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特許7618863エレベータ制御方法およびエレベータ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】エレベータ制御方法およびエレベータ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20250114BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
B66B1/18 M
B66B1/18 K
B66B3/00 L
B66B3/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024021137
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓也
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051780(JP,A)
【文献】特開2012-056653(JP,A)
【文献】特開2016-160095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータへの乗車前に利用者が行き先階を入力可能な行き先階登録装置から前記行き先階の入力を受け付けて行き先階呼びを登録し、
前記エレベータが備える複数の乗りかごの中から前記行き先階呼びに応答させる乗りかごを割り当て、
前記複数の乗りかごのうち、前記行き先階呼びがあった階に到着した乗りかごであって、割り当て対象の乗りかごと、割り当て非対象の乗りかごとにそれぞれ設けられた利用者検出装置の検出結果に基づいて、前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したことが判明した場合には、前記割り当て非対象の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、前記割り当て対象の乗りかごの行き先階から前記行き先階呼びで指定された行き先階を削除し、
前記利用者検出装置は、
前記割り当て対象の乗りかごの荷重と、前記割り当て非対象の乗りかごの荷重とをそれぞれ検出可能な荷重センサであり、
前記利用者が誤乗車したか否かを判定する場合、
前記割り当て対象の乗りかごが備える第1の荷重センサにより前記割り当て対象の乗りかごの荷重増加が検出されず、
前記割り当て非対象の乗りかごが備える第2の荷重センサにより前記割り当て非対象の乗りかごの荷重増加が検出された場合には、
前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したと判定する、
エレベータ制御方法。
【請求項2】
前記複数の乗りかごは、2階床間を運行するよう設定された乗りかごを含み、
前記2階床間運行の乗りかごを前記割り当ての対象外として、前記2階床のうちのいずれかで前記行き先階呼びがあった場合には、前記行き先階呼びがあった階に到着した前記2階床間運行の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加する、
請求項1に記載のエレベータ制御方法。
【請求項3】
記行き先階呼びがあった階に、前記2階床間運行の乗りかごが2つ以上到着した場合には、前記2つ以上の乗りかごのうち前記利用者検出装置により前記利用者の乗車が検出された乗りかごの行き先階に、前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加する、
請求項に記載のエレベータ制御方法。
【請求項4】
前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したことが判明した場合には、前記割り当て非対象の乗りかごの他の行き先階が前記行き先階呼びで指定された行き先階と同一方向であるか否かを判定した後に、前記割り当て非対象の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、前記割り当て対象の乗りかごの行き先階から前記行き先階呼びで指定された行き先階を削除するか否かを決定する、
請求項1に記載のエレベータ制御方法。
【請求項5】
前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したことが判明した場合であっても、前記割り当て非対象の乗りかごの他の行き先階が前記行き先階呼びで指定された行き先階と反対方向であった場合には、前記割り当て非対象の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加することも、前記割り当て対象の乗りかごの行き先階から前記行き先階呼びで指定された行き先階を削除することもなく、前記割り当て非対象の乗りかご内に設けられた報知装置により、前記利用者に誤乗車であることを報知する、
請求項に記載のエレベータ制御方法。
【請求項6】
エレベータ制御装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
エレベータへの乗車前に利用者が行き先階を入力可能な行き先階登録装置から前記行き先階の入力を受け付けて行き先階呼びを登録する処理と、
前記エレベータが備える複数の乗りかごの中から前記行き先階呼びに応答させる乗りかごを割り当てる処理と、
前記複数の乗りかごのうち、前記行き先階呼びがあった階に到着した乗りかごであって、割り当て対象の乗りかごと、割り当て非対象の乗りかごとにそれぞれ設けられた利用者検出装置の検出結果に基づいて、前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したことが判明した場合には、前記割り当て非対象の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、前記割り当て対象の乗りかごの行き先階から前記行き先階呼びで指定された行き先階を削除する処理と、を前記コンピュータに実行させ、
前記利用者検出装置は、
前記割り当て対象の乗りかごの荷重と、前記割り当て非対象の乗りかごの荷重とをそれぞれ検出可能な荷重センサであり、
前記利用者が誤乗車したか否かを判定する場合、
前記割り当て対象の乗りかごが備える第1の荷重センサにより前記割り当て対象の乗りかごの荷重増加が検出されず、
前記割り当て非対象の乗りかごが備える第2の荷重センサにより前記割り当て非対象の乗りかごの荷重増加が検出された場合には、
前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したと判定する処理を前記コンピュータに実行させる、
エレベータ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御方法およびエレベータ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータの乗車前に、乗り場等に設置された行き先階登録装置から行き先階呼びを登録することが可能な技術が開発されている。行き先階呼びを行った後、利用者は、行き先階登録装置から指定された乗りかごに乗車することで、所望の行き先階へと移動することができる。このような技術において、利用者が指定とは異なる乗りかごに誤乗車してしまった場合には、所望の行き先階へと到達できないという不都合が生じうる。
【0003】
特許文献1は、個人認証装置により自動登録された行き先階を、変更またはキャンセルする技術に関する。また、特許文献2は、利用者が指定とは異なる乗りかごに誤乗車してしまった場合に、乗りかご内の利用者にアナウンスを行う技術に関する。また、特許文献3は、乗りかごが戸開している間のみ乗りかご内での行き先階呼び登録の禁止を解除して、行き先階登録装置に登録された行き先階が利用者の目的階と異なっていた場合でも、改めて目的階への乗りかご呼びを登録可能とする技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-524366号公報
【文献】特開2020-019602号公報
【文献】特開2003-292256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、個人認証手続き後、改めて行き先階を変更またはキャンセルする必要があり、利用者に煩雑な手続きを強いることとなる。また、特許文献2の技術では、利用者は、一旦乗車した乗りかごを降りて、指定された乗りかごに乗車し直す必要がある。また、特許文献3の技術においても、特許文献1の技術と同様、利用者は、行き先階を再登録する必要がある。
【0006】
このように、特許文献1~3の技術では、正しい乗りかごへの乗り換えを行ったり、行き先階の再登録を行ったりすることで、利用者に煩雑な手続きが生じ、利用者が所望の行き先階へと到達するまでに時間を要してしまうという課題が生じる。また、行き先階の再登録を可能とすることで、1人の利用者に対して複数回の応答が発生してしまい、エレベータの運行効率が低下してしまう。
【0007】
本実施形態が解決しようとする課題は、指定とは異なる乗りかごに誤乗車してしまった場合でも、エレベータの運行効率を維持しつつ利用者の利便性を高めることができるエレベータ制御方法およびエレベータ制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータ制御方法は、エレベータへの乗車前に利用者が行き先階を入力可能な行き先階登録装置から前記行き先階の入力を受け付けて行き先階呼びを登録し、前記エレベータが備える複数の乗りかごの中から前記行き先階呼びに応答させる乗りかごを割り当て、前記複数の乗りかごのうち、前記行き先階呼びがあった階に到着した乗りかごであって、割り当て対象の乗りかごと、割り当て非対象の乗りかごとにそれぞれ設けられた利用者検出装置の検出結果に基づいて、前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したことが判明した場合には、前記割り当て非対象の乗りかごの行き先階に前記行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、前記割り当て対象の乗りかごの行き先階から前記行き先階呼びで指定された行き先階を削除し、前記利用者検出装置は、前記割り当て対象の乗りかごの荷重と、前記割り当て非対象の乗りかごの荷重とをそれぞれ検出可能な荷重センサであり、前記利用者が誤乗車したか否かを判定する場合、前記割り当て対象の乗りかごが備える第1の荷重センサにより前記割り当て対象の乗りかごの荷重増加が検出されず、前記割り当て非対象の乗りかごが備える第2の荷重センサにより前記割り当て非対象の乗りかごの荷重増加が検出された場合には、前記割り当て非対象の乗りかごに前記利用者が誤乗車したと判定する
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかるエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態にかかるエレベータ制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかるエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかるエレベータシステムの動作の一例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態にかかるエレベータシステムの動作の一例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態にかかるエレベータ制御装置による乗りかごの割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
図7図7は、実施形態の変形例1にかかるエレベータ制御装置による乗りかごの割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
図8図8は、実施形態の変形例2にかかるエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステムの動作の一例を示す説明図である。
図10図10は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステムの動作の一例を示す説明図である。
図11図11は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステムの動作の他の例を示す説明図である。
図12図12は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステムの動作の他の例を示す説明図である。
図13図13は、実施形態の変形例2にかかるエレベータ制御装置による乗りかごの割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(エレベータシステムの構成例)
図1は、実施形態にかかるエレベータシステム1の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施形態のエレベータシステム1は、エレベータ制御装置10、複数の乗りかご50、複数の乗り場60、及び昇降路70を備える。
【0011】
昇降路70は、エレベータシステム1の設置場所である建物等の内部に、複数の階層に亘って設けられている。複数の乗りかご50は、昇降路70内を昇降することで、利用者が乗車して異なる階層間を移動することが可能に構成される。建物等の各階には、利用者が乗りかご50への乗降を行う乗り場60が設けられている。
【0012】
昇降路70内には、個々の乗りかご50ごとに、ロープ71、カウンタウェイト72、及び巻き上げ機73が設けられている。
【0013】
個々の乗りかご50は、ロープ71を介してカウンタウェイト72とそれぞれ連結されている。また、ロープ71は巻き上げ機73に架け渡されており、巻き上げ機73の駆動によりロープ71が送り動作されることで、乗りかご50がカウンタウェイト72とバランスを取りながら昇降路70内を昇降する。
【0014】
個々の乗りかご50にはそれぞれ、かごドア52、カメラ53、及び荷重センサ54が設けられている。
【0015】
かごドア52は、乗りかご50の乗降口に設けられている。かごドア52は、乗りかご50が昇降路70内を移動中には閉状態となっており、乗りかご50が所定階の乗り場60に到着すると開状態となって、乗りかご50に対する利用者の乗降が可能となる。
【0016】
カメラ53は、例えば乗りかご50内を監視する監視カメラ等である。カメラ53は、乗りかご50内の天井付近等、乗りかご50内の略全体を撮像可能な位置に設けられている。
【0017】
利用者検出装置としての荷重センサ54は、例えば乗りかご50外側の下面等に設けられ、乗りかご50全体の重量を検出する。乗りかご50自体の重量は既知であるので、乗りかご50全体の重量を検出することで、乗りかご50内の利用客等の合計の重量を検出することができる。これにより、乗りかご50内の利用者数を推定したり、乗りかご50に対する利用者の乗降数を推定したりすることが可能である。
【0018】
階層ごとの乗り場60には、それぞれ行き先階登録装置61、乗り場ドア62、及びカメラ63が設けられている。
【0019】
行き先階登録装置61は、行き先階を示すボタン及びモニタ等を有して構成されている。乗り場60の利用者が、所定の行き先階ボタンを押下することで、行き先階登録装置61によって行き先階呼びが受け付けられ、後述のエレベータ制御装置10に送信され登録される。また、行き先階登録装置61は、その行き先階呼びに応答するよう割り当てられた乗りかご50をモニタに表示するなどして利用者に知らせる。
【0020】
これにより、利用者は、所望の行き先階へと向かう乗りかご50を乗り場60に呼ぶことができる。また、利用者は、指定された乗りかご50に乗車することで、所望の行き先階へと移動することができる。
【0021】
このように、実施形態のエレベータシステム1には、エレベータに乗車する前に、利用者が行き先階呼び登録を行うことができる行先階登録システム(DCS : Destination Control System)が採用されている。これにより、エレベータシステム1側で、予め利用者の人数および行き先階等を把握することができ、効率的なエレベータの運行が可能となる。一例として、例えば異なる行き先階ごとに、複数の利用者に異なる乗りかご50を割り当てるなどして、乗りかご50ごとの停車階を削減し、エレベータ利用時の利用者の待ち時間を短縮することができる。
【0022】
また、DCSが採用された実施形態のエレベータシステム1等においては、例えば行き先階呼びを受け付ける行き先階呼び装置を乗りかご50内から排することができ、よりシンプルなシステム構成とすることが可能となる。
【0023】
乗り場60に設けられた乗り場ドア62は、乗り場60内の乗りかご50への乗降口に設けられている。乗り場ドア62は、乗りかご50がその乗り場60に到着するまでは閉状態となっており、乗りかご50が到着すると、乗りかご50のかごドア52と連動して開状態となる。これにより、乗りかご50に対して利用者が乗降することができる。
【0024】
乗り場60に設けられたカメラ63は、例えば乗り場60を監視する監視カメラ等である。カメラ63は、乗り場60の天井付近等、乗り場60の略全体を撮像可能な位置に設けられている。
【0025】
エレベータ制御装置10は、乗りかご50等を含むエレベータの運行制御を行う。一例として、エレベータ制御装置10は、所定の乗り場60の行き先階登録装置61が行き先階呼びを受け付けると、その先階呼びを登録するとともに、複数の乗りかご50の中から、その先階呼びに応答させる乗りかご50を割り当てて、その乗りかご50を行き先階呼びに応答させる。また、割り当て対象の乗りかご50の号機等は行き先階登録装置61に通知され、それを行き先階登録装置61が利用者に表示する。
【0026】
所定の行き先階呼びに応答するよう割り当てられた乗りかご50は、エレベータ制御装置10の制御に従って、行き先階呼びがあった乗り場60へと移動し、利用者を乗せて行き先階呼びで指定された行き先階へと移動する。
【0027】
図2は、実施形態にかかるエレベータ制御装置10の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、エレベータ制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、及びROM(Read Only Memory)13を備えるコンピュータとして構成されている。その他、エレベータ制御装置10は、記憶装置14及び通信I/F(インターフェース)15等を備えている。
【0029】
CPU11は、エレベータ制御装置10の全体を制御するハードウェアプロセッサである。RAM12は、例えば揮発性の半導体メモリ等であり、一次記憶装置として機能してCPU11の作業領域となる。ROM13は、エレベータ制御装置10における保存領域として機能し、例えばCPU11で実行され、エレベータ制御装置10の機能を実現させるエレベータ制御プログラム13p等が格納されている。ROM13に記憶された情報は、エレベータ制御装置10の電源が切られても保持される。
【0030】
なお、エレベータ制御装置10で実行されるエレベータ制御プログラム13pは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、FD、CD-R、DVD等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、エレベータ制御プログラム13pを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0031】
記憶装置14は、HDD、SSD等であり、CPU11の補助記憶装置として機能する。通信I/F15は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイス等である。通信I/F15により、エレベータ制御装置10は、例えば乗りかご50に設けられたかごドア52、カメラ53、及び荷重センサ54、昇降路70内の巻き上げ機73、並びに乗り場60に設けられた行き先階登録装置61、乗り場ドア62、及びカメラ63等と情報の送受信を行うことができる。
【0032】
図3は、実施形態にかかるエレベータ制御装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、エレベータ制御装置10は、機能部として、登録部101、割り当て部102、運転制御部103、誤乗車検出部104、及び記憶部105を備える。これらの機能部は、例えばエレベータ制御装置10が備えるCPU11が、ROM13等に格納されたエレベータ制御プログラム13pをRAM12に展開して実行することで実現される。
【0034】
ただし、エレベータ制御装置10の上記機能部の一部または全部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field―Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0035】
登録部101は、行き先階登録装置61が受け付けた、利用者からの行き先階呼びを受信すると、それを登録する。行き先階呼び登録の情報は、例えば記憶部105に格納される。
【0036】
割り当て部102は、行き先階呼び登録がなされると、複数の乗りかご50の運行状況等に基づいて、その行き先階呼びに応答させる乗りかご50の割り当てを行う。複数の乗りかご50の運行状況は、個々の乗りかご50について予め設定され、記憶部105に記憶されている運行状況、及び運転制御部103を介して、エレベータの各部から得たリアルタイムの運行状況等を含み、これらの運行状況に応じて、複数の乗りかご50の中から適切な乗りかご50が割り当てられる。
【0037】
また、割り当て部102は、以下に述べる誤乗車検出部104が、利用者が指定とは異なる乗りかご50に誤乗車したことを検出した場合、乗りかご50の割り当てを適宜変更する。一例として、割り当て部102は、当初割り当てた乗りかご50の行き先階から、誤乗車した利用者の行き先階を削除し、利用者が誤乗車した乗りかご50の行き先階に、その利用者の行き先階を追加する。
【0038】
運転制御部103は、巻き上げ機73、かごドア52、及び乗り場ドア62等のエレベータの各部を制御する。このとき、運転制御部103は、これらのエレベータの各部から得られるステータス情報、及び誤乗車検出部104を介して、荷重センサ54から得た個々の乗りかご50の乗車状況等に基づいて各種制御を行う。これにより、エレベータを適切に運行することができる。
【0039】
誤乗車検出部104は、行き先階登録装置61から行き先階呼びを行った利用者が、指定とは異なる乗りかご50に誤乗車した場合、荷重センサ54から得られる個々の乗りかご50の荷重に基づいて、乗りかご50への誤乗車を検出する。誤乗車の検出手法の詳細については後述する。
【0040】
記憶部105は、上述のエレベータ制御プログラム13pの他、エレベータ制御装置10の動作に必要な制御パラメータ等を記憶する。また、記憶部105は、登録部101が登録した行き先階呼び登録の情報、及び個々の乗りかご50に設定された運行状況等を記憶する。
【0041】
(エレベータシステムの動作例)
次に、図4及び図5を用いて、実施形態のエレベータシステム1の動作例について説明する。図4及び図5は、実施形態にかかるエレベータシステム1の動作の一例を示す説明図である。
【0042】
図4及び図5に示す例では、2つの乗りかご50(50a,50b)のうち紙面左側の乗りかご50aを1号機とする。1号機の乗りかご50aは、かごドア52a、カメラ53a、及び荷重センサ54aを備える。また、2つの乗りかご50(50a,50b)のうち紙面右の乗りかご50bを2号機とする。2号機の乗りかご50bは、かごドア52b、カメラ53b、及び荷重センサ54bを備える。
【0043】
図4に示すように、当初、1号機の乗りかご50aは、1人の利用者Ueを乗せた状態で、建物の1階部分に位置しているものとする。また、2号機の乗りかご50bは、2人の利用者Ueを乗せた状態で、建物の2階部分に位置しているものとする。このような状況下、3階の乗り場60にいる利用者Uが、乗り場60に設けられた行き先階登録装置61から、行き先階呼びを入力したものとする。
【0044】
実施形態のエレベータ制御装置10は、この行き先階呼びを登録し、これに応答させる乗りかご50として、2基の乗りかご50a,50bのうち1号機の乗りかご50aを割り当てたものとする。また、エレベータ制御装置10は、3階の乗り場60に設けられた行き先階登録装置61に、1号機が割り当てられたことを表示させる。
【0045】
図5に示すように、エレベータ制御装置10は、利用者Uからの行き先階呼びに割り当てた1号機の乗りかご50aを、利用者Uがいる3階に到着させ、1号機のかごドア52、及び乗りかご50aの到着位置に対応する乗り場ドア62を開く。
【0046】
なお、このタイミングと前後して、利用者Uからの行き先階呼びとは無関係に、2号機の乗りかご50bもまた3階の乗り場60に到着して戸開したものとする。更に、利用者Uが、指定されていた1号機ではなく、2号機の乗りかご50bに誤乗車してしまったものとする。
【0047】
この場合、1号機の乗りかご50aに対し他の利用者Ueの乗降が行われなければ、1号機の荷重センサ54aは、1号機の乗りかご50aの荷重の増減を検出しない。一方、2号機の乗りかご50bに対しても他の利用者Ueの乗降が行われなければ、2号機の荷重センサ54bは、2号機の乗りかご50bの荷重が1人分増加したことを検出する。
【0048】
エレベータ制御装置10の誤乗車検出部104は、これらの荷重センサ54a,54bの検出結果に基づいて、行き先階呼びを行った利用者Uの誤乗車を検出する。すなわち、誤乗車検出部104は、行き先階呼びに応答して3階の乗り場60に到着したにも拘わらず、1号機の乗りかご50aに乗車してきた者がいないこと、一方で、同じく3階の乗り場60に到着した2号機の乗りかご50bに1人分の荷重増加があったことから、1号機の乗りかご50aに乗車するはずであった利用者Uが、誤って2号機の乗りかご50bに乗車してしまったものと判断する。
【0049】
誤乗車検出部104が利用者Uの誤乗車を検出すると、エレベータ制御装置10の割り当て部102は、利用者Uからの行き先階呼びに対し、乗りかご50の再割り当てを行う。すなわち、割り当て部102は、2号機の乗りかご50bの行き先階に、利用者Uから指定された行き先階を追加する。また、割り当て部102は、1号機の乗りかご50aの行き先階から、利用者Uから指定された行き先階を削除する。
【0050】
エレベータ制御装置10の運転制御部103は、これ以降、割り当て部102の新たな割り当てにしたがって、それぞれの乗りかご50a,50bを制御する。すなわち、運転制御部103は、利用者Uが誤って乗車した2号機の乗りかご50bを、他の利用者Ueの行き先階とともに、利用者Uから指定された行き先階に、適宜停車させていく。また、運転制御部103は、利用者Uが当初乗車するはずであった1号機の乗りかご50aを、利用者Uから指定された行き先階に停車させることなく、他の利用者Ueの行き先階に適宜停車させていく。
【0051】
このように、実施形態のエレベータシステム1では、行き先階呼びがあった階に到着した複数の乗りかご50のうち、割り当て対象機ではない1基の乗りかご50にのみ荷重増加が認められ、割り当て対象機を含む他の乗りかご50に荷重の増減が認められなかった場合等、利用者Uが誤乗車したことが検出できた状況において、複数の乗りかご50間で割り当ての変更を行う。
【0052】
したがって、図4及び図5に示す例のみならず、利用者Uが誤乗車したことが特定できれば、他の状況下においても実施形態のエレベータシステム1による上記再割り当ての制御が適用される。
【0053】
(エレベータシステムの処理例)
次に、図6を用いて、実施形態のエレベータ制御装置10による処理例について説明する。図6は、実施形態にかかるエレベータ制御装置10による乗りかご50の割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0054】
図6に示すように、行き先階登録装置61から行き先階呼びを受信すると、エレベータ制御装置10の登録部101は行き先階呼び登録を行い(ステップS101)、割り当て部102は、複数の乗りかご50の中から、その行き先階呼びに応答させる乗りかご50を割り当てる(ステップS102)。また、割り当て部102は、割り当てた乗りかご50の号機等を行き先階登録装置61へと送信し、行き先階登録装置61に表示させる(ステップS103)。
【0055】
運転制御部103は、割り当てられた乗りかご50を、行き先階呼びがあった乗り場60へと応答させる(ステップS104)。また、誤乗車検出部104は、乗り場60に到着した乗りかご50の荷重センサ54の検出結果に基づいて、その乗りかご50に荷重変化があったか否かを判定する(ステップS105)。
【0056】
行き先階呼びに応答して乗り場60に到着した乗りかご50に荷重変化が認められた場合には(ステップS105:Yes)、行き先階呼びを行った利用者Uが指定通りの乗りかご50に乗車したものとして、運転制御部103は、行き先階呼びで指定された行き先階を含む階へとその乗りかご50を走行させる(ステップS106)。
【0057】
行き先階呼びに応答して乗り場60に到着した乗りかご50に荷重変化が認められなかった場合には(ステップS105:No)、誤乗車検出部104は、その乗り場60に到着した他の乗りかご50があるか否かを判定する(ステップS107)。その乗り場60に他の乗りかご50が到着していた場合には(ステップS107:Yes)、誤乗車検出部104は、その乗りかご50の荷重センサ54の検出結果に基づいて、その乗りかご50に荷重変化があったか否かを判定する(ステップS108)。
【0058】
割り当て対象の乗りかご50ではない他の乗りかご50に荷重変化が認められた場合には(ステップS108:Yes)、誤乗車検出部104は利用者Uがその乗りかご50に誤乗車したものと判定し、割り当て部102が、利用者が誤乗車した乗りかご50の行き先階に、行き先階呼びで指定された行き先階を追加する(ステップS109)。運転制御部103は、割り当て部102による再割り当てに応じて、利用者が誤乗車した乗りかご50を、行き先階呼びで指定された行き先階を含む階へと走行させる(ステップS110)。
【0059】
また、割り当て部102は、当初、割り当て対象であった乗りかご50の行き先階から、行き先階呼びで指定された行き先階を削除する(ステップS111)。なお、ステップS111の処理は、上述のステップS108の処理で、誤乗車検出部104により利用者Uの誤乗車が検出された後、いずれのタイミングで行われてもよい。すなわち、ステップS111の処理は、ステップS109の処理に先んじて、もしくは、ステップS109の処理と並行して行われてもよく、または、ステップS110の処理の前に行われてもよい。
【0060】
ただし、利用者Uが誤乗車したと推定される他の乗りかご50が、ステップS110の処理により、その乗り場60からの走行を開始するまで、当初の割り当て対象の乗りかご50の荷重変化がないことを見極めたうえで、ステップS111の処理を行うことで、利用者Uの取り残しの可能性を低減することができ、より適切にこれらの乗りかご50を運行させることができる。
【0061】
一方、行き先階呼びに応答して乗り場60に到着した乗りかご50に荷重変化が認められなかった場合において(ステップS105:No)、その乗り場60に到着した他の乗りかご50がない場合(ステップS107:No)、あるいは、他の乗りかご50に荷重変化がない場合(ステップS108:No)、誤乗車検出部104は、例えば当初の割り当て対象の乗りかご50が乗り場60に到着してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS112)。
【0062】
この場合、所定時間が経過するまでは(ステップS112:No)ステップS105からの処理が繰り返され、所定時間が経過すると(ステップS112:Yes)、割り当て部102は、他の乗りかご50等への再割り当てを行うことなく、当初の割り当て対象の乗りかご50の行き先階呼びを解除する(ステップS111)。
【0063】
以上により、実施形態のエレベータ制御装置10による乗りかご50の割り当て処理が終了する。
【0064】
(概括)
近年、エレベータシステムでは、乗り場に設置された行き先階登録装置で予め行き先階を登録するDCS技術が採用され始めている。DCS技術によれば、利用者が指定された乗りかごに乗車すると、乗りかご内で行き先階呼びを行わなくとも、その乗りかごが行き先階へと自動で走行を開始する。
【0065】
しかしながら、指定と異なる乗りかごに誤乗車してしまった場合、利用者は、例えば乗りかご内の行き先階呼び装置を操作して改めて行き先階呼びを行う必要がある。DCSを採用したエレベータシステムでは、乗りかご内に行き先階呼び装置が設けられていないことも多く、その場合、利用者は、行き先階以外の階で一旦降車して、行き先階の再登録を行う必要がある。
【0066】
このように、利用者による誤乗車が発生すると、利用者自身も煩雑な手続きを行う必要があり、行き先階への到着が遅れてしまうほか、エレベータの運行上も、割り当ての乗りかごによる応答が無駄になり、1人の利用者のために複数回の応答が必要となって非効率的である。
【0067】
実施形態のエレベータ制御方法によれば、複数の乗りかご50のうち、行き先階呼びがあった階に到着した乗りかご50であって、割り当て対象の乗りかご50aと、割り当て非対象の乗りかご50bとにそれぞれ設けられた荷重センサ54a,54bの検出結果に基づいて、割り当て非対象の乗りかご50bに利用者Uが誤乗車したことが判明した場合には、割り当て非対象の乗りかご50bの行き先階に行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、割り当て対象の乗りかご50aの行き先階から行き先階呼びで指定された行き先階を削除する。
【0068】
これにより、割り当て対象の乗りかご50aが、行き先階呼びで指定された行き先階で停車することがないので、割り当て対象の乗りかご50aの応答が無駄になってしまうことがなく、エレベータ運行効率を維持することができる。
【0069】
また、指定とは異なる乗りかご50bに誤乗車してしまった場合でも、利用者Uは乗りかご50の乗り換え、あるいは行き先階の再登録等の煩雑な手続きを行わなくともよく、利用者Uの利便性を高めることができる。
【0070】
実施形態のエレベータ制御方法によれば、割り当て対象の乗りかご50aと、割り当て非対象の乗りかご50bとに設けられた荷重センサ54a,54bのうち、割り当て対象の乗りかご50aが備える荷重センサ54aにより利用者Uの乗車が検出されず、割り当て非対象の乗りかご50bが備える荷重センサ54bにより利用者Uの乗車が検出された場合には、割り当て非対象の乗りかご50bに利用者Uが誤乗車したと判定する。
【0071】
このように、利用者Uの誤乗車の検出に荷重センサ54を用いることで、複数の乗りかご50a,50bにおける荷重の変化により、容易に誤乗車を検出することができる。また、割り当て対象の乗りかご50aと、割り当て非対象の乗りかご50bとの双方における荷重変化を比較して判定を行うので、より高精度に誤乗車を検出することができる。
【0072】
(変形例1)
次に、図7を用いて、実施形態の変形例1のエレベータ制御装置による処理例について説明する。変形例1のエレベータ制御装置は、乗りかごの運行状況が所定条件を満たす場合には、行き先階登録に対する乗りかごの割り当てを行わない点が上述の実施形態とは異なる。以下、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0073】
図7は、実施形態の変形例1にかかるエレベータ制御装置による乗りかご50の割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0074】
図7に示すように、変形例1のエレベータ制御装置は、ステップS201a,S213の処理を追加で実施するほかは、概ね、上述の実施形態のエレベータ制御装置10と同様の処理を行う。すなわち、図7に示すステップS201,S202~S212の処理は、上述の実施形態の図6に示したステップS101~S112の処理と同様に実施される。
【0075】
具体的には、変形例1のエレベータ制御装置においては、割り当て部102が行き先階登録に応答させる乗りかご50の割り当てを行う前に、エレベータシステムの複数の乗りかご50に予め設定され、記憶部105に記憶されている運行状況を参照し、これらの乗りかご50の少なくとも一部について、行き先階呼びがあった階床を含む2階床間で運行するよう設定されているか否かを判定する(ステップS201a)。
【0076】
これらの乗りかご50に、行き先階呼びがあった階床を含む2階床間運行の設定がされている場合には(ステップS201a:Yes)、これらの乗りかご50のうち、行き先階呼びがあった乗り場60に最初に到着した乗りかご50を、2階床間運行のもう一方の階床であって、行き先階呼びで指定された行き先階へと走行させる(ステップS213)。
【0077】
いずれの乗りかご50にも、行き先階呼びがあった階床を含む2階床間運行の設定がされていなかった場合には(ステップS201a:No)、変形例1のエレベータ制御装置は、上述の実施形態のエレベータ制御装置10と同様、ステップS202以降の処理を実行する。
【0078】
以上により、変形例1のエレベータ制御装置による乗りかご50の割り当て処理が終了する。
【0079】
変形例1のエレベータ制御方法によれば、複数の乗りかご50が2階床間を運行するよう設定されている場合には、行き先階呼びに応答させる乗りかご50の割り当てを行うことなく、行き先階呼びがあった階に到着した乗りかご50の行き先階に、行き先階呼びで指定された行き先階を追加する。
【0080】
これにより、乗りかご50が2階床間を往復運転している等の特定の条件下において、行き先階呼びに応答させる乗りかご50を割り当てる必要がなく、エレベータ制御装置による制御がシンプルになる。また、利用者は、指定の乗りかご50であるか否かを気にすることなく、その乗り場60に到着した乗りかご50に乗ればよいので、利用者による誤乗車が生じてしまうことを抑制することができる。
【0081】
変形例1のエレベータ制御方法によれば、その他、上述の実施形態のエレベータ制御方法と同様の効果が得られる。
【0082】
なお、上述の変形例1のエレベータ制御装置において、2階床間を往復運転時、利用者の待つ乗り場60に複数の乗りかご50が到着した場合には、これらの乗りかご50にそれぞれ設けられた荷重センサ54の検出結果に基づいて、荷重の増加が認められた乗りかご50を、利用者の行き先階に走行させるようにしてもよい。これにより、複数の乗りかご50のうち、利用者が乗車した乗りかご50を特定して行き先階へと移動させることができ、その他の乗りかご50を無駄に運転することが抑制できる。
【0083】
(変形例2)
次に、図8図13を用いて、実施形態の変形例2のエレベータシステム2について説明する。変形例2のエレベータシステム2においては、利用者の誤乗車があった場合に、利用者が誤乗車した乗りかご50の走行方向に応じて、乗りかご50の再割り当てを行うか否かを判定する点が、上述の実施形態とは異なる。以下の図面においては、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0084】
図8は、実施形態の変形例2にかかるエレベータ制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0085】
図8に示すように、変形例2のエレベータ制御装置20は、上述の実施形態のエレベータ制御装置10が備える割り当て部102及び運転制御部103に替えて、割り当て部202及び運転制御部203を備えている。
【0086】
変形例2の割り当て部202は、利用者の誤乗車があった場合に、利用者が誤乗車した乗りかご50の走行方向が、利用者が行き先階呼びで指定した行き先階がある方向と一致しているか否かを判定する。
【0087】
すなわち、誤乗車があった乗りかご50が上層階へと向かう乗りかご50であり、利用者が指定した行き先階もまた、上層階にある場合等には、割り当て部202は、乗りかご50の走行方向と、利用者が指定した行き先階の方向とは一致していると判定する。一方、誤乗車があった乗りかご50が上層階へと向かう乗りかご50であるのに対し、利用者が指定した行き先階が下層階にある場合等には、割り当て部202は、乗りかご50の走行方向と、利用者が指定した行き先階の方向とは一致しない、つまり、反対方向であると判定する。
【0088】
また、割り当て部202は、誤乗車のあった乗りかご50の走行方向と、利用者が指定した行き先階の方向とが一致していた場合には、上述の実施形態と同様、誤乗車のあった乗りかご50の行き先階に利用者の行き先階を追加し、当初の割り当て対象であった乗りかご50の行き先階から利用者の行き先階を削除する。
【0089】
また、割り当て部202は、誤乗車のあった乗りかご50の走行方向と、利用者が指定した行き先階の方向とが反対方向であった場合には、乗りかご50の再割り当てを行わない。
【0090】
変形例2の運転制御部203は、上述の実施形態と同様、巻き上げ機73、かごドア52、及び乗り場ドア62の制御を行うほか、報知装置55の制御を行う。変形例2のエレベータシステム2(図9等参照)において、報知装置55は、個々の乗りかご50にそれぞれ設けられ、乗りかご50内に所定のアナウンスを行うスピーカ等である。
【0091】
運転制御部203は、誤乗車のあった乗りかご50の走行方向と、利用者が指定した行き先階の方向とが反対方向であった場合、利用者が誤乗車した乗りかご50内に、報知装置55により誤乗車であることの報知を行う。
【0092】
図9及び図10は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステム2の動作の一例を示す説明図である。
【0093】
図9及び図10に示す例では、2つの乗りかご50(50a,50b)のうち紙面左側の乗りかご50aを1号機とする。1号機の乗りかご50aは、かごドア52a、カメラ53a、荷重センサ54a、及び報知装置55aを備える。また、2つの乗りかご50(50a,50b)のうち紙面右の乗りかご50bを2号機とする。2号機の乗りかご50bは、かごドア52b、カメラ53b、荷重センサ54b、及び報知装置55bを備える。
【0094】
図9に示すように、当初、1号機の乗りかご50aは、1人の利用者Ueを乗せた状態で建物の1階部分に位置し、上層階へと向かっているものとする。また、2号機の乗りかご50bは、2人の利用者Ueを乗せた状態で建物の3階部分に位置し、下層階へと向かっているものとする。このような状況下、2階の乗り場60にいる利用者Uが、乗り場60に設けられた行き先階登録装置61から、3階を行き先階とする行き先階呼びを入力したものとする。
【0095】
変形例2のエレベータ制御装置20は、この行き先階呼びを登録し、これに応答させる乗りかご50として、2基の乗りかご50a,50bのうち1号機の乗りかご50aを割り当てたものとする。また、エレベータ制御装置20は、2階の乗り場60に設けられた行き先階登録装置61に、1号機が割り当てられたことを表示させる。
【0096】
図10に示すように、エレベータ制御装置20は、利用者Uからの行き先階呼びに割り当てた1号機の乗りかご50aを、利用者Uがいる2階に到着させ、1号機のかごドア52、及び乗りかご50aの到着位置に対応する乗り場ドア62を開く。
【0097】
なお、このタイミングと前後して、利用者Uからの行き先階呼びとは無関係に、2号機の乗りかご50bもまた2階の乗り場60に到着して戸開したものとする。更に、利用者Uが、指定されていた1号機ではなく、2号機の乗りかご50bに誤乗車してしまったものとする。
【0098】
エレベータ制御装置20の誤乗車検出部104は、割り当て機である乗りかご50aに設けられた荷重センサ54aが荷重の変化を検出しなかったこと、及び、割り当て機ではない乗りかご50bに設けられた荷重センサ54bが荷重の増加を検出したことから、1号機の乗りかご50aに乗車するはずであった利用者Uが、誤って2号機の乗りかご50bに乗車してしまったものと判断する。
【0099】
誤乗車検出部104が利用者Uの誤乗車を検出すると、変形例2の割り当て部202は、利用者Uが誤乗車した2号機の乗りかご50bの走行方向と、利用者Uが指定した行き先階の方向とが一致しているか否かを判定する。本例では、2号機の乗りかご50bの走行方向は下層階方向であり、利用者Uが指定した行き先階は上層階の3階である。したがって、割り当て部202は、2号機の乗りかご50bの走行方向と、利用者Uの行き先階の方向とは反対方向であると判定する。
【0100】
この場合、割り当て部202は、2号機の乗りかご50bに利用者の行き先階を追加し、1号機の乗りかご50aから利用者の行き先階を削除する等の、乗りかご50の再割り当てを行わない。
【0101】
変形例2のエレベータ制御装置20においては、乗りかご50の再割り当てに替えて、運転制御部203が、利用者Uが誤乗車した2号機の乗りかご50bに設けられた報知装置55bにより、乗りかご50b内の利用者Uに誤乗車していることを報知する。これにより、利用者Uが誤乗車に気づくことができ、当初の割り当てにしたがって、正しい乗りかご50aへの乗り換えを利用者Uに促すことができる。
【0102】
その後、運転制御部203は、1号機の乗りかご50aの上層階への走行と、2号機の乗りかご50bの下層階への走行とを継続する。このとき、これらの乗りかご50a,50bの走行開始前に、エレベータ制御装置20が、乗りかご50aの荷重センサ54aの検出結果と、乗りかご50bの荷重センサ54bの検出結果とを再度比較して、利用者Uが正しい乗りかご50aへの乗り換えを行ったことを確認してもよい。
【0103】
図11及び図12は、実施形態の変形例2にかかるエレベータシステム2の動作の他の例を示す説明図である。図11及び図12に示す例においても、2つの乗りかご50(50a,50b)のうち紙面左側の乗りかご50aを1号機とし、紙面右の乗りかご50bを2号機とする。
【0104】
図11に示すように、当初、1号機の乗りかご50aは、1人の利用者Ueを乗せた状態で建物の1階部分に位置し、上層階へと向かっているものとする。また、2号機の乗りかご50bは、2人の利用者Ueを乗せた状態で建物の1階部分に位置し、上層階へと向かっているものとする。このような状況下、2階の乗り場60にいる利用者Uが、乗り場60に設けられた行き先階登録装置61から、3階を行き先階とする行き先階呼びを入力したものとする。
【0105】
変形例2のエレベータ制御装置20は、この行き先階呼びを登録し、これに応答させる乗りかご50として、2基の乗りかご50a,50bのうち1号機の乗りかご50aを割り当てたものとする。また、エレベータ制御装置20は、2階の乗り場60に設けられた行き先階登録装置61に、1号機が割り当てられたことを表示させる。
【0106】
図10に示すように、エレベータ制御装置20は、利用者Uからの行き先階呼びに割り当てた1号機の乗りかご50aを、利用者Uがいる2階に到着させ、1号機のかごドア52、及び乗りかご50aの到着位置に対応する乗り場ドア62を開く。
【0107】
なお、このタイミングと前後して、利用者Uからの行き先階呼びとは無関係に、2号機の乗りかご50bもまた2階の乗り場60に到着して戸開したものとする。更に、利用者Uが、指定されていた1号機ではなく、2号機の乗りかご50bに誤乗車してしまったものとする。
【0108】
エレベータ制御装置20の誤乗車検出部104は、割り当て機である乗りかご50aに設けられた荷重センサ54aが荷重の変化を検出しなかったこと、及び、割り当て機ではない乗りかご50bに設けられた荷重センサ54bが荷重の増加を検出したことから、1号機の乗りかご50aに乗車するはずであった利用者Uが、誤って2号機の乗りかご50bに乗車してしまったものと判断する。
【0109】
誤乗車検出部104が利用者Uの誤乗車を検出すると、変形例2の割り当て部202は、利用者Uが誤乗車した2号機の乗りかご50bの走行方向と、利用者Uが指定した行き先階の方向とが一致しているか否かを判定する。本例では、2号機の乗りかご50bの走行方向は上層階方向であり、利用者Uが指定した行き先階もまた上層階の3階である。したがって、割り当て部202は、2号機の乗りかご50bの走行方向と、利用者Uの行き先階の方向とは一致していると判定する。
【0110】
この場合、割り当て部202は、上述の実施形態と同様、2号機の乗りかご50bに利用者の行き先階を追加し、1号機の乗りかご50aから利用者の行き先階を削除する等の、乗りかご50の再割り当てを実行する。よって、2号機の乗りかご50bの報知装置55aによる誤乗車の報知は行われない。
【0111】
運転制御部203は、1号機の乗りかご50aの上層階への走行を継続し、利用者の行き先階を除く他の行き先階に適宜、乗りかご50aを停車させていく。また、運転制御部203は、2号機の乗りかご50bの上層階への走行を継続し、利用者の行き先階を含む行き先階に適宜、乗りかご50bを停車させていく。
【0112】
図13は、実施形態の変形例2にかかるエレベータ制御装置20による乗りかご50の割り当て処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0113】
図13に示すように、変形例2のエレベータ制御装置20は、上述の実施形態の図6に示した処理に加えて、ステップS308a,S308b,S308cの処理を追加で実施して、誤乗車に対応して乗りかご50の再割り当てを行うか否かを決定する。すなわち、図13に示すステップS301~S308,S309~S312の処理は、上述の実施形態の図6に示したステップS101~S112の処理と同様に実施される。
【0114】
具体的には、変形例2のエレベータ制御装置20においては、行き先階登録が行われ、割り当てを行った乗りかご50に替えて他の乗りかご50への誤乗車が認められた場合には(ステップS301~S308)、割り当て部202は、利用者が誤乗車した乗りかご50の走行方向と、利用者の行き先階の方向とが一致しているか否かを判定する(ステップS308a)。
【0115】
誤乗車があった乗りかご50の走行方向と、利用者の行き先階の方向とが一致していた場合には(ステップS308a:Yes)、割り当て部202は、上述の実施形態のエレベータ制御装置10と同様、ステップS309以降の処理を実行し、乗りかご50の再割り当てを行う。
【0116】
誤乗車があった乗りかご50の走行方向と、利用者の行き先階の方向とが反対方向であった場合には(ステップS308a:No)、割り当て部202は、誤乗車があった乗りかご50に他の行き先階が登録されているか否かを判定する(ステップS308b)。他の行き先階が登録されていなかった場合にもまた(ステップS308b:No)、割り当て部202は、上述の実施形態のエレベータ制御装置10と同様、ステップS309以降の処理を実行し、乗りかご50の再割り当てを行う。すなわち、この場合、その乗りかご50の走行方向が変更される。
【0117】
一方、誤乗車があった乗りかご50に他の行き先階が登録されていた場合には(ステップS308b:Yes)、その乗りかご50の走行方向を維持することが優先される。すなわち、割り当て部202は、乗りかご50の再割り当てを行わず、その乗りかご50については当初の走行方向への移動が継続される。それに先立って、運転制御部203は、その乗りかご50の報知装置55によって、乗りかご50内の利用者に誤乗車していることの報知を行う(ステップS308c)。
【0118】
その後、運転制御部203は、当初、利用者の行き先階呼びに対して割り当てられた乗りかご50を、利用者の行き先階へと走行させる(ステップS306)。
【0119】
以上により、変形例2のエレベータ制御装置20による乗りかご50の割り当て処理が終了する。
【0120】
変形例2のエレベータ制御方法によれば、割り当て非対象の乗りかご50bに利用者Uが誤乗車したことが判明した場合には、割り当て非対象の乗りかご50bの他の行き先階が行き先階呼びで指定された行き先階と同一方向であるか否かを判定した後に、割り当て非対象の乗りかご50bの行き先階に行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、割り当て対象の乗りかご50aの行き先階から行き先階呼びで指定された行き先階を削除するか否かを決定する。
【0121】
これにより、誤乗車があった乗りかご50aの当初の走行方向が、再割り当てによって変更されることを抑制して、エレベータシステム2の運転効率を高めることができる。
【0122】
変形例2のエレベータ制御方法によれば、割り当て非対象の乗りかご50bに利用者Uが誤乗車したことが判明した場合であっても、割り当て非対象の乗りかご50bの他の行き先階が行き先階呼びで指定された行き先階と反対方向であった場合には、割り当て非対象の乗りかご50bの行き先階に行き先階呼びで指定された行き先階を追加することも、割り当て対象の乗りかご50aの行き先階から行き先階呼びで指定された行き先階を削除することもなく、割り当て非対象の乗りかご50b内に設けられた報知装置55bにより、利用者Uに誤乗車であることを報知する。
【0123】
これにより、利用者Uに誤乗車であることを知らせて、利用者Uの正しい乗りかご50aへの乗り換えを促すことができる。また、誤乗車があった乗りかご50aの当初の走行方向を維持することができ、エレベータシステム2の運転効率をいっそう高めることができる。
【0124】
変形例2のエレベータ制御方法によれば、その他、上述の実施形態のエレベータ制御方法と同様の効果が得られる。
【0125】
なお、上述の実施形態および変形例1,2においては、それぞれの乗りかご50に設けられた荷重センサ54を用いて、利用者の誤乗車を検出することとした。しかしながら、それぞれの乗りかご50に設けられたカメラ53、及び乗り場60に設けられたカメラ63等を、利用者の所定の乗りかご50への乗降を検出する利用者検出装置として用いてもよい。
【0126】
この場合、割り当て対象の乗りかご50に設けられたカメラ53と、割り当て非対象の乗りかご50に設けられたカメラ53との両方の画像を比較することにより、誤乗車があったことを検出してもよい。あるいは、乗り場60のカメラ63を用いて、割り当て対象の乗りかご50への利用者の乗車が認められず、割り当て非対象の乗りかご50への利用者の乗車が認められた場合に、誤乗車があったことを検出してもよい。またあるいは、乗りかご50のカメラ53と乗り場60のカメラ63との両方を用いて誤乗車を検出してもよい。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1,2…エレベータシステム、10,20…エレベータ制御装置、13p…エレベータ制御プログラム、50…乗りかご、53,63…カメラ、54…荷重センサ、55…報知装置、61…行き先階登録装置、101…登録部、102,202…割り当て部、103,203…運転制御部、104…誤乗車検出部、105…記憶部。
【要約】
【課題】指定とは異なる乗りかごに誤乗車してしまった場合でも、エレベータの運行効率を維持しつつ利用者の利便性を高めること。
【解決手段】実施形態のエレベータ制御方法は、エレベータへの乗車前に利用者が行き先階を入力可能な行き先階登録装置から行き先階の入力を受け付けて行き先階呼びを登録し、エレベータが備える複数の乗りかごの中から行き先階呼びに応答させる乗りかごを割り当て、複数の乗りかごのうち、行き先階呼びがあった階に到着した乗りかごであって、割り当て対象の乗りかごと、割り当て非対象の乗りかごとにそれぞれ設けられた利用者検出装置の検出結果に基づいて、割り当て非対象の乗りかごに利用者が誤乗車したことが判明した場合には、割り当て非対象の乗りかごの行き先階に行き先階呼びで指定された行き先階を追加し、割り当て対象の乗りかごの行き先階から行き先階呼びで指定された行き先階を削除する。
【選択図】図6
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