(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム用バイポーラプレート
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20250114BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20250114BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20250114BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20250114BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0228
H01M8/0247
H01M8/0267
(21)【出願番号】P 2023521773
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021078406
(87)【国際公開番号】W WO2022084132
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】102020213210.0
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】グランツ,レオノーレ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイテル,マニュエル
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-178776(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185193(WO,A1)
【文献】特開2020-047483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0183235(US,A1)
【文献】特開2010-073622(JP,A)
【文献】特開2008-103168(JP,A)
【文献】特開2011-258323(JP,A)
【文献】特開平06-036780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード側プレート(10)を有し、
前記カソード側プレートが、第1の側面(11)に、含酸素反応物質(O2)のための第1の通路構造部(K1)を有し、且つ
第2の側面(12)に、冷却剤(KM)のための第2の通路構造部(K2)を有し、
アノード側プレート(20)を有し、
前記アノード側プレートが、第1の側面(21)に、含燃料反応物質(H2)のための第1の通路構造部(A1)を有し、且つ
第2の側面(22)に、冷却剤(KM)のための第2の通路構造部(A2)を有し、
前記カソード側プレート(10)と前記アノード側プレート(20)とが、前記冷却剤(KM)のための前記第2の側面(12,22)でもって互いに当接しあっている、
燃料電池システム(1)用バイポーラプレート(100)において、
前記カソード側プレート(10)の前記第1の通路構造部(K1)が、前記カソード側プレート(10)の前記第2の通路構造部(K2)とは幾何学的に異なってい
て、
前記カソード側プレート(10)が、前記第1の通路構造部(K1)および前記第2の通路構造部(K2)の個々の通路(k1,k2,km)に対し横方向(R)に見て、前記冷却剤(KM)のための1つの通路(km)と前記含酸素反応物質(O2)のための2つの通路(k1,k2)とを交互に有していること、
を特徴とするバイポーラプレート(100)。
【請求項2】
前記カソード側プレート(10)の前記第1の通路構造部(K1)が、前記含酸素反応物質(O2)のための二重の、および/または、二分割の通路(k1,k2)を有していること、
および/または、前記カソード側プレート(10)の前記第2の通路構造部(K2)が、前記冷却剤(KM)のための一重の通路(km)を有していること、
を特徴とする、請求項
1に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項3】
前記第1の通路構造部(K1)の前記二重の通路(k1,k2)が、細条部(Sk)によって互いに仕切られていること、
および/または、前記第1の通路構造部(K1)の前記二重の通路(k1,k2)が、互いに独立に刻設された2つの細溝によって形成されていること、
を特徴とする、請求項
2に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項4】
前記アノード側プレート(20)の前記第1の通路構造部(A1)が、前記アノード側プレート(20)の前記第2の通路構造部(A2)とは幾何学的に異なっていることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項5】
前記アノード側プレート(20)が、前記第1の通路構造部(A1)および前記第2の通路構造部(A2)の個々の通路(a1,a2,am)に対し横方向(R)に見て、前記冷却剤(KM)のための1つの通路(am)と前記含燃料反応物質(H2)のための2つの通路(a1,a2)とを交互に有していることを特徴とする、請求項
4に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項6】
前記アノード側プレート(20)の前記第1の通路構造部(A1)と前記アノード側プレート(20)の前記第2の通路構造部(A2)とが幾何学的に同一に形成されていることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項7】
前記アノード側プレート(20)に設けた前記第1の通路構造部(A1)が、前記冷却剤(KM)のための前記通路(am)の下に複数のランディング部(La)を有し、
前記ランディング部が、前記燃料電池システム(1)の燃料電池のアノード(A)上に載置するために形成されていること、
および、前記カソード側プレート(10)に設けた前記第1の通路構造部(K1)が、前記冷却剤(KM)のための前記通路(km)の下に複数のランディング部(Lk)を有し、
前記ランディング部が、前記燃料電池システム(1)の燃料電池のカソード(K)上に載置するために形成されていること、
前記アノード側プレート(20)に設けた前記ランディング部(La)が、前記カソード側プレート(10)に設けた前記ランディング部(Lk)の幅(bk)よりも大きな幅(ba)を有していること、
を特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項8】
前記アノード側プレート(20)に設けた前記冷却剤(KM)のための通路(am)の脱型角度(αa)が、前記カソード側プレート(10)に設けた前記冷却剤(KM)のための通路(km)の脱型角度(αk)よりも小さいことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項9】
前記アノード側プレート(20)に設けた前記冷却剤(KM)のための通路(am)の高さ(ha)が、前記カソード側プレート(10)に設けた前記冷却剤(KM)のための通路(km)の高さ(hk)よりも低いことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバイポーラプレート(100)を備えた燃料電池システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する独立請求項に記載の燃料電池システム用バイポーラプレートに関するものである。さらに、本発明はシステムに関する独立請求項に記載の対応する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用バイポーラプレートは基本的に公知である。バイポーラプレートに設けられる反応物質および冷却剤のための分割通路は、たとえば平板をエンボス加工することによって成形される。分割通路を設計する場合、たいていの場合、いくつかの最適化問題を顧慮しなければならない。一方では、反応物質の流れ方向に見て圧力降下が大きすぎないようにするため、反応物質に対する液圧直径を最適化しなければならない。他方では、システムの出力密度を高くするため、バイポーラプレートの高さを抑えなければならない。また、最大出力時に反応物質の物質移行における損失が大きすぎないようにするため、膜・電極ユニットへの、特にシステムのカソード側への載置面の幅を抑えなければならない。さらに、通路の中央部での圧力分布が低くなりすぎないようにするため、通路自体の幅を抑えなければならない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、第1の観点によれば、装置に関する独立請求項の構成要件を備えた、特に装置に関する独立請求項の特徴部分から成る構成要件を備えた燃料電池システム用バイポーラプレートを提供する。本発明は、第2の観点によれば、システムに関する独立請求項に記載の対応する燃料電池システムを提供する。なお、本発明による個々の観点との関係で説明されている構成要件および詳細は、もちろん本発明による他の観点との関係でも適用されるものであり、またそれぞれその逆も然りであり、その結果本発明の個々の観点に対する開示事項に関しては、常に相互に関連付けられ、または、関連付けることができる。
【0004】
本発明は、第1の観点によれば、以下の要素を有する燃料電池システム用バイポーラプレートを企図し、すなわち第1の側面に含酸素反応物質または酸化剤のための第1の通路構造部を有し、且つ第2の側面に冷却剤のための第2の通路構造部を有しているカソード側プレートと、第1の側面に含燃料反応物質のための第1の通路構造部を有し、且つ第2の側面に冷却剤のための第2の通路構造部を有しているアノード側プレートとを有し、この場合前記カソード側プレートと前記アノード側プレートとが、前記冷却剤のための前記第2の側面でもって互いに当接しあっている燃料電池システム用バイポーラプレートを企図する。これに加えて、本発明によれば、前記カソード側プレートの前記第1の通路構造部が、(意味しているのはそのようなものである)前記カソード側プレートの前記第2の通路構造部とは幾何学的に異なっていることが企図されている。
【0005】
本発明の意味での燃料電池システムは複数の燃料電池を有していてよく、これらの燃料電池はそれぞれ1つのバイポーラプレートによって互いに仕切られており、スタックの形状で互いに重設されている。スタックは、端部側からモノポーラエンドプレートによって画成されていてよい。
【0006】
本発明の意味での通路構造部は、例を挙げると、たとえば衝撃押出成形、押出成形、深絞り、曲げのような変形または塑性成形によって、後でカソード側プレートまたはアノード側プレートとして用いられる平板に取り込むことができる。さらに、鋳型内での鋳造によって仕上げ成形プレートを製造することができる。
【0007】
従来の細溝構造部が平板に取り込まれると、たとえば刻設されると、このような細溝構造部は板の片側に見られる複数の凹部を持ち、これらの凹部は板の他の側から見ると対応する凸部である。なお、本発明は変形させた板の両側で幾何学的に同一に形成されている通路構造部に関わるものである。
【0008】
本発明は、カソード側プレートの第1の側面にある第1の通路構造部と、カソード側プレートの第2の側面にある第2の通路構造部とが幾何学的に異なる構成であることを意識的に考慮に入れている。幾何学的に異なる構成とは、本発明の意味では、カソード側プレートに設けた第1の通路構造部が第2の通路構造部の正確なネガティブイメージである必要はないことを意味している。すなわち、たとえば、カソード側プレートの1つの側面に見られる1つの凹部は、カソード側プレートの他の側面に見られる凸部、特にただ1つの凸部に同時に対応している必要はなく、またその逆も然りである。
【0009】
本発明の範囲内では、カソード側プレートにおいて、各冷却剤通路に境を接するように2つの反応物質通路が続いていてよい。換言すれば、カソード側プレートにおいて、冷却剤のための各通路の後に交互に含酸素反応物質のための2つの通路を提供してよい。したがって、本発明によれば、各冷却剤通路に対し2つの酸化剤通路を提供することができる。特に、本発明は、含酸素反応物質のための通路が二分割にまたは二重に形成されていることを考慮に入れてよい。本発明の範囲内では、含酸素反応物質のための複数の通路は、膜・電極ユニットのカソード側への載置の際の付加的なランディング部として用いることができる1つの細条部によって互いに仕切られていてよい。
【0010】
アノード側プレートにおいては、本発明の範囲内で、通路構造部は幾何学的に同一に成形されていても、幾何学的に異なるように成形されていてもよい。
【0011】
本発明により、カソード側プレートに設けた第2の通路構造部は、冷却剤通路の大きな液圧直径をもたらすことができる。同時に、本発明により、カソード側プレートの第1の側面に、膜・電極ユニットのカソード側に載置するための小さなランディング部を提供できることを保証することができる。さらに、本発明により、カソード側プレートに冷却剤通路を成形するため、比較的大きな脱型角度、いわゆるdraft angle(抜け勾配)を利用できることを可能にすることができる。
【0012】
さらに、本発明は、バイポーラプレートにおいて、カソード側プレートが、第1の通路構造部および第2の通路構造部の個々の通路に対し横方向に見て、冷却剤のための1つの通路と含酸素反応物質のための2つの通路とを交互に有していることを考慮に入れてよい。換言すれば、本発明は、バイポーラプレートにおいて、カソード側プレートの第1の通路構造部が、含酸素反応物質のための二重の、および/または、二分割の通路を有していること、および/または、カソード側プレートの第2の通路構造部が、冷却剤のための一重の通路を有していることを考慮に入れてよい。したがって、冷却剤のために比較的幅広の通路を提供できて、冷却剤の流れ方向における圧力損を低減させる。したがって、同時に、膜・電極ユニットのカソード側に載置するための比較的小さなランディング部を提供できて、ランディング部の下への生産水の集積を回避し、燃料電池をプレスしてスタックを形成させる際のカソード側プレートに沿った良好な圧力分布を可能にさせる。
【0013】
また、本発明は、バイポーラプレートにおいて、第1の通路構造部の二重の通路が細条部によって互いに仕切られていることを考慮に入れてよい。有利な態様では、燃料電池をプレスしてスタックを形成させる際のカソード側プレートに沿った良好な圧力分布を達成するため、細条部は複数の酸化剤通路の間に中央の支持柱を形成してよい。細条部の下の中央のランディング部は、たとえば面取りして形成されていてよい。
【0014】
さらに、本発明は、バイポーラプレートにおいて、第1の通路構造部の二重の通路が互いに独立に刻設された2つの細溝によって形成されていることを考慮に入れてよい。したがって、一貫して実質的に同じ材料厚を持ったカソード側プレートを提供できる。このようにして、たとえば塑性成形によって、カソード側プレートを簡単にコスト上好ましく製造することができる。
【0015】
加えて、本発明は、バイポーラプレートにおいて、アノード側プレートの第1の通路構造部が、アノード側プレートの第2の通路構造部とは幾何学的に異なっていることを考慮に入れてよい。その際、アノード側プレートはカソード側プレートと同様に成形されていてよいことが考えられる。その際、同様に、アノード側プレートが、第1の通路構造部および第2の通路構造部の個々の通路に対し横方向に見て、冷却剤のための1つの通路と含燃料反応物質のための2つの通路とを交互に有してよいことを考慮に入れてよい。有利な態様では、バイポーラプレートの両プレートは、細条部が二重の反応物質通路内で重なり合って位置するように互いに上下に設置してよい。このようにして、バイポーラプレートの両プレートの間の接触面に比較的幅広の載置面を形成することができる。これにより、両プレートが互いにスリップして互いに重なり合うのを阻止できる。また、これにより、両プレート間の電気接触損失を低減させることができる。さらに、反応物質通路の中央部に比較的幅広の載置面があるため、通路の高さを抑えることができる。
【0016】
しかし、基本的には、アノード側プレートの第1の通路構造部とアノード側プレートの第2の通路構造部とが幾何学的に同一に形成されていてよいことも考えられる。1つの燃料電池のアノード側には生産水の集積の問題が発生せず、含燃料反応物質が含酸素反応物質よりも高い濃度で提供されるので、アノード側には、プレートの片側に見られる複数の凹部を有し、これらの凹部がプレートの他の側から見ると対応する凸部であるような従来のコスト上好ましいエンボスプレートを使用することができる。
【0017】
さらに、本発明は、バイポーラプレートにおいて、アノード側プレートに設けた第1の通路構造部が、冷却剤のための通路の下に複数のランディング部を有し、これらランディング部が、燃料電池システムの燃料電池のアノード上に載置するために形成されていること、および、カソード側プレートに設けた第1の通路構造部が、冷却剤のための通路の下に複数のランディング部を有し、これらランディング部が、燃料電池システムの燃料電池のカソード上に載置するために形成されていることを考慮に入れてよく、この場合アノード側プレートに設けたランディング部は、カソード側プレートに設けたランディング部の幅よりも大きな幅を有している。このようにして、冷却剤通路を実質的にバイポーラプレートのアノード側へずらすことができる。これによっても、カソード側プレートに設けた含酸素反応物質のための比較的幅広の通路を可能にさせることができる。
【0018】
さらに、本発明は、バイポーラプレートにおいて、アノード側プレートに設けた冷却剤のための通路の脱型角度が、カソード側プレートに設けた冷却剤のための通路の脱型角度よりも小さいことを考慮に入れてよい。このようにして、カソード側プレートに設けたランディング部を小さくさせることができる。というのは、まさにそこで生産水がランディング部の下に集積することがあるからである。
【0019】
さらに、本発明は、バイポーラプレートにおいて、アノード側プレートに設けた冷却剤のための通路の高さが、カソード側プレートに設けた冷却剤のための通路の高さよりも低いことを考慮に入れてよい。これによっても、冷却剤通路を実質的にバイポーラプレートのアノード側へずらすことができる。
【0020】
本発明は、第2の観点によれば、上述したように形成されていてよい少なくとも1つのバイポーラプレートを備えた燃料電池システムを企図する。本発明による燃料電池システムにより、本発明によるバイポーラプレートとの関連で上で説明したのと同じ利点を達成できる。ここではこれらの利点を全面的に引用する。
【0021】
次に、本発明およびその更なる構成並びにその利点を、図面を用いてより詳細に説明する。ここでは概略的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の意味でのバイポーラプレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、燃料電池システム1のために実施されている、本発明の意味でのバイポーラプレート100を示している。少なくとも1つの対応するバイポーラプレート100を備えた燃料電池システム1は、同様に本発明の1つの観点を示している。本発明の意味での燃料電池システム1は、1つのスタックで提供されている複数の燃料電池を有していてよい。それぞれ2つの燃料電池の間に、本発明の意味での1つのバイポーラプレート100が配置される。スタックの端面には、スタックを画成するためにたいていの場合モノポーラプレートが設けられる。
【0024】
本発明の意味でのバイポーラプレート100は以下の要素を有している。すなわち、第1の側面11に含酸素反応物質O2または酸化剤のための第1の通路構造部K1を有し、第2の側面12に冷却剤KMのための第2の通路構造部K2を有しているカソード側プレート10と、第1の側面21に含燃料反応物質H2のための第1の通路構造部A1を有し、第2の側面22に冷却剤KMのための第2の通路構造部A2を有しているアノード側プレート20とを有し、この場合カソード側プレート10とアノード側プレート20とは冷却剤KMのための第2の側面12,22でもって互いに当接しあっている。
【0025】
本発明は、カソード側プレート10の第1の通路構造部K1が、(意味しているのはそのようなものである)カソード側プレート10の第2の通路構造部K2とは幾何学的に異なっていることを考慮に入れている。
【0026】
本発明は、幾何学的に異なる通路構造部K1,K2をカソード側プレート10の第1の側面11とカソード側プレート10の第2の側面12とに意識的に設けている。すなわち、本発明の意味では、カソード側プレート10の第1の側面11に設けた第1の通路構造部K1はカソード側プレート10の第2の側面12に設けた第2の通路構造部K2の正確なネガティブイメージである必要はないということである。換言すれば、カソード側プレート10の1つの側面に見られる凹部は、カソード側プレート10の他の側面に見られる凸部、特にただ1つの凸部を模写したものである必要は同時にない、または、その逆もないということである。
【0027】
本発明の範囲内では、カソード側プレート10に、各冷却剤通路kmに境を接して、含酸素反応物質O2のための2つの通路k1,k2が配置されていてよい。これによって、各冷却剤通路kmに対し2つの酸化剤通路k1,k2を提供することができる。
【0028】
図1が示しているように、含酸素反応物質O2のための通路k1,k2は二分割されていてよく、または、二重に形成されていてよい。その際、含酸素反応物質O2のための通路k1,k2が細条部Skによって互いに仕切られていてよいことが考えられ、細条部は、膜・電極ユニットのカソード側に載置する際に、または、簡単に表現すれば、燃料電池のカソードK上に載置する際に、付加的なランディング部Lkとして用いることができる。しかし、同時に、
図1で破線で示唆したように、カソード側プレート10内で密に接する2つの細溝の間の折り目によって細条部Skを提供できることも考えられる。
【0029】
アノード側プレート20では、通路構造部A1,A2は幾何学的に同じに成形されていても(簡潔にするために図示せず)、幾何学的に異なるように成形されていても(これは
図1に図示されている)よい。
【0030】
本発明によるバイポーラプレート100は、冷却剤KMの流れ方向での圧力損失を減らすために、冷却剤通路KMの液圧直径を大きくさせることができる。同時に、本発明によるバイポーラプレート100は、カソード側プレート10の第1の側面11に、対応する燃料電池のカソードK上に載置するための比較的小さなランディング部Lkを提供できることを可能にさせることで、ランディング部Lkの下に生産水が集積するのを回避して、複数の燃料電池を1つのスタックにプレスする際のカソード側プレート10に沿った良好な圧力分布を可能にさせる。
【0031】
すでに上述し、
図1に図示したように、アノード側プレート20の第1の通路構造部A1は、アノード側プレート20の第2の通路構造部A2とは、同様に幾何学的に異なっていてよい。その際、アノード側プレート20がカソード側プレート10に類似するように形成されていてよいことが考えられる。その際、アノード側プレート20は、第1の通路構造部A1および第2の通路構造部A2の個々の通路a1,a2,kmに対し横方向Rに見て、冷却剤KMのための1つの通路amと含燃料反応物質H2のための2つの通路a1,a2とを交互に有していてよい。
【0032】
その際、
図1に示したように、アノード側プレート20に設けた冷却剤KMのための通路amは、カソード側プレート10に設けた冷却剤KMのための通路kmに流動的に移行していてよく、或いは、1つの共通の冷却剤通路を形成していてよい。
【0033】
図1に示したように、バイポーラプレート100の両プレート10,20は、細条部Sa,Skが二重の反応物質通路k1,k2およびa1,a2内で上下に位置するように重なりあって設置されてよい。このようにして、バイポーラプレート100の両プレート10,20の間の接触面に比較的幅広の載置面が提供できて、プレート10,20が互いにスリップして互いに重なり合うのを阻止する。したがって、プレート10,20の間の電気接触損失も低減させることができる。しかも、二重の反応物質通路k1,k2およびa1,a2の中央に比較的幅広の載置面があるため、通路の高さを抑えることができる。
【0034】
しかしながら、同時に、
図1には簡潔にするという理由だけで示していないが、アノード側プレート20の第1の通路構造部A1とアノード側プレート20の第2の通路構造部A2とが幾何学的に同一に形成されていてよいことも考えられる。これが可能であるのは、燃料電池のアノード側Aには生産水の集積という問題が発生せず、含燃料反応物質H2が含酸素反応物質O2よりも高濃度で提供されるからであり、アノード側Aには、アノード側プレート20の1つの側面に見られる凹部であって、アノード側プレート20の他の側面に見られる対応する凸部を模写している前記凹部を有する従来のプレートを使用することができる。
【0035】
図1が示唆しているように、アノード側プレート20に設けた第1の通路構造部A1は、冷却剤KMのための通路amの下に、燃料電池システム1の対応する1つの燃料電池のアノードA上に載置するために形成されているランディング部Laを有していてよい。カソード側プレート10に設けた第1の通路構造部K1は、同様に、冷却剤KMのための通路kmの下に、燃料電池システム1の隣接する1つの燃料電池のカソードK上に載置するために形成されているランディング部Lkを有していてよい。その際、アノード側プレート20に設けたランディング部Laは、カソード側プレート10に設けたランディング部Lkの幅bkよりも大きな幅baを有していてよい。このようにして、複数の冷却剤通路の位置を実質的にバイポーラプレート100のアノード側Aへずらすことができる。これによって、同様に、カソード側プレート10に設けた含酸素反応物質O2のための比較的幅広の通路k1,k2を可能にすることができる。
【0036】
図1がさらに示唆しているように、アノード側プレート20に設けた冷却剤KMのための複数の通路amの脱型角度αaは、カソード側プレート10に設けた冷却剤KMのための複数の通路kmの脱型角度αkよりも小さくてよい。このようにして、カソード側プレート10に設けたランディング部Lkを小さくさせることができる。というのは、まさにそこにおいて生産水がランディング部Lkの下に集積できるからである。このようにして、特に高い流量密度の際に、含酸素反応物質O2の物質移行における損失を減少させることができる。
【0037】
さらに、
図1は、アノード側プレート20に設けた冷却剤KMのための通路amの高さhaがカソード側プレート10に設けた冷却剤KMのための通路kmの高さhkよりも低くてよいことを示している。これによっても、複数の冷却剤通路の位置を実質的にバイポーラプレート100のアノード側Aへずらすことができる。
【0038】
図1に示した数字は単に例であるにすぎない。
図1の上記の説明は、本発明を単にいくつかの例示の範囲内で述べたにすぎない。もちろん、技術的に意義があれば、本発明の範囲を逸脱せずに複数の実施形態の個々の構成要件を自由に互いに組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0039】
1 燃料電池システム
10 カソード側プレート
11 カソード側フレートの第1の側面
12 カソード側フレートの第2の側面
20 アノード側プレート
21 アノード側プレートの第1の側面
22 アノード側プレートの第2の側面
100 バイポーラプレート
A1 アノード側プレートの含燃料反応物質のための第1の通路構造部
A2 アノード側プレートの酸化剤のための第2の通路構造部
a1,a2 アノード側プレートの含燃料反応物質のための通路
am アノード側プレートの冷却剤のための通路
H2 含燃料反応物質
K1 カソード側プレートの含酸素反応物質のための第1の通路構造部
K2 カソード側プレートの酸化剤のための第2の通路構造部
KM 冷却剤
k1,k2 カソード側プレートの含酸素反応物質のための通路
km カソード側プレートの冷却剤のための通路
La,4 ランディング部
O2 含酸素反応物質
R 横方向
Sk 細条部