IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図1
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図2
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図3
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図4
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図5
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図6
  • 特許-近視抑制レンズ及び関連の方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】近視抑制レンズ及び関連の方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20250114BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20250114BHJP
   G02C 7/04 20060101ALN20250114BHJP
【FI】
G02C7/06
A61F2/16
G02C7/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022564027
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 GB2021051039
(87)【国際公開番号】W WO2021220006
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/017,940
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0204472(US,A1)
【文献】国際公開第2020/053463(WO,A1)
【文献】特表2005-514639(JP,A)
【文献】特開2017-015742(JP,A)
【文献】特表2017-510851(JP,A)
【文献】特表2014-528100(JP,A)
【文献】特表2009-529376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状であり、第1の面度数マップを形成するように成形された外面と、凹状であり、第2の面度数マップを形成するように成形された内面と、を含む近視の進行を抑制するための眼用レンズであって、
前記第1の面度数マップは、螺旋を備え、
前記第2の面度数マップは、螺旋を備え、
前記第2の面度数マップによって形成された螺旋は、前記第1の面度数マップによって形成された螺旋に対して反対方向に捩れている、
ことを特徴とする眼用レンズ。
【請求項2】
前記レンズは、コンタクトレンズ又は眼鏡レンズであることを特徴とする請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記内面及び外面の度数は、前記第1及び第2の面度数マップにわたって連続的に変化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記内面及び外面の前記度数は、半径方向と角度方向の両方に丸みのある矩形波又は正弦波として変化することを特徴とする請求項3に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記第1及び第2の面度数マップの各々は、レンズの光軸から半径方向外向きとレンズの光軸の周りの角度方向との両方に周期的に変化する度数を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記レンズの前記光軸から半径方向外向きに周期的に変化する前記度数の周期と、前記レンズの前記光軸の周りの角度方向に周期的に変化する前記度数の周期は、各々が前記第1及び第2の面度数マップにわたって一定であることを特徴とする請求項5に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記レンズの前記光軸から半径方向外向きに周期的に変化する前記度数の周期と、前記レンズの前記光軸の周りの角度方向に周期的に変化する前記度数の周期のうちの1又は2以上の周期は、レンズの前記光軸からの半径方向距離及びレンズの該光軸の周りの角度方向位置のうちの一方又は両方に従って変化することを特徴とする請求項5に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記レンズの前記光軸から半径方向外向きに周期的に変化する前記度数の周期は、100ミクロンよりも大きい周期を有し、
前記レンズの前記光軸の周りの角度方向に周期的に変化する前記度数の周期は、6度よりも大きい周期を有する、
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
各螺旋は、少なくとも4つのアームを備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
各螺旋の各アームは、少なくとも半回転を通して捩れることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
前記レンズは、レンズの光軸を取り囲む中心領域と該中心領域を取り囲む外側領域とを備え、
前記螺旋は、前記外側領域に形成され、
前記螺旋は、前記中心領域の中に延びない、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
前記レンズは、レンズの光軸を取り囲む中心領域と該中心領域を取り囲む外側領域とを備え、
前記螺旋は、前記中心領域内に形成され、
前記螺旋は、前記外側領域の中に延びない、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記中心領域は、前記螺旋の直径の50%よりも小さい直径を有することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
前記レンズは、移行領域を備え、該移行領域は、前記中心領域を取り囲み、前記外側領域は、該移行領域を取り囲み、
前記移行領域の度数は、前記中心領域及び外側領域の間に連続的な移行を与えるように変化する、
ことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の眼用レンズ。
【請求項15】
眼用レンズを製造する方法であって、
レンズ、レンズのためのモールド、又はレンズのためのモールドを製造するための対応するインサートのうちの1つの凹面及び凸面を、
前記凸面が、第1の面度数マップを形成し、
前記凹面が、第2の面度数マップを形成し、
前記第1の面度数マップ及び前記第2の面度数マップの各々が螺旋を備え、かつ
前記第2の面度数マップによって形成された螺旋は、前記第1の面度数マップによって形成された螺旋に対して反対方向に捩れる、
ように成形するように旋盤を作動させる段階、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
個人の近視進行を抑制する方法であって、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の多焦点眼用レンズを近視進行の抑制を必要とする個人に与える段階、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
各螺旋は、複数のアームを備え、複数のアームの各々は、ピークアームとトラフアームとを含むことを特徴とする請求項1に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視の進行を弱めるための(すなわち、近視抑制)眼用レンズ及び方法に関する。より具体的に、しかし、限定的ではなく、本発明は、第1の面及び第2の面を有する近視抑制のための眼用レンズに関するものであり、第1及び第2の面は、それぞれの第1及び第2の面度数マップを提供し、第1及び第2の面度数マップは、逆回転螺旋を備える。本発明はまた、そのようなレンズを作るかつ使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視抑制レンズは、着用者の近視の進行を抑制しようと試みる眼用レンズである。この抑制は、一般的に、眼用レンズを複数の領域に再分割することによって達成される。複数の領域の第1の部分集合の領域に第1の集束距離に対応する第1のレンズ度数(例えば、遠近調節しない眼球に関する遠見視力を矯正するための)が与えられる。複数の領域の第2の部分集合の領域は、近視焦点ぼけを与えるように選択された第2のレンズ度数を有する。
【0003】
近視抑制のためのコンタクトレンズの場合に、これらの複数の領域は、一般的にコンタクトレンズの光軸上に中心が定められた同心円として形成され、これらの同心円は、矯正視力を提供する第1のレンズ度数と近視焦点ぼけを与える第2のレンズ度数との間で交替する。従って、近視抑制コンタクトレンズの度数マップは、第1及び第2のレンズ度数の2つの交替する同心円を備える。しかし、低光条件下では、着用者の眼球の瞳孔は、入射光に対してより大きい開口を与えるために拡張し、眼球の中に受け入れられる光の量を増大し、それによって改善された低光視力を提供する。条件が明るくなると、瞳孔は、より小さい開口を与えるために収縮し、それによって眼球の中に受け入れられる光の量を制限する。着用者の瞳孔が拡張及び収縮するので、着用者の入射瞳にわたって位置決めされたコンタクトレンズ上の同心リングの個数も変化することになる。瞳孔が拡張すると、より多数の同心リングが着用者の入射瞳にわたって位置決めされることになる。同様に、瞳孔が収縮すると、より少数の同心リングが着用者の入射瞳にわたって位置決めされることになる。これらの同心リングは、第1のレンズ度数と第2のレンズ度数の間で交替するので、着用者の瞳孔が収縮及び拡張する時に、着用者の入射瞳にわたって位置決めされた近視焦点ぼけを与える第2のレンズ度数の量が変化することになる。一部の場合に、瞳孔は、近視焦点ぼけを与える第2のレンズ度数のいずれも着用者の入射瞳にわたって位置決めされず、その結果、レンズが近視進行の有効な抑制を提供し損ねるまで収縮してしまう場合さえもある。
【0004】
瞳孔サイズを変化させるのに加えて、レンズ偏心、及び眼鏡レンズの場合はレンズの背後にある着用者の眼球の移動は、有効な近視抑制を提供するレンズの機能を阻害する恐れもある。上述の因子の各々は、第1のレンズ度数と第2のレンズ度数との比率の変動を引き起こす可能性がある。
【0005】
近視の進行を弱めるためのいくつかのレンズ設計が説明されてきた。MISIGHT(CooperVision)は、米国で法規制認可を受けたそのようなコンタクトレンズの最初のものである。MISIGHTコンタクトレンズは、近見距離と遠見距離の両方で近視焦点ぼけ像を与える二焦点調節コンタクトレンズである。二焦点調節設計は、異なる光学度数の交替リングが周囲ゾーンを取り囲む中心遠見矯正部を備える。別の同心リングレンズ設計は、焦点ぼけ組み込みソフトコンタクト(DISC)レンズと呼ばれ、Hong Kong Polytechnic University(香港理工大学)(HKPU)によって開発され、Vision Science and Technology Co.Ltd.によって市販されている。HKPU及びHoya Vision Careは、焦点ぼけ組み込み複数セグメント(DIMS)眼鏡と呼ばれる近視抑制眼鏡レンズをMyoSmart(Hoya)という名称の下で開発した。更に、近視抑制のための別の眼鏡レンズは、Sightglass Visionによって開発されている。近視抑制眼用レンズの例は、US7766478、US7832859、US8240847、USRE47006、US8950860、US9594259、US9829722、US10061143、US10416476、US10268050、US10429670、US20190212580、US20180275427、US20160377884、及びUS20170115509を含む特許文献に説明されている。
【0006】
近視抑制レンズが追加の望ましくない像の形成を低減することを保証することが重要である。近視焦点ぼけを与えるレンズの部分も追加の像を形成する場合に、レンズの着用者は、自分の眼球の遠近調節機能を働かせるのではなく、単純に追加の像の中に「チューニング」する場合がある。これは望ましくない。レンズ設計が別々の領域を含み、そのうちの一部のみが近視抑制に特化される場合に、意図しない像形成を防止するための上述の制限は、全体のレンズではなく近視抑制に専用の領域に適用されることは認められるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US7766478
【文献】US7832859
【文献】US8240847
【文献】USRE47006
【文献】US8950860
【文献】US9594259
【文献】US9829722
【文献】US10061143
【文献】US10416476
【文献】US10268050
【文献】US10429670
【文献】US20190212580
【文献】US20180275427
【文献】US20160377884
【文献】US20170115509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題を軽減することを求めるものである。これに代えて又はこれに加えて、本発明は、近視抑制のための改善された眼用レンズを提供することを求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様により、近視進行を抑制するための眼用レンズを提供する。眼用レンズの第1の面は、第1の面度数マップを形成するように成形される。眼用レンズの第2の面は、第2の面度数マップを形成するように成形される。第1の面度数マップは螺旋を備える。第2の面度数マップも螺旋を備える。第1の面度数マップによって形成される螺旋と第2の面度数マップによって形成される螺旋は反対方向に捩れる。
【0010】
コンタクトレンズの全体度数マップは、第1及び第2の面度数マップの重ね合わせによって決定される。第1の面度数マップによって与えられる螺旋と第2の面度数マップによって与えられる螺旋とは反対方向に捩れる。従って、第1及び第2の面度数マップは、逆回転螺旋を備えるということができる。第1及び第2の面度数マップによって形成された2つの逆回転螺旋の重ね合わせは、交替する環状リング又は複数の焦点ぼけセグメントの擬似ダーツ盤パターンを近似するレンズ度数マップをもたらす。全体レンズ度数マップは、遠見視力を提供する第1のレンズ度数と近視焦点ぼけを与える第2のレンズ度数との間で変化する。この眼用レンズは、近視抑制レンズとして計画されたものであるので、この眼用レンズの着用者は、一般的に約5歳の年齢と18歳の年齢の間であることになり、従って、着用者の眼球が遠近調節することができる可能性は非常に高い。従って、第1のレンズ度数は遠見視力に対して選択されるが、着用者は、自身の遠近調節機能に起因して、第1のレンズ度数を与えるレンズの部分を通して近距離を見ることができることは認められるであろう。
【0011】
擬似ダーツ盤パターンを近似する度数マップを有するコンタクトレンズは、近視抑制を提供するのに有効とすることができる。そのようなレンズ度数マップは、着用者の瞳孔サイズの変動の存在下でレンズ度数のより安定した比率(すなわち、遠見視力焦点調節を与えるレンズ度数に対する近視焦点ぼけを与えるレンズ度数の比率)も与える。光条件が変化すると、着用者の瞳孔は、眼球の中に受け入れられる光の量を調整するために拡張及び収縮することになる。条件が明るくなると、瞳孔は、眼球の中に許される光の量を低減するために収縮する。条件が暗くなると、瞳孔は、眼球の中へのより多くの光を許すために拡張する。従来技術の一部の近視抑制コンタクトレンズは、遠見視力焦点調節を与える第1のレンズ度数と近視焦点ぼけを与える第2のレンズ度数との交替同心リング、例えば、第2のレンズ度数の周囲円によって取り囲まれた第1のレンズ度数の中心円を使用する。これらのコンタクトレンズは、着用者の瞳孔が拡張及び収縮する時に着用者の入射瞳にわたるレンズ度数の比率(すなわち、遠見視力焦点調節を与えるレンズ度数に対する近視焦点ぼけを与えるレンズ度数の比率)の変動を受ける。これらの変動は、有効な近視抑制を提供するレンズの機能を損ねる場合がある。すなわち、本発明によるコンタクトレンズは、変化する瞳孔拡張の存在下で有効な近視抑制を提供することができる。
【0012】
本明細書に開示する螺旋度数マップは、遠見焦点調節を与えるレンズ度数に対する近視焦点ぼけを与えるレンズ度数の一定の比率を、螺旋を含む全直径範囲にわたって与えることができる。従って、螺旋度数マップを有するコンタクトレンズは、瞳孔が収縮又は拡張する時に焦点調節と近視焦点ぼけとの実質的に一定の比率(螺旋がレンズの全体を網羅する場合)又は単調に変化する比率(螺旋がレンズの半径方向副部分しか覆わない場合)のいずれかを維持することができる。2つの逆回転螺旋の重ね合わせによって与えられる擬似ダーツ盤パターンもこの同じ利点をもたらす。従って、擬似ダーツ盤度数マップを有するコンタクトレンズは、可変照明条件の存在下で遠見焦点調節に対する近視焦点ぼけの比率の変動を低減する。
【0013】
度数マップが滑らかに(例えば、正弦波のように)変化する場合に、度数マップは、単純に遠見視力焦点調節に関連付けられた第1のレンズ度数及び近視焦点ぼけに関連付けられた第2のレンズ度数以外のレンズ度数を備えることになることは当業者によって認められるであろう。そのような場合に、度数マップは、第1及び第2の度数の間のレンズ度数を有する領域を更に備えることになる。これは、着用者の入射瞳にわたって位置決めされた焦点調節と近視焦点ぼけとの比率の一貫した安定な変動を与えるという上述の利点に影響を及ぼさない又はそれを低減しないことは認められるであろう。この利点は、螺旋及び擬似ダーツ盤度数マップに関して特定の半径でのレンズ度数の構成がレンズの光軸からの半径方向距離に従って変化しないことに由来することは当業者によって認められるであろう。
【0014】
本発明の第2の態様により、近視抑制のための眼用レンズを製造する方法も提供する。本方法は、レンズ、レンズのためのモールド、又はレンズのためのモールドを製造するためのインサートのうちの少なくとも1つの第1及び第2の面を成形するように旋盤を作動させる段階を備える。第1の面は、第1の面度数マップを形成するように成形される。第2の面は、第2の面度数マップを形成するように成形される。第1の面度数マップ及び第2の面度数マップは、各々が螺旋を備える。第1の面度数マップによって形成される螺旋と第2の面度数マップによって形成される螺旋とは反対方向に捩れる。
【0015】
本発明の第3の態様により、本明細書に説明する眼用レンズを使用する方法も提供する。本方法は、近視又は遠視の進行を弱めることのような屈折異常の進行を弱めることに有効である場合がある。本方法は、遠近調節することができる眼球を有する個人に眼用レンズを与える段階を含む。本方法は、約5歳から約18歳までの個人に眼用レンズを与える段階を含むことができる。与える段階は、検眼技師又は検眼医のような眼球診療者によって実行することができる。これに代えて、与える段階は、レンズ着用者への眼用レンズの配送に関して準備するレンズ販売者によって実行される場合がある。
【0016】
本発明の一態様に関連して説明した特徴は、本発明の他の態様に組み込むことができることは勿論認められるであろう。例えば、本発明の方法は、本発明の装置に関して説明した特徴のいずれも組み込むことができ、その逆も同様である。
【0017】
ここで本発明の実施形態を添付の概略図面を参照して単なる例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の例示的実施形態によるコンタクトレンズを示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるコンタクトレンズの光学ゾーンの第1の面度数マップを示す図である。
図3】第1の実施形態のコンタクトレンズの光学ゾーンの第2の面度数マップを示す図である。
図4】第1の実施形態のコンタクトレンズの光学ゾーンのレンズ度数マップを示す図である。
図5】第2の実施形態によるコンタクトレンズの光学ゾーンの度数マップを示す図である。
図6】本発明の第5の実施形態による方法の段階を例示する流れ図である。
図7】本発明の第3の実施形態による眼鏡レンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、第1の態様により、近視抑制のための眼用レンズを提供する。眼用レンズの第1の面は、第1の面度数マップを形成するように変化する。眼用レンズの第2の面は、第2の面度数マップを形成するように変化する。面の変動が面の曲率の変動を備えることは当業者によって認められるであろう。第1の面度数マップ及び第2の面度数マップは、各々が螺旋を備える。第1の面度数マップによって与えられる螺旋と第2の面度数マップによって与えられる螺旋とは反対方向に捩れる。
【0020】
第1及び第2の面の各々の上に形成される螺旋は、それぞれの面の度数をレンズの光軸から半径方向外向きと光軸の周りの角度方向との両方に実質的に周期的に変化させることによって形成することができる。
【0021】
第1の面度数マップは、必ずしも第1の面の全体で形成する必要はないことは当業者によって認められるであろう。実際に、第1の面度数マップは、第1の面の一部分上に形成することができる。そのような場合に、この部分の外側の第1の面の変動は、第1の面度数マップに関連がない。同じことは、第2の面及び第2の面度数マップに適用される。例えば、コンタクトレンズの場合に、面度数マップは、取り囲む周囲ゾーンによってではなく、コンタクトレンズの光学ゾーンだけによって形成することができる。従って、この場合に、面の上述の部分は、コンタクトレンズの光学ゾーンに対応する。
【0022】
逆回転螺旋を有する第1及び第2の面を与える眼用レンズは、近視抑制関連で有効なレンズ度数プロファイルを与えることができる。近視焦点ぼけは、眼球の成長に影響を及ぼす可能性があると考えられている。しかし、近視抑制レンズが近視進行を阻害するのに有効であることは立証されているが、この効果を達成する機構は、未だ完全には把握又は理解されていない。近視抑制に使用するための本発明の開示の構造及びレンズ設計の有効性は、近視抑制レンズが機能する時に従う正確な機構に関する上述の理論の正しさに依存しない。
【0023】
眼用レンズは、コンタクトレンズである場合がある。これに代えて、眼用レンズは、眼内レンズ又は眼鏡レンズである場合がある。
【0024】
第1の面度数マップの変動は、必ずしも第2の面度数マップの変動を必要としないことは認められるであろう。実際に、第1の面度数マップは、第2の面度数マップとは独立に変化し、その逆も同様である。従って、半径方向及び角度方向変動の特性について続けて説明する任意的な特徴の各々は、一緒に又は別々に第1及び第2の面度数マップに適用される。
【0025】
螺旋は、レンズの一部分上に形成される場合がある。例えば、コンタクトレンズの場合に、螺旋は、レンズの光学ゾーンに形成される場合がある。
【0026】
コンタクトレンズの場合に、レンズは、視力修正を提供することができる光学ゾーンを備えることになることは認められるであろう。本発明の実施形態によるコンタクトレンズ及び眼内レンズは、いずれの追加の焦点調節修正又は視力修正も施さない取り囲む周囲ゾーンを更に備えることができる。周囲ゾーンは、コンタクトレンズを着用者の眼球上の定位置に維持することを助ける役割のみをもたらすことができる。従って、面度数マップは、レンズの光学ゾーンにわたる第1の面の変動によって定められることは当業者によって認められるであろう。光学ゾーンの外側(例えば、周囲ゾーン内)のレンズ面の変動は、本発明の関連では面度数マップを定めるものとして扱うことはない。類似の考察は、光学ゾーン及び(任意的な)周囲ゾーンを更に備えることができる眼内レンズにも適用される。
【0027】
本発明の実施形態によるコンタクトレンズの光学ゾーンは、コンタクトレンズのタイプに依存して4mmと9mmの間の直径を有する場合がある。例えば、光学ゾーンの直径は、約5mm、約6mm、約7mm、又は約8mmとすることができる。コンタクトレンズの光学ゾーンの直径は、7mmと9mmの間とすることができる。光学ゾーンは、その幾何学中心に対応する光軸を備える。
【0028】
半径方向変動(例えば、第1の面度数マップと第2の面度数マップの両方の半径方向変動)の周期は、100ミクロンよりも大きい場合がある。角度方向変動(例えば、第1の面度数マップと第2の面度数マップの両方の半径方向変動)の周期は、6度よりも大きい場合がある。
【0029】
第1及び/又は第2の面度数マップでは、半径方向変動及び角度方向変動のうちの一方又は両方は、度数マップにわたって一定の大きさのものである。
【0030】
半径方向変動の周期は、200ミクロンよりも大きく、好ましくは、400ミクロンよりも大きく、より好ましくは、800ミクロンよりも大きい場合がある。角度方向変動の周期は、6度よりも大きく、好ましくは、9度よりも大きく、好ましくは、18度よりも大きく、より好ましくは、36度よりも大きい場合がある。半径方向変動の周期は、0.1mmと10mmの間である場合がある。半径方向変動の周期は、0.5mmと5mmの間である場合がある。半径方向変動の周期は、1mmと2mmの間である場合がある。
【0031】
角度方向変動の周期は、180度よりも小さく、好ましくは、90度よりも小さく、より好ましくは、45度よりも小さい場合がある。角度方向変動の周期は、180度と9度の間である場合がある。角度方向変動の周期は、120度と24度の間である場合がある。角度方向変動の周期は、90度と36度の間である場合がある。螺旋の各々は、2よりも多く、好ましくは、4よりも多く、より好ましくは、8よりも多いアームを含むことができる。角度の正弦波変動の周期は、螺旋上のアームの個数を決定することは当業者によって認められるであろう。従って、半径方向変動は、100ミクロンよりも大きい周期を有し、角度方向変動は、6度よりも大きく、好ましくは、9度よりも大きく、より好ましくは、18度よりも大きく、更により好ましくは、36度よりも大きい周期を有することができる。半径方向変動は、200ミクロンよりも大きい周期を有し、角度方向変動は、6度よりも大きく、好ましくは、9度よりも大きく、より好ましくは、18度よりも大きく、更により好ましくは、36度よりも大きい周期を有することができる。半径方向変動は、400ミクロンよりも大きい周期を有し、角度方向変動は、6度よりも大きく、好ましくは、9度よりも大きく、より好ましくは、18度よりも大きく、更により好ましくは、36度よりも大きい周期を有することができる。半径方向変動は、800ミクロンよりも大きい周期を有し、角度方向変動は、6度よりも大きく、好ましくは、9度よりも大きく、より好ましくは、18度よりも大きく、更により好ましくは、36度よりも大きい周期を有することができる。上述のことは、レンズのいずれの面にも適用されることは認められるであろう。
【0032】
第1の面度数マップ上に形成される螺旋と第2の面度数マップ上に形成される螺旋とは反対方向に捩れるが、他の点では実質的に同一である場合がある。
【0033】
度数は、度数マップにわたって滑らかに変化することができる。度数は、いずれの不連続性も持たずに連続的に変化することができる。度数は、上述の部分にわたって80D/mmよりも小さく、好ましくは、40D/mmよりも小さく、より好ましくは、20D/mmよりも小さい変動率で変化することができる。面は、この部分にわたって滑らかに変化することができる。面は、いずれの不連続性も持たずに連続的に変化することができる。度数マップにわたって度数を滑らかに変化させることにより、旋盤を用いて製造することがより容易なレンズ面プロファイルをもたらすことができる。旋盤を用いて眼用レンズを製造する段階は、旋盤を用いてレンズ(例えば、コンタクトレンズ)、レンズのためのモールド(例えば、コンタクトレンズのためのモールド)、及びレンズモールドに対するインサート(例えば、コンタクトレンズモールドに対するインサート)のうちの1又は2以上の面を成形する段階を含むことができることは当業者によって認められるであろう。鋭敏な移行及び特徴部は、旋盤を用いて達成することが困難である場合がある。従って、所期又は所要の定義を有するそのような特徴を有するレンズは、旋盤を用いて製造する時に多くの場合に再現することができない。従って、滑らかにという用語は、この関連では旋盤を用いたレンズ、レンズのためのモールド、又はレンズモールドに対するインサートの面の望ましい成形を可能にするほど十分に滑らかなことを意味することも認められるであろう。
【0034】
度数マップは、半径方向及び角度方向のうちの一方又は両方に矩形波として変化することができる。度数マップは、半径方向及び角度方向のうちの一方又は両方に丸い矩形波として変化することができる。度数マップは、半径方向及び角度方向のうちの一方又は両方に正弦波として変化することができる。
【0035】
半径方向変動及び角度方向変動は、それぞれの波形に関連付けられる場合がある。これに加えて、これらの波形の度数マップは、近視焦点ぼけと遠見視力矯正の間の実質的に等しい均衡度を用いて対称である場合がある。これに代えて、度数マップは、視力矯正又は近視焦点ぼけのいずれかに向けてバイアスさせることができる。従って、これらの波形の度数マップは、半径方向及び角度方向のうちの一方又は両方に非対称である場合がある。
【0036】
半径方向変動及び角度方向変動のうちの一方又は両方の周期は、度数マップにわたって実質的に一定である場合がある。半径方向変動及び角度方向変動が実質的に一定である本発明の実施形態は、旋盤を用いて製造することが容易な面プロファイルを有するレンズを提供する。
【0037】
半径方向変動及び角度方向変動のうちの一方又は両方の周期は、レンズの光軸からの半径方向距離及び光軸の周りの角度方向位置のうちのいずれか又は両方に従って変化することができる。半径方向変動及び角度方向変動のうちの一方又は両方の周期がレンズ上の位置に従って変化する本発明の実施形態は、螺旋の特性(例えば、螺旋の捩れ率又はアーム幅)が光学ゾーンの様々な領域内で異なるレンズを提供することができる。コンタクトレンズの光軸は、ほぼコンタクトレンズの光学ゾーンの中心でもあることは認められるであろう。
【0038】
半径方向変動の周期の変動は、例えば、線形変動レンズ度数の混合領域によって分離することができる。そのような混合領域は、半径方向変動の第1の周期を有する第1の領域と半径方向変動の第2の周期を有する第2の領域の間に線形に変化する周期の同心リングを備えることができる。従って、混合領域は、異なる周期の半径方向変動の領域の間に滑らかな移行を与えることができる。異なる周期の半径方向変動の領域は、2つの混合領域と実質的に一定のレンズ度数の介在領域とによって分離される場合がある。混合領域は、約25マイクロメートルから約200マイクロメートルまでの幅(平面図内の)を有することができる。
【0039】
螺旋のうちの一方又は両方の各アームは、4分の1回転と40回転の間を通して捩れることができる。螺旋のアームがそれを通して捩れる回転数は、半径方向変動の周期と面度数マップの半径とによって決定されることは当業者によって認められるであろう。
【0040】
半径方向変動の周期対角度方向変動の周期の比率は、0.1mm:6°よりも大きい場合がある。螺旋のうちの一方又は両方の各アームは、0.1mmよりも広く、好ましくは、0.5mmよりも広く、より好ましくは、1mmよりも広い場合がある。各々は、幅が0.1mmと3mmの間である場合がある。各アームは、幅が0.25mmと2mmの間である場合がある。各アームは、幅が0.5mmと1mmの間である場合がある。所与の半径の場所のアームの幅は、アームの垂直幅(すなわち、所与の半径に対して垂直な方向の幅)として定められることは当業者によって認められるであろう。アームの幅は、この関連では、当該アームの各側辺の直近にあり、両方共に最大又は最小の勾配のいずれかを有し、単一の正又は負の偏位を受ける度数を挟む2つの点の間の距離として定められる。幅のそのような定義は、所与の半径の円に対するタンジェンシャルに沿ったアーム幅の直線測定値を与えることは当業者によって認められるであろう。更に、この定義の下での幅の測定値は、所与の半径を有する円の弧として取られたアームの幅の測定値とは異なることになることは当業者によって認められるであろう。直線幅定義の下での幅測定値とは異なり、そのような弧に基づく測定値は、角度周期に比例すると考えられる。これら2つの方法によって得られた幅の間の差の大きさは、目下の特定の場合の角度周期に依存することになる。
【0041】
螺旋の各々は、2よりも多いアーム、好ましくは、4よりも多いアーム、より好ましくは、8よりも多いアーム、更により好ましくは、16個よりも多いアームを備えるである場合がある。
【0042】
螺旋のアームの各々は、少なくとも半回転、好ましくは、少なくとも1回転、より好ましくは、少なくとも1と半回転、更により好ましくは、少なくとも2回転を通して捩れることができる。
【0043】
螺旋の各アームは、上述の部分の光軸から度数マップの周囲まで延びる場合がある。螺旋のアームがレンズの光軸から度数マップの周囲まで延びる本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、変化する瞳孔拡大の存在下で第2のレンズ度数(近視焦点ぼけに対応する)に対する第1のレンズ度数(遠見視力焦点調節に対応する)の実質的に一定の比率を提供することができる。そのような実施形態は、変化する光条件下で同心リングレンズ設計と比較してより一貫した近視焦点ぼけ像を与えることができる。眼用レンズがコンタクトレンズである場合に、同心リングコンタクトレンズ設計と比較してレンズの偏心時の近視焦点ぼけ像は、より一貫したものである場合がある。眼用レンズが眼鏡レンズである場合に、近視焦点ぼけ像は、他の眼鏡レンズ設計と比較して眼球回転時により一貫したものである場合がある。
【0044】
レンズは平均レンズ度数を有することになることは認められるであろう。更に、レンズは、平均よりも大きいレンズ度数を有するレンズの第1の区域と平均よりも小さいレンズ度数を有するレンズの第2の区域との間で分割されることになることは認められるであろう。第1の区域対第2の区域の比率は、10:1及び1:10である場合がある。第1の区域対第2の区域の比率は、5:1及び1:5である場合がある。第1の区域対第2の区域の比率は、3:1及び1:3である場合がある。第1の区域対第2の区域の比率は、2:1及び1:2である場合がある。第1の区域対第2の区域の比率は、約1:1である場合がある。
【0045】
度数マップは、中心領域と外側領域を含むことができる。中心領域は、レンズの光軸を直接に取り囲むことができる。外側領域は、中心領域を直接に取り囲むことができる。中心領域の度数は、中心領域にわたって周期的に変化しない場合がある。外側領域は、螺旋度数プロファイルを含むことができる。従って、外側領域は、第1及び/又は第2の面度数マップの度数の角度方向変動及び半径方向変動を含むことができる。螺旋は、中心領域内に形成される場合がある。そのような場合に、螺旋は外側領域の中に延び込まない場合がある。これに代えて、螺旋は、外側領域内に形成することができる。そのような場合に、螺旋は、中心領域の中に延び込まない場合がある。これに代えて、中心領域は、螺旋度数プロファイルを含み、外側領域は、外側領域にわたって周期的に変化しない(例えば、実質的に一定である)場合がある。レンズの非変動領域は、例えば、近視矯正に対する度数を備えること(すなわち、明瞭な遠見視力を提供すること)によって視力矯正を提供することができる。これに代えて、レンズの非変動領域は、いずれの視力修正も施さず、従って、単純に通常焦点調節視力を可能にするレンズの部分を与える場合がある。中心領域又は外側領域が周期的度数変動の不在なレンズ度数を有するコンタクトレンズを提供することにより、レンズが同時の近視抑制と矯正とを提供することを可能にすることができる。
【0046】
従って、レンズの1又は2以上の部分は、近視抑制以外の機能を提供するように配置される場合がある。例えば、レンズの中心領域は、視力矯正、例えば、近視矯正を提供するように選択されたレンズ度数を有することができる。レンズのそのような領域は、公知のコンタクトレンズ及び眼鏡レンズでもたらすことができるタイプのいずれかの視力矯正を提供するように配置することができることは認められるであろう。従って、第1及び第2の面度数マップによって形成される螺旋は、レンズの1又は2以上の特定の近視抑制部分にのみ存在することができる。レンズのそのような部分は、レンズの中心から半径方向外向きに突出するいずれかの形状、例えば、環状リング、ストリップ、又は擬似ダーツ盤パターンの交替部分のうちの1又は2以上を取ることができる。第1及び第2の面度数マップによって形成される螺旋度数プロファイルは、レンズの光軸からの予め決められた半径方向距離で矯正レンズ度数の環状リング形部分によって分断される場合がある。レンズは、複数のそのような矯正リング部分を備える場合がある。螺旋度数プロファイルは、矯正リング部分の間で続く場合がある。
【0047】
本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、いずれの追加の焦点調節矯正又は視力矯正も施さず、コンタクトレンズを着用者の眼球上の定位置に維持することを助ける役割のみをもたらす取り囲む周囲ゾーンを含むことができる。
【0048】
従来方式では、眼球上に着用した時に、コンタクトレンズは角膜上に載り、光学ゾーンは着用者の瞳孔をほぼ網羅する。この場合に、中心領域の直径は、度数マップの直径の50%よりも小さく、好ましくは、40%よりも小さく、より好ましくは、30%よりも小さい場合がある。中心領域は、コンタクトレンズの着用者の最小瞳孔サイズよりも小さい場合がある。本発明のそのような実施形態は、着用者の最小瞳孔サイズよりも小さい中心領域を与えることができる。着用者の最小瞳孔サイズよりも小さい中心領域を有する本発明の実施形態は、変化する光条件の存在下で視力矯正を維持することができる。
【0049】
レンズは、移行領域を含むことができる。移行領域は、中心領域を取り囲むことができる。外側領域は、移行領域を取り囲むことができる。移行領域の度数は、中心領域と外側領域の間に滑らかな移行を与えるように変化することができる。中心領域と外側領域の間に滑らかな移行を与える本発明の実施形態は、レンズ、そのようなレンズのためのモールド、そのようなレンズモールドに対するインサートのより容易な旋盤を用いた製造を可能にすることができる。この場合に、この関連での「滑らか」は、旋盤を用いて生成するのにレンズプロファイルが十分に滑らかでなければならないことを意味することは当業者によって認められるであろう。移行領域も、螺旋として例えば外側領域内に形成された螺旋の延長部として変化することができる。そのような実施形態では、移行領域内に形成される螺旋の大きさは、移行領域の最外側半径と移行領域の最内側半径との間で減衰する(例えば、線形に)ことができる。移行螺旋は、外側領域内(例えば、最外側半径の場所)に形成される螺旋のものに等しい大きさからゼロ(例えば、最内側半径の場所)まで減衰することができる。
【0050】
第2の面度数マップの半径方向変動及び角度方向変動の周期及び位相は、第1の面度数マップと同じである場合がある。従って、第1の面度数マップによって与えられる螺旋と第2の面度数マップによって与えられる螺旋とは、対向する捩れ方向以外は同じである場合がある。逆回転螺旋を備える第1及び第2の面度数マップを提供することにより、交替する環状リングのダーツ盤状パターンを近似するレンズ度数マップを与えることができる。レンズ度数マップは、第1及び第2の面度数マップの各々の度数マップの重ね合わせによって形成されることは当業者によって認められるであろう。従って、上述の製造のし易さという利点を各々が保持する第1の面度数マップと第2の度数マップとの組合せによって擬似ダーツ盤パターンが与えられることも認められるであろう。従って、そのような実施形態は、旋盤を用いた擬似ダーツ盤度数マップを有するレンズのより容易な製造を可能にすることができる。
【0051】
レンズ度数マップは、複数のセクションを含むことができる。複数のセクションは、望ましい視力矯正に対応する第1の度数又は望ましい近視焦点ぼけに対応する第2の度数のいずれかを与えることができる。従って、第1の度数は、0ジオプトリー(D)と-10Dの間である場合がある。第1の度数は、-0.25Dから-6.00Dまでである場合がある。本発明のレンズ内に与えられる第2の度数は、レンズの第1の度数よりも強くすることができ、例えば、第2の度数は、第1の度数よりも1Dから5Dだけ強くすることができる。第2の度数は、第1の度数よりも1Dから4Dだけ強くすることができる。第2の度数は、第1の度数よりも1Dから5Dだけ強くすることができる。第2の度数は、上述のセグメントのうちの一部が+1Dの第2の度数を有することができ、一部のセグメントが+2Dの第2の度数を有することができ、一部のセグメントが+3Dの第2の度数を有することができるように例えば第1の度数よりも強い度数を有する離散焦点ぼけセグメントを与える時に発生するように変化する場合がある。第2の度数の変動は、同じアーム内で発生する場合があり、又は異なるアーム内で発生する場合がある。これらのセクションでは、第1及び第2の度数の間で半径方向及び/又は角度方向に交替するようにレンズ上に配置することができる。
【0052】
本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、着用者の眼球上に配置された時にレンズの向きを決定するためのバラストを含むことができる。コンタクトレンズは、所与の向きで着用者に特定の利点をもたらす場合がある。バラストをコンタクトレンズの中に組み込む本発明の実施形態は、着用者の眼球上に配置された時に、着用者の瞼のアクションの下で予め決められた静止角まで回転することになり、例えば、バラストは楔とすることができ、回転は、この楔上での瞼のアクションからもたらすことができる。コンタクトレンズ内にバラストを配置することにより、この静止角が着用者に特定の利点をもたらすレンズの向きに対応することを保証することが可能である。
【0053】
本発明は、第2の態様により、近視抑制のための眼用レンズ(例えば、コンタクトレンズ)を製造する方法を提供する。本方法は、レンズ(例えば、コンタクトレンズ)、レンズのためのモールド(例えば、コンタクトレンズのためのモールド)、又はレンズのためのモールドを製造するためのインサート(例えば、コンタクトレンズのためのモールドに対するインサート)のうちの1つの第1及び第2の面を成形するように旋盤を作動させる段階を備える。第1の面は、第1の面度数マップを形成する。第2の面は、第2の面度数マップを形成する。第1及び第2の面度数マップの各々は、螺旋を備える。第1の面度数マップによって形成される螺旋と第2の面度数マップによって形成される螺旋とは反対方向に捩れる。
【0054】
螺旋の各々は、それぞれの面の度数をレンズの光軸から半径方向外向きと光軸の周りの角度方向との両方に実質的に周期的に変化させることによって形成される場合がある。
【0055】
本方法は、レンズの面を成形するように旋盤を作動させる段階を備える場合がある。これに代えて又はこれに加えて、本方法は、レンズのためのモールドの面を成形するように旋盤を作動させる段階を含むことができる。これに代えて又はこれに加えて、本方法は、レンズのためのモールドの製造のためのインサートの面を成形するように旋盤を作動させる段階を含むことができる。旋盤による成形の対象物がレンズから除去されるほど、得られるレンズ上に再現されることになる特徴部の定義が少なくなることは当業者によって認められるであろう。従って、例えば、旋盤を用いてレンズの面を成形する段階は、レンズのためのモールドの面を、旋盤を用いて成形する時に達成することができることになるものよりも多い面特徴部を定義することを可能にする。
【0056】
レンズがコンタクトレンズ又は眼内レンズである本発明の実施形態では、第1及び第2の面度数マップは、第1及び第2の面の光学ゾーンを成形することによって形成することができる。モールド又はモールドに対するインサートの光学ゾーンは、当該モールド又はインサートを用いて製造されたコンタクトレンズの光学ゾーンに対応するモールドの部分を指すことは認められるであろう。
【0057】
本発明によるレンズ、例えば、コンタクトレンズは、キャストモールド成形工程、スピンキャストモールド成形工程、又は旋盤工程、又はその組合せによって形成することができる。当業者によって理解されるように、キャストモールド成形は、レンズ形成材料を、凹レンズ部材形成面を有する雌モールド部材と凸レンズ部材形成面を有する雄モールド部材との間に配置することによるレンズ部材のモールド成形を指す。
【0058】
眼用レンズがコンタクトレンズを備える実施形態では、コンタクトレンズ材料は、コンタクトレンズの一部分又はコンタクトレンズ全体として使用される時に視覚的に透明である(ハンドリング着色を含む場合はあるが)。コンタクトレンズ材料は、当業技術で理解されているように、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、又はシリコーンエラストマー材料である場合がある。言い換えれば、本発明のコンタクトレンズは、ヒドロゲル材料、シリコーンヒドロゲル材料、又はシリコーンエラストマー材料を備える、それで実質的に構成される、又はそれで構成することができる。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、平衡状態で水分を保持し、シリコーン含有化学物質が不在の材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化学物質を含むヒドロゲルである。本明細書に使用するヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%から約90%(wt/wt)までの平衡水分含有量(EWC)を有する。ヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料は、約30%から約70%(wt/wt)までのEWCを有することができる。これらと比較して本明細書に使用するシリコーンエラストマー材料は、約0%から10%(wt/wt)未満までの水分含有量を有する。一般的に、本方法又は本発明の装置と共に使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%から3%(wt/wt)までの水分含有量を有する。これに代えて、本発明のコンタクトレンズの例は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)などのような剛性ガス透過性材料から製造することができる。
【0059】
本方法は、互いに組み付けられた第1のモールド部品と第2のモールド部品とを備えるモールド成形アセンブリ内でコンタクトレンズを形成する段階を含むことができる。ヒドロゲルレンズ又はシリコーンヒドロゲルレンズの場合に、レンズは、第1のモールド部品と第2のモールド部品の間に形成されたレンズ形キャビティ内に重合開始剤を含むヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルのレンズ配合物を重合することによって製造することができる。シリコーンエラストマーレンズでは、レンズは、第1のモールド部品と第2のモールド部品の間に形成されたレンズ形キャビティ内で液体シリコーンエラストマー材料を硬化させる、加硫する、又はその反応をヒドロシリル化等によって触媒することによって製造することができる。コンタクトレンズ形キャビティを形成する各モールド部品の面は、凸、凹、平面、又はその組合せである場合がある。コンタクトレンズの形成後に、2つのモールド部品は、コンタクトレンズがこれらのモールド部品の一方の面に取り付けられたままに留まるように分離される。その結果、第1又は第2のモールド部品の面上にコンタクトレンズが提供される。第1のレンズ部材を生成するのに使用されなかったモールド部品の面上にレンズ部材を配置することを望ましいとすることができるが、これは、このモールド部品に対するこの部材の望ましい位置合わせを達成するための追加の段階を必要とする場合がある。その後に、これらのレンズは、取り付けられたモールド部品から取り外され、抽出及び水和等によって更に処理され、検査され、パッケージに梱包され、かつ滅菌することができる。
【0060】
図1は、本発明の実施形態によるコンタクトレンズ10を示している。コンタクトレンズ10は、光学ゾーン11と周囲ゾーン13を備える。光学ゾーン11は、コンタクトレンズの着用者がそれを通して見るレンズの部分を備える。光学ゾーン11は、着用者に視力矯正を提供するように設計されたレンズを形成する。周囲ゾーン13は、光学ゾーン11を取り囲み、着用者にいずれの視力矯正も施さない。周囲ゾーン13は、他の機能を実施することができる。例えば、周囲ゾーン13は、コンタクトレンズを着用者の眼球上に維持することを助けるように機能することができる。周囲ゾーン13は、着用者の眼球上でコンタクトレンズの予め決められた向きを維持するためのバラストを含むことができる。
【0061】
コンタクトレンズの2つの面は、第1及び第2の面度数マップを形成するように光学ゾーン11にわたって変化するように成形される。第1及び第2の面度数マップは、一緒にレンズ度数マップを形成する。従って、光学ゾーンは、第1の面度数マップと、第2の面度数マップと、レンズ度数マップとを提供するということができる。光学ゾーンの中に、度数マップは、1又は2以上の明確に異なる領域を含むことができる。図1に示す例示的コンタクトレンズは、中心領域15と、外側領域17と、移行領域19とを備える。外側領域17は、移行領域19を取り囲む。移行領域19は、中心領域15を取り囲む。中心領域15と外側領域17は、異なる視力矯正を提供するように異なるレンズ度数配置を与えることができる。移行領域19は、中心領域15と外側領域17の間に滑らかな移行を与えるように機能することができる。図1に示すコンタクトレンズは、単なる例として提示したものであり、本発明による他のコンタクトレンズは、より多いか又はより少ない領域を含むことができることは認められるであろう。例えば、本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、移行領域を除外することができ、又は光学ゾーン11を通して単一領域のみを含むことさえ可能である。本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、例えば、同心円として形成された追加の領域を含むことができる。
【0062】
本発明の第1の例示的実施形態により、近視抑制のためのコンタクトレンズを提供する。代替実施形態は、眼内レンズ又は眼鏡レンズを備えることができることは認められるであろう。コンタクトレンズは、第1の面と第2の面を備える。この例示的実施形態では、第1の面は、コンタクトレンズの外面を含み、第2の面は、コンタクトレンズの内面を備える。外面が着用者の瞼に隣接するコンタクトレンズの凸面であり、内面が着用者の眼球に隣接するコンタクトレンズの凹面であることは当業者によって認められるであろう。
【0063】
第1の面は、第1の面度数マップを形成するように成形される。この例示的実施形態では、第1の面度数マップは、第1の面の一部分だけによって形成される。第1の面のこの部分は、この場合に、コンタクトレンズの光学ゾーンによって定められ、かつそれに対応する。従って、第1の面度数マップは、光学ゾーンの第1の面の変動によって与えられるということができる。
【0064】
コンタクトレンズの光学ゾーンは、レンズによるいずれの視力修正も提供する。本発明の実施形態によるコンタクトレンズは、いずれの追加の焦点調節修正又は視力修正も施さない取り囲む周囲ゾーンを更に備えることができる。そのようなコンタクトレンズの場合に、周囲ゾーンは、コンタクトレンズを着用者の眼球上の定位置に維持することを助ける役割のみをもたらすことができる。従って、そのような実施形態では、第1の面度数マップは、レンズの光学ゾーンにわたる第1の面の変動によって定められることは当業者によって認められるであろう。同様に、第2の面度数マップは、光学ゾーンにわたる第2の面の変動によって定められる。光学ゾーンの外側(例えば、周囲ゾーン内)のレンズ面の変動は、これらの実施形態では面度数マップに影響を及ぼさない。
【0065】
第1の面度数マップは、全体コンタクトレンズ度数マップに対してこの面の形状によって与えられる修正を示すことは認められるであろう。従って、2つの面(内面及び外面)を有するコンタクトレンズは、2つの面度数マップを備えることになり、その組合せは、全体コンタクトレンズ度数マップを決定する。
【0066】
図2は、第1の面度数マップ100を示している。第1の面度数マップ100は螺旋を形成する。螺旋は、複数の(この例では4つの)アーム101を備える。アーム101の各々は、ピークアーム101a及びトラフアーム101bの一方を備える。ピークアーム101aは、面度数マップ(又は面度数マップの周期変動領域)の平均度数からの正の偏位を備えるアームであり、トラフアーム101bは、面度数マップ(又は面度数マップの周期変動領域)の平均度数からの負の偏位を備えるアームであることは認められるであろう。螺旋は、コンタクトレンズの光軸から半径方向外向きと光軸の周りの角度方向との両方に実質的に周期的に度数を変化させることによって形成される。コンタクトレンズの光軸は、そのコンタクトレンズの光学ゾーンの光軸に対応することは認められるであろう。度数は、第1のレンズ度数と第2のレンズ度数の間で変化する。この例示的実施形態の第1の面度数マップは、-3.0Dのベースレンズ度数を+3.0Dの追加度数と共に有する。従って、第1のレンズ度数は-3.0Dであり、第2のレンズ度数は+0Dである。提示した第1のレンズ度数及び第2のレンズ度数(従って、ベースレンズ度数及び追加度数)の特定の値が単なる例であり、所与の関連で使用される実際の値は、意図する着用者に対する必要性によって決定することになることは当業者によって認められるであろう。
【0067】
この例示的実施形態では、半径方向変動の周期は1.2mmであり、角度方向変動の周期は90度である。しかし、代替実施形態では、半径方向変動及び/又は角度方向変動の他の周期を使用することができることは認められるであろう。半径方向変動の周期は、100ミクロンよりも大きいことしか必要ではなく、角度方向変動の周期は、6度よりも大きいことしか必要ではない。
【0068】
この特定の実施形態では、度数は、第1の面度数マップ100にわたって半径方向と角度方向の両方に実質的に正弦波のように滑らかに変化する。第1の面度数マップにわたって面度数マップを滑らかに変化させることにより、コンタクトレンズの旋盤又はコンタクトレンズを製造するための装置(例えば、モールド又はモールドに対するインサート)を用いたより容易な製造を可能にする。しかし、代替実施形態では、度数は、他の波形に従って変化することができる。例えば、度数は、半径方向及び角度方向のうちの一方又は両方に矩形波又は丸い矩形波として変化することができる。従って、代替実施形態では、度数は、第1の面度数マップにわたって必ずしも滑らかに変化する必要はない。
【0069】
この例示的実施形態では、正弦波の正及び負の偏位は、正弦波が50%の負荷サイクルを有するということができるような等しい長さのものである。代替実施形態は、他の負荷サイクルを有する変動を備える。従って、そのような実施形態では、正の偏位は、負の偏位とは異なる長さである場合がある。
【0070】
螺旋のアーム101の幅は、角度方向変動の周期に対する半径方向変動の周期の比率によって少なくとも部分的に決定されることは認められるであろう。この例示的実施形態では、螺旋の各アーム101は、幅が約500ミクロンである。代替実施形態は、異なる幅を有するアーム101を組み込むことができることは認められるであろう。同様に、アーム101の幅は、その垂直な幅として定められることも認められるであろう。
【0071】
同様に、この例示的実施形態では、半径方向変動及び角度方向変動の周期の各々は、第1の面度数マップにわたって実質的に一定である。しかし、代替実施形態では、半径方向変動及び角度方向変動のうちの少なくとも一方の周期は、レンズの光軸からの半径方向距離及びレンズの光軸線の周りの角度方向位置のうちの一方又は両方に従って変化することができる。
【0072】
代替実施形態では、角度方向変動の周期は、180°よりも小さい。角度方向変動の周期が螺旋上のアーム101の個数を決定することは当業者によって認められるであろう。従って、そのような実施形態では、螺旋は少なくとも2つのアームを備える。従って、角度方向変動のある一定の値、特に360度の単位分数であるものは、角度不連続性を持たない面度数プロファイルを与える点で特に有利とすることができることも認められるであろう。
【0073】
この例示的実施形態では、螺旋の各アーム101は、270度の角度(又は0.75回転)を通して捩れる。本発明の代替実施形態では、螺旋の各アーム101は、4分の1回転(90度)と40回転の間を通して捩れることができる。
【0074】
この特定の実施形態では、第1の面度数マップ100は、中心領域103と外側領域105を備える。中心領域103は、コンタクトレンズの光軸を直接に取り囲む。外側領域105は、中心領域103を取り囲む。中心領域103の度数は、この領域にわたって周期的に変化せず、例えば、実質的に一定である場合がある。外側領域105は螺旋度数プロファイルを含み、従って、度数の角度方向変動及び半径方向変動を備える。
【0075】
本発明の代替実施形態では、中心領域は、螺旋度数プロファイルを含み、外側領域は、それ自体にわたって周期的に変化しない(例えば、外側領域は、実質的に一定のレンズ度数を有することができる)。本発明の他の代替実施形態では、螺旋の各アーム101は、第1の面度数マップの中心から第1の面度数マップの周囲まで延びる。従って、そのような実施形態は、明確に異なる中心領域と外側領域とを含まない。
【0076】
この例示的実施形態では、中心領域103は、度数マップの8mmの直径の25%に対応する2mmの直径を有する。この例示的実施形態では、度数マップは、コンタクトレンズの光学ゾーンに対応する。従って、着用者がそれを通して見る光学ゾーンは、図2に示す第1の面度数マップ100を与える。更に、コンタクトレンズは、追加の焦点調節修正又は視力修正を施さず、着用者の眼球上の定位置にコンタクトレンズを維持することを助ける役割のみをもたらす取り囲む周囲ゾーンを含むことができる。他の実施形態では、中心領域の直径は、度数マップ(又は光学ゾーン)の直径の25%よりも小さい場合がある。しかし、本発明の代替実施形態では、中心領域103の直径は、他の値を取ることができることは認められるであろう。同様に、度数マップの直径に対する中心領域103の直径の比率も他の値を取ることができることは認められるであろう。例えば、中心領域103の直径は、度数マップ(又は光学ゾーン)の直径の30%よりも小さい場合がある。
【0077】
実施形態では、中心領域103は、コンタクトレンズの着用者の最小瞳孔サイズよりも小さい場合がある。そのような実施形態は、着用者の瞳孔がその最小サイズまで収縮した時でさえも有効な近視抑制を維持する。中心領域103が最小瞳孔サイズよりも大きい場合に、着用者の瞳孔がその最小サイズまで収縮した時に、中心領域103のみが着用者の入射瞳にわたって位置決めされることになる。中心領域103の度数は、この領域にわたって螺旋として変化しないので、レンズは、中心領域103よりも小さいいずれの瞳孔サイズに対しても有効な近視抑制を与えることにはならない場合がある。本発明の実施形態による眼鏡では、着用者の眼球は、レンズとは独立に移動することができることは認められるであろう。従って、そのようなレンズは、中心領域が着用者の最小瞳孔サイズよりも小さい時に、この独立移動にも関わらず有効な近視抑制を提供することができる。
【0078】
この例示的実施形態は、移行領域107を更に備える。移行領域107は、中心領域103を取り囲む。外側領域105は、移行領域107を取り囲む。移行領域107の度数は、中心領域103と外側領域105の間に滑らかな移行を与えるように変化する。そのような移行領域107は必須ではなく、従って、代替実施形態は、移行領域107を含まないことは認められるであろう。この関連での「滑らか」は、対応するレンズ曲率が旋盤によって再現されるほど十分に滑らかであるとして定められることは認められるであろう。この例示的実施形態では、移行領域は、幅が約300ミクロンである。しかし、他の幅の移行領域を使用することができることは認められるであろう。
【0079】
コンタクトレンズの第2の面が第2の面度数マップを形成することは当業者によって認められるであろう。第2の面度数マップは、コンタクトレンズの光学ゾーンに同じく対応する第2の面の一部分だけによっても与えられる。第2の面度数マップ200(図3)も、レンズの光軸の周りの角度方向と光軸から半径方向外向きとの両方に実質的に周期的に変化する。従って、第2の面度数マップ200も螺旋を備える。第1の面の場合と同様に、この螺旋も、ピークアーム201aとトラフアーム201bとを含む複数のアーム201を備える。この例示的実施形態では、第2の面度数マップ200の半径方向変動及び角度方向変動の周期は、第1の面度数マップ100と同じである。しかし、代替実施形態は、第2の面度数マップ200上で第1の面度数マップ100の周期のうちの一方又は両方とは異なる周期を有する変動を組み込むことができることは当業者によって認められるであろう。第2の面度数マップ200の角度方向変動の周期は、6度よりも大きい場合がある。同様に、代替実施形態では、第2の面度数マップ200の半径方向変動の周期は、100ミクロンよりも大きい場合がある。この例示的実施形態では、第2の面度数マップ200も、中心領域203と、外側領域205と、移行領域207とを備える。
【0080】
第2の面度数マップ200によって形成される螺旋は、第1の面度数マップ100によって形成される螺旋とは反対の方向に捩れる。従って、この特定の実施形態では、第1の面度数マップ100によって与えられる螺旋と第2の面度数マップ200によって与えられる螺旋とは、対向する捩れ方向以外は同じである場合がある。コンタクトレンズの度数マップは、第1の面度数マップ100の度数マップと第2の面度数マップ200の度数マップとの重ね合わせによって決定される。図4は、第1の実施形態のコンタクトレンズの全体レンズ度数マップを示している。
【0081】
第1の面度数マップ100と第2の面度数マップ200とによって形成された2つの逆回転螺旋の重ね合わせは、交替するセグメントの環状リングの擬似ダーツ盤パターンを近似するレンズ度数マップをもたらす。レンズ度数は、第1のレンズ度数と第2のレンズ度数の間で半径方向と角度方向の両方でほぼ交替する。度数は第1のレンズ度数と第2のレンズ度数の間で角度方向に交替するので、コンタクトレンズは、着用者の瞳孔が収縮する時に第2のレンズ度数に対する第1のレンズ度数の比率の単調な変動も与える。従って、コンタクトレンズ300は、可変光条件下では遠見視力焦点調節を与えるレンズ度数に対する近視焦点ぼけを与えるレンズ度数のより一定の比率も与える。
【0082】
第1の面度数マップ100と第2の面度数マップ200の両方が中心領域と外側領域と移行領域とを含むので、コンタクトレンズ300の全体レンズ度数マップも、中心領域303と、外側領域305と、移行領域307とを備える。
【0083】
図5は、本発明の第2の実施形態によるコンタクトレンズを示している。第2の実施形態は、第2の面度数マップによって与えられる螺旋が45度の位相シフトを通して回転していることを除いては第1の実施形態と実質的に同じである。図5から分るように、2つの逆回転螺旋を備える第1及び第2の面度数マップの重ね合わせは、第2の実施形態と類似の擬似ダーツ盤度数マップをもたらす。従って、2つの逆回転螺旋の重ね合わせは、第1の螺旋と第2の螺旋との相対位相に関係なくダーツ盤レンズ度数マップをもたらす。ここでもまた、コンタクトレンズ400の全体レンズ度数マップは、中心領域403と、外側領域405と、移行領域407とを備える。
【0084】
図7は、本発明の第3の実施形態による眼鏡レンズ700を示している。眼鏡レンズは、本発明の第1の実施形態に関して説明したものと実質的に同じ第1及び第2の面度数マップを提供する第1及び第2の面を備える。しかし、眼鏡レンズは、第1の実施形態のコンタクトレンズと同じ意味での光学ゾーンを含まないことは当業者によって認められるであろう。従って、この場合に、第1及び第2の面度数マップは、眼鏡レンズの少なくとも一部分、例えば、眼鏡レンズの実質的に全てによって与えられる。本発明の代替実施形態は、本発明の第2の実施形態に関して説明したものと実質的に同じ面度数プロファイルを有する眼鏡レンズを備えることは認められるであろう。眼鏡レンズ700は、中心領域715と、外側領域717と、移行領域719とを備える。この例示的実施形態では、第1及び第2の面度数マップによって形成される螺旋は、眼鏡レンズ717の最も左の縁部まで延びない。代わりに、螺旋は破線701までしか延びない。螺旋は、破線701まで外向きに延びる時に移行領域719と外側領域717の間の境界から大きさが減衰する場合がある(例えば、線形に)。他の実施形態では、螺旋は、外側領域717にわたって実質的に一定の大きさを有することができる。そのような実施形態では、眼鏡レンズ700は、破線701に沿って延びる狭い混合領域を更に備えることができる。他の実施形態では、螺旋は、眼鏡レンズ700の縁部まで外向きに続くことは更に認められるであろう。この例示的実施形態では、中心領域715(及びそれを取り囲む移行領域719及び外側領域717)は、眼鏡レンズ700の幾何学中心には位置決めされず、眼鏡レンズ700の幾何学中心からオフセットされるということができる。そのようなオフセットは、中心領域を着用者が最も多くの場合にそれを通して注視する眼鏡レンズ700の部分に置くように機能することができることは当業者によって認められるであろう。
【0085】
本発明の第4の実施形態により、眼内レンズを提供する。眼内レンズは、本発明の第1の実施形態に関して説明したものと実質的に同じ第1及び第2の面度数マップを提供する第1及び第2の面を備える。本発明の代替実施形態は、本発明の第2の実施形態に関して説明したものと実質的に同じ面度数プロファイルを有する眼内レンズを備えることは認められるであろう。
【0086】
図6は、本発明の第5の実施形態によるレンズ、例えば、コンタクトレンズを製造する方法500の段階を示す流れ図を示している。
【0087】
要素501で表す方法500の第1の段階は、レンズ、レンズのためのモールド、又はレンズのためのモールドを製造するためのインサートのうちの1つの第1の面を成形するように旋盤を作動させる段階を備える。第1の面は、第1の面度数マップを形成するように成形される。第1の面度数マップは螺旋を備える。この面は、コンタクトレンズの光軸から半径方向外向きと光軸の周りの角度方向との両方に実質的に周期的に変化するように成形される場合がある。
【0088】
要素503で表す方法500の第2の段階は、レンズ、モールド、又はインサートの第2の面を成形するように旋盤を作動させる段階を備える。第2の面は、第2の面度数マップを形成するように成形される。第2の面度数マップは螺旋を備える。第2の面は、コンタクトレンズの光軸から半径方向外向きと光軸の周りの角度方向との両方に実質的に周期的に変化するように成形される場合がある。第2の面は、第1の面度数マップによって形成される螺旋が第2の面度数マップによって形成される螺旋とは反対の方向に捩れるように成形される。
【0089】
第1の面と第2の面がレンズのためのモールド又はレンズのためのモールドに対するインサート上に含まれる時に、方法500は、要素505で表す任意的な第3の段階を含むことができる。第3の段階505は、レンズのためのモールドのためのインサートのモールドを用いてレンズを製造する段階を備える。
【0090】
本発明を特定の実施形態を参照して説明及び図示したが、本発明は、本明細書に具体的に例示しない多くの異なる変形に役立つことは当業者によって認められるであろう。ここで単なる例としてある一定の可能な変形を以下に説明する。
【0091】
第1及び第2の両方の実施形態では、コンタクトレンズの面度数マップの各々は、実質的に一定の度数を有する中心領域と、螺旋度数プロファイルを組み込む外側領域と、中心領域と外側領域の間に滑らかな移行を与える移行領域とを備える。しかし、一部の代替実施形態は、移行領域を組み込まない。更に別の代替実施形態は、明確に異なる中心領域と外側領域とを組み込まない。これらを組み込む代わりに、そのような実施形態では、螺旋プロファイルは、面度数マップの各々の中心から面度数マップの半径周囲ゾーンまでの全てを延びる。
【0092】
第1及び第2の実施形態では、第1の面度数マップ上に形成される螺旋は反時計方向に捩れ、第2の面度数マップ上に形成される螺旋は時計方向に捩れる。しかし、代替実施形態では、第1の面度数マップ上に形成される螺旋は時計方向に捩れ、第2の面度数マップ上に形成される螺旋は反時計方向に捩れる。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、第1及び第2の面度数マップのうちの一方又は両方の上に形成される螺旋は、レンズの光軸からの予め決められた半径方向距離で回転方向を変化させる。例えば、螺旋は、レンズの光軸と予め決められた半径方向距離との間で時計方向に、及びこの予め決められた半径方向距離を超えると反時計方向に回転することができる。レンズは、螺旋の回転方向に1よりも多い変動を組み込むことができる。従って、螺旋は、例えば、時計回転から反時計回転に変化し、その後に、再び時計回転に戻ることができる。レンズは、いずれの回数の螺旋回転方向変化も組み込むことができることは当業者によって認められるであろう。これらの方向変化の各々は、レンズの光軸からのいずれかの選択半径方向距離で発生する場合があることも認められるであろう。従って、度数マップは、時計回転螺旋と反時計回転螺旋の間で交替する環状リングを備えることができる。そのような実施形態では、各逆回転螺旋は、レンズの光軸からの同じ半径方向距離で回転方向を変化させる場合がある。
【0094】
一部の実施形態では、異なる回転方向を有する眼用レンズの複数の領域の間に、度数マップが螺旋として変化しない領域が存在することができる。例えば、この領域は、実質的に一定の度数を有することができる。例えば、レンズの中心から第1の半径方向距離まで、レンズは、時計回転螺旋として変化し、それに実質的に一定の度数の領域が続き、その後に、反時計回転螺旋として変化することができる。従って、度数マップは、例えば、螺旋度数と実質的に一定の度数の間で交替する複数の環状リングを備えるように出現することができ、螺旋領域も、時計回転と反時計回転の間で交替する。
【0095】
同様に、一部の実施形態では、螺旋は、度数マップが螺旋として変化しない1又は2以上の領域、例えば、リングによって分断することができる。そのような領域は、実質的に一定の度数を有することができる。従って、例えば、度数マップは、螺旋度数と実質的に一定の度数の間で交替する環状リングを備えることができる。そのような実施形態では、螺旋は、各分断の間で回転方向を変化させることができ、又は直前の回転方向で続行することができる。従って、螺旋は、レンズにわたって一定の回転方向を維持することができるが、実質的に一定のレンズ度数の領域によって分断される場合がある。
【0096】
本発明の実施形態をコンタクトレンズ、コンタクトレンズのためのモールド、又はコンタクトレンズのためのモールドに対するインサートを、旋盤を用いて製造する方法に関して上述したが、他の製造方法も可能であることは認められるであろう。例えば、これらのモールド又はインサートは、付加製造技術を用いて、例えば、3D印刷によって製造することができる。
【0097】
以上の説明で公知の明白である又は予想可能な均等物を有する完全体又は要素に言及した場所では、そのような均等物は、それが個々に示されているかのように本明細書に組み込まれている。あらゆるそのような均等物を包含するものとして解釈される本発明の真の範囲を決定するための特許請求の範囲を参照されたい。同様に、好ましい、有利である、又は便利であるなどと説明する本発明の完全体又は特徴が任意的であり、独立請求項の範囲を限定しないことも読者によって認められるであろう。更に、そのような任意的な完全体又は特徴は、本発明の一部の実施形態では可能な利益である一方で他の実施形態では望ましくない場合もあり、従って、不在である場合があることも理解されるものとする。
【符号の説明】
【0098】
300 コンタクトレンズ
303 中心領域
305 外側領域
307 移行領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7