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特許7618822コーティングバー及びそれを用いた分離膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】コーティングバー及びそれを用いた分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20250114BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250114BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20250114BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20250114BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20250114BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20250114BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
B05C1/08
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/403 D
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/489
H01M50/463 B
B05C11/02
B05D7/00 B
B05D1/28
B05D7/24 301E
B05D7/24 303B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023543449
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022014858
(87)【国際公開番号】W WO2023059017
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0133531
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ユン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086605(JP,A)
【文献】特開平09-141177(JP,A)
【文献】特開2018-079436(JP,A)
【文献】特開平06-170312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/08
H01M 50/451
H01M 50/434
H01M 50/403
H01M 50/443
H01M 50/446
H01M 50/489
H01M 50/463
B05C 11/02
B05D 7/00
B05D 1/28
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面上に有機無機スラリーをコーティングするためのコーティングバーであって、
前記コーティングバーは、円筒状バーの表面にワイヤーが巻回された形態であり、
前記円筒状バーは、両端部の直径が中央部の直径よりも小さく、
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも大きいことを特徴とする、コーティングバー。
【請求項2】
前記コーティングバーの外径が一定であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項3】
前記円筒状バーが、中央部および前記中央部を除いた両端部からなり、
前記両端部のうち一方の端部の長さは、前記コーティングバーの全長の0.1~10%であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項4】
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも10%~100%大きいことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項5】
前記基材が、二次電池において分離膜の基材として使用される多孔性高分子基材であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項6】
前記円筒状バーの両端部に巻回された互いに隣接するワイヤーの間の空間に収容された有機無機スラリーの量が、円筒状バーの中央部に巻回された互いに隣接するワイヤーの間の空間に収容された有機無機スラリーの量よりも多いことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項7】
前記コーティングバーの外径が、前記円筒状バーの半径とワイヤーの線径の和の二倍となることを特徴とする、請求項2に記載のコーティングバー。
【請求項8】
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも20~80%大きいことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングバー。
【請求項9】
前記円筒状バーの両端部の直径が、中央部の直径よりも0.5~10%小さいことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項10】
前記円筒状バーの両端部の直径が、中央部の直径よりも1~5%小さいことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングバー。
【請求項11】
多孔性高分子基材を準備する段階と、
請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティングバーを用いて、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にバインダー高分子及び無機物粒子を含む有機無機スラリーをコーティングして多孔性コーティング層を形成する段階と、を含むことを特徴とする、分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記多孔性コーティング層のTD(Transverse Direction;横断方向)両端部の厚さが、TD中央部の厚さよりも厚いことを特徴とする、請求項11に記載の分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記多孔性コーティング層のTD両端部の厚さが、TD中央部の厚さよりも10~150%厚いことを特徴とする、請求項11に記載の分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記多孔性コーティング層が、TD中央部およびTD両端部からなり、
前記多孔性コーティング層のTD両端部のうち一方の端部の長さが、分離膜の幅方向における全長の0.1~10%であることを特徴とする、請求項11に記載の分離膜の製造方法。
【請求項15】
前記多孔性コーティング層のTD両端部の厚さが、TD中央部の厚さよりも30~80%厚いことを特徴とする、請求項11に記載の分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記多孔性コーティング層中の無機物粒子とバインダー高分子の重量比が、99:1~50:50であることを特徴とする、請求項11に記載の分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングバー及びそれを用いた分離膜の製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年10月7日出願の韓国特許出願第10-2021-0133531号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
反復的な充電と放電の可能なリチウム二次電池が化石エネルギーの代替手段として脚光を浴びている。リチウム二次電池は、携帯電話、ビデオカメラ、電動工具のような伝統的なハンドヘルドデバイスに主に使用されていた。しかし、最近には、電気で駆動される自動車(EV、HEV、PHEV)、大容量の電力貯蔵装置(ESS)、無停電電源装置(UPS)などにその適用分野が次第に増加しつつある。
【0004】
二次電池は、正極と負極、そしてこれらの間に介在された分離膜を含む電極組立体と、正極と負極にコーティングされた活物質と電気化学的に反応する電解質と、を含む。充電と放電が行われる間、リチウムイオンが作動イオンとして作用して正極と負極で電気化学的反応を誘発するリチウムイオン二次電池が代表的である。既存のリチウムイオン二次電池においては、電極組立体内の電極と分離膜の接着力を具現するために、組立工程の間にラミネーション(lamination)を適用する。ラミネーションとは、分離膜と電極を接合する工程である。ラミネーションは、上下に積層された分離膜と電極とに圧力を加え、加熱して接着させることで分離膜と電極の接着力を高める。
【0005】
通常、正極または負極の電極は、集電体上に活物質スラリーを塗布した後、乾燥して製造される。しかし、集電体上に活物質スラリーを塗布すると、TD(Transverse Direction;横断方向)両端部へ進むほど活物質スラリーが流れるスライディング現象が現われる。これによって、TD両端部へ進むほど薄い厚さを有する活物質層が形成される。
【0006】
因みに、図1は、通常の電極と分離膜の積層構造を示す。図1に示したように、分離膜1は、多孔性高分子基材11の少なくとも一面に一定の厚さを有する多孔性コーティング層12を含み、電極2は、集電体21の少なくとも一面に活物質層22を含む。前記活物質層22は、TD両端部へ進むほど漸進的に薄い厚さを有する。これによって、電極のTD両端部の厚さ不足によって、分離膜と電極をラミネートしても、TD両端部の接着力が特に低くなるという問題があった。ひどい場合には、分離膜と電極が接着せず、浮き上がる現象が発生する問題があった。
【0007】
一方、基材上に他の物質を塗布してコーティング層を形成する方法には、例えば、グラビア(gravure)コーティング、リバースロール(reverse roll)コーティング、ワイヤーバー(wire bar)コーティングなどが知られている。これらのうち、ワイヤーバーコーティングは、他のコーティング方法に比べて操作と管理が比較的容易であり、広い面積に薄くて均一に塗布可能な長所から、広く使用されている。具体的には、ワイヤーバーコーティング方法は、ワイヤーが巻回されているコーティングバーに塗布液を供給した後、基材とコーティングバーを接触させてコーティングバーを回転しながら基材上に塗布液を転写するか、または基材の一面に塗布液を塗布した後、ワイヤーが巻回されているコーティングバーを回転させる方法が用いられ得る。
【0008】
しかし、コーティングバーを用いて形成されたコーティング層は、均一な厚さに形成されるので、一回のコーティングで、厚さが相異なる領域を有するコーティング層を形成しようとする場合には、ワイヤーバーコーティング方法を使用できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一回のコーティングのみで厚さが相異なる領域を有するコーティング層が形成可能な所定のコーティングバーを提供することを目的とする。
【0010】
また、所定のコーティングバーを提供することを他の目的とする。
【0011】
その他の本発明の他の目的及び長所は、特許請求の範囲に記載された手段または方法、及びその組合せによって実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、下記のコーティングバー及びそれを用いた分離膜の製造方法によって上述した課題が解決可能であることを見出した。
【0013】
第1具現例は、
基材の一面上に有機無機スラリーをコーティングするためのコーティングバーであって、
前記コーティングバーは、円筒状バーの表面にワイヤーが巻回された形態であり、
前記円筒状バーは、両端部の直径(diameter)が中央部の直径よりも小さく、
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径(wire diameter)が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも大きいコーティングバーに関する。
【0014】
第2具現例は、第1具現例において、
前記コーティングバーの外径(outer diameter)が一定であることを特徴とするコーティングバーに関する。
【0015】
第3具現例は、第1具現例または第2具現例において、
前記両端部のうち一方の端部の長さは、前記コーティングバーの全長の0.1~10%であることを特徴とするコーティングバーに関する。
【0016】
第4具現例は、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも10%~100%大きいことを特徴とするコーティングバーに関する。
【0017】
第5具現例は、
多孔性高分子基材を準備する段階と、
第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例に記載のコーティングバーを用いて、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にバインダー高分子及び無機物粒子を含む有機無機スラリーをコーティングして多孔性コーティング層を形成する段階と、を含むことを特徴とする分離膜の製造方法に関する。
【0018】
第6具現例は、第5具現例において、
前記多孔性コーティング層のTD(Transverse Direction;横断方向)両端部の厚さは、TD中央部の厚さよりも厚いことを特徴とする分離膜の製造方法に関する。
【0019】
第7具現例は、第5具現例または第6具現例において、
前記多孔性コーティング層のTD両端部の厚さは、TD中央部の厚さよりも10~150%厚いことを特徴とする分離膜の製造方法に関する。
【0020】
第8具現例は、第5具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、
前記多孔性コーティング層の両端部のうち一方の端部の長さは、分離膜の幅方向における全長の0.1~10%であることを特徴とする分離膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるコーティングバーは、一回のコーティングのみで厚さが相異なる領域を有するコーティング層を形成することができる。
【0022】
また、本発明による分離膜の製造方法は、所定のコーティングバーを用いて多孔性コーティング層を形成する段階を含むことで、厚さが相異なる領域を有する多孔性コーティング層を含む分離膜を製造することができる。具体的には、本発明は、中央部に比べて両端部の厚さが厚い分離膜を製造することができるので、分離膜と電極の接着時、TD両端部で接着力不足が発生する現象を予防し、分離膜と電極の界面全体で均一な接着力を示すことができる。
【0023】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。なお、本明細書に添付の図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、従来の分離膜と電極が積層された構造を概略的に示した断面図である。
図2】本発明によるコーティングバーの構造を概略的に示した図である。
図3】本発明によるコーティングバーに含まれる円筒状バーの構造を概略的に示した図である。
図4】本発明によって製造された分離膜と電極が積層された構造の例を概略的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」または「備える」とするとき、これは特に明記しない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含むか、またはさらに備え得ることを意味する。
【0027】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「約」、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0028】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、もしくはこれら全部」を意味する。
【0029】
本発明は、コーティングバー及びそれを用いた分離膜の製造方法に関する。以下、具体的に説明する。
【0030】
<コーティングバー>
本発明の一面によると、本発明のコーティングバーは、
基材の一面上に有機無機スラリーをコーティングするためのコーティングバーであって、
前記コーティングバーは、円筒状バーの表面にワイヤーが巻回された形態であり、
前記円筒状バーは、両端部の直径(diameter)が中央部の直径よりも小さく、
前記両端部に巻回されるワイヤーの線径(wire diameter)が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも大きい。
【0031】
本発明のコーティングバーは、基材の一面上に有機無機スラリーをコーティングするためのコーティングバーであって、前記コーティングバーは、円筒状バーの表面にワイヤーが巻回された形態である。
【0032】
前記基材は、支持体として使用可能な材質であれば、フィルム、シート、不織布などを制限なく使用し得る。例えば、前記基材は、二次電池内の分離膜の基材として使用可能な多孔性高分子基材であり得る。前記多孔性高分子基材は、負極と正極の電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリアーであって、内部に複数の気孔が形成された基材である。前記多孔性高分子基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのポリオレフィン高分子から形成され得る。
【0033】
前記有機無機スラリーは、前記基材の少なくとも一面上にコーティングされ得るスラリーであって、有機化合物及び/または無機物などを含み得るが、スラリー中に含まれる成分は限定されない。
【0034】
通常のコーティングバーは、一定の直径(diameter)を有する円筒状バーに一定の線径(wire diameter)を有するワイヤーを巻回して形成される。このようなコーティングバーを用いてコーティングを行う場合には、互いに隣接するワイヤーの間の空間にコーティング液が収容されながら、基材の一面上に一定の厚さを有するコーティング層が形成され得る。
【0035】
しかし、通常のコーティングバーを用いるコーティングは、広い面積に均一にコーティング層が形成可能であるという長所があるが、一定の厚さを有するコーティング層のみが形成可能であり、厚さが相異なる領域を有するコーティング層は形成できないという問題がある。
【0036】
そこで、本発明の発明者は、コーティングバーの設計を変更することで、一回のコーティングでも厚さの相異なる領域を有するコーティング層が形成可能なコーティングバーを提供しようとする。
【0037】
本発明の一具現例によると、本発明のコーティングバーが備える円筒状バーは、両端部の直径(diameter)が中央部の直径よりも小さく、前記両端部に巻回されるワイヤーの線径(wire diameter)が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも大きい。
【0038】
もし、一定の直径を有する円筒状バーに、線径の相異なる少なくとも二種のワイヤーを巻いて使用する場合、大きい線径のワイヤー(即ち、厚いワイヤー)が巻回された部分は、小さい線径のワイヤー(即ち、薄いワイヤー)が巻回された部分に比べて厚い外径(outer diameter)を有するようになる。この際、厚い外径を有する部分のワイヤーは、基材にさらに大きい圧力を加えるようになるので、基材の変形が発生し得る。
【0039】
そこで、本発明においては、大きい線径のワイヤーを巻回する円筒状バーの直径を、小さい線径のワイヤーを巻回する円筒状バーの直径よりも小さく設定することで、コーティングバーによって基材が受ける圧力を均一にすることができる。
【0040】
また、本発明の円筒状バーの両端部と中央部に巻回されるワイヤーの線径の厚さを相違にすることで、基材上にコーティングされる有機無機スラリーの厚さを調整することができる。具体的には、本発明によると、円筒状バーの両端部に巻回される互いに隣接するワイヤーの間の空間に収容される有機無機スラリーの量が、円筒状バーの中央部に巻回される互いに隣接するワイヤーの間の空間に収容される有機無機スラリーの量よりも多くなる。これによって、基材の両端部には、中央部に比べて多い量の有機無機スラリーがコーティングされることが可能になるので、基材の両端部は、中央部によりもコーティング層が厚く形成されることが可能である。
【0041】
特に、本発明は、コーティングバーの両端部の設計を変更したことを特徴とする。本発明において、前記コーティングバーは、中央部及び端部を含み、中央部を除いた領域を両端部と称し得る。具体的には、前記両端部のうち一方の端部の長さは、コーティングバーの全長の約0.1~10%、または約0.2~5%であり得る。
【0042】
本発明の具体的な具現例によると、前記コーティングバーの外径(outer diameter)はほぼ一定であり得る。
【0043】
前記コーティングバーの外径とは、ワイヤーが巻回された位置で測定されたコーティングバーの外径を意味する。即ち、前記コーティングバーの外径は、前記円筒状バーの半径(radius)とワイヤーの線径(wire diameter)の和の二倍となる。また、「外径が一定である」とは、コーティングバーの両端部と中央部の外径が均一であること、またはコーティングバーの両端部と中央部が実質的に同じ外径を有することを意味するか、または測定時、誤差範囲内で実質的に同じ外径を有し得るという意味である。具体的には、本発明のコーティングバーの両端部及び中央部の円筒状バーの直径及びワイヤーの線径は各々相異なり得るが、コーティングバーの外径は、一定であり得る。即ち、円筒状バーの直径は、中心部でより厚くて、両端部でより薄く形成され得る。これによって、円筒状バーの中心部に巻回されるワイヤーの線径よりも円筒状バーの両端部に巻回されるワイヤーの線径が厚く形成され得る。
【0044】
図2は、本発明の一様態によるコーティングバーの構造を概略的に示す。また、図3は、本発明の一様態によるコーティングバーが備える円筒状バーを概略的に示す。図2は、図3による円筒状バー31にワイヤー32を巻回したコーティングバー30の形状であって、線径が大きいワイヤーを両端部B1、B2に巻回し、線径が小さいワイヤーを中央部Aに巻回することによって、外径が一定である。
【0045】
一方、本発明の具体的な具現例によると、前記両端部に巻回されるワイヤーの線径(wire diameter)が、中央部に巻回されるワイヤーの線径よりも約10%~100%、または20~80%大きくてもよい。円筒状バーの中央部と端部に巻回されるワイヤーの線径の差が前記範囲になることで、基材の両端部と中央部にコーティングされる有機無機スラリーの厚さを適切な範囲内に調節可能である。
【0046】
また、本発明の具体的な具現例によると、本発明の前記円筒状バーの両端部の直径は、中央部の直径よりも小さく、円筒状バーの両端部の直径は、両端部に巻回されるワイヤーの線径の厚さによって決定され得る。特に、コーティングバーの外径が一定になるように、ワイヤーの線径の厚さに従属されて円筒状バーの両端部及び中央部の直径を決定し得る。例えば、前記円筒状バーの両端部の直径を中央部の直径よりも約0.5~10%、または1~5%小さくし得る。円筒状バーの両端部及び中央部の直径の差が前記範囲にあることで、基材の一面上に有機無機スラリーをコーティングするに際し、コーティングバーによって基材に加えられる圧力を最小化して、基材の変形を抑制することができる。
【0047】
<分離膜の製造方法>
本発明の一面によると、本発明の分離膜の製造方法は、
多孔性高分子基材を準備する段階と、
本発明の一具現例によるコーティングバーを用いて、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にバインダー高分子及び無機物粒子を含む有機無機スラリーをコーティングして多孔性コーティング層を形成する段階と、を含む。
【0048】
特に、本発明においては、多孔性コーティング層を形成するに際し、上述したような本発明の一具現例によるコーティングバーを用いて多孔性高分子基材の少なくとも一面に有機無機スラリーをコーティングすることで、多孔性コーティング層の両端部の厚さを調節し得る。具体的には、本発明の一具現例によるコーティングバーに有機無機スラリーを供給した後、コーティングバーが多孔性高分子基材の一面に接触して回転しながら有機無機スラリーが多孔性高分子基材に転写され、これによって多孔性高分子基材の一面上に多孔性コーティング層が形成され得る。または、多孔性高分子基材の少なくとも一面に有機無機スラリーを塗布した後、本発明の一具現例によるコーティングバーが前記有機無機スラリー上で回転すると共に高分子基材がコーティング方向に沿って移動しながらコーティングされることで、多孔性高分子基材の一面上に多孔性コーティング層が形成され得る。
【0049】
通常の製造方法によって製造される分離膜においては、両端の接着力が足りなくて電極との接着力が劣る問題があったが、本発明においては、多孔性コーティング層の両端部の厚さのみを選択的に厚く形成することで、両端部の接着力不足現象を改善し、分離膜と電極のラミネーション時に十分な接着力が確保可能な分離膜の製造方法を提供することができる。
【0050】
もし、分離膜と電極の接着力を確保するためにバインダー高分子の含量を高めるか、または別の接着層を形成する場合、バッテリーセルの抵抗が大きくなるか、または分離膜の厚さが厚くなり、バッテリーセルの容量面で損失が生じ得る。しかし、本発明の分離膜においては、多孔性コーティング層のTD両端部のみをTD中央部よりも厚く形成することで、二次電池の容量面で損失が発生しない。
【0051】
本発明の具体的な具現例によると、図4に示したように、前記多孔性コーティング層は、多孔性コーティング層のTD両端部の厚さがTD中央部の厚さよりも厚い形態を有し得る。
【0052】
例えば、前記多孔性コーティング層のTD両端部の厚さは、TD中央部の厚さよりも約10~150%、または約30~80%厚くし得る。または、前記多孔性コーティング層のTD両端部は、前記TD中心部から離れる方向へその厚さが漸進的に増加する領域を含み得る。本発明の多孔性コーティング層のTD両端部の厚さをTD中央部の厚さよりも厚く設定することで、TD両端部での接着力不足現象を改善し、分離膜と電極のラミネーション時に十分な接着力を確保することができる。
【0053】
本発明の具体的な具現例によると、前記多孔性コーティング層の両端部のうち一方の端部の長さは、基材の幅方向における全長の約0.1~10%、または約0.2~5%であり得る。前記範囲の長さを有するように端部を設定することで電極との接着力が低下する現象を予防することによって、電極と分離膜が接触する界面全体で均一な接着力を有し得る。
【0054】
本発明において、前記多孔性高分子基材とは、前述したように、複数の気孔が形成された基材を意味する。前記気孔は、相互に連結された構造となっており、基材の一面から他面へ気体または液体が通過可能である。このような多孔性高分子基材としては、シャットダウン(shut down)機能を付与する観点で、熱可塑性樹脂を含む多孔性高分子フィルムが使用され得る。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、熱可塑性樹脂が溶融して多孔質基材の穴を閉鎖することでイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能を意味する。前記熱可塑性樹脂は、シャットダウン機能の面で融点が約200℃未満であることが望ましい。
【0055】
前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、望ましくは約1~100μm、より望ましくは約5~50μm、または約5~30μmであり、多孔性高分子基材に存在する気孔も特に制限されないが、約10~95%、または約35~65%であることが望ましい。
【0056】
本発明において、多孔性コーティング層は、前記無機物粒子が充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、それによって無機物粒子の間にインタースティシャルボリューム(interstitial volumes)が形成され、前記無機物粒子間のインタースティシャルボリュームは、空き空間になって気孔を形成する構造を備え得る。
【0057】
また、本発明において、具体的には、前記多孔性コーティング層中の無機物粒子とバインダー高分子の重量比が、99:1~50:50であり得る。
【0058】
本発明において、前記バインダー高分子は、無機物粒子間の結着力及び多孔性コーティング層と電極の結着力を提供可能なものであれば、特に限定されない。例えば、バインダー高分子は、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoro propylene,PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloro ethylene)、ポリビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-chlorotrifluoro ethylene)、ポリ(メチル)メタアクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリn-プロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリn-ブチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリsec-ブチル(メタ)アクリレート、ポリペンチル(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルブチルポリ(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリn-オクチル(メタ)アクリレート、ポリイソオクチル(メタ)アクリレート、ポリイソノニル(メタ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレート、ポリテトラデシル(メタ)アクリレート、ポリN-ビニルピロリジノン、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレン-コ-ビニルアセテート(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)及びポリイミド(polyimide)からなる群より選択された一種または二種以上の混合物であり得る。
【0059】
また、バインダー高分子は、粒子型バインダー高分子樹脂であり得る。例えば、アクリル系共重合体、スチレンブタジエンゴム、またはこれらの二種以上の混合物であり得る。前記アクリル系共重合体は、エチルヘキシルアクリレート(ethylhexyl acrylate)とメチルメタクリレート(methyl methacrylate)の共重合体、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ブチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合体またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。
【0060】
本発明において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定すれば、特に制限されない。例えば、無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準にして0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されず、非制限的な例には、ZrO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、AlOOH、Al(OH)、SiCまたはこれらの混合物などが挙げられる。一方、これに加え、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO,0<x<2,0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO,0<x<2,0<y<1,0<z<3)、(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4,0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO,0<x<2,0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe,0<x<4,0<y<1,0<z<1,0<w<5)、リチウムナイトライド(Li,0<x<4,0<y<2)、SiS系ガラス(LiSi,0<x<3,0<y<2,0<z<4)、P系ガラス(Li,0<x<3,0<y<3,0<z<7)またはこれらの二つ以上の無機物粒子をさらに含み得る。
【0061】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0062】
実施例
下記の方法によって各実施例及び比較例を製造した。以下、図面、表1及び表2を参照して実施例及び比較例を説明する。
【0063】
実施例1
ポリエチレン(Polyethylene)多孔性基材(厚さ:9μm、気孔度:45%)と、バインダー高分子としてポリビニリデンフルオライドと、無機物粒子としてアルミナ(Al)(粒子サイズ:500nm)と、溶媒としてアセトンと、を投入したスラリーを準備した。
【0064】
前記スラリーコーティングバーを用いて前記多孔性基材の一面に塗布して乾燥することで分離膜を製造した。
【0065】
この際に使用したコーティングバーは、図2に示したような構造を有する。コーティングバーの全長が250mmであり、中央部Aは200mm、両端部B1、B2は各々25mmである。使用したコーティングバーの外径は一定になっており、中央部Aの円筒状バーの直径が12.7mm、中央部Aの円筒状バーに巻回されるワイヤーの線径が0.4mm、両端部B1、B2の円筒状バーの直径が12.5mm、両端部B1、B2の円筒状バーに巻回されるワイヤーの線径が0.5mmであった。
【0066】
実施例2及び比較例1、2
実施例1と同様の方法で分離膜を製造し、下記の表1に示したように、コーティングバーの中央部Aと両端部B1、B2の円筒状バーの直径及びそれに巻回されるワイヤーの線径を変更してスラリーをコーティングした。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
具体的には、次のような方法で電極接着力(Lami strength,gf/25mm)を評価した。活物質[天然黒鉛及び人造黒鉛(重量比5:5)]と、導電材[super P]と、バインダー[ポリビニリデンフルオライド(PVdF)]とを、92:2:6の重量比で混合して水に分散させた後、銅ホイルに250mmの幅でコーティングして負極を製造した。
【0070】
実施例1、2及び比較例1、2のように、250mm幅の分離膜を製造して準備した。
【0071】
準備した分離膜と負極を互いに重ねた後、100μmのPETフィルムの間に挟んだ後、ロールラミネーション機器を用いて接着した。この際、ロールラミネーション機器の条件は、60℃の2.4kgf/mmの圧力で5m/分の速度で接着した。
【0072】
接着された分離膜と負極の中央部A及び両端部B1、B2を、幅25mm、長さ70mmの大きさに裁断して、分離膜と負極の末端部をUTM装備(Instron社)に据え付けた後、測定速度300mm/分で180゜に力を加えて負極と負極に接着された分離膜が分離するのに必要な力を測定した。
【符号の説明】
【0073】
1 分離膜
11 多孔性高分子基材
12 多孔性コーティング層
2 電極
21 集電体
22 活物質層
30 コーティングバー
31 円筒状バー
32 ワイヤー
A 中央部
B1、B2 端部
図1
図2
図3
図4