(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】結合スプラインを具備するシャンクが設けられた回転打撃油圧ドリル
(51)【国際特許分類】
E21B 1/14 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
E21B1/14
(21)【出願番号】P 2022559500
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 FR2021050547
(87)【国際公開番号】W WO2021198605
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-09
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505394482
【氏名又は名称】モンタベール
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスコル ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴァン ジルベール
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-131379(JP,A)
【文献】特開昭58-211870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0275958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
B25D 1/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ(3)と、
ツールを具備した少なくとも1つのドリルバーに結合されるように意図されたシャンク(13)と、
前記ボディ(3)の内部に打撃軸(A)に沿ってスライド可能に取り付けられ且つ前記シャンク(13)を打撃するように構成された打撃ピストン(5)と、
前記打撃軸と実質的に一致する回転軸回りに前記シャンク(13)を回転駆動するように構成された回転駆動装置(18)と、
前記ボディに対して固定された前当接面(23)と、を備え、
前記シャンク(13)は、前記シャンク(13)の延長軸に対して互いに角度的にオフセットされた雌結合スプライン(16)及び雄結合スプライン(17)を有する結合部を含み、
前記回転駆動装置(19)は、前記シャンク(13)の周りに配置された結合部材(19)を含み、
前記結合部材(19)は、前記シャンク(13)の前記雌及び雄結合スプライン(16,17)にそれぞれ回転可能に結合された雄結合スプライン及び雌結合スプラインを含み、
前記前当接面(23)は、環状であって、前記シャンク(13)の周りに延びており、
前記シャンク(13)は、前記シャンク(13)の前方への変位ストロークを制限するように前記前当接面(23)に当接するように構成されている、
回転打撃油圧ドリル(2)であって、
前記シャンク(13)は、前記シャンク(13)の外面に設けられ且つ前記前当接面(23)に当接するように構成された環状ベアリング面(25)を有する環状ベアリングフランジ(24)を含み、
前記シャンク(13)に設けられた前記雌及び雄結合スプライン(16,17)各々は、前記環状ベアリングフランジ(24)から前記打撃ピストン(5)の方向に延びており、
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)は、底面(27)と、各前記底面(27)を前記環状ベアリングフランジ(24)に接続し且つ前記シャンク(13)の前記延長軸から離れて前方に延びた接続面(28)と、を含み、
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)の前記接続面(28)は、各前記雌結合スプラインの延長方向に実質的に延び且つ前記シャンク(13)に設けられた各前記雄結合スプラインの半径高さ(Hr)よりも小さな曲率半径(R)を有する曲凹面(28.1)によって、少なくとも部分的に形成されている、
ことを特徴とする回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項2】
前記環状ベアリングフランジ(24)は、前記結合部の外径以上の最大外径を有する、請求項1に記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項3】
前記シャンク(13)に設けられた各雌結合スプライン(16)の前端は、前記環状ベアリングフランジ(24)に設けられている、請求項1又は2に記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項4】
前記シャンク(13)に設けられた各前記雄結合スプライン(17)は、前記環状ベアリングフランジ(24)から延びる上面(29)を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項5】
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)の前記接続面(28)は、各前記曲凹面(28.1)によって全体的に形成されている、請求項1から4のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項6】
前記シャンク(13)に設けられた前記雌及び雄結合スプライン(16,17)各々は、前記シャンク(13)の後端に延びている、請求項1から5のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項7】
各前記曲凹面(28.1)の前記曲率半径(R)は、15mmよりも小さい、請求項1から6のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項8】
前記環状ベアリングフランジ(24)は、略シリンダ状である外周面(26)を含む、請求項1から7のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項9】
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)の前端は、前記外周面(26)へ開口している、請求項8に記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項10】
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)の前端は、前記環状ベアリングフランジ(24)の前記環状ベアリング面(25)へ開口している、請求項1から8のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項11】
前記シャンク(13)に設けられた各前記雌結合スプライン(16)の前記前端の出口における前記環状ベアリングフランジ(24)の前記半径高さは、前記環状ベアリングフランジ(24)の最大半径高さの50%よりも大きい、請求項10に記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項12】
前記環状ベアリング面(25)は、前記打撃軸に対して傾斜して、前記打撃ピストン(5)の方向に広がっている、請求項1から11のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【請求項13】
前記ボディ(3)に配置された環状当接リングを備え、前記環状当接リングは、前記シャンク(13)の周りに配置されて、前記前当接面(23)を含む、請求項1から12のいずれか1つに記載の回転打撃油圧ドリル(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にドリル設備に用いられる回転打撃油圧ドリルに、関する。
【背景技術】
【0002】
ドリル設備は、公知の方法で、スライダ上にスライド可能に取り付けられ且つ1つ以上のドリルバーを駆動する回転打撃油圧ドリルを備え、これらのドリルバーの最後は、岩石と接触するカッティングエッジと呼ばれるツールを運ぶ。このようなドリルの目的は、一般に、爆発物をその中に置くことができるように、多少の深穴を掘削することにある。したがって、ドリルは、一方では、岩石を貫通するように、カッティングエッジに対して、ドリルバーを通じて回転の設定及び打撃の設定を与え、他方では、掘削された穴から破片を抽出するように、注入流体を供給する、ドリル設備のメイン要素である。
【0003】
回転打撃油圧ドリルは、より詳細には、一方では、メイン油圧供給回路から来る1以上の油圧流体流量によって駆動され且つドリルの各動作サイクルにおいてドリルバーに結合されたシャンクを打撃するように構成された打撃ピストンを有する打撃装置と、他方では、シャンク及びドリルバーを回転させるように構成され且つ油圧回転モータが設けられた回転駆動装置と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転駆動装置は、特に、シャンクの周りに配置され且つシャンクの外面に設けられた雌結合スプライン及び雄結合スプラインにそれぞれ回転可能に結合された雄結合スプライン及び雌結合スプラインを含む結合部材を、備える。シャンクに設けられた雄及び雌結合スプラインは、シャンクの延長軸と実質的に平行に延びており、シャンクの延長軸に対して互いに角度的にオフセットされている。
【0005】
カッティングエッジの岩石に詰まるとき、回転打撃油圧ドリルは、シャンクに設けられた雄結合スプラインの前端が、回転打撃油圧ドリルのボディに固定された前当接部材に設けられた前当接面に当接するまで、引き込まれる。
【0006】
次に、ツールをアンロックする試みにおいて、回転駆動装置及び/又は打撃装置は、シャンクを回転駆動し及び/又は打撃ピストンを用いてシャンクに影響を与えるように、作動されることができる。
【0007】
回転駆動装置及び/又は打撃装置のこのような作動は、シャンクに設けられた雄結合スプラインの前当接面に対する回転摩擦、及び/又はシャンクに設けられた雄結合スプラインの前当接面に対する軸方向衝撃を誘発する。
【0008】
しかしながら、このような軸方向の衝撃及び回転摩擦の繰り返しは、シャンクに設けられた雄結合スプラインの急速な摩耗を生じさせる可能性が高く、シャンクの頻繁な交換を必要とする。さらに、雄結合スプラインのこのような摩耗は、回転打撃油圧ドリルの異なる可動部分の間に粘着する可能性があり且つしたがって回転打撃油圧ドリルを損傷させる可能性がある、チップを発生させる。
【0009】
本発明は、これらの欠点の全部又は一部を改善することを目的とする。
【0010】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、コンパクトでありながら、構造が簡単で経済的で信頼性のある、回転打撃油圧ドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、回転打撃油圧ドリルに関する。回転打撃油圧ドリルは、ボディと、ツールを具備した少なくとも1つのドリルバーに結合されるように意図されたシャンクと、前記ボディの内部に打撃軸に沿ってスライド可能に取り付けられ且つ前記シャンクを打撃するように構成された打撃ピストンと、前記打撃軸と実質的に一致する回転軸回りに前記シャンクを回転駆動するように構成された回転駆動装置と、前記ボディに対して固定された前当接面と、を備え、前記シャンクは、前記シャンクの延長軸に対して互いに角度的にオフセットされた雌結合スプライン及び雄結合スプラインを有する結合部を含み、前記回転駆動装置は、前記シャンクの周りに配置された結合部材を含み、前記結合部材は、前記シャンクの前記雌及び雄結合スプラインにそれぞれ回転可能に結合された雄結合スプライン及び雌結合スプラインを含み、前記前当接面は、環状であって、前記シャンクの周りに延びており、前記シャンクは、前記シャンクの前方への変位ストロークを制限するように前記前当接面に当接するように構成されており、前記シャンクは、前記シャンクの外面に設けられ且つ前記前当接面に当接するように構成された環状ベアリング面を有する環状ベアリングフランジを含み、前記シャンクに設けられた前記雌及び雄結合スプライン各々は、前記環状ベアリングフランジから前記打撃ピストンの方向に延びており、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインは、底面と、各前記底面を前記環状ベアリングフランジに接続し且つ前記シャンクの前記延長軸から離れて前方に延びた接続面と、を含み、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前記接続面は、各前記雌結合スプラインの延長方向に実質的に延び且つ前記シャンクに設けられた各前記雄結合スプラインの半径高さよりも小さな曲率半径を有する曲凹面によって、少なくとも部分的に形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
シャンクに設けられた雌及び雄結合スプラインの前におけるこのような環状ベアリングフランジの存在は、前当接面と、シャンクに設けられた雄結合スプラインと、の間の接触を回避して、したがってシャンクの完全性を維持することを、可能にする。
【0013】
さらに、環状ベアリングフランジにおける環状ベアリング面の存在は、前当接面と環状ベアリングフランジとの間の比較的大きな接触面を確保して、したがって前当接面に対してシャンクにより与えられる衝撃及び/又は摩擦の力のより良好な分配を確保する。
【0014】
したがって、本発明に係る回転打撃油圧ドリルの具体的構成は、シャンクに対して実質的に増大した耐用年数を与え、シャンクを交換するためのドリルの不動期間、及びユーザの安全に影響し得るドリルの損傷のリスクを、著しく低減することを可能にする。
【0015】
さらに、シャンクに設けられた雄結合スプラインが環状ベアリングフランジから直接的に延びる場合、シャンクの軸方向長さは、環状ベアリングフランジの存在によって影響されず、これにより、コンパクトな回転打撃油圧ドリルを得ることを可能にする。シャンクに設けられた各雌結合スプラインが、小さな曲率半径を有する曲凹面により少なくとも部分的に形成された接続面を含むという事実は、シャンクの軸方向長さをさらに低減することを可能にし、したがって、回転打撃油圧ドリルのコンパクト化をさらに向上させることを可能にする。
【0016】
シャンクに設けられた各雌結合スプラインの接続面の具体的構成はまた、ドリルの動作中にシャンクに対して高い応力を誘発するかもしれず且つしたがってシャンクの破裂を誘発するかもしれない、鋭角の存在を回避することを可能にする。
【0017】
回転打撃油圧ドリルはまた、単独で又は組み合わせで、以下の特徴のうちの1つ以上を有してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌及び雄結合スプラインは、前記シャンクの前記延長軸に対して実質的に平行に延びている。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前記接続面は、各前記曲凹面によって全体的に形成されている。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記環状ベアリングフランジは、前記結合部の外径以上の最大外径を有する。結合部のこのような構成は、大きな保護面を保ちつつ、結合部におけるシャンクの断面を低減して、それによって結合部材の断面を低減することを、可能にする。したがって、これらのアレンジメントは、本発明に係る回転打撃油圧ドリルのフットプリントを低減することを、可能にする。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各雌結合スプラインの前端は、前記環状ベアリングフランジに設けられている。本発明の一変形例によれば、前記シャンクに設けられた各雌結合スプラインの前端は、前記環状ベアリングフランジに隣り合ってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各雄結合スプラインの前端は、前記環状ベアリングフランジに隣り合う。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雄結合スプラインは、前記環状ベアリングフランジから延びる上面を含む。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雄結合スプラインについて、前記シャンクの前記延長軸と前記雄結合スプラインの前記上面との間の半径距離は、前記雄結合スプラインに沿って実質的に一定である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、各前記曲凹面の前記曲率半径は、15mmよりも小さく、例えば10mmよりも小さい。シャンクに設けられた各雌結合スプラインの曲凹面の曲率半径のこのような値は、ベアリングフランジと、シャンクに設けられた異なる結合スプラインとの間の接続の長さを低減して、それによってシャンクの長さを低減することを、可能にする。したがって、これらのアレンジメントは、本発明に係る回転打撃油圧ドリルのコンパクト性を向上させることを、可能にする。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前記接続面は、前記シャンクの前記延長軸に対して傾斜し且つ前記前当接面の方向に広がる傾斜面を含む。有利には、前記傾斜面は、前記曲凹面の延長において、前記シャンクの前記前端の方向に、延びている。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記環状ベアリングフランジは、略シリンダ状である外周面を含む。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前端は、前記環状ベアリングフランジの外面へ開口している。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前端は、前記外周面へ開口している。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記外周面は、前記環状ベアリング面の延長において、前記打撃ピストンの方向に、延びている。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各雌結合スプラインの前端は、前記環状ベアリングフランジの前記環状ベアリング面へ開口している。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの前記前端の出口における前記環状ベアリングフランジの前記半径高さは、前記環状ベアリングフランジの最大半径高さの50%よりも大きく、例えば60%以上又は70%以上である。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、シャンクに設けられた各雌結合スプラインは長手方向に延在し、実質的に平行である2つの側面を含む。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前記環状ベアリング面は、前記打撃軸に対して傾斜して、前記打撃ピストンの方向に広がっている。しかしながら、本発明の変形例によれば、前記環状ベアリング面は、前記打撃軸に対して垂直でもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記前当接面は、前記ボディに設けられている。
【0036】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記回転打撃油圧ドリルは、前記ボディに配置された環状当接リングを備え、前記環状当接リングは、前記シャンクの周りに配置されて、前記前当接面を含む。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記結合部材は、回転駆動装置に属する駆動モータの出力シャフトに例えば直接的又は間接的に回転可能に結合された外周歯を、含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記結合部材は、結合ピニオンである。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクの前記雌結合スプラインは、前記延長軸の周りに均等に分配されている。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、結合部材の雄連結スプラインは、シャンクの延長軸の周りに均等に分布される。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、シャンクは、打撃ピストンに臨み且つ打撃ピストンが打撃することを意図された端面が設けられた第1端部と、第1端部とは反対側にあり且つ少なくとも1つのドリルバーに結合されることを意図された第2端部と、を含む。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記結合部は、前記シャンクの前記第1端部によって形成されている。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記シャンクの前記延長軸は、前記打撃軸に対して平行であり、例えば前記打撃軸と一致する。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記回転打撃油圧ドリルは、前記打撃軸に沿った前記打撃ピストンの往復スライドを制御するように構成されたメイン油圧供給回路を、備える。
【0045】
本発明の実施形態によれば、前記シャンクに設けられた前記雌及び雄結合スプライン各々は、前記シャンクの後端に延びている。本発明の一変形例によれば、前記シャンクに設けられた前記雌及び雄結合スプライン各々の後端は、前記シャンクの後端から離れている。
【0046】
本発明の実施形態によれば、前記シャンクに設けられた前記雌及び雄結合スプライン各々は、100mmよりも小さな有効長さを有する。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記シャンクは、前記環状ベアリングフランジの前にて、61mm以下、有利には46mmよりも小さな最大直径を、有する。
【0048】
本発明の実施形態によれば、前記シャンクに設けられた各前記雌結合スプラインの底面は、実質的にフラットである。
【0049】
本発明は、この回転打撃油圧ドリルの一実施形態を非限定的な例として示す添付の概略図を参照しつつ、以下の説明の助けを借りて、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転打撃油圧ドリルの縦断面における概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の回転打撃油圧ドリルに属するシャンクの側面図である。
【
図4】
図4は、
図2のシャンクの縦断面における部分図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る回転打撃油圧ドリルのシャンクの縦断面における部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1~4は、ブラスト穴の貫通のために意図された回転打撃油圧ドリル2を示す。
【0052】
回転打撃油圧ドリル2は、スライダにスライド可能に取り付けられるように構成されたボディ3を、備える。
【0053】
回転打撃油圧ドリル2は、ボディ3により区切られ且つ打撃軸Aに沿って延びるピストンシリンダ6を交互にスライドするように取り付けられた打撃ピストン5を含む打撃装置4を、さらに備える。打撃ピストン5とピストンシリンダ6とは、環状である一次制御チャンバ7と、一次制御チャンバ7の断面よりも大きな断面を有し且つ一次制御チャンバ7に対して拮抗する二次制御チャンバ8と、を区切る。
【0054】
打撃装置4は、打撃ストロークと戻りストロークとに続いてピストンシリンダ6内における打撃ピストン5の往復運動を交互に制御するように配置された制御弁9を、さらに備える。制御弁9は、打撃ピストン5の打撃ストローク中に高圧非圧縮性流体供給ダクトのような高圧流体供給ダクト11と、打撃ピストン5の戻りストローク中に低圧非圧縮性流体戻りダクトのような低圧流体戻りダクト12と、を交互に接続するように、二次制御チャンバ8を置くように構成さていれる。一次制御チャンバ7は、有利には、供給チャンネルによって、高圧流体が連続的に供給される。
【0055】
高圧流体供給ダクト11及び低圧流体戻りダクト12は、打撃装置4が設けられるメイン油圧供給回路に、属する。メイン油圧供給回路は、有利には、高圧流体供給ダクト11に接続された高圧アキュムレータを、含んでもよい。
【0056】
回転打撃油圧ドリル2は、公知の方法にて、ツールを具備した少なくとも1つのドリルバー(図示せず)に結合されるように意図されたシャンク13をも、含む。シャンク13は、有利には打撃軸Aと一致する延長軸に沿って長手方向に延びており、打撃ピストン5に臨み且つ回転打撃油圧ドリル2の各動作サイクル中に打撃ピストン5を打撃するように意図された端面15が設けられた第1端部14.1と、少なくとも1つのドリルバーに結合されるように意図され且つ第1端部14.1とは反対側にある第2端部14.2と、を含む。
【0057】
シャンク13は、例えばシャンク13の延長軸に対して平行に延び且つシャンク13の延長軸に対して互いに角度的にオフセットされた雌結合スプライン16及び雄結合スプライン17を有する例えば第1端部14.1によって形成された結合部を、含む。雌及び雄結合スプライン16,17は、有利には、シャンク13の延長軸の周りに均等に分配されている。有利には、各雄結合スプライン17が2つの隣り合う雌結合スプライン16の間に、配置されている。
【0058】
雌及び雄結合スプライン16,17各々は、打撃ピストン5に向かって配向された後端と、各後端の反対側にある前端と、を含む。
図1~4に示される実施形態によれば、雌及び雄結合スプライン16,17各々は、シャンク13の後端に延びている。しかしながら、本発明の1つの変形例によれば、雌及び雄結合スプライン16,17各々の後端は、シャンク13の後端から離れてもよい。
【0059】
回転打撃油圧ドリル2は、打撃軸Aと実質的に一致する回転軸回りにシャンク13を回転駆動するように構成された回転駆動装置18を、さらに備える。
【0060】
回転駆動装置18は、シャンク13の周りに配置された管状の結合ピニオンのような結合部材19を、含む。結合部材19は、シャンク13の雌及び雄結合スプライン16,17にそれぞれ回転可能に結合された雄結合スプライン及び雌結合スプラインを、含む。結合部材19に設けられた雄結合スプライン及び雌結合スプラインは、シャンク13の延長軸の周りに均等に分配されている。
【0061】
有利には、結合部材19は、回転駆動装置18に属する油圧供給外部回路によって油圧で供給される油圧モータのような駆動モータ21の出力軸に回転可能に結合された外周歯を、含む。回転駆動装置18は、例えば、一方では駆動モータ21の出力シャフトに結合され且つ他方では結合部材19の外周歯に結合された中間ピニオン22を、含んでもよい。
【0062】
回転打撃油圧ドリル2は、環状であり且つシャンク13の周りに延びる前当接面23を、さらに備える。前当接面23は、結合部材19に対して打撃ピストン5の反対側に配置されている。前当接面23は、ボディ3に直接的に設けられてもよく、又はボディ3に配置された環状の当接リングに設けられてもよい。
【0063】
シャンク13は、シャンク13の外面に設けられた環状ベアリングフランジ24を、含む。環状ベアリングフランジ24は、シャンク13の前方への変位ストロークを制限するように前当接面23に当接するように構成された環状ベアリング面25を、含む。有利には、環状ベアリング面25は、打撃軸Aに対して傾斜しており、シャンク13の結合部の方向に広がっている。
【0064】
図1~4に示される実施形態によれば、環状ベアリングフランジ24は、略シリンダ状であり且つ環状ベアリング面25の延長においてシャンク13の後端の方向に延びる外周面26を、さらに含む。外周面26は、有利には、結合部の外径以上の外径を、有する。
【0065】
有利には、各雌及び雄結合スプライン16,17は、環状ベアリングフランジ24からシャンク13の後端の方向に延びている。
図1~4に示される実施形態によれば、各雌結合スプライン16の前端は、環状ベアリングフランジ24に設けられており、環状ベアリングフランジ24の外面へ、例えば外周面26へ、開口している。
【0066】
図1~4に示される実施形態によれば、各雌結合スプライン16は、実質的に平面であり且つ上記雌結合スプラインの延長方向に延びる底面27と、各底面27を環状ベアリングフランジ24に接続し且つシャンク13の延長軸から離れて前方に延びる接続面28と、を含む。
図1~4に示される実施形態によれば、各雌結合スプライン16の接続面28は、各雌結合スプライン16の延長方向に延び且つシャンク13に設けられた各雄結合スプライン17の半径高さHrよりも小さな曲率半径Rを有する曲凹面28.1によって、全体的に形成されている。各曲凹面28.1の曲率半径Rは、有利には15mmよりも小さく、例えば10mmよりも小さい。
【0067】
各雌結合スプライン16は、例えば、矩形断面を有してもよく、したがって、長手方向に延び且つ実質的に平行である2つの側面を有してもよい。しかしながら、各雌結合スプライン16は、略V字形状の断面を有することもできる。
【0068】
図1~4に示される実施形態によれば、各雄結合スプライン17について、シャンク13の延長軸と上記雄結合スプライン17の上面29との間の半径距離DRは、上記雄結合スプラインに沿って実質的に一定である。
【0069】
カッティングエッジの岩石に詰まるとき、回転打撃油圧ドリル2は、環状ベアリングフランジ24の環状ベアリング面25が前当接面23に当接するまで、引き込まれる。
【0070】
そして、カッティングをアンロックするために、回転駆動装置18は、シャンク13を回転駆動するように作動される。打撃装置4はまた、打撃ピストン5を用いてシャンク13に対して衝撃をも与えるように、回転駆動装置18と同時に作動されることができる。
【0071】
回転駆動装置18及び場合によっては打撃装置4のこのような作動は、環状ベアリングフランジ24の環状ベアリング面25の前当接面23に対する回転摩擦、及び環状ベアリング面25の前当接面23に対するポテンシャル軸方向衝撃を、誘発する。
【0072】
シャンク13に設けられた雌及び雄結合スプライン16,17の前における環状ベアリングフランジ24の存在は、前当接面23と、シャンク13に設けられた雄結合スプライン17と、の間の接触を回避して、したがってシャンク13の完全性を保つことを、可能にする。さらに、環状ベアリング面25が環状であるという事実は、前当接面23と環状ベアリングフランジ24との間の比較的大きな接触面を確保し、したがってシャンク13によって前当接面23に対して与えられる衝撃力のより良好な分配を確保する。
【0073】
したがって、本発明に係る回転打撃油圧ドリル2の具体的構成は、シャンク13に著しく増大した耐用年数を与え、シャンク13を交換するための回転打撃油圧ドリル2の不動期間を著しく低減して、シャンク13からの摩耗粒子によって回転打撃油圧ドリル2を損傷するリスクを低減することを、可能にする。
【0074】
さらに、シャンク13に設けられた雄結合スプライン17が環状ベアリングフランジ24から直接的に延びる場合、シャンク13の軸方向長さは、環状ベアリングフランジ24の存在に影響されず、コンパクトな回転打撃油圧ドリル2を得ることを可能にする。
【0075】
図5は、本発明の第2実施形態に係る回転打撃油圧ドリル2のシャンク13を、示す。シャンク13は、各雌結合スプライン16の前端が、環状ベアリングフランジ24の環状ベアリング面25へ開口する点で、
図1~4に示される第1実施形態とは、実質的に異なる。本発明のこのような実施形態によれば、各雌結合スプライン16の前端の出口における環状ベアリングフランジ24の半径高さは、環状ベアリングフランジ24の最大半径高さの50%よりも大きく、例えば60%以上又は70%以上である。
【0076】
言うまでもなく、本発明は、一例として上述されたこの回転打撃油圧ドリルの唯一の実施形態に限定されるものではなく、逆に、その全ての変形例を包含する。