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特許7618653固体電解質と電極との間の界面抵抗を下げるための固体電解質の表面処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】固体電解質と電極との間の界面抵抗を下げるための固体電解質の表面処理
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20250114BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20250114BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250114BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250114BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20250114BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20250114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250114BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20250114BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20250114BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01M4/40
H01M4/134
H01M10/0562
H01M10/058
H01M10/054
H01M10/052
H01G11/56
H01G11/84
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022514726
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020049025
(87)【国際公開番号】W WO2021046101
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】16/560,229
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515270714
【氏名又は名称】イーエムピーエイ
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ベイ マリー-クロード
(72)【発明者】
【氏名】バタッリア コルジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サカモト ジェフリー
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/003846(WO,A1)
【文献】特開昭58-049660(JP,A)
【文献】国際公開第2018/184007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00-13/016
13/34
H01G 11/00-11/86
H01M 4/00-4/62
10/05-10/0587
10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスを形成するための方法であって、前記方法は、
(a)抵抗性表面領域を有する前駆体電解質であって金属カチオン-アルミナを含む前駆体電解質を提供するステップと、
(b)前記抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するステップと、
(c)その後、固体電解質を形成するために表面ヒドロキシル基を除去すべく前記前駆体電解質を加熱するステップと、
(d)その後、前記固体電解質の側面を電極に接触させて電気化学デバイスを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(d)は、0.01MPa~10MPaの範囲の力を使用して前記固体電解質及び前記電極を一緒にプレスするステップをさらに含む、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記電極はナトリウム金属を含み、
前記金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナである、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記電極と前記固体電解質との間の面積比抵抗は100Ωcm未満である、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
(e)前記固体電解質の反対側を第2の電極と接触させて電気化学セルを形成することをさらに含む、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
室温での前記電気化学セルの臨界電流密度は2mA/cmより大きい、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、及びストロンチウムからなる群から選択される金属から実質的になるアノードである、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属はナトリウムである、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードである、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記電極は、カチオンホスト材料を含むアノードである、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記電極は、ナトリウムホスト材料を含むアノードであり、
前記ナトリウムホスト材料は、(i)ナトリウムドープシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物、(ii)シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金、(iii)ナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物及びそれらの混合物、並びに(iv)炭素からなる群から選択される、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
記電極と前記固体電解質との間の面積比抵抗は室温で10Ωcm未満である、
請求項1に記載の方法
【請求項14】
前記電極はナトリウム金属を含み、
前記金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナである、
請求項13に記載の方法
【請求項15】
前記固体電解質の反対側と接触することにより電気化学セルを形成する第2の電極をさらに備える、
請求項13に記載の方法
【請求項16】
室温での前記電気化学セルの臨界電流密度は2mA/cmより大きい、
請求項15に記載の方法
【請求項17】
前記電極は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、及びストロンチウムからなる群から選択される金属から実質的になるアノードである、
請求項13に記載の方法
【請求項18】
前記金属はナトリウムである、
請求項17に記載の方法
【請求項19】
前記第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードである、
請求項15に記載の方法
【請求項20】
前記電極は、カチオンホスト材料を含むアノードである、
請求項13に記載の方法
【請求項21】
前記電極は、ナトリウムホスト材料を含むアノードであり、
前記ナトリウムホスト材料は、(i)ナトリウムドープシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物、(ii)シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金、(iii)ナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物及びそれらの混合物、並びに(iv)炭素からなる群から選択される、
請求項13に記載の方法
【請求項22】
前記第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードである、
請求項15に記載の方法
【請求項23】
前記金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナであり、
前記前駆体電解質は、前記ナトリウム-β’’-アルミナ用の安定剤をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記安定剤は、LiO、MgO、NiO、CoO、ZnO、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)は、アルミニウムを含む第1の固体、ナトリウムを含む第2の固体、及びリチウムを含む第3の固体を組み合わせて混合物を形成するステップと、前記混合物を焼結して前記前駆体電解質を形成するステップと、を含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(b)は、前記抵抗性表面領域の前記一部を研磨粒子で除去するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(c)は、前記前駆体電解質を400℃~1600℃の範囲の温度で加熱するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(c)は、前記前駆体電解質を前記温度で0.1秒~5時間加熱するステップを含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(c)は、前記前駆体電解質を不活性雰囲気内で加熱するステップを含む、
請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年9月4日に出願された米国特許出願第16/560229号明細書の優先権を主張する。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する記述>
該当なし。
【0003】
本発明は、ナトリウムイオン伝導性固体電解質、ナトリウム電池電極、及びこれらの電極と固体電解質とを含む固体ナトリウム電池等の電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
Na-β’’-アルミナ(NBA)セラミックは、高速ナトリウムイオン伝導体であり、高温のナトリウムニッケルクロリド(NaNiCl)及びナトリウム-硫黄(NaS)電池の電解質として市販されている。
【0005】
現在、電気自動車はリチウムイオン電池技術を使用して運転されている。しかし、それらは、従来の燃料車両に対してまだ競争力がなく、可燃性液体電解質の使用に関連する安全上の懸念を抱えている。セラミック固体電解質は、不燃性であるため、従来の液体電解質の安全な代替物を提供することができる。その上、金属アノードの使用は、エネルギー密度の大幅な増加を可能にし得る。
【0006】
ナトリウム固体電池の開発における1つの課題は、セラミックNBA電解質と金属ナトリウムアノードとの間の高い界面抵抗に関連付けられる。この高い界面抵抗は、デンドライトと呼ばれる、電解質を通る金属フィラメントの形成によってセルの短絡前にセルが耐えることができる臨界電流密度を著しく減少させることが示された。高い界面抵抗の原因はまだ確立されていないが、ナトリウムの不十分な湿潤及び水分及び空気への曝露によって形成されたNBAの表面における不純物の存在が役割を果たすと考えられる。NBA表面を鉛、炭素又はスズで被覆すること、又はセル組み立て前に400℃でNBAを熱処理すること等、様々な戦略が開発されている。これらの結果は、ナトリウム湿潤の改善に成功したことが示されているが、最近の報告では、室温で数百Ωの大きな界面抵抗が依然として提示されている。
【0007】
界面抵抗の低減は、現在、Liイオン伝導性セラミック、特にリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)セラミックについても集中的に研究されている。LLZOセラミックの熱処理は、表面不純物を除去することによって界面抵抗を低減することに成功したことが示された。低い界面抵抗にもかかわらず、室温(1mA/cm)での臨界電流密度(CCD)値は、電気自動車等の高速充電用途に必要な最小値を依然として下回っている(>3mA/cm)。臨界電流密度は、故障が観察される前に固体電解質が支持できる電流密度を指す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、電極と固体電解質との間の界面抵抗を下げ、固体電池の臨界電流密度を上げるための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、電気化学デバイスを形成及び処理して、電気化学デバイスにおける固体電解質材料と電極との間の界面抵抗の面積比抵抗(ASR)を低下させる方法を提供する。1つの非限定的な実施形態では、金属ナトリウムとナトリウム-β’’-アルミナ電解質との間の界面抵抗を減少させる方法が開示されている。この手法は、ナトリウム-β’’-アルミナセラミックの表面を研磨し、続いて不活性雰囲気中で熱処理することを含む。第2のステップでは、金属ナトリウムをナトリウム-β’’-アルミナセラミック上に配置し、セラミック電解質に対するナトリウムの接着性を高めるためにスタック圧力を加える。ナトリウム/ナトリウム-β’’-アルミナ界面を形成するこの技術は、室温で<10Ωcm及び60℃で<3Ωcmの界面抵抗をもたらし、それぞれ12mA/cm及び18mA/cmの臨界電流密度を可能にする。これは、次世代固体ナトリウム系電池において、表面改質又は界面層なしで固体ナトリウム/ナトリウム-β’’-アルミナ界面を使用する能力を示す。
【0010】
一態様において、本開示は、固体電解質の形成方法を提供する。本方法は、(a)抵抗性表面領域を有する前駆体電解質を提供するステップであって、前駆体電解質が金属カチオン-アルミナを含む、ステップと、(b)抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するステップと、(c)固体電解質を形成するために前駆体電解質を加熱するステップとを含み得る。金属カチオンは、アルカリ金属のカチオンからなる群から選択することができる。アルカリ金属はナトリウムであり得る。アルカリ金属はリチウムであり得る。金属カチオン-アルミナは、ナトリウム-β-アルミナ及びナトリウム-β’’-アルミナからなる群から選択することができる。金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナであることができ、前駆体電解質はナトリウム-β’’-アルミナ用の安定剤をさらに含む。安定剤は、LiO、MgO、NiO、CoO、ZnO、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0011】
この方法では、ステップ(a)は、アルミニウムを含む第1の固体、ナトリウムを含む第2の固体、及びリチウムを含む第3の固体を組み合わせて混合物を形成するステップ、及び混合物を焼結して前駆体電解質を形成するステップを含むことができる。本方法において、ステップ(b)は、抵抗性表面領域の一部を研磨粒子で除去するステップを含むことができる。本方法において、ステップ(c)は、前駆体電解質を400℃~1600℃の範囲の温度で加熱するステップを含むことができる。本方法では、ステップ(c)は、前駆体電解質をその温度で0.1秒~5時間加熱するステップを含むことができる。本方法において、ステップ(c)は、前駆体電解質を不活性雰囲気内で加熱するステップを含むことができる。
【0012】
別の態様では、本開示は、電気化学デバイスを形成するための方法を提供する。本方法は、(a)抵抗性表面領域を有する前駆体電解質を提供するステップであって、前駆体電解質が金属カチオン-アルミナを含む、ステップと、(b)抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するステップと、(c)固体電解質を形成するために前駆体電解質を加熱するステップと、(d)固体電解質の側面を電極に接触させて電気化学デバイスを形成するステップとを含み得る。本方法において、ステップ(d)は、0.01MPa~10MPaの範囲の力を使用して固体電解質及び電極を一緒にプレスするステップをさらに含むことができる。電極はナトリウム金属を含むことができ、金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナであることができる。電極と固体電解質との間の面積比抵抗は、100Ωcm未満であり得る。本方法は、固体電解質の反対側を第2の電極と接触させて電気化学セルを形成することをさらに含むことができる。室温での電気化学セルの臨界電流密度は、2mA/cmより大きくすることができる。
【0013】
電極は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、及びストロンチウムからなる群から選択される金属から実質的になるアノードとすることができる。金属はナトリウムであり得る。第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードとすることができる。電極は、カチオンホスト材料を含むアノードとすることができる。電極は、ナトリウムホスト材料を含むアノードとすることができ、ナトリウムホスト材料は、(i)ナトリウムドープシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物、(ii)シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金、(iii)ナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物及びそれらの混合物、並びに(iv)炭素からなる群から選択することができる。第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードとすることができる。
【0014】
別の態様において、本開示は、金属カチオン-アルミナを含む固体電解質と、固体電解質の側面と接触する電極とを含む電気化学デバイスを提供し、電極と固体電解質との間の面積比抵抗は室温で10Ωcm未満である。電極はナトリウム金属を含むことができ、金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナであることができる。電気化学デバイスは、固体電解質の反対側と接触し、それによって電気化学セルを形成する第2の電極をさらに備えることができる。室温での電気化学セルの臨界電流密度は、好ましくは2mA/cmより大きい。
【0015】
電極は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、及びストロンチウムからなる群から選択される金属から実質的になるアノードとすることができる。金属はナトリウムであり得る。第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードとすることができる。電極は、カチオンホスト材料を含むアノードとすることができる。電極は、ナトリウムホスト材料を含むアノードとすることができ、ナトリウムホスト材料は、(i)ナトリウムドープシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物、(ii)シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金、(iii)ナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物及びそれらの混合物、並びに(iv)炭素からなる群から選択することができる。第2の電極は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択される活物質を含むカソードとすることができる。
【0016】
本発明の前述及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになる。説明では、本明細書の一部を形成し、本発明の一例示的な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。しかし、そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本明細書を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ナトリウム金属電池の概略図である。
図2】界面抵抗に対する熱処理(HT)温度の影響を示す図であり、(a)は異なる熱処理温度の代表的なナイキストプロットであり、マーカは実験データを表し、線はフィッティングされたデータを表し、(b)は熱処理温度の関数としての界面抵抗を示し、(c)は対称Na/Na-β’’-アルミナ/Naセル及びインピーダンススペクトルをフィッティングするための等価回路の概略図である。
図3-1】(a)~(c)は熱処理前、(d)~(f)は400℃、(i)~(k)は700℃、(l)~(n)は900℃でのAr雰囲気下での熱処理後のNa-β’-アルミナのC 1s、O 1s及びAl 2p-Na 2sコアレベルのXPSピークをそれぞれ示す図である。
図3-2】すべてのNa-β’-アルミナ試料についてXPSによって推定された、表面化学組成の要約を示す図である。
図4】(a)では、温度の関数としての代表的なナイキストプロットを、(b)では温度依存性界面抵抗及びイオン伝導性を、(c)では、電子伝導性を、及び(d)では、可読性のために1-tとしてプロットされたイオン輸率tを示す図である。
図5】(a)は、室温でCCD測定を受け、半周期当たり0.25mAh/cmの電荷を受けたNa/NBA/Naセルの代表的な電位応答を示し、(b)は、短絡前後のナイキストプロットを示し、(c)は、低電流密度でのCCD測定中の電位応答の詳細図を示し、(d)は、中程度の電流密度でのCCD測定中の電位応答の詳細図を示し、(e)は、短絡に近いところでのCCD測定中の電位応答の詳細図を示し、分極の増加を示している図である。
図6】(a)及び(b)は、半周期あたりの総移動電荷がQ=0.25mAh/cm(a)及びQ=3mAh/cm(b)(故障前の最後の2つのサイクルの電位応答は4.5Vの限界に達したが、y軸スケールバーの最大値は、より良好な可読性のために1Vである)でCCD測定を行ったNa/NBA/Naセルの代表的な電位応答を示し、より大量の総移動電荷がより高い分極及び早期短絡をもたらしており、(c)は、界面抵抗の関数としてのCCDを示す図である。
図7】温度依存性CCD、及び文献との比較を、(a)ではアレニウス式で示し、(b)では相同温度(T/Tmelting)の関数として示しており、[22]は、L.C. De Jonghe, L. Feldman, A. Buechele, Failure modes of Na-beta alumina, “Solid State Ionics, 5” (1981) 267-269であり、[25]は、M. Wang, J.B. Wolfenstine, J. Sakamoto, “Temperature dependent flux balance of the Li/Li7La3Zr2O12 interface”, Electrochim. Acta. 296 (2019) 842-847である。
【0018】
本発明は、特許請求の範囲及び図面を参照する以下の詳細な説明を考慮すると、よりよく理解され、他の特徴、態様及び利点が明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の任意の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は以下の図面に示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないと解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであり、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」又は「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。
【0020】
以下の説明は、当業者が本発明の実施形態を作成及び使用することを可能にするために提示される。図示された実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書の一般的な原理は、本発明の実施形態から逸脱することなく他の実施形態及び用途に適用することができる。したがって、本発明の実施形態は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。当業者は、本明細書で提供される例が多くの有用な代替物を有し、本発明の実施形態の範囲内にあることを認識する。
【0021】
本明細書に記載の様々な実施形態は、固体電解質とナトリウム金属アノードとの間に界面を形成するための方法を提供する。
【0022】
本明細書で使用される「臨界電流密度(CCD)」という用語は、故障が観察される前に固体電解質ができる電流密度を指すことができる。
【0023】
本明細書で使用される「面積比抵抗(ASR)」という用語は、いかなる構成要素の面積比抵抗も指すことができるが、一般に、金属アノードと固体電解質界面との間の抵抗を定義するために使用される。
【0024】
本明細書に記載の一実施形態は、抵抗種を除去することによって固体電解質とアノードとの間の界面におけるASRを低減する方法に関する。1つの非限定的な例示的用途では、固体電解質116は、図1に示すようにナトリウム金属電池110に使用することができる。ナトリウム金属電池110は、カソード114に接触する集電体112(例えば、アルミニウム)を含む。固体電解質116は、カソード114とアノード118との間に配置され、アノード118は集電体122(例えば、アルミニウム)と接触している。ナトリウムイオン電池10の集電体112及び122は、電気構成要素124と電気的なやりとりを行うものとすることができる。電気構成要素124は、ナトリウム金属電池110を、電池を放電する電気負荷又は電池を充電する充電器と電気的なやりとりを行うものとすることができる。ナトリウム金属電池110は、室温で動作することができる。
【0025】
第1の集電体112及び第2の集電体122は、導電性金属又は任意の適切な導電性材料を含むことができる。一部の実施形態では、第1の集電体112及び第2の集電体122は、アルミニウム、ニッケル、銅、それらの組合せ及び合金を含む。他の実施形態では、第1の集電体112及び第2の集電体122は、0.1ミクロン以上の厚さを有する。図1に示す厚さは縮尺通りに描かれておらず、第1の集電体112及び第2の集電体122の厚さは異なっていてもよいことを理解されたい。
【0026】
ナトリウム金属電池110のカソード114に適した活物質は、ナトリウムイオンを貯蔵し、その後放出することができるナトリウムホスト材料である。非限定的な例示のカソード活物質は、層状金属酸化物、金属ハロゲン化物、ポリアニオン性化合物、多孔質炭素、及び硫黄含有材料からなる群から選択され得る。層状金属酸化物の例には、NaFeO、NaMnO、NaTiO、NaNiO、NaCrO、NaCoO、及びNaVOが含まれる。例示的な金属ハロゲン化合物は式MXを有し、式中、Mはニッケル、鉄、銅、亜鉛、カドミウム、チタン、アルミニウム、及びスズから選択することができ、Xはヨウ素、臭素、塩素、及びフッ素から選択することができ、mは金属Mの原子価に対応する。ポリアニオン性化合物の非限定的な例には、Na(PO、NaFe(SO、NaFePO、NaFeP、NaMP(ここで、Mは、Fe、Ni、Co及びMnの少なくとも1つである)、及びNa(PO(ここで、Mは、Fe、Ni、Co及びMnの少なくとも1つである)が含まれる。多孔質炭素はナトリウム空気電池に適しており、硫黄含有材料はナトリウム硫黄電池に適している。カソード活物質は、任意の数のこれらのカソード活物質の混合物であり得る。
【0027】
一部の実施形態では、ナトリウム金属電池110のアノード118はナトリウム金属からなる。他の実施形態では、一例示的なアノード118の材料は、ナトリウム金属から実質的になる。
【0028】
代替の実施形態では、アノードは、(i)ナトリウムドープシリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物、(ii)シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、カドミウム、及びそれらの混合物のナトリウム含有合金、(iii)ナトリウム含有酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物及びそれらの混合物、並びに(iv)炭素からなる群から選択されるナトリウムホスト材料を含む。アノードは、任意の数のこれらのナトリウムホスト材料の混合物であり得る。
【0029】
ナトリウム金属電池110の電解質116は、金属カチオン-アルミナ、好ましくは金属カチオン-β-アルミナ及び金属カチオン-β’’-アルミナを含む固体電解質材料とすることができる。金属カチオンは、アルカリ金属のカチオンからなる群から選択することができる。金属カチオンは、ナトリウムであることが好ましい。金属カチオン-アルミナは、ナトリウム-β-アルミナ及びナトリウム-β’’-アルミナであり得る。好ましくは、固体電解質材料はナトリウム-β’’-アルミナを含む。固体電解質材料は、ナトリウム-β’’-アルミナ用の安定剤をさらに含むことができる。安定剤の安定化量は、LiO、MgO、NiO、CoO、ZnO、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0030】
別の非限定的な例示的用途では、固体電解質はリチウム金属電池に使用することができる。リチウム金属電池のカソードに適した活物質は、リチウムイオンを貯蔵し、その後放出することができるリチウムホスト材料である。一例示的なカソード活物質は、金属が1つ又は複数のアルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムであるリチウム金属酸化物である。リチウム金属酸化物の非限定的な例は、LiCoO(LCO)、LiFeO、LiMnO(LMO)、LiMn、LiNiO(LNO)、LiNiCo、LiMnCo、LiMnNi、LiMnNi、LiNiCoAl、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等である。カソード活物質の別の例は、リン酸鉄リチウム(LFP)及びフルオロリン酸鉄リチウム等の、一般式LiMPO(ここで、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルの1つ又は複数である)を有するリチウム含有リン酸塩である。電子伝導性、層の順序付け、脱リチウム化に対する安定性、及びカソード材料のサイクル性能に影響を及ぼすために、多くの異なる元素、例えばCo、Mn、Ni、Cr、Al、又はLiを構造に置換又は追加で添加することができる。一部の実施形態では、リチウム金属電池のアノードに適した活物質は、リチウム金属からなる。他の実施形態では、一例示的なアノード材料は、リチウム金属から実質的になる。一代替の実施形態では、アノードは、グラファイト等のリチウムホスト材料を含む。
【0031】
さらに他の非限定的な例示的用途では、固体電解質は、ナトリウム又はリチウム以外のカチオン化学を有するインターカレーション電池に使用することができる。例えば、電池のアノードは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、及びストロンチウムからなる群から選択される金属から実質的になり得る。カソードは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、銀、又はタリウムのカチオンを貯蔵及び放出することができる活物質を含むことができる。
【0032】
本開示は、固体電解質の形成方法を提供する。本方法は、(a)抵抗性表面領域を有する前駆体電解質を提供するステップであって、前駆体電解質が金属カチオン-アルミナ、好ましくは金属カチオン-β-アルミナ又は金属カチオン-β’’-アルミナを含む、ステップと、(b)抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するステップと、(c)固体電解質を形成することにより前駆体電解質を加熱するステップとを含む。1つの非限定的な例の前駆体電解質は、アルミニウムを含む第1の固体(例えば、AlO(OH))、ナトリウムを含む第2の固体(例えば、NaCO)、及びリチウムを含む第3の固体(例えば、LiOH)を組み合わせて混合物を形成し、混合物を焼結して前駆体電解質を形成することによって形成することができる。抵抗性表面領域の一部を研磨粒子で除去することができる。
【0033】
一部の実施形態では、前駆体電解質を加熱して抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去することは、180℃超、又は200℃超、又は250℃超、又は300℃超、又は350℃超、又は400℃超、又は450℃超、又は500℃超、又は550℃超、又は600℃超、又は650℃超、又は700℃超、又は750℃超、又は800℃超、又は850℃超、又は900℃超、又は950℃超、又は1000℃超の温度で行われる。好ましくは、前駆体電解質の加熱は、400℃~1600℃の範囲の温度で行われる。代替的に、前駆体電解質の加熱は、400℃~1600℃、又は500℃~1000℃、又は500℃~1200℃、又は500℃~1300℃、又は500℃~1500℃、又は600℃~1600℃の範囲の温度で行うことができる。
【0034】
抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するために前駆体電解質を加熱することは、任意の時間にわたって行うことができ、大気圧より高い圧力、大気圧である圧力、又は大気圧より低い圧力を含む任意の圧力で行うことができる。好ましくは、前駆体電解質を上記の温度で0.1秒~5時間、又は1~5時間、又は2~4時間加熱する。
【0035】
一部の実施形態では、抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するために前駆体電解質を加熱することは、周囲空気中で行われる。他の実施形態では、抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するために前駆体電解質を加熱することは、水分又はCOの存在のない雰囲気中で行われる。一部の実施形態では、雰囲気は不活性ガスを含む。適切な不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、ラドン、及び窒素を含む。
【0036】
一部の実施形態では、前駆体電解質を加熱して抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去することは、抵抗性表面領域の0.1%~99.9%を除去することを含む。一部の実施形態では、前駆体電解質を加熱することにより、抵抗性表面領域の5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上が除去される。
【0037】
本開示はまた、電気化学デバイスを形成するための方法を提供する。本方法は、(a)抵抗性表面領域を有する前駆体電解質を提供するステップであって、前駆体電解質が金属カチオン-アルミナ、好ましくは金属カチオン-β-アルミナ又は金属カチオン-β’’-アルミナを含む、ステップと、(b)抵抗性表面領域の少なくとも一部を除去するステップと、(c)固体電解質を形成するために前駆体電解質を加熱するステップと、(d)固体電解質の側面を電極に接触させて電気化学デバイスを形成するステップとを含む。ステップ(d)は、0.01MPa~10MPaの範囲の力を使用して固体電解質及び電極を一緒にプレスするステップをさらに含むことができる。方法の1つのバージョンでは、電極はナトリウム金属を含み、金属カチオン-アルミナはナトリウム-β’’-アルミナである。固体電解質の側面を電極と接触させた後、電極と固体電解質との間の面積比抵抗は、200Ωcm未満、又は100Ωcm未満、又は75Ωcm未満、又は50Ωcm未満、又は25Ωcm未満、又は10Ωcm未満、又は5Ωcm未満、又は3Ωcm未満、又は2Ωcm未満である。
【0038】
電気化学デバイスの形成前、形成中又は形成後に、固体電解質の反対側を第2の電極と接触させて電気化学セルを形成することができる。電気化学セルを形成した後、室温での電気化学セルの臨界電流密度は、2mA/cm超、又は3mA/cm超、又は4mA/cm超、又は5mA/cm超、又は8mA/cm超、又は10mA/cm超、又は12mA/cm超、又は15mA/cm超、又は20mA/cm超である。
【0039】
<実施例>
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態及び態様を示しており、さらに例示するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0040】
[概要]
アルカリ金属アノードを伴う全固体電池は、高いエネルギー密度を達成する可能性を有する。しかし、デンドライト形成の開始は、固体電解質にわたる最大めっき電流密度を制限し、急速充電を妨げる。最大めっき電流密度は、固体電解質と金属アノードとの間の界面抵抗に関係することが示された。Na-β’’-アルミナセラミックは、その高いイオン伝導性、低い電子伝導性、及びナトリウム金属に対する安定性のために、室温全固体電池用の電解質として優れた候補である。本明細書において、本発明者らは、アルゴン雰囲気中でのNa-β’’-アルミナセラミックの熱処理が、室温で<10Ωcmの界面抵抗及び12mA/cmまでの臨界電流密度を可能にすることを実証した。Na-β’’-アルミナについて得られた臨界電流密度は、同等の条件下でガーネット型LiLaZr12電解質について測定されたものよりも10倍高い。X線光電子分光法は、Na-β’’-アルミナとナトリウム金属との間の界面におけるヒドロキシル基及び炭素汚染の除去がそのような値に達するために重要であることを示した。Na-β’’-アルミナとLiLaZr12の温度依存性のストリッピング/めっき挙動を比較することによって、界面速度論を支配する際のアルカリ金属の役割を考察する。この実施例は、デンドライト形成への新たな洞察を提供し、急速充電全固体電池への道を開く。具体的には、室温でNa-β’’-アルミナセラミックに最大12mA/cmのナトリウムめっきを施すことにより、急速充電全固体ナトリウム電池への道を開く。
【0041】
[序論]
室温で10mA/cm超の電流密度でアルカリ金属の可逆的なストリッピング及びめっきを可能にすることは、確立された電池技術を超えるエネルギー及び電力密度を伴う次世代電池を可能にするために重要である。しかし、液体電解質中のリチウム金属アノードの反復サイクルは、セルを短絡させ、安全上の危険を構成するリチウム金属デンドライトの形成をもたらす[参考文献1]。同様の現象は、全固体電池に使用される固体電解質で観察され、リチウム金属は、繰り返しのサイクル時に電解質の内部に堆積する傾向があり、最終的にアノードとカソードとの間の短絡をもたらす[参考文献2~5]。
【0042】
根本的なメカニズムはまだ議論中であるが、デンドライト形成の臨界電流密度(CCD)は、固体電解質と金属アノードとの間の界面抵抗に関係することが示されている[参考文献6]。例えば、LiLaZr12(LLZO)電解質とリチウム金属アノードとの間の界面における界面抵抗を低減するために、いくつかの戦略が採用されている。LLZOは、その高いイオン伝導率(室温で約1mS/cm)及びリチウム金属に対する高い安定性のために、現在集中的に研究されている[参考文献7、8]。戦略には、界面層の使用(例えば、Au[参考文献9]、Ge[参考文献10])、電解質から表面汚染を除去するための熱処理[参考文献6]、又はサイクル中にセルを加圧することによって接触を促進すること[参考文献11、12]が含まれる。液体電解質とリチウム金属との間の界面について測定された値に匹敵する界面抵抗値を得るにもかかわらず、CCD値は急速充電要件(例えば、2Cで充電/放電された5mAh/cmの面積充電容量に相当する10mA/cm[参考文献13])を下回ったままである。
【0043】
本実施例では、急速充電全固体電池の電解質候補としてNa-β’’-アルミナセラミックを調査する。Na-β’’-アルミナは、その高いイオン伝導率、低い電子伝導率、及びナトリウム金属に対する安定性のために、300℃付近で動作する高温のナトリウムニッケルクロリド(NaNiCl)及びナトリウム-硫黄(NaS)電池において既に商業的に使用されている[参考文献14、15、16]。しかし、ナトリウム湿潤不良及び表面不純物の存在に関連付けられた可能性がある高い界面抵抗は、室温電池用の固体電解質としてのその使用を妨げている[参考文献16]。
【0044】
本明細書では、微細研磨されたNa-β’’-アルミナ表面にアルゴン雰囲気中で熱処理を適用することによって、ナトリウム金属に対する低い界面抵抗<10Ωcmを達成することができ、高速充電要件を満たす室温で12mA/cmのCCD値を可能にすることを示す。移動される総電荷に対するCCD値の依存性も調べる。LLZOと比較して、同様の輸率にもかかわらず、電流密度の10倍の増加が観察される。電解質の電子伝導性の重要な役割及びCCD上のアルカリ金属の融解温度も考察する。
【0045】
[材料及び方法]
噴霧乾燥されたLi安定化Na-β’’-アルミナ粉末は、ベーマイト(AlO(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、及び炭酸ナトリウム(NaCO)からの固体合成によって調製された[参考文献17]。粉末を直径15ミリメートルのグリーン体にプレスした。これらを、3℃/分の一定の加熱及び冷却速度を適用して、高温実験室炉(Carbolite Gero HTF1700)で静的空気中1600℃で5分間焼結した。ナトリウム(及びリチウム)損失を軽減し、焼結中の収縮を促進するために、サンプルを同じNa-β’’-アルミナ粉末から作製されたグリーンバッファディスク上に置いた。サンプル及びバッファディスクを、高密度マグネシウムスピネルドーム及び対応するマグネシウムスピネル支持ディスク内に、0.14g/cmのカプセル化体積に対するNa-β’’-アルミナ質量(サンプル及びバッファディスク)の一定の比でカプセル化した。次いで、ペレットをますます細かいサンドペーパーで平面平行に粉砕し、0.1μmのダイヤモンドペーストを使用して最終研磨まで一連のダイヤモンドペーストで研磨した。得られたペレットは、厚さ1.4±0.3ミリメートル及び直径12.7ミリメートルの最終寸法を有していた。次いで、サンプルをアルゴン雰囲気中で400℃~900℃の温度で3時間熱処理した。
【0046】
セル組み立て及び電気化学的特性評価を、グローブボックスのアルゴン雰囲気下で行った。熱処理されたNa-β’’-アルミナセラミックを、最初にポリイミド箔を使用して両側を0.49cmの面積にマスキングした。次いで、機械的に洗浄したナトリウム箔を、マスクしたペレットの両面に3.4MPaの圧力でプレスした。アルゴングローブボックス中、3.4MPaの圧力でニッケル集電体を使用するBiologic VMP-300ガルバノスタット/ポテンショスタットを使用して電気化学的特性評価を行った。Na-β’’-アルミナの温度依存性イオン伝導性は、20mVの正弦波振幅で0.5Hz~7MHzの周波数で測定した定電位電気化学インピーダンス分光法(PEIS)データから抽出した。温度依存電子伝導率は、Na/Naに対して1V、2V、3Vで階段電位差測定(Mott-Schottky)を適用するDC分極法によって決定される。臨界電流密度(CCD)の評価は、3.4MPaの初期圧力を印加する定電流測定によって行った。0.25mAh/cm又は3mAh/cmの定電荷を移動させながら、電流密度を各サイクルで増加させた。各めっき及びストリッピングサイクルの前後にPEISを行った。CCDは、電位応答及びセルインピーダンスの突然の低下によって示される、セルの短絡が発生したときの電流密度として定義された。CCD値は、3~4回の測定にわたる平均として与えられ、エラーバーは、最大値及び最小値を表す。
【0047】
X線光電子分光法(XPS)測定を、30eVの通過エネルギーを伴う単色化Al KαX線源(1484.6eV)を使用してPHI Quantum2000で室温にて行った。すべての測定は、各サンプルの、直径150μmの、3つの異なる領域で行った。サンプルの充電は、低エネルギー電子銃によって提供される電荷補償によって防止した。XPSデータをCasaXPSソフトウェアで処理した。スペクトルは、C 1s光電子放出ピークの炭化水素成分を結合エネルギー285.0eVに設定することによって較正した。
【0048】
[結果及び考察]
《熱処理温度が界面抵抗及び界面化学に及ぼす影響》
ナトリウム金属とNa-β’’-アルミナとの間の界面抵抗(Rint)に対する熱処理の影響を研究するために、400℃~900℃の温度のアルゴン中で熱処理したNa-β’’-アルミナペレットに対して定電位電気化学インピーダンス分光法(PEIS)測定を行い、研磨されたままの未処理サンプルと比較した。これらの測定は、図2の(c)に示す対称Na/Na-β’’-アルミナ/Naセルで実施した。Na-β’’-アルミナ上にマスクを適用して、Na-β’’-アルミナとNaディスクとの間の明確な接触面積を得て、PEIS測定中に3.4MPaの圧力を適用した。様々な熱処理条件の代表的なナイキストプロットを図2の(a)に示す。PEISスペクトルは、4.3×10Hzの頂点周波数を特徴とするNa-β’’-アルミナセラミックからの、及び10から400Hzの範囲の頂点周波数を特徴とするNa/Na-β’’-アルミナ界面からのインピーダンス寄与を表す2つの半円を明らかにする。Na-β’’-アルミナの寄与は一定のままであるが、界面の寄与は熱処理温度の上昇と共に劇的に減少する。熱処理温度による界面抵抗の変化を定量化するために、PEISスペクトルを追加の抵抗(Ruc)と共に直列の2つの並列R/CPE回路でフィッティングして、例えばセルケーシング及び電気接続からの任意の未補償抵抗を説明した(図2の(c)を参照)。界面抵抗はマスク面積によって正規化され、測定された2つの界面のために2で除算された。適合の結果を、熱処理温度の関数としての半対数スケールで表1及び図2の(b)に示す。非熱処理サンプルの数万Ωcmから8Ωcmへの界面抵抗の有意な減少は、Na-β’’-アルミナペレットを900℃で熱処理することによって達成されるが、CPE値は2桁増加する。したがって、Na-β’’-アルミナセラミックをアルゴン雰囲気中で熱処理することは、ナトリウム金属に対する界面抵抗を低減するための非常に効果的な方法である。
【表1】
【0049】
Na-β’’-アルミナ電解質表面に対する熱処理の効果を調べるために、本発明者らは、400℃、700℃及び900℃での熱処理の前後にNa-β’’-アルミナペレットに対してXPSを行った。C 1s、O 1s、Al 2p及びNa 2sコアレベルのスペクトルを図3-1に示す。結果を図3-2に要約する。285.0eVのC 1sスペクトルの主ピーク(較正による)は、偶発的な炭素種(C-C/C-H)に起因する。酸化炭素汚染(C-O及びO-C=O)は、より高い結合エネルギーで検出される。400℃の熱処理の前後で289eVを超える表面にごく少量(<1原子%)のNaCOが検出され、より高温での熱処理後にはもはや検出されない。
【0050】
未処理Na-β’’-アルミナのO 1sピークは非常に広く、単一の成分では適合できない。このピークの幅は、高い結合エネルギー側に小さな肩部の形成を伴う熱処理温度の上昇と共に著しく減少する。Kloprogge et al.,“XPS study of the major minerals in bauxite: Gibbsite, bayerite and (pseudo-)boehmite”, Journal of Colloid and Interface Science, Volume 296, Issue 2, 2006年4月15日、第572~576頁に従い、本発明者らは、結晶構造中の酸素(Al-O、約530.9eV)及び表面に存在するヒドロキシル(Al-OH、532.5eV)基を表すこのピークに適合するように2つの主成分をとることを選択する。加えて、炭素に結合した酸素原子(C-O、O-C=O、NaCO)は、それぞれの光電子断面積及び化学式について補正された、C 1sピークから決定された比において考慮される。興味深いことに、Al-OH成分の面積はAl-O成分と同程度であるが、900℃の熱処理後に著しく減少する。これは、界面のヒドロキシル基の量を減らすことが、ナトリウム金属に対する低いイオン界面抵抗を得るために重要であるという強力な証拠である。
【0051】
完全を期すために、図3にAl 2p及びNa 2sスペクトルも示す。Kloprogge et al. and Zahr et al.,“Characterisation of oxide and hydroxide layers on technical aluminum materials using XPS”, Vacuum, Volume 86, Issue 9,2012年3月14日, 第1216~1219頁に従って、Al 2pダブレットを異なる結合エネルギーを伴うAl-O及びAl-OH成分にデコンボリューションすることは差し控え、成分間のピーク面積比はO 1sピークの分析から計算された値に制約される。Al 2pピークの存在により、表面汚染層が光電子非弾性平均自由行程よりも薄いことが確認されることに留意されたい。
【0052】
《温度依存輸送特性》
Na/Na-β’’-アルミナ界面における輸送速度論をよりよく理解するために、本発明者らは、温度の関数として異なる伝導プロセスを分析する。図4のプロット(a)は、例示的に、0℃~60℃で測定したNa/Na-β’’-アルミナ/Naセルのナイキストプロットを示す。Na-β’’-アルミナセラミックと界面の両方のインピーダンスは、温度が上昇するにつれて低下することが明らかである。図2の(c)の等価回路を使用して両方の寄与を抽出すると、図4の(b)に示す温度依存性イオン伝導性及び界面抵抗が得られる。Na-β’’-アルミナセラミックの室温でのイオン伝導率は1.3mS/cmであり、ln(σionT)対1000/Tの線形適合から導出された0.35eVの活性化エネルギーを伴うアレニウス挙動に従う。比較すると、界面プロセスは、ln(T/Rint)対1000/Tの線形適合から導出された0.32eVの同様の活性化エネルギーを伴うアレニウス挙動に従い、電荷移動プロセスが界面で妨げられないことを示している。測定中に圧力が加えられるため、低温でも良好な接触が維持されると予想される。したがって、本発明者らは、温度依存性界面抵抗を、温度によるナトリウム金属の粘度の変化ではなく、速度論の改善に起因すると考える。固体電解質の追加の要件は、低い電子伝導率σel及び高いイオン輸率tである。図4の(c)及び(d)には、0℃から60℃までの電子伝導率及びイオン輸率tが示されており、より良好な可読性のために1-tとしてプロットされている。室温では、6.4×10-11S/cmの低い電子伝導率が測定され、これは、0.84eVの活性化エネルギーを伴うアレニウス挙動に従い温度と共にわずかにしか増加しない。この温度範囲では、対応する輸率は1に近い。Na-β’’-アルミナの電子伝導性に関する最近公開されたデータと比較して[参考文献18]、ここで測定される室温電子伝導率の値は、10倍小さい。この差は微細構造及び相含有量の変動に起因する可能性があるが、DC分極中の安定化時間及び2つのブロッキング電極の使用対金属電極を用いたHebb Wagner技術の使用も役割を果たす可能性がある。全体として、Na-β’’-アルミナセラミックの低い電子伝導性と共役する、高いイオン伝導性及び低い抵抗率を伴う界面電荷移動プロセスは、固体Na/Na-β’’-アルミナ電池の開発のための重要な促進剤である。
【0053】
《電荷及びRintの関数としてのNa-β’’-アルミナセラミックにおける臨界電流密度》
低い界面抵抗及び好ましい電荷輸送特性を実証した後、本発明者らは、対称的なNa/Na-β’’-アルミナ/Naセルにおけるナトリウムストリッピング/めっき挙動に注目する。デンドライトがNa-β’’-アルミナセラミックを通って伝播する臨界電流密度(CCD)は、定電流測定によって決定された。ナトリウム金属とNa-β’’-アルミナセラミックとの間の良好な接触を保証するために、10μA/cmの電流密度で1時間の10サイクルを最初に適用した[参考文献19]。次いで、LLZOに関する最近の研究に匹敵する0.25mAh/cmの一定の電荷密度を移動させながら、各サイクルで電流密度を増加させながらCCD測定を行った。LLZO[参考文献11,12]と接触しているリチウム金属で最近実証されたように、ストリッピング中のナトリウム金属中の空隙の形成を緩和するために、セルを3.4MPaの圧力下に置いた。測定後、圧力は依然として初期値の約-5%であることが記録された。標準的なCCD測定中の電位応答を、900℃で熱処理したサンプルについて図5の(a)に示す。この例では、0Vへの電位の突然の低下によって観察されるように、CCDは9mA/cmに到達し(図5の(e)の矢印を参照)、デンドライト形成によるセルの短絡を示している。場合によっては、デンドライトが点接触でのみ局所的にセルを短絡させる場合、電位は、図5の(e)の例に示すように部分的に回復し得る。セルの短絡を確認するために、各ストリッピング/めっきのサイクルの間にPEISを行った。図5の(b)には、CCDに到達する前後の標準的なPEISスペクトルが示されている。CCDの下では、スペクトルは電解質寄与によって支配される(図2の(c)におけるRNBAとCPENBAの並列接続によって説明されるとおり)。短絡後、電解質の寄与は著しく減少し、スペクトルは抵抗挙動によって支配され、いくらかの漂遊インダクタンス及びわずかなキャパシタンスの寄与があり、これはおそらくナトリウムデンドライトの局所点接触に関連する。測定の異なる段階(図5の(a)のボックス)における電位応答をより詳細に見ると、図5の(c)、(d)、及び(e)に示されている。低い電流密度では、電位応答はオーム挙動、U=RIに従う。ここで、Uは電位、Rは総セル抵抗、Iは安定電位によって観察される電流である。界面抵抗が無視できるため、低電流密度での過電位は電解質のみによって与えられる。電流密度が増加するにつれて、電位応答は、CCDに達するまでオーミック挙動から逸脱する。電位の上昇は最近、完全にストリッピング中のLLZOとの界面でのリチウム金属中の空隙形成に起因するとされていたが[参考文献12]、ストリッピングからの空隙形成結果の確認は、参照電極を用いた測定を必要とする。
【0054】
ここで、CCDに対する電荷密度及び界面抵抗の影響を調べる。図6の(a)及び(b)では、それぞれ0.25mAh/cm及び3mAh/cmの電荷密度で、6.6mA/cmの電流密度までサイクルしたセルの電位応答の比較が示されている。0.25mAh/cmの電荷密度でサイクルされたセルは6.6mA/cmまで故障しないが、3mAh/cmの電荷でサイクルされたセルは、図6の(b)の矢印で示される、0Vに対する電位応答の突然の低下によって観察されるように、5.5mA/cmで故障する。低電荷密度でサイクルされたセルの電位応答と比較して、高電荷密度でサイクルされたセルの分極は、4.5Vのカットオフ電圧に達するまで電流密度の増加と共に連続的に増加する(より良好な可読性のために1Vで軸切断)。本発明者らは、サイクルあたりより多くの量の電荷が移動するとき、長いストリッピングサイクルによって引き起こされるNa-β’’-アルミナとの界面付近のナトリウム金属中の空隙形成に対するオーミック挙動からのこの逸脱を原因とみなす。界面に形成される結果として生じる空隙は、接触表面積を減少させ、したがって界面抵抗を増加させる。したがって、定電流を供給するためには、より高い過電位が必要である。参照電極は、めっき効果からのストリッピングを切り離すために必要とされると見込まれるが、増加した電荷を伴う早期のセル故障は、空隙形成仮説を支持する。空隙形成は、圧力を増加させることによって回避することができるが[参考文献11、12]、本発明者らは、空隙形成を最小限に抑えるために、0.25mAh/cmの電荷密度ですべてのCCD測定を行った。
【0055】
熱処理(HT)温度の上昇の影響を図6の(c)に示す。CCD値は、界面抵抗の減少と共に著しく増加する。[参考文献6]で以前に報告されたように、この効果は、時期尚早にCCD値に達する、「ホットスポット」と呼ばれることが多い、より高い電流密度を特徴とする局所領域の抑制に起因する。この観察は、溶融ナトリウム金属アノードを使用してNa-β’’-アルミナについても行われ、より低い電荷移動抵抗を特徴とするセルにおいてより高い電荷を通過させることができた[参照番号20]。加えられた最大熱処理温度について、12mA/cmの4つのサンプルにわたる平均CCD値が得られる。我々の知る限り、これは、([参考文献21]のように表面積を増加させることによって電流密度を局所的に減少させる多孔質電解質層を実装することなく)室温での固体電解質について報告された最高のCCD値である。炉によって最高熱処理温度を900℃に制限したことに留意していただきたい。より高い温度は界面抵抗をさらに減少させ、したがってCCD値を増加させる可能性があるが、界面での空隙形成は物理的最大CCDを制限する可能性がある。それにもかかわらず、この表面処理は、急速充電全固体電池の実施に対して楽観的な結果を与える。
【0056】
《温度依存性CCDと文献との比較》
0から60℃の温度範囲において900℃で熱処理したサンプルについて、CCDに対するストリッピング/めっき温度の影響を調査した。結果を図7の(a)にアレニウス表示でプロットする。文献と同様に、CCDと逆温度(エラーバーを考慮)との間に、0.27eVの活性化エネルギーを伴う指数関数的関係が見出される。温度を60℃まで上昇させることにより、19mA/cmまでの臨界電流密度を達成することができ、これは、液体水銀ナトリウムアマルガムを使用した1980年代の音響測定と一致する[参考文献22]。この温度挙動は現在完全には理解されていないが、Hanらは最近、デンドライト形成が電解質の電子伝導性によって支配され、めっき電位を超える固体電解質のバルク中でナトリウムイオンが金属ナトリウムに還元される速度を支配することを提案した[参考文献23]。彼らは、10mA/cmでデンドライトを含まないめっきを可能にするために、電子伝導率は10-12S/cm未満であるべきであると結論付けた。この基準は、この実施例では室温での測定値(6×10-11S/cm、12mA/cm)にほぼ対応するが、60℃での電子伝導率はこの閾値から3桁(2×10-9S/cm)ずれているのに対して、臨界電流密度は30%改善されている。さらに、Na-β’’-アルミナは、電子伝導率約10-8S/cm[参考文献24]の350℃で、最大300mA/cmの臨界電流密度[参考文献22]を維持できることも示された。イオン伝導性及び電荷移動速度論も同時に改善されることは明らかであり、したがって、電子伝導性のみに基づく理論は、温度依存性CCD測定を完全に説明することができない。本発明者らの一部は最近、アルカリ金属電極の特性がデンドライト形成を支配し得ると仮定した[参考文献25]。アルカリ金属中の金属自己拡散性と電解質中のイオン拡散性との間の差によって引き起こされる界面でのフラックス不均衡が界面で金属パイルアップを生じさせ、最終的に樹枝状成長のための核形成部位として作用する可能性があることが報告された。電極金属の役割をよりよく理解するために、本発明者らは、図7の(a)において、以前の研究[参考文献25]で得られたLLZOの結果を比較する。同一の測定条件が適用され、同様の界面抵抗が得られたことに留意されたい。測定された温度範囲にわたって、Na-β’’-アルミナのCCD値は、LLZOの場合よりも体系的に10倍高い。Na-β’’-アルミナのエラーバーもより大きいことに留意することは興味深い。一方では、これは、参照文献26に最近詳細に記載されているようなNa-β’’-アルミナセラミックの二峰性粒子及び細孔径分布の結果であり得る。特に、界面の細孔は、局所電流密度の増加をもたらし得る。一方、これは、温度を上昇させるためのLLZOについてより小さい程度でも観察されるように、より高い電流密度での表面不均一性の増幅効果の結果であり得る。溶融温度(Naは97.79℃、Liは180.5℃)の違いにより、金属は同じ測定温度での粘度が異なる。この差を考慮に入れるために、本発明者らは、温度(T)をアルカリ金属の融解温度(Tmelting)で割ったものとして定義される相同温度の関数としてCCD値を図7の(b)にプロットした。図7の(b)の結果は、両方の系について指数関数的関係を示し、相同温度>0.66(Na系では>0℃、Li系では>60℃に対応)の挙動の偏差を伴う。これらの違いは、電解質/電極界面でのフラックスバランスの違いによって説明され得る、すなわち、リチウム系では、Li中のLi及びLLZO中のLiの拡散度は約100倍異なる(室温で、それぞれ5×10-11cm/s対2×10-9cm/s)。比較すると、Na中のNa及びNa-β’’-アルミナ中のNaの拡散性は、約10倍しか異なることがない(室温で、それぞれ5×10-9対3×10-8cm/s)。したがって、めっきされたNa原子は、Li原子よりも金属のバルク中に容易に移動し、電解質から界面に移動するイオンのフラックスが界面からバルク中に移動する金属原子のフラックスよりも高いときに、その時点までより高い電流密度の使用を可能にする。さらに、ナトリウムの自己拡散性がリチウムの自己拡散性の約100倍であることに注目することは興味深い(室温で、それぞれ、5×10-9cm/s対5×10-11cm/s)。したがって、(自己拡散性が空孔拡散に比例すると仮定して)空孔が過飽和して界面に空隙を形成し始める点まで、ナトリウム金属アノードでより高いストリッピング速度を適用することができると予想される。同様に、めっき中の空隙充填プロセスはまた、より高い自己拡散性のためにより速くなると予想され、より高い電流密度で表面を補充することを可能にする。しかし、界面での状況をモデル化することは、クリープ、弾性、及び塑性特性等のアルカリ金属の機械的特性を考慮して、樹枝状成長の機構を完全に理解するために有益となり得る。
【0057】
[結論]
アルゴン雰囲気中で微研磨されたNa-β’’-アルミナセラミックに熱処理を施して表面ヒドロキシル基を除去すると、対称Na/Na-β’’-アルミナセルの界面抵抗は、室温で100sのΩcmから8Ωcmに減少した。この界面抵抗の改善は、半周期当たり0.25mAh/cmの総移動電荷密度に対して臨界電流密度を0.3から12mA/cmに劇的に増加させる。電荷密度を増加させると、おそらく電解質と金属アノードとの間の界面に空隙が形成されるために、セル分極が増加することが実証され、スタック圧力を加える利点が強調された。ガーネット型LLZOと比較して、Na-β’’-アルミナについて得られた臨界電流密度は、同様の輸率にもかかわらず10倍高い。温度依存性臨界電流密度測定は両方とも、理論に拘束されることを意図するものではないが、同等の活性化エネルギーで指数関数的挙動を示すが、本発明者らは、CCDの10倍の差がアルカリ金属及び固体電解質の拡散特性に起因すると考える。
【0058】
現在、ナトリウム金属アノードに基づく全固体電池の開発は、例えばリチウムイオン電池に使用されるニッケルリッチ層状酸化物(例えば、NMC811)と、性能において競合することができる適切なナトリウムカソード材料の利用可能性の欠如によって妨げられている。しかし、本発明者らの結果は、性能において競合することができるそのような適切なナトリウムカソード材料の使用により、Na-β’’-アルミナ電解質に基づく急速充電能力を伴う全固体ナトリウム金属電池が迅速な商品化及び市場展開のための非常に有望な選択肢になることを示している。
【0059】
全体として、微細研磨と不活性雰囲気中での熱処理温度プロセスとの組合せは、金属Naと接触する低い界面抵抗及びこれまでにない高い臨界電流密度を得ることを可能にすることが実証された。これらの結果は、急速充電全固体電池の開発に有望である。
【0060】
したがって、Na-β’’-アルミナ(NBA)セラミックは、それらの高いイオン伝導性、低い電子伝導性、及び金属ナトリウムに対する安定性のために、室温固体電池の電解質として使用される優れた候補である。固体電池の製造に関連付けられた課題の1つは、金属ナトリウムとセラミック電解質との間の高い固体-固体界面抵抗であり、これは臨界電流密度を減少させる。本実施例は、NBAセラミックの表面処理、並びに室温で<10Ωcmの界面抵抗及び12mA/cmまでの電流密度を可能にする対称Na/NBA電気化学デバイスの組み立て方法を提供する。
【0061】
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いかなる文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【0062】
上記のように、本発明は、電極と固体電解質との間の界面抵抗を下げ、固体電池の臨界電流密度を上げるための方法を提供する。
【0063】
本発明は、特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載されているが、当業者は、本発明が、限定ではなく例示を目的として提示された、記載された実施形態以外によって実施され得ることを理解することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。本発明の様々な特徴及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7