(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】開放型オーディオデバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 1/28 20060101AFI20250114BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20250114BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
H04R1/28 310
H04R1/02 101B
H04R1/02 103Z
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2022513956
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 US2020048909
(87)【国際公開番号】W WO2021046035
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-04
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-18
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・シー・シュトルジック
【合議体】
【審判長】高橋 宣博
【審判官】坂本 聡生
【審判官】樫本 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0201822(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0167710(US,A1)
【文献】特開2017-158006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0051585(US,A1)
【文献】特開2001-078288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/175
H04R 1/00- 1/08
H04R 1/10
H04R 1/20- 1/40
H04R 1/12- 1/14
H04R 1/42- 1/46
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放型オーディオデバイスであって、
音響放射器であって、前側音響放射を前記音響放射器の前側から放出し、後側音響放射を前記音響放射器の後側から放出する、音響放射器と、
前側音響放射を受容し、少なくとも1つの前部音放出開口部を備える前部音響空洞と、
後側音響放射を受容し、少なくとも1つの後部音放出開口部を備える後部音響空洞と、を備え、
前記前部音放出開口部および前記後部音放出開口部の一方のみが抵抗要素を有し、
前記前部音響空洞及び前記後部音響空洞が、各々基本
共鳴周波数を有し、前記基本
共鳴周波数が、互いに1オクターブ内にある、開放型オーディオデバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの前部音放出開口部が、
前記抵抗要素を備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項3】
前記抵抗要素が、抵抗スクリーンを含む、請求項2に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの後部音放出開口部が、
前記抵抗要素を備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項5】
前記抵抗要素が、抵抗スクリーンを含む、請求項4に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項6】
前記前部音響空洞に結合されたヘルムホルツ共鳴器をさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項7】
前記後部音響空洞に結合されたヘルムホルツ共鳴器をさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項8】
前記前部音響空洞に音響的に結合され、前部音放出開口部を備える前部ポートをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項9】
前記後部音響空洞に音響的に結合され、後部音放出開口部を備える後部ポートをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項10】
前記前部音響空洞に音響的に結合され、前部音放出開口部を備える前部音響伝送ラインをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項11】
前記後部音響空洞に音響的に結合され、後部音放出開口部を備える後部音響伝送ラインをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項12】
前記前部音響空洞及び前記後部音響空洞を音響的に結合する抵抗開口部をさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項13】
前記前部音響空洞が、少なくとも2つの前部音放出開口部を備え、少なくとも1つの前部音放出開口部が、
前記抵抗要素を備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項14】
第1の前部音放出開口部が、第2の前部音放出開口部よりも外耳道から遠くにあり、かつ前記第2の前部音放出開口部から離れて位置するように構成され、前記第1の前部音放出開口部が、前記抵抗要素を備える、請求項13に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項15】
前記後部音響空洞が、少なくとも2つの後部音放出開口部を備え、少なくとも1つの後部音放出開口部が、
前記抵抗要素を備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項16】
第1の後部音放出開口部が、第2の後部音放出開口部よりも外耳道に近く、かつ前記第2の後部音放出開口部から離れて位置するように構成され、前記第1の後部音放出開口部が、前記抵抗要素を備える、請求項15に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項17】
前記音響放射器がユーザの外耳道開口部の近傍に保持されるがその中には保持されないように、前記音響放射器を着用者の頭部で支えるように構成された構造体をさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項18】
第1の前部音放出開口部が、前記外耳道開口部の略近傍に音を方向付けるように構成されている、請求項17に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項19】
前記後部音響空洞に音響的に結合され、前記第1の前部音放出開口部よりも前記外耳道開口部から遠くになるように構成された後部音放出開口部を備える後部ポートをさらに備える、請求項18に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項20】
前記後部音響空洞が、第1の後部音放出開口部及び第2の後部音放出開口部を備え、第1の後部音放出開口部が、第2の後部音放出開口部よりも外耳道に近くなるように構成され、前記第1の後部音放出開口部が、
前記抵抗要素を備える、請求項19に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項21】
前記音響放射器を収容し、ユーザの耳の上に保持されるか又はそれに近接して保持されるように構成されたイヤーホンハウジングをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【請求項22】
前記音響放射器を収容し、ユーザの頭部で支えられるように構成された眼鏡フレームをさらに備える、請求項1に記載の開放型オーディオデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開放型オーディオデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
開放型オーディオデバイスにより、ユーザが周囲の状況をより認識することが可能となり、着用者が他者と対話するために利用可能であるという社会的手掛かりが提供される。しかしながら、開放型オーディオデバイスの音響変換器は耳から離間され、音を耳のみに閉じ込めないため、開放型オーディオデバイスは、オンイヤーヘッドホンと比較して、他者が聞くことができるより多くの音漏出を生み出す。漏出は、開放型オーディオデバイスの有用性及び望ましさを損なうことがある。
【発明の概要】
【0003】
下記で言及される全ての例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0004】
一態様では、開放型オーディオデバイスは、音響放射器を含み、音響放射器は、前側音響放射を音響放射器の前側から放出し、後側音響放射を音響放射器の後側から放出する。前側音響放射を受容し、少なくとも1つの前部音放出開口部を備える前部音響空洞、及び、後側音響放射を受容し、少なくとも1つの後部音放出開口部を備える後部音響空洞がある。前部音響空洞及び後部音響空洞は各々、基本周波数を有する。基本周波数は、互いに1オクターブ内にある。
【0005】
実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。少なくとも1つの前部音放出開口部は、抵抗要素を備え得、抵抗要素は、抵抗スクリーンを含み得る。少なくとも1つの後部音放出開口部は、抵抗要素を備え得、抵抗要素は、抵抗スクリーンを含み得る。開放型オーディオデバイスは、前部音響空洞に結合されたヘルムホルツ共鳴器をさらに備え得る。開放型オーディオデバイスは、後部音響空洞に結合されたヘルムホルツ共鳴器をさらに備え得る。
【0006】
実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。開放型オーディオデバイスは、前部音響空洞に音響的に結合され、前部音放出開口部を備える前部ポートをさらに備え得る。開放型オーディオデバイスは、後部音響空洞に音響的に結合され、後部音放出開口部を備える後部ポートをさらに備え得る。開放型オーディオデバイスは、前部音響空洞に音響的に結合され、前部音放出開口部を備える前部音響伝送ラインをさらに備え得る。開放型オーディオデバイスは、後部音響空洞に音響的に結合され、後部音放出開口部を備える後部音響伝送ラインをさらに備え得る。
【0007】
実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。開放型オーディオデバイスは、前部音響空洞及び後部音響空洞を音響的に結合する抵抗開口部をさらに備え得る。前部音響空洞は、少なくとも2つの前部音放出開口部を備え得、少なくとも1つの前部音放出開口部は、抵抗要素を備え得る。第1の前部音放出開口部は、第2の前部音放出開口部よりも外耳道に近く、第2の前部音放出開口部から離れて位置するように構成され得、第1の前部音放出開口部は、抵抗要素を備え得る。後部音響空洞は、少なくとも2つの後部音放出開口部を備え得、少なくとも1つの後部音放出開口部は、抵抗要素を備え得る。第1の後部音放出開口部は、第2の後部音放出開口部よりも外耳道に近く、第2の後部音放出開口部から離れて位置するように構成され得、第1の後部音放出開口部は、抵抗要素を備え得る。
【0008】
実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。開放型オーディオデバイスは、音響放射器がユーザの外耳道開口部の近傍に保持されるがその中には保持されないように、音響放射器を着用者の頭部で支えるように構成された構造体をさらに備え得る。第1の前部音放出開口部は、外耳道開口部の略近傍に音を方向付けるように構成され得る。開放型オーディオデバイスは、後部音響空洞に音響的に結合され、第1の音放出開口部よりも外耳道開口部から遠くになるように構成された後部音放出開口部を備える後部ポートをさらに備え得る。後部音響空洞は、第1の後部音放出開口部及び第2の後部音放出開口部を備え得、第1の後部音放出開口部は、第2の後部音放出開口部よりも外耳道に近くなるように構成され、第1の後部音放出開口部は、抵抗要素を備える。
【0009】
実施例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。開放型オーディオデバイスは、音響放射器を収容するイヤーホンハウジングをさらに備えていてもよく、ユーザの耳の上に保持されるか、又はそれに近接して保持されるように構成されている。開放型オーディオデバイスは、音響放射器を収容し、ユーザの頭部で支えられるように構成された眼鏡フレームをさらに備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】耳の上にある開放型オーディオイヤーホンデバイスを示す。
【
図2】開放型オーディオデバイスの概略断面図である。
【
図3】
図2の開放型オーディオデバイスからの音漏出を示す。
【
図4】開放型オーディオデバイスの概略断面図である。
【
図5】開放型オーディオデバイスの概略断面図である。
【
図6】開放型オーディオデバイスの概略断面図である。
【
図7】開放型オーディオデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
2016年12月11日に出願された米国特許出願公開第2018/0167710号明細書(その全開示は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載のものなどの開放型オーディオデバイスは、典型的には、前側及び後側を有する電気音響変換器(すなわち、ドライバ)を含む。いくつかの非限定的な例では、前側の音は、ユーザの外耳道の近傍のデバイスから出射し、後側の音は、ユーザの外耳道から遠くに出射する。他の例では、前側の音は、後側の音よりも耳の近くでデバイスから出射する。低周波数では、前側及び後側からの音は、振幅がほぼ等しく、位相がずれており、それより、デバイスは、ほぼ双極子のように挙動する。したがって、近傍に所在し得る人々には、音がほとんど漏出することはない。
【0012】
ドライババスケット又はドライバを収容するハウジングは、いくらかの音響容積、並びに前側及び後側の各々に少なくとも1つの開口部を有するため、音響共鳴が、前部及び後部の両方で発生する。共鳴が前部音響容積又は後部音響容積内で発生すると、その容積から開口部から放射される音圧レベル(SPL)が増加する。共鳴が実質的に異なる周波数で前部及び後部で発生すると、より多くの音が1つの開口部から放射され、それにより、双極子挙動はもはや共鳴周波数以上では発生しなくなり、より多くの不快な漏出が発生する。
【0013】
本開示は、参照により組み込まれる特許出願に記載のタイプの低漏出開放型オーディオデバイスを含む。低漏出を達成することができる1つの方法は、他の製品設計制約を考慮し、前部及び後部の一次(すなわち、基本)音響共鳴周波数が可能な限り一致するように構成されたハウジングを用いることである。1つの非限定的な例では、基本共鳴は、いくつかの許容範囲(例えば、互いに1つのオクターブ内)に一致する。(例えば、前部音響空洞及び後側音響空洞の各々に単一の出口開口部を有する)単純な双極子ハウジングの場合、これは、前部及び後部音響空洞の容積及び/又は長さ、並びにそれらのそれぞれの開口部の面積及び/又は長さを調整することによって達成することができ、そのため、共鳴は、ほぼ一致する。概して、必ずしも必要ではないが、前部空洞容積及び後部空洞容積は、全体的なデバイスがコンパクトになるように小さく作製され、それにより、ユーザの快適性を高めることができる。概して、必ずしも必要ではないが、共鳴が可能な限り高い周波数で生じ(したがって、共鳴周波数まで低漏出を維持し)、同時に、開口部が音を適切な位置に方向付ける(例えば、前部開口部は外耳道の近傍にあり、後部開口部は外耳道から実質的に離れており、そのため、耳における音の打ち消しが少ない)ことを維持するように、開口部面積は、許容可能な限り大きく作製されることが多い。
【0014】
電気音響変換器は、音響要素(例えば、振動板)を含み、音響要素は、前側音響放射を音響要素の前側から放出し、後側音響放射を音響要素の後側から放出する。ハウジング又は他の構造体(例えば、変換器バスケット)は、前側音響放射及び後側音響放射を方向付ける。この構造体における複数の音放出口(少なくとも、前部に1つ及び後部に1つ)により、音が構造体からを離散することを可能にする。電気音響変換器は、耳に送達される音圧と漏出する音との適切な比を達成することができる。
【0015】
本開示は、耳から離れて位置する1つ以上の電気音響変換器を有するタイプの開放型オーディオデバイスを記載している。ヘッドホンは、通常、耳の周り、上、又は内に嵌めて装着し、外耳道の中に音響エネルギーを放射する装置を指す。ヘッドホンは、時には、イヤーホン、イヤーピース、ヘッドセット、イヤーホン、又はスポーツヘッドホンと呼ばれ、有線式又は無線式とすることができる。ヘッドホンは、オーディオ信号を音響エネルギーに変換する音響変換器(ドライバ)を含む。この音響ドライバは、イヤーカップ内に格納されてもされなくてもよい。以下の図及び記載は、いくつかの場合において、単一の開放型オーディオデバイスを示している。ヘッドホンは、各耳に1つずつ、単一の独立型ユニット、又は一対の(各々が少なくとも1つの音響ドライバを含む)ヘッドホンのうちの一方であってもよい。ヘッドホンは、例えば、ヘッドバンドによって、及び/又はヘッドホン内の音響ドライバにオーディオ信号を伝えるリード線によって、別のヘッドホンに機械的に接続され得る。ヘッドホンは、オーディオ信号を無線で受信するためのコンポーネントを含み得る。ヘッドホンは、能動型ノイズ低減(ANR)システムのコンポーネントを含み得る。ヘッドホンはまた、マイクロホンなどの他の機能性をも含み得る。
【0016】
耳の周り若しくは耳の上、又はイヤーヘッドホンから離れたところにおいて、ヘッドホンは、ヘッドバンド又は他の支持構造体、及び、変換器を収容し、ユーザの耳の上又はその上方に又はそれに近接して配置される少なくとも1つのハウジング又は他の構造体を備え得る。ヘッドバンドは、折りたたみ可能又は折りたたみ式とすることができ、複数の部分で作製され得る。いくつかのヘッドバンドは、スライダを含み、スライダは、ヘッドバンドの内側に位置し得、ハウジングの任意の所望の並進を提供する。いくつかのヘッドホンは、ヘッドバンドに枢動可能に組み付けられたヨークを含み、ハウジングは、ヨークに枢動可能に組み付けられて、ハウジングの任意の所望の回転を提供する。
【0017】
開放型オーディオデバイスは、これらに限定されないが、オフイヤーヘッドホン(すなわち、頭部又は耳に結合されるが、外耳道開口部を閉塞しない1つ以上の電気音響変換器を有するデバイス)、及び上部胴体、例えば肩領域によって支えられるオーディオデバイスを含む。以下の記載では、開放型オーディオデバイスがオフイヤーヘッドホンとして図示されているが、これは本開示を限定するものではなく、電気音響変換器は、イヤーカップもイヤーバッドもない、着用者の一方の又は両方の耳に音を送達するように構成された任意のデバイスで使用することができる。
【0018】
図1は、耳12及び/又は耳に近接する頭部に取り付けられた開放型オーディオデバイス20を示している。デバイス20は、イヤーホンと見なされ得る。それは、少なくとも1つの電気音響変換器、(外耳道開口部14に近いが、その上又はその中にはない)前部音響容積音放出開口部24、及び(典型的には、必ずしも必要ではないが、前面開口部24から可能な限り遠くに位置する)後部音響容積音放出開口部26を含む音響モジュール22を含む。音響モジュール22は、耳12に取り付けられるように構成された支持構造体28、及び/又は耳に近接する頭部の部分によって支えられる。
【0019】
例示的な双極子様の開放型オーディオデバイス音響モジュール30が
図2に図示されている。スピーカ30は、ハウジング34内部に位置する音響放射器32を含む。変換器32は、概して構造体48として表される、磁気システムによって生成された磁場とコイル46との相互作用によって移動されるダイアフラム44を備える。構造体48はまた、バスケットを含み得、後部音響空洞38に通気され得る。電気音響変換器の設計及び動作は、当業者によって十分に理解されており、したがって本明細書では完全には記載されない。前側音響放射は、前部音響空洞36に入り、(前側放射とは位相がずれている)後側音響放射は、後部音響空洞38に入る。音は、開口部40を介して前部空洞36を出射し、音は、開口部42を介して後部空洞38を出射する。参照により本明細書に組み込まれる特許出願においてより詳細に記載のように、開口部40及び42を出射する音は位相がずれているため、音は遠距離場において打ち消す。この双極子様の挙動は、デバイス30のユーザの近傍に所在する他者が聞くことができる漏出音の低減をもたらす。また、開口部40は、耳に比較的近いため、その音の大半が、開口部42からの音によって打ち消される前に、耳に到達することになる。したがって、オーディオデバイス30により、ユーザに音を送達することと、他者が聞くことができる漏出音を低減することと、の両方が可能になる。
【0020】
上記に記載のように、前部空洞36及び後部空洞38、並びにそれらのそれぞれの開口部40及び42は各々、基本共鳴周波数を示すように音響的に挙動する。この周波数以上で、空洞開口部を出射する音圧が増加することになる。2つの空洞の共鳴周波数が非常に異なる場合、これは、前部開口部及び後部開口部から放出されるSPLの不均衡をもたらし、これにより、音漏出の増加をもたらす。例示的な漏出データが
図3に掲げられており、これは、着用者が聞く音に対する、(音響モジュールから1メートルに位置する)傍聴者に漏出した音が(100dBのSPLが耳に送達されるときのdB漏出として)、周波数に対してプロットされている。実線のプロットは、後部共鳴周波数が前部共鳴周波数に等しい場合についてのものであり、破線は、前部のものよりもはるかに低い後部共鳴周波数についてのものであり、一点鎖線は、前部のものよりもはるかに高い後部共鳴周波数についてのものである。最良の(最低の)漏出は、共鳴周波数がほぼ等しい(すなわち、約1オクターブ以下の範囲内に等しい)ときに発生する。後部共鳴周波数がはるかに低い場合、漏出が広帯域に増加し、この例では、約500Hz~6kHzの周波数範囲に示されている。後部共鳴周波数がはるかに高い場合、漏出にピークがあり、この例では、約4kHz以上の周波数範囲に示されている。
【0021】
図4の音響モジュール50と同様に、前部開口部又は後部開口部のいずれかが、スクリーンなどの抵抗要素を有し得ることに留意されたい。共鳴は、抵抗要素によって減衰させることができ、これにより、共鳴ピークをより鋭くすることによって前部音響放射及び後部音響放射を一致させることを容易にすることができ、したがって、共鳴周波数の位置ずれは、前部音響放射と後部音響放射との間の差をより小さくする。共鳴を減衰させる別の方法は、容積に結合されたヘルムホルツ共鳴器(図示せず)を用いるものである。いくつかの例では、共鳴器は、別個のポート及び容積要素を含み得るか、又は一定の又は非一定の断面積のいずれかの導波管によって形成され得る。共鳴器は、抵抗スクリーン又は多孔質発泡体などの抵抗要素を含み得る。音響モジュール50は、ハウジング58内に位置する変換器52を含む。変換器52は、前側音響放射を前部音響空洞54内に放射し、後側音響放射を後部音響空洞56内に放射する。音は、開口部60を介して前部空洞54を出射し、開口部64を介して後部空洞56を出射する。開口部60は、抵抗要素62(抵抗性クロスであり得るが、そうである必要はない)によって被覆され、開口部64は、抵抗要素66によって被覆されている。開口部のうちの1つのみが抵抗要素によって被覆され得ることに留意されたい。抵抗要素は、特に後部開口部が抵抗要素を有する場合、要素は、後部が前部共鳴周波数と一致しないときに、後部共鳴を減衰させ、後部から放射される追加の音を最小限に抑えるのに役立つことができるため、漏出に有益であることがある。ただし、この例における抵抗要素はまた、変換器を減衰させ、変換器の共鳴周波数における効率を低減させることがある。抵抗を追加することに加えて、スクリーン62及び66のいずれかは、主に異物の侵入を防止するために使用され得る。
【0022】
1つ以上の開口部が、前側及び/又は後側に使用され得る。複数の開口部を並列に使用することが、共鳴周波数を増加させて前部と後部との一致を容易にする方法であることがある。また、抵抗要素は、複数の開口部のうちの1つ以上に使用され得る。変換器共鳴を減衰させることなく、それぞれの空洞共鳴を減衰させるのに役立てるために、複数の開口部のうちの1つにより高い抵抗要素を使用することが有用であり得る。
【0023】
例が、
図5に示されている。音響モジュール70は、ハウジング78内に位置する変換器72を含む。変換器72は、前側音響放射を前部音響空洞74に放射し、後側音響放射を後部音響空洞76内に放射する。音は、開口部80を介して前部空洞74を出射し、抵抗要素88によって被覆された開口部86を介して出射することもできる。音は、開口部84を介して後部空洞76を出射し、抵抗要素92によって被覆された開口部90を介して出射することもできる。開口部86及び90のうちの1つのみが抵抗要素によって被覆され得ることに留意されたい。要素88及び92は、それぞれ、空洞74及び76内の共鳴を減衰させるのに役立つ。また、前部音響空洞及び後部音響空洞のうちの一方又は両方は、2つ以上の抵抗開口部を有し得る。例えば、1つのより大きい抵抗開口部の代わりに、2つのより小さい抵抗開口部であってもよい。例えば、円周方向に、主開口部又はノズルは、ゼロ度に位置し得、2つの抵抗開口部は、1つが90度、及び1つが-90度に位置し得る。いくつかの例では、スクリーン(図示せず)はまた、異物の侵入を防止するために、開口部80及び84のいずれか又は両方に被せ得る。
【0024】
前部後部音響空洞及び後部音響空洞のうちの一方又は両方に、1つ、2つ、又はそれ以上の開口部が存在することがある。1つの開口部は、概して、音圧のための出口としての役割を果たすが、2つ以上(概して、より小さい)開口部は、単一のそのような開口部に取って代わることができる。同様に、1つの開口部は、空洞共鳴を減衰させるのに役立てるために抵抗性であり得るが、2つ以上(概して、より小さい)抵抗開口部は、単一のそのような開口部に取って代わることができる。前部空洞については、非抵抗開口部又は低抵抗開口部(すなわち、ノズル)が外耳道に近いこと、及び、共鳴時に、抵抗開口部が共鳴を効果的に分流/減衰させることができるように高圧位置であるように、抵抗開口部が外耳道から遠くにあるだけでなく(必要に応じて)ノズルから離れていることがより重要である。こうして、抵抗開口は、実際には(抵抗開口88、
図5のように)放射器の近傍にあり得るが、ノズル開口80の反対側の外周に沿っていてもよい。同様に、背後空洞については、非抵抗開口部/低抵抗開口部が耳において低音を打ち消さないように外耳道から遠くにあることと、共鳴時に、抵抗開口部が分流/減衰させることができるように高圧位置にあるように、抵抗開口部が非抵抗開口部から離れていることと、がより重要である。背後抵抗開口部はまた、より良好な高周波漏出のためにより短い双極子を作製するために、背後非抵抗開口部よりも外耳道に近く位置することがある。こうして、抵抗開口部90は、(
図5のように)放射器の近傍にあり得るが、開口部84の反対側の外周に沿っていてもよい。
【0025】
また、ハウジング内の抵抗要素を用いて前部共鳴及び後部共鳴の両方を減衰させ、前部空洞及び後部空洞を接続することも可能であり、これは、圧力均等化又はPEQポートとも称されることもある。PEQポートは、米国特許第8,989,427号明細書にさらに記載されている。PEQポートを有する変換器の例が、
図6に示されている。音響モジュール100は、ハウジング108内に位置する変換器102を含む。変換器102は、前側音響放射を前部音響空洞104に放射し、後側音響放射を後部音響空洞106内に放射する。音は、開口部110を介して前部空洞104を出射する。音は、開口部112を介して後部空洞106を出射する。開口部114は、空洞104及び106を接続し、抵抗要素116によって被覆されている。抵抗要素116は、低周波数が空洞104と106との間で漏出するのを防止するのに十分な抵抗性であり得、そのため、外耳道への低音出力が維持されるが、前部空洞104及び後部空洞106の両方における共鳴を減衰させるのに十分に開放され得る。いくつかの例では、開口部114及び抵抗要素116は、バスケットの一部分又はダイアフラムの一部分などの、ハウジング108の一部分又は変換器102の一部分であり得る。いくつかの例では、開口部114及び抵抗要素116は、取り付けられた抵抗スクリーンを有する開口部からか、又は材料の穿孔部分から形成され得る。
【0026】
前部空洞及び/又は後部空洞の開口部のうちの1つ以上は、ハウジング内のポート又は導波管を通るものとし得る。ポートは、変換器よりも小さくすることができ、前側の音又は後側の音のいずれかをより最適な位置に方向付けることができる要素として、オーディオデバイス設計において有益であり得る。例えば、
図7は、ハウジング128内に位置する変換器122を含む音響モジュール120を示している。変換器122は、前側音響放射を前部音響空洞124に放射し、後側音響放射を後部音響空洞126内に放射する。音は、開口部130を介して前部空洞124を出射する。音は、開口部132を介して後部空洞126を出射し、この開口部132は、音響伝送ライン又はポート131の端部にあり、そのため、開口部130よりも変換器から遠くにある。第2の後部開口部134は、抵抗要素136によって被覆されている。(第2の抵抗開口部を有するか、又は有さない)ポート又は音響伝送ラインはまた、又は代替的に、前部音響空洞に結合され得る。音響モジュールトポロジは、参照により本明細書に組み込まれる特許出願に開示されている可変長双極子(VLD)と類似である。VLDの態様は、周波数依存双極子挙動を達成することに加えて、本明細書に記載のように、前部共鳴周波数及び後部共鳴周波数を一致させるように調整することによって、最適な漏出が達成されることである。この構成では、前部共鳴周波数及び後部共鳴周波数に一致させることが、前部音響空洞及び後部音響空洞の容積及び/又は長さ、並びにそれらのそれぞれの開口部の面積及び/又は長さを調整することによって達成され得、そのため、共鳴がほぼ一致する。さらに、後部開口部スクリーン136の抵抗は、後部共鳴を減衰させるように調整することができる。例えば、抵抗136が効果的に開放されるように低いという限定的な場合において、後部開口部の総面積が大きく、共鳴周波数が高くなり、一方、抵抗136が効果的に閉じられるように高いという限定的な場合において、後部開口部の総面積が低く、共鳴周波数が低くなる。抵抗136を適度の有効抵抗に調整することにより、それらの両極の間に後部共鳴をシフトさせ、それを減衰させることができる。いくつかの例では、この抵抗は、周波数依存双極子挙動に対するその効果とバランスをとられなければならない。概して、必ずしも必要ではないが、前部空洞容積及び後部空洞容積は、デバイス全体がコンパクトになるように小さく作製されて、それにより、ユーザの快適性を高めることができる。概して、必ずしも必要ではないが、開口部面積は、共鳴が可能な限り高い周波数で発生し(したがって、共鳴周波数まで低い漏出を維持し)、一方、開口部が音を適切な位置に方向付けるように維持する(例えば、前部開口部が外耳道の近傍にあり、後部開口部が外耳道から実質的に遠くにあり、そのため、耳において音の打ち消しがより少なくなる)ように、許容可能な限り大きく作製されることが多い。
【0027】
本明細書に開示される抵抗要素は、後部開口部から放射される音を最小限に抑えるために、後部共鳴を減衰させるために使用することができる。このような減衰は、ポートが後部共鳴周波数を低下させることができるため、
図7に示されるようなポート付き後部空洞設計において特に有用であり得、そうでなければ、前部対後部共鳴不一致が大きくなり、そのため、漏出音が大きくなり得る。
【0028】
図7のような設計の使用の1つの非限定的な例として、開放型オーディオデバイスは、前部開口部130が外耳道に非常に近い状態で、外耳の耳甲介艇に小さな変換器を配置するように構成され得る。後部ポート131は、後部の音を外耳道から遠くに方向付けるために使用される。必ずしも必要ではないが、好ましくは、後部開口132は、外耳を覆わないように位置するように構成される。(要素136などの)後部抵抗要素は、漏出を減少させるために、後部共鳴周波数を増加及び減衰させるように、後側で必要とされ得る。
【0029】
前部共鳴及び後部共鳴の(例えば、規定された許容範囲内までの)所望の一致は、変換器が励起されて前部共鳴及び後部共鳴が一致したかどうかを判定する間に、開口部の各々における圧力を測定するプローブマイクロフォンを使用して測定することができる。測定は、変換器を直接駆動し、得られたボルト当たりの音圧を測定することによっても行うことができる。代替的に、変換器コーンの動きをレーザによって測定することができ、コーン速度当たりの圧力を測定して共鳴を判定することができる。
【0030】
上記で言及されるように、支持構造体は、典型的には、ユーザの身体で支えられるように構成されることになる。支持構造体の追加の非限定的な例は、
図8の眼鏡フレーム150である。フレーム150は、鼻に着座するように構成されたブリッジ152、及び左耳及び右耳の上又は近傍に着座するように構成されたテンプル部154及び158を備え、典型的には、遠位端155及び159が耳の近傍の頭部に押し当てられる。音響モジュール156及び160は、テンプル部の一部分であるか、又はテンプル部によって支えられ、上記に記載の音響モジュール設計のいずれかを備えることができる。テンプル部は各々、前部音響空洞開口部(図示せず、典型的には、耳の直前に位置するように構成される)を通って耳に向かって音を投射する電気音響変換器(図示せず)を支え、前部開口部から離間された後部空洞開口部を含む。
図8に図示されるタイプの眼鏡音声デバイスは、Bose Corporation(Framingham,MA,USA)から入手可能なBose(登録商標)Framesオーディオサングラスなど、当技術分野で知られている。
【0031】
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく、追加の改変を行うことができ、したがって、他の例も、以下の特許請求の範囲内にあることが理解される。