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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】光学系
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
G02C7/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022500095
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020068783
(87)【国際公開番号】W WO2021001524
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】19305913.6
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・プルー
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ル・ソー
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510851(JP,A)
【文献】特表2010-520514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226983(US,A1)
【文献】特開2017-058668(JP,A)
【文献】特表2009-511962(JP,A)
【文献】国際公開第2018/076057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
G02B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の眼球の前方で着用されるように意図された光学系であって、
-少なくとも1つの制御点を有する光学レンズと、
-複数の光学素子を含む光学デバイスであって、光学デバイスは前記光学レンズの表面に取り付けられ、又は前記光学レンズに封入される、光学デバイスと、
を備え、
-前記制御点は、
光学素子がないゾーン、及び/又は、
前記光学レンズの幾何学中心、及び/又は、
前記光学レンズの光学中心、及び/又は、
累進眼鏡レンズの場合、
フィッティングクロス、又は、
遠方視基準点、又は、
近方視基準点、
のいずれかであり、
-各光学素子は同時に2つの異なる光学機能を有し、
-前記光学素子の少なくとも一部の第1の光学機能は、前記光学系が標準的な着用者の状態で着用されるとき、眼球注視方向を問わず、眼球の中心網膜上に結像することであり、
-前記光学素子の少なくとも一部の第2の光学的機能は、標準的な着用者の状態において、前記着用者の網膜に像を結ばず、周辺視の場合、前記着用者の網膜の前方又は後方の何れかで結像することであり、
-前記光学デバイス及び前記光学レンズは、前記光学系の前記制御点における実測屈折力と着用者の前記眼球の処方に対応する屈折力との間の差の絶対値が0.12ジオプタ以下であるように構成され、
-前記光学素子の少なくとも一部は回折レンズであり、前記回折レンズは2つの主な回折次数を有し、第1の主な回折次数は、絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力を提供し、第2の主な平均回折次数は、0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力を提供する、光学系。
【請求項2】
少なくとも1つの光学素子について、前記光学系の前記光学素子を通して測定される少なくとも1つの屈折力と前記光学レンズのみの対応する部分を通した実測屈折力との間の差の絶対値が、0.25ジオプタ以下であるように構成される、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1の光学機能は、0.25ジオプタ以下の平均屈折力を有する光学機能である、請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、0.5ジオプタ以上の平均屈折力を有する、請求項1に記載の光学系。
【請求項5】
前記光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、前記光学系が標準的な着用者の状態で着用される場合、像を眼球の網膜に結ばず、それにより、前記眼球の屈折異常の進行を遅らせるものである、請求項1に記載の光学系。
【請求項6】
前記光学デバイスは、前記光学レンズの前面若しくは前記光学レンズの後面に取り付けられ、又は前記光学レンズの内部に挿入される、請求項1に記載の光学系。
【請求項7】
前記光学素子の少なくとも一部は連続している、請求項1に記載の光学系。
【請求項8】
前記光学素子の少なくとも一部は、複数の同心環に沿って配置される、請求項1に記載の光学系。
【請求項9】
前記光学素子の少なくとも一部はπフレネルレンズである、請求項1に記載の光学系。
【請求項10】
前記光学素子は正方形輪郭又は六角形輪郭を有し、予め定義されたアレイに従って配置される、請求項1に記載の光学系。
【請求項11】
光学レンズの表面に配置されることが意図され、前記光学レンズの屈折力を追加する光学デバイスであって、複数の光学素子を備え、
前記光学素子の少なくとも一部は回折レンズであり、前記回折レンズは、
-絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力、及び、
-0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力、
を同時に提供する2つの異なる光学機能を同時に有する、光学デバイス。
【請求項12】
着用者の眼球の前方で着用されることが意図された光学系を提供する方法であって、
-標準的な着用者の状態の着用者に、着用者の眼球の屈折異常を矯正する着用者の処方に基づく矯正屈折力を提供するように構成された光学レンズを提供することと、
-請求項11に記載の光学デバイスを提供することと、
-前記光学デバイスを前記光学レンズの一表面に配置することにより又は前記光学デバイスを前記光学レンズに封入することにより光学系を形成することと、
を含む方法。
【請求項13】
着用者の眼球の前方で着用されることが意図された光学系を提供する方法であって、前記光学レンズを鋳造するステップと、前記鋳造するステップ中、鋳造された前記光学レンズに請求項11に記載の光学デバイスを挿入するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の眼球の前方で着用されることが意図されて、近視又は遠視等の眼球の屈折異常の進行を抑制する光学系及び光学レンズの表面又は内部に配置されて、上記光学レンズに屈折力を追加する光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
眼球の近視は、眼球が遠距離対象を網膜の前方で結像することにより特徴付けられ、遠視は眼球が遠距離対象を網膜の後方で結像することにより特徴付けられる。近視は通常、凹レンズを用いて矯正され、遠視は通常、凸レンズを用いて矯正される。
【0003】
従来型の単焦点光学レンズを用いて視力を矯正している人々、特に児童が、2つの主な理由により不正確に結像することがあることが観察されている。遠方にある物体を観察している場合、中心網膜に結像されるときであっても、周辺像は、網膜曲率により網膜の後方で結像されることがある。さらに、同じレンズを用いて、近距離に位置する物体を観察する場合も、適応のラグに起因して、中心窩部位であっても網膜の後方で像が形成されることがある。
【0004】
上述のような結像不良は上述のような人々の近視の進行に影響を及ぼし得る。上記人々の大多数において、近視の程度が時間と共に悪化する傾向が見て取れる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Eyal Ben-Eliezer,Emanuel Marom,Naim Konforti,and Zeev Zalevsky.Experimental realization of an imaging system with an extended depth of field.Appl.Opt.,44(14):2792-2798,May 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、近視又は遠視などの眼球の屈折異常の進行を抑制する、又は少なくとも遅らせるレンズ要素が必要とされているようである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、着用者の眼球の前方で着用されるように意図された光学系であって、
-少なくとも1つの制御点を有する光学レンズと、
-複数の光学素子を含む光学デバイスであって、光学デバイスは光学レンズの表面に取り付けられ、又は光学レンズに封入される、光学デバイスと、
を備え、
-各光学素子は同時に2つの異なる光学機能を有し、
-光学デバイス及び光学レンズは、光学系の一点、例えば制御点における実測屈折力と着用者の眼球の処方に対応する屈折力との間の差の絶対値が0.12ジオプタ以下であるように構成される、光学系を提案する。
【0008】
有利なことに、2つの異なる光学機能を同時に提供する複数の光学素子を備えた光学デバイスを有することにより、着用者によって着用されたとき、中心視の場合、光の一部を着用者の網膜に結像し、周辺視の場合、着用者の網膜の前方又は後方の何れかで光の一部を結像することにより近視又は遠視等の眼球の屈折異常の進行を遅らせる、構成が容易な光学系を有することが可能になる。
【0009】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
-光学デバイスは、少なくとも1つの光学素子について、上記光学系の上記光学素子を通して測定される少なくとも1つの屈折力と光学レンズの対応する部分のみを通した実測屈折力との間の差の絶対値が、0.25ジオプタ以下であるように構成され、且つ/又は
-第1の光学機能は、0.25ジオプタ以下の平均屈折力を有し、例えば、球面又は球環(sphero-torical)光学機能であり得、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、0.5ジオプタ以上の平均屈折力を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、光学系が標準着用条件で着用される場合、像を眼球の網膜に結ばず、それにより、眼球の屈折異常の進行を遅らせるようなものであり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、非球面光学機能であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部の第1の光学機能は、光学系が標準着用条件で着用されているとき、少なくとも中心視において、眼球の網膜で結像するようなものであり、且つ/又は
-光学デバイスは、光学レンズの前面、光学レンズの後面、又は光学レンズの前面と後面との間に含まれる表面に取り付けられ、且つ/又は
-光学素子の少なくとも部分は連続し、且つ/又は
-全ての光学素子は連続し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、複数の同心環に沿って配置され、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、複屈折材料製であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、回折レンズであり、且つ/又は
-回折レンズは、2つの主な回折次数を有し、第1の主な回折次数は、絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力を提供し、第2の主な平均回折次数は、0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力を提供し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、πフレネルレンズであり、且つ/又は
-回折レンズの少なくとも一部、例えば全ては、メタ表面構造を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、ピクセレート(pixelated)レンズであり、且つ/又は
-光学系は光学素子がないゾーンを有し、例えば、上記ゾーンは制御点を有し、且つ/又は
-光学素子は、正方形輪郭又は六角形輪郭を有し、予め定義されたアレイ、例えば正方形アレイ又は六角形アレイに従って配置され、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、その輪郭の各点が別の光学素子に連続するように配置され、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、予め定義されたアレイ、例えば正方形アレイ又は六角形アレイに従って配置され、且つ/又は
-光学系は、着用者の上記眼球の屈折異常を矯正する着用者の処方に基づく矯正光学機能を標準着用条件の着用者に提供するように構成された処方部を備え、且つ/又は
-光学レンズは眼鏡フレームに搭載されることが意図されたエッジングされた光学レンズであり、光学レンズの少なくとも1つの面の全面は、複数の光学素子で覆われ、且つ/又は
-光学レンズは眼鏡フレームに搭載されることが意図されたエッジングされた光学レンズであり、光学レンズのアパーチャ全体は、複数の光学素子で覆われ、且つ/又は
-矯正光学機能の屈折力と第2の光学機能の平均屈折力との間の差は、0.5D以上であり、且つ/又は
-各光学素子は光軸を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、着用者の眼球の網膜の前方に火面を作成するように構成された形状を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、高次光学収差を有する光学機能を有する。
【0010】
本開示は、光学レンズの表面に配置されることが意図され、上記光学レンズに屈折力を追加し、例えば、本発明による光学系を形成する光学デバイスに関し、上記光学デバイスは複数の光学素子を備え、各光学素子は、
-絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力及び
-0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力
を同時に提供する2つの異なる光学機能を同時に有する。
【0011】
単独で又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
-光学素子の少なくとも一部は連続し、且つ/又は
-全ての光学素子は連続し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、複数の同心環に沿って配置され、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、複屈折材料製であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、回折レンズであり、且つ/又は
-回折レンズは、2つの主な回折次数を有し、第1の主な回折次数は、絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力を提供し、第2の主な平均回折次数は、0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力を提供し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、非球面光学機能であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全てはπフレネルレンズであり、且つ/又は
-回折レンズの少なくとも一部、例えば全ては、メタ表面構造を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素であり、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、ピクセレートレンズであり、且つ/又は
-光学デバイスは光学素子がないゾーンを有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、正方形輪郭又は六角形輪郭を有し、予め定義されたアレイ、例えばレンズ素子の表面の少なくとも1つに配置された、例えば正方形アレイ又は六角形アレイに従って配置され、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、予め定義されたアレイ、例えば正方形アレイ又は六角形アレイに従って配置されて、レンズ素子のアパーチャ全体を覆い、且つ/又は
光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、完全に連続する光学素子を有する予め定義されたアレイに従って配置され、且つ/又は
-光学デバイスは剛性又は可撓性であり、且つ/又は
-光学デバイスはフィルム、パッチ、又はウェハの1つであり、且つ/又は
-光学デバイスは、88mm~53mm、好ましくは66mmの平均曲率半径を有し、且つ/又は
-光学デバイスは、デバイスの少なくとも1つの面に垂直に測定される0.5mm~5mmの平均厚を有し、且つ/又は
-光学デバイスは、70~95のショアA硬度を有する透明材料を含み、且つ/又は
-光学デバイスは、0.4%~2.0%、好ましくは1%未満の光散乱割合を有する透明材料を含み、且つ/又は
-光学デバイスは、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリカーボネートというポリマーの中から選択される透明熱可塑性材料を含み、且つ/又は
-光学デバイスは、ポリウレタン熱可塑性プラスチック及びポリ塩化ビニル熱可塑性プラスチックの中から選ばれた透明材料を含み、且つ/又は
-各光学素子は光軸を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、着用者の眼球の網膜の前方に火面を作成するように構成された形状を有し、且つ/又は
-光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、高次光学収差を含む光学機能を有する。
【0012】
本発明は、着用者の眼球の前方で着用されるように意図された光学系を提供する方法にも関し、本方法は、
-着用者の上記眼球の屈折異常を矯正する着用者の処方に基づく矯正屈折力を標準着用条件の着用者に提供するように構成された光学レンズを提供するステップと、
-本開示による光学デバイスを提供するステップと、
-光学デバイスを光学レンズの一表面上に配置することにより又は光学デバイスを光学レンズに封入することにより光学系を形成するステップと、
を含む。
【0013】
本開示は更に、着用者の眼球の前方で着用されることが意図された光学系を提供する方法に関し、本方法は、本開示による光学デバイスを、着用者の上記眼球の屈折異常を矯正する着用者の処方に基づく矯正屈折力を標準着用条件の着用者に提供するように構成された光学レンズに封入し、光学デバイスを光学レンズの一表面上に配置することにより光学系を形成するステップを含む。
【0014】
本開示は、着用者の眼球の前方で着用されることが意図される光学系を提供する方法にも関し、本方法は、
-本開示による光学デバイスを組み込んだ半完成光学レンズを提供するステップと、
-着用者の処方に一致するように、上記半完成光学系上に機械加工される後面を決定するステップと、
-提供された半完成光学レンズの後面を機械加工して、決定された後面を得るステップと、
を含む。
【0015】
本発明は更に、着用者の眼球の前方に着用されることが意図された光学系を提供する方法に関し、本方法は、光学系を鋳造するステップと、鋳造ステップ中、本開示による光学デバイスを提供するステップとを含む。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明の非限定的な実施形態を、ここで、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】本発明による光学系の概略輪郭図である。
図1b】本発明による光学系の平面図である。
図2】複数の連続したフレネル型光学素子で覆われた光学系の一例を表す。
図3】第1の回折レンズ半径プロファイルの一例を表す。
図4】第2の回折レンズ半径プロファイルの一例を表す。
図5】πフレネルレンズ半径プロファイルを示す。
図6a】波長の関数としてのπフレネルレンズプロファイルの回折効率を示す。
図6b】波長の関数としてのπフレネルレンズプロファイルの回折効率を示す。
図7a】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
図7b】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
図7c】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図中の要素は簡潔さ及び明確さのために示されており、必ずしも一定の比率で描かれている訳ではない。例えば、本発明の実施形態を分かり易くするため図のいくつかの素子のサイズを他の素子に比べて誇張している場合がある。
【0019】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明は、光学系に関し、特に、着用者の眼球の前方に着用されることが意図された光学系及び光学デバイスに関する。
【0020】
以降の説明では、「上」、「底」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」などの用語、又は相対位置を示す他の語が使用される場合がある。これらの用語は、光学系の着用条件において理解するべきである。
【0021】
本発明の文脈において、用語「光学レンズ」とは、コンタクトレンズ、未カットレンズ、特定の眼鏡フレームに嵌め込むようエッジ加工された眼鏡光学レンズ、又は眼用レンズを指すことができる。
【0022】
本発明の文脈において、用語「光学デバイス」とは、光学レンズ上又は光学レンズ内部に位置するように構成された光学デバイスを指す。光学デバイスは、光学レンズの前面若しくは後面、若しくは光学レンズの前面と後面との間に位置し得、又は光学レンズに挿入し得る。光学デバイスは、光学パッチ、光学フィルム、又は光学ウェハであり得る。
【0023】
本開示による光学系10は、着用者に適合され、上記着用者の眼球の前方に着用されることが意図される。
【0024】
図1aに示すように、本開示による光学系10は、
-光学レンズ20と、
-光学レンズの表面F1に取り付けられた光学デバイス30と、
を備え得る。
【0025】
光学レンズ20は少なくとも1つの制御点を含む。例えば、制御点は、光学レンズの幾何中心又は光学レンズの光学中心であり得る。光学レンズ20が累進眼用レンズである場合、制御点はフィッティングクロス、遠方視基準点、又は近方視基準点であり得る。
【0026】
図1aに提示する例では、光学レンズは、例えば物体側に向かう凸曲面として形成された物体側面F1と、例えば物体側面F1の曲率と異なる曲率を有する凹面として形成される眼球側面F2とを有する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、光学デバイス30は光学レンズ20の前面に配置される。
【0028】
代替的には、光学デバイス30は光学レンズの後面に配置し得る。
【0029】
代替的には、光学デバイスは、光学レンズの前面と後面との間に配置された光学レンズに封入し得る。
【0030】
図1bに表すように、本発明による光学デバイス20は複数の光学素子14を備える。
【0031】
複数の光学素子は、光学系10が、標準着用条件の着用者に、着用者の眼球の屈折異常の矯正する着用者の処方に基づく矯正光学機能を提供するように構成された処方部12を備えるように配置し得る。
【0032】
着用条件は、着用者の眼球に対するレンズ素子の位置であって、例えば、広角度、角膜からレンズまでの距離、瞳孔と角膜の距離、眼球回転中心(CRE)から瞳孔までの距離、CREからレンズまでの距離、及び巻き角により定義されるものとして理解されたい。
【0033】
角膜からレンズまでの距離は、第一眼球位における眼球の視軸(通常は水平に取られる)に沿った角膜とレンズの裏面との間の距離であり、例えば12mmに等しい。
【0034】
瞳孔角膜距離は、瞳孔と角膜間の眼球の視軸に沿った距離であり、通常は2mmに等しい。
【0035】
CREから瞳孔までの距離は、眼球の視軸に沿ったその回旋点(CRE)と角膜との間の距離であり、例えば11.5mmに等しい。
【0036】
CREからレンズまでの距離は、第一眼球位における眼球の視軸(通常は水平に取られる)に沿った眼球のCREとレンズの裏面との間の距離であり、例えば25.5mmに等しい。
【0037】
広角度は、レンズの裏面と第一眼球位における眼球の視軸(通常は水平にとられる)の間と、レンズの裏面に対する法線と第一眼球位における眼球の視軸の間との交線における垂直面内の角度であり、例えば-8°に等しい。
【0038】
ラップ角度は、レンズの裏面と第一眼球位における眼球の視軸(通常は水平に取られる)との間と、レンズの裏面に対する法線と第一眼球位における眼球の視軸との間との交点における水平面内の角度であり、例えば0°に等しい。
【0039】
標準的な着用者の状態の一例は、着用時前傾角-8°、角膜からレンズまでの距離12mm、瞳孔角膜距離2mm、CREから瞳孔までの距離11.5mm、CREからレンズまでの距離25.5mm、及びラップ角度0°によって定義されてもよい。
【0040】
用語「実測屈折力」は、レンズメータを用いて測定されるものとして理解されたい。
【0041】
用語「処方」は、眼科医又は検眼士により、例えば当該個人の眼球の前方に配置されたレンズを用いて、着用者の視力欠陥を矯正すべく決定された屈折力の、乱視の、プリズム偏差の、軸の光学特性の組を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼球に対する処方は遠方視に決定された軸に沿った屈折力及び乱視の値を含んでいる。
【0042】
複数の光学素子の各光学素子14は、2つの異なる光学機能を同時に、例えば1つの光軸を有する。
【0043】
光学デバイス及び光学レンズは、光学系の一点、例えば制御点での実測屈折力の1つと着用者の上記眼球の処方に対応する屈折力との間の差の絶対値が0.12ジオプタ以下、例えば0.05ジオプタ以下であるように構成し得る。
【0044】
本開示による光学デバイスは、少なくとも1つの光学素子について、上記光学系の上記光学素子を通して測定される少なくとも1つの屈折力と光学レンズのみの対応する部分を通した実測屈折力との間の差の絶対値が0.25ジオプタ以下、例えば0.12ジオプタ以下であるように構成し得る。
【0045】
各光学素子14の光学機能は、互いと異なり得る。
【0046】
第1の光学機能は、0.25ジオプタ以下、例えば0.12ジオプタ以下の屈折力を有する球面光学機能又は0.25ジオプタ以下、例えば0.12ジオプタ以下の平均屈折力を有する光学機能であり得る。
【0047】
したがって、光学レンズと組み合わせた各光学素子は、標準着用条件で2つの屈折力を提供し得る。第1の光学機能に対応する屈折力は、規定の屈折力に近い屈折力、すなわち、0.25ジオプタ以下の差を有する屈折力を提供する。
【0048】
光学素子の少なくとも一部の第1の光学機能は、光学系が標準着用条件で着用されるとき、眼球注視方向を問わず、眼球の中心網膜に結像するようなものであり得る。
【0049】
光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、0.5ジオプタ以上、例えば1ジオプタ超の平均屈折力を有し得る。
【0050】
光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、上記標準着用条件で眼球の網膜に結像せず、眼球の屈折異常の進行を遅らせることであり得る。
【0051】
光学素子の少なくとも一部の第2の光学機能は、非球面光学機能であり得る。
【0052】
2つの光学機能は、少なくともそれらの屈折力が互いと異なるという点で異なる。本発明の意味では、これらの2つの屈折力間の差の絶対値が0.25ジオプタ以上である場合、2つの屈折力は異なる。
【0053】
光学デバイスに含まれる光学素子は連続し得る。
【0054】
本開示の文脈では、2つの光学素子は、2つの光学素子をリンクするパスがあり、そのパス全体に沿って、着用者の眼球の屈折異常を矯正する着用者の処方に基づく屈折力と異なる少なくとも1つの屈折力を標準着用条件で測定し得る場合、連続していると見なされるべきである。
【0055】
本開示の文脈では、全ての光学素子は連続し、光学素子の2つの光学機能が光学系の全ての点で測定し得る光学系として理解されたい。
【0056】
全ての光学素子が同一であり、周期的に再現される光学系又は光学デバイスでは、これらの光学素子の各々について、輪郭、ひいてはこの光学素子の「中心」(光学中心又は幾何中心、例えば重心)を決定することが可能である。光学素子は、これらの光学素子の中心(C1、C2)が、方向C1C2における光学素子の寸法よりも小さい場合、「連続」すると見なされるべきである。
【0057】
複数の光学素子の各光学素子は、可視スペクトル全体にわたり透明である。
【0058】
光学素子の中心の少なくとも一部、例えば全ては、点の予め定義されたアレイ、例えば、正方形若しくは六角形に配置された点を含む点のアレイ又はランダムに配置されたドットを含むアレイに配置し得る。
【0059】
有利なことには、光学素子の所与の密度で、光学素子の少なくとも一部、例えば全てを複数の同心環に沿って配置させることにより、レンズ素子の全体視力が上がることを本発明者らは観察した。例えば、2.00mm超の光学素子の2つの隣接する同心環間の距離Dにより、光学素子のこれらの環間でより大きな面積を管理することができ、ひいてはよりよい全体視力を提供する。
【0060】
光学素子は、光学レンズの中心又は任意の他のエリア、例えば周縁のように、光学系の特定のゾーンを覆い得る。
【0061】
一実施形態によれば、光学デバイスは光学素子がないゾーンを有し得、例えば、上記ゾーンは制御点を含む。
【0062】
例えば、フィッティングクロスを中心とし、1.5mm超、例えば2mm超であり、且つ5mm未満の半径を有する環は、光学素子を有さなくてよい。
【0063】
レンズ素子の異なる部分は、設計要件に応じて光学素子を有さなくてよい。
【0064】
本開示の好ましい実施形態によれば、光学レンズは、眼鏡フレームに搭載されることが意図されたエッジ加工された光学レンズであり、光学レンズの少なくとも1つの面の全面は複数の光学素子で覆われる。
【0065】
そのような実施形態の一例を図2に示し、レンズ特徴の面は、複数の連続した回折型光学素子で完全に覆われる。
【0066】
光学素子密度又は屈折力量は、光学デバイスのゾーンに応じて調整し得る。通常、光学素子は光学デバイスの周縁に位置して、近視制御への光学素子の効果を上げ、例えば、網膜の周縁形状に起因した周縁焦点ボケを補償し得る。
【0067】
光学素子は、直接表面加工、成型、鋳造若しくは射出、型押し、成膜、又はフォトリソグラフィ等のような様々な技術を使用して作成することができる。本発明によれば、フォトリソグラフィは、特に光学デバイスの表面の1つが平坦である場合、又はフィルム若しくはウェハを複製することができるマスタを製造するために特に有利であり得る。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、着用者の眼球の網膜の前方に火面を作成するように構成された形状を有する。換言すれば、そのような光学素子は、光束が集中する平面がある場合、そのようなあらゆる平断面が着用者の眼球の網膜の前方に配置されるように構成される。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、光学レンズと異なる材料で作られる。特に、光学素子の屈折率は、光学デバイスの材料の屈折率と異なり得る。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、複屈折材料製である。換言すれば、光学素子は、偏光及び光の伝播方向に依存する屈折率を有する材料で作られる。複屈折は、材料が示す屈折率間の最大差として定量化し得る。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、可視スペクトル、例えば400nm~700nmの波長内の回折レンズである。
【0072】
例えば、光学素子の少なくとも一部、例えば全ては、2つのうちの1つのピクセルが各光学機能の1つに関連付けられるピクセレートレンズ等のピクセレート光学素子である。ピクセレートレンズの例は、非特許文献1に開示されている。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、不連続面、例えばフレネル面等の不連続性を有し、且つ/又は不連続性を有する屈折率プロファイルを有する。
【0074】
図3は、本発明に使用し得る光学素子の第1の回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
【0075】
図4は、本発明に使用し得る光学素子の第2の回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
【0076】
回折レンズは、図5に見られるように、位相関数ψ(r)が公称波長λにおいてπ位相跳躍を有する回折レンズであり得る。位相跳躍が2πの倍数である単焦点フレネルレンズと対照的に、明確にするために、これらの構造を「πフレネルレンズ」と呼び得る。位相関数を図5に示すπフレネルレンズは、ジオプトリ度数P(λ)=δ及び+1、例えばP(λ)=3δに関連付けられた主に2つの回折次数(次数0及び+1)で光回折し、ここで、λ=550nmである。
【0077】
この設計の利点は、着用者の処方に向けられた回折次数は有色性ではなく、一方、近視の進行を遅らせる第2の光学機能の提供に使用されるものは非常に有色性であることである。有利なことに、着用者の快適性を上げられるようにする。
【0078】
光学素子の典型的なサイズは、500μm以上、好ましくは2mm以上、且つ5mm以下、好ましくは2.5mm以下であり得る。実際には、着用者の眼球の瞳孔サイズよりも小さな光学素子を維持することが有利であることを本発明者らは観察した。
【0079】
例えば、0及び+1次数の回折効率は、公称波長λにおいて約40%である。
【0080】
着用者処方に対応する回折次数の効率を上げるために、以下を考慮し得る。
【0081】
回折次数0の効率を上げるためには、λの値を下げ得る。図6aはλ=550nmの場合の回折効率を示し、図6bはλ=400nmの場合の回折効率を示す。この場合、可視スペクトル全体で次数0の回折効率が概して高く、一方、次数+1の効率が低いことに気づくことができる。この場合、位相跳躍を適用する屈折位相関数のジオプトリ度数は、図5の1.5δの代わりに、λ=550nmで1.5*400/550≒1.1δに等しいはずであり、したがって、次数+1はλ=550nmでのジオプトリ度数3δに対応する。この結果、図5の環は広くなる。
【0082】
追加又は代替として、図5に示す構成の2つのうちの1つの環をゼロに設定し得る。この場合、残っているπフレネルリングに起因して同時に2つの異なる機能がなお存在するが、0に設定された環は0δジオプトリ度数のより重要な割合を誘導する。
【0083】
2つの異なる屈折率及び異なるアッベ数を有する材料で作られたπフレネル構造を適用して、λ=λにおいて図5の位相関数を取得し、可視スペクトルにおいてより均質な効果を得、且つ/又は2つの主要回折次数のうちの一方を他方よりも特別扱いすることを更に考え得る。
【0084】
重ねられたπフレネル構造との他の組合せを考えることもできる。
【0085】
本開示の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素、例えば多焦点バイナリレンズである。バイナリレンズは、約1μmの不連続性高さを有する半径方向プロファイルを有し得る。
【0086】
例えば、図7aに表すバイナリ構造は、-P/2及びP/2と示され、2つの主要回折次数に対応する主に2つのジオプトリ度数を示す。ジオプトリ度数がP/2である図7bに示す屈折構造に関連する場合、図7cに表す最終構造はジオプトリ度数0δ及びPを有する。図示の事例はP=3δに関連する。
【0087】
有利なことに、-1及び1次数の回折効率は公称波長で約40%であり、加えて、回折効率は可視スペクトル全体にわたり高いまま、典型的には35%超のままである。
【0088】
本開示の一実施形態によれば、回折レンズの少なくとも一部、例えば全ては、メタレンズとも呼ばれるメタ表面構造を有する。
【0089】
例えば、レンズ素子は、ジオプトリ度数P1、P2の同時二焦点メタレンズのアレイを有し得、P1=0δであり、色収差は制御される。
【0090】
通常、P1=0δは、各波長で同じ焦点を有することを意味する無色性又は部分的に無色性であることができる。
【0091】
P2の有色性、例えば焦点距離及び効率は有利なことに制御することができる。
【0092】
各メタレンズの有色性は、近方視ゾーン、中間視ゾーン、又は遠方視ゾーンというレンズ素子の表面上のメタレンズの位置の関数として異なることができる。
【0093】
各メタレンズ自体はサブ波長素子のアレイで作ることができる。
【0094】
例えば、サブ波長素子は、円形、矩形、又は楕円形等の任意の形状、任意の寸法を有することができ、互いと等距離であることができ、全て同じ方向に位置合わせすることができ、又は互いと回転して位置合わせすることができる。
【0095】
メタレンズのサブ波長素子は高誘電材料で作られるべきである。
【0096】
各メタレンズは「サブメタレンズ」の組合せで作ることができる。例えば、空間多重化又は幾つかのサブメタレンズの積層により、波長の関数として二焦点性を得ることができる。
【0097】
二焦点性は、空間多重化又は幾つかのサブメタレンズの積層による偏光の関数として得ることができる。
【0098】
本開示の一実施形態によれば、光学素子の少なくとも1つ、例えば全ては、高次光学収差を有する光学機能を有する。例えば、光学素子は、ゼルニケ多項式によって定義される連続面で構成される微小レンズである。
【0099】
本発明は、光学レンズの表面上に配置されることを意図されて、上記光学レンズの屈折力を追加し、例えば、本明細書に開示する光学系を形成する光学デバイスにも関し、上記光学デバイスは複数の光学素子を備え、各光学素子は、
-絶対値で0.25ジオプタ以下の第1の平均屈折力及び
-0.5ジオプタ以上の第2の平均屈折力
を同時に提供する2つの異なる光学機能を同時に有する。
【0100】
光学デバイスの光学素子は、光学系に関連して上述した特徴の任意の組合せを含み得る。
【0101】
実施形態に応じて、光学デバイスは剛性又は可撓性であり得る。先に開示したように、光学デバイスはフィルム、パス、又はウェハの1つであり得る。
【0102】
光学デバイスは、上記光学デバイスを構成する材料の固有の接着性により又は可能な場合には、光学デバイスと光学レンズとの接触を開始する媒介物として作用する2つの境界面間の水の薄い膜の使用により、光学レンズの表面に取り付け得る。
【0103】
したがって、本開示では、光学デバイスを構成する材料は好ましくは、受けるべき光学レンズの光学品質を保持できるようにする透明性並びにタック性及び取り付けられる光学構成要素の曲率半径に合うように特定の可撓性を与える物性を組み合わせる。
【0104】
有利なことに、本開示の光学デバイスを構成する材料は、70~95のショアA硬度及び2.0%~0.4%、好ましくは1%未満の光散乱割合を有する。
【0105】
本開示の文脈で使用し得る材料は特に、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリカーボネートというポリマーの中から選択される透明熱可塑性材料であることができる。好ましくは、光学デバイスを構成する材料は、ポリウレタン熱可塑性プラスチック及びポリ塩化ビニル熱可塑性プラスチックの中から選ばれる。
【0106】
光学レンズの材料は無機又は有機であり得る。非限定的な例として、本開示の文脈で使用することができる有機材料は、光学系及び眼科で好都合に使用される材料であることができる。例えば、適切な材料は、ポリカーボネート;ポリアミド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリカーボネートコポリマー;ポリオレフィン、特にポリノルボルネン;ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマー及びコポリマー;(メタ)アクリレートポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールAの(メタ)アクリレート誘導体のポリマー及びコポリマー;チオ(メタ)アクリレートポリマー及びコポリマー;ウレタン及びチオウレタンポリマー及びコポリマー;エポキシポリマー及びコポリマー、並びにエピスルフィドポリマー及びコポリマー等の基板である。
【0107】
本発明について、発明の全般的な概念を限定することなく、複数の実施形態を活用して上で説明してきた。
【0108】
例としてのみ与えられたものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される本発明の範囲を限定することを意図されていない上述の例示的な実施形態を参照すれば、当業者には多くのさらなる修正形態及び変形形態が明らかになるはずである。
【0109】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。異なる特徴が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを好都合に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0110】
10 光学系
12 処方部
14 光学素子
20 光学レンズ
30 光学デバイス
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c