーを使用して、孔径及び/又は孔径分布を分析することができる。熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の孔の連続的性質は熱可塑性ポリマーのネットワーク構造からの溶媒の除去を促進し得る。本開示において、「熱可塑性ポリマーのネットワーク構造」という用語は、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の孔の少なくとも一部分が液体及び固体を含まない(例えば、空気などの1つ以上の気体を含有する)ことを本質的に意味する。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造の孔の10体積パーセント~100体積パーセント、30体積パーセント~100体積パーセント、50体積パーセント~100体積パーセント、60体積パーセント~100体積パーセント、70体積パーセント~100体積パーセント、80体積パーセント~100体積パーセント、90体積パーセント~100体積パーセント、95体積パーセント~100体積パーセント、又は更には98体積パーセント~100体積パーセントは、液体及び固体を含まない(例えば、空気などの1つ以上の気体を含有する)。
【0031】
混和性熱可塑性ポリマー溶媒溶液を形成するために、溶媒は、熱可塑性ポリマーを溶解することが必要とされる。したがって、特定の熱可塑性ポリマーに対する溶媒は、この要件に基づいて選択される。熱可塑性ポリマー溶媒混合物は、熱可塑性ポリマーの溶媒中への溶解を促進するために加熱してもよい。熱可塑性ポリマーを溶媒から相分離した後、溶媒の蒸発、又は蒸気圧の低い第2の溶媒による溶媒の抽出と、それに続く第2の溶媒の蒸発と、を含む、当該技術分野において既知の技術を使用して、溶媒の少なくとも一部分を熱可塑性ポリマーのネットワーク構造から除去する。いくつかの実施形態において、少なくとも10重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも30重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも50重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも60重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも70重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも80重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも90重量パーセント~100重量パーセント、少なくとも95重量パーセント~100重量パーセント又は更には少なくとも98重量パーセント~100重量パーセントの溶媒及び第2の溶媒(使用される場合)が、熱可塑性ポリマーのネットワーク構造から除去される。
【0032】
本明細書のいくつかの態様によれば、電子デバイス(例えば、無線充電システム)は、第1の周波数帯域の電磁波に含まれるエネルギーを実質的に減衰させるように構成されたプレートと、第1の周波数帯域内のデバイス内に配置されたバッテリを無線充電するための、プレート上に配置された受信アンテナと、プレートと受信アンテナとの間に配置された磁気遮蔽フィルムと、を含み得る。いくつかの実施形態において、プレートは、エネルギーを吸収することによって電磁波に含有されるエネルギーを減衰させることができる。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムフィルムは、磁気シールドフィルムは、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子(例えば、フレーク状若しくはロッド状の粒子、又は第1の方向に直交する第2の方向よりも第1の方向に長い粒子)を含み得る。いくつかの実施形態において、粒子は、実質的に同じ方向に沿って配向されてもよく、それらの間に複数の空隙を画定してもよい。いくつかの実施形態において、空隙の少なくとも一部は、相互接続されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、デバイスが、第1の周波数帯域の電力Ptxを受信アンテナに送信する送信アンテナに隣接して配置されると、受信アンテナが、送信アンテナから電力Prxを受信し、Prxの増加により、少なくとも1%のPrx/Ptxの初期減少をもたらした後、Prxが更に増加すると、Prx/Ptxの減少は約5%未満であり得、Prxは少なくとも2倍に増加する。いくつかの実施形態において、少なくとも1%のPrx/Ptxが初期減少をもたらすPrxの増加の場合、Prxは、少なくとも5ワットの初期値から増加する。本明細書の目的のために、句「第1の周波数帯域」は、電力を用いて無線で送信することができる任意の適切な周波数帯域を表すことを意図しており、限定することを意味するものではない。
【0034】
本明細書のいくつかの態様によれば、樹脂と、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムを提供する。いくつかの実施形態において、樹脂は、粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み得、これにより、約1MHzの周波数で、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部が、量(420.0-0.04M)を超え、Mが、ガウス単位の磁気遮蔽フィルムの磁気飽和である。いくつかの実施形態において、粒子は、約10超、約50超、又は約100超の磁気透過性を有する。いくつかの実施形態において、繊維状の概ね平行なポリマー要素は、熱可塑性フィブリルであり得、これは、分散した粒子に直接付着し、結合剤として作用し得る。
【0035】
本明細書のいくつかの態様によれば、樹脂と、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムを提供する。いくつかの実施形態において、樹脂は、粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み得、これにより、約1MHzの周波数で、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部が、約130を超え、磁気遮蔽フィルムの磁気飽和が、約6,000ガウスを超える。
【0036】
本明細書のいくつかの態様によれば、ポリマー材料と、その中に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムを提供し、粒子は、磁気透過性を有する。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って概ね配向され、複数の粒子を相互接続する複数の実質的に平行な繊維状の要素(例えば、フィブリル)を含み得る。
【0037】
本明細書のいくつかの態様によれば、磁気遮蔽フィルムを製造する方法であって、約10g/mol、又は約10g/mol、又は約10g/molを超える数平均分子量を有するポリマー、ポリマーと混和性の希釈剤、及び磁気透過性を有する複数の異方性形状の粒子を提供することと、ポリマー、希釈剤、及び複数の異方性形状の粒子を混合して、混和性溶液を形成することと、混和性溶液の層を形成することと、磁場を層に適用して、実質的に同じ配向方向に沿って粒子を配向することと、磁場が層に適用され、粒子が実質的に配向方向に沿って配向されている間に、希釈剤からのポリマーの相分離を誘導することと、希釈剤の少なくとも一部分を除去して、磁気遮蔽フィルムを形成することと、を含み、粒子の少なくとも60%が、配向方向の5度以内に配向される、方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態において、希釈剤の少なくとも一部分を除去する工程は、中間磁気遮蔽フィルムをもたらし、本方法は、中間磁気遮蔽フィルム内の粒子の体積容量を増加させて、磁気遮蔽フィルムを形成する工程を更に含む。いくつかの実施形態において、体積容量は、ポリマーに振動エネルギー及び圧縮力を与えることによって増加される。いくつかの実施形態において、振動エネルギーは、超音波エネルギーである。いくつかの実施形態において、中間磁気遮蔽フィルム内の粒子の少なくとも50%は、配向方向の5~20度以内に配向される。実施形態のいくつかにおいて、中間磁気遮蔽フィルム内の粒子の少なくとも60%は、配向方向の5~20度以内に配向される。いくつかの実施形態において、中間磁気遮蔽フィルム内の粒子の少なくとも50%は、配向方向の5~15度以内に配向される。
【0039】
図に戻ると、図2Aは、図1に概説されるフィルム形成プロセス上に構築される、磁気アライメントを使用したフィルム形成及び高密度化プロセスのための主要な処理要素を説明する。いくつかの実施形態において、1つ以上の材料押出機50を使用して原材料を混合する。いくつかの実施形態において、原材料は、少なくとも約10g/molの平均分子量を有するポリマー、ポリマーと混和性の希釈剤(例えば、溶媒)、及び磁気透過性を有する複数の異方性形状の粒子を含み得る。本明細書で使用するとき、「混和性」とは、溶液を形成する全ての割合で(すなわち、任意の濃度で互いに完全に溶解する)物質の混合能を指す。いくつかの溶媒ポリマー系では、ポリマーが溶媒と混和性であるために熱が必要とされ得る。対照的に、かなりの割合で溶液を形成しない場合、物質は非混和性である。例えば、ブタノンは水に著しく可溶であるが、これらの2種の溶媒は、全ての割合で可溶ではないため、混和性ではない。場合によっては、成分は、より高い温度ではポリマーのための溶媒であるが、より低い温度ではポリマーのための溶媒ではない。高温では、ポリマー及び成分は、混和性ポリマー溶媒溶液を形成する。温度が低下すると、成分は、もはやポリマーのための溶媒ではなく、ポリマーは、次いで、成分から相分離して、ポリマーネットワークを形成し得る。相転移が温度の変化によって誘導される場合、相分離は、熱誘導相分離(TIPS)プロセスと呼ばれることがある。
【0040】
いくつかの実施形態において、2つの押出機50が使用され得る。例えば、原材料は、第1の押出機50内で混合されてもよく、次いで、第2の押出機内で更なる混合が行われて、最終希釈剤濃度を達成する。いくつかの実施形態において、2つの押出機50の代わりに、十分な混合を可能にする単一のより大きな押出機50が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、任意の適切な数の押出機が使用され得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、押出機50で混和性溶液が形成された後、溶液は、押出ダイ52に通過し、そこでスリットを通って平坦化された形態に押し出されてから、キャスティングドラム56を通過し、そこで急冷されてフィルムにキャストされる。いくつかの実施形態において、キャスティングドラム56を通過する前に、平坦化された溶液は、磁性部品54によって生成された磁場の間を通過し、成形フィルム内に含有される異方性形状の粒子は、実質的に同じ配向方向に沿って配向される(すなわち、整列される)。すなわち、粒子は同じ方向に整列するように磁場によって引っ張られる。いくつかの実施形態において、その同じ方向は、フィルムに実質的に平行であり得る(すなわち、フィルムがシステムを通過するときのフィルムの進行方向と整列する)。いくつかの実施形態において、同じ方向は、フィルムに実質的に直交し得る。いくつかの実施形態において、整列の方向(すなわち、同じ方向)は、任意の適切な方向にすることができる。いくつかの実施形態において、溶液は、以下のプロセス工程を通して溶液を運ぶキャリアフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、又はPETのライナー)55上に供給され得る。
【0042】
磁場がまだ適用されている間に、フィルムがキャスティングドラム56を通過するときに相分離が誘導され、ポリマーを希釈剤から分離し、整列した粒子を所定の位置にロックする。いくつかの実施形態において、フィルムが固化した後、インライン油抽出プロセス58で希釈剤を抽出することができる。いくつかの実施形態において、希釈剤は、別のオフラインシステムで抽出できる。いくつかの実施形態において、希釈剤がフィルムから抽出された後、フィルムは高密度化され得る(図示せず)。いくつかの実施形態において、高密度化は、振動エネルギー(例えば、超音波エネルギー)を使用して行われる。フィルムの高密度化は、フィルムの磁気飽和誘導特性を増加させる場合がある。
【0043】
図2Bは、図2Aに示すフィルム形成実施形態で使用される磁石アセンブリの拡大図である。磁石アセンブリは、図2Aの向きとは異なる向きで図2Bに示されていることに留意されたい。磁性部品54は、U字型のスキッドプレート57で装着される。スキッドプレート57及び磁性部品54の位置(標識された距離A、B、C、D、及びE)は、所望の磁場強度、配向、及び位置を生成して、フィルム内の粒子を適切に整列させるように計算される。フィルムは、下部スキッドプレート57(図2Bの左側に示されている)上に置かれ、したがって、このスキッドプレート57の位置は、その表面上を通過するフィルムが、生成された磁場内の最適な位置にあるように決定される(例えば、上部及び下部の磁性部品54からほぼ等距離にある)。
【0044】
いくつかの実施形態において、磁性部品54は、永久磁石であり得る。いくつかの実施形態において、磁性部品54は、電磁石であり得る。いくつかの実施形態において、北向きの北極構造(すなわち、図2Aに示されるように、上部磁石のN極は、下部磁石のN極に面している)を使用して、下部スキッドプレート57の位置に実質的に平面の磁場を生成することができる。他の実施形態において、南向きの南極構造が使用され得る。
【0045】
本明細書のフィルム形成プロセスの実施形態で使用される粒子は、異方性形状であり得る。すなわち、それらは、少なくとも1つの寸法でより長く、その後、それらは少なくとも1つの他の寸法にある。これにより、磁気モーメントを示す粒子を磁場の存在下で整列させることができる(すなわち、粒子の最長寸法を、適用された平面磁場と実質的に整列させることを可能にする)。図3A図3Dは、本明細書のフィルム形成及び高密度化プロセス実施形態で使用され得る粒子形状のいくつかの例を提供する。これらの実施例は、例示目的のためであり、限定することを意図するものではない。図3Aは、平坦なフレーク形状を呈する粒子を示す。いくつかの実施形態において、フレーク形状の粒子は、フレークの平面が磁場に平行であるように、平面磁場に整列されてもよい。図3Bは、円筒形状又はロッド形状を呈する粒子を示す。図3Cは、ディスク状の粒子を示し、図3Dは、球状の粒子を示す。本明細書の後続の図に示される画像は、図3Aに示されるものと同様のフレーク形状の粒子を使用する。しかしながら、同様の効果を有する任意の適切な異方性形状の粒子を使用してもよい。
【0046】
図4は、本明細書のフィルム形成方法の一実施形態から作製された磁気遮蔽フィルムの断面画像を提供する。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムは、磁気透過性を呈する(すなわち、磁場を支持することができる)多数の異方性形状の粒子60(例えば、フレーク)を含んでもよく、多数の空隙62によって分離されてもよい。いくつかの実施形態において、垂直に隣接する粒子60の対は、実質的に平行な細長ポリマー要素(すなわち、ポリマーのフィブリル)64によって互いに接続されてもよい。いくつかの実施形態において、細長ポリマー要素64は、実質的に垂直に配向されてもよい(すなわち、粒子60の配向方向に実質的に直交する)。各粒子60(図4の例示的な粒子60aなど)は、粒子の厚さ方向に沿った厚さHと、厚さ方向に直交する粒子の長さ方向に沿った最長寸法Lと、を有する。いくつかの実施形態において、L/Hの比は、約2以上、又は約4以上、又は約6以上であってもよい。いくつかの実施形態において、粒子の少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%の長さ方向は、同じ配向方向の5.5度以内に配向され得る(例えば、磁気遮蔽フィルムの長さ方向に実質的に平行に整列される)。
【0047】
図5A図8Cは、従来技術において市販のフィルムを用いて本明細書に記載される磁気フィルム形成プロセスの様々な実施形態によって作製されたフィルムを比較する情報を提供する。図5A図8Cのフィルムの各画像では、明るい色の線は粒子(例えば、磁気ダスト/フレーク)又は接続するポリマー要素を表し、暗い領域は粒子間の空隙を表す(これには、ポリマー樹脂などの結合剤が含まれる場合がある)。
【0048】
図5A図5Cは、従来技術の市販の磁気フィルムに対する、磁気アライメント及び超音波高密度化を使用した、本明細書の磁気フィルム形成プロセスの実施形態を用いて作製されたフィルムを比較する。図5Aは、先行技術のフィルム70aの画像を示し、図5Bは、本明細書の一実施形態によるプロセスを使用して作製されたフィルム70bの画像を示す。具体的には、図5Bは、超音波高密度化と組み合わせて磁気アライメントプロセスを使用して作製されたフィルムを示す。図5Aの従来技術のフィルム70aは、本明細書のプロセスの一実施形態を使用して作製された図5Bのフィルム70bよりもアライメントの程度はるかに小さく(フィルムと整列していない角度でより多くの明るい色の線)及び空隙(隣接する粒子間のより暗い領域)がより大きいことが分かる。図5Cは、従来技術のフィルム72に対する、磁気的に整列され、超音波により高密度化されたフィルム74の配向分布関数の比較を示す。この例示的なグラフから、本明細書に記載のプロセスによって作製されたフィルム74は、従来技術のフィルム72よりもはるかにタイトで高い分布グラフ(すなわち、粒子の割合が高いほど、より密接に整列する)を有することが分かる。
【0049】
図6A図6Cは、磁気アライメント及び超音波高密度化を使用する磁気フィルム形成プロセスの実施形態を使用して作製されたフィルム(フィルム80b)を、実質的に同じフィルム形成プロセスによって作製されたが磁気アライメントなしのフィルム(フィルム80a)と比較する。図6Aは、磁気アライメントが使用されなかったフィルム80aの画像を示し、図6Bは、磁気アライメントを使用するプロセスを使用して作製されたフィルム80bの画像を示す。フィルム80a及び80bの両方は、超音波高密度化を受けた。画像は、フィルム80a(磁気的に整列されていない)は、フィルム80b(磁気的に整列されている)よりもアライメントの程度が小さく、空隙がより大きいことを示した。図6Cは、磁気的に整列され高密度化されたフィルム84と磁気的に整列されず高密度化されたフィルム82との配向分布関数の比較を提示する。この例示的なグラフから、磁気アライメントを使用して作製されたフィルム84は、磁気アライメントを使用せずに作製されたフィルム82よりもはるかにタイトで高い分布グラフ(すなわち、粒子の割合が高いほど、より密接に整列する)を有することが分かる。
【0050】
図7A図7Cは、磁気アライメント及びカレンダー加工化を使用する磁気フィルム形成プロセスの実施形態を使用して作製されたフィルム(フィルム70b)を、実質的に同じフィルム形成プロセスによって作製されたが磁気アライメントなしのフィルム(フィルム70a)と比較する。図7A及び図7Bの画像を作製するために使用されるプロセスは、超音波高密度化の代わりに両方のフィルムを高密度化するためにカレンダー加工プロセスが使用されたことを除いて、図6A及び図6Bの画像を作製するために使用されるプロセスと同様である。図7Aは、磁気アライメントが使用されなかったフィルム90aの画像を示し、図7Bは、磁気アライメントを使用するプロセスを使用して作製されたフィルム90bの画像を示す。フィルム90a及び90bの両方は、カレンダー加工によって高密度化された。画像は、フィルム90a(磁気的に整列されていない)は、フィルム90b(磁気的に整列されている)よりもアライメントの程度が小さく、空隙がより大きいことを示した。図7Cは、磁気的に整列されず高密度化されたフィルム92に対して、磁気的に整列され高密度化されたフィルム94の配向分布関数の比較を示す。この例示的なグラフから、磁気アライメントを使用して作製されたフィルム94は、磁気アライメントを使用せずに作製されたフィルム92よりもはるかにタイトで高い分布グラフ(すなわち、粒子の割合が高いほど、より密接に整列する)を有することが分かる。
【0051】
最後に、図8A図8Cは、磁気アライメントを使用し、高密度化工程を使用しない磁気フィルム形成プロセスの実施形態を使用して作製されたフィルム(フィルム110b)を、実質的に同じフィルム形成プロセスによって作製されたが磁気アライメントなしのフィルム(フィルム110a)と比較する。図8Aは、磁気アライメントが使用されなかったフィルム110aの画像を示し、図8Bは、磁気アライメントを使用するプロセスを使用して作製されたフィルム110bの画像を示す。フィルム110a及び110bのいずれも高密度化を受けなかった。画像は、フィルム110a(磁気的に整列されていない)は、フィルム110b(磁気的に整列されている)よりもアライメントの程度が小さく、空隙がより大きいことを示した。図8Cは、磁気的に整列されず高密度化されなかったフィルム112に対して、磁気的に整列され高密度化されなかったフィルム114の配向分布関数の比較を示す。この例示的なグラフから、磁気アライメントを使用して作製されたフィルム114は、磁気アライメントを使用せずに作製されたフィルム112よりもはるかにタイトで高い分布グラフ(すなわち、粒子の割合が高いほど、より密接に整列する)を有することが分かる。
【0052】
図9は、本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムに関する相対透磁率対磁気飽和誘導値をプロットするグラフである。グラフでは、いくつかの従来技術の比較遮蔽フィルム120の測定値が、本明細書の1つ以上の実施形態による方法を使用して作製された磁気遮蔽フィルム126の測定値に対してプロットされている。本明細書に記載の方法を使用して作製された従来技術のフィルム結果120とフィルム126との間の差をより明確に描写するために、2つの境界線がグラフ上に提供されている。第1の境界122は、式(420.0-0.04M)によって定義され、ここで、Mは、ガウス単位の磁気遮蔽フィルムの磁気飽和値を定義する変数である。境界122は、従来技術のフィルム120の値を、本方法によって作製されたフィルム126の値から明確に分割する。すなわち、約1MHzの周波数で測定した場合、磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った磁気遮蔽フィルム126の相対透磁率の実数部は、(420.0-0.04M)よりも大きくなる。
【0053】
第2の境界124は、約1MHzで測定された相対透磁率が約130以上であり、磁気飽和誘導値が約6000ガウス以上である、グラフの右上隅の領域を画定する。従来技術のフィルム120について測定された値は、境界領域の外側にのみ現れる。本明細書の方法を使用して作製された磁気遮蔽フィルム126は、境界124によって境界が定められた領域内にのみ存在する。すなわち、磁気遮蔽フィルム126は、約6000ガウスを超える磁気飽和を呈することが示されており、フィルムのそれぞれの厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率の実数部μ’1及びμ’2を有し、μ’1は約5以下であり、μ’2は約150以上、又は約140以上、又は約130以上である。
【0054】
図10は、本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムに関する無線電力伝達効率対受信電力値をプロットするグラフである。本明細書の方法の実施形態を使用して作製されたフィルム135に対する、いくつかの従来技術の比較フィルム130について値がプロットされている。Y軸(グラフの左垂直縁部に沿った)は、フィルムについて測定された電力伝達効率値を表す。電力伝達効率は、比率Prx/Ptxに基づき、ここで、Ptxは、無線充電システムの送信アンテナによって送信される電力を表し、Prxは、受信アンテナによって受信される電力(すなわち、実際に伝達される電力)を表す。図10のグラフは、特にPrxのより高い値において、従来技術の比較フィルム130に対する、本明細書のフィルム135の受信電力Prxの各レベルでの優れた性能(より高い電力伝達効率値)を示す。示されているように、Prxの増加により、少なくとも1%の電力伝達効率(Prx/Ptx)の初期減少をもたらした後、Prx/Ptxの値は、Prxが少なくとも2倍に増加するようにPrxが更に増加すると、本明細書のフィルム135において約5%未満減少する場合がある。
【0055】
図11は、本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムを使用する電子デバイスの斜視図である。電子デバイス200(例えば、無線充電システムを備えたスマートフォン)は、送信デバイス300によって送信される電磁波305に含まれるエネルギーを実質的に減衰させる(例えば、エネルギーを吸収する、又はエネルギーを逆磁場で打ち消す)ことができる導電性プレート160を含み得、それにより、受信アンテナ164によって受信される電力の量を低減する。例えば、いくつかの実施形態において、導電性プレート160は、バッテリの金属部品などの電子デバイス200内の金属要素を表し得る。電磁波305は、導電性プレート160に渦電流を誘導させることができ、それらの渦電流は、導電性プレート160内にそれら自身の磁場を生成することができ、それは、送信デバイス300から伝達される電力の量をキャンセルし、少なくとも部分的に減少させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、電子デバイス200は、他の機能の中でもとりわけ、バッテリの充電に使用するために受信エネルギー(すなわち、受信電力)を調整することができる受信電子機器168を含むことができる。いくつかの実施形態において、電子デバイス200はまた、磁気遮蔽フィルム162、本明細書の一実施形態に従って作製されたフィルム162(すなわち、実質的に整列された異方性形状の粒子を含有するか又は含む遮蔽フィルム)を含み得る。いくつかの実施形態において、送信デバイス300(例えば、無線充電パッド)は、送信アンテナ300a及び送信機電子機器300bを含み得る。いくつかの実施形態において、磁気遮蔽フィルムの存在162は、電磁波305(すなわち、磁場)を受信アンテナ164に向けて集束させ、波305が導電性プレート160に到達するのを防ぎ(導電性プレート160における渦電流の誘導を防止する)、電力伝達効率を高める。図11に示すように、本明細書の実施形態に従って作製された磁気遮蔽フィルムは、より高い電力伝達効率を提供し、充電時間を短縮することが示されている。
【0057】
最後に、図12は、本明細書の一実施形態による、磁気遮蔽フィルムの製造方法のフロー図である。工程140で、本明細書に記載のポリマー、ポリマーと混和性の希釈剤(すなわち、溶媒)、及び磁気透過性を有する複数の異方性形状の粒子(例えば、図3A図3Dの粒子)が組み合わされる。工程142で、ポリマー、希釈剤、及び粒子が組み合わされて混和性溶液を形成し、工程144で混和性溶液から層が形成される(例えば、混和性溶液が押出ダイを通して押し出されてフィルム層を作製する)。工程146で、実質的に同じ配向方向に沿って粒子を配向する(すなわち、整列させる)ために、磁場が層に適用される(すなわち、粒子の磁気モーメントにより、粒子は、最長寸法が適用された磁場と整列するように配向される)。工程148で、磁場がまだ層に適用されている間に、希釈剤からのポリマーの相分離が誘導され、粒子がまだ整列している間に、粒子を所定の位置に「ロック」する。工程150で、希釈剤の少なくとも一部が抽出されて、最終磁気遮蔽フィルムを形成する。
【0058】
いくつかの実施形態において、希釈剤の抽出後又は抽出と同時に、追加の高密度化工程(図示せず)を適用することができる。この高密度化は、カレンダー加工又はフィルムへの超音波エネルギーの導入を含む、様々な方法で行うことができる。高密度化は、磁気遮蔽フィルム内の粒子の体積容量を更に増加させる手段として使用することができる。
【実施例
【0059】
一般的な押出プロセス:磁性複合体の連続ロールは、図2Aに示される装置を使用して調製された。押出機#1は、27mmの共回転ツインスクリューであった(Werner Pfleiderer(Dusseldorf,Germany)から商品名「ZSK-25」で入手)。押出機#1は、次の温度プロファイルで、200rpmで動作した:ゾーン1 93℃、ゾーン2 104℃、ゾーン3~6 193℃、ゾーン7及び8 210℃、ゾーン9 221℃。超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)を供給漏斗に供給した。鉱油は加熱されたゾーン2に注入され、粒子はゾーン4にサイドスタッフィングされた。溶融物は、加熱されたチューブを介して、25mmの共回転二軸スクリュー、押出機#2に運ばれた(Berstorff(Munich,Germany)から商品名「ZE25x48D」で入手)。押出機#2は、次の温度プロファイルで、225rpmで動作した:ゾーン1~12 177℃。鉱油は加熱されたゾーン4に注入された。ポリマー、粒子、及び鉱油の重量分析による供給速度を表1に示し、これは、図13に示す目標重量パーセント比と一致する。溶融組成物を均一に混合し、続いて177℃に維持された2インチ幅のスロットフィルムダイにポンプで送り、熱安定化された3ミルのポリエチレンテレフタレート(PET)ライナーにキャストし、次いで、図2Bの磁気アセンブリを介して運ばれ、その後、37℃のホイール温度に維持されたキャスティングホイールで、1.52m/分の速度で急冷された。
【0060】
【表1】
【0061】
最初のサンプルフィルムがフィルム内の粒子の磁気アライメントによる磁気透過性の増加を証明した後、透過性といくつかの要因との間の実験的関係を決定するために、新しい一連の計画実験が実行された。これらの要因には、溶媒充填率、フィルム内の粒子の重量パーセント、及び適用された平面磁場内でのフィルムの配置が含まれた(少なくとも、フィルムが磁石間を移動するときにフィルムが置かれる下部スキッドプレートの位置に基づく)。実験では、使用した溶媒は鉱油であり、フィルム内の粒子はセンダストSP-85粉末(フレーク状)であり、ポリマー樹脂は超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)GUR(登録商標)2126であった。表2は、本明細書で参照されている主要な材料特性及び使用されている測定方法を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実行された一連の実験では、各設計ポイントの総供給量は一定に保たれた。目的は、ダイのせん断に関連する効果からの配合による複雑な効果を最小限に抑えるために、同様のダイ出口速度(実際のライン速度は毎分4.7~5.5フィートの範囲であった)を有する同様の厚さのフィルムを製造することであった。この試験の結果を、図13図16にまとめる。
【0064】
実験計画(DOE)変数:
1.油充填
2.粒子(センダスト)対ポリマー比
3.下側(底部)磁気スキッドプレート位置
【0065】
実験のために、4枚のサンプルフィルムを作製し、測定した。図13は、各DOE変数に使用される値、及び4つの磁気遮蔽フィルムの例の測定された性能を要約した表である。例は、追加のプロセスの詳細を提供し、配合が磁場に応答する材料の能力にどのように影響するかを示した。フレーク(粒子)の配向を促進する配合は、その方向における増加した粒子のアラインメントを通じて平面内でより高い透過性を示す。特に断りのない限り、これらの例は、押出し及び超音波高密度化工程で同じプロセス条件を有した。
【0066】
4つの例の最も重要な配合の違いは次のとおりである。
・例1、2、及び4は磁気的に整列された。例3は磁気アライメントがなかった。
・例1及び2は、油含有量が最も高く、透過性が高い。例1と例2との主な違いは、スキッドプレートの設定である。例1のフィルムは、磁石の幾何学的中心に近づいた(すなわち、平面磁場の中心に近づいた)。例2よりわずかに高い透過性を有する。
・例3の油含有量は中程度で、磁気アライメントはない。透過性の値は低くなるが、例4ほど低くはない。
・例4は、磁気的に整列しているにもかかわらず、油含有量が最も低く、透過性が最も低い。例4のより低い透過性は、せん断流における立体相互作用など、フレークのアラインメントに影響を与える他の要因の影響によって引き起こされているようであり、これも濃度依存性を有する場合がある。
【0067】
図14図16は、4つの実験の結果の要約を示す。図14は、例示的な磁気遮蔽フィルムの磁気透過性に対する様々な設計パラメータの効果を示すパレート図である。横棒で示されている応答は、1MHzで測定された磁気透過性である。3つの変数(A-センダスト重量%、B-油充填率、C-スキッドプレート位置)の実際的な目的の範囲内で、油充填がはるかに重要な要因であった。より高い油充填はより高い透過性と関連しており、それはより良いフレークアラインメントと相関するであろう。
【0068】
図15は、例示的な磁気遮蔽フィルムの1MHzで測定された磁気透過性(Mu)に対する様々な設計パラメータの効果を示すキューブプロットである。立方体の幅(左から右)は、93%~96%までのセンダストの重量%の変化を表す。立方体の高さ(上から下)は、43%充填から60%充填までの鉱油の割合の変化を表す。立方体の深さ(立方体の前面から背面まで)は、-0.15~0インチまでの下部スキッドプレートの位置を表し(磁石間を通過するフィルムのおおよその位置に対応)、ここで、0インチは2つの磁石間の幾何学的中心に対応する。キューブプロットは、3つの要因のどの組み合わせが最高の透過性の値につながるかを特定するのに役立つ。測定された透過性の値は、立方体の頂点、中心点、及び立方体の右上端にある1つの追加の点(透過性の値225.2でラベル付けされる)の近くにある長方形のボックス内の数値として表示される。
【0069】
図16は、例示的な磁気遮蔽フィルムの磁気透過性に対する様々な設計パラメータの効果を示す、12の設計点(完全実施要因計画、2点+4つの中心点)の適合平均のプロットである。図16から、油充填が測定された磁気透過性に単一の最大効果を与えるのに対し、スキッドプレートの位置は最小効果を与えることがわかる。
【0070】
実施例フィルムの測定
以下の項は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、透過性、磁気モーメント、及び電力効率の測定が完了したかについて説明する。
【0071】
I.静的磁気特性:
磁気測定の前に、サンプルを6mmのディスクに切り出した。レイクショア振動試料型磁力計(VSM)7400-Sを使用して、磁気ヒステリシスループ(M-H曲線)を記録した。磁場Hをサンプルの平面に適用した。磁場範囲をH=±4kOeに設定し、飽和磁化4πMを完全飽和(|H|=4kOe)で測定した。磁場Hは、0.14Oeの工程で測定し、保磁力場Hcは、6つの点に基づいた線形フィッティングにより、4πM=0の近傍で特定した。
【0072】
II.動的磁気特性:
サンプルを外径18mm及び内径6mmのトロイドに切り出した。Keysightの磁性試験治具16454A及びインピーダンス測定器E4990Aを使用して、比透磁率μの実数部を測定した。Keysightの16454A用マニュアルに従って、データを解析した。
【0073】
III.無線電力伝達試験:
a.試験回路
無線電力伝達性能は、本明細書に記載される回路を使用して試験される。信号発生器を使用して、128kHzで清浄な正弦波信号を提供した。この信号はRF増幅器によって増幅され、TXマッチング回路に送られた。マッチング回路の電圧及び電流プローブは、TX(送信)コイルPtxによって受け入れられる電力を測定するために使用される。次いで、この電力の大部分は、RX(受信)コイル及びRXマッチング回路を介して負荷に転送される。負荷Prxが受け取る電力は、別の電圧及び電流プローブのセットを使用して測定される。
【0074】
b.部品の電気的仕様
・自立型TX及びRXコイルの自己共振は、128kHzの試験周波数の少なくとも20倍である必要がある。
・自立型TXコイルのAC抵抗は≦0.1Ωである必要があり、インダクタンスは約6μHである必要がある。
・磁気遮蔽材を使用しない自立型RXコイルのAC抵抗は≦0.3Ω以下である必要がある。
・TX及びRXの配線のAC抵抗は20mΩを超えてはならない。
・TX配線インダクタンスは、自立型コイルで測定されたインダクタンスの≦3%である必要があり、RX配線インダクタンスは≦2%である必要がある。自立型コイルは、コイルの片側にのみ磁性材料のシートがあり、コイルの外径の少なくとも3倍だけ任意の金属又は磁性要素から離れているコイルである。
・負荷のインピーダンスの実数部が7.48Ω±0.05Ωで、インピーダンスの虚数部が≦±0.01Ωであるように、負荷を選択又は変更する必要がある。
・信号発生器、増幅器、オシロスコープ、並びに電流及び電圧プローブは、テスト周波数、電流及び電圧振幅について製造元が指定した定格内にある必要がある、又は独立した当事者によって認定されている必要がある。
【0075】
c.Rxマッチング回路を調整する
・RXマッチング回路の容量は、テストの前に調整する必要がある。システムは事前に組み立てられている必要がある。TXコイルをマッチング回路から切り離し、インピーダンスアナライザを負荷ではなくRX側に接続する必要がある。インピーダンスアナライザは、製造元のマニュアルに従って、回路のRX側への接続点で校正する必要がある。RXコンデンサは、128kHzの試験周波数で直列LCR共振条件(合計測定インピーダンス|Z|の最小値)が得られるように選択する必要がある。試験周波数に正確に調整することは困難であるが、主要なガイダンスは、インピーダンスアナライザによって測定された位相がゼロから±5度以内であることである。
・様々な磁気遮蔽フィルムの試験に使用される様々なコンデンサによる電力効率の違いは、0.5%を超えてはならない。
【0076】
d.試験信号
・試験信号の周波数は、100Hz(すなわち、128kHz±100Hz)を予測して設定する必要がある。
・制御されていない加熱を最小限に抑えるために、試験信号は、94μsのパルス幅(電源オン段階)及び10ミリ秒のパルス周期(電源オフ段階)でパルス変調することができる。この場合、全てのTX及びRX電力測定は、電源がオンの段階にあるときに約16μ秒の測定ウィンドウ内で実行する必要がある。測定ウィンドウは、パワーパルスの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジから少なくとも16μ秒でなければならない。
・連続波信号を使用して測定を実行する場合は、システムコンポーネントを冷却して、TXコイル要素の温度が≦30℃になるようにする必要がある。TXコイルは、通常、フェライト材料を使用しているため、高温になると性能が大幅に低下する場合がある。また、RXチューニング回路のコンデンサは、温度がそれらの性能に与える影響が最小になるように選択する必要がある(すなわち、測定された電力効率の変化が≦0.5%になる)。
【0077】
e.システムの線形性
試験対象の材料を使用したRXコイルを除くシステム性能は、試験対象のRX電力範囲内の信号純度に最小限の影響を与える必要がある。RX及びTXプローブによって測定された試験信号の最高高調波は、メインの128kHz信号の振幅(電流又は電圧)の少なくとも10分の1である必要がある。これは、試験されたRX電力範囲内で線形応答を有する適切なRX及びTXコイル材料を選択することによって試験できる。
【0078】
f.電力測定
測定された電力は、
【数1】
として定義され、ここで、Im及びVmは電流と電圧の振幅であり、φIVは電流信号と電圧信号との位相差である。
【0079】
システムの合計電流及び電圧測定精度は、≦1%、及び位相≦1度である必要がある。平均化は、電力分解能≦0.3%を達成するために使用する必要がある。
【0080】
g.RX及びTXコイルの構造
・RX及びTXコイルは、絶縁電線で作製されたフラットコイルである必要がある。TXの場合は200μm以下の厚さの絶縁体であり、RXコイルの場合は50μm以下の厚さの絶縁体である。
・RX及びTXコイルは、円形である必要がある。
・TXコイルの内径及び外径(OD)は、RXコイルの内径及び外径の30%以内である必要がある。
・TXコイルには磁気遮蔽材を取り付ける必要がある。この材料は、後方の磁場を≧10倍低減する必要がある。磁気遮蔽材料は、TXコイルODの約20%の横方向寸法を有する平坦シートでなければならない。
・TXコイル及びRXコイルは、N個の巻数を含む必要があり、3≦N≦10である。
・RXコイル磁気遮蔽シートは、RXコイルODの約20%の横方向寸法を有しなければならない。磁気材料シートは、RX巻線上に直接存在するべきである。厚さt≧0.5mmのアルミニウムプレートは、厚さ≦10μmの接着剤を介して磁気遮蔽シートに取り付けなければならない。アルミニウムプレートの横方向寸法は、磁気遮蔽シートのようなものでなければならない。最終アセンブリを以下に概略的に示す。
・RX及びTXコイル軸は、測定された電力効率が≦0.3%で変化しないように、横方向に整列する必要がある。
・RXコイル及びTXコイルは、コイル軸に沿って1.6mm離す必要がある。
【0081】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、これが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。約特定の値として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、約1の値を有する量とは、当該量が0.9~1.1の値を有することを意味し、当該値が1であり得ることを意味する。
【0082】
「実質的に(substantially)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。「実質的に等しい(substantially equal)」の使用が、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「実質的に等しい」は、ほぼ(about)が上記のとおりであるときには、ほぼ等しいことを意味する。「実質的に平行(substantially parallel)」の使用が、これが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「実質的に平行」は、平行の30度以内を意味する。互いに実質的に平行として記載されている方向又は表面は、いくつかの実施形態において、平行の20度以内、若しくは10度以内であり得、又は平行若しくは名目上平行であり得る。「実質的に位置合わせされる(substantially aligned)」の使用が、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「実質的に位置合わせされる」は、位置合わせされる対象の幅の20%以内で位置合わせされることを意味する。実質的に位置合わせされると記載される対象は、いくつかの実施形態において、位置合わせされる対象の幅の10%以内又は5%以内で位置合わせされてもよい。
【0083】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先される。
【0084】
図中の要素についての説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されると理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
対向する第1及び第2の主面と、それらの間に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、各粒子は、磁気透過性、前記粒子の厚さ方向に沿った厚さH、前記厚さ方向に直交する前記粒子の長さ方向に沿った最長寸法L、2以上のL/Hを有し、前記粒子は、それらの間に複数の空隙を画定し、前記粒子の少なくとも60%の前記長さ方向は、同じ配向方向の5.5度以内に配向されている、磁気遮蔽フィルム。
(付記2)
前記粒子の少なくとも60%の前記長さ方向が、前記同じ配向方向の5度以内に配向されている、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記3)
前記粒子の少なくとも60%の前記長さ方向が、前記同じ配向方向の4.5度以内に配向されている、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記4)
前記粒子の少なくとも60%の前記長さ方向が、前記同じ配向方向の4度以内に配向されている、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記5)
前記複数の空隙のうちの前記空隙の少なくとも一部が、相互接続されている、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記6)
前記第1及び第2の主面のうちの少なくとも1つに実質的に直交する垂直方向における前記磁気遮蔽フィルムの断面において、前記磁気遮蔽フィルムは、複数対の垂直に隣接する粒子を含み、複数の実質的に平行な細長ポリマー要素は、前記対の垂直に隣接する粒子のそれぞれにおいて前記粒子を接続する、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記7)
前記対の垂直に隣接する粒子のそれぞれにおいて前記粒子を接続する前記実質的に平行な細長ポリマー要素が、前記垂直方向に沿って実質的に配向されている、付記6に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記8)
前記細長ポリマー要素が、ポリエチレンを含む、付記6に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記9)
前記配向方向が、前記第1及び第2の主面に実質的に平行である、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記10)
前記粒子が、ロッド状である、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記11)
前記粒子が、ディスク状である、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記12)
前記粒子が、鉄、ケイ素、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、コバルト、及びモリブデンのうちの1つ以上を含む、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記13)
前記粒子が、その最外面に磁性コーティングを含む、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記14)
前記コーティングされていない粒子が、磁気透過性を有さない、付記13に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記15)
約1MHzの周波数でμ’2/μ’1≧100である、前記フィルムのそれぞれ厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部を有する、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記16)
約1MHzで、μ’1≦5である、付記15に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記17)
前記粒子が、約0.5ミクロン~約5ミクロンの範囲の平均厚さ、及び約20ミクロン~約200ミクロンの範囲の平均最長寸法を有する、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記18)
前記粒子が、熱伝導性である、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記19)
前記磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って、少なくとも0.15W/(m・K)、又は0.2W/(m・K)、又は0.25W/(m・K)の平均熱伝導率を有する、付記15に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記20)
前記磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿って、少なくとも5W/(m・K)、又は7W/(m・K)、又は9W/(m・K)、又は10W/(m・K)、又は10.6W/(m・K)の平均熱伝導率を有する、付記15に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記21)
前記粒子が、より低い熱伝導性の内側部分と、より高い熱伝導性の外側部分と、を含む、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記22)
前記粒子が、その最外面に熱伝導性コーティングを含む、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記23)
前記第1及び第2の主面との間に配設された樹脂を更に含み、前記複数の粒子は、前記樹脂中に分散し、前記樹脂は、約10 g/molを超える数平均分子量を有する、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記24)
前記樹脂の前記数平均分子量が、約10 g/mol未満である、付記23に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記25)
前記複数の粒子中の前記粒子が、前記第1及び第2の主面との間に、約50%を超える体積容量で分散される、付記1に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記26)
約10 g/モルを超える数平均分子量を有する樹脂と、約50%、又は55%、又は60%、又は65%を超える体積容量でその中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、約1MHzの周波数で、前記フィルムが、
約6000ガウスよりも大きい磁気飽和と、
μ’1≦5及びμ’2≧150である、前記フィルムのそれぞれの厚さ方向及び面内方向に沿った相対透磁率μ’1及びμ’2の実数部と、を有する、磁気遮蔽フィルム。
(付記27)
前記異方性形状の粒子の少なくとも一部が、磁場に応答して磁気モーメントを発生させるように構成される、付記26に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記28)
前記異方性形状の粒子の少なくとも一部が、永久磁気モーメントを含む、付記26に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記29)
前記異方性形状の粒子の少なくとも一部が、磁気的に導電性であり、電気絶縁性である、付記26に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記30)
前記樹脂が、前記粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含む、付記26に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記31)
電子デバイスであって、
第1の周波数帯域の電磁波に含まれるエネルギーを実質的に減衰させるように構成されたプレートと、
前記第1の周波数帯域内の前記デバイス内に配置されたバッテリを無線充電するための、前記プレート上に配置された受信アンテナと、
前記プレートと前記受信アンテナとの間に配置され、約50%を超える体積容量で樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子を含む磁気遮蔽フィルムであって、前記粒子が、実質的に同じ方向に沿って配向し、それらの間に複数の空隙を画定する、磁気遮蔽フィルムと、を備え、
これにより、前記デバイスが、前記第1の周波数帯域の電力Ptxを前記受信アンテナに送信する送信アンテナに隣接して配置されると、前記受信アンテナが、前記送信アンテナから電力Prxを受信し、Prxの増加により、少なくとも1%のPrx/Ptxの初期減少をもたらした後、Prxが更に増加すると、Prx/Ptxの減少は約5%未満であるため、Prxは少なくとも2倍に増加する、電子デバイス。
(付記32)
少なくとも1%のPrx/Ptxが前記初期減少をもたらすPrxの前記増加の場合、Prxが、少なくとも5ワットの初期値から増加する、付記31に記載の電子デバイス。
(付記33)
前記複数の空隙のうちの前記空隙の少なくとも一部が、相互接続されている、付記31に記載の電子デバイス。
(付記34)
前記プレートが、主に前記エネルギーを吸収することにより、前記第1の周波数帯域の電磁波に含まれる前記エネルギーを実質的に減衰させるように構成される、付記31に記載の電子デバイス。
(付記35)
樹脂と、約50%を超える体積容量で前記樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、前記樹脂が、前記粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み、これにより、約1MHzの周波数で、前記磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った前記磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部は、(420.0-0.04M)を超え、Mは、ガウス単位の前記磁気遮蔽フィルムの磁気飽和である、磁気遮蔽フィルム。
(付記36)
前記粒子が、約10を超える磁気透過性を有する、付記35に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記37)
前記粒子が、約50を超える磁気透過性を有する、付記35に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記38)
前記粒子が、約100を超える磁気透過性を有する、付記35に記載の磁気遮蔽フィルム。
(付記39)
樹脂と、約50%を超える体積容量で前記樹脂中に分散された複数の異方性形状の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、前記樹脂は、前記粒子を相互接続する複数の繊維状の概ね平行なポリマー要素を含み、これにより、約1MHzの周波数で、前記磁気遮蔽フィルムの面内方向に沿った前記磁気遮蔽フィルムの相対透磁率の実数部は、約130を超え、前記磁気遮蔽フィルムの磁気飽和は、約6,000ガウスを超える、磁気遮蔽フィルム。
(付記40)
ポリマー材料と、その中に分散された複数の粒子と、を含む、磁気遮蔽フィルムであって、前記粒子は、磁気透過性を有し、前記ポリマー材料は、前記磁気遮蔽フィルムの厚さ方向に沿って概ね配向され、前記複数の粒子を相互接続する複数の実質的に平行な繊維状の要素を含む、磁気遮蔽フィルム。
(付記41)
磁気遮蔽フィルムを製造する方法であって、
約10 g/molを超える数平均分子量を有するポリマー、前記ポリマーと混和性の希釈剤、及び磁気透過性を有する複数の異方性形状の粒子を提供することと、
前記ポリマー、前記希釈剤、及び前記複数の異方性形状の粒子を混合して、混和性溶液を形成することと、
前記混和性溶液の層を形成することと、
磁場を前記層に適用して、実質的に同じ配向方向に沿って前記粒子を配向することと、
前記磁場が前記層に適用され、前記粒子が実質的に前記配向方向に沿って配向されている間に、前記希釈剤からの前記ポリマーの相分離を誘導することと、
前記希釈剤の少なくとも一部分を除去して、磁気遮蔽フィルムを形成することと、を含み、前記粒子の少なくとも60%が、前記配向方向の5度以内に配向される、方法。
(付記42)
前記希釈剤の少なくとも一部分を除去する工程が、中間磁気遮蔽フィルムをもたらし、前記方法が、前記中間磁気遮蔽フィルム内の前記粒子の体積容量を増加させて、前記磁気遮蔽フィルムを形成する工程を更に含む、付記41に記載の方法。
(付記43)
前記体積容量が、前記ポリマーに振動エネルギー及び圧縮力を与えることによって増加される、付記42に記載の方法。
(付記44)
前記振動エネルギーが、超音波エネルギーを含む、付記43に記載の方法。
(付記45)
前記中間磁気遮蔽フィルム内の前記粒子の少なくとも50%が、前記配向方向の5~20度以内に配向される、付記42に記載の方法。
(付記46)
前記中間磁気遮蔽フィルム内の前記粒子の少なくとも60%が、前記配向方向の5~20度以内に配向される、付記42に記載の方法。
(付記47)
前記中間磁気遮蔽フィルム内の前記粒子の少なくとも50%が、前記配向方向の5~15度以内に配向される、付記42に記載の方法。
(付記48)
前記ポリマーの前記数平均分子量が、約10 g/molを超える、付記41に記載の方法。
(付記49)
前記ポリマーの前記数平均分子量が、約10 g/molを超える、付記41に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16