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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20250114BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20250114BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
E02F3/43 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024508854
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013238
(87)【国際公開番号】W WO2023181128
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-194033(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115810(WO,A1)
【文献】特開2020-41354(JP,A)
【文献】特開2022-34651(JP,A)
【文献】特開昭62-160325(JP,A)
【文献】特開2016-160718(JP,A)
【文献】特開2020-37837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業具を有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御するコントロールバルブと、
前記作業具上の制御点の目標軌道を算出し、前記制御点が前記目標軌道上を移動するように前記コントロールバルブを制御する制御装置とを備えた作業機械において、
前記制御装置は、
掘削面の傾斜情報に基づき、掘削開始時に前記制御点が位置する掘削開始位置と掘削途中に前記制御点が位置する掘削途中位置と掘削終了時に前記制御点が位置する掘削終了位置とを通る目標軌道、および前記制御点が前記目標軌道上を移動するときの前記作業具の目標姿勢を算出し、
前記制御点が前記目標軌道上を移動するように、かつ前記制御点が前記目標軌道上を移動するときの前記作業具の姿勢が前記目標姿勢と一致するように前記コントロールバルブを制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記掘削途中位置は、前記目標軌道上で地表から最も深くに位置する最大掘削深さ位置である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記掘削開始位置、前記最大掘削深さ位置、および前記掘削終了位置に加え、掘削動作終了時に前記制御点が位置する動作終了位置を通るように前記目標軌道を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記動作終了位置における前記目標姿勢を前記掘削面の傾斜情報としての掘削面の傾斜によらず重力方向に基づいて算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2に記載の作業機械において、
前記掘削面の傾斜情報として掘削面の傾斜を前記制御装置に入力する外部接続装置を備え、
前記制御装置は、前記掘削面の傾斜に応じて、前記掘削開始位置、前記最大掘削深さ位置、および前記掘削終了位置を設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記掘削面の傾斜に応じて、前記掘削開始位置における前記目標姿勢、前記最大掘削深さ位置における前記目標姿勢、および前記掘削終了位置における前記目標姿勢を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項5に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を前記掘削開始位置に近づくように設定し、
前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を前記掘削終了位置に近づくように設定し、
前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を地表から浅い位置に設定し、
前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど前記最大掘削深さ位置を地表から深い位置に設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項5に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、前記掘削開始位置から前記掘削終了位置までの距離が小さくなるように前記掘削開始位置および前記掘削終了位置を設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項2に記載の作業機械において、
掘削対象物の硬さを前記制御装置に入力する外部接続装置を備え、
前記制御装置は、前記掘削対象物の硬さに応じて前記最大掘削深さ位置を設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項9に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記掘削対象物の硬さに応じて、前記掘削開始位置における前記目標姿勢、前記最大掘削深さ位置における前記目標姿勢、および前記掘削終了位置における前記目標姿勢を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項11】
請求項9に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記掘削対象物の硬さが大きくなるほど前記作業具の底面の向きが前記目標軌道の接線の向きに近づくように前記目標姿勢を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項12】
請求項9に記載の作業機械において、
前記外部接続装置は、掘削面の傾斜を前記制御装置に入力し、
前記制御装置は、
前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を前記掘削開始位置に近づくように設定し、
前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を前記掘削終了位置に近づくように設定し、
前記掘削対象物の硬さが大きくなるほど前記最大掘削深さ位置を地表から浅い位置に設定し、
前記掘削対象物の硬さが小さくなるほど前記最大掘削深さ位置を地表から深い位置に設定し、
前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を地表から浅い位置に設定し、
前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、前記最大掘削深さ位置を地表から深い位置に設定する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動掘削制御を行う作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータで駆動される作業装置(例えばフロント作業装置)を備える作業機械(例えば油圧ショベル)によって土砂を掘削し、運搬装置(例えばベッセル)を備える運搬車両(例えばダンプトラック)に積込みを行う掘削積込み作業がある。
【0003】
このような掘削積込作業を自動制御で行うための研究が行われている。建設機械の自動制御では作業装置をどのような軌道で動作させるか動作計画が行われ目標とする軌道を生成するのが一般的である。
【0004】
特許文献1には掘削長さに対する掘削深さの比に基づいて目標軌道を生成する技術が開示されている。この文献では掘削長さに対する掘削深さの比として表される予め定められた掘削曲線比率に従って目標軌道を生成しており、望ましい掘削曲線比率の値についても言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開第2020-041354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術を用いて油圧ショベルの掘削作業における目標軌道を生成することは可能である。しかし、適切な掘削軌跡は掘削面の傾斜や掘削対象物の硬さ等によって変化するが、それらについては言及されていない。油圧ショベルが使用される環境や掘削対象物は様々であり、不適切な目標軌道で掘削作業を行うとバケットで十分な土砂を掘削することができずに作業効率が低下してしまう場合や、バケットが土砂に深く潜り込み過ぎてそれ以上動作することができなくなる場合がある。そのため様々な掘削面の傾斜や掘削対象物の硬さに対しても適切な目標軌道を生成できることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動掘削制御において、掘削環境や掘削対象物に応じて作業具の目標軌道および目標姿勢を適切に設定することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業具を有する作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御するコントロールバルブと、前記作業具上の制御点の目標軌道を算出し、前記制御点が前記目標軌道上を移動するように前記コントロールバルブを制御する制御装置とを備えた作業機械において、前記制御装置は、掘削面の傾斜情報に基づき、掘削開始時に前記制御点が位置する掘削開始位置と掘削途中に前記制御点が位置する掘削途中位置と掘削終了時に前記制御点が位置する掘削終了位置とを通る目標軌道、および前記制御点が前記目標軌道上を移動するときの前記作業具の目標姿勢を算出し、前記制御点が前記目標軌道上を移動するように、かつ前記制御点が前記目標軌道上を移動するときの前記作業具の姿勢が前記目標姿勢と一致するように前記コントロールバルブを制御するものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、作業具上の制御点が掘削開始位置、掘削途中位置、および掘削終了位置を通るように作業具の目標軌道および目標姿勢が算出されるため、掘削環境や掘削対象物に応じて目標軌道および目標姿勢を適切に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業機械の自動掘削制御において、掘削環境や掘削対象物に応じて作業具の目標軌道および目標姿勢を適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例における油圧ショベルの構成図
図2】本発明の第1の実施例における制御装置の機能ブロック図
図3A】本発明の第1の実施例における制御装置による自動動作制御のフローチャート(1/2)
図3B】本発明の第1の実施例における制御装置による自動動作制御のフローチャート(2/2)
図4】本発明の第1の実施例における制御装置による掘削面の傾斜に応じたパラメータ設定のフローチャート
図5】本発明の第1の実施例における制御装置が掘削面の傾斜に応じて生成した掘削軌道の説明図
図6】本発明の第2の実施例における制御装置の機能ブロック図
図7】本発明の第2の実施例における制御装置による掘削面の傾斜と掘削対象物の硬さに応じたパラメータ設定のフローチャート
図8】本発明の第2の実施例における制御装置が掘削面の傾斜と掘削対象物の硬さに応じて生成した掘削軌道の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下では、作業装置の先端の作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示するが、バケット以外のアタッチメントを備える作業機械で本発明を適用しても構わない。さらに、複数のリンク部材(アタッチメント、アーム、ブーム等)を連結して構成される多関節型の作業装置を有するものであれば油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例における油圧ショベルの構成図である。図1において、油圧ショベル1は、多関節型のフロント作業装置1Aと、車体1Bで構成されている。車体1Bは、左右の走行油圧モータ3(左側のみ図示)により走行する下部走行体11と、下部走行体11の上に取り付けられ、旋回油圧モータ4により旋回する上部旋回体12とからなる。フロント作業装置1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており、アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され、アーム9はアームシリンダ6によって駆動され、バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。
【0014】
上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は、油圧ポンプ2を駆動する。油圧ポンプ2から吐出された圧油は、コントロールバルブ20を介して走行油圧モータ3、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7に供給される。コントロールバルブ20は、各油圧アクチュエータ3~7に供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁からなる。供給された圧油によってブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7が伸縮することで、ブーム8、アーム9、バケット10がそれぞれ回動し、バケット10の位置及び姿勢が変化する。また、供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。そして、供給された圧油によって走行油圧モータ3が回転することで、下部走行体11が走行する。
【0015】
自動動作制御においては、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7に供給される圧油の流量を調整する流量制御弁は、電磁比例弁54~59(図2に示す)からのパイロット油圧信号によって駆動され、走行油圧モータ3、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7を動作させる。電磁比例弁54~59は制御装置40からの制御指令によって制御される。なお、掘削動作を行う際の自動動作制御のことを自動掘削制御と称する場合がある。
【0016】
ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度を測定可能なように、ブーム8にブーム角度センサ30、アーム9にアーム角度センサ31、バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ、上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の傾斜角を検出する車体傾斜角センサ33が取付けられ、車体1Bの位置を検出する車体位置検出装置36が取り付けられている。
【0017】
作業装置姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33から構成される。これらの角度センサ30~33はフロント作業装置1Aの姿勢センサとして機能している。
【0018】
図2は、制御装置40の機能ブロック図である。制御装置40は、位置姿勢演算部43と、電磁比例弁制御部44と、アクチュエータ制御部81と、動作計画部90と、自動動作制御部91と、軌道逸脱判定部92と、時間逸脱判定部93と、第1入力部100と、第2入力部101と、第3入力部102と、掘削面傾斜設定部103と、第1出力部110と、第2出力部111とを備えている。制御装置40は、演算処理機能を有するコントローラ、外部機器との間の信号入出力を行う入出力インタフェース等で構成され、ROM等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各部の機能を実現する。
【0019】
第1入力部100には外部接続装置200からタスク情報が入力される。
【0020】
第2入力部101には外部接続装置200から承認信号または非承認信号が入力される。
【0021】
第3入力部102には外部接続装置200からタスク一時停止信号またはタスク再開要求信号またはタスク途中終了要求信号が入力される。
【0022】
掘削面傾斜設定部103には外部接続装置200からの情報に基づきフロント作業装置1Aによる掘削作業を行う箇所周辺の地形の傾斜に概ね一致する掘削面の傾斜が設定される。外部接続装置200から掘削面傾斜設定部103に入力される情報は人が地形の傾斜を目視で確認した結果を用いても良いし地形計測センサ等による計測を行った結果を用いてもよい。
【0023】
位置姿勢演算部43は作業装置姿勢検出装置50と車体位置検出装置36からの情報に基づき、油圧ショベル1の位置座標と、フロント作業装置1Aの姿勢と、バケット10の爪先位置(制御点)を算出する。
【0024】
動作計画部90には予定動作軌道(目標軌道)の演算に使用するパラメータのテーブルが予め記憶されており、第1入力部100から取得したタスク情報と掘削面傾斜設定部103から取得した掘削面の傾斜情報に基づき、タスク開始からタスク終了までの各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢と、バケット10の爪先位置の予定動作軌道を算出し、自動動作制御部91、軌道逸脱判定部92、時間逸脱判定部93及び第1出力部110に出力する。以下、掘削開始位置から掘削終了位置までの予定動作軌道のことを掘削軌道と称する場合がある。
【0025】
軌道逸脱判定部92は動作計画部90からの動作計画情報と位置姿勢演算部43からの現在のフロント作業装置1Aの姿勢情報と、バケット10の爪先位置情報に基づいて、バケット10の爪先位置の実際の動作軌道が動作計画部90で計画された予定動作軌道から予め設定された第1許容位置誤差を超えて逸脱していないかを判定し、判定結果を自動動作制御部91に出力する。
【0026】
時間逸脱判定部93は動作計画部90からの動作計画情報と位置姿勢演算部43からの現在のフロント作業装置1Aの姿勢情報に基づいてフロント作業装置1A、旋回油圧モータ4、走行油圧モータ3の実際の動作が動作計画部90で計画された動作から予め設定された第1許容時間誤差を超える逸脱が発生していないかを判定し、判定結果を自動動作制御部91に出力する。
【0027】
自動動作制御部91は第2入力部101からの信号が承認信号の場合のみ動作計画部90からの動作計画情報に基づいて各油圧アクチュエータの速度指令を算出し、アクチュエータ制御部81に出力する。タスク実行中に軌道逸脱判定部92で軌道を逸脱していると判定された場合と時間逸脱判定部93で動作時間を逸脱していると判定された場合にはタスクの実行を終了し、異常終了信号を第2出力部111に出力する。また、第3入力部102からの信号がタスク一時停止要求信号の場合にはタスクの実行を一時停止し一時停止信号を第2出力部111に出力し、タスク一時停止中に第3入力部102からタスク再開要求信号を取得した場合にはタスクの実行を再開し、第3入力部102からタスク途中終了要求信号を取得した場合にはタスクの実行を終了し途中終了信号を第2出力部111に出力する。また、予定動作軌道および動作時間を逸脱することなくタスクが完了した場合には正常終了信号を出力する。
【0028】
アクチュエータ制御部81は、自動動作制御部91から出力される各油圧アクチュエータ3~7の速度指令に基づき各油圧アクチュエータの流量制御弁の目標パイロット圧を算出し、その演算した目標パイロット圧を電磁比例弁制御部44に出力する。
【0029】
電磁比例弁制御部44は、アクチュエータ制御部81から出力される各流量制御弁への目標パイロット圧を基に、各電磁比例弁54~59への指令を算出する。
【0030】
第1出力部110は動作計画部90から出力される動作計画情報を外部接続装置200に出力する。
【0031】
第2出力部111は自動動作制御部91から出力される正常終了信号または異常終了信号または一時中断信号または途中終了信号を外部接続装置200に出力する。
【0032】
図3A及び図3Bは、制御装置40による自動動作制御のフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0033】
ステップS110では、第1入力部100は外部接続装置200から入力されたタスク情報を取得する。
【0034】
ステップS120では、ステップS110で取得したタスク情報に基づき動作計画部90はタスク開始からタスク終了までの各時刻における油圧ショベル1の予定動作軌道すなわち油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢(目標姿勢)を算出する。
【0035】
ステップS130では、第1出力部はステップS120で演算した動作計画結果を外部接続装置200に出力する。
【0036】
ステップS140では、第2入力部101は外部接続装置200から承認信号または非承認信号を取得する。
【0037】
ステップS150では、ステップS140で取得した第2入力部101の信号が承認信号か否かを判定する。ステップS150で第2入力部101の信号は承認信号であると判定された場合はステップS160に進み、ステップS150で第2入力部101の信号は承認信号ではないと判定された場合はステップS110に進む。
【0038】
ステップS160では、アクチュエータ制御部81はステップS120で演算した動作計画結果から各油圧アクチュエータ3~7の目標速度を算出する。
【0039】
ステップS170では、アクチュエータ制御部81はステップS160で演算した各油圧アクチュエータ3~7の目標速度を電磁比例弁制御部44に出力する。
【0040】
ステップS180では、軌道逸脱判定部92及び時間逸脱判定部93は位置姿勢演算部43で演算された油圧ショベル1の位置座標と、フロント作業装置1Aの姿勢と、バケット10の爪先位置を取得する。
【0041】
ステップS190では、軌道逸脱判定部92はステップS180で取得した位置姿勢情報から現在のバケット10の爪先位置の動作計画部90で演算した予定動作軌道からの逸脱が第1許容位置誤差以下であるかを判定する。ステップS190で逸脱が第1許容位置誤差以下であると判定された場合はステップS200に進み、ステップS190で逸脱が第1許容位置誤差より大きいと判定された場合はステップS250に進む。
【0042】
ステップS200では、時間逸脱判定部93はステップS180で取得した位置姿勢情報から現在の油圧ショベル1の位置座標と、フロント作業装置1Aの姿勢の動作計画部90で演算した各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢からの逸脱が第1許容時間誤差以下であるかを判定する。ステップS200で逸脱が第1許容時間誤差以下であると判定された場合はステップS210に進み、ステップS200で逸脱が第1許容時間誤差より大きいと判定された場合はステップS250に進む。
【0043】
ステップS210では、第3入力部102は外部接続装置200からの信号を取得する。
【0044】
ステップS220では、ステップS210で取得した第3入力部102の信号がタスク一時停止要求信号か否かを判定する。ステップS220で第3入力部102の信号がタスク一時停止要求信号であると判定された場合はステップS260に進み、ステップS220で第3入力部102の信号がタスク一時停止要求信号以外と判定された場合はステップS230に進む。
【0045】
ステップS230では、ステップS120で演算した動作計画に基づいたタスクの実行が完了したか否かを判定する。ステップS230でタスクの実行が完了したと判定された場合はステップS240に進み、ステップS230でタスクの実行が完了していないと判定された場合はステップS160に進む。
【0046】
ステップS240では、第2出力部111は正常終了信号を外部接続装置200に出力する。
【0047】
ステップS250では、第2出力部111は異常終了信号を外部接続装置200に出力する。
【0048】
ステップS260では、第2出力部111は一時停止信号を外部接続装置200に出力する。
【0049】
ステップS270では、第3入力部102は外部接続装置200からの信号を取得する。
【0050】
ステップS280では、ステップS270で取得した第3入力部102の信号がタスク再開要求信号か否かを判定する。ステップS280で第3入力部102の信号がタスク再開要求信号であると判定された場合はステップS230に進み、ステップS280で第3入力部102の信号がタスク再開要求以外と判定された場合はステップS290に進む。
【0051】
ステップS290では、ステップS270で取得した第3入力部102の信号がタスク途中終了要求信号か否かを判定する。ステップS290で第3入力部102の信号がタスク途中終了要求信号であると判定された場合はステップS300に進み、ステップS290で第3入力部102の信号がタスク途中終了以外と判定された場合はステップS270に進む。
【0052】
ステップS300では、第2出力部111は途中終了信号を外部接続装置200に出力する。
【0053】
図4は、動作計画部90による掘削面の傾斜に応じたパラメータ設定のフローチャートである。ここでいうパラメータとは、バケット10の爪先位置の予定動作軌道を算出する際に用いられる、掘削開始位置からの掘削終了位置までの距離(掘削距離)、最大掘削深さ、最大掘削深さ位置、動作終了位置、各位置におけるバケット10の姿勢である。以下、各ステップについて順に説明する。
【0054】
ステップS400では、掘削面傾斜設定部103は外部接続装置200からフロント作業装置1Aによる掘削作業を行う箇所周辺の地形の傾斜に概ね一致する掘削面の傾斜θ_gndが設定される。なお、本実施例における掘削面の傾斜θ_gndは、車体1Bから見て下り傾斜している場合(図5に示す)をプラス、上り傾斜している場合をマイナスと定義する。
【0055】
ステップS410では、ステップS400で設定した掘削面の傾斜θ_gndに応じて予定動作軌道の演算における長さに関するパラメータを設定する。具体的には掘削開始位置からの掘削距離L_exと最大掘削深さD_maxdptと最大掘削深さ位置までの掘削面方向の距離L_maxdptを設定する。
【0056】
ステップS420では、ステップS400で設定した掘削面の傾斜θ_gndに応じて予定動作軌道の演算における姿勢に関するパラメータを設定する。具体的には掘削開始位置におけるバケット10の姿勢θ_1と最大掘削深さ位置におけるバケット10の姿勢θ_2と掘削終了位置におけるバケット10の姿勢θ_3を設定する。なお、本実施例におけるバケット10の姿勢θ_1~θ_3は、クラウド側(図5中、反時計回り方向)の変位をプラス、ダンプ側(図5中、時計回り方向)の変位をマイナスと定義する。
【0057】
ステップS430では、予定動作軌道の演算における掘削面の傾斜θ_gndによらないパラメータを設定する。具体的には動作終了位置までの掘削面方向の距離L_finと動作終了位置におけるバケット10の姿勢θ_4を設定する。
【0058】
ステップS440では、ステップS410,S420,S430で設定したパラメータから求められる掘削開始位置と最大掘削深さ位置と掘削終了位置と動作終了位置と各位置におけるバケット10の姿勢に基づき、各位置と各姿勢を滑らかに接続するように予定動作軌道の演算を行う。
【0059】
なお、図4に示したパラメータ設定の方法は一例であり、別の方法で掘削面の傾斜θ_gndに応じてパラメータを設定しても良い。またはパラメータを介さず掘削面の傾斜θ_gndに応じて直接各位置と各位置におけるバケット10の姿勢を設定してもよい。
【0060】
また、各位置と各姿勢を滑らかに接続するように予定動作軌道を算出する際にはラグランジュ補間、ベジエ補間、エルミート補間、スプライン補間等を用いた補間が考えられるがこれ以外の方法を用いてもよい。
【0061】
上記のように構成される油圧ショベル1において、掘削面の傾斜θ_gndに応じて生成した掘削軌道を図5に示す。
【0062】
管理者または管理システムはタスク情報と掘削面の傾斜θ_gndの入力を行う。入力されたタスク情報、掘削面の傾斜θ_gndに基づき動作計画部90は動作計画を行う。すなわちタスク開始からタスク終了までの各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢と、バケット10の爪先位置の予定動作軌道を算出する。動作計画部90は予定動作軌道の演算の中で掘削動作軌道の生成の際に掘削面の傾斜θ_gndに応じた予定動作軌道の演算を行う。図5では掘削面が下り傾斜しているため、掘削面が傾斜していない場合、すなわちθ_gnd=0の場合と比べて、ステップS410で掘削距離L_exは短く設定され、最大掘削深さD_maxdptは深く設定され、最大掘削深さ位置までの掘削面方向の距離L_maxdptは長く設定される。同様にステップS420でθ_gnd=0の場合と比べて、掘削開始位置におけるバケット10の姿勢θ_1は大きく設定され、最大掘削深さ位置におけるバケット10の姿勢θ_2は大きく設定され、掘削終了位置におけるバケット10の姿勢θ_3は大きく設定される。ステップS430で動作終了位置までの掘削面方向の距離L_finと動作終了位置におけるバケット10の姿勢θ_4は掘削面の傾斜θ_gndによらず、かつ動作終了位置におけるバケット10の姿勢θ_4は重力方向に応じて設定される。ここでいう姿勢θ_4は、例えばバケットピンとバケット爪先を結ぶ直線が概ね水平となる姿勢である。これにより図5の状態S1(掘削開始状態)と状態S2(最大掘削深さ状態)と状態S3(掘削終了状態)と状態S4(動作終了状態)におけるバケット10のツメ先の位置P1~P4とバケット10の姿勢が決定する。ステップS440で位置P1から位置P4までを滑らかに接続するように予定動作軌道R(目標軌道)が算出される。
【0063】
動作計画の結果は第1出力部110から出力され、外部接続装置200を介して管理者または管理システムに提示される。動作計画の結果に問題なければ、管理者または管理システムから第2入力部101に承認信号が入力されることで図3のステップS150でYESと判定される。
【0064】
次に予定動作軌道Rに基づき自動動作制御部91で各油圧アクチュエータ3~7の速度指令が算出され、アクチュエータ制御部81で各油圧アクチュエータの流量制御弁の目標パイロット圧が算出され、電磁比例弁制御部44からの制御信号によって電磁比例弁54~59が実際に駆動されることで自動動作が実行される。自動動作実行中には図3のステップS190で現在のバケット10の爪先位置の動作計画部90で演算した予定動作軌道Rからの逸脱が第1許容位置誤差以下であるかが判定され、図3のステップS200で現在の油圧ショベル1の位置座標と、フロント作業装置1Aの姿勢の動作計画部90で演算した各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢からの逸脱が第1許容時間誤差以下であるかが判定される。動作計画通りに自動動作が行われている場合は図3のステップS190及びステップS200でYESと判定されるが掘削対象土質等によっては動作計画通りに自動動作を行うことができない場合がある。その場合には図3のステップS190またはステップS200でNOと判定され第2出力部111から異常終了信号を出力しタスクが異常終了したことを管理者または管理システムに知らせたうえでタスクの実行を終了する。これにより管理者または管理システムが承認していない動作を防止することができる。
【0065】
何らかの理由によりタスク実行中に油圧ショベル1の自動動作を一時停止させたい場合には管理者または管理システムから第3入力部102にタスク一時停止要求信号が入力される。この場合には図3のステップS220でYESと判定され第2出力部111から一時停止信号が管理者または管理システムに出力されタスクの実行が一時停止される。
【0066】
タスクの一時停止中にタスクの実行を再開したい場合には管理者または管理システムから第3入力部102にタスク再開要求信号が入力される。この場合には図3のステップS280でYESと判定されタスクの実行が再開される。また、タスクの一時停止中にタスクを途中終了したい場合には管理者または管理システムから第3入力部102にタスク途中終了要求信号が入力される。この場合には図3のステップS290でYESと判定され第2出力部111から途中終了信号を出力しタスクが途中終了したことを管理者または管理システムに知らせたうえでタスクの実行を終了する。
【0067】
次にタスクの実行が完了した場合には図3のステップS230でYESと判定され第2出力部111から正常終了信号を出力しタスクが正常終了したことを管理者または管理システムに知らせたうえでタスクの実行を終了する。
【0068】
上記のように構成される油圧ショベルとすることで様々な掘削面の傾斜θ_gndに対して適切な掘削軌道を生成し、自動動作を実行することができる。
【0069】
(まとめ)
本実施例では、作業具10を有する作業装置1Aと、作業装置1Aを駆動する油圧アクチュエータ5~7と、油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2から油圧アクチュエータ5~7に供給される圧油の流量を制御するコントロールバルブ20と、作業具10上の制御点(例えばバケット10の爪先位置)の目標軌道Rを算出し、前記制御点が目標軌道R上を移動するようにコントロールバルブ20を制御する制御装置40とを備えた作業機械1において、制御装置40は、掘削面の傾斜情報に基づき、掘削開始時に前記制御点が位置する掘削開始位置P1と掘削途中に前記制御点が位置する掘削途中位置P2と掘削終了時に前記制御点が位置する掘削終了位置P3とを通る目標軌道R、および前記制御点が目標軌道R上を移動するときの作業具10の目標姿勢を算出し、前記制御点が目標軌道R上を移動するように、かつ前記制御点が目標軌道R上を移動するときの作業具10の姿勢が前記目標姿勢と一致するようにコントロールバルブ20を制御する。
【0070】
以上のように構成した本実施例によれば、作業具10上の制御点が掘削開始位置P1、掘削途中位置P2、および掘削終了位置P3を通るように作業具10の目標軌道Rおよび目標姿勢θ_1~θ_3が算出されるため、掘削環境や掘削対象物に応じて目標軌道Rおよび目標姿勢θ_1~θ_3を適切に設定することが可能となる。
【0071】
また、本実施例における掘削途中位置P2は、目標軌道R上で地表から最も深くに位置する最大掘削深さ位置である。これにより、地表に位置する点(掘削開始位置P1および掘削終了位置P3)と地表から最も深くに位置する点(最大掘削深さ位置P2)とを通るように目標軌道が算出されるため、目標軌道をより適切に設定することが可能となる。
【0072】
また、本実施例における制御装置40は、掘削開始位置P1、最大掘削深さ位置P2、および掘削終了位置P3に加え、掘削動作終了時に前記制御点が位置する動作終了位置P4を通るように目標軌道Rを算出する。これにより、掘削した土砂を作業具10ですくうまでを一連の動作を目標軌道に基づいて制御することが可能となる。
【0073】
また、本実施例における制御装置40は、動作終了位置P4における作業具10の目標姿勢θ_4を前記掘削面の傾斜情報としての掘削面の傾斜によらず重力方向に基づいて算出する。これにより、作業具10ですくった土砂が作業具10からこぼれることを防止することが可能となる。
【0074】
また、本実施例における作業機械1は、前記掘削面の傾斜情報として掘削面の傾斜θ_gndを制御装置40に入力する外部接続装置200を備え、制御装置40は、掘削面の傾斜θ_gndに応じて、掘削開始位置P1、最大掘削深さ位置P2、および掘削終了位置P3を設定する。これにより、掘削開始位置P1、最大掘削深さ位置P2、および掘削終了位置P3を掘削面の傾斜θ_gndに応じて適切に設定することが可能となる。
【0075】
また、本実施例における制御装置40は、掘削面の傾斜θ_gndに応じて、掘削開始位置P1における目標姿勢θ_1、最大掘削深さ位置P2における目標姿勢θ_2、および掘削終了位置P3における目標姿勢θ_3を算出する。これにより、掘削開始位置P1、最大掘削深さ位置P2、および掘削終了位置P3における作業具10の目標姿勢θ_1~θ_3を掘削面の傾斜θ_gndに応じて適切に設定することが可能となる。
【0076】
また、本実施例における制御装置40は、前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を掘削開始位置P1に近づくように設定し、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を掘削終了位置P1に近づくように設定し、前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を地表から浅い位置に設定し、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど最大掘削深さ位置P2を地表から深い位置に設定する。これにより、掘削効率の高い目標軌道を設定することが可能となる。
【0077】
また、本実施例における制御装置40は、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、掘削開始位置P1から掘削終了位置P3までの距離(掘削距離L_ex)が小さくなるように掘削開始位置P1および掘削終了位置P3を設定する。掘削面の傾斜θ_gndに応じて掘削距離L_exを調節することが可能となる。
【実施例2】
【0078】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0079】
図6は、本実施例における制御装置40の機能ブロック図である。制御装置40は、位置姿勢演算部43と、電磁比例弁制御部44と、アクチュエータ制御部81と、動作計画部90と、自動動作制御部91と、軌道逸脱判定部92と、時間逸脱判定部93と、第1入力部100と、第2入力部101と、第3入力部102と、掘削面傾斜設定部103と、掘削対象物硬さ設定部104と、第1出力部110と、第2出力部111とを備えている。
【0080】
掘削対象物硬さ設定部104には外部接続装置200からの情報に基づき掘削対象物の硬さが設定される。外部接続装置200から掘削対象物硬さ設定部104に入力される情報は人が目視で推定した結果を用いても良いしセンサ等による計測を行った結果を用いてもよい。
【0081】
動作計画部90には予定動作軌道Rの演算に使用するパラメータのテーブルが予め記憶されており、第1入力部100から取得したタスク情報と掘削面傾斜設定部103から取得した掘削面の傾斜情報と掘削対象物硬さ設定部104から取得した掘削対象物の硬さ情報に基づき、タスク開始からタスク終了までの各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢と、バケット10の爪先位置の予定動作軌道Rを算出し、自動動作制御部91、軌道逸脱判定部92、時間逸脱判定部93及び第1出力部110に出力する。
【0082】
図7は、制御装置40による掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndに応じたパラメータ設定のフローチャートである。ここでいうパラメータとは、バケット10の爪先位置の予定動作軌道Rを算出する際に用いられる、掘削開始位置P1からの掘削終了位置P3までの距離(掘削距離L_ex)、最大掘削深さD_maxdpt、最大掘削深さ位置P2、動作終了位置P4、各位置におけるバケット10の姿勢θ_1~θ_4である。以下、各ステップについて順に説明する。
【0083】
ステップS500では、掘削面傾斜設定部103は外部接続装置200からフロント作業装置1Aによる掘削作業を行う箇所周辺の地形の傾斜に概ね一致する掘削面の傾斜θ_gndが設定される。
【0084】
ステップS510では、掘削対象物硬さ設定部104は外部接続装置200からフロント作業装置1Aによる掘削作業を行う箇所周辺の掘削対象物の硬さH_gndが設定される。
【0085】
ステップS520では、予定動作軌道Rの演算における長さに関するパラメータのうち、ステップS500で設定した掘削面の傾斜θ_gndのみによって決まるものを設定する。具体的には掘削開始位置P1からの掘削距離L_exと最大掘削深さ位置P2までの掘削面方向の距離L_maxdptを設定する。
【0086】
ステップS530では、動作計画部90に予め記憶させた最大掘削深さD_maxdptと掘削開始位置P1におけるバケット10の姿勢θ_1と最大掘削深さ位置P2におけるバケット10の姿勢θ_2と掘削終了位置P3におけるバケット10の姿勢θ_3のテーブルからステップS510で設定した掘削対象物の硬さH_gndに応じて使用するテーブルを抽出する。
【0087】
ステップS540では、予定動作軌道Rの演算における姿勢に関するパラメータのうち、ステップS500で設定した掘削面の傾斜θ_gndとステップS510で設定した掘削対象物の硬さH_gndの両方によって決まるものを設定する。具体的には、最大掘削深さD_maxdpt、掘削開始位置P1におけるバケット10の姿勢θ_1、最大掘削深さ位置P2におけるバケット10の姿勢θ_2、および掘削終了位置P3におけるバケット10の姿勢θ_3を設定する。ステップS530で掘削対象物の硬さH_gndに応じて使用するテーブルを選択し、ステップS540でそのテーブルから掘削面の傾斜θ_gndに応じたパラメータを設定することで掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndの両方を考慮したパラメータを選択することができる。図7に示す例では、硬さH_gndが普通の場合の、やや大きい場合、大きい場合の3つのテーブル(図中、実線、破線、点線でそれぞれ示す)の中から1つのテーブルを選択する構成としている。図7に示すように、掘削面の傾斜θ_gndが同じであっても、硬さH_gndが大きくなるに従って、最大掘削深さD_maxdptは小さく、バケット10の姿勢θ_1~θ_4は大きくなる。
【0088】
ステップS550では、予定動作軌道Rの演算における掘削面の傾斜θ_gndまたは掘削対象物の硬さH_gndによらないパラメータを設定する。具体的には動作終了位置P4までの掘削面方向の距離L_finと動作終了位置P4におけるバケット10の姿勢θ_4を設定する。
【0089】
ステップS560では、ステップS520,S540,S550で設定したパラメータから求められる掘削開始位置P1と最大掘削深さ位置P2と掘削終了位置P3と動作終了位置P4と各位置におけるバケット10の姿勢θ_1~θ_4とに基づき、各位置と姿勢を滑らかに接続するように予定動作軌道Rを算出する。
【0090】
なお、図7に示したパラメータ設定の方法は一例であり、別の方法で掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndに応じてパラメータを設定しても良い。またはパラメータを介さず掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndに応じて直接各位置と各位置におけるバケット10の姿勢を設定してもよい。
【0091】
また、各位置と各姿勢を滑らかに接続するように予定動作軌道Rを算出する際にはラグランジュ補間、ベジエ補間、エルミート補間、スプライン補間等を用いた補間が考えられるがこれ以外の方法を用いてもよい。
【0092】
上記のように構成された油圧ショベル1において、掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndに応じて生成した掘削軌道を図8に示す。なお図8においてフロント作業装置1Aによる掘削を行う箇所周辺の地面の硬さH_gndは大きいものと仮定する。
【0093】
管理者または管理システムはタスク情報と掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndの入力を行う。入力されたタスク情報、掘削面の傾斜θ_gnd、掘削対象物の硬さH_gndに基づき動作計画部90は動作計画を行う。すなわちタスク開始からタスク終了までの各時刻における油圧ショベル1の予定位置座標とフロント作業装置1Aの予定姿勢と、バケット10の爪先位置の予定動作軌道Rを算出する。
【0094】
動作計画部90は予定動作軌道Rの演算の中で掘削動作軌道の生成の際に掘削面の傾斜θ_gndと掘削対象物の硬さH_gndに応じた予定動作軌道Rを算出する。図8では掘削面が下り傾斜しているため、掘削面が傾斜していない場合、すなわちθ_gnd=0の場合と比べて、ステップS520で掘削距離L_exは短く設定され、最大掘削深さ位置P2までの掘削面方向の距離L_maxdptは長く設定される。
【0095】
また、ステップS530で最大掘削深さD_maxdptと掘削開始位置P1におけるバケット10の姿勢θ_1と最大掘削深さ位置P2におけるバケット10の姿勢θ_2と掘削終了位置P3におけるバケット10の姿勢θ_3のパラメータは掘削対象物の硬さH_gndが大きいため、動作計画部90に予め記憶させてあるパラメータテーブル中から掘削対象物の硬さH_gndに応じたテーブルが抽出される。このとき掘削対象物の硬さH_gndが普通の場合と比べて、最大掘削深さD_maxdptが浅いテーブルが抽出され、掘削開始位置P1におけるバケット10の姿勢θ_1はバケット10の底面の向きが目標軌道の接線の向きに近づくテーブルが抽出され、最大掘削深さ位置P2におけるバケット10の姿勢θ_2はバケット10の底面の向きが目標軌道の接線の向きに近づくテーブルが抽出され、掘削終了位置P3におけるバケット10の姿勢θ_3はバケット10の底面の向きが目標軌道の接線の向きに近づくテーブルが抽出される。
【0096】
ステップS540で抽出されたテーブルからθ_gnd=0の場合と比べて、最大掘削深さD_maxdptは深く設定され、掘削開始位置P1におけるバケット10の姿勢θ_1は大きく設定され、最大掘削深さ位置P2におけるバケット10の姿勢は大きく設定され、掘削終了位置P3におけるバケット10の姿勢は大きく設定される。
【0097】
ステップS550で動作終了位置P4までの掘削面方向の距離L_finと動作終了位置P4におけるバケット10の姿勢θ_4が掘削面の傾斜θ_gndによらず、かつ動作終了位置P4におけるバケット10の姿勢θ_4は重力方向に応じて設定される。これにより図8の状態S1(掘削開始状態)と状態S2(最大掘削深さ状態)と状態S3(掘削終了状態)と状態S4(動作終了状態)におけるバケット10の爪先位置とバケット10の姿勢が決定する。ステップS560で位置P1から位置S4までを滑らかに接続するように予定動作軌道Rが算出される。
【0098】
(まとめ)
本実施例における作業機械1は、掘削対象物の硬さH_gndを制御装置40に入力する外部接続装置200を備え、制御装置40は、掘削対象物の硬さH_gndに応じて最大掘削深さ位置P2を設定する。
【0099】
以上のように構成した本実施例によれば、自動掘削制御において、目標軌道Rの地表から最も深くに位置する最大掘削深さ位置P2を掘削対象物の硬さH_gndに応じて適切に設定することが可能となる。
【0100】
また、本実施例における制御装置40は、掘削対象物の硬さH_gndに応じて、掘削開始位置P1における目標姿勢θ_1、最大掘削深さ位置P2における目標姿勢θ_2、および掘削終了位置P3における目標姿勢θ_3を算出する。これにより、掘削開始位置P1、最大掘削深さ位置P2、および掘削終了位置P3における作業具10の目標姿勢θ_1~θ_3を掘削対象物の硬さH_gndに応じて適切に設定することが可能となる。
【0101】
また、本実施例における制御装置40は、掘削対象物の硬さH_gndが大きくなるほど作業具10の底面の向きが目標軌道Rの接線の向きに近づくように目標姿勢θ_1~θ_3を算出する。これにより、掘削対象物が通常より硬い場合でも目標軌道に沿って正確に掘削することが可能となる。
【0102】
また、本実施例における外部接続装置200は、掘削面の傾斜θ_gndを制御装置40に入力し、制御装置40は、前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を掘削開始位置P1に近づくように設定し、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を掘削終了位置P3に近づくように設定し、掘削対象物の硬さH_gndが大きくなるほど最大掘削深さ位置P2を地表から浅い位置に設定し、掘削対象物の硬さH_gndが小さくなるほど最大掘削深さ位置P2を地表から深い位置に設定し、前記掘削面の下り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の上り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を地表から浅い位置に設定し、前記掘削面の上り傾斜が小さくなるほど、または、前記掘削面の下り傾斜が大きくなるほど、最大掘削深さ位置P2を地表から深い位置に設定する。これにより、最大掘削深さ位置P2を掘削面の傾斜および掘削対象物の硬さH_gndに応じて適切に設定することが可能となる。
【0103】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…油圧ショベル(作業機械)、1A…フロント作業装置、1B…車体、2…油圧ポンプ、3…走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)、4…旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)、5…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、6…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、7…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、8…ブーム、9…アーム、10…バケット(作業具)、11…下部走行体、12…上部旋回体、13…バケットリンク、18…エンジン、20…コントロールバルブ、30…ブーム角度センサ、31…アーム角度センサ、32…バケット角度センサ、33…車体傾斜角センサ、36…車体位置検出装置、40…制御装置、43…位置姿勢演算部、44…電磁比例弁制御部、50…作業装置姿勢検出装置、54~59…電磁比例弁、81…アクチュエータ制御部、90…動作計画部、91…自動動作制御部、92…軌道逸脱判定部、93…時間逸脱判定部、100…第1入力部、101…第2入力部、102…第3入力部、103…掘削面傾斜設定部、110…第1出力部、111…第2出力部、200…外部接続装置、P1…掘削開始位置、P2…最大掘削深さ位置(掘削途中位置)、P3…掘削終了位置、P4…動作終了位置、R…予定動作軌道(目標軌道)、S1…掘削開始状態、S2…最大掘削深さ状態、S3…掘削終了状態、S4…動作終了状態。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8