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特許7618649電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/293 20210101AFI20250114BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250114BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250114BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250114BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250114BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20250114BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/251 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20250114BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20250114BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20250114BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20250114BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M10/44 P
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/658
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/262 Z
H01M50/264
H01M50/284
H01M50/291
B60L50/64
B60L53/14
B60L58/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022511517
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043709
(87)【国際公開番号】W WO2021199492
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2020063975
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古上 奈央
(72)【発明者】
【氏名】原塚 和博
(72)【発明者】
【氏名】藤永 浩司
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155713(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207607(WO,A1)
【文献】特開2020-080214(JP,A)
【文献】特表2022-530273(JP,A)
【文献】特開2020-50841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/60-10/667
H01M 10/44
B60L 53/14
B60L 58/10
B60L 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記一対のエンドプレートに連結されて、前記エンドプレートを介して前記電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーと、
を備える電源装置であって、
前記セパレータが、
表面又は全体を、連続気泡を有するプラスチック発泡体からなる弾性板とし、
前記弾性板が、ウレタンフォームであり、その見かけ密度を150kg/m 3 以上であって750kg/m 3 以下、厚さを0.2mm以上であって7mm以下とすることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
連続気泡を有する前記弾性板が、
表面に非発泡層を有することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載する電源装置であって、
連続気泡を有する前記弾性板の表面が、
裁断された気泡が露出する発泡層であるあることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記セパレータ全体が弾性板であることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記セパレータが、
前記弾性板と断熱層との積層構造であることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と、
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと、
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池ブロックへの充電を可能とすると共に、該電池ブロックに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池セルを積層している電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電池セルを積層している電源装置は、電動車両に搭載されて車両を走行させるモータに電力を供給する電源、太陽電池等の自然エネルギーや深夜電力で充電される電源、停電時のバックアップ電源に適している。この構造の電源装置は、積層している電池セルの間にセパレータを挟着している。多数の電池セルをセパレータを挟んで積層している電源装置は、電池セルの膨張による位置ずれを阻止するために、積層した電池セルを加圧状態に固定している。このことを実現するために、電源装置は、多数の電池セルを積層している電池ブロックの両端面には一対のエンドプレートを配置して、一対のエンドプレートをバインドバーで連結している。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-204708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置は、複数の電池セルを積層して電池ブロックとし、電池ブロックの両端面に一対のエンドプレートを配置して、両端面から相当に強い圧力で加圧状態に保持してバインドバーで連結している。電源装置は、電池セルを強く加圧する状態で固定して電池セルの相対移動や振動による誤動作を防止している。この電源装置は、たとえば、積層面の面積を約100cmとする電池セルを使用する装置において、エンドプレートを数トンもの強い力で押圧してバインドバーで固定している。この構造の電源装置は、隣接して積層される電池セルをセパレータで絶縁するために、セパレータには硬質プラスチックの板材が使用される。硬質プラスチックのセパレータは、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態で、電池セルの膨張を吸収できず、この状態で電池セルとセパレータとの面圧が急激に高くなって、エンドプレートやバインドバーに極めて強い力が作用する。このため、エンドプレートとバインドバーには、極めて強靭な材質と形状が要求されて、電源装置が重く、大きくなると共に、材料コストが高くなる弊害がある。さらに、全体が均一に膨張することなく不均一に膨張する電池セルは面圧分布が不均一になって、このことが電極等に悪影響を与える弊害もある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、電池セルの膨張をセパレータで無理なく吸収し、さらに電池セルの面圧分布を均等化しながら膨張を吸収できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートに連結されて、エンドプレートを介して電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーとを備えている。セパレータは、表面又は全体を、連続気泡を有するプラスチック発泡体からなる弾性板としている。弾性板は、ウレタンフォームであり、その見かけ密度を150kg/m 3 以上であって750kg/m 3 以下、厚さを0.2mm以上であって7mm以下としている。
【0007】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置と、電源装置から電力供給される走行用のモータと、電源装置及びモータを搭載してなる車両本体と、モータで駆動されて車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【0008】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置と、電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、電源コントローラでもって、外部からの電力により電池ブロックへの充電を可能とすると共に、電池ブロックに対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0009】
以上の電源装置は、電池セルの膨張をセパレータで無理なく吸収し、さらに電池セルの面圧分布を均等化しながら膨張を吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の垂直断面図である。
図3図1に示す電源装置の水平断面図である。
図4】電池セルとセパレータの積層状態を示す一部拡大模式断面図である。
図5図4の電池セルが膨張した状態を示す模式断面図である。
図6】セパレータの他の一例を示す一部拡大模式断面図である。
図7】セパレータの他の一例を示す一部拡大模式断面図である。
図8】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図9】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図10】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0012】
本発明の第1の実施形態の電源装置は、複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートに連結されて、エンドプレートを介して電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーとを備えている。セパレータは、表面又は全体を、連続気泡を有するプラスチック発泡体からなる弾性板としている。
【0013】
以上の電源装置は、セパレータを連続気泡のプラスチック発泡体からなる弾性変形する弾性セパレータとするので、電池セルの膨張を弾性板が吸収する。このため、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態で、電池セルとセパレータとの面圧が高くなるのを抑制できる。この電源装置は、セパレータの弾性板を、連続気泡のプラスチック発泡体とするので、電池セル表面の面圧分布を均等化して局所的に圧力が高くなる弊害を防止できる。それは、連続気泡のプラスチック発泡体は、押圧されて押し潰された気泡内の空気が連続する気泡を通じて周囲に流動して変形し易い状態となるからである。
【0014】
独立気泡のプラスチック発泡体の弾性板も弾性変形するので、電池セルの膨張を吸収するセパレータに使用できるが、この弾性板のセパレータは、気泡が独立するので、電池セルに押圧されて気泡が押し潰されると、気泡の内圧が上昇して弾性変形を阻害する。したがって、独立気泡のプラスチック発泡体のセパレータは、電池セルの局所的な膨張を均等に吸収できず、電池セル表面の面圧分布が不均一となって電池に内蔵される電極層に悪影響を与える弊害がある。以上の電源装置は、連続気泡を有するプラスチック発泡体の弾性板をセパレータとすることで、以上の弊害を解消して、電池セルの面圧分布を均等化できる特長を実現する。
【0015】
さらにまた、以上の電源装置は、セパレータの弾性板で、電池セルの膨張による面圧の上昇を抑制するので、電池セルが膨張して、エンドプレートやバインドバーに過大な応力が作用するのを防止できる。最大応力を減少できるエンドプレートとバインドバーは、薄くして軽量化できる。また、電池セルの間のセパレータで電池セルの膨張を吸収する電源装置は、電池セルが膨張して相対位置がずれるのも抑制できる。このことは、電池セルの電気接続部の弊害も防止できる。積層された電池セルは、金属板のバスバーを電極端子に固定して電気接続しているが、電池セルが相対的に位置ずれすると、バスバーと電極端子に無理な応力が作用して故障の原因となるからである。
【0016】
本発明の第2の実施形態の電源装置は、連続気泡を有する弾性板が、表面に非発泡層を有している。
【0017】
本発明の第3の実施形態の電源装置は、連続気泡を有する弾性板の表面を、裁断された気泡が露出する発泡層としている。
【0018】
本発明の第4の実施形態の電源装置は、弾性板をウレタンフォームとしている。
【0019】
本発明の第5の実施形態の電源装置は、セパレータ全体を弾性板としている。
【0020】
本発明の第6の実施形態の電源装置は、セパレータを、弾性板と断熱層との積層構造としている。
【0021】
本発明の第7の実施形態の電源装置は、弾性板の厚さを、0.2mm以上であって7mm以下としている。
【0022】
(実施の形態1)
図1の斜視図と図2の垂直断面図と図3の水平断面図に示す電源装置100は、複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層している電池ブロック10と、電池ブロック10の両端面に配置している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結してエンドプレート3を介して電池ブロック10を加圧状態に固定しているバインドバー4とを備える。
【0023】
(電池ブロック10)
電池ブロック10は、外形を四角形とする角形電池セルである複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層している。複数の電池セル1は、上面が同一平面となるように積層されて電池ブロック10を構成している。
【0024】
(電池セル1)
電池セル1は、図1に示すように、上面の両端部に正負一対の電極端子13を上方向に突出して設けている。電極端子13の間には安全弁14を設けている。安全弁14は、電池セル1の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出する。安全弁14は、電池セル1の内圧上昇を防止する。
【0025】
電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。電池セル1をリチウムイオン二次電池とする電源装置100は、容量と重量に対する充電容量を大きくできる特長がある。ただし、電池セル1は、リチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池等、他の充電できる全ての電池とすることができる。
【0026】
(エンドプレート3、バインドバー4)
エンドプレート3は、電池ブロック10に押圧されて変形しない、電池セル1の外形にほぼ等しい外形の金属板で、両側縁にバインドバー4を連結している。バインドバー4は、エンドプレート3が積層している電池セル1を加圧状態で連結して、電池ブロック10を所定の圧力で加圧状態に固定している。
【0027】
(セパレータ2)
セパレータ2は、積層している電池セル1の間に挟まれて、内圧上昇による電池セル1の膨張を吸収し、さらに隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池間における熱伝導を遮断する。電池ブロック10は、隣接する電池セル1の電極端子13にバスバー(図示せず)を固定して、電池セル1を直列又は並列に接続している。直列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差が発生するので、セパレータ2で絶縁して積層している。並列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、セパレータ2で断熱して積層する。
【0028】
図4の一部拡大模式断面図に示すセパレータ2は、電池セル1の膨張を吸収する弾性板5である。この図のセパレータ2は、全体を弾性板5としている。このセパレータ2は、弾性板5を厚くできるので、電池セル1の膨張をより効果的に吸収できる。なお、以下に示す図4図7においては、弾性板5の特徴をわかりやすくするために、電池セル1に対するセパレータ2の厚さや、電池セル1の膨張時における変形の様子、弾性板5の断面構造等を誇張して図示している。
【0029】
弾性板5は、膨張する電池セル1に押されて弾性変形する板材であって、連続気泡を有するプラスチック発泡体の弾性材である。連続気泡のあるプラスチック発泡体は、非発泡のゴム状弾性体や独立気泡のプラスチック発泡体に比較して変形量が極めて大きく、電池セル1の膨張を効果的に吸収できる。それは連続気泡の発泡体は、電池セル1に押圧されると、気泡内の空気が連続する気泡を介して押し出されるので、気泡が完全に押し潰される状態まで変形できるからである。連続気泡のプラスチック発泡体の弾性板5からなるセパレータ2は、気孔率で変形量を調整でき、気孔率を大きくして変形量を大きくできる特長がある。
【0030】
これに対して、独立気泡の発泡体からなるセパレータは、電池セルに押圧されても気泡内の空気は押し出されず、気泡内で空気圧が高くなって気泡の変形を阻止し、さらに気泡内の圧力は、気泡が小さく押し潰されるに従って急激に上昇して気泡の変形を阻止する。したがって、このセパレータは押圧状態における変形量が少なくなる。また、独立気泡の発泡体のセパレータは、気孔率を高くして変形量を大きくできない。気泡が押し潰されずに変形を阻止するからである。非発泡のゴム状弾性体は、独立気泡のプラスチック発泡体よりもさらに変形率を大きくするのが難しい。それ自体の体積が減少し、あるいは押圧部分が他の部分に移動して変形するので、押圧状態における変位量が小さく制限されるからである。
【0031】
連続気泡を有するプラスチック発泡体の弾性板5からなるセパレータ2は、膨張する電池セル1の変位の吸収量が大きいが、この物性は、セパレータ2において特に大切な特性である。それは、押圧状態における変形量の大きいセパレータ2は、電池セル1の膨張時において、図5に示すように、電池セル1の表面に沿う曲面を形成しながらの膨張に追従して変形して、押圧面に生じる圧力分布を緩和して、電池セル表面の局所的な圧力上昇を抑制できるからである。電池セル表面の圧力分布を十分に緩和できないセパレータ2は、電池セル内の圧力差が大きくなって局所的に内圧が高くなる。この状態は、この種の電源装置に多用されているリチウムイオン電池などにおいては特に有害である。それは、リチウムイオン電池は、局所的に内圧が高くなる領域では電極表面にリチウムが析出する傾向が強くなって、安全性を阻害するからである。
【0032】
図4の一部拡大図に示すセパレータ2の弾性板5は、連続気泡を有するプラスチック発泡体の表面に非発泡層5Bを設けている。このセパレータ2は、電池セル1に挟まれた状態で、表面の非発泡層5Bが電池セル1の表面に面接触する。このセパレータ2は、非発泡層5Bが電池セル1の表面に沿って密着する状態で、電池セル1の膨張を発泡層5Aの弾性変形で吸収する。したがって、このセパレータ2は、図5に示すように、非発泡層5Bが膨張する電池セル1の表面に沿う曲面状に変形しながら、発泡層5Aが電池セル1の膨張に追従する形状に変形して電池セル1の膨張を吸収できる。
【0033】
図6の一部拡大模式断面図に示すセパレータ2の弾性板5は、連続気泡を有するプラスチック発泡体の表面を裁断された気泡が露出する発泡層5Cとして、連続する気泡によって表面に無数の凹凸を設けている。このセパレータ2は、連続する無数の気泡が電池セル1の表面に付着する結露水を吸収して、結露水による漏電や絶縁抵抗の低下を抑制できる。電源装置は、種々の温度環境で使用されるので、温度環境が変化して表面に結露水が付着することがある。電池セル1の表面に付着する結露水は、通電部の表面に流れ落ちて漏電の原因となり、あるいは通電部の絶縁抵抗を小さくする。連続気泡が表面に露出するセパレータ2は、結露水を吸収して結露水の弊害を防止する。さらに、表面に連続気泡が露出し、弾性変形して電池セル1の表面に密着するセパレータ2は、吸収する結露水を内部に移行できるので、結露水の吸収量を多くして、結露水による弊害を効果的に防止できる特長がある。
【0034】
以上のセパレータ2は、全体を弾性板5としている。ただ、セパレータ2は、図7の一部拡大模式断面図に示すように、弾性板5と断熱層6との積層構造とすることもできる。このセパレータ2は、両面に積層している弾性板5で中間の断熱層6を挟む積層構造として、断熱層6でもって隣接する電池セル1間の熱伝導を少なくできる。断熱層6は、弾性板5よりも耐熱特性の優れた全ての層、たとえば微細な無数の独立気泡のプラスチック発泡体等が使用できる。
【0035】
セパレータ2の弾性板5は、膨張する電池セル1に加圧されて変形して膨張を吸収する弾性と厚さに調整される。弾性板5の電池セル1の膨張による変形量は、発泡するプラスチックの種類と見かけ密度で調整でき、見かけ密度は発泡率で調整できる。セパレータ2の弾性板5は、例えば、見かけ密度を150kg/m以上であって750kg/m以下、好ましくは200kg/m以上であって500kg/m以下とし、厚さを0.2mm以上であって7mm以下、好ましくは1mm以上であって5mm以下とする。弾性板5のプラスチック発泡体は、ウレタンフォームが適している。ウレタンフォームのセパレータ2は、優れた温度特性を有し、たとえば、100℃において、22時間にわたって50%に圧縮して、圧縮永久ひずみを20%以下にできる。
【0036】
見かけ密度を240kg/mとするウレタンフォームの弾性板5からなるセパレータ2は、厚さを2mmとして、電池セルの1.5mmの膨張を吸収して復元する。このセパレータ2は、全体の厚さが1/4に押し潰される状態まで変形して電池セル1の膨張を吸収する。さらに、見かけ密度を320kg/mとするウレタンフォームの弾性板5からなるセパレータ2は、厚さを3mmとして電池セルの1.8mmの膨張を吸収でき、さらに厚さを4mmとして電池セルの2.4mmの膨張を吸収できる。ウレタンフォームの弾性板5は、温度を80℃以下の状態で以上の特性を実現する。
【0037】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
【0038】
(ハイブリッド車用電源装置)
図8は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図8に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0039】
(電気自動車用電源装置)
また、図9は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0040】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図10は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0041】
図10に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0042】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0043】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電源装置は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100…電源装置
1…電池セル
2…セパレータ
3…エンドプレート
4…バインドバー
5…弾性板
5A…発泡層
5B…非発泡層
5C…気泡が露出する発泡層
6…断熱層
10…電池ブロック
13…電極端子
14…安全弁
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10