(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20250114BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20250114BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20250114BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20250114BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20250114BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20250114BHJP
B62J 6/026 20200101ALI20250114BHJP
B62J 45/42 20200101ALI20250114BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250114BHJP
F21W 102/145 20180101ALN20250114BHJP
F21W 102/165 20180101ALN20250114BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250114BHJP
【FI】
B60Q1/14 B
F21S41/143
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/663
F21S45/00
B62J6/026
B62J45/42
B60R11/02 Z
F21W102:145
F21W102:165
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021570709
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047744
(87)【国際公開番号】W WO2021145157
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020005232
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 宇司
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168249(WO,A1)
【文献】特開2015-123840(JP,A)
【文献】特開2019-048554(JP,A)
【文献】特開平11-157420(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045007(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174208(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/140402(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/099637(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21S 41/143
F21S 41/148
F21S 41/151
F21S 41/663
F21S 45/00
B62J 6/026
B62J 45/42
B60R 11/02
F21W 102/145
F21W 102/165
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
光源ユニットと、
前記車両の外部の情報を検出するセンサと、
前記光源ユニットおよび前記センサを収容するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられる透過カバーと、
前記透過カバーにおいて少なくとも前記センサに対応する領域を洗浄媒体により洗浄可能な少なくとも1つのノズルを有するクリーナと、
前記センサを制御する制御部と、
を備え、
前記車両用灯具は、前記車体の左右方向の中央部に配置され、
前記センサは、前記ハウジング内において前記左右方向の中央部に配置され、
前記制御部は、
前記センサにより検知された前記車両の外部の対象物の位置に応じて、前記光源ユニットから照射される光により形成される配光パターンを調整するモードを実行し、
前記モードの実行中に、前記洗浄媒体により前記透過カバーに付着した汚れが除去されないと判断された場合には、前記モードを停止するとともに、前記モードの停止を前記車両の乗員に報知する、ように構成されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記光源ユニットは、単一の光源ユニットから構成され、
前記センサは、上下方向において前記単一の光源ユニットと並列される、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源ユニットは、前記左右方向において並列された一対の光源ユニットから構成され、
前記センサは、前記一対の光源ユニットのそれぞれから等しい距離に配置される、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記クリーナは、空気の連続送風が可能なエアブロアから構成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記センサは、前記車両の外部の撮像画像を取得するカメラであって、
前記制御部は、前記車体の傾き状態に応じて前記カメラにより取得された前記撮像画像を補正し、補正された前記撮像画像に基づいて検知された前記車両の外部の対象物の位置に応じて、前記光源ユニットから照射される光により形成される配光パターンを調整するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
光源ユニットと、
前記車両の外部の情報を検出するセンサと、
車両前方側に開口部を有
するとともに前記光源ユニットおよび前記センサを収容するランプボディ
と、前記開口部を覆うように取り付けられる透明カバーと、を有するハウジングと、
前記センサを制御する制御部と、を備え、
前記車両用灯具は、前記車体の左右方向の中央部に配置され、
前記センサは、前記ハウジング内において前記左右方向の中央部に配置され、
前記ランプボディは、前記開口部を有するボディ本体部と、前記ボディ本体部の下部に着脱可能に設けられているボディ着脱部とを有しており、
前記制御部は、前記ボディ着脱部内に収容されている、車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ハイビーム・ロービーム光源を備えた自動二輪車用の前照灯を開示している。特許文献2は、四輪車用の前照灯の灯室内にカメラが配置された構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際出願公報WO2019/039051
【文献】日本国特開2013-164913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動二輪車用前照灯の灯室内にカメラ等のセンサを搭載する場合の配置構成には改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、自動二輪車等に搭載される車両用灯具であって、灯具内に内蔵されたセンサの効率的なレイアウトが可能であって、且つ、センサの検出精度を維持可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る車両用灯具は、
車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
光源ユニットと、
前記車両の外部の情報を検出するセンサと、
前記光源ユニットおよび前記センサを収容するハウジングと、
を備え、
前記車両用灯具は、前記車体の左右方向の中央部に配置され、
前記センサは、前記ハウジング内において灯具左右方向の中央部に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自動二輪車等に搭載される車両用灯具であって、灯具内に内蔵されたセンサの効率的なレイアウトが可能であって、且つ、センサの検出精度を維持可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るヘッドランプ(車両用灯具)を備えた車両の斜視図である。
【
図3】
図3は、ヘッドランプの構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、ヘッドランプの構成を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、ヘッドランプが備える光源ユニットの構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、光源ユニットによって形成される配光パターンの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、クリーナの一例であるエアブロアの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るヘッドランプの構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、
図1に示す車両(自動二輪車100)について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。
【0010】
図1は、本実施形態における車両の一例として自動二輪車100を示している。自動二輪車100は、車体を傾けることで道路のコーナー(カーブ)に沿って走行することが可能な車両である。本実施形態の車両は、この自動二輪車100のように、車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両であればよく、車輪の数は限定されない。したがって、例えば自動三輪車、自動四輪車などであっても、この自動二輪車100と同様に走行可能であれば本実施形態の車両に含まれる。
【0011】
図1に示すように、自動二輪車100の前部には、本実施形態に係るヘッドランプ1(車両用灯具の一例)が搭載されている。ヘッドランプ1は、車両前方を照射可能な灯具であり、車体の左右方向における中央部に配置されている。なお、「車体の左右方向における中央部」とは、自動二輪車100の車体の完全な中心線上にヘッドランプ1の中心線が位置されることに限定されるものではなく、ヘッドランプ1の中心線が車体の中心線から車体幅の3割程度オフセットしていてもよい。
ヘッドランプ1は、光源ユニット2と、外部センサ3と、クリーナ4と、ハウジング10とを備えている。
【0012】
図2は、ヘッドランプ1のブロック図を示す。
図2に示すように、ヘッドランプ1は、光源ユニット2、外部センサ3、およびクリーナ4の動作を制御する灯具制御部5を備えている。灯具制御部5には、光源ユニット2、外部センサ3、およびクリーナ4が接続されている。外部センサ3は、画像処理部6を介して灯具制御部5に接続されている。また、灯具制御部5には、自動二輪車100の傾き状態を検知するバンク角センサ7と、自動二輪車100の速度を検知する速度センサ8等が接続されている。
【0013】
光源ユニット2は、自動二輪車100の走行方向である前方に向けて所定の配光パターンを照射可能である。光源ユニット2は、例えば、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンを照射可能に構成されている。光源ユニット2の詳しい構成については
図3から
図6で後述する。
【0014】
外部センサ3は、自動二輪車100の周辺環境、例えば、障害物、他車(前走車、対向車)、歩行者、道路形状、交通標識等を含む自車両の外部の情報を取得することが可能なセンサである。外部センサ3は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)、レーダ等の少なくとも一つを含む。
【0015】
カメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラは、可視光を検出するカメラや、赤外線を検出する赤外線カメラである。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得するセンサである。レーダは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。
【0016】
外部センサ3に接続されている画像処理部6は、外部センサ3で取得されたデータを解析して、例えば前照灯が点灯状態にある対向車等の存在を判定する。また、画像処理部6は、例えば外部センサ3で取得された画像をバンク角センサ7の情報にしたがって所定の画像に補正処理する。なお、本実施形態では画像処理部6を灯具制御部5から独立した構成としているが、例えば、画像処理部6を灯具制御部5に含める構成としてもよい。あるいは、画像処理部6を外部センサ3に含める構成としてもよい。
【0017】
クリーナ4は、例えば空気、洗浄液等の洗浄媒体を対象物に向けて噴射可能に構成されている。クリーナ4は、洗浄媒体を噴射することにより、ヘッドランプ1のハウジング10を洗浄可能である。クリーナ4は、ハウジング10において少なくとも外部センサ3に対応する領域を洗浄可能である。クリーナ4の詳しい構成については
図3および
図7で後述する。
【0018】
バンク角センサ7は、自動二輪車100の車体が鉛直線に対して左右に傾斜したときの傾斜角を検知することが可能なセンサである。バンク角センサ7は、例えばジャイロセンサで構成されている。なお、車体の傾斜角は、外部センサ3の一例としてのカメラで撮影した画像に基づいて算出するようにしてもよい。
【0019】
外部センサ3、バンク角センサ7および速度センサ8によって検知された各情報は、灯具制御部5へ送信される。灯具制御部5は、外部センサ3、バンク角センサ7および速度センサ8から送信されてきた情報に基づいて、光源ユニット2およびクリーナ4の動作を制御する。例えば、灯具制御部5は、各センサの検知情報に基づいて光源ユニット2を制御し、車両前方に形成される配光パターン(ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターン)を調整することが可能である。また、灯具制御部5は、各センサの検知情報に基づいてクリーナ4を制御し、洗浄媒体の噴射によりヘッドランプ1の前面を洗浄することが可能である。
【0020】
図3は、ヘッドランプ1の構成を示す垂直断面図である。
図3に示すように、ヘッドランプ1は、例えば、自動二輪車100のフロントカウル102に搭載される。ヘッドランプ1は、ランプボディ11と透過カバー12とにより構成されるハウジング10を有している。ハウジング10の内部には、光源ユニット2、外部センサ3、灯具制御部5、および画像処理部6等が収容されている。ハウジング10の外部には、クリーナ4が取り付けられている。
【0021】
ランプボディ11は、車両前方側に開口部を有する箱状の収納部材である。透過カバー12は、ランプボディ11の開口部を覆うように取り付けられる透明のカバーである。ランプボディ11は、上記開口部を有するボディ本体部11aと、当該ボディ本体部11aの下部に着脱可能に設けられているボディ着脱部11bとを有している。
【0022】
光源ユニット2は、ハウジング10内において上下方向における略中央部に配置されている。光源ユニット2は、投影レンズ22と、発光素子が搭載された発光ユニット24と、投影レンズ22および発光ユニット24を保持するホルダ26とを有している。発光ユニット24にはヒートシンク28が取り付けられている。投影レンズ22は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置されている。投影レンズ22は、ホルダ26の前端側に保持されている。発光ユニット24は、ホルダ26の後端側に保持されている。発光ユニット24は、灯具制御部5に電気的に接続されている。ホルダ26は、図示しない支持部材を介してランプボディ11に取り付けられている。
【0023】
外部センサ3は、ハウジング10内において上下方向における上部に配置されている。すなわち、外部センサ3は、ハウジング10内において光源ユニット2よりも上方に配置されている。外部センサ3は、自動二輪車100の走行方向である前方を向くように取り付けられている。例えば、外部センサ3は、前後方向に延びる光源ユニット2の光軸Axに沿う向きに取り付けられている。
【0024】
灯具制御部5は、ランプボディ11のボディ着脱部11b内に収容されている。灯具制御部5は、透過カバー12をボディ本体部11aに組み付けたままの状態で、ボディ着脱部11bをボディ本体部11aから取り外すことにより、ハウジング10内から外部に取り出すことができるように構成されている。灯具制御部5は、光源ユニット2、外部センサ3、クリーナ4、バンク角センサ7、速度センサ8に接続されるとともに、自動二輪車100の走行を制御する車両制御部101に接続されている。
【0025】
クリーナ4は、ハウジング10の上下方向において外部センサ3よりも上方に配置されている。具体的には、クリーナ4は、ハウジング10の外側において透過カバー12の上部とフロントカウル102との間に配置されている。これにより、クリーナ4は、自動二輪車100の意匠部品であるフロントカウル102によって隠されるため、見栄えが良い。クリーナ4は、透過カバー12において外部センサ3に対応する領域(洗浄対象面)に向けて洗浄媒体を噴射可能に設けられている。例えば、クリーナ4は、少なくとも外部センサ3の前方領域を覆う透過カバー12のセンサ領域12aを洗浄可能である。
【0026】
クリーナ4は、例えば、洗浄対象物に異物が付着することを防止することが可能なエアブロアで構成されている。エアブロアは、透過カバー12などの洗浄対象物に対して、所定風速または所定風量で連続的に風(空気)を吹き付け、透過カバー12の表層に常に一定の風が流れるようにすることで、透過カバー12に異物が付着することを防止するエアカーテン機能を実現する装置である。クリーナ4は、透過カバー12に向けて風を送り出すことが可能な少なくとも1つのノズル4aを有している。クリーナ4は、当該クリーナ4の駆動源であるモータ43を介して灯具制御部5に接続されている。クリーナ4は、例えば、透過カバー12のセンサ領域12aに異物が付着することを防止することが可能である。なお、自動二輪車100は洗浄液のタンクを車体に搭載することが難しいため、洗浄媒体として空気を用いたエアブロア等を洗浄機構として採用することが望ましい。ただし、洗浄液のタンクを車体に搭載できる場合には、洗浄媒体として洗浄液を用いたクリーナを採用してもよい。
【0027】
図4は、ヘッドランプ1の構成を模式的に示す正面図である。
図4に示すように、光源ユニット2は、ハウジング10内においてヘッドランプ1の左右方向における中央部に配置されている。外部センサ3は、ハウジング10内においてヘッドランプ1の左右方向における中央部に配置されている。すなわち、外部センサ3は、ヘッドランプ1の上下方向において光源ユニット2と並列して配置されている。本例において外部センサ3は、単一の光源ユニット2の直上に配置されている。クリーナ4のノズル4aは、ハウジング10外においてヘッドランプ1の左右方向における中央部に配置されている。すなわち、クリーナ4は、ヘッドランプ1の上下方向において外部センサ3と並列して配置されている。本例においてクリーナ4は、外部センサ3の直上に配置されている。
【0028】
図5は、光源ユニット2の一例を示す断面図である。
図5に示すように、光源ユニット2は、プロジェクタ型のユニットとして構成されている。光源ユニット2は、車両前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ22と、投影レンズ22の後方に設けられた発光ユニット24とを備えている。
【0029】
発光ユニット24は、投影レンズ22の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源としての発光素子31と、この発光素子31を上方側から覆うように配置され、該発光素子31からの光を投影レンズ22へ向けて反射させるリフレクタ32とを有している。また、発光ユニット24は、ロービーム配光パターンを形成するために投影レンズ22へ向かう発光素子31からの光の一部を遮光するシェード33を有している。さらに、発光ユニット24は、ロービーム配光パターンに対してハイビーム用の付加配光パターンを付加的に形成するために投影レンズ22に光を入射させる複数の発光素子34を有している。
【0030】
投影レンズ22は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するように構成されている。投影レンズ22は、その外周フランジ部においてホルダ26に支持されている。
【0031】
発光素子31は、例えば、白色発光ダイオードであって、その発光面を光軸Axを含む水平面上に位置させた状態で上向きに配置され、ベース部材35に支持されている。発光素子31の発光面は、水平面上で上向きに限らず、水平面に対して傾けて配置してもよい。リフレクタ32もベース部材35に支持されている。ベース部材35は、ホルダ26に支持されている。
【0032】
シェード33は、リフレクタ32で反射した発光素子31からの光の一部を遮光するとともに、遮光した光を上向きに反射させる上向き反射面33aを有している。シェード33は、この上向き反射面33aで反射した光を投影レンズ22に入射させて、これを下向き光として投影レンズ22から出射させるように構成されている。シェード33はベース部材35と一体で形成されている。反射面33aはベース部材35の上面にアルミニウム蒸着等による鏡面処理を施すことにより形成されている。
【0033】
複数の発光素子34は、投影レンズ22の後側焦点Fよりも下方において左右方向に並列に配置されており、灯具制御部5によって個別に点灯し得るように構成されている。本例においては、図示は省略するが、例えば11個の発光素子34が、光軸Axの真下の位置を中心にして左右方向に等間隔で配置されている。各発光素子34は白色発光ダイオードであって、縦長矩形状の発光面34aを有している。各発光素子34は、その発光面34aを灯具正面方向へ向けた状態で、ベース部材35の前壁面35aに支持されている。ベース部材35の前壁面35aの上端部には、各発光素子34からの出射光の一部を前方へ向けて反射させる傾斜面としての反射面35bが形成されている。
【0034】
図6は、光源ユニット2によって形成されるハイビーム配光パターンPHを示す図である。ハイビーム配光パターンPHは、ロービーム配光パターンPLと付加配光パターンPAとの合成配光パターンとして形成されている。なお、
図6は、光源ユニット2から前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム配光パターンPHを示す。
【0035】
ロービーム配光パターンPLは、発光素子31からの光をリフレクタ32の反射面32aおよびシェード33の反射面33aで反射することにより、投影レンズ22の後側焦点面上に形成された光源像を、投影レンズ22により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成される。
【0036】
付加配光パターンPAは、11個の部分配光パターンPaの合成配光パターンとして形成される。各部分配光パターンPaは、各発光素子34からの出射光によって投影レンズ22の後側焦点面上に形成された該発光素子34の光源像の反転投影像として形成される配光パターンである。ハイビーム配光パターンPHにおいては、付加配光パターンPAがロービーム配光パターンPLの上方に拡がるように横長の配光パターンとして追加形成される。
【0037】
図7は、クリーナ4の一例であるエアブロアの分解斜視図である。
図7に示すように、クリーナ4は、クリーナハウジング41と、羽根車42と、モータ43と、フレーム44と、モータケース45と、を備えている。
【0038】
羽根車42は、モータ43により回転軸線Bxの回りに回転可能である。羽根車42は、円板状のプレート42aと、複数の羽根42bと、を有している。複数の羽根42bのそれぞれは、羽根車42の径方向に延びるように設けられるとともに、プレート42aに環状をなすように配置されている。
【0039】
クリーナハウジング41は、羽根車42を覆っている。クリーナハウジング41は、羽根車42の回転軸線Bxの一方側と他方側とに分割されている。クリーナハウジング41は、その内部に略ドーナツ状の内部空間を有している。羽根車42は、この内部空間に収容されている。クリーナハウジング41は、空気を吸い込むための吸込み口41aと、吸い込んだ空気を吹き出すための吹出し口41bと、を有している。吸込み口41aは、羽根車42の複数の羽根42bに対応した位置において回転軸線Bx方向に開口している。吹出し口41bは、羽根車42の回転軸線Bxに対して交差する方向に開口している。
【0040】
羽根車42が回転すると、吸込み口41aから吸い込まれた空気が羽根42bによってクリーナハウジング41の内周面41cに押し付けられる。押し付けられた空気は、クリーナハウジング41の内周面41cに沿って案内され、吹出し口41bまで導かれる。吹出し口41bまで導かれた空気は、吹出し口41bからクリーナ4の外部へ送り出される。つまり、羽根車42の回転軸線Bx方向から吸い込まれた空気は、回転する羽根42bによって径方向に押し出されてクリーナハウジング41の内周面41cに押し付けられ、径方向に開口した吹出し口41bからクリーナ4の外部へ送り出される。吹出し口41bから外部へ送り出された空気は、吹出し口41bに取り付けられているノズル4a(
図3参照)を介して、透過カバー12のセンサ領域12aへ向けて吹き付けられる。複数の羽根42bを有する羽根車42が回転することにより、空気(風)が連続的に透過カバー12のセンサ領域12aへ向けて吹き付けられる。透過カバー12のセンサ領域12aに吹き付けられた空気はセンサ領域12aに沿って流れる。ところで、センサ領域12aに近づいた埃はセンサ領域12aに沿って流れる気流に乗って気流とともにセンサ領域12a以外に運び去られて、センサ領域12aに付着しない。このようにして、クリーナ4は、少なくともセンサ領域12aに埃等が付着することを防止している。
【0041】
なお、上述した例以外に、クリーナ4の送風機構として、プロペラファン、シロッコファン、ターボファン、斜流ファンなどを採用してもよい。これらの非容積式送風手段は、比較的大きな風量が得られやすい。また、クリーナ4の送風機構として、レシプロ式、ねじ式、ルーツ式、ベーン式などの、容積式のファンを採用してもよい。また、クリーナ4として、ピストン式の高圧空気生成部を備え、間欠的に空気を噴射する構成を採用してもよい。
【0042】
(動作例1)
次に、自動二輪車100におけるヘッドランプ1の動作例について説明する。
例えば、自動二輪車100の車体が直進状態にある場合、すなわち、自動二輪車100が路面に対して車体を垂直にした状態で走行している場合には、ヘッドランプ1の動作は以下のようになる。
ヘッドランプ1の灯具制御部5は、外部センサ3として搭載されるカメラによって取得された撮像画像データを解析して、例えば前照灯が点灯状態にある対向車などが存在するか否かを判定する。灯具制御部5は、水平方向に所定の間隔で存在する2つの光点を検出することにより、その光点を対向車の前照灯として認識する。そのような対向車が存在する場合、灯具制御部5は、解析して得られた前照灯の位置に基づいてその対向車の位置を特定する。灯具制御部5は、特定した対向車の位置に基づいて、
図6に示す付加配光パターンPAのいずれかの部分配光パターンPaに当該特定した対向車が存在するか否かを判定する。いずれかの部分配光パターンPaに対向車が存在する場合、灯具制御部5は、その部分配光パターンPaを形成する発光素子34を消灯させる。なお、灯具制御部5は、発光素子34を消灯させることに替えて、対向車が存在すると判定された部分配光パターンPaを形成する照射光の光度を、対向車が存在しないと判定されたときの光度よりも低くするよう発光素子34の点灯を制御してもよい。このようにして、灯具制御部5は、対向車や前走車等の他車が存在する領域を非照射領域として当該他車に対する眩惑を防止するとともに、他車が存在する領域以外の領域については付加配光パターンPAを形成することにより自動二輪車100の前方領域の視認性を高めた、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)配光制御を実現することができる。
【0043】
次に、自動二輪車100がコーナリング状態にある場合、例えば、路面に対して車体を所定の角度θだけ傾けた状態で走行している場合には、ヘッドランプ1の動作は以下のようになる。
車体が傾いた場合には、二輪車の水平、垂直座標系(X1-Y1座標系とする)は、道路の水平、垂直座標系(X0-Y0座標系とする)に対して角度θだけ傾斜した状態になる。このため、外部センサ3によって取得される撮像画像も道路のX0-Y0座標系に対して角度θだけ傾いた画像になるので、撮像される対向車の前照灯の光点は斜め方向に所定の間隔で存在する2つの光点として検出される。したがって、灯具制御部5は、対向車の点灯状態にある前照灯を水平方向に所定の間隔で存在する2つの光点として検出することができない。そこで、灯具制御部5は、バンク角センサ7によって取得される車体の傾き角度θに応じて、外部センサ3によって取得される二輪車のX1-Y1座標系の撮像画像を道路のX0-Y0座標系に一致する撮像画像へと補正処理する。灯具制御部5は、補正された撮像画像に基づいて、水平方向に所定の間隔で2つの光点が存在するか否か判定する。水平方向に所定の間隔で存在する2つの光点が検出された場合、灯具制御部5は、当該光点から認識される前照灯の位置に基づいてその対向車の位置を特定する。また、灯具制御部5は、上記自動二輪車100の車体が直進状態にある場合と同様にして光源ユニット2から照射される光により形成される付加配光パターンPAを調整する。
【0044】
(動作例2)
次に、ヘッドランプ1の別の動作例について説明する。
まず、灯具制御部5は、外部センサ3により検出された対向車や前走車の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて付加配光パターンPAを調整するモード(以下、ADBモードとする)を実行する。すなわち、対向車等が存在する場合には、灯具制御部5は、対向車が存在すると判定された部分配光パターンPaを形成する発光素子34を消灯あるいは減光させる。当該ADBモードの実行中も、透過カバー12のセンサ領域12aには、クリーナ4のノズル4aから空気が吹き付けられている。
【0045】
次に、灯具制御部5は、センサ領域12aに汚れが付着しているか否かを判断する。センサ領域12aに汚れが付着している、すなわち、透過カバー12のセンサ領域12aに向けてノズル4aから空気を吹き付けている状態でもセンサ領域12aに付着した汚れが除去されていないと判断された場合には、灯具制御部5は、ADBモードを停止するとともに、ADBモードの停止を自動二輪車100の乗員に報知する。乗員へのADBモードの停止の報知手段としては、例えば、自動二輪車100の計器部に警告を表示したり、警告音を出力することができる。
【0046】
動作例2では、ADBモードの実行中にクリーナ4のノズル4aから透過カバー12のセンサ領域12aに向けて空気が常時吹き付けられている構成となっているが、センサ領域12aに汚れが付着していると判断された場合にのみ、灯具制御部5は、クリーナ4からセンサ領域12aに向けて空気を吹き付けるようにしてもよい。その後、灯具制御部5は、センサ領域12aに汚れが付着しているか否かを再び判断し、空気を吹き付けてもセンサ領域12aに付着した汚れが除去されていないと判断された場合には、灯具制御部5は、ADBモードを停止するとともに、ADBモードの停止を自動二輪車100の乗員に報知するようにしてもよい。
【0047】
あるいは、灯具制御部5は、透過カバー12のセンサ領域12aに汚れが付着しているか否かを判断し、センサ領域12aに汚れが付着していると判断された場合には、クリーナ4からの空気の吹き付けがなされたか否かにかかわらず、ADBモードを停止して、センサ領域12aへの汚れの付着によりADBモードが停止されたことを乗員に警告するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記の各動作例では、外部センサ3によって取得された画像データの解析等について灯具制御部5で処理する場合を説明したが、これに限られない。これらの処理は、例えば、灯具制御部5ではなく画像処理部6で処理するようにしてもよい。
【0049】
ところで、自動車等の四輪車用の灯具として、前照灯の灯室内にLiDARやカメラが収容されたものが知られている。このような四輪車用のセンサ収容型灯具においては、車体のバンクによるセンサの検出精度の低下を考慮する必要性は低い。一方で、自動二輪車100のような車体を傾けることでコーナーを走行する車両に搭載されるセンサについては、車体のバンクによるセンサの検出精度の低下が問題となる可能性が高い。
【0050】
そこで、以上説明したように本実施形態のヘッドランプ1は、光源ユニット2と、自動二輪車100の外部の情報を検出する外部センサ3と、光源ユニット2および外部センサ3を収容するハウジング10と、を備え、ヘッドランプ1は、自動二輪車100の車体の左右方向における中央部に配置されており、外部センサ3は、ハウジング10内においてヘッドランプ1の左右方向における中央部に配置されている。この構成によれば、車体を傾けることでコーナーを走行する自動二輪車100に搭載されるヘッドランプ1に収容された外部センサ3が車体の左右方向における中央部付近に搭載される。そのため、外部センサ3により自動二輪車100の外部情報(周辺環境)を正確に検出することが可能であるとともに、外部センサが車体の左右方向の少なくとも一方の端部に設けられた場合と比べて、車体が傾いた場合でも外部センサ3の検出精度が落ちにくくなる。このように、本実施形態によれば、ヘッドランプ1内における外部センサ3の効率的なレイアウトが可能となるとともに、自動二輪車100に搭載されたヘッドランプ1に収容された外部センサ3の検出精度を維持することができる。
【0051】
本実施形態において、光源ユニット2は、単一の光源ユニットから構成され、外部センサ3は、ヘッドランプ1の上下方向において光源ユニット2と並列されている。この構成によれば、単灯式のヘッドランプ1に内蔵される外部センサ3が、光源ユニット2の直上または直下に配置されるので、光源ユニット2の光軸Axと外部センサ3の光軸とを合わせることができる。このため、光源ユニット2の姿勢の調節と外部センサ3の検出基準の調節とを一括して行うことができる。加えて、外部センサ3によって検出される外部情報に基づいて光源ユニット2の配光パターンを調節する際の灯具制御部5による制御が正確かつ容易となる。
【0052】
本実施形態のヘッドランプ1は、ハウジング10に取り付けられる透過カバー12において少なくとも外部センサ3に対応するセンサ領域12aを空気の吹き付けにより洗浄可能な少なくとも1つのノズル4aを有するクリーナ4をさらに備えている。この構成によれば、外部センサ3の洗浄対象面であるセンサ領域12aへの汚れの付着を防止したり、センサ領域12aへ付着した汚れを除去して、外部センサ3の検出精度を維持することができる。加えて、クリーナ4は、空気の連続送風が可能なエアブロアにより構成されているため、センサ領域12aへの汚れの付着を継続的に防止することができる。
【0053】
本実施形態において、灯具制御部5は、外部センサ3としてのカメラにより取得された撮像画像を車体の傾き状態に応じて補正し、補正された撮像画像に基づいて自動二輪車100の外部の対象物を検知し、検知された対象物の位置に応じて光源ユニット2から照射された光により形成される配光パターンを調整するように構成されている。この構成によれば、自動二輪車100が車体を傾けて走行している状態でも、対向車等の対象物を高精度に検知することができ、対象物に応じた配光パターンを適切に形成することができる。
【0054】
ところで、自動車等の四輪車に搭載され、車両前方を監視するための車載センサ(例えば、車載カメラ)は、車室内においてウインドシールドとインナーミラー取り付け部との間に搭載される場合が多い。当該車載センサの前方のウインドシールドに汚れや結露、雪などが付着した場合には、ワイパーやウインドウ・ウォッシャー、デフロスター等により汚れや結露、雪などを除去することができる。これに対して、自動二輪車の場合は、ワイパーやウインドウ・ウォッシャーの四輪車に搭載された洗浄機構を採用することが構造上または経済的に難しい。
【0055】
そこで、本実施形態の自動二輪車100に搭載されたヘッドランプ1においては、灯具制御部5は、ADBモードでの配光制御の実行中に、クリーナ4から吹き付けられた空気により透過カバー12に付着した汚れが除去されないと判断された場合には、ADBモードを停止するとともに、ADBモードの停止を自動二輪車100の乗員に報知するように構成されている。この構成によれば、外部センサ3の検出精度が落ちると予測される状況において、ADBモードを停止することにより、周辺環境を適切に検出できない状況での不用意な配光制御を防ぐことができる。特に、上述の通り、自動二輪車100の場合には、ワイパー等の機械的な洗浄機構を備えることが難しいため、センサ領域12aに汚れが付着したことによるADBモードの停止を乗員に伝達することで、例えば、乗員の手で透過カバー12の汚れを除去してもらい、ADBモードを復元することが現実的である。これにより、ADBモードを安価に復元可能なシステムを提供することができる。
【0056】
(変形例)
次に、
図8を参照して、ヘッドランプの変形例について説明する。上述した実施形態におけるヘッドランプ1は、単一の光源ユニット2を備え、外部センサ3が灯具の上下方向において当該単一の光源ユニット2と並列されるように構成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、ヘッドランプは、複数の光源ユニットを備える構成であってもよい。
【0057】
図8は、変形例に係るヘッドランプ1Aの構成を示す正面図である。
図8に示すように、ヘッドランプ1Aは、例えば、一対の光源ユニット2a,2bを備えている。一対の光源ユニット2a,2bは、ヘッドランプ1Aのハウジング10A内において、ヘッドランプ1Aの左右方向へ並列に配置されている。一対の光源ユニット2a,2bは、ヘッドランプ1Aの左右方向の真ん中を中心として左右対称に配置されている。外部センサ3は、ハウジング10内においてヘッドランプ1Aの左右方向における中央部に配置されている。クリーナ4は、ハウジング10A外においてヘッドランプ1の左右方向における中央部に配置されている。
【0058】
外部センサ3は、一対の光源ユニット2a,2bのそれぞれから等しい距離となる箇所に配置されている。本例において外部センサ3は、光源ユニット2aの右上方であり、光源ユニット2bの左上方に配置されている。クリーナ4は、ヘッドランプ1Aの上下方向において外部センサ3と並列して配置されている。本例においてクリーナ4は、外部センサ3の直上に配置されている。
【0059】
本変形例のヘッドランプ1Aは、外部センサ3が光源ユニット2a,2bから等しい距離に配置されているので、光源ユニット2a,2bから照射される光を効率よく利用することができ、外部情報を精度よく取得することができる。したがって、上記構成によれば、二灯式の灯具において外部センサ3の効率的なレイアウトが可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲およびその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0061】
本出願は、2020年1月16日出願の日本特許出願2020-5232号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。